説明

偽造防止ラベル

【課題】従来の偽造防止物品より偽造防止効果が高く、且つ、物品へ貼付された偽造防止ラベルが剥離されたか否かを、偏光板を介して確認する事が可能な偽造防止ラベルを提供すること。
【解決手段】潜像を有する偽造防止ラベルであって、基材と、第一位相差層と、中間接着層と、第二位相差層と、偏光子層と、粘着層と、から構成されており、それらの層が前記基材の片面に、この順に形成されていることを特徴とする偽造防止ラベルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高価な商品等の物品に貼付して使用する、偽造防止を目的とした、偽造防止ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、高価な商品や電化製品の消耗品等、偽造防止を要する物品においては、それらの真贋を判定する為に、セキュリティラベルが貼付されている。 しかし、不正業者が、正規物品を偽造した不正物品を用意し、正規物品に貼り付けられているセキュリティラベルを剥離して不正物品へ貼り替えてしまった場合、購入者は正規物品と不正物品とを見分ける事が困難となってしまう。
【0003】
そこで、ラベル貼り替えによる偽造を防止する為に、粘着層を部分的に脆性化したセキュリティラベル(特許文献1や特許文献2を参照)が提案されている。これらの構成では、ラベルの接着力が部分的に異なっており、剥離の際に、接着力の差によってラベル自体が破壊される事で、剥離が行われたか否かを確認する事が可能となっている。しかしながら、上記の構成では、爪などを用いて丁寧に少しずつ剥離された場合や、ドライヤー等を併用して加熱しながら剥離された場合、ラベルが破壊され難くなり、剥離の有無を確認する事が確実に行えなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3684653号公報
【特許文献2】特許3546975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来の偽造防止物品より偽造防止効果が高く、且つ、物品へ貼付された偽造防止ラベルが剥離されたか否かを、偏光板を介して確認する事が可能な偽造防止ラベルを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、潜像を有する偽造防止ラベルであって、
少なくとも、基材と、位相差層と、中間接着層と、偏光子層と、粘着層と、から構成されており、それらの層が前記基材の片面に、この順に形成されていることを特徴とする偽造防止ラベルである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、潜像を有する偽造防止ラベルであって、
基材と、第一位相差層と、中間接着層と、第二位相差層と、偏光子層と、粘着層と、から構成されており、それらの層が前記基材の片面に、この順に形成されていることを特徴とする偽造防止ラベルである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、位相差層または/および偏光子層の光軸が、少なくとも一方向または/および二方向以上の異なる方向から成っている領域からできていることを特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止ラベルである。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、位相差層または/および偏光子層の少なくとも一つの層
が、それぞれの層の全領域または/および一部の領域に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偽造防止ラベルである。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、偏光子層がワイヤーグリッド偏光子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偽造防止ラベルである。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、基材の表面に情報を表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止ラベルである。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、中間接着層の可視光透過率が50%以上、または/および、中間接着層の粘着力がJIS Z0237:2009で規定された粘着力の試験方法のうち、方法6による試験結果が100mN/25mm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の偽造防止ラベルである。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、中間接着層の粘着力がJIS Z0237:2009で規定された粘着力の試験方法のうち、方法6による試験結果が8000mN/25mm以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の偽造防止ラベルである。
【0014】
また、請求項9に記載の発明は、中間接着層を構成する材料のガラス転移温度が、接着層を構成する材料のガラス転移温度より低いことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の偽造防止ラベルである。
【発明の効果】
【0015】
本発明による偽造防止ラベルが物品に貼付された偽造防止物品に対して剥離が行われた場合、剥離で加えられた物理的な力や熱によって前記中間接着層と粘着層の変位が生じ、偏光潜像層に設けられたセキュリティ機能が破壊される。観察者は、偏光板を介して想定した光学効果が得られるかどうかによって、偽造防止ラベルが剥離されたか否かを確認する事が可能となる。
【0016】
さらに、偏光子層の配向パターンによって、剥離性能の差が生じるため、パターンでの脆性を得ることもできる。
【0017】
また、偏光板を介さない目視おける観察では、偏光潜像は見えないため、潜像の存在に気づきにくいという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の偽造防止ラベルの概観の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の偽造防止ラベルの構成の一例を示す模式図である。
【図3】図1の偽造防止ラベルを、偏光板を介して観察した一例を示す平面図である。
【図4】図1の偽造防止ラベルを、偏光板を介して観察した一例を示す平面図である。
【図5】本発明の偽造防止ラベルの概観の一例を示す平面図である。
【図6】本発明の偽造防止ラベルの構成の一例を示す模式図である。
【図7】図5の偽造防止ラベルを、偏光板を介して観察した一例を示す平面図である。
【図8】図5の偽造防止ラベルを、偏光板を介して観察した一例を示す平面図である
【図9】本発明の偽造防止ラベルの概観の一例を示す平面図である。
【図10】本発明の偽造防止ラベルの構成の一例を示す模式図である。
【図11】図9の偽造防止ラベルを、偏光板を介して観察した一例を示す平面図である。
【図12】図9の偽造防止ラベルを、偏光板を介して観察した一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
(第一の構成)
図1は、本発明の偽造防止ラベルの一例を示す平面図であり、垂直方向から観察した偽造防止ラベル1の平面図を示す。
【0021】
図2は、本発明の偽造防止ラベルの構成の一例を示す模式図である。離型シート7に仮粘着された偽造防止ラベル1は、基材2から順に第一位相差層3、中間接着層4、偏光子層5、粘着層6からなる。また、第一位相差層3の光軸は図中、矢印方向で示されている。位相差層の配向をパターンとして制御するための手段は後述する。
【0022】
(第二の構成)
図5は、本発明の偽造防止ラベルの一例を示す平面図であり、垂直方向から観察した偽造防止ラベル101の平面図を示す。
【0023】
図6は、本発明の偽造防止ラベルの一例を示す模式図である。離型シート7に仮粘着された偽造防止ラベル101は、基材2から順に第一位相差層3、中間接着層4、第二位相差層9、偏光子層5、粘着層6からなる。また、第一位相差層3、および偏光子層5の光軸は図中、矢印方向で示されている。位相差層および偏光子層の配向をパターンとして制御するための手段は後述する。
【0024】
(第三の構成)
図9は、本発明の偽造防止ラベルの構成の一例を示す平面図であり、垂直方向から観察した偽造防止ラベル102の平面図を示す。
【0025】
図10は、本発明の偽造防止ラベルの事例を示す模式図である。離型シート7に仮粘着された偽造防止ラベル102は、基材2から順に第一位相差層3、中間接着層4、偏光子層5、粘着層6からなる。また、第一位相差層3および偏光子層5の光軸は図中、矢印方向で示されている。位相差層および偏光子層の配向をパターンとして制御するための手段は後述する。
【0026】
以下、上述した各層について詳細に説明する。
(基材)
基材2としては、偏光潜像の画像認識に影響を及ぼさないように、位相差を持たないフィルム等の基材が好ましい。これらには、無延伸アクリルフィルムやトリアセチルセルロースフィルム等がある。更に、基材2に対して、偏光潜像の画像認識に影響を及ぼさない程度に、もしくは部分的に、帯電防止処理やマット加工、エンボス処理等の加工をしても良い。
【0027】
(第一位相差層、第二位相差層)
図6の第一位相差層3は、第一位相差層の301A及び301Bに区分され、それぞれ異なる光軸のパターンで形成されている。この第一位相差層3は、図6に示された矢印方向に配向され、潜像パターンが形成されている。位相差層の配向および位相差値を制御するための手段は後述する。
【0028】
また図2において、第一位相差層3および偏光子層5は、配向が45°の角度をもって配置されている。
【0029】
また図6において、第一位相差層の301Aと第二位相差層9は平行方向に配置され、第一位相差層の301Bと第二位相差層9は垂直方向に配置されている。さらに第二位相差
層9と偏光子層5は、配向が45°の角度をもって配置されている。
【0030】
また図10において、偏光子層5の領域502Aは、第一位相差層3の光軸に対して配向が+45°の角度をもって配置され、領域502Bは、第一位相差層3の光軸に対して配向が−45°の角度をもって配置されている。
【0031】
位相差層の配向をパターンで変える手段としては公知の手段を用いることができるが、例えば、配向膜と液晶材料を用いることができる。
【0032】
液晶材料を用いる場合、パターン配向させた配向膜上に塗付することで、液晶を配向し位相差層とすることができる。
【0033】
また、前記配向膜を形成する方法としては、公知の技術を用いることができ、例えばラビングや真空斜方蒸着により配向処理を行う方法や、直線偏光や斜め非偏光照射による光反応を用いる光配向膜を使って配向させる方法等がある。
【0034】
位相差値に関して、材料の複屈折率およびその膜厚により制御できる。
【0035】
図2において、例えば、第一位相差層3の位相差値がλ/2になるように層の膜厚を制御することができる。
【0036】
図6において、例えば、第一位相差層3および第二位相差層9の位相差値の合計がλ/2になるように層の膜厚を制御することができる。一つの例として、第一位相差層3および第二位相差層9の位相差値をそれぞれλ/4になるように制御することができる。
【0037】
図10において、例えば、第一位相差層3の位相差値がλ/2になるように層の膜厚を制御することができる。
【0038】
(偏光子層、偏光板)
偏光子層5の材料について説明する。この偏光子層5は公知の樹脂材料等を用いることができるが、例えば、PVAにヨウ素もしくは二色性染料を含浸させ、延伸配向させた吸収型偏光板、もしくは二色性染料を配向膜状で配向させた吸収型偏光板などが利用できる。
【0039】
この他にも、透過光にて特定偏光成分を分離もしくは抽出できる素子であれば利用可能であり、本発明の偽造防止ラベルの真贋判定方法において偏光板10として検証にも用いることができる。
【0040】
また、偏光子層5はワイヤーグリッド偏光子であってもよい。ワイヤーグリッド偏光子は光透過性を持つ樹脂で形成された直線凹凸構造であり、ここに蒸着などの方法を用いて導体を形成すると、主に凹凸構造の凸部に導体が堆積し、前記直線極細導体が並んでいる状態と同じ状態になる。このため、直線凹凸構造に導体が形成された導体直線凹凸構造で作られた偏光子は、導体直線凹凸構造の直線方向に一致する直線偏光を反射し、導体直線凹凸構造の直線方向に直行する直線偏光を透過する。
【0041】
このワイヤーグリッド偏光子を用いることで、直線凹凸構造の方向によって中間接着層の剥離強度が異なるため、パターンで直線凹凸構造の方向を制御することによりパターン脆性の効果を発現することが可能となる。
【0042】
(中間接着層)
本発明においては、中間接着層4の可視光透過率は50%以上であり、且つ、中間接着層
4を構成する材料の、JIS Z0237で規定される粘着力が、それぞれ100mN/25mm以上となるように、材料や膜厚等を選択しなくてはならない。
しかし、ラベルとして成り立つ最低限の粘着力を保持するように調節する必要がある。
また、この中間接着層は粘着層よりも弱い粘着力であることが望ましい。
【0043】
さらに、中間接着層4を構成する材料のガラス転移温度が、粘着層を構成する材料のガラス転移温度よりも低い事が好ましい。
例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系などの粘着剤を単独で用いることができる。またはこれらの粘着剤にアルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリル等に代表される改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加したものを用いることができる。さらに、剥離性の材料による接着や、ワックスなどの材料を熱ラミネートによって貼り合わせてもよい。
【0044】
(粘着層)
本発明においては、粘着層6を構成する材料の、JISZ0237で規定される粘着力が、それぞれ8000mN/25mm以上となるように、材料や膜厚等を選択しなくてはならない。
【0045】
例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系などの粘着剤を単独で用いることができる。またはこれらの粘着剤にアルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリル等に代表される改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加したものを用いることができる。
【0046】
粘着層の形成方法には、公知のグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などの印刷方法やバーコート法、グラビア法、ロールコート法などの塗布方法を用いることができる。
【0047】
粘着層においては、粘着剤を予め剥離シートに形成したものを準備しておき、偽造防止媒体へセパレータを剥がして貼り合わせ、粘着層および剥離シートを形成してもよい。
【0048】
基材上には情報表示層8を設けても良い。また、このとき偏光潜像を隠さないように注意する。
【0049】
(情報表示層)
情報表示層8は、文字や数字による個体識別情報等の情報を、ラベルへ保持させる為の層であり、その材料や形成方法については、公知の手法が適宜用いられる。例えば、グラビア印刷法やスクリーン印刷法等による各種インクの印刷、真空蒸着法等による金属薄膜の形成等の手法が可能である。
【0050】
基材2と情報表示層8の間にアンカー層を設けても良い。
【0051】
基材2に切り込み又はミシン目を設けておいてもよい。これにより、ラベルを剥がそうとしたときに、基材2が切り込みから破れるような構造を採用することができる。もちろん、本発明の偽造防止媒体は、印刷物以外の物品に貼り付けて用いることもできる。
【0052】
(離型シート)離型シート7は、本発明によるセキュリティラベルを物品に貼付するまでの間、仮接着させる為に用いられる。離型シート7に用いられる材料としては、例えば、紙製またはプラスチック製のシートにシリコン樹脂等の離型層が積層されたセパレータが用いられる。
【0053】
次に、前記第一〜第三の構成で示した偽造防止ラベルを用いて偏光潜像を観測する形態と、これにより偽造防止ラベルを支持した物品が真正品であることを検証するための真贋判定方法を説明する。
【0054】
(第一の観察形態)
図3、図4は本発明の偽造防止ラベル1に偏光板10をかざして観察したときの偏光潜像を示す一例である。矢印は偏光板10の光軸方向を示している。
【0055】
図3においては、領域1Aには位相差層が存在せず、偏光子層と偏光板の光軸が平行なため光が透過でき、明るく見える。領域1Bにおいては、第一位相差層と偏光子層の光軸が45°の角度で配置されており、光が透過できず暗く見える。
【0056】
また、図4においては、領域1Aには位相差層が存在せず、偏光子層と偏光板の光軸が直交なため光が透過できず、暗く見える。領域1Bにおいては、第一位相差層と偏光子層の光軸が45°の角度で配置されており、光が透過でき明るく見える。
【0057】
(第二の観察形態)
図7、図8は本発明の偽造防止ラベル101に偏光板10をかざして観察したときの偏光潜像を示す一例である。矢印は偏光板10の光軸方向を示している。
【0058】
図7においては、領域101Aは、第一位相差層301Aと第二位相差層9の光軸が平行であり偏光子層6との角度が45°で配置されており、さらに、偏光板10の光軸が平行なため光が透過できず、暗く見える。領域101Bは、第一位相差層301Bと第二位相差層9の光軸が垂直であり偏光子層6との角度が45°で配置されており、さらに、偏光板10の光軸が垂直なため光が透過でき、明るく見える。
【0059】
また、図8においては、領域101Aは、第一位相差層301Aと第二位相差層9の光軸が平行であり偏光子層6との角度が45°で配置されており、さらに、偏光板10の光軸が垂直なため光が透過でき、明るく見える。領域101Bは、第一位相差層301Bと第二位相差層9の光軸が垂直であり偏光子層6との角度が45°で配置されており、さらに、偏光板10の光軸が平行なため光が透過できず、暗く見える。
【0060】
(第三の観察形態)
図11、図12は本発明の偽造防止ラベル102に偏光板10をかざして観察したときの偏光潜像を示す一例である。矢印は偏光板10の光軸方向を示している。
【0061】
図11においては、領域102Aは、領域102Aには位相差層が存在せず、偏光子層502Aと偏光板10の光軸が平行なため光が透過でき、明るく見える。領域102Bは、領域102Aには位相差層3が存在せず、偏光子層502Aと偏光板10の光軸が垂直なため光が透過できず、暗く見える。領域102Cは、第一位相差層3と偏光子層502Aの光軸が45°の角度で配置されており、さらに、偏光板10の光軸が平行なため光が透過できず、暗く見える。領域102Dは、第一位相差層3と偏光子層502Bの光軸が45°の角度で配置されており、さらに、偏光板10の光軸が垂直なため光が透過でき、
明るく見える。
【0062】
図12においては、領域102Aは、領域102Aには位相差層が存在せず、偏光子層502Aと偏光板10の光軸が垂直なため光が透過できず、暗く見える。領域102Bは、領域102Aには位相差層が存在せず、偏光子層502Aと偏光板10の光軸が平行なため光が透過でき、明るく見える。領域102Cは、第一位相差層3と偏光子層502Aの光軸が45°の角度で配置されており、さらに、偏光板10の光軸が垂直なため光が透過でき、明るく見える。領域102Dは、第一位相差層3と偏光子層502Bの光軸が45°の角度で配置されており、さらに、偏光板10の光軸が平行なため光が透過できず、暗く見える。
【0063】
このようにして、偏光板10を介して偽造防止ラベル1、101および102を観測し、その偏光潜像を確認することにより、偽造防止ラベル1、101および102が正規のものであることが確認でき、この偽造防止ラベルを支持した物品が真正品であることの真贋判定ができる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の偽造防止ラベル102の具体的な実施例について、主に図10を用いて説明する。
厚さ50μmのトリアセチルセルロースフィルムを材料とする基材2の片面に、情報表示層8として、墨インキを、スクリーン印刷法によって「SECURITY」という文字を図10に示した様に設けた。
【0065】
次に、基材2の、情報表示層8が形成されていない側に、光配向剤であるIA−01(大日本インキ化学工業社製)をマイクログラビアでパターン塗工し、製膜を行った。この光配向剤は、365nmの偏光光を照射すると、偏光方向に液晶配向力をもつ材料である。
【0066】
次に、光配向膜に対して直線偏光紫外線を用いて全面で4J/cm2の照射を行った。
【0067】
その後、大日本インキ化学工業製のUVキュアラブル液晶UCL−008を、マイクログラビアにてパターン塗工した後、無偏光紫外線を照射することにより硬化させた。UCL−008の複屈折率は0.18であるので、可視光の中心波長550nmの光に対して位相差値がλ/2となるようにするために、膜厚を1.52μmとなるようにした。
【0068】
この結果、図2の矢印で示されるような45°の角度でλ/2の位相差値を持つ第一位相差層3を形成した。
【0069】
次に、第一位相差層3に、中間接着層4として、下記の配合比からなる組成物を、グラビア印刷法によって、塗布厚5μm、乾燥温度110℃で形成した。
【0070】
(中間接着層)
ポリエステル樹脂 40部
メチルエチルケトン 30部
トルエン 30部
粘着力 30000mN/25mm
ガラス転移温度 −20℃
可視光透過率 90%
【0071】
次に、離型処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルムを別に用意し、アクリル樹
脂を塗工し、製膜を行った。
【0072】
次に、アクリル樹脂層に対して金型を用いて図10の偏光子層領域502A、502Bそれぞれの光軸に対して垂直方向の微細凹凸構造を形成した。
【0073】
次に、この微細凹凸構造に対し、真空蒸着法を用いて膜厚20nmのアルミニウム薄膜層を全面に設けた。
【0074】
このようにして図2の矢印で示されるような光軸をもつ偏光子層5を形成した。
【0075】
以上のようにして作製した、第一位相差層3を有する中間接着層4と偏光子層5が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルムを、第二位相差層5と中間接着層4が接するように光軸の角度を調節しながら貼り合わせた後、ポリエチレンテレフタレートフィルムのみを取り除く事によって、基材2に、順に、第一位相差層3、中間接着層4、偏光子層5が堆積された複層を形成した。
【0076】
最後に粘着層6として、下記の配合比からなる組成物をグラビア法によって、塗布厚10μm、乾燥温度110℃で塗布して形成して偽造防止ラベル1を作製した。更にこれを離型シート7に仮接着させた。
【0077】
(粘着層)
ポリエステル樹脂 60部
メチルエチルケトン 30部
トルエン 30部
粘着力 35000mN/25mm
ガラス転移温度 −40℃
【0078】
次に、偏光板10を用いた偽造防止ラベル102の真贋判定を行った。
【0079】
図11は作成した偽造防止ラベル1を偏光板10を介して観察した一例を示す平面図である。領域102Aは、領域102Aには位相差層3が存在せず、偏光子層502Aと偏光板10の光軸が平行なため光が透過でき、明るく表示される。領域102Bは、領域102Aには位相差層3が存在せず、偏光子層502Aと偏光板10の光軸が垂直なため光が透過できず、暗く表示される。領域102Cは、第一位相差層3と偏光子層502Aの光軸が45°の角度で配置されており、さらに、偏光板10の光軸が平行なため光が透過できず、暗く表示される。領域102Dは、第一位相差層3と偏光子層502Bの光軸が45°の角度で配置されており、さらに、偏光板10の光軸が垂直なため光が透過でき、明るく表示される。
【0080】
次に、図12は図11から偏光板を90°傾けたときの偽造防止ラベル102を観察した一例を示す平面図である。これらも前記と同様の原理で領域102Aおよび102Dは暗く、領域102Bおよび102Cは明るく表示される。
【0081】
このようにして偏光板10を介しながら、偏光板10の角度を変えることで、偏光潜像の明暗が反転することで真贋判定を行うことができる。
【0082】
また、作製した偽造防止ラベル102を対象物品に貼り付け、これをドライヤーと爪によって剥離すると、剥離によって第二位相差層が破壊され、光学効果が失われて想定される偏光潜像が観察できないのが確認された。以上は、偽造防止ラベル102が剥離されたか否かを、確認する事が可能となるものである。
【0083】
さらに、作製した偽造防止ラベル102を対象物品に貼り付け、偽造防止ラベル102の長編方向にラベルを剥がそうとすると、偏光子層5に設けられた直線性の微細凹凸構造の方向によりラベルの剥離強度が異なることで、偏光子層5の領域502A(領域102Aおよび102C)では剥離具合が大きく、502B(領域102Bおよび102D)では小さいという効果も確認された。
【符号の説明】
【0084】
1、101・・・偽造防止ラベル
1A、1B、101A、101B、102A〜102D・・・偏光潜像パターン領域
2・・・基材
3・・・第一位相差層
301A、301B・・・第一位相差層の各光軸パターン領域
4・・・中間接着層
5・・・偏光子層
502A、502B・・・偏光子層の各光軸パターン領域
6・・・粘着層
7・・・離型シート
8・・・情報表示層
9・・・第二位相差層
10・・・偏光板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像を有する偽造防止ラベルであって、
少なくとも、基材と、位相差層と、中間接着層と、偏光子層と、粘着層と、から構成されており、それらの層が前記基材の片面に、この順に形成されていることを特徴とする偽造防止ラベル。
【請求項2】
潜像を有する偽造防止ラベルであって、
基材と、第一位相差層と、中間接着層と、第二位相差層と、偏光子層と、粘着層と、から構成されており、それらの層が前記基材の片面に、この順に形成されていることを特徴とする偽造防止ラベル。
【請求項3】
位相差層または/および偏光子層の光軸が、少なくとも一方向または/および二方向以上の異なる方向から成っている領域からできていることを特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止ラベル。
【請求項4】
位相差層または/および偏光子層の少なくとも一つの層が、それぞれの層の全領域または/および一部の領域に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偽造防止ラベル。
【請求項5】
偏光子層がワイヤーグリッド偏光子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偽造防止ラベル。
【請求項6】
基材の表面に情報を表示することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止ラベル。
【請求項7】
中間接着層の可視光透過率が50%以上、または/および、中間接着層の粘着力がJIS
Z0237:2009で規定された粘着力の試験方法のうち、方法6による試験結果が100mN/25mm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の偽造防止ラベル。
【請求項8】
中間接着層の粘着力がJIS Z0237:2009で規定された粘着力の試験方法のうち、方法6による試験結果が8000mN/25mm以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の偽造防止ラベル。
【請求項9】
中間接着層を構成する材料のガラス転移温度が、接着層を構成する材料のガラス転移温度より低いことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の偽造防止ラベル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−232578(P2011−232578A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103238(P2010−103238)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】