説明

偽造防止のタグクリップ

【課題】商品にタグを取り付ける際に用い、紫外線や赤外線の照射によって真正商品を確認できる偽造防止のタグクリップを提供する。
【解決手段】プラスチック製の先頭部と、プラスチック製の末尾部と、該先頭部および末尾部を連絡する糸条体とを有し、糸条体は複数本の撚糸を撚り合わせて構成し、該撚糸のうちの少なくとも1本が判別糸からなり、可視光が照射されてもクリップ全体が無色であり、一方、紫外線および/または赤外線を照射すると糸条体が鮮明に発色する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品にタグを取り付ける際に用い、紫外線や赤外線の照射によって真正商品を確認できる偽造防止のタグクリップに関し、さらに単独で真正商品を確認できるタグクリップ用などの糸条体に関する。
【背景技術】
【0002】
タグや値札を衣類などの商品に取り付ける際に、紐によってタグを商品に結びつけると非常に能率が悪いので、特公昭52−20240号に示すように、細長いプラスチック製のクリップを用いるのが普通である。このクリップは、先端の拡大部と後端の横棒部を線状部でつないだような形状であり、複数本固定されたものを取付装置に装填し、クリップを1本ずつ引き抜きしながら商品に連続的に取り付ける。このクリップは、顧客がタグや値札を取り替えることを防ぎ、不慣れな作業者でも取付装置の操作は容易であるから、値札付け作業やラベル付け作業を非常に迅速に達成できる。
【0003】
特公昭52−20240号に示すクリップは全体がプラスチック製であり、硬いプラスチック線状部が衣類などの商品に打ち込まれると該衣類を傷めやすく、該衣類からクリップが突き出て美観を損ねることがある。実用新案登録第2538976号公報に開示の連結具は、商品損傷と美観を損ねる点を改善するために、先端の拡大部と後端の横棒部がプラスチック製であり、両者をフィラメント部でつなぐ。このフィラメント部は柔軟であるから、衣類などの商品に打ち込まれても該衣類を損傷することがなく、衣類に取り付けても違和感が少ない。現在では、種々の形状のクリップが提案されており、先端の拡大部と後端の横棒部とを連結してリング状に構成できるものが増えている。
【特許文献1】特公昭52−20240号公報
【特許文献2】実用新案登録第2538976号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タグや値札は前記のクリップ類で迅速に取り付けられるけれども、近年、著名ブランドを表示したタグを偽造し、そのタグを付けてブランドを不正使用した模倣商品が市場に大量に出回っている。これにより、ブランド商品の売り上げを阻害するだけでなく、ブランド商品の品質に対する信用を失墜させる事態が頻発している。特に、模倣商品は低開発国の安い労働力を利用して製造され、ブランド商品よりも遥かに安価で輸入販売されることにより、ブランド商品の製造・販売業者に著しい損害を与える。この種の模倣商品は、衣料品に関する染色技術および縫製技術の高度化に伴ってブランド商品と酷似し、専門の取引業者でもブランド商品と識別することが困難である場合が多い。
【0005】
偽造タグを付した模倣商品を早期に摘発するために、タグ販売業者は、タグにホログラフィを形成したり、特殊な蛍光インクで印刷するなどの種々の摘発方法が提案している。この種の偽造防止タグは、通常のタグに比べて製造コストが高い割りに比較的短期間で偽造タグが後追い生産され、真贋判定の効果が短かすぎるという問題がある。そして別の偽造防止タグを製造して使用しても、再び同様の偽造タグが短期間に後追い生産され、果てしないイタチごっこが続いていく。
【0006】
さらに別の問題として、この偽造防止タグについて、タグ販売業者が同業者の複数のユーザから同様の注文を受けた場合、各ユーザごとに異なる偽造防止の加工をした個別のタグを納品しなければならず、ホログラフィなどの模様を特定することでユーザを明確に分別しなければならない。このような分別措置を加える際に、単にホログラフィなどの模様を細分化するとユーザ間で混乱が生じやすいので、個別対応のユーザの数は多くても十数社に制限することを要する。このため、ユーザが百社を超えるようなタグ販売業者では、偽造防止タブによる対応が不可能になってしまう。
【0007】
本発明者は、タグ販売業者の観点から、有効期間が短い偽造防止タグに関する前記の問題点を検討した。この検討において、比較的偽造しやすいタグに偽造防止の措置を採るのではなく、該タグを商品に取り付けるためのタグクリップに偽造防止の加工を施せば、加工費用を安価に納められて変更も容易であり、しかも偽造防止の措置を採ったこと自体が判りにくいことに着目した。例えば、タグクリップの樹脂に蛍光物質を添加し、紫外線や赤外線を照射して任意の色に発色させると、比較的容易に偽造防止の機能を付与することができる。特に、プラスチック製の先端の拡大部と後端の横棒部とをつなぐ糸条体に蛍光物質を添加すると、紡糸の際に蛍光物質を添加できるので加工作業が容易であり、該糸条体に添加の蛍光物質の変更も容易であるから、汎用性の高い偽造防止措置を採用することが可能になる。
【0008】
したがって、本発明は、タグを真正商品に取り付ける際に使用すると、紫外線や赤外線の照射により、模倣商品を容易に検出できる偽造防止のタグクリップを提供することを目的としている。本発明の他の目的は、紫外線や赤外線の照射でタグクリップの糸条体を複数色に発色させることにより、タグ販売業者において各ユーザごとに個別の情報を付与できる偽造防止のタグクリップを提供することである。本発明の別の目的は、プラスチック製の先頭部および末尾部の有無に関係なく、紫外線や赤外線の照射で模倣商品を容易に検出できる糸条体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るタグクリップは、取付装置に装填して商品に連続的に取り付けることができる。本発明のタグクリップは、プラスチック製の先頭部と、プラスチック製の末尾部と、該先頭部および末尾部を連絡する糸条体とを有し、糸条体は複数本の撚糸を撚り合わせて構成し、該撚糸のうちの少なくとも1本が判別糸である。このタグクリップは、可視光が照射されてもクリップ全体が無色であり、一方、紫外線および/または赤外線を照射すると糸条体の判別糸が所定の色に発色する。
【0010】
本発明に係るタグクリップは、プラスチック製の先頭部と、プラスチック製の末尾部と、該先頭部および末尾部を連絡する糸条体とを有し、糸条体は2種以上の判別糸を撚り合わせて構成してもよく、各判別糸は紫外線の照射による発色が異なる。このタグクリップは、可視光が照射されてもクリップ全体が無色であり、一方、紫外線および/または赤外線を照射すると糸条体の判別糸が所定の複数色に発色する。
【0011】
本発明のタグクリップでは、糸条体において、判別糸は紫外線および赤外線発光の蛍光フィラメントと通常のフィラメントとを撚り合わせて構成することにより、該判別糸を紫外線および赤外線の照射によってともに発色させると好ましい。この糸条体は、生成り色の複数本の撚糸を撚り合わせて構成し、撚り合わせた後にそのまままたは適宜に染色し、さらにプラスチック製の先頭部および末尾部を成形加工で一体的に固着させる。
【0012】
本発明において、タグクリップ用などの糸条体は、同色発色の3本以上の判別糸を撚り合わせ、各判別糸は比較的太い通常の支持糸と比較的細い蛍光糸とからなる。この際に、蛍光糸は支持糸の回りに巻き付けるように撚糸され、該蛍光糸は紫外線および赤外線発光の蛍光フィラメントで構成すると好ましい。
【0013】
本発明を具体的に説明すると、本発明のタグクリップ1は、図1に例示するように、紫外線および/または赤外線の照射で発色する判別糸20(図4参照)などを1本または複数本撚り合わせた糸条体5を有し、該糸条体を介して先端の先頭部2と後端の末尾部3とを連絡する。先頭部2および末尾部3はプラスチック製であり、通常、その成形時に糸条体5を一体化させる。先頭部2および末尾部3は、図6に示すように相互に連結して糸条体を輪状に構成したり、図8のように紐状の態様のままで使用する。
【0014】
先頭部2および末尾部3は、一般的に、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニルのような熱可塑性プラスチックからなり、両者を連結する場合には比較的伸びが大きい素材が望ましい。先頭部2および末尾部3のプラスチックは、成形時に糸条体5と融着することを要し、相互に融着性を有しない場合には、適宜に成分調整したりまたは接着剤を介して糸条体5と接着する。
【0015】
糸条体5は、通常、3本以上の撚糸を撚り合わせて構成し、該撚糸中の少なくとも1本が判別糸20であり、残りは蛍光物質を含まない通常の撚糸でもよい。判別糸20は、可視光を照射しても発色せずに無色のままであり、紫外線および/または赤外線を照射すると所定の色に発色する。
【0016】
判別糸20は、多数本の蛍光フィラメントのみまたは該蛍光フィラメントと通常のフィラメントを撚糸して構成すればよい。また、多数本の蛍光フィラメントのみまたは該蛍光フィラメントと通常のフィラメントを撚糸して蛍光糸24(図4)を構成し、該蛍光糸をさらに複数本撚り合わせても、蛍光糸と通常の糸を撚り合わせて構成してもよい。好ましくは、判別糸20は、比較的太い通常の支持糸23と比較的細い蛍光糸24とからなり、主として支持糸23の回りに蛍光糸24が巻回された態様であると、引張り強度を高くできるとともに、比較的少ない本数の蛍光フィラメントで発色を確認しやすい。
【0017】
判別糸20において、蛍光フィラメントは、平均粒径が2〜7μmである無機化合物の蛍光体1種または2種を紡糸原液に練り込んで紡糸によって製造する。蛍光体を練り込む紡糸原液である樹脂は、市販のポリエステル、ポリアミド、アクリル、アセテート、ポリオレフィン、酢酸セルロースなどであればよく、一般に耐久性と価格の点からポリエステル繊維またはナイロン繊維を使用すると好ましい。無機の蛍光体は、有機化合物の蛍光体に比べて有毒性が少なく、染色性も良好である。
【0018】
判別糸20に関して、紫外線照射で発色する無機化合物の蛍光体は、青色発色の場合には、化学組成がSrAl1425:Eu,Dy(発光ピーク波長490nm)、Sr(POCl:Eu(発光ピーク波長445nm)、ZnS:Ag(発光ピーク波長450nm)、CaWO(発光ピーク波長425nm)などがある。緑色発色の場合には、化学組成がSrAl:Eu,Dy(発光ピーク波長520nm)、ZnGeO:Mn(発光ピーク波長534nm)、ZnS:Cu,Al(発光ピーク波長530nm)、ZnSiO:Mn(発光ピーク波長525nm)などがある。赤色発色の場合には、化学組成がYS:Eu(発光ピーク波長626nm)、Y:Eu(発光ピーク波長611nm)、YVO:Eu(発光ピーク波長619nm)などである。紫色発色の場合には、化学組成がCaAl:Eu,Nd(発光ピーク波長440nm)である。他の蛍光体またはこれらの蛍光体を複数種混合すると、黄色、水色、淡紫色、オレンジ色、ピンク色、クリーム色発色などで約12種を得ることが可能であり、識別が容易なものは10種程度である。
【0019】
蛍光フィラメントには、生成りの糸条体5の場合には、紫外線照射で発色する蛍光体だけを練り込んでいてもよい。この蛍光フィラメントは、例えば、励起波長300〜400nmの紫外線を放射するブラックライト28(図5)などの小型ランプで照射すると所定の蛍光色に発光し、残光性が殆ど無く、通常の可視光の照射では発光しない。
【0020】
一方、赤外線照射で発色する無機化合物の蛍光体として、ユウロピウム系化合物、サマリウム系化合物、硫化亜鉛系化合物、酸化亜鉛系化合物、ケイ酸亜鉛系化合物などが例示できる。具体的には、LiAlO:Fe、(Zn・Cd)S:Cu、YVO:Ndなどを用い、赤色または緑色に発色させることが可能である。赤外線発色の蛍光体は、結晶体であると特定の不純物を加えることにより明るい発光が生じる場合があり、このような不純物として無機質の賦活剤または増感剤を適宜添加すると好ましい。この蛍光体は、樹脂原液に添加の際に安定性を良くするために、クロムやマンガンなどの酸化物や塩によって表面処理してもよい。
【0021】
赤外線発色の蛍光体は、平均粒径が2〜3μm、95%が粒径7μm以下であり、紡糸原液に対して約3〜10重量%添加すると好ましい。この際に、3重量%未満では発光が弱くなって感知しにくくなり、10重量%を超えると不経済であるうえに紡糸作業に悪影響を与えやすい。この蛍光体には、通常、励起波長780nm〜1mmの赤外線を照射することにより、一時的に励起されて容易に判別できる緑、赤色などの可視光を発光し、可視光や光源なしでは発光せず、残光性が殆ど無く、長期間に亘って発光性を保持できる。
【0022】
判別糸20において、蛍光フィラメントには、紫外線および赤外線発光の蛍光体をともに練り込むと好ましい。この場合、生成りの糸条体5であると、紫外線照射および赤外線照射によってダブルロックを達成する。「ダブルロック」とは、2重の偽造防止機能を有することを意味し、紫外線の照射でも赤外線の照射でもタグクリップの糸状体が発色することにより、一方だけが模倣されても偽造防止機能に維持できるので防止効果がより優れている。この場合、模倣商品の製造業者は、紫外線発光糸による偽造防止を感知することができても、さらに赤外線照射による偽造防止措置も行っているのを認識することは非常に困難である。特に、低パワーの赤外線レーザ放射機器は、市販されている紫外線照射用のブラックライト28などに比べて一般的でなく、模倣商品の製造業者は赤外線レーザ放射機器を購入することは容易ではない。
【0023】
ダブルロックは、判別糸20において、紫外線発光の蛍光フィラメントに加えて、赤外線発色の蛍光フィラメントを撚り合わせることで達成してもよい。所望に応じて、判別糸20について、異なる発色の紫外線発光の蛍光フィラメントを複数本撚り合わせれば、より複雑なダブルロックも達成できる。
【0024】
糸条体5は、3本以上の撚糸を撚り合わせた後または先頭部2および末尾部3と一体化した後に、黒色または白色などに後染めすることも可能である。この後染めでは、通常、紫外線や赤外線で励起発色しない染料によって、紫外線や赤外線で発色する以外の色に染色する。但し、糸条体5を白色に後染めした場合には、例えば蛍光増白剤で漂白することにより、タグクリップ1を紫外線照射によって発色を識別することは困難になる。この場合には、紫外線照射で染色前の糸条体の品質をチェックし、真正商品の確認は赤外線照射によって判別する。黒色に後染めした場合にも、真正商品の確認は赤外線照射で判別すると好ましい。
【0025】
糸条体5は、それぞれ発色が明確に異なって識別容易な蛍光フィラメントを撚糸した複数本の判別糸20を撚り合わせても、発色が異なる蛍光フィラメントのみまたは該蛍光フィラメントと通常のフィラメントを撚糸して蛍光糸24(図4)を構成し、該蛍光糸をさらに複数本撚り合わせて判別糸20を構成してもよい。発色が異なる蛍光フィラメントは4〜12種存在し、その中から適宜に選択して個々の判別糸20に用いる。例えば、10種の蛍光フィラメントの内の2種を取り出した組合せは 10=45パターン、3種を取り出した組合せは 10=120パターン、4種を取り出した組合せは 10=210パターンであり、中堅規模のタグ販売業ならば2種以上の組合わせでユーザごとの分別が可能である。識別可能な発色の蛍光フィラメントが10種を超えると、2種の組み合わせだけでもいっそう多いユーザ分別数になる。
【0026】
この種の糸条体は、タグクリップ用として先頭部2と末尾部3とをつなぐためだけでなく、単独の糸としてタグなどを結び付けるのに使用することも可能である。この糸条体は、前記と同様に、同色発色の3本以上の判別糸を撚り合わせ、各判別糸は比較的太い通常の支持糸と比較的細い蛍光糸とからなる。この糸条体は、単独使用においても、紫外線および/または赤外線の照射によって鮮明に発色し、該糸条体でタグを取り付けた商品が真正品であることを容易に確認できる。
【0027】
タグクリップ1は、可視光の下では通常のものと全く同一である。ユーザ自身や取引者が、ブラックライト28やレーザ放射機器で紫外線や赤外線を照射すれば、糸条体5がユーザ独自の単色または複数色に発色し、真正商品であるか否かを容易に確認できる。タグクリップ1において、糸条体5は通常品と同じ太さで無色であるから、偽造業者が糸条体5において紫外線および/または赤外線発色の判別糸20の存在を知ることは難しい。赤外線発色の蛍光フィラメントが撚糸されていると、偽造業者が同様のタグクリップを製造することは実際上ほぼ不可能になる。
【0028】
タグクリップ1の製造業者は、紫外線や赤外線の照射で発色が異なる複数種の蛍光フィラメントをあらかじめ製造して保有し、さらに該蛍光フィラメントと実質的に同質である通常のフィラメントも製造しておくと好ましい。この保有の後に、タグ販売業者などからタグクリップ1に偽造防止の情報を付与する依頼を受ければ、所定の蛍光フィラメントを撚糸して判別糸20を形成し、該判別糸をさらに適宜に撚り合わせて糸条体5を製造し、この際にエンドユーザごとに糸条体5を特定させることが可能である。得た糸条体5は、多数本所定の金型内に並置させ、プラスチックによってタグクリップ1の集合体14を一体成形できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係るタグクリップは、プラスチック製の先頭部と末尾部とをつなぐ糸条体において、判別糸を少なくとも1本撚り合わせることにより、紫外線および/または赤外線を糸条体に照射すると鮮明に発色し、該クリップでタグを取り付けた商品が真正品であることが容易に確認できる。本発明のタグクリップは、目視しただけでは糸条体の特徴が全く判らず、可視光の下では通常のものと同一であるから、模倣商品の製造業者が同一のクリップを製造することは難しく、偽造タグを取り付けた模倣商品が市場に氾濫することを未然に防止できる。
【0030】
本発明のタグクリップは、糸条体において2種以上の判別糸を撚り合わせてもよく、この場合には、糸条体の複数発色によって真正商品であることをより確実に認識できるうえに、タグ販売業者がユーザごとに異なる発色のタグクリップを規定することが可能である。複数色に発色するタグクリップは、多くのユーザについて個別対応できるだけでなく、タグを取り付けた本物の衣類または鞄類などについて、真正商品の確認に加えて、当該商品の製造元や製造年月日なども特定可能である。
【0031】
本発明のタグクリップにおいて、糸条体の判別糸を紫外線および赤外線の照射によってともに発色させると、該糸条体は生成りのまま使用してもよく、または黒色または白色などに後染めすることも可能である。黒色や白色などに後染めする場合には、紫外線照射で糸条体の品質をチェックし、真正商品の確認は赤外線照射によって判別すればよい。本発明の糸条体は、単独の糸として使用してタグなどを結び付けることも可能である。単独使用においても、紫外線および/または赤外線の照射によって鮮明に発色し、該糸条体でタグを取り付けた商品が真正品であることを容易に確認できる。
【実施例1】
【0032】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。タグクリップ1は、図1に示すように、ポリプロピレン製の矩形平面の先頭部2および細棒状の末尾部3を有し、長さ約12cmの糸条体5によって先端の先頭部2と後端の末尾部3とを連絡する。先頭部2には、横方向に貫通した係止孔7を設け、該係止孔は内部中間に小径部8を有する。一方、末尾部3は、長さ10mm程度の丸先の細い棒状であって係止孔7内に挿入可能であり、その前方部にくびれ部10を設け、該くびれ部の前側に抜け止め用の環状肩部12を形成する。
【0033】
タグクリップ1は、単体では取付装置(図示しない)に装填することが困難であるので、図2と図3に示すような集合体14の態様で用いる。集合体14は、所定寸法の糸条体5が並置された金型内にポリプロピレンを射出成形して、各糸条体5と一体成形する。集合体14において、タグクリップ1は平行に多数本配列され、それぞれの先頭部2および末尾部3を上下配置の直交体16,16と連結する。細長い直交体16,16は厚みが薄くて可撓性であり、切断可能な小径の連絡部18を介して各先頭部2または各末尾部3とそれぞれ連結する。
【0034】
一方、糸条体5は、紫外線照射で同色発色の3本の判別糸20〜22(図4)を撚り合わせて用い、該判別糸自体も撚糸である。判別糸20〜22は、図示のように、それぞれ比較的太い通常の支持糸23と比較的細い蛍光糸24とからなり、主として支持糸23の回りに蛍光糸24が巻回された態様になる。支持糸23の繊度は約1000デニールであり、例えば、8デニールのポリエステルフィラメントを126本撚糸する。一方、蛍光糸24の繊度は約100デニールであり、例えば、5デニールの蛍光フィラメントを20本撚糸する。
【0035】
判別糸20〜22において、蛍光糸24を構成する蛍光フィラメントは、平均粒径2〜7μmの無機蛍光体2種をポリエステル樹脂に練り込んで溶融紡糸で製造する。2種の無機蛍光体は、紫外線照射で発色する蛍光体および赤外線照射で発色する蛍光体である。この蛍光フィラメントは、通常の太陽光や蛍光灯光を照射しても発光せず、該フィラメントは紫外線および赤外線を照射すると発色する。
【0036】
この蛍光フィラメントにおいて、紫外線照射で発色する蛍光体は、青色発色体(化学組成、SrAl1425:Eu,Dy)、緑色発色体(化学組成、SrAl:Eu,Dy)、赤色発色体(化学組成、YS:Eu、Y:Eu)または紫色発色体(化学組成、CaAl:Eu,Nd)であり、この中から任意の1種を選択する。また、赤外線照射で発色する蛍光体は、赤色発色体(化学組成、LiAlO:Fe)である。
【0037】
糸条体5は、溶融紡糸して撚糸しただけの生成りのまま使用してもよく、判別糸20〜22を撚り合わせた後に黒色または白色に後染めすることも可能である。糸条体5を後染めした場合には、真正商品の確認は赤外線照射によって判別する。
【0038】
図5のように、タグクリップ1をタグ26とともにシャツ27などの衣料品に連結するには、例えば、取付装置(図示しない)の長手方向に形成した溝内に集合体14の頭部列と末尾部列をそれぞれ装置後方から装填し、糸条体5を湾曲させて保持した状態で集合体14を前方へ供給する。装置前方において、先頭部2を搬送アームの支持部で受け取り、該アームを前進させて中空針の軸線に接近した先端部に先頭部2を待機させる。中空針の入口において、ピストンロッドによって末尾部3を中空針の中に押し込み、該中空針の出口より押し出すとともに、その出口の直前で待機している先頭部2の係止孔7内に嵌入して連結し、糸条体5を輪状に構成する。
【0039】
タグクリップ1において、末尾部3を先頭部2の係止孔7内に嵌入すると、該末尾部3のくびれ部10が係止孔7の小径部8に位置し、環状肩部12が小径部8と当接するので、末尾部3を後方へ引っ張っても先頭部2から抜け出ることはない。この結果、糸条体5が輪状につながってタグ26や値札をシャツ27に取り付けることができる。タグクリップ1は、靴類や手袋などの1対の物品をまとめて保管したり、タグクリップ同士を連結して多数個の物品をまとめてもよい。
【0040】
タグクリップ1は、取付装置によるシャツ27への取り付け後において、可視光や蛍光灯光の下では生成りの糸条体5が発色しないで通常のタグクリップと全く同一である。偽造問題が発生した際に、ユーザ自身や取引者が、ブラックライト28(図5)で紫外線をおよびレーザ光放射機器(図示しない)で赤外線を照射する。糸条体5の判別糸20〜22は、紫外線照射で所定の色に発色し、且つ赤外線照射で赤色に発色するので、真正商品であることが容易に確認できる。
【0041】
タグクリップ1では、生成りの糸条体5において、紫外線照射および赤外線照射のダブルロックを行っている。ダブルロックにより、紫外線および赤外線発色の一方が模倣されても偽造防止機能に維持でき、2重の偽造防止機能を有する。低パワーの赤外線レーザ光放射機器を偽造鑑定に使用することは、紫外線照射のブラックライト28に比べて特殊であり、偽造商品の製造業者が紫外線および赤外発色のダブルロックされていることを感知することはきわめて困難である。
【実施例2】
【0042】
図6に示すタグクリップ30は、ポリプロピレン製の筒状の先頭部32および細棒状の末尾部33を有し、長さ約22cmの糸条体35によって先頭部32および末尾部33を連絡する。先頭部32には、筒孔37が係止孔であり、該筒孔は内部中間に小径部38を有する。一方、末尾部33は、筒孔37内に挿入可能な丸先の細い棒状であり、その前方部にくびれ部40を設ける。タグクリップ30は、集合体(図示しない)の態様で取付装置(図示しない)に装填する。
【0043】
糸状体35は、紫外線照射で発色が異なる5本の判別糸42〜46(図7)を撚り合わせて用い、各判別糸自体も撚糸である。判別糸42〜46は、それぞれ比較的太い通常の支持糸47と比較的細い蛍光糸48とからなり、主として支持糸47の回りに蛍光糸48が巻回された態様になる。支持糸47の繊度は約800デニールであり、例えば、8デニールのポリエステルフィラメントを100本撚糸する。一方、蛍光糸48の繊度は約100デニールであり、例えば、5デニールの蛍光フィラメントを20本撚糸する。
【0044】
判別糸42〜46において、蛍光糸48を構成する各蛍光フィラメントは、平均粒径2〜7μmの無機蛍光体2種をポリエステル樹脂に練り込んで溶融紡糸で製造する。2種の無機蛍光体は、紫外線照射で発色する蛍光体および赤外線照射で発色する蛍光体である。この蛍光フィラメントは、通常の太陽光や蛍光灯光を照射しても発光せず、該フィラメントは紫外線および赤外線を照射すると発色する。
【0045】
この蛍光フィラメントにおいて、紫外線照射で発色する蛍光体として、青色発色体(化学組成、SrAl1425:Eu,Dy)、緑色発色体(化学組成、SrAl:Eu,Dy)、赤色発色体(化学組成、YS:Eu、Y:Eu)、紫色発色体(化学組成、CaAl:Eu,Nd)、水色、黄色、淡紫色、オレンジ色、ピンク色、クリーム色などの発色が異なる10種の発色体を用い、これらの発色体の中から、判別糸42〜46ごとに異なるものを選択する。また、赤外線照射で発色する蛍光体は、赤色発色体(化学組成、LiAlO:Fe)である。
【0046】
5本の判別糸42〜46は、発色が異なる10種の中から所定の5種を選択することになり、これらの組み合わせ数は、10=252パターンである。図7において、252パターンの内から10パターンを例示する。図7では、紫外線で赤色発色の判別糸R、緑色発色の判別糸G、オレンジ色発色の判別糸D、青色発色の判別糸B、紫色発色の判別糸M、ピンク色発色の判別糸P、黄色発色の判別糸Y、クリーム色発色の判別糸C、空色発色の判別糸Sである。
【0047】
この結果、タグ販売業者は、仮に252社の同業ユーザから同様の注文を受けても、各ユーザごとに明確に分別したタグクリップ30を納品することができ、各ユーザごとに明確に分別したタグクリップ30を納品することが可能であり、ユーザ間で混乱することを未然に回避できる。タグ販売業者が相当に大規模の企業であっても、252社も分類できれば十分である。
【0048】
タグクリップ30は、その集合体を取付装置(図示しない)に装填し、タグとともに衣類に取り付ける。タグクリップ30は、可視光の下では糸条体35が発色しないで通常のタグクリップにすぎず、紫外線照射で判別糸42〜46が複数色に発色し、且つ赤外線照射でも赤色に発色する。タグクリップ30では、紫外線照射と赤外線照射のダブルロックを行っている。偽造商品の製造業者は、タグクリップ30が紫外線および赤外発色のダブルロックされていることを感知することはきわめて困難である。
【実施例3】
【0049】
図8に示すタグクリップ50は、ポリエステル製の板状の先頭部52および横棒状の末尾部54を有し、長さ約22cmの糸条体56によって先端の先頭部52および後端の末尾部54を連絡する。糸条体56は、紫外線照射で同色発色の3本の判別糸を撚り合わせて用いる。各判別糸は、それぞれ比較的太い通常の支持糸と比較的細い蛍光糸とからなる。支持糸の繊度は約1000デニールであり、一方、蛍光糸の繊度は約100デニールである。
【0050】
各判別糸において、蛍光糸を構成する蛍光フィラメントは、紫外線照射で発色する無機蛍光体をポリエステル樹脂に練り込んで溶融紡糸で製造する。この蛍光フィラメントにおいて、紫外線照射で発色する蛍光体は、青色発色体(化学組成、SrAl1425:Eu,Dy)、緑色発色体(化学組成、SrAl:Eu,Dy)、赤色発色体(化学組成、YS:Eu、Y:Eu)または紫色発色体(化学組成、CaAl:Eu,Nd)であり、この中から任意の1種を選択する。この蛍光フィラメントは、通常の太陽光や蛍光灯光を照射しても発光せず、該フィラメントを紫外線で照射すると発色する。
【0051】
糸条体56は、溶融紡糸して撚糸しただけの生成りのまま使用し、3本の判別糸を撚り合わせた後に後染めすることはない。タグクリップ50は、集合体の態様で取付装置(図示しない)に装填し、糸条体56に通したタグを先頭部52で保持し、末尾部54を衣類のボタン孔や生地などに取り付ける。
【0052】
タグクリップ50は、その集合体を取付装置(図示しない)に装填し、タグとともに衣類に取り付ける。タグクリップ50は、可視光の下では糸条体56が発色しないで通常のタグクリップにすぎず、紫外線照射で糸条体56が所定の色に発色する。偽造商品の製造業者は、タグクリップ50が紫外線照射で発色することを感知することは難しい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係るタグクリップの一例を示す部分側面図である。
【図2】図1のタグクリップの集合体を例示する部分側面図である。
【図3】図1のタグクリップの集合体の部分正面図である。
【図4】図1のA−A線に沿って切断した糸条体を拡大して示す概略断面図である。
【図5】図1のタグクリップでタグをシャツに取り付け、ブラックライトで照射した状態を示す平面図である。
【図6】タグクリップの変形例を示す部分側面図である。
【図7】図6のB−B線に沿って切断した糸条体を拡大して示す概略断面図であり、(1)から(10)において、異なる発色の5本の判別糸を撚り合わせている。
【図8】タグクリップの別の変形例を示す部分側面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 タグクリップ
2 先頭部
3 末尾部
5 糸条体
7 係止孔
14 集合体
20〜22 判別糸
23 支持糸
24 蛍光糸
26 タグ
28 ブラックライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付装置に装填して商品に連続的に取り付けることができるタグクリップであって、プラスチック製の先頭部と、プラスチック製の末尾部と、該先頭部および末尾部を連絡する糸条体とを有し、糸条体は複数本の撚糸を撚り合わせて構成し、該撚糸のうちの少なくとも1本が判別糸からなり、可視光が照射されてもクリップ全体が無色であり、一方、紫外線および/または赤外線を照射すると糸条体の判別糸が所定の色に発色する偽造防止のタグクリップ。
【請求項2】
取付装置に装填して商品に連続的に取り付け且つユーザごとに個別の情報を付与できるタグクリップであって、プラスチック製の先頭部と、プラスチック製の末尾部と、該先頭部および末尾部を連絡する糸条体とを有し、糸条体は2種以上の判別糸を撚り合わせて構成し、各判別糸は紫外線の照射による発色がそれぞれ異なり、可視光が照射されてもクリップ全体が無色であり、一方、紫外線および/または赤外線を照射すると糸条体の各判別糸が所定の複数色に発色する偽造防止のタグクリップ。
【請求項3】
糸条体において、判別糸は紫外線および赤外線発光の蛍光フィラメントと通常のフィラメントとを撚り合わせて構成することにより、該判別糸を紫外線および赤外線の照射によってともに発色させる請求項1または2記載のタグクリップ。
【請求項4】
糸条体は生成り色の複数本の撚糸を撚り合わせて構成し、撚り合わせた後にそのまままたは適宜に染色し、さらにプラスチック製の先頭部および末尾部を成形加工で一体的に固着させる請求項1、2または3記載のタグクリップ。
【請求項5】
同色発色の3本以上の判別糸を撚り合わせ、各判別糸は比較的太い通常の支持糸と比較的細い蛍光糸とからなり、この際に、蛍光糸は支持糸の回りに巻き付けるように撚糸され、該蛍光糸は紫外線および赤外線発光の蛍光フィラメントで構成するタグクリップ用などの糸条体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−187947(P2007−187947A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6991(P2006−6991)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(500168925)
【Fターム(参考)】