説明

側溝用の蓋材

【課題】雨水等の排水性に優れて滑り難く、歩行者や車両の通行の妨げにならない側溝用の蓋材を提供する。
【解決手段】側溝の底面部の左右両側から起立する両側壁部の上部に形成された支持部間に載置されて側溝の上面開口に被せられる側溝用の蓋材2であって、蓋材は、前記した側溝の支持部上に載る左右の側縁部分に、その上面から下面に貫通する雨水落下口7を形成すると共に、側縁部分の上面には雨水落下口に向けて下り傾斜した雨水回収傾斜面8を側縁部分に沿って形成し、左右の両雨水回収傾斜面の間に位置する上面に、該上面の左右方向の中央部分が高くてこの高い部分から左右の雨水回収傾斜面に向かって下り傾斜した排水案内面9を形成し、該排水案内面に島部10を複数個所隆設してなり、歩行者等が前記した島部上を移動して通過可能とする一方で雨水を島部の間の排水案内面から雨水回収傾斜面に回収してから雨水落下口に落下させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に沿ってその脇に埋設される側溝に被せる側溝用の蓋材に関し、特に、雨水等の排水性を高めたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の側溝においては、上面が平面で構成されたコンクリート製の板材を蓋として側溝の長手方向に沿って並べて被せ、これにより上面開口を閉塞することが一般的であった。そして、側溝の長手方向に長尺な長方形を呈する蓋には、側溝の幅方向に位置する短辺の一部に切欠部を形成し、路上から蓋上に流れてきた雨水を前記した切欠部の開口から側溝の内部に落下させて排水する構成を採っていた。
【特許文献1】特開2004−143925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の側溝用の蓋材は、上面の排水性が不十分であり、雨天などにおいては蓋材の上面に、蓋上に降った雨水だけではなく路上から流れてきた雨水が溜まってしまう。このため、歩行者が蓋材の上面に溜まった雨水によって滑って転んだり、自転車などの車両がスリップして事故を起こす虞があった。
【0004】
このため、上面の排水性に優れて滑り難く、また、老人や子供がつまずいたりしないなどバリアフリーやユニバーサルデザインに配慮した側溝用の蓋材の開発が望まれていた。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑み提案されたもので、その目的は、雨水等の排水性に優れて滑り難く、歩行者や車両の通行の妨げにならない側溝用の蓋材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記した目的を達成するため提案されたもので、請求項1に記載のものは、側溝の底面部の左右両側から起立する両側壁部の上部に形成された支持部間に載置されて側溝の上面開口に被せられる側溝用の蓋材であって、
前記蓋材は、
前記した側溝の支持部上に載る左右の側縁部分に、その上面から下面に貫通する雨水落下口を形成すると共に、前記左右の側縁部分の上面には雨水落下口に向けて下り傾斜した雨水回収傾斜面を側縁部分に沿って形成し、左右の両雨水回収傾斜面の間に位置する上面に、該上面の左右方向の中央部分が高くてこの高い部分から左右の雨水回収傾斜面に向かって下り傾斜した排水案内面を形成し、該排水案内面に島部を複数個所隆設してなり、
歩行者等の通行するものが前記した島部上を移動して通過可能とする一方で雨水等を島部の間の排水案内面から左右の側縁部分の雨水回収傾斜面に回収してから雨水落下口に落下させるようにしたことを特徴とする側溝用の蓋材である。
【0007】
請求項2に記載のものは、前記雨水回収傾斜面の上面が、左右の側縁側から左右方向の中央に向けて下り傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の側溝用の蓋材である。
【0008】
請求項3に記載のものは、前記排水案内面が左右の側縁部分に向けて下り傾斜した曲面で構成され、各島部の上面を同一平面上に位置させたことを特徴とする請求項1または2に記載の側溝用の蓋材である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の本発明によれば、側溝の支持部上に載る左右の側縁部分に、その上面から下面に貫通する雨水落下口を形成すると共に、前記左右の側縁部分の上面には雨水落下口に向けて下り傾斜した雨水回収傾斜面を側縁部分に沿って形成し、左右の両雨水回収傾斜面の間に位置する上面に、該上面の左右方向の中央部分が高くてこの高い部分から左右の雨水回収傾斜面に向かって下り傾斜した排水案内面を形成し、該排水案内面に島部を複数個所隆設したので、降った雨水を島部の間の排水案内面から左右の側縁部分の雨水回収傾斜面に回収してから雨水落下口に落下させることができ、上面、特に島部の上面に雨水を溜めることがない。したがって、歩行者等は、雨水の流路とはならない島部上を移動して蓋材上を通過することができ、雨水で滑って転ぶなどのトラブル発生を有効に抑制することができ、安全性の向上を期待することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、雨水回収傾斜面の上面が、左右の側縁側から左右方向の中央に向けて下り傾斜しているので、雨水の量に応じた最小の幅で排水することができ、水で覆われる領域を狭くすることができる。したがって、歩行者が雨水で滑る可能性を一層少なくすることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、蓋材の上面が左右の側縁部分に向けて下り傾斜した曲面で構成され、各島部の上面を同一平面上に位置させたので、蓋材上に降った雨水を蓋材の側縁部分に速やかに流すことができる。そして、島部の上面が同一平面上に位置するので、歩行者はつまずいたりすることを防止でき、高い安全性を期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図1は側溝1および蓋材2の斜視図、図2は側溝用の蓋材2の斜視図である。
側溝1は、底面部3と該底面部3の左右両側縁から立設した左右の側壁部4とから概略構成されるコンクリート製の樋体であり、両側壁部4の内側上部には支持部5が左右対向した状態で間隔を空けて設けられており、また、一方(図中右側)の側壁部4の上部には雨水導入穴6が開設されている。なお、図1に示す側溝1は、前記した左右の支持部5間に蓋材2を上方から被せるようにしながら4枚列状にして載置することにより上面の長尺な開口を塞ぐように各部の寸法を設定してある。
【0013】
側溝1の支持部5は、蓋材2を支えるものであり、本実施形態では、側壁部4の上端から所定長さだけ下がった位置に、壁面から側溝内部の流路に向けて下り傾斜した支持面5aを有する隆起部5bを突設して構成されている。なお、この支持部5は、蓋材2の長さに応じて、蓋材2の長手方向(側溝1の流路の方向)の両端部を支持し得る間隔で複数個所配置されている。そして、一方の側壁部4においては、支持部5と支持部5との間の空いた部分に雨水導入穴6を側壁部4を貫通させて開設し、この雨水導入穴6を介して、例えば、車道側に敷設した透水性舗装の内部を通ってきた雨水を側溝1の内部に導入できるように構成してある。
【0014】
蓋材2は、コンクリート製の略長方形の板材であり、図2に示すように、前記した側溝1の支持部5上に載る左右の側縁部分に、その上面から下面に貫通する切欠部状の雨水落下口7を縦方向に形成すると共に、前記左右の側縁部分の上面には、雨水落下口7の上開口に向けて下り傾斜した細長い雨水回収傾斜面8を側縁部分に沿ってそれぞれ形成し、左右の両雨水回収傾斜面8,8の間に位置する上面に、該上面の左右方向(蓋材2の幅方向)の中央部分が最も高くてこの高い部分から左右の雨水回収傾斜面8に向かって緩やかに下り傾斜した排水案内面9を形成し、該排水案内面9に島部10を複数個所隆設してある。上面に形成した排水案内面9は、左右の側縁部分に向けて下り傾斜した緩やかな曲面で構成されており、この曲面の曲率は小さく、すなわち大きな半径の緩やかな曲面である。そして、この排水案内面9の領域内に、様々な大きさの略矩形の島部10を複数個所隆設してある。したがって、各島部10は、排水案内面9に四周を囲まれた状態で形成されている。そして、これら島部10の上面は、周りの排水案内面9が曲面であっても、すべてが同一平面上に位置するようにそれぞれ高さを異ならせて形成され、且つ、小さな凹凸等からなるスリップ止め部(図示せず)が形成されている。
【0015】
また、蓋材2の下面(裏面)には、雨水回収傾斜面8の裏側、すなわち、側縁部分に、その端部から所定長さで左右方向の中央に向かって下り傾斜した傾斜下面12を厚板を切り欠くようにして形成し、この切り欠きで残余部分となる傾斜下面12の端部から前記雨水落下口7までの間に相対的な突部が嵌合突部13として形成される。したがって、雨水落下口7を挟んで両側に嵌合突部13が形成される。そして、雨水落下口7の両側に位置する嵌合突部13の外側端部同士の間の長さL1は、側溝1の両側壁部4の内側に形成した前記支持部5の端部同士の間に形成された嵌合空部14の間隔の長さL2に対応させてあり、蓋材2の長手方向に位置する前後の嵌合突部13が支持部5の端部同士の間の嵌合空部14に丁度嵌合するように設定されている。
【0016】
したがって、前記した構成からなる蓋材2を側溝1の上開口に上方から臨ませて下降して被せて各嵌合突部13を左右両側に位置する嵌合空部14内に嵌合すると、蓋材2の側溝1に対する前後方向(側溝1の流路の前後長手方向)の位置が定まり、この位置でさらに下降して傾斜下面12を側溝1の支持部5上に載せると、傾斜下面12の傾斜と支持部5の傾斜とにより蓋材2の側溝1に対する幅方向の位置が定まり、蓋材2を側溝1の支持部5上に安定した状態で着座させることができる。そして、この所定位置で着座すると、蓋材2の島部10の上面が側溝1の左右両側の側壁部4の状態と同じ高さに位置して、歩行の支障となるような段差が生じない。
【0017】
そして、本実施形態では、図1に示すように、4枚の蓋材2を側溝1の上開口に被せて該開口を塞ぐことができる。なお、4枚の蓋材2を被せて側溝1の上開口を塞ぐと、各蓋材2の雨水落下口7が側溝1の両側壁部4の上端に隣接して開口するとともに、各蓋材2の幅方向の短辺に切り欠き状に形成した副雨水落下口15が前後に隣り合う蓋材2の境界に開口する。
【0018】
前記した構成からなる側溝1及び蓋材2を設置した場所に雨が降ると、蓋材2の上面に降り注いだ雨水、具体的には島部10上に降り落ちた雨水は当該島部10を取り囲んでいる排水案内面9上に流れ落ちる。そして、島部10が蓋材2の左右幅方向の一方に位置している場合には、その一方に位置する側縁部分に向かって、また、左右幅方向の他方に位置している場合には他方に位置する側縁部分に向かって排水案内面9上を途中の島部10を迂回しながら流れる。この雨水が左右の側縁部分に流れ着くと雨水回収傾斜面8上を雨水落下口7に向かって流れ、遂には雨水落下口7から側溝1の内部の流路に排水される。この様に、各島部10の上面においては、雨が激しく降り注いでも即座に周りの排水案内面9に流れ落ちるので溜まることがない。したがって、歩行者は降雨時に蓋材2の上を歩いても、雨水の流路となる部分に載ることなく島部10上を踏んで歩くことができる。また、蓋材2の左右側縁部分においても、雨水回収傾斜面8が雨水を雨水落下口7に向けて積極的に排水し、さらには雨水回収傾斜面8が左右幅方向の中央側に向かって下り傾斜しているので、雨水が流れる領域は水量の応じて狭く抑えられている。このため、従来の蓋材2と比較して、歩行者は水量の少ない部分、具体的には島部10の上面との接触するだけで、雨水が流れる排水案内面9や雨水回収傾斜面8を踏むことなく蓋材2上を歩くことができ、これにより、雨水により滑って転ぶなどのトラブル乃至事故の発生を確実に減少させることができる。
【0019】
なお、前記した実施形態では、島部を大小2種類の矩形に形成したが、これに限定されるものではなく、適宜な形状と大きさを採ることができる。そして、島部を適宜にデザインすることにより美観的にも優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】側溝と蓋材の斜視図である。
【図2】(a)は蓋材の斜視図、(b)は雨水落下口の部分で切断した部分断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1…側溝
2…蓋材
3…底面部
4…側壁部
5…支持部
6…雨水導入穴
7…雨水落下口
8…雨水回収傾斜面
9…排水案内面
10…島部
12…傾斜下面
13…嵌合突部
14…嵌合空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側溝の底面部の左右両側から起立する両側壁部の上部に形成された支持部間に載置されて側溝の上面開口に被せられる側溝用の蓋材であって、
前記蓋材は、
前記した側溝の支持部上に載る左右の側縁部分に、その上面から下面に貫通する雨水落下口を形成すると共に、前記左右の側縁部分の上面には雨水落下口に向けて下り傾斜した雨水回収傾斜面を側縁部分に沿って形成し、左右の両雨水回収傾斜面の間に位置する上面に、該上面の左右方向の中央部分が高くてこの高い部分から左右の雨水回収傾斜面に向かって下り傾斜した排水案内面を形成し、該排水案内面に島部を複数個所隆設してなり、
歩行者等の通行するものが前記した島部上を移動して通過可能とする一方で雨水を島部の間の排水案内面から左右の側縁部分の雨水回収傾斜面に回収してから雨水落下口に落下させるようにしたことを特徴とする側溝用の蓋材。
【請求項2】
前記雨水回収傾斜面の上面が、左右の側縁側から左右方向の中央に向けて下り傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の側溝用の蓋材。
【請求項3】
前記排水案内面が左右の側縁部分に向けて下り傾斜した曲面で構成され、各島部の上面を同一平面上に位置させたことを特徴とする請求項1または2に記載の側溝用の蓋材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−191527(P2009−191527A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33934(P2008−33934)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(391052264)新興工材株式会社 (11)
【出願人】(508048986)株式会社D.C.Tアイ (3)
【Fターム(参考)】