説明

偽造防止印刷物

【課題】 本発明は、銀行券、株券、有価証券、通行券、パスポート、商品券又はカード等の偽造防止をする必要性のある貴重印刷物に適用される偽造防止印刷物に関するものである。
【解決手段】 紙基材にマークを有し、マークとマークが施されていない領域は赤外透過光の強度が異なり、マーク上の少なくとも一部に印刷模様が形成され、印刷模様は赤外線透過磁性インキ組成物によって紙基材の少なくとも一方の面に形成されることを特徴とする偽造防止印刷物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、株券、有価証券、通行券、パスポート、商品券又はカード等の偽造防止をする必要性のある貴重印刷物に適用される偽造防止印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、株券、有価証券、通行券、パスポート、商品券、カード、印紙類、商品タグ、切符、定期券等の通行券、有料道路等の回数券又は各種チケット等の貴重印刷物は、その性質上、偽造や改ざんされないことが要求される。印刷による偽造防止技術としては、赤外線吸収インキ、赤外線ペアインキ、磁性インキ又は磁性ペアインキ等による印刷物が挙げられる。また、用紙については、紙基材の透過光強度を変化させたマーク等が挙げられる。
【0003】
例えば、赤外線ペアインキによる印刷物としては、コート紙に印刷層を形成し、印刷層はカーボンブラックを使用した墨インキで印刷される第1の領域と、藍インキ、黄インキ及び紅インキを含有した墨インキで印刷される第2の領域で形成され、この印刷物は、通常光のもとでは第1の領域及び第2の領域は同色に見えるが、赤外線表示装置で観察した場合に第1の領域のみ確認できる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、磁性インキによる印刷物としては、情報が記録される記録部と、この記録部に対する情報の記録又は再生に関する情報が記録された複数の磁性バーコードとを有し、この磁性バーコードは相互に異なる磁気量を持つ記録媒体であって、この磁性バーコードは、異なる磁性インク量又は磁性材質から成るバーで構成されていることを特徴とする記録媒体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、磁性ペアインキによる印刷物としては、図柄の少なくとも一部に、少なくとも第1の印刷画像と第2の印刷画像を含む印刷物であって、第1の印刷画像が紫外線領域から可視光領域にかけて吸収帯域を有し、赤外線領域で光を透過する特性を有する磁性材料が含有された第1の磁性インキ組成物によって印刷され、第2の印刷画像が第1の印刷画像とは磁性特性及び光学特性が異なる第2の磁性インキ組成物によって印刷されて成る磁性印刷物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、機械による読み取り及び真偽判別を目的として、紙基材の透過光強度を変化させたマークを形成し、読み取る技術及び偽造防止用紙が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
このように、従来は印刷で形成する機械読み取り方法として、基材に磁性ペアインキ又は赤外線ペアインキで印刷し、それを機械読み取りする技術はあった。一方、用紙で形成する機械読み取り方法としては、紙基材の透過光強度を変化させたマークを形成し読み取る技術があった。
【0008】
【特許文献1】特開2003−302519号公報(第6頁、第7図)
【特許文献2】特開昭63−223892号公報(第1−5頁、第1−4図)
【特許文献3】特開2005−268655号公報(第1−8頁、第1図)
【特許文献4】特開2001−10197号公報(第1−9頁、第1−7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開2003−302519号は、赤外吸収特性の異なる印刷インキによって印刷された印刷領域の読み取りでの真偽判別技術であり、磁気センサの読み取りについては、記載されていなかった。また、特開2005−268655号公報では、赤外線領域で光を透過する特性を有する磁性材料が含有された第1の磁性インキ組成物によって形成された領域は、赤外線センサでの機械読み取りに有効な信号を得ることができず、この領域で有効な信号を有する偽造防止印刷物が求められてきた。さらに、特開2001−10197号公報は、紙基材の透過光強度を変化させたマークのみの読み取りによって真偽判別を行う技術であり、磁気センサの読み取りについては記載されていなかった。
【0010】
また、特開2002−302519号公報、特開昭63−223892号公報及び一般的な磁性材料は、可視及び赤外線領域で光を吸収する特性を有しているため、前述したようなマーク上に印刷した場合には、読み取りを阻害するという問題があった。
【0011】
本発明は、前述した問題点を解決することを目的としたもので、紙基材の一部にマークを有し、マークと、マークが施されていない領域は赤外線透過光の強度が異なり、マーク上に印刷模様を施した場合でも、赤外線領域でマークを読み取る際に、マーク上に形成した印刷領域に読み取りを阻害されることなく、マークの読み取りが可能であり、更にマーク上に施された印刷が、磁気センサによって機械読み取り可能な新たな偽造防止印刷物を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、紙基材の一部にマークを有し、前記マークと前記マークが施されていない領域は赤外線透過光の強度が異なり、前記マーク上の少なくとも一部に印刷模様が形成され、前記印刷模様は、赤外線透過磁性インキ組成物によって前記紙基材の少なくとも一方の面に形成されることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0013】
また、本発明は、紙基材の一部にマークを有し、前記マークと前記マークが施されていない領域は、赤外線透過光の強度が異なり、前記マーク上の少なくとも一部に第1の領域と第2の領域から成る印刷模様が形成され、前記印刷模様は、前記紙基材の少なくとも一方の面に形成され、前記マーク上には、少なくとも一部の前記第1の領域及び少なくとも一部の第2の領域が形成され、前記第1の領域は、赤外線透過磁性インキ組成物によって形成され、前記第2の領域は、磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は前記第1の領域を形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料と種類及び/又は配合量が異なっている赤外線透過磁性インキ組成物によって形成されることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0014】
また、本発明は、前記第2の領域を形成する前記磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は赤外線透過磁性インキ組成物と、前記第1の領域を形成する赤外線透過磁性インキ組成物は、200〜700nmの光の波長領域において、反射特性及び/又は透過特性が相互に異なっていることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0015】
また、本発明は、前記第2の領域を形成する前記磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は赤外線透過磁性インキ組成物と、前記第1の領域を形成する赤外線透過磁性インキ組成物は、200〜700nmの波長領域の光を照射したときの発光の有無、発光波長及び残光波長の少なくとも一つが相互に異なっていることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0016】
また、本発明は、前記マークがすき入れであることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【発明の効果】
【0017】
紙基材の一部にマークを有し、マークと、マークが施されていない領域は赤外線透過光の強度が異なり、マーク上に印刷模様を施した場合でも、赤外線領域でマークを読み取ることが可能であり、また、印刷模様を磁気センサによって検出可能である。よって、ある特定の領域内でマークの機械読み取り及び印刷模様の機械読み取りができるため、少なくとも二つの真偽判別が可能となり真偽判別効果に優れる偽造防止印刷物が得られる。さらに、マーク上に印刷模様を形成することでマークを隠蔽することも可能となるため、秘匿性を高めることができる。
【0018】
また、紙基材に、その紙基材とは透過光量の異なるマークを有し、マーク上の表面及び/又は裏面に印刷模様を施し、マーク上に形成する印刷模様を第1の領域と第2の領域によって形成し、第1の領域と第2の領域では磁性特性及び/又は光学特性を異ならせることによって、複雑な磁気信号又は光学信号が得られ、偽造防止効果が優れる印刷物となる。
【0019】
さらに、本発明の偽造防止印刷物は、プリンタ又は複写機等によって印刷模様を形成して偽造を試みた場合、赤外線領域でのマークの読み取りが困難となるため、偽造防止効果に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0021】
紙基材1の一部にマーク2を有し、マーク2と、マーク2が施されていない紙基材1の領域は、赤外線透過光の強度が異なる。このマーク2は、すき入れによるマーク、ワニス又はメジューム等の透明樹脂によって形成されるマークが挙げられる。
【0022】
すき入れマークとは、用紙の製造工程でパルプ繊維材が水素結合する以前に、パルプ繊維材から成る紙料に、規則的な外力を加えることによって得られる紙層の凹凸や疎密から成る三次元的な紙層構造を意味している。また、すき入れには、その透過光強度が周辺よりも強い白すかしと、その透過光強度が周辺よりも弱い黒すかしがあるが、本発明のすき入れによるマークとしては、白すかし又は黒すかしのいずれのすかしを用いてもよく、それぞれのマークがマークごとに均質な透過光強度を持つように、用紙の所定の位置にすかしによるマークを形成すればよい。この時、マークごとに均質な透過光強度を持った互いに透過光強度が異なる複数のすかしによるマークの間隔をあけて並置した構成としてもよいし、マークごとに均質な透過光強度を持った互いに透過光強度が異なる複数のすかしによるマークの間隔をあけることなく隣接するように構成してもよく、すかしによるマークの構成に関して特に制約はない。
【0023】
ワニス又はメジューム等の透明樹脂によって形成されるマークは、凹版印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット又はレーザプリンタ等、特に限定されるものではない。
【0024】
なお、本発明のマークには、バーコード及び二次元バーコード等のコード情報並びに幾何学模様、文字、記号及び図形等のデザインを用いることができるが、実際に機械による読み取りに用いるマークについては、安定した読み取り精度を確保するために、機械による読み取り位置に若干の変動があったとしてもマーク幅、マーク位置、マーク間隔及び赤外線透過光強度等に関して変動を少なくできるように、マークごとに均質な赤外線透過光強度を持った簡単なデザインのマークを用いることが好ましい。
【0025】
(偽造防止印刷物A1)
図1(a)に偽造防止印刷物A1を示す。図1(b)は、図1(a)の偽造防止印刷物A1のX−X’断面図である。図1(a)及び図1(b)に示すように紙基材1の一部に紙基材1とは透過光強度の高いマーク2を有し、そのマーク2上に印刷模様3が形成される。図1(a)及び図1(b)では、マーク2の全体に印刷模様3が形成されているが、マーク2の少なくとも一部に印刷模様3が形成されていればよい。印刷模様3は、赤外線透過磁性インキ組成物によって印刷される。また、印刷模様3に隣接又は近接させて赤外線透過磁性インキ組成物とは磁性特性及び/又は光学特性が異なったインキ組成物によって印刷領域を形成することもできる(図示せず)。本実施の形態における偽造防止印刷物A1では、紙基材1よりも赤外透過光強度の高いマーク2の構成で説明しているが、紙基材1よりも赤外透過光強度の低いマーク2であってもよい。
【0026】
図1(c)は、図1(a)に示した偽造防止印刷物A1の矢印部の赤外線透過率を示す波形の模式図である。図1(c)に示すように、マーク2の領域は、紙基材1のみの領域(無地部)及び印刷模様3のみの領域よりも赤外線透過率が高くなり、波形S1が得られ、マーク2を読み取ることが可能となる。さらに、読み取られた赤外線透過強度のデータをあらかじめ記録しておいた真正な基準となる赤外線透過強度のデータと比較し、所定の閾値内にあるか否かによって偽造防止印刷物A1の真偽判別を行うことができる。
【0027】
図1(d)は、図1(a)に示した偽造防止印刷物A1の矢印部を磁気センサで測定した波形の模式図である。図1(d)に示すように、印刷模様3の領域は磁気強度が高く、波形P1が得られ、印刷模様3の読み取りが可能となる。さらに、読み取られた磁気強度のデータをあらかじめ記録しておいた真正な基準となる磁気強度のデータと比較し、所定の閾値内にあるか否かによって偽造防止印刷物A1の真偽判別を行うことができる。
【0028】
(偽造防止印刷物A2)
図2(a)に偽造防止印刷物A2を示す。図2(b)は、図2(a)の偽造防止印刷物A2のX−X’断面図である。図2(a)及び図2(b)に示すように、紙基材1の一部に、紙基材1より透過光強度の高いマーク2を有し、そのマーク2上に印刷模様3が形成される。印刷模様3は、第1の領域3aと第2の領域3bから成る。第1の領域3aは、赤外線透過磁性インキ組成物によって印刷され、第2の領域3bは磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は第1の領域3aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは、磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物によって印刷される。
【0029】
第2の領域3bを形成する赤外線透過磁性インキ組成物は、磁性材料の種類及び/又は配合量を異ならせた磁性材料を配合することができる。本発明はこれに限定されることなく、本発明における磁性特性が異なるとは、磁性材料の有無、同一の磁性材料の配合量の多少及び異なった種類の磁性材料の配合量の多少の少なくとも一つによって形成され、初期透磁率、残留磁束密度、保持力及びキュリー温度等の少なくとも一つの特性が異なり、公知の磁気センサの読み取りによって、磁気検知電圧又は磁気検知波形の差異として特徴量を有効に検出可能な特性を有する。さらに、上記複数の磁性特性の違いにより、検出感度が異なるセンサを組み合わせた場合に、第1のセンサで検出された磁気検出波形形状と、第2のセンサで検出された磁気検出波形形状を大きく変化させる等、特徴的な変化を形成できる。
【0030】
第1の領域3aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物と、第2の領域3bを形成する磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は第1の領域3aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは、磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物は、200〜700nmの光の波長領域において、反射特性及び/又は透過特性を相互に異なっていても良い。又は、第1の領域3aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物と、第2の領域3bを形成する磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は第1の領域3aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物は、200〜700nmの光を照射したときの発光の有無、発光波長及び残光波長の少なくとも一つが相互に異なっていても良い。例えば、赤外線領域で透過すれば、紫外線励起可視発光材料等の材料を含有することもできる。
【0031】
図2(a)及び図2(b)ではマーク2の全体に印刷模様3が形成されているが、マーク2の少なくとも一部に印刷模様3が形成されていればよい。本実施の形態における偽造防止印刷物A2では、紙基材1よりも赤外透過光強度の高いマーク2の構成で説明しているが、紙基材1よりも赤外透過光強度の低いマーク2であってもよい。第1の領域3aと第2の領域3bの色彩を可視光下領域(肉眼)では等色にすることで、第1の領域3aと第2の領域3bを区分けして視認することができなくなるため、より偽造防止効果が向上する。
【0032】
なお、赤外線吸収磁性インキで印刷模様を形成する場合は、マーク2の領域とは重ならないように印刷する。
【0033】
図2(c)は、図2(a)に示した偽造防止印刷物A2の矢印部の赤外線透過率を示す波形の模式図である。図2(c)に示すように、マーク2の領域は、紙基材1のみの領域(無地部)及び印刷模様3のみの領域よりも赤外線透過率が高くなり、波形S2が得られ、マーク2を読み取ることが可能となる。さらに、読み取られた赤外線透過強度のデータをあらかじめ記録しておいた真正な基準となる赤外線透過強度のデータと比較し、所定の閾値内にあるか否かによって偽造防止印刷物A2の真偽判別を行うことができる。
【0034】
図2(d)は、図2(a)に示した偽造防止印刷物A2の矢印部を磁気センサで測定した波形の模式図である。図2(d)に示すように、印刷模様3の領域は、磁気強度が高く、波形P2が得られ、印刷模様3の読み取りが可能となり、第1の領域3aと第2の領域3bの磁気強度が異なっていることがわかる。さらに、読み取られた磁気強度のデータをあらかじめ記録しておいた真正な基準となる磁気強度のデータと比較し、所定の閾値内にあるか否かによって偽造防止印刷物A2の真偽判別を行うことができる。
【0035】
(偽造防止印刷物A3)
図3(a)に偽造防止印刷物A3を示す。図3(b)は、図3(a)の偽造防止印刷物A3のX−X’断面図である。図3(a)及び図3(b)に示すように、紙基材1の一部に、紙基材1より透過光強度の高いマーク2を有する。マーク2上の紙基材1の表面には表面印刷模様4が形成され、そのマーク2上の紙基材1の裏面には裏面印刷模様5が形成される。図3(a)及び図3(b)では、マーク2の全体に表面印刷模様4及び裏面印刷模様5が形成されているが、マーク2の少なくとも一部に表面印刷模様4及び裏面印刷模様5が形成されていればよい。表面印刷模様4及び裏面印刷模様5は、赤外線透過磁性インキ組成物によって印刷される。本実施の形態における偽造防止印刷物A3では、紙基材1よりも赤外透過光強度の高いマーク2の構成で説明しているが、紙基材1よりも赤外透過光強度の低いマーク2であってもよい。
【0036】
図3(c)は、図3(a)に示した偽造防止印刷物A3の矢印部の赤外線透過率を示す波形の模式図である。図3(c)に示すように、マーク2の領域は、紙基材1のみの領域(無地部)、表面印刷模様4及び裏面印刷模様5のみの領域よりも赤外線透過率が高くなり、波形S3が得られ、マーク2を読み取ることが可能となる。さらに、読み取られた赤外線透過強度のデータをあらかじめ記録しておいた真正な基準となる赤外線透過強度のデータと比較し、所定の閾値内にあるか否かによって偽造防止印刷物A3の真偽判別を行うこともできる。
【0037】
図3(d)は、図3(a)に示した偽造防止印刷物A3の矢印部を磁気センサで測定した波形の模式図である。図3(d)に示すように、表面印刷模様4及び裏面印刷模様5の領域は磁気強度が高く、波形P3が得られ、表面印刷模様4及び裏面印刷模様5の読み取りが可能となる。偽造防止印刷物A3は、表面及び裏面に赤外線透過磁性インキ組成物によって印刷模様が形成されているため、偽造防止印刷物A1よりも磁気強度が強い波形が得られる(ただし、同じインキ、かつ、同じ膜厚の場合)。さらに、読み取られた磁気強度のデータをあらかじめ記録しておいた真正な基準となる磁気強度のデータと比較し、所定の閾値内にあるか否かによって偽造防止印刷物A3の真偽判別を行うことができる。
【0038】
(偽造防止印刷物A4)
図4(a)に偽造防止印刷物A4を示す。図4(b)は、図4(a)の偽造防止印刷物A4のX−X’断面図である。図4(a)及び図4(b)に示すように、紙基材1の一部に、紙基材1より透過光強度の高いマーク2を有する。マーク2上の紙基材1の表面には表面印刷模様4が形成される。表面印刷模様4は、第1の領域4aと第2の領域4bから成る。第1の領域4aは、赤外線透過磁性インキ組成物によって印刷され、第2の領域4bは磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は第1の領域4aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物によって印刷される。さらに、裏面印刷模様5は、第1の領域5aと第2の領域5bから成る。第1の領域5aは、赤外線透過磁性インキ組成物によって印刷され、第2の領域5bは、磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物、又は第1の領域5aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物によって印刷される。図4(a)及び図4(b)では、マーク2の全体に表面印刷模様4及び裏面印刷模様5が形成されているが、マーク2の少なくとも一部に表面印刷模様4及び裏面印刷模様5が形成されていればよい。本実施の形態における偽造防止印刷物A4では、紙基材1よりも赤外透過光強度の高いマーク2の構成で説明しているが、紙基材1よりも赤外透過光強度の低いマーク2であってもよい。第1の領域4aと第2の領域4b、第1の領域5aと第2の領域5bの色彩を可視光下領域(肉眼)では等色にすることで、第1の領域4aと第2の領域4b、第1の領域5aと第2の領域5bを区分けして視認することができなくなるため、より偽造防止効果が向上する。
【0039】
なお、第1の領域4a、第2の領域4b、第2の領域5a及び第2の領域5bは、相互に磁性材料の種類及び/又は配合量を異ならせても良い。
【0040】
第1の領域4aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物と、第1の領域5aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物と、第2の領域4bを形成する磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は第1の領域4aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物と、第2の領域5bを形成する磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は第1の領域5aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物は、200〜700nmの光の波長領域において、反射特性及び/又は透過特性が相互に異なっていても良い。又は、第1の領域4aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物と、第1の領域5aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物と、第2の領域4bを形成する磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は第1の領域4aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物と、第2の領域5bを形成する磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は第1の領域5aを形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは、磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物は、200〜700nmの光を照射したときの発光の有無、発光波長及び残光波長の少なくとも一つが相互に異なっていても良い。
【0041】
偽造防止印刷物A4は、第1の領域4aと第2の領域4bによって表面印刷模様4を形成し、第1の領域5aと第2の領域5bによって裏面印刷模様5を形成しているが、本発明はこれに限定されることなく、第1の領域4aと第2の領域4bによって表面印刷模様4を形成し、裏面は領域分けされていない裏面印刷模様5を形成してもよい。また、第1の領域5aと第2の領域5bによって裏面印刷模様5を形成し、表面は領域分けされていない表面印刷模様4を形成してもよい。
【0042】
図4(c)は、図4(a)に示した偽造防止印刷物A4の矢印部の赤外線透過率を示す波形の模式図である。図4(c)に示すように、マーク2の領域は、紙基材1のみの領域(無地部)、表面印刷模様4及び裏面印刷模様5のみの領域よりも赤外線透過率が高くなり、波形S4が得られ、マーク2を読み取ることが可能となる。さらに、読み取られた赤外線透過強度のデータをあらかじめ記録しておいた真正な基準となる赤外線透過強度のデータと比較し、所定の閾値内にあるか否かによって偽造防止印刷物A4の真偽判別を行うことができる。
【0043】
図4(d)は、図4(a)に示した偽造防止印刷物A4の矢印部を磁気センサで測定した波形の模式図である。図4(d)に示すように、表面印刷模様4及び裏面印刷模様5の領域は磁気強度が高く、波形P4が得られ、表面印刷模様4及び裏面印刷模様5の読み取りが可能となる。この偽造防止印刷物A4は、表面及び裏面に赤外線透過磁性インキ組成物によって印刷模様が形成されているため、偽造防止印刷物A1よりも磁気強度が強い波形が得られる(ただし、同じインキ、かつ、同じ膜厚の場合)。さらに、読み取られた磁気強度のデータをあらかじめ記録しておいた真正な基準となる磁気強度のデータと比較し、所定の閾値内にあるか否かによって偽造防止印刷物A4の真偽判別を行うことができる。
【0044】
マーク2の読み取りについては、前述の説明に限定されることなく、赤外光のもとで紙基材のマーク2を含む所定の領域における透過光強度又は反射光強度を読み取り、あらかじめ記録しておいた真正な透過光強度又は反射光強度のデータ(図示せず)と比較することで、偽造防止印刷物を真偽判別することができる。この場合、均質な透過光強度を持ったそれぞれのマークに相当する領域同士の透過光強度又は反射光強度の差について、あらかじめ記録しておいた真正な偽造防止印刷物によって得られる領域に対応する、領域同士の透過光強度又は反射光強度の差のデータと比較して、偽造防止印刷物を真偽判別することも可能であり、又は均質な透過光強度を持ったそれぞれのマークに相当する領域同士の透過光強度又は反射光強度の比を、あらかじめ記録しておいた真正な偽造防止印刷物によって得られる領域に対応する、領域同士の透過光強度又は反射光強度の比のデータと比較して、偽造防止印刷物を真偽判別することも可能である。
【0045】
マーク2を読み取るために、所定の領域における赤外線透過光強度を測定する必要があるため、固定式又は移動式の受光センサによって、紙基材の所定の領域における赤外線透過光を検知し、その領域において検出される赤外線透過光の強度を測定すればよい。また、均質な赤外線透過光強度を持ったそれぞれのマークに相当する領域の赤外線透過光強度を測定するためには、互いに異なる赤外線透過光強度を持ったそれぞれのマーク2に相当する領域ごとに固定式又は移動式の受光センサによって赤外線透過光を検知し、領域ごとに検出される赤外線透過光の強度を測定すればよい。
【0046】
本発明の偽造防止印刷物の磁気特性及び光学特性は、磁性材料の種類、量、基材の光学特性及びインキ膜厚に依存する。よって、磁気ヘッドによる磁気読取強度、受光センサによる光学特性読み取り強度を制御する必要がある。
【0047】
偽造防止印刷物A1、A2、A3及びA4において、赤外線吸収磁性インキを用いる場合は、マーク2の領域とは重ならないように印刷する。
【0048】
偽造防止印刷物A1、A2、A3及びA4に用いられる赤外線透過磁性インキ組成物は、赤外領域での透過率が高いインキである。さらに、磁性材料は残留磁化及び/又は透磁率の高い材料であることが好ましい。偽造防止印刷物A2又はA4に用いられる、磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は第1の領域を形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物は、赤外領域での透過率が高いインキである。
【0049】
偽造防止印刷物A1、A2、A3及びA4のマーク2は、一般的な赤外領域が読み取り可能な装置によって読み取りが可能である。さらに、偽造防止印刷物A1、A2、A3及びA4の印刷模様3は、一般的な磁気読み取り装置で読み取りが可能である。
【0050】
偽造防止印刷物A1、A2、A3又はA4に用いられる赤外線透過磁性インキ組成物は、紫外線領域から可視光領域にかけて吸収帯域を有し、赤外線領域で光を透過する特性を有し、残留磁化2〜35A・m/kg(emu/g)を有し、かつ、保磁力が0.796kA/m〜31.84kA/m(10〜400Oe)を有する磁性材料が含有されていることが好ましい。また、平均粒子径が10〜600nmである磁性材料が含有されていることが好ましい。
【0051】
偽造防止印刷物A1、A2、A3又はA4に用いられる赤外線透過磁性インキ組成物と、偽造防止印刷物A2又はA4に用いられる磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は第1の領域を形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは、磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物には、ビヒクルに磁性材料を含有する必要があり、磁性材料とビヒクルの重量比は磁性材料:ビヒクル=1:1乃至1:20に設定されることが好ましい。
【0052】
なお、偽造防止印刷物A1、A2、A3又はA4に用いられる赤外線透過磁性インキ組成物と、偽造防止印刷物A2又はA4に用いられる第1の領域を形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物に含有する磁性材料は、上記数値内であれば特に限定されるものではない。
【0053】
また、偽造防止印刷物A1、A2、A3又はA4に用いられる赤外線透過磁性インキ組成物と、偽造防止印刷物A2又はA4に用いられる磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は第1の領域を形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物には、ビヒクルに磁性材料が含有されているが、ビヒクルとしては特に限定されるものではない。例えば、アマニ油、オリーブ油、ヒマシ油及びヒマワリ油等の油脂類、鯨ロウ、ミツロウ、ラノリン、カルナウバワックス、キャンデリアワックス及びモンタンワックス等の天然ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、酸化ワックス、エステルワックス及び低分子量ポリエチレン等の合成ワックス類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、フロメン酸及びヘベニン酸等の高級脂肪酸類、ステアリルアルコール及びヘベニルアルコール等の高級アルコール類、ワセリン及びグリセリン等の石鹸類、グルコース、エチレングルコース及びアミロース等の炭化水素類、脂肪酸エステル等のエステル類、ステアリンアミド及びオレインアミド等のアミド類、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニル系樹脂、石油系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、フェノール系樹脂、スチレン系樹脂、ロジン変性樹脂及びテルビン樹脂等の樹脂類、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム及びクロロプレンゴム等のエラストマー類、水添石油樹脂、シリコーン、流動パラフィン及びフッ素樹脂等のタッキファイヤー類等を単独又は含有された物から成る分散媒が使用できる。さらに、必要に応じて分散媒に顔料、染料、界面活性剤、充填剤、酸化防止剤及び乾燥剤等を添加して使用してもよい。
【0054】
偽造防止印刷物A1、A2、A3又はA4に用いられる赤外線透過磁性インキ組成物と、偽造防止印刷物A2又はA4に用いられる磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は第1の領域を形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料とは磁性材料の種類及び/又は磁性材料の配合量が異なって配合されている赤外線透過磁性インキ組成物の乾燥方式としては、オフセット用インキ、グラビア用インキ、スクリーン用インキ及び凹版用インキ等に使用される一般的な紫外線硬化性インキ、酸化重合性インキ、溶剤型インキ又は水性蒸発型インキ等に使用される通常の乾燥方式を用いることが可能である。
【0055】
前述の説明においては、印刷領域の磁性材料の濃淡に対応した定量型のセンサにおける検知電圧を示す波形形状を例に説明したが、本偽造防止印刷物の真偽判別には、このセンサに限定されるものではなく、磁束の変化量に対応した微分型の磁気センサを用いても真偽判別可能である。
【0056】
印刷基材については、赤外線反射又は透過による濃淡情報を形成可能な基材であれば、紙又はプラスチック等、特に限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
本実施例1の偽造防止印刷物は、図5に示すように、網出し法による抄紙等の方法により、所定の間隔で三つのすき入れマーク2を有する紙基材1を作製した。図5(a)のX−X’断面図を図5(b)に示す。
【0059】
次に、下記組成の赤外線透過磁性インキ組成物を作製した。
・磁性材料{残留磁化25〜35A・m/kg(emu/g)、保磁力19.9〜31.84kA/m(250〜400Oe)、平均粒子径10〜600nm程度のもの}
10重量%
・ビヒクル 80重量%
・顔料、乾燥剤 10重量%
【0060】
上記得られた紙基材1のマーク2上に、凹版印刷機によって赤外線透過磁性インキ組成物から成る印刷模様3を形成し、図6に示す偽造防止印刷物B1を得た。図6(a)のX−X’断面図を図6(b)に示す。印刷模様3のインキ膜厚は、12.5μm程度であった。
【0061】
印刷模様3は、紫外線領域である200nmから赤外線領域である2000nmまでの分光反射率を測定した結果、酸化アルミニウムの分光反射率を100%とした場合に、分光反射率が10%程度以下において紫外線領域から可視光領域(200〜550nm付近)に吸収帯域を示し、赤外線領域である波長780〜1900nm付近にわたる領域では、60%以上の分光反射率であった。
【0062】
赤外線領域では、マーク2の領域は、紙基材1のみの領域(無地部)及び印刷模様3のみの領域よりも赤外線透過率が高くなり、図7(a)に示す波形S5が得られ、マーク2を読み取ることが可能であった。さらに、印刷模様3の領域は、残留磁化が測れるセンサによって、図7(b)に示す波形P5が得られ、印刷模様3の読み取り可能であった。なお、波形S5、P5は模式図である。
【0063】
(実施例2)
実施例1で作製した赤外線透過磁性インキ組成物とは磁性特性が異なった赤外線透過磁性インキ組成物を作製した。
・磁性材料{残留磁化2〜15A・m/kg(emu/g)、保磁力0.796〜11.94kA/m(10〜150Oe)、平均粒子径10〜600nm程度のも}
10重量%
・ビヒクル 80重量%
・顔料、乾燥剤 10重量%
【0064】
実施例1で得られた紙基材1のマーク2上に、凹版印刷機によって実施例1で得られた赤外線透過磁性インキ組成物及び実施例2で得られた赤外線透過磁性インキ組成物によって印刷模様を作製した。印刷模様は、第1の領域と第2の領域から成り、第1の領域は、実施例1の赤外線透過磁性インキ組成物によって凹版印刷機で印刷し、第2の領域は、実施例2の赤外線透過磁性インキ組成物によって凹版印刷機で印刷して偽造防止印刷物を得た。
【0065】
赤外線領域では、マークの領域は、紙基材のみの領域(無地部)及び印刷模様のみの領域よりも赤外線透過率が高くなり、波形が得られ、マークを読み取ることが可能であった。また、印刷模様の領域は残留磁化が測れるセンサによって、波形が得られ、印刷模様の読み取りが可能であった。さらに、第1の領域の磁気波形と第2の領域の磁気波形では、第1の領域の方が高い磁気波形が得られた。
【0066】
(実施例3)
実施例1で得られた紙基材の表面のマーク上に、凹版印刷機によって実施例1で得られた赤外線透過磁性インキ組成物から成る表面印刷模様を形成し、紙基材の裏面のマーク上に、凹版印刷機によって実施例1で得られた赤外線透過磁性インキ組成物から成る裏面印刷模様を形成し、偽造防止印刷物を得た。
【0067】
赤外線領域では、マークの領域は、紙基材のみの領域(無地部)及び印刷模様のみの領域よりも赤外線透過率が高くなり、波形が得られ、マークを読み取ることが可能であった。また、表面印刷模様及び裏面印刷模様の領域は残留磁化が測れるセンサによって、波形が得られ、表面印刷模様及び裏面印刷模様の読み取りが可能であった。また、実施例3の表面印刷模様及び裏面印刷模様の磁気波形は、実施例1の印刷模様の磁気波形よりも高い強度の波形が得られた。
【0068】
(実施例4)
実施例1で得られた紙基材1の表面のマーク2上に、凹版印刷機によって実施例1で得られた赤外線透過磁性インキ組成物及び実施例2で得られた赤外線透過磁性インキ組成物によって表面印刷模様を作製した。表面印刷模様は、第1の領域と第2の領域から成り、第1の領域は、実施例1の赤外線透過磁性インキ組成物によって凹版印刷機で印刷し、第2の領域は、実施例2の赤外線透過磁性インキ組成物によって凹版印刷機で印刷し、さらに、紙基材1の裏面のマーク2上に、凹版印刷機によって実施例1で得られた赤外線透過磁性インキ組成物及び実施例2で得られた赤外線透過磁性インキ組成物によって裏面印刷模様を作製した。裏面印刷模様は、第1の領域と第2の領域から成り、第1の領域は、実施例1の赤外線透過磁性インキ組成物によって凹版印刷機で印刷し、第2の領域は、実施例2の赤外線透過磁性インキ組成物によって、凹版印刷機で印刷して偽造防止印刷物を得た。
【0069】
赤外線領域では、マークの領域は、紙基材のみの領域(無地部)及び印刷模様のみの領域よりも赤外線透過率が高くなり、波形が得られ、マークを読み取ることが可能であった。また、表面印刷模様及び裏面印刷模様の領域は、残留磁化が測れるセンサによって波形が得られ、表面印刷模様及び裏面印刷模様の読み取りが可能であった。また、実施例4の表面印刷模様及び裏面印刷模様の磁気波形は、実施例1の印刷模様の磁気波形よりも高い強度の波形が得られた。さらに、表面印刷模様の第1の領域と第2の領域、裏面印刷模様の第1の領域と第2の領域が合成された複雑な磁気波形が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】偽造防止印刷物A1及びその断面図並びに偽造防止印刷物A1から得られる波形の模式図を示す図である。
【図2】偽造防止印刷物A2及びその断面図並びに偽造防止印刷物A2から得られる波形の模式図を示す図である。
【図3】偽造防止印刷物A3及びその断面図並びに偽造防止印刷物A3から得られる波形の模式図を示す図である。
【図4】偽造防止印刷物A4及びその断面図並びに偽造防止印刷物A4から得られる波形の模式図を示す図である。
【図5】実施例1のマーク2を有する紙基材1を示す図である。
【図6】実施例1の偽造防止印刷物B1及びその断面図を示す図である。
【図7】偽造防止印刷物B1から得られる波形の模式図を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 紙基材
2 マーク
3 印刷模様
3a 第1の領域
3b 第2の領域
4 表面印刷模様
4a 第1の領域
4b 第2の領域
5 裏面印刷模様
5a 第1の領域
5b 第2の領域
A1、A2、A3、A4、B1 偽造防止印刷物
S1、S2、S3、S4、S5、P1、P2、P3、P4、P5 波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の一部にマークを有し、前記マークと前記マークが施されていない領域は赤外線透過光の強度が異なり、前記マーク上の少なくとも一部に印刷模様が形成され、前記印刷模様は、赤外線透過磁性インキ組成物によって前記紙基材の少なくとも一方の面に形成されることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
紙基材の一部にマークを有し、前記マークと前記マークが施されていない領域は、赤外線透過光の強度が異なり、前記マーク上の少なくとも一部に第1の領域と第2の領域から成る印刷模様が形成され、前記印刷模様は、前記紙基材の少なくとも一方の面に形成され、前記マーク上には、少なくとも一部の前記第1の領域及び少なくとも一部の第2の領域が形成され、前記第1の領域は、赤外線透過磁性インキ組成物によって形成され、前記第2の領域は、磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は前記第1の領域を形成する赤外線透過磁性インキ組成物に混合された磁性材料と種類及び/又は配合量が異なっている赤外線透過磁性インキ組成物によって形成されることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項3】
前記第2の領域を形成する前記磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は赤外線透過磁性インキ組成物と、前記第1の領域を形成する赤外線透過磁性インキ組成物は、200〜700nmの光の波長領域において、反射特性及び/又は透過特性が相互に異なっていることを特徴とする請求項2記載の偽造防止印刷物。
【請求項4】
前記第2の領域を形成する前記磁性材料を含有しない赤外線透過インキ組成物又は赤外線透過磁性インキ組成物と、前記第1の領域を形成する赤外線透過磁性インキ組成物は、200〜700nmの波長領域の光を照射したときの発光の有無、発光波長及び残光波長の少なくとも一つが相互に異なっていることを特徴とする請求項2記載の偽造防止印刷物。
【請求項5】
前記マークがすき入れであることを特徴とする請求項1乃至4記載の偽造防止印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−832(P2009−832A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161552(P2007−161552)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】