説明

偽装シートおよび偽装材

【課題】高い偽装性能を有するとともに、従来技術品よりも難燃性、展張性および収納性に優れた、航空機、船舶、車輌などを隠蔽する偽装シートを提供する。
【解決手段】難燃化剤を内部または表面に有する繊維からなる糸がメッシュ地を構成し、当該メッシュ地の少なくとも片面の最表層に着色剤を含有する樹脂層を有してなり、当該樹脂層がさらに難燃化剤を含むことを特徴とする偽装シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば航空機、船舶、車輌などを隠蔽する偽装シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、防衛分野の装備として、可視光線、近赤外線、遠赤外線またはレーダーによる探索に対して偽装効果を有する偽装材が採用されている。これら偽装材は、航空機、船舶、車輌などを覆うことにより偵察装置による識別を困難にするために使用されている。この場合、偽装対象物が熱源であるエンジン部を有していたり、使用する場所によっては戦火に巻き込まれる危険性もあるため、偽装材には高い難燃性が要求される。また、複雑な形状の偽装対象物も速やかに覆うことができる高い展張性が要求される。さらに偽装材は、使用の都度運搬したり携帯したりするため収納性が高いことが望まれている。
【0003】
難燃性を付与した従来の偽装材としては、偽装材の表面にある複数の樹脂層の一部にのみ難燃化剤を含ませたものが提案されている(例えば特許文献1)。しかしながら、高い難燃性が得られないといった問題があった。
【0004】
また、従来の偽装材の形態としては、網からなる基材へ草木や葉に擬せたリボン状の偽装部材を複合したものが提案されている(例えば、特許文献2および特許文献3)。しかしながら、この偽装材は、網および偽装部材が対象物の突起などに引っ掛かり、展張しにくいといった問題があった。さらに、偽装部材が嵩張るため、収納性が悪く、持ち運びにくいことも問題であった。
【特許文献1】特許第2999021号公報(請求項1)
【特許文献2】実開平4-57096号公報(実用新案登録請求の範囲、図1)
【特許文献3】特許第2823665号公報(請求項1、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、高い偽装性能を有するとともに、難燃性、展張性および収納性に優れた偽装シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、難燃化剤を内部または表面に有する繊維からなる糸がメッシュ地を構成し、当該メッシュ地の少なくとも片面の最表層に着色剤を含む樹脂層を有してなり、当該樹脂層がさらに難燃化剤を含有することを特徴とする偽装シートである。
【0007】
また本発明は、本発明の偽装シートを有してなることを特徴とする偽装材である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、難燃性、展張性および収納性に優れた偽装シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の偽装シートを構成する糸の繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などの合成繊維や、綿、麻、ウールなどの天然繊維、レーヨンなどの半合成繊維等を採用することができる。
【0010】
本発明の偽装シートにおける繊維は、難燃化剤を含有することが重要である。そうすることで、難燃性を向上させることができる。
【0011】
難燃化剤としては、燐酸エステル類、ホスホン酸類、臭素化ビスフェノール類、ハロゲン系化合物などの有機難燃化剤や三酸化アンチモンや水酸化アルミニウムなどの無機系難燃化剤などを挙げることができる。
【0012】
繊維に難燃化剤を含有させる方法としては例えば、ポリマーの重合時あるいは製糸時に難燃化剤をブレンドさせる方法や、繊維あるいは布帛を形成した後、難燃化剤を浴中吸尽させる方法などがある。
【0013】
また繊維には、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤等の各種添加剤を含有させてもよい。
【0014】
また、本発明の偽装シートは、導電性材料を含むことが好ましい。導電性材料を含むことで、レーダー波を完全に反射することなく、適度に反射あるいは吸収し、レーダー波に対する反射特性を周囲の自然環境の反射特性に近似させることができるので、優れたレーダー偽装性能を得ることができる。
【0015】
導電性材料を本発明の偽装シートに含ませる態様の一例として、本発明の偽装シートを構成する繊維の一部または全部に導電性繊維を採用することができる。導電性繊維としては例えば、炭素繊維や、ステンレス、銅、金、銀、ニッケル、アルミニウム、鉄などの金属繊維や、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などの合成繊維に金属をメッキ、蒸着、溶射するなどして導電性を付与したものを採用することができる。本発明の偽装シートを構成する繊維に対する導電性繊維の含有量としては、5〜70質量%が好ましい。
【0016】
導電性繊維と非導電性繊維とを混用する方法としては、混撚や高圧エアーにより交絡させて両者を含む糸を形成してもよいし、それぞれを別個に糸にしてこれらの糸を併用してもよい。
【0017】
本発明の偽装シートは、前記繊維がメッシュ地を構成してなる。メッシュ地を採用することにより、展張時に偽装対象物の突起などに引っ掛かることなく展張性に優れた偽装シートとすることができる。また、メッシュ地を採用することにより、折りたたみやすくなるので、収納性にも優れた偽装シートとすることができる。
【0018】
メッシュ地としては例えば、アトラス編み、コード編み、斜文織りなどを挙げることができる。
【0019】
また、本発明の偽装シートは、メッシュ地と後述する着色剤を含有する樹脂層との間に金属薄膜層を有することが好ましい。金属薄膜層を設けることにより、シートが航空機、船舶、車輌などから発せられる遠赤外線を遮蔽し、周囲の自然環境に混和させることにより、サーモグラフィーなどの遠赤外線画像装置による探索に対して優れた偽装効果を付与することができる。
【0020】
金属薄膜層を形成する金属としては、チタン、ステンレス、ニッケル、クロム、金、銀、銅、鉄、亜鉛、アルミニウムなどや、これらの合金などを採用することができる。その中でも加工性および遠赤外線偽装性の面からチタン、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、銀から選ばれる少なくとも1種類の金属が好ましい。
【0021】
金属薄膜層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を採用することができ、加工性、金属薄膜層の密着性の面からスパッタリング法が好ましい。
【0022】
金属薄膜層の厚さとしては、0.01〜0.1μmが好ましい。0.01μm以上とすることで、遠赤外線偽装性向上の実効を得ることができる。一方、0.1μm以下とすることで、偽装シートの柔軟性が阻害されるのを防ぐことができる。
【0023】
また、導電性材料を本発明の偽装シートに含ませる他の態様として、メッシュ地と後述する着色剤を含有する樹脂層との間に電子伝導性フィラー等の導電性材料を含有する樹脂層(以下、「導電性材料含有樹脂層」とも呼ぶ。)を有することも好ましい。
【0024】
電子伝導性フィラーとしては例えば、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブなどの炭素質粒子や、炭素繊維や、銀、ニッケルなどの金属粉や、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛などの導電性金属酸化物の単体や、硫酸バリウムなどの絶縁性粒子を芯体にして前記導電性金属酸化物を湿式的に被覆したものや、導電性金属炭化物や、導電性金属窒化物や、導電性金属ホウ化物を挙げることができる。また、電子伝導性フィラーは、一種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
導電性材料含有樹脂層における電子伝導性フィラーの配合量としては、0.5〜30質量%が好ましい。0.5質量%以上とすることで、レーダー波に対する反射特性を周囲の自然環境の反射特性に近似させる実効を得ることができる。一方、導電性材料含有樹脂層に導電性材料を均一に含有させる上では、30質量%以下とすることが好ましい。
【0026】
導電性材料含有樹脂層を形成する樹脂としては例えば、ビニル系、アクリル系、ウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキッド系、ポリスチレン系、フッ素系などの樹脂を挙げることができる。
【0027】
導電性材料含有樹脂層は、導電性材料を混合した樹脂液を、コーティング方式、ディッピング方式、プリント(顔料捺染)方式、噴霧方式、印刷方式などでメッシュ地に塗布し、乾燥して形成することができる。その際、柔軟性ひいては収納性を阻害しないよう、目合い部を樹脂で埋めないことが好ましい。
【0028】
本発明の偽装シートは、メッシュ地の少なくとも片面に着色剤を含有する樹脂層(以下、「着色剤含有樹脂層」とも呼ぶ。)を有する。着色剤含有樹脂層における着色剤により、可視光線や近赤外線に対する偽装性能が向上する。近赤外線カメラに対する偽装効果を得られるようにするには、偽装シートとしての近赤外線反射率が周囲の自然環境に混和するような着色剤を使用することが好ましい。
【0029】
着色剤含有樹脂層に使用される着色剤としては、顔料、染料が挙げられ、無機顔料、有機顔料が好ましい。無機顔料としては例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベンガラなどを主成分とする顔料などを挙げることができ、有機顔料としては例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、スレン顔料、イソインドリン顔料などが挙げることができる。
【0030】
着色剤含有樹脂を形成する樹脂としては例えば、ビニル系、アクリル系、ウレタン系、ポリアミド系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキッド系、ポリスチレン系、フッ素系などの樹脂が挙げられる。これらの中でも、柔軟性および後述する金属薄膜層への接着性の面からウレタン系樹脂が好ましい。
【0031】
本発明の偽装シートは、着色剤含有樹脂層が難燃化剤を含むことが重要である。前述のとおりメッシュ地を構成する糸の繊維が難燃化剤を含有し、さらに、偽装シートの最表層部に位置する着色剤含有樹脂層にも難燃化剤を含有させることで、偽装シート全体の難燃性を向上させることができる。メッシュ地を構成する糸の繊維に難燃化剤を含有させても、偽装シートの最表層部にある着色剤含有樹脂層に難燃化剤が含有されていなければ、偽装シートの難燃性は低下してしまう。また、着色剤含有樹脂層に難燃化剤を含有させても、メッシュ地を構成する糸の繊維に難燃化剤が含有されていなければ、難燃性は低下してしまう。つまり、メッシュ地を構成する繊維と着色剤含有樹脂層の両者に難燃化剤を含まなければ、本発明の効果を奏することはできない。
【0032】
なお、メッシュ地と着色剤含有樹脂層との間に、金属薄膜層や導電性材料含有樹脂層が形成されない場合には、難燃化剤を含有する繊維からなるメッシュ地の上に部分的に形成された着色剤含有樹脂層が難燃化剤を含む態様でも、本発明の効果を奏することができる。
【0033】
着色剤含有樹脂層に含有させる難燃化剤としては、燐酸エステル類、ホスホン酸類、臭素化ビスフェノール類、ハロゲン系化合物などの有機難燃化剤や三酸化アンチモンや水酸化アルミニウムなどの無機系難燃化剤などを挙げることができる。
【0034】
また、導電性材料を本発明の偽装シートに含ませる他の態様として、着色剤含有樹脂層が電子伝導性フィラー等の導電性材料を含有することも好ましい。
【0035】
着色剤含有樹脂層における電子伝導性フィラーとしては、前述の導電性材料含有樹脂層のと同様のものを好ましく採用することができる。
【0036】
また着色剤含有樹脂層における電子伝導性フィラーの配合量としては、前述の導電性材料含有樹脂層におけるのと同様、0.5〜30質量%が好ましい。
【0037】
着色剤含有樹脂層は、着色剤を含む水系樹脂、有機溶剤系樹脂またはエマルジョンを、コーティング方式、プリント(顔料捺染)方式、噴霧方式、印刷方式などでメッシュ地に塗布し、乾燥して形成することができる。その際、柔軟性ひいては収納性を阻害しないよう、目合い部を樹脂で埋めないことが好ましい。その点では、印刷方式、プリント方式が好ましく、特に凸版印刷方式が薄膜形成で意匠性に優れ好ましい。印刷方式においてはインキ組成液が着色剤含有樹脂層の樹脂となり、色剤(顔料、染料)、ビヒクル(油脂、樹脂、溶剤)、補助剤(分散剤、消泡剤、可塑剤など)を適宜組み合わせることができる。
【0038】
着色剤含有樹脂層の厚さとしては、0.5〜10μmが好ましい。0.5μm以上とすることで、メッシュ地を構成する糸の色が透けて見えるのを防ぎ、着色による色を呈することができる。一方、10μm以下とすることで、柔軟性や収納性が低下するのを防ぐことができる
着色剤含有樹脂層は、迷彩模様を呈することが好ましい。そうすることで、可視光偽装性能および近赤外線偽装性能をさらに高めることができる。迷彩模様は、自然環境、すなわち樹木、草、土などに調和した複数色の色相からなる規則的あるいは不規則的な形状の柄模様である。迷彩模様を形成する色は、着色剤含有樹脂における着色剤の選択により得ることができる。また、それぞれの色における着色剤が、近赤外線に対しても異なる反射率を呈する。
【0039】
本発明の偽装シートは、難燃性がJIS A 1322に規定される防炎2級以上を満足することが好ましい。当該基準を満足することで、使用の際、万一偽装シートに炎が着火しても、炎はすぐに鎮火し、燃え広がりを防ぐことができる。
【実施例】
【0040】
[測定方法]
(1)偽装シートの難燃性
JIS A 1322:1966に拠って測定した。
(試験体)
試験体の形状は約30×20cmとした。
試験体の前処理にはA法を採用し、およそ気乾状態の試験体を50±2℃で48時間乾燥し、ついでこれを乾燥用シリカゲルを入れたデシケータ中に24時間放置してから加熱試験を行った。
(加熱試験装置)
加熱試験は、本規定に則った加熱試験装置を用い、容器内で行った。
加熱試験に用いるバーナは、高さ160mm、内径20mmのメッケルバーナを用い、1次空気を混入しないでガスだけを送入した。
加熱試験に用いる燃料は、JIS K 2240に規定された液化石油ガス5号を用いた。
試験体は本規定に則った支持わくにはさみ、たるみのないようにして、加熱試験装置に取り付けた。
(加熱試験)
加熱試験装置の所定の位置にバーナを置き、支持わくを取り付けない状態で、炎の長さが65mmになるように調整した。
バーナの点火には感応コイルを使用し、加熱の終了時には燃料コックを閉じた。
加熱時間は10秒とした。
測定項目として、残炎は、加熱終了時から試験体が炎をあげて燃え続ける時間を測定した。
測定項目として、残じんは、加熱終了時から1分後に無炎燃焼している状態を観察によって判定した。
測定項目として、炭化長は、試験体の加熱面の炭化部分について、支持わくの長手方向の最大長さを測定した。
試験の回数は3回とし、上記の各測定項目について、3回のうちの最大の値を採用し、次の基準にて難燃性の区分付けを行った。
防炎1級:炭化長が5cm以下であり、残炎がなく(大体1秒以下)、かつ、残じんが1分後に存していなかった。
防炎2級:炭化長が10cm以下であり、残炎が5秒以下であり、かつ、残じんが1分後に存していなかった。
防炎3級:炭化長が15cm以下であり、残炎が5秒以下であり、かつ、残じんが1分後に存していなかった。
【0041】
(2)収納性
大きさ80cm×80cmの試料を、タテ方向に二つ折りにし、さらにヨコ方向にも二つ折りにした状態で、最も高くなる部分の厚み(cm)を測定した。
【0042】
(3)展張性
大きさ7m×10mに縫製した試料を軽トラックに2人の人員で展張する際、展張時間が3分以下であった場合を○、3分より長くかかった場合を×と判定した。
【0043】
(4)可視光偽装性
大きさ7m×10mに縫製した試料を軽トラックに展張し、森林を背景に、150mの距離から目視により偽装性を確認した。森林と混和して形状認識がしにくい場合を○と判定し、森林と混和しているがやや形状の判別がつくものを△、森林と混和せず形状認識ができる場合を×と判定した。
【0044】
(5)近赤外線偽装性
大きさ7m×10mに縫製した試料を軽トラックに展張し、森林を背景に、検出波長800〜1200μmの赤外線画像装置を用いて、150mの距離から画像装置に映し出されたコントラストにより偽装性を確認した。森林と混和して、形状認識がしにくい場合を○、森林と混和しているがやや形状の判別がつくものを△、森林と混和せず、形状認識ができる場合を×と判定した。
【0045】
(6)遠赤外線偽装性
大きさ7m×10mに縫製した試料を軽トラックに展張し、森林を背景に、検出波長8〜14μmの赤外線画像装置を用いて、150mの距離から画像装置に映し出されたコントラストにより偽装性を確認した。森林と混和して、形状認識がしにくい場合を○、森林と混和しているがやや形状の判別がつくものを△、森林と混和せず、形状認識ができる場合を×と判定した。
【0046】
(7)レーダー偽装性
大きさ7m×10mに縫製した試料を軽トラックに展張し、周波数9.8GHzのレーダー探索装置を用いてレーダー画像を観察して検知評価を実施した。レーダーにより発見し難いものを○と判定し、発見できる場合を×と判定した。
【0047】
[実施例1]
(基材シート)
繊度110dtex、フィラメント数12本のポリエチレンテレフタレート(PET)マルチフィラメントを用い、トリコット編機にて、フロント組織とバック組織とから構成されるメッシュ目を有するメッシュ編物を得た。このメッシュ編物を常法により精錬し、170℃で熱セットし、基材シートとした。
【0048】
(難燃加工・染色)
上記の基材シートを、液流染色機にてブロモ系難燃化剤5質量%の浴液で難燃加工すると同時に、淡緑色染料で捺染した。
【0049】
(着色剤含有樹脂層)
迷彩の濃緑色用および茶色用として、それぞれ濃緑色顔料と茶色顔料を、ブロモ系難燃化剤を15質量%含有するウレタン樹脂に混合し、凸版印刷機(フレキソ印刷)にて、上記の難燃加工・淡緑色染色を施した基材シートの両面に、淡緑色部分を一部残して、濃緑色の樹脂層および茶色の樹脂層の厚さがそれぞれ3.5μmになるように迷彩プリントを施し、シートの一部に着色剤含有樹脂層を形成して、偽装シートとした。
【0050】
得られた偽装シートは、難燃性が1級(炭化長:3.0cm、残炎:0秒、残じん:0秒)と、非常に優れていた。軽トラックへの展張の際には、軽トラックの突起部に引掛かりがなくスムーズに展張できた。収納性は非常に優れていた。さらに、可視光線、近赤外線偽装性能についても、周囲と混和しており、優れていた。
【0051】
[比較例1]
(基材シート)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0052】
(難燃加工・染色)
上記の基材シートを、実施例1と同様にして、難燃加工すると同時に、淡緑色染料で捺染した。
【0053】
(着色剤含有樹脂層)
ブロモ系難燃化剤含有ウレタン樹脂のかわりにブロモ系難燃化剤を含有しないウレタン樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、上記難燃加工・淡緑色染色を施した基材シートの両面に、着色剤含有樹脂層を形成し、偽装シートを得た。
【0054】
得られた偽装シートは、難燃性試験において全焼してしまい、難燃性が劣っていた。
【0055】
[比較例2]
(基材シート)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0056】
(染色)
上記の基材シートを、液流染色機にて淡緑色染料で捺染した。その際、難燃加工は施さなかった。
【0057】
(着色剤含有樹脂層)
上記の淡緑色染色を施した基材シートの両面に、実施例1と同様にして、着色剤含有樹脂層を形成し、偽装シートを得た。
【0058】
得られた偽装シートは、難燃性が3級(炭化長:13.5cm、残炎:0秒、残じん:0秒)であり、実施例1に比べて劣っていた。
【0059】
[比較例3]
(基材シート)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0060】
(染色)
上記の基材シートを、液流染色機にて淡緑色染料で捺染した。その際、難燃加工は施さなかった。
【0061】
(着色剤含有樹脂層)
ブロモ系難燃化剤含有ウレタン樹脂のかわりにブロモ系難燃化剤を含有しないウレタン樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして、上記淡緑色染色を施した基材シートの両面に、着色剤含有樹脂層を形成し、偽装シートを得た。
【0062】
得られた偽装シートは、難燃性試験において全焼してしまい、難燃性が劣っていた。
【0063】
[実施例2]
(基材シート)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0064】
(難燃加工・染色)
上記の基材シートを、実施例1と同様にして、難燃加工すると同時に、淡緑色染料で捺染した。
【0065】
(金属薄膜層)
上記難燃加工・淡緑色染色を施した基材シートの両面に、アルゴン雰囲気中でアルミニウムのスパッタリング加工を施して、厚さ0.05μmの金属薄膜層を形成した。
【0066】
(着色剤含有樹脂層)
迷彩用の着色剤として各色用にそれぞれ淡緑色顔料、濃緑色顔料および茶色顔料を、ブロモ系難燃化剤を15質量%含有するウレタン樹脂に混合し、凸版印刷機(フレキソ印刷)にて、上記金属薄膜層を形成したシートの両面に、迷彩模様の各色の樹脂層の厚さがそれぞれ3.5μmになるように迷彩プリントを施し、着色剤含有樹脂層を形成して、偽装シートとした。
【0067】
得られた偽装シートは、難燃性が1級(炭化長:3.5cm、残炎:0秒、残じん:0秒)と、非常に優れていた。軽トラックへの展張の際には、軽トラックの突起部に引掛かりがなくスムーズに展張できた。収納性は非常に優れていた。さらに、可視光線、近赤外線、遠赤外線偽装性能についても、周囲と混和しており、優れていた。
【0068】
[実施例3]
(基材シート)
実施例1で用いたのと同様のものを用いた。
【0069】
(難燃加工・染色)
上記の基材シートを、実施例1と同様にして、難燃加工すると同時に、淡緑色染料で捺染した。
【0070】
(金属薄膜層)
上記難燃加工・淡緑色染色を施した基材シートの両面に、アルゴン雰囲気中でアルミニウムのスパッタリング加工を施して、厚さ0.05μmの金属薄膜層を形成した。
【0071】
(導電性樹脂層)
上記の金属薄膜層を形成したシートの片面に、ポリウレタン系導電性樹脂を凹版印刷機(グラビア印刷)でプリントし、厚さ10μmの導電性樹脂層を形成した。
【0072】
(着色剤含有樹脂層)
迷彩用の着色剤として各色用にそれぞれ淡緑色顔料、濃緑色顔料および茶色顔料を、ブロモ系難燃化剤を15質量%含有するウレタン樹脂に混合し、凸版印刷機(フレキソ印刷)にて、上記の導電性樹脂層を形成したシートの両面に、迷彩模様の各色の樹脂層の厚さがそれぞれ3.5μmになるように迷彩プリントを施し、着色剤含有樹脂層を形成して、偽装シートとした。
【0073】
得られた偽装シートは、難燃性が1級(炭化長:3.2cm、残炎:0秒、残じん:0秒)と、非常に優れていた。軽トラックへの展張の際には、軽トラックの突起部に引掛かりがなくスムーズに展張できた。収納性は非常に優れていた。さらに、可視光線、近赤外線、遠赤外線、レーダー偽装性能についても、周囲と混和しており、優れていた。
【0074】
[比較例4]
(基材シート)
繊度84dtex、フィラメント数36本のPETマルチフィラメントを使用して、平織物を得た。得られた平織物を常法により精練し、170℃で熱セットし、タテ密度35本/2.54cm、ヨコ密度36本/2.54cmの平織物を得た。この平織物を基材シートとした。
【0075】
(難燃性樹脂層)
上記基材シートの片面に、ブロモ系難燃化剤を15質量%含有するウレタン樹脂をドクターナイフでコーティングし、厚さ15μmの難燃性樹脂層を形成した。
【0076】
(導電性樹脂層)
上記の難燃性樹脂層を形成したシートの、難燃性樹脂層を形成していない面に、ポリウレタン系導電性樹脂をドクターナイフでコーティングし、厚さ15μmの導電性樹脂層を形成した。
【0077】
(金属薄膜層)
PETフィルム上に、アルゴン雰囲気中でアルミニウムのスパッタリング加工を施して、厚さ0.05μmのアルミニウムを蒸着し、アルミニウム箔を形成した。しかる後、ウレタン接着剤を介して、上記の導電性樹脂層を形成したシートの導電性樹脂層を形成した面に、アルミニウム箔を転写して、金属薄膜層を形成した。
【0078】
(着色剤含有樹脂層)
迷彩用の着色剤として各色用にそれぞれ淡緑色顔料、濃緑色顔料および茶色顔料を、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂に混合し、上記の金属薄膜層を形成したシートの両面に、迷彩模様の各色の樹脂層の厚さがそれぞれ15μmになるようにドクターナイフでコーティングし、着色剤含有樹脂層を形成して、偽装シートとした。
【0079】
得られた偽装シートは、難燃性が2級(炭化長:8.5cm、残炎:0秒、残じん:0秒)であり、実施例1に比べ、難燃性は劣る結果となった。
【0080】
(偽装材)
上記偽装シートを、凹凸深さが0.5〜1.0mmのエンボスロールに通し、葉状の切り込みを入れたシート片に切断して、草木に擬せられる形態とした。そして、総繊度1100dtex、フィラメント数144本のPET繊維からなる網の上に、上記偽装材を金属薄膜層を形成した面が表面側になるように重ねて、10cm間隔で配したPET製のピンにより結合し、メッシュ地を重ねた偽装材を得た。
【0081】
得られた偽装材は、軽トラックへの展張の際には、軽トラックの突起部に偽装部材が引っかかり、実施例1〜3に比べ取り扱い性が劣っていた。収納性も実施例1〜3に比べて劣っていた。
【0082】
各実施例・比較例の評価結果を表に示す。
【0083】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施例1に係る偽装シートの側部断面模式図である。
【図2】本発明の比較例4に係るメッシュ地の編組織図である。
【符号の説明】
【0085】
1 基材シート
2 淡緑色染料
3 ブロモ系難燃化剤
4 濃緑色顔料
5 茶色顔料
6 ブロモ系難燃化剤含有ウレタン樹脂層
7 ループ糸
8 挿入糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃化剤を内部または表面に有する繊維からなる糸がメッシュ地を構成し、当該メッシュ地の少なくとも片面の最表層に着色剤を含有する樹脂層を有してなり、当該樹脂層がさらに難燃化剤を含むことを特徴とする偽装シート。
【請求項2】
前記樹脂層が迷彩模様を呈する、請求項1記載の偽装シート。
【請求項3】
前記樹脂層と前記シートとの間に金属薄膜層を有する、請求項1または2記載の偽装シート。
【請求項4】
導電性材料を含む、請求項1〜3いずれか記載の偽装シート。
【請求項5】
難燃性がJIS A 1322に規定される防炎2級以上を満足する、請求項1〜4いずれか記載の偽装シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の偽装シートを有してなることを特徴とする偽装材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−267760(P2008−267760A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115128(P2007−115128)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】