説明

偽造防止媒体

【課題】コスト面や生産性に優れ、かつ、真贋判定の際に、真贋判定用符号を顕在化するための特別な装置を必要とせずに視認によって容易に確認を行う。
【解決手段】表面シート110と光透過性を具備する裏面シート120とが粘着剤140によって剥離不可能に貼着され、裏面シート120の表面シート110との貼着面には、透かし情報150が黒色で印刷され、表面シート110の裏面シート120との貼着面には、周縁部を除く全面に、白色顔料を含むインクが印刷されてなる白色遮光層130が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止シート等の偽造防止媒体に関し、特に、透かし情報を用いた偽造防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリペイドカードや各種入場券、商品券や株券等の有価証券においては、広く流通しており比較的容易に換金可能である等の理由から、偽造犯罪が頻発している。特に、近年ではカラーコピー機等の複写機の性能向上と普及に伴い、簡単には真正品と見分けられない偽造品が比較的容易に製造可能になってきており、偽造に対する対策が求められている。また、上述したような有価証券に限らず、紙幣においても偽造に対する対策が求められている。
【0003】
このような偽造に対しては、ホログラフや光輝性ラベル等を用いたり、特殊な蛍光インキを用いて真贋判定用符号を形成し、通常状態では視認や光学的機械読取が不可能であるものの、所定の条件を付与すると、これを可能とさせる真贋判定手段を用いたりすることが行われている。
【0004】
ところで、本出願人は、隠蔽情報が付与される紙片上に、白色顔料を含むインキを印刷してなる白色遮光層を設けた隠蔽葉書を出願している(特許文献1参照。)。この隠蔽葉書は、隠蔽情報が付与される隠蔽情報表示部に対応する位置に白色遮光層を設けることにより、太陽や強い光の光源に翳された場合であっても、隠蔽情報表示部に付与された隠蔽情報が透けて見えることを防止できるものである。
【特許文献1】特開2004−209817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したホログラフや光輝性ラベルを用いたものにおいては、ホログラムや光輝性ラベル自体の価格が高いために製造コストが高くなり、さらに、ホログラムや光輝性ラベルは、その表面上に傷が付くと機能に悪影響を及ぼすため、その貼付時の取り扱いに注意を要し、その結果、製造工程が非常に複雑になってしまう等という問題点がある。
【0006】
また、特殊な蛍光インキを用いたものにおいては、真贋判定の際、真贋判定用符号を顕在化するためのブラックライト照射装置等を必要とするため、例えば、入場券のように大量のものを即座に真贋判定しなければならない場合等には極めて利便性に劣るという問題点がある。
【0007】
ここで、上述した白色遮光層を用いた隠蔽葉書においては、紙片上に白色顔料を含むインキを印刷してなる白色遮光層を設けるだけであるため、本出願人は、この構成を用いることにより、コスト面や生産性に優れ、かつ、真贋判定の際に、真贋判定用符号を顕在化するための特別な装置を必要とせずに視認によって容易に確認が行える偽造防止媒体を実現すべく鋭意研究を行った。
【0008】
本発明は、コスト面や生産性に優れ、かつ、真贋判定の際に、真贋判定用符号を顕在化するための特別な装置を必要とせずに視認によって容易に確認が行える偽造防止媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、
光透過性を具備する第1のシートと、
前記第1のシートに剥離不可能に貼着された第2のシートと、
前記第1のシートと前記第2のシートとの間に付与された透かし情報と、
前記透かし情報とは異なる色を具備し、前記透かし情報よりも前記第2のシート側にて前記透かし情報と対向する領域に設けられた遮光構造とを有する。
【0010】
上記のように構成された本発明においては、第2のシート側から観察した場合、第1のシートと第2のシートとの間に付与された透かし情報は、この透かし情報よりも第2のシート側にて透かし情報と対向する領域に設けられた遮光構造によって第2のシート側からの光が遮られることにより視認不可能となる。一方、第1のシート側から観察した場合は、第1のシートと第2のシートとの間に付与された透かし情報は、光透過性を具備する第1のシートを介して視認可能となる。
【0011】
このように、第1のシートと第2のシートとの間に付与された透かし情報が、第1のシートを介してのみ視認可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように本発明においては、互いに剥離不可能に貼着された第1のシートと第2のシートとの間に透かし情報を付与しておき、第1のシートを、光透過性を具備するものとするとともに、透かし情報よりも第2のシート側にて透かし情報と対向する領域に遮光構造を有する構成としたため、第1のシート側からは、第1のシートを介して透かし情報を視認可能とし、また、第2のシート側からは遮光構造によって透かし情報を視認不可能とすることができ、それにより、コスト面や生産性に優れ、かつ、真贋判定の際に、真贋判定用符号を顕在化するための特別な装置を必要とせずに視認によって容易に確認を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の偽造防止媒体となる偽造防止シートの第1の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面から見た図である。なお、図1(b)は、図1(c)に示したA−A’断面図でもある。
【0015】
本形態は図1に示すように、第1のシートである裏面シート120と、第2のシートである表面シート110とが粘着剤140によって貼着されて構成されている。粘着剤140は、表面シート110や裏面シート120とを貼着した後にこれらを剥離しようとすると、表面シート110と裏面シート120において紙剥け等が生じる程度に粘着力が強いものであり、それにより、表面シート110と裏面シート120とが剥離不可能に貼着されている。
【0016】
裏面シート120は、半透明や白色等の光透過性を有する材料からなり、表面シート110との貼着面には、透かし情報150が黒色で印刷されている。これにより、表面シート110と裏面シート120との間に透かし情報150が付与されている。
【0017】
表面シート110は、その表面に証明書情報111が印刷されているとともに、裏面シート120との貼着面には、周縁部を除く全面に、白色顔料を含むインクが印刷されてなる遮光構造となる白色遮光層130が設けられている。白色遮光層130を構成するために用いるインキの白色顔料は二酸化チタン等からなり、それにより、白色遮光層130は、一方の面側からの光を遮る高い遮光性を有する。なお、白色顔料としては、天然品や合成品を用いることができる。例えば、上記二酸化チタン(アナターゼやルチル)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、鉛顔料(炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、塩基性シリコ硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛等)、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、ジルコン、カオリン、粘土、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸塩(ステアタイト、アスベスチン等から得られるタルク等)、雲母、水和アルミナ、軽石、アスベスト、硫酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、アルミノケイ酸ナトリウムカリウム等を挙げることができる。これらは二種以上混合して用いることもできる。また、白色遮光層130を得るためのインキの塗工量としては、例えば白色顔料に二酸化チタンを用いたものの場合、表面シート110の裏面シート120との貼着面全面に塗工したものと換算して約5g/m2程度を目安として塗工することが考えられる。
【0018】
以下に、上記のように構成された偽造防止シート100の使用方法について説明する。
【0019】
図2は、図1に示した偽造防止シート100を表面シート110側から観察した場合の作用を説明するための図であり、(a)は断面方向から見た図、(b)は表面シート110側からの見え方を示す図である。また、図3は、図1に示した偽造防止シート100を裏面シート120側から観察した場合の作用を説明するための図であり、(a)は断面方向から見た図、(b)は裏面シート120側からの見え方を示す図である。
【0020】
図1に示した偽造防止シート100を表面シート110側から観察した場合は、図2(a)に示すように、観察点と透かし情報150との間に表面シート110と白色遮光層130とが介在する。ここで、白色遮光層130は一方の面側からの光を遮るものであるため、表面シート110側からの光がこの白色遮光層130によって遮られ、図2(b)に示すように、透かし情報150は視認することができず、表面シート110に印刷された証明書情報111のみが視認されることになる。
【0021】
一方、図1に示した偽造防止シート100を裏面シート120側から観察した場合は、裏面シート120が光透過性を有するものであることから、図3(a)に示すように、裏面シート120側からの光が裏面シート120を透過して透かし情報150まで達する。そして、透かし情報150が裏面シート120に黒色で印刷され、かつ白色遮光層130が白色であることから、そのコントラストの差により、図3(b)に示すように、裏面シート120の表面シート110との貼着面に印刷された透かし情報150が視認されることになる。
【0022】
このように、図1に示した偽造防止シート100においては、表面シート110側から観察された場合、裏面シート120の表面シート110との貼着面に印刷された透かし情報150が視認されず、裏面シート120側から観察された場合に、透かし情報150が視認されることになる。
【0023】
ここで、裏面シート120は、上述したように半透明や白色等の光透過性を有する材料からなるものであるが、複写による偽造を防止するという観点から鑑みた場合、偽造防止シート100を裏面シート120側から観察した際に、黒色で印刷された透かし情報150が薄くしか見えない程度の光透過性を有するものであることが好ましい。
【0024】
このように本形態においては、裏面シート120を光透過性を有するものとすることにより、裏面シート120側からは裏面シート120を介して透かし情報150を視認可能とし、また、表面シート110の裏面シート120との貼着面に、白色顔料を含むインクが印刷されてなる白色遮光層130を設けることにより、表面シート110側からはこの白色遮光層130によって透かし情報150を視認不可能とすることができ、それにより、コスト面や生産性に優れ、かつ、真贋判定の際に、真贋判定用符号を顕在化するための特別な装置を必要とせずに視認によって容易に確認を行うことができる。
【0025】
なお、本形態においては、表面シート110の裏面シート120との貼着面のうち、周縁部を除く全面に白色遮光層130が設けられているが、白色遮光層130は、少なくとも透かし情報150に対向する領域のみに設けられていればよい。
【0026】
(第2の実施の形態)
図4は、本発明の偽造防止媒体となる偽造防止シートの第2の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面から見た図である。
【0027】
本形態は図4に示すように、第1のシートである裏面シート220と、第2のシートである表面シート210とが粘着剤240aによって貼着されて構成されている。これら表面シート210及び裏面シート220は、ミシン目が形成されること等によって設けられた折り部203を介して第1紙片部201と第2紙片部202とが連接した形態となっており、折り部203にて折り畳み可能となっている。また、粘着剤240aは、表面シート210と裏面シート220とを貼着した後にこれらを剥離しようとすると、表面シート210や裏面シート220において紙剥け等が生じる程度に粘着力が強いものであり、それにより、表面シート210と裏面シート220とが剥離不可能に貼着されている。
【0028】
裏面シート220は、半透明や白色の光透過性を有する材料からなり、表面シート210との貼着面には、透かし情報となる証明書情報250が黒色で印刷されている。これにより、表面シート210と裏面シート220との間に証明書情報250が付与されている。また、証明書情報250が印刷された面とは反対側の面には、その全面に、圧力により自己のみが貼着可能で貼着後の剥離が可能な自己貼着性を有する粘着剤240bが塗布されており、折り部203を介して折り畳んで加圧することにより裏面シート220の第1紙片部201と第2紙片部202とが互いに剥離可能に貼着されることになる。
【0029】
表面シート210は、折り部203にて折り畳まれた場合に第1紙片部201の外側となる面に表題211が印刷されているとともに、裏面シート220との貼着面には、周縁部を除く全面に、白色顔料を含むインクが印刷されてなる遮光構造となる白色遮光層230が設けられている。白色遮光層230を構成するために用いるインキの白色顔料としては、第1の実施の形態にて示したものと同様のものが用いられる。
【0030】
以下に、上記のように構成された偽造防止シート200の使用方法について説明する。
【0031】
図4に示した偽造防止シート200は、まず、裏面シート220が内側となるように折り部203にて折り畳まれ、加圧されることにより裏面シート220の第1紙片部201と第2紙片部202とが互いに貼着された状態で配布される。
【0032】
図5は、図4に示した偽造防止シート200が折り畳まれた状態における作用を説明するための図であり、(a)は断面方向から見た図、(b)は第1紙片部201側からの見え方を示す図、(c)は第2紙片部202側からの見え方を示す図である。
【0033】
図4に示した偽造防止シート200を折り部203にて折り畳んだ状態で観察した場合は、図5(a)に示すように、第1紙片部201側から見た場合も第2紙片部202側から見た場合も、観察点と証明書情報250との間に表面シート210と白色遮光層230とが介在する。ここで、白色遮光層230は一方の面側からの光を遮るものであるため、外部からの光がこの白色遮光層230によって遮られ、透かして見られた場合であっても、図5(b),(c)に示すように、証明書情報250は視認することができず、第1紙片部201側においては、表面シート210に印刷された表題211のみが視認されることになる。
【0034】
このように、図4に示した偽造防止シート200が折り部203にて折り畳まれた状態では、偽造防止シート200が透かされた場合であっても、裏面シート220に印刷された証明書情報250が見られてしまうことがなく、証明書情報250を隠蔽した状態で偽造防止シート200を配布することができる。
【0035】
その後、裏面シート220の第1紙片部201と第2紙片部202とが剥離されて偽造防止シート200が見開かれる。裏面シート220の第1紙片部201と第2紙片部202とを貼着していた粘着剤240bは、貼着後の剥離が可能なものであるため、裏面シート220の第1紙片部201と第2紙片部202とを剥離することができる。
【0036】
図6は、図4に示した偽造防止シート200が見開かれた状態にて表面シート210側から観察した場合の作用を説明するための図であり、(a)は断面方向から見た図、(b)は表面シート210側からの見え方を示す図である。また、図7は、図4に示した偽造防止シート200が見開かれた状態にて裏面シート220側から観察した場合の作用を説明するための図であり、(a)は断面方向から見た図、(b)は裏面シート220側からの見え方を示す図である。
【0037】
図4に示した偽造防止シート200が見開かれた状態にて表面シート210側から観察した場合は、図6(a)に示すように、観察点と証明書情報250との間に表面シート210と白色遮光層230とが介在する。ここで、白色遮光層230は一方の面側からの光を遮るものであるため、表面シート210側からの光がこの白色遮光層230によって遮られ、図6(b)に示すように、証明書情報250は視認することができず、表面シート210に印刷された表題211のみが視認されることになる。
【0038】
一方、図4に示した偽造防止シート200が見開かれた状態にて裏面シート220側から観察した場合は、裏面シート220が光透過性を有するものであることから、図7(a)に示すように、裏面シート220側からの光が裏面シート220を透過して証明書情報250まで達する。そして、透かし情報250が裏面シート220に黒色で印刷され、かつ白色遮光層230が白色であることから、そのコントラストの差により、図7(b)に示すように、裏面シート220の表面シート210との貼着面に印刷された証明書情報250が視認されることになる。
【0039】
このように、図4に示した偽造防止シート200においては、見開かれた状態にて表面シート210側から観察された場合、裏面シート220の表面シート210との貼着面に印刷された証明書情報250が視認されず、見開かれた状態にて裏面シート220側から観察された場合に、証明書情報250が視認されることになる。
【0040】
ここで、裏面シート220は、上述したように半透明や白色等の光透過性を有する材料からなるものであるが、複写による偽造を防止するという観点から鑑みた場合、偽造防止シート200が見開かれた状態にて裏面シート220側から観察した際に、黒色で印刷された証明情報250が薄くしか見えない程度の光透過性を有するものであることが好ましい。
【0041】
このように本形態においては、裏面シート220を光透過性を有するものとすることにより、見開かれた状態において裏面シート220側からは裏面シート220を介して証明書情報250を視認可能とし、また、表面シート210の裏面シート220との貼着面に、白色顔料を含むインクが印刷されてなる白色遮光層230を設けることにより、見開かれた状態において表面シート210側からはこの白色遮光層230によって証明書情報250を視認不可能とすることができ、それにより、コスト面や生産性に優れ、かつ、真贋判定の際に、真贋判定用符号を顕在化するための特別な装置を必要とせずに視認によって容易に確認を行うことができる。
【0042】
本形態にて示した偽造防止シート200は、裏面シート220の表面シート210との貼着面、あるいは粘着剤240aによって形成される粘着剤層の表面に証明書情報250等の隠蔽情報が付与され、この隠蔽情報が隠蔽側からしか見れない透かし証明書付きの隠蔽送付体等に使用することができる。
【0043】
なお、本形態においては、表面シート210の裏面シート220との貼着面のうち、周縁部を除く全面に白色遮光層230が設けられているが、白色遮光層230は、少なくとも証明書情報250に対向する領域のみに設けられていればよい。
【0044】
また、本形態においては、裏面シート220を半透明や白色等の光透過性を有する材料からなるものとしたが、裏面シート220を透明な材料からなるものとすることも考えられる。
【0045】
また、上述した2つの実施の形態においては、表面シート110,210の裏面シート120,220との貼着面に遮光構造となる白色遮光層130,230が設けられているが、表面シート110,210の裏面シート120,220との貼着面とは反対側の面に白色遮光層130,230のような遮光構造を設けたり、表面シート110,210自体を遮光性を有する材料からなるものとして遮光構造としたりしてもよい。
【0046】
(第3の実施の形態)
上述した2つの実施の形態においては、表面シート110,210に白色顔料を含むインクを印刷することにより遮光構造となる白色遮光層130,230を設けているが、白色の材料からなるシート基材を用いて遮光構造を設けることもできる。
【0047】
図8は、本発明の偽造防止媒体となる偽造防止シートの第3の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面から見た図である。なお、図8(b)は、図8(c)に示したA−A’断面図でもある。
【0048】
本形態は図8に示すように、半透明や白色等の光透過性を有する材料からなる第1のシートである裏面シート320と、表面に証明書情報311が印刷された第2のシートである表面シート310とが粘着剤340a,340b及び遮光構造となる中間シート330を介して貼着されて構成されている。表面シート310は粘着剤340aによって中間シート330と貼着され、裏面シート320は粘着剤340bによって中間シート330と貼着されている。これらの粘着剤340a,340bは、表面シート310及び裏面シート320と中間シート330とを貼着した後にこれらを剥離しようとすると、表面シート310、裏面シート320あるいは中間シート330において紙剥け等が生じる程度に粘着力が強いものであり、それにより、表面シート310と裏面シート320とが中間シート330を介して剥離不可能に貼着されている。
【0049】
中間シート330は、白色の遮光性を有する材料からなり、裏面シート320との貼着面に透かし情報350が黒色で印刷されている。これにより、表面シート310と裏面シート320との間に透かし情報350が付与されている。
【0050】
上記のように構成された偽造防止シート300においては、表面シート310側から観察した場合は、観察点と透かし情報350との間に表面シート310及び中間シート330が介在し、表面シート310側からの光がこの中間シート330によって遮られるため、透かし情報350は視認できずに表面シート310に印刷された証明書情報311のみが視認されることになり、また、裏面シート320側から観察した場合は、裏面シート320が光透過性を有するものであることから、裏面シート320側からの光が裏面シート320を透過して透かし情報350まで達し、透かし情報350が裏面シート320に黒色で印刷され、かつ中間シート330が白色であることから、このコントラストの差により、中間シート330の裏面シート320との貼着面に印刷された透かし情報350が視認されることになる。
【0051】
(第4の実施の形態)
図9は、本発明の偽造防止媒体となる偽造防止シートの第4の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は(a)に示した表面シート410の裏面の構造を示す図、(d)は裏面から見た図である。なお、図9(b)は、図9(d)に示したA−A’断面図でもある。
【0052】
本形態は図9に示すように、第1のシートである裏面シート420と、第2のシートである表面シート410とが粘着剤440によって貼着されて構成されている。粘着剤440は、表面シート410と裏面シート420とを貼着した後にこれらを剥離しようとすると、表面シート410や裏面シート420において紙剥け等が生じる程度に粘着力が強いものであり、それにより、表面シート410と裏面シート420とが剥離不可能に貼着されている。
【0053】
裏面シート420は、半透明や白色等の光透過性を有する材料からなり、表面シート410との貼着面には、透かし情報450bが黒色で印刷されている。これにより、表面シート410と裏面シート420との間に透かし情報450bが付与されている。また、透かし情報450bが印刷された面には、周縁部を除く全面に、透かし情報450bを覆うように、白色顔料を含むインクが印刷されてなる遮光構造となる白色遮光層430が設けられている。白色遮光層430を構成するために用いるインキの白色顔料としては、第1の実施の形態にて示したものと同様のものが用いられる。
【0054】
表面シート410は、半透明や白色等の光透過性を有する材料からなり、その表面に、枠情報411が印刷されているとともに枠情報411によって囲まれる領域には、偽造防止シート400毎に異なる個別情報412が印字されている。また、裏面シート420との貼着面には、透かし情報450aが黒色で印刷されている。
【0055】
上記のように構成された偽造防止シート400においては、表面シート410側から観察した場合は、観察点と裏面シート420に印刷された透かし情報450bとの間に表面シート410及び白色遮光層430が介在する。ここで、表面シート410は光透過性を有するものであるものの、白色遮光層430は一方の面側からの光を遮るものであるため、表面シート410側からの光がこの白色遮光層430によって遮られ、裏面シート420に印刷された透かし情報450bは視認できない。また、表面シート410に印刷された透かし情報450aについては、表面シート410が光透過性を有するものであることから、表面シート410側からの光が表面シート410を透過して透かし情報450aまで達し、透かし情報450aが表面シート410に黒色で印刷され、かつ裏面シート420に設けられた白色遮光層430が白色であることから、このコントラストの差により、表面シート410を介して視認されることになる。そして、表面シート410の表面に印刷された枠情報411及び個別情報412と、視認された透かし情報450aとが組み合わされた情報が証明書情報として認識されることになる。
【0056】
一方、裏面シート420側から観察した場合は、裏面シート420が光透過性を有するものであることから、裏面シート420側からの光が裏面シート420を透過して透かし情報450bまで達し、透かし情報450bが裏面シート420に黒色で印刷され、かつ白色遮光層430が白色であることから、このコントラストの差により、裏面シート420の表面シート410との貼着面に印刷された透かし情報450bが視認されることになる。この際、表面シート410に印刷された透かし情報450aは、観察点と透かし情報450aとの間に白色遮光層430が介在し、裏面シート420側からの光がこの白色遮光層430によって遮られるため、視認することができない。
【0057】
このように、図9に示した偽造防止シート400においては、裏面シート420の表面シート410との貼着面に設けられた白色遮光層430によって、表面シート410側から観察した場合に裏面シート420に印刷された透かし情報450bを視認不可能とし、また、裏面シート420側から観察した場合に表面シート410に印刷された透かし情報450aを視認不可能とし、それにより、表面シート410側から観察した場合と裏面シート420側から観察した場合とで異なる情報を視認可能とすることができる。
【0058】
なお、本形態においては、裏面シート420の表面シート410との貼着面のうち、周縁部を除く全面に白色遮光層430が設けられているが、白色遮光層430は、少なくとも透かし情報450a,450bに対向する領域のみに設けられていればよい。
【0059】
また、上述した第1、第3及び第4の実施の形態にて裏面シート120,420や中間シート330に印刷される透かし情報150,450,350においては、文字に限らず、図形や地紋の他、多色刷りによる画像等であってもよい。ただし、多色刷りの場合でも、その透かし情報と遮光構造とは異なる色とする必要がある。
【0060】
また、上述した4つの実施の形態においては、透かし情報150,350,450a,450b及び証明書情報250が黒色で印刷され、かつ、遮光構造として白色顔料を含むインクが印刷されてなる白色遮光層130,230,430や白色の材料からなる中間シート330が設けられているものを例に挙げて説明したが、透かし情報150,350,450a,450b及び証明書情報250の色と遮光構造の色とは互いに異なるものであればこれらの組み合わせに限らない。例えば、透かし情報150,350,450a,450b及び証明書情報250を黒色で印刷し、遮光構造として灰色や肌色等といった淡い色のものを用いることもでき、またその逆に、透かし情報150,350,450a,450b及び証明書情報250を白色等の淡い色で印刷し、遮光構造として黒色等の濃い色のものを用いることも考えられる。ただし、遮光構造として白色や淡い色を用いた方が、表面シート110,210,310,410側から観察した場合に、表面シート110,210,310,410が黒ずんでしまい、表面シート110,210,310,410の表面に印刷された証明書情報111,311や表題211、枠情報411が見にくくなってしまうことがないため好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の偽造防止媒体となる偽造防止シートの第1の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面から見た図である。
【図2】図1に示した偽造防止シートを表面シート側から観察した場合の作用を説明するための図であり、(a)は断面方向から見た図、(b)は表面シート側からの見え方を示す図である。
【図3】図1に示した偽造防止シートを裏面シート側から観察した場合の作用を説明するための図であり、(a)は断面方向から見た図、(b)は裏面シート側からの見え方を示す図である。
【図4】本発明の偽造防止媒体となる偽造防止シートの第2の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面から見た図である。
【図5】図4に示した偽造防止シートが折り畳まれた状態における作用を説明するための図であり、(a)は断面方向から見た図、(b)は第1紙片部側からの見え方を示す図、(c)は第2紙片部側からの見え方を示す図である。
【図6】図4に示した偽造防止シートが見開かれた状態にて表面シート側から観察した場合の作用を説明するための図であり、(a)は断面方向から見た図、(b)は表面シート側からの見え方を示す図である。
【図7】図4に示した偽造防止シートが見開かれた状態にて裏面シート側から観察した場合の作用を説明するための図であり、(a)は断面方向から見た図、(b)は裏面シート側からの見え方を示す図である。
【図8】本発明の偽造防止媒体となる偽造防止シートの第3の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は裏面から見た図である。
【図9】本発明の偽造防止媒体となる偽造防止シートの第4の実施の形態を示す図であり、(a)は表面から見た図、(b)は(a)に示したA−A’断面図、(c)は(a)に示した表面シートの裏面の構造を示す図、(d)は裏面から見た図である。
【符号の説明】
【0062】
100,200,300,400 偽造防止シート
110,210,310,410 表面シート
111,250 証明書情報
120,220,320,420 裏面シート
130,230,430 白色遮光層
140,240a,240b,340a,340b 粘着剤
150,350,450a,450b 透かし情報
201 第1紙片部
202 第2紙片部
203 折り部
211 表題
330 中間シート
411 枠情報
412 個別情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を具備する第1のシートと、
前記第1のシートに剥離不可能に貼着された第2のシートと、
前記第1のシートと前記第2のシートとの間に付与された透かし情報と、
前記透かし情報とは異なる色を具備し、前記透かし情報よりも前記第2のシート側にて前記透かし情報と対向する領域に設けられた遮光構造とを有する偽造防止媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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