説明

側鎖ラジカル重合性基含有重合体、製造方法、及び感光性樹脂組成物

【課題】
未硬化部が水または非常に弱いアルカリ性の現像液で現像可能で、かつ基材密着性に優れた感光性樹脂組成物、ならびに該感光性樹脂組成物の原料となる側鎖ラジカル重合性基含有重合体を提供すること。
【解決手段】
(a)アクリロイルモルホリン、(b)不飽和一塩基酸、(c)分子内にアルキレンオキシド鎖を持つ(メタ)アクリレートを必須単量体として重合した共重合体に(d)カルボキシル基と反応し得る官能基とラジカル重合性不飽和結合を同一分子中に持つ化合物を付加した側鎖ラジカル重合性官能基含有共重合体を用いること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は側鎖ラジカル重合性基含有重合体とその製造方法、及び感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂は半導体、LCDやPDP、有機ELに代表されるディスプレイなどのエレクトロニクス製品製造産業、新聞印刷や商業印刷などの印刷産業、光硬化性コーティング剤などの塗料産業、インキ産業などで盛んに用いられ、これら産業の発展に伴い利用分野を広範囲に拡大してきた。具体的用途の主たるものとして、半導体産業ではKrF、ArF、Fレーザー等による微細回路作成など、ディスプレイ産業ではカラーフィルター基板やTFT基板の紫外光での微細加工による画素作成など、印刷産業では樹脂印刷版、可視光を光源とするPS印刷版、可視光や赤外レーザーを光源とするCTP印刷版の画像形成など、塗料産業では紫外線硬化型ハードコート剤など、インキ産業ではスクリーン印刷用インキなどが挙げられる。
【0003】
現在では多品種の感光性樹脂が市販、使用されており、特性は多岐多様にわたっているが、多くの分野では塗布した光硬化性樹脂組成物を、マスクを介するかレーザー光で直描するかの方法で部分的に露光し、非露光部を現像液で除去することによりパターンを形成する方法が用いられている。現像液にもたくさんの種類が存在するが、その多くは強アルカリ水溶液であり、使用済み洗浄液の環境への負荷の多さ、処理コストの高さが課題となっており、これらの観点から大幅な削減が求められているのが現状である。
【0004】
一方、感光性樹脂に求められる特性も多岐にわたっているが、パターン形成能に次いで基本的な性能としてアルミニウム、ガラス、プラスチックなどの各種基材への密着性が挙げられる。とくに高度な精密性が求められるディスプレイ用途や、硬化パターンをそのまま印刷版として用いる印刷産業では高度な基材密着性が求められる。
特許文献1ではアクリロイルモルホリン由来の単量体単位を含み側鎖に(メタ)アクリロイル基を含む感光性樹脂組成物が開示されている。非硬化部の除去を水を現像液として行うことが出来るので、使用済み現像液による環境負荷が低減できることも開示されているが、基材密着性について改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−238122号公報
【特許文献2】特開平9−241328号公報
【特許文献3】特開2002−296775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、上記従来技術の問題に鑑み、未硬化部が水または非常に弱いアルカリ性の現像液で現像可能で、かつ基材密着性に優れた感光性樹脂組成物の創出を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に対し、種々の検討を行った結果、多種の課題を見事に解決し、本発明に係る側鎖ラジカル重合性基含有重合体、その製造方法、及び感光性樹脂組成物を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(a)アクリロイルモルホリン、(b)不飽和一塩基酸、(c)分子内にアルキレンオキシド鎖を持つ(メタ)アクリレートを必須単量体として重合した共重合体に(d)カルボキシル基と反応し得る官能基とラジカル重合性不飽和結合を同一分子中に持つ化合物を付加したことを特徴とする側鎖ラジカル重合性官能基含有共重合体である。
【0009】
また、本発明の側鎖ラジカル重合性官能基含有共重合体は反応器に単量体混合物を2段階以上に分けて導入し、導入される単量体混合物中の(c)分子内にアルキレンオキシド鎖を持つ(メタ)アクリレートの導入される単量体総量に対する重量比率が最大の段階と二番目に大きい段階とで2倍以上で製造されることが好ましい。
【0010】
さらに上述の側鎖ラジカル重合性官能基含有重合体を含む感光性樹脂組成物も本発明である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水、または非常に弱いアルカリ現像液で未硬化部の現像除去が可能で、かつアルミニウム・ガラス・プラスチックなど種々の基材と高い密着性を持つ感光性樹脂組成物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明に関わる側鎖ラジカル重合性官能基含有重合体は(a)アクリロイルモルホリン、(b)不飽和一塩基酸、(c)分子内にアルキレンオキシド鎖を持つ(メタ)アクリレートを必須単量体として重合した共重合体に(d)カルボキシル基と反応し得る官能基とラジカル重合性不飽和結合を同一分子中に持つ化合物を付加したことを特徴とする。
なお、以下、例えば「(a)アクリロイルモルホリンを重合してなる繰り返し単位」を単に「(a)単位」と記載することがある。(b)(c)(d)(e)についても同様である。
【0014】
本発明の側鎖ラジカル重合性官能基含有重合体によれば、水、または非常に弱いアルカリ水溶液で非硬化部を現像除去するために、本発明の重合体は単独重合体が水溶性を示す(a)アクリロイルモルホリンを重合してなる繰り返し単位と、高い親水性を示す(b)不飽和一塩基酸を重合してなる繰り返し単位を必須とする。これらは非硬化部の親水性を飛躍的に向上し、水、または非常に弱いアルカリ水溶液による現像除去が可能になる。
また、本発明では各種基材との密着性を増すために、本発明の重合体は分子内に(c)分子内にアルキレンオキシド鎖を持つ(メタ)アクリレートを重合してなる繰り返し単位を有する。アルキレンオキシド鎖は高い極性を持つため基材表面との相互作用を高くすることができ、密着性が向上する。本発明の重合体は、感光性を持たせるために、(b)不飽和一塩基酸のカルボキシル基に(d)カルボキシル基と反応し得る官能基とラジカル重合性不飽和結合を同一分子中に持つ化合物を付加反応させた構造を持つ必要がある。このため、重合体は側鎖にラジカル重合性不飽和結合を有することになり、適切な光照射により硬化して露光部が不溶化可能となる。(b)の全部または一部を(d)と反応させることが可能であるが、現像性を考慮すると一部のみを反応させることが好ましい。反応後のポリマー酸価については特に規定はないが80〜200mg−KOH/gの範囲にあることが好ましい。90〜160mg−KOH/gがより好ましく、100〜140mg−KOH/gが更に好ましい。
【0015】
また、本発明の重合体は(e)その他の単量体を重合してなる繰り返し単位を含んでもかまわない。(e)は上記(a)〜(d)以外で共重合が可能なものであれば特に制限はなく1種でも2種以上でも構わない。
以下、各成分について詳述する。
【0016】
<(a)アクリロイルモルホリン>
(a)アクリロイルモルホリンは単独重合体が水溶性を示す、非常に親水性の高い単量体である。(a)を重合してなる繰り返し単位を必須として含むことにより共重合体の親水性が向上し、水または非常に弱いアルカリ水溶液現像性が大きく向上する。また、単独重合体のガラス転移温度が145℃と高いため、塗膜のタック感を無くする効果も期待できる。
【0017】
(a)単位の含有量について特に規定はないが、(a)、(b)、(c)、(e)単位の合計量を100重量部としたとき、(a)含有量は5〜80重量部であることが好ましい。10〜60重量部であることがより好ましく、15〜40重量部であれば更に好ましい。含有量が5重量部を下回ると親水性発現の効果がやや低下する恐れがあり、80重量部を超えると親水性が高くなりすぎ硬化部が現像液により膨潤し、パターンが変形する可能性がある。
なお、ここで「(b)単位」の重量とは「(b)単位と、(b)単位と(d)が付加反応してなる単位のうち(b)由来部位」の重量の合計を表す。
【0018】
<(b)不飽和一塩基酸>
(b)不飽和一塩基酸は分子中にひとつのカルボキシル基を持つ単量体である。親水性が高く、またアルカリと反応するので、(b)を重合してなる繰り返し単位を必須として含むことにより、水または非常に弱いアルカリ水溶液現像性が大きく向上する。また(d)成分と反応させて感光性に貢献する側鎖ラジカル重合性二重結合を導入するためにも必須成分である。
【0019】
(b)単位の含有量について特に規定はないが、(a)、(b)、(c)、(e)単位の合計量を100重量部としたとき、(b)含有量は5〜80重量部であることが好ましい。15〜70重量部であることがより好ましく、20〜50重量部であれば更に好ましい。含有量が5重量部を下回ると側鎖ラジカル重合性二重結合の導入量を十分大きくできない可能性があり、80重量部を超えると親水性が高くなりすぎ硬化部が現像液により膨潤し、パターンが変形する可能性がある。なお、ここで「(b)単位」の重量とは「(b)単位と、(b)単位と(d)が付加反応してなる単位のうち(b)由来部位」の重量の合計を表す。
【0020】
(b)の種類については特に限定はなく、公知のものを1種または2種以上使用することが出来る。具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイヒ酸、β−アクリロキシプロピオン酸、1個のヒドロキシル基と1個の(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物との反応物、1個のヒドロキシル基と2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートと二塩基酸無水物との反応物、これらの一塩基酸のカプロラクトン変性物等が挙げられる。中でも好ましいものは、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリロイル基を有するものである。
【0021】
<(c)分子内にアルキレンオキシド鎖を持つ(メタ)アクリレート>
(c)分子内にアルキレンオキシド鎖を持つ(メタ)アクリレートはエステル部位にアルキレンオキシド鎖を持つ化合物で、アルキレン部の炭素鎖長には特に制限はなく、直鎖状でも分岐していても構わない、またアルキレンオキシド部位の繰り返し数にも特に制限はないし、構造中の一部の水素原子が他の構造で置換されていても構わないが、アルキレンオキシド部位がエチレンオキシド、またはプロピレンオキシドであることが好ましい。また、アルキレンオキシド部位の繰り返し数が2〜13であることが好ましく、2〜8であればより好ましく、2〜4であることが更に好ましい。
【0022】
(c)を重合してなる繰り返し単位を必須として含むことにより、基材表面との相互作用を高くすることができ、アルミニウム、ガラス、プラスチックなど各種基材への密着性が向上する。(c)単位に含まれるアルキレンオキシド構造が高い極性を持つためである。
【0023】
(c)単位の含有量について特に規定はないが、(a)、(b)、(c)、(e)単位の合計量を100重量部としたとき、(c)含有量は5〜80重量部であることが好ましい。10〜60重量部であることがより好ましく、15〜50重量部であれば更に好ましい。含有量が5重量部を下回ると密着性向上効果が少なくなる可能性があり、80重量部を超えるとタックが発生するなどの不都合が起こる可能性がある。なお、ここで「(b)単位」の重量とは「(b)単位と、(b)単位と(d)が付加反応してなる単位のうち(b)由来部位」の重量の合計を表す。
【0024】
(c)の種類については特に限定はなく、公知のものを1種または2種以上使用することが出来る。具体例としては2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メチルカルビトール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブチルカルビトール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、等が挙げられる。中でも好ましいのはエチレンオキシ単位の繰り返し数が2または3である(メタ)アクリレートであり、その中でもさらに好ましいものは、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、エトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートである。
<(d)カルボキシル基と反応し得る官能基とラジカル重合性不飽和結合を同一分子中に持つ化合物>
(d)カルボキシル基と反応し得る官能基とラジカル重合性不飽和結合を同一分子中に持つ化合物は同一分子中に、エポキシ基、オキセタン基などのカルボキシル基と反応し得る官能基と(メタ)アクリロイル基、ビニルエステル基などのラジカル重合性不飽和結合を含む化合物である。上記の中でエポキシ基と(メタ)アクリロイル基の両方を持つものが特に好ましい。
【0025】
(d)単位は(a)(b)(c)(e)を重合してなる繰り返し単位を必須として含む重合体のカルボキシル基に付加反応させることによって導入することができる。
【0026】
(d)単位の含有量について特に規定はないが、(a)、(b)、(c)、(e)単位の合計量を100重量部としたとき、(d)含有量は5〜80重量部であることが好ましい。15〜60重量部であることがより好ましく、20〜50重量部であれば更に好ましい。含有量が5重量部を下回ると側鎖ラジカル重合性基導入量が少なくなるため感光性がやや低下する可能性があり、80重量部を超えると高密度な反応性基のため合成時や保存中の安定性が低下する可能性がある。なお、ここで「(b)単位」の重量とは「(b)単位と、(b)単位と(d)が付加反応してなる単位のうち(b)由来部位」の重量の合計を、「(d)単位」の重量とは「(b)単位と(d)が付加反応してなる単位のうち(d)由来部位」の重量を表す。
【0027】
(d)の種類については特に限定はなく、公知のものを1種または2種以上使用することが出来る。具体例としては、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、ビニルシクロヘキセンオキシド、3−エチル−3−(メタ)アクリロキシメチルオキセタン等が挙げられる。中でも好ましいのは(メタ)アクリル酸グリシジルである。
【0028】
<(e)その他の単量体>
本発明の重合体は(e)その他の単量体を重合してなる繰り返し単位を含むことができる。(e)単位を含むことによりガラス転移温度や光線透過率などの諸物性を調整し、耐熱性や耐光性などの物性を付与することも可能である。
【0029】
(e)単位の含有量について特に規定はないが、(a)、(b)、(c)、(e)単位の合計量を100重量部としたとき、(e)含有量は0〜50重量部であることが好ましい。0〜35重量部であることがより好ましく、0〜20重量部であれば更に好ましい。含有量が、50重量部を超えると必須成分の含有量が少なくなり、本発明の効果が十分に得られない可能性がある。なお、ここで「(b)単位」の重量とは「(b)単位と、(b)単位と(d)が付加反応してなる単位のうち(b)由来部位」の重量の合計を表す。
【0030】
(e)の種類については特に限定はなく、公知のものを1種または2種以上使用することが出来る。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、(メタ)アクリル酸トリシクロデセニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、3−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェネチル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル−4−メタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレートアクリルアミド、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレートアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド類;(メタ)アクリロニトリル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブタン酸ビニル等のビニルエステル類、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族化合物;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物類;アクリル酸イソシアナトエチル、アリルイソシアネート等の不飽和イソシアネート類等が挙げられる。中でも好ましいのは(メタ)アクリル酸トリシクロデシル、3−(2H−1,2,3−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェネチル(メタ)アクリレートである。
【0031】
<側鎖ラジカル重合性官能基含有共重合体の製造方法>
本願の重合体は(a)(b)(c)単量体を必須とし、必要に応じ(e)単量体を含む単量体混合物をラジカル共重合して得た共重合体に(d)成分を付加反応させることにより好適に得ることが出来る。上記重合反応においては、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合等が好適であり、これらを組み合わせて重合してもよい。これらの中でも、塊状重合、溶液重合が好ましい。
【0032】
重合開始方法としては熱ラジカル開始、重合開始剤の分解によるラジカル開始等が挙げられるが、重合開始剤の分解によるラジカル開始が好ましい。
上記製造方法における重合工程において、重合開始剤や単量体成分等の重合系内への投入方法としては、例えば、(1)反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に一括、連続、分割、間欠などの方法で投入することによって共重合を行う方法;(2)反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤又と残りの単量体成分を反応容器内に逐次投入することによって共重合を行う方法;(3)反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を逐次投入する方法等が好適である。このような方法の中でも、上記(2)及び(3)の方法がより好ましい。(2)及び(3)の場合、逐次投入方法は連続、分割、間欠などいかなる方法でも構わないし、重合開始剤や単量体成分を溶媒で希釈して投入してもかまわない。
重合開始剤としては、例えば、熱によりラジカルを発生するものであることが好適である。このような重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、ジメチル2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2′−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2′−アゾビス〔N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド〕、2,2′−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2′−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等のアゾ化合物、ジイソブチリルパーオキシド、パーオキシネオデカン酸クミル、パーオキシジカルボン酸ジ−n−プロピル、パーオキシジカルボン酸ジイソプロピル、パーオキシジカルボン酸ジ−sec−ブチル、パーオキシネオデカン酸1,1,3,3−テトラメチルブチル、パーオキシジカルボン酸ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)、パーオキシジカルボン酸ジ(2−エチルヘキシル)、パーオキシネオデカン酸t−ヘキシル、パーオキシネオデカン酸t−ブチル、パーオキシネオヘプタン酸t−ブチル、パーオキシピバリン酸t−ヘキシル、パーオキシピバリン酸t−ブチル、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキシド、ベンゾイル(3−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシアセテート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル4,4−ジ(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキシド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、p−メンタンヒドロパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(1−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロパーオキシド等の有機過酸化物等が好ましい。
【0033】
また重合反応においては、溶媒を用いることが出来る。上記溶媒としては、単量体成分等を溶解することが可能なものであればよく、例えば、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メトキシプロピルアセテート等のエステル類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、エチルベンゼン、o,m,p−キシレン等の芳香族類等が好適であり、これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0034】
ラジカル重合機構により重合する場合、必要に応じて、連鎖移動剤を使用してもよい。重合時に連鎖移動剤を使用すると、分子量分布の増大やゲル化を抑制できる傾向にある。このような連鎖移動剤としては、具体的には、例えば、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸等のメルカプトカルボン酸類;メルカプト酢酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸ステアリル、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)等のメルカプトカルボン酸エステル類;エチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、1,2−ジメルカプトエタン等のアルキルメルカプタン類;2−メルカプトエタノール、4−メルカプト−1−ブタノール等のメルカプトアルコール類;ベンゼンチオール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール、2−ナフタレンチオール等の芳香族メルカプタン類;トリス〔(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル〕イソシアヌレート等のメルカプトイソシアヌレート類;2−ヒドロキシエチルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド等のジスルフィド類;ベンジルジエチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;α−メチルスチレンダイマー等の単量体ダイマー類;四臭化炭素等のハロゲン化アルキル類などが挙げられる。これらの中では、入手性、架橋防止能、重合速度低下の度合いが小さいなどの点で、メルカプトカルボン酸類、メルカプトカルボン酸エステル類、アルキルメルカプタン類、メルカプトアルコール類、芳香族メルカプタン類;メルカプトイソシアヌレート類などのメルカプト基を有する化合物が好ましく、アルキルメルカプタン類、メルカプトカルボン酸類、メルカプトカルボン酸エステル類が最も好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
連鎖移動剤の使用量は、使用する単量体の種類や量、重合温度、重合濃度等の重合条件、目標とする重合体の分子量等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得るには、全単量体成分100部に対して、0〜20部が好ましく、0〜15部がより好ましい。
上記重合における反応温度としては特に規定はないが、重合開始から全単量体が系中に投入されるまでは40℃以上、120℃以下が好ましい。より好ましくは、50℃以上、110℃以下であり、更に好ましくは、60℃以上、105℃以下である。反応時間としては、60分以上、720分以下が好ましい。より好ましくは、120分以上、660分以下であり、更に好ましくは、240分以上、600分以下である。全単量体が系中に投入された後、熟成反応を行って重合率を高める工程を含むことが好ましいが、熟成工程は使用した重合開始剤の半減期の3倍以上、好ましくは5倍以上の時間行うことがより好ましい。時間短縮のため熟成工程の最初または途中から重合温度を高めることも好ましい。この場合、重合開始から全単量体が系中に投入されるまでの温度より15℃以上反応温度を上げることが好ましい。
【0036】
<傾斜重合方法>
前述のとおり、(c)分子内にアルキレンオキシド鎖を持つ(メタ)アクリレート成分を重合してなる繰り返し単位はアルキレンオキシド構造の高い極性の基材表面との相互作用が強く、基材密着性向上に貢献する効果がある。一方で、単純に(c)成分を増やしすぎると他の成分量が減少し、他の物性が低下する恐れがある。(c)単位の組成分布幅を広げる、すなわち、一部の重合体中の(c)単位量を増やし、残りの重合体中の量を減らすと、(c)単位の多い重合体鎖のため基材密着性等の界面性能が向上するが、重合体全体としては(c)以外の単位も多く導入することが出来るため感光性や機械特性などのバルク性能は変化せず、結果としてより物性バランスが向上する。
【0037】
上記、(c)単位の組成分布幅の広い重合体の合成方法として、
反応器に単量体混合物を2段階以上に分けて導入する方法で、導入される単量体混合物中の(c)分子内にアルキレンオキシド鎖を持つ(メタ)アクリレートの導入される単量体総量に対する重量比率が最大の段階と二番目に大きい段階とで2倍以上に設定することが好ましい。言い替えると、下記式(1)を満たすこととなる。
【0038】
max/C2nd ≧ 2 (1)
(Cmaxは各段階で導入される単量体混合物中で、(c)の重量比率が最大の段階の(c)の重量比率を表し、C2ndは各段階で導入される単量体混合物中で、(c)の重量比率が二番目に大きい段階の(c)の重量比率を表す。)
ここで「2段階以上に分けて添加」とはあらかじめ適切な比率に配合した単量体混合物を2つ以上用意しておき、それぞれを異なった時点で系中に投入することを意味する。たとえば、(1)単量体混合物のうち一部を重合開始前から反応器に入れておき、のこり全部を連続、分割、または間欠で投入する方法、(2)重合開始前の反応器には単量体を全く入れず、単量体混合物の一部を連続、分割、または間欠で投入したのち、のこりを同様の手法で投入する方法、(3)上記(1)(2)を併用する方法などが挙げられる。単量体混合物はあらかじめ2つ以上に分割しておくことになるが、分割数の上限には限定はない。
【0039】
(c)成分比率最大の単量体混合物中の(c)成分量は該段階の単量体混合物に対する重量比が30〜90重量%であることが好ましい。40〜90重量%であればより好ましく、50〜90重量%であれば更に好ましい。上記以外の段階の単量体混合物の(c)成分比率は上記の1/2以下であれば特に限定はないが、0〜45重量%が好ましい。5〜35重量%であればより好ましく、10〜30重量%が特に好ましい。
【0040】
(c)成分比率最大の単量体混合物の、重合全体に用いられる単量体に占める割合については特に限定はないが、5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であればより好ましい。5重量%未満であると(c)成分に富んだ重合体が少なくなり十分に密着性向上の効果が高まらない可能性がある。
【0041】
(c)成分比率最大の単量体混合物の重合系への投入時期についても特に限定はないが、他の単量体混合物よりも先に投入されることが好ましい。具体的には重合初期から系中に単量体を入れておく場合は(c)成分比率最大の単量体混合物をあらかじめ入れておき、その後にその他の単量体混合物を投入する、重合初期に系中に単量体を入れておかない場合は(c)成分比率最大の単量体混合物を最初に連続、または不連続に投入し、投入が完了した後、その他の単量体混合物を投入する方法が好ましい。(c)成分比率が少ない単量体混合物を先に投入した場合、重合率が十分高くなっていなければ(c)成分比率最大の単量体混合物を投入した際の系中の(c)成分比率が十分に高くならず、組成分布幅が十分に大きくならない可能性があるからである。
【0042】
また、各単量体混合物中の(c)以外の成分の混合比については特に限定はなく、重合体全体では必須の成分のうち一部がまったく入っていない単量体混合物があっても構わない。
【0043】
<(d)カルボキシル基と反応し得る官能基とラジカル重合性不飽和結合を同一分子中に持つ化合物の付加反応>
上記重合で得られる共重合体への(d)成分の付加反応においては、重合の際に列記した各種溶剤を好適に使用することが出来る。付加反応は、良好な反応速度を確保し、かつゲル化を防ぐために、好ましくは50〜160℃の温度範囲、より好ましくは70〜140℃、さらに好ましくは90〜130℃で行う。
【0044】
また、反応速度を向上するために、適切な付加触媒を用いることも好適である。触媒としてエステル化あるいはエステル交換用塩基性触媒及び酸性触媒を用いることが好ましく、塩基性触媒が副反応が少なく好ましい。塩基性触媒としては、例えば、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン等の3級アミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、テトラメチル尿素等の尿素化合物、テトラメチルグアニジン等のアルキルグアニジン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の3級ホスフィン、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩等を挙げることができる。これらの中では、反応性、取扱い性やハロゲンフリーの点で、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、テトラメチル尿素、トリフェニルホスフィンが好ましい。これらの触媒は、単独で使用しても、2種以上混合して使用してもよい。触媒の使用量としては、ラジカル重合性不飽和結合を導入した本発明の共重合体に対して、0.01〜5.0部、好ましくは0.1〜3.0部となるように用いることが好ましい。
【0045】
上記付加反応において、ゲル化を防ぐために、重合禁止剤を添加し、分子状酸素含有ガスの存在下で行うことが望ましい。分子状酸素含有ガスとしては、通常、窒素等の不活性ガスで希釈された空気或いは酸素ガスが用いられ、反応容器内に吹き込まれる。重合禁止剤としては、ラジカル重合性化合物用の重合禁止剤を用いることができ、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、メトキノン、6−t−ブチル−2,4−キシレノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等のフェノール系禁止剤、有機酸銅塩やフェノチアジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ(TEMPO)、4−ヒドロキシー2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ(4H−TEMPO)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム等を挙げることができる。これらの中では、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウムが好ましい。これらの重合禁止剤は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。重合禁止剤の使用量としては、十分な重合防止効果の確保、及び感光性樹脂組成物としたときに硬化性の点から、ラジカル重合性不飽和結合を導入した本発明の共重合体に対して、0.001〜1.0部、好ましくは0.005〜0.5部となるように用いることが好ましい。
【0046】
<感光性樹脂組成物>
以下に、本発明の側鎖ラジカル重合性基含有重合体を用いた感光性樹脂組成物について説明する。
【0047】
本発明の重合体は、感光性が良く、基材に対する密着性に優れるため各種用途の感光性樹脂組成物の高分子量硬化成分として用いることができる。具体的用途の主たるものとして、半導体産業ではKrF、ArF、Fレーザー等による微細回路作成など、ディスプレイ産業ではカラーフィルター基板やTFT基板の紫外光での微細加工による画素作成など、印刷産業では樹脂印刷版、可視光を光源とするPS印刷版、可視光や赤外レーザーを光源とするCTP印刷版の画像形成など、塗料産業では紫外線硬化型ハードコート剤など、インキ産業ではスクリーン印刷用インキなどが挙げられる。
本発明の感光性樹脂組成物は、本発明の重合体を必須として含み、その他のラジカル重合性化合物、光重合開始剤、溶剤、着色剤、光増感剤、赤外線吸収剤、顔料、染料、無機微粒子、各種表面調整剤などを含むことが出来る。
ラジカル重合性化合物は、電磁波(赤外線、紫外線、X線等)、電子線などの活性エネルギー線の照射等により重合するラジカル重合性不飽和基を有する低分子化合物であり、本発明の感光性樹脂組成物に硬化性を付与する。ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性不飽和基を同一分子内にひとつだけ有する単官能性のラジカル重合性化合物と、2個以上有する多官能性のラジカル重合性化合物に分類することができ、硬化性の点で多官能性のラジカル重合性化合物が好ましい。このようなラジカル重合性化合物は、目的、用途に応じて1種または2種以上を適宜選択すればよい。
【0048】
単官能性のラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸s−アミル、(メタ)アクリル酸t−アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸β−メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸β−エチルグリシジル、(メタ)アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和多価カルボン酸類;コハク酸モノ(2−アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)等の不飽和基とカルボキシル基の間が鎖延長されている不飽和モノカルボン酸類;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和酸無水物類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、メトキシスチレン等の芳香族ビニル類;メチルマレイミド、エチルマレイミド、イソプロピルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、ベンジルマレイミド、ナフチルマレイミドなどのN置換マレイミド類;1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルモルフォリン、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物類;(メタ)アクリル酸イソシアナトエチル、アリルイソシアネート等の不飽和イソシアネート類などが挙げられる。
【0049】
多官能性のラジカル重合性化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFアルキレンオキシドジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン付加ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の多官能ビニルエーテル類;(メタ)アクリル酸2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1−メチル−2−ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸5−ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸6−ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4−ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p−ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル等のビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の多官能アリルエーテル類;(メタ)アクリル酸アリル等のアリル基含有(メタ)アクリル酸エステル類;トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、アルキレンオキシド付加トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等の多官能(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類;トリアリルイソシアヌレート等の多官能アリル基含有イソシアヌレート類;トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の多官能イソシアネートと(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類との反応で得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン等の多官能芳香族ビニル類等が挙げられる。
【0050】
これら多官能性のラジカル重合性化合物の中では、反応性、経済性、入手性などから、多官能(メタ)アクリレート類、多官能ウレタン(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロイル基含有イソシアヌレート類等の、(メタ)アクリロイル基を有する多官能性単量体が好ましく、商品名で例示すると、KAYARAD R−526、NPGDA、PEG400DA、MANDA、R−167、HX−220、HX−620、R−551、R−712、R−604、R−684、GPO−303、TMPTA、THE−330、TPA−320、TPA−330、PET−30、T−1420(T)、DPHA、DPHA−2C、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075(以上、日本化薬製);アロニックスM−203S、M−208、M−211B、M−215、M−220、M−225、M−270、M−240、M−309、M−310、M−321、M−350、M−360、M−370、M−313、M−315、M−325、M−327、M−306、M−305、M−451、M−450、M−408、M−403、M−400、M−402、M−404、M−406、M−405、M−510、M−520(以上、東亞合成製);ライトアクリレート3EG−A、4EG−A、9EG−A、DCP−A、BP−4EA、BP−4PA、HPP−A、PTMGA−250、G201PTMP−A、TMP−6EO−3A、TMP−3EO−A(以上、共栄社化学製)、ライトエステルEG、2EG、3EG、4EG、9EG、G101P、G201P、BP−2EM、BP−6EM、TMP(以上、共栄社化学製)、ビスコート295、300、360、GPT、3PA、400(以上、大阪有機化学工業製)などが挙げられる。
【0051】
本発明のラジカル重合性化合物の分子量は、目的、用途に応じて適宜設定すればよいが、2000以下が粘度が低く取扱い性良好であることから好ましい。
ラジカル重合性化合物の使用量としては、用いるラジカル重合性化合物の種類、目的、用途に応じて適宜設定すればよいが、良好な製版性を得るためには、本発明の側鎖ラジカル重合性基含有重合体100重量部に対し、0〜500重量部であることが好ましい。0〜300重量部であればより好ましく、0〜200重量部であれば更に好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物は、電磁波や電子線などの活性エネルギー線の照射により重合開始ラジカルを発生する光開始剤を含むことができ、1種または2種以上使用できる。また、必要に応じて光増感剤、光ラジカル重合促進剤等を1種または2種以上添加することも好ましい。
【0052】
上記光開始剤としては、具体的には、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシー2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−〔(4−メチルフェニル)メチル〕−1−〔4−(4−モルホリニル)フェニル〕−1−ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテ等のベンゾイン系化合物;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシカルボキニルナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2−トリクロロメチル−5−(2’−ベンゾフリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−〔β−(2’−ベンゾフリル)ビニル〕−1,3,4−オキサジアゾール、4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−フリル−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’ −テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’ −テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2−オクタンジオン,1−〔4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−,1−(O−アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p−ジメチルアミノ安息香酸、p−ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9−フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;等を挙げることができる。
【0053】
上記光ラジカル開始剤とともに、光増感剤や光ラジカル重合促進剤を使用することにより、感度や硬化性を向上できる。このような光増感剤や光ラジカル重合促進剤としては、露光波長に吸収を持つ化合物が使用可能であるが、例えば830nm半導体レーザーを光源とする場合は、波長700nm以上に吸収を持つ赤外吸収色素、カーボンブラック、磁性粉等を使用することができる。上記赤外吸収色素として、シアニン系色素、スクアリウム系色素、クロコニウム系色素、アズレニウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、チオピリリウム系色素、ジチオール金属錯体系色素、アントラキノン系色素、インドアニリン金属錯体系色素、分子間CT色素等が好ましい。これらの色素は、公知の方法によって合成することができる。また、以下のような市販品を用いることもできる。日本化薬株式会社:IR750(アントラキノン系),IR002,IR003(アルミニウム系),IR820(ポリメチン系),IRG022,IRG033(ジインモニウム系),CY−2,CY−4,CY−9,CY−10,CY−20。
【0054】
上記ラジカル重合開始剤の添加量総量としては、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、硬化性、分解物の悪影響、経済性のバランスの点から、本発明の側鎖ラジカル重合性基含共重合体100重量部に対し、0.1〜30重量部、好ましくは0.5〜25重量部、さらに好ましくは1〜20重量部である。
赤外吸収色素の添加量総量としては、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、硬化性、分解物の悪影響、経済性のバランスの点から、上記ラジカル重合開始剤に対し質量で0〜10倍、好ましくは0.05〜5倍、さらに好ましくは0.1〜2倍である。
【0055】
溶剤は、粘度を下げ取扱い性を向上する、乾燥により塗膜を形成する、色材の分散媒とする、等のために使用することができる。溶剤は感光性樹脂組成物中の各成分を溶解、或いは分散できる低粘度の有機溶媒或いは水である。
【0056】
このような溶剤としては、目的、用途に応じて適宜選択すればよく、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール等のモノアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン,ジオキサン等の環状エーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシブタノール等のグリコールモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールモノエーテルのエステル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のアルキルエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、水等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
上記溶剤の使用量としては、目的、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定はないが、本発明の側鎖ラジカル重合性基含有共重合体100重量部に対し、10〜1000重量部が好ましく、20〜400重量部であればより好ましい。
【0057】
着色剤は、本発明の感光性樹脂組成物を着色して、さらに感光性着色樹脂組成物とするものであり、顔料や染料が使用できるが、耐久性の点から顔料(有機顔料、無機顔料)が好ましい。
【0058】
有機顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、多環式顔料(キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、キノフタロン系、金属錯体系、ジケトピロロピロール系等)、染料レーキ系顔料等を使用することができる。無機顔料としては、白色・体質顔料(酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、有彩顔料(黄鉛、カドミニウム系、クロムバーミリオン、ニッケルチタン、クロムチタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、ジンククロメート、鉛丹、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス等)、黒色顔料(カーボンブラック、ボーンブラック、グラファイト、鉄黒、チタンブラック等)、光輝材顔料(パール顔料、アルミ顔料、ブロンズ顔料等)、蛍光顔料(硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム等)を使用することができる。
【0059】
使用できる顔料の色としては黄色、赤色、紫色、青色、緑色、褐色、黒色、白色やアゾ系染料が挙げられる。
【0060】
また、染料としては、例えば、特開2003−270428号公報や特開平9−171108号公報、特開2008−50599号公報等に記載されている染料を使用することができる。
【0061】
上述の着色材は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。上述の着色剤は、目的、用途に応じて、適切な平均粒子径を有するものを使用できるが、特にカラーフィルター用着色レジストのような透明性が要求される場合は、0.1μm以下の小さい平均粒子径が好ましく、塗料などの隠蔽性が必要とされる場合は、0.5μm以上の大きい平均粒子径が好ましい。また、上述の色材は、目的、用途に応じて、ロジン処理、界面活性剤処理、樹脂系分散剤処理、顔料誘導体処理、酸化皮膜処理、シリカコーティング、ワックスコーティングなどの表面処理がなされていてもよい。
【0062】
本発明の感光性樹脂組成物における色材の割合は、目的、用途に応じて、適宜設定すればよいし、着色や分散安定性が不要であれば添加しなくても良い。添加する場合は、着色力と分散安定性のバランスを取る観点から、本発明の側鎖ラジカル重合性基含有共重合体100重量部に対し、3〜250重量部使用するのが好ましい。より好ましくは5〜200重量部、更に好ましくは10〜200重量部である。
【0063】
本発明の感光性樹脂組成物は、各用途の目的や要求特性に応じて、フィラー、本発明の共重合体以外のバインダー樹脂、分散剤、耐熱向上剤、現像助剤、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤、シラン系やアルミニウム系、チタン系などのカップリング剤、キノンジアジド化合物、多価フェノール化合物、カチオン重合性化合物、酸発生剤等の成分が配合されても良い。
【0064】
<実施例>
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り「部」は「重量部」を意味するものとする。
【0065】
実施例1
<樹脂溶液の合成1>
攪拌翼、冷却管と滴下ロートを備えた2Lセパラブルフラスコに、アクリル酸(AA)11.8部、アクリロイルモルホリン(ACMO)8.6部、トリシクロデシルメタクリレート(TCDMA)2.9部、エチルカルビトールアクリレート(ECA)8.1部とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)296.1部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名:パーブチルO、日油製)1.2部を投入して重合を開始した。重合開始10分後から170分かけてAA・73.2部、ACMO・53.5部、TCDMA・17.8部、ECA・50.4部、PGME・122.9部、パーブチルO・2.4部の混合物を連続的に等速で滴下し、その後30分間熟成した。重合開始から滴下終了30分までは系内の温度を90℃に維持した。滴下終了30分後から15分かけて115℃まで昇温し、昇温完了後115℃を維持したまま、さらに90分間反応することにより重合液1を得た。なお、初期仕込みモノマー中のアルキレンオキシド鎖含有アクリレートであるECAの比率は26%、滴下モノマー中のECAの比率は26%であり、その比は1.0である。
重合液1の分析値は以下のとおり。重量平均分子量=6700、数平均分子量=3000、分散度=2.22(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー製HLC−8120GPC))、不揮発分34.4重量%(180℃オーブンで60分加熱残分)、溶液酸価98mg−KOH/g(自動滴定装置(平沼製作所製COM−555))、ポリマー酸価285mg−KOH/g(溶液酸価÷不揮発分で算出)、溶液粘度164mPa・s(B型粘度計)。
【0066】
次いで、この反応液にメタクリル酸グリシジル(GMA)・94.2部、触媒としてトリエチルアミン・1.0部、重合禁止剤としてN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム(商品名:Q−1301、和光純薬製)・0.8部、PGME・54.9部を一括で追加添加し、窒素、酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら115℃を維持したまま、7.5時間反応を継続することで樹脂溶液1を得た。
樹脂溶液1の分析値は以下のとおり。重量平均分子量=10100、数平均分子量=3600、分散度=2.81(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー製HLC−8120GPC))、不揮発分38.6重量%(150℃オーブンで30分加熱残分)、溶液酸価47mg−KOH/g(自動滴定装置(平沼製作所製COM−555))、ポリマー酸価121mg−KOH/g(溶液酸価÷不揮発分で算出)、溶液粘度163mPa・s(B型粘度計)GMA残存量0.04%(ガスクロマトグラフィー、島津製作所製GC−14B)。
【0067】
実施例2
<樹脂溶液の合成2>
攪拌翼、冷却管と滴下ロートを備えた2Lセパラブルフラスコに、アクリル酸(AA)11.8部、エチルカルビトールアクリレート(ECA)19.6部とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)296.1部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名:パーブチルO、日油製)1.2部を投入して重合を開始した。重合開始10分後から170分かけてAA・73.2部、ACMO・62.1部、TCDMA・20.7部、ECA・38.9部、PGME・122.9部、パーブチルO・2.4部の混合物を連続的に等速で滴下し、その後30分間熟成した。重合開始から滴下終了30分までは系内の温度を90℃に維持した。滴下終了30分後から15分かけて115℃まで昇温し、昇温完了後115℃を維持したまま、さらに90分間反応することにより重合液2を得た。なお、初期仕込みモノマー中のアルキレンオキシド鎖含有アクリレートであるECAの比率は62%、滴下モノマー中のECAの比率は20%であり、その比は3.1である。
重合液2の分析値は以下のとおり。重量平均分子量=6800、数平均分子量=3000、分散度=2.29(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー製HLC−8120GPC))、不揮発分34.6重量%(180℃オーブンで60分加熱残分)、溶液酸価98mg−KOH/g(自動滴定装置(平沼製作所製COM−555))、ポリマー酸価283mg−KOH/g(溶液酸価÷不揮発分で算出)、溶液粘度186mPa・s(B型粘度計)。
【0068】
次いで、この反応液にメタクリル酸グリシジル(GMA)・94.2部、触媒としてトリエチルアミン・1.0部、重合禁止剤としてN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム(商品名:Q−1301、和光純薬製)・0.8部、PGME・54.9部を一括で追加添加し、窒素、酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら115℃を維持したまま、7.5時間反応を継続することで樹脂溶液2を得た。
樹脂溶液2の分析値は以下のとおり。重量平均分子量=10300、数平均分子量=3700、分散度=2.79(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー製HLC−8120GPC))、不揮発分39.5重量%(150℃オーブンで30分加熱残分)、溶液酸価45mg−KOH/g(自動滴定装置(平沼製作所製COM−555))、ポリマー酸価115mg−KOH/g(溶液酸価÷不揮発分で算出)、溶液粘度193mPa・s(B型粘度計)、GMA残存量0.10%(ガスクロマトグラフィー、島津製作所製GC−14B)。
【0069】
比較例1
<比較用樹脂溶液の合成1>
攪拌翼、冷却管と滴下ロートを備えた2Lセパラブルフラスコに、アクリル酸(AA)11.8部、アクリロイルモルホリン(ACMO)8.6部、トリシクロデシルメタクリレート(TCDMA)2.9部、ブチルアクリレート(BA)8.1部とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)296.1部を仕込み、窒素雰囲気下にて90℃に昇温した後、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(商品名:パーブチルO、日油製)1.2部を投入して重合を開始した。重合開始10分後から170分かけてAA・73.2部、ACMO・53.5部、TCDMA・17.8部、BA・50.4部、PGME・122.9部、パーブチルO・2.4部の混合物を連続的に等速で滴下し、その後30分間熟成した。重合開始から滴下終了30分までは系内の温度を90℃に維持した。滴下終了30分後から15分かけて115℃まで昇温し、昇温完了後115℃を維持したまま、さらに90分間反応することにより比較用重合液1を得た。
重合液1の分析値は以下のとおり。重量平均分子量=7000、数平均分子量=3100、分散度=2.26(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー製HLC−8120GPC))、不揮発分34.3重量%(180℃オーブンで60分加熱残分)、溶液酸価98mg−KOH/g(自動滴定装置(平沼製作所製COM−555))、ポリマー酸価286mg−KOH/g(溶液酸価÷不揮発分で算出)、溶液粘度157mPa・s(B型粘度計)。
【0070】
次いで、この反応液にメタクリル酸グリシジル(GMA)・94.2部、触媒としてトリエチルアミン・1.0部、重合禁止剤としてN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム(商品名:Q−1301、和光純薬製)・0.8部、PGME・54.9部を一括で追加添加し、窒素、酸素混合ガス(酸素濃度7%)をバブリングしながら115℃を維持したまま、7.5時間反応を継続することで樹脂溶液1を得た。
樹脂溶液1の分析値は以下のとおり。重量平均分子量=10500、数平均分子量=3800、分散度=2.76(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー製HLC−8120GPC))、不揮発分38.5重量%(150℃オーブンで30分加熱残分)、溶液酸価45mg−KOH/g(自動滴定装置(平沼製作所製COM−555))、ポリマー酸価117mg−KOH/g(溶液酸価÷不揮発分で算出)、溶液粘度153mPa・s(B型粘度計)GMA残存量0.08%(ガスクロマトグラフィー、島津製作所製GC−14B)。
【0071】
実施例3
<感光性樹脂組成物の調製>
実施例1で得た樹脂溶液1・100部、光重合開始剤1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン・5部(商品名:イルガキュア184、BASFジャパン製)、赤外線吸収剤・アントラキノン系色素・5部(商品名:IR750、日本化薬製)、溶剤・プロピレングリコールモノメチルエーテル・300部を混合し、感光性樹脂組成物1を得ることができる。
<現像性及び密着性の評価>
感光性樹脂組成物1をアルミニウム基板上にバーコーターにて塗布、100℃で3分間乾燥し、膜厚5μmの塗膜1を得る。塗膜1を波長830nmの半導体レーザーにて直描露光し、水洗現像を行って得られるパターン形状は非常に良好で未露光部の残渣も認められず、現像性も良好である。また、耐刷性能試験を行うと基板とパターンとの密着性は良好である。
【0072】
実施例4
実施例3において樹脂溶液1の代わりに、実施例2で得た樹脂溶液2を用いる以外は同様の操作を行う。結果、パターン形状は非常に良好で未露光部の残渣も認められず、現像性も良好である。また、耐刷性能試験を行うと基板とパターンとの密着性は非常に良好である。
【0073】
比較例2
実施例3において樹脂溶液1の代わりに、比較例1で得た比較用樹脂溶液1を用いる以外は同様の操作を行う。結果、パターン形状は非常に良好で未露光部の残渣も認められず、現像性も良好であった。しかし、耐刷性能試験を行うと基板とパターンとの密着性が不良で早期に剥離が生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アクリロイルモルホリン、
(b)不飽和一塩基酸、
(c)分子内にアルキレンオキシド鎖を持つ(メタ)アクリレートを必須単量体として重合した共重合体に
(d)カルボキシル基と反応し得る官能基とラジカル重合性不飽和結合を同一分子中に持つ化合物を付加したことを特徴とする側鎖ラジカル重合性官能基含有共重合体。
【請求項2】
請求項1記載の側鎖ラジカル重合性官能基含有共重合体の製造方法であって、
反応器に単量体混合物を2段階以上に分けて導入し、
導入される単量体混合物中の(c)分子内にアルキレンオキシド鎖を持つ(メタ)アクリレートの導入される単量体総量に対する重量比率が最大の段階と二番目に大きい段階とで2倍以上であることを特徴とする重合体の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の製造方法により製造された側鎖ラジカル重合性官能基含有共重合体。
【請求項4】
請求項1または3記載の側鎖ラジカル重合性官能基含有重合体を含む感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−229304(P2012−229304A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97215(P2011−97215)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】