説明

偽装構造体

【課題】
可視光線、近赤外線に対する偽装性能だけでなく、遠赤外線に対しても優れた偽装性能を有し、防衛技術の分野における航空機、船舶、車輌および個人装具等に用いる偽装構造体を提供する。
【解決手段】
迷彩着色剤含有樹脂層を有する金属薄膜層非含有のリーフ状布帛と、金属薄膜層を有するメッシュ状布帛とを備え、前記リーフ状布帛の一部がメッシュ状布帛に固定されている偽装構造体とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機、船舶、車輌および個人装具等が偵察に対し認知され難くするための偽装構造体に関するものであり、さらに詳しくは、可視光線、近赤外線および遠赤外線領域で優れた偽装効果を発揮する偽装構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、森林や草原等の自然環境に対応した可視光線および近赤外線に対する偽装効果を有する偽装材が種々提案されている。すなわち、偽装材と自然環境のコントラストを最小限に抑える方法、また800〜1400nmの近赤外線を利用して探知する近赤外線写真法、近赤外線監視法等に対応する方法等である。
【0003】
例えば、網やメッシュネットからなる基材に、葉形状に擬せられる偽装部材を複合した偽装材が提案されている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、これらの偽装材は、可視光線、近赤外線に対する偽装効果は認められるが、遠赤外線に対する偽装効果が十分とは言えないのが実状である。
【0004】
また、本発明者らは、布帛表面に金属薄膜層および迷彩着色剤含有樹脂層を形成して葉形状にした偽装部材を、メッシュ状の裏地に接合した偽装材を提案した(特許文献3)。この偽装材は、可視光線および近赤外線偽装性に加え、遠赤外線に対する偽装効果も認められるが、可視光線および近赤外線に対する十分な偽装性を付与するには、金属薄膜層上に形成する迷彩着色剤含有樹脂層の膜厚を厚くする必要があり、一方、膜厚を厚くすると遠赤外線に対する偽装性が低下すると言う問題があった。
【0005】
一方、可視光線や近赤外線偽装性を有する布帛からなる表面層と金属箔を有する反射層とメッシュ状布帛とからなる基材を積層した偽装材が提案されている(特許文献4)。しかしながら、この偽装材は、偽装材の表面が平らであるために、可視光線および近赤外線領域において周囲植生と混和しづらく、十分な偽装性能を得ることが困難であった。
【特許文献1】特許2823665号公報
【特許文献2】特開2003−262497号公報
【特許文献3】特開2003−262498号公報
【特許文献4】特開2004−163019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、可視光線、近赤外線および遠赤外線に対する優れた偽装性能を有する偽装構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、迷彩着色剤含有樹脂層を有する金属薄膜層非含有のリーフ状布帛と、金属薄膜層を有するメッシュ状布帛とを備え、前記リーフ状布帛の一部がメッシュ状布帛に固定されている偽装構造体を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可視光線、近赤外線に対する偽装性能だけでなく、遠赤外線に対しても優れた偽装性能を有する偽装構造体が提供できる。かかる偽装構造体は、防衛技術の分野における航空機、船舶、車輌および個人装具等の偽装材として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明で用いられる、金属薄膜層を有するメッシュ状布帛の一例を示す外観写真で、1は糸条部、2は目合い部である。図2は、本発明で用いられるメッシュ状布帛を構成する編物の一例を示す編組織図で、3はフロント糸、4はバック糸である。また、図3は、本発明で用いられる、迷彩着色剤含有樹脂層を有するリーフ状布帛5の一例を示す外観写真で、図4は、布帛をリーフ状の構造に形成せしめるための切れ目6の一例とメッシュ状布帛への固定位置7の一例を示す模式図である。
【0011】
本発明の偽装構造体は、図1に示すような金属薄膜層を有するメッシュ状布帛に、図3に示した複数色の着色剤含有樹脂を有するリーフ状布帛が取り付けられてなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明で言う迷彩着色剤含有樹脂層を有するリーフ状布帛について説明する。
【0013】
かかるリーフ状布帛とは、リーフ状の構造に形成せしめた布帛を言い、例えば、布帛に円弧状の切れ目を入れ、伸張したり、弛ませたりして形成せしめることができる。布帛としては、織物、編物、不織布が適宜用いられるが、物理的特性の面から織物が好ましく用いられる。布帛を構成する繊維材料としては、ポリエチレンテレフタレートにポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのホモポリエステル、ポリエステルの繰り返し単位を構成する酸成分にイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸またはアジピン酸などを共重合した共重合ポリエステルなどからなるポリエステル繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66成分を共重合した共重合ポリアミドなどからなるポリアミド繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミドやポリメタフェニレンテレフタルアミドに代表される芳香族ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維などの合成繊維や、綿、麻、ウールといった天然繊維、レーヨンなどの半合成繊維などが挙げられる。かかる繊維には、原糸の製造工程や加工工程での生産性あるいは特性改善のために通常使用されている各種添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、平滑剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤などを適宜含有せしめてもよい。
【0014】
また、かかるリーフ状布帛は迷彩着色剤含有樹脂層を有することが必須である。かかる迷彩着色剤含有樹脂層は、自然環境すなわち森林、草原などに調和した色相および近赤外線反射率を有する淡緑色、濃緑色、茶色、黒色等の着色剤含有樹脂を用い、捺染法、コーティング法、印刷法等により、布帛の片面、両面に適宜、形成せしめることができる。また、必要に応じ、迷彩着色剤含有樹脂層を形成せしめる前に、かかる布帛に地染めを施してもよい。かかる着色剤としては、顔料、染料が適宜用いられるが、耐光堅牢度の面から顔料が好ましく用いられる。例えば、無機顔料としては、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベンガラ、カーボンブラックなどを主成分とする顔料などが、有機顔料としては、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、スレン顔料、イソインドリン顔料などが挙げられる。
【0015】
また、迷彩着色剤含有樹脂層の形成に使用される樹脂としては、例えば、ビニル系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキッド系などの樹脂が挙げられる。これらの中でも、柔軟性の面からウレタン系樹脂が好ましい。樹脂は水系であっても溶剤系であってもよい。
【0016】
なお、かかる迷彩着色剤含有樹脂層を有するリーフ状布帛は、同一布帛上に迷彩着色剤含有樹脂層を形成した後、つまり迷彩模様を形成した後、円弧状の切れ目を入れ、伸張したり、弛ませたりして、リーフ状の構造に形成せしめても、また個々の着色剤含有樹脂層を有する布帛を迷彩模様になるように組み合わせて、前記同様に切れ目を入れ、緊張したり、弛ませたりして、リーフ状の構造に形成せしめてもよい
さらに、本発明におけるリーフ状布帛は金属薄膜層を含有していないことが必須である。リーフ状布帛が金属薄膜層を含有していると、着色剤含有樹脂層の発色性が低下し、十分な迷彩色が得られず、可視光線や近赤外線に対する偽装効果が低下する。
【0017】
このように迷彩着色剤含有樹脂層を有し、かつ、金属薄膜層を含有していないリーフ状布帛を採用することにより、可視光線、近赤外線に対して優れた偽装性能が発揮される。
また、必要に応じ、偽装性を阻害しないようにリーフ状布帛を構成する布帛に難燃樹脂層や撥水樹脂層を形成せしめることもできる。
【0018】
次に、本発明で言う金属薄膜層を有するメッシュ状布帛について説明する。
【0019】
かかるメッシュ状布帛とは、空隙部を有する布帛を言い、通常、空隙部を有する織物、編物等が適宜用いられる。また、空隙部は織組織、編組織により形成される。中でも、メッシュ構造および製造性の面から編物が好ましく用いられ、例えばトリコットやラッセルなどの編機により製造される。編組織は、一例としてアトラス編、コード編などが挙げられる。
【0020】
メッシュ状布帛は、ひとつの目合い(空隙)の面積が5〜1000mmであることが好ましく、5〜50mmであることがより好ましい。メッシュによって形成される個々の目合いの面積を5mm以上にすることにより、通気性をよくし、強風によって偽装シートが大きくたなびくのを防ぎ対象物を露出し難くできる。また、個々の目合いの面積を1000mm以下にすることにより、目合いの隙間から対象物が透けて見え難くなり十分な偽装性能を確保できることに加え、展張の際に対象物の突起部に偽装構造体が引っ掛かり難くなり展張し易くなる。
【0021】
メッシュ状布帛の空隙率は、10〜70%の範囲であることが好ましく、30%以上であることがより好ましい。空隙率を10%以上とすることにより、通気性をよくし、強風によって偽装構造体が大きく棚引くのを防ぎ対象物を露出し難くできることに加え、偽装構造体の重量を軽量化でき、運搬性および展張性が改善できる。また、空隙率を70%以下にすることで、偽装構造体としての強度が向上し、十分な耐久性が得られる。
【0022】
かかるメッシュ状布帛を構成する繊維材料としては、前記リーフ状布帛を構成する繊維材料が適宜使用できる。
【0023】
また、かかるメッシュ状布帛は、メッシュ状布帛を構成する繊維の一部が導電性繊維であること、またはメッシュ状布帛を構成する繊維(糸条部)の表面に導電樹脂層が形成されていることが好ましい。これは、レーダー波に対する偽装効果を発揮させるためである。
【0024】
かかる導電性繊維としては、炭素繊維、あるいはステンレス、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄などの金属繊維のような繊維の1種または2種以上が用いられる。また、ポリエステル繊維やポリアミド繊維などの合成繊維などのようにそれ自身は導電性を全く有していないか、あるいは殆ど有していない繊維に対して金属をメッキ、蒸着、溶射するなどして導電性を付与した繊維を用いても良い。アクリル繊維に金属銅を染色吸尽させた日本蚕毛染色(株)のサンダーロン(登録商標)も使用できる。導電性繊維を含ませる方法としては、導電性繊維と非導電性繊維とを混撚や高圧エアーにより交絡させた繊維により布帛を作製する他、導電性繊維と非導電性繊維を個々にビームに巻いて布帛を作製してもよい。一方、導電樹脂層を形成する場合は、たとえばカーボンなどの導電性化合物をウレタン樹脂などの樹脂に混練し、メッシュ状布帛の上に塗布し、形成せしめればよい。
【0025】
本発明で言うメッシュ状布帛は、金属薄膜層を有していることが必須である。メッシュ状布帛の表面に金属薄膜層を設けることにより、偽装構造体から発する遠赤外線放射エネルギー(熱放射率)を抑制し、つまり自然環境の有する遠赤外線放射エネルギーに近似させることにより、遠赤外線探知装置に対して優れた偽装性能を付与することができる。
【0026】
かかる金属薄膜層を形成する金属としては、チタン、ステンレス、ニッケル、クロム、金、銀、銅、鉄、亜鉛、アルミニウムなどや、これらの合金などが適宜使用される。その中でも加工性および遠赤外線偽装性の面からチタン、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、銀から選ばれる少なくとも1種類の金属が好ましい。かかる金属薄膜層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などにより形成されるが、加工性、金属層の密着性の面からスパッタリング法が好ましく用いられる。メッシュ状布帛表面における金属薄膜層の厚さは、偽装構造体の柔軟性と遠赤外線偽装性の点から0.01〜0.1μmであることが好ましい。0.01μm以上にすることにより、遠赤外線偽装性が発揮され、0.1μm以下にすることで柔軟性を維持させる。また、必要に応じ、メッシュ状布帛を自然環境に調和した染料を用い、浸染または捺染した後、片面に金属薄膜層を形成せしめてもよい。
【0027】
また、金属薄膜層の光沢を抑制する面から、金属薄膜層の表面に着色剤含有樹脂層を形成することがさらに好ましい。金属薄膜層の表面に着色剤含有樹脂層を形成することにより、可視光線、近赤外線に対する偽装性が向上する。この場合は、メッシュ状布帛の光沢、柔軟性および遠赤外線偽装の面から、着色剤含有樹脂層は0.5〜10μmであることが好ましい。0.5μm以上にすることにより、光沢が減少し、10μm以下にすることで柔軟性および遠赤外線偽装性が維持できる。かかる着色剤含有樹脂層の形成に使用される着色剤および樹脂としては、前記迷彩着色剤含有樹脂層の形成に使用される顔料、染料および樹脂が適宜用いることができる。
【0028】
本発明の偽装構造体は、前記迷彩着色剤含有樹脂層を有するリーフ状布帛を、前記金属薄膜層を有するメッシュ状布帛に、糸縫製、接着剤、熱融着および樹脂製バンド(インシュロック)等により、部分的に固定して取り付けられ作製される。すなわち、リーフ状布帛の全面をメッシュ状布帛に固定するのではなく、リーフ状布帛の一部をメッシュ状布帛に固定するので、リーフ状布帛の葉形状を維持することができ、かつ立体的構造が保たれるので、植生と混和した偽装構造体が得られる。
【0029】
かかる偽装構造体は、航空機、船舶、車輌および個人装具等に好ましく用いられる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明する。なお、本実施例中における特性は、下記方法により求めた。
【0031】
A.メッシュ状布帛の空隙率とメッシュのひとつの目合いの面積
メッシュ状布帛の空隙率は、偽装構造体を形成するメッシュ状布帛に外形寸法5cm角のマークを入れる。次いで、この5cm角を引っ張ることなく複写機により経緯ともに4倍に拡大した後、その複写像中にあるメッシュ状布帛の目合いの全ての面積A(cm)を1mm方眼紙によって測定し、この面積Aの総面積である400cmに対する比率を算出したものである。また、メッシュのひとつの目合いの面積は、前述の面積Aを測定したメッシュのうち、視野外にはみ出して切れているものを除いたものの平均値による。なお、測定試料は、メッシュ状布帛を幅方向に10等分し、それぞれについて前記方法により空隙率およびひとつの目合いの面積を求め、平均値を算出した。
【0032】
B.可視光線偽装
大きさ7m×10mに作製した偽装構造体を軽トラックに展張し、森林を背景に、目視により150mの距離から偽装性を確認した。森林と混和して形状認識がしにくい場合を○と判定し、森林と混和しているがやや形状の判別がつくものを△、森林と混和せず形状認識ができる場合を×と判定した。
【0033】
C.近赤外線偽装
大きさ7m×10mに作製した偽装構造体を軽トラックに展張し、森林を背景に、検出波長800〜1400nmの近赤外線画像装置を用いて、150mの距離から画像装置に映し出されたコントラストより偽装性を確認した。森林と混和して、形状認識がしにくい場合を○、森林と混和しているがやや形状の判別がつくものを△、森林と混和せず、形状認識ができる場合を×と判定した。
【0034】
D.遠赤外線偽装性
大きさ7m×10mに作製した試料を軽トラックに展張し、森林を背景に、検出波長8〜14μmの遠赤外線画像装置を用いて、150mの距離から画像装置に映し出されたコントラストより偽装性を確認した。森林と混和して、形状認識がしにくい場合を○、森林と混和しているがやや形状の判別がつくものを△、森林と混和せず、形状認識ができる場合を×と判定した。
【0035】
E.レーダー偽装性
大きさ7m×10mに作製した偽装構造体を軽トラックに展張し、9.8GHzのレーダー解析装置を用いて、レーダー画像を観察して検知評価を実施した。レーダーにより発見し難いものを○と判定し、発見できる場合を×と判定した。
【0036】
[実施例1]
(リーフ状布帛)
総繊度560dtex、フィラメント数96本のポリエステル繊維からなる目付185g/mの平織物を常法により、精練、中間セットした後、淡緑色に調整した分散染料の染浴にて染色し、仕上げセットを施した。次いで、この平織物の片面に、森林、草原などの自然環境と同系の淡緑色の顔料と塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂とメチルエチルケトンからなるコーティング処理液を用い、15g/mになるようにナイフコートを施した。また、この仕上げセットを施した平織物を用い、同様に、濃緑色、茶色の顔料についてもナイフコートを施した。なお、金属薄膜層は含有していない。
【0037】
(メッシュ状布帛)
総繊度830dtex、フィラメント数96本のポリエステル繊維を用い、ラッセル編機で4コースアトラス編のメッシュ編物を得た。得られたメッシュ編物を常法により濃緑色に染色、熱セットした後、スパッタリング装置を用い、アルミニウムの膜厚がメッシュ編物の組織部分において0.05μmになるように調整し、アルゴン雰囲気中でスパッタリング加工を施し、メッシュ編物表面にアルミニウム薄膜層を形成した。このメッシュ状布帛の空隙率は59%、ひとつの目合い部の面積は20mmであった。
【0038】
(偽装構造体)
上記3色のプリント布帛を迷彩模様になるように組み合わせた後、直径65mmの円弧状の切れ目を入れ、30%に伸張した状態で、上記のメッシュ状布帛のアルミニウム薄膜層面に糸縫製により部分的に固定し、偽装構造体を作製した。
【0039】
このようにして得られた偽装構造体を評価し、表1に示した。可視光線、近赤外線、および遠赤外線領域において、周囲の自然環境と混和し、偽装効果に優れていた。
【0040】
[実施例2]
(リーフ状布帛)
実施例1と同一。
【0041】
(メッシュ状布帛)
実施例1のアルミニウム薄膜層上に、淡緑色の顔料とウレタン樹脂含有のビヒクルからなるインク組成液を用い、2g/mになるように凸版印刷機(フレキソ印刷)にて、プリントを施した。このメッシュ状布帛の空隙率は60%、ひとつの目合い部の面積は21mmであった。
【0042】
(偽装構造体)
上記3色のプリント布帛を迷彩模様になるように組み合わせた後、直径65mmの円弧状の切れ目を入れ、30%に伸張した状態で、上記のメッシュ状布帛のプリント面に糸縫製により部分的に固定し、偽装構造体を作製した。
【0043】
このようにして得られた偽装構造体を評価し、表1に示した。可視光線、近赤外線、および遠赤外線領域において、周囲の自然環境と混和し、偽装効果に優れていた。
【0044】
[実施例3]
(リーフ状布帛)
実施例1と同一。
【0045】
(メッシュ状布帛)
総繊度830dtex、フィラメント数96本のポリエステル繊維に、繊維直径12μmのステンレス(SUS)繊維トウ30本(デシテックス換算で総繊度243dtex)を混撚した繊維を使用して、ラッセル編機で4コースアトラス編のメッシュ編物を得た。得られたメッシュ編物を常法により濃緑色に染色、熱セットした。次いで、スパッタリング装置を用い、アルミニウムの膜厚がメッシュ編物の組織部分において0.05μmになるように調整し、アルゴン雰囲気中でスパッタリング加工を施し、メッシュ編物表面にアルミニウム薄膜層を形成した。しかる後、アルミニウム薄膜層上に、淡緑色の顔料とウレタン樹脂含有のビヒクルからなるインク組成液を用い、2g/mになるように凸版印刷機(フレキソ印刷)にて、プリントを施した。このメッシュ状布帛の空隙率は43%、ひとつの目合い部の面積は13mmであった。
【0046】
(偽装構造体)
実施例2と同様にして、偽装構造体を作製した。
【0047】
このようにして得られた偽装構造体を評価し、表1に示した。可視光線、近赤外線、遠赤外線およびレーダー波領域において、周囲の自然環境と混和し、偽装効果に優れていた。
【0048】
[実施例4]
(リーフ状布帛)
実施例1と同一。
【0049】
(メッシュ状布帛)
実施例1と同一のメッシュ編物を常法により濃緑色に染色、熱セットした後、メッシュ編物の一方の表面にカーボン含有ウレタン樹脂を10g/mになるようにグラビアコートを施した。しかる後、もう一方の面に、スパッタリング装置を用い、アルミニウムの膜厚がメッシュ編物の組織部分において0.05μmになるように調整し、アルゴン雰囲気中でスパッタリング加工を施し、アルミニウム薄膜層を形成した。次いで、アルミニウム薄膜層上に淡緑色の顔料とウレタン樹脂含有のビヒクルからなるインク組成液を用い、2g/mになるように凸版印刷機(フレキソ印刷)にて、プリントを施した。このメッシュ状布帛の空隙率は58%、ひとつの目合い部の面積は18mmであった。
【0050】
(偽装構造体)
実施例2と同様にして、偽装構造体を作製した。
【0051】
このようにして得られた偽装構造体を評価し、表1に示した。可視光線、近赤外線、遠赤外線およびレーダー波領域において、周囲の自然環境と混和し、偽装効果に優れていた。
【0052】
[実施例5]
(リーフ状布帛)
実施例1と同一の平織物を常法により、精練、中間セットした後、淡緑色に調整した分散染料の染浴にて染色し、仕上げセットを施した。次いで、該平織物の一方の表面に、森林、草原などの自然環境と同系の淡緑色、濃緑色、茶色の顔料とウレタン樹脂含有のビヒクルからなるインク組成液を用い、6g/mになるように凸版印刷機(フレキソ印刷)で3色迷彩プリントを施した。なお、金属薄膜層は含有していない。
【0053】
(メッシュ状布帛)
実施例1と同一のメッシュ編物を常法により濃緑色に染色、熱セットした後、スパッタリング装置を用い、チタンの膜厚がメッシュ編物の組織部分において0.05μmになるように調整し、アルゴン雰囲気中でスパッタリング加工を施し、メッシュ編物表面にチタン薄膜層を形成した。次いで、チタン薄膜層上に淡緑色の顔料とウレタン樹脂含有のビヒクルからなるインク組成液を用い、2g/mになるように凸版印刷機(フレキソ印刷)にて、プリントを施した。このメッシュ状布帛の空隙率は59%、ひとつの目合い部の面積は19mmであった。
【0054】
(偽装構造体)
上記の3色迷彩プリント布帛に直径65mmの円弧状の切れ目を入れ、30%に伸張した状態で、上記のメッシュ状布帛のプリント面に樹脂製バンド(インシュロック)により部分的に固定して取り付け、偽装構造体を得た。
【0055】
このようにして得られた偽装構造体を評価し、表1に示した。可視光線、近赤外線、および遠赤外線領域において、周囲の自然環境と混和し、偽装効果に優れていた。
【0056】
[実施例6〜8]
(リーフ状布帛)
実施例5と同一。
【0057】
(メッシュ状布帛)
実施例5と同一のポリエステル繊維を用い、ラッセル編機で4コース(実施例6)、6コース(実施例7)、22コース(実施例8)で編成されたメッシュ編物を得た。得られたそれぞれのメッシュ編物を常法により濃緑色に染色、熱セットした。次いで、スパッタリング装置を用い、アルミニウムの膜厚がメッシュ編物の組織部分において0.05μmになるように調整し、アルゴン雰囲気中でスパッタリング加工を施し、メッシュ編物表面にアルミニウム薄膜層を形成した。しかる後、アルミニウム薄膜層上に、淡緑色の顔料とウレタン樹脂含有のビヒクルからなるインク組成液を用い、2g/mになるように凸版印刷機(フレキソ印刷)にて、プリントを施した。このメッシュ状布帛の空隙率およびひとつの目合い部の面積は45%、13mm(実施例6)、67%、837mm(実施例7)、89%、1231mm(実施例8)であった。
【0058】
(偽装構造体)
実施例5と同様にして、偽装構造体を作製した。
【0059】
このようにして得られた偽装構造体を評価し、表2に示した。可視光線、近赤外線、遠赤外線において、周囲の自然環境と混和し、偽装効果に優れていた。
【0060】
[比較例1]
(リーフ状布帛)
実施例6と同一の平織物を常法により、精練、中間セットした後、スパッタリング装置を用い、アルミニウムの膜厚がメッシュ編物の組織部分において0.05μmになるように調整し、アルゴン雰囲気中でスパッタリング加工を施し、メッシュ編物表面にアルミニウ薄膜層を形成した。次いで、アルミニウム薄膜層上に森林、草原などの自然環境と同系の淡緑色、濃緑色、茶色の顔料とウレタン樹脂含有のビヒクルからなるインク組成液を用い、6g/mになるように凸版印刷機(フレキソ印刷)で3色迷彩プリントを施した。
なお、金属薄膜層は含有している。
【0061】
(メッシュ状布帛)
実施例6と同一。
【0062】
(偽装構造体)
実施例6と同様にして、偽装構造体を作製した。
【0063】
このようにして得られた偽装構造体を評価し、表2に示した。可視光線領域において、自然環境と混和せず、偽装効果に劣っていた。
【0064】
[比較例2]
(リーフ状布帛)
実施例6と同一。
【0065】
(メッシュ状布帛)
実施例6と同一のメッシュ編物を常法により濃緑色に染色、熱セットした後、淡緑色の顔料とウレタン樹脂含有のビヒクルからなるインク組成液を用い、2g/mになるように凸版印刷機(フレキソ印刷)にて、プリントを施した。このメッシュ状布帛の空隙率は45%、ひとつの目合い部の面積は6mmであった。なお、金属薄膜層は含有していない。
【0066】
(偽装構造体)
実施例6と同様にして、偽装構造体を作製した。
【0067】
このようにして得られた偽装構造体を評価し、表2に示した。遠赤外線領域において、自然環境と混和せず、偽装効果に劣っていた。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明で用いるメッシュ状布帛の一例を示す外観写真である。
【図2】本発明で用いるメッシュ状布帛を構成する編物の一例を示す編組織図である。
【図3】本発明で用いるリーフ状布帛の一例を示す外観写真である。
【図4】リーフ状の構造に形成せしめるための切れ目の一例とメッシュ状布帛への固定位置の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0071】
1・・・糸条部
2・・・目合い部
3・・・フロント糸
4・・・バック糸
5・・・迷彩着色剤含有樹脂層を有するリーフ状布帛
6・・・切れ目
7・・・リーフ状布帛の固定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
迷彩着色剤含有樹脂層を有する金属薄膜層非含有のリーフ状布帛と、金属薄膜層を有するメッシュ状布帛とを備え、前記リーフ状布帛の一部がメッシュ状布帛に固定されていることを特徴とする偽装構造体。
【請求項2】
前記金属薄膜層の表面に着色剤含有樹脂層を有していることを特徴とする請求項1に記載の偽装構造体。
【請求項3】
前記メッシュ状布帛の空隙率が10〜70%の範囲であって、かつ、ひとつの目合い部の面積が5〜1000mmの範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の偽装構造体。
【請求項4】
前記メッシュ状布帛を構成する繊維の少なくとも一部が導電性繊維であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の偽装構造体。
【請求項5】
前記メッシュ状布帛を構成する繊維の表面に導電性樹脂層を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の偽装構造体。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−74715(P2009−74715A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241980(P2007−241980)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】