説明

偽造防止シート、偽造防止用ラベル、偽造防止用転写シート、偽造防止物品及び真偽判定方法

【課題】新規な技術的原理に基づいて、従来にないコバート技術を提供すること。
【解決手段】反射光の色彩と透過光の色彩とが相違する二色性のシート11と、特定の方向に偏光軸を有する光を選択的に反射する反射型偏光子12とを積層して構成する。両者の間にパターン状位相差層13を有していてもよい。二色性シートの内部で多重反射して入射側に出射する光と、二色性シートを透過して反射型偏光子で反射した光とは、色彩と偏光面の双方が異なるから、偏光フィルムを配置することで両者を分離できる。そして、偏光フィルムを回転することで、観察される色彩が変化する。この色彩の変化の有無で真偽判定ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に固定して、その物品が真正であることを保障する偽造防止技術に関するものであり、新規な偽造防止技術を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、このような偽造防止技術は、さまざまな物品に利用されている。例えば、銀行券、債券、商品券、小切手などの金券や有価証券である。また、クレジットカード、IDカード、公文書など各種証明書、重要書類にも利用されている。また、最近では、各種商品やその包装材料に適用して、その商品が真正であることを保障するために利用されている。いうまでもなく、これら物品を検査して、適正な偽造防止手段が施されている場合には真正な物品と判定され、偽造防止手段が施されていなかったり、不適正なものであった場合には非真正な物品と判定される。
【0003】
このような偽造防止手段は、一般に、オバート技術とコバート技術に分けられる。
【0004】
オバート技術は、誰が見ても偽造防止技術と認知でき真贋判定を可能とする技術であり、例えば、見る角度によって色や模様が変る回折構造体や多層干渉膜を利用した偽造防止手段が例示できる(特許文献1)。これら回折構造体や多層干渉膜を利用した偽造防止手段は見る角度によって色や模様が変るため、特殊な検知機を必要とせず、また、熟練した能力を要することもなく、誰でもその存在を認知できる。このため、例えば、一般消費者が商品を購入する際に、その商品が真正なものであるか否かについて判定することができる。他方、悪意のある者にとってもその存在が明らかであるから、偽造や贋造の対象として狙われやすい。
【0005】
コバート技術は、特殊な検知機や熟練がなければその存在自体が認知できない技術であり、例えば、光反射膜の一部にパターン状に位相差膜を配置した偽造防止手段(特許文献2)が例示できる。この偽造防止手段では、前記位相差膜の存在自体を認知することができない。そこで、偏光フィルムを検知機として位相差膜上に重ね、この偏光フィルムをその面内で回転させると、その回転に伴って位相差膜の形状に明暗が変化する。したがって、このような現象が観察できればその物品が真正なものであると判定でき、観察できなければ非真正の偽造品又は贋造品と判定することができる。コバート技術を利用した偽造防止手段はこのように特殊な検知機や熟練がなければその存在自体が認知できないため、例えば、一般消費者が店頭で判定することは困難である。他方、悪意のある者にとってもその存否が明らかではないから、偽造や贋造の対象として把握すること自体が困難である。
【0006】
コバート技術には、反射膜の一部にパターン状に位相差膜を配置した偽造防止手段の他にもさまざまなものが存在する。例えば、紫外線照射によって発色する蛍光インキを使用して印刷したものである。この場合には、紫外線照射装置がなければその存在自体が認知できない。
【0007】
また、これらオバート技術とコバート技術とを重畳して利用した偽造防止技術も知られている。例えば、特許文献3は、回折格子を構成する凹凸表面に光反射膜を設け、この光反射膜の一部にパターン状に位相差膜を配置した偽造防止媒体を開示している。この技術では、光反射膜は入射光を反射回折して回折画像を形成する役割と共に、この上に重ねられた偏光フィルムを通して位相差膜のパターン形状に明暗を変化させる役割を兼ねている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−063944号公報
【特許文献2】特開2006−142599号公報
【特許文献3】特開2006−043978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規な技術的原理に基づいて、従来にないコバート技術を提供することを目的とするものである。
【0010】
本発明に係る偽造防止媒体は、その上に偏光フィルムを重ね、この偏光フィルムを面内で回転させたとき、その回転に伴って色彩が変化する。このため、この現象が観察できたとき、その物品が真正なものであると判定でき、観察できなければ非真正の偽造品又は贋造品と判定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、反射光の色彩と透過光の色彩とが相違する二色性のシートと、特定の方向に偏光軸を有する光を選択的に反射する反射型偏光子とを利用した偽造防止技術である。
【0012】
二色性シートは、一般に、光学レベルの膜厚を有する透明な層を多数層積層して構成されるシートである。この二色性シートに光を入射すると、その表面で反射する表面反射光を除いて、入射光は二色性シートの内部に進入し、その内部の透明層同士の境界面で反射と屈折を繰り返す。そして、これら多重反射光同士が干渉する結果、特定の波長の光を選択的に入射側に出射し、残余の波長成分の光を反対側に出射する。すなわち、二色性シートに白色光を入射させた場合、この白色光のうち特定の波長の光が選択的に反射される。このため、この反射光は特定の色彩に着色されている。
【0013】
そして、残余の光、すなわち、白色入射光から反射光成分を除去した光は二色性のシートを透過する。このため、この透過光も着色している。反射光の色彩と透過光の色彩は互いに異なる色彩であり、一般に補色の関係にある。
【0014】
反射光の波長や色彩、透過光の波長や色彩は、いずれも、二色性シートの設計に依存している。例えば、反射光を橙色に着色し、透過光を水色に着色する二色性シートが知られている。
【0015】
そこで、この二色性シートの背面に反射型偏光子を配置すると、前記透過光のうち、特定の方向に偏光軸を有する光を選択的に反射する。前述の例では、水色に着色した光である。この水色に着色した偏光は、再び二色性シートを透過して出射する。出射した偏光は、そのまま、水色に着色している。
【0016】
このため、二色性シートの背面に反射型偏光子を配置した積層体に白色光を入射させてその反射光を観察すると、観察される反射光は次の3成分を合成した光である。すなわち、この合成反射光は、二色性シートの表面で反射された表面反射光、二色性シートの内部で多重反射されて出射された二色性シートの反射光、及び反射型偏光子で反射された偏光の3成分を含んでいる。そして、これらの3成分は、それぞれ、特有の色彩に着色されている。前述の例では、表面反射光成分は白色、二色性シートの反射光成分は橙色、反射型偏光子による反射光成分は水色である。このため、合成反射光は橙色に水色が混合された色彩を呈している。
【0017】
次に、偏光フィルムを介してこの合成反射光を観察することにより、これら各光成分を分離することが可能となる。すなわち、反射型偏光子による前記反射光成分は偏光であるから、偏光フィルムの配置によってこの成分を除去することができる。この場合、観察される光は、表面反射光と二色性シートの反射光とが合成された光であり、前述の例では橙色の色彩を有している。
【0018】
反射型偏光子による反射光成分を除去する割合は、この反射光成分の偏光軸と偏光フィルムの透過軸との交差角に依存するから、偏光フィルムを回転させてこの交差角を変化させることにより、反射型偏光子による反射光成分の除去割合を連続的に変化させることができる。そして、合成反射光の色彩は前記除去割合に依存するから、その合成反射光の色彩も連続的に変化する。例えば、反射光成分の偏光軸と偏光フィルムの透過軸との交差角が0度又は180度のとき、反射型偏光子による反射光成分は除去されることなく偏光フィルムを透過する。前述の例では、合成反射光の色彩は橙色に水色が混合された色彩である。また、90度のとき、反射型偏光子による反射光成分は完全に除去される。合成反射光の色彩は橙色である。すなわち、この例では、橙色に水色が混合された色彩から橙色まで、連続的に変化する。交差角の周期は180度である。
【0019】
なお、偏光フィルムは、これを二色性シートに密着して重ね合わせることを要しない。また、観察者も二色性シートに近接して観察することを要しない。二色性シートから離れた位置に偏光フィルムを配置し、遠方から観察しても、色彩の変化の有無を明瞭に認知することができる。
【0020】
請求項1に記載の発明は、このような技術的原理に基づいてなされたもので、反射光の色彩と透過光の色彩とが相違する二色性のシートと、特定の方向に偏光軸を有する光を選択的に反射する反射型偏光子とを積層して構成された偽造防止シートである。
【0021】
前述の技術的原理から明らかなように、この偽造防止シートに白色光を入射させ、偏光フィルムを介してその反射光(合成反射光)を観察したとき、その色彩は、反射型偏光子による反射光成分の偏光軸と偏光フィルムの透過軸との交差角に依存する。そして、偏光フィルムを回転させて交差角を変化させることにより、その色彩が変化する。このため、偏光フィルムの回転による色彩の変化が観察できたときは、その偽造防止シートは真正なものと判断できる。また、この偽造防止シートが添付された物品も真正である。他方、この現象が観察できなかったときには、その物品は非真正な偽造品又は贋造品である。
【0022】
次に、請求項2に発明は、前記偽造防止シートを、二色性シートの波長によって特定したもので、反射光の波長と透過光の波長とが相違する二色性のシートと、特定の方向に偏光軸を有する光を選択的に反射する反射型偏光子とを積層して構成された偽造防止シートである。
【0023】
ところで、二色性シートは光学レベルの膜厚を有する透明層を多数層積層して構成されるシートである。このようなシートとしては、例えば、支持体となる透明シート上に無機薄膜層を多数層積層したものが知られている。これら薄膜層は、真空蒸着法やスパッタリング法などの気相堆積法によって可能である。また、透明な樹脂層を多数層積層して構成された二色性シートも知られている。これらは、いずれも、光学レベルの膜厚を有する透明材料の層を多数層積層して構成されたものであり、これら多数層の透明材料層同士の境界面で反射と屈折を繰り返し、こうして繰り返された多重反射光同士が合成されて特定の着色光を生成して、これを反射し、あるいは透過する。
【0024】
他方、らせん状の分子構造を有する高分子物質を配置して構成されたシートも二色性シ
ートとして知られている。このような高分子物質の代表例はコレステリック液晶である。この二色性シートにあっては、そのらせん状分子構造に基づいて繰り返される構造単位が、前記透明材料層の役割を有している。すなわち、この二色性シートに入射した光は、前記構造単位と構造単位との間で反射と屈折を繰り返し、こうして繰り返された多重反射光同士が合成されて特定の着色光を生成して、これを反射し、あるいは透過するのである。
【0025】
本発明に係る偽造防止シートでは、これら二色性シートのうち、いずれのシートを使用することも可能である。請求項3〜4に記載の発明はこの点を明らかにしたもので、請求項3に記載の発明は、前記二色性シートが、光学レベルの膜厚を有する透明材料の層を多数層積層して構成されるシートである請求項1又は2に記載の偽造防止シートであり、請求項4に記載の発明は、前記二色性シートが、らせん状分子を配向させて構成されたシートである請求項1又は2に記載の偽造防止シートである。
【0026】
なお、これら二色性シートにおいて、その透明材料層の数、屈折率及び膜厚を制御することにより、あるいはらせん状分子のらせんピッチを制御することにより、このシートの法線に対する角度に応じて色彩が異なるように構成することができる。例えば、このシートの法線方向から反射光を観察した場合には橙色に見え、法線に対して50〜60度の角度から反射光を観察した場合には緑色に見える二色性シートである。請求項5に記載の発明はこのシートを利用できることを明らかにしたもので、請求項5に記載の発明は、前記二色性シートが、このシートの法線に対する角度に応じて色彩が異なる請求項1〜4のいずれかに記載の偽造防止シートである。
【0027】
次に、この偽造防止シートにおいては、二色性シートと反射型偏光子との間に位相差層を配置することができる。位相差層は、反射型偏光子より小さく、例えば文字形状などのパターン状に配置することができる。
【0028】
位相差層は、この位相差層に入射した光を常光と異常光とに分離する。常光と異常光とはいずれも直線偏光であって、両者はその偏光軸が直交する。そして、位相差層の内部においては常光の速度と異常光の速度とが異なり、このため、位相差層を透過する常光と異常光との位相差は、この位相差層に入射したときの位相差とは異なっている。例えば、設計波長に対して1/2波長の位相差を有する位相差層(1/2波長板)に対して、同位相の常光と異常光とを入射したとき、この位相差層を透過する常光と異常光とは1/2波長の位相差を有している。このため、1/2波長板の進相軸や遅相軸に対して45度の角度で交差する偏光軸を有する直線偏光を入射させた場合、この直線偏光は互いに強度の等しい常光と異常光とに分離し、両者の間で1/2波長の位相差を生じて1/2波長板を出射する。こうして出射した常光と異常光との合成光は直線偏光であって、その偏光軸は、1/2波長板に入射した直線偏光の偏光軸と直交している。このように、直線偏光を1/2波長板に入射させると、その偏光軸を回転させることができる。
【0029】
そこで、二色性シートと反射型偏光子との間に1/2波長板を配置した場合、反射型偏光子によって反射された直線偏光は、1/2波長板によってその偏光軸が回転する。したがって、1/2波長板が文字などのパターン状に配置された場合には、このパターン状1/2波長板を透過した直線偏光の偏光軸と、パターン状1/2波長板のない部分を透過した直線偏光の偏光軸とは、互いに異なっている。そして、この両直線偏光は、二色性シートを透過した後、偏光フィルムを介して観察者によって観察されるから、パターン状1/2波長板を透過した直線偏光とパターン状1/2波長板のない部分を透過した直線偏光のいずれか一方は偏光フィルムによって遮られる。このため、パターン状1/2波長板が配置された部分と、配置されていない部分では、異なる色彩に観察できるのである。
【0030】
請求項6に記載の発明は、このような技術的理由に基づいてなされたもので、前記二色
性シートと前記反射型偏光子との間に位相差層を備える請求項1〜5のいずれかに記載の偽造防止シートである。なお、以上の説明から明らかなように、位相差層は反射型偏光子より小さいパターン形状を有することが望ましい。また、位相差層は1/2波長の位相差を有することが望ましい。また、位相差層の進相軸や遅相軸と、反射型偏光子による反射光の偏光軸とは45度の角度で交差するように、位相差層を配置することが望ましい。
【0031】
次に、この偽造防止シートは、接着層を利用して物品に固定することができ、こうして固定された物品の真正を保障する偽造防止手段として利用できる。物品に固定する際の便宜のため、偽造防止シートの反射型偏光子の上に接着層を設けてラベルとすることができ、また、転写基材に剥離可能に偽造防止シートを配置して転写シートとすることができる。請求項7〜8に記載の発明は、このようなラベルや転写シートを提供するもので、請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の偽造防止シートの反射型偏光子の上に、接着剤層を有する偽造防止用ラベルであり、請求項8に記載の発明は、転写基材と、この転写基材から剥離可能で、被転写体に転写する転写層とから構成される転写シートであって、この転写層が、請求項1〜6のいずれかに記載の偽造防止シートと、被転写体に接着する接着剤層とを備える偽造防止用転写シートである。また、請求項9に記載の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の偽造防止シートを備える偽造防止物品である。
【0032】
次に、請求項10に記載の発明は、偽造防止シートの真偽を判定する方法に関するものである。以上の説明から明らかなように、本発明の偽造防止シートの存在が確認できる場合には真正であり、確認できない場合には非真正である。すなわち、請求項10に記載の発明は、偽造防止シートからの反射光の色彩を偏光フィルムを介して観察し、かつ、この偏光フィルムと偽造防止シートとの角度を変えて観察して、角度変化に伴う色彩の変化が観察できたときはその偽造防止シートは真正なものと判断し、色彩の変化が観察できないときには非真正なものと判断する真偽判定方法である。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明の偽造防止シートによれば、偏光フィルムを回転させることにより、その色彩が変化する。この色彩が観察できたときは真正であり、観察できなかったときには非真正である。こうして偽造・贋造の有無を判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】二色性シートと反射型偏光子との2層から構成される偽造防止シートの例を示す断面図
【図2】偽造防止シートに対して偏光を斜め入射させた場合について説明するための説明用斜視図
【図3】二色性シートと反射型偏光子との間に位相差層を有する偽造防止シートの断面図
【図4】偽造防止シートを使用したラベルの断面図
【図5】偽造防止シートを使用した転写シートの断面図
【図6】判定装置を使用して、本発明に係る偽造防止シートを固定した物品の真偽判定を行う方法を説明するための斜視図
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明に係る偽造防止シートは、二色性のシートと反射型偏光子とを必須の構成要素とするものである。両者は、例えば、光学的に等方性の透明接着剤を使用して積層することができる。また、このほか、他の層が積層されていてもよいが、二色性シートと反射型偏光子との間で光が透過できるものである必要がある。また、これら二色性シートと反射型偏光子とは、そのいずれか一方又は双方がパターン状に設けられていてもよい。例えば、文字、記号、あるいは装飾模様である。このように特定の意味を有するパターン状又は装
飾模様状に設けられることにより、これが偽造防止手段であることを認知困難にすることができる。
【0036】
図1は、二色性のシート11と反射型偏光子12との2層から構成される偽造防止シート1の例を示す断面図である。接着剤の図示は省略している。
【0037】
二色性シート11は、この二色性シート11に光入射させたとき、その反射光の波長と透過光の波長とが相違するものである。また、色彩に着目すれば、その反射光の色彩と透過光の色彩とが相違するものであるということもできる。
【0038】
このような二色性シート11としては、光学レベルの膜厚を有する透明材料の層を多数層積層して構成されるシートが知られている。例えば、透明支持体上に無機薄膜層を多数層真空蒸着したものである。また、光学レベルの膜厚を有する透明樹脂の層を多数層積層して構成されたシートも知られており、例えば、帝人(株)から「MLF−16.5」、「MLF−13.0」、「MLF−19.0」などの商品名で市販されている。これらは、いずれも、本発明に係る二色性シートとして利用できる。
【0039】
また、二色性シート11として、らせん状分子を配向させて構成されたシートも知られている。その代表例はコレステリック液晶である。前述のように、コレステリック液晶は、そのらせん構造に起因して、入射光のうち特定の波長帯域にある光を強く反射する性質(選択反射性)を有している。コレステリック液晶材料の平均屈折率をnm、螺旋ピッチをP、常光軸屈折率をno、異常光軸屈折率をneと表す時、反射光の波長帯域中心波長λsは次式(1)で表わされ、また、複屈折率を△nとして、反射光の波長帯域幅△λは次式(2)で表わされる。
【0040】
λs=nm×P (1)
△λ=△n×P/nm (2)
ここで、nm=(no+ne)/2であり、△n=ne−noである。
【0041】
なお、配向したコレステリック液晶材料は、例えば、基材上にまず配向膜を形成し、次にこの配向膜上に低分子量の硬化型液晶化合物を塗布してその被膜を形成すると共に、この低分子量液晶化合物を配向させ、次に光又は熱によって架橋・硬化することによって形成することが可能である。
【0042】
ところで、これら二色性シート11は、このシートの法線に対する角度に応じて色彩が異なることがある。例えば、前述の帝人(株)製MLF−16.5は、垂直方向の透過光は水色に見え、反射光は橙色に見える。また、面に対して急角度から見るよう傾けた場合は、透過光がマゼンタに見え、反射光は緑色に見える。また、らせん状分子を配置して構成されたシートの場合には、螺旋軸に対して傾けると、見かけ上のピッチが大きくなるため、中心周波数λsは短波長方向へ変化していき、波長帯域幅△λは狭くなる。従って視認角度を螺旋軸から傾けると、色は短波長側へ変化していく。
【0043】
なお、コレステリック液晶は、円偏光選択性も有しており、これは右円偏光及び左円偏光の片方のみを反射し、他方を透過させる性質である。故に、例えば右円偏光を反射するコレステリック液晶を観察する際、透明フィルム上に右円偏光を遮蔽する円偏光フィルタを通して見ると、観察対象のコレステリック液晶から反射してきた光を検証フィルムが遮蔽するため、黒く見える。円偏光フィルタは、右旋・左旋を適切にしたコレステリック液晶を透明フィルムに成膜する方法や、透過型偏光子に適切な位相差を持ったネマティック液晶を形成する方法などがあげられ、このような方法で、コレステリック液晶が反射する光が円偏光であるかを確認することで、コレステリック液晶そのものの有無を検証するこ
ともできる。
【0044】
次に、反射型偏光子12は、特定の方向に偏光軸を有する光を選択的に反射するものである。このような反射型偏光子12としてはフィルム状のものが好ましく、例えばワイヤーグリッド型偏光子が使用できる。また、多層薄膜構造による反射型偏光子を使用することもできる。このような多層薄膜構造による反射型偏光子は市販されており、例えば、3M社からDBEFシリーズの偏光フィルムとして販売されている。また、この反射型偏光子12として、吸収型偏光子の裏面に反射層を設けたものを反射型偏光子として利用してもよい。例えば、PVAからなる延伸フィルムにヨードを吸収させたPVA−ヨウ素型フィルムまたは二色性染料型フィルムを吸収型偏光子とし、この裏面に金属箔や金属蒸着膜を配置して、反射型偏光子とすることも可能である。また、DBEF反射型偏光フィルム(3M社製)を使用することもできる。
【0045】
この偽造防止シート1は、前述のように、この偽造防止シート1に偏光フィルムを介して光を入射させ、かつ、この偏光フィルムを偽造防止シート1の法線を軸として回転させることにより、その反射光の色彩や波長が変化する。入射光は、偽造防止シート1の法線方向から入射させてもよいが、色彩の変化を鮮明にするため、偽造防止シート1の法線に対して傾いた方向から入射させることが望ましい。より望ましくは、ブリュースタ角又はその近辺である。空気から二色性シート11に入射するときのブリュースタ角は50〜60度の範囲内にあることが通常であるから、50〜60度の入射角から入射させることが望ましい。
【0046】
次に、図2は、偽造防止シート1に対して偏光を斜め入射させた場合について説明するための説明用斜視図である。なお、本発明において、法線に対する角度と、法線を軸としてこの周囲を回る回転角度を区別して説明する必要があることから、偽造防止シート1の表面と平行な面を「水平面」と呼び、偽造防止シート1の法線と入射光とで規定される面を「入射面」と呼ぶ。図2において、互いに直交するx軸とy軸とを含む面が水平面である。また、法線を軸としてこの周囲を回る回転角度を「水平面内角度」と呼ぶ。
【0047】
そして、p偏光の偏光軸は入射面対して平行であるが、その偏光軸と水平面との角度は入射角に依存する。他方、s偏光の偏光軸は入射面に対して垂直であるが、水平面に平行である。このように偏光軸が水平面に平行である直線偏光を「水平偏光」と呼ぶこともある。
【0048】
次に、図2を参照して、二色性シート11として前述の帝人(株)製MLF−16.5を使用した場合を例として説明する。なお、図2は、反射型偏光子12から反射する反射光の偏光軸がx軸方向である場合を示している。
【0049】
まず、光Saが斜め入射した場合について説明する。光Saは、図示のように、その進行方向がy軸−z軸で規定される面内にある。また、その入射角は50〜60度の範囲にある。
【0050】
この入射光Saに応答して偽造防止シート1から出射した反射光Sa’は、3成分を合成したものである。すなわち、まず、第1成分は、二色性シート11の表面で反射された表面反射光である。入射角が50〜60度の範囲にあるため、この表面反射光はs偏光であり、その偏光軸はx方向である。すなわち、偏光軸が水平面に平行な水平偏光である。なお、入射角が厳密にブリュースタ角に一致しない場合には、この表面反射光の中にp偏光がわずかに混入している。p偏光の偏光軸はx方向と一致せず、y方向又はz方向の偏光軸を有するものが含まれている。いずれにしても表面反射光の色彩は白色である。
【0051】
次に、前記反射光Sa’の第2成分は、二色性シート11の内部で多重反射した後、入射側に出した光成分(内部反射光)である。この内部反射光も表面反射光と同様の偏光軸を有している。すなわち、x方向の偏光軸である。なお、この内部反射光には、y方向やz軸方向に偏光軸を有する偏光もわずかに混入している。これら内部反射光の色彩は、二色性シート11が前述の帝人(株)製MLF−16.5である場合には、緑色である。
【0052】
そして、前記反射光Sa’の第3成分は、二色性シート11を透過して反射型偏光子12によって反射された後、再度二色性シート11を透過して出射された光成分(反射型偏光子12による反射光)である。この光成分の偏光軸は反射型偏光子12にしたがい、x方向である。また、その色彩は、マゼンタである。
【0053】
そして、これら3成分を合成した前記反射光Sa’は、内部反射光の緑色に反射型偏光子12による反射光のマゼンタが混合した色彩を有している。
【0054】
そこで、偏光フィルムを検光子として、この検光子を介して前記反射光Sa’を観察した場合の色彩について説明する。まず検光子の透過軸がy軸方向に向くように配置すると、前記3成分はいずれも遮断される。しかしながら、前述のように、表面反射光にはp偏光がわずかに混入しており、内部反射光にはy方向やz軸方向に偏光軸を有する偏光もわずかに混入しているから、これらが検光子を透過して観察される。その色彩は、内部反射光の緑色である。
【0055】
次に、検光子の透過軸がx軸方向に向くように配置すると、前記反射光Sa’の3成分はいずれもこの検光子を透過する。その色彩は緑色にマゼンタが混合したベージュのような色彩である。
【0056】
なお、検光子の透過軸がx軸及びy軸の双方に交差する方向の場合には、その間の色彩が観察される。
【0057】
このため、反射型偏光子12による反射光の偏光軸(この例ではx軸方向)と、偽造防止シート1の法線(z軸方向)とで規定される面内で、入射光Saが斜め入射したとき、検光子を介して反射光Sa’を観察すると、検光子の透過軸の水平面内角度(法線を軸としてこの周囲を回る回転角度)に応じて、反射光Sa’の色彩が異なって観察できる。そして、検光子を、偽造防止シート1の法線を軸として回転すると、その色彩は、緑色にマゼンタが混合したベージュのような色彩から緑色まで、連続的に変化する。その周期は180度である。
【0058】
次に、進行方向がx軸−z軸で規定される面内にある光Sbが入射した場合について説明する。反射型偏光子12から反射する反射光の偏光軸はx軸方向である。
【0059】
この場合にも、入射光Sbに応答して偽造防止シート1から出射した反射光Sb’は、3成分を合成したものである。すなわち、表面反射光、内部反射光、及び反射型偏光子12による反射光である。
【0060】
表面反射光の主成分はs偏光であり、その偏光軸はy方向である。但し、p偏光がわずかに混入している。p偏光の偏光軸はy方向と一致せず、x方向又はz方向の偏光軸を有するものが含まれている。色彩は白色である。
【0061】
また、内部反射光の主成分は、表面反射光と同様にy方向に偏光軸を有する直線偏光である。この内部反射光には、x方向やz軸方向に偏光軸を有する偏光もわずかに混入している。色彩は緑色である。
【0062】
次に、反射型偏光子12による反射光の偏光軸は反射型偏光子12にしたがって、x方向である。また、その色彩は、マゼンタである。
【0063】
そこで、まず検光子の透過軸がy軸方向に向くように配置すると、前記3成分のうち、反射型偏光子12による反射光が遮断され、表面反射光と内部反射光とが透過する。このため、観察される色彩は、内部反射光の緑色である。
【0064】
次に、検光子の透過軸がx軸方向に向くように配置すると、前記3成分のうち、反射型偏光子12による反射光が透過する。他方、表面反射光と内部反射光とは遮断される。しかしながら、前述のように、表面反射光にはp偏光がわずかに混入しており、内部反射光にはy方向やz軸方向に偏光軸を有する偏光もわずかに混入しているから、これらが検光子を透過して観察される。その色彩は、反射型偏光子12による反射光のマゼンタに内部反射光の緑色がわずかに混合した色彩である。
【0065】
そして、検光子を、偽造防止シート1の法線を軸として回転すると、その色彩は、マゼンタに緑色がわずかに混合した色彩から緑色まで、連続的に変化する。その周期は180度である。
【0066】
以上の説明から明らかなように、入射光Sa,Sbの進行方向に関わらず、斜め入射した光の反射光Sa’,Sb’を検光子を介して観察し、しかも、この検光子を偽造防止シート1の法線を軸として回転させると、その色彩が連続的に変化する。
【0067】
次に、本発明の偽造防止シート1は、その他の層を有することもできる。例えば、位相差層である。また、その他の偽造防止手段を、併せて備えることも可能である。また、物品に固定する際の便宜のため、接着剤層を設けることもできる。
【0068】
位相差層は、二色性シートと前記反射型偏光子との間に配置することができる。この位相差層は、文字や記号のパターン状に設けられることが望ましい。あるいは、二色性シートと前記反射型偏光子との境界面を複数の領域に区分して、領域ごとに異なる位相差を有する位相差層を配置することが望ましい。また、この位相差層は、反射型偏光子12による反射光に占める波長成分のうち主な波長を設計波長として、その設計波長に対して1/2波長の位相差を有する位相差層(1/2波長板)であることが望ましい。この場合、反射型偏光子によって反射された直線偏光は、1/2波長板によってその偏光軸が回転する。したがって、1/2波長板が文字などのパターン状に配置された場合には、このパターン状1/2波長板を透過した直線偏光の偏光軸と、パターン状1/2波長板のない部分を透過した直線偏光の偏光軸とは、互いに異なっている。そして、この両直線偏光は、二色性シートを透過した後、観察者によって観察される。偏光フィルムから構成される検光子を介することなく観察した場合には、このパターンを認知することができない。他方、検光子を介して観察した場合には、パターン状1/2波長板を透過した直線偏光とパターン状1/2波長板のない部分を透過した直線偏光のいずれか一方は偏光フィルムによって遮られるため、パターン状1/2波長板が配置された部分と、配置されていない部分では、異なる色彩に観察できる。
【0069】
例えば、位相差層のパターン形状を特定文字と無地背景で構成するなど、コントラストを示す2種類のエリア面積に偏りがある場合、検光子を通して観察した時に、ポジ状態では反射型偏光子による反射が支配的となり大部分が明るくなるが、ネガ状態では透過型偏光子によって反射光が遮られ大部分が暗くなるように構成することができる。そして、二色性シート11による色彩は、周囲が暗い場合に鮮明に観察できるから、このようにエリア面積に偏りがある場合には、より鮮明に色彩が観察でき、また、検光子の回転による色
彩の変化も鮮明に認知できる。
【0070】
図3はこのような位相差層13を有する偽造防止シートの断面図である。位相差層13はパターン状に設けられており、周囲を接着剤層14で囲んで、偽造防止シート1の表面が面一になるように構成されている。このため、位相差層13がパターン状に構成されているにも拘らず、偽造防止シート1の表面には凹凸がなく、このパターン状位相差層13の存在を認知することができない。
【0071】
位相差層13は配向した液晶材料から構成することができる。例えば、二色性シート11又は反射型偏光子12の上にまず配向膜を形成し、次にこの配向膜上にネマティック液晶材料を塗布してその被膜を形成すると共に、この液晶材料を配向させる。そして、この液晶材料を硬化させてその配向状態を固定することで、位相差層を形成することが可能である。
【0072】
配向膜は、例えばポリイミド等の合成樹脂材料の被膜を形成した後、この被膜の表面をラビングして線状の凹凸を付与することによって形成することができる。また、この被膜表面を複数の領域に区分し、これら複数の領域の一部をマスク材料で被覆した状態でラビングし、次いでマスク材料を剥離除去することにより、その被膜の一部領域に線状の凹凸を付与してもよい。いずれの場合であっても、線状の凹凸を付与された領域に塗布された液晶材料はこの線状の凹凸に沿って配向する。
【0073】
また、配向膜は、例えば、光学的干渉作用を利用して形成することもできる。例えば、任意の支持体上に感光性樹脂を塗布してその被膜を形成し、2方向からレーザー光を照射して、これらレーザー光を感光性樹脂被膜上で干渉させる。このとき、その干渉縞は感光性樹脂表面に凹凸の形態で記録される。こうして干渉縞が凹凸の形態で記録された感光性樹脂を原版として利用する。他方、前記光反射膜上に熱可塑性樹脂の被膜を形成し、この被膜に前記原版を熱圧して、原版の凹凸を転写する。こうして凹凸の形成された熱可塑性樹脂被膜に液晶材料を塗布すると、液晶材料はこの凹凸に沿って配向する。なお、感光性樹脂被膜上でレーザー光を干渉させて凹凸を形成する代わりに、電子線硬化樹脂の表面を電子線で描画して前記凹凸を形成することも可能である。この方法によって、一部領域に凹凸を付与することも可能である。
【0074】
また、光配向剤を利用して配向膜を形成することも可能である。光配向剤は、光の吸収能が偏光の電気ベクトルの方向によって異なる基を有する化合物であり、この光配向剤の塗膜に直線偏光を照射することにより、配向膜を形成することができる。配向度は、照射する直線偏光のエネルギー量によって異なるから、光配向剤の塗膜表面を多数の領域に区分して、これら多数の領域のうち一部の領域に選択的に高エネルギーの直線偏光を照射することにより、この領域に塗布する液晶材料を配向させて、この液晶材料を透過する光に位相差を生じさせることができる。この場合、直線偏光を照射しなかった部位に塗布された液晶材料は配向せず、したがって、位相差を生じることもない。光配向剤としては、アゾベンゼン等の光異性化反応を生じる基、シンナモイル基、クマリン基、カルコン基等の光二量化反応を生じる基、ベンゾフェノン基等の光架橋反応を生じる基などを有する化合物が知られており、例えば、DIC(株)から光配向剤の名称で市販されている。
【0075】
次に、領域ごとに異なる位相差を有する液晶材料の被膜を形成する方法について説明する。この方法では、サーモトロピック液晶性を示し、光によって重合又は架橋できるネマティック液晶化合物を使用する。そして、この液晶化合物に、溶剤、キラル剤及び光重合開始剤を混合して塗料を作製する。このほか、塗料には、熱重合開始剤、増感剤、連鎖移動剤、多官能モノマーあるいはオリゴマー、樹脂、界面活性剤、貯蔵安定剤、密着向上剤その他必要な材料を混合することができる。このような液晶化合物としては、例えば、ア
ルキルシアノビフェニル、アルコキシビフェニル、アルキルターフェニルおよびこれらの誘導体等が例示できる。
【0076】
そして、この塗料を前記配向膜の上に塗布乾燥することにより、前記凹凸に沿って配向した液晶の被膜が得られる。そして、次に、この被膜の特定の領域に対して紫外線を照射して照射領域の被膜を硬化させ、その配向状態を固定する。次に説明するように、この領域は、その他の領域に比較して、配向度が大きく、従って位相差が大きい領域である。
【0077】
次に、この被膜全体を加熱して未硬化領域の配向状態を緩め、この状態で再び紫外線を照射して、照射領域の被膜を硬化させ、その配向状態を固定する。この領域では緩めた配向状態が固定されているから、比較的位相差が小さい領域である。
【0078】
また、前記光配向剤を利用して、領域ごとに異なる位相差を有する液晶材料の被膜を形成することも可能である。すなわち、光配向剤の塗膜表面を多数の領域に区分して、その一部の領域に比較的高エネルギーの直線偏光を照射し、その他の領域に比較的低エネルギーの直線偏光を照射する。次に、その表面に液晶材料を塗布すれば、この液晶材料の層は、高エネルギーの直線偏光を照射した領域で比較的高い位相差を有し、低エネルギーの直線偏光を照射した領域で比較的低い位相差を有する。
【0079】
なお、このほか、感光性の液晶材料の被膜に偏光を照射することにより、その偏光面に沿って配向させることも可能である。すなわち、キラル剤及び光重合開始剤を混合したネマティック液晶材料の被膜に対して、直線偏光を照射することにより、この被膜に含まれる液晶材料が照射光の偏光面に沿って配向し、かつ、硬化する。したがって、この方法を採用する場合には、配向膜を必要とせず、基材又は光反射膜上に直接液晶材料の被膜を形成し、この被膜中の液晶材料を配向させて、位相差層を形成することができる。照射する直線偏光の偏光度に応じて配向度が変化するから、位相差層の位相差を制御することもできる。また、パターン状に照射することにより、このパターンに応じた領域について配向させることが可能である。
【0080】
また、その他の偽造防止手段として、見る角度によって色や模様が変る回折構造体や多層干渉膜を利用した偽造防止手段や紫外線照射によって発色する蛍光インキを含む印刷層を例示することができる。これら偽造防止手段は、二色性シートと前記反射型偏光子との間に配置することができるが、これら二色性シートと前記反射型偏光子との間の光透過を妨害することがないように、パターン状に設けることが望ましい。
【0081】
次に、図4は、この偽造防止シート1を使用したラベルの断面図で、すなわち、物品に接着固定する際の便宜のため接着剤層2を設けてラベルを構成したものである。この接着剤層2は、偽造防止シート1の反射型偏光子12の上に設けることが望ましいが、固定する物品が透明な場合には、二色性シート11の上に接着剤層2を設けて、この接着剤層2により物品に接着固定してもよい。この場合には、透明な物品を透過して反射した反射光によってその真偽を判定する。接着剤層2としては任意の接着剤が使用でき、感圧接着剤と感熱接着剤のいずれでもよい。
【0082】
また、図5は、この偽造防止シート1を使用して転写シートを構成したものである。この転写シートは転写基材31と転写層32とを剥離可能に積層して構成したもので、転写層32は物品(被転写体)に移行する部分であり、転写基材31は転写層32から剥離して除去される部分である。転写層32は、被転写体に接着する接着剤層2と偽造防止シート1とを含んで構成され、この接着剤層2によって被転写体に接着固定される。なお、図示のように、転写基材31と転写層32との間に剥離層33を配置して、転写基材31と転写層32と剥離性を高めてもよい。この剥離層33は、転写して転写基材31を剥離し
たときに、被転写体表面に残存するものであってもよいし、転写基材31と共に除去されるものであってもよい。被転写体表面に残存する場合には、この剥離層33は偽造防止シート1の表面を物理的損傷や化学的損傷から保護する保護層の役割を兼ねることになる。なお、偽造防止シート1は、その二色性シート11が転写基材31に対面するように配置し、反射型偏光子12の上に接着剤層2を設けることが望ましい。被転写体が透明な場合には、反射型偏光子12が転写基材31に対面するように配置し、二色性シート11の上に接着剤層2を設けることも可能である。接着剤層2としては任意の接着剤が使用でき、感圧接着剤と感熱接着剤のいずれでもよい。また、転写基材31、剥離層33は、いずれも公知である。
【0083】
次に、図6は、判定装置4を使用して、本発明に係る偽造防止シート1を固定した物品の真偽判定を行う方法を示す斜視図である。この例では、物品Aとして、シート状物品を使用している。例えば、銀行券、債券、商品券、小切手などの金券や有価証券である。色判定装置4にはこのシート状物品Aを載置する載置台41が設けられており、この載置台41表面に対して50〜60度の入射角で光を照射する光源42が設けられている。また、シート状物品Aの表面からの反射光の光路上には偏光フィルム43が配置されている。この偏光フィルム43はその周囲がフレーム44に固定されており、このフレーム44は、載置台41表面に対する法線を回転軸として、回転自在に構成されている。そして、このフレーム44の回転に伴って、偏光フィルム43も回転する。なお、フレーム44は手動で回転させることもできるし、内蔵したモーターなどの回転機構によって低速で回転させることもできる。
【0084】
この判定装置4を使用してシート状物品Aの真偽を判定する方法は明らかであろう。すなわち、載置台41にシート状物品Aを載置し、光源42を点燈して、シート状物品Aの偽造防止シート1に対して50〜60度の入射角で光を入射させる。そして、その反射光を偏光フィルム43を通して観察する。この観察は肉眼で可能である。次に、フレーム44を回転させることにより偏光フィルム43を回転させ、反射型偏光子12による反射光の偏光軸と偏光フィルム43の透過軸との交差角度を変化させて、その色彩の変化を観察する。偽造防止シート1の設計とおりの色彩及びその変化が観察できれば、真正なものと判断できる。また、設計とおりの色彩やその変化が観察できなければ、非真正なものと判断することができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明の一部について実施例を説明する。
【0086】
(実施例)
ポリカーボネートフィルム上に、UV樹脂と石英モールドによって形成されたピッチ100ナノメートルから200ナノメートル程度で、深さ100ナノメートルから300ナノメートル程度の直線凹凸構造に、アルミニウムを20ナノメートルから50ナノメートル程度蒸着することによって直線偏光を反射する効果を持つワイヤーグリッド型の反射型偏光子を用意した。
【0087】
二色性シートとしては、帝人(株)製MLF−16.5を使用した。そして、この表面に、パターン状の位相差層を形成した。このパターン状位相差層の形成方法は次のとおりである。
【0088】
すなわち、MLF−16.5に、まず、光配向剤IA−01(DIC(株)製)を0.1μmの厚さでマイクログラビアコーティング法を用いてコーティングし、波長365nmの直線偏光を用いて全面に1J/cmの照射量で露光した。次に、フォトマスクを通して前記直線偏光を1J/cmの照射量でパターン露光して、この露光領域の配向性能
をその他の領域と異なるようにした。そして、この塗布面の全面に、UVキュアラブル液晶UCL−008(DIC(株)製)を1.5μmの厚さで塗布し、熱風で1分間加熱することによりこの液晶を配向させた。このとき、前記パターン状露光領域の液晶の配向度は、その他の領域の液晶の配向度と異なっている。次に、窒素ガス雰囲気下で0.5mJ/cmの照度で露光して、この液晶被膜を硬化させ、それぞれの前記領域の配向を固定して位相差層を形成した。この位相差層は、前記パターン状露光領域とその周囲の領域との間で1/2波長の位相差を有している。
【0089】
そして、接着剤を使用して、前記反射型偏光子と、パターン状位相差層付きの二色性シートとを貼り合わせて色彩変化シートを製造した。なお、この際、パターン状位相差層が反射型偏光子と二色性シートとの間に位置するように配置した。
【0090】
この色彩変化シートを水平に持ち、この色彩変化シートからの反射光のうち、水平偏光(偏光軸が偽造防止シートの表面と平行である直線偏光)を遮蔽するように偏光フィルムを配置し、この偏光フィルムを介して、色彩変化シート表面の法線に対して50〜60度の角度から観察したとき、全体的に緑色が濃い色の中に、フォトマスクによるパターン露光を行ったパターンの絵柄を遠方から確認できた。偏光フィルムを90度回転させることで、絵柄パターンのネガポジが反転し、全体の色は緑色からマゼンタが混ざったベージュのような色へ変化した。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、チケットやパスポートのような真贋判定が要求されるような用途に用いることができる。例えば、チケットやパスポートなどといった被判定物の基材そのものに本シートを用いたり、本シートをシールや転写シートにして被判定物に貼付することで、被判定物を作成した場合、真偽判定を行う者は、例えば図6に示したような判定装置を用いて、色彩変化を確認することによって判定を行うことができる。
【符号の説明】
【0092】
1 偽造防止シート
11 二色性シート
12 反射型偏光子
13 位相差層
14 接着剤層
2 接着剤層
31 転写基材
32 転写層
33 剥離層
4 判定装置
41 載置台
42 光源
43 偏光フィルム(検光子)
44 フレーム
A 物品
Sa 入射光
Sa’ 反射光
Sb 入射光
Sb’ 反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射光の色彩と透過光の色彩とが相違する二色性のシートと、特定の方向に偏光軸を有する光を選択的に反射する反射型偏光子とを積層して構成された偽造防止シート。
【請求項2】
反射光の波長と透過光の波長とが相違する二色性のシートと、特定の方向に偏光軸を有する光を選択的に反射する反射型偏光子とを積層して構成された偽造防止シート。
【請求項3】
前記二色性シートが、光学レベルの膜厚を有する透明材料の層を多数層積層して構成されるシートである請求項1又は2に記載の偽造防止シート。
【請求項4】
前記二色性シートが、らせん状分子を配向させて構成されたシートである請求項1又は2に記載の偽造防止シート。
【請求項5】
前記二色性シートが、このシートの法線に対する角度に応じて色彩が異なる請求項1〜4のいずれかに記載の偽造防止シート。
【請求項6】
前記二色性シートと前記反射型偏光子との間に位相差層を備える請求項1〜5のいずれかに記載の偽造防止シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の偽造防止シートの反射型偏光子の上に、接着剤層を有する偽造防止用ラベル。
【請求項8】
転写基材と、この転写基材から剥離可能で、被転写体に転写する転写層とから構成される転写シートにおいて、
転写層が、請求項1〜6のいずれかに記載の偽造防止シートと、被転写体に接着する接着剤層とを備える偽造防止用転写シート。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれかに記載の偽造防止シートを備える偽造防止物品。
【請求項10】
偽造防止シートからの反射光の色彩を偏光フィルムを介して観察し、かつ、この偏光フィルムと偽造防止シートとの角度を変えて観察して、角度変化に伴う色彩の変化が観察できたときはその偽造防止シートは真正なものと判断し、色彩の変化が観察できないときには非真正なものと判断する真偽判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−242714(P2011−242714A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117058(P2010−117058)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】