偽造防止印刷物
【課題】本発明は、銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等の偽造防止又は複製防止が必要とされる偽造防止印刷物に関するものである。
【解決手段】所定のピッチで第1の方向に配列された第1の画線群と、第1の画線群の非画線部に第2の画線群によって可視画像が形成され、第2の画線群は、一対となる二種類の画線をオンオフの関係により任意に配置することで、第1の不可視画像のネガ及びポジの画像を形成する。また、第1の画線群を印刷物の印刷面から少なくとも2段階以上の所定の高低差を有する画線部によって構成することで、第2の不可視画像を構成する偽造防止印刷物である。
【解決手段】所定のピッチで第1の方向に配列された第1の画線群と、第1の画線群の非画線部に第2の画線群によって可視画像が形成され、第2の画線群は、一対となる二種類の画線をオンオフの関係により任意に配置することで、第1の不可視画像のネガ及びポジの画像を形成する。また、第1の画線群を印刷物の印刷面から少なくとも2段階以上の所定の高低差を有する画線部によって構成することで、第2の不可視画像を構成する偽造防止印刷物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等の偽造防止又は複製防止が必要とされる偽造防止印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷物上で図柄の連続階調の表現は、印刷物上の印刷色を点及び線等の微細図形群で図柄を構成し、微細図形の形状及び大きさを図柄の連続階調の濃度に従って制御しているものである。連続階調の表現には、網点等の正多角形配列からなる微細構成素子群で構成するスクリーン連続階調表現と、図柄中のモティーフ(人物、風景、物体、模様等)のアウトラインや模様等を絵画的な点及び細線で構成する線画階調表現方法がある。
【0003】
上述の絵画的な点及び細線で構成する線画階調表現方法は、図柄にあるモティーフを、デッサン的描画手法を用いて図柄の明暗(連続階調)や質感を表現するため、図柄中の点及び細線が交差したり輻輳したりする等、印刷物上で画線形状及び配置が複雑な様相となる。したがって、上述の絵画的な点及び線で構成する線画階調表現方法は、図案的意図を反映させることができる連続階調表現方法である。主な表現方法としては、画線が「線」の場合、画線幅や画線の配置する粗密で図柄の濃度を表現することができる。また、画線が「点」の場合、点の大きさによって図柄の濃度を表現することや、点の粗密によっても図柄の濃度を表現することができる。
【0004】
上述の絵画的な点及び細線で構成する線画階調表現方法の代表的な技術としては、紙幣の凹版印刷画像に見られるような図柄にあるモティーフの階調表現方法として用いられている。例えば、線画階調表現方法によって点及び細線で構成する画線を複雑化した画線を有する印刷物は、画線を複雑に構成することにより、印刷物からの複製を困難にできる。また、市場流通過程における拡大鏡等による観察によって、画線形状が真正なものであるか否かを、一般人が訓練次第で識別できる方法であるため、証券印刷物等金銭的価値を有する印刷物の模様として世界的に用いられていると同時に、古くから現在でも銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等(以下「証券類」という。)の印刷物において、線画階調表現方法による模様は、高級感を印象づけるデザインとして欠かすことのできない模様となっている。図1は、一般的な線画階調表現方法の一例を示したものである。線画階調表現方法では、印刷物1上の印刷模様3上に、印刷模様3の部分拡大図(円内)に示される主線4と副線5が存在するが、このうち、階調要素を設けられるのは主線4であることが多い。主線4に設けられる階調要素とは、図柄の濃淡を表現するために、明るさを奏する場合は主線4の画線幅を細く、暗さを奏する場合は主線4の画線幅を太くすることで連続階調を表現している。なお、図1の例では、主線4を水平の万線、副線5を斜め45度の万線として描いているが、それぞれの万線の角度についてはこの限りではない。
【0005】
こうした証券類の印刷物では、偽造防止効果を与えるために、地紋模様と呼ばれる背景模様に様々な技術が適用されているが、近年、カラー複写機の高画質化及びカラー製版技術のコンピュータ化に伴い、証明書類の偽造技術が多様化する傾向にある。これに伴う証明書類の偽造防止策も、高度化することによって対応してきた。しかし、その一方で、偽造防止策に費やす製造コストも上がり、偽造防止効果を確認する環境を得るために特殊な機械器具から成る専用設備を導入する等、真偽判定にも高コストを要する場合があった。
【0006】
真正物か偽造物であるかを真偽判別するための技術として、銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等では、古くから潜像凹版と呼ばれる偽造防止技術がある。この潜像凹版は、凹版インキ等で盛り上がりのある画線を用いることで効果を奏するものである。例えば、図42の印刷物11に示されたように、印刷模様12の背景を成す画線群13と潜像を成す画線群14は、90度の2方向の差異を持った万線状の画線によって配置している。この印刷物11の印刷面を正面から見て観察した場合、施されている潜像模様「P」を容易に認識することができないが、図43に示されたように、斜めから観察すると、例えば、凹版インキのような盛り上がった画線では、画線群13と隣り合う画線との視角によって重なり合うため、実際の潜像部を成す画線14よりも低明度(高濃度)となる。これにより、潜像模様「P」が顕像となって出現する。また、2方向の万線状の画線でなくとも、凹版インキの盛り上がり高さ差異によって1方向の万線で実現することもできる(例えば、特許文献1参照)。この技術の特徴は、別途判別具を用意せずとも簡単に真偽判別することができることである。
【0007】
一方、印刷物上に簡易的な判別具を用いることよって、より顕著な真偽判定を可能にする有用な技術がある。つまり、不可視画像が施されている印刷物に判別具を重ねることによって、不可視画像を可視画像として発現させるもので、この判別具の主な形態は、平行線スクリーンを印刷した透明シート(以下「万線フィルタ」という。)であったり、レンチキュラーレンズであったりする。この判別具を用いて不可視画像を発現させる技術は、主に二種類の方法があり、点位相変調(Dot phase modulation)と線位相変調(Line phase modulation)とが存在する。
【0008】
このような万線フィルタから成る判別具を重ね合わせることにより、潜像画像が発現する印刷物とその真偽判別方法としては、万線(又は網点)画線で印刷した背景画像部と、背景画像部と異なる位相の万線(又は網点)画線で印刷した潜像画像部とを有する印刷物が存在する。当該印刷物の背景画像部と潜像画像部は、区分けして視認することが一見困難であるが、万線フィルタを印刷物に所定の位置で重ね合わせた場合には、背景画像部と潜像画像部を区分けして視認することができる方法が知られている。
【0009】
点位相変調(Dot phase modulation)の一例としては、第1の方向と第2の方向に位相変調されたパターンが形成された印刷物と、当該印刷物の第1の方向と万線状フィルタの万線状パターンの方向とを一致するように、万線状フィルタを重ね合わせることにより形成される第1の多階調画像と、万線状フィルタの重ね合わせる角度を、印刷物の第2の方向に一致するように変えると第2の多階調画像が形成された印刷物及び画像形成法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
また、点位相変調(Dot phase modulation)の一例としては、基材上に、レンズアレイ(ハエの目レンズ、ハニカムレンズ、レンチキュラーレンズ等)を重ねることにより画像が現れるドットパターンを構成するそれぞれのドットが、少なくとも二種類以上のスクリーン線数で、かつ、少なくとも二種類以上のスクリーン角度の網点から成る印刷物において、真正物であればドットパターンを構成するそれぞれのドットの網点面積率が同じであるため、レンズアレイを重ねることにより不可視画像が発現し、複写物の場合は、コピーすることによりスクリーン線数の大きさ又は網点角度で再現されるドットが潰れ、ドットの濃度が変化することにより、不可視画像と異なる画像が発現する印刷物がある(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
また、海外の点位相変調(Dot phase modulation)の一例としては、アストロン・デザイン社(オランダ)のイソグラム(Isogram)がある(例えば、非特許文献1340頁参照)。これは、図60(a)に示された印刷物のように、一見して均一な濃度を有する平坦な模様の中に、拡大すると図60(b)に示されたような微細な網点の位相によって不可視画像が施され、印刷物上に専用のシートを重ねると、図60(c)又は図60(d)に示されるようにネガポジ状のどちらかに可視画像化されたものである。しかし、これは、均一な濃度を有する平坦な模様故に、鮮明に画像を発現させることができない。
【0012】
また、本願出願人等は、点位相変調(Dot phase modulation)を用いた印刷物に関する特許出願を行っている。これは、基材上に複数の等色の画素が規則的に配列されて二つの潜像模様が形成された潜像印刷物であって、複数の画素において、第1の方向に位相をずらして配列された第1の領域による第1の潜像模様(不可視画像)と、機能性を有するインキにより印刷された第2の領域による第2の潜像模様(不可視画像)とを有する(例えば、特許文献4参照)。
【0013】
線位相変調(Line phase Modulation)の一例としては、基材上に、線部と非線部を有し、同一ピッチ及び幅から成る万線パターンに対し、万線位相を2分の1ピッチずらして形成された潜像部を備えている複数種の潜像万線パターンが、それぞれ異なる角度で重ね合わされて印刷された潜像を有する印刷物であって、複数種の潜像万線パターンがそれぞれ色違いであることを特徴とする印刷物と、印刷物の万線パターンと同一ピッチのフィルムを、複数種の不可視画像に重ね合わせることにより潜像部を可視画像化されたものがある(例えば、特許文献5参照)。
【0014】
また、海外の線位相変調(Line phase Modulation)を用いた印刷物には、ユラ社(ハンガリー)のHIT(Hidden Image Technology)がある(非特許文献1341頁参照)。図61(a)に示されたように、一見して均一な濃度を有する平坦な模様の中に、拡大すると図61(b)に示されたような微細な万線の位相によって不可視画像が施され、印刷物上に専用のシートを重ねると、図61(c)又は図61(d)に示されるようにネガポジ状のどちらかに可視画像化されている。なお、図61(a)の印刷物では通常視でも不可視画像が確認できてしまうおそれがあるため、図61(b)に示されたように、カムフラージュ模様として万線の一部の画線幅を変化させて可視画像を設けている。また、白抜き画線によって可視画像を設けても良い。ただし、このカムフラージュ模様は、専用のシートを重ねて不可視画像を可視画像化した際、カムフラージュ模様も可視画像として同時に発現しているので、不可視画像の発現時の視認性を阻害するという問題がある。
【0015】
一般的に、点位相変調(Dot phase modulation)又は線位相変調(Line phase modulation)により形成された模様は、平坦な形状となっている。
【0016】
また、画像形成シート上に、単位ブロック内をm列n行に等形上分割した各々最小単位ブロックb1、b2、b3、b4、・・・を、それぞれ1単位画素g1、g2、g3、g4、・・・とする各々潜像画像G1、G2、G3、G4、・・・が形成され、その単位画素g1、g2、g3、g4、・・・は、万線本数1本分以上の万線により構成される万線パターンであって、ピッチp1、p2、p3、p4、・・・の各々万線ピッチpと、角度θ1、θ2、θ3、θ4・・・の各々万線角度θの万線により構成される、異なる各々万線パターンのうち、いずれかの万線パターンにより構成された偽造防止用画像形成体であり、1単位画素g1、g2、g3、g4、・・・を構成する万線パターンと、同一の万線ピッチp及び万線角度θの万線により構成されるそれぞれ異なる万線パターンを、透明シートに形成した顕像化用の万線シートを重ね合わせることで、潜像画像G1、G2、G3、G4、・・・を顕像化するようにした偽造防止用画像形成体が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0017】
この特許文献6による偽造防止用画像形成体は、各々の単位画素において万線パターンのピッチ及び角度を異ならせることにより、複数の潜像画像を顕像化するものではあるが、可視画像としては、一様な背景模様としか表現できず、さらに、潜像画像を顕像化するためには、その潜像画像を構成する単位画素の万線パターンに合ったピッチ及び角度を要する透明シートが必要となり、複数の判別具を用意しなければならないという問題があった。
【0018】
また、非特許文献1及び特許文献2〜5に示された技術は、潜像、すなわち埋め込まれた画像を完全に不可視状態にすることができるものではなく、さらに、証券類のデザインとの親和性が低いために、上述した線画階調表現方法に適用しにくいことが最も大きな問題となっている。また、非特許文献1及び特許文献2〜5に示された技術は、上述した線画階調表現方法から成る印刷模様とは別刷りで施さなければならず、結果的に偽造防止策に費やす製造コストも上がることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】実公昭56−19273号公報
【特許文献2】特許第4132122号公報
【特許文献3】特許第4013450号公報
【特許文献4】特願2007−43171号公報
【特許文献5】特開2004−174997号公報
【特許文献6】特開2007−015120号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Optical Security and Counterfeit Deterrence Techniques IV Vol.4677 ( by SPIE-The International Society for Optical Engineering )
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
証券類では、印刷面上に数多くの偽造防止効果を有する画線が必要になる。しかしながら、印刷面には限りがあり、少ない印刷面積でも複数の真偽判別方法によって有効な作用を奏する偽造防止策が望まれている。
【0022】
また、上述した従来の印刷物では、潜像模様が平坦な濃度を有する印刷画線から成るため、鮮明に発現可能な不可視画像を形成することができなかった。また、従来の印刷物は、判別具を重ねる前に、あらかじめ潜像模様が視認されてしまうおそれがあった。また、あらかじめ潜像模様が視認されてしまう問題を防ぐためには、画線又は網点を小さくし、潜像模様と背景模様のずれ幅を少なくする必要があり、判別具を重ねた場合に潜像模様の視認性が劣ってしまう問題があった。また、印刷物の画線又は網点自体に指感性を有するものではなかった。
【0023】
さらに、何らかの可視画像を設けたとしても、特許文献3に記載された印刷物のように単純な白抜き画線から成るため、不可視画像を発現させた時の視認性を阻害するという問題があった。さらに、特許文献6に記載された印刷物のように複数の判別具を必要とするものもあった。
【0024】
本発明は、上記事情にかんがみ、単一の判別具により鮮明な発現が可能な不可視画像を形成するとともに、画線又は網点並びにずれ幅を小さくしなくとも、判別具を重ねる前に、あらかじめ不可視画像が視認され難く、不可視画像を発現させた時に不可視画像以外の領域によって視認性が阻害されない偽造防止印刷物を提供すること又は複数の真偽判別方法によって偽造防止効果を奏することで、判別具を用いる場合と判別具を用いない場合とで簡単に真偽判別を可能とし、判別具を用いる場合にあっても、鮮明な発現が可能な不可視画像を形成するとともに、画線又は網点並びにずれ幅を小さくしなくとも、判別具を重ねる前にあらかじめ不可視画像が視認され難く、かつ、不可視画像を発現させた時に不可視画像以外の領域によって視認性が阻害されない偽造防止印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の偽造防止印刷物は、基材の表面上に、それぞれ同一面積を有する第5の画線ユニットと第6の画線ユニットとがマトリックス状に配置されており、第5の画線ユニットは、第1の方向に延在するように配置された第1の画線と、第1の画線が存在しない領域の第1の位置に配置された第2の画線とを有し、第6の画線ユニットは、第1の方向に延在するように配置された第1の画線と、第1の画線が存在しない領域の第2の位置に配置された第3の画線とを有し、第1の画線は、基材の表面に対して第1の高さを有する第1の画線部と、第1の高さとは異なる第2の高さを有する第2の画線部とを有することで、第1の不可視画像を形成し、第5の画線ユニットと第6の画線ユニットのいずれか一方が配置された領域が第2の不可視画像の画像部を形成し、他方が配置された領域が第2の不可視画像の背景部を形成されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0026】
また、本発明の偽造防止印刷物における第1の不可視画像は、基材に対して90度と異なる所定の角度範囲から視認することが可能であり、第2の不可視画像は、複数の第5の画線ユニットにおけるそれぞれの第1の位置に配置された第2の画線を拡大することにより、あるいは複数の第6の画線ユニットにおけるそれぞれの第2の位置に配置された第3の画線を拡大することにより視認することが可能であることを特徴とする偽造防止用印刷物である。
【0027】
また、本発明の偽造防止印刷物は、第5の画線ユニットの一方の側に第6の画線ユニットが配置された場合、濃度の不均衡を緩和するため、第5の画線ユニットにおける第2の画線又は第6の画線ユニットにおける第3の画線のいずれか一方の画線を削除し、いずれか一方の画線を削除した第5の画線ユニット又は第6の画線ユニットの略中心の位置に、第2の画線及び第3の画線の半分又は略半分の画線面積率を有する第4の画線が配置され、第1の方向に沿って第5の画線ユニットの他方の側に第6の画線ユニットが配置された場合、第5の画線ユニット及び第6の画線ユニットの境界線を中心とした位置に、第4の画線が配置されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0028】
また、本発明の偽造防止印刷物における第1の画線、第2の画線、第3の画線及び第4の画線は、複数の画線ユニット内に形成され、複数の画線ユニットは、第1の画線ユニット、第2の画線ユニット、第3の画線ユニット及び第4の画線ユニットから成り、第1の画線ユニット及び第2の画線ユニットは、同一の大きさであり、第3の画線ユニット及び第4の画線ユニットは、第1の画線ユニット又は第2の画線ユニットに対して第1の方向に2倍の大きさであり、第1の画線ユニットは、第2の画線が第1の画線ユニットの中心を通るように配置され、第2の画線ユニットは、第3の画線が第4の画線ユニットにおける中心から等間隔で対向するように第2の画線の半分又は略半分の画線面積率を有する第3の画線が一対として配置され、第3の画線ユニットは、第2の画線、第4の画線及び第2の画線の半分又は略半分の画線面積率を有する第3の画線の順に配列され、第4の画線ユニットは、第2の画線の半分又は略半分画線面積率で配置された第3の画線、第4の画線及び第2の画線の順に配置されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0029】
また、本発明の偽造防止印刷物における第1の方向に沿って第1の画線ユニットの一方の側に隣接して配置される画線ユニットは、第1の画線ユニット及び第3の画線ユニットであり、第1の方向に沿って第1の画線ユニットの他方の側に隣接して配置される画線ユニットは、第1の画線ユニット及び第4の画線ユニットであり、第1の方向に沿って第2の画線ユニットの一方の側に隣接して配置される画線ユニットは、第2の画線ユニット及び第4の画線ユニットであり、第1の方向に沿って第2の画線ユニットの他方の側に隣接して配置される画線ユニットは、第2の画線ユニット及び第3の画線ユニットであることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0030】
また、本発明の偽造防止印刷物における第2の画線、第3の画線及び第4の画線は、白空き部によって形成されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0031】
また、本発明の偽造防止印刷物は、第1の画線における少なくとも一部の単位長さ当たりの画線面積率を異ならせて配置することにより可視画像が形成されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0032】
また、本発明の偽造防止印刷物は、第1の画線における少なくとも一部をレリーフ状に配置することにより可視画像が形成されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0033】
また、本発明の偽造防止印刷物における第2の画線要素は、円形又は多角形によって形成されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0034】
また、本発明の偽造防止印刷物における第2の画線要素は、第1の画線要素と隣接して配置されるか、又は第1の画線要素と一体化して配置されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【発明の効果】
【0035】
本発明の偽造防止印刷物は、濃度不均衡を緩和する複数の画線を設けているため、画線又は網点並びにずれ幅を小さくしなくとも、判別具を重ねる前に、あらかじめ不可視画像が視認されにくく、偽造者に印刷物のどこに不可視画像が形成されているか判断されにくいため容易に複製されることがない。
【0036】
本発明の偽造防止印刷物は、画線又は網点並びにずれ幅を小さくせずに、不可視画像のネガ及びポジの領域に、所定のずれ幅を形成することが可能であるため、あらかじめ不可視画像が視認されにくく、かつ、判別具を重ねた場合に鮮明な不可視画像を視認することができ、判別者が容易に確認することができる。
【0037】
本発明の偽造防止印刷物は、単一の判別具により鮮明な発現が可能な不可視画像が形成されるとともに、線画階調表現方法からなる模様の意匠性を損なわない偽造防止印刷物が提供される。さらに、本発明の偽造防止印刷物は、画線自体に盛りを有する形態にすることで、指感性を有し、指感性の有無によって真偽判別ができる。
【0038】
本発明の偽造防止印刷物によれば、証券類の限られた印刷面上において、該印刷物上に備えられた第1の不可視画像と、第2の不可視画像とが、それぞれ二種類の真偽判別方法、すなわち判別具を用いない場合と判別具を用いる場合とでそれぞれに顕著な偽造防止効果を確認することができる。
【0039】
判別具を用いない方法としては、印刷物を正面から観察した際には、線画表現からなる模様の意匠性を損なわないように第1の不可視画像が形成されているが、印刷物を斜視にて観察することで、第1の不可視画像が可視画像となって出現する偽造防止印刷物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】任意のモティーフから成る印刷模様3が視認された状態を示す説明図。
【図2】印刷物1に判別具2を重ね合わせることにより、容易に不可視画像を発現させて真偽性を判別することができる状態を示す説明図。
【図3】不可視画像6が可視画像となって発現された状態を占めす説明図。
【図4】図形の位置関係を2次元上で示す基本的な画線構成を部分的に拡大した説明図。
【図5】画線ユニットE及び画線ユニットFにおける画線5a及び画線5bの形状の一例を示す図。
【図6】本発明の偽造防止印刷物の基本的な画線構成の一例を部分的に拡大した説明図。
【図7】画線5a、5bに対し画線5c、5dが半分又は略半分の画線面積率を成す各種画線形状を示す説明図。
【図8】図6(a)の画線ユニットAと、図6(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリクス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図。
【図9】所望の位置に配置するための条件に基づいて、印刷模様3上に画線ユニットCと画線ユニットDの位置が示された説明図。
【図10】実施の形態1における印刷物に対する印刷模様の一画線の構成を部分的に拡大した図。
【図11】図8の配置に基づいて、図10(a)の画線ユニットAと、図10(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリクス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置された状態を示した説明図。
【図12】画線ユニットCに備わった画線5cと、画線ユニットDに備わった画線5dとが配置された状態を示した説明図。
【図13】階調要素を設けている主線4を加え、斜め45度に配置されている画線5a、一対の画線5b、画線5c及び画線5dの長手方向の図柄的な連続性が、通常の目視の観察において客観的に理解できなった状態を示す説明図。
【図14】図10における線L1と各レンズの中心線とが一致するように、レンチキュラーレンズから成る判別具を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を示す説明図。
【図15】レンチキュラーレンズの特性によって中心線7に位置する画線5bが膨張し、不可視画像6がネガポジ状のどちらかに見える可視画像となって発現する状態を示す説明図。
【図16】画線ユニットA又は画線ユニットBの対角方向に長方形又は平行四辺形を成す線状である状態を示す説明図。
【図17】図16(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dを用いて構成された印刷模様3において、画線5a、一対の画線5b、画線c及び画線dが、点線状となって見える状態を示す説明図。
【図18】画線ユニットA、画線ユニットB、画線ユニットC又は画線ユニットDの対角方向に三角形状を成す画線形状である状態を示す説明図。
【図19】図18(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dを用いて構成された印刷模様3において、画線5a、一対の画線5b、画線c及び画線dが、点線状となって見える状態を示す説明図。
【図20】画線5aの角度を変えることにより、横万線状の配置される主線の間隔を任意に調整することができることを示した説明図。
【図21】実施の形態5における印刷物に対する印刷模様の一画線の構成する画線ユニットA〜Dを示した説明図。
【図22】同心円万線フィルタ等の判別具2’を示した説明図。
【図23】図21(a)の画線ユニットAと、図21(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3’中に、マトリクス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図。
【図24】図23の配置に基づいて画線5a’と画線5b’とが配置された状態を示した説明図。
【図25】所望の位置に配置するための条件に基づいて、印刷模様3’上に画線ユニットCと画線ユニットDの位置が示された説明図。
【図26】図25の配置に基づいて、画線ユニットCに備わった画線5c’と、画線ユニットDに備わった画線5d’とが配置された状態を示した説明図。
【図27】可視画像を構成しているのは主線4’を付与した状態を示す説明図。
【図28】図21における線L1と各レンズの中心線とが一致するように、同心円万線フィルタから成る判別具2’を印刷物1上の印刷模様3’に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を示した説明図。
【図29】同心円万線フィルタの特性によって中心線7に位置する画線5b’が膨張し、可視画像がネガポジの関係となって見える状態を示した説明図。
【図30】第1不可視画像と第2不可視画像を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図。
【図31】印刷物1を真上から観察した場合の平面図と、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さの違いを表した正面図。
【図32】低画線部4aと高画線部4bの高さによって見え方の違いが現れる印刷物1の側面図。
【図33】低画線部4aより高画線部4bの方が高濃度で観察された状態を示した斜視図。
【図34】透明性を有するフィルタに複数の直線が万線状に一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1に重ね合わせた状態を示した図。
【図35】判別具によって第2不可視画像を可視化するための基本的な画線構成の一例を部分的に拡大した説明図。
【図36】図35(a)の画線ユニットAと、図35(b)の画線ユニットBと、図35(c)の画線ユニットCと、図35(d)の画線ユニットDを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリックス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図。
【図37】レンチキュラーレンズから成る判別具を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を示した図。
【図38】レンチキュラーレンズから成る判別具を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を示した図。
【図39】任意の形状を成す模様9が構成される部分の、画線4の画線幅が細くなっている状態を示した図。
【図40】低画線部4aより高画線部4bの方が高濃度で観察された状態を示した斜視図。
【図41】画線5aの角度を変えることにより、画線ユニットにおける縦の長さを調整することができる説明図。
【図42】従来の潜像凹版と呼ばれる偽造防止技術の印刷面を正面から見た観察した場合の説明図。
【図43】従来の潜像凹版と呼ばれる偽造防止技術の印刷面を斜めから観察した状態を示した斜視図。
【図44】高さの異なる第1高画線部4bと第2高画線部4cとで構成された第1不可視画像と、第2不可視画像を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図。
【図45】低画線部4aと段階的に高さの異なる第1高画線部4b〜第5高画線部4fが施されている画線4から成る印刷物1を真上から観察した場合の平面図。
【図46】第1高画線部4b〜第5高画線部4fで構成された領域において斜めから観察することにより濃淡差を有する第1不可視画像8が出現している状態を示した斜視図。
【図47】第1高画線部4b〜第5高画線部4fで構成された領域において斜めから観察することにより第1不可視画像8が出現している状態を示した斜視図。
【図48】第1不可視画像と第2不可視画像を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図。
【図49】判別具によって第2不可視画像を可視化するための基本的な画線構成を部分的に拡大した説明図。
【図50】画線ユニットEと画線ユニットFを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリックス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図。
【図51】画線4に低画線部4aと高画線部4bが設けられている状態を示した説明図。
【図52】判別具を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態の図。
【図53】第1不可視画像と第2不可視画像を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図。
【図54】判別具によって第2不可視画像を可視化するための基本的な画線構成の一例を部分的に拡大した説明図。
【図55】画線4に低画線部4aと高画線部4bが設けられている状態を示した説明図。
【図56】レンチキュラーレンズから成る判別具を印刷物上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を示した図。
【図57】レンチキュラーレンズから成る判別具を印刷物上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を示した図。
【図58】濃度の不均衡を緩和するための第5の画線ユニット(E)における画線5aの削除と、画線5c及び画線5dの追加を行った状態を示す説明図。
【図59】第1の画線をレリーフ状の画線とすることで、模様Tが形成された状態を示す図。
【図60】海外の点位相変調を用いた真偽判別方法の例。
【図61】海外の線位相変調を用いた真偽判別方法の例。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態1〜9による偽造防止印刷物について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている技術の範疇であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
【0042】
本発明の実施の形態1〜9による偽造防止印刷物は、図2に示されたように、印刷物1に判別具2を重ね合わせることにより、容易に不可視画像を発現させて真偽性を判別することができるものである。判別具2は、透明性を有するフィルタに複数の直線が万線状に一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等である。印刷物1の印刷模様3を通常の可視条件において目視により観察すると、図1に示されたように、任意のモティーフから成る印刷模様3が視認される。そして、判別具2に設けられた一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等を所定の角度(例えば、45度とする)を持って印刷物1上に重ね合わせると、図3(a)又は図3(b)に示されたような不可視画像6が可視画像となって発現する。図3(a)又は図3(b)に示されるようにネガポジ状のどちらかに見えるのは、判別具2と印刷物1との間の相対的な位置によって生ずるものであり、本発明の効果の範囲内である。
【0043】
本発明は、意図的な位置関係から成る図形を有する複数の画線要素が、マトリックス状に配置された印刷物である。図4は、本発明の印刷物における図形の位置関係を2次元上で簡単に示されたものである。図4で示されたように、本発明の印刷物は、少なくとも二種類の画線ユニットで構成されている。画線ユニットEと画線ユニットFは、それぞれ第1の画線4を形成する領域と第2の画線又は第3の画線を形成する領域を備えている。第1の画線4は、後述にて説明する低画線部4aと高画線部4bとによって構成することも可能である。画線ユニットEにおける第2の画線5aと、画線ユニットFにおける第3の画線5bは、第1の画線4の長手方向に対し互いに異なる位置関係を有している。
【0044】
また、本発明は、図2に示されたように、印刷物1と判別具2を重ね合わせることによって、任意の不可視画像を可視画像として視認することを可能としている。判別具2は、透明性を有するフィルタに複数の直線が万線状に一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等である。万線フィルタ又はレンチキュラーレンズの中心線が、画線ユニットEに備わっている第2の画線5a又は画線ユニットFに備わっている第3の画線5bと合致することによって効果を奏するものである。この第2の画線5a及び第3の画線5bの形状に何ら制限はなく、位置関係及び印刷面からの高さが重要な要素となっている。
【0045】
図5は、第2の画線5aと第3の画線5bにおける形状の例が示されたものである。図5(a)は、第2の画線5aと第3の画線5bが円形となっている。線L1が、図5に示された判別具2と合致することによって、不可視画像を可視画像とさせることができる。これについては後述で詳細に説明する。図5(a)に示されたように第2の画線5aと第3の画線5bとが円形の場合、線L1の角度θは第1の画線4の長手方向に対し垂直から略斜め45度まで対応している。また、図5(b)に示されたように第2の画線5aと第3の画線5bとが楕円形の場合、線L1の角度は楕円形の長手方向と同じく垂直としている。あるいは、図5(c)に示されたように第2の画線5aと第3の画線5bとが楕円形であっても、楕円形の長手方向が斜めである場合は線L1の角度も同じ方向で斜めになっていることが望ましい。また、図5(d)に示されたように第2の画線5aと第3の画線5bとが円形で、しかも第1の画線4と一部が結合している場合は、第2の画線5aと第3の画線5bの円形の中心から外輪を結ぶ線上に線L1が適用される。なお、図5(a)〜(d)に示された寸法Sは、判別具2に備わった溝のピッチと等しい。
【0046】
また、第2の画線5aと第3の画線5bを任意の配置によりオンオフの関係とすることで不可視画像を形成するため、オンと成る画線が連続又はオフと成る画線が連続する場合は、画線濃度が濃淡として視認されるため、濃度が不均衡な状態として視認される。そこで、濃度の不均衡を緩和するため、オンと成る画線が連続して配置される場合は、いずれか一方の画線を削除し、オフとなる画線が連続して配置される場合には、第2の画線5a及び第3の画線5bの半分の画線面積率を有する第4の画線5c又は第5の画線5dを連続してオフと成る第2の画線5a及び第3の画線5bの中心の位置に形成する。このことで、印刷物における可視画像の濃度の不均衡を緩和する。以上の構成によって形成される画線は、4種類の画線ユニットで構成される。
【0047】
図6は、上述した4種類の画線ユニットの基本的な画線構成の一例を部分的に拡大した説明図である。本発明は、図6(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dの4つのユニットで構成される。画線ユニットA〜Dにおいて、画線5a〜dからなる画線群が所望の配置にて構成される。線L1〜4は、図2に示された判別具2に備わった溝の方向であり、図6では、例えば、45度とし、寸法Sは、判別具2に備わった溝のピッチと等しい。図6(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dが、印刷物の表面上において所望の規則をもって配置される。画線ユニットA、Bに対し画線ユニットC、Dは、主線4の長手方向において2倍の大きさである。図6(a)に示す画線ユニットAには画線5aが配置され、図6(b)に示す画線ユニットBには一対の画線から成る画線5bが配置され、図6(c)に示す画線ユニットCには画線5a、画線5c及び一対の画線から成る画線5bの内、一方の画線が配置され、図6(d)に示す画線ユニットDには一対の画線から成る画線5bの内、他方の画線、画線5c及び画線5aが配置される。図6(a)の画線ユニットAに配置された画線5aと、図6(b)の画線ユニットBに配置された一対の画線から成る画線5bとは、画線面積が同一又は略同一である。なお、一対の画線から成る画線5bは、画線5aが分割された画線である。また、図6(c)の画線ユニットCに配置された画線5cは、同じく画線ユニットCに配置された画線5a又は一対の画線から成る画線5bの半分又は略半分の画線面積である。さらに、画線5cは、画線ユニットCに配置された画線5aと一方の画線の画線5bの略中央に配置している。一方、図6(d)の画線ユニットDに配置された画線5dは、同じく画線ユニットDに配置された画線5a又は一対の画線から成る画線5bの半分又は略半分の画線面積である。さらに、画線5dは、画線ユニットDに配置された他方の画線の画線5bと画線5aの略中央に配置している。
【0048】
図6(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dにおける画線5a〜5dの位置関係は、主線4の長手方向において「2:3:4」のいずれかの比をもって配置することができる。まず、図6(a)に示す画線ユニットAは、画線5aが主線4の長手方向で「2:2」の比の位置、すなわち、画線ユニットAの中心に画線5aの中心が配置される。図6(b)に示す画線ユニットBは、一対の画線5bが主線4の長手方向で「4」の比の位置に一対の画線5bが配置され、すなわち、画線ユニットBの両側に一対の画線5bが配置される。また、図6(b)に示す画線ユニットBの中心から等間隔に対向するように一対の画線5bが配置されても良い。図6(c)に示す画線ユニットCは、画線5a、画線5c、一方の画線の画線5bが主線4の長手方向で「2:3:3」の比の位置、すなわち、左側から画線5aの中心が2の比をもって配置され、続いて画線5cの中心が3の比をもって配置され、続いて他方の画線の画線5bが3の比をもって配置される。図6(d)に示す画線ユニットDは、画線5a、画線5c、他方の画線の画線5bが主線4の長手方向で「3:3:2」の比の位置、すなわち、左端に他方の画線の画線5bが配置され、続いて画線5dの中心が3の比をもって配置され、続いて画線5aの中心が3の比をもって配置される。
【0049】
図6(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dにおける画線5a〜5dの形状は、図6に示された形状に限るものではなく、それ以外の形状であっても良い。ただし、寸法Sによって隔たれた線L1及び線L2、又は線L3及び線L4の線方向に伸長された図形であることが望ましい。例えば、図7(a)に示されるように、画線5a、5bと画線5c、5dとが相似の楕円形であったり、また、図7(b)に示されるように、画線5a、5bに対し、画線5c、5dが線L3及び線L4の線方向を軸に細めている楕円形であったり、さらに、図7(c)に示されるように、画線5a、5bと画線5c、5dとが、線L3及び線L4の線方向を軸に2:1の画線幅の比を有する平行四辺形であっても良い。すなわち、画線5a、5bに対し画線5c、5dが半分又は略半分の画線面積率を成すものであれば、画線5a〜5dの形状は何ら限定するものではない。
【0050】
図8は、図6(a)の画線ユニットAと、図6(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリクス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図である。なお、この図8では、不可視画像6が備わる部分が解るように太実線で簡易的に示したものである。さらに、画線ユニットAと画線ユニットBに備わった画線群の連続性を保つため、図6(c)に示された画線ユニットCと、図6(d)に示された画線ユニットDを、不可視画像6の輪郭となる少なくとも一部に配置する。図9は、所望の位置に配置するための条件に基づいて、印刷模様3上に画線ユニットCと画線ユニットDの位置が示された説明図である。まず、画線ユニットCが配置される場所は、画線ユニットAが左側で、画線ユニットBが右側で水平方向(図1に示された主線4の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットCが配置される。つまり、画線ユニットCが配置される場所は、不可視画像6の輪郭となる左側に配置される。一方、画線ユニットDが配置される場所は、画線ユニットBが左側で、画線ユニットAが右側で水平方向(図1に示された主線4の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットDが配置される。つまり、画線ユニットDが配置される場所は、不可視画像6の輪郭となる右側に配置される。
【0051】
(1)実施の形態1
本発明の実施の形態1による偽造防止印刷物について説明する。
図10に、本実施の形態1における印刷物に対する印刷模様の一画線の構成を部分的に拡大して示す。ここで、寸法Sは、図2に示された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等の判別具2に備わった溝のピッチと等しく、本実施の形態1では195μmというように1mm以下の大きさである。図10(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dが、印刷物の表面上において所望の規則をもって配置される。図10(a)及び(b)は四辺それぞれの長さが276μmの正方形で、図10(c)及び(d)は縦が276μm、横が552μmの長方形である。図10(a)の画線ユニットAに配置された画線5aと、図10(b)の画線ユニットBに配置された一対の画線5bとは、画線面積が同一又は略同一である。また、図10(c)の画線ユニットCに配置された画線5cは、同じく画線ユニットCに配置された画線5aの半分又は略半分の画線幅となっている。すなわち、画線5cは画線5aの半分又は略半分の画線面積である。さらに、画線5cは、画線ユニットCに配置された画線5aと一方の画線の画線5bの略中央に配置している。一方、図10(d)の画線ユニットDに配置された画線5dは、同じく画線ユニットDに配置された一対の画線5bの半分又は略半分の画線幅となっている。すなわち、画線5dは一対の画線5bの半分又は略半分の画線面積である。さらに、画線5dは、画線ユニットDに配置された他方の画線の画線5bと画線5aの略中央に配置している。
【0052】
図11は、図8の配置に基づいて、図10(a)の画線ユニットAと、図10(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリクス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置された状態を示したものである。この図11に示されたように、不可視画像を境に外側を画線5a、内側を一対の画線5bが占めていることがわかる。このような画線5aと画線5bとが存在することで通常の可視条件下では視認されず、画線5aのみにより不可視画像6(ネガ又はポジ)、画線5bのみにより不可視画像6(ポジ又はネガ)がそれぞれ形成されている。
【0053】
図11の画線構成ですでに不可視画像6を施されている状態になっているが、不可視画像6が施されている状態をよりわかり難くするため、図9の配置に基づいて、図10(c)に示された画線ユニットCと、図10(d)に示された画線ユニットDを、不可視画像6の輪郭となる少なくとも一部に配置する。まず、画線ユニットAが左側で、画線ユニットBが右側で水平方向(図1に示された主線4の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットCが配置される。一方、画線ユニットBが左側で、画線ユニットAが右側で水平方向(図1に示された主線4の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットDが配置される。
【0054】
図12は、画線ユニットCに備わった画線5cと、画線ユニットDに備わった画線5dとが配置された状態を示したものである。さらに、図13に示されたように、線画階調表現方法において階調要素を設けている主線4を加えると、斜め45度に配置されている画線5a、一対の画線5b、画線5c及び画線5dの長手方向の図柄的な連続性が、通常の目視の観察において客観的に理解できなくなり、そこに意図的な模様があることを認識できず完全に不可視の状態となって観察される。なお、主線4の画線幅は、一定でなくても良く、細い幅から太い幅に連続的に変化するか、又は太い幅から細い幅へと連続的に変化させることができる。この主線4は、判別具を重ねる前に、あらかじめ、不可視画像が視認されにくいためのカムフラージュ効果を有している。
【0055】
この状態で、図2に示されたように、例えば、レンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察することによって、印刷模様3に施されている不可視画像6を可視画像として発現させることができる。なお、本実施の形態1では、長さSが340μmで、印刷模様3がオフセット印刷によりコート紙に印刷されている。しかし、長さS、印刷物の基材、印刷方法、印刷材料、印刷装置等について何ら限定するものでない。
【0056】
通常の目視では、印刷模様3全体が任意の図案、すなわち、可視画像となって視認されるが、印刷模様3中に施されている不可視画像6は視認されない。判別具を印刷模様上の所定の位置に重ね合わせると、それまで視認できなかった不可視画像6が視認されるようになる。このような本実施の形態1による不可視画像6の視認効果の原理について、以下に説明する。
【0057】
不可視画像6が視認されていないとき、その可視画像を構成しているのは図13に示された主線4であり、それを補助する画線となっているのが図1に示された副線5である。さらに、副線5は不可視画像を構成するために、画線5a及び画線5bから成り、それぞれネガポジの関係にあるとともに面積が同一又は略同一であるため、画像(模様)として確認されることはない。
【0058】
印刷物上の所定の位置に、判別具であるレンチキュラーレンズにおける各レンズの中心線が画線5aの中心、すなわち図10における線L1に一致するように載置する。この場合、画線5aが拡大された状態となるため、画線5aにより構成されている画像(模様)が確認できることとなる。その際、可視画像を構成していた主線4は、拡大されている画線5aよりも面積が相対的に小さくなる。線L2と一致するように載置すると、画線5bが拡大された状態となるため、画線5aにより視認された不可視画像6のネガポジが反転して視認される。
【0059】
印刷模様3に、所定の角度、より具体的には、図10における線L1と各レンズの中心線とが一致するように、レンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を図14に示す。レンチキュラーレンズの中心線7が図10における線L1と一致するように図14(a)に示された位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線5aとなっている。レンチキュラーレンズの特性によって中心線7に位置する画線5aが膨張して見えるため、目視では図14(b)に示されたような図形の可視画像が発現する。また、レンチキュラーレンズの中心線7が図10における線L2と一致し、図15(a)に示された位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線5bとなっている。そのため、レンチキュラーレンズの特性によって中心線7に位置する画線5bが膨張して見えることから、目視では、図15(b)に示されたような図形の可視画像が発現する。ここで、画線5aと画線5bとはネガポジの関係にある。よって、上述の図3(a)又は図3(b)に示されたような不可視画像6がネガポジ状のどちらかに見える可視画像となって発現する。
【0060】
(2)実施の形態2
実施の形態1における印刷物1の画線5a及び一対の画線5bは、図10に示されたように、画線ユニットA又は画線ユニットBの対角線状になっている。しかし、本実施の形態2では、このような形状には限定されず、例えば、図16に示されたように、画線ユニットA又は画線ユニットBの対角方向に長方形又は平行四辺形を成す線状であっても良い。図16(a)及び(b)は、四辺それぞれの長さが276μmの正方形で、図16(c)及び(d)は縦が276μm、横が552μmの長方形である。図17は、図16(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dを用いて構成された印刷模様3であるが、このように、画線5a、一対の画線5b、画線5c及び画線5dが、点線状となっても良い。したがって、印刷模様3中の画線の少なくとも連続階調を奏する主線4を有し、画線5aと画線5bとが対を成してネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一又は略同一であって不可視画像6を構成し、かつ、画線5cと画線5dとは、画線5a又は一対の画線5bの半分又は略半分の画線幅であり、更に主線4が可視画像(デザイン:模様)として視認されるものであれば、長方形又は平行四辺形の長手方向の長さは何ら限定するものではない。なお、画線5cと画線5dの面積は、画線5aの半分又は略半分であっても良い。
【0061】
(3)実施の形態3
また、図18に示されたように、画線ユニットA又は画線ユニットBの対角方向に三角形状を成す画線形状であっても良い。図18(a)及び(b)は四辺それぞれの長さが276μmの正方形で、図18(c)及び(d)は縦が276μm、横が552μmの長方形である。図19は、図18(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dを用いて構成された印刷模様3であるが、このように、画線5a、一対の画線5b、画線5c及び画線5dが、三角形状の図形が連なる点線状となっても良い。したがって、印刷模様3中の画線の少なくとも連続階調を奏する主線4を有し、画線5aと一対の画線5bとが対を成してネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一又は略同一であって不可視画像6を構成し、かつ、画線5cと画線5dとは、画線5a又は一対の画線5bの半分又は略半分の画線面積であり、更に主線4が可視画像(デザイン:模様)として視認されるものであれば、画線の形状も何ら限定するものではない。
【0062】
(4)実施の形態4
上述された実施の形態1乃至3における画線ユニットは、正方形を基本としているが、寸法Sが判別具2の万線フィルタ又はレンチキュラーレンズのピッチと合致していれば画線ユニットの四辺の寸法は任意である。すなわち、図20(a)〜(c)に示されるように、画線5aの角度χがそれぞれ異なる場合、画線ユニットA及び画線ユニットBの縦の長さは、v=S・sec(χ)で算出でき、横の長さは、h=S・csc(χ)で算出できる。例えば、図20(a)は、角度χが45度であるため、レンチキュラーレンズのピッチの寸法Sが195μmの場合、縦V横hとも同じ276μmとなる。また、図20(b)は、角度χ’が35度であるため、レンチキュラーレンズのピッチの寸法Sが195μmの場合、縦v’が239μmで、横h’が341μmとなる。さらに、図20(c)は、角度χ”が60度であるため、レンチキュラーレンズのピッチの寸法Sが195μmの場合、縦v”が391μmで、横h”が226μmとなる。なお、画線ユニットC及び画線ユニットDについては、実施の形態1乃至3に倣って、横hが図20(a)〜(c)それぞれに倍の長さになる。このように、画線5aの角度を変えることにより、横万線状に配置される主線4の間隔を任意に調整することができる。
【0063】
なお、実施の形態1乃至4によれば、主線4を用いて自由度が高く意匠性を有する鮮明な可視画像を形成することができるため、有価証券等の印刷物においても有用である。また、印刷物1上に判別具2を重ね合わせることによって、画線5a及び一対の画線5bで形成される不可視画像6を容易に、かつ、鮮明に発現させることが可能である。さらに、本発明における印刷物を構成する各画線を同一色とした単色印刷のみでも十分な偽造防止効果が得られる上に、製版及び印刷方法等について何ら限定しないため、コストを低減させることができる。
【0064】
なお、実施の形態1乃至4によれば、所定のピッチで第1の方向に配列された第1の画線群である主線4と、主線4の非画線部に画線5a、画線5b、画線5c、画線5dからなる第2の画線群によって可視画像が形成される。第2の画線群は主線4に対して所定の角度をなして第2の方向に配列される。第2の画線群は、不可視画像のネガ及びポジの領域を形成し、不可視画像のネガ及びポジ領域のいずれか一方を形成する複数の第2の画線である画線5a、他方を形成する複数の第3の画線である画線5b及び濃度の不均衡を緩和する複数の第4の画線である画線5c及び画線5dから成る。第2の画線である画線5aの画線面積と第3の画像である画線5bの画線面積が同一又は略同一であり、第4の画線である画線5c及び画線5dは、第2の画線である画線5aの画線面積又は第3の画線面積である画線5bにおける半分又は略半分の画線面積から成る。第2の画線である画線5a、第3の画線である画線5b及び第4の画線である画線5c及び画線5dは、規則的に配列された複数の画線ユニット内に形成される。複数の画線ユニットは、画線ユニットAである第1の画線ユニット、画線ユニットBである第2の画線ユニット、画線ユニットCである第3の画線ユニット及び画線ユニットDである第4の画線ユニットから成り、画線ユニットAである第1の画線ユニット及び画線ユニットBである第2の画線ユニットは同一の大きさであり、画線ユニットCである第3の画線ユニット及び画線ユニットDである第4の画線ユニットは、画線ユニットAである第1の画線ユニット又は画線ユニットBである第2の画線ユニットに対して主線方向に2倍の大きさの画線ユニットから成る。さらに、詳細には、画線ユニットAは、画線5aが画線ユニットAの中心を通るように形成され、画線ユニットBは、画線5bが画線ユニットBの中心から等間隔で対向するように画線5aが分割された一対の画線が設けられて形成されている。画線ユニットCは、画線5a、画線5c及び画線5bの内、一対の一方の画線が順次形成され、画線ユニットDは、画線5bの内、一対の他方の画線、画線5d及び画線5aが順次形成される。画線ユニットCである第3の画線ユニット又は画線ユニットDである第4の画線ユニットは、不可視画像の輪郭を示す少なくとも一部に形成される。
【0065】
なお、実施の形態1の偽造防止印刷物では、画線5aである第2の画像、画線5bである第3の画線、画線5c及び画線5dである第4の画線は、第2の方向に隣接される各画線ユニットに跨って一本の線として形成されることを特徴とする。
【0066】
(5)実施の形態5
上述された実施の形態1乃至4は、四角形で構成された画線ユニットをマトリクス状に配置しているため、不可視画像を構成する画線は必然的に平行直万線状となるが、図27に示されるように主線4’が放射状に配置している場合、不可視画像を構成する画線5a’と画線5b’は必然的に同心円万線状となる。本発明の実施の形態5では、同心円万線状の画線構成にて不可視画像が施された偽造防止印刷物について説明する。
【0067】
図21に、本実施の形態5における印刷物に対する印刷模様の一画線の構成を部分的に拡大して示す。扇状の領域における法線方向の寸法Sは、図22に示された同心円万線フィルタ等の判別具2’に備わった溝のピッチと等しく、本実施の形態5では、195μmというように1mm以下の大きさである。図21(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dが、印刷物の表面上において所望の規則をもって配置される。図21(a)及び(b)は扇状(アーチ状)の領域における弧の長さは、後述する印刷模様3の大きさと、放射線状に配置される主線4の分割角度によって決定される。図21(c)及び(d)は扇状の領域における法線方向の寸法Sの2倍である。図21(a)の画線ユニットAに配置された画線5a’と、図21(b)の画線ユニットBに配置された画線5b’とは、画線幅が同一又は略同一である。また、図21(c)の画線ユニットCに配置された画線5c’は、同じく画線ユニットCに配置された画線5a’の半分又は略半分の画線幅となっている。さらに、画線5c’は、画線ユニットCに配置された画線5a’と画線5b’の略中央に配置している。一方、図21(d)の画線ユニットCに配置された画線5d’は、同じく画線ユニットDに配置された画線5b’の半分又は略半分の画線幅となっている。さらに、画線5d’は、画線ユニットDに配置された画線5b’と、隣接して配置される画線ユニットA又は画線ユニットCの画線5a’の略中央に配置している。
【0068】
図23は、図21(a)の画線ユニットAと、図21(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3’中に、マトリクス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図である。なお、この図23では、不可視画像6’が備わる部分が解るように太実線で簡易的に示したものである。図24は、図23の配置に基づいて画線5a’と画線5b’とが配置された状態を示したものである。不可視画像を境に外側を画線5a’、内側を画線5’が占めていることがわかる。このような画線5a’と画線5b’とが存在することで通常の可視条件下では視認されず、画線5a’のみにより不可視画像6’(ネガ又はポジ)、画線5b’のみにより不可視画像6’(ポジ又はネガ)がそれぞれ形成されている。
【0069】
図24の画線構成ですでに不可視画像6’を施されている状態になっているが、不可視画像6’が施されている状態をよりわかり難くさせるため、図21(c)に示された画線ユニットCと、図21(d)に示された画線ユニットDを、所望の位置に配置する。まず、画線ユニットCが配置される場所は、画線ユニットAが外側で、画線ユニットBが内側で放射線方向(図27に示された主線4’の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットCが配置される。一方、画線ユニットDが配置される場所は、画線ユニットBが外側で、画線ユニットAが内側で放射線方向(図27に示された主線4’の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットDが配置される。図25は、所望の位置に配置するための条件に基づいて、印刷模様3’上に画線ユニットCと画線ユニットDの位置が示された説明図である。
【0070】
図26は、図25の配置に基づいて、画線ユニットCに備わった画線5c’と、画線ユニットDに備わった画線5d’とが配置された状態を示したものである。さらに、図27に示されたように、線画階調表現方法において階調要素を設けている中心から放射状に形成される主線4’を加えると、同心円状に配置されている画線5a’、画線5b’、画線5c’及び画線5d’の長手方向の図柄的な連続性が、通常の目視の観察において客観的に理解できなくなり、そこに意図的な模様があることを認識できず完全に不可視の状態となって観察される。
【0071】
この状態で、図22に示されたように、例えば、同心円万線フィルタから成る判別具2’を印刷物1’上の印刷模様3’に重ね合わせ、正面から目視で観察することによって、印刷模様3’に施されている不可視画像6’を可視画像として発現させることができる。なお、本実施の形態5では、長さSが195μmで、印刷模様3’がオフセット印刷によりコート紙に印刷されている。しかし、長さS、印刷物の基材、印刷方法、印刷材料、印刷装置等について何ら限定するものでない。
【0072】
通常の目視では、印刷模様3’全体が任意の図案、すなわち可視画像となって視認されるが、印刷模様3’中に施されている不可視画像6’は視認されない。判別具を印刷模様上の所定の位置に重ね合わせると、それまで視認できなかった不可視画像6’が視認されるようになる。このような本実施の形態5による不可視画像6の視認効果の原理について、以下に説明する。
【0073】
不可視画像6’が視認されていないとき、その可視画像を構成しているのは図27に示された主線4’であり、それを補助する画線となっているのが図1に示された副線5である。さらに、副線5’は不可視画像を構成するために、画線5a’及び画線5b’から成り、それぞれネガポジの関係にあるとともに面積が同一又は略同一であるため、画像(模様)として確認されることはない。
【0074】
印刷物上の所定の位置に、判別具である同心円万線フィルタにおける各レンズの中心線が画線5a’の中心、すなわち図21における線L1’に一致するように載置する。この場合、画線5a’が拡大された状態となるため、画線5a’により構成されている画像(模様)が確認できることとなる。その際、可視画像を構成していた主線4’は、拡大されている画線5a’よりも面積が相対的に小さくなる。線L2’と一致するように載置すると、画線5b’が拡大された状態となるため、画線5a’により視認された不可視画像6’のネガポジが反転して視認される。
【0075】
より具体的には、図21における線L1と各レンズの中心線とが一致するように、同心円万線フィルタから成る判別具2’を印刷物1上の印刷模様3’に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を図28に示す。同心円万線フィルタの中心線7が、図21における線L1’と一致する位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線5a’となっている。同心円万線フィルタの特性によって中心線7に位置する画線5a’が膨張して見えるため、目視では、図28に示されたような図形の可視画像が発現する。また、同心円万線フィルタの中心線7が図21における線L2’と一致し、図29に示された位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線5b’となっている。同心円万線フィルタの特性によって中心線7に位置する画線5b’が膨張して見えるため、目視では、図29に示されたような図形の可視画像が発現する。ここで、画線5a’と画線5b’とはネガポジの関係にある。
【0076】
中心から放射状に形成された第1の画線群である主線4’と、主線4’の非画線部に画線5a’、画線5b’、画線5c’、画線5d’から成る第2の画線群によって可視画像が形成される。第2の画線群は中心から所定のピッチの同心円形状に配列される。第2の画線群は、不可視画像のネガ及びポジの領域を形成し、不可視画像のネガ及びポジ領域のいずれか一方を形成する複数の第2の画線である画線5a’、他方を形成する複数の第3の画線である画線5b’及び濃度の不均衡を緩和する複数の第4の画線である画線5c’及び画線5d’から成る。第2の画線である画線5a’の画線面積と第3の画像である画線5b’の画線面積が同一又は略同一であり、第4の画線である画線5c’及び画線5d’は、第2の画線である画線5a’の画線面積又は第3の画線の画線面積である画線5b’における半分又は略半分の画線面積から成る。第2の画線である画線5a’、第3の画線である画線5b’及び第4の画線である画線5c’及び画線5d’は、規則的に配列された複数のアーチ形の画線ユニット内に形成される。複数のアーチ形の画線ユニットは、画線ユニットAである第1の画線ユニット、画線ユニットBである第2の画線ユニット、画線ユニットCである第3の画線ユニット及び画線ユニットDである第4の画線ユニットから成り、画線ユニットAである第1の画線ユニット及び画線ユニットBである第2の画線ユニットは同一の大きさである。画線ユニットCである第3の画線ユニット及び画線ユニットDである第4の画線ユニットは、画線ユニットAである第1の画線ユニット及び画線ユニットBである第2の画線ユニットよりも大きく、さらに、画線ユニットAである第1の画線ユニット及び画線ユニットBである第2の画線ユニットに対して同心円方向の中心方向に伸びた形状の画線ユニットから成る。画線ユニットAは、画線5a’が同心円方向に所定の位置で形成され、画線ユニットBは、画線5b’が同心円方向に画線5a’が形成された位置に対して半ピッチ又は略半ピッチのずれを有する位置に配置され、画線ユニットCは、画線5a’、画線5c’及び画線5b’が順次形成され、画線ユニットDは、画線5b’及び画線5d’が順次形成される。画線ユニットCである第3の画線ユニット又は画線ユニットDである第4の画線ユニットは、不可視画像の輪郭を示す少なくとも一部に形成される。
【0077】
上述された実施の形態1乃至5の偽造防止印刷物の印刷方式は限定されることはないが、盛りを有する画線が形成可能な印刷方式で印刷することで印刷物の画線自体に指感性を有することができる。この盛りを有する画線は、10〜100μm程度の画線高さを有することが好ましく、印刷方式については、凹版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷が好ましい。最良な印刷方式としては、凹版印刷方式である。よって、銀行券、切手、収入印紙等の諸証券類の肖像、風景画等に適用可能である。なお、本明細書に記載されているユニットについては、実際の印刷物に形成されるものではなく、画線5a、画線5b、画線5c、画線5dの位置関係を説明するためのものである。
【0078】
次に、これまでに述べた実施の形態に、判別具を用いることなく印刷物の観察角度を90°とは異なる任意の角度とすることで、判別具2を用いることなく視認することができる不可視画像を有する印刷物について説明する。図30は、本発明の特徴である第1不可視画像8と第2不可視画像6を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図である。図30に示されたように、印刷物1上に印刷模様3が形成されている。この印刷模様3は、等間隔で配置された画線幅wの等しい複数の主線4と、主線4の非画線部に形成する画線5a〜5dとで構成されている。さらに、印刷物1における印刷面からの盛り上がりの高さの異なる低画線部4aと高画線部4bによって構成されている。より具体的に説明すると、図31(a)の平面図のように、印刷物1を真上から観察した場合、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さは認識されないが、実際には図31(b)の正面図のように、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さが異なっている。すなわち、背景模様を構成する低画線部4aに対し、高画線部4bで構成する領域を第1の不可視画像8として施すことができる。
【0079】
図32は、図30に示された印刷物1の側面図である。図32に示されたように、観察者は基材に対して90度と異なる任意の角度から成る視角15をもって観察した際、低画線部4aと高画線部4bの高さによって見え方の違いが現れる。低画線部4aの視認長さ3aよりも高画線部4bの視認長さ3bの方が長く見える。すなわち、図33の斜視図に示されたように、印刷模様3において、低画線部4aの視認長さ3aよりも高画線部4bの視認長さ3bの方が長く見えることから、低画線部4aより高画線部4bの方が高濃度で観察される。これにより、高画線部4bで構成された領域から成る第1不可視画像8が、斜めから観察することにより該領域が可視画像となって出現している。なお、印刷模様3における画線ピッチ並びに低画線部4aと高画線部4bの高さに何ら制限はないが、低画線部4aと高画線部4bの画線幅wは200〜600μmで画線ピッチは300〜800μm、低画線部4aの盛り高さは10〜30μmで高画線部4bの盛り高さは20〜60μm程度が望ましい。低画線部4aの盛りの高さと、高画線部4bの盛り高さの差は特に限定されることはないが、10〜50μm程度が好ましい。
【0080】
また、さらに、図34に示されたように、印刷物1に判別具2を重ね合わせることによっても、容易に不可視画像を発現させて真偽性を判別することができる。印刷物1の印刷模様3を通常の可視条件において目視により観察すると、何ら変化のない画線模様となって視認される。そして、判別具2に設けられた一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等が所定の角度を持って印刷物1上に重ね合わさると、画線5a及び画線5bの配置によって施された第2不可視画像6が、ネガ状又はポジ状の可視画像となって発現する。また、画線5a及び画線5bの配置によって可視条件において目視により観察した場合に、濃度が不均衡となる。この場合、図58に示すように画線の削除及び追加が行われる。画線の削除については、図58(a)に示すように、画線ユニットFの右側に画線ユニットEが配置された場合、画線5bと画線5aが隣接して配置されるため、濃度が濃く視認性される。そのため、図58(b)に示すように、画線ユニットEにおける画線5aが削除される(画線5bを削除しても良い。)。また、図58(c)に示すように、画線ユニットEの画線5aが削除されたことから、画線ユニットEには、画線5a及び画線5bが存在しないため、濃度が淡く視認される。そのため、画線ユニットEと隣接する画線ユニットFにおける画線bと画線ユニットE´における画線5aの中間の位置に、画線5a又は画線5bにおける半分又は略半分の画線面積率を有する画線5cの追加を行う。また、画線ユニットE´の右側に画線ユニットF´が配置された場合についても、画線ユニットの隣接部分に画線が存在しないため、濃度が淡く視認される。そのため、画線ユニットE´における画線5aと画線ユニットF´における画線5bの中間の位置に、画線5a又は画線5bにおける半分又は略半分の画線面積率を有する画線5dの追加を行う。このことで、印刷物全体の濃度が不均衡となることを緩和することができる。
【0081】
図35は、前述の濃度の不均衡を緩和する処理を行った状態の基本的な画線構成を部分的に拡大した説明図である。本発明は、図35(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dの4つのユニットで構成される。画線ユニットA〜Dにおいて、画線5a〜dから成る画線群が所望の配置にて構成される。線L1〜4は、図34に示された判別具2に備わった溝の方向であり、図35では、例えば、45度とし、寸法Sは、判別具2に備わった溝のピッチと等しい。図35(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dが、印刷物の表面上において所望の規則をもって配置される。画線ユニットA、Bに対し画線ユニットC、Dは、画線4の長手方向において2倍の大きさである。図35(a)に示す画線ユニットAには、画線5aが配置され、図35(b)に示す画線ユニットBには、一対の画線から成る画線5bが配置され、図35(c)に示す画線ユニットCには、画線5a、画線5c及び一対の画線から成る画線5bの内、一方の画線が配置され、図35(d)に示す画線ユニットDには、一対の画線から成る画線5bの内、他方の画線、画線5d及び画線5aが配置される。図35(a)の画線ユニットAに配置された画線5aと、図35(b)の画線ユニットBに配置された一対の画線から成る画線5bとは、画線面積が同一又は略同一である。なお、一対の画線から成る画線5bは、画線5aが分割された画線である。また、図35(c)の画線ユニットCに配置された画線5cは、同じく画線ユニットCに配置された画線5a又は一対の画線から成る画線5bの半分又は略半分の画線面積である。さらに、画線5cは、画線ユニットCに配置された画線5aと一方の画線の画線5bの略中央に配置している。一方、図35(d)の画線ユニットDに配置された画線5dは、同じく画線ユニットDに配置された画線5a又は一対の画線から成る画線5bの半分又は略半分の画線面積である。さらに、画線5dは、画線ユニットDに配置された他方の画線の画線5bと画線5aの略中央に配置している。
【0082】
図35(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dにおける画線5a〜5dの位置関係は、画線4の長手方向において「2:3:4」のいずれかの比をもって配置することができる。まず、図35(a)に示す画線ユニットAは、画線5aが画線4の長手方向で「2:2」の比の位置、すなわち、画線ユニットAの中心に画線5aの中心が配置される。図35(b)に示す画線ユニットBは、一対の画線5bが画線4の長手方向で「4」の比の位置に一対の画線5bが配置され、すなわち、画線ユニットBの両側に一対の画線5bが配置される。また、図35(b)に示す画線ユニットBの中心から等間隔に対向するように一対の画線5bが配置されても良い。図35(c)に示す画線ユニットCは、画線5a、画線5c、一方の画線の画線5bが画線4の長手方向で「2:3:3」の比の位置、すなわち、左側から画線5aの中心が2の比をもって配置され、続いて画線5cの中心が3の比をもって配置され、さらに続いて他方の画線の画線5bが3の比をもって配置される。図35(d)に示す画線ユニットDは、画線5a、画線5c、他方の画線の画線5bが画線4の長手方向で「3:3:2」の比の位置、すなわち、左端に他方の画線の画線5bが配置され、続いて画線5dの中心が3の比をもって配置され、さらに続いて画線5aの中心が3の比をもって配置される。
【0083】
図35(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dにおける画線5a〜5dの形状は、図35に示された形状に限るものではなく、それ以外の形状であっても良い。例えば、画線5a、5bと画線5c、5dとが相似の楕円形であったり、また、画線5a、5bに対し、画線5c、5dが、線L3及び線L4の線方向を軸に細めている楕円形であったり、さらに、画線5a、5bと画線5c、5dとが、線L3及び線L4の線方向を軸に2:1の画線幅の比を有する平行四辺形であっても良い。すなわち、画線5a、5bに対し画線5c、5dが半分又は略半分の画線面積率を成ものであれば、画線5a〜5dの形状は何ら限定するものではない。ただし、図35に代表されるように、寸法Sによって隔たれた線L1及び線L2又は線L3及び線L4の線方向に伸長された図形であることが望ましい。
【0084】
図36は、図35(a)の画線ユニットAと、図35(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリックス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図である。なお、この図36では、第2不可視画像6が備わる部分が解るように太実線で簡易的に示したものである。さらに、画線ユニットAと画線ユニットBに備わった画線群の連続性を保つため、図35(c)に示された画線ユニットCと、図35(d)に示された画線ユニットDを、第2不可視画像6の輪郭となる少なくとも一部に配置する。この画線ユニットCが配置される場所は、画線ユニットAが左側で、画線ユニットBが右側で水平方向(全ユニットが配置された際の画線4の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットCが配置される。つまり、画線ユニットCが配置される場所は、第2不可視画像6の輪郭となる左側に配置される。一方、画線ユニットDが配置される場所は、画線ユニットBが左側で、画線ユニットAが右側で水平方向(図1に示された画線4の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットDが配置される。つまり、画線ユニットDが配置される場所は、第2不可視画像6の輪郭となる右側に配置される。
【0085】
この状態で、図34に示されたように、例えば、レンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察することによって、印刷模様3に施されている第2不可視画像6を可視画像として発現させることができる。
【0086】
通常の目視では、印刷模様3全体が任意の図案、すなわち可視画像となって視認されるが、印刷模様3中に施されている第2不可視画像6は視認されない。判別具を印刷模様上の所定の位置に重ね合わせると、それまで視認できなかった第2不可視画像6が視認されるようになる。このような本実施の形態1による第2不可視画像6の視認効果の原理について、以下に説明する。
【0087】
印刷模様3に、所定の角度、より具体的には、図35における線L1と各レンズの中心線とが一致するように、レンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を図37及び図38に示す。レンチキュラーレンズの中心線7が図35における線L1と一致するように図37(a)に示された位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線5aとなっている。レンチキュラーレンズの特性によって中心線7に位置する画線5aが膨張して見えるため、目視では図37(b)に示されたような図形の可視画像が発現する。また、レンチキュラーレンズの中心線7が図35における線L2と一致し、図38(a)に示された位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線5bとなっている。レンチキュラーレンズの特性によって中心線7に位置する画線5bが膨張して見えるため、目視では図38(b)に示されたような図形の可視画像が発現する。ここで、画線5aと画線5bとはネガポジの関係にある。よって、第2不可視画像6がネガポジ状のどちらかに見える可視画像となって発現する。
【0088】
また、例えば、図30乃至図35における第2不可視画像6を奏する画線が、図53の斜視図に示された第1の画線4に接する画線4’のような形状であっても良い。図30に示された画線5a〜5dが着色された画線であるのに対し、図53では、画線5a〜5dに相当する部分が画線4’における無着色の白空き部分となっている。すなわち、図34の、判別具2によって第2不可視画像6を可視化するための基本的な画線構成を部分的に拡大した説明図に示されたように、図54(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dの4つのユニットで構成される。画線ユニットA〜Dにおいて、画線4に接する画線4’における白空き部5a’〜d’から成る画線群が、所望の配置にて構成される。線L1〜4は、図34に示された判別具2に備わった溝の方向であり、図54では、例えば、45度とし、寸法Sは、判別具2に備わった溝のピッチと等しい。図54(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dが、印刷物の表面上において所望の規則をもって配置される。画線ユニットA、Bに対し画線ユニットC、Dは、画線4の長手方向において2倍の大きさである。図54(a)に示す画線ユニットAには、白空き部5a’が配置され、図54(b)に示す画線ユニットBには、一対の白空き部5b’が配置され、図54(c)に示す画線ユニットCには、白空き部5a’、白空き部5c’及び一対の白空き部5b’の内、一方の画線が配置され、図54(d)に示す画線ユニットDには、一対の白空き部5b’の内、他方の白空き部、白空き部5d’及び白空き部5a’が配置される。図54(a)の画線ユニットAに配置された白空き部5a’と、図54(b)の画線ユニットBに配置された一対の白空き部5b’とは、空間面積が同一又は略同一である。なお、一対の白空き部5b’は、白空き部5a’が分割された空間である。また、図54(c)の画線ユニットCに配置された白空き部5c’は、同じく画線ユニットCに配置された白空き部5a’又は一対の白空き部5b’の半分又は略半分の空間面積である。さらに、白空き部5c’は、画線ユニットCに配置された白空き部5a’と一方の白空き部5b’の略中央に配置している。一方、図54(d)の画線ユニットDに配置された白空き部5d’は、同じく画線ユニットDに配置された白空き部5a’又は一対の白空き部5b’の半分又は略半分の空間面積である。さらに、白空き部5d’は、画線ユニットDに配置された他方の白空き部5b’と白空き部5a’の略中央に配置している。
【0089】
図54(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dにおける白空き部5a’〜5d’の位置関係は、画線4の長手方向において「2:3:4」のいずれかの比をもって配置することができる。まず、図54(a)に示す画線ユニットAは、白空き部5a’が画線4の長手方向で「2:2」の比の位置、すなわち、画線ユニットAの中心に白空き部5a’の中心が配置される。図54(b)に示す画線ユニットBは、一対の白空き部5b’が画線4の長手方向で「4」の比の位置に一対の白空き部5b’が配置され、すなわち、画線ユニットBの両側に一対の白空き部5b’が配置される。また、図54(b)に示す画線ユニットBの中心から等間隔に対向するように一対の白空き部5b’が配置されても良い。図54(c)に示す画線ユニットCは、白空き部5a’、白空き部5c’、一方の白空き部5b’が画線4の長手方向で「2:3:3」の比の位置、すなわち、左側から白空き部5a’の中心が2の比をもって配置され、続いて白空き部5c’の中心が3の比をもって配置され、さらに続いて他方の白空き部5b’が3の比をもって配置される。図54(d)に示す画線ユニットDは、白空き部5a’、白空き部5c’、他方の画線の白空き部5b’が画線4の長手方向で「3:3:2」の比の位置、すなわち、左端に他方の白空き部5b’が配置され、続いて白空き部5d’の中心が3の比をもって配置され、さらに続いて白空き部5a’の中心が3の比をもって配置される。
【0090】
図54(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dにおける白空き部5a’〜5d’の形状は、図54に示された形状に限るものではなく、それ以外の形状であっても良い。例えば、白空き部5a’、5b’と白空き部5c’、5d’とが相似の楕円形であったり、また、白空き部5a’、5b’に対し、白空き部5c’、5d’が、線L3及び線L4の線方向を軸に細めている楕円形であったり、さらに、白空き部5a’、5b’と白空き部5c’、5d’とが、線L3及び線L4の線方向を軸に2:1の画線幅の比を有する平行四辺形であっても良い。すなわち、白空き部5a’、5b’に対し白空き部5c’、5d’が半分又は略半分の画線面積率を成すものであれば、白空き部5a’〜5d’の形状は何ら限定するものではない。ただし、図54に代表されるように、寸法Sによって隔たれた線L1及び線L2、又は線L3及び線L4の線方向に伸長された図形であることが望ましい。
【0091】
さらに、図54に示された画線ユニットA〜Dを、図55に示されたように、印刷物上にマトリックス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置されることによって、図55に示されたような印刷模様3となる。また、図55は、画線4に低画線部4aと高画線部4bが設けられている状態を示した説明図である。図55(a)の平面図ように、印刷物1を真上から観察した場合、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さは認識されないが、実際には図55(b)の正面図のように、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さが異なっている。すなわち、背景模様を構成する低画線部4aに対し、高画線部4bで構成する領域を第1不可視画像8として施すことができる。よって、高画線部4bで構成された領域から成る第1不可視画像8が、斜めから観察することにより該領域が可視画像となって出現される。
【0092】
さらに、印刷模様3に、所定の角度、より具体的には図54における線L1と各レンズの中心線とが一致するように、レンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を図56及び図57に示す。レンチキュラーレンズの中心線7が、図54における線L1と一致するように図56(a)に示された位置にあるとき、目視では図56(b)に示されたような図形の可視画像が発現する。また、レンチキュラーレンズの中心線7が図54における線L2と一致し、図57(a)に示された位置にあるとき、目視では図57(b)に示されたような図形の可視画像が発現する。ここで、白空き部5a’と白空き部5b’とはネガポジの関係にある。よって、第2不可視画像6がネガポジ状のどちらかに見える可視画像となって発現する。
【0093】
なお、本発明を実施するための最良の形態では、寸法Sが340μmとし、印刷模様3がオフセット印刷によりコート紙に印刷されている。しかし、寸法S、印刷物1に用いられる印刷媒体は上質紙、コート紙等、何ら制限するものはなく、印刷模様3を印刷媒体に転写するための製版及び印刷方式も凹版印刷、スクリーン印刷等、素材を印刷面から盛り上がらせることが可能ならば何ら限定するものではない。
【0094】
以下、本発明の実施の形態6〜9による偽造防止印刷物について、図面を用いて説明する。しかし、本発明は、以下に述べる実施の形態6〜9に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0095】
(6)実施の形態6
本実施の形態1は、上述された画線4に、さらなるデザイン効果をもたらしたものである。図39に示されたように、基本的な画線構成は、図31と同様であるが、画線4の正面から観察した際に、任意の形状を成す模様9が構成される部分の単位長さ当たりの画線面積率を変化させるように、画線4の画線幅を細く設定することにより、任意の形状を成す模様9を可視画像として視認することができる。また、図59に示すように、画線4をレリーフ画線とすることで任意の形状を成す模様を形成することも可能である。
【0096】
さらに、画線4は、印刷物1における印刷面からの盛り上がりの高さの異なる低画線部4aと高画線部4bによって第1不可視画像8を構成している。観察者は図32に示されたような基材に対して90度と異なる任意の角度から成る視角15をもって観察した際、低画線部4aの視認長さ3aよりも高画線部4bの視認長さ3bの方が長く見える。すなわち、図40の斜視図に示されたように、印刷模様3において、低画線部4aの視認長さ3aよりも高画線部4bの視認長さ3bの方が長く見えることから、低画線部4aより高画線部4bの方が高濃度で観察される。これにより、高画線部4bで構成された領域から成る第1不可視画像8が、斜めから観察することにより該領域が可視画像となって出現している。ただし、画線4の画線幅の変化が大きくなるにしたがって第1不可視画像8の視認性が悪くなるため、適度な加減が必要である。
【0097】
(7)実施の形態7
上述の実施の形態6における画線ユニットは正方形を基本としているが、寸法Sが判別具2の万線フィルタ又はレンチキュラーレンズのピッチと合致していれば画線ユニットの四辺の寸法は任意である。すなわち、図41(a)〜(c)に示されるように、画線5aの角度χがそれぞれ異なる場合、画線ユニットの縦の長さは、v=S・sec(χ)で算出でき、横の長さは、h=S・csc(χ)で算出することができる。例えば、図41(a)は、角度χが45度であるため、レンチキュラーレンズのピッチの寸法Sが195μmの場合、縦V及び横hともに同じ276μmとなる。また、図41(b)は、角度χ’が35度であるため、レンチキュラーレンズのピッチの寸法Sが195μmの場合、縦v’が239μmで、横h’が341μmとなる。さらに、図41(c)は、角度χ”が60度であるため、レンチキュラーレンズのピッチの寸法Sが195μmの場合、縦v”が391μmで、横h”が226μmとなる。なお、図35(c、d)に示す画線ユニットC及び画線ユニットDについては、実施の形態6乃至実施の形態9に倣って、横hが図41(a)〜(c)それぞれに倍の長さになる。このように、画線5aの角度を変えることにより、画線ユニットにおける縦の長さ、すなわち図30に示された印刷模様3における横万線状の配置される画線4の間隔Sを任意に調整することができる。これにより、画線4の画線幅wも適時調整することが可能であり、さらに、図33の斜視図に示されたような、印刷模様3において、低画線部4aと高画線部4bの視認長さの関係も適時調整することができることから、第1不可視画像8の最適な視認性を奏することを可能とすることができる。
【0098】
なお、実施の形態6又は7によれば、画線4を用いて自由度が高く意匠性を有する鮮明な可視画像を形成することができるため、有価証券等の印刷物においても有用である。また、画線4における高画線部4bで構成された領域から成る第1不可視画像8が、斜めから観察することにより該領域が可視画像となって出現させることが可能である。さらに、印刷物1上に判別具2を重ね合わせることによって、画線5a及び一対の画線5bで形成される第2不可視画像6を容易に、かつ、鮮明に発現させることが可能である。
【0099】
(8)実施の形態8
上述の実施の形態6及び7は、画線4において低画線部4aと高画線部4bといった2段階の高さを設けているが、画線4の高さ段階については2段階に限らず、無数の連続的な高さ段階を備えても良い。図44は、本実施の形態8の特徴である第1不可視画像8と第2不可視画像6を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図である。図44に示されたように、印刷物1上に印刷模様3が形成されている。この印刷模様3は、等間隔で配置された画線幅wの等しい複数の画線4と、画線幅が2:1の比の関係を成す画線5a〜5dとで構成されている。さらに、印刷物1における印刷面からの盛り上がりの高さの異なる低画線部4aと第1高画線部4b、第2高画線部4cによって構成されている。この第1高画線部4b、第2高画線部4cの盛り上がりの高さは、第1高画線部4b<第2高画線部4cの関係にある。
【0100】
図45は、印刷物1を真上から観察した場合の平面図である。画線4は低画線部4aと段階的に高さの異なる第1高画線部4b〜第5高画線部4fが施されている。背景模様を構成する低画線部4aに対し、高さの異なる第1高画線部4b〜第5高画線部4fで構成する領域を第1不可視画像8として施すことができる。この第1高画線部4b〜第5高画線部4fの盛り上がりの高さは、第1高画線部4b<第2高画線部4c<第3高画線部4d<第4高画線部4e<第5高画線部4fの関係にある。
【0101】
印刷物1を、観察者が任意の角度から成る視角15をもって観察した際、上述の図32で示されたように、低画線部4aと高画線部4bの高さによって見え方の違いが現れる。ただし、本実施の形態8の印刷物1では、低画線部4aと高さの異なる第1高画線部4b〜第5高画線部4fで構成しているため、図32で示された視認長さ3bは、第1高画線部4bよりも第5高画線部4fの方が長く見える。すなわち、図46の斜視図に示されたように、印刷模様3において、低画線部4aの視認長さ3aよりも高画線部4bの視認長さ3bの方が長く見えることから、低画線部4aより高画線部4bの方が高濃度で観察される。これにより、第1高画線部4b〜第5高画線部4fで構成された領域において斜めから観察することにより濃淡差を有する可視画像となって出現し、一部が顕像化した第1不可視画像8となっている。さらに、観察者が低い角度の視角15を持って観察した場合、図47に示されたように、第1高画線部4b〜第5高画線部4fで構成された領域がすべて顕像化された第1不可視画像8となる。
【0102】
なお、本実施の形態8では、第1高画線部4b〜第5高画線部4fを5段階としているが、高さ段階に何ら制限はなく、高さ段階数を増やすことによって、第1不可視画像8を連続階調画像的に表現することもできる。
【0103】
(9)実施の形態9
実施の形態6〜8では、第1の不可視画像と第2の不可視画像とが、それぞれ画線4と画線5a〜5dとに分かれて作用しているが、第1の不可視画像と第2の不可視画像とを画線4に含ませても良い。図48は、第1不可視画像8と第2不可視画像6を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図である。図48に示されたように、印刷物1上に印刷模様3が形成されている。この印刷模様3は、等間隔で配置された画線幅w1の等しい複数の画線4で構成されている。この画線4は、第1の不可視画像が備わった部位として、印刷物1における印刷面からの盛り上がりの高さの異なる低画線部4aと高画線部4bによって構成され、第2の不可視画像が備わった部位として、画線4の長手方向と直角に配置した画線幅w2を成す画線部10a及び10bが画線4に接して構成されている。
【0104】
図49は、判別具2によって第2不可視画像6を可視化するための基本的な画線構成を部分的に拡大した説明図である。本発明は、図49(a)及び図49(b)に示された画線ユニットE及び画線ユニットFの2つのユニットで構成される。画線ユニットE及び画線ユニットFにおいて、画線部10a及び画線部10bが所望の配置にて構成される。線L1及び線L2は、図34に示された判別具2に備わった溝の方向であり、図49では略90度とし、画線ユニットE及び画線ユニットFの全長は、判別具2に備わった溝のピッチと等しい。図49(a)及び図49(b)に示された画線ユニットE及び画線ユニットFが、印刷物の表面上において所望の規則をもって配置される。図49(a)及び図49(b)に示された画線ユニットE及び画線ユニットFにおける画線部10a及び画線部10bの形状は、図49に示された形状に限るものではなく、それ以外の形状であっても良い。
【0105】
図50は、図49(a)の画線ユニットEと、図49(b)の画線ユニットFを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリックス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図である。なお、この図50では、第2不可視画像6が備わる部分が分かるように太実線で簡易的に示したものである。
【0106】
図51は、画線4に低画線部4aと高画線部4bが設けられている状態を示した説明図である。図51(a)の平面図ように、印刷物1を真上から観察した場合、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さは認識されないが、実際には図51(b)の正面図のように、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さが異なっている。すなわち、背景模様を構成する低画線部4aに対し、高画線部4bで構成する領域を第1不可視画像8として施すことができる。よって、実施の形態6〜8と同様に、高画線部4bで構成された領域から成る第1不可視画像8が、斜めから観察することにより該領域が可視画像となって出現される。
【0107】
さらに、印刷模様3に、線L1と各レンズの中心線とが一致するように、レンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を図52に示す。レンチキュラーレンズの中心線7が、図49(a)における線L1と一致するように図52(a)に示された位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線部10aとなっている。レンチキュラーレンズの特性によって中心線7に位置する画線部10aが膨張して見えるため、目視では、図52(b)に示されたようなポジ状の図形の可視画像が発現する。また、レンチキュラーレンズの中心線7が、図49(b)における線L2と一致すると、目視ではネガ状の図形の可視画像が発現する。すなわち、第2不可視画像6がネガポジ状のどちらかに見える可視画像となって発現する。
【符号の説明】
【0108】
1 印刷物
2 判別具
3 印刷模様
4 主線
4’ 白空き部を形成する画線
4a 低画線部
4b 高画線部
4c 高画線部
4d 高画線部
4e 高画線部
4f 高画線部
5 副線
5a 画線
5b 画線
5c 画線
5d 画線
5a’ 白空き部
5b’ 白空き部
5c’ 白空き部
5d’ 白空き部
6 不可視画像
7 中心線
8 不可視画像
9 模様
10a 画線部
10b 画線部
11 印刷物
12 印刷模様
13 画線
13 画線群
14 画線群
15 視角
A 画線ユニット
B 画線ユニット
C 画線ユニット
D 画線ユニット
E 画線ユニット
E´ 画線ユニット
F 画線ユニット
F´ 画線ユニット
L1 線
L2 線
L3 線
L4 線
S 寸法
w 画線幅
w1 画線幅
w2 画線幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等の偽造防止又は複製防止が必要とされる偽造防止印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷物上で図柄の連続階調の表現は、印刷物上の印刷色を点及び線等の微細図形群で図柄を構成し、微細図形の形状及び大きさを図柄の連続階調の濃度に従って制御しているものである。連続階調の表現には、網点等の正多角形配列からなる微細構成素子群で構成するスクリーン連続階調表現と、図柄中のモティーフ(人物、風景、物体、模様等)のアウトラインや模様等を絵画的な点及び細線で構成する線画階調表現方法がある。
【0003】
上述の絵画的な点及び細線で構成する線画階調表現方法は、図柄にあるモティーフを、デッサン的描画手法を用いて図柄の明暗(連続階調)や質感を表現するため、図柄中の点及び細線が交差したり輻輳したりする等、印刷物上で画線形状及び配置が複雑な様相となる。したがって、上述の絵画的な点及び線で構成する線画階調表現方法は、図案的意図を反映させることができる連続階調表現方法である。主な表現方法としては、画線が「線」の場合、画線幅や画線の配置する粗密で図柄の濃度を表現することができる。また、画線が「点」の場合、点の大きさによって図柄の濃度を表現することや、点の粗密によっても図柄の濃度を表現することができる。
【0004】
上述の絵画的な点及び細線で構成する線画階調表現方法の代表的な技術としては、紙幣の凹版印刷画像に見られるような図柄にあるモティーフの階調表現方法として用いられている。例えば、線画階調表現方法によって点及び細線で構成する画線を複雑化した画線を有する印刷物は、画線を複雑に構成することにより、印刷物からの複製を困難にできる。また、市場流通過程における拡大鏡等による観察によって、画線形状が真正なものであるか否かを、一般人が訓練次第で識別できる方法であるため、証券印刷物等金銭的価値を有する印刷物の模様として世界的に用いられていると同時に、古くから現在でも銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等(以下「証券類」という。)の印刷物において、線画階調表現方法による模様は、高級感を印象づけるデザインとして欠かすことのできない模様となっている。図1は、一般的な線画階調表現方法の一例を示したものである。線画階調表現方法では、印刷物1上の印刷模様3上に、印刷模様3の部分拡大図(円内)に示される主線4と副線5が存在するが、このうち、階調要素を設けられるのは主線4であることが多い。主線4に設けられる階調要素とは、図柄の濃淡を表現するために、明るさを奏する場合は主線4の画線幅を細く、暗さを奏する場合は主線4の画線幅を太くすることで連続階調を表現している。なお、図1の例では、主線4を水平の万線、副線5を斜め45度の万線として描いているが、それぞれの万線の角度についてはこの限りではない。
【0005】
こうした証券類の印刷物では、偽造防止効果を与えるために、地紋模様と呼ばれる背景模様に様々な技術が適用されているが、近年、カラー複写機の高画質化及びカラー製版技術のコンピュータ化に伴い、証明書類の偽造技術が多様化する傾向にある。これに伴う証明書類の偽造防止策も、高度化することによって対応してきた。しかし、その一方で、偽造防止策に費やす製造コストも上がり、偽造防止効果を確認する環境を得るために特殊な機械器具から成る専用設備を導入する等、真偽判定にも高コストを要する場合があった。
【0006】
真正物か偽造物であるかを真偽判別するための技術として、銀行券、株券、債券等の有価証券、各種証明書及び重要書類等では、古くから潜像凹版と呼ばれる偽造防止技術がある。この潜像凹版は、凹版インキ等で盛り上がりのある画線を用いることで効果を奏するものである。例えば、図42の印刷物11に示されたように、印刷模様12の背景を成す画線群13と潜像を成す画線群14は、90度の2方向の差異を持った万線状の画線によって配置している。この印刷物11の印刷面を正面から見て観察した場合、施されている潜像模様「P」を容易に認識することができないが、図43に示されたように、斜めから観察すると、例えば、凹版インキのような盛り上がった画線では、画線群13と隣り合う画線との視角によって重なり合うため、実際の潜像部を成す画線14よりも低明度(高濃度)となる。これにより、潜像模様「P」が顕像となって出現する。また、2方向の万線状の画線でなくとも、凹版インキの盛り上がり高さ差異によって1方向の万線で実現することもできる(例えば、特許文献1参照)。この技術の特徴は、別途判別具を用意せずとも簡単に真偽判別することができることである。
【0007】
一方、印刷物上に簡易的な判別具を用いることよって、より顕著な真偽判定を可能にする有用な技術がある。つまり、不可視画像が施されている印刷物に判別具を重ねることによって、不可視画像を可視画像として発現させるもので、この判別具の主な形態は、平行線スクリーンを印刷した透明シート(以下「万線フィルタ」という。)であったり、レンチキュラーレンズであったりする。この判別具を用いて不可視画像を発現させる技術は、主に二種類の方法があり、点位相変調(Dot phase modulation)と線位相変調(Line phase modulation)とが存在する。
【0008】
このような万線フィルタから成る判別具を重ね合わせることにより、潜像画像が発現する印刷物とその真偽判別方法としては、万線(又は網点)画線で印刷した背景画像部と、背景画像部と異なる位相の万線(又は網点)画線で印刷した潜像画像部とを有する印刷物が存在する。当該印刷物の背景画像部と潜像画像部は、区分けして視認することが一見困難であるが、万線フィルタを印刷物に所定の位置で重ね合わせた場合には、背景画像部と潜像画像部を区分けして視認することができる方法が知られている。
【0009】
点位相変調(Dot phase modulation)の一例としては、第1の方向と第2の方向に位相変調されたパターンが形成された印刷物と、当該印刷物の第1の方向と万線状フィルタの万線状パターンの方向とを一致するように、万線状フィルタを重ね合わせることにより形成される第1の多階調画像と、万線状フィルタの重ね合わせる角度を、印刷物の第2の方向に一致するように変えると第2の多階調画像が形成された印刷物及び画像形成法がある(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
また、点位相変調(Dot phase modulation)の一例としては、基材上に、レンズアレイ(ハエの目レンズ、ハニカムレンズ、レンチキュラーレンズ等)を重ねることにより画像が現れるドットパターンを構成するそれぞれのドットが、少なくとも二種類以上のスクリーン線数で、かつ、少なくとも二種類以上のスクリーン角度の網点から成る印刷物において、真正物であればドットパターンを構成するそれぞれのドットの網点面積率が同じであるため、レンズアレイを重ねることにより不可視画像が発現し、複写物の場合は、コピーすることによりスクリーン線数の大きさ又は網点角度で再現されるドットが潰れ、ドットの濃度が変化することにより、不可視画像と異なる画像が発現する印刷物がある(例えば、特許文献3参照)。
【0011】
また、海外の点位相変調(Dot phase modulation)の一例としては、アストロン・デザイン社(オランダ)のイソグラム(Isogram)がある(例えば、非特許文献1340頁参照)。これは、図60(a)に示された印刷物のように、一見して均一な濃度を有する平坦な模様の中に、拡大すると図60(b)に示されたような微細な網点の位相によって不可視画像が施され、印刷物上に専用のシートを重ねると、図60(c)又は図60(d)に示されるようにネガポジ状のどちらかに可視画像化されたものである。しかし、これは、均一な濃度を有する平坦な模様故に、鮮明に画像を発現させることができない。
【0012】
また、本願出願人等は、点位相変調(Dot phase modulation)を用いた印刷物に関する特許出願を行っている。これは、基材上に複数の等色の画素が規則的に配列されて二つの潜像模様が形成された潜像印刷物であって、複数の画素において、第1の方向に位相をずらして配列された第1の領域による第1の潜像模様(不可視画像)と、機能性を有するインキにより印刷された第2の領域による第2の潜像模様(不可視画像)とを有する(例えば、特許文献4参照)。
【0013】
線位相変調(Line phase Modulation)の一例としては、基材上に、線部と非線部を有し、同一ピッチ及び幅から成る万線パターンに対し、万線位相を2分の1ピッチずらして形成された潜像部を備えている複数種の潜像万線パターンが、それぞれ異なる角度で重ね合わされて印刷された潜像を有する印刷物であって、複数種の潜像万線パターンがそれぞれ色違いであることを特徴とする印刷物と、印刷物の万線パターンと同一ピッチのフィルムを、複数種の不可視画像に重ね合わせることにより潜像部を可視画像化されたものがある(例えば、特許文献5参照)。
【0014】
また、海外の線位相変調(Line phase Modulation)を用いた印刷物には、ユラ社(ハンガリー)のHIT(Hidden Image Technology)がある(非特許文献1341頁参照)。図61(a)に示されたように、一見して均一な濃度を有する平坦な模様の中に、拡大すると図61(b)に示されたような微細な万線の位相によって不可視画像が施され、印刷物上に専用のシートを重ねると、図61(c)又は図61(d)に示されるようにネガポジ状のどちらかに可視画像化されている。なお、図61(a)の印刷物では通常視でも不可視画像が確認できてしまうおそれがあるため、図61(b)に示されたように、カムフラージュ模様として万線の一部の画線幅を変化させて可視画像を設けている。また、白抜き画線によって可視画像を設けても良い。ただし、このカムフラージュ模様は、専用のシートを重ねて不可視画像を可視画像化した際、カムフラージュ模様も可視画像として同時に発現しているので、不可視画像の発現時の視認性を阻害するという問題がある。
【0015】
一般的に、点位相変調(Dot phase modulation)又は線位相変調(Line phase modulation)により形成された模様は、平坦な形状となっている。
【0016】
また、画像形成シート上に、単位ブロック内をm列n行に等形上分割した各々最小単位ブロックb1、b2、b3、b4、・・・を、それぞれ1単位画素g1、g2、g3、g4、・・・とする各々潜像画像G1、G2、G3、G4、・・・が形成され、その単位画素g1、g2、g3、g4、・・・は、万線本数1本分以上の万線により構成される万線パターンであって、ピッチp1、p2、p3、p4、・・・の各々万線ピッチpと、角度θ1、θ2、θ3、θ4・・・の各々万線角度θの万線により構成される、異なる各々万線パターンのうち、いずれかの万線パターンにより構成された偽造防止用画像形成体であり、1単位画素g1、g2、g3、g4、・・・を構成する万線パターンと、同一の万線ピッチp及び万線角度θの万線により構成されるそれぞれ異なる万線パターンを、透明シートに形成した顕像化用の万線シートを重ね合わせることで、潜像画像G1、G2、G3、G4、・・・を顕像化するようにした偽造防止用画像形成体が提案されている(例えば、特許文献6参照)。
【0017】
この特許文献6による偽造防止用画像形成体は、各々の単位画素において万線パターンのピッチ及び角度を異ならせることにより、複数の潜像画像を顕像化するものではあるが、可視画像としては、一様な背景模様としか表現できず、さらに、潜像画像を顕像化するためには、その潜像画像を構成する単位画素の万線パターンに合ったピッチ及び角度を要する透明シートが必要となり、複数の判別具を用意しなければならないという問題があった。
【0018】
また、非特許文献1及び特許文献2〜5に示された技術は、潜像、すなわち埋め込まれた画像を完全に不可視状態にすることができるものではなく、さらに、証券類のデザインとの親和性が低いために、上述した線画階調表現方法に適用しにくいことが最も大きな問題となっている。また、非特許文献1及び特許文献2〜5に示された技術は、上述した線画階調表現方法から成る印刷模様とは別刷りで施さなければならず、結果的に偽造防止策に費やす製造コストも上がることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】実公昭56−19273号公報
【特許文献2】特許第4132122号公報
【特許文献3】特許第4013450号公報
【特許文献4】特願2007−43171号公報
【特許文献5】特開2004−174997号公報
【特許文献6】特開2007−015120号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Optical Security and Counterfeit Deterrence Techniques IV Vol.4677 ( by SPIE-The International Society for Optical Engineering )
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
証券類では、印刷面上に数多くの偽造防止効果を有する画線が必要になる。しかしながら、印刷面には限りがあり、少ない印刷面積でも複数の真偽判別方法によって有効な作用を奏する偽造防止策が望まれている。
【0022】
また、上述した従来の印刷物では、潜像模様が平坦な濃度を有する印刷画線から成るため、鮮明に発現可能な不可視画像を形成することができなかった。また、従来の印刷物は、判別具を重ねる前に、あらかじめ潜像模様が視認されてしまうおそれがあった。また、あらかじめ潜像模様が視認されてしまう問題を防ぐためには、画線又は網点を小さくし、潜像模様と背景模様のずれ幅を少なくする必要があり、判別具を重ねた場合に潜像模様の視認性が劣ってしまう問題があった。また、印刷物の画線又は網点自体に指感性を有するものではなかった。
【0023】
さらに、何らかの可視画像を設けたとしても、特許文献3に記載された印刷物のように単純な白抜き画線から成るため、不可視画像を発現させた時の視認性を阻害するという問題があった。さらに、特許文献6に記載された印刷物のように複数の判別具を必要とするものもあった。
【0024】
本発明は、上記事情にかんがみ、単一の判別具により鮮明な発現が可能な不可視画像を形成するとともに、画線又は網点並びにずれ幅を小さくしなくとも、判別具を重ねる前に、あらかじめ不可視画像が視認され難く、不可視画像を発現させた時に不可視画像以外の領域によって視認性が阻害されない偽造防止印刷物を提供すること又は複数の真偽判別方法によって偽造防止効果を奏することで、判別具を用いる場合と判別具を用いない場合とで簡単に真偽判別を可能とし、判別具を用いる場合にあっても、鮮明な発現が可能な不可視画像を形成するとともに、画線又は網点並びにずれ幅を小さくしなくとも、判別具を重ねる前にあらかじめ不可視画像が視認され難く、かつ、不可視画像を発現させた時に不可視画像以外の領域によって視認性が阻害されない偽造防止印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の偽造防止印刷物は、基材の表面上に、それぞれ同一面積を有する第5の画線ユニットと第6の画線ユニットとがマトリックス状に配置されており、第5の画線ユニットは、第1の方向に延在するように配置された第1の画線と、第1の画線が存在しない領域の第1の位置に配置された第2の画線とを有し、第6の画線ユニットは、第1の方向に延在するように配置された第1の画線と、第1の画線が存在しない領域の第2の位置に配置された第3の画線とを有し、第1の画線は、基材の表面に対して第1の高さを有する第1の画線部と、第1の高さとは異なる第2の高さを有する第2の画線部とを有することで、第1の不可視画像を形成し、第5の画線ユニットと第6の画線ユニットのいずれか一方が配置された領域が第2の不可視画像の画像部を形成し、他方が配置された領域が第2の不可視画像の背景部を形成されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0026】
また、本発明の偽造防止印刷物における第1の不可視画像は、基材に対して90度と異なる所定の角度範囲から視認することが可能であり、第2の不可視画像は、複数の第5の画線ユニットにおけるそれぞれの第1の位置に配置された第2の画線を拡大することにより、あるいは複数の第6の画線ユニットにおけるそれぞれの第2の位置に配置された第3の画線を拡大することにより視認することが可能であることを特徴とする偽造防止用印刷物である。
【0027】
また、本発明の偽造防止印刷物は、第5の画線ユニットの一方の側に第6の画線ユニットが配置された場合、濃度の不均衡を緩和するため、第5の画線ユニットにおける第2の画線又は第6の画線ユニットにおける第3の画線のいずれか一方の画線を削除し、いずれか一方の画線を削除した第5の画線ユニット又は第6の画線ユニットの略中心の位置に、第2の画線及び第3の画線の半分又は略半分の画線面積率を有する第4の画線が配置され、第1の方向に沿って第5の画線ユニットの他方の側に第6の画線ユニットが配置された場合、第5の画線ユニット及び第6の画線ユニットの境界線を中心とした位置に、第4の画線が配置されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0028】
また、本発明の偽造防止印刷物における第1の画線、第2の画線、第3の画線及び第4の画線は、複数の画線ユニット内に形成され、複数の画線ユニットは、第1の画線ユニット、第2の画線ユニット、第3の画線ユニット及び第4の画線ユニットから成り、第1の画線ユニット及び第2の画線ユニットは、同一の大きさであり、第3の画線ユニット及び第4の画線ユニットは、第1の画線ユニット又は第2の画線ユニットに対して第1の方向に2倍の大きさであり、第1の画線ユニットは、第2の画線が第1の画線ユニットの中心を通るように配置され、第2の画線ユニットは、第3の画線が第4の画線ユニットにおける中心から等間隔で対向するように第2の画線の半分又は略半分の画線面積率を有する第3の画線が一対として配置され、第3の画線ユニットは、第2の画線、第4の画線及び第2の画線の半分又は略半分の画線面積率を有する第3の画線の順に配列され、第4の画線ユニットは、第2の画線の半分又は略半分画線面積率で配置された第3の画線、第4の画線及び第2の画線の順に配置されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0029】
また、本発明の偽造防止印刷物における第1の方向に沿って第1の画線ユニットの一方の側に隣接して配置される画線ユニットは、第1の画線ユニット及び第3の画線ユニットであり、第1の方向に沿って第1の画線ユニットの他方の側に隣接して配置される画線ユニットは、第1の画線ユニット及び第4の画線ユニットであり、第1の方向に沿って第2の画線ユニットの一方の側に隣接して配置される画線ユニットは、第2の画線ユニット及び第4の画線ユニットであり、第1の方向に沿って第2の画線ユニットの他方の側に隣接して配置される画線ユニットは、第2の画線ユニット及び第3の画線ユニットであることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0030】
また、本発明の偽造防止印刷物における第2の画線、第3の画線及び第4の画線は、白空き部によって形成されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0031】
また、本発明の偽造防止印刷物は、第1の画線における少なくとも一部の単位長さ当たりの画線面積率を異ならせて配置することにより可視画像が形成されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0032】
また、本発明の偽造防止印刷物は、第1の画線における少なくとも一部をレリーフ状に配置することにより可視画像が形成されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0033】
また、本発明の偽造防止印刷物における第2の画線要素は、円形又は多角形によって形成されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0034】
また、本発明の偽造防止印刷物における第2の画線要素は、第1の画線要素と隣接して配置されるか、又は第1の画線要素と一体化して配置されたことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【発明の効果】
【0035】
本発明の偽造防止印刷物は、濃度不均衡を緩和する複数の画線を設けているため、画線又は網点並びにずれ幅を小さくしなくとも、判別具を重ねる前に、あらかじめ不可視画像が視認されにくく、偽造者に印刷物のどこに不可視画像が形成されているか判断されにくいため容易に複製されることがない。
【0036】
本発明の偽造防止印刷物は、画線又は網点並びにずれ幅を小さくせずに、不可視画像のネガ及びポジの領域に、所定のずれ幅を形成することが可能であるため、あらかじめ不可視画像が視認されにくく、かつ、判別具を重ねた場合に鮮明な不可視画像を視認することができ、判別者が容易に確認することができる。
【0037】
本発明の偽造防止印刷物は、単一の判別具により鮮明な発現が可能な不可視画像が形成されるとともに、線画階調表現方法からなる模様の意匠性を損なわない偽造防止印刷物が提供される。さらに、本発明の偽造防止印刷物は、画線自体に盛りを有する形態にすることで、指感性を有し、指感性の有無によって真偽判別ができる。
【0038】
本発明の偽造防止印刷物によれば、証券類の限られた印刷面上において、該印刷物上に備えられた第1の不可視画像と、第2の不可視画像とが、それぞれ二種類の真偽判別方法、すなわち判別具を用いない場合と判別具を用いる場合とでそれぞれに顕著な偽造防止効果を確認することができる。
【0039】
判別具を用いない方法としては、印刷物を正面から観察した際には、線画表現からなる模様の意匠性を損なわないように第1の不可視画像が形成されているが、印刷物を斜視にて観察することで、第1の不可視画像が可視画像となって出現する偽造防止印刷物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】任意のモティーフから成る印刷模様3が視認された状態を示す説明図。
【図2】印刷物1に判別具2を重ね合わせることにより、容易に不可視画像を発現させて真偽性を判別することができる状態を示す説明図。
【図3】不可視画像6が可視画像となって発現された状態を占めす説明図。
【図4】図形の位置関係を2次元上で示す基本的な画線構成を部分的に拡大した説明図。
【図5】画線ユニットE及び画線ユニットFにおける画線5a及び画線5bの形状の一例を示す図。
【図6】本発明の偽造防止印刷物の基本的な画線構成の一例を部分的に拡大した説明図。
【図7】画線5a、5bに対し画線5c、5dが半分又は略半分の画線面積率を成す各種画線形状を示す説明図。
【図8】図6(a)の画線ユニットAと、図6(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリクス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図。
【図9】所望の位置に配置するための条件に基づいて、印刷模様3上に画線ユニットCと画線ユニットDの位置が示された説明図。
【図10】実施の形態1における印刷物に対する印刷模様の一画線の構成を部分的に拡大した図。
【図11】図8の配置に基づいて、図10(a)の画線ユニットAと、図10(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリクス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置された状態を示した説明図。
【図12】画線ユニットCに備わった画線5cと、画線ユニットDに備わった画線5dとが配置された状態を示した説明図。
【図13】階調要素を設けている主線4を加え、斜め45度に配置されている画線5a、一対の画線5b、画線5c及び画線5dの長手方向の図柄的な連続性が、通常の目視の観察において客観的に理解できなった状態を示す説明図。
【図14】図10における線L1と各レンズの中心線とが一致するように、レンチキュラーレンズから成る判別具を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を示す説明図。
【図15】レンチキュラーレンズの特性によって中心線7に位置する画線5bが膨張し、不可視画像6がネガポジ状のどちらかに見える可視画像となって発現する状態を示す説明図。
【図16】画線ユニットA又は画線ユニットBの対角方向に長方形又は平行四辺形を成す線状である状態を示す説明図。
【図17】図16(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dを用いて構成された印刷模様3において、画線5a、一対の画線5b、画線c及び画線dが、点線状となって見える状態を示す説明図。
【図18】画線ユニットA、画線ユニットB、画線ユニットC又は画線ユニットDの対角方向に三角形状を成す画線形状である状態を示す説明図。
【図19】図18(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dを用いて構成された印刷模様3において、画線5a、一対の画線5b、画線c及び画線dが、点線状となって見える状態を示す説明図。
【図20】画線5aの角度を変えることにより、横万線状の配置される主線の間隔を任意に調整することができることを示した説明図。
【図21】実施の形態5における印刷物に対する印刷模様の一画線の構成する画線ユニットA〜Dを示した説明図。
【図22】同心円万線フィルタ等の判別具2’を示した説明図。
【図23】図21(a)の画線ユニットAと、図21(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3’中に、マトリクス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図。
【図24】図23の配置に基づいて画線5a’と画線5b’とが配置された状態を示した説明図。
【図25】所望の位置に配置するための条件に基づいて、印刷模様3’上に画線ユニットCと画線ユニットDの位置が示された説明図。
【図26】図25の配置に基づいて、画線ユニットCに備わった画線5c’と、画線ユニットDに備わった画線5d’とが配置された状態を示した説明図。
【図27】可視画像を構成しているのは主線4’を付与した状態を示す説明図。
【図28】図21における線L1と各レンズの中心線とが一致するように、同心円万線フィルタから成る判別具2’を印刷物1上の印刷模様3’に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を示した説明図。
【図29】同心円万線フィルタの特性によって中心線7に位置する画線5b’が膨張し、可視画像がネガポジの関係となって見える状態を示した説明図。
【図30】第1不可視画像と第2不可視画像を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図。
【図31】印刷物1を真上から観察した場合の平面図と、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さの違いを表した正面図。
【図32】低画線部4aと高画線部4bの高さによって見え方の違いが現れる印刷物1の側面図。
【図33】低画線部4aより高画線部4bの方が高濃度で観察された状態を示した斜視図。
【図34】透明性を有するフィルタに複数の直線が万線状に一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1に重ね合わせた状態を示した図。
【図35】判別具によって第2不可視画像を可視化するための基本的な画線構成の一例を部分的に拡大した説明図。
【図36】図35(a)の画線ユニットAと、図35(b)の画線ユニットBと、図35(c)の画線ユニットCと、図35(d)の画線ユニットDを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリックス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図。
【図37】レンチキュラーレンズから成る判別具を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を示した図。
【図38】レンチキュラーレンズから成る判別具を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を示した図。
【図39】任意の形状を成す模様9が構成される部分の、画線4の画線幅が細くなっている状態を示した図。
【図40】低画線部4aより高画線部4bの方が高濃度で観察された状態を示した斜視図。
【図41】画線5aの角度を変えることにより、画線ユニットにおける縦の長さを調整することができる説明図。
【図42】従来の潜像凹版と呼ばれる偽造防止技術の印刷面を正面から見た観察した場合の説明図。
【図43】従来の潜像凹版と呼ばれる偽造防止技術の印刷面を斜めから観察した状態を示した斜視図。
【図44】高さの異なる第1高画線部4bと第2高画線部4cとで構成された第1不可視画像と、第2不可視画像を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図。
【図45】低画線部4aと段階的に高さの異なる第1高画線部4b〜第5高画線部4fが施されている画線4から成る印刷物1を真上から観察した場合の平面図。
【図46】第1高画線部4b〜第5高画線部4fで構成された領域において斜めから観察することにより濃淡差を有する第1不可視画像8が出現している状態を示した斜視図。
【図47】第1高画線部4b〜第5高画線部4fで構成された領域において斜めから観察することにより第1不可視画像8が出現している状態を示した斜視図。
【図48】第1不可視画像と第2不可視画像を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図。
【図49】判別具によって第2不可視画像を可視化するための基本的な画線構成を部分的に拡大した説明図。
【図50】画線ユニットEと画線ユニットFを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリックス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図。
【図51】画線4に低画線部4aと高画線部4bが設けられている状態を示した説明図。
【図52】判別具を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態の図。
【図53】第1不可視画像と第2不可視画像を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図。
【図54】判別具によって第2不可視画像を可視化するための基本的な画線構成の一例を部分的に拡大した説明図。
【図55】画線4に低画線部4aと高画線部4bが設けられている状態を示した説明図。
【図56】レンチキュラーレンズから成る判別具を印刷物上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を示した図。
【図57】レンチキュラーレンズから成る判別具を印刷物上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を示した図。
【図58】濃度の不均衡を緩和するための第5の画線ユニット(E)における画線5aの削除と、画線5c及び画線5dの追加を行った状態を示す説明図。
【図59】第1の画線をレリーフ状の画線とすることで、模様Tが形成された状態を示す図。
【図60】海外の点位相変調を用いた真偽判別方法の例。
【図61】海外の線位相変調を用いた真偽判別方法の例。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態1〜9による偽造防止印刷物について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている技術の範疇であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
【0042】
本発明の実施の形態1〜9による偽造防止印刷物は、図2に示されたように、印刷物1に判別具2を重ね合わせることにより、容易に不可視画像を発現させて真偽性を判別することができるものである。判別具2は、透明性を有するフィルタに複数の直線が万線状に一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等である。印刷物1の印刷模様3を通常の可視条件において目視により観察すると、図1に示されたように、任意のモティーフから成る印刷模様3が視認される。そして、判別具2に設けられた一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等を所定の角度(例えば、45度とする)を持って印刷物1上に重ね合わせると、図3(a)又は図3(b)に示されたような不可視画像6が可視画像となって発現する。図3(a)又は図3(b)に示されるようにネガポジ状のどちらかに見えるのは、判別具2と印刷物1との間の相対的な位置によって生ずるものであり、本発明の効果の範囲内である。
【0043】
本発明は、意図的な位置関係から成る図形を有する複数の画線要素が、マトリックス状に配置された印刷物である。図4は、本発明の印刷物における図形の位置関係を2次元上で簡単に示されたものである。図4で示されたように、本発明の印刷物は、少なくとも二種類の画線ユニットで構成されている。画線ユニットEと画線ユニットFは、それぞれ第1の画線4を形成する領域と第2の画線又は第3の画線を形成する領域を備えている。第1の画線4は、後述にて説明する低画線部4aと高画線部4bとによって構成することも可能である。画線ユニットEにおける第2の画線5aと、画線ユニットFにおける第3の画線5bは、第1の画線4の長手方向に対し互いに異なる位置関係を有している。
【0044】
また、本発明は、図2に示されたように、印刷物1と判別具2を重ね合わせることによって、任意の不可視画像を可視画像として視認することを可能としている。判別具2は、透明性を有するフィルタに複数の直線が万線状に一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等である。万線フィルタ又はレンチキュラーレンズの中心線が、画線ユニットEに備わっている第2の画線5a又は画線ユニットFに備わっている第3の画線5bと合致することによって効果を奏するものである。この第2の画線5a及び第3の画線5bの形状に何ら制限はなく、位置関係及び印刷面からの高さが重要な要素となっている。
【0045】
図5は、第2の画線5aと第3の画線5bにおける形状の例が示されたものである。図5(a)は、第2の画線5aと第3の画線5bが円形となっている。線L1が、図5に示された判別具2と合致することによって、不可視画像を可視画像とさせることができる。これについては後述で詳細に説明する。図5(a)に示されたように第2の画線5aと第3の画線5bとが円形の場合、線L1の角度θは第1の画線4の長手方向に対し垂直から略斜め45度まで対応している。また、図5(b)に示されたように第2の画線5aと第3の画線5bとが楕円形の場合、線L1の角度は楕円形の長手方向と同じく垂直としている。あるいは、図5(c)に示されたように第2の画線5aと第3の画線5bとが楕円形であっても、楕円形の長手方向が斜めである場合は線L1の角度も同じ方向で斜めになっていることが望ましい。また、図5(d)に示されたように第2の画線5aと第3の画線5bとが円形で、しかも第1の画線4と一部が結合している場合は、第2の画線5aと第3の画線5bの円形の中心から外輪を結ぶ線上に線L1が適用される。なお、図5(a)〜(d)に示された寸法Sは、判別具2に備わった溝のピッチと等しい。
【0046】
また、第2の画線5aと第3の画線5bを任意の配置によりオンオフの関係とすることで不可視画像を形成するため、オンと成る画線が連続又はオフと成る画線が連続する場合は、画線濃度が濃淡として視認されるため、濃度が不均衡な状態として視認される。そこで、濃度の不均衡を緩和するため、オンと成る画線が連続して配置される場合は、いずれか一方の画線を削除し、オフとなる画線が連続して配置される場合には、第2の画線5a及び第3の画線5bの半分の画線面積率を有する第4の画線5c又は第5の画線5dを連続してオフと成る第2の画線5a及び第3の画線5bの中心の位置に形成する。このことで、印刷物における可視画像の濃度の不均衡を緩和する。以上の構成によって形成される画線は、4種類の画線ユニットで構成される。
【0047】
図6は、上述した4種類の画線ユニットの基本的な画線構成の一例を部分的に拡大した説明図である。本発明は、図6(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dの4つのユニットで構成される。画線ユニットA〜Dにおいて、画線5a〜dからなる画線群が所望の配置にて構成される。線L1〜4は、図2に示された判別具2に備わった溝の方向であり、図6では、例えば、45度とし、寸法Sは、判別具2に備わった溝のピッチと等しい。図6(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dが、印刷物の表面上において所望の規則をもって配置される。画線ユニットA、Bに対し画線ユニットC、Dは、主線4の長手方向において2倍の大きさである。図6(a)に示す画線ユニットAには画線5aが配置され、図6(b)に示す画線ユニットBには一対の画線から成る画線5bが配置され、図6(c)に示す画線ユニットCには画線5a、画線5c及び一対の画線から成る画線5bの内、一方の画線が配置され、図6(d)に示す画線ユニットDには一対の画線から成る画線5bの内、他方の画線、画線5c及び画線5aが配置される。図6(a)の画線ユニットAに配置された画線5aと、図6(b)の画線ユニットBに配置された一対の画線から成る画線5bとは、画線面積が同一又は略同一である。なお、一対の画線から成る画線5bは、画線5aが分割された画線である。また、図6(c)の画線ユニットCに配置された画線5cは、同じく画線ユニットCに配置された画線5a又は一対の画線から成る画線5bの半分又は略半分の画線面積である。さらに、画線5cは、画線ユニットCに配置された画線5aと一方の画線の画線5bの略中央に配置している。一方、図6(d)の画線ユニットDに配置された画線5dは、同じく画線ユニットDに配置された画線5a又は一対の画線から成る画線5bの半分又は略半分の画線面積である。さらに、画線5dは、画線ユニットDに配置された他方の画線の画線5bと画線5aの略中央に配置している。
【0048】
図6(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dにおける画線5a〜5dの位置関係は、主線4の長手方向において「2:3:4」のいずれかの比をもって配置することができる。まず、図6(a)に示す画線ユニットAは、画線5aが主線4の長手方向で「2:2」の比の位置、すなわち、画線ユニットAの中心に画線5aの中心が配置される。図6(b)に示す画線ユニットBは、一対の画線5bが主線4の長手方向で「4」の比の位置に一対の画線5bが配置され、すなわち、画線ユニットBの両側に一対の画線5bが配置される。また、図6(b)に示す画線ユニットBの中心から等間隔に対向するように一対の画線5bが配置されても良い。図6(c)に示す画線ユニットCは、画線5a、画線5c、一方の画線の画線5bが主線4の長手方向で「2:3:3」の比の位置、すなわち、左側から画線5aの中心が2の比をもって配置され、続いて画線5cの中心が3の比をもって配置され、続いて他方の画線の画線5bが3の比をもって配置される。図6(d)に示す画線ユニットDは、画線5a、画線5c、他方の画線の画線5bが主線4の長手方向で「3:3:2」の比の位置、すなわち、左端に他方の画線の画線5bが配置され、続いて画線5dの中心が3の比をもって配置され、続いて画線5aの中心が3の比をもって配置される。
【0049】
図6(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dにおける画線5a〜5dの形状は、図6に示された形状に限るものではなく、それ以外の形状であっても良い。ただし、寸法Sによって隔たれた線L1及び線L2、又は線L3及び線L4の線方向に伸長された図形であることが望ましい。例えば、図7(a)に示されるように、画線5a、5bと画線5c、5dとが相似の楕円形であったり、また、図7(b)に示されるように、画線5a、5bに対し、画線5c、5dが線L3及び線L4の線方向を軸に細めている楕円形であったり、さらに、図7(c)に示されるように、画線5a、5bと画線5c、5dとが、線L3及び線L4の線方向を軸に2:1の画線幅の比を有する平行四辺形であっても良い。すなわち、画線5a、5bに対し画線5c、5dが半分又は略半分の画線面積率を成すものであれば、画線5a〜5dの形状は何ら限定するものではない。
【0050】
図8は、図6(a)の画線ユニットAと、図6(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリクス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図である。なお、この図8では、不可視画像6が備わる部分が解るように太実線で簡易的に示したものである。さらに、画線ユニットAと画線ユニットBに備わった画線群の連続性を保つため、図6(c)に示された画線ユニットCと、図6(d)に示された画線ユニットDを、不可視画像6の輪郭となる少なくとも一部に配置する。図9は、所望の位置に配置するための条件に基づいて、印刷模様3上に画線ユニットCと画線ユニットDの位置が示された説明図である。まず、画線ユニットCが配置される場所は、画線ユニットAが左側で、画線ユニットBが右側で水平方向(図1に示された主線4の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットCが配置される。つまり、画線ユニットCが配置される場所は、不可視画像6の輪郭となる左側に配置される。一方、画線ユニットDが配置される場所は、画線ユニットBが左側で、画線ユニットAが右側で水平方向(図1に示された主線4の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットDが配置される。つまり、画線ユニットDが配置される場所は、不可視画像6の輪郭となる右側に配置される。
【0051】
(1)実施の形態1
本発明の実施の形態1による偽造防止印刷物について説明する。
図10に、本実施の形態1における印刷物に対する印刷模様の一画線の構成を部分的に拡大して示す。ここで、寸法Sは、図2に示された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等の判別具2に備わった溝のピッチと等しく、本実施の形態1では195μmというように1mm以下の大きさである。図10(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dが、印刷物の表面上において所望の規則をもって配置される。図10(a)及び(b)は四辺それぞれの長さが276μmの正方形で、図10(c)及び(d)は縦が276μm、横が552μmの長方形である。図10(a)の画線ユニットAに配置された画線5aと、図10(b)の画線ユニットBに配置された一対の画線5bとは、画線面積が同一又は略同一である。また、図10(c)の画線ユニットCに配置された画線5cは、同じく画線ユニットCに配置された画線5aの半分又は略半分の画線幅となっている。すなわち、画線5cは画線5aの半分又は略半分の画線面積である。さらに、画線5cは、画線ユニットCに配置された画線5aと一方の画線の画線5bの略中央に配置している。一方、図10(d)の画線ユニットDに配置された画線5dは、同じく画線ユニットDに配置された一対の画線5bの半分又は略半分の画線幅となっている。すなわち、画線5dは一対の画線5bの半分又は略半分の画線面積である。さらに、画線5dは、画線ユニットDに配置された他方の画線の画線5bと画線5aの略中央に配置している。
【0052】
図11は、図8の配置に基づいて、図10(a)の画線ユニットAと、図10(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリクス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置された状態を示したものである。この図11に示されたように、不可視画像を境に外側を画線5a、内側を一対の画線5bが占めていることがわかる。このような画線5aと画線5bとが存在することで通常の可視条件下では視認されず、画線5aのみにより不可視画像6(ネガ又はポジ)、画線5bのみにより不可視画像6(ポジ又はネガ)がそれぞれ形成されている。
【0053】
図11の画線構成ですでに不可視画像6を施されている状態になっているが、不可視画像6が施されている状態をよりわかり難くするため、図9の配置に基づいて、図10(c)に示された画線ユニットCと、図10(d)に示された画線ユニットDを、不可視画像6の輪郭となる少なくとも一部に配置する。まず、画線ユニットAが左側で、画線ユニットBが右側で水平方向(図1に示された主線4の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットCが配置される。一方、画線ユニットBが左側で、画線ユニットAが右側で水平方向(図1に示された主線4の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットDが配置される。
【0054】
図12は、画線ユニットCに備わった画線5cと、画線ユニットDに備わった画線5dとが配置された状態を示したものである。さらに、図13に示されたように、線画階調表現方法において階調要素を設けている主線4を加えると、斜め45度に配置されている画線5a、一対の画線5b、画線5c及び画線5dの長手方向の図柄的な連続性が、通常の目視の観察において客観的に理解できなくなり、そこに意図的な模様があることを認識できず完全に不可視の状態となって観察される。なお、主線4の画線幅は、一定でなくても良く、細い幅から太い幅に連続的に変化するか、又は太い幅から細い幅へと連続的に変化させることができる。この主線4は、判別具を重ねる前に、あらかじめ、不可視画像が視認されにくいためのカムフラージュ効果を有している。
【0055】
この状態で、図2に示されたように、例えば、レンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察することによって、印刷模様3に施されている不可視画像6を可視画像として発現させることができる。なお、本実施の形態1では、長さSが340μmで、印刷模様3がオフセット印刷によりコート紙に印刷されている。しかし、長さS、印刷物の基材、印刷方法、印刷材料、印刷装置等について何ら限定するものでない。
【0056】
通常の目視では、印刷模様3全体が任意の図案、すなわち、可視画像となって視認されるが、印刷模様3中に施されている不可視画像6は視認されない。判別具を印刷模様上の所定の位置に重ね合わせると、それまで視認できなかった不可視画像6が視認されるようになる。このような本実施の形態1による不可視画像6の視認効果の原理について、以下に説明する。
【0057】
不可視画像6が視認されていないとき、その可視画像を構成しているのは図13に示された主線4であり、それを補助する画線となっているのが図1に示された副線5である。さらに、副線5は不可視画像を構成するために、画線5a及び画線5bから成り、それぞれネガポジの関係にあるとともに面積が同一又は略同一であるため、画像(模様)として確認されることはない。
【0058】
印刷物上の所定の位置に、判別具であるレンチキュラーレンズにおける各レンズの中心線が画線5aの中心、すなわち図10における線L1に一致するように載置する。この場合、画線5aが拡大された状態となるため、画線5aにより構成されている画像(模様)が確認できることとなる。その際、可視画像を構成していた主線4は、拡大されている画線5aよりも面積が相対的に小さくなる。線L2と一致するように載置すると、画線5bが拡大された状態となるため、画線5aにより視認された不可視画像6のネガポジが反転して視認される。
【0059】
印刷模様3に、所定の角度、より具体的には、図10における線L1と各レンズの中心線とが一致するように、レンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を図14に示す。レンチキュラーレンズの中心線7が図10における線L1と一致するように図14(a)に示された位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線5aとなっている。レンチキュラーレンズの特性によって中心線7に位置する画線5aが膨張して見えるため、目視では図14(b)に示されたような図形の可視画像が発現する。また、レンチキュラーレンズの中心線7が図10における線L2と一致し、図15(a)に示された位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線5bとなっている。そのため、レンチキュラーレンズの特性によって中心線7に位置する画線5bが膨張して見えることから、目視では、図15(b)に示されたような図形の可視画像が発現する。ここで、画線5aと画線5bとはネガポジの関係にある。よって、上述の図3(a)又は図3(b)に示されたような不可視画像6がネガポジ状のどちらかに見える可視画像となって発現する。
【0060】
(2)実施の形態2
実施の形態1における印刷物1の画線5a及び一対の画線5bは、図10に示されたように、画線ユニットA又は画線ユニットBの対角線状になっている。しかし、本実施の形態2では、このような形状には限定されず、例えば、図16に示されたように、画線ユニットA又は画線ユニットBの対角方向に長方形又は平行四辺形を成す線状であっても良い。図16(a)及び(b)は、四辺それぞれの長さが276μmの正方形で、図16(c)及び(d)は縦が276μm、横が552μmの長方形である。図17は、図16(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dを用いて構成された印刷模様3であるが、このように、画線5a、一対の画線5b、画線5c及び画線5dが、点線状となっても良い。したがって、印刷模様3中の画線の少なくとも連続階調を奏する主線4を有し、画線5aと画線5bとが対を成してネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一又は略同一であって不可視画像6を構成し、かつ、画線5cと画線5dとは、画線5a又は一対の画線5bの半分又は略半分の画線幅であり、更に主線4が可視画像(デザイン:模様)として視認されるものであれば、長方形又は平行四辺形の長手方向の長さは何ら限定するものではない。なお、画線5cと画線5dの面積は、画線5aの半分又は略半分であっても良い。
【0061】
(3)実施の形態3
また、図18に示されたように、画線ユニットA又は画線ユニットBの対角方向に三角形状を成す画線形状であっても良い。図18(a)及び(b)は四辺それぞれの長さが276μmの正方形で、図18(c)及び(d)は縦が276μm、横が552μmの長方形である。図19は、図18(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dを用いて構成された印刷模様3であるが、このように、画線5a、一対の画線5b、画線5c及び画線5dが、三角形状の図形が連なる点線状となっても良い。したがって、印刷模様3中の画線の少なくとも連続階調を奏する主線4を有し、画線5aと一対の画線5bとが対を成してネガポジの関係にあり、かつ、面積が同一又は略同一であって不可視画像6を構成し、かつ、画線5cと画線5dとは、画線5a又は一対の画線5bの半分又は略半分の画線面積であり、更に主線4が可視画像(デザイン:模様)として視認されるものであれば、画線の形状も何ら限定するものではない。
【0062】
(4)実施の形態4
上述された実施の形態1乃至3における画線ユニットは、正方形を基本としているが、寸法Sが判別具2の万線フィルタ又はレンチキュラーレンズのピッチと合致していれば画線ユニットの四辺の寸法は任意である。すなわち、図20(a)〜(c)に示されるように、画線5aの角度χがそれぞれ異なる場合、画線ユニットA及び画線ユニットBの縦の長さは、v=S・sec(χ)で算出でき、横の長さは、h=S・csc(χ)で算出できる。例えば、図20(a)は、角度χが45度であるため、レンチキュラーレンズのピッチの寸法Sが195μmの場合、縦V横hとも同じ276μmとなる。また、図20(b)は、角度χ’が35度であるため、レンチキュラーレンズのピッチの寸法Sが195μmの場合、縦v’が239μmで、横h’が341μmとなる。さらに、図20(c)は、角度χ”が60度であるため、レンチキュラーレンズのピッチの寸法Sが195μmの場合、縦v”が391μmで、横h”が226μmとなる。なお、画線ユニットC及び画線ユニットDについては、実施の形態1乃至3に倣って、横hが図20(a)〜(c)それぞれに倍の長さになる。このように、画線5aの角度を変えることにより、横万線状に配置される主線4の間隔を任意に調整することができる。
【0063】
なお、実施の形態1乃至4によれば、主線4を用いて自由度が高く意匠性を有する鮮明な可視画像を形成することができるため、有価証券等の印刷物においても有用である。また、印刷物1上に判別具2を重ね合わせることによって、画線5a及び一対の画線5bで形成される不可視画像6を容易に、かつ、鮮明に発現させることが可能である。さらに、本発明における印刷物を構成する各画線を同一色とした単色印刷のみでも十分な偽造防止効果が得られる上に、製版及び印刷方法等について何ら限定しないため、コストを低減させることができる。
【0064】
なお、実施の形態1乃至4によれば、所定のピッチで第1の方向に配列された第1の画線群である主線4と、主線4の非画線部に画線5a、画線5b、画線5c、画線5dからなる第2の画線群によって可視画像が形成される。第2の画線群は主線4に対して所定の角度をなして第2の方向に配列される。第2の画線群は、不可視画像のネガ及びポジの領域を形成し、不可視画像のネガ及びポジ領域のいずれか一方を形成する複数の第2の画線である画線5a、他方を形成する複数の第3の画線である画線5b及び濃度の不均衡を緩和する複数の第4の画線である画線5c及び画線5dから成る。第2の画線である画線5aの画線面積と第3の画像である画線5bの画線面積が同一又は略同一であり、第4の画線である画線5c及び画線5dは、第2の画線である画線5aの画線面積又は第3の画線面積である画線5bにおける半分又は略半分の画線面積から成る。第2の画線である画線5a、第3の画線である画線5b及び第4の画線である画線5c及び画線5dは、規則的に配列された複数の画線ユニット内に形成される。複数の画線ユニットは、画線ユニットAである第1の画線ユニット、画線ユニットBである第2の画線ユニット、画線ユニットCである第3の画線ユニット及び画線ユニットDである第4の画線ユニットから成り、画線ユニットAである第1の画線ユニット及び画線ユニットBである第2の画線ユニットは同一の大きさであり、画線ユニットCである第3の画線ユニット及び画線ユニットDである第4の画線ユニットは、画線ユニットAである第1の画線ユニット又は画線ユニットBである第2の画線ユニットに対して主線方向に2倍の大きさの画線ユニットから成る。さらに、詳細には、画線ユニットAは、画線5aが画線ユニットAの中心を通るように形成され、画線ユニットBは、画線5bが画線ユニットBの中心から等間隔で対向するように画線5aが分割された一対の画線が設けられて形成されている。画線ユニットCは、画線5a、画線5c及び画線5bの内、一対の一方の画線が順次形成され、画線ユニットDは、画線5bの内、一対の他方の画線、画線5d及び画線5aが順次形成される。画線ユニットCである第3の画線ユニット又は画線ユニットDである第4の画線ユニットは、不可視画像の輪郭を示す少なくとも一部に形成される。
【0065】
なお、実施の形態1の偽造防止印刷物では、画線5aである第2の画像、画線5bである第3の画線、画線5c及び画線5dである第4の画線は、第2の方向に隣接される各画線ユニットに跨って一本の線として形成されることを特徴とする。
【0066】
(5)実施の形態5
上述された実施の形態1乃至4は、四角形で構成された画線ユニットをマトリクス状に配置しているため、不可視画像を構成する画線は必然的に平行直万線状となるが、図27に示されるように主線4’が放射状に配置している場合、不可視画像を構成する画線5a’と画線5b’は必然的に同心円万線状となる。本発明の実施の形態5では、同心円万線状の画線構成にて不可視画像が施された偽造防止印刷物について説明する。
【0067】
図21に、本実施の形態5における印刷物に対する印刷模様の一画線の構成を部分的に拡大して示す。扇状の領域における法線方向の寸法Sは、図22に示された同心円万線フィルタ等の判別具2’に備わった溝のピッチと等しく、本実施の形態5では、195μmというように1mm以下の大きさである。図21(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dが、印刷物の表面上において所望の規則をもって配置される。図21(a)及び(b)は扇状(アーチ状)の領域における弧の長さは、後述する印刷模様3の大きさと、放射線状に配置される主線4の分割角度によって決定される。図21(c)及び(d)は扇状の領域における法線方向の寸法Sの2倍である。図21(a)の画線ユニットAに配置された画線5a’と、図21(b)の画線ユニットBに配置された画線5b’とは、画線幅が同一又は略同一である。また、図21(c)の画線ユニットCに配置された画線5c’は、同じく画線ユニットCに配置された画線5a’の半分又は略半分の画線幅となっている。さらに、画線5c’は、画線ユニットCに配置された画線5a’と画線5b’の略中央に配置している。一方、図21(d)の画線ユニットCに配置された画線5d’は、同じく画線ユニットDに配置された画線5b’の半分又は略半分の画線幅となっている。さらに、画線5d’は、画線ユニットDに配置された画線5b’と、隣接して配置される画線ユニットA又は画線ユニットCの画線5a’の略中央に配置している。
【0068】
図23は、図21(a)の画線ユニットAと、図21(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3’中に、マトリクス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図である。なお、この図23では、不可視画像6’が備わる部分が解るように太実線で簡易的に示したものである。図24は、図23の配置に基づいて画線5a’と画線5b’とが配置された状態を示したものである。不可視画像を境に外側を画線5a’、内側を画線5’が占めていることがわかる。このような画線5a’と画線5b’とが存在することで通常の可視条件下では視認されず、画線5a’のみにより不可視画像6’(ネガ又はポジ)、画線5b’のみにより不可視画像6’(ポジ又はネガ)がそれぞれ形成されている。
【0069】
図24の画線構成ですでに不可視画像6’を施されている状態になっているが、不可視画像6’が施されている状態をよりわかり難くさせるため、図21(c)に示された画線ユニットCと、図21(d)に示された画線ユニットDを、所望の位置に配置する。まず、画線ユニットCが配置される場所は、画線ユニットAが外側で、画線ユニットBが内側で放射線方向(図27に示された主線4’の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットCが配置される。一方、画線ユニットDが配置される場所は、画線ユニットBが外側で、画線ユニットAが内側で放射線方向(図27に示された主線4’の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットDが配置される。図25は、所望の位置に配置するための条件に基づいて、印刷模様3’上に画線ユニットCと画線ユニットDの位置が示された説明図である。
【0070】
図26は、図25の配置に基づいて、画線ユニットCに備わった画線5c’と、画線ユニットDに備わった画線5d’とが配置された状態を示したものである。さらに、図27に示されたように、線画階調表現方法において階調要素を設けている中心から放射状に形成される主線4’を加えると、同心円状に配置されている画線5a’、画線5b’、画線5c’及び画線5d’の長手方向の図柄的な連続性が、通常の目視の観察において客観的に理解できなくなり、そこに意図的な模様があることを認識できず完全に不可視の状態となって観察される。
【0071】
この状態で、図22に示されたように、例えば、同心円万線フィルタから成る判別具2’を印刷物1’上の印刷模様3’に重ね合わせ、正面から目視で観察することによって、印刷模様3’に施されている不可視画像6’を可視画像として発現させることができる。なお、本実施の形態5では、長さSが195μmで、印刷模様3’がオフセット印刷によりコート紙に印刷されている。しかし、長さS、印刷物の基材、印刷方法、印刷材料、印刷装置等について何ら限定するものでない。
【0072】
通常の目視では、印刷模様3’全体が任意の図案、すなわち可視画像となって視認されるが、印刷模様3’中に施されている不可視画像6’は視認されない。判別具を印刷模様上の所定の位置に重ね合わせると、それまで視認できなかった不可視画像6’が視認されるようになる。このような本実施の形態5による不可視画像6の視認効果の原理について、以下に説明する。
【0073】
不可視画像6’が視認されていないとき、その可視画像を構成しているのは図27に示された主線4’であり、それを補助する画線となっているのが図1に示された副線5である。さらに、副線5’は不可視画像を構成するために、画線5a’及び画線5b’から成り、それぞれネガポジの関係にあるとともに面積が同一又は略同一であるため、画像(模様)として確認されることはない。
【0074】
印刷物上の所定の位置に、判別具である同心円万線フィルタにおける各レンズの中心線が画線5a’の中心、すなわち図21における線L1’に一致するように載置する。この場合、画線5a’が拡大された状態となるため、画線5a’により構成されている画像(模様)が確認できることとなる。その際、可視画像を構成していた主線4’は、拡大されている画線5a’よりも面積が相対的に小さくなる。線L2’と一致するように載置すると、画線5b’が拡大された状態となるため、画線5a’により視認された不可視画像6’のネガポジが反転して視認される。
【0075】
より具体的には、図21における線L1と各レンズの中心線とが一致するように、同心円万線フィルタから成る判別具2’を印刷物1上の印刷模様3’に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を図28に示す。同心円万線フィルタの中心線7が、図21における線L1’と一致する位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線5a’となっている。同心円万線フィルタの特性によって中心線7に位置する画線5a’が膨張して見えるため、目視では、図28に示されたような図形の可視画像が発現する。また、同心円万線フィルタの中心線7が図21における線L2’と一致し、図29に示された位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線5b’となっている。同心円万線フィルタの特性によって中心線7に位置する画線5b’が膨張して見えるため、目視では、図29に示されたような図形の可視画像が発現する。ここで、画線5a’と画線5b’とはネガポジの関係にある。
【0076】
中心から放射状に形成された第1の画線群である主線4’と、主線4’の非画線部に画線5a’、画線5b’、画線5c’、画線5d’から成る第2の画線群によって可視画像が形成される。第2の画線群は中心から所定のピッチの同心円形状に配列される。第2の画線群は、不可視画像のネガ及びポジの領域を形成し、不可視画像のネガ及びポジ領域のいずれか一方を形成する複数の第2の画線である画線5a’、他方を形成する複数の第3の画線である画線5b’及び濃度の不均衡を緩和する複数の第4の画線である画線5c’及び画線5d’から成る。第2の画線である画線5a’の画線面積と第3の画像である画線5b’の画線面積が同一又は略同一であり、第4の画線である画線5c’及び画線5d’は、第2の画線である画線5a’の画線面積又は第3の画線の画線面積である画線5b’における半分又は略半分の画線面積から成る。第2の画線である画線5a’、第3の画線である画線5b’及び第4の画線である画線5c’及び画線5d’は、規則的に配列された複数のアーチ形の画線ユニット内に形成される。複数のアーチ形の画線ユニットは、画線ユニットAである第1の画線ユニット、画線ユニットBである第2の画線ユニット、画線ユニットCである第3の画線ユニット及び画線ユニットDである第4の画線ユニットから成り、画線ユニットAである第1の画線ユニット及び画線ユニットBである第2の画線ユニットは同一の大きさである。画線ユニットCである第3の画線ユニット及び画線ユニットDである第4の画線ユニットは、画線ユニットAである第1の画線ユニット及び画線ユニットBである第2の画線ユニットよりも大きく、さらに、画線ユニットAである第1の画線ユニット及び画線ユニットBである第2の画線ユニットに対して同心円方向の中心方向に伸びた形状の画線ユニットから成る。画線ユニットAは、画線5a’が同心円方向に所定の位置で形成され、画線ユニットBは、画線5b’が同心円方向に画線5a’が形成された位置に対して半ピッチ又は略半ピッチのずれを有する位置に配置され、画線ユニットCは、画線5a’、画線5c’及び画線5b’が順次形成され、画線ユニットDは、画線5b’及び画線5d’が順次形成される。画線ユニットCである第3の画線ユニット又は画線ユニットDである第4の画線ユニットは、不可視画像の輪郭を示す少なくとも一部に形成される。
【0077】
上述された実施の形態1乃至5の偽造防止印刷物の印刷方式は限定されることはないが、盛りを有する画線が形成可能な印刷方式で印刷することで印刷物の画線自体に指感性を有することができる。この盛りを有する画線は、10〜100μm程度の画線高さを有することが好ましく、印刷方式については、凹版印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷が好ましい。最良な印刷方式としては、凹版印刷方式である。よって、銀行券、切手、収入印紙等の諸証券類の肖像、風景画等に適用可能である。なお、本明細書に記載されているユニットについては、実際の印刷物に形成されるものではなく、画線5a、画線5b、画線5c、画線5dの位置関係を説明するためのものである。
【0078】
次に、これまでに述べた実施の形態に、判別具を用いることなく印刷物の観察角度を90°とは異なる任意の角度とすることで、判別具2を用いることなく視認することができる不可視画像を有する印刷物について説明する。図30は、本発明の特徴である第1不可視画像8と第2不可視画像6を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図である。図30に示されたように、印刷物1上に印刷模様3が形成されている。この印刷模様3は、等間隔で配置された画線幅wの等しい複数の主線4と、主線4の非画線部に形成する画線5a〜5dとで構成されている。さらに、印刷物1における印刷面からの盛り上がりの高さの異なる低画線部4aと高画線部4bによって構成されている。より具体的に説明すると、図31(a)の平面図のように、印刷物1を真上から観察した場合、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さは認識されないが、実際には図31(b)の正面図のように、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さが異なっている。すなわち、背景模様を構成する低画線部4aに対し、高画線部4bで構成する領域を第1の不可視画像8として施すことができる。
【0079】
図32は、図30に示された印刷物1の側面図である。図32に示されたように、観察者は基材に対して90度と異なる任意の角度から成る視角15をもって観察した際、低画線部4aと高画線部4bの高さによって見え方の違いが現れる。低画線部4aの視認長さ3aよりも高画線部4bの視認長さ3bの方が長く見える。すなわち、図33の斜視図に示されたように、印刷模様3において、低画線部4aの視認長さ3aよりも高画線部4bの視認長さ3bの方が長く見えることから、低画線部4aより高画線部4bの方が高濃度で観察される。これにより、高画線部4bで構成された領域から成る第1不可視画像8が、斜めから観察することにより該領域が可視画像となって出現している。なお、印刷模様3における画線ピッチ並びに低画線部4aと高画線部4bの高さに何ら制限はないが、低画線部4aと高画線部4bの画線幅wは200〜600μmで画線ピッチは300〜800μm、低画線部4aの盛り高さは10〜30μmで高画線部4bの盛り高さは20〜60μm程度が望ましい。低画線部4aの盛りの高さと、高画線部4bの盛り高さの差は特に限定されることはないが、10〜50μm程度が好ましい。
【0080】
また、さらに、図34に示されたように、印刷物1に判別具2を重ね合わせることによっても、容易に不可視画像を発現させて真偽性を判別することができる。印刷物1の印刷模様3を通常の可視条件において目視により観察すると、何ら変化のない画線模様となって視認される。そして、判別具2に設けられた一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等が所定の角度を持って印刷物1上に重ね合わさると、画線5a及び画線5bの配置によって施された第2不可視画像6が、ネガ状又はポジ状の可視画像となって発現する。また、画線5a及び画線5bの配置によって可視条件において目視により観察した場合に、濃度が不均衡となる。この場合、図58に示すように画線の削除及び追加が行われる。画線の削除については、図58(a)に示すように、画線ユニットFの右側に画線ユニットEが配置された場合、画線5bと画線5aが隣接して配置されるため、濃度が濃く視認性される。そのため、図58(b)に示すように、画線ユニットEにおける画線5aが削除される(画線5bを削除しても良い。)。また、図58(c)に示すように、画線ユニットEの画線5aが削除されたことから、画線ユニットEには、画線5a及び画線5bが存在しないため、濃度が淡く視認される。そのため、画線ユニットEと隣接する画線ユニットFにおける画線bと画線ユニットE´における画線5aの中間の位置に、画線5a又は画線5bにおける半分又は略半分の画線面積率を有する画線5cの追加を行う。また、画線ユニットE´の右側に画線ユニットF´が配置された場合についても、画線ユニットの隣接部分に画線が存在しないため、濃度が淡く視認される。そのため、画線ユニットE´における画線5aと画線ユニットF´における画線5bの中間の位置に、画線5a又は画線5bにおける半分又は略半分の画線面積率を有する画線5dの追加を行う。このことで、印刷物全体の濃度が不均衡となることを緩和することができる。
【0081】
図35は、前述の濃度の不均衡を緩和する処理を行った状態の基本的な画線構成を部分的に拡大した説明図である。本発明は、図35(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dの4つのユニットで構成される。画線ユニットA〜Dにおいて、画線5a〜dから成る画線群が所望の配置にて構成される。線L1〜4は、図34に示された判別具2に備わった溝の方向であり、図35では、例えば、45度とし、寸法Sは、判別具2に備わった溝のピッチと等しい。図35(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dが、印刷物の表面上において所望の規則をもって配置される。画線ユニットA、Bに対し画線ユニットC、Dは、画線4の長手方向において2倍の大きさである。図35(a)に示す画線ユニットAには、画線5aが配置され、図35(b)に示す画線ユニットBには、一対の画線から成る画線5bが配置され、図35(c)に示す画線ユニットCには、画線5a、画線5c及び一対の画線から成る画線5bの内、一方の画線が配置され、図35(d)に示す画線ユニットDには、一対の画線から成る画線5bの内、他方の画線、画線5d及び画線5aが配置される。図35(a)の画線ユニットAに配置された画線5aと、図35(b)の画線ユニットBに配置された一対の画線から成る画線5bとは、画線面積が同一又は略同一である。なお、一対の画線から成る画線5bは、画線5aが分割された画線である。また、図35(c)の画線ユニットCに配置された画線5cは、同じく画線ユニットCに配置された画線5a又は一対の画線から成る画線5bの半分又は略半分の画線面積である。さらに、画線5cは、画線ユニットCに配置された画線5aと一方の画線の画線5bの略中央に配置している。一方、図35(d)の画線ユニットDに配置された画線5dは、同じく画線ユニットDに配置された画線5a又は一対の画線から成る画線5bの半分又は略半分の画線面積である。さらに、画線5dは、画線ユニットDに配置された他方の画線の画線5bと画線5aの略中央に配置している。
【0082】
図35(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dにおける画線5a〜5dの位置関係は、画線4の長手方向において「2:3:4」のいずれかの比をもって配置することができる。まず、図35(a)に示す画線ユニットAは、画線5aが画線4の長手方向で「2:2」の比の位置、すなわち、画線ユニットAの中心に画線5aの中心が配置される。図35(b)に示す画線ユニットBは、一対の画線5bが画線4の長手方向で「4」の比の位置に一対の画線5bが配置され、すなわち、画線ユニットBの両側に一対の画線5bが配置される。また、図35(b)に示す画線ユニットBの中心から等間隔に対向するように一対の画線5bが配置されても良い。図35(c)に示す画線ユニットCは、画線5a、画線5c、一方の画線の画線5bが画線4の長手方向で「2:3:3」の比の位置、すなわち、左側から画線5aの中心が2の比をもって配置され、続いて画線5cの中心が3の比をもって配置され、さらに続いて他方の画線の画線5bが3の比をもって配置される。図35(d)に示す画線ユニットDは、画線5a、画線5c、他方の画線の画線5bが画線4の長手方向で「3:3:2」の比の位置、すなわち、左端に他方の画線の画線5bが配置され、続いて画線5dの中心が3の比をもって配置され、さらに続いて画線5aの中心が3の比をもって配置される。
【0083】
図35(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dにおける画線5a〜5dの形状は、図35に示された形状に限るものではなく、それ以外の形状であっても良い。例えば、画線5a、5bと画線5c、5dとが相似の楕円形であったり、また、画線5a、5bに対し、画線5c、5dが、線L3及び線L4の線方向を軸に細めている楕円形であったり、さらに、画線5a、5bと画線5c、5dとが、線L3及び線L4の線方向を軸に2:1の画線幅の比を有する平行四辺形であっても良い。すなわち、画線5a、5bに対し画線5c、5dが半分又は略半分の画線面積率を成ものであれば、画線5a〜5dの形状は何ら限定するものではない。ただし、図35に代表されるように、寸法Sによって隔たれた線L1及び線L2又は線L3及び線L4の線方向に伸長された図形であることが望ましい。
【0084】
図36は、図35(a)の画線ユニットAと、図35(b)の画線ユニットBを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリックス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図である。なお、この図36では、第2不可視画像6が備わる部分が解るように太実線で簡易的に示したものである。さらに、画線ユニットAと画線ユニットBに備わった画線群の連続性を保つため、図35(c)に示された画線ユニットCと、図35(d)に示された画線ユニットDを、第2不可視画像6の輪郭となる少なくとも一部に配置する。この画線ユニットCが配置される場所は、画線ユニットAが左側で、画線ユニットBが右側で水平方向(全ユニットが配置された際の画線4の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットCが配置される。つまり、画線ユニットCが配置される場所は、第2不可視画像6の輪郭となる左側に配置される。一方、画線ユニットDが配置される場所は、画線ユニットBが左側で、画線ユニットAが右側で水平方向(図1に示された画線4の長手方向)に隣接した条件の場所に画線ユニットDが配置される。つまり、画線ユニットDが配置される場所は、第2不可視画像6の輪郭となる右側に配置される。
【0085】
この状態で、図34に示されたように、例えば、レンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察することによって、印刷模様3に施されている第2不可視画像6を可視画像として発現させることができる。
【0086】
通常の目視では、印刷模様3全体が任意の図案、すなわち可視画像となって視認されるが、印刷模様3中に施されている第2不可視画像6は視認されない。判別具を印刷模様上の所定の位置に重ね合わせると、それまで視認できなかった第2不可視画像6が視認されるようになる。このような本実施の形態1による第2不可視画像6の視認効果の原理について、以下に説明する。
【0087】
印刷模様3に、所定の角度、より具体的には、図35における線L1と各レンズの中心線とが一致するように、レンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を図37及び図38に示す。レンチキュラーレンズの中心線7が図35における線L1と一致するように図37(a)に示された位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線5aとなっている。レンチキュラーレンズの特性によって中心線7に位置する画線5aが膨張して見えるため、目視では図37(b)に示されたような図形の可視画像が発現する。また、レンチキュラーレンズの中心線7が図35における線L2と一致し、図38(a)に示された位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線5bとなっている。レンチキュラーレンズの特性によって中心線7に位置する画線5bが膨張して見えるため、目視では図38(b)に示されたような図形の可視画像が発現する。ここで、画線5aと画線5bとはネガポジの関係にある。よって、第2不可視画像6がネガポジ状のどちらかに見える可視画像となって発現する。
【0088】
また、例えば、図30乃至図35における第2不可視画像6を奏する画線が、図53の斜視図に示された第1の画線4に接する画線4’のような形状であっても良い。図30に示された画線5a〜5dが着色された画線であるのに対し、図53では、画線5a〜5dに相当する部分が画線4’における無着色の白空き部分となっている。すなわち、図34の、判別具2によって第2不可視画像6を可視化するための基本的な画線構成を部分的に拡大した説明図に示されたように、図54(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dの4つのユニットで構成される。画線ユニットA〜Dにおいて、画線4に接する画線4’における白空き部5a’〜d’から成る画線群が、所望の配置にて構成される。線L1〜4は、図34に示された判別具2に備わった溝の方向であり、図54では、例えば、45度とし、寸法Sは、判別具2に備わった溝のピッチと等しい。図54(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dが、印刷物の表面上において所望の規則をもって配置される。画線ユニットA、Bに対し画線ユニットC、Dは、画線4の長手方向において2倍の大きさである。図54(a)に示す画線ユニットAには、白空き部5a’が配置され、図54(b)に示す画線ユニットBには、一対の白空き部5b’が配置され、図54(c)に示す画線ユニットCには、白空き部5a’、白空き部5c’及び一対の白空き部5b’の内、一方の画線が配置され、図54(d)に示す画線ユニットDには、一対の白空き部5b’の内、他方の白空き部、白空き部5d’及び白空き部5a’が配置される。図54(a)の画線ユニットAに配置された白空き部5a’と、図54(b)の画線ユニットBに配置された一対の白空き部5b’とは、空間面積が同一又は略同一である。なお、一対の白空き部5b’は、白空き部5a’が分割された空間である。また、図54(c)の画線ユニットCに配置された白空き部5c’は、同じく画線ユニットCに配置された白空き部5a’又は一対の白空き部5b’の半分又は略半分の空間面積である。さらに、白空き部5c’は、画線ユニットCに配置された白空き部5a’と一方の白空き部5b’の略中央に配置している。一方、図54(d)の画線ユニットDに配置された白空き部5d’は、同じく画線ユニットDに配置された白空き部5a’又は一対の白空き部5b’の半分又は略半分の空間面積である。さらに、白空き部5d’は、画線ユニットDに配置された他方の白空き部5b’と白空き部5a’の略中央に配置している。
【0089】
図54(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dにおける白空き部5a’〜5d’の位置関係は、画線4の長手方向において「2:3:4」のいずれかの比をもって配置することができる。まず、図54(a)に示す画線ユニットAは、白空き部5a’が画線4の長手方向で「2:2」の比の位置、すなわち、画線ユニットAの中心に白空き部5a’の中心が配置される。図54(b)に示す画線ユニットBは、一対の白空き部5b’が画線4の長手方向で「4」の比の位置に一対の白空き部5b’が配置され、すなわち、画線ユニットBの両側に一対の白空き部5b’が配置される。また、図54(b)に示す画線ユニットBの中心から等間隔に対向するように一対の白空き部5b’が配置されても良い。図54(c)に示す画線ユニットCは、白空き部5a’、白空き部5c’、一方の白空き部5b’が画線4の長手方向で「2:3:3」の比の位置、すなわち、左側から白空き部5a’の中心が2の比をもって配置され、続いて白空き部5c’の中心が3の比をもって配置され、さらに続いて他方の白空き部5b’が3の比をもって配置される。図54(d)に示す画線ユニットDは、白空き部5a’、白空き部5c’、他方の画線の白空き部5b’が画線4の長手方向で「3:3:2」の比の位置、すなわち、左端に他方の白空き部5b’が配置され、続いて白空き部5d’の中心が3の比をもって配置され、さらに続いて白空き部5a’の中心が3の比をもって配置される。
【0090】
図54(a)〜(d)に示された画線ユニットA〜Dにおける白空き部5a’〜5d’の形状は、図54に示された形状に限るものではなく、それ以外の形状であっても良い。例えば、白空き部5a’、5b’と白空き部5c’、5d’とが相似の楕円形であったり、また、白空き部5a’、5b’に対し、白空き部5c’、5d’が、線L3及び線L4の線方向を軸に細めている楕円形であったり、さらに、白空き部5a’、5b’と白空き部5c’、5d’とが、線L3及び線L4の線方向を軸に2:1の画線幅の比を有する平行四辺形であっても良い。すなわち、白空き部5a’、5b’に対し白空き部5c’、5d’が半分又は略半分の画線面積率を成すものであれば、白空き部5a’〜5d’の形状は何ら限定するものではない。ただし、図54に代表されるように、寸法Sによって隔たれた線L1及び線L2、又は線L3及び線L4の線方向に伸長された図形であることが望ましい。
【0091】
さらに、図54に示された画線ユニットA〜Dを、図55に示されたように、印刷物上にマトリックス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置されることによって、図55に示されたような印刷模様3となる。また、図55は、画線4に低画線部4aと高画線部4bが設けられている状態を示した説明図である。図55(a)の平面図ように、印刷物1を真上から観察した場合、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さは認識されないが、実際には図55(b)の正面図のように、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さが異なっている。すなわち、背景模様を構成する低画線部4aに対し、高画線部4bで構成する領域を第1不可視画像8として施すことができる。よって、高画線部4bで構成された領域から成る第1不可視画像8が、斜めから観察することにより該領域が可視画像となって出現される。
【0092】
さらに、印刷模様3に、所定の角度、より具体的には図54における線L1と各レンズの中心線とが一致するように、レンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を図56及び図57に示す。レンチキュラーレンズの中心線7が、図54における線L1と一致するように図56(a)に示された位置にあるとき、目視では図56(b)に示されたような図形の可視画像が発現する。また、レンチキュラーレンズの中心線7が図54における線L2と一致し、図57(a)に示された位置にあるとき、目視では図57(b)に示されたような図形の可視画像が発現する。ここで、白空き部5a’と白空き部5b’とはネガポジの関係にある。よって、第2不可視画像6がネガポジ状のどちらかに見える可視画像となって発現する。
【0093】
なお、本発明を実施するための最良の形態では、寸法Sが340μmとし、印刷模様3がオフセット印刷によりコート紙に印刷されている。しかし、寸法S、印刷物1に用いられる印刷媒体は上質紙、コート紙等、何ら制限するものはなく、印刷模様3を印刷媒体に転写するための製版及び印刷方式も凹版印刷、スクリーン印刷等、素材を印刷面から盛り上がらせることが可能ならば何ら限定するものではない。
【0094】
以下、本発明の実施の形態6〜9による偽造防止印刷物について、図面を用いて説明する。しかし、本発明は、以下に述べる実施の形態6〜9に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0095】
(6)実施の形態6
本実施の形態1は、上述された画線4に、さらなるデザイン効果をもたらしたものである。図39に示されたように、基本的な画線構成は、図31と同様であるが、画線4の正面から観察した際に、任意の形状を成す模様9が構成される部分の単位長さ当たりの画線面積率を変化させるように、画線4の画線幅を細く設定することにより、任意の形状を成す模様9を可視画像として視認することができる。また、図59に示すように、画線4をレリーフ画線とすることで任意の形状を成す模様を形成することも可能である。
【0096】
さらに、画線4は、印刷物1における印刷面からの盛り上がりの高さの異なる低画線部4aと高画線部4bによって第1不可視画像8を構成している。観察者は図32に示されたような基材に対して90度と異なる任意の角度から成る視角15をもって観察した際、低画線部4aの視認長さ3aよりも高画線部4bの視認長さ3bの方が長く見える。すなわち、図40の斜視図に示されたように、印刷模様3において、低画線部4aの視認長さ3aよりも高画線部4bの視認長さ3bの方が長く見えることから、低画線部4aより高画線部4bの方が高濃度で観察される。これにより、高画線部4bで構成された領域から成る第1不可視画像8が、斜めから観察することにより該領域が可視画像となって出現している。ただし、画線4の画線幅の変化が大きくなるにしたがって第1不可視画像8の視認性が悪くなるため、適度な加減が必要である。
【0097】
(7)実施の形態7
上述の実施の形態6における画線ユニットは正方形を基本としているが、寸法Sが判別具2の万線フィルタ又はレンチキュラーレンズのピッチと合致していれば画線ユニットの四辺の寸法は任意である。すなわち、図41(a)〜(c)に示されるように、画線5aの角度χがそれぞれ異なる場合、画線ユニットの縦の長さは、v=S・sec(χ)で算出でき、横の長さは、h=S・csc(χ)で算出することができる。例えば、図41(a)は、角度χが45度であるため、レンチキュラーレンズのピッチの寸法Sが195μmの場合、縦V及び横hともに同じ276μmとなる。また、図41(b)は、角度χ’が35度であるため、レンチキュラーレンズのピッチの寸法Sが195μmの場合、縦v’が239μmで、横h’が341μmとなる。さらに、図41(c)は、角度χ”が60度であるため、レンチキュラーレンズのピッチの寸法Sが195μmの場合、縦v”が391μmで、横h”が226μmとなる。なお、図35(c、d)に示す画線ユニットC及び画線ユニットDについては、実施の形態6乃至実施の形態9に倣って、横hが図41(a)〜(c)それぞれに倍の長さになる。このように、画線5aの角度を変えることにより、画線ユニットにおける縦の長さ、すなわち図30に示された印刷模様3における横万線状の配置される画線4の間隔Sを任意に調整することができる。これにより、画線4の画線幅wも適時調整することが可能であり、さらに、図33の斜視図に示されたような、印刷模様3において、低画線部4aと高画線部4bの視認長さの関係も適時調整することができることから、第1不可視画像8の最適な視認性を奏することを可能とすることができる。
【0098】
なお、実施の形態6又は7によれば、画線4を用いて自由度が高く意匠性を有する鮮明な可視画像を形成することができるため、有価証券等の印刷物においても有用である。また、画線4における高画線部4bで構成された領域から成る第1不可視画像8が、斜めから観察することにより該領域が可視画像となって出現させることが可能である。さらに、印刷物1上に判別具2を重ね合わせることによって、画線5a及び一対の画線5bで形成される第2不可視画像6を容易に、かつ、鮮明に発現させることが可能である。
【0099】
(8)実施の形態8
上述の実施の形態6及び7は、画線4において低画線部4aと高画線部4bといった2段階の高さを設けているが、画線4の高さ段階については2段階に限らず、無数の連続的な高さ段階を備えても良い。図44は、本実施の形態8の特徴である第1不可視画像8と第2不可視画像6を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図である。図44に示されたように、印刷物1上に印刷模様3が形成されている。この印刷模様3は、等間隔で配置された画線幅wの等しい複数の画線4と、画線幅が2:1の比の関係を成す画線5a〜5dとで構成されている。さらに、印刷物1における印刷面からの盛り上がりの高さの異なる低画線部4aと第1高画線部4b、第2高画線部4cによって構成されている。この第1高画線部4b、第2高画線部4cの盛り上がりの高さは、第1高画線部4b<第2高画線部4cの関係にある。
【0100】
図45は、印刷物1を真上から観察した場合の平面図である。画線4は低画線部4aと段階的に高さの異なる第1高画線部4b〜第5高画線部4fが施されている。背景模様を構成する低画線部4aに対し、高さの異なる第1高画線部4b〜第5高画線部4fで構成する領域を第1不可視画像8として施すことができる。この第1高画線部4b〜第5高画線部4fの盛り上がりの高さは、第1高画線部4b<第2高画線部4c<第3高画線部4d<第4高画線部4e<第5高画線部4fの関係にある。
【0101】
印刷物1を、観察者が任意の角度から成る視角15をもって観察した際、上述の図32で示されたように、低画線部4aと高画線部4bの高さによって見え方の違いが現れる。ただし、本実施の形態8の印刷物1では、低画線部4aと高さの異なる第1高画線部4b〜第5高画線部4fで構成しているため、図32で示された視認長さ3bは、第1高画線部4bよりも第5高画線部4fの方が長く見える。すなわち、図46の斜視図に示されたように、印刷模様3において、低画線部4aの視認長さ3aよりも高画線部4bの視認長さ3bの方が長く見えることから、低画線部4aより高画線部4bの方が高濃度で観察される。これにより、第1高画線部4b〜第5高画線部4fで構成された領域において斜めから観察することにより濃淡差を有する可視画像となって出現し、一部が顕像化した第1不可視画像8となっている。さらに、観察者が低い角度の視角15を持って観察した場合、図47に示されたように、第1高画線部4b〜第5高画線部4fで構成された領域がすべて顕像化された第1不可視画像8となる。
【0102】
なお、本実施の形態8では、第1高画線部4b〜第5高画線部4fを5段階としているが、高さ段階に何ら制限はなく、高さ段階数を増やすことによって、第1不可視画像8を連続階調画像的に表現することもできる。
【0103】
(9)実施の形態9
実施の形態6〜8では、第1の不可視画像と第2の不可視画像とが、それぞれ画線4と画線5a〜5dとに分かれて作用しているが、第1の不可視画像と第2の不可視画像とを画線4に含ませても良い。図48は、第1不可視画像8と第2不可視画像6を付与するための画線の立体的な構成を概念的に示した部分斜視図である。図48に示されたように、印刷物1上に印刷模様3が形成されている。この印刷模様3は、等間隔で配置された画線幅w1の等しい複数の画線4で構成されている。この画線4は、第1の不可視画像が備わった部位として、印刷物1における印刷面からの盛り上がりの高さの異なる低画線部4aと高画線部4bによって構成され、第2の不可視画像が備わった部位として、画線4の長手方向と直角に配置した画線幅w2を成す画線部10a及び10bが画線4に接して構成されている。
【0104】
図49は、判別具2によって第2不可視画像6を可視化するための基本的な画線構成を部分的に拡大した説明図である。本発明は、図49(a)及び図49(b)に示された画線ユニットE及び画線ユニットFの2つのユニットで構成される。画線ユニットE及び画線ユニットFにおいて、画線部10a及び画線部10bが所望の配置にて構成される。線L1及び線L2は、図34に示された判別具2に備わった溝の方向であり、図49では略90度とし、画線ユニットE及び画線ユニットFの全長は、判別具2に備わった溝のピッチと等しい。図49(a)及び図49(b)に示された画線ユニットE及び画線ユニットFが、印刷物の表面上において所望の規則をもって配置される。図49(a)及び図49(b)に示された画線ユニットE及び画線ユニットFにおける画線部10a及び画線部10bの形状は、図49に示された形状に限るものではなく、それ以外の形状であっても良い。
【0105】
図50は、図49(a)の画線ユニットEと、図49(b)の画線ユニットFを、印刷物上における印刷模様3中に、マトリックス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置される位置関係を示した説明図である。なお、この図50では、第2不可視画像6が備わる部分が分かるように太実線で簡易的に示したものである。
【0106】
図51は、画線4に低画線部4aと高画線部4bが設けられている状態を示した説明図である。図51(a)の平面図ように、印刷物1を真上から観察した場合、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さは認識されないが、実際には図51(b)の正面図のように、低画線部4aと高画線部4bとの盛り上がりの高さが異なっている。すなわち、背景模様を構成する低画線部4aに対し、高画線部4bで構成する領域を第1不可視画像8として施すことができる。よって、実施の形態6〜8と同様に、高画線部4bで構成された領域から成る第1不可視画像8が、斜めから観察することにより該領域が可視画像となって出現される。
【0107】
さらに、印刷模様3に、線L1と各レンズの中心線とが一致するように、レンチキュラーレンズから成る判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察した状態を図52に示す。レンチキュラーレンズの中心線7が、図49(a)における線L1と一致するように図52(a)に示された位置にあるとき、中心線7に位置するのは、画線部10aとなっている。レンチキュラーレンズの特性によって中心線7に位置する画線部10aが膨張して見えるため、目視では、図52(b)に示されたようなポジ状の図形の可視画像が発現する。また、レンチキュラーレンズの中心線7が、図49(b)における線L2と一致すると、目視ではネガ状の図形の可視画像が発現する。すなわち、第2不可視画像6がネガポジ状のどちらかに見える可視画像となって発現する。
【符号の説明】
【0108】
1 印刷物
2 判別具
3 印刷模様
4 主線
4’ 白空き部を形成する画線
4a 低画線部
4b 高画線部
4c 高画線部
4d 高画線部
4e 高画線部
4f 高画線部
5 副線
5a 画線
5b 画線
5c 画線
5d 画線
5a’ 白空き部
5b’ 白空き部
5c’ 白空き部
5d’ 白空き部
6 不可視画像
7 中心線
8 不可視画像
9 模様
10a 画線部
10b 画線部
11 印刷物
12 印刷模様
13 画線
13 画線群
14 画線群
15 視角
A 画線ユニット
B 画線ユニット
C 画線ユニット
D 画線ユニット
E 画線ユニット
E´ 画線ユニット
F 画線ユニット
F´ 画線ユニット
L1 線
L2 線
L3 線
L4 線
S 寸法
w 画線幅
w1 画線幅
w2 画線幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面上に、それぞれ同一面積を有する第5の画線ユニットと第6の画線ユニットとがマトリックス状に配置されており、
前記第5の画線ユニットは、第1の方向に延在するように配置された第1の画線と、前記第1の画線が存在しない領域の第1の位置に配置された第2の画線とを有し、
前記第6の画線ユニットは、前記第1の方向に延在するように配置された前記第1の画線と、前記第1の画線が存在しない領域の第2の位置に配置された第3の画線とを有し、
前記第1の画線は、前記基材の表面に対して第1の高さを有する第1の画線部と、前記第1の高さとは異なる第2の高さを有する第2の画線部とを有することで、第1の不可視画像を形成し、
前記第5の画線ユニットと前記第6の画線ユニットのいずれか一方が配置された領域が第2の不可視画像の画像部を形成し、他方が配置された領域が前記第2の不可視画像の背景部を形成することを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
前記第1の不可視画像は、前記基材に対して90度と異なる所定の角度範囲から視認することが可能であり、
前記第2の不可視画像は、複数の前記第5の画線ユニットにおけるそれぞれの前記第1の位置に配置された前記第2の画線を拡大することにより、あるいは複数の前記第2の画線ユニットにおけるそれぞれの前記第2の位置に配置された前記第3の画線を拡大することにより視認することが可能であることを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【請求項3】
前記第1の方向に沿って前記第5の画線ユニットの一方の側に前記第6の画線ユニットが配置された場合、濃度の不均衡を緩和するため、前記第5の画線ユニットにおける前記第2の画線又は前記第6の画線ユニットにおける前記第3の画線のいずれか一方の画線を削除し、前記いずれか一方の画線を削除した前記第5の画線ユニット又は前記第6の画線ユニットの略中心の位置に、前記第2の画線及び前記第3の画線の半分又は略半分の画線面積率を有する第4の画線が配置され、
前記第1の方向に沿って前記第5の画線ユニットの他方の側に前記第6の画線ユニットが配置された場合、前記第5の画線ユニット及び前記第6の画線ユニットの境界線を中心とした位置に、前記第4の画線が配置されたことを特徴とする請求項1又は2記載の偽造防止用印刷物。
【請求項4】
前記第1の画線、前記第2の画線、前記第3の画線及び前記第4の画線は、複数の画線ユニット内に形成され、
前記複数の画線ユニットは、第1の画線ユニット、第2の画線ユニット、第3の画線ユニット及び第4の画線ユニットから成り、
前記第1の画線ユニット及び前記第2の画線ユニットは、同一の大きさであり、前記第3の画線ユニット及び前記第4の画線ユニットは、前記第1の画線ユニット又は前記第2の画線ユニットに対して前記第1の方向に2倍の大きさであり、前記第1の画線ユニットは、前記第2の画線が前記第1の画線ユニットの中心を通るように配置され、
前記第2の画線ユニットは、前記第3の画線が前記第2の画線ユニットにおける中心から等間隔で対向するように前記第2の画線の半分又は略半分の画線面積率を有する前記第3の画線が一対として配置され、
前記第3の画線ユニットは、前記第2の画線、前記第4の画線及び前記第2の画線の半分又は略半分の画線面積率を有する前記第3の画線の順に配列され、
前記第4の画線ユニットは、前記第2の画線の半分又は略半分の画線面積率で配置された前記第3の画線、前記第4の画線及び前記第2の画線の順に配置されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項5】
前記第1の方向に沿って前記第1の画線ユニットの一方の側に隣接して配置される画線ユニットは、前記第1の画線ユニット及び前記第3の画線ユニットであり、
前記第1の方向に沿って前記第1の画線ユニットの他方の側に隣接して配置される画線ユニットは、前記第1の画線ユニット及び前記第4の画線ユニットであり、
前記第1の方向に沿って前記第2の画線ユニットの一方の側に隣接して配置される画線ユニットは、前記第2の画線ユニット及び前記第4の画線ユニットであり、
前記第1の方向に沿って前記第2の画線ユニットの他方の側に隣接して配置される画線ユニットは、前記第2の画線ユニット及び前記第3の画線ユニットであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項6】
前記第2の画線、前記第3の画線及び前記第4の画線は、白空き部によって形成されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項7】
前記第1の画線における少なくとも一部の単位長さ当たりの画線面積率を異ならせて配置することにより可視画像が形成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項8】
前記第1の画線における少なくとも一部をレリーフ状に配置することにより可視画像が形成されたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項9】
前記第2の画線、前記第3の画線及び前記第4の画線は、円形又は多角形によって形成されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項10】
前記第2の画線、前記第3の画線及び前記第4の画線は、前記第1の画線と隣接して配置されたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項11】
前記第2の画線及び前記第3の画線は、前記第1の画線と一体となって配置されたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項1】
基材の表面上に、それぞれ同一面積を有する第5の画線ユニットと第6の画線ユニットとがマトリックス状に配置されており、
前記第5の画線ユニットは、第1の方向に延在するように配置された第1の画線と、前記第1の画線が存在しない領域の第1の位置に配置された第2の画線とを有し、
前記第6の画線ユニットは、前記第1の方向に延在するように配置された前記第1の画線と、前記第1の画線が存在しない領域の第2の位置に配置された第3の画線とを有し、
前記第1の画線は、前記基材の表面に対して第1の高さを有する第1の画線部と、前記第1の高さとは異なる第2の高さを有する第2の画線部とを有することで、第1の不可視画像を形成し、
前記第5の画線ユニットと前記第6の画線ユニットのいずれか一方が配置された領域が第2の不可視画像の画像部を形成し、他方が配置された領域が前記第2の不可視画像の背景部を形成することを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
前記第1の不可視画像は、前記基材に対して90度と異なる所定の角度範囲から視認することが可能であり、
前記第2の不可視画像は、複数の前記第5の画線ユニットにおけるそれぞれの前記第1の位置に配置された前記第2の画線を拡大することにより、あるいは複数の前記第2の画線ユニットにおけるそれぞれの前記第2の位置に配置された前記第3の画線を拡大することにより視認することが可能であることを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【請求項3】
前記第1の方向に沿って前記第5の画線ユニットの一方の側に前記第6の画線ユニットが配置された場合、濃度の不均衡を緩和するため、前記第5の画線ユニットにおける前記第2の画線又は前記第6の画線ユニットにおける前記第3の画線のいずれか一方の画線を削除し、前記いずれか一方の画線を削除した前記第5の画線ユニット又は前記第6の画線ユニットの略中心の位置に、前記第2の画線及び前記第3の画線の半分又は略半分の画線面積率を有する第4の画線が配置され、
前記第1の方向に沿って前記第5の画線ユニットの他方の側に前記第6の画線ユニットが配置された場合、前記第5の画線ユニット及び前記第6の画線ユニットの境界線を中心とした位置に、前記第4の画線が配置されたことを特徴とする請求項1又は2記載の偽造防止用印刷物。
【請求項4】
前記第1の画線、前記第2の画線、前記第3の画線及び前記第4の画線は、複数の画線ユニット内に形成され、
前記複数の画線ユニットは、第1の画線ユニット、第2の画線ユニット、第3の画線ユニット及び第4の画線ユニットから成り、
前記第1の画線ユニット及び前記第2の画線ユニットは、同一の大きさであり、前記第3の画線ユニット及び前記第4の画線ユニットは、前記第1の画線ユニット又は前記第2の画線ユニットに対して前記第1の方向に2倍の大きさであり、前記第1の画線ユニットは、前記第2の画線が前記第1の画線ユニットの中心を通るように配置され、
前記第2の画線ユニットは、前記第3の画線が前記第2の画線ユニットにおける中心から等間隔で対向するように前記第2の画線の半分又は略半分の画線面積率を有する前記第3の画線が一対として配置され、
前記第3の画線ユニットは、前記第2の画線、前記第4の画線及び前記第2の画線の半分又は略半分の画線面積率を有する前記第3の画線の順に配列され、
前記第4の画線ユニットは、前記第2の画線の半分又は略半分の画線面積率で配置された前記第3の画線、前記第4の画線及び前記第2の画線の順に配置されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項5】
前記第1の方向に沿って前記第1の画線ユニットの一方の側に隣接して配置される画線ユニットは、前記第1の画線ユニット及び前記第3の画線ユニットであり、
前記第1の方向に沿って前記第1の画線ユニットの他方の側に隣接して配置される画線ユニットは、前記第1の画線ユニット及び前記第4の画線ユニットであり、
前記第1の方向に沿って前記第2の画線ユニットの一方の側に隣接して配置される画線ユニットは、前記第2の画線ユニット及び前記第4の画線ユニットであり、
前記第1の方向に沿って前記第2の画線ユニットの他方の側に隣接して配置される画線ユニットは、前記第2の画線ユニット及び前記第3の画線ユニットであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項6】
前記第2の画線、前記第3の画線及び前記第4の画線は、白空き部によって形成されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項7】
前記第1の画線における少なくとも一部の単位長さ当たりの画線面積率を異ならせて配置することにより可視画像が形成されたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項8】
前記第1の画線における少なくとも一部をレリーフ状に配置することにより可視画像が形成されたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項9】
前記第2の画線、前記第3の画線及び前記第4の画線は、円形又は多角形によって形成されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項10】
前記第2の画線、前記第3の画線及び前記第4の画線は、前記第1の画線と隣接して配置されたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【請求項11】
前記第2の画線及び前記第3の画線は、前記第1の画線と一体となって配置されたことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の偽造防止印刷物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【公開番号】特開2011−251535(P2011−251535A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158107(P2011−158107)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2010−531903(P2010−531903)の分割
【原出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【分割の表示】特願2010−531903(P2010−531903)の分割
【原出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】
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