説明

偽造防止媒体、偽造防止転写箔、偽造防止用紙及び真贋判定方法

【課題】可視光以外の光を照射して可視光の発光を確認する真贋判定を行う場合に、従来とは全く異なる方法により真贋判定を行うことが可能な偽造防止技術を提供すること。
【解決手段】可視外波長の光を照射することにより可視光を発光する波長変換層13と、前記可視外波長光を遮断すると共に前記可視光を透過させる可視光透過層12とを備える。波長変換層側から可視外波長光を照射すると、可視光透過層を透過した可視光が観察できる。可視光透過層側から可視外波長光を照射すると、この可視外波長光は可視光透過層に遮断され、可視光を生じない。このため、両方の結果を比較して、真贋を判定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止を必要とする各種情報表示媒体や偽造防止用紙とその真贋判定技術に関し、詳しくは商品券やクレジットカード等の有価証券あるいはブランド品や機器部品のパッケージ等、真正であることを証明することが必要な物品に形成される偽造防止媒体や偽造防止用紙とその真贋判定技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真贋を判定してその偽造を防止する手段としては、簡単に真似することのできない微細構造や色調変化を施したり、または他の光学機能フィルムを判定子として、それとの組み合わせでのみある光学的現象が観察されるような構成としたり、更には専用の読取装置でのみ一定のパターン等が読み取れるようにするなど、様々な態様が技術の進歩とともに実用化されてきた。
【0003】
その中でも、実際の運用上の簡便さから、最も利用されている偽造防止表示体としては、観察する角度によって色彩や画像が変化する光学的変化を発現させるOVD(Optical(ly) Variable Device)であるホログラムや回折構造体などが挙げられる。ホログラムは、二光束干渉などの光学的撮影方法により、微細な凹凸パターンや、屈折率分布を設けることで作製され、回折格子は、微小なエリアに回折格子を配置したものを画素として回折格子像が作製される。
【0004】
上記ホログラムや回折構造体は、双方ともに偽造困難で、カラーコピー機等による複写も困難で、また意匠的にも優れることから、クレジットカードやIDカード、各種有価証券、証明書等に広く用いられている。
【0005】
このようにOVDは偽造が難しく確認が容易な偽造防止手段であるが、実際には、似て非なるものを使用された偽造品を見抜くことができないケースが後を絶たない。OVD画像を全く同じにコピーすることは設備面、技術面において非常に難しいが、似た画像であれば、市販のOVDを流用して細工することが可能である。この問題に対し、確実に本物と贋物を区別する手法としてホログラム形成層と金属反射層の間に紫外線発光タイプの蛍光インキから成る印刷層を設けた構成が提案されている。(特許文献1参照)
この構成では、紫外線を照射しその発光を検証して確実に真偽判定することを可能としている。
【0006】
また、偽造防止策を施した紙ラベルにも、ラベルを構成する材料の一部に、紫外線発光タイプの蛍光インキを用いたものが利用されている。(特許文献2参照)
これら紫外線発光タイプの蛍光インキの他、偽造防止媒体や偽造防止用紙には、赤外線を照射すると発光するものが利用されているが、何れの構成においても、その真贋判定は偽造防止媒体や偽造防止用紙を置き、その上から紫外線や赤外線を偽造防止媒体や偽造防止用紙に照射すると発光し、それを真贋判定者が目視にて確認するという方法である。
【0007】
紫外線や赤外線などの前記可視外波長の光を照射して、可視光による発光を目視にて確認する真贋判定方法は、偽造防止レベルが低い偽造防止ラベルでも偽造防止レベルが高い紙幣でも、何れも同様であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−199783号公報
【特許文献2】特許第3811216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題の解決を目的としている。即ち、本発明の課題は、可視光以外の光を照射して可視光の発光を確認する真贋判定を行う場合に、従来とは全く異なる方法により真贋判定を行うことが可能な偽造防止技術を提供することによって、偽造防止効果を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、請求項1の発明は、物品に固定され、その一方の面から観察することにより前記物品の真贋を区別する偽造防止媒体において、
波長変換層と可視光透過層とを備えて構成され、
波長変換層が可視外波長の光を照射することにより可視光を発光する層であり、
可視光透過層が、波長変換層と観察面との間に配置され、かつ、前記可視外波長光を遮断すると共に前記可視光を透過させる層であることを特徴とする偽造防止媒体である。
【0011】
請求項2の発明は、前記可視光透過層が部分的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体である。
【0012】
請求項3の発明は、前記波長変換層が印刷によって設けられた層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の偽造防止媒体である。
【0013】
請求項4の発明は、前記可視外波長光が波長10〜380nmの紫外光であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の偽造防止媒体である。
【0014】
請求項5の発明は、前記可視外波長光が波長780〜1300nmの赤外光であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の偽造防止媒体である。
【0015】
請求項6の発明は、観察角度により色彩又は画像が変化するOVD層を備えており、かつ、このOVD層が、観察面側から観察できる位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の偽造防止媒体である。
【0016】
請求項7の発明は、波長変換層が、観察角度により色彩又は画像が変化するOVD層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の偽造防止媒体である。
【0017】
請求項8の発明は、部分的に設けられた反射層であって、前記OVD層の観察者側の反対面に接する反射層を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の偽造防止媒体である。
【0018】
請求項9の発明は、前記物品に固定する接着層を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の偽造防止媒体である。
【0019】
請求項10の発明は、スレッド状の形状を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の偽造防止媒体である。
【0020】
請求項11の発明は、転写箔基材上に、剥離容易に転写層を備える転写箔において、
前記転写層が可視光透過層と波長変換層とを転写箔基材側からこの順に備えており、
波長変換層が、可視外波長の光を照射することにより可視光を発光する層であり、
可視光透過層が、前記可視外波長光を遮断し、前記可視光を透過させる層であることを
特徴とする偽造防止転写箔である。
【0021】
請求項12の発明は、前記可視光透過層が部分的に設けられていることを特徴とする請求項11に記載の偽造防止転写箔である。
【0022】
請求項13の発明は、前記波長変換層が印刷によって設けられた層であることを特徴とする請求項11又は12に記載の偽造防止媒体である。
【0023】
請求項14の発明は、前記可視外波長光が波長10〜380nmの紫外光であることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の偽造防止転写箔である。
【0024】
請求項15の発明は、前記可視外波長光が波長780〜1300nmの赤外光であることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の偽造防止転写箔である。
【0025】
請求項16の発明は、観察角度により色彩又は画像が変化するOVD層を備えており、かつ、このOVD層が、転写後に観察面側から観察できる位置に配置されていることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の偽造防止転写箔である。
【0026】
請求項17の発明は、波長変換層が、観察角度により色彩又は画像が変化するOVD層であることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の偽造防止転写箔である。
【0027】
請求項18の発明は、前記OVD層の転写箔基材側とは反対側の面に接して、部分的な反射層を有することを特徴とする請求項16又は17に記載の偽造防止転写箔である。
【0028】
請求項19の発明は、紙基材の一部に偽造防止媒体が固定されている偽造防止用紙であって、
この偽造防止媒体が、波長変換層と可視光透過層とを備えて構成されており、
波長変換層が、可視外波長の光を照射することにより可視光を発光する層であり、
可視光透過層が、波長変換層と観察面との間に配置され、かつ、前記可視外波長光を遮断すると共に前記可視光を透過させる層であり、
前記紙基材が、前記可視外波長光を透過させるものであることを特徴とする偽造防止用紙である。
【0029】
請求項20の発明は、接着により紙基材に偽造防止媒体が固定されていることを特徴とする請求項19に記載の偽造防止用紙である。
【0030】
請求項21の発明は、偽造防止媒体がスレッド状の形状を有しており、このスレッド状の偽造防止媒体が紙基材に漉き込まれて固定されていることを特徴とする請求項19に記載の偽造防止用紙である。
【0031】
請求項22の発明は、物品に固定された偽造防止媒体を観察してこの物品の真贋を判定する方法において、
この偽造防止媒体が、波長変換層と可視光透過層とを備えて構成されており、
波長変換層が、可視外波長の光を照射することにより可視光を発光する層であり、
可視光透過層が、波長変換層と観察面との間に配置され、かつ、前記可視外波長光を遮断すると共に前記可視光を透過させる層であり、
この偽造防止媒体の観察面側から前記可視外波長光を照射して観察したときの結果と、観察面とは反対側から前記可視外波長光を照射して観察したときの結果とを比較して、前記真贋を判定することを特徴とする真贋判定方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の偽造防止媒体は波長変換層と可視光透過層とを備えて構成され、しかも、可視光透過層が波長変換層と観察面との間に配置されているから、前記可視外波長光を観察面側から照射しても、この光は可視光透過層に遮断されて波長変換層に到達しない。他方、観察面とは反対側から照射した場合には、この光が波長変換層に到達して可視光を発光し、この可視光は可視光透過層を透過して観察面側から観察できる。このため、観察面側から照射した場合に観察できない可視光が反対面から照射した場合に観察できた場合、この偽造防止媒体が固定された物品は真正の物品と推定できる。また、これ以外の場合には、非真正の物品である。そして、このため、偽造防止効果が高く、且つ、従来にはない新しい方法で容易に真贋判定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1(a)は、物品に固定した後、基材をそのまま残存させる偽造防止媒体の第1の具体例を示す断面図、図1(b)はこの偽造防止媒体に可視外波長の光bを照射したときを示す説明図
【図2】偽造防止媒体の第1の具体例を接着層1によって紙基材に固定して得られた偽造防止用紙の断面図
【図3】図3(a)は、物品に固定した後、基材をそのまま残存させる偽造防止媒体の第2の具体例を示す断面図、図3(b)は、この偽造防止媒体に可視外波長の光bを照射したときを示す説明図
【図4】偽造防止媒体の第2の具体例を接着層1によって紙基材に固定して得られた偽造防止用紙の断面図
【図5】偽造防止転写箔の第1の具体例を示す断面図
【図6】偽造防止転写箔の第1の具体例を紙基材に転写して得られた偽造防止用紙を示す断面図
【図7】偽造防止転写箔の第1の具体例を紙基材に転写して得られた偽造防止用紙に可視外波長の光bを照射したときを示す説明図
【図8】偽造防止転写箔の第2の具体例を示す断面図
【図9】偽造防止転写箔の第3の具体例を示す断面図
【図10】偽造防止転写箔の第4の具体例を示す断面図
【図11】従来の偽造防止媒体を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る偽造防止媒体は、その真否を判定する必要のある物品に固定されて使用されるものであり、波長変換層と可視光透過層とを必須の構成要素として構成される。
【0035】
この偽造防止媒体を製造するに当たっては、これら波長変換層及び可視光透過層の両層を支持する基材を必要とするが、前記物品に偽造防止媒体を固定した後、この基材を剥離して除去することも可能である。この場合には、波長変換層及び可視光透過層の両層と、基材とで偽造防止転写箔を構成することになる。すなわち、偽造防止媒体の基材は転写箔の基材であり、波長変換層及び可視光透過層の両層は、この転写箔から物品に転写される転写層の一部又は全部を構成する。
【0036】
もちろん、前記物品に偽造防止媒体を固定した後にも、この基材を残存させることも可能である。
【0037】
本発明に係る偽造防止媒体は、前記基材、波長変換層及び可視光透過層のほかに、これら各層の機能を阻害しない他の層を有することもできる。例えば、前記物品に接着する接着層である。あるいは、前記物品に固定した後、基材の剥離を容易とする剥離層である。また、各層の密着を強固にするための密着補助層を任意の層間に設けたり、文字や絵柄な
どを表す印刷層を任意の箇所に設けることが可能である。
【0038】
また、観察する角度によって色彩や画像が変化する光学的変化を発現させるOVD層を備えることもできる。この場合には、OVD層は、観察面側から観察できる位置に配置されていることが望ましい。
【0039】
次に、波長変換層、可視光透過層、及びOVD層の材質について説明し、次に、偽造防止媒体の層構成の具体例について説明する。なお、偽造防止媒体の基材については、偽造防止媒体を物品に固定した後基材を剥離するか否かによって、基材の材質が異なるため、偽造防止媒体の層構成と共に説明する。
【0040】
(波長変換層)
波長変換層は、可視光以外の波長の光を可視光に変換する特性を持つ層である。
【0041】
波長変換層は、有機高分子材料からなるバインダー樹脂に発光材料を溶解した溶液あるいは分散した分散液を使用することができ、このような溶液あるいは分散液を印刷して波長変換層を形成することができる。この発光材料は、外部から可視外波長の光が入射すると、可視域の光に変換されて発光するものである。可視外波長の光としては、例えば、紫外光、赤外光、X線、放射線等が挙げられ、本発明に使用される発光材料は、このような外部刺激により発光する蛍光体や燐光体、畜光体等であるが、このうち実使用上取り扱いが容易な紫外光や赤外光によって発光する材料が好ましい。
【0042】
蛍光は、外部からの刺激(励起)により可視域付近の光を発するものであるが、蛍光、燐光、蓄光と3種類に区別する場合には、励起の停止後に目に感じられる残光の存続時間がある程度(0.1sec程度)以上続くものを燐光、また、特に残光の存続時間が長い長残光のものを畜光とそれぞれ称するのが一般的である。蛍光、燐光、及び蓄光は、何れの材料も本発明に用いることが可能であるが、本発明ではその使用目的から蛍光材料が好適である。
【0043】
このような材料の例としては、以下のようなものが挙げられる。
【0044】
紫外光の照射により可視光を発光する蛍光材料は、波長10〜380nmの紫外光により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻るときに発するスペクトルのピークが青、緑、赤、等の波長域にあるものであり、硫化亜鉛やアルカリ土類金属の硫化物の高純度蛍光体に、発光をより強くするために微量の金属(銅、銀、マンガン、ビスマス、鉛など)を付活剤として加えた後、高温焼成にて得られる。母体結晶と付活剤の組み合わせにより、色相、明るさ、色の減衰の度合いを調整できる。
【0045】
一方、赤外光の照射により可視光を発光する材料は、波長780〜1300nmでエネルギーの小さな赤外光の光子を複数個用いることによって可視発光の励起を行うものである。これらの発光機構には2つのタイプがあり、一方は付活剤イオンの多段階の励起によって、他方は増感剤からの複数回の共鳴エネルギー伝達によって、それぞれ高い励起が可能になる。先のタイプは、Er3+やHo3+を付活剤とする多くの母体結晶で観測され、後のタイプは増感剤Yb3+が赤外線を吸収し、多段階のエネルギー伝達によって発光中心のEr3+、Tm3+、Ho3+等を高い準位に励起する。
【0046】
(可視光透過層)
可視光透過層は、波長変換層を励起する前記可視外波長光を吸収または反射して遮断すると共に、波長変換層で発光された前記可視光を透過する層である。すなわち、波長変換層を励起する前記可視外波長光が紫外光である場合には、この可視光透過層は紫外光反射
層又は紫外光吸収層であり、赤外光である場合には、この可視光透過層は赤外光反射層又は赤外光吸収層である。なお、可視光透過層は、これら励起光と発光光を除く他の波長の光を透過してもよいし、遮断してもよい。
【0047】
一般的に紫外光反射層として用いられる材料としては、例えば、金属やセラミックスの薄膜やシート、金属やセラミックスの微粒子を含有する樹脂フィルムまたはシート、もしくは、一側面に金属やセラミックスの微粒子を含むインキが塗布された樹脂フィルムまたはシートなどが挙げられるが、これらの材料は、同時に可視光も反射してしまう。このため本発明では紫外光反射層よりも紫外光吸収層を好適に用いることができる。また、赤外光反射層として用いられる材料も一般的には可視光も同時に反射してしまう場合が多いため、赤外光吸収層を好適に用いることができる。
【0048】
例えば、有機高分子材料からなるバインダー樹脂に紫外線吸収剤を溶解または分散して基材の全面又は部分的に印刷することにより、紫外光吸収層を構成することができる。あるいは高分子樹脂フィルムの素材自体に紫外線吸収剤を練り込んで紫外光吸収層を構成することも可能である。また、高分子樹脂に紫外線吸収剤を重合させたものを紫外光吸収層としてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート及びp−オクチルフェニルサリシレートなどのサリチル酸系紫外線吸収剤、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン及び2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジtert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート及びエチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどのシアノアクリレート系紫外線吸収剤、又は、これらの混合物を使用することができる。また、TiO及びZnOなどの微粉末からなる無機紫外線遮蔽材や紫外線吸収剤を共有結合させた樹脂も使用可能である。
【0049】
また、紫外線吸収剤の代わりに赤外線吸収剤を使用して、前記バインダー樹脂に赤外線吸収剤を溶解または分散して基材に印刷することにより、赤外光吸収層を構成することができる。あるいは高分子樹脂フィルムの素材自体に赤外線吸収剤を練り込んで赤外線吸収層を構成することも可能である。また、高分子樹脂に赤外線吸収剤を重合させたものを赤外光吸収層としてもよい。赤外線吸収剤としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系及びチオアミド系などの有機金属錯体、ジイミニウム系、アントラキノン系、ポリメチン系、アズレニウム系、スクワリリウム系及びチオピリリウム系などの有機系赤外線吸収剤、又は、これらの混合物を使用することができる。
【0050】
(OVD層)
OVD層は必要に応じて設けられるもので、このOVD層を設けることによってその偽造防止効果を高めることができる。OVD層は観察角度により色彩又は画像が変化する機能を有する層であり、回折構造体に反射層を設けたものや、多層薄膜である光学多層干渉膜やコレステリック液晶の層、観察する角度に応じて異なる色彩を見ることができる粉末を含有するインキ等が利用可能である。
【0051】
前記回折構造体としては、その表面に微細な凹凸パターンの形態で回折格子を記録した
レリーフ型回折構造体を用いることができる。このような凹凸パターンは、例えば、二光束干渉法を使用して感光性樹脂の表面に互いに可干渉の2本の光線を照射してこの感光性樹脂表面に干渉縞を生成させ、この干渉縞を凹凸の形態で感光性樹脂に記録することで形成できる。そして、こうして感光性樹脂表面に形成された凹凸パターンを型として他の樹脂表面に凹凸パターンを複製することにより、回折構造体を安価に量産することが可能である。なお、この二光束性干渉法によって形成された干渉縞も回折格子であり、前記2本の光線の選択によって任意の立体画像を回折格子パターンとして記録することが可能で、観察する角度に応じて異なる画像(以下チェンジング画像と言う)が見られるように記録することが可能である。また、観察する角度に応じてその色彩が虹色に変化する。
【0052】
なお、本発明に用いられる回折格子構造物により発現する画像パターンを記録する方法については、前記二光束干渉法の他にもイメージホログラムやレインボーホログラム、インテグラルホログラムなど、従来から知られているホログラムの製造方法により作製が可能であり、本発明においては特にこれらに限定されるものではない。
【0053】
前記凹凸パターンを複製する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂等が使用できる。例えば、熱可塑性樹脂では、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。また、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加して架橋させたウレタン樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等が使用できる。また、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂としては、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等が使用できる。
【0054】
そして、OVD層がこのような回折構造体の場合には、回折構造体に接するように反射層を設けることが望ましい。反射層としては、反射輝度が高い点で金属薄膜が好ましく利用できる。この金属薄膜に用いられる金属としては、例えば、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、真鍮等が挙げられる。そして、真空製膜法を利用してこの金属薄膜を形成することができる。真空製膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用でき、厚みは5〜1000nm程度に制御できれば良い。
【0055】
また、金属粉末や透明材料の粉末を含むインキを印刷して反射層としても良い。この場合、粉末としては粒子径500nm以下のものが好ましい。反射層の厚みは0.1〜20μmが好ましく、印刷方式として、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等、公知の印刷方法が利用できる。
【0056】
反射層は全面ではなく部分的に設けることが必要であるが、この反射層を任意のパターンとしても良い。この場合、反射層がある部分は回折構造のOVD効果を確認でき、反射層がない部分は真贋判定時に可視光発光するパターンとなる。
【0057】
このパターン状反射層を形成する方法としては、前述の印刷方式を利用する方法のほかにも種々の方法を利用できる。例えば、回折構造体にパターン状の開口部を有するマスクを重ね、反射層を真空製膜した後前記マスクを除去することにより、反射層をパターン状に製膜することが可能である。また、回折構造体上に溶剤溶解性の樹脂層をネガパターン状に設け、この溶剤溶解性樹脂層を被覆して全面一様な反射層を形成した後、溶剤を適用して前記の溶剤溶解性樹脂層を溶解除去すると共に、この溶剤溶解性樹脂層上に重ねられた反射層を除去することによって、反射層を画像パターン状に残存させてパターン状反射層とすることも可能である。また、回折構造体上に全面一様に反射層を形成し、この反射層上に耐薬品性の樹脂層を画像パターン状に設け、次にアルカリ性または酸性のエッチング液を適用して露出している反射層を溶解して除去することにより、反射層を画像パターン状に加工することもできる。
【0058】
次に、偽造防止媒体の層構成の具体例について説明する。なお、偽造防止媒体を物品に固定した後、基材をそのまま残存させる場合と、物品に固定した後に基材を剥離除去する場合とに場合分けして、その具体例について説明する。偽造防止媒体を物品に固定した後基材を剥離除去する場合には、その偽造防止媒体は転写箔である。
【0059】
(物品に固定した後、基材をそのまま残存させる偽造防止媒体)
図1(a)は、物品に固定した後、基材をそのまま残存させる偽造防止媒体の第1の具体例を示す断面図である。
【0060】
この偽造防止媒体1は、基材11上に可視光透過層12及び波長変換層13をこの順に積層して構成されており、基材11側から観察するように設計されている。すなわち、基材11表面が観察面である。なお、前述のように、これらの層のほか、接着層、密着補助層、印刷層などを設けることも可能である。
【0061】
この偽造防止媒体1の裏面(波長変換層13)側に可視外波長の光bの光源を配置して照射すると、図1(b)に示すように、波長変換層13によって可視外波長の光bの波長が可視光aに変換され、可視光aはそのまま可視光透過層12及び基材11を透過するので、観察者は可視光aの発光を観察することができる。一方、表面(基材11)側から可視光外波長の光bを照射した場合には、可視光透過層12によって、可視外波長の光bは遮断されてしまうため、波長変換層13まで届かず、可視光aは発生せず発光しない。このため、この偽造防止媒体の観察面側から前記可視外波長光を照射して観察したときの結果と、観察面とは反対側から前記可視外波長光を照射して観察したときの結果とを比較して、前記真贋を判定することができる。なお、図1では可視光透過層12として可視外波長の光bを吸収する層を用いているが、可視外波長の光bを反射する層であってもよい。
【0062】
なお、可視光透過層12を部分的に設けることも可能である。この場合、裏面(波長変換層13)側から可視光外波長の光bを照射したときには、可視光透過層12を全面に設けた場合と同様に、波長変換層13によって発光した可視光aをそのまま観察できる。他方、表面(基材11)側から可視光外波長の光bを照射したときには、可視光透過層12の存在しない部位ではこの可視光外波長の光bが波長変換層13に到達して可視光aを発光し、この可視光aを観察することができる。可視光透過層12が設けられた部位では可視光aは発生しないから、表面(基材11)側から可視光外波長の光bを照射したときに観察できる可視光aは、可視光透過層12の存在しない部位のパターン形状を有している。このように裏面(波長変換層13)側からした場合と表面(基材11)側から場合とで観察できる可視光aの形状が異なるから、その偽造防止効果を一層高めることができる。
【0063】
次に、以上の説明から分かるように、基材11は、波長変換層13によって発光した可視光を透過させることが必要である。このような基材11としては、単体の樹脂フィルム、複数の樹脂層を積層した積層体、紙、紙と樹脂フィルムとの積層体、樹脂を主材料として製造された合成紙などが使用できる。中でも、可視光の透過性が高い点で、単体の樹脂フィルム、あるいは、複数の樹脂層を積層した積層体が好ましい。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、耐熱塩化ビニルフィルム等が使用できる。これらの樹脂の中で、耐熱性が高く厚みが安定していることから、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが好ましく使用できる。
【0064】
次に、図2は、この偽造防止媒体1を接着層1によって紙基材2に固定して得られた偽造防止用紙の断面図である。接着層15は偽造防止媒体1を紙基材などの物品に接着して固定する際に必要となるもので、熱や圧力によってこれら物品に接着するものであれば良
く、公知の感熱性接着材料を使用することができる。また、偽造防止媒体1を固定する物品は紙基材2に限ることはなく、波長変換層13を励起する前記可視光外波長の光bを透過できるものであればよい。例えば、透明プラスチック製のカードである。あるいは、商品の包装に使用されるプラスチックフィルムの一部に透明領域を設け、この透明領域に偽造防止媒体1を接着して固定することもできる。
【0065】
なお、接着層15を使用することなく偽造防止媒体を物品に固定することも可能である。例えば、この偽造防止媒体を短冊状のスレッド状の形状に加工すれば、このスレッド状の偽造防止媒体を紙基材2に漉き込むことにより、紙基材2に固定することができる。
【0066】
次に、図3(a)は、物品に固定した後、基材をそのまま残存させる偽造防止媒体の第2の具体例を示す断面図で、レリーフ型回折構造体14を有する偽造防止媒体の具体例を示す断面図である。
【0067】
すなわち、この偽造防止媒体1は、基材11上に可視光透過層12、レリーフ型回折構造体14及び波長変換層13をこの順に積層して構成されており、基材11側から観察するように設計されている。なお、図中、14aはレリーフ型回折構造体14の凹凸パターンであり、この凹凸パターンの一部に反射層141が設けられている。この反射層141のある部位においては、入射光を反射回折して、回折画像を発生する。この回折画像は観察する角度によって色彩がレインボー状に変化し、また、その画像も変化する。他方、反射層141が存在しない部位では、回折構造体14の凹凸パターン14aが波長変換層13によって埋められているから、回折光を発生しない。
【0068】
この偽造防止媒体1の裏面(波長変換層13)側に可視外波長の光bの光源を配置して照射すると、図3(b)に示すように、波長変換層13によって可視外波長の光bの波長が可視光aに変換され、可視光aは、反射層141の存在しない部位を通り、観察者はこの部位の発光を観察することができる。一方、表面(基材11)側から可視光外波長の光bを照射した場合には、可視光透過層12によって、可視外波長の光bは遮断されてしまうため、波長変換層13まで届かず、可視光aは発生せず発光しない。また、表面(基材11)側から可視光を照射した場合には、反射層141のある部位においてこの可視光が反射回折して、回折画像を発生する。
【0069】
この偽造防止媒体1も、前記第1の偽造防止媒体1と同様に接着層15を使用して紙基材などの物品に接着して固定することができる。図4はこの状態を示す断面図である。
【0070】
(物品に固定した後、基材を剥離除去する偽造防止媒体)
この偽造防止媒体は、いわゆる転写箔の形態をとるものである。このため、以下、この偽造防止媒体を偽造防止転写箔と呼ぶ。
【0071】
図5は、偽造防止転写箔1’の第1の具体例を示す断面図である。
【0072】
この偽造防止転写箔1’は、基材11’上に剥離容易に転写層を積層して構成されたものである。そして、転写層は基材11’側から順に剥離保護層16、可視光透過層12、波長変換層13及び接着層15を積層して構成されており、転写層を転写して基材11’を剥離除去した後に、剥離保護層16側から観察するように設計されている。この偽造防止転写箔1’は、物品に接着して固定した後、基材11’と剥離保護層16との間で剥離して、剥離保護層16を物品側に残存させたまま、基材11’を除去して使用するものである。このため、剥離保護層16はこの基材11’から容易に剥離できる材質で構成されており、また、基材11’を剥離除去した後には可視光透過層12を磨耗や薬品による損傷から保護する機能を有する。なお、この明細書において、物品に接着して固定した後に除去される基材11’を転写箔基材と呼ぶ。また、図5において、可視光透過層12は偽造防止転写箔の全面に設けられているが、部分的に設けることも可能である。
【0073】
転写箔基材11’は、前記基材11と異なり、波長変換層13によって発光した可視光を透過させることを必要としない。このため、不透明なシート材料を使用することも可能である。このような転写箔基材11’としては、単体の樹脂フィルム、複数の樹脂層を積層した積層体、紙、紙と樹脂フィルムとの積層体、樹脂を主材料として製造された合成紙などが使用できる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、耐熱塩化ビニルフィルム等が使用できる。これらの樹脂の中で、耐熱性が高く厚みが安定していることから、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが好ましく使用できる。
【0074】
また、剥離保護層16としては、樹脂に滑剤を添加して、転写箔基材11’との剥離性を高めたものが使用できる。樹脂としては、熱可塑性樹脂、湿気硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が使用できる。例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂である。また、滑剤としては、ポリエチレンパウダー、カルナバワックス等のワックスを使用することができる。樹脂に対する滑剤の添加量は、その合計量に対して20重量部以下でよい。これらをグラビア印刷法やマイクログラビア印刷法等の印刷方法によって印刷することにより、剥離保護層16を形成することができる。
【0075】
次に、図6は、この偽造防止転写箔1’を紙基材2に転写して得られた偽造防止用紙を示している。すなわち、この偽造防止用紙は、紙基材2上に接着層15を介して波長変換層13及び可視光透過層12が積層され、その表面を剥離保護層16で覆って保護した構造を有している。
【0076】
この偽造防止用紙の裏面(紙基材2)側に可視外波長の光bの光源を配置して照射すると、図7に示すように、この可視外波長の光bは紙基材2と接着層15とを透過して、波長変換層13に到達する。そして、波長変換層13によって可視光aに変換され、この可視光aはそのまま可視光透過層12及び剥離保護層16を透過するので、観察者は可視光aの発光を観察することができる。一方、表面(剥離保護層16)側から可視光外波長の光bを照射した場合には、可視光透過層12によって、可視外波長の光bは遮断されてしまうため、波長変換層13まで届かず、可視光aは発生せず発光しない。このため、この偽造防止用紙の観察面側から前記可視外波長光を照射して観察したときの結果と、観察面とは反対側から前記可視外波長光を照射して観察したときの結果とを比較して、前記真贋を判定することができる。
【0077】
なお、可視光透過層12を部分的に設けた場合には、表面(剥離保護層16)側から可視光外波長の光bを照射したときに観察できる可視光aは、可視光透過層12の存在しない部位のパターン形状を有している。
【0078】
次に、図8は、偽造防止転写箔1’の第2の具体例を示す断面図で、レリーフ型回折構造体14を有する偽造防止転写箔の具体例を示す断面図である。
【0079】
すなわち、この偽造防止転写箔1’は、転写箔基材11’上に剥離容易に転写層を積層して構成されたものである。そして、転写層は転写基材11’側から順に剥離保護層16、可視光透過層12、レリーフ型回折構造体14、波長変換層13及び接着層15を積層して構成されており、転写層を転写して転写箔基材11’を剥離除去した後に、剥離保護層16側から観察するように設計されている。この偽造防止転写箔1’も、物品に接着して固定した後、転写箔基材11’と剥離保護層16との間で剥離して、剥離保護層16を物品側に残存させたまま、転写箔基材11’を除去して使用するものである。なお、図中、14aはレリーフ型回折構造体14の凹凸パターンであり、この凹凸パターンの一部に反射層141が設けられている。
【0080】
ところで、可視光透過層12と転写箔基材11’とが互いに剥離容易な材質である場合には、前記剥離保護層16を省略することができる。また、波長変換層13が紙基材2などの物品に対して十分な接着性を有する場合には、接着層15を省略することができる。
【0081】
図9〜図10は、このような偽造防止転写箔1’の具体例を示すもので、図9に示す偽造防止転写箔1’では、剥離保護層16と接着層15の双方が省略されている。すなわち、この偽造防止転写箔1’においては、基材11’上に積層された転写層が、基材11’側から順に可視光透過層12及び波長変換層13を積層して構成されている。この偽造防止転写箔1’は、転写層を転写して基材11’を剥離除去した後に、可視光透過層12側から観察するように設計されている。
【0082】
また、図9に示す偽造防止転写箔1’では、接着層15が省略されている。すなわち、この偽造防止転写箔1’においては、基材11’上に積層された転写層が、基材11’側から順に、剥離保護層16、可視光透過層12及び波長変換層13を積層して構成されている。この偽造防止転写箔1’は、転写層を転写して基材11’を剥離除去した後に、剥離保護層16側から観察するように設計されている。
【実施例】
【0083】
次に、実施例によって本発明を説明する。
【0084】
なお、実施例1〜2及び比較例1は、物品に固定した後、基材をそのまま残存させる偽造防止媒体の例であり、実施例3〜4、比較例2は、偽造4は防止転写箔の例である。このため、まず実施例1〜2及び比較例1とその偽造防止効果に関する試験結果について説明し、次に実施例3〜4及び比較例2とその偽造防止効果に関する試験結果について説明する。
【0085】
(実施例1)
まず、偽造防止媒体1の基材11として厚さ25μmの透明ポリエチレンテレフタレート(通称PET)フィルムを使用した。
【0086】
この基材11に、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚2μmの可視光透過層12を形成した。
【0087】
次に、この可視光透過層12上に、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚1μmの波長変換層13を形成した。
【0088】
次に、この波長変換層13上に、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚5μmの接着層15を形成して、偽造防止媒体1を製造した。
【0089】
最後に、紙基材2として光透過性を持つ秤量69.8g/mのOCR用紙を使用し、このOCR用紙に偽造防止媒体1を接着固定して、偽造防止用紙を作製した。
【0090】
「可視光透過層用インキ組成物」
アクリル樹脂 20.0重量部
紫外線吸収剤 1.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「波長変換層用インキ組成物」
アクリル樹脂 20.0重量部
紫外線発光蛍光剤 1.5重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「接着層インキ用組成物」
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 17.5重量部
メチルエチルケトン 20.0重量部
トルエン 20.0重量部
(実施例2)
まず、偽造防止媒体1の基材11として、厚さ25μmの透明PETフィルムを使用した。
【0091】
この基材11に、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚2μmの可視光透過層12を形成した。
【0092】
次に、この可視光透過層12上に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥して膜厚1μmの層を形成した後、ロールエンボス法により回折格子形成用のプレス版を熱圧してその表面に回折格子を発生させる凹凸パターン14aを形成し、レリーフ型回折構造体14とした。
【0093】
次に、このレリーフ型回折構造体14の凹凸面全面に、真空蒸着法にてアルミニウム蒸着膜を膜厚40nmにて均一に形成し、1064nmのYAGレーザを用いてアルミ蒸着膜だけを部分的に除去することで、パターン状の反射層141を形成した。
【0094】
次に、この反射層141及び露出しているレリーフ型回折構造体14を被覆して、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚1μmの波長変換層13を形成した。
【0095】
次に、この波長変換層13上に、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚5μmの接着層15を形成して、偽造防止媒体1を製造した。
【0096】
最後に、紙基材2として前記OCR用紙を使用し、このOCR用紙に偽造防止媒体1を接着固定して、偽造防止用紙を作製した。
【0097】
「可視光透過層インキ組成物」
アクリル樹脂 20.0重量部
紫外線吸収剤 1.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「回折構造体用インキ組成物」
ウレタン樹脂 25.0重量部
シリコン系添加剤 1.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
トルエン 30.0重量部
「波長変換層インキ組成物」
アクリル樹脂 20.0重量部
紫外線発光蛍光剤 1.5重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「接着層インキ組成物」
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 17.5重量部
メチルエチルケトン 20.0重量部
トルエン 20.0重量部
(比較例1)
比較例として、図11に示すように、基材11の上に、パターン状の印刷層17、波長変換層13及び接着層15を積層した偽造防止媒体を作製した。基材11、波長変換層13及び接着層15の材質及び形成方法は、実施例1と同様である。次に、紙基材2として前記OCR用紙を使用し、このOCR用紙にこの偽造防止媒体を接着固定して、偽造防止用紙を作製した。
(実施例1〜2、比較例1の評価)
実施例1で作製した偽造防止用紙は、OCR用紙が薄く、紫外光を透過することから、OCR用紙側から紫外線を照射すると、波長変換層13によって紫外線が可視光に変換され、そのまま可視光透過層12と基材11を透過し、観察者は偽造防止媒体1の全面でその発光を観察することができた。
【0098】
更に、今度は基材11側から紫外線を照射すると、可視光透過層12が紫外線を吸収してしまい、波長変換層13には紫外線が届かないことから可視光は発生せず、観察者は可視光を観察することかできなかった。
【0099】
よって、観察者は表面の基材11側から紫外線を照射しても発光しないが、裏面のOCR用紙側から照射すると可視光が観察できることで、真偽判定が容易に行えることが分かった。
【0100】
次に、実施例2で作製した偽造防止用紙では、レリーフ型回折構造体14が可視光透過層12と波長変換層13との間に形成され、反射層141が部分的に形成されていることから、OCR用紙側から紫外線を照射すると、波長変換層13によって紫外線が可視光に変換され、反射層141がある部分は紫外線及び可視光は透過できず、反射層141がない部分だけ可視光が透過し、その後、レリーフ型回折構造体14,可視光透過層12、基材11を透過した可視光を観察者は観察することができた。また、基材11側から紫外線を照射すると、可視光透過層12が紫外線を吸収してしまい、波長変換層13には紫外線が届かないことから可視光は発生せず、観察者は可視光を観察することかできなかった。
【0101】
また、基材11側から可視光を照射すると、反射層141のある部分ではレリーフ型回折構造体14による回折画像を観察することができ、観察角度を変えると、この回折画像は、色彩及び画像の形状が変化して観察できた。
【0102】
このため、観察者は、反射層141のある部分ではOVDの効果を確認することができ、反射層141がない部分では、波長変換層13によって変換された可視光を観察することができるため、OVDによる光学変化と変換された可視光の両方の光学効果を容易に確認することができた。
【0103】
一方、比較例の偽造防止用紙においては、表裏のどちらの側から紫外線を照射しても、印刷層17は紫外線を透過しないため印刷層17がない部分だけ紫外線が透過して波長変換層13に入射し、可視光による発光が観察できてしまった。
【0104】
(実施例3)
偽造防止転写箔1’の転写基材11’として、厚さ25μmの透明PETフィルムを使用した。
【0105】
この転写基材11’に、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚1μmの剥離保護層16を形成した。
【0106】
次に、この剥離保護層16の上に、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚2μmの可視光透過層12を形成した。
【0107】
次に、この可視光透過層12上に、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚1μmの波長変換層13を形成した。
【0108】
次に、この波長変換層13上に、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚5μmの接着層15を形成して、偽造防止転写箔1’を製造した。
【0109】
最後に、紙基材2として光透過性を持つ秤量69.8g/mのOCR用紙を使用し、このOCR用紙に偽造防止転写箔1’を接着した後、転写基材11’を剥離除去して、偽造防止用紙を作製した。
【0110】
「剥離保護層用インキ組成物」
ポリアミドイミド樹脂(Tg.250℃) 19.2重量部
ポリエチレンパウダー 0.8重量部
ジメチルアセトアミド 45.0重量部
トルエン 35.0重量部
「可視光透過層インキ組成物」
アクリル樹脂 20.0重量部
紫外線吸収剤 1.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「波長変換層インキ組成物」
アクリル樹脂 20.0重量部
紫外線発光蛍光剤 1.5重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「接着層インキ組成物」
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 17.5重量部
メチルエチルケトン 20.0重量部
トルエン 20.0重量部
(実施例4)
偽造防止転写箔1’の転写基材11’として、厚さ25μmの透明PETフィルムを使用した。
【0111】
この転写基材11’に、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚1μmの剥離保護層16を形成した。
【0112】
次に、この剥離保護層16の上に、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚2μmの可視光透過層12を形成した。
【0113】
次に、この可視光透過層12上に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥して膜厚1μmの層を形成した後、ロールエンボス法により回折格子形成用のプレス版を熱圧してその表面に回折格子を発生させる凹凸パターン14aを形成し、レリーフ型回折構造体14とした。
【0114】
次に、このレリーフ型回折構造体14の凹凸面全面に、真空蒸着法にてアルミニウム蒸着膜を膜厚40nmにて均一に形成し、1064nmのYAGレーザを用いてアルミ蒸着膜だけを部分的に除去することで、パターン状の反射層141を形成した。
【0115】
次に、この反射層141及び露出しているレリーフ型回折構造体14を被覆して、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚1μmの波長変換層13を形成した。
【0116】
次に、この波長変換層13上に、下記組成からなるインキを塗布、乾燥し、膜厚5μmの接着層15を形成して、偽造防止転写箔1’を製造した。
【0117】
最後に、紙基材2として光透過性を持つ秤量69.8g/mのOCR用紙を使用し、このOCR用紙に偽造防止転写箔1’を接着した後、転写基材11’を剥離除去して、偽造防止用紙を作製した。
【0118】
「剥離保護層用インキ組成物」
ポリアミドイミド樹脂(Tg.250℃) 19.2重量部
ポリエチレンパウダー 0.8重量部
ジメチルアセトアミド 45.0重量部
トルエン 35.0重量部
「可視光透過層インキ組成物」
アクリル樹脂 20.0重量部
紫外線吸収剤 1.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「回折構造体用インキ組成物」
ウレタン樹脂 25.0重量部
シリコン系添加剤 1.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
トルエン 30.0重量部
「波長変換層インキ組成物」
アクリル樹脂 20.0重量部
紫外線発光蛍光剤 1.5重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
「接着層インキ組成物」
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 17.5重量部
メチルエチルケトン 20.0重量部
トルエン 20.0重量部
(比較例2)
比較例として、転写基材11’の上に、剥離保護層16、波長変換層13及び接着層15を積層した偽造防止転写箔を作製した。転写基材11’、剥離保護層16、波長変換層13及び接着層15の材質及び形成方法は、実施例3と同様である。次に、紙基材2として前記OCR用紙を使用し、このOCR用紙に偽造防止転写箔を接着した後、転写基材を剥離除去して、偽造防止用紙を作製した。
(実施例3〜4、比較例2の評価)
実施例3で作製した偽造防止用紙は、OCR用紙が薄く、紫外光を透過することから、OCR用紙側から紫外線を照射すると、波長変換層13によって紫外線が可視光に変換され、そのまま可視光透過層12と剥離保護層16を透過し、観察者は転写層の全面でその発光を観察することができた。
【0119】
更に、今度は剥離保護層16側から紫外線を照射すると、可視光透過層12が紫外線を吸収してしまい、波長変換層13には紫外線が届かないことから可視光は発生せず、観察者は可視光を観察することかできなかった。
【0120】
よって、観察者は表面の剥離保護層16側から紫外線を照射しても発光しないが、裏面のOCR用紙側から照射すると可視光が観察できることで、真偽判定が容易に行えることが分かった。
【0121】
次に、実施例4で作製した偽造防止用紙では、レリーフ型回折構造体14が可視光透過層12と波長変換層13との間に形成され、反射層141が部分的に形成されていることから、裏面のOCR用紙側から紫外線を照射すると、波長変換層13によって紫外線が可視光に変換され、反射層141がある部分は紫外線及び可視光は透過できず、反射層141がない部分だけ可視光が透過し、その後、レリーフ型回折構造体14,可視光透過層12、基材11を透過した可視光を観察者は観察することができた。また、表面の剥離保護層16側から紫外線を照射すると、可視光透過層12が紫外線を吸収してしまい、波長変換層13には紫外線が届かないことから可視光は発生せず、観察者は可視光を観察することかできなかった。
【0122】
また、表面の剥離保護層16側から可視光を照射すると、反射層141のある部分ではレリーフ型回折構造体14による回折画像を観察することができ、観察角度を変えると、この回折画像は、色彩及び画像の形状が変化して観察できた。
【0123】
このため、観察者は、反射層141のある部分ではOVDの効果を確認することができ、反射層141がない部分では、波長変換層13によって変換された可視光を観察することができるため、OVDによる光学変化と変換された可視光の両方の光学効果を容易に確認することができた。
【0124】
一方、比較例の偽造防止用紙においては、OCR用紙の表裏のどちらの側から紫外線を照射しても、反射層141は紫外線を透過しないため、反射層141がない部分だけ紫外線が透過して波長変換層13に入射し、可視光による発光が観察できてしまった。
【符号の説明】
【0125】
1 偽造防止媒体
1’ 偽造防止転写箔
11 偽造防止媒体の基材
11’ 転写箔基材
12 可視光透過層
13 波長変換層
14 レリーフ型回折構造体
14a 凹凸パターン
141 反射層
15 接着層
16 剥離保護層
17 印刷層
2 紙基材
a 可視光
b 可視外波長光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品に固定され、その一方の面から観察することにより前記物品の真贋を区別する偽造防止媒体において、
波長変換層と可視光透過層とを備えて構成され、
波長変換層が可視外波長の光を照射することにより可視光を発光する層であり、
可視光透過層が、波長変換層と観察面との間に配置され、かつ、前記可視外波長光を遮断すると共に前記可視光を透過させる層であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
前記可視光透過層が部分的に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体。
【請求項3】
前記波長変換層が印刷によって設けられた層であることを特徴とする請求項1又は2に記載の偽造防止媒体。
【請求項4】
前記可視外波長光が波長10〜380nmの紫外光であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の偽造防止媒体。
【請求項5】
前記可視外波長光が波長780〜1300nmの赤外光であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の偽造防止媒体。
【請求項6】
観察角度により色彩又は画像が変化するOVD層を備えており、かつ、このOVD層が、観察面側から観察できる位置に配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の偽造防止媒体。
【請求項7】
波長変換層が、観察角度により色彩又は画像が変化するOVD層であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の偽造防止媒体。
【請求項8】
部分的に設けられた反射層であって、前記OVD層の観察者側の反対面に接する反射層を有することを特徴とする請求項6又は7に記載の偽造防止媒体。
【請求項9】
前記物品に固定する接着層を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の偽造防止媒体。
【請求項10】
スレッド状の形状を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の偽造防止媒体。
【請求項11】
転写箔基材上に、剥離容易に転写層を備える転写箔において、
前記転写層が可視光透過層と波長変換層とを転写箔基材側からこの順に備えており、
波長変換層が、可視外波長の光を照射することにより可視光を発光する層であり、
可視光透過層が、前記可視外波長光を遮断し、前記可視光を透過させる層であることを特徴とする偽造防止転写箔。
【請求項12】
前記可視光透過層が部分的に設けられていることを特徴とする請求項11に記載の偽造防止転写箔。
【請求項13】
前記波長変換層が印刷によって設けられた層であることを特徴とする請求項11又は12に記載の偽造防止媒体。
【請求項14】
前記可視外波長光が波長10〜380nmの紫外光であることを特徴とする請求項11
〜13のいずれかに記載の偽造防止転写箔。
【請求項15】
前記可視外波長光が波長780〜1300nmの赤外光であることを特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の偽造防止転写箔。
【請求項16】
観察角度により色彩又は画像が変化するOVD層を備えており、かつ、このOVD層が、転写後に観察面側から観察できる位置に配置されていることを特徴とする請求項11〜15のいずれかに記載の偽造防止転写箔。
【請求項17】
波長変換層が、観察角度により色彩又は画像が変化するOVD層であることを特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の偽造防止転写箔。
【請求項18】
前記OVD層の転写箔基材側とは反対側の面に接して、部分的な反射層を有することを特徴とする請求項16又は17に記載の偽造防止転写箔。
【請求項19】
紙基材の一部に偽造防止媒体が固定されている偽造防止用紙であって、
この偽造防止媒体が、波長変換層と可視光透過層とを備えて構成されており、
波長変換層が、可視外波長の光を照射することにより可視光を発光する層であり、
可視光透過層が、波長変換層と観察面との間に配置され、かつ、前記可視外波長光を遮断すると共に前記可視光を透過させる層であり、
前記紙基材が、前記可視外波長光を透過させるものであることを特徴とする偽造防止用紙。
【請求項20】
接着により紙基材に偽造防止媒体が固定されていることを特徴とする請求項19に記載の偽造防止用紙。
【請求項21】
偽造防止媒体がスレッド状の形状を有しており、このスレッド状の偽造防止媒体が紙基材に漉き込まれて固定されていることを特徴とする請求項19に記載の偽造防止用紙。
【請求項22】
物品に固定された偽造防止媒体を観察してこの物品の真贋を判定する方法において、
この偽造防止媒体が、波長変換層と可視光透過層とを備えて構成されており、
波長変換層が、可視外波長の光を照射することにより可視光を発光する層であり、
可視光透過層が、波長変換層と観察面との間に配置され、かつ、前記可視外波長光を遮断すると共に前記可視光を透過させる層であり、
この偽造防止媒体の観察面側から前記可視外波長光を照射して観察したときの結果と、観察面とは反対側から前記可視外波長光を照射して観察したときの結果とを比較して、前記真贋を判定することを特徴とする真贋判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−224927(P2011−224927A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99012(P2010−99012)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】