説明

側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体組成物の製造方法

【課題】エポキシ基含有共重合体に、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加して得られる、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性共重合体を含有する硬化性樹脂組成物を製造する際に、当該共重合体が増粘及びゲル化等することなく、安定に目的物が得られる製造方法を提供する。
【解決手段】前記エポキシ基含有共重合体は、多官能成分の含有量が0.01〜0.3質量%であるエポキシ基含有(メタ)アクリレートを30〜100質量部含む単量体混合物の重合により得られる。また、前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、グルシジル(メタ)アクリレートが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側鎖に重合性の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体組成物の製造方法に関する。さらに詳しくは、製造時にゲル化等の不具合を生じることなく、安定に目的物が得られる前記(メタ)アクリル系重合体組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、光又は熱等のエネルギーにより硬化可能な重合体は様々な用途に用いられている。例えば、建築物の内装及び建具並びに家電製品等の表面化粧材においては、木質材料及び無機系材料等に木目調柄等を印刷した化粧シート用部材を貼り合せてなる化粧シートや、レリーフホログラム等の凹凸パターンの形成、合成皮革製造用のエンボス付き離型紙等に使用されている。また、粘接着剤、塗料、インク、繊維又は紙等のバインダー及びコーティング剤等の材料としても有用である。
【0003】
上記の用途に適用可能な材料として、種々の重合体が提案されている。
特許文献1には、化粧シート部材に用いられる光硬化性樹脂組成物として、(メタ)アクリル酸エステル及びカルボキシル基を有する単量体を重合させた重合体に、エチレン性不飽和結合及びエポキシ基を有する脂環式化合物を付加し、変性された共重合体が含まれる光硬化性樹脂組成物が開示されている。
特許文献2には、レリーフホログラム等の凹凸パターンを形成させる光硬化性樹脂組成物として、特定のウレタン変性アクリル系樹脂を含む光硬化性樹脂組成物が開示されている。
また、出願人は、特許文献3及び4において、エポキシ基含有共重合体に、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加して得られた、(メタ)アクリロイル基を有する光硬化性共重合体を含有する光硬化性樹脂組成物を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−136646号公報
【特許文献2】特開2000−234041号公報
【特許文献3】WO2009/044885号公報
【特許文献4】特開2011−132288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した各種光硬化性樹脂組成物の中でも、特許文献3及び4に開示された光硬化性樹脂組成物は、製造時に使用できる溶剤の制約が少ない点、及び原料コストの面等において有利である。
しかしながら、発明者らは、特許文献3及び4に記載の光硬化性樹脂組成物を製造する際に、同一の製造処方であっても重合体の増粘及びゲル化により、目的物が安定に製造できない場合があるという予想外の問題に直面した。
【0006】
本発明の課題は、エポキシ基含有共重合体に、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加して得られる、(メタ)アクリロイル基を有する硬化性共重合体を含有する硬化性樹脂組成物を製造する際に、当該共重合体が増粘及びゲル化等することなく、安定に目的物が得られる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、原料であるエポキシ基含有(メタ)アクリレート中には従来は想定していなかったような多官能成分が含まれていることを見出した。さらに、当該多官能成分の含有量は使用するロット等によって一定ではなく、このために製造時の安定性が確保されないことをつきとめ、本発明を完成した。
【0008】
本発明は以下の通りである。
1.単量体成分としてエポキシ基含有(メタ)アクリレートを含む共重合体(A)のエポキシ基に、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)を付加させた、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法において、
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートが共重合体(A)を構成する全単量体成分を100質量部とした場合に30〜100質量部であり、かつ当該エポキシ基含有(メタ)アクリレート中に含まれる多官能成分量が0.01〜0.3質量%であることを特徴とする(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
2.前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートがグルシジル(メタ)アクリレートであることを特徴とする前記1に記載の(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
3.前記共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が10000〜200000であることを特徴とする前記1又は2に記載の(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の(メタ)アクリル系重合体組成物の製造方法によれば、エポキシ基含有共重合体に、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加することにより側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体組成物を製造する際に、増粘及びゲル化等の不具合を生じることなく、安定に目的とする(メタ)アクリル系重合体組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、エポキシ基含有(メタ)アクリレートを構成単量体単位に含む共重合体に、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加することにより側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体組成物を製造する際に、当該エポキシ基含有(メタ)アクリレートが特定量の多官能成分を含有することを特徴とする(メタ)アクリル系重合体組成物の製造方法に関する。
以下、本発明について詳しく説明する。尚、本願明細書においては、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を、(メタ)アクリル酸と表す。
【0011】
本発明による(メタ)アクリル系重合体組成物の製造方法は、エポキシ基含有(メタ)アクリレートを含む単量体混合物からプレポリマーであるエポキシ基含有共重合体(A)を得る工程(プレポリマー合成)、並びに当該プレポリマーにカルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)を付加させる工程((メタ)アクリレート化)とからなるものである。
【0012】
本発明における共重合体(A)はエポキシ基含有(メタ)アクリレート30〜100質量部を含む単量体混合物から得られるが、必要に応じてエポキシ基含有(メタ)アクリレート以外のその他単量体を構成成分とすることができる。
【0013】
上記エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート及び3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの内、官能基当量、すなわち、エポキシ基当量の大きいグリシジル(メタ)アクリレートが、効率的にエポキシ基を導入できる点で優れる。これらのうち、入手容易性及び低毒性の観点からグリシジルメタクリレートが特に好ましい。
【0014】
本発明では、上記エポキシ基含有(メタ)アクリレートとして市販の物を用いることができるが、当該化合物中に多官能成分を0.01〜0.3質量%含むものであり、好ましくは0.01〜0.2質量%、さらに好ましくは0.01〜0.1質量%である。
当該多官能成分は、メーカー及びロット間等により相違がみられるものの、ジ(メタ)アクリレート及びトリ(メタ)アクリレート等の混合物であり、ガスクロマトグラフィ(GC)により容易に定量することができる。
多官能成分の量が0.3質量%を超えると、製造時に増粘及びゲル化が生じる場合がある。また、下限値については低いほど好ましいが、実際には0.01質量%を下回ることはない。
【0015】
尚、本発明では、GCは以下に示す条件で測定を行った。
(1)装置 ; 7890A型GC(Agilent社製、検出器FID)
(2)カラム ; CP−Sil5CB(30m×0.25mmID、1.0μm)
(3)測定温度 ; 60〜300℃
(4)INJ温度 ; 250℃
(5)キャリアガス ; He
【0016】
また、その他単量体としては、エチレン性不飽和基を有する化合物であればよく、(メタ)アクリレート系単量体、スチレン、α−メチルスチレン、α−オレフィン類及びビニルエーテル類などが例示できる。これらの中でも、用途に合わせた物性の調整がし易い点で、(メタ)アクリレート系単量体が好ましい。
【0017】
上記(メタ)アクリレート系単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、酸含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、窒素含有(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、含ケイ素(メタ)アクリレート、含フッ素(メタ)アクリレート及び各種マクロモノマー等が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
上記脂環式アルキル(メタ)アクリレート(アクリレートのエステルを構成する置換基(「エステル置換基」という)として脂環式成分を含む意味である。)としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシアルキル(メタ)アクリレート及びアダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
上記芳香族(メタ)アクリレートとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート及びフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
酸含有(メタ)アクリレートとしては、カルボン酸残基含有アルキル(メタ)アクリレート及びスルホン酸残基含有単量体等が挙げられる。
上記カルボン酸残基含有アルキル(メタ)アクリレート(「エステル置換基」としてカルボン酸残基を含む意味である。)としては、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ω−カルボキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート及びω−ヒドロキシ(メタ)アクリレートの各種酸無水物変性物等がある。尚、カルボン酸残基含有アルキル(メタ)アクリレートの代わりに、(メタ)アクリル酸等を用いることができる。
また、スルホン酸残基含有単量体としては(メタ)アクリル酸2−スルホン酸エチル等が挙げられる。
【0022】
上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ω−ヒドロキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート及びω−ヒドロキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
上記窒素含有アルキル(メタ)アクリレート(「エステル置換基」として窒素成分を含む意味である。)としてはジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アルキルピペリジル(メタ)アクリレート及び各種イミドアルキル(メタ)アクリレート(イミド基を有するエステル基置換基を備えるもの)等が挙げられる。
【0024】
更に、上記に示したような各種(メタ)アクリレート系単量体から構成されたマクロモノマーのほか、シリコーン系(メタ)アクリレート及びフッ素系(メタ)アクリレート等を用いることができる。
尚、上述の各種単量体は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
共重合体(A)の共重合組成としては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートとその他単量体、好ましくはその他のアルキル(メタ)アクリレート単量体との合計を100質量部とした場合、エポキシ基含有(メタ)アクリレートの共重合比率は30〜100質量部である。30質量部未満の場合は、製造時の増粘及びゲル化等の問題はほぼ生じない。
【0026】
共重合体(A)において、エポキシ基含有(メタ)アクリレートとその他単量体の共重合の方法には、特に制限がなく、公知のラジカル重合法が好ましく使用でき、溶液重合法がより好ましく使用できる。
例えば、有機溶剤、エポキシ基含有(メタ)アクリレート及びその他単量体、好ましくは共重合可能なエチレン性不飽和基を有する他の単量体を反応器に仕込み、有機過酸化物、アゾ系化合物等の熱重合開始剤を添加して、50〜300℃に加熱して、共重合することができる。
単量体を含む各原料の仕込み方法は、すべての原料を一括して仕込むバッチ式の初期一括仕込みでもよく、少なくとも一つの原料を連続的に反応器中に供給するセミ連続仕込みでもよく、全原料を連続供給し、同時に反応器から連続的に生成樹脂を抜き出す連続重合方式でもよい。
【0027】
溶液重合法に使用する有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素類などが例示できる。
【0028】
共重合体(A)の製造に使用することのできる熱重合開始剤としては、アゾビスイソブロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスシアノバレリックアシッドなどのアゾ系開始剤、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジt−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシドなどの有機過酸化物が例示できる。
【0029】
共重合体(A)の重量平均分子量は、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で、10,000〜200,000であることが好ましく、20,000〜100,000であることがより好ましい。
重量平均分子量が10,000未満であれば製造時の増粘及びゲル化等の問題はほぼ生じない。また、200,000を超える場合は重合体の粘度が高いため、一般に取り扱いが困難となる。
【0030】
尚、重量平均分子量(Mw)は、GPCにより以下の測定条件で測定された重量平均分子量である。
(1)カラム ; 「TSK−GEL MULTIPORE HXL−M ×4」(東ソー社製)
(2)カラム温度; 40℃
(3)溶離液 ; テトラヒドロフラン(THF)
(4)検出器 ; RI
(5)検出器温度; 40℃
(6)標準物質 ; ポリスチレン
【0031】
本発明の(メタ)アクリル系重合体は、得られたプレポリマーである共重合体(A)のエポキシ基に対して、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)の付加反応により側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入して製造する。この導入反応は、溶液重合に引き続いて実施することができる。
共重合体(A)の溶液に、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)を付加させる方法は、従来公知の方法を採用することができる。
具体的には、共重合体(A)の溶液に、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)、反応触媒、場合により重合禁止剤を添加し、60〜120℃で加熱することにより、側鎖にアクリロイル基を有するポリ(メタ)アクリル重合体が得られる。
【0032】
カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、(メタ)アクリル酸のポリカプロラクトン変性物、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、得られる(メタ)アクリル系重合体が硬化性に優れるものとなる点で(メタ)アクリル酸が好ましい。また、中でもアクリル酸が、得られる(メタ)アクリル系重合体の硬化性がより優れる点で好ましい。
【0033】
カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)の添加量は、プレポリマーである共重合体(A)のエポキシ基を基準として、カルボキシル基が好ましくは0.8〜1.2当量、より好ましくは、0.9〜1.0当量である。
【0034】
付加反応の触媒としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルラウリルアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン等の3級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルセチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド等の4級アンモニウム塩、トリフェニルブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミドなどの4級ホスホニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィンなどのホスフィン化合物が挙げられる。プレポリマーである共重合体(A)100質量部に対して、触媒は0.1〜5質量部添加することが好ましい。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどが挙げられ、樹脂分に対して、50〜3,000ppm添加することが好ましい。
【0035】
上記共重合体(A)のガラス転移点温度(Tg)は、50〜120℃が好ましく、より好ましくは60〜110℃であり、更に好ましくは70〜100℃である。
また、上記側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体のガラス転移点温度(Tg)は、30〜90℃が好ましく、より好ましくは40〜80℃であり、更に好ましくは50〜70℃である。
共重合体(A)のTg及び(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体のTgが低すぎると未硬化の膜にタックが発生する等、取扱い性や加工性に不具合を生じる場合がある。Tgが高すぎると未硬化膜が硬すぎる状態になるため、加工性や硬化後の可撓制が不十分となる場合がある。
尚、上記Tgは、JIS−K−7121に準拠し、DSC(示査走査熱量計)により測定できる。
【0036】
本発明では、用途等により必要に応じてその他の成分を添加することができる。その他の成分としては、光開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、及び界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
上記光開始剤としては、ビイミダゾール系化合物、ベンゾイン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物及びケタール系等を挙げることができる。市販品としてはチバ・スペシャリティ・ケミカルズ製のIrgacureシリーズ、DAROCURシリーズ、日本化薬製のKAYACUREシリーズ、及びLAMBSON社製のSPEECUREシリーズ等がある。
【実施例】
【0038】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の記載において「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。
また、各例において得られた重合体等の固形分濃度は、以下に記載の方法により測定した。
<固形分>
測定サンプル約1gを秤量(a)し、次いで、通風乾燥機155℃、30分間乾燥後の残分を測定(b)し、以下の式より算出した。測定には秤量ビンを使用した。その他の操作については、JIS K 0067−1992(化学製品の減量及び残分試験方法)に準拠した。
固形分(%)=(b/a)×100
【0039】
実施例1
<プレポリマーの合成>
攪拌機、還流冷却器、2個の滴下ロート、温度計、窒素導入管を備えた反応器内に、メチルエチルケトン(以下、「MEK」という)200部、グリシジルメタクリレートA(市販品:多官能成分量0.09%、以下「GMA−A」という)70部、及びメチルメタクリレート(以下、「MMA」という)30部を仕込み、反応器の内容物を攪拌しながら、窒素雰囲気下で内温を85℃まで昇温した。内温が一定になった後、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(和光純薬社製、商品名「V−65」)1.5部とMEK30部とからなる重合開始剤溶液を5時間かけて連続的に供給した。連続供給終了後、内温を85度に保ったまま熟成を1.5時間行い、プレポリマーとして固形分濃度が30%の(メタ)アクリル系共重合体溶液を得た。
前記プレポリマー溶液の200mgを採取してGC分析を行ったところ、未反応のGMA−A及びMMAは検出されなかった。また、GPCにより重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定した結果、Mw=35,000、Mn=12,000という結果が得られた。
<(メタ)アクリレート化>
続いて、上記プレポリマー溶液の温度を80℃に調整した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、「MQ」という)0.05部、トリフェニルホスフィン(以下、「TPP」という)1.0部及びMEK9部からなる混合溶液を反応器に添加し、5%酸素窒素混合気を1時間かけて十分にバブリングさせた。その後、アクリル酸(以下、「AA」という)35部とMEK5部からなる混合溶液を10分かけて連続的に供給した。連続供給後、内温を80℃に保ったまま更に30時間反応を継続し、側鎖にアクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体溶液(A−1)が、増粘ゲル化することなく安定に得られた。
(A−1)中の酸価をオートタイトレーター(平沼産業社製;COM−900)で測定したところ、1.5mgKOH/gであり、上記付加反応により原料のAAがほぼ全て消費されたことが確認された。
【0040】
実施例2〜7
プレポリマー合成及び(メタ)アクリレート化における各原料化合物を表1の通りとした以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体溶液(A−2〜A−7)が、いずれも増粘ゲル化することなく安定に得られた。
【0041】
比較例1
プレポリマー合成及び(メタ)アクリレート化における各原料化合物を表2の通りとした以外は実施例1と同様の操作を行い、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体溶液(B−1)を得ようとしたが、(メタ)アクリレート化の途中で反応液が増粘ゲル化した。
【0042】
比較例2
表2に示す原料化合物を用いた以外は実施例1と同様の操作によりプレポリマー合成を行ったが、プレポリマー合成途中で反応液が増粘ゲル化した。
【0043】
比較例3
プレポリマー合成及び(メタ)アクリレート化における各原料化合物を表2の通りとした以外は実施例2と同様の操作を行い、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体溶液(B−3)を得ようとしたが、(メタ)アクリレート化の途中で反応液が増粘ゲル化した。
【0044】
参考例1
プレポリマー合成及び(メタ)アクリレート化における各原料化合物を表2の通りとした以外は実施例1と同様の操作を行うことにより、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体溶液(C−1)が、増粘ゲル化することなく安定に得られた。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表1及び表2で用いた化合物の詳細を以下に示す。
GMA−A:グリシジルメタクリレート(市販品、多官能成分量0.09質量%)
GMA−B:グリシジルメタクリレート(市販品、多官能成分量0.25質量%)
GMA−C:グリシジルメタクリレート(市販品、多官能成分量0.35質量%)
MMA:メチルメタクリレート
BA:ブチルアクリレート
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
【0048】
実施例1〜7では、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体組成物が安定的に得られた。
これに対して、多官能成分の含有量が0.3質量%を超えるエポキシ基含有(メタ)アクリレートを用いた比較例1〜3では、プレポリマー合成又は(メタ)アクリレート化において増粘ゲル化が生じ、目的物を安定に得ることができなかった。
【0049】
また、参考例1では、多官能成分の含有量が0.3質量%を超えるエポキシ基含有(メタ)アクリレートを用いた場合であっても、当該エポキシ基含有(メタ)アクリレートの使用量が30質量部未満の場合には、増粘ゲル化が生じることなく目的物が安定に得られた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、化粧シート、工程離型紙、粘接着剤、塗料、インク、繊維又は紙等のバインダー及びコーティング剤等の材料として有用な、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体組成物を、安定的に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体成分としてエポキシ基含有(メタ)アクリレートを含む共重合体(A)のエポキシ基に、カルボキシル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物(B)を付加させた、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系重合体の製造方法において、
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートが共重合体(A)を構成する全単量体成分を100質量部とした場合に30〜100質量部であり、かつ当該エポキシ基含有(メタ)アクリレート中に含まれる多官能成分量が0.01〜0.3質量%であることを特徴とする(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
【請求項2】
前記エポキシ基含有(メタ)アクリレートがグルシジル(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項1に記載の(メタ)アクリル系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が10000〜200000であることを特徴とする請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル系重合体の製造方法。

【公開番号】特開2013−72050(P2013−72050A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213649(P2011−213649)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】