説明

偽造防止媒体及びその作製方法

【課題】 本発明は、銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券及び各種チケット等の貴重品に適用することが可能な偽造防止媒体に関するものである。
【解決手段】 基材の一部に、光反射性層を有する光学的変化素子が付与され、光学的変化素子が付与されていない領域に第1の画像が形成され、光学的変化素子が付与された領域に第2の画像が形成され、第1の画像は光学的変化素子が付与されていない領域に、基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔によって形成され、第2の画像は光学的変化素子の光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素によって形成されたことを特徴とする偽造防止媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券及び各種チケット等の貴重品に適用することが可能な偽造防止媒体及びその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券及び各種チケット等の貴重品は、その価値を保証及び維持するために、偽造防止技術が施されている。そのため、このような貴重品には、その基材の表面に光学的変化素子を貼付して真偽判別を行っている。光学的変化素子から成るスレッド又はホログラム等は複写防止及び複製防止の観点から特に有効な偽造防止エレメントの一つであるため、多くの貴重品に適用されてきている。
【0003】
ホログラムが用いられている技術として、例えば、基材の表面にホログラム転写箔層が付着形成された偽造防止ラベルが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、ホログラムの金属蒸着層に情報を付与する技術として、少なくとも透明プラスチックフィルム基材、回折格子パターン、金属蒸着層及び粘着剤層から成るラベル材であって、金属蒸着層が溶融された固有情報としての印字パターンを有する偽造防止ラベル材としたものであり、金属蒸着層を、透明プラスチックフィルム基材面よりYAG又はCO 等のレーザビームの照射により非接触にて溶融し、固有情報としての印字パターンとすることを特徴とする偽造防止ラベル材が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、ホログラムと印刷を組み合わせた技術としては、ホログラムを設けてある証券において、ホログラムと紙面との間に割印の如く一葉ごとに異なる絵柄を刻印したことを特徴とするホログラム付証券が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、ホログラムと微細な孔を組み合わせた技術としては、基材と、基材の一面に貼り付けられた光学的変化素子のシートから構成される貴重印刷物であって、基材は、シートの貼り付けられた部分を含む範囲において、レーザビームにより孔が貫通して形成されており、そのシートは、その両面に特定の情報が付与されて成り、シートの情報は、シートを貼り付けた表面側から確認できると共に、基材を貫通して形成された孔を通して裏面側からも確認でき、シートを剥離しようとすると、基材は多数の微細な孔が形成されているために破壊して復元が困難となるような構成としたことを特徴とする貴重印刷物が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
さらに、基材の一部に光学的変化素子が付与された偽造防止媒体において、基材の一部に光学的変化素子が付与された領域と光学的変化素子が付与されていない領域の境界を挟むように微細な穿孔群によって割印画像が形成されて成る偽造防止媒体が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
【0008】
【特許文献1】特開昭61−182580号公報(第1頁、第1−4図)
【特許文献2】特開平10−333574号公報(第1−4頁、第1、2図)
【特許文献3】特開2000−355183号公報(第1−3頁、第1、2図)
【特許文献4】特許第3336378号公報(第1−6頁、第5、6図)
【特許文献5】特開2006−205674号公報(第1−7頁、第1−13図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年、誰でもホログラム等の原理を知ることができるようになってきており、一見見ただけでは判別できないほどに再現性の良いホログラムが偽造、複製されてきている。また、ホログラムを剥して改ざんされるおそれもある。よって、特許文献1のように基材に、ホログラムを貼付しただけでは容易に偽造又は改ざんが可能となる。特許文献2の固有情報は容易に偽造できないため、偽造防止効果には優れるが、基材から綺麗に剥離され、改ざんされるおそれがあった。このようなことから、特許文献3のようにホログラムと基材との間に絵柄を刻印し、ホログラムを剥して改ざんする行為を防止する技術が開示されているが、絵柄は反射光で観察した場合に確認できるものであった。特許文献4は、ホログラムに穿孔を形成する案件であるが、割印の形態については一切記載されていなかった。特許文献5はホログラムに穿孔が割印の形態で形成されているが、ホログラムが付与された領域及びホログラムが付与されていない領域を同一の方法で割印の穿孔群が形成可能であるため、複製されやすい問題があった。
【0010】
本発明は前述した問題点を解決することを目的としたもので、反射光と透過光では異なった画像が確認でき、光学的変化素子が付与されていない領域と、光学的変化素子が付与された領域に形成される画像は、同一の方法では作製することが困難であり、複製防止又は真偽判別効果に優れる偽造防止媒体及びその作製方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材の一部に、光反射性層を有する光学的変化素子が付与され、光学的変化素子が付与されていない領域に第1の画像が形成され、光学的変化素子が付与された領域に第2の画像が形成され、第1の画像は光学的変化素子が付与されていない領域に、基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔によって形成され、第2の画像は光学的変化素子の光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素によって形成されたことを特徴とする偽造防止媒体である。なお、第1の画像と第2の画像は隣接又は近接して配置され、二つの画像により一つの形状(模様)を形成している。
【0012】
また、本発明の偽造防止媒体は、基材の一部に、光反射性層を有する光学的変化素子が付与され、光学的変化素子が付与されていない領域と光学的変化素子が付与された領域に画像が形成され、画像は第1の画素と第2の画素から成り、第1の画素は光学的変化素子が付与されていない領域に、基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔によって形成され、第2の画素は光学的変化素子の光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素によって形成されたことを特徴とする偽造防止媒体である。
【0013】
また、本発明の偽造防止媒体は、穿孔及び光透過性画素の形状が、円、楕円、正方形、多角形及び特殊形状の少なくとも一つで形成されたことを特徴とする偽造防止媒体である。
【0014】
また、本発明の偽造防止媒体は、穿孔及び光透過性画素の径が40〜1000μmで形成されたことを特徴とする偽造防止媒体である。
【0015】
また、本発明は、基材の一部に、光反射性層を有する光学的変化素子が付与され、光学的変化素子が付与されていない領域と光学的変化素子が付与された領域に第1の画素及び第2の画素から成る画像が形成された偽造防止媒体の作製方法において、基材の一部に、光学的変化素子を付与する手段と、第1の機械的方法によって基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔によって第1の画素を形成する手段と、化学的方法又は第2の機械的方法によって光学的変化素子の光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素によって第2の画素を形成する手段によって作製されたことを特徴とする偽造防止媒体の作製方法である。
【0016】
また、本発明の偽造防止媒体の作製方法は、第1の機械的方法が、COレーザ又は穿孔針によって基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔を形成することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の偽造防止媒体の作製方法は、第2の機械的方法が、YVO又はYAGレーザによって光反射性層の光反射性基材が除去することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の偽造防止媒体の作製方法は、化学的方法が、溶剤によって光反射性層の光反射性基材が除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の偽造防止媒体は、光学的変化素子が付与されていない領域と光学的変化素子が付与された領域に形成される画像によって、有意味の画像を形成していることから、反射光と透過光では異なった画像が確認できると共に、割印的な役割を果たしていることから、仮にOVDを剥がして改ざんしても、一方に穿孔による画像がないことから有意味画像が形成できず、真偽判別を容易に行うことができる。
【0020】
本発明の偽造防止媒体は、光学的変化素子が付与されていない領域と光学的変化素子が付与された領域に形成される画像が、同一の方法では作製することが困難であるため、複製防止効果に優れる。
【0021】
本発明の偽造防止媒体は、万一、流通過程で光学的変化素子が剥がれてしまった場合に、光学的変化素子が付与されていないため、真偽判別が困難になるが、光学的変化素子が付与されていない領域に画像の一部が形成されているため、その有無によって真偽判別が可能となる。
【0022】
また、光透過性画素の個々の径を40〜120μm程度で形成することによって光学的変化素子の回折効果を損なうことがない。
【0023】
以上のことから、本発明の偽造防止媒体は、複製防止及び真偽判別効果に優れるため、銀行券、パスポート、有価証券、印紙類、商品タグ、有料道路等の回数券、カード及び各種チケット等の貴重品に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の色々な実施の形態が含まれる。
【0025】
(偽造防止媒体)
図1に偽造防止媒体A1とその断面図を示す。図1に示すように、基材1の表面の一部に、光反射性層を有する光学的変化素子2が付与され、光学的変化素子2が付与された領域と光学的変化素子2が付与されていない領域を含んで画像3が形成される。画像3は光学的変化素子2が付与された領域と光学的変化素子2が付与されていない領域を含んで形成されるため割印の形態となる。図1では画像3は、四角形のデザインとなっている。
【0026】
画像3は第1の画素3aと第2の画素3bから成る。第1の画素3aは、光学的変化素子2が付与されていない領域に、基材1を貫通する複数の穿孔4によって形成される。第2の画素3bは、図2に示すように保護層7、回折格子パターン8、光反射性層5及び粘着層9から成る光学的変化素子2の光反射性層5における光反射性基材が除去された複数の光透過性画素6よって形成される。本発明に用いる光学的変化素子2は、前述の構成に限定されることなく、アルミ箔又はアルミ箔に回折格子を有するホログラムを用いることが可能である。よって、少なくとも光反射性層5を有していれば良い。光反射性層5は、アルミニウム、金、銀、錫、ビスマス、ニッケル又は鉛等で形成可能である。また、光学的変化素子の形状は、円形、楕円形、多角形、星形等の特殊形状、スレッド状又は窓開スレッド状等、特に限定されるものではない。よって、反射光、透過光及び磁気等の少なくとも一つのセンサで読取可能となる。
【0027】
図3(a)は、偽造防止媒体A1を反射光で観察した場合を示す。偽造防止媒体A1は、穿孔4の径が80〜1000μm程度あり、光透過性画素6の径が40〜120μm未満程度の場合を示す図である。図3(a)に示すように、第1の画素3aである基材1を貫通する複数の穿孔は、80〜1000μmで形成されているため、肉眼で確認することができる。第2の画素3bは、光反射性層5が除去された40〜120μm未満程度の複数の光透過性画素6によって形成されるため、光反射性層5の反射光の影響を受けて肉眼で確認し難い状態となる。よって、第1の画素3aのみが確認できる。
【0028】
図3(b)は、偽造防止媒体A1を透過光で観察した場合を示す。図3(b)に示すように、第1の画素3aである基材1を貫通する複数の穿孔4は、80〜1000μmで形成されているため、穿孔4からの透過光が肉眼で確認することができる。第2の画素3bである複数の光透過性画素6の透過光量は、光反射性層5の透過光量より大きいためコントラストが生じる。よって、第1の画素3a及び第2の画素3bから成る画像3が確認できる。
【0029】
(変形例1)
図4(a)は、偽造防止媒体A2を反射光で観察した場合を示す。偽造防止媒体A2は、穿孔4の径が40〜80μm未満程度あり、光透過性画素6の径が120〜1000μm程度の場合を示す図である。図4(a)に示すように、第1の画素3aである基材1を貫通する複数の穿孔4は、40〜80μm未満で形成されているため、肉眼で確認し難い状態となる。第2の画素3bは、光反射性層5が除去された120〜1000μm程度の複数の光透過性画素6によって形成されるため、光反射性層5の反射光の影響を受けにくく、肉眼で確認することができる。よって、第2の画素3bのみが確認できる。
【0030】
図4(b)は、偽造防止媒体A2を透過光で観察した場合を示す。図4(b)に示すように、第1の画素3aである基材1を貫通する複数の穿孔4は、40〜80μmで形成されているが、微細な穿孔から透過光が得られて肉眼で確認することができる。第2の画素3bである複数の光透過性画素6の透過光量は、光反射性層5の透過光量より大きいためコントラストが生じる。よって、第1の画素3a及び第2の画素3bから成る画像3が確認できる。
【0031】
また、第1の画素3aの穿孔の径及び第2の画素3bの光透過性画素6の径を適宜選択することで、反射光で観察した場合に、第1の画素3a及び第2の画素3bが共に確認されることはなく、透過光で観察した場合に、第1の画素3a及び第2の画素3bから成る画像3が確認できる形態や、反射光又は透過光で観察した場合に第1の画素3a及び第2の画素3bが共に確認できる形態を作製することができる。
【0032】
(変形例2)
本発明は、図1に示した偽造防止媒体A1又は偽造防止媒体A2に限定されることなく、図5に示す偽造防止媒体A3のように、第1の画素3aである複数の穿孔4が、非貫通、つまり基材1を貫通していなくても良い。この場合、反射光で観察した場合に偽造防止媒体A1又は偽造防止媒体A2で選択した穿孔4の径より肉眼で確認し難くなるため、反射光で確認できるようにするためには80μmより径を大きく形成する必要がある。これは、穿孔4が基材を貫通していないため、穿孔4の凹部が基材1と等色となりコントラストが付き難いためである。透過光で観察した場合も同様に偽造防止媒体A1又は偽造防止媒体A2で選択した穿孔4の径より肉眼で確認し難くなるため、透過光で確認できるようにするためには40μmより径を大きく形成する必要がある。
【0033】
(変形例3)
図6は、偽造防止媒体A4を示す図である。偽造防止媒体A4は、基材1の一部に光反射性層5を有する光学的変化素子2が付与され、光学的変化素子2が付与されていない領域に第1の画像11(数字の1)が形成され、光学的変化素子2が付与された領域に第2の画像12(数字の2)が形成されている。第1の画像11は、光学的変化素子2が付与されていない領域に、基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔4によって形成される。第2の画像12は、光学的変化素子2の光反射性層5の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素6によって形成される。第1の画像11及び第2の画像12のデザインについては、特に限定されることはなく、文字、記号、数字、彩紋模様、ロゴマーク又は図柄等を形成することが可能である。
【0034】
(変形例4)
図7(a)は、光学的変化素子2がスレッドに形成された偽造防止媒体A5を示す図である。
【0035】
(変形例5)
図7(b)は、光学的変化素子2が窓開きスレッドに形成された偽造防止媒体A6を示す図である。
【0036】
第1の画素3a及び第2の画素3bで形成される画像3のデザインについては、特に限定されることはなく、文字、記号、数字、彩紋模様、ロゴマーク又は図柄等を形成することが可能である。さらに画像3内に情報を埋め込むことが可能である。
【0037】
例えば、図8に示すように、第1の画素3a及び第2の画素3bで形成される画像3Aは、基材に背景画像(図面では英字T以外の領域)となる多数の微細な背景穿孔4a及び/又は背景光透過性画素6aと、この背景穿孔4a及び/又は背景光透過性画素6aに対して、潜像画像(図面では英字Tの領域)は、X方向に略半ピッチずらして配列した情報穿孔4b及び/又は情報光透過性画素6bによって形成される例である。また、潜像画像は、Y方向に略半ピッチずらして配列した情報穿孔4b及び/又は情報光透過性画素6bによって形成してもよい。
【0038】
さらに、図9に示すように、画像3Bは、X方向に略半ピッチずらして配列した情報穿孔4b1及び/又は情報光透過性画素6b1によって形成し、Y方向に略半ピッチずらして配列した情報穿孔4b2及び/又は情報光透過性画素6b2によって形成することで複数の潜像画像(T、J)を形成している例である。
【0039】
また、図10に示すように、画像3Cは、基材に背景画像となる多数の微細な背景穿孔4a及び/又は背景光透過性画素6aと、潜像画像となる背景穿孔4a及び/又は背景光透過性画素6aに比べて、穿孔及び/又は光透過性画素の大きさが異なる情報穿孔4b及び/又は情報光透過性画素6bで形成している例である。図面では、背景穿孔4a及び/又は背景光透過性画素6aよりも情報穿孔4b及び/又は情報光透過性画素6bの径の方が大きいが、背景穿孔4a及び/又は背景光透過性画素6aよりも情報穿孔4b及び/又は情報光透過性画素6bの径の方が小さくてもよい。大きい径は小さい径の1.5〜3倍程度が好ましい。
【0040】
また、背景穿孔4a及び/又は背景光透過性画素6aと、情報穿孔4b及び/又は情報光透過性画素6bのX方向及び/又はY方向の位置関係は、特に限定されるものではない。また、図11に示すように画像3Dは、基材に背景画像となる多数の微細な背景穿孔4a及び/又は背景光透過性画素6aと、潜像画像となる背景穿孔4a及び/又は背景光透過性画素6aに比べて、穿孔及び/又は光透過性画素の配置角度(図面では楕円形状で配置角度が90度異なる)が異なる情報穿孔4b及び/又は情報光透過性画素6bで形成している例である。配置角度については特に限定されるものではないが、30〜150度程度が好ましい。
【0041】
図8乃至図11に示した画像3A、3B、3C及び3Dは、背景穿孔及び/又は背景光透過性画素と、情報穿孔及び/又は情報光透過性画素の位置がずれていたり、大きさが異なっていたり、配置角度が異なっているが、穿孔及び/又は光透過性画素は、微細であるため肉眼では背景穿孔及び/又は背景光透過性画素と、情報穿孔及び/又は情報光透過性画素を区分けして視認することができない。
【0042】
図8又は図9の画像3A、3Bは、縦方向又は横方向に伸びるストライプの万線が形成された判別具を重ね合わせて潜像画像が視認でき、図10又は図11の基材を傾けて観察することによって、画像3C及び3D内に形成した潜像画像が視認できる。ストライプの万線が形成された判別具は、例えば、YCM(イエロー、シアン、マゼンダ)、YCM、YCM・・・を順に縦方向又は横方向に伸びるストライプで形成したり、RGB(レッド、グリーン、イエロー)、RGB、RGB・・・を順に縦方向又は横方向に伸びるストライプで形成したり、また、凹凸によって万線を形成することが可能である。
【0043】
さらに、本発明の偽造防止媒体は、画像3内に秘匿情報を埋め込むことが可能である。下記に一例を示す。図12(a)乃至図12(d)に記載されている図面の円形又は多角形を穿孔及び光透過性画素とする。図12(a)については、横列の穿孔及び/又は光透過性画素の間隔によって「0」、「1」を表現した例であり、上から2行目の穿孔及び/又光透過性画素の間隔(S、S’)は、穿孔及び/又は光透過性画素の間隔の広い(S)と、間隔(S)より穿孔及び/又光透過性画素の間隔が狭い(S’)に区分けされ、穿孔及び/又は光透過性画素の間隔が大、大、大、小、小、小となっており、これによって、「111000」又は「000111」と情報を表現することができる。同様に3行目の穿孔及び/又光透過性画素の間隔(S、S’)は、穿孔及び/又光透過性画素の間隔が小、大、大、小、小、大となっており、これによって、「011001」又は「100110」と情報を表現することができる。1行目及び4行目以降も同様に情報を付与することができる。
【0044】
図12(b)については、穿孔及び/又光透過性画素の位置によって「0」、「1」を表現した例であり、1行目の穿孔及び/又光透過性画素の位置(T)を基準位置とした場合、上から2行目の穿孔及び/又光透過性画素において、1行目の穿孔及び/又光透過性画素の位置(T)からずれている穿孔及び/又光透過性画素(U’)を「1」とし、ずれていない穿孔及び/又光透過性画素(U)を「0」とすると、「0101010」と情報を表現することができる。また、1行目の穿孔の位置(T)からずれている穿孔及び/又光透過性画素(U’)を「0」とし、ずれていない穿孔及び/又光透過性画素(U)を「1」とすると、「1010101」と情報を表現することができる。また、1行目及び3行目以降も同様に情報を付与することができる。
【0045】
図12(c)については、穿孔及び/又光透過性画素の大きさによって「0」、「1」を表現した例であり、上から2行目の穿孔及び/又光透過性画素において、直径の大きな穿孔及び/又光透過性画素(V’)を「1」とし、それに比べて小さな穿孔及び/又光透過性画素(V)を「0」とすると、「0101010」と情報を表現することができる。また、直径の大きな穿孔及び/又光透過性画素(V’)を「0」とし、それに比べ小さな穿孔及び/又光透過性画素(V)を「1」とすると、「1010101」と情報を表現することができる。1行目及び3行目以降も同様に情報を付与することができる。
【0046】
図12(d)については、穿孔及び/又光透過性画素の形状によって「0」、「1」を表現した例であり、上から2行目の穿孔及び/又光透過性画素において、多角形の穿孔及び/又光透過性画素(W’)を「1」、円形の穿孔及び/又光透過性画素(W)を「0」とすると、「0101010」と情報を表現することができる。また、多角形の穿孔及び/又光透過性画素(W’)を「0」、円形の穿孔及び/又光透過性画素(W)を「1」とすると、「1010101」と情報を表現することができる。1行目及び3行目以降も同様に情報を付与することができる。
【0047】
図12(a)乃至図12(d)の秘匿情報が埋め込まれた画像は、「微細な穿孔を有する真偽判別形成体と真偽判別装置:特許第3385461号公報参照、特許第3388388号公報参照」、「情報が付与された穿孔列を有する偽造防止形成体及びその読取判別方法:特許第3388389号公報参照」、及び「微細な穿孔を有する真偽判別デバイス:特許第3306510号公報参照」に記載されている。よって、媒体毎に異なった情報(可変情報)を付与することも可能である。
【0048】
図13に示す偽造防止媒体A6は、基材1の個別印刷情報10と画像3が形成されている。画像3は、目視不可能な秘匿情報が埋め込まれている。秘匿情報は個別印刷情報10と同一の情報又は異なった情報を形成することができる。図14は、偽造防止媒体A7を認証する方法を説明図である。図14に示すようにSTEP1は、認証クライアント端末によって個別印刷情報10及び秘匿情報を読み取る。秘匿情報は、「微細な穿孔により付与された二値化データの読取装置:特許第3385357号公報参照」に記載の読取装置を用いて読み取り可能であり、印刷情報は文字、図柄等が読み取り可能な一般的な読取装置で読み取ることができる。
【0049】
STEP2は、ネットワークを介して認証サーバ端末で読み取られた個別印刷情報10及び秘匿情報と、認証サーバ端末内にあらかじめ個別印刷情報10及び秘匿情報が関連付け登録されているデータベースによって認証する。
【0050】
STEP3は、認証サーバ端末で個別印刷情報10及び秘匿情報が合致した場合に「真」と判断し、個別印刷情報10及び秘匿情報が合致していない場合に「偽」と判断し、ネットワークを介して判断結果を認証クライアント端末に通信して認証する。
【0051】
本発明の偽造防止媒体の穿孔及び光透過性画素の径は、40〜1000μmで形成されることが好ましい。40μm以下であると透過光で観察した場合に画像が確認し難くなり、1000μm以上であると基材の強度が損なうおそれが生じる。また、穿孔及び光透過性画素のピッチは、60〜2000μmの範囲で形成することが好ましい。また、穿孔及び光透過性画素の形状は、特に限定されることはないが、円、楕円、正方形、多角形、線状及び特殊形状の少なくとも一つで形成することができる。また、偽造防止媒体の形成される画像は、レーザ加工機によって形成するため、1枚、1枚に異なった可変情報が容易に形成可能となる。例えば、1枚目は「12345」、2枚目を「12346」のように数字等を異ならすこともできる。
【0052】
基材は、光を透過できるものであれば、紙又はプラスチック等であり、特に限定されるものではない。紙基材の場合の坪量は、10〜100g/m2程度が好ましい。基材は、多層紙のような構造にしても良い。また、基材の厚さは50〜1000μm程度が好ましい。また、基材の厚さと、穿孔及び光透過性画素の径は、基材の厚さに対して0.5〜2倍程度であることが好ましい。
【0053】
本発明の偽造防止媒体は、基材の一方の面に光学的変化素子が付与された場合に、光学的変化素子が付与された領域の基材の一方の面及び/又は他方の面に地紋、彩紋等の印刷模様を形成することができる。
【0054】
さらに、本発明の偽造防止媒体は、エンボス、印刷によって割印で設けても良い。
【0055】
(偽造防止媒体の作製方法)
偽造防止媒体は、基材の一部に、光学的変化素子を付与する手段と、第1の機械的方法によって基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔によって画像の第1の画素又は第1の画像を形成する手段と、化学的方法又は第2の機械的方法によって光学的変化素子の光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素によって画像の第2の画素又は第2の画像を形成する手段によって作製可能である。これらの作製手順は特に限定されることはない。
【0056】
例えば、第1の工程で基材の一部に光学的変化素子を付与し、第2の工程で、第1の機械的方法によって基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔により画像の第1の画素を形成し、第3の工程では、第2の機械的方法によって光学的変化素子の光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素により画像の第2の画素を形成し、偽造防止媒体を作製することができる。また、第1の工程で、第1の機械的方法によって基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔により画像の第1の画素を形成し、第2の工程で、化学的方法又は第2の機械的方法によって光学的変化素子の光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素により画像の第2の画素を形成し、第3の工程で、基材の一部に光学的変化素子を付与し、偽造防止媒体を作製することができる。
【0057】
第1の機械的方法は、レーザ加工機のCOレーザビーム又は穿孔機の穿孔針によって基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔を形成することができる。第2の機械的方法は、レーザ加工機のYVO又はYAGレーザによって光反射性層の光反射性基材が除去することができる。化学的方法は、20〜50℃の5%の苛性ソーダ溶液を含む溶剤等によって光反射性層の一部が除去し、光透過性画素を形成することができる。
【0058】
前述の穿孔及び光透過性画素が形成可能なレーザビームであれば、特にレーザの種類は限定されることはないが、第1のレーザビームはCOレーザ(波長10.6μm)であり、第2のレーザビームはYVO(波長1.06μm)又はYAGレーザ(波長1.06μm)であることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
厚さ約80μmの紙基材の表面に、スポット状にホログラムをホログラム貼付機によって貼付した。ホログラムは、保護層7、回折格子パターン8、光反射性層5及び粘着層9から成る。次に、ホログラムが貼付された領域とホログラムが貼付されていない領域の境界を挟んで画像3をレーザ加工機によって形成した。
【0061】
画像3は、第1の画素3aと第2の画素3bから成る。第1の画素3aは、ホログラム2が付与されていない領域に、レーザ加工機のCO2レーザによって基材1を貫通する円形状の直径85μmの穿孔及び穿孔間隔170μmの穿孔4を複数形成した。第2の画素3bは、レーザ加工機のYVOレーザ(キーエンス社製 MD−V9600 出力5%以上)によって、ホログラム2の光反射性層5の光反射性基材を除去した。光反射性基材を除去することで直径40μmの穿孔及び穿孔間隔170μmの光透過性画素6によって形成した。図15に示すような画像3を有する偽造防止媒体B1が得られた。偽造防止媒体B1は、反射光で観察した場合に第1の画素3aのみが確認でき、透過光で観察した場合に第1の画素3a及び第2の画素3bから成る画像3が確認できた。
【0062】
(実施例2)
抄造段階で帯状のスレッド状のホログラムを挿入した厚さ約100μmの紙基材を作製した。ホログラムは、保護層7、回折格子パターン8、光反射性層5及び粘着層9から成る。次に、ホログラムが貼付された領域とホログラムが貼付されていない領域の境界を挟んで画像3をレーザ加工機によって形成した。画像3は、第1の画素3aと第2の画素3bから成る。第1の画素3aは、ホログラム2が付与されていない領域に、レーザ加工機のCO2レーザによって基材1を貫通する円形状の直径40μmの穿孔及び穿孔間隔120μmの穿孔4を複数形成した。
【0063】
第2の画素3bは、レーザ加工機のYVOレーザ(キーエンス社製 MD−V9600 出力5%以上)によってホログラム2の光反射性層5の光反射性基材を除去した。光反射性基材を除去することで直径150μmの穿孔及び穿孔間隔200μmの光透過性画素6によって形成した。図16に示すような画像3を有する偽造防止媒体B2が得られた。偽造防止媒体B2は、反射光で観察した場合に第2の画素3bが確認でき、第1の画素3aは確認し難い状態であり、透過光で観察した場合に第1の画素3a及び第2の画素3bから成る画像3が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】偽造防止媒体A1とその断面図を示す図である。
【図2】光学的変化素子2と光学的変化素子2に形成される光透過性画素6を示す図である。
【図3】偽造防止媒体A1を反射光又は透過光で観察した場合を示す図である。
【図4】偽造防止媒体A2を反射光又は透過光で観察した場合を示す図である。
【図5】第1の画素3aである複数の穿孔が、非貫通である偽造防止媒体A3を示す図である。
【図6】偽造防止媒体A4を示す図である。
【図7】光学的変化素子2がスレッドに形成された偽造防止媒体A5及び光学的変化素子2が窓開きスレッドに形成された偽造防止媒体A6を示す図である。
【図8】画像3Aに潜像画像が形成された例を示す図である。
【図9】画像3Bに潜像画像が形成された例を示す図である。
【図10】画像3Cに潜像画像が形成された例を示す図である。
【図11】画像3Dに潜像画像が形成された例を示す図である。
【図12】画像に秘匿情報が埋め込まれた例を示す図である。
【図13】偽造防止媒体A6を示す図である。
【図14】偽造防止媒体A6を認証する方法の説明図である。
【図15】偽造防止媒体B1を示す図である。
【図16】偽造防止媒体B2を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 基材
2 光学的変化素子
3、3A、3B、3C、3D 画像
3a 第1の画素
3b 第2の画素
4 穿孔
4a 背景穿孔
4b、4b1、4b1、4b2 情報穿孔
5 光反射性層
6 光透過性画素
6a 背景光透過性画素
6b、6b1、6b2 情報光透過性画素
7 保護層
8 回折格子パターン
9 粘着層
10 個別印刷情報
A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、B1、B2 偽造防止媒体
S 広い間隔の穿孔
S’ 狭い間隔の穿孔
T 穿孔の位置
U 穿孔の位置からずれていない穿孔
U’ 穿孔の位置からずれている穿孔
V 直径の小さな穿孔
V’ 直径の大きな穿孔
W 円形の穿孔
W’ 多角形の穿孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一部に、光反射性層を有する光学的変化素子が付与され、
前記光学的変化素子が付与されていない領域に第1の画像が形成され、前記光学的変化素子が付与された領域に第2の画像が形成され、
前記第1の画像は前記光学的変化素子が付与されていない領域に、前記基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔によって形成され、
前記第2の画像は前記光学的変化素子の前記光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素によって形成されたことを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
基材の一部に、光反射性層を有する光学的変化素子が付与され、
前記光学的変化素子が付与されていない領域と前記光学的変化素子が付与された領域に画像が形成され、
前記画像は第1の画素と第2の画素からなり、
前記第1の画素は前記光学的変化素子が付与されていない領域に、前記基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔によって形成され、
前記第2の画素は前記光学的変化素子の前記光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素によって形成されたことを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項3】
前記穿孔及び前記光透過性画素の形状が、円、楕円、正方形、多角形及び特殊形状の少なくとも一つで形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の偽造防止媒体。
【請求項4】
前記第1の画像と前記第2の画像が隣接又は近接して配置され、前記第1の画像と前記第2の画像により所定の形状(模様)が形成されていることを特徴とする請求項1又は3記載の偽造防止媒体。
【請求項5】
前記穿孔及び前記光透過性画素の径が、40〜1000μmで形成されたことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の偽造防止媒体。
【請求項6】
基材の一部に、光反射性層を有する光学的変化素子が付与され、前記光学的変化素子が付与されていない領域と前記光学的変化素子が付与された領域に第1の画素及び第2の画素からなる画像が形成された偽造防止媒体の作製方法において、
基材の一部に、前記光学的変化素子を付与する手段と、
第1の機械的方法によって前記基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔によって前記第1の画素を形成する手段と、
化学的方法又は第2の機械的方法によって前記光学的変化素子の前記光反射性層の光反射性基材が除去された複数の光透過性画素によって前記第2の画素を形成する手段によって作製されたことを特徴とする偽造防止媒体の作製方法。
【請求項7】
前記第1の機械的方法は、COレーザ又は穿孔針によって前記基材を貫通又は非貫通の複数の穿孔を形成することを特徴とする請求項6記載の偽造防止媒体の作製方法。
【請求項8】
前記第2の機械的方法は、YVO又はYAGレーザによって前記光反射性層の光反射性基材が除去することを特徴とする請求項6記載の偽造防止媒体の作製方法。
【請求項9】
前記化学的方法は、溶剤によって前記光反射性層の光反射性基材が除去することを特徴とする請求項6記載の偽造防止媒体の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−265248(P2008−265248A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114945(P2007−114945)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】