説明

偽造防止媒体及びその製造方法並びに偽造防止媒体の真贋判定方法

【課題】偏光潜像の原理と視覚効果は既に広く知られており、模倣・偽造が容易である。そこで本発明は、真正品と同じ視覚効果を呈する偽造防止媒体を模倣することがそもそも困難であって、何をどこまで模倣すればいいのかも判別しにくい偽造防止媒体の構造とその製造方法の提供を課題とした。
【解決手段】基材11上に形成された反射層12の上に、中間層13が、高さが同一、斜面の傾斜が同一、稜線が平行で同じピッチになるように山脈状に敷設され、前記山脈状中間層13の一方の側の斜面上に所定の偏光潜像パターンを備え、他方の側の斜面上にも前記パターンと異なる偏光潜像パターンを備え、前記偏光潜像パターンは、異なる位相差値を有する液晶位相差層から組成されていることを特徴とする偽造防止媒体1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光フィルタを用いることによって隠し文字や隠しパターン等の潜像を顕在化させる偽造防止媒体の構成とその製造方法並びに真偽を判定する真贋判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行券、商品券、パスポートなどの有価証券や認証媒体は、偽造防止対策として偽造の困難な何らかの媒体(以下、偽造防止媒体と記す)を貼付することでなされてきた。そこでは、偽造防止媒体の有無あるいは目視又は検証器を用いた偽造防止媒体自体の真贋判定により認証媒体の真贋判定を行っている。
【0003】
しかし、単なる目視により真贋判定が行える偽造防止媒体は偽造がされやすい。そこで、近年、より偽造が困難な、偏光光だけで見えるような潜像を予め媒体中に形成し、偏光板と組み合わせて該潜像を顕現する技術が偽造防止技術として開示されている。これは単純な平板偏光板を媒体に重ねることにより潜像を出現させるもので、潜像が見えるか見えないかで真贋判定を行っている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−183832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、偏光潜像の原理と視覚効果は既に広く知られており、模倣・偽造が容易なため、従来方法を単純に踏襲するだけの偏光潜像技術では偽造防止効果は望めなくなっている。
そこで本発明は、真正品と同じ視覚効果を呈する偽造防止媒体を模倣することがそもそも困難であって、何をどこまで模倣すればいいのかも判別しにくい偽造防止媒体の構造とその製造方法の提供を課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を達成するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材上に形成された反射層の上に、中間層が、高さが同一、斜面の傾斜が同一、稜線が平行で同じピッチになるように山脈状に敷設され、前記山脈状中間層の一方の側の斜面上に所定の偏光潜像パターンを備え、他方の側の斜面上にも前記パターンと異なる偏光潜像パターンを備え、前記偏光潜像パターンは、異なる位相差値を有する液晶層から組成されていることを特徴とする偽造防止媒体としたものである。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、前記基材の裏面に粘着層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体としたものである。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、偽造防止媒体に対し、偏光板を介して、偽造防止媒体を複数の方向から観察し、複数の所定の潜像が顕現するか否かによって前記偽造防止媒体の真贋を判定することを特徴とする偽造防止媒体の真贋判定方法としたものである。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、基材上に反射層、中間層、配向制御層をこの順で積層する工程、液晶が配向するように配向制御層に配向処理を施す工程、配向制御層の上に位
相差層として液晶層を塗布する工程、中間層、配向制御層、位相差層の積層部分を所定の表面形状を有するエンボス板で熱エンボスする工程、とを有することを特徴とする偽造防止媒体の製造方法としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明になる偽造防止媒体は、表面が山脈状に形成されているので見る角度によって視野に入る面が急激に変化し、且つ面ごとに異なる偏光潜像パターンが偏光板を介して見えるようになっている。そこでは正面方向からかなり回り込んで観察しないと偏光潜像パターンが本質的に変化しないので、模倣しようとしても複数(正面と左右の都合3個)の潜像が秘められていることに気がつかないという効果がある。
【0011】
上記効果を発揮するには、山脈状に表面を形成し稜線の両側に所定の異なる偏光潜像パターンを敷設することが必要であって、予め形成してある偏光潜像パターンにエンボス板の表面凹凸を高度に位置合わせして押圧することが必要で模倣が非常に困難であるという効果がある。
【0012】
また、偏光潜像パターンは着色しているので、パターンの判別が容易で偽造を見分けやすいという効果がある。
【0013】
更にまた、基材裏面に粘着層を備えるものは、紙やフィルムなどの被貼付用基材に簡単に貼付して使用できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る偽造防止媒体の構造を概略的に示す平面図である。
【図2】図1に示す偽造防止媒体のA―A線に沿った断面図である。
【図3】図1に偽造防止媒体の配向膜の配向方向を示す平面図である。
【図4】図1に示す偽造防止媒体の中間層および位相差層に山脈構造を与える方法を概略的に示す模式図である。
【図5】図1の構成の偽造防止媒体を用いて偏光板を介して正面方向から観察した場合に顕現する潜像パターンの一例を示す模式図である。
【図6】図5の場合から偏光板を45度回転した場合に顕現する潜像パターンの一例を示す模式図である。
【図7】図1の構成の偽造防止媒体を用いて偏光板を介して左側から観察した場合に顕現する潜像パターンの一例を示す模式図である。
【図8】図7の場合から偏光板を45度回転した場合に顕現する潜像パターンの一例を示す模式図である。
【図9】図1の構成の偽造防止媒体を用いて偏光板を介して右側から観察した場合に顕現する潜像パターンの一例を示す模式図である。
【図10】図9の場合から偏光板を45度回転した場合に顕現する潜像パターンの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同一または類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明になる偽造防止媒体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す偽造防止媒体のA―A線に沿った断面図である。なお、図1及び図2において、X方向は偽造防止媒体1の主面の一辺に平行な方向であり、Y方向は主面の前記一辺に対して垂直な方向であり、Z方向はX方向およびY方向に対して垂直な方向である。
【0017】
偽造防止媒体1は、図2の断面図に記載されているように基材11と反射層12と中間層13と位相差層14とを含んでいる。尚、偽造防止媒体1の前面とは、基材11から見て位相差層14側の面である。位相差層14の上に位相差層を被覆するように保護層を載せることも可能である。
【0018】
偽造防止媒体の前面には、断面形状が二等辺三角形となる凹凸部がストライプ状に延びるように形成されている。この山脈状の中間層13は、高さが同一、斜面の傾斜が同一、稜線が平行で同じピッチになるように敷設されている。山脈右側の斜面には頂点も含め、右側の斜面だけで統一感のある偏光潜像パターンが形成されており、左側の斜面には左側の斜面だけで意味のある偏光潜像パターンが形成されている。正面方向では、左右の斜面が視野に入るが、見る角度を正面方向から左右に傾けると、ある角度を境にして片側の斜面しか視野に入らなくなるようにしてあるものである。
【0019】
(基材)
基材11は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という)フィルムなどの樹脂からなるフィルムまたはシートである。基材11は光透過性を有していてもよく、有していなくてもよい。また、基材11は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。更に、基材11に対して、偏光潜像の画像認識に影響を及ぼさない程度で、全面もしくは部分的に帯電防止処理やマット加工、エンボス処理等の加工をしても良い。基材11は、省略することができる。
【0020】
(反射層)
反射層12は、一般には基材11の前面の全体を被覆しているが、基材11の前面の一部のみを被覆していてもよい。また、反射層12は、基材11の背面を少なくとも部分的に被覆していても構わない。この場合、基材11は、反射層12に対応した位置の少なくとも一部で光透過性である必要があるが、典型的には、基材11として、反射層12に対応した位置の少なくとも一部で透明なものを使用すればよい。
【0021】
反射層12は、光散乱性を有していてもよく、光散乱性を有していなくてもよい。また、反射層12は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0022】
反射層の設け方としては、光反射効果の有するインキ等を公知の印刷方法により設けてもよいし、金属層を蒸着もしくはスパッタリングのような方法で設けてもよい。反射層に使用する金属は、例えばAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、インコネル、ステンレス、ジュラルミンなどの金属を挙げられる。また、印刷法により、光反射効果を有するインキ層を基材上に全面もしくはパターンで設けた転写箔を作製するか、もしくは金属反射層を備えた転写箔を作製するかして、本発明に使用する基材11に転写を行うことで反射層を設けてもよいし、金属箔や金属層を有するフィルムをラミネートして反射層を設けてもよい。
【0023】
金属反射層をパターン化する場合、基材全面に金属反射層を形成した後にエッチング加工、レーザー加工、水洗シーライト加工等の公知の方法でパターン化してもよいし、前記公知の方法にてパターン化した金属反射層を転写もしくはラミネートしてもよい。
【0024】
また、本発明では、反射層上にOVD層を設けることができる。OVD層としてはホログラム、回折格子などの光学層があげられる。ホログラムとしては、光の干渉を微細な凹凸パターンとして平面に記録するレリーフ型、体積方向に干渉縞を記録する体積型などがあり、中でも量産性やコストの点からレリーフホログラムを好適に用いることができる。
【0025】
(中間層)
中間層13は、位相差層14を組成する液晶層を下支えし、場合によっては配向を制御するために位相差層14の下部に敷設する層である。また、被覆した位相差層14が所定の山脈構造を呈するように、山脈構造を実質的に担う層でもある。
【0026】
液晶の配向制御方法については配向膜を形成する方法がある。配向膜に配向性を付与する方法としては、公知の技術を用いることができ、例えばラビングや真空斜方蒸着により配向処理を行う方法や、直線偏光や斜め非偏光照射による光反応を用いる光配向膜を使って配向させる方法等がある。また、エンボスにより細かい溝を中間層13表面に形成し、その溝方向に液晶層を配向させる方法もある。
【0027】
図3は、配向層の配向方向とその配置を示す一例であり、ストライプの伸びる一つの方向31とこれとは異なる別方向32に液晶の配向を制御する効果を有する状態を模式的に示したものである。
【0028】
(位相差層)
位相差層14は、液晶材料を使用することができる。典型的には、位相差層14は、流動性を有する重合性液晶材料を紫外線または熱により硬化させてなる高分子複屈折性層である。該液晶層は、中間層13あるいは該中間層13の表面に設けられた上記の配向制御層の配向方向にしたがって配向している。このため図1に示すように潜像表示領域101、102および潜像表示領域201、202ごとにそれぞれ異なる配向方向に配向されている。また、パターン領域10とパターン領域20は、それぞれ潜像表示領域101、102および潜像表示領域201、202に対応している。
【0029】
次に、中間層13が有する山脈構造の外形形状と形成方法について説明する。
図4は、中間層13に山脈構造を作成する方法を概略的に示す模式図である。エンボス原版40は、断面視ではピッチp、高さh、幅w、勾配θの周期的な山脈構造(山谷構造)を有しており、頂部が二等辺三角形の頂点で底部に狭い平坦部を有する形状である。山脈構造であるのは、一方の斜面側から見たときに、他方の斜面側が視野に入らず視認されないようにするためである。但し、山脈の外形形状については、平坦部はなくても構わないし、角部については多少の丸みや変化があっても構わない。また、厳密な意味で三角形状である必要はなく、例えばかまぼこ状であっても同じような視覚効果を得ることが可能である。
【0030】
ピッチpは、パターン領域が繰り返される最小の周期を示している。幅wは、パターン領域の半値幅を示している。また、高さhは、山谷の高低差を示している。また、勾配θは山脈構造のZ方向と垂直な平面からの角度を示している。ピッチp、高さh、幅w、勾配θは偏光潜像の顕現化の際の視認条件として、適切な数値範囲にそれぞれ設定する必要がある。
【0031】
中間層13が、例えば熱可塑性樹脂であれば、このエンボス原版を、中間層13および位相差層14の積層体に、熱を印加しながら押し当てる方法、即ち、熱エンボス加工法によりピッチp、高さh、幅w、勾配θの周期的山脈構造を形成することができる。また、中間層13および位相差層14に紫外線硬化性の樹脂や配向制御材料を用いることで、このエンボス原版を押し当てながら紫外線を照射して中間層および位相差層を硬化させ、その後、エンボス原版を取り除く方法により山脈構造を形成することも可能である。
【0032】
また、このときパターン領域10とパターン領域20は、配向方向が異なる場合には山脈構造の稜線で分割されるように位置合わせをしてエンボス加工する必要がある。
【0033】
(真贋判定方法)
次に、本発明になる偽造防止媒体1を用いて偏光潜像を観測する形態と、該偽造防止媒体1を備える物品が真正品であることを検証するための真贋判定方法を説明する。
【0034】
図1は、偽造防止媒体1を概略的に示す平面図である。偏光板40をかざさずに目視で観察したとき、点線で示す潜像表示領域は互いに他の領域と区別することができず、どれも同じに見える。
【0035】
図5と図6は、偽造防止媒体1に偏光板40をかざして観察したときの偏光潜像の一例を概略的に示す平面図である。矢印は偏光板10の光軸方向を示している。
【0036】
図5では、図1の潜像表示領域101、201は、偏光板の光軸方向と位相差層の光軸方向が平行なため、偏光板10を介した偏光は透過でき、それぞれの領域で潜像が明るく表示される。また、潜像表示領域102、202については、偏光板の光軸と位相差層の光軸の方向が45°で交わるため、偏光板50を介した偏光が位相差層により90°回転されることにより遮光され、暗く表示される。また、このとき領域10、20両方の潜像を観察できる。
【0037】
次に、図6は、図5から偏光板を45°傾けたときの偽造防止媒体1を観察した場合を示す平面図である。これらも前記と同様の原理で、表示部102、202は暗く、表示部102、202はそれぞれの領域で潜像が明るく表示される。また、ここでも互い違いに設けられたパターン領域10、20が両方とも観察される。
【0038】
図7は、偽造防止媒体1に偏光板50をかざして斜めから観察したときに発現する偏光潜像の例を示す斜視図である。図7に示すように、図5に示す状態において観察方向をX方向に垂直な面内でZ方向から角度θ分傾けると、パターン領域10のみが観察される。またこれらも前記と同様の原理で潜像表示領域102は暗く、潜像表示領域101は明るく表示される。このため、偏光潜像が一つの統一感のある枠状パターンとして観察され、想定した効果が得られる。
【0039】
次に、図8は、図7から偏光板を45°傾けたときの偽造防止媒体1を観察した場合の顕現画像を示す斜視図である。これらも前記と同様の原理で、パターン領域10のみが観察される。またこれらも前記と同様の原理で潜像表示領域101は暗く、潜像表示領域102は明るい、図7とは明暗が反転した画像が表示される。
【0040】
図9は、偽造防止媒体1に偏光板50をかざして観察したときに発現する偏光潜像の他の例を示す斜視図である。図9に示すように、図5に示す状態において観察方向をX方向に垂直な面内でZ方向から角度−θ分傾けると、パターン領域20のみが観察される。またこれらも前記と同様の原理で潜像表示領域202は暗く、潜像表示領域201は明るく表示される。このため、偏光潜像が別の一つの意味ある環状パターンとして観察され、想定した効果が得られる。
【0041】
次に、図10は、図9から偏光板を45°傾けたときの偽造防止媒体1を観察した場合の顕現画像を示す斜視図である。これらも前記と同様の原理で、パターン領域20のみが観察される。またこれらも前記と同様の原理で潜像表示領域201は暗く、潜像表示領域202は明るい、図9とは明暗が反転した画像が表示される。
【0042】
上記に説明したように、貼付された偽造防止媒体を、偏光板50を介して、角度を変えて観測して、想定した所定の偏光潜像が顕現すれば偽造防止媒体が正規のものであると確認できる。所定の複数のパターン(正面と左右で最大3個)が全て顕現しなければ偽造品
と判断する。正規の偽造防止媒体を備える物品が真正品であることの真贋判定ができることになる。もちろん、左右いづれかの潜像パターンを形成しなかったり、山脈形状を非対称にしたりして、潜像パターンの見え方やそれが顕現する角度を調整することは容易である。また、左右に顕現する潜像パターンは必ずしも違う必要はなく、場合によっては同じであっても構わない。
【0043】
本発明になる偽造防止媒体の背面、例えば基材11の背面に、粘着剤または接着剤による接着加工を施して偽造防止ラベルを形成することができる。すなわち、偽造防止媒体を用いて、偽造防止ラベル化してもよい。
【0044】
本発明になる偽造防止媒体は、様々な方法で印刷物に適用できる。例えば、前記偽造防止ラベルを紙印刷物に貼り付けて使用してもよい。この場合、基材11に切り込みまたはミシン目を設けておいてもよい。これにより、ラベルを剥がそうとしたときに、基材11が切り込みから破れるような構造を採用することができる。このようにすればラベルの再使用が防げる。もちろん、本発明になる偽造防止媒体は、印刷物以外の物品に貼り付けて用いることもできる。
【0045】
偽造防止媒体を印刷物に適用する場合、スレッド(ストリップ、フィラメント、糸状物、安全帯片などとも称される)と呼ばれる形態により、前記偽造防止媒体を紙にすき込んでもよい。
【0046】
前記偽造防止ラベル、あるいは印刷物において粘着剤を用いる場合、粘着剤の材料としては、一般的な材料を用いることができる。
【0047】
例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系などの粘着剤を単独で用いることができる。またはこれらの粘着剤にアルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリル等に代表される改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加したものを用いることができる。
【0048】
粘着層の形成方法には、公知のグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などの印刷方法やバーコート法、グラビア法、ロールコート法などの塗布方法を用いることができる。
【0049】
さらに、前記粘着剤を予めセパレーターに形成したものを準備しておき、偽造防止媒体へセパレーターを剥がして貼り合わせてもよい。
【0050】
また、粘着加工を施した偽造防止媒体の取り扱いを容易にするため、離型処理を行った離型紙や離型フィルムを粘着層の上に設置してもよい。
【0051】
本発明になる偽造防止媒体は、偽造や複製に対する手段としての媒体に使用されるだけでなく、例えば、光学および配向性機能を果たす電気光学的な液晶セルとして利用してもよい。
【実施例】
【0052】
以下、本発明になる偽造防止媒体の具体的な実施例について、図2から図7を用いて説明する。
【0053】
PETフィルムであるアクリプレンHBS006 (三菱レイヨン社製)を基材11として、真空蒸着法を用いて膜厚50nmのアルミニウム薄膜層を全面に設け、反射層12とした。
【0054】
次に、反射層12の上に、ウレタン樹脂をマイクログラビアによって、塗布厚5μm、乾燥温度110℃で塗工し、中間層13とした。
【0055】
次に、バーコーター法を用いて、全面に配向膜用インキの溶液を塗布した(図示せず)。塗布した配向膜用インキの組成を以下に示す。
【0056】
ポリビニルアルコール樹脂(商品名:PVA−117 クラレ(株)製)10重量%
溶剤(水) 90重量%
この塗膜は、乾燥膜厚が2μmとなるように形成した。
【0057】
次いで、ラビング布(FINE PUFF YA−20−R 吉川化工(株)製)を用いて、この塗膜をラビングして配向方向がラビング方向になるようにした。
【0058】
その後、位相差層14として大日本インキ化学工業製のUVキュアラブル液晶UCL−008を、マイクログラビアにてパターン塗工した後、無偏光紫外線を照射することにより硬化させた。UCL−008の複屈折率は0.18であるので、可視光の中心波長550nmの光に対して位相差値がλ/2となるようにするために、膜厚を1.52μmとなるようにした。
【0059】
次に、図4の上段に示すエンボス原版を作成した。
【0060】
次に、作成したエンボス版を用いて中間層13および位相差層14の積層に対して220℃、10kgf/cmの圧力で領域10および領域20の境目が山脈の頂に(稜線)なるように、エンボスのピッチの位置合わせをしながら、熱エンボス加工をおこない、中間層13と位相差層14に図2のような山脈構造を付与した。
【0061】
この結果、互いに異なる偏光潜像を山脈構造の両側に持つ偽造防止媒体1が得られた。
【0062】
次に、偏光板を用いた偽造防止媒体1の真贋判定を行った。
【0063】
作成した偽造防止媒体を偏光板を介しながら観察し、偽造防止媒体の観察角度を変えることで複数画像が変化し、さらに偏光板の角度を変えることで、偏光潜像の明暗が反転することで所定の潜像パターンが発現することがわかった。視角を変えることで所定の潜像パターンが発現すれば、偽造防止媒体は真正で、発現しなければそれは偽造品である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明になる偽造防止媒体および偽造防止ラベル、印刷物、転写箔は、銀行券、商品券、パスポートなどの有価証券や各種認証媒体において、偽造防止対策として前記の物品に用いることができる。また偽造防止媒体の真贋判定方法によって、前記のような物品の真贋判定が可能になる。
【符号の説明】
【0065】
1・・・偽造防止媒体
10、20・・・パターン領域
11・・・基材
12・・・反射層
13・・・中間層
14・・・位相差層
31、32・・・配向膜の配向方向
40・・・エンボス原版
50・・・偏光板
101、102、201、202・・・潜像表示領域
w・・・幅
p・・・ピッチ
h・・・高さ
θ・・・勾配

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に形成された反射層の上に、中間層が、高さが同一、斜面の傾斜が同一、稜線が平行で同じピッチになるように山脈状に敷設され、前記山脈状中間層の一方の側の斜面上に所定の偏光潜像パターンを備え、他方の側の斜面上にも前記パターンと異なる偏光潜像パターンを備え、前記偏光潜像パターンは、異なる位相差値を有する液晶層から組成されていることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
前記基材の裏面に粘着層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体。
【請求項3】
偽造防止媒体に対し、偏光板を介して、偽造防止媒体を複数の方向から観察し、複数の所定の潜像が顕現するか否かによって前記偽造防止媒体の真贋を判定することを特徴とする偽造防止媒体の真贋判定方法。
【請求項4】
基材上に反射層、中間層、配向制御層をこの順で積層する工程、
液晶が配向するように配向制御層に配向処理を施す工程、
配向制御層の上に位相差層として液晶層を塗布する工程、
中間層、配向制御層、位相差層の積層部分を所定の表面形状を有するエンボス板で熱エンボスする工程、とを有することを特徴とする偽造防止媒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−159771(P2012−159771A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20573(P2011−20573)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】