説明

偽変造防止機能層を備えた非接触型情報媒体付属冊子

【課題】非接触型情報媒体と内貼り用紙と表紙用部材からなる、非接触型情報媒体付属冊子において、前記非接触型情報媒体の偽変造防止機能を向上させ、かつ、偽変造品を簡便に判断することの出来る、非接触型情報媒体付属冊子を提供する。
【解決手段】少なくとも熱圧により接着形成された非接触型情報媒体と、前記非接触型情報媒体の一方の面に接着剤層を介して接着された内貼り用紙と、前記非接触型情報媒体の他方の面と接着剤層を介して接着された表紙用部材と、から成る非接触型情報媒体付属冊子において、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が加熱により変化する偽変造防止機能層を付与した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、非接触型情報媒体、内貼り用紙、表紙用部材から成る冊子に、偽変造防止機能層を付与した非接触型情報媒体付属冊子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触ICカードや非接触ICタグを用いたシステムが普及する中、例えばパスポートや預貯金通帳等冊子に、非接触ICモジュールとそれに接続されたアンテナからなるICインレットを外装基材で挟み込んで非接触型情報媒体とし、この非接触型情報媒体を、カバークロスなどを用いた表紙用部材に貼り合わせた上で、内貼り用紙と本文用紙を取り付けて装丁した、電子データの記入や印字が可能な非接触型情報媒体付属冊子が開発され公知となっている。
【0003】
その非接触型情報媒体付属冊子の一事例として、例えば、特許文献1(第3−5頁)には、第1の基材シートの上面側に、所定の広さの開口部を有する第2の基材シートが接着されて凹部が形成され、この凹部内にIC チップとこれに接続されたコイルアンテナが備えられ、前記第1の基材シートの下面側に接着剤層が設けられている非接触型情報媒体と、この非接触型情報媒体が裏表紙の内面に貼付されてなる非接触型情報媒体付属冊子が開示されている。
【0004】
非接触型情報媒体付属冊子の1つである電子パスポートを例に取ると、多くの偽造と変造が報告されており、それらの偽変造を防止するため、冊子に偽変造防止機能を付加させることが行なわれている。冊子の偽造を防止するためには一般的に用いられている偽造防止技術を使用することが出来、例えば見る角度によって色が変化するインキ(OVI)や、UVライトに反応するUV蛍光インキなどを印刷したり、用紙自体に特殊な蛍光を発する糸を漉き込んだり、セキュリティスレッドを挿入したりすることも行なわれている。また近年では機械検知によって偽変造を判別するため、例えば特許文献2(第2−4頁)には、可視光および赤外光に対して反射性を有する印刷基材上に、可視光領域では光透過性が高く且つ赤外波長領域では吸収を示す赤外吸収体を含有する赤外吸収層と、赤外波長領域における吸収のない黒色の色素を含有する着色層とを重層した印刷物が開示されている。
【0005】
また、同じくパスポートを例に取ると、名前や顔写真などの個人情報の変造を防止するために、例えばホログラムフィルムのラミネートが施されていたり、レーザーエングレービングによって個人情報を記録してあったりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−42068号公報
【特許文献2】特開2000−6512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上で述べたように、非接触型情報媒体を冊子に貼り付けることで、簡単な方法で非接触型情報媒体付属冊子を製造できるという反面、この非接触型情報媒体を冊子から分離したり、別の偽造品と取り替えたりするといった変造も容易にできてしまうという問
題があった。さらには、このようにして変造が行なわれた場合でも冊子に変造の跡が残りにくく、真贋判定を行なうことが困難であるという問題があった。さらに、このような非接触型情報媒体は、ICカードに代表されるように熱ラミネート方式で製造される事が主流になっている。これは熱可塑性の基材や熱可塑性の接着剤を使用してICチップおよびアンテナを基材間に挟んで成形するものであり、製造が容易である反面、熱をかけることで分離することも可能であるため偽変造の対象になる可能性がある。
【0008】
このような状況に対して、前述したような従来の偽変造防止技術は、基本的には紙幣や有価証券、パスポート冊子など、紙をベースとした印刷物の偽変造を防止するものであり、上記のように非接触型情報媒体を取り代えたりするような変造には効果が少ない。このため、この従来には存在しなかった偽変造を防止するとともに、このような偽変造品を容易に判断できるような偽変造防止技術の開発が必要とされていた。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、非接触型情報媒体と内貼り用紙と表紙用部材からなる、非接触型情報媒体付属冊子において、前記非接触型情報媒体の偽変造防止機能を向上させ、かつ、偽変造品を簡便に判断することの出来る、非接触型情報媒体付属冊子を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、少なくとも熱圧により接着形成された非接触型情報媒体と、前記非接触型情報媒体の一方の面に接着剤層を介して接着された内貼り用紙と、前記非接触型情報媒体の他方の面と接着剤層を介して接着された表紙用部材と、から成る非接触型情報媒体付属冊子において、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が加熱により変化する偽変造防止機能層を付与したことを特徴とする非接触型情報媒体付属冊子である。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記非接型触情報媒体が、2枚以上の基材にICインレットを挟み積層して熱圧により接着形成されているとともに、該基材の少なくとも一方が積層の内側の面に熱可塑性接着剤層を設けた多孔質熱可塑性シートからなることを特徴とする請求項1に記載する非接触型情報媒体付属冊子である。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記偽変造防止機能層が、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が100℃以上の加熱により変化する機能性色材層を、前記内貼り用紙上に設けたものであることを特徴とする請求項1または2に記載する非接触型情報媒体付属冊子である。
【0013】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記偽変造防止機能層が、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が100℃以上の加熱により変化する機能性色材層を、前記内貼り用紙と前記非接触型情報媒体の間に設けたものであることを特徴とする請求項1または2に記載する非接触型情報媒体付属冊子である。
【0014】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記偽変造防止機能層が、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が100℃以上の加熱により変化する機能性色材層を、前記非接触型情報媒体と前記表紙用部材の間に設けたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載する非接触型情報媒体付属冊子である。
【0015】
次に、本発明の請求項6に係る発明は、前記偽変造防止機能層が、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が100℃以上の加熱により変化する前記接着剤層を、前記内貼り用紙と前記非接触型情報媒体との間に設けたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載する非接触型情報媒体付属冊子である。
【0016】
また、本発明の請求項7に係る発明は、前記偽変造防止機能層が、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が100℃以上の加熱により変化する前記接着剤層を、前記表紙用部材と前記非接触型情報媒体との間に設けたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載する非接触型情報媒体付属冊子である。
【0017】
更に、本発明の請求項8に係る発明は、前記偽変造防止機能層が、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が130℃以上の加熱により変化する前記接着層を前記表紙用部材と前記非接触型情報媒体との間に設けるとともに、前記接着剤層として80℃以上130℃未満の範囲で溶融するホットメルト接着剤を使用したものであることを特徴とする、請求項7に記載する非接触型情報媒体付属冊子である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。即ち、請求項1に係る発明によれば、熱圧により加工された非接触型情報媒体を使用した冊子に対し、熱に反応する偽変造防止機能層を付与することによって、加熱によって非接触型情報媒体を分離するといった偽変造を防止することができる。
【0019】
また、請求項2に係る発明は、非接触型情報媒体の構成に係るものであり、多孔質の熱可塑性基材に熱可塑性接着剤を塗布して熱圧により接着することで、簡易な方法で柔軟性と平滑性に優れた非接触型情報媒体を製造することができる。このような構成による非接触型情報媒体は特に熱によって分離される危険性があり、請求項1に示すような偽変造防止機能層を付与する事が重要である。
【0020】
また、請求項3から5に示すように、偽変造防止機能を有する機能性色材層、すなわちインキ層を、内貼り用紙、内貼り用紙と非接触型情報媒体との間、非接触型情報媒体と表紙用部材との間の少なくとも1箇所に付与することができる。機能性色材層を内貼り用紙上に設けた場合は目視によって確認することができる。また、各層の層間に機能性色材層を設けた場合は外部から目視で確認することはできないので、機械検知で真贋判定を行なう必要がある。いずれの場合においても、インキを印刷することにより機能性色材層を形成することが出来るため、例えばパターン上に印刷したり、図柄を印刷したりして意匠性に優れた偽変造防止機能とすることが出来る。
【0021】
また、加熱によって非接触型情報媒体の各層を分離したり、内貼り用紙や表紙用部材を分離するといった偽変造を行なうには、少なくとも100℃以上の熱が必要であるため、100℃以上の熱で反応する材料を用いることで日常の使用に支障を及ぼすことなく、確実に偽変造を防止することが出来る。
【0022】
また、請求項6および7に示すように、偽変造防止機能を内貼り用紙と非接触型情報媒体との間の接着剤層、または非接触型情報媒体と表紙用部材との間の接着剤層に付与することで、印刷等の余計な工程を追加することなく、偽変造防止効果を得ることができる。さらに、表紙用部材と非接触型情報媒体の間の接着層としてホットメルト接着剤を使用した場合には、その溶融温度より高い130℃以上の熱で反応するような材料を使用することで偽変造防止効果を得ることができる。このような場合にはそれぞれの接着剤に前記機能性色材層の色材を混合して使用することによって、偽変造防止機能を持つ接着剤層を容易に形成することが出来る。
【0023】
このような偽変造防止機能を判断する方法としては、大きく分けて目視で判断する方法と機械検知で判断する方法があり、偽変造防止機能層の種類と付与する場所に依存する。まず目視で判断する場合には、請求項3に示すように、内貼り用紙の上に偽変造防止機能
層を設ける必要が有り、その反応も、熱による発色、消色、変色が有効である。次に機械検知で判断する場合には、請求項3に示したものに加え、請求項4から8に示すように、冊子の各層の層間に偽変造防止機能層を設けたもので判断することが出来る。この場合には内貼り用紙や非接触型情報媒体の基材を通して確認することになるため、例えば熱により赤外領域での吸収ピーク波長や吸光度が変化する材料を用いることで実現できる。このように冊子の層間に偽変造防止機能層を設けた場合には外からは目視で確認できないため、偽変造を行なう者が気づきにくく、耐久性にも優れているという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の非接触型情報媒体付属冊子の一実施形態を説明する斜視図。
【図2】本発明に係る、非接触ICインレットの実施形態例を説明する平面図である。
【図3】本発明の非接触型情報媒体、クロスおよび冊子表紙を貼り合せた一実施形態を説明する断面図。
【図4】本発明に係る機能性色材により、偽変造防止機能層を内貼り用紙上に設けた実施形態例を説明する断面図。
【図5】本発明に係る偽変造防止機能層を、内貼り用紙と非接触型情報媒体との間の非接触型情報媒体側に設けた実施形態例を説明する断面図。
【図6】本発明に係る偽変造防止機能層を、内貼り用紙と非接触型情報媒体との間の内貼り用紙側に設けた実施形態例を説明する断面図。
【図7】本発明に係る偽変造防止機能層を、非接触型情報媒体と表紙用部材との間の非接触型情報媒体側に設けた実施形態例を説明する断面図。
【図8】本発明に係る偽変造防止機能層を、非接触型情報媒体と表紙用部材との間の表紙用部材側に設けた実施形態例を説明する断面図。
【図9】本発明に係る偽変造防止機能層を、内貼り用紙と非接触型情報媒体との間の接着剤層に設けた実施形態例を説明する断面図。
【図10】本発明に係る偽変造防止機能層を、非接触型情報媒体と表紙用部材との間のホットメルト接着剤層に設けた実施形態例を説明する断面図。
【図11】本発明に係る偽変造防止機能層を内貼り用紙上に設けたサンプルの、加熱前(a)、及び加熱後(b)の状態を説明する平面図。
【図12】本発明に係る偽変造防止機能を非接触型情報媒体と表紙用部材との間の接着剤に付与したサンプルの、加熱前(a)、及び加熱後(b)の状態を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の非接触型情報媒体付属冊子を、一実施形態に基いて、図面を用いて以下に説明する。
【0026】
本発明の非接触型情報媒体付属冊子は、図1に示す実施形態例のような形状であり、表紙用部材(11)とその内面に貼着する内貼り用紙(12)との間に非接触型情報媒体(
10)を挟み込んで接着され、これに複数の本文用紙(13)が加わったものである。この非接触型情報媒体の一部であるICインレットは、図2に示すように、アンテナシート基材(20)とICチップ(21)とアンテナコイル(22)とから構成される。このICインレットは、例えば図3に示すように、2枚の外装基材(30)の間に挟み込まれることで非接触型情報媒体(10)を構成している。また、偽変造防止機能層を有する本発明の非接触型情報媒体付属冊子は、図4から図10に示すように7種類の場所にそれぞれ該偽変造防止機能層(機能性色材層)(40)や偽変造防止機能層(接着剤層)(41)を設けることで構成することができる。
【0027】
図2に示すICインレットにおいては、アンテナ基材上にエッチング方式やワイヤボンディング方式、印刷アンテナ方式などによってアンテナが形成される。このアンテナに、ICが溶接方式などによって接続される。また、ICチップ(21)とアンテナコイル(22)とアンテナシート基材(20)からなるICインレットは、ICチップ自身の厚みや、アンテナの厚み、ジャンパ線とアンテナの接合部や、アンテナシート基材自体の厚みなどにより、凹凸のあるシートとなっている。このICインレットを外装基材(30)の間に挟んで非接触型情報媒体に加工する際、外観上はこれらの凹凸を無くすことが望ましい。
【0028】
外装基材(30)としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、テレフタル酸/グリコール/1,4シクロヘキサンジメタノール共重合体(PET−G)などだけではなく、多孔質熱可塑性基材を使用することが出来、このような材料は一般にインクジェットやオフセットなどに対する印刷適性を付与した樹脂シート又は合成紙として市販されている。特に、基材に多孔質熱可塑性基材を使用することで柔軟性のある非接触型情報媒体を形成することが可能となり、また、接着剤と良好な密着性を得ることが出来るため加工性に優れている。
【0029】
上記多孔質熱可塑性基材を使用する場合、図3に示すように2枚の外装基材(30)のそれぞれ内側にあたる部分に、あらかじめ熱可塑性の接着剤(33)を塗布してから積層し、熱圧をかけることで接着させ、非接触型情報媒体(10)を得る。ここで使用可能な熱可塑性の接着剤(33)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、エチレン−メタクリル酸共重合体系、ポリエステル系、アクリル系樹脂、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系など、一般的な各種熱可塑性の樹脂を使用することができる。これらの中でも、特に水分に強く、酸素や塩化物イオンの透過を抑制するような塗膜を形成する樹脂、また熱や湿度により劣化ぜず接着部分に剥がれを生じないものを使用する。これらの性能を両立させるために2種類以上の樹脂を混合したり、2層に塗工したりすることも可能である。また、後工程や作業性の面から、塗工が容易で、乾燥後のブロッキングが生じにくく、耐久性の高いものが使用に適する。例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体系の水系エマルジョン接着剤にエポキシ系架橋剤を添加したものや、ポリオレフィン系、アクリル系の接着剤などをグラビアコーターで塗工するなどで好適な性能を得ることが出来る。一方、一般的にポリエステル系の接着剤は湿度による加水分解が生じる可能性があり、エチレン−酢酸ビニル共重合体系接着剤は経時劣化し易いので注意が必要である。また、上記の樹脂を使用してエマルジョンやディスパージョンにした水系のヒートシール剤を用いる場合には、それらのヒートシール剤自体がアンテナ等に悪影響を与えないかについても注意が必要である。
【0030】
また、本発明の非接触型情報媒体付属冊子は、この非接触型情報媒体(10)を表紙用部材(11)と内貼り用紙(12)との間に挟み込んで接着し、冊子形状に加工されたものである。非接触型情報媒体(10)は内貼り用紙(12)と接着剤(31)によって接着されるが、この接着剤は作業性や環境の側面からも水系のエマルジョン接着剤を使用する場合が多く、また、実際には、これまで冊子を製造してきた設備を使用することも多い
ので、布と紙の貼り合わせ用としての接着剤が選ばれてきた。仮に非接触型情報媒体付属冊子に使用する非接触型情報媒体を、一般のICカードに使われるような外装基材、例えばPVCやPET−Gを使用して作成した場合、既存の設備および接着剤で内貼り用紙を接着することはできない上、剛度が高いことによる問題が生じる。このような問題を解決するため、多孔質熱可塑性基材シートを外装用基材として使用することで、様々なタイプの接着剤と良好な密着性を示し、かつ、凹凸が無く、柔軟な非接触型情報媒体付冊子を作成することが出来る。
【0031】
非接触型情報媒体(10)と表紙用部材(11)を接着する際には、体積変化の無い反応硬化型の接着剤を好適に用いることが出来る。仮に体積変化のある乾燥硬化型の接着剤を使用した場合、非接触型情報媒体の一部が凹んでいたとすると、接着剤の使用量が多くなるため乾燥時の体積減少が大きくなり、表紙用部材の外側に凹みが生じてしまうため外観上の問題となる。このような問題を解決するために体積変化の無い接着剤を使用することが望ましく、例えば、2液混合型エポキシ系接着剤、湿気硬化型シリコン系接着剤、1液硬化型ウレタン系接着剤、などが使用できる。また、エチレン‐酢酸ビニル共重合体系、エチレン‐メタクリル酸共重合体、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系など、各種のホットメルト接着剤なども使用可能である。
【0032】
非接触型情報媒体付属冊子は、熱により偽変造されることがあるため、該非接触型情報媒体(10)に偽変造防止機能層(機能性色材層)(40)や偽変造防止機能層(接着剤層)(41)を持たせることが望ましい。そこで、図4から図8に示すように、熱により光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が変化するような機能性色材を用いて該非接触型情報媒体の内貼り用紙(12)、外装基材(30)、表紙用部材(11)、の少なくとも1つに層を設けて、偽変造防止機能層(40)とする。または図9から図10に示すように、内貼り用紙と非接触型情報媒体の間の接着剤層や非接触型情報媒体と表紙用部材の間の接着剤層に機能性色材を混合させることで、偽変造防止機能層(41)とする。機能性色材層を用いる場合、印刷方法を用いることで、絵柄、パターン、文字など、用途に合わせて偽変造防止機能層(40)を付与することが出来る。
【0033】
次に、真贋判定方法は2つに大別できる。1つは目視による判定方法で、図11(a)と(b)に示すように、偽変造防止機能層(40)を加熱することで光の吸収ピーク波長又は特定波長による吸光度を変化させ、発色、消色、変色を現し、可視領域の反応に用いる。この方法を用いて真贋判定する場合は、非接触型情報媒体付属冊子の内貼り用紙(12)上に偽変造防止機能層(40)を設けることが必要である。図11(a)は非接触型情報媒体付属冊子に加熱をして変造する前の状態を表した一例の図で、無色の機能性色材を用いて内貼り用紙上に文字を印刷し、偽変造防止機能層(40)としたものであり、非接触型情報媒体付属冊子を加熱すると偽変造防止機能層に変化が現れ、例えば、図11(b)に示すように文字が着色(42)するため、加熱前後の変化を目視によって真贋判定が行なえる。
【0034】
また、真贋判定方法の、もう1つは機械による判定方法で、図12(a)と(b)に示すように、前記方法と同様に加熱することで偽変造防止機能層(41)に発色、消色、変色の機能の発現をさせる。機械検知による偽変造防止機能層(41)の機能性色材は赤外吸収をするものが適しており、非接触型情報媒体付属冊子の最外装ではなく、内側に機能を持たせることも可能である。図12(a)は非接触型情報媒体付属冊子に加熱をして変造する前の状態を表した一例の図で、無色の機能性色材を混合した接着剤(41)を表紙用部材(11)と非接触型情報媒体(10)との間に設け、偽変造防止機能層(41)としたものである。非接触型情報媒体付属冊子を加熱すると偽変造防止機能層に変化が現れ、例えば、図12(b)に示すように偽変造防止機能層内の赤外吸収する機能性色材が着色(43)し、赤外光を照射した際の吸光度に変化が生じるため、加熱前後の吸光度の変化を機械で検知することで真贋判定が行なえる。
【0035】
熱圧を用いて形成された非接触情報記録媒体を、熱で分離して偽変造を行なうためには、多くの場合において100℃以上の熱を加える必要があるため、本発明において使用する機能性色材も100℃以上で反応する必要がある。特に、ホットメルト接着剤に機能性色材を混ぜることで偽変造防止機能層(41)を設けるときは、ホットメルト接着剤の溶融温度が80℃から130℃程度であることから、130℃以上で反応する機能性色材を選択する必要がある。
【0036】
前記機能性色材の材料はロイコ染料のように一般的に感熱記録材料に用いられるものでよく、例えばフルオラン系化合物、トリアリールメタン系化合物、スピロピラン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、チアジン系化合物、ラクタム系化合物、フルオレン系化合物、ベンゾイルフェノチアジン系化合物、ロイコオーラミン系化合物、トリフェニルメタン系化合物等が挙げられ、その中でも100℃以上または130℃以上の熱をかけることで顕色剤と反応し光の吸収波長に変化を生じる材料が好適に使用可能である。また、本発明で使用する顕色剤は一般に感熱記録紙に用いられているものであればよく、例えば、フェーノール化合物、チオフェノール化合物、チオ尿素誘導体等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明の具体的実施例について、図4(実施例1)、図5(実施例2)を参照して説明する。
【0038】
<実施例1>
[ICインレットの作成]
38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)シートをアンテナシート基材(20)とし、両面にアルミ蒸着とアンテナ状のマスク層の印刷を行い、パターンエッチングによって表面にアンテナコイル(22)と裏面にジャンパ線を形成した。さらに、かしめ接合により、アンテナコイルとジャンパ線を接合し、アンテナコイルの接続端子部にICチップ(21)を溶接した。アンテナコイルの外周は80mm×48mmで、内周は67mm×37mmである。さらに、アンテナコイルの内側を65mm×35mmの大きさで打ち抜いて除去した。さらに、アンテナコイルの外周およびICチップから2mm離れた輪郭を取ってその外側のアンテナシート基材を打ち抜いて除去しICインレットを得た。
【0039】
[非接触型情報媒体の作製]
外装基材(30)として、380μmの合成紙「TESLIN(商標)シート」(PPG
Industry社製)を準備し、このシートの片面に熱可塑性接着剤(33)10μm塗布し、乾燥させてサンプルを作製した後、150mm×200mmのシート2枚に断裁した。この準備した片方の外装基材に、作成した前記ICインレットを配置し、スポット加熱により固定した。さらにもう1枚の外装基材を積層し、スポット加熱により固定した。この積層されたシートを、2枚のSUS板に挟み込み加熱加圧することで接着して非接触型情報媒体(10)を得た。加熱加圧条件は、加熱部温度110℃以上160℃以下、圧力0.49MPa以上2.94MPa以下、処理時間15秒以上120秒以下の間で調整し、最適なものを選択した。
【0040】
[非接触型情報媒体と表紙用部材の貼り合わせ]
冊子表紙用クロスカバー「Enviromate」(ICG/Holliston社製)を非接型情報媒体サイズに断裁し、表紙用部材(11)を得た。湿気硬化型ホットメルト接着剤(32)エスダイン(商品名:積水フーラー社製)をヒートロールコータで溶融させ、20g/mの塗布量で上記表紙用部材(11)に塗工した。ホットメルト接着剤(32)が塗工された表紙用部材(11)に非接触型情報媒体(10)を接着させ、ローラで加圧し、その後エージングした。
【0041】
[偽変造防止機能層を付与した内貼り用紙の作製]
内貼り用紙(12)として、90g/mの上質紙を準備した。この用紙の表側に偽変造防止機能層として、下記組成の偽変造防止インキ(1)を、番手#12のバーコータによって塗工し、機能性色材層(40)を設けた。
(偽変造防止インキ(1)組成)
発色材料: 10質量部
(「カラーフォーマー・グリーン」(山本化成社製)
顕色剤: 10質量部
(「顕色剤 TG−SA」(日本化薬社製)
バインダ: 80質量部
(ポリビニルアルコール5%水溶液)
[非接触型情報媒体冊子の作製]
複数枚の本文用紙と一枚の内貼り用紙(12)を丁合いし、中央をミシンで縫うことで内貼り用紙が最外部に取り付けられた本文用紙(13)を作成した。上記で得られた、表紙用部材(11)が接着された非接触型情報媒体(10)に水系エマルジョン接着剤(31)「SP−2850」(コニシ社製)を20g/mの塗布量で塗工し、上記の内貼り用紙の裏側と接着した。得られた冊子を広げた状態で125mm×180mmに断裁し、偽変造防止機能層を付与した非接触型情報媒体付属冊子を得た。
【0042】
[効果の確認]
得られた非接触型情報媒体付属冊子に160℃の熱を加えることで接着剤層を軟化させ、非接触型情報媒体(10)と内貼り用紙(12)を分離することが出来た。その際、図11(a)、(b)に示すように、内貼り用紙の上に形成した偽変造防止機能層(40)が緑色に発色(42)することを目視で確認することが出来た。このように熱による変造を行なった際にはその変造跡が残るため、発明の効果が確認された。
【0043】
<実施例2>
[ICインレットの作製]
実施例1と同様にしてICインレットを得た。
【0044】
[偽変造防止機能層を付加した非接触型情報媒体の作製]
実施例1と同様にして非接触型情報媒体を作製した。この非接触型情報媒体の基材の片側に下記組成の偽造防止インキ(2)を、番手#12のバーコータによって塗工し、機能性色材層(40)を設けた。
(偽変造防止インキ(2)組成)
発色材料: 10質量部
(「カラーフォーマー・ブラック」(山本化成社製)
顕色剤: 10質量部
(「顕色剤 TG−SA」(日本化薬社製)
バインダ: 80質量部
(ポリビニルアルコール5%水溶液)。
【0045】
[非接触型情報媒体と表紙用部材の貼り合わせ]
実施例1と同様にして非接触型情報媒体(10)と表紙用部材(12)を貼り合せた。
【0046】
[非接触型情報媒体冊子の作製]
実施例1と同様にして、内貼り用紙(12)を丁合いした本文用紙(13)を非接触型情報媒体(10)と貼り合わせ、偽変造防止機能層(40)を付与した非接触型情報媒体付
属冊子を得た。
【0047】
[効果の確認]
得られた非接触型情報媒体付属冊子に160℃の熱を加えることで基材間の接着剤層を軟化させ、2枚の基材を分離させて間に挟まれているICインレットを偽造品と取り替えて非接触型情報媒体付属冊子を変造した。その後、変造した非接触型情報媒体付属冊子と、真正品の非接触型情報媒体付属冊子とについてそれぞれ分光光度計を用いて透過率を測定した。その結果、950nmにおける透過率は、真正品が4.7%であったのに対し、偽造品は1.0%となっており、透過率の違いによる真贋判定が可能である事が確認され、発明の効果が確認された。
【0048】
以上説明した如く、本発明の非接触型情報媒体付属冊子は、熱による偽変造を簡便に判断できるため、既存の非接触型情報媒体付属冊子よりも高いセキュリティ性を備えた冊子として、パスポートや通帳など偽変造機能を必要とするものに対して優れた実用上の効果を発揮する。
【符号の説明】
【0049】
10・・・非接触型情報媒体 11・・・表紙用部材 12・・・内貼り用紙
13・・・本文用紙 20・・・アンテナシート基材 21・・・ICチップ
22・・・アンテナコイル 30・・・外装基材
31・・・接着剤(内貼り用紙用) 32・・・接着剤(表紙用)
33・・・接着剤(外装基材塗布用)
40・・・偽変造防止機能層(機能性色材層)
41・・・偽変造防止機能層(接着剤層)
42・・・加熱後の偽変造防止機能層(機能性色材層)
43・・・加熱後の偽変造防止機能層(接着剤層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも熱圧により接着形成された非接触型情報媒体と、前記非接触型情報媒体の一方の面に接着剤層を介して接着された内貼り用紙と、前記非接触型情報媒体の他方の面と接着剤層を介して接着された表紙用部材と、から成る非接触型情報媒体付属冊子において、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が加熱により変化する偽変造防止機能層を付与したことを特徴とする非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項2】
前記非接型触情報媒体が、2枚以上の基材にICインレットを挟み積層して熱圧により接着形成されているとともに、該基材の少なくとも一方が積層の内側の面に熱可塑性接着剤層を設けた多孔質熱可塑性シートからなることを特徴とする請求項1に記載する非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項3】
前記偽変造防止機能層が、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が100℃以上の加熱により変化する機能性色材層を、前記内貼り用紙上に設けたものであることを特徴とする請求項1または2に記載する非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項4】
前記偽変造防止機能層が、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が100℃以上の加熱により変化する機能性色材層を、前記内貼り用紙と前記非接触型情報媒体の間に設けたものであることを特徴とする請求項1または2に記載する非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項5】
前記偽変造防止機能層が、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が100℃以上の加熱により変化する機能性色材層を、前記非接触型情報媒体と前記表紙用部材の間に設けたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載する非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項6】
前記偽変造防止機能層が、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が100℃以上の加熱により変化する前記接着剤層を、前記内貼り用紙と前記非接触型情報媒体との間に設けたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載する非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項7】
前記偽変造防止機能層が、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が100℃以上の加熱により変化する前記接着剤層を、前記表紙用部材と前記非接触型情報媒体との間に設けたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載する非接触型情報媒体付属冊子。
【請求項8】
前記偽変造防止機能層が、光の吸収ピーク波長又は特定波長における吸光度が130℃以上の加熱により変化する前記接着層を前記表紙用部材と前記非接触型情報媒体との間に設けるとともに、前記接着剤層として80℃以上130℃未満の範囲で溶融するホットメルト接着剤を使用したものであることを特徴とする、請求項7に記載する非接触型情報媒体付属冊子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−110829(P2011−110829A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269877(P2009−269877)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】