説明

偽造防止印刷物の作製方法

【課題】
高度な刷合せ精度を要するペアインキを用いた特殊な網点構成による偽造防止印刷物を、一般的な印刷方法と印刷機によって容易に形成可能な印刷方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
基材に、第1の要素と、第1の要素を囲むように隣接して配置された第2の要素からなる潜像画像形成画素を少なくとも備えた画素群が形成される偽造防止印刷物の作成方法において、第1の要素又は第2の要素のうち、一方の要素を撥水及び/又は撥油機能を有し、かつ、基材と異なる色の第1のインキで形成し、残りの要素を撥水及び/又は撥油機能を有せず、可視光の拡散反射光下による観察条件で第1のインキと等色の第2のインキで一方の要素の輪郭を覆うように印刷し、第1のインキと第2のインキは、特定の観察条件で異なる色で観察されるインキを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード及び通行券等のセキュリティ印刷物の分野において用いられるペアインキと特殊な網点構成を用いて形成する印刷物の印刷方法であって、精度の高い刷り合わせを容易に実現する印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ及びカラーコピー機等のデジタル機器の進展により、セキュリティ印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。このため、複製品や偽造品と、真正品とを判別するための技術として、いわゆる、真偽判別性に優れた偽造防止技術が必要とされている。真偽判別性に優れた偽造防止技術としては、例えば、日本銀行券に付与されているすき入れやホログラム等があり、このような技術は、容易に偽造や複製をすることができないがゆえに、その存在を確かめることで、その印刷物が偽造品や複製品でないかを判別することができる。
【0003】
これらの偽造防止技術の一つに、可視光の拡散反射光下による観察条件では、等色として観察されるが、特定の観察条件で観察した場合に、異なる色彩として観察される二つの等色インキ(ペアインキ)を使用し、かつ、特殊な構成を用いて形成する偽造防止技術が存在する。これらの技術は、ペアインキの一方で潜像画像を形成し、他方のインキで潜像画像をカモフラージュする画像を形成して潜像画像を不可視にする構成であり、可視光の拡散反射光下による観察条件では、潜像画像を観察することができないが、ある特定の観察条件で観察した場合に、潜像画像が出現する効果を有し、判別者は、潜像画像を視認することで、真偽判別を行うものである。
【0004】
これらの偽造防止技術として、本出願人は、例えば、可視光の拡散反射光下による観察条件では、等しい色として観察されるが、可視光領域における特定の波長範囲の光を照射して観察した場合に、異なる色彩に変化するか、又は一方のインキが不可視となるメタメリックペアインキを用い、特殊な構造の網点構成によって形成する真偽判別可能な印刷物を出願している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。これらの印刷物は、可視光の拡散反射光下による観察条件で視認されていた画像が、特定のフィルタを通して観察した場合に、全く異なる画像へとチェンジする優れた効果を有し、真偽判別性に優れるが、作製にあたっては、2色のペアインキを極めて高い精度で刷り合わせる必要がある。
【0005】
具体的には、特許文献1及び特許文献2に記載の印刷物は、図1に示すように、ペアインキの一方のインキを用いて、極めて小さな網点や細い画線等で形成した第1の要素(1)と、他方のインキで形成した第2の要素(2)を隙間なく刷り合わせて形成する潜像画像形成画素(3)を備える。
【0006】
この刷り合わせは、第1の要素(1)と第2の要素(2)が、わずかな刷り合わせズレもない、いわゆる、「毛抜き合わせ」と呼ばれる高い精度を要する印刷方式である。仮に、第1の要素(1)と第2の要素(2)がオーバーラップした場合には、インキの重ね合わせによって、オーバーラップした部分の濃度が高くなり、不可視とならなければならない潜像画像が可視化されてしまうことから、第1の要素(1)と第2の要素(2)がオーバーラップすることは、避けなければならない。このような印刷物を、印刷機を用いて大量に作製する場合、印刷機上で用紙の伸縮や版面のゆがみが発生するため、印刷機を用いた一般的な印刷サイズである四六判や菊判全面で毛抜き合わせによる印刷精度を実現するのは、極めて高い印刷技術が必要であり、特別な設備と優れた技能を備えた印刷業者でなければ、この印刷物を作製することは困難である。
【0007】
このように高精度な刷り合わせを実現する方法としては、印刷時の伸縮が少ない基材を用い、印刷時に版面上に生じるゆがみを計算して、あらかじめ、ゆがみを繰り込んだ画線設計を行う方法がある。ただし、この方法は高い技能と多くの経験が必要であり、容易に実現することができる方法ではない。
【0008】
一方、このような高精度な刷り合わせを、インキの特性や印刷方式の特徴を利用することによって、実現した方法が存在する。例えば、本出願人は、オフセット印刷と凹版印刷のコンビネーション印刷機を使用し、網点又は細線から成る地紋模様をオフセット印刷したのち、そのインキが乾燥しないうちに、ただちにエチレングリコールエステル等の新水性溶剤を含む凹版インキでベタ又は連続した模様を印刷することで、精巧な模様の刷り合わせを行うことができる印刷方式を出願している(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許4461234号公報
【特許文献2】特許4441632号公報
【特許文献3】特公平6−41224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3の印刷方法を用いた場合には、精巧な刷り合わせを実現することができるが、オフセットと凹版のコンビネーション印刷が可能な極めて特殊な印刷機を用いる必要があり、一般的な印刷機で実現することができる方法ではなかった。また、この方法において、凹版印刷で形成する模様は、ベタや連続した模様等の比較的単純な画像でなければ、安定した効果を得ることが困難であり、デザイン上で大きな制約が生じるとともに、本発明の意図するような小さな網点同士の組合せに適用することができる技術ではなかった。また、オフセット印刷と凹版印刷では、用いるワニス成分や形成されるインキ皮膜厚さの全く異なる印刷方式を組み合わせるため、オフセット印刷で形成される画線と、凹版印刷で形成される画線を等色に仕上げることが困難であった。以上のことから、特許文献3の印刷方法は、特許文献1や特許文献2に記載の、等色ペアインキを用いて潜像画像が完全に隠ぺいされた印刷物を作製するために適用することは不可能であった。
【0011】
本発明は、前述した潜像画像が隠ぺいされた偽造防止印刷物を作製するための課題の解決を目的とするものであり、従来のペアインキの内、先刷りされるインキに撥水及び/又は撥油機能を付加し、この撥水及び/又は撥油機能によって先刷りされたインキ上に、後刷りインキが重ならないことを利用する印刷方法であって、従来、毛抜き合わせによってしか形成不可能であった、高度な刷り合わせ精度を要するペアインキを用いた特殊な網点構成による偽造防止印刷物を、一般的な印刷方法と印刷機によって容易に形成することが可能な印刷方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の偽造防止印刷物の作製方法は、基材の少なくとも一部に、複数の微細な画素から成る画素群が形成される画像形成領域を有し、前述の画像形成領域は、可視光の拡散反射光下による観察条件で観察可能な可視画像と、可視光の拡散反射光下の観察条件とは異なる特定の観察条件でのみ観察可能な潜像画像を備えた偽造防止印刷物において、画素群は、第1の要素と、第1の要素を囲むように隣接して配置された第2の要素から成る潜像画像形成画素を少なくとも有し、第1の要素及び第2の要素は、基材と異なる色であり、可視光の拡散反射光下による観察条件で等色として観察される2つのインキで形成され、かつ、第1の要素及び第2の要素を形成する少なくとも一方のインキは、特定の観察条件で他方のインキに対して異なる色彩で観察される機能性材料を含み、機能性材料を含むインキで形成された第1の要素又は第2の要素により潜像画像が形成され、複数の微細な画素により可視画像が形成された偽造防止印刷物の作製方法であって、第1の要素と第2の要素のうち、一方の要素を撥水及び/又は撥油機能を有する第1のインキで印刷し、他方の要素を撥水及び/又は撥油機能を有しない第2のインキで、一方の要素の輪郭を少なくとも覆うように印刷することを特徴とする偽造防止印刷物の作製方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の偽造防止印刷物の作製方法においては、第1の要素と第2の要素を形成するための第1のインキと第2のインキ同士がはじき合うことによって、従来のように高精度な刷り合わせ制御を行わなくとも、第2の要素の中に第1の要素が含まれる位置関係を維持するだけで、容易に、かつ、正確に毛抜き合わせで形成した場合と同じ潜像画像形成画素が形成される。よって、特殊な設備や高い技能を必要とすることなく、ペアインキを用いた偽造防止印刷物を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】毛抜き合わせの方法によって形成される潜像画像形成画素を示す図。
【図2】潜像画像形成画素を備えた従来の偽造防止印刷物を示す図。
【図3】画像形成領域に形成される可視画像と潜像画像を示す図。
【図4】可視画像の構成を示す図。
【図5】潜像画像の構成を示す図。
【図6】可視画像の構成を示す図。
【図7】潜像画像とカモフラージュ画像の構成を示す図。
【図8】潜像画像形成画素で構成される可視画像を示す図。
【図9】潜像画像の構成を示す図。
【図10】可視画像の構成を示す図。
【図11】潜像画像形成画素、カモフラージュ画素及び情報画素の配置を示す図。
【図12】画像形成領域に配置される第1の領域と第2の領域を示す図。
【図13】情報画像の構成を示す図。
【図14】背景画像の構成を示す図。
【図15】画像形成領域に、本発明の印刷方法によって第1の要素を形成する状態を示す図。
【図16】潜像画像の構成を示す図。
【図17】第1の要素の平面図及び断面図を示す図。
【図18】第1の要素の上に印刷された第2のインキの平面図及び断面図を示す図。
【図19】第1のインキによって第2のインキがはじかれる状態を示す図。
【図20】本発明の印刷方法によって形成された潜像画像形成画素を示す図。
【図21】本発明の印刷方法を用いた場合に、許容される刷り合わせの例を示す図。
【図22】第1の要素の上に印刷する第2のインキの範囲を示す図。
【図23】第2の要素の平面図及び断面図を示す図。
【図24】第2の要素の上に印刷された第2のインキの平面図及び断面図を示す図。
【図25】第1のインキによって第2のインキがはじかれる状態を示す図。
【図26】背景画像を構成する画素と情報画素の配置を示す図。
【図27】背景画像を構成する画素と情報画素の配置を示す図。
【図28】実施例1の偽造防止印刷物の可視画像を示す図。
【図29】潜像画像形成画素、カモフラージュ画素及び情報画素の配置を示す図。
【図30】実施例1の偽造防止印刷物を観察したときの状態を示す図。
【図31】比較例1の偽造防止印刷物の印刷過程において生じた、第1の要素と第2の要素の位置ずれの状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0016】
本発明の偽造防止印刷物の作製方法について説明するが、まず、図1に示す第1の要素(1)と第2の要素(2)から成る潜像画像形成画素(3)を備えた偽造防止印刷物(10)の構成について説明したのち、本発明の偽造防止印刷物(10)の作製方法について説明する。
【0017】
(偽造防止印刷物の第1の例)
図2は、第1の要素(1)と第2の要素(2)から成る潜像画像形成画素(3)を備えた偽造防止印刷物(10)の第1の例を示す図である。図2に示すように、第1の例の偽造防止印刷物(10)は、基材(11)の少なくとも一部に、基材(11)と異なる色の複数の微細な画素(12A)から成る画素群(12)が形成される画像形成領域(13)を有し、複数の微細な画素(12A)の少なくとも一部は、潜像画像形成画素(3)で構成される。そして、偽造防止印刷物(10)の画像形成領域(13)を、可視光の拡散反射光下による観察条件で観察した場合には、図3(a)に示すフラットな濃度の可視画像(20)が観察される。また、特定の観察条件で観察した場合には、図3(b)に示すフラットな濃度の潜像画像(30)が視認される。なお、特定の観察条件で観察した場合の状態については、後述することとし、続いて、複数の微細な画素(12A)によって形成される可視画像(20)と潜像画像(30)の構成について説明する。
【0018】
図4(a)は、第1の例の偽造防止印刷物(10)の画像形成領域(13)に形成される可視画像(20)を示す図であり、第1の例において可視画像(20)は、図4(a)の拡大図に示すように、複数の微細な画素(12A)が、特定のピッチ(P)で規則的に配置され、かつ、複数の微細な画素(12A)の大きさは、全て同じ大きさで形成されてなり、これによって、濃淡のないフラットな濃度の画像が形成される。
【0019】
なお、本発明において、「画素」とは、可視画像(20)を形成する最小単位である一つの網点か、又はその網点を複数集合させて形成した一塊の画像要素であって、形状に関しては、円、多角形又は星型等でも良く、その他の特殊な文字又は記号等も含まれる。
【0020】
本明細書において、「複数の微細な画素(12A)が規則的に配置された状態」とは、複数の微細な画素(12A)が特定のピッチで二つの異なる方向にマトリクス状に配置された状態のことである。図2(a)では、複数の微細な画素(12A)が上下左右方向の二つの方向に特定のピッチで配置された状態を示しているが、二つの異なる方向とは、上下左右方向に限定されず、斜め方向であっても良い。
【0021】
複数の微細な画素(12A)を形成する印刷方法は、特に限定されるものではなく、オフセット印刷、グラビア印刷、凹版印刷及びフレキソ印刷等の印刷機を用いるか、又はインクジェット印刷及び電子写真印刷等の印刷機器を用いる等、公知の印刷方法を用いることができる。
【0022】
本説明では、図4(a)に示す可視画像(20)に対して、左右方向の画素の大きさを、それぞれ「画素の幅(R)」とし、上下方向の画素の大きさを、それぞれ「画素の高さ(H)」として説明する。
【0023】
第1の例の偽造防止印刷物(10)における可視画像(20)は、前述したように、画像形成領域(13)内に形成される複数の微細な画素(12A)の少なくとも一部が、潜像画像形成画素(3)で構成されることによって、図4(b)に示す潜像画像(30)と図4(c)に示すカモフラージュ画像(31)に区分けされる。続いて、潜像画像(30)とカモフラージュ画像(31)の詳細な構成について説明する。
【0024】
(潜像画像)
画像形成領域(13)に形成される複数の微細な画素(12A)の内、図4(b)に示す潜像画像(30)に対応する複数の微細な画素(12A)は、潜像画像形成画素(3)で構成され、これによって、潜像画像(30)の図柄である「B」の文字が形成される。なお、フラットな濃度の潜像画像(30)を形成するため、図4(b)の拡大図に示すように、潜像画像形成画素(3)の中の第1の要素(1)は、すべて同じ大きさで形成されている。
【0025】
複数の微細な画素(12A)が配置されるピッチ(P)、画素の幅(R)及び画素の高さ(H)については、前述したとおりであるが、以降の説明では、潜像画像形成画素(3)に対しては、「潜像画像形成画素(3)のピッチ(P1)」、「潜像画像形成画素(3)の幅(R1)」及び「潜像画像形成画素(3)の高さ(H1)」とする。
【0026】
第1の例の偽造防止印刷物(10)において潜像画像(30)の図柄は、「B」の文字であるが、潜像画像(30)は、他の文字、数字、記号、図形、マーク又は模様でも良い。
【0027】
潜像画像形成画素(3)は、前述したように、第1の要素(1)が、ペアインキの一方のインキを用いて形成され、第2の要素(2)が、他方のインキを用いて形成される。ここでペアインキの詳細な構成について説明する。
【0028】
ペアインキとして構成される二つのインキは、可視光の拡散反射光下による観察条件で等色に観察されるインキを用い、第1の要素(1)と第2の要素(2)は、同じ網点面積率で形成される。なお、本発明でいう「等色関係」とは、基材(11)に同じ面積率で印刷したときの二つのペアインキの色差ΔEが6未満の範囲のことである。一般的に、ΔEが6程度あった場合は、異なる色相として観察されるが、本発明の第1の要素(1)と第2の要素(2)は、微小な面積によって形成されているため、ΔEが6未満であれば、等色として観察することができる。これによって、偽造防止印刷物(10)を可視光の拡散反射光下による観察条件で観察した場合、第1の要素(1)と第2の要素(2)を同じ色として観察することができるため、第1の要素(1)は、第2の要素(2)によって隠ぺいされることとなる。
【0029】
また、第1の要素(1)を形成するインキと第2の要素(2)を形成するインキの内、一方のインキは、特定の観察条件で他方のインキに対して異なる色彩で観察されるインキを用いる。なお、本明細書でいう「特定の観察条件」とは、可視光の拡散反射光下による観察条件とは異なる観察条件であり、具体的には、赤外線カメラを用いた観察条件や、UVランプを照射しての観察等の可視領域以外の光を用いた観察条件や、可視光中の特定の波長帯の光のみを用いて観察する条件や、強く光を反射する正反射光を観察する条件等を含む。また、光を用いた観察条件だけでなく、環境中の温度を変化させて観察する条件や、強い応力を与えて観察する条件、ペンで塗りつぶして観察する条件や、水や油に浸漬させて観察する条件等の、あらゆる観察条件を含む。
【0030】
例えば、ペアインキのうち、一方のインキが640nm以上の波長帯の光を強く吸収し、他方のインキが640nm以上の波長帯の光を吸収しないインキを用いた場合、特定の観察条件とは、640nm以上の光を用いた観察となる。この観察条件を満たす方法としては、赤色のシャープカットフィルタ(SC64 富士フィルム製)を用いて観察する方法が挙げられる。また、ペアインキのうち、一方のインキが、温度30度以上で色が消失し、他方のインキが温度30度でも色が変わらないインキを用いた場合、特定の観察条件とは、温度30度以上での観察となる。
【0031】
このような特性を付与するには、機能性材料をインキに配合した機能性インキを使用する必要がある。現在、様々な機能性材料が販売されていることから、発光インキ、赤外線吸収インキ、サーモクロミックインキ及びフォトクロミックインキ等、その用途に応じたインキを選択するか、又はインキ中に機能性材料を配合すれば良い。
【0032】
このようなペアインキを用いることによって、偽造防止印刷物(10)の潜像画像(30)を特定の観察条件で観察する際には、前述した機能性材料を含んでいないインキで形成される要素は、潜像画像(30)の視認性に影響せず、機能性材料を含んだインキで形成される要素によって、潜像画像(30)が視認される。以上、説明したように、偽造防止印刷物(10)において、潜像画像(30)に対応する複数の微細な画素(12A)は、潜像画像形成画素(3)で構成されるが、実際に潜像画像(30)は、潜像画像形成画素(3)の中の機能性材料を含んだインキから成る要素によって形成される。なお、機能性材料を含んだインキで形成される要素は、第1の要素(1)でも良いし、第2の要素(2)でも良い。また、第1の要素(1)と第2の要素(2)のそれぞれを、異なる特性の機能性材料を含んだインキを用いて形成しても良い。例えば、ペアインキの一方にサーモクロミックインキを、他方にフォトクロミックインキを用いることによって、それぞれの機能性材料に対応した特定の観察条件で潜像画像(30)を視認することができる。
【0033】
(カモフラージュ画像)
カモフラージュ画像(31)は、画像形成領域(13)内に規則的に配置される複数の微細な画素(12A)から、潜像画像(30)である「B」の文字を構成する潜像画像形成画素(3)を除く複数の微細な画素(12A)によって形成される。以降、カモフラージュ画像(31)に対応する画素のことを「カモフラージュ画素(4)」として説明する。
【0034】
複数の微細な画素(12A)が配置されるピッチ(P1)、画素の幅(R1)及び画素の高さ(H1)については、前述したとおりであるが、以降の説明では、カモフラージュ画素(4)に対しては、「カモフラージュ画素のピッチ(P2)」、「カモフラージュ画素の幅(R2)」及び「カモフラージュ画素の高さ(H2)」とする。
【0035】
カモフラージュ画素(4)を形成するインキは、前述した機能性材料を含まず、可視光の拡散反射光下による観察条件で、前述したペアインキと等色に観察されるインキを用いる。これにより、潜像画像形成画素(3)とカモフラージュ画素(4)も、可視光の拡散反射光下による観察条件では、同じ色として観察される。
【0036】
カモフラージュ画素(4)の形状に関しては、図4(c)に示す四角形の他に、円、多角形及び星型等でも良く、その他の特殊な文字又は記号等も含まれる。ただし、フラットな濃度の画像を形成するため、カモフラージュ画素(4)は、潜像画像形成画素(3)と同じ形状であり、第1の要素(1)及び第2の要素(2)の網点面積率と同じ網点面積率で形成される。
【0037】
このような偽造防止印刷物(10)を、可視光の拡散反射光下による観察条件で観察した場合、ペアインキで形成される複数の微細な画素(12A)は、等色に観察されるため、潜像画像(30)は、カモフラージュ画像(31)によって隠ぺいされ、可視画像(20)のみが観察される。このとき観察される可視画像(20)は、画像形成領域(13)に形成される複数の微細な画素(12A)が規則的に配置されており、画像形成領域(13)のどの位置においても、複数の微細な画素(12A)の反射率が同じであるため、フラットな濃度の画像として観察される。
【0038】
一方、特定の観察条件で観察した場合には、機能性材料を含むインキで形成した部分が観察され、機能性材料を含んだインキから成る要素で形成される潜像画像(30)が視認される(図3(b))。このとき、第1の要素(1)は、すべて同じ大きさで形成されていることから、潜像画像(30)は、フラットな濃度で視認される。
【0039】
このように、可視画像(20)の中に潜像画像(30)が施された偽造防止印刷物(10)は、可視光の拡散反射光下による観察条件で観察される可視画像(20)から、特定の観察条件で、潜像画像(30)に変化することを確認することで、印刷物が真正であることを判定することができる。
【0040】
以上、説明したように、本発明により作製する偽造防止印刷物(10)は、複数の第1の要素(1)が、すべて同じ大きさで形成される例であるが、図5の拡大図に示すように、複数の潜像画像形成画素(3)において、第1の要素(1)の大きさを異ならせても良い。この場合、特定の観察条件で観察すると、潜像画像形成画素(3)ごとに、機能性材料を含むインキから成る要素の面積の差によって濃度差が生じて、複数の濃度を有する潜像画像(30)が視認される。
【0041】
また、第1の例の偽造防止印刷物(10)は、複数の微細な画素(12A)同士の間隔を空けて複数の微細な画素(12A)を配置して可視画像(20)が形成されるが、図6の拡大図に示すように、画像形成領域(13)に隙間なく複数の微細な画素(12A)を配置しても良い。この場合、可視画像(20)は、完全なベタ画像として観察される。このとき、潜像画像(30)を構成する潜像画像形成画素(3)は、図7に示すように、連続して「B」の文字の潜像画像(30)を形成するように配置しても良いし、潜像画像形成画素(3)同士の間隔を空けて配置しても良い。図7(b)は、潜像画像形成画素(3)を連続して配置して成る「B」の文字の潜像画像(30)に対する、カモフラージュ画像(31)の構成を示しており、前述したように、画像形成領域(13)内に規則的に配置される複数の微細な画素(12A)から、潜像画像形成画素(3)を除く画素がカモフラージュ画像(31)を構成する画素となる。
【0042】
(偽造防止印刷物の第2の例)
続いて、第1の要素(1)と第2の要素(2)から成る潜像画像形成画素(3)を備えた偽造防止印刷物(10)の第2の例について説明する。
【0043】
第2の例の偽造防止印刷物(10)は、第1の例に対して可視画像(20)が、潜像画像形成画素(3)のみで形成される例である。第2の例の偽造防止印刷物(10)の画像形成領域(13)に形成される可視画像(20)を図8に示す。
【0044】
(可視画像)
図8は、画像形成領域(13)に形成される可視画像(20)を示す図であり、第2の例における可視画像(20)は、図8の拡大図に示すように、潜像画像形成画素(3)が特定のピッチ(P1)で規則的に配置され、かつ、複数の潜像画像形成画素(3)の大きさは、すべて同じ大きさで形成される。これによって、濃淡のないフラットな濃度の画像が形成される。
【0045】
(潜像画像)
第2の例の潜像画像(30)について、第1の例と同様に、「B」の文字が視認される例で説明する。なお、潜像画像形成画素(3)を構成する第1の要素(1)と第2の要素(2)を形成するインキについては、第1の例と同じであるため、説明を省略する。
【0046】
図9(a)は、第2の例の潜像画像(30)を示す図である。また、図9(b)は、潜像画像(30)の「B」の文字に対応する潜像画像形成画素(3)を拡大した図である。また、図9(c)は、潜像画像(30)の「B」の文字の背景に対応する潜像画像形成画素(3)を拡大した図である。前述したように、画像形成領域(13)に形成される複数の微細な画素(12A)は、すべて潜像画像形成画素(3)で構成され、潜像画像形成画素(3)を構成する第1の要素(1)と第2の要素(2)は、同じ網点面積率で形成される。
【0047】
図9(b)及び図9(c)に示すように、第2の例の偽造防止印刷物(10)は、潜像画像(30)の「B」の文字に対応する潜像画像形成画素(3)の中の第1の要素(1)と、「B」の文字の背景に対応する潜像画像形成画素(3)の中の第1の要素(1)の大きさが異なる。なお、図9(b)及び図9(c)は、「B」の文字に対応する潜像画像形成画素(3)の中の第1の要素(1)が、「B」の文字の背景に対応する潜像画像形成画素(3)の中の第1の要素(1)より大きく形成される例を示している。
【0048】
図9に示す偽造防止印刷物(10)の構成において、仮に、第1の要素(1)を、機能性材料を含むインキで形成した場合、「B」の文字部分と「B」の文字部分の背景で、それぞれを構成する第1の要素(1)の面積による濃淡差が生じ、図9(a)に示すように、大きい第1の要素(1)で形成された「B」の文字が「B」の文字の背景に対して濃く視認される潜像画像(30)を観察することができる。
【0049】
第2の例において、潜像画像形成画素(3)の中の第1の要素(1)の大きさを異ならせる理由は、第1の例の潜像画像(30)に対応する複数の微細な画素(12A)が潜像画像形成画素(3)で構成され、機能性材料を含むインキで成る要素の有無によって潜像画像(30)が形成されるのに対し、第2の例は、機能性材料を含むインキで成る要素の大きさを異ならせて、特定の観察条件で観察したときの濃度差によって潜像画像(30)を形成するためである。なお、図9に示す偽造防止印刷物(10)の構成において、仮に、第2の要素(2)を、機能性材料を含むインキで形成した場合、「B」の文字の背景が「B」の文字に対して濃く視認される潜像画像(30)が観察される。
【0050】
(偽造防止印刷物の第3の例)
続いて、第1の要素(1)と第2の要素(2)から成る潜像画像形成画素(3)を備えた偽造防止印刷物(10)の第3の例について説明する。
【0051】
第3の例の偽造防止印刷物(10)は、複数の微細な画素(12A)によって、第1の例又は第2の例で説明したフラットな濃度で形成される画像と、有意味な情報を備えた画像によって可視画像(20)が形成される例である。なお、本説明において「有意味な情報」とは、文字、数字、記号、図形、マーク及び模様等の情報のことである。
【0052】
第3の例の偽造防止印刷物(10)の画像形成領域(13)に形成される可視画像(20)を図10(a)に示す。
【0053】
第3の例において可視画像(20)は、図10(b)に示すフラットな濃度で形成される画像と、図10(c)に示す有意味な情報を備えた画像から構成される。なお、以降の説明では、図10(b)に示すフラットな濃度の画像を「背景画像(21)」とし、図10(c)に示す有意味な情報を備えた画像を「情報画像(22)」として説明する。背景画像(21)を構成する複数の微細な画素(12A)と情報画像(22)を構成する複数の微細な画素(12A)については後述するが、背景画像(21)と情報画像(22)を構成する画素は、互いに異なる画素である。
【0054】
はじめに、第3の例の偽造防止印刷物(10)について、可視画像(20)を構成する背景画像(21)が、第1の例で説明した潜像画像形成画素(3)とカモフラージュ画素(4)が一定の間隔を空けて配置されてなり、可視画像(20)を構成する情報画像(22)が、「A」の文字で構成される例で説明する。
【0055】
(背景画像)
第3の例の偽造防止印刷物(10)における背景画像(21)は、図4に示す第1の例の偽造防止印刷物(10)で説明したフラットな濃度で観察される画像の構成と同じであるため、説明を一部省略するが、背景画像(21)は、潜像画像(30)とカモフラージュ画像(31)から構成されている。
【0056】
図10(b)の拡大図に示すように、第3の例においても、潜像画像(30)に対応する複数の微細な画素(12A)は、潜像画像形成画素(3)で構成され、潜像画像形成画素(3)を構成する第1の要素(1)と第2の要素(2)の内、機能性材料を含むインキで成る要素によって「B」の文字の潜像画像(30)が形成される。また、第3の例においても、カモフラージュ画像(31)に対応する複数の微細な画素(12A)のことを「カモフラージュ画素(4)」として説明することとし、カモフラージュ画素(4)は、図10(b)の拡大図に示すように、「B」の文字の背景に相当する位置に配置される。
【0057】
(情報画像)
情報画像(22)は、図10(c)の拡大図に示すように、基材(11)と異なる色のインキで成る複数の微細な画素(12A)が特定のピッチで規則的に配置されてなり、これによって「A」の文字の情報画像(22)が形成される。以降、情報画像(22)に対応する複数の微細な画素(12A)のことを「情報画素(5)」とし、情報画素(5)が規則的に配置される特定のピッチのことを「情報画素のピッチ(P3)」として説明する。
【0058】
情報要素(5)を配置する方向は、背景画像(21)を構成する複数の微細な画素(12A)をマトリクス状に配置する方向と同じ方向である。図10では、背景画像(21)を構成する複数の微細な画素(12A)と情報画素(5)が上下左右方向に規則的に配置された状態を示しているが、情報画素(5)は、背景画像(21)を構成する複数の微細な画素(12A)が配置される方向と同じ方向であれば、斜め方向に配置しても良い。
【0059】
情報画素(5)は、前述した機能性材料を含まず、可視光の拡散反射光下による観察条件で、前述したペアインキと等色に観察されるインキで形成しても良いし、基材(11)及びペアインキと異なる色のインキ(機能性材料を含まない)で形成しても良い。ただし、情報画素(5)に用いるインキは、特定の観察条件で不可視になるか、又は観察し難い程度に視認性が低下する光学特性を有する必要がある。
【0060】
情報画素(5)の形状に関しては、図10(c)に示す四角形の他に、円、多角形及び星型等でも良く、その他の特殊な文字又は記号等も含まれる。また、情報画素(5)の形状は、潜像画像形成画素(3)及びカモフラージュ画素(4)と異なる形状であっても良い。
【0061】
本説明では、図10(c)に示す情報画素(5)に対して、左右方向の画素の大きさを、「画素の幅(R3)」とし、上下方向の画素の大きさを、「画素の高さ(H3)」として説明する。
【0062】
第3の例の偽造防止印刷物(10)における情報画像(22)の図柄は、「A」の文字で形成される例であるが、情報画像(22)は、他の文字、数字、記号、図形、マーク及び模様等でも良い。
【0063】
情報画像(22)を構成する一つ一つの情報画素(5)の大きさは、同じ大きさでも良いし、異なる大きさであっても良い。図10(c)に示す複数の情報画素(5)は、すべて同じ大きさで形成される例を示しており、この場合、濃淡のないフラットな濃度の情報画像(22)が形成される。一方、複数の情報画素(5)の一部を異ならせた場合には、情報画素(5)の大きさによって濃度差が生じ、複数の濃度を有する情報画像(22)が形成される。ここでは、同じ大きさの情報画素(5)が、特定のピッチ(P3)で規則的に配置される例で説明する。
【0064】
続いて、背景画像(21)と情報画像(22)の配置の関係について説明する。
【0065】
背景画像(21)を構成する画素と情報画像(22)を構成する情報画素(5)は、図11(a)又は図11(b)に示すように配置される。
【0066】
図11(a)は、図10(b)に示す背景画像(21)を構成する潜像画像形成画素(3)とカモフラージュ画素(4)に、図10(c)に示す情報画素(5)が重ならないように配置される状態を示している。このように、配置することによって、情報画素(5)がペアインキと等色のインキで形成される場合、情報画像(22)が形成される部分(図11(a)の破線内)の画素の面積率が、背景画像(21)を構成する画素だけで形成される部分の面積率よりも高いため、可視光の拡散反射光下で観察した場合に、反射光の差が生じ、情報画像(22)である「A」の文字が視認される。また、情報画素(5)が基材(11)及びペアインキと異なる色のインキ(機能性材料を含まない)で形成される場合、情報画像(22)が形成される部分(図11(a)の破線内)と背景画像(21)を構成する画素だけで形成される部分で、反射光の色の差が生じ、情報画像(22)である「A」の文字が視認される。
【0067】
一方、図11(b)は、情報画素(5)の一部が潜像画像形成画素(3)の一部とカモフラージュ画素(4)の一部に重なる状態を示している。図11(b)は、情報画素(5)が潜像画像形成画素(3)とカモフラージュ画素(4)の上に重なる配置を示しているが、第3の例の偽造防止印刷物(10)は、図11(c)に示すように、情報画素(5)の上に潜像画像形成画素(3)とカモフラージュ画素(4)が重なる配置でも良い。この配置の場合においても、情報画素(5)が形成される部分(図11(b)と図11(c)の破線内)と背景画像(21)を構成する画素だけで形成される部分で、反射光の差が生じ、情報画像(22)である「A」の文字が視認される。
【0068】
以上の説明は、背景画像(21)を構成する潜像画像形成画素(3)とカモフラージュ画素(4)が一定の間隔を空けて配置されて成る場合であるが、背景画像(21)が、図6に示すベタ画像の構成で成る場合においても、背景画像(21)を構成する画素の上に情報画素(5)を形成して良いし、情報画素(5)の上に背景画像(21)を構成する画素を形成しても良い。いずれの場合においても、背景画像(21)を構成する画素と情報画素(5)が重なる部分では、二つの画素の色が混色した色と成り、背景画像(21)を構成する画素だけ形成される部分に対して反射光の色の差が生じて、情報画像(22)である「A」の文字が視認される。
【0069】
以上の構成で成る第3の例の偽造防止印刷物(10)を、可視光の拡散反射光下による観察条件で観察した場合、フラットな濃度の画像で形成される背景画像(21)の中に、情報画像(22)を構成する情報画素(5)を形成した部分の濃度が高くなるか(情報画像を構成する画素の色と背景画像を構成する画素の色が同じ場合)、又は色が異なり(情報画像を構成する画素の色と背景画像を構成する画素の色が異なる場合)、「A」の文字による可視画像(20)を観察することができる(図10(a))。なお、特定の観察条件で観察した場合については、第1の例と同様であり、「B」の文字の潜像画像(30)が視認される(図3(b))。
【0070】
また、第3の例の偽造防止印刷物(10)において、情報画素(5)と背景画像(21)を構成する画素が重ならない配置について説明したが、情報画素(5)と背景画像(21)を構成する画素の配置を、特許4461234号報に記載の配置として偽造防止印刷物(10)を作製しても良い。
【0071】
この場合、図12の拡大図に示すように、画像形成領域(13)に、第1の領域(14)と、第1の領域(14)より小さく、周囲が第1の領域(14)によって囲まれる第2の領域(15)がそれぞれ複数配置される。なお、複数配置される第1の領域(14)のうち、一つの第1の領域(14)に対して、上下左右方向に隣り合う第1の領域(14)及び第2の領域(15)の配置の関係は、画像形成領域(13)内で一定である。また、複数配置される第2の領域(15)のうち、一つの第2の領域(15)に対して、上下左右方向に隣り合う第1の領域(14)及び第2の領域(15)の配置の関係は、画像形成領域(13)内で一定である。
【0072】
そして、第1の領域(14)と第2の領域(15)に複数の微細な画素(12A)が形成され、画像形成領域(13)に、可視光の拡散反射光下による観察条件で観察可能な可視画像(20)と、特定の観察条件で観察可能な潜像画像(30)が形成される。
【0073】
具体的には、図13の拡大図に示すように、第1の領域(14)に情報画素(5)を配置して「A」の文字の情報画像(22)を形成する。なお、情報画像(22)に対応しない第1の領域(14)には、情報画素(5)が配置されない。
【0074】
また、背景画像(21)は、図14(a)の拡大図に示すように、すべての第2の領域(15)に、基材(11)と異なる色のインキで成る複数の微細な画素(12A)を、すべて同じ大きさで配置し、第2の領域(15)に配置される画素の内、潜像画像(30)に対応する第2の領域(15)は、図14(b)に示すように、潜像画像形成画素(3)で形成し、カモフラージュ画像(31)に対応する第2の領域(15)は、図14(c)に示すように、カモフラージュ画素(4)で形成する。
【0075】
以上、第1の要素(1)と第2の要素(2)から成る潜像画像形成画素(3)を備えた偽造防止印刷物(10)の構成の一例を説明したが、本発明の偽造防止印刷物の作製方法は、これらの構成に限定されるものではなく、2つのペアインキを用いて毛抜き合わせの配置で形成された潜像画像形成画素(3)を含む構成であれば、本発明の技術的範囲である。また、これまで説明した従来の作製方法では、第1の要素(1)と第2の要素(2)を毛抜き合わせで刷り合わせることで潜像画像形成画素(3)を有する印刷物を作製していたが、毛抜き合わせで刷り合わせることのない、本発明によって潜像画像形成画素(3)を有する偽造防止印刷物を作製する方法について説明する。
【0076】
本発明の偽造防止印刷物の作製方法における複数の微細な画素(12A)が形成される画像形成領域(13)の構成について説明するが、前述した第1の例、第2の例及び第3の例の偽造防止印刷物で説明した語句と符号を用いて説明する。また、本発明の偽造防止印刷物の作製方法で形成される可視画像(20)と潜像画像(30)の図柄は、第1の例、第2の例及び第3の例で説明した偽造防止印刷物(10)と同じ図柄とした例で説明する。
【0077】
本発明の作製方法は、図15に示すように、はじめに、前述したペアインキのうち、一方の撥水及び/又は撥油機能を備えたインキを用いて第1の要素(1)又は第2の要素(2)を複数形成する。ここでは、第1の要素(1)が形成される例で説明する。これによって、図16の拡大図に示すように、潜像画像(30)に対応する複数の潜像画像形成画素(3)の中の第1の要素(1)が形成される。なお、以降の説明では、先刷りする撥水及び/又は撥油機能を備えるインキのことを「第1のインキ」として説明する。
【0078】
本発明の作製方法で必須となる第1のインキの撥水及び/又は撥油機能は、インキ中にシリコーン系添加剤か、又はフッ素系添加剤を加えたり、シロキサン又はフルオロ基を有する樹脂をワニスとして用いたりすることで、いずれの色相のインキに対しても容易に付与することができる。なお、シリコーン系添加剤か、又はフッ素系添加剤や、シロキサン又はフルオロ基を有する樹脂のインキ中の配合割合は、1〜15%の範囲であり、印刷方式や、後述の後刷りされるインキのはじき具合に応じて適宜調整すれば良い。
【0079】
図17(a)は、複数形成される第1の要素(1)のうち、一つの第1の要素(1)を拡大して示す平面図であり、図17(b)は、断面図を示している。以降説明する作製方法は、すべての第1の要素(1)に対して行われるが、本説明では、便宜上、図17に示す一つの第1の要素(1)を用いて説明する。
【0080】
次に、図18に示すように、第1のインキで形成される第1の要素(1)上に、潜像画像形成画素(3)と同じ大きさで第1の要素(1)を覆うように(斜線で図示する範囲)、前述したペアインキのうちの他方の撥水及び/又は撥油機能を備えていないインキを用いて印刷する。以降の説明では、先刷する撥水及び/又は撥油機能を備える第1のインキに対して、後刷りする撥水及び/又は撥油機能を備えていないインキのことを「第2のインキ」として説明する。
【0081】
本発明における前述した機能性材料は、第1のインキと第2のインキのうち、いずれか一方又は両方に含まれる。ただし、第1のインキと第2のインキの両方が機能性材料を含む場合は、異なる機能性材料を含んだインキとする必要がある。仮に、第1のインキと第2のインキの一方に機能性材料が含まれる場合、機能性材料を含むインキによって形成する要素は、第1の要素(1)でも良いし、第2の要素(2)でも良い。
【0082】
図18(a)は、潜像画像形成画素(3)と第1の要素(1)が重畳する領域を点線で示しており、潜像画像形成画素(3)の範囲を破線で示している。
【0083】
本発明の作製方法において、第1のインキで成る第1の要素(1)に第2のインキを重ねて印刷すると、第1のインキが有する撥水及び/又は撥油機能によって、図19に示すように、第1のインキ上に重ねて印刷された第2のインキがはじかれ、第1の要素(1)の上に第2のインキが塗り重ねられることはない。これによって、図20に示すように、第2の要素(2)が、第1の要素(1)の周囲に隙間なく隣接して配置される、いわゆる、毛抜き合わせで形成した場合と同じ構成の潜像画像形成画素(3)を形成することができる。
【0084】
このように、本発明の作製方法を用いた場合には、従来の技術のように、第1の要素(1)と第2の要素(2)を毛抜き合わせの構成として刷り合わせを調整する必要がなく、第1のインキで形成した第1の要素(1)を覆うように第2のインキを印刷するだけで、第1の要素(1)の周囲に隙間なく隣接した第2の要素(2)を容易に形成することができる。
【0085】
仮に、図21(a)〜図21(d)のように、潜像画像形成画素(3)と同じ大きさで第2のインキを用いて形成する範囲が設計上の想定位置からずれたとしても、第1の要素(1)を覆うように第2のインキを印刷すれば、潜像画像形成画素(3)を形成することができる。以上のように、本来であれば、厳密な刷り合わせが要求される印刷物の作製に際して、刷り合わせに一定の冗長性を確保することができる。
【0086】
なお、以上に説明した本発明の作製方法では、結果的に、第1の要素(1)上に印刷される第2のインキが、第1の要素(1)を構成する第1のインキによってはじかれるため、第1の要素(1)上の全体に、第2のインキを印刷する必要はない。例えば、図22に示すように、第1の要素(1)の輪郭に少なくとも重なる範囲で、第2のインキを印刷しても良い。この場合、第1の要素(1)の全体に第2のインキを印刷する必要がないことから、インキの使用量を削減することができ、効率的である。
【0087】
続いて、第1のインキを用いて第2の要素(2)が先刷りされる例について説明する。
【0088】
図23(a)は、第1のインキを用いて複数形成される第2の要素(2)の内、一つの第2の要素(2)を拡大して示す平面図であり、図23(b)は、断面図を示している。以降、説明する作製方法は、すべての第2の要素(2)に対して行われるが、本説明では、便宜上、図23に示す一つの第2の要素(2)を用いて説明する。
【0089】
次に、図24に示すように、第1のインキで形成される第2の要素(2)の上に、第2の要素(2)の輪郭を少なくとも覆うように、第2のインキを用いて印刷する。なお、図24(a)において、第2のインキで印刷される領域を斜線で示しており、斜線内の点線より外側の部分が、第2の要素(2)の輪郭と重畳する部分である。また、図24(a)において、潜像画像形成画素(3)の範囲を破線で示している。
【0090】
このように印刷した場合でも、第1のインキが有する撥水及び/又は撥油機能によって、図25に示すように、第1のインキ上に重ねて形成された第2のインキがはじかれ、第2の要素(2)上に第2のインキが塗り重ねられることはない。これによって、第2の要素(2)が、第1の要素(1)の周囲に隙間なく隣接して配置される、いわゆる、毛抜き合わせで形成した場合と同じ構成の潜像画像形成画素(3)を形成することができる。
【0091】
本発明の作製方法の本質は、等色のペアインキのうち、先に印刷するインキに撥水及び/又は撥油機能を付与し、後刷りのインキをはじかせることによって、狂いのない、毛抜き合わせを容易に形成するものである。撥水及び/又は撥油機能を有するインキを印刷することは、印刷物の耐久性を向上させる方法として、従来から一般的に行われてきたものであり、なんら珍しいものではない。
【0092】
撥水及び/又は撥油機能を利用したユニークな印刷方法としては、特開2007−229967号公報や特開2006−168032号公報に記載されるような、立体構造物を形成する印刷方法が存在している。しかし、過去に提案されているインキの撥水及び/又は撥油機能を用いた技術は、いずれも、本発明のように、刷り合わせの冗長性を確保するための手段として撥水及び/又は撥油機能を利用するものではなかった。本発明の作製方法を用いることで、CTPに代表される最新の製版設備によって作られた印刷版面と、高精度な刷り合わせが可能な枚葉印刷機と、熟練したオペレータとの組み合わせでなければ形成することが不可能であった、大判サイズで毛抜き合わせを要求する印刷物を、フィルム製版によって作製された一般的な印刷版面と、ウェブ方式を含む一般的なオフセット印刷機と、平均的な技量のオペレータでも容易に形成することが可能となる。
【0093】
以上、本発明の作製方法により潜像画像形成画素(3)を形成する方法について説明したが、この方法で画像形成領域(13)に潜像画像形成画素(3)のみが形成される第2の例の偽造防止印刷物(10)を作製することができる。
【0094】
第1の例の偽造防止印刷物(10)を作製する場合、潜像画像形成画素(3)とカモフラージュ画素(4)を形成する順番は、特に限定されないが、はじめに、潜像画像形成画素(3)を構成する第1の要素(1)と第2の要素(2)の内の一方を、第1のインキを用いて形成し、続いて、第2のインキを用いて残りの要素とカモフラージュ画素(4)を同時に形成すれば良い。これは、前述した印刷機を用いる場合、第2のインキを用いて形成する残りの要素の領域とカモフラージュ画素(4)を形成する領域を、あらかじめ、印刷版面として作製しておくことで、一度に印刷することが可能である。
【0095】
第3の例の偽造防止印刷物(10)において、背景画像(21)を構成する潜像画像形成画素(3)とカモフラージュ画素(4)が一定の間隔を空けて配置される場合、図11(a)に示すように、背景画像(21)を構成する画素と情報画素(5)が重ならないように配置するか、又は図11(b)に示すように、情報画素(5)の一部が潜像画像形成画素(3)の一部とカモフラージュ画素(4)の一部に重なるように配置すれば良い。
【0096】
このとき、潜像画像形成画素(3)、カモフラージュ画素(4)及び情報画素(5)を形成する順番は、特に限定されず、情報画素(5)は、基材(11)と異なる色のインキを用いて形成する。
【0097】
図26は、はじめに、情報画素(5)を基材(11)に印刷し、情報画素(5)の一部に重なるように、潜像画像形成画素(3)とカモフラージュ画素(4)が形成された状態を示している。なお、潜像画像形成画素(3)の形成方法については、前述したとおりであり、第1の要素(1)と第2の要素(2)の一方を、撥水及び/又は撥油機能を備える第1のインキで先刷りし、残りの要素を第2のインキで後刷りする。また、カモフラージュ画素(4)は、第2のインキで印刷する。
【0098】
このように印刷することによって、情報画素(5)の一部は、潜像画像形成画素(3)とカモフラージュ画素(4)に覆われるが、情報画像(22)が形成される部分の画素の面積率が、背景画像(21)を構成する画素だけで形成される部分の面積率よりも大きいため、可視光の拡散反射光下で観察した場合に、反射光の差が生じ、情報画像(22)である「A」の文字が視認される。
【0099】
図27(a)は、はじめに、潜像画像形成画素(3)とカモフラージュ画素(4)を基材(11)に印刷し、潜像画像形成画素(3)の一部とカモフラージュ画素(4)の一部が重なるように、情報画素(5)が形成された状態を示している。このとき、第1のインキで形成された第1の要素(1)上に情報画素(5)を形成するインキが印刷されると、情報画素(5)を形成するインキがはじかれて、図27(b)の拡大図に示す状態で情報画素(5)が形成される。その結果、潜像画像形成画素(3)に重なる情報画素(5)は、図27(c)に示す、カモフラージュ画素(4)に重なる情報画素(5)と異なる形状で形成される。
【0100】
結果的に、潜像画像形成画素(3)に重なる情報画素(5)とカモフラージュ画素(4)に重なる情報画素(5)の形状が異なっても、一つ一つの情報画素(5)が微小なため、情報画像(22)の視認性への影響は小さく、情報画像(22)を視認することができるが、第1のインキで形成された画素上に、情報画素(5)を形成するインキを印刷する場合には、情報画像(5)の視認性に応じて、適宜、印刷位置の調整が必要である。なお、第2の要素(2)が第1のインキで形成される場合も同様である。
【0101】
続いて、第3の例の偽造防止印刷物(10)において、背景画像(21)を図6に示すベタ画像で形成する場合について説明する。この場合、はじめに、背景画像(21)を構成する画素を形成し、その上に、情報画素(5)を形成しても良いし、情報画素(5)を形成した後に、情報画像(5)上に背景画像(21)を構成する画素を形成しても良い。ただし、背景画像(21)上に情報画素(5)を形成する場合において、第1のインキで形成された第1の要素(1)又は第2の要素(2)上に、情報画素(5)を形成するインキを印刷する場合には、情報画素(5)を形成するインキがはじかれるので、情報画像(5)の視認性に応じて、適宜、印刷位置の調整が必要である。また、背景画像(21)を形成するために、着色力の著しく高い色である、例えば、黒や藍色等を用いる場合、情報画素(5)を先に形成してしまうと情報画像(22)が視認し難くなることから、このような場合には、はじめに、背景画像(21)を形成し、その上に情報画素(5)を重ねて印刷することが望ましい。
【0102】
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した印刷物の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0103】
実施例1は、第3の例で説明した構成でなり、可視画像(20´)は、アルファベットの「A」の文字の有意情報を備え、可視画像(20´)の中に、アルファベットの「B」の文字の潜像画像(30´)が隠ぺいされた偽造防止印刷物(10´)の作製方法である。基材(11´)は、白色のコート紙(日本製紙株式会社製)を用いた。また、実施例1で使用したペアインキは、赤外線カメラで観察した場合に、第1のインキが濃く見え、第2のインキは消失する特徴を備えている。本発明の実施例1について、図28〜図30を用いて説明をする。
【0104】
図28(a)は、可視画像(20´)を示す図であり、図28(b)は、背景画像(21´)を示す図であり、図28(c)は、情報画像(22´)を示す図である。
【0105】
第1のインキの配合を表1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
表1の第1のインキは赤外線吸収能を備え、更にはシリコーン系添加剤を加えている。よって、第1のインキは撥水及び撥油機能を備え、第2のインキをはじく特性を有している。
【0108】
第2のインキの配合を表2に示す。
【0109】
【表2】

【0110】
表2の第2のインキは、赤外線吸収能は備えないインキであり、かつ、シリコーン系添加剤も加えていない、いわゆる、一般的なフレキソ印刷用のインキである。第1のインキ及び第2のインキは、可視光の拡散反射光下による観察条件では、赤色に観察され、互いに等色関係にある。
【0111】
はじめに、表1に示す配合の第1のインキを用いて、UV乾燥方式のフレキソ印刷方式で潜像画像(30´)を構成する第1の要素(1´)を印刷し、UV光を照射して、完全に第1のインキを硬化させた。なお、第1の要素(1´)は、直径0.1mmの円形の画素とし、ピッチ0.4mmで規則的に配置して、潜像画像(30´)であるアルファベットの「B」の文字を形成した。
【0112】
次に、第1の要素(1´)上に、潜像画像形成画素(3´)と同じ大きさで第1の要素(1´)を覆うように第2のインキを印刷すると同時に、カモフラージュ画素(4’)と情報画素(5´)を第2のインキを用いて印刷した。第2のインキによって第1の要素(1´)を覆う範囲及びカモフラージュ画素(4´)の大きさと形状を、一辺が0.2mmの正方形とし、情報画素(5´)の大きさと形状は、直径0.1mmの円形の画素とした。このとき、図29の拡大図に示すように、情報画素(5´)のピッチ(P3)を0.4mmとし、第1の要素(1´)とカモフラージュ画素(4´)の中心位置に対して、上下左右方向にそれぞれ半ピッチ(0.2mm)ずれて配置されるように形成した。
【0113】
第1の要素(1´)の上に印刷された第2のインキは、第1のインキによってはじかれて、第1の要素(1´)の周囲に隙間なく隣接して配置され、毛抜き合わせで形成した場合と同じ構成の潜像画像形成画素(3´)が形成された。
【0114】
実施例1で作製した偽造防止印刷物(10´)の効果について図30に示す。可視光の拡散反射光下による観察条件で、実施例1で作製した偽造防止印刷物(10´)を観察した場合、図30(a)に示すように可視画像(20´)が備える有意情報であるアルファベットの「A」の文字が視認され、潜像画像(30´)であるアルファベットの「B」の文字は視認することができなかった。
【0115】
一方、赤外線カメラを用いて観察した場合、図30(b)に示すように可視画像(20´)が備える有意情報であるアルファベットの「A」の文字は視認することができず、アルファベットの「B」の文字のみを視認することができた。以上のように、可視光の拡散反射光下による観察条件において観察される画像と、赤外線カメラを通して観察される画像とは、全く異なる画像として視認することができる偽造防止効果を得た。
【0116】
また、実施例1で作製した偽造防止印刷物の付加的効果として、フェルトペンや筆ペン、スプレー等を用いて、印刷物を塗りつぶすと、第1のインキの撥水及び/又は撥油機能によって、第1の要素(1´)が形成された部分のみがインキや塗料をはじき、可視画像(20´)が完全に消失して、潜像画像(30´)のみが出現するという効果を得た。偽造が疑われる印刷物の場合には、印刷物を塗りつぶして、「B」の文字が出現するかどうかを確認して真偽判別を行うことができる。
【0117】
(比較例1)
比較例として、実施例1で作製した偽造防止印刷物(10´)に形成される可視画像(20´)に対して、同じ要素構成で撥水及び/又は撥油機能を有していないペアインキを用い、毛抜き合わせの刷り合わせによって、潜像画像形成画素(3´´)を形成するとともに、カモフラージュ要素(4´´)と情報画素(5´´)を実施例1と同様にして形成し、偽造防止印刷物(10´´)をオフセット印刷機で作製した。
【0118】
印刷開始直後、第1の要素(1´´)と第2の要素(2´´)の位置が合わず、本来、毛抜き合わせの配置とならなければならない潜像画像形成画素(3´´)において、図31に示す空白領域(6´´)が発生し、可視画像を観察した場合に、白くぼやけた感じの潜像画像が確認された。
【符号の説明】
【0119】
1、1´、1´´ 第1の要素
2、2´、2´´ 第2の要素
3、3´、3´´ 潜像画像形成画素
4、4´、4´´ カモフラージュ画素
5、5´、5´´ 情報画素
6´´ 空白領域
10、10´ 偽造防止印刷物
11 基材
12 画素群
12A 画素
13 画像形成領域
14 第1の領域
15 第2の領域
20、20´ 可視画像
21、21´ 背景画像
22、22´ 情報画像
30、30´ 潜像画像
31 カモフラージュ画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一部に、複数の微細な画素から成る画素群が形成される画像形成領域を有し、前記画像形成領域は、可視光の拡散反射光下による観察条件で観察可能な可視画像と、前記可視光の拡散反射光下の観察条件とは異なる特定の観察条件でのみ観察可能な潜像画像を備えた偽造防止印刷物において、
前記画素群は、第1の要素と、前記第1の要素を囲むように隣接して配置された第2の要素から成る潜像画像形成画素を少なくとも有し、
前記第1の要素及び前記第2の要素は、前記基材と異なる色であり、前記可視光の拡散反射光下による観察条件で等色として観察される2つのインキで形成され、かつ、前記第1の要素及び前記第2の要素を形成する少なくとも一方のインキは、前記特定の観察条件で他方のインキに対して異なる色彩で観察される機能性材料を含み、
前記機能性材料を含むインキで形成された前記第1の要素又は前記第2の要素により前記潜像画像が形成され、
前記複数の微細な画素により前記可視画像が形成された前記偽造防止印刷物の作製方法であって、
前記第1の要素と前記第2の要素のうち、一方の要素を撥水及び/又は撥油機能を有する第1のインキで印刷し、他方の要素を撥水及び/又は撥油機能を有しない第2のインキで、前記一方の要素の輪郭を少なくとも覆うように印刷することを特徴とする偽造防止印刷物の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−223901(P2012−223901A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90809(P2011−90809)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】