説明

偽変造防止用ICラベル

【課題】商品やその包装物に貼り付けて使用するICラベルに内蔵されたICインレットを剥がそうとすると、アンテナが破壊されて使い回すことができなくなり、高いセキュリティ機能を有することで高精度かつ簡便な真贋判定を行うことが出来る、偽変造防止機能を付与したICラベルを提供する。
【解決手段】商品やその包装物に貼り付けて使用する接着剤が設けられたラベル基材に、ICチップに記憶された所定の識別情報をアンテナによって無線で送信するICチップ及びアンテナを有するICインレットを備え、前記ICインレット及びラベル基材に切込み、溶剤発色層、加熱発泡層、及び前記ICインレットの識別番号を印字するナンバリング印字部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品やその包装物に貼り付けて使用する偽造や変造を防止するためのICラベルに関するものであり、ICインレットおよびラベルを商品から剥がして、偽造品や変造品に貼ってしまう不正行為に対する対策機能を付与したICラベル関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高級酒などの比較的高価な商品や電化製品など偽造されては困る物品に、正規品であることを証明するために、商品本体や包装ケース等に封印ラベルを貼り付けることが行われている。しかし、正規物品に貼り付けられている封印ラベルを剥がし、剥がした正規品であることを証明する封印ラベルを偽変造品に貼り付け流通させてしまうと言う不正が発覚している。
【0003】
その様な不正に対応する為に、固有の識別情報が記憶されたICインレットを埋め込み、個々の判別が可能な偽造防止機能を持たせた封印ラベルが提案されている(特許文献1)。また、封印ラベルに感熱発色層を積層させることで、偽変造防止機能を持つ封印ラベルとする技術も提案されている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、上記のようなICインレットに用いられるアンテナは、通常、ポリイミドやポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)など強靭な基材上にアルミニウムや銅をエッチングで設けることから、アンテナを破壊することは難しく、ICインレットを取り出して容易に使い回すことができてしまう。
【0005】
また、一方で、前記封印ラベルは、カラーコピーなどの手段によって封印ラベル自体を容易に偽変造することができる。また溶剤や熱により、正規物品に貼り付けられていた封印ラベルからICインレットのみを取り外し、偽変造した封印ラベルにその取り外したICインレットを貼り付ける不正が発覚している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−150924号公報
【特許文献2】特開2008−268380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解決するものであり、その課題とするところは、商品やその包装物に貼り付けて使用するICラベルに内蔵されたICインレットを剥がそうとすると、アンテナが破壊されて使い回すことができなくなり、高いセキュリティ機能を有することで高精度かつ簡便な真贋判定を行うことが出来る、偽変造防止機能を付与したICラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、商品やその包装物に貼り付けて使用する接着剤が設けられたラベル基材に、ICチップに記憶された所定の識別情報をアンテナによって無線で送信するICチップ及びアンテナを有するICインレットを備え、前記ICインレット及びラベル基材に切込み、溶剤発色層、加熱発泡層、及び前記ICインレットの識別番号を印字するナンバリング印字部を設けた事を特徴とする偽変造防止用ICラベルである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記ICインレットのアンテナが、樹脂バインダー中に、銀、銅、ニッケル、導電性カーボンの単体もしくは複数の粒子及び加熱発泡粒子が分散された導電性ペーストを用い、印刷方式で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の偽変造防止用ICラベルである。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記ラベル基材上にOVD、蛍光材料、蓄光材料、液晶材料層の少なくとも一つを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の偽変造防止用ICラベルである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、偽造品や変造品に、正規物品に貼り付けられていた封印ラベルを剥がして貼り付け流通させてしまう不正行為に対して、ラベルに切込みを入れる事により機械的に剥がす行為に対して破壊が生じ、示した断面概念図である溶剤を用いた化学的に剥がす行為に対しては発色して偽造の痕跡を残し、熱を用いた物理的に剥がす行為に対しては発泡して偽造の痕跡を残し、ICインレットの識別番号を印字するナンバリング印字部と目視により真偽判定が可能なOVD(Optical Variable Device)を設けることにより偽変造を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のICインレットの実施形態を示した断面概念図である。
【図2】本発明のICラベルの実施形態を示した断面概念図である。
【図3】本発明のICラベルに設けられた切込みの一実施形態を示した断面概念図である。
【図4】本発明の溶剤発色機能、加熱発泡機能、ICインレットの識別番号を印字するナンバリング印字機能の設けられた偽変造防止用ICラベル一実施形態を示した断面概念図である。
【図5】本発明のアンテナ機能と加熱発泡機能を持たせた一実施形態を示した断面概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明の実施形態を図を用いて詳細に説明する。図1はICインレット1を示しており、支持体2の上に金属箔や金属薄膜をパターニングしたり、銀などの導電性ペーストの印刷層によりアンテナ3が形成され、そのアンテナ3に電気的接合部5を介してICチップ4が接続されている。
【0014】
支持体2としては、脆性を有するフィルムや紙によって形成されていればよく、例えば、合成樹脂フィルム、高結晶性プラスチック素材を溶液成膜により形成したフィルム、UV硬化型合成樹脂膜をUV硬化乾燥させて成膜したフィルム、上質紙、中質紙、微塗工紙、コート紙、アート紙、キャスト塗被紙、ガラス質の含浸紙、クラフト紙、合成紙など、用途に応じて選定する必要がある。
【0015】
アンテナ3としては、支持体に金属箔をラミネートしたり、支持体に蒸着により金属薄膜を設けた後、パターニングにより形成したり、導電性ペーストを印刷によって形成される。導電性ペーストに用いられる導電性材料としては、銀系が好ましく、バインダーの樹脂、溶剤、銀粉を含みそれらの接触により導電性を得る蒸発乾燥型の銀ペーストがあげられる。
【0016】
ただし、導電性材料としては、銀系に限らず、銅、ニッケルなどの金属粉末、導電性カーボン粉末、導電性繊維、導電性ウィスカーなどをバインダーとともに溶媒に溶解または分散したものも使用できる。このアンテナ3は、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの印刷方法で印刷して形成することができる。また、導電性のインクをプリンタでプリントすることも可能である。
【0017】
ICチップ4は、一例として正方形状で、辺部の長さ寸法が0.5mm、高さ寸法が0.1mmが使用されている。なお、辺部の長さ寸法は、適宜変更可能であり辺部の長さ寸法を、0.05mmから0.5mmの範囲とすることが好ましい。下限である0.05mmは、物理的に回路形成可能な最小サイズである。また、ICチップ4の形状もまた長方形状などのように、適宜変更可能である。この場合も、辺部(長辺部)の長さ寸法を0.05mmから0.5mmの範囲とすることが好ましい。なお、このような寸法のチップは、例えば幅0.4mm、奥行き0.4mm、高さ0.1mm程度という寸法にて、(株)日立製作所のミューチップ(TM)で既に実現されており、技術的にそのようなICチップを量産製造する事が可能である事が周知となっている。また、上記に示したICチップ4は、メモリを備えており、識別IDが記憶されているため、個々を識別することが出来る。
【0018】
電気的接合部5としては、ACPやACF(Anisotropic Condactive Paste/Film:異方性導電ペースト/フィルム)などのような金属粒子と接着剤バインダーから構成され、熱・圧力条件下における接着剤バインダーの硬化により電気的接続が実現されるものが望ましい。
【0019】
また、上記ICインレット1の支持体2、およびアンテナ3に、一定間隔に切り込み17を設ける。これにより、ICラベル6を剥がす際にアンテナ3を破断し易くすることが出来る。
【0020】
このように、切込み付き印刷アンテナを設けたICラベルを用いることにより、被貼付体に貼り付けたICラベルを剥離しようとすると、アンテナが破壊されてICチップからの情報読み出しが正常に行われなくなり、ICラベルの剥離を試みようとした履歴を残すことができる。また同時に、アンテナが破壊されるためにICインレットの使い回しによる偽造を不可能にすることが出来る。
【0021】
図2はICラベルの実施形態を示した断面概念図あり、シート状のラベル基材7の一方の面に、被貼付体に貼り付けるための接着剤層8が設けられ、この接着剤層8と剥離シート9の間に上記ICインレット1が設けられている。またラベル基材7のもう一方の面に、溶剤発色層11を設け、被貼付体の名称などの各種情報が印刷される印刷層10が積層されている。そして、印刷層10の表面にセキュリティ機能層12とナンバリング印字部13が設けられている。
【0022】
ラベル基材7は、脆性を有するフィルムや紙によって形成され、ラベル基材7の材質は、例えば、カオリン、炭酸カルシウムなどの可塑剤を適量混合して脆質化した脆性塩化ビニル、脆性ポリエステルなどの合成樹脂フィルムや、又は、セルロースアセテート、低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイドなどの高結晶性プラスチック素材を溶液成膜により形成したフィルムなどが挙げられる。
【0023】
その他の材質として、UV硬化法合成樹脂又はカオリン、炭酸カルシウムなどの粉体を適量混合したUV硬化型合成樹脂を用い、その樹脂薄膜をUV照射により硬化乾燥させて成膜したフィルムなどが挙げられる。また、合成繊維での不織布、又は、アート紙、コート紙、上質紙などの用紙が挙げられる。
【0024】
このようにラベル基材7自体が脆性を有していることから、被貼付体に貼り付けられた
ラベル基材7を引き剥がそうとした場合、その引き剥がそうとする力により、ラベル基材7を容易に破断させることが出来る。
【0025】
接着剤層8は、その粘着力がJIS Z0237により、8000mN/25mmに設定されているため、ICインレットを被覆した接着層には、被貼付体からラベル基材を剥がそうとした際に、ラベル基材が破断するように、ラベル基材の破断力よりも被貼付体と接着剤との粘着力を強くする必要がある。そのため、接着剤層8としては、JIS Z0237により、粘着力が、8000mN/25mm以上30000mN/25mm以下の強度を持つ材料を選定する必要がある。
【0026】
また、接着剤層8の粘着力はラベル基材の破断強度より大きいことが望まれるが、実際の剥離作業において切り込み等で脆弱化したラベル基材は8000mN/25mm以上の粘着力があれば剥離の痕跡を残すことが出来、被貼付体に貼り付けられたラベル基材7を引き剥がそうとした場合に、ラベル基材7を確実に破断させることができ、かつ、紙基材から構成された印刷によって成形したアンテナ3をも破壊させることができる。
【0027】
また接着剤層8の表面に、上記ICインレット1が設けられているが、これに限ることはなく、ICインレット1表面に接着剤層8を被覆、またはICインレットの表裏に接着剤8を被覆してもよい。この場合、被貼付体からラベル基材7を剥がすと、ICインレット1が被貼付体に残ることも考えられるため、ラベル基材7を剥がそうとすると、ICインレット1を確実に破壊することが望ましく、例えば、ICインレット1に後述するような切り込みを形成することで容易にICインレット1を破壊することが可能となる。
【0028】
剥離シート9としては、紙製又はプラスチック製のシートにシリコン樹脂などの離型剤層がコーティングなどによって積層し形成される。印刷層10としては、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの印刷方法で印刷して形成することが出来ればよく、必要に応じて図柄を印刷することも出来るため、デザイン性にも優れている。
【0029】
溶剤発色層11としては、被貼付体に貼り付けられたICラベル1に使われている接着剤層8を溶解させる溶剤が選定され、水不溶性でかつ有機溶剤に対し可溶性の染料粒子を樹脂バインダー中に体質顔料等と分散状態で保持した構造となっている。溶剤発色層11の色主成分の染料粒子は、水不溶性でかつ有機溶剤に可溶性であれば何れでも使用できるが、ロイコ染料や蛍光増白剤などの染料が優れている。
【0030】
接着剤層8の接着剤は、有機溶剤に対し可溶性を示すため、ICラベル6の剥離を試みる場合、溶解性の弱い有機溶剤(エチルアルコールや除光液として用いられるアセトンなど)や市販のシールはがし液等を用いて、ラベル基材7を被貼付体から破損せずに剥がそうとする。そのため、溶剤発色層11に分散状態で保持した染料が溶剤に反応して溶解し、ラベル基材7に発色として痕跡を残すことが出来る。すなわち、溶剤発色層11は、溶剤発色機能を有するものである。
【0031】
セキュリティ機能層12としては、目視により、又は簡単な機器を用いることにより、真偽判定が可能な材料を用いることが好ましい。このような材料として、例えば、OVD機能材料、蛍光材料若しくは蓄光材料、又は液晶材料などがあげられ、OVD機能材料、蛍光材料若しくは蓄光材料、又は液晶材料の少なくともいずれか一つの材料からなっている。
【0032】
OVD機能材料としては、光の干渉を利用した画像であり、立体画像の表現や見る角度により色が変化するカラーシフトを生じる表示体であって、目視により真偽判定が可能な
媒体である。その中でホログラムや回折格子などのようなOVDとしては、光の干渉縞を微細な凹凸パターンとして平面に記録するレリーフ型や、体積方向に干渉縞を記録する体積型が挙げられる。
【0033】
また、ホログラムや回折格子とは手法が異なるが、光学特性の異なるセラミックスや金属材料の薄膜を積層した多層膜方式や、或いは液晶材料等による見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる材料もその例である。これらOVDは、立体画像やカラーシフトといった独特な印象を与え、また高度な製造技術を要することから、偽造防止の有効な手段と言える。
【0034】
これらOVDの中でも量産性やコストを考慮した場合には、レリーフ型ホログラム(又はレリーフ型回折格子)や多層薄膜方式のものが好ましく、一般にこれらのOVDが広く利用されている。まず、レリーフ型ホログラムについて述べる。このレリーフ型ホログラム又はレリーフ型回折格子は、それぞれホログラム又は回折格子を成す微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のプレス版を用いて量産を行う。すなわち、このプレス版でOVD形成層を加熱・加圧して、微細な凹凸パターンを複製する。
【0035】
OVD形成層は、その回折効率を高めるためのものであり、レリーフ面を構成する高分子材料とは屈折率の異なる材料からなる。用いる材料としては、屈折率の異なるTiO、Si、SiO、Fe、ZnS、などの高屈折率材料や、より反射効果の高いAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au等の金属材料が挙げられ、これらの材料が単独あるいは積層して使用される。これらの材料は真空蒸着法、スパッタリング等の公知の薄膜形成技術にて形成され、その膜厚は用途によって異なるが、0.5〜100nm程度で形成される。なお、ホログラムはICインレット1の通信に影響を及ぼすことがないように、金属蒸着の部分を特定するか、又は非金属蒸着材料による透明ホログラムを用いることが望ましい。
【0036】
さらに、多層薄膜方式について述べる。多層薄膜方式を用いる場合、前述したように、OVD形成層は、異なる光学適性を有する多層薄膜層からなり、金属薄膜、セラミックス薄膜又はそれらを併設してなる複合薄膜として積層形成される。例えば、屈折率の異なる薄膜を積層する場合、高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜を組み合わせても良く、また特定の組み合わせを交互に積層するようにしてもよい。それらの組み合わせにより、所望の多層薄膜を得ることができる。
【0037】
この多層薄膜層は、セラミックスや金属などの材料が用いられ、おおよそ2つ以上の高屈折率材料と屈折率が1.5程度の低屈折率材料を所定の膜厚で積層したものである。以下に、用いられる材料の例を挙げる。先ず、セラミックスとしては、Sb(3.0=屈折率n:以下同じ)、Fe(2.7)、TiO(2.6)、CdS(2.6)、CeO(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl(2.3)、CdO(2.2)、Sb(2.0)、WO(2.0)、SiO(2.0)、Si(2.5)、In(2.0)、PbO(2.6)、Ta(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO(2.0)、MgO(1.6)、SiO(1.5)、MgF(1.4)、CeF(1.6)、CaF(1.3〜1.4)、AlF(1.6)、Al(1.6)、GaO(1.7)等がある。
【0038】
そして、金属単体又は合金の薄膜としては、例えば、Al、Fe、Mg、Zn、Au、Ag、Cr、Ni、Cu、Si等が挙げられる。また、低屈折率の有機ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフロロエチレン(1.35)、ポリメチルメタアクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)等が挙げられる。
【0039】
これらの高屈折率材料、又は30%〜60%透過の金属薄膜から少なくとも一種を選択し、低屈折率材料から少なくとも一種選択し、所定の厚さで交互に積層させる事により、特定の波長の可視光に対する吸収又は反射を示すようになる。なお、金属から構成される薄膜は、構成材料の状態や形成条件などにより、屈折率などの光学特性が変わってくるため、本願では一定の条件における値を示している。
【0040】
上記した各材料から屈折率、反射率、透過率等の光学特性や耐候性、層間密着性などに基づき適宜選択され、薄膜として積層され多層薄膜層を形成する。形成方法は公知の手法を用いることができ、膜厚、成膜速度、積層数、あるいは光学膜厚(=n・d、n:屈折率、d:膜厚)などの制御が可能な、通常の真空蒸着法、スパッタリング法にて形成される。
【0041】
これらOVDを非常に薄い箔状にして、ICラベル6に転写するか、又はラベルに漉き込むか、又は微細化したOVD箔を樹脂バインダー中に分散してインキ化し印刷するかによって、ICラベル6を剥がして再利用することが不可能になる。
【0042】
次に、蛍光材料または蓄光材料として、管理がされているインキ、又は入手が困難な特殊なインキを、ICラベル6に印刷法によって設けることで、目視によって、又は簡易検証器を用いることによって真贋判定が可能となる。例えば、光学的な効果をもたらすものとしては、紫外線や赤外光を照射すると発光するインキや蛍光インキ、蛍光繊維などを印刷したり、紙に漉き込んだりする手法があげられる。
【0043】
描かれた文字やパターンの画像が、ブラックランプ(紫外線)又は赤外線(780nm以上)の照射により発光する。その結果、本来、可視光線(400〜700nm)下で検知されなかった画像が、目視又は受光素子を通じて検証することが可能となり、特に材料限定の特定波長を返すため、簡易検証器での検証が容易で確実となる。蛍光発色部に用いられる材料は、紫外線又は赤外線の照射により色調パターンが変化するものであり、インキ樹脂中に分散する場合、屈折率が当該インキ樹脂と同一又は近似する無色透明のものが好ましい。
【0044】
また、蛍光材料又は蓄光材料として、蛍光体がある。蛍光体には、紫外線発光蛍光体及び赤外線発光蛍光体があり、以下にはその例を挙げる。紫外線蛍光体は紫外線を照射することにより、可視波長領域の光を発光するもので、例えばCaCl:Eu2+、CaWO、ZnO:ZnSiO:Mn、YS:Eu、ZnS:Ag、YVO:Eu、Y:Eu、GdS:Tb、LaS:Tb、YAl12:Ce等がある。これら蛍光体の添加量は、ブラックライトを照射した際の発光が目視で碓認できるか、又は検出器の受光素子にて蛍光が検知可能となるようにする。
【0045】
なお、これらの特殊なインキをラベル基材7の表面上に印刷するか、又はラベル基材7内に抄き込むか、又はその際に全体を星型など特殊な形状にすることで、さらに偽造防止効果が得られると期待できる。
【0046】
また、赤外線発光蛍光体は、赤外線を照射することにより、可視波長領域の光を発光するものと、赤外波長領域の光を発光するものとがある。前者のものとして、例えばYF:YB、Er、ZnS:CuCo等がある。また後者のものとして、例えばLiNd0.9Yb0.112、LiBi0.2Nd0.7Yb0.1412、Nd0.9Yb0.1Nd(MoO、NaNb0.3Yb0.112、Nd0.8Yb0.2Na(WO、Nd0.8Yb0.2Na(Mo0.5WO0.5、Ce0.05Gd0.05Nd0.75Yb0.25Na(W0.7Mo0.3、Nd0.3Yb0.1Al(BO、Nd0.9Yb0.1Al2.7Cr0.
3(BO、Nd0.4、Nd0.8Yb0.2(PO等がある。後者のものは、赤外線の波長800nm近辺の光を照射することにより、980nm〜1020nmに発光スペクトルのピークを有する赤外線を発光する。
インキ中の赤外線発光蛍光体の添加量は、発光が目視で確認できるか、又は検出器の受光素子が蛍光を検出可能となるようにする。
【0047】
そして、液晶材料としては、例えばコレステリック液晶が挙げられる。コレステリック液晶は、螺旋状に配向する液晶で、特定の波長の右又は左の円偏光を反射する偏光分離能を持つ。反射する波長は、螺旋周期のピッチにより決まり、また、円偏光の左右は、螺旋の方向によって決まる。
【0048】
通常の観察光では偏光の左右光が混在しているため画像の確認は出来ないが、偏光フィルタをかざすことによって偏光の一方のみを取り出すことが出来、画像として認識できるものである。つまり、潜像技術と言われるものであり、コレステリック液晶は、反射光が角度により反射波長が変化すため、一見、カラーシフトインキとして用いられ、カモフラージュすることができる。なお、液晶材料としては、コレステリック液晶に限定されるものではなく同様の効果を発揮するものであればよい。
【0049】
このようにセキュリティ機能層12が設けられていることから、被貼付体に貼り付けられたICラベル6を無理に剥がそうとすると、ラベル基材7を破断させることができ、偽造防止効果を発揮することが出来る。また、カラーコピー機による偽変造などの不正行為を防止することも出来、また特殊な光を与えることで検証をより確実かつ迅速に行うこともできる。さらには受光素子を用いることで機械による判定も可能となる。
【0050】
印刷層10の表面に、光学的に読み取り可能な光学識別IDが刻印されたナンバリング印字部17が設けられている。ナンバリング印字部13に用いる光学識別IDとしては、目視も可能な例として単純な英数字などがあり、機械的な読取りの例として1次元バーコード、2次元バーコード、電子透かし等の技術により識別IDが重畳された任意の画像、ドットや記号の配列、などが挙げられる。
【0051】
このナンバリング印字部13は、レーザー刻印などによって形成されるものであり、印刷インキをレーザー照射により飛ばして、その印刷インキを削ることによって文字などを形成するものである。そのため、光学識別IDの改ざん防止効果を向上させることができる。
【0052】
また、このような光学識別IDは、データベース上での光学識別IDと、ICチップ4の識別IDとの関連付けることが出来、その関連付けとして、ICチップ4の識別IDから光学識別IDをデータ変換で生成し、光学識別IDからICチップ4の識別IDをデータ変換で生成する。データ変換の例として、CRCやハッシュなどを含む関数変換、対称暗号化、非対称暗号化、などを用いる事が出来る。このような光学識別IDを用いた場合、目視又は光学的読取装置により、簡便かつ迅速にICラベル6の真正性を確認出来る効果がある。
【0053】
このような光学識別IDを、セキュリティ機能層11が設けられたICラベル6の表面に印刷することにより、すなわち、ナンバリング印字部13とセキュリティ機能層11とをラベル基材(7)の同一面に設けることにより、ICラベル6の写真的なコピーを防止する事の出来る効果がある。
【0054】
このように、ICインレット1による電気的な確認と、セキュリティ機能層11による視覚的な確認との二重のセキュリティ管理を行うことができ、高精度な真贋判定を行うこ
とができる。さらに、セキュリティ管理だけでなく、ICチップ3に各種情報を記憶しておくことにより、物流などのトレーサビリティも出来、貴重品、個人情報などの厳重な管理も可能となる。
【0055】
図3はICラベルに設けられた切込みの一実施形態を示した断面概念図であり、切り込み14から17が形成されることによりさらに破断し易くなる。切り込み14、15の形状は、必要に応じて適宜変更可能であり、直線的でも曲線でもよい。さらに、支持体2にも一定間隔に切り込み17を設けることにより、ICラベル6を剥がすとき、アンテナ3も同時にさらに破断し易くすることが出来る。これにより、切り込み16、17を起点としてラベル基材7及びアンテナ3が切断され、完全に非接触ICラベルとしての機能を破壊することが出来る。
【0056】
また、切り込み17をアンテナ3に設けることなく、支持体2のみに設けることにより、アンテナ3の効率の低下を防止しつつ、アンテナ3を破断し易くすることも可能である。なお、切り込み17をアンテナ3にまで設けることもできる。この場合、アンテナ3をさらに容易に破断することが出来る。
【0057】
さらに、支持体2およびアンテナ3に切り込みを設けることにより、よりアンテナ3を破断しやすくすることが出来、ICチップ4に記憶された情報の読み取み出しが不可能になることがさらに期待できる。
【0058】
図4は本発明の溶剤発色機能、加熱発泡機能、ICインレットの識別番号を印字するナンバリング印字機能の設けられた偽変造防止用ICラベル一実施形態を示した断面概念図であり、図5は発明のアンテナ機能と加熱発泡機能を持たせた一実施形態を示した断面概念図である。熱発泡粒子含有層18は加熱ですることで、接着剤層8の接着剤を軟化させて、ICラベル6を剥がすことを想定しており、加熱されると熱発泡粒子が発泡し、偽変造の痕跡が残ってしまう。熱発泡粒子含有導電性ペースト層19はアンテナ機能と偽変造防止機能を持っており、加熱されると熱発泡粒子が発泡しアンテナ3が破損して通信できなくなる。また熱発泡粒子含有層18を支持体2とアンテナ3の間に積層することで加熱によりアンテナが破損する。
【0059】
その熱発泡性粒子は、熱可塑性のプラスチックの外殻に液状ガスを内包した球状粒子であり、加熱された際に粒子の内圧が増加すると共に、外殻が軟化するため体積膨張を引き起こす。このような発泡粒子には、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルで形成された外殻を有するものが挙げられる。
【0060】
このように、所定の熱をかけることで発泡する熱発泡粒子を偽変造防止機能として用いることで、溶剤を用いた偽変造だけでなく、熱を用い接着剤を溶融してICインレットやラベル基材も取り出して使い回そうとする際に、与えられた熱で粒子が発泡し、アンテナ3に亀裂を生じさせるために使い回しは不可能となり、偽変造を未然に防ぐことが出来る。
【実施例1】
【0061】
ICラベル1の作製:支持体として、脆弱性フィルムの片面に銀ペーストに熱発泡粒子を混合したインキをスクリーン印刷(350メッシュ)にて印刷し、70℃3分間乾燥後に、25℃1週間自然乾燥させ、その周囲に4mm間隔に切り込みを入れて、熱発泡粒子を含有する印刷アンテナを得た。
【0062】
このアンテナに0.4mm角のICチップの2つの端子をACP(異方導電性ペースト)により接合し、ICインレットを得た。得られたICインレットは、ICリーダーライ
ターで読み取りが可能であった。周囲(長さ3mm、深さ1.5mm)、および各角部(長さ7.5mm)やアンテナ設置部分(4mm間隔)に切り込みを設けた厚さ90μmのアート紙からなるラベル基材(幅60mm、長さ39mm)に、溶剤発色性のインキを塗布した。その上に、オフセット印刷により絵柄を印刷した。
【0063】
さらに、紫外線にて発光する蛍光インキをセキュリティ機能層12として印刷した。前記ラベル基材層に12000mN/25mmの粘着力を持つアクリル系の接着剤を塗布し、前記ICインレットを積層形成した。最後に、クラフト紙の片面にポリエチレンをラミネートし、その上にシリコン処理を施したセパレータ(厚さ112μm)を仮粘着して、ICラベル1を作製した。
【0064】
ICラベル2の作製:支持体として脆弱性フィルムの片面に銀ペーストに熱発泡粒子を混合したインキをスクリーン印刷(350メッシュ)にて印刷し、70℃3分間乾燥後に、25℃1週間自然乾燥させ、その周囲に4mm間隔に切り込みを入れて、熱発泡粒子を含有する印刷アンテナを得た。このアンテナに0.4mm角のICチップの2つの端子をACP(異方導電性ペースト)により接合し、ICインレットを得た。得られたICインレットは、ICリーダーライターで読み取りが可能であった。その後はICラベル1と同様の手順でICラベル2を得た。
【0065】
(効果の確認)得られたICラベル1とICラベル2に熱をかけることで接着剤を軟化させ、ICラベルからICインレットを分離することが出来た。作製したICラベルをICリーダーライターで読み取り確認を行なうと、ICラベル1のみ読み取りが不可能であることを確認した。このように熱による偽変造を行なった際には、非接触媒体であるアンテナが破壊されその痕跡が残り、使い回しが不可能となるため、発明の効果が確認された。
【符号の説明】
【0066】
1・・・ICインレット
2・・・支持体
3・・・アンテナ
4・・・ICチップ
5・・・接合部
6・・・ICラベル
7・・・ラベル基材
8・・・接着剤層
9・・・剥離紙
10・・・印刷層
11・・・溶剤発色層
12・・・セキュリティ機能層
13・・・ナンバリング印字部
14・・・切り込み
15・・・切り込み
16・・・切り込み
17・・・切り込み
18・・・熱発泡粒子含有層(偽変造防止機能)
19・・・熱発泡粒子含有導電性ペースト層(アンテナ機能兼偽変造防止機能)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品やその包装物に貼り付けて使用する接着剤が設けられたラベル基材に、ICチップに記憶された所定の識別情報をアンテナによって無線で送信するICチップ及びアンテナを有するICインレットを備え、前記ICインレット及びラベル基材に切込み、溶剤発色層、加熱発泡層、及び前記ICインレットの識別番号を印字するナンバリング印字部を設けた事を特徴とする偽変造防止用ICラベル。
【請求項2】
前記ICインレットのアンテナが、樹脂バインダー中に、銀、銅、ニッケル、導電性カーボンの単体もしくは複数の粒子及び加熱発泡粒子が分散された導電性ペーストを用い、印刷方式で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の偽変造防止用ICラベル。
【請求項3】
前記ラベル基材上にOVD(Optical Variable Device)、蛍光材料、蓄光材料、液晶材料層の少なくとも一つを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の偽変造防止用ICラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−227668(P2011−227668A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96206(P2010−96206)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】