説明

偽造防止媒体の製造方法

【課題】
所有者の個人情報などの画像が表示でき、かつ、偽造変造なりすましを防止するセキュリティ性と意匠性の両立できる偽造防止媒体の製造方法を提供する。
【解決手段】
(1)基材11と、該基材11の一方の面へ剥離層13、ホログラム層15、パール印刷層23、透明反射層17、及び受容層21からなる中間転写記録媒体10を準備する準備工程と、(2)該中間転写記録媒体10の受容層21面へ、任意の画像103を印画する画像形成工程と、(3)該印画されてなる前記中間転写記録媒体10の受容層21面を、予め準備しておいた媒体101へ重ね合せて加熱加圧して転写する転写工程と、(4)前記基材11を剥離し除去する剥離工程と、からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止媒体の製造方法に関し、さらに詳しくは、画像を印画でき、OVI効果のあるパール印刷をホログラムを同居させ、意匠性とセキュリティ性とを高めた偽造防止媒体の製造方法に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」、「UV」は「紫外線」、「電離放射線硬化(性)樹脂」は「未硬化の電離放射線硬化性樹脂と、硬化した電離放射線硬化樹脂の総称」、「印字」は「印画」の略語、機能的表現、通称、又は業界用語である。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明で製造された偽造防止媒体の主なる用途としては、例えば、紙幣、株券、証券、証書、商品券、小切手、手形、入場券、通帳類、ギフト券、乗車券、車馬券、印紙、切手、鑑賞券、入場証、通行証、チケット等の金券類、キャッシュカード、クレジットカード、IDカード、プリペイドカード、メンバーズカード、ICカード、光カードなどのカード類、グリーティングカード、ハガキ、名刺、運転免許証、パスポート等の各種証明書やその証明写真類、カートン、ケース、軟包装材などの包装材類、バッグ類、化粧品、腕時計、ライター等のブランド装身具、封筒、タグ、しおり、カレンダー、ポスター、パンフレット、ネームプレート、レポート用紙など文具類、建材、パネル、エンブレム、キー、布、衣類、履物、ラジオ、テレビ、電卓、OA機器等の装置類などがある。しかしながら、画像を印画でき、パール印刷をホログラムを同居させ、意匠性とセキュリティ性とを高めた用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)従来、金券類、カード類、及び各種証明書類などの偽造防止媒体は、資格証明や一定の経済的価値や効果を持つため、偽造変造なりすましを防止するセキュリティ性が求められるが、所有者の所持満足や楽しさのために意匠性もまた求められる。個人情報の表示方法として、熱転写方式による印画(表示)が広く使用される様になっている。これらの熱転写方式では、各種の画像が簡便に形成されるので、印刷枚数が比較的少なくてもよい印刷物、例えば、身分証明書等のIDカードの作成等に利用される様になり、溶融転写タイプや昇華タイプの熱転写フイルム(インクリボン)を用いる転写方式やインクジェット方式がある。熱転写方式では専用のインクリボンを用いて印画するので、印画されて抜けた部分があるインクリボンが排出され、該排出インクリボンの抜け部分は秘密にしたい個人情報などであり、該個人情報などが廃棄されるインクリボンから容易に知られてしまうという問題点があり、好ましくは、インクジェット方式である。しかしながら、インクリボンを使用しないインクジェット方式では、インクジェット方式による画像では乾燥が遅いため画像形成速度が遅くなったり、また印画が滲んだり、さらに画像形成後の乾燥も遅いので、直ちに媒体へ転写できないという問題点もあった。さらにまた、カード類、及び各種証明書類などは、資格証明や一定の経済的価値や効果を持つため、所有者を容易に特定できずなりすましや、偽造変造によって所有者以外が使用できてしまうという欠点もあった。
従って、偽造防止媒体は、所有者の個人情報などの画像が表示でき、かつ、偽造変造なりすましを防止するセキュリティ性と意匠性の両立が求められている。
【0005】
(先行技術)従来、受像層に昇華性熱転写、溶融性熱転写、インクジェット、または電子写真により画像形成し、基材上に熱転写により転写されたカードが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、インクジェットによる画像は文字などの画像であり、特段のセキュリティ性も意匠性も有していないという問題点がある。
また、本出願人は、熱転写シート基材、離型層、耐水性樹脂層、水性インキ受容層、インクジェット印刷層が順に形成された熱転写シートと、該熱転写シートをカード素材へ熱転写するカードの製造方法を開示している(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、所有する個人の顔写真や自分の好みの図案や絵柄からなる任意の鮮明なオリジナル画像を形成できるが、偽造変造なりすましを防止するセキュリティ性が低いという欠点がある。
【0006】
【特許文献1】特開平10−244788号公報
【特許文献2】特開2006−205489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、所有者の個人情報などの画像が表示でき、かつ、偽造変造なりすましを防止するセキュリティ性と意匠性の両立できる偽造防止媒体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わる偽造防止媒体は、(1)基材と、該基材の一方の面へ剥離層、ホログラム層、パール印刷層、透明反射層、及び受容層からなる中間転写記録媒体を準備する準備工程と、(2)該中間転写記録媒体の受容層面へ、任意の画像を印画する画像形成工程と、(3)該印画されてなる前記中間転写記録媒体の受容層面を、予め準備しておいた媒体へ重ね合せて加熱加圧して転写する転写工程と、(4)前記基材を剥離し除去する剥離工程と、からなり、前記パール印刷層をホログラム層に賦型されてなるホログラム図柄より食み出さないパール印刷図柄で設けて、該パール印刷図柄部分のホログラム層の光回折効果を消滅させてなるパール印刷図柄が、ホログラム層と透明反射層とから構成されるホログラム図柄に囲まれて浮き出すように観察できるように、したものである。
請求項2の発明に係わる偽造防止媒体は、上記受容層がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、かつ上記受容層への印画方式がインクジェット方式であるように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、所有者の個人情報などの画像が表示でき、かつ、偽造変造なりすましを防止するセキュリティ性と意匠性の両立できる偽造防止媒体が提供される。
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、インクリボンを使用しないインクジェット方式なので、印画が滲まず、画像の乾燥が早く、さらに画像形成後の乾燥が早きので、直ちに被転写体へ転写でき、転写後の画像は、耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性により優れる偽造防止媒体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の偽造防止媒体の製造方法を示すステップ図である。
図2は、本発明の偽造防止媒体の製造方法に用いる中間転写記録媒体の1実施例を示す断面図である。
図3は、本発明の偽造防止媒体の製造方法を説明する説明図である。
図4は、本発明の偽造防止媒体の製造方法で製造した偽造防止媒体の1実施例を示す断面図である。
図5は、本発明の偽造防止媒体の製造方法で製造した偽造防止媒体で観察される図柄の1実施例を示す平面図である。
【0011】
(偽造防止媒体の製造方法)本発明の偽造防止媒体100の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、図1に示すように、ステップ1の中間転写記録媒体10の準備工程、ステップ2の画像形成工程、ステップ3の転写工程、ステップ4の剥離工程、とからなっている。ステップ1は(1)基材11と、該基材11の一方の面へ剥離層13、ホログラム層15、パール印刷層23、透明反射層17、及び受容層21からなる中間転写記録媒体10を準備する準備工程で、ステップ2は(2)該中間転写記録媒体10の受容層21面へ、任意の画像103を印画する画像形成工程で、ステップ3は(3)該印画されてなる前記中間転写記録媒体10の受容層21面を、予め準備しておいた媒体101へ重ね合せて加熱加圧して転写する転写工程で、ステップ4は(4)前記基材11を剥離し除去する剥離工程と、からなる。
【0012】
(ステップ1)ステップ1は(1)基材11と、該基材11の一方の面へ剥離層13、ホログラム層15、パール印刷層23、透明反射層17、及び受容層21からなる中間転写記録媒体10を準備する準備工程である。
【0013】
(中間転写記録媒体)中間転写記録媒体10は、図2に示すように、基材11と、該基材11の一方の面へ剥離層13、ホログラム層15、パール印刷層23、透明反射層17、及び受容層21を有する。これらの層間及び/又は層表面へ、必要に応じてプライマ層18、印刷層などの他の層を設けてもよい。受容層21へインクジェット方式で画像103を印画した状態を図3(A)に示す。画像103を印画した中間転写記録媒体10を図3(B)に示す被転写体(媒体101)へ転写することで、図4に示すような偽造防止媒体100となる。
【0014】
(基材)基材11としては、特に限定されるではなく、好ましい基材11の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリアミド、ポリメチルペンテン等のプラスチックの延伸または未延伸フィルムが挙げられる。また、これらの材料を2種以上積層した複合フィルムも使用することができる。基材フィルムの厚さは、その強度および耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択することができるが、通常は1〜100μm程度のものが好ましく用いられる。
【0015】
(剥離層)転写時の剥離性を向上させるために剥離層13を設け、必要に応じて、剥離層及び剥離層13の両方を設けるとより転写性をより向上できる。
【0016】
(剥離層)剥離層13としては、一般的にはエチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラールなどのビニル共重合体の熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂などの熱硬化型の樹脂を用いて形成することができる。また、剥離層には箔切れ性を向上させるために、マイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含有させることが好ましい。離型層は、上記の樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコート、バーコートなどの公知のコーティング方法で、少なくとも1部に塗布し乾燥して塗膜を形成したりすれば良い。離型層の厚さとしては、通常は0.1μm〜5μm程度、好ましくは0.5μm〜2μm程度である。離型層及び剥離層13の両方を設ける場合には、適宜組み合わせて用いればよく、この場合には、剥離層13は転写後には媒体へ転写移行して、保護層としての機能を合わせ持つ。
【0017】
(離型層)離型層としては、通常、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などがあるが、好ましくはメラミン系樹脂を用い、剥離層13と組合わせることで、剥離層13との剥離性が安定し、転写時の転写性を向上させることができる。離型層の形成は、該樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥して、温度150℃〜200℃程度で焼き付ける。離型層の厚さとしては、通常は0.01μm〜5.0μm程度、好ましくは0.5μm〜3.0μm程度である。
【0018】
(ホログラム層)ホログラム層15としては、電離放射線硬化性樹脂の硬化物を主成分に、反応性シリコーンを含ませたり、それらに加えてマイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含ませてもよい。
【0019】
(ホログラム層の形成)ホログラム層15は、例えば、エポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等が適用でき、好ましくはウレタン変性アクリレート樹脂などの電離放射線硬化性樹脂、及び必要に応じて添加剤を、溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコートなどの公知のコーティング方法で、少なくとも1部に塗布し乾燥して塗膜を形成したりすれば良い。ホログラム層15の厚さとしては、通常は1μm〜30μm程度、好ましくは2μm〜20μm程度である。複数回の塗布でもよい。
【0020】
(ホログラム)次に、ホログラム層15の表面には、ホログラムなどの光回折効果の発現する所定のレリーフ構造を賦型し、硬化させる。ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。レリーフ形状は凹凸形状であり、特に限定されるものではなく、微細な凹凸形状を有する光拡散、光散乱、光反射、光回折などの機能を発現するものでもよく、例えば、フーリエ変換やレンチキュラーレンズ、光回折パターン、モスアイ、が形成されたものである。また、光回折機能はないが、特異な光輝性を発現するヘアライン柄、マット柄、万線柄、干渉パターンなどでもよい。
これらのレリーフ形状の作製方法としてはホログラム撮影記録手段を利用して作製されたホログラムや回折格子の他に、干渉や回折という光学計算に基づいて電子線描画装置等を用いて作製されたホログラムや回折格子をあげることもできる。また、ヘアライン柄や万線柄のような比較的大きなパターンなどは機械切削法でもよい。これらのホログラム及び/又は回折格子の単一若しくは多重に記録しても、組み合わせて記録しても良い。
【0021】
ホログラム層15面へ、上記のレリーフ形状を賦形(複製ともいう)する。ホログラムの賦型は、公知の方法によって形成でき、例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記樹脂層上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。
【0022】
また、ホログラム層15に形成するホログラムパターンは単独でも、複数でもよい。複数のホログラムパターンを設ける場合には、該ホログラムパターン毎にホログラムマーク(タイミングマーク)が設けることが好ましい。該ホログラムマーク(タイミングマーク)を検知して、後述するパール印刷層23やインクジェット方式などで画像を形成する際に、ホログラムパターンとそれらの画像とを同期して形成することができ、同期したホログラム像と画像との意匠効果やセキュリティ性をより向上させることができる。ホログラム層15は、スタンパでエンボス中、又はエンボス後に、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂を硬化させる。上記の電離放射線硬化性樹脂は、レリーフを形成後に、紫外線や電子線などの電離放射線を照射して硬化(反応)させると電離放射線硬化樹脂(ホログラム層15)となる。
【0023】
(パール印刷層)パール印刷層23は、必要に応じてプライマ層を介して、パール印刷層23を形成する。パール印刷層23としては、合成樹脂などのバインダへパール顔料を含ませる。必要に応じて着色顔料も含ませてもよく、着色パール印刷層としてもよい。パール印刷層23の合成樹脂バインダとしては、熱可塑性や熱硬化性、電離放射線で硬化させる電離放射線硬化樹脂などでよく、特に限定されないが、好ましくは電離放射線硬化樹脂である。
電離放射線硬化樹脂としては、前述のホログラム層15に用いた電離放射線硬化樹脂が適用できる。電離放射線硬化性樹脂に、パール顔料を含ませ、必要に応じて着色顔料も含ませ、更に必要に応じて光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、グラビア印刷、スクリーン印刷などの公知の印刷方法で印刷し乾燥して、紫外線などの電離放射線で反応(硬化)させればよい。
【0024】
(図柄)パール印刷層23はパターン状の図柄として印刷する。パール印刷層23の形成はグラビア印刷、スクリーン印刷などの公知の印刷法であり、自由にパターン状の図柄とすることができる。パール印刷層23の図柄は、ホログラム層15に賦型されてなるホログラム図柄より食み出さないように設ける。パール印刷層23の図柄部分はホログラム層15に賦型された微細な凹凸(ホログラム画像)を埋め、パール印刷層23とホログラム層15の屈折率はほぼ同じなので、光回折効果が消滅してしまう。従って、パール印刷層23の図柄はホログラム画像が目視できず、パール印刷図柄35のみが観察される。一方、パール印刷層23の図柄のない部分はホログラム画像が目視できるので、ホログラム図柄31が観察される。
即ち、図4に示すように、パール印刷図柄部分のホログラム層15の光回折効果を消滅させてなるパール印刷図柄35が、ホログラム層15と透明反射層17とから構成されるホログラム図柄31に囲まれて浮き出すように観察できるのである。
【0025】
(透明反射層)透明反射層17は、所定のレリーフ構造を設けたホログラム層15面のレリーフ面へ、透明反射層17へ設けることにより、レリーフの反射及び/又は回折効果を高めるので、ホログラム層15の反射率のより高れば、特に限定されない。該透明反射層17として、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できるから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム層15よりも光屈折率の高い薄膜、および光屈折率の低い薄膜とがあり、前者の例としては、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITO等があり、後者の例としては、LiF、MgF2、AlF3がある。好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Au等の酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したもの等が例示できる。またアルミニウム等の一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが200Å以下になると、透明性が出て使用できる。透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、ホログラム層15のレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの真空薄膜法などにより設ければよい。
【0026】
透明反射層17は全面に設けられ、図4に示すパール印刷層23の図柄部分にも設けられるが、該図柄部分はインキ層であり、光回折効果のある微細な凹凸はなく、透明反射層17が設けられても、もはや光回折効果はない。
【0027】
(受容層)透明反射層17面へ、必要に応じてプライマー層18を介して、受容層21を設ける。該受容層21は中間転写記録媒体10の最表面となり、該受容層21には溶融転写タイプや昇華タイプの熱転写フイルム(インクリボン)を用いる転写方式やインクジェット方式によって画像が印画される。
【0028】
受容層21は、溶融転写タイプや昇華タイプの熱転写フイルム(インクリボン)を用いる転写方式、インクジェット方式でのそれぞれに対応する受容層21を用いればよい。好ましくはインクジェット方式で、インクジェット方式で印画できる受容層21である。
熱転写方式では専用のインクリボンを用いて印画するので、印画されて抜けた部分があるインクリボンが排出され、該排出インクリボンの抜け部分は秘密にしたい個人情報などであり、該個人情報などが廃棄されるインクリボンから容易に知られる恐れがあるが、インクジェット方式では、インクリボンを使用しないので、個人情報などが知られる恐れがない。
【0029】
(好ましい受容層)インクジェット方式での好ましい受容層21はカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、かつ受容層21へはインクジェット方式で印画することができる。
【0030】
(受容層)透明反射層17面へ、必要に応じてプライマー層18を介して、受容層21を設ける。該受容層21は中間転写記録媒体10の最表面となり、該受容層21にはインクジェット方式によって画像が印画される。インクジェット用受容層21はインクジェット用受容層組成物を塗布したもので、該インクジェット用受容層組成物は、少なくともカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー、及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含ませる。
【0031】
カチオン性ウレタン系樹脂としてはカチオン性基を有するポリカーボネート系ポリウレタン、ポリテトラメチレンエーテルグリコール系ポリウレタン、ポリエステルエーテル系ポリウレタン、ポリブチレンアジペート系ポリウレタン、ポリメチルペンタンアジペート系ポリウレタン、ポリノナンジオールアジペート/ポリオクタンアジペート系ポリウレタン、ポリメチルペンタンアジペート系ポリウレタンなどのウレタン系樹脂で、好ましくは自己乳化性又は水性で、カチオン性親水基を有するポリカーボネート系又はポリエステル系のポリオールと脂肪族イソシアネートの反応物が好ましい。カチオン性基としては1〜3級アミン或いは4級アンモニウム塩基などが例示できる。
【0032】
(カチオン性フィックス剤)カチオン性フィックス剤としては、ポリアミン誘導体や第4級アンモニウム塩などの染料固着剤が例示できる。
【0033】
(フィラー)フィラーとしては、箔切れ性を良くし、透明性を害さない程度に含有させ、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、プラスチックピグメント等の透明性の高い微粒子やワックス等で、マイクロシリカが好ましい。
【0034】
(アジリジニン誘導体)アジリジル誘導体としては分子内に2個以上のアジリジニル基を有する化合物を用い、好ましくは、
【化1】

(式中、R1は水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又はR2−OCH2−で、R25は水素原子、塩素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルアルコール基、アクリル酸アルキル基、アルキルフェノール基で、同一でも異なってもよい。)
【化2】

(式中、R610は水素原子、塩素原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルキルアルコール基、アクリル酸アルキル基、アルキルフェノール基で、同一でも異なってもよい。nは1〜3の整数)
一般式1におけるR35のうち2個以上が一般式2の構造を有する化合物、即ち、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジル誘導体である。
【0035】
分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体、例えば、トリメチロールプロパン−トリス−(α−メチル−α−アジリジニルアセテート)、トリメチロールプロパン−トリス−(α−エチル−α−アジリジニルアセテート)、トリメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールブタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、モノエトキシトリメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(2−メチル-1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(α−メチル−α−アジリジニルアセテート)、テトラメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、ジトリメチロールプロパン−ヘキサキス−(β−アジリジニルプロピオナート)、ジトリメチロールプロパン−ペンタキス−(β−(2−メチルアジリジニルプロピオナート)等が挙げられる。
【0036】
好ましくは、トリメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールブタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールエタン−トリス−(β−(2−メチル-1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(2−メチル−1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(2,2−ジメチル−1−アジリジニルプロピオナート))、トリメチロールプロパン−トリス−(α−メチル−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、トリメチロールプロパン−トリス−(β−メチル−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−トリス−(α−メチル−α−アジリジニルアセテート)、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールエタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2−プロピル−1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2−メチル−1−アジリジニルプロピオナート))、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2,2−ジメチル−1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(2,2−ジエチル−1−アジリジニルプロピオナート)テトラメチロールメタン−テトラキス−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−テトラキス−β−メチル−β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−テトラキス−β−(2−メチル−1−アジリジニルプロピオナート)、ジトリメチロールプロパン−ヘキサキス−(β−アジリジニルプロピオナート)、ジトリメチロールプロパン−ペンタキス−(β−(2−メチルアジリジニルプロピオナート)が好ましく、トリメチロールプロパン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)、テトラメチロールメタン−テトラキス−(β−アジリジニルプロピオナート)である。
【0037】
分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体について市販されているものとしては、例えば、相互薬工社製のTAZM(トリメチロールプロパン−トリス−(β−アジリジニルプロピオナート)、TAZO(テトラメチロールメタン−トリス−(β−(1−アジリジニルプロピオナート)))日本触媒製のケミタイトPZ−33(トリメチロールプロパン−トリス−(β−アジリジニルプロピオナート))等が挙げられる。
3個のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体が、硬化する反応性の速さ、硬化後に網目状となるので耐久性の高さ点で、特に好ましい。
【0038】
さらに好ましくは、受容層21のカチオン性ウレタン系樹脂とカチオン性フィックス剤とマイクロシリカと分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体との割合が質量基準でカチオン性ウレタン系樹脂:カチオン性フィックス剤:フィラー:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:5〜20:1〜10:1〜15である。カチオン性フィックス剤の含有割合が上記範囲未満では定着性が悪く、上記範囲を越えると洗濯中に溶出して堅牢性を低下させる。マイクロシリカの含有割合が上記範囲未満ではインキ定着性が悪く、また、画像の乾燥が遅いため画像形成速度が遅くなったり、さらに印画が滲んだり、さらにまた画像形成後に直ちに媒体へ転写できなず、上記範囲を越えると透明性が低下し画像が見えにくくなる。
【0039】
アジリジン誘導体の添加量は、本発明の効果を阻害しない量であれば特に制限されないが、通常カチオン性ウレタン系樹脂に対する分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体の配合割合が質量基準で、カチオン性ウレタン系樹脂:分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体=100:1〜15が好ましく、さらに好ましくは100:3〜10である。アジリジン誘導体は水溶性の硬化剤として機能するので、アジリジン誘導体の含有割合が上記範囲未満では、硬化が不足するために耐水性や耐アルコール性などの耐溶剤性などの耐久性が充分ではなく、上記範囲を越えると透明性が低下し画像が見えにくくなる。
【0040】
インクジェット方式の受容層21の形成は、上記の材料を溶媒へ分散又は溶解して、必要に応じて添加剤を添加し、透明反射層17面へ、必要に応じてコロナ処理やプライマ層を設けて、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で、塗布し乾燥すればよい。そのの厚さとしては、通常は1μm〜15μm程度、好ましくは2μm〜10μm程度である。
【0041】
(他の層)層間及び/又は層表面へ必要に応じて設ける層としては、プライマ層、印刷層、帯電防止層、背面滑性層などがあり、それぞれ公知のものでよい。特に、印刷層としては、着色インキや蛍光インキなどを用いて、公知のスクリーン印刷やグラビア印刷法で印刷すればよい。
【0042】
(プライマ層)必要に応じて、接着力を向上させるために、プライマ層18を設けることが好ましい。該プライマ層18としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酸変性ポリオレフィン系樹脂、エチレンと酢酸ビニル或いはアクリル酸などとの共重合体、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ゴム系化合物などを使用することができ、好ましくは、酸素若しくは窒素を有するもの、若しくはイソシアネート化合物を反応性のもの、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、ゴム系樹脂等の従来の接着剤として既知のものである。該プライマ層は膜厚が薄いので必ずしも含有しなくてもよいが、マイクロシリカやポリエチレンワックスなどのフィラーを含有させることが好ましい。
【0043】
(ステップ2)ステップ2は(2)該中間転写記録媒体10の受容層21面へ、任意の画像103を印画する画像形成工程である。中間転写記録媒体10の受容層21は表面に露出しており、該受容層21には溶融転写タイプや昇華タイプの熱転写フイルム(インクリボン)を用いる転写方式、又はインクジェット方式によって画像を印画し、画像を形成する。溶融転写タイプや昇華タイプの熱転写フイルム(インクリボン)を用いる転写方式では、公知の転写法でよく、例えば、熱刻印によるホットスタンプ(箔押)、サーマルヘッド(感熱印画ヘッド)によるサーマルプリンタ(熱転写プリンタともいう)などの公知の方法が適用できる。
【0044】
(インクジェット)画像103の形成は、好ましくはインクジェット方式で、インクジェット方式は例えば、バブルジェット(登録商標)方式、パルスジェット方式、荷電制御方式などの公知のものでよい。また、インクジェットインキも水性や油性インキなどがあるが特に限定されない。インクジェット方式で形成する画像103も、画像のパターンも特に限定されず、文字、記号、数字、イラスト、写真、円形や星形などのスポット状、などの任意の形状などいずれでもよい。画像は転写されて、剥離層12面から観察されるので、左右対称以外の画像は鏡像を印画する。また、画像の色も特に限定されず、単独色、複数色、写真用フルカラー用など限定されるものではない。好ましくは、オンデマンドで可変情報をインクジェット方式で印画することである。
【0045】
(定着性)従来のインクジェット方式による画像としては、身分証明書等のIDカードを作成する場合、画像の形成は容易であるが、これらの画像は耐久性、特に耐摩擦性が劣るという欠点がある。従来のインクジェット用受容層はポリビニルアルコールなどの水溶性樹脂を主体とするもので、耐水性は著しく悪く、また、多孔質質のフィラーを用いたり、受容層塗工液の溶媒として良溶媒と貧溶媒を用いて、乾燥中に相分離、ゲル化させて多孔質の網目構造とさせたり、していたが、画像の定着性が充分でなく、洗濯時に画像が淡くなる問題点もあった。
【0046】
これに対して、前述の受容層21に、インクジェット方式によって印画された画像103であれば、高画質で定着性がよく、印画された画像は耐擦傷性、耐水性や耐アルコール性などの耐溶剤性、洗濯堅牢度などの耐久性に優れるようになる。定着性と洗濯堅牢度の両立は定かではないが、カチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー、及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含むことで、塗膜の表面が微細な凹凸状となったり、塗膜自身の凝集状態も密ではなくかなり粗状になっていたり、また、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体が他の成分を反応して、網目状や凝集状態の安定化したりするために、画像成分との密着性が向上し、特に、耐アルコール性が向上させることができる。また、画像を構成する染料などがカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体と硬化などの反応や相互に作用すると推測される。
【0047】
(ステップ3)ステップ3は、(3)該印画されてなる前記中間転写記録媒体の受容層面を、予め準備しておいた媒体へ重ね合せて加熱加圧して転写する転写工程である。
【0048】
(転写)被転写体である(媒体101)への転写工程は、図3に示すように、画像103とが形成された中間転写記録媒体10の受容層21面を媒体101面へ重ね合わせて加熱し基材を剥離して転写する。画像103とが形成された受容層21/プライマー層18(必要に応じて)/透明反射層17/パール印刷層23は/ホログラム層15/剥離層13とが媒体101へ転写されて、偽造防止媒体100となる。該転写方法としては、公知の転写法でよく、例えば、熱刻印によるホットスタンプ(箔押)、熱ロールによる全面又はストライプ転写、サーマルヘッド(感熱印画ヘッド)によるサーマルプリンタ(熱転写プリンタともいう)などの公知の方法が適用できる。円形、矩形、星形などのスポット状や、文字、数字などの任意の形状でよい。
【0049】
(インライン操作)画像を印画する画像形成工程と、転写工程とは、別々のオフライン操作でも、連続して行うインライン操作でもよい。好ましくはインライン操作でも画像103が滲まず、乾燥が早いので、画像103を印画した直後でも転写操作をすることができる。
【0050】
(媒体)被転写体である媒体101としては特に限定されず、例えば天燃繊維紙、コート紙、トレーシングペーパー、転写時の熱で変形しないプラスチックフイルム、ガラス、金属、セラミックス、木材、布などのいずれのものでもよく、またそれらの複数層からなっていてもよい。また、媒体101の媒体はその少なくとも1部が着色、印刷、その他の加飾が施されていてもよい。
【0051】
また、媒体101へ転写には、接着機能を有する層を介してもよく、接着機能をインクジェット方式又は別塗布工程で設けたり、媒体101の表面へ転写時の加熱加圧によって受容層21と軟化及び/又は溶融して密着して一体化する被着層を設けてもよい。被着層としては、受容層に含まれているバインダと転写時の加熱加圧によって軟化及び/又は溶融して、密着して一体化するものを適宜選択して使用すればよい。前述のインクジェット方式の受容層21では含まれているバインダが熱接着性を有し、転写時の熱で密着して一体化するので、強固に接着した転写をすることができて好ましい。
【0052】
(ステップ4)ステップ4は、(4)前記基材を剥離し除去する剥離工程である。転写後に、中間転写記録媒体10の基材11を剥離し除去すれば、画像が移行した偽造防止媒体100が得られる。
【0053】
(ホログラム層の耐久性)熱転写方式やインクジェット方式による画像103としては、画像の形成は容易であるが、これらの画像は耐久性、特に耐摩擦性が劣るという欠点がある。該画像を中間転写記録媒体10の受容層21へ印画した後に、媒体101の表面へ転写することで、剥離層13及びホログラム層15が図4に示すように最表面に位置し、画像を保護し、耐久性を高める。ホログラム層15の鉛筆硬度試験は、JIS−K5400に準拠して測定し、H以上の硬度が好ましい。また、スクラッチ強度は、表面の充分な耐摩擦性の点から、サファイア150g以上、好ましくは200g以上である。なお、スクラッチ強度の測定方法は、23℃、55%RHの条件下で24時間調湿した試料に対して、耐摩耗性試験機(HEIDON−18)を用い、0.8mmφサファイア針を直角にあてがい、サファイア針に掛かる荷重を0gから200gまで徐々に増加させ、60cm/minで試料表面を摺動して移動させながら、表面に傷が付き始める時の荷重の測定を行った。荷重が大きいほど良好であることを表す。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0055】
(実施例1)基材11として厚さ25μmのPETフィルムを用い、該基材11の一方の面へ、グラビアコート法で、セルロース系樹脂塗工液を乾燥後1μmになるように塗布し乾燥して剥離層13を形成した。
該剥離層13面へ、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させた。
・<ホログラム層の電離放射線硬化性樹脂組成物>
ユピマーUV−V3031(三菱化学社製、UV硬化性樹脂商品名)100部
反応性シリコーン(信越化学社製、商品名X−22−1602) 0.5部
ポリエチレンワックス(平均粒径3〜5μm、球状) 2部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア184) 5部
酢酸エチル 300部
次に、該層面へ、2光束干渉法による図5に示すような太陽模様のホログラフィック回折格子からなり、、2P法で複製した絵柄(回折格子のレリーフ)と、該絵柄毎にホログラムマークが設けて一対とし、該一対を複製の流れ方向へ順次羅列して複数絵柄としたプレス型を複製装置のエンボスローラーに貼着して、相対するローラーと間で加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるレリーフを賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させて、ホログラム層15を形成した。
該ホログラム層15のレリーフ面へ、コロナ処理を行い、下記のパール印刷層組成物を、乾燥後の厚さが2μmになるようにシルクスクリーン印刷法でパール印刷図柄35として図5のハート形の図柄を印刷し乾燥させ、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させて、パール印刷層21を形成した。なお、図柄のない部分はホログラム層15が露出している。
・<パール印刷層組成物>
ユピマーUV・V3031(三菱化学社製、紫外線硬化性樹脂商品名) 25部
メタアクリレートオリゴマー(日本合成化学社製、商品名紫光7510B)5部
パール顔料 5部
青染料 1部
マイクロシリカ 1部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア907) 1.75部
溶媒(酢酸エチル:メチルイソブチルケトン=1:1) 70部
該パール印刷層21面へ、厚さ500nmの酸化チタンを真空蒸着法で形成して、透明反射層17とした。
該透明反射層17面へ、下記のプライマ層組成物をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が0.5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させて、プライマ層18とした。
・<プライマ層組成物途工液>
ポリエステル樹脂 20部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1部
溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=1:1)80部
該プライマ層18面へ、下記の受容層組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが4μmになるように塗工し乾燥させて、受容層21とし、画像の形成されていない中間転写記録媒体10を得た。
・<受容層組成物>
第4級アンモニウム塩型ポリカーボネート系ポリウレタン 20部
ダンフィックス505RE(日東紡績社製;ポリカチオン性フィックス剤)2部
マイクロシリカ(平均粒子径0.5μ) 1部
ケミタイトPZ−33(日本触媒製、アジリジン誘導体商品名) 3部
溶媒(水) 80部
次に、中間転写記録媒体10の受容層21へ、600dpiのカラーインクジェットプリンターで、公知の水性インクジェット用インクを用いて、オンデマンド方式で画像103として氏名とカラー顔写真を印画した後に、媒体101としてクレジットカード用で厚さが0.76mmの4層ポリ塩化ビニル製のシート面へ、加熱ロール方式転写装置で転写し、基材11を剥離し徐去して、偽造防止媒体100を得た。
【0056】
該偽造防止媒体100には、図5に示すような、太陽図柄(ホログラム層15と透明反射層17とから構成されるホログラム図柄31)の中に、ハート形図柄(パール印刷層23の図柄部で、ホログラム層15に賦型された微細な凹凸(ホログラム画像)を埋めて、光回折効果が消滅したハート形のパール印刷図柄35)が浮き出すように観察でき、かつ、ハート形のパール印刷図柄35中には氏名が観察できた。即ち、所有者の個人情報などの画像が表示でき、かつ、偽造変造なりすましを防止するセキュリティ性と意匠性の両立ができた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の偽造防止媒体の製造方法を示すステップ図である。
【図2】本発明の偽造防止媒体の製造方法に用いる中間転写記録媒体の1実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の偽造防止媒体の製造方法を説明する説明図である。
【図4】本発明の偽造防止媒体の製造方法で製造した偽造防止媒体の1実施例を示す断面図である。
【図5】本発明の偽造防止媒体の製造方法で製造した偽造防止媒体で観察される図柄の1実施例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0058】
10:中間転写記録媒体
11:基材
13:剥離層
15:ホログラム層
17:透明反射層
18:プライマ層
21:受容層
23:パール印刷層
31:ホログラム図柄
35:パール印刷図柄
37:透明部分
100:偽造防止媒体
101:媒体
103:画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)基材と、該基材の一方の面へ剥離層、ホログラム層、パール印刷層、透明反射層、及び受容層からなる中間転写記録媒体を準備する準備工程と、(2)該中間転写記録媒体の受容層面へ、任意の画像を印画する画像形成工程と、(3)該印画されてなる前記中間転写記録媒体の受容層面を、予め準備しておいた媒体へ重ね合せて加熱加圧して転写する転写工程と、(4)前記基材を剥離し除去する剥離工程と、からなり、前記パール印刷層をホログラム層に賦型されてなるホログラム図柄より食み出さないパール印刷図柄で設けて、該パール印刷図柄部分のホログラム層の光回折効果を消滅させてなるパール印刷図柄が、ホログラム層と透明反射層とから構成されるホログラム図柄に囲まれて浮き出すように観察できることを特徴とする偽造防止媒体の製造方法。
【請求項2】
上記受容層がカチオン性ウレタン系樹脂、カチオン性フィックス剤、フィラー及び分子内に2個以上のアジリジニル基を有するアジリジン誘導体とを含み、かつ上記受容層への印画方式がインクジェット方式であることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−297932(P2009−297932A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152500(P2008−152500)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】