偽造防止パターン、偽造防止パターン形成体、スリットフィルム、偽造防止パターン形成方法、及び真偽判別具
【課題】表意文字に基づいて加工された偽造防止パターンと簡単な補助具を用いることで偽造防止の有無の判定が容易な技術の提供。
【解決手段】意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字7を基準文字8とし、その基準文字8を一定方向に所定の割合で圧縮して得た肉眼で判読不可能な縮小扁平文字でなるオブジェクト4をその圧縮方向に等間隔に複数並べてなる偽造防止パターン1と、この偽造防止パターン1を形成する一のオブジェクト4とオブジェクト間の間隔で決定されるオブジェクト送り長さに基づいて作製されたスリットフィルム5を組み合わせて用いる。
【解決手段】意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字7を基準文字8とし、その基準文字8を一定方向に所定の割合で圧縮して得た肉眼で判読不可能な縮小扁平文字でなるオブジェクト4をその圧縮方向に等間隔に複数並べてなる偽造防止パターン1と、この偽造防止パターン1を形成する一のオブジェクト4とオブジェクト間の間隔で決定されるオブジェクト送り長さに基づいて作製されたスリットフィルム5を組み合わせて用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品券や入場券などの有価証券類、住民票や印鑑登録証明書等の公的に発行されるドキュメント類、その他のセキュリティ確保が必要な被刷体などに対し、その偽造防止に用いられる偽造防止パターンと、その偽造防止パターンが紙や薄板状プラスチック等のこれらの被刷体に付された偽造防止パターン形成体、そして、この偽造防止パターンを形成する偽造防止パターン形成方法と、偽造防止パターンの真偽を判別可能なスリットフィルム、さらに、偽造防止パターンとスリットフィルムで真偽を判別する真偽判別具に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券類やその他のセキュリティ確保が必要なドキュメント類等は、それらの用紙に透かしやマイクロ文字、隠し文字を施したり、特殊インキを用いて印刷したり、ホログラムを付与したりして偽造防止を図っている。
【0003】
こうした種々の偽造防止手段のうち、偽造防止パターンが形成された印刷物に所定のフィルムを重ねることにより、モアレを発生させて像を表出させる技術がある。例えば特開2004−25740号公報(特許文献1)には、平行線とその平行線と所定の角度をなす他の平行線とが形成された印刷物に、複数の平行線が形成された光透過性フィルムを重ねると、モアレが発生して像が現出する。
【0004】
また、印刷物と所定のフィルムを重ねることで像を表出させる別の技術として、例えば特開平10−230674号公報(特許文献2)には、位相変調方式により画像を形成した印刷物に、万線(等間隔で平行に引かれた多数の直線)状のパターンが形成された判別具を重ねると、印刷物に形成された画像と、判別具に形成された万線状パターンとが一体となった画像を現出させる技術が記載されている。
【0005】
さらに、簡単な補助具を用いることで隠し文字がなされたものであるか否かが簡単にわかる技術として、例えば実開昭54−138700号公報(特許文献3)には、万線よりなる背景と、この万線に対して所定の角度を持った万線で形成する隠し文字とを有する抽選券に、所定の万線を施した透明シートを一定位置で重ねると、見えなかった隠し文字がはっきりと見えるようになる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−25740号公報
【特許文献2】特開平10−230674号公報
【特許文献3】実開昭54−138700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特開2004−25740号公報(特許文献1)に記載された技術では、モアレの発生をもって像が表出するため、光透過性フィルムを重ねる角度によって種々のモアレが発生する中で像となるモアレを見いだす必要があり、像の表出がわかりにくいという問題がある。
【0008】
また、特開平10−230674号公報(特許文献2)に記載された技術では、位相変調方式という特別な方式によって印刷物を形成しなければならず、微細な領域内で精緻に位置制御された印刷が必要となるため、所望のパターンを印刷物に形成することが困難である。また、印刷物の印刷部分と判別具の所定の部分とを合わせてはじめて像が形成されるため、印刷物の決まった位置に判別具を重ね合わせなければ像が表出しないという問題もある。
【0009】
さらに、実開昭54−138700号公報(特許文献3)に記載された技術は、この技術においても抽選券と透明シートを一定位置で重ねる必要があり、重ね位置によっては隠し文字の存在がわかりにくいことがある。また、隠し文字と背景との境界が明確であるため、補助具を用いなくともよく見れば隠し文字がわかってしまうことがある。
【0010】
本発明は、こうした従来技術が存在する中で完成されたものであって、簡単な補助具を用いることで偽造防止の有無がわかる技術である。そして、補助具の厳密な使い方が要求されることがなく、また、偽造防止パターンの形成が容易であり、補助具が無い場合には偽造防止の有無が容易にはわからない技術である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を基準文字とし、その基準文字を一定方向に所定の割合で圧縮して得た肉眼で判読不可能な縮小扁平文字でなるオブジェクトを、その圧縮方向に等間隔に複数並べてなる偽造防止パターンである。
この偽造防止パターンは、意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を基準文字とし、その基準文字を一定方向に所定の割合で圧縮して得た肉眼で判読不可能な縮小扁平文字でなるオブジェクトで形成される。オブジェクトは意味内容が判別可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を基準として、そうした意味内容が判別可能な文字等を一定方向に所定の割合で圧縮して得た縮小扁平文字であるため、その作製が容易である。また、このオブジェクトは、通常の表意文字に比べて扁平しているため、単にルーペで拡大しただけでは正常な表示形態の表意文字とはならない。そのため、偽造防止効果が高い。
また、偽造防止パターンは複数のオブジェクトを等間隔に並べているため、パターン化しやすく、意味内容が不明であっても印刷ミスなどの不良品の発見が容易である。
なお、ここで言う「表意文字」は、意味内容を有する文字等のことであるが、文字に限られるものではない。例えば、記号や数字、自動車やテレビなど特定の意味内容を想起し得るイラストなどの図形等も含むものである。また、「肉眼で判別可能」とは、ルーペや顕微鏡等の拡大鏡を用いずに普通に目視することで判別可能なことをいう。
【0012】
また、上記偽造防止パターンが設けられた偽造防止パターン形成体を提供する。偽造防止パターン成形体には偽造防止パターンが設けられているため、偽造防止パターンが付されていないものと比べて簡単に真贋評価をすることができる。こうした偽造防止パターン形成体には、上記偽造防止パターンを印刷した用紙や、こうした用紙を用いた商品券や入場券等の有価証券、その他のドキュメント類の他、紙以外の素材、例えばプラスチック素材でできたカード類や身分証明書等も含まれる。また、偽造防止パターンの形成も、肉眼で視認不可能な程度に小さく形成できるとともに、拡大すれば所定の形状を維持できる程度に解像度が高ければ、印刷以外の方法、例えばプリンターによる印字や、写真等であっても良い。
【0013】
上記偽造防止パターンや偽造防止パターン形成体は、それ自体で偽造防止に寄与するものであるが、所定のスリットフィルムと合わせて用いることで、所定の表意文字をイメージすることができる。こうしたスリットフィルムは、一定幅のスリットとこのスリットよりも広幅で一定幅の遮光部分を交互に有するスリットフィルムについて、前記偽造防止パターンを形成する一のオブジェクトとその一のオブジェクトから前記一定方向に隣接する他の一のオブジェクトに至る間隔とをその方向に合算した長さをオブジェクト送り長さとし、このオブジェクト送り長さを等間隔に分割して複数の仮想分割領域を設定したときに、この仮想分割領域のうちのいくつかを透光部分としてスリットに形成し、残りの仮想分割領域を遮光して遮光部分に形成したことを特徴とする前記偽造防止パターンに重ねることで表意文字をイメージさせるスリットフィルムである。
【0014】
偽造防止パターンは上記のスリットフィルムを補助具として用いることで、偽造防止パターンを拡大することなく、隠れている表意文字をイメージすることができる。
そして、このスリットフィルムは、スリットフィルムの向こう側が視認可能なスリットと、スリットフィルムの向こう側が視認不可能な遮光部分とを有しており、スリット幅は一定で、この幅よりも広幅な一定幅を有する遮光部分が交互に形成されている。加えて、このスリット幅や遮光部分の幅は仮想分割領域に基づいて決定されている。仮想分割領域とは、偽造防止パターンを形成する一のオブジェクトの長さと、その一のオブジェクトが圧縮された方向に隣接する次のオブジェクトまでの間隔とをその方向に合算した長さをオブジェクト送り長さとしたときに、このオブジェクト送り長さを等間隔に分割して得られる複数の仮想領域のことである。すなわち、スリット幅や遮光部分の幅が仮想分割領域に基づいて形成されるため、各スリットからはオブジェクトを規則正しく分割したうちの異なる部分が見えるため、オブジェクトを形成する基となる表意文字をイメージすることができるのである。
なお、オブジェクト送り長さの設定にあたり、オブジェクト間の間隔は0であっても良い。また、本明細書、特許請求の範囲等において、“幅”や“長さ”という際には、特にことわりのない限り、オブジェクト作製の際に基準となる表意文字を圧縮する際の圧縮方向と同方向の幅や長さについていうものとする。そして、この方向を「オブジェクトの圧縮方向」というものとする。
【0015】
スリットフィルムについて、複数の仮想分割領域の一の仮想分割領域の長さが、一のオブジェクトから隣接する他の一のオブジェクトに至る間隔の長さと同じ長さとすることができる。複数の仮想分割領域の一の仮想分割領域の長さが一のオブジェクトから隣接する他の一のオブジェクトに至る間隔と同じ長さであるため、スリットフィルムを通して偽造防止パターンを見た際に得られるイメージをより基準文字に近づけることができる。
【0016】
さらにスリットフィルムについて、オブジェクト送り長さをオブジェクトの圧縮方向に等間隔に分割した分割数をオブジェクト送り値と定義し、一のスリットと一の遮光部分とを構成する仮想分割領域数をスリット送り値と定義したときに、スリット送り値>オブジェクト送り値とすることができる。スリット送り値>オブジェクト送り値としたため、スリットフィルムを通して偽造防止パターンを見た際に、表出するイメージが正像として表れる。
【0017】
また、スリットフィルムについて、オブジェクト送り長さをオブジェクトの圧縮方向に等間隔に分割した分割数をオブジェクト送り値と定義し、一のスリットと一の遮光部分とを構成する仮想分割領域数をスリット送り値と定義したときに、スリット送り値<オブジェクト送り値とすることもできる。スリット送り値<オブジェクト送り値としたため、スリットフィルムを通して偽造防止パターンを見た際に、表出するイメージが反転像(倒像)として表れる。
【0018】
さらにまた、意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を基準文字とし、その基準文字を一定方向に所定の割合で圧縮して得た肉眼で判読不可能な縮小扁平文字でなるオブジェクトを、その圧縮方向に等間隔に複数並べた偽造防止パターンを形成する偽造防止パターン形成方法を提供する。
こうした偽造防止パターン形成方法によれば、偽造防止パターンの作製が容易で、肉眼では容易に判別しにくい偽造防止パターンを作製することができる。
【0019】
そして、所定の偽造防止パターンとスリットフィルムからなる真偽判別具を提供する。この真偽判別具は、上述の偽造防止パターンとスリットフィルムからなる真偽判別具であるため、肉眼では容易に真偽がわからない一方で、スリットフィルムを合わせて用いることで肉眼で容易に真偽を判定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の偽造防止パターンと、その偽造防止パターンが設けられた偽造防止パターン形成体によれば、肉眼では真偽が判別し難いにもかかわらず、所定のスリットフィルムを用いることで容易に真偽を判別することができる。そして、本発明の偽造防止パターン形成方法によれば、こうした偽造防止パターンや偽造防止パターン形成体を容易に作製することができる。
【0021】
また、本発明のスリットフィルムによれば、所定の偽造防止パターンの真偽を肉眼で簡単に見分けることができる。
そしてまた、本発明の真偽判別具によれば、偽造防止パターンに重ねるスリットフィルムの角度の許容範囲が広く、天地がわかりにくい偽造防止パターンや偽造防止パターン形成体であっても真偽の判別が行い易く取扱い性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】偽造防止パターン形成体の平面図である。
【図2】スリットフィルムの平面図である。
【図3】図1の偽造防止パターンを図2のスリットフィルムを通して見た際にイメージされる表意文字からなる文字パターンである。
【図4】別のオブジェクト作製の基となる表意文字(基準文字)である。
【図5】図4の基準文字からのオブジェクト作製を示す説明図である。
【図6】図4の基準文字から作製された偽造防止パターンの構成を示す説明図である。
【図7】偽造防止パターン製造装置のブロック構成図である。
【図8】偽造防止パターン形成体の形成方法を示すフローチャートである。
【図9】図6の偽造防止パターンと仮想分割領域の関係を示す説明図である。
【図10】図6の偽造防止パターンに用いるスリットフィルムの平面図である。
【図11】図6の偽造防止パターンに図10のスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図である。
【図12】スリットフィルムの形成方法を示すフローチャートである。
【図13】別の偽造防止パターンの構成を示す説明図であり、分図13(B)は分図13(A)に仮想分割領域を表示したものである。
【図14】分図14(A)は図13(A)の偽造防止パターンに別のスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図であり、分図14(B)は分図14(A)からイメージされる表意文字である。
【図15】分図15(A)は図13(A)の偽造防止パターンにスリット送り値の大きなスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図であり、分図15(B)は分図15(A)からイメージされる表意文字である。
【図16】分図16(A)は図13(A)の偽造防止パターンにスリット送り値がさらに大きなスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図であり、分図16(B)は分図16(A)からイメージされる表意文字である。
【図17】分図17(A)は図13(A)の偽造防止パターンにスリット送り値の小さなスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図であり、分図17(B)は分図17(A)からイメージされる表意文字である。
【図18】分図18(A)は図13(A)の偽造防止パターンにスリット送り値がさらに小さなスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図であり、分図18(B)は分図18(A)からイメージされる表意文字である。
【図19】また別の偽造防止パターンと仮想分割領域の関係を示す説明図である。
【図20】図19の偽造防止パターンに別のスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図である。
【図21】図19の偽造防止パターンにさらに別のスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図である。
【図22】図6の偽造防止パターンのある仮想分割領域と、さらに別のスリットフィルムとの関係を示す説明図である。
【図23】さらに別の偽造防止パターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を図面を用いてさらに詳しく説明する。以下の説明において、各実施形態で共通する構成については、同一の符号を付して重複説明を省略する。また、各実施形態で共通する原材料、製造方法、作用効果等についても重複説明を省略する。
【0024】
第1実施形態〔図1〜図11〕:
偽造防止パターンと、その偽造防止パターンを有する偽造防止パターン形成体の一実施形態を図1に示す。
図1に示した偽造防止パターン1は、商品券等の偽造防止が必要な用紙やカードなどの被刷体2にプリンターによるプリントや印刷機による印刷等によって形成されたものであって、偽造防止パターン形成体3を構成している。
偽造防止パターン1を構成する個々の模様は、意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を、一定方向に所定の割合で圧縮して得た縮小扁平文字から形成されており、肉眼でその意味が判読不可能な程度に小さな大きさに印字されている。ここではこの縮小扁平文字を「オブジェクト」と呼ぶことにする。
オブジェクト4は、その線画が細く密集しているため、肉眼では単なる細線の線画模様にしか見えないが、図2で示すような所定のスリットフィルム5を通して図1の偽造防止パターン1を見ると、図3で示すように、「T」「O」「K」「Y」「O」と認識できる表意文字7が縦配列した文字パターン6がイメージされるようになる。即ち、肉眼で図1に示されたオブジェクト4を見ただけでは線画模様にしか見えないものが、図2で示したスリットフィルムを通して見ることにより、図3で示す「TOKYO」のイメージを表出させることができるのである。
【0025】
偽造防止パターンと偽造防止パターンを構成するオブジェクトの形状について、説明の便宜のため「TOKYO」に代えて、一つの表意文字「A」を例示して以下に詳しく説明する。
図4に示した文字「A」は、ある偽造防止パターンをスリットフィルムを通して見た際に想起しうるイメージであり、文字「A」を意味することから表意文字17である。また、その偽造防止パターンを構成するオブジェクトを作製するための基準となるため、この表意文字「A」を基準文字18とも呼ぶものとする。
【0026】
基準文字18から偽造防止パターンを構成するオブジェクトを作製するには、図5で示すように、基準文字18を構成する各点を文字の縦方向(上下方向)に50%〜99%、好ましくは90%〜97%、より好ましくは94%〜95%の割合で縮小することで形成する。換言すれば、図5で示すS−S基準線から基準文字18を構成する各点までの垂線の高さを前記所定の割合で縮小する。こうしてオブジェクト14が得られる。ここでは、オブジェクト14は文字「A」の縮小扁平文字として表れる。
次に、このオブジェクト14を、図6で示すように、所定の間隔を開けて縦配列する。こうして得られたオブジェクト14の縦配列が偽造防止パターン11となる。
偽造パターン11の一般的な大きさはオブジェクト14の縦方向長さが200μm〜600μm、好ましくは330μm〜360μmであり、オブジェクトの圧縮方向のオブジェクト14,14間の間隔は0μm〜200μm、好ましくは100μm〜125μmとしている。但し、オブジェクト14,14間の間隔は、オブジェクト14の縦方向の長さの35%以下とする。
ところで、図6で示すオブジェクト14は、扁平形状ではあるが文字「A」として視認できる。これは説明の便宜のため拡大して表示しているからであり、通常は、肉眼では線画としか見えない程度の大きさに縮小して表わされるものである。また、図6では文字「A」であるオブジェクト14を5つ表示しているが、縦配列される文字数は任意に設定することができる。こうしたことは他の図面にも適用でき、他の図面において図示された部分は実際に形成される偽造防止パターンやスリットフィルムの一部であると捉えることができる。
【0027】
以上、基準文字18が文字「A」の場合について説明したが、文字「A」の代わりに図3で示した文字「TOKYO」についてこれと同様のことを行えば、図1で示した偽造防止パターン1が得られるが、ここで改めて偽造防止パターン1,11の形成方法の一例を図7に示す偽造防止パターン製造装置と、図8に示すフローチャートに基づいてまとめると次のようになる。
【0028】
図7に示す偽造防止パターン製造装置101は、コンピュータ102と、このコンピュータ102に接続された表示装置103、入力装置104、プリンタ装置105を備えている。コンピュータ102は、CPUや、RAM、ROM、ハードディスク、各種インタフェース等のハードウェアを備え、アプリケーションプログラム106、ビデオドライバプログラム107、プリンタドライバプログラム108等を動作させることができる。
【0029】
ユーザーは、アプリケーションプログラム106に従って、入力装置104から表意文字7,17となる基準文字8,18を選択する(図8、S11)。また、ユーザーはビデオドライバプログラム107に基づいて表示装置103に表示された各種情報に従い、基準文字8,18の縮小方向、縮小倍率等を入力すると、アプリケーションプログラム106はユーザーの指示に従いオブジェクト4,14及び偽造防止パターン1,11の作製を行う(図8、S12)。それから、プリンタドライバプログラム108がプリンタ装置105で被刷体2に偽造防止パターン1,11を印刷するための処理を行い、プリンタ装置105が被刷体2に偽造防止パターン1,11を形成する(図8、S13)。
【0030】
次に、偽造防止パターン11から基準文字18をイメージさせるのに必要なスリットフィルム15について説明するが、そのスリットフィルム15の作製にはまず偽造防止パターン11を所定の大きさに仮想的に分割することが必要になる。以下詳しく説明する。
まず、図6で示した偽造防止パターン11において、一つのオブジェクト14の高さATと、その一のオブジェクト14の隣の他の一のオブジェクト14に至る間隔MTとをオブジェクト14の上下方向に合わせた長さをオブジェクト送り長さOLとする。
図6で示す偽造防止パターン11では、図9で示すように、オブジェクト14の高さATを縦方向に5等分した一の長さと、オブジェクト14,14間の間隔MTとが同じ長さになるように複数のオブジェクト14を縦方向に配列して形成している。
【0031】
さて、図9で示すように、オブジェクト14を縦方向に5等分した領域と、オブジェクト14,14間の領域を「仮想分割領域」14aと定義する。また、オブジェクト送り長さOLを等間隔に分割したときの分割数、換言すれば、オブジェクト送り長さを構成する仮想分割領域の数を「オブジェクト送り値」と定義する。図9の例では、オブジェクト送り長さOLを6等分しているので、オブジェクト送り値は“6”となる。
【0032】
スリットフィルム15は、図10で示すように、このスリットフィルム15の向こう側がスリットフィルム15を通して視認可能な細長のスリット15aとなる透明部分と、スリット15aを挟んで塗りつぶされて遮光され、向こう側が視認不可能な遮光部分15bとを有している。
このスリットフィルム15のスリット15aと遮光部分15bの長さ(図10の上下方向の長さ)は、図9で示す偽造防止パターン11の仮想分割領域14aとの間に次の関係がある。
すなわち、スリット15aとなる透明部分は、仮想分割領域の一つ分の高さを有しており、遮光部分15bは、仮想分割領域の6つ分の高さを有している。そして、スリットフィルム15にはこのスリット15aと遮光部分15bが規則正しく交互に形成されている。
ここで、一のスリット15aを形成する仮想分割領域の個数と一の遮光部分15bを形成する仮想分割領域の個数とを合わせた数を「スリット送り値」と定義する。図10で示すスリットフィルム15の例では、スリット送り値は“7”となる。一のスリット15aを形成する仮想分割領域の個数が“1”であり、一の遮光部分15bを形成する仮想分割領域の個数が“6”だからである。
こうしたスリットフィルム15は、透明な樹脂フィルムの所定部分を遮光印刷し、遮光部分15bを設けることで形成することができるが、遮光性樹脂フィルムを用いてスリット15aを切り抜くなどして形成することもできる。さらに、いわゆる薄板状の樹脂シートの他、可撓性の無いガラスのような厚みのあるものから形成しても良い。
【0033】
なお、図10に示したスリットフィルム15では、遮光部分12bが4つであるが、偽造防止パターン11を構成するオブジェクト14の数に制限はないため、偽造防止パターン11に縦配列されるオブジェクト14の数に応じて、遮光部分12bやスリット15a部分の数を適宜設定することができる。
【0034】
図11は、図6の偽造防止パターン11に図10のスリットフィルム15を重ねた状態を示す。スリットフィルム15を通して見る偽造防止パターン11は、図4で示す基準文字18と同一ではないが、人間の目の錯覚により、基準文字18と同様な表意文字「A」をイメージすることができる。
【0035】
スリットフィルム15の形成方法の一例を図7に示す偽造防止パターン製造装置と、図12に示すフローチャートに基づいてまとめると次のようになる。
ユーザーは、アプリケーションプログラム106に従って、入力装置104から表意文字7,17となる基準文字8,18や文字パターン6を選択する(図12、S21)。アプリケーションプログラム106は選択された基準文字8,18や文字パターン6に基づいて仮想分割領域14aを設定しスリットフィルム15を形成するスリット15aと遮光部分15bの領域を決定する(図12、S22)。それから、プリンタドライバプログラム108が、プリンタ装置105で樹脂フィルムに遮光部分15bを印刷するための処理を行い、プリンタ装置105が樹脂フィルムに遮光部分15bを形成する(図12、S23)。こうしてスリットフィルム15が得られる。
【0036】
変形例〔図13、図14〕:
オブジェクト14,14間の間隔は適宜変更することが可能である。
図13(A)には、図6で示した偽造防止パターン11よりもオブジェクト14,14間の間隔を狭く形成した偽造防止パターン21を示す。但し、オブジェクト14の高さATは変わらない。
図13(A)で示した偽造防止パターン21では、図13(B)で示すように、オブジェクト14,14間の間隔MTと、一つのオブジェクト14の高さATを縦方向に7等分した長さとが同じになるようにオブジェクト14を縦方向に配列している。したがって、偽造防止パターン21のオブジェクト送り値は“8”である。
偽造防止パターン21と併せて用いるスリットフィルム25(図14参照)では、スリット25aとなる透明部分が仮想分割領域の一つ分の高さを有しており、遮光部分25bはその仮想分割領域の8つ分の高さを有している。そして、スリット25aと遮光部分25bは規則正しく交互に形成されている。この場合のスリットフィルム25のスリット送り値は“9”である。
【0037】
図14(A)には、上記偽造防止パターン21にこのスリットフィルム25を重ねた状態を示す。ここから生じるイメージは図14(B)に示される表意文字27であり、図4で示す基準文字18よりはやや縦長な文字としてイメージされる。
このように、同一のオブジェクトの高さATを有するものであってもオブジェクト送り値やスリット送り値を適宜変更することで、想起させるイメージ(表意文字)の大きさを変えることができる。
【0038】
第2実施形態〔図15,図16〕:
以上の実施形態では、オブジェクト送り値を“n”とするとスリット送り値を“n+1”としていたが、オブジェクト送り値とスリット送り値の関係は適宜変更することができる。
オブジェクト送り値が“8”である図13の偽造防止パターン21に対して、スリット送り値を“10”としたスリットフィルム35を重ねた状態を図15(A)に示す。
図15(A)からイメージされる表意文字37は、図15(B)で示すように表意文字27より縦方向に小さくイメージされる。
また、同様に図13の偽造防止パターン21に対して、スリット送り値を“11”としたスリットフィルム45を重ねた状態を図16(A)に示す。図16(A)からイメージされる表意文字47は、図16(B)で示すように表意文字37よりさらに縦方向に小さくイメージされる。
なお、スリット送り値はこれらの例よりもさらに大きくすることもできるが、スリット送り値を大きくするほど表意文字が小さくイメージされるとともに、表意文字がイメージしにくくなるため、オブジェクト送り値とスリット送り値の差は“2”であることが好ましく、“1”であることがより好ましい。
【0039】
第3実施形態〔図17,図18〕:
スリット送り値をオブジェクト送り値よりも小さくすることもできる。こうした場合は、倒置した表意文字がイメージされる。
オブジェクト送り値が“8”である図13の偽造防止パターン21に対して、スリット送り値を“7”としたスリットフィルム55を重ねた状態を図17(A)に示す。図17(A)からイメージされる表意文字57は、図17(B)で示すように倒置してイメージされる転倒像(倒像)として表れる。その大きさは図14(B)で示される表意文字27と同じである。
また、同様に図13の偽造防止パターン21に対して、スリット送り値を“6”としたスリットフィルム65を重ねた状態を図18(A)に示す。図18(A)からイメージされる表意文字67は、図18(B)で示すように表意文字57より縦方向に小さくイメージされる。
なお、スリット送り値はこれらの例よりもさらに小さくすることもできるが、スリット送り値を小さくするほど表意文字がより小さくイメージされるとともに、表意文字がイメージしにくくなるため、オブジェクト送り値とスリット送り値の差は“−2”であることが好ましく、“−1”であることがより好ましい。
また、オブジェクト送り値とスリット送り値とを等しくすると、スリットを通じて視認される形状が、どのスリットでも全て同じになり、表意文字がイメージできない。そのため、オブジェクト送り値とスリット送り値とは異なった値を取るものとする。
【0040】
第4実施形態〔図19〜図21〕:
これまで説明した実施形態では、オブジェクト14,14間の間隔と、オブジェクト14を等分した際の一つ分の間隔とを同じ大きさとしていたが、必ずしも同じである必要はない。
例えば、図19に示した偽造防止パターン31では、オブジェクト14の高さATとオブジェクト14,14間の間隔MTとを合わせたオブジェクト送り長さOLを、等間隔に6分割して仮想分割領域14cを形成しているが、一つの仮想分割領域14cの幅と、オブジェクト14,14間の間隔MTとは等しくなっていない。
こうした偽造防止パターン31に対しても、仮想分割領域に基づいてスリットフィルムを作製することで、表意文字をイメージさせることができる。
【0041】
図20には、図19に示すオブジェクト送り値“6”の偽造防止パターン31に対して、スリット送り値を“7”としたスリットフィルム75を重ねたときの状態を示す。 また、図21には、図19に示すオブジェクト送り値“6”の偽造防止パターン31に対して、スリット送り値を“8”としたスリットフィルム85を重ねたときの状態を示す。
こうした例からも表意文字「A」がイメージされることがわかる。
【0042】
第5実施形態〔図22〕:
これまで説明した実施形態では、スリットフィルムを構成するスリットと遮光部分について、一のスリットにつき仮想分割領域が一つ分、一の遮光部分につき仮想分割領域が複数個分としてスリットフィルムを作製したが、スリットに対して仮想分割領域を複数個割り当てることもできる。但し、スリットに割り当てる仮想分割領域数よりも遮光部分に割り当てる仮想分割領域数を多くする必要がある。スリットに割り当てる仮想分割領域数よりも遮光部分に割り当てる仮想分割領域数を少なくするか、または同じにすると、表意文字がイメージしにくかったり、イメージできなかったりするからである。
図22には、偽造防止パターン11に、新たなスリットフィルム95を重ねた状態を示す。このスリットフィルム95は、オブジェクトの高さATを5等分し、オブジェクト14,14間の間隔MTを1等分した仮想分割領域14aのうち、仮想分割領域14aの二つ分をスリット95aとし、仮想分割領域14aの五つ分を遮光部分95bとして形成したものであり、スリット送り値は“7”となっている。
こうした例からも表意文字「A」がイメージされることがわかる。
【0043】
第6実施形態〔図23〕:
図23で示す偽造防止パターン41は、図1の偽造防止パターン1と、その偽造防止パターン1を90°半時計回りに回転させた偽造防止パターン1とを重ね合わせて形成したものである。
この偽造防止パターン41では、図2と同様に、即ちスリットを縦方向に並べる向きにスリットフィルム5を置けば、縦方向に配列した縮小扁平文字から文字パターンであるイメージ「TOKYO」を認識することができる。そうした一方で、スリットを横方向に並べる向きにスリットフィルム5を置けば、横方向に配列した縮小扁平文字から文字パターンであるイメージ「TOKYO」を認識することができる。この偽造防止パターン41では、縦方向に並べた縮小扁平文字と横方向に並べた縮小扁平文字とを組み合わせているため、それぞれの方向に配列した縮小扁平文字から文字パターンが読み取れるのである。
【0044】
したがって、縦方向、横方向のそれぞれの向きで、異なる文字パターンからなるオブジェクトを設けることができる。そしてまた、それぞれの向きでオブジェクトの大きさや間隔を変えることが可能である。また、それぞれの向きでそれぞれのイメージ表出が担保されるため、それぞれの方向でオブジェクトの色調を変えることが好ましい。
さらに、本実施形態では、二つの偽造防止パターン1,1を90°の角度で交差させているが、この角度は90°に限らず、任意の角度とすることができる。
【0045】
その他の変形例:
表意文字を表す基準文字からオブジェクトを形成するには、基準文字を上下方向に縮小するだけでなく、左右方向や、その他の任意の方向に縮小することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の偽造防止パターンは、主として偽造防止が必要な有価証券やカード類に施されるものであるが、意味内容が視認できないパターン模様から、所定のスリットフィルムを使うことで意味内容が明らかな文字等が表出する特徴を利用して、懸賞くじや、クイズ本など、偽造防止とは関係のない種々の用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1,11,21,31,41 偽造防止パターン
2 被刷体
3 偽造防止パターン形成体
4,14 オブジェクト(縮小扁平文字)
14a,14b,14c 仮想分割領域
5,15,25,35,45,55,65,75,85 スリットフィルム
15a,25a スリット(透明部分)
15b,25b 遮光部分
6 文字パターン
7,17,27,37,47,57,67 表意文字
8,18 基準文字
101 偽造防止パターン製造装置
102 コンピュータ
103 表示装置
104 入力装置
105 プリンタ装置
106 アプリケーションプログラム
107 ビデオドライバプログラム
108 プリンタドライバプログラム
AT オブジェクトの高さ(長さ)
MT オブジェクト間の間隔
OL オブジェクト送り長さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品券や入場券などの有価証券類、住民票や印鑑登録証明書等の公的に発行されるドキュメント類、その他のセキュリティ確保が必要な被刷体などに対し、その偽造防止に用いられる偽造防止パターンと、その偽造防止パターンが紙や薄板状プラスチック等のこれらの被刷体に付された偽造防止パターン形成体、そして、この偽造防止パターンを形成する偽造防止パターン形成方法と、偽造防止パターンの真偽を判別可能なスリットフィルム、さらに、偽造防止パターンとスリットフィルムで真偽を判別する真偽判別具に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券類やその他のセキュリティ確保が必要なドキュメント類等は、それらの用紙に透かしやマイクロ文字、隠し文字を施したり、特殊インキを用いて印刷したり、ホログラムを付与したりして偽造防止を図っている。
【0003】
こうした種々の偽造防止手段のうち、偽造防止パターンが形成された印刷物に所定のフィルムを重ねることにより、モアレを発生させて像を表出させる技術がある。例えば特開2004−25740号公報(特許文献1)には、平行線とその平行線と所定の角度をなす他の平行線とが形成された印刷物に、複数の平行線が形成された光透過性フィルムを重ねると、モアレが発生して像が現出する。
【0004】
また、印刷物と所定のフィルムを重ねることで像を表出させる別の技術として、例えば特開平10−230674号公報(特許文献2)には、位相変調方式により画像を形成した印刷物に、万線(等間隔で平行に引かれた多数の直線)状のパターンが形成された判別具を重ねると、印刷物に形成された画像と、判別具に形成された万線状パターンとが一体となった画像を現出させる技術が記載されている。
【0005】
さらに、簡単な補助具を用いることで隠し文字がなされたものであるか否かが簡単にわかる技術として、例えば実開昭54−138700号公報(特許文献3)には、万線よりなる背景と、この万線に対して所定の角度を持った万線で形成する隠し文字とを有する抽選券に、所定の万線を施した透明シートを一定位置で重ねると、見えなかった隠し文字がはっきりと見えるようになる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−25740号公報
【特許文献2】特開平10−230674号公報
【特許文献3】実開昭54−138700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特開2004−25740号公報(特許文献1)に記載された技術では、モアレの発生をもって像が表出するため、光透過性フィルムを重ねる角度によって種々のモアレが発生する中で像となるモアレを見いだす必要があり、像の表出がわかりにくいという問題がある。
【0008】
また、特開平10−230674号公報(特許文献2)に記載された技術では、位相変調方式という特別な方式によって印刷物を形成しなければならず、微細な領域内で精緻に位置制御された印刷が必要となるため、所望のパターンを印刷物に形成することが困難である。また、印刷物の印刷部分と判別具の所定の部分とを合わせてはじめて像が形成されるため、印刷物の決まった位置に判別具を重ね合わせなければ像が表出しないという問題もある。
【0009】
さらに、実開昭54−138700号公報(特許文献3)に記載された技術は、この技術においても抽選券と透明シートを一定位置で重ねる必要があり、重ね位置によっては隠し文字の存在がわかりにくいことがある。また、隠し文字と背景との境界が明確であるため、補助具を用いなくともよく見れば隠し文字がわかってしまうことがある。
【0010】
本発明は、こうした従来技術が存在する中で完成されたものであって、簡単な補助具を用いることで偽造防止の有無がわかる技術である。そして、補助具の厳密な使い方が要求されることがなく、また、偽造防止パターンの形成が容易であり、補助具が無い場合には偽造防止の有無が容易にはわからない技術である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を基準文字とし、その基準文字を一定方向に所定の割合で圧縮して得た肉眼で判読不可能な縮小扁平文字でなるオブジェクトを、その圧縮方向に等間隔に複数並べてなる偽造防止パターンである。
この偽造防止パターンは、意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を基準文字とし、その基準文字を一定方向に所定の割合で圧縮して得た肉眼で判読不可能な縮小扁平文字でなるオブジェクトで形成される。オブジェクトは意味内容が判別可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を基準として、そうした意味内容が判別可能な文字等を一定方向に所定の割合で圧縮して得た縮小扁平文字であるため、その作製が容易である。また、このオブジェクトは、通常の表意文字に比べて扁平しているため、単にルーペで拡大しただけでは正常な表示形態の表意文字とはならない。そのため、偽造防止効果が高い。
また、偽造防止パターンは複数のオブジェクトを等間隔に並べているため、パターン化しやすく、意味内容が不明であっても印刷ミスなどの不良品の発見が容易である。
なお、ここで言う「表意文字」は、意味内容を有する文字等のことであるが、文字に限られるものではない。例えば、記号や数字、自動車やテレビなど特定の意味内容を想起し得るイラストなどの図形等も含むものである。また、「肉眼で判別可能」とは、ルーペや顕微鏡等の拡大鏡を用いずに普通に目視することで判別可能なことをいう。
【0012】
また、上記偽造防止パターンが設けられた偽造防止パターン形成体を提供する。偽造防止パターン成形体には偽造防止パターンが設けられているため、偽造防止パターンが付されていないものと比べて簡単に真贋評価をすることができる。こうした偽造防止パターン形成体には、上記偽造防止パターンを印刷した用紙や、こうした用紙を用いた商品券や入場券等の有価証券、その他のドキュメント類の他、紙以外の素材、例えばプラスチック素材でできたカード類や身分証明書等も含まれる。また、偽造防止パターンの形成も、肉眼で視認不可能な程度に小さく形成できるとともに、拡大すれば所定の形状を維持できる程度に解像度が高ければ、印刷以外の方法、例えばプリンターによる印字や、写真等であっても良い。
【0013】
上記偽造防止パターンや偽造防止パターン形成体は、それ自体で偽造防止に寄与するものであるが、所定のスリットフィルムと合わせて用いることで、所定の表意文字をイメージすることができる。こうしたスリットフィルムは、一定幅のスリットとこのスリットよりも広幅で一定幅の遮光部分を交互に有するスリットフィルムについて、前記偽造防止パターンを形成する一のオブジェクトとその一のオブジェクトから前記一定方向に隣接する他の一のオブジェクトに至る間隔とをその方向に合算した長さをオブジェクト送り長さとし、このオブジェクト送り長さを等間隔に分割して複数の仮想分割領域を設定したときに、この仮想分割領域のうちのいくつかを透光部分としてスリットに形成し、残りの仮想分割領域を遮光して遮光部分に形成したことを特徴とする前記偽造防止パターンに重ねることで表意文字をイメージさせるスリットフィルムである。
【0014】
偽造防止パターンは上記のスリットフィルムを補助具として用いることで、偽造防止パターンを拡大することなく、隠れている表意文字をイメージすることができる。
そして、このスリットフィルムは、スリットフィルムの向こう側が視認可能なスリットと、スリットフィルムの向こう側が視認不可能な遮光部分とを有しており、スリット幅は一定で、この幅よりも広幅な一定幅を有する遮光部分が交互に形成されている。加えて、このスリット幅や遮光部分の幅は仮想分割領域に基づいて決定されている。仮想分割領域とは、偽造防止パターンを形成する一のオブジェクトの長さと、その一のオブジェクトが圧縮された方向に隣接する次のオブジェクトまでの間隔とをその方向に合算した長さをオブジェクト送り長さとしたときに、このオブジェクト送り長さを等間隔に分割して得られる複数の仮想領域のことである。すなわち、スリット幅や遮光部分の幅が仮想分割領域に基づいて形成されるため、各スリットからはオブジェクトを規則正しく分割したうちの異なる部分が見えるため、オブジェクトを形成する基となる表意文字をイメージすることができるのである。
なお、オブジェクト送り長さの設定にあたり、オブジェクト間の間隔は0であっても良い。また、本明細書、特許請求の範囲等において、“幅”や“長さ”という際には、特にことわりのない限り、オブジェクト作製の際に基準となる表意文字を圧縮する際の圧縮方向と同方向の幅や長さについていうものとする。そして、この方向を「オブジェクトの圧縮方向」というものとする。
【0015】
スリットフィルムについて、複数の仮想分割領域の一の仮想分割領域の長さが、一のオブジェクトから隣接する他の一のオブジェクトに至る間隔の長さと同じ長さとすることができる。複数の仮想分割領域の一の仮想分割領域の長さが一のオブジェクトから隣接する他の一のオブジェクトに至る間隔と同じ長さであるため、スリットフィルムを通して偽造防止パターンを見た際に得られるイメージをより基準文字に近づけることができる。
【0016】
さらにスリットフィルムについて、オブジェクト送り長さをオブジェクトの圧縮方向に等間隔に分割した分割数をオブジェクト送り値と定義し、一のスリットと一の遮光部分とを構成する仮想分割領域数をスリット送り値と定義したときに、スリット送り値>オブジェクト送り値とすることができる。スリット送り値>オブジェクト送り値としたため、スリットフィルムを通して偽造防止パターンを見た際に、表出するイメージが正像として表れる。
【0017】
また、スリットフィルムについて、オブジェクト送り長さをオブジェクトの圧縮方向に等間隔に分割した分割数をオブジェクト送り値と定義し、一のスリットと一の遮光部分とを構成する仮想分割領域数をスリット送り値と定義したときに、スリット送り値<オブジェクト送り値とすることもできる。スリット送り値<オブジェクト送り値としたため、スリットフィルムを通して偽造防止パターンを見た際に、表出するイメージが反転像(倒像)として表れる。
【0018】
さらにまた、意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を基準文字とし、その基準文字を一定方向に所定の割合で圧縮して得た肉眼で判読不可能な縮小扁平文字でなるオブジェクトを、その圧縮方向に等間隔に複数並べた偽造防止パターンを形成する偽造防止パターン形成方法を提供する。
こうした偽造防止パターン形成方法によれば、偽造防止パターンの作製が容易で、肉眼では容易に判別しにくい偽造防止パターンを作製することができる。
【0019】
そして、所定の偽造防止パターンとスリットフィルムからなる真偽判別具を提供する。この真偽判別具は、上述の偽造防止パターンとスリットフィルムからなる真偽判別具であるため、肉眼では容易に真偽がわからない一方で、スリットフィルムを合わせて用いることで肉眼で容易に真偽を判定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の偽造防止パターンと、その偽造防止パターンが設けられた偽造防止パターン形成体によれば、肉眼では真偽が判別し難いにもかかわらず、所定のスリットフィルムを用いることで容易に真偽を判別することができる。そして、本発明の偽造防止パターン形成方法によれば、こうした偽造防止パターンや偽造防止パターン形成体を容易に作製することができる。
【0021】
また、本発明のスリットフィルムによれば、所定の偽造防止パターンの真偽を肉眼で簡単に見分けることができる。
そしてまた、本発明の真偽判別具によれば、偽造防止パターンに重ねるスリットフィルムの角度の許容範囲が広く、天地がわかりにくい偽造防止パターンや偽造防止パターン形成体であっても真偽の判別が行い易く取扱い性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】偽造防止パターン形成体の平面図である。
【図2】スリットフィルムの平面図である。
【図3】図1の偽造防止パターンを図2のスリットフィルムを通して見た際にイメージされる表意文字からなる文字パターンである。
【図4】別のオブジェクト作製の基となる表意文字(基準文字)である。
【図5】図4の基準文字からのオブジェクト作製を示す説明図である。
【図6】図4の基準文字から作製された偽造防止パターンの構成を示す説明図である。
【図7】偽造防止パターン製造装置のブロック構成図である。
【図8】偽造防止パターン形成体の形成方法を示すフローチャートである。
【図9】図6の偽造防止パターンと仮想分割領域の関係を示す説明図である。
【図10】図6の偽造防止パターンに用いるスリットフィルムの平面図である。
【図11】図6の偽造防止パターンに図10のスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図である。
【図12】スリットフィルムの形成方法を示すフローチャートである。
【図13】別の偽造防止パターンの構成を示す説明図であり、分図13(B)は分図13(A)に仮想分割領域を表示したものである。
【図14】分図14(A)は図13(A)の偽造防止パターンに別のスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図であり、分図14(B)は分図14(A)からイメージされる表意文字である。
【図15】分図15(A)は図13(A)の偽造防止パターンにスリット送り値の大きなスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図であり、分図15(B)は分図15(A)からイメージされる表意文字である。
【図16】分図16(A)は図13(A)の偽造防止パターンにスリット送り値がさらに大きなスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図であり、分図16(B)は分図16(A)からイメージされる表意文字である。
【図17】分図17(A)は図13(A)の偽造防止パターンにスリット送り値の小さなスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図であり、分図17(B)は分図17(A)からイメージされる表意文字である。
【図18】分図18(A)は図13(A)の偽造防止パターンにスリット送り値がさらに小さなスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図であり、分図18(B)は分図18(A)からイメージされる表意文字である。
【図19】また別の偽造防止パターンと仮想分割領域の関係を示す説明図である。
【図20】図19の偽造防止パターンに別のスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図である。
【図21】図19の偽造防止パターンにさらに別のスリットフィルムを重ねた状態を示す平面図である。
【図22】図6の偽造防止パターンのある仮想分割領域と、さらに別のスリットフィルムとの関係を示す説明図である。
【図23】さらに別の偽造防止パターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を図面を用いてさらに詳しく説明する。以下の説明において、各実施形態で共通する構成については、同一の符号を付して重複説明を省略する。また、各実施形態で共通する原材料、製造方法、作用効果等についても重複説明を省略する。
【0024】
第1実施形態〔図1〜図11〕:
偽造防止パターンと、その偽造防止パターンを有する偽造防止パターン形成体の一実施形態を図1に示す。
図1に示した偽造防止パターン1は、商品券等の偽造防止が必要な用紙やカードなどの被刷体2にプリンターによるプリントや印刷機による印刷等によって形成されたものであって、偽造防止パターン形成体3を構成している。
偽造防止パターン1を構成する個々の模様は、意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を、一定方向に所定の割合で圧縮して得た縮小扁平文字から形成されており、肉眼でその意味が判読不可能な程度に小さな大きさに印字されている。ここではこの縮小扁平文字を「オブジェクト」と呼ぶことにする。
オブジェクト4は、その線画が細く密集しているため、肉眼では単なる細線の線画模様にしか見えないが、図2で示すような所定のスリットフィルム5を通して図1の偽造防止パターン1を見ると、図3で示すように、「T」「O」「K」「Y」「O」と認識できる表意文字7が縦配列した文字パターン6がイメージされるようになる。即ち、肉眼で図1に示されたオブジェクト4を見ただけでは線画模様にしか見えないものが、図2で示したスリットフィルムを通して見ることにより、図3で示す「TOKYO」のイメージを表出させることができるのである。
【0025】
偽造防止パターンと偽造防止パターンを構成するオブジェクトの形状について、説明の便宜のため「TOKYO」に代えて、一つの表意文字「A」を例示して以下に詳しく説明する。
図4に示した文字「A」は、ある偽造防止パターンをスリットフィルムを通して見た際に想起しうるイメージであり、文字「A」を意味することから表意文字17である。また、その偽造防止パターンを構成するオブジェクトを作製するための基準となるため、この表意文字「A」を基準文字18とも呼ぶものとする。
【0026】
基準文字18から偽造防止パターンを構成するオブジェクトを作製するには、図5で示すように、基準文字18を構成する各点を文字の縦方向(上下方向)に50%〜99%、好ましくは90%〜97%、より好ましくは94%〜95%の割合で縮小することで形成する。換言すれば、図5で示すS−S基準線から基準文字18を構成する各点までの垂線の高さを前記所定の割合で縮小する。こうしてオブジェクト14が得られる。ここでは、オブジェクト14は文字「A」の縮小扁平文字として表れる。
次に、このオブジェクト14を、図6で示すように、所定の間隔を開けて縦配列する。こうして得られたオブジェクト14の縦配列が偽造防止パターン11となる。
偽造パターン11の一般的な大きさはオブジェクト14の縦方向長さが200μm〜600μm、好ましくは330μm〜360μmであり、オブジェクトの圧縮方向のオブジェクト14,14間の間隔は0μm〜200μm、好ましくは100μm〜125μmとしている。但し、オブジェクト14,14間の間隔は、オブジェクト14の縦方向の長さの35%以下とする。
ところで、図6で示すオブジェクト14は、扁平形状ではあるが文字「A」として視認できる。これは説明の便宜のため拡大して表示しているからであり、通常は、肉眼では線画としか見えない程度の大きさに縮小して表わされるものである。また、図6では文字「A」であるオブジェクト14を5つ表示しているが、縦配列される文字数は任意に設定することができる。こうしたことは他の図面にも適用でき、他の図面において図示された部分は実際に形成される偽造防止パターンやスリットフィルムの一部であると捉えることができる。
【0027】
以上、基準文字18が文字「A」の場合について説明したが、文字「A」の代わりに図3で示した文字「TOKYO」についてこれと同様のことを行えば、図1で示した偽造防止パターン1が得られるが、ここで改めて偽造防止パターン1,11の形成方法の一例を図7に示す偽造防止パターン製造装置と、図8に示すフローチャートに基づいてまとめると次のようになる。
【0028】
図7に示す偽造防止パターン製造装置101は、コンピュータ102と、このコンピュータ102に接続された表示装置103、入力装置104、プリンタ装置105を備えている。コンピュータ102は、CPUや、RAM、ROM、ハードディスク、各種インタフェース等のハードウェアを備え、アプリケーションプログラム106、ビデオドライバプログラム107、プリンタドライバプログラム108等を動作させることができる。
【0029】
ユーザーは、アプリケーションプログラム106に従って、入力装置104から表意文字7,17となる基準文字8,18を選択する(図8、S11)。また、ユーザーはビデオドライバプログラム107に基づいて表示装置103に表示された各種情報に従い、基準文字8,18の縮小方向、縮小倍率等を入力すると、アプリケーションプログラム106はユーザーの指示に従いオブジェクト4,14及び偽造防止パターン1,11の作製を行う(図8、S12)。それから、プリンタドライバプログラム108がプリンタ装置105で被刷体2に偽造防止パターン1,11を印刷するための処理を行い、プリンタ装置105が被刷体2に偽造防止パターン1,11を形成する(図8、S13)。
【0030】
次に、偽造防止パターン11から基準文字18をイメージさせるのに必要なスリットフィルム15について説明するが、そのスリットフィルム15の作製にはまず偽造防止パターン11を所定の大きさに仮想的に分割することが必要になる。以下詳しく説明する。
まず、図6で示した偽造防止パターン11において、一つのオブジェクト14の高さATと、その一のオブジェクト14の隣の他の一のオブジェクト14に至る間隔MTとをオブジェクト14の上下方向に合わせた長さをオブジェクト送り長さOLとする。
図6で示す偽造防止パターン11では、図9で示すように、オブジェクト14の高さATを縦方向に5等分した一の長さと、オブジェクト14,14間の間隔MTとが同じ長さになるように複数のオブジェクト14を縦方向に配列して形成している。
【0031】
さて、図9で示すように、オブジェクト14を縦方向に5等分した領域と、オブジェクト14,14間の領域を「仮想分割領域」14aと定義する。また、オブジェクト送り長さOLを等間隔に分割したときの分割数、換言すれば、オブジェクト送り長さを構成する仮想分割領域の数を「オブジェクト送り値」と定義する。図9の例では、オブジェクト送り長さOLを6等分しているので、オブジェクト送り値は“6”となる。
【0032】
スリットフィルム15は、図10で示すように、このスリットフィルム15の向こう側がスリットフィルム15を通して視認可能な細長のスリット15aとなる透明部分と、スリット15aを挟んで塗りつぶされて遮光され、向こう側が視認不可能な遮光部分15bとを有している。
このスリットフィルム15のスリット15aと遮光部分15bの長さ(図10の上下方向の長さ)は、図9で示す偽造防止パターン11の仮想分割領域14aとの間に次の関係がある。
すなわち、スリット15aとなる透明部分は、仮想分割領域の一つ分の高さを有しており、遮光部分15bは、仮想分割領域の6つ分の高さを有している。そして、スリットフィルム15にはこのスリット15aと遮光部分15bが規則正しく交互に形成されている。
ここで、一のスリット15aを形成する仮想分割領域の個数と一の遮光部分15bを形成する仮想分割領域の個数とを合わせた数を「スリット送り値」と定義する。図10で示すスリットフィルム15の例では、スリット送り値は“7”となる。一のスリット15aを形成する仮想分割領域の個数が“1”であり、一の遮光部分15bを形成する仮想分割領域の個数が“6”だからである。
こうしたスリットフィルム15は、透明な樹脂フィルムの所定部分を遮光印刷し、遮光部分15bを設けることで形成することができるが、遮光性樹脂フィルムを用いてスリット15aを切り抜くなどして形成することもできる。さらに、いわゆる薄板状の樹脂シートの他、可撓性の無いガラスのような厚みのあるものから形成しても良い。
【0033】
なお、図10に示したスリットフィルム15では、遮光部分12bが4つであるが、偽造防止パターン11を構成するオブジェクト14の数に制限はないため、偽造防止パターン11に縦配列されるオブジェクト14の数に応じて、遮光部分12bやスリット15a部分の数を適宜設定することができる。
【0034】
図11は、図6の偽造防止パターン11に図10のスリットフィルム15を重ねた状態を示す。スリットフィルム15を通して見る偽造防止パターン11は、図4で示す基準文字18と同一ではないが、人間の目の錯覚により、基準文字18と同様な表意文字「A」をイメージすることができる。
【0035】
スリットフィルム15の形成方法の一例を図7に示す偽造防止パターン製造装置と、図12に示すフローチャートに基づいてまとめると次のようになる。
ユーザーは、アプリケーションプログラム106に従って、入力装置104から表意文字7,17となる基準文字8,18や文字パターン6を選択する(図12、S21)。アプリケーションプログラム106は選択された基準文字8,18や文字パターン6に基づいて仮想分割領域14aを設定しスリットフィルム15を形成するスリット15aと遮光部分15bの領域を決定する(図12、S22)。それから、プリンタドライバプログラム108が、プリンタ装置105で樹脂フィルムに遮光部分15bを印刷するための処理を行い、プリンタ装置105が樹脂フィルムに遮光部分15bを形成する(図12、S23)。こうしてスリットフィルム15が得られる。
【0036】
変形例〔図13、図14〕:
オブジェクト14,14間の間隔は適宜変更することが可能である。
図13(A)には、図6で示した偽造防止パターン11よりもオブジェクト14,14間の間隔を狭く形成した偽造防止パターン21を示す。但し、オブジェクト14の高さATは変わらない。
図13(A)で示した偽造防止パターン21では、図13(B)で示すように、オブジェクト14,14間の間隔MTと、一つのオブジェクト14の高さATを縦方向に7等分した長さとが同じになるようにオブジェクト14を縦方向に配列している。したがって、偽造防止パターン21のオブジェクト送り値は“8”である。
偽造防止パターン21と併せて用いるスリットフィルム25(図14参照)では、スリット25aとなる透明部分が仮想分割領域の一つ分の高さを有しており、遮光部分25bはその仮想分割領域の8つ分の高さを有している。そして、スリット25aと遮光部分25bは規則正しく交互に形成されている。この場合のスリットフィルム25のスリット送り値は“9”である。
【0037】
図14(A)には、上記偽造防止パターン21にこのスリットフィルム25を重ねた状態を示す。ここから生じるイメージは図14(B)に示される表意文字27であり、図4で示す基準文字18よりはやや縦長な文字としてイメージされる。
このように、同一のオブジェクトの高さATを有するものであってもオブジェクト送り値やスリット送り値を適宜変更することで、想起させるイメージ(表意文字)の大きさを変えることができる。
【0038】
第2実施形態〔図15,図16〕:
以上の実施形態では、オブジェクト送り値を“n”とするとスリット送り値を“n+1”としていたが、オブジェクト送り値とスリット送り値の関係は適宜変更することができる。
オブジェクト送り値が“8”である図13の偽造防止パターン21に対して、スリット送り値を“10”としたスリットフィルム35を重ねた状態を図15(A)に示す。
図15(A)からイメージされる表意文字37は、図15(B)で示すように表意文字27より縦方向に小さくイメージされる。
また、同様に図13の偽造防止パターン21に対して、スリット送り値を“11”としたスリットフィルム45を重ねた状態を図16(A)に示す。図16(A)からイメージされる表意文字47は、図16(B)で示すように表意文字37よりさらに縦方向に小さくイメージされる。
なお、スリット送り値はこれらの例よりもさらに大きくすることもできるが、スリット送り値を大きくするほど表意文字が小さくイメージされるとともに、表意文字がイメージしにくくなるため、オブジェクト送り値とスリット送り値の差は“2”であることが好ましく、“1”であることがより好ましい。
【0039】
第3実施形態〔図17,図18〕:
スリット送り値をオブジェクト送り値よりも小さくすることもできる。こうした場合は、倒置した表意文字がイメージされる。
オブジェクト送り値が“8”である図13の偽造防止パターン21に対して、スリット送り値を“7”としたスリットフィルム55を重ねた状態を図17(A)に示す。図17(A)からイメージされる表意文字57は、図17(B)で示すように倒置してイメージされる転倒像(倒像)として表れる。その大きさは図14(B)で示される表意文字27と同じである。
また、同様に図13の偽造防止パターン21に対して、スリット送り値を“6”としたスリットフィルム65を重ねた状態を図18(A)に示す。図18(A)からイメージされる表意文字67は、図18(B)で示すように表意文字57より縦方向に小さくイメージされる。
なお、スリット送り値はこれらの例よりもさらに小さくすることもできるが、スリット送り値を小さくするほど表意文字がより小さくイメージされるとともに、表意文字がイメージしにくくなるため、オブジェクト送り値とスリット送り値の差は“−2”であることが好ましく、“−1”であることがより好ましい。
また、オブジェクト送り値とスリット送り値とを等しくすると、スリットを通じて視認される形状が、どのスリットでも全て同じになり、表意文字がイメージできない。そのため、オブジェクト送り値とスリット送り値とは異なった値を取るものとする。
【0040】
第4実施形態〔図19〜図21〕:
これまで説明した実施形態では、オブジェクト14,14間の間隔と、オブジェクト14を等分した際の一つ分の間隔とを同じ大きさとしていたが、必ずしも同じである必要はない。
例えば、図19に示した偽造防止パターン31では、オブジェクト14の高さATとオブジェクト14,14間の間隔MTとを合わせたオブジェクト送り長さOLを、等間隔に6分割して仮想分割領域14cを形成しているが、一つの仮想分割領域14cの幅と、オブジェクト14,14間の間隔MTとは等しくなっていない。
こうした偽造防止パターン31に対しても、仮想分割領域に基づいてスリットフィルムを作製することで、表意文字をイメージさせることができる。
【0041】
図20には、図19に示すオブジェクト送り値“6”の偽造防止パターン31に対して、スリット送り値を“7”としたスリットフィルム75を重ねたときの状態を示す。 また、図21には、図19に示すオブジェクト送り値“6”の偽造防止パターン31に対して、スリット送り値を“8”としたスリットフィルム85を重ねたときの状態を示す。
こうした例からも表意文字「A」がイメージされることがわかる。
【0042】
第5実施形態〔図22〕:
これまで説明した実施形態では、スリットフィルムを構成するスリットと遮光部分について、一のスリットにつき仮想分割領域が一つ分、一の遮光部分につき仮想分割領域が複数個分としてスリットフィルムを作製したが、スリットに対して仮想分割領域を複数個割り当てることもできる。但し、スリットに割り当てる仮想分割領域数よりも遮光部分に割り当てる仮想分割領域数を多くする必要がある。スリットに割り当てる仮想分割領域数よりも遮光部分に割り当てる仮想分割領域数を少なくするか、または同じにすると、表意文字がイメージしにくかったり、イメージできなかったりするからである。
図22には、偽造防止パターン11に、新たなスリットフィルム95を重ねた状態を示す。このスリットフィルム95は、オブジェクトの高さATを5等分し、オブジェクト14,14間の間隔MTを1等分した仮想分割領域14aのうち、仮想分割領域14aの二つ分をスリット95aとし、仮想分割領域14aの五つ分を遮光部分95bとして形成したものであり、スリット送り値は“7”となっている。
こうした例からも表意文字「A」がイメージされることがわかる。
【0043】
第6実施形態〔図23〕:
図23で示す偽造防止パターン41は、図1の偽造防止パターン1と、その偽造防止パターン1を90°半時計回りに回転させた偽造防止パターン1とを重ね合わせて形成したものである。
この偽造防止パターン41では、図2と同様に、即ちスリットを縦方向に並べる向きにスリットフィルム5を置けば、縦方向に配列した縮小扁平文字から文字パターンであるイメージ「TOKYO」を認識することができる。そうした一方で、スリットを横方向に並べる向きにスリットフィルム5を置けば、横方向に配列した縮小扁平文字から文字パターンであるイメージ「TOKYO」を認識することができる。この偽造防止パターン41では、縦方向に並べた縮小扁平文字と横方向に並べた縮小扁平文字とを組み合わせているため、それぞれの方向に配列した縮小扁平文字から文字パターンが読み取れるのである。
【0044】
したがって、縦方向、横方向のそれぞれの向きで、異なる文字パターンからなるオブジェクトを設けることができる。そしてまた、それぞれの向きでオブジェクトの大きさや間隔を変えることが可能である。また、それぞれの向きでそれぞれのイメージ表出が担保されるため、それぞれの方向でオブジェクトの色調を変えることが好ましい。
さらに、本実施形態では、二つの偽造防止パターン1,1を90°の角度で交差させているが、この角度は90°に限らず、任意の角度とすることができる。
【0045】
その他の変形例:
表意文字を表す基準文字からオブジェクトを形成するには、基準文字を上下方向に縮小するだけでなく、左右方向や、その他の任意の方向に縮小することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の偽造防止パターンは、主として偽造防止が必要な有価証券やカード類に施されるものであるが、意味内容が視認できないパターン模様から、所定のスリットフィルムを使うことで意味内容が明らかな文字等が表出する特徴を利用して、懸賞くじや、クイズ本など、偽造防止とは関係のない種々の用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1,11,21,31,41 偽造防止パターン
2 被刷体
3 偽造防止パターン形成体
4,14 オブジェクト(縮小扁平文字)
14a,14b,14c 仮想分割領域
5,15,25,35,45,55,65,75,85 スリットフィルム
15a,25a スリット(透明部分)
15b,25b 遮光部分
6 文字パターン
7,17,27,37,47,57,67 表意文字
8,18 基準文字
101 偽造防止パターン製造装置
102 コンピュータ
103 表示装置
104 入力装置
105 プリンタ装置
106 アプリケーションプログラム
107 ビデオドライバプログラム
108 プリンタドライバプログラム
AT オブジェクトの高さ(長さ)
MT オブジェクト間の間隔
OL オブジェクト送り長さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を基準文字とし、その基準文字を一定方向に所定の割合で圧縮して得た肉眼で判読不可能な縮小扁平文字でなるオブジェクトを、その圧縮方向に等間隔に複数並べてなる偽造防止パターン。
【請求項2】
請求項1記載の偽造防止パターンが設けられた偽造防止パターン形成体。
【請求項3】
一定幅のスリットとこのスリットよりも広幅で一定幅の遮光部分を交互に有するスリットフィルムにおいて、
請求項1記載の偽造防止パターンを形成する一のオブジェクトとその一のオブジェクトから前記一定方向に隣接する他の一のオブジェクトに至る間隔とをその方向に合算した長さをオブジェクト送り長さとし、このオブジェクト送り長さを等間隔に分割して複数の仮想分割領域を設定したときに、この仮想分割領域のうちのいくつかを透光部分としてスリットに形成し、残りの仮想分割領域を遮光して遮光部分に形成したことを特徴とする前記偽造防止パターンに重ねることで表意文字をイメージさせるスリットフィルム。
【請求項4】
前記複数の仮想分割領域の一の仮想分割領域の長さが一のオブジェクトから隣接する他の一のオブジェクトに至る間隔と同じ長さである請求項3記載のスリットフィルム。
【請求項5】
前記オブジェクト送り長さを前記一定方向に等間隔に分割した分割数をオブジェクト送り値と定義し、一のスリットと一の遮光部分とを構成する仮想分割領域数をスリット送り値と定義したときに、スリット送り値>オブジェクト送り値とする請求項3または請求項4記載のスリットフィルム。
【請求項6】
前記オブジェクト送り長さを前記一定方向に等間隔に分割した分割数をオブジェクト送り値と定義し、一のスリットと一の遮光部分とを構成する仮想分割領域数をスリット送り値と定義したときに、スリット送り値<オブジェクト送り値とする請求項3または請求項4記載のスリットフィルム。
【請求項7】
意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を基準文字とし、その基準文字を一定方向に所定の割合で圧縮して得た肉眼で判読不可能な縮小扁平文字でなるオブジェクトを、その圧縮方向に等間隔に複数並べた偽造防止パターンを形成する偽造防止パターン形成方法。
【請求項8】
請求項1記載の偽造防止パターンと請求項3〜請求項6何れか1項記載のスリットフィルムからなる真偽判別具。
【請求項1】
意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を基準文字とし、その基準文字を一定方向に所定の割合で圧縮して得た肉眼で判読不可能な縮小扁平文字でなるオブジェクトを、その圧縮方向に等間隔に複数並べてなる偽造防止パターン。
【請求項2】
請求項1記載の偽造防止パターンが設けられた偽造防止パターン形成体。
【請求項3】
一定幅のスリットとこのスリットよりも広幅で一定幅の遮光部分を交互に有するスリットフィルムにおいて、
請求項1記載の偽造防止パターンを形成する一のオブジェクトとその一のオブジェクトから前記一定方向に隣接する他の一のオブジェクトに至る間隔とをその方向に合算した長さをオブジェクト送り長さとし、このオブジェクト送り長さを等間隔に分割して複数の仮想分割領域を設定したときに、この仮想分割領域のうちのいくつかを透光部分としてスリットに形成し、残りの仮想分割領域を遮光して遮光部分に形成したことを特徴とする前記偽造防止パターンに重ねることで表意文字をイメージさせるスリットフィルム。
【請求項4】
前記複数の仮想分割領域の一の仮想分割領域の長さが一のオブジェクトから隣接する他の一のオブジェクトに至る間隔と同じ長さである請求項3記載のスリットフィルム。
【請求項5】
前記オブジェクト送り長さを前記一定方向に等間隔に分割した分割数をオブジェクト送り値と定義し、一のスリットと一の遮光部分とを構成する仮想分割領域数をスリット送り値と定義したときに、スリット送り値>オブジェクト送り値とする請求項3または請求項4記載のスリットフィルム。
【請求項6】
前記オブジェクト送り長さを前記一定方向に等間隔に分割した分割数をオブジェクト送り値と定義し、一のスリットと一の遮光部分とを構成する仮想分割領域数をスリット送り値と定義したときに、スリット送り値<オブジェクト送り値とする請求項3または請求項4記載のスリットフィルム。
【請求項7】
意味内容が判読可能な数字、文字、記号、図形等である表意文字を基準文字とし、その基準文字を一定方向に所定の割合で圧縮して得た肉眼で判読不可能な縮小扁平文字でなるオブジェクトを、その圧縮方向に等間隔に複数並べた偽造防止パターンを形成する偽造防止パターン形成方法。
【請求項8】
請求項1記載の偽造防止パターンと請求項3〜請求項6何れか1項記載のスリットフィルムからなる真偽判別具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2011−93153(P2011−93153A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248019(P2009−248019)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(503138020)株式会社昇寿堂 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(503138020)株式会社昇寿堂 (5)
【Fターム(参考)】
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