偽造防止媒体
【課題】観察方向に制限されることなく真偽判別を容易に行う。
【解決手段】シート基材２に形成され、側面１１ａに文字部マーク１２あるいは背景部マーク１３が形成された複数の凸部１１において、その側面１１ａが周方向に分割された複数の領域１４ａ〜１４ｂからなり、複数の領域１４ａ〜１４ｂ毎に文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、互いに異なる色のマーク色１２ａ〜１２ｄ，１３ａ〜１３ｄとなっている。
【解決手段】シート基材２に形成され、側面１１ａに文字部マーク１２あるいは背景部マーク１３が形成された複数の凸部１１において、その側面１１ａが周方向に分割された複数の領域１４ａ〜１４ｂからなり、複数の領域１４ａ〜１４ｂ毎に文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、互いに異なる色のマーク色１２ａ〜１２ｄ，１３ａ〜１３ｄとなっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、偽造防止シート等の偽造防止媒体に関し、特に、観察する方向に応じて視認される情報が変化する偽造防止構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、プリペイドカードや各種入場券、商品券や株券等の有価証券においては、広く流通しており比較的容易に換金可能である等の理由から、偽造犯罪が頻発している。特に、近年ではカラーコピー機等の複写機の性能向上と普及に伴い、簡単には真正品と見分けられない偽造品が比較的容易に製造可能になってきており、偽造に対する対策が求められている。また、上述したような有価証券に限らず、紙幣においても偽造に対する対策が求められている。
【０００３】
このような偽造に対する対策の１つとして、潜像を用いて有価証券や紙幣の真偽判別を可能とする技術が考えられており、例えば、特許文献１に開示されている。
【０００４】
特許文献１に開示された技術は、シート基材上に、複数本の印刷万線と、この印刷万線と並列し、一部が印刷万線と直交する方向に延在し、かつ、断面が隆起したレリーフ万線とを設け、観察方向によって潜像を浮かび上がらせるものである。基材を正面から見た場合は全ての印刷万線が視認可能な状態となっている。ところが、観察方向を印刷万線及びレリーフ万線と直交する方向に変化させていくと、印刷万線のうちレリーフ万線が延在した部分がその延在したレリーフ万線の陰となって視認できなくなる一方、印刷万線のその他の部分は視認可能な状態のままとなる。これにより、レリーフ万線の形状に応じた潜像を浮かび上がらせることができる。
【０００５】
このように断面が隆起したレリーフ万線を設けたシート基材においては、複写した場合、表面に印刷された印刷万線を含む印刷情報は複写されるものの、レリーフ万線の隆起形状までは再現できない。そのため、複写物の観察方向を変化させていった場合であっても、潜像は浮かび上がらず、それにより、真偽判別を行うことが可能となる。
【特許文献１】特開２０００−３１３１６１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、上述したように、シート基材上に、複数本の印刷万線と、この印刷万線と並列し、一部が印刷万線と直交する方向に延在し、かつ、断面が隆起したレリーフ万線とを設け、この印刷万線とレリーフ万線とで潜像を浮かび上がらせるものにおいては、印刷万線及びレリーフ万線と直交する方向から観察した場合にしか潜像が浮かび上がらず、潜像による真偽判別がしやすいとは言い難い。特に、観察方向が制限されている場合、潜像による真偽判別ができなくなる虞れがある。
【０００７】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、観察方向に制限されることなく真偽判別を容易に行うことができる偽造防止媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するために本発明は、
基材に側面を具備して形成された凸部を有し、
前記側面は、周方向に分割された複数の領域からなり、前記複数の領域毎に異なる色を具備する情報が表示されている。
【０００９】
上記のように構成された本発明においては、基材を表面から観察した場合は、凸部の側面に表示された情報が全て視認可能となるかあるいは全て視認不可能となるかのどちらかの状態となる。凸部の側面に表示された情報が全て視認可能となる場合は、凸部の側面に表示された情報、すなわち、側面の周方向に分割された複数の領域毎に異なる色を具備する情報が全て視認可能な状態となる。この状態から観察方向を基材表面に対して鋭角をなす方向に変化させていくと、凸部の側面の周方向に分割された複数の領域のうち観察方向に対向する領域のみが視認可能となり、その領域に表示された色を具備する情報のみが視認されることになる。
【００１０】
このように、基材を表面から観察した場合は、凸部の側面の周方向に分割された複数の領域毎に異なる色を具備する情報が全て視認可能となるか、凸部の側面に表示された情報が全て視認不可能となり、基材表面に対して鋭角をなす方向から観察した場合は、凸部の側面の周方向に分割された複数の領域のうち観察方向に対向する領域に表示された色を具備する情報のみが視認可能となるというように、基材を表面から観察した場合と、基材表面に対して鋭角をなす方向から観察した場合とで、視認される情報の色が異なることになる。ここで、凸部の側面は、周方向に複数の領域に分割され、その複数の領域毎に異なる色を具備する情報が表示されているので、観察方向を基材表面に対して鋭角をなすどの方向に変化させていった場合であっても、上述したような視認される色の変化が生じることになる。
【００１１】
また、基材表面に対して鋭角をなす状態で、観察方向を基材表面に対して平行な方向に変化させると、観察方向に応じて、凸部の側面の周方向に分割された複数の領域のうち視認される領域が変化し、これによっても、視認される情報の色に変化が生じることになる。
【発明の効果】
【００１２】
以上説明したように本発明においては、基材に形成された凸部の側面が、周方向に分割された複数の領域からなり、複数の領域毎に異なる色を具備する情報が表示されている構成としたため、基材を表面から観察した場合は、凸部の側面の周方向に分割された複数の領域毎に異なる色を具備する情報が全て視認可能となるか、凸部の側面に表示された情報が全て視認不可能となり、基材表面に対して鋭角をなす方向から観察した場合は、凸部の側面の周方向に分割された複数の領域のうち観察方向に対向する領域に表示された色を具備する情報のみが視認可能となるというように、基材を表面から観察した場合と、基材表面に対して鋭角をなす方向から観察した場合とで、視認される情報の色が異なることになり、また、観察方向を基材表面に対して鋭角をなすどの方向に変化させていった場合であっても、上述したような視認される色の変化が生じることになり、観察方向に制限されることなく真偽判別を容易に行うことができる。また、異なる色を具備する情報が表示された複数の領域が、凸部の側面が周方向に分割されたものであることから、基材表面に対して鋭角をなす状態で、観察方向を基材表面に対して平行な方向に変化させた場合においても、視認される色に変化が生じることになり、真偽判別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【００１４】
図１は、本発明の偽造防止媒体の実施の一形態となる偽造防止シートを示す図であり、（ａ）は全体の構成を示す図、（ｂ）は（ａ）に示した偽造防止構造１０の詳細な構成を示す図、（ｃ）は（ｂ）に示したＡ−Ａ’断面図、（ｄ）は文字部マーク１２が設けられた凸部１１の構成を示す図、（ｅ）は背景部マーク１３が設けられた凸部１１の構成を示す図、（ｆ）は文字部マーク１２の詳細な構成を示すための凸部１１を正面から見た図、（ｇ）は背景部マーク１３の詳細な構成を示すための凸部１１を正面から見た図である。
【００１５】
本形態の偽造防止シート１は図１に示すように、紙からなるシート基材２の一部の領域に偽造防止構造１０が設けられて構成されている。シート基材２は、平面部３を有し、この平面部３の一部の領域に情報印刷領域４が設けられるとともに、他の領域に偽造防止構造１０が設けられている。このように構成された偽造防止シート１は、例えば、コンサート等の入場チケットとして用いることが考えられる。その場合、コンサートの内容や会場名、座席番号等が情報印刷領域４に印刷されることになる。また、シート基材２の情報印刷領域４に情報が印刷される前に、シート基材２に対してプレ印刷として地紋を印刷したり所定の色に着色したりすることも考えられるが、その場合、偽造防止構造１０による潜像が見にくくならないようにする必要がある。
【００１６】
シート基材２に設けられた偽造防止構造１０は図１（ｂ）に示すように、シート基材２にマトリックス状に形成された複数の凸部１１と、この複数の凸部１１のうち、潜像となる「Ｔ」を表現する位置となる凸部１１のみに設けられた情報となる文字部マーク１２と、複数の凸部１１のうち文字部マーク１２が設けられていない凸部１１に設けられた情報となる背景部マーク１３とから構成されている。凸部１１は、図１（ｃ）〜（ｅ）に示すように、円錐から頂点の部分が取り除かれた形状であって、シート基材２をエンボス版等で平面部３側から０．０５〜０．１ｍｍ程度窪ませることにより側面１１ａが形成され、平面部３との同一面が頂部１１ｂとなっている。そして、この頂部１１ｂからシート基材２の窪み方向に向かうに従ってその断面積が徐々に広くなり、凸部１１の底部においては、直径が０．５ｍｍ以下の円形状となっている。
【００１７】
文字部マーク１２は、複数の凸部１１のうち、潜像となる「Ｔ」を表現する位置となる凸部１１の側面１１ａの底部からの高さが第１の高さｈ1となる位置にて全周に渡って印刷によって設けられている。背景部マーク１３は、複数の凸部１１のうち文字部マーク１２が設けられていない凸部１１の側面１１ａの底部からの高さが第２の高さｈ2となる位置にて全周に渡って印刷によって設けられている。ここで、凸部１１の側面１１ａにて文字部マーク１２が設けられた高さｈ1と、背景部マーク１３が設けられた高さｈ2とは、背景部マーク１３が設けられた高さｈ2が文字部マーク１２が設けられた高さｈ1よりも低くなっている。
【００１８】
また、凸部１１は図１（ｆ），（ｇ）に示すように、その側面１１ａが周方向に４つの領域１４ａ〜１４ｄに分割されており、文字部マーク１２は、領域１４ａ〜１４ｄ毎に互いに異なる色となる４つのマーク色１２ａ〜１２ｄから構成され、また、背景部マーク１３は、領域１４ａ〜１４ｄ毎に互いに異なる色となる４つのマーク色１３ａ〜１３ｄから構成され、領域１４ａにおけるマーク色１２ａとマーク色１３ａ、領域１４ｂにおけるマーク色１２ｂとマーク色１３ｂ、領域１４ｃにおけるマーク色１２ｃとマーク色１３ｃ、領域１４ｄにおけるマーク色１２ｄとマーク色１３ｄとはそれぞれ同一の色となっている。
【００１９】
なお、本形態にて図示する偽造防止構造１０は、説明を簡単にするために縦横がそれぞれ１０個ずつの凸部１１が形成されたものであるが、その数を多くすればするほど、この偽造防止構造１０によって浮き上がらせることができる潜像となる文字を精細なものとすることができ、曲線等を表現しやすくなる。
【００２０】
以下に、上記のように構成された偽造防止シート１の製造方法について説明する。
【００２１】
まず、シート基材２の偽造防止構造１０が設けられる領域に、文字部マーク１２及び背景部マーク１３をそれぞれ円形状に印刷する。文字部マーク１２は、凸部１１が設けられる１０×１０のマトリックス状の領域のうち潜像となる「Ｔ」を形成する位置に印刷し、背景部マーク１３は、１０×１０のマトリックス状の領域のうち文字部マーク１２が印刷されない位置に印刷する。文字部マーク１２と背景部マーク１３とは、互いに相似形であって、その径は、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が設けられた領域に凸部１１を形成した際に、上述したように背景部マーク１３の高さが文字部マーク１２の高さよりも低くなるように、文字部マーク１２の径の方が背景部マーク１３の径よりも小さくなっている。これら文字部マーク１２と背景部マーク１３との組み合わせは、偽造防止構造１０によって浮かび上がる潜像（本形態においては「Ｔ」）に応じて予め設定されており、印刷データとして与えられる。また、これら文字部マーク１２と背景部マーク１３の印刷は、上述したようなプレ印刷と同時に行ってもよいし、上述したプレ印刷を行った後に行ってもよい。
【００２２】
次に、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が印刷された領域に、シート基材２の平面部３側からエンボス版を押し付けることにより複数の凸部１１を形成する。この際、凸部１１を文字部マーク１２及び背景部マーク１３に重なるように形成することにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３がそれぞれ、凸部１１の側面１１ａの全周に渡って設けられた形状となる。
【００２３】
上述したようにして偽造防止シート１が製造され、その後、用途に応じた情報がシート基材２の情報印刷領域４に印刷されて使用されることになる。
【００２４】
以下に、上述した偽造防止シート１の作用について説明する。
【００２５】
まず、図１に示した偽造防止シート１を正面、すなわち、シート基材２の平面部３の法線方向から観察した場合の作用について説明する。
【００２６】
図２は、図１に示した偽造防止シート１を正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、（ａ）は断面方向から見た図、（ｂ）は偽造防止構造１０における文字部マーク１２及び背景部マーク１３の見え方を示す図である。
【００２７】
図１に示した偽造防止シート１を、図２（ａ）に示すように、正面、すなわち平面部３の法線方向から観察した場合、複数の凸部１１にそれぞれ設けられた文字部マーク１２及び背景部マーク１３は、観察方向から遮るものが存在しないため、図２（ｂ）に示すように全ての文字部マーク１２及び背景部マーク１３が視認されることとなる。
【００２８】
文字部マーク１２と背景部マーク１３とは、凸部１１の側面１１ａにおいて平面部３からの高さが互いに異なるように設けられているものの、互いに相似形であり、かつ、偽造防止シート１を正面から観察した場合はその高さ方向から観察されることとなり、それにより、文字部マーク１２と背景部マーク１３とが略同一の形状として認識され、同一形状のマークが並んで形成されているものとして認識される。これは凸部１１が微細であるほどこれらが略同一の形状として認識されやすくなる。
【００２９】
また、図１に示した偽造防止シート１を正面から観察した場合は、凸部１１のそれぞれについて文字部マーク１２を構成する全てのマーク色１２ａ〜１２ｄが視認されるとともに、凸部１１のそれぞれについて背景部マーク１３を構成する全てのマーク色１３ａ〜１３ｄが視認されることになる。
【００３０】
次に、図１に示した偽造防止シート１に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材２の平面部３の法線方向から鋭角をなす方向に変化させていった場合の作用について説明する。
【００３１】
図３は、図１に示した偽造防止シート１に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、（ａ）は観察方向を図１中Ｂ方向に変化させていった場合の凸部１１の見え方を示す図、（ｂ）は観察方向を図１中Ｃ方向に変化させていった場合の凸部１１の見え方を示す図、（ｃ）は観察方向を図１中Ｄ方向に変化させていった場合の凸部１１の見え方を示す図、（ｄ）は観察方向を図１中Ｅ方向に変化させていった場合の凸部１１の見え方を示す図である。
【００３２】
図１に示した偽造防止シート１に対する観察方向を正面から変化させていくと、凸部１１においては、側面１１ａが観察方向に対向する側のみが視認され、その反対側は凸部１１に隠れて視認されない状態となる。そのため、観察方向を図１中Ｂ方向に変化させていくと図３（ａ）に示すように、側面１１ａの分割された４つの領域１４ａ〜１４ｂのうち領域１４ａが観察方向に対向し、文字部マーク１２が形成された凸部１１においては文字部マーク１２のうちマーク色１２ａの部分が主に視認され、背景部マーク１３が形成された凸部１１においては背景部マーク１３のうちマーク色１３ａの部分が主に視認されることになる。これにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ａ，１３ａを主とした色で視認されることになる。
【００３３】
また、観察方向を図１中Ｃ方向に変化させていくと図３（ｂ）に示すように、側面１１ａの分割された４つの領域１４ａ〜１４ｂのうち領域１４ｂが観察方向に対向し、文字部マーク１２が形成された凸部１１においては文字部マーク１２のうちマーク色１２ｂの部分が主に視認され、背景部マーク１３が形成された凸部１１においては背景部マーク１３のうちマーク色１３ｂの部分が主に視認されることになる。これにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ｂ，１３ｂを主とした色で視認されることになる。
【００３４】
また、観察方向を図１中Ｄ方向に変化させていくと図３（ｃ）に示すように、側面１１ａの分割された４つの領域１４ａ〜１４ｂのうち領域１４ｃが観察方向に対向し、文字部マーク１２が形成された凸部１１においては文字部マーク１２のうちマーク色１２ｃの部分が主に視認され、背景部マーク１３が形成された凸部１１においては背景部マーク１３のうちマーク色１３ｃの部分が主に視認されることになる。これにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ｃ，１３ｃを主とした色で視認されることになる。
【００３５】
また、観察方向を図１中Ｅ方向に変化させていくと図３（ｄ）に示すように、側面１１ａの分割された４つの領域１４ａ〜１４ｂのうち領域１４ｄが観察方向に対向し、文字部マーク１２が形成された凸部１１においては文字部マーク１２のうちマーク色１２ｄの部分が主に視認され、背景部マーク１３が形成された凸部１１においては背景部マーク１３のうちマーク色１３ｄの部分が主に視認されることになる。これにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ｄ，１３ｄを主とした色で視認されることになる。
【００３６】
このように、図１に示した偽造防止シート１を正面から観察した場合は、文字部マーク１２及び背景部マーク１３がそれぞれ、４つのマーク色１２ａ〜１２ｄ，１３ａ〜１３ｄの４色で視認され、また、偽造防止シート１に対する観察方向を正面から鋭角をなす方向に変化させた場合は、文字部マーク１２及び背景部マーク１３がそれぞれ、４つのマーク色１２ａ〜１２ｄ，１３ａ〜１３ｄのうち観察方向に対向する領域のマーク色による色にて視認されることになり、文字部マーク部１２及び背景部マーク１３において、観察方向を変化させることにより、視認される色に変化が生じることになる。
【００３７】
次に、観察方向を偽造防止シート１に対してさらに鋭角をなす方向に変化させていった場合の作用について説明する。
【００３８】
図４は、図１に示した偽造防止シート１に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、（ａ）は断面方向から見た図、（ｂ）は背景部マーク１３が見えなくなる時の平面部３に対する観察方向の角度θ1を示す図、（ｃ）は（ｂ）に示した角度θ1にて文字部マーク１２を見た状態を示す図、（ｄ）は図１中Ｂ方向から偽造防止構造１０を見た場合の文字部マーク１２及び背景部マーク１３の見え方を示す図、（ｅ）は図１中Ｃ方向から偽造防止構造１０を見た場合の文字部マーク１２及び背景部マーク１３の見え方を示す図、（ｆ）は図１中Ｄ方向から偽造防止構造１０を見た場合の文字部マーク１２及び背景部マーク１３の見え方を示す図、（ｇ）は図１中Ｅ方向から偽造防止構造１０を見た場合の文字部マーク１２及び背景部マーク１３の見え方を示す図である。
【００３９】
図１に示した偽造防止シート１に対する観察方向を図３に示した状態から変化させていくと、シート基材２の平面部３に対する観察方向のなす角度がさらに鋭角になっていく。そして、シート基材２の平面部３に対する観察方向のなす角度が、図４（ｂ）に示すように角度θ1よりも小さくなると、凸部１１の側面１１ａに設けられた文字部マーク１２及び背景部マーク１３のうち背景部マーク１３が、その背景部マーク１３が設けられた凸部１１の観察方向側に隣接する凸部１１によって隠れて見えなくなる。なお、背景部マーク１３が凸部１１によって隠れて見えなくなる角度θ1は、図４（ｂ）に示すように、背景部マーク１３と、その背景部マーク１３が設けられた凸部１１の観察方向側に隣接する凸部１１の頂部１１ｂの端部との間の平面部３と平行となる方向についての距離をｗ1、背景部マーク１３と凸部１１の高さの差をｔ1とすると、角度θ1＝ｔａｎ-1（ｔ1／ｗ1）で表される。
【００４０】
一方、文字部マーク１２においては、シート基材２の平面部３に対する観察方向のなす角度が、背景部マーク１３が見えなくなる角度θ1となった場合においても、図４（ｃ）に示すように、その文字部マーク１２が設けられた凸部１１の観察方向側に隣接する凸部１１によって隠れない。
【００４１】
そのため、偽造防止シート１に対する観察方向を、例えば図１中Ｂ方向に変化させていき、シート基材２の平面部３に対する観察方向のなす角度がθ1よりも小さくなると、凸部１１の側面１１ａに設けられた文字部マーク１２及び背景部マーク１３のうち、全ての文字部マーク１２と観察方向最も手前の列を構成する凸部１１の側面１１ａに設けられた背景部マーク１３のみが見えることになり、図４（ｄ）に示すように、この文字部マーク１２によって構成される潜像「Ｔ」が浮かび上がって見えるようになる。またこの際、凸部１１の側面１１ａは、上述したように観察方向側のみが視認されることになるため、偽造防止シート１の偽造防止構造１０を図１中Ｂ方向から見た場合は、凸部１１の側面１１ａの領域１４ａが主に視認されることになり、それにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ａ，１３ａを主とした色で視認されることになる。
【００４２】
ここで、図１に示した偽造防止シート１においては、観察方向によって浮かび上がる潜像を構成する文字部マーク１２が、シート基材２に形成された凸部１１の側面１１ａの全周に渡って設けられ、かつ、複数の凸部１１がマトリックス状に形成されているため、シート基材２の平面部３と観察方向とのなす角度がθ1よりも小さければ、どの方向から観察した場合であっても、文字部マーク１２による潜像が浮かび上がって見えるようになる。
【００４３】
例えば、偽造防止シート１に対する観察方向を図１中Ｃ方向に変化させていくと、文字部マーク１２によって構成される潜像「Ｔ」が図４（ｅ）に示すように浮かび上がって見えるようになる。この場合においても、凸部１１の側面１１ａは領域１４ｂが主に視認されることになり、それにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ｂ，１３ｂを主とした色で視認されることになる。
【００４４】
また、偽造防止シート１に対する観察方向を図１中Ｄ方向に変化させていくと、文字部マーク１２によって構成される潜像「Ｔ」が図４（ｆ）に示すように浮かび上がって見えるようになる。この場合においても、凸部１１の側面１１ａは領域１４ｃが主に視認されることになり、それにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ｃ，１３ｃを主とした色で視認されることになる。
【００４５】
また、偽造防止シート１に対する観察方向を図１中Ｅ方向に変化させていくと、文字部マーク１２によって構成される潜像「Ｔ」が図４（ｇ）に示すように浮かび上がって見えるようになる。この場合においても、凸部１１の側面１１ａは領域１４ｄが主に視認されることになり、それにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ｄ，１３ｄを主とした色で視認されることになる。
【００４６】
なお、上述したどの方向から観察した場合においても、マトリックス状に形成された凸部１１のうち観察方向最も手前の列を構成する凸部１１においては、側面１１ａに設けられた背景部マーク１３が視認可能な状態となるが、凸部１１の数が多かったり、図４（ｄ）〜（ｇ）に示したように文字部マーク１２によって構成される潜像の線幅がその背景部マーク１３による線幅よりも太かったりすること等によってこの背景部マーク１３が潜像とは無関係であることが認識できればよい。もし、観察方向最も手前の列を構成する凸部１１の側面１１ａに設けられた背景部マーク１３によって潜像が不明瞭となるような場合は、潜像を構成する文字部マーク１２を、マトリックス状に形成された複数の凸部１１のうち、周囲から離れた凸部１１に設ける等すればよい。
【００４７】
シート基材２の平面部３と観察方向とのなす角度がθ1よりも小さければ、上述したように、凸部１１の側面１１ａに設けられた文字部マーク１２及び背景部マーク１３のうち背景部マーク１３が隠れて見えなくなるが、シート基材２の平面部３と観察方向とのなす角度をさらに小さくしていき、シート基材２の平面部３に対する観察方向のなす角度が、図４（ｃ）に示すように角度θ2よりも小さくなると、凸部１１の側面１１ａに設けられた文字部マーク１２までもが、その文字部マーク１２が設けられた凸部１１の観察方向側に隣接する凸部１１によって隠れて見えなくなってしまう。すなわち、シート基材２の平面部３に対する観察方向のなす角度θが、θ2≦θ≦θ1である場合に、凸部１１の側面１１ａに設けられた文字部マーク１２及び背景部マーク１３のうち文字部マーク１２のみが視認可能となることにより潜像「Ｔ」が浮かび上がって見えることになる。なお、文字部マーク１２が凸部１１によって隠れて見えなくなる角度θ2は、図４（ｃ）に示すように、文字部マーク１２と、その文字部マーク１２が設けられた凸部１１の観察方向側に隣接する凸部１１の頂部１１ｂの端部との間の平面部３と平行となる方向についての距離をｗ2、文字部マーク１２と凸部１１の高さの差をｔ2とすると、角度θ2＝ｔａｎ-1（ｔ2／ｗ2）で表される。
【００４８】
このように、図１に示した偽造防止シート１を正面から観察した場合は、文字部マーク１２と背景部マーク１３とが、同一形状のマークが並んで形成されているものとして認識されるとともに、文字部マーク１２及び背景部マーク１３がそれぞれ、４つのマーク色１２ａ〜１２ｄ，１３ａ〜１３ｄの４つの色で視認され、また、偽造防止シート１に対する観察方向を正面から鋭角をなす方向に変化させた場合は、文字部マーク１２による潜像「Ｔ」が浮かび上がるとともに、その潜像「Ｔ」を構成する文字部マーク１２が、マーク色１２ａ〜１２ｄのうち観察方向に応じたマーク色にて視認されることになる。
【００４９】
また、偽造防止シート１の平面部３に対して鋭角をなす状態で、観察方向を平面部３に対して平行な方向に変化させると、その潜像「Ｔ」を構成する文字部マーク１２の色が観察方向に応じて変化していき、視認される潜像「Ｔ」の色に変化が生じることになる。
【００５０】
上述した偽造防止シート１は、複写した場合、シート基材２の情報印刷領域４に印刷された情報や、シート基材２に印刷により設けられた文字部マーク１２及び背景部マーク１３は複写されるものの、凸部１１までは再現できない。そのため、複写物の観察方向を変えていった場合であっても、文字部マーク１２による潜像は浮かび上がらず、また、文字部マーク１２及び背景部マーク１３の色が変化せず、それにより、真偽判別を行うことが可能となる。このように真偽判別を行う際、本形態の偽造防止シート１においては、偽造防止シート１に対する観察方向をシート基材２の平面部３の法線方向からどの方向に変化させていった場合であっても、文字部マーク１２による潜像が浮かび上がって見えるため、観察方向に制限されることなく潜像による真偽判別を容易に行うことができる。また、偽造防止シート１の平面部３に対して鋭角をなす状態で、観察方向を平面部３に対して平行な方向に変化させた場合においても、文字部マーク１２及び背景部マーク１３の色が４つのマーク色１２ａ〜１２ｄのまま変化せず、これによっても真偽判別を行うことができる。また、凸部１１が、シート基材２の平面部３を窪ませることによって形成されているため、シート基材２を表裏から見た場合や、直接触れた場合において、凸部１１が認識されにくく、凸部１１が再現しにくいものとなり、偽造防止機能を向上させることができる。
【００５１】
（他の実施の形態）
図５は、本発明の偽造防止媒体の他の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、（ａ）は全体の構成を示す図、（ｂ）は（ａ）に示した偽造防止構造１１０の詳細な構成を示す図、（ｃ）は（ｂ）に示した凸部１１１を斜めから見た詳細な構成を示す図、（ｄ）は（ｂ）に示した凸部１１１を正面から見た詳細な構成を示す図である。
【００５２】
本形態における偽造防止シート１０１は図５（ａ）に示すように、図１に示したものと同様に、その一部に複数の凸部１１１がマトリックス状に形成された偽造防止構造１１０が設けられて構成されている。複数の凸部１１１のそれぞれは、図５（ｃ）に示すように、図１に示したものと同様に、円錐から頂点の部分が取り除かれた形状であって、側面１１１ａと頂部１１１ｂとから構成されている。さらに、図５（ｃ），（ｄ）に示すように、側面１１１ａ及び頂部１１１ｂが、頂部１１１ｂの中心部を中心として側面１１１ａの周方向に４つの領域１１４ａ〜１１４ｄに分割され、分割された領域１１４ａ〜１１４ｄそれぞれが互いに異なるマーク色１１２ａ〜１１２ｄに塗られている。すなわち、凸部１１１の分割された４つの領域１１４ａ〜１１４ｄには、互いに異なるマーク色１１２ａ〜１１２ｄを具備する情報が表示されていることになる。
【００５３】
上記のように構成された偽造防止シート１０１においては、偽造防止シート１０１を正面から観察した場合は、凸部１１１に塗られたマーク色１１２ａ〜１１２ｄが等しい割合で視認され、観察方向を、偽造防止シート１０１に対して鋭角をなす方向に変化させていくと、凸部１１１の側面１１１ａにおいては、４つの領域１１４ａ〜１１４ｄのうち観察方向に応じた領域のみが視認されることになり、凸部１１１に塗られたマーク色１１２ａ〜１１２ｄのうちその領域に塗られたマーク色が主となる色で凸部１１１が視認されることとなり、これにより、真偽判別が可能となる。また、偽造防止シート１０１に対して鋭角をなす状態で、観察方向を偽造防止シート１０１に対して平行な方向に変化させた場合、観察方向に応じて視認される色が変化し、これによっても真偽判別を行うことができる。
【００５４】
なお、上述した実施の形態においては、凸部１１，１１１が４つの領域に分割され、その４つの領域毎に互いに異なるマーク色を具備してマークが表示されているが、凸部１１，１１１が分割される数は４つに限らず、その分割された領域毎に互いに異なる色を具備して情報が表示されていればよい。
【００５５】
また、凸部１１，１１１においては、円柱形のものや頂部１１ｂ，１１１ｂがない円錐形のものやドーム型のものとすることも考えられる。また、断面が矩形状となるものとすることも考えられる。また、シート基材２の平面部３を窪ませることによって形成されるものに限らず、シート基材２の平面部３から平面部３の法線方向に突出したものであってもよい。なお、図１に示したものにおいて凸部１１が円柱状のものである場合は、偽造防止シート１を正面から観察した場合、文字部マーク２及び背景部マーク３は視認されないことになる。
【００５６】
また、上述した実施の形態においては、偽造防止媒体として、紙からなるシート基材２に偽造防止構造１０，１１０が設けられた偽造防止シート１，１０１を例に挙げて説明したが、本発明はこのような偽造防止シート１，１０１に限らず、フィルムからなるシート基材や複数の樹脂層が積層されてなるカード基材に上述したような偽造防止構造１０，１１０を設けたものにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【００５７】
【図１】本発明の偽造防止媒体の実施の一形態となる偽造防止シートを示す図であり、（ａ）は全体の構成を示す図、（ｂ）は（ａ）に示した偽造防止構造の詳細な構成を示す図、（ｃ）は（ｂ）に示したＡ−Ａ’断面図、（ｄ）は文字部マークが設けられた凸部の構成を示す図、（ｅ）は背景部マークが設けられた凸部の構成を示す図、（ｆ）は文字部マークの詳細な構成を示すための凸部を正面から見た図、（ｇ）は背景部マークの詳細な構成を示すための凸部を正面から見た図である。
【図２】図１に示した偽造防止シートを正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、（ａ）は断面方向から見た図、（ｂ）は偽造防止構造における文字部マーク及び背景部マークの見え方を示す図である。
【図３】図１に示した偽造防止シートに対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、（ａ）は観察方向を図１中Ｂ方向に変化させていった場合の凸部の見え方を示す図、（ｂ）は観察方向を図１中Ｃ方向に変化させていった場合の凸部の見え方を示す図、（ｃ）は観察方向を図１中Ｄ方向に変化させていった場合の凸部の見え方を示す図、（ｄ）は観察方向を図１中Ｅ方向に変化させていった場合の凸部の見え方を示す図である。
【図４】図１に示した偽造防止シート１に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、（ａ）は断面方向から見た図、（ｂ）は背景部マークが見えなくなる時の平面部３に対する観察方向の角度θ1を示す図、（ｃ）は（ｂ）に示した角度θ1にて文字部マークを見た状態を示す図、（ｄ）は図１中Ｂ方向から偽造防止構造を見た場合の文字部マーク及び背景部マークの見え方を示す図、（ｅ）は図１中Ｃ方向から偽造防止構造を見た場合の文字部マーク及び背景部マークの見え方を示す図、（ｆ）は図１中Ｄ方向から偽造防止構造を見た場合の文字部マーク及び背景部マークの見え方を示す図、（ｇ）は図１中Ｅ方向から偽造防止構造を見た場合の文字部マーク及び背景部マークの見え方を示す図である。
【図５】本発明の偽造防止媒体の他の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、（ａ）は全体の構成を示す図、（ｂ）は（ａ）に示した偽造防止構造の詳細な構成を示す図、（ｃ）は（ｂ）に示した凸部を斜めから見た詳細な構成を示す図、（ｄ）は（ｂ）に示した凸部を正面から見た詳細な構成を示す図である。
【符号の説明】
【００５８】
１，１０１ 偽造防止シート
２ シート基材
３ 平面部
４ 情報印刷領域
１０，１１０ 偽造防止構造
１１，１１１ 凸部
１１ａ，１１１ａ 側面
１１ｂ，１１１ｂ 頂部
１２ 文字部マーク
１２ａ〜１２ｄ，１３ａ〜１３ｄ，１１２ａ〜１１２ｄ，１１３ａ〜１１３ｄ マーク色
１３ 背景部マーク
１４ａ〜１４ｄ，１１４ａ〜１１４ｄ 領域
【技術分野】
【０００１】
本発明は、偽造防止シート等の偽造防止媒体に関し、特に、観察する方向に応じて視認される情報が変化する偽造防止構造に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来より、プリペイドカードや各種入場券、商品券や株券等の有価証券においては、広く流通しており比較的容易に換金可能である等の理由から、偽造犯罪が頻発している。特に、近年ではカラーコピー機等の複写機の性能向上と普及に伴い、簡単には真正品と見分けられない偽造品が比較的容易に製造可能になってきており、偽造に対する対策が求められている。また、上述したような有価証券に限らず、紙幣においても偽造に対する対策が求められている。
【０００３】
このような偽造に対する対策の１つとして、潜像を用いて有価証券や紙幣の真偽判別を可能とする技術が考えられており、例えば、特許文献１に開示されている。
【０００４】
特許文献１に開示された技術は、シート基材上に、複数本の印刷万線と、この印刷万線と並列し、一部が印刷万線と直交する方向に延在し、かつ、断面が隆起したレリーフ万線とを設け、観察方向によって潜像を浮かび上がらせるものである。基材を正面から見た場合は全ての印刷万線が視認可能な状態となっている。ところが、観察方向を印刷万線及びレリーフ万線と直交する方向に変化させていくと、印刷万線のうちレリーフ万線が延在した部分がその延在したレリーフ万線の陰となって視認できなくなる一方、印刷万線のその他の部分は視認可能な状態のままとなる。これにより、レリーフ万線の形状に応じた潜像を浮かび上がらせることができる。
【０００５】
このように断面が隆起したレリーフ万線を設けたシート基材においては、複写した場合、表面に印刷された印刷万線を含む印刷情報は複写されるものの、レリーフ万線の隆起形状までは再現できない。そのため、複写物の観察方向を変化させていった場合であっても、潜像は浮かび上がらず、それにより、真偽判別を行うことが可能となる。
【特許文献１】特開２０００−３１３１６１号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、上述したように、シート基材上に、複数本の印刷万線と、この印刷万線と並列し、一部が印刷万線と直交する方向に延在し、かつ、断面が隆起したレリーフ万線とを設け、この印刷万線とレリーフ万線とで潜像を浮かび上がらせるものにおいては、印刷万線及びレリーフ万線と直交する方向から観察した場合にしか潜像が浮かび上がらず、潜像による真偽判別がしやすいとは言い難い。特に、観察方向が制限されている場合、潜像による真偽判別ができなくなる虞れがある。
【０００７】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、観察方向に制限されることなく真偽判別を容易に行うことができる偽造防止媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記目的を達成するために本発明は、
基材に側面を具備して形成された凸部を有し、
前記側面は、周方向に分割された複数の領域からなり、前記複数の領域毎に異なる色を具備する情報が表示されている。
【０００９】
上記のように構成された本発明においては、基材を表面から観察した場合は、凸部の側面に表示された情報が全て視認可能となるかあるいは全て視認不可能となるかのどちらかの状態となる。凸部の側面に表示された情報が全て視認可能となる場合は、凸部の側面に表示された情報、すなわち、側面の周方向に分割された複数の領域毎に異なる色を具備する情報が全て視認可能な状態となる。この状態から観察方向を基材表面に対して鋭角をなす方向に変化させていくと、凸部の側面の周方向に分割された複数の領域のうち観察方向に対向する領域のみが視認可能となり、その領域に表示された色を具備する情報のみが視認されることになる。
【００１０】
このように、基材を表面から観察した場合は、凸部の側面の周方向に分割された複数の領域毎に異なる色を具備する情報が全て視認可能となるか、凸部の側面に表示された情報が全て視認不可能となり、基材表面に対して鋭角をなす方向から観察した場合は、凸部の側面の周方向に分割された複数の領域のうち観察方向に対向する領域に表示された色を具備する情報のみが視認可能となるというように、基材を表面から観察した場合と、基材表面に対して鋭角をなす方向から観察した場合とで、視認される情報の色が異なることになる。ここで、凸部の側面は、周方向に複数の領域に分割され、その複数の領域毎に異なる色を具備する情報が表示されているので、観察方向を基材表面に対して鋭角をなすどの方向に変化させていった場合であっても、上述したような視認される色の変化が生じることになる。
【００１１】
また、基材表面に対して鋭角をなす状態で、観察方向を基材表面に対して平行な方向に変化させると、観察方向に応じて、凸部の側面の周方向に分割された複数の領域のうち視認される領域が変化し、これによっても、視認される情報の色に変化が生じることになる。
【発明の効果】
【００１２】
以上説明したように本発明においては、基材に形成された凸部の側面が、周方向に分割された複数の領域からなり、複数の領域毎に異なる色を具備する情報が表示されている構成としたため、基材を表面から観察した場合は、凸部の側面の周方向に分割された複数の領域毎に異なる色を具備する情報が全て視認可能となるか、凸部の側面に表示された情報が全て視認不可能となり、基材表面に対して鋭角をなす方向から観察した場合は、凸部の側面の周方向に分割された複数の領域のうち観察方向に対向する領域に表示された色を具備する情報のみが視認可能となるというように、基材を表面から観察した場合と、基材表面に対して鋭角をなす方向から観察した場合とで、視認される情報の色が異なることになり、また、観察方向を基材表面に対して鋭角をなすどの方向に変化させていった場合であっても、上述したような視認される色の変化が生じることになり、観察方向に制限されることなく真偽判別を容易に行うことができる。また、異なる色を具備する情報が表示された複数の領域が、凸部の側面が周方向に分割されたものであることから、基材表面に対して鋭角をなす状態で、観察方向を基材表面に対して平行な方向に変化させた場合においても、視認される色に変化が生じることになり、真偽判別を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１３】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【００１４】
図１は、本発明の偽造防止媒体の実施の一形態となる偽造防止シートを示す図であり、（ａ）は全体の構成を示す図、（ｂ）は（ａ）に示した偽造防止構造１０の詳細な構成を示す図、（ｃ）は（ｂ）に示したＡ−Ａ’断面図、（ｄ）は文字部マーク１２が設けられた凸部１１の構成を示す図、（ｅ）は背景部マーク１３が設けられた凸部１１の構成を示す図、（ｆ）は文字部マーク１２の詳細な構成を示すための凸部１１を正面から見た図、（ｇ）は背景部マーク１３の詳細な構成を示すための凸部１１を正面から見た図である。
【００１５】
本形態の偽造防止シート１は図１に示すように、紙からなるシート基材２の一部の領域に偽造防止構造１０が設けられて構成されている。シート基材２は、平面部３を有し、この平面部３の一部の領域に情報印刷領域４が設けられるとともに、他の領域に偽造防止構造１０が設けられている。このように構成された偽造防止シート１は、例えば、コンサート等の入場チケットとして用いることが考えられる。その場合、コンサートの内容や会場名、座席番号等が情報印刷領域４に印刷されることになる。また、シート基材２の情報印刷領域４に情報が印刷される前に、シート基材２に対してプレ印刷として地紋を印刷したり所定の色に着色したりすることも考えられるが、その場合、偽造防止構造１０による潜像が見にくくならないようにする必要がある。
【００１６】
シート基材２に設けられた偽造防止構造１０は図１（ｂ）に示すように、シート基材２にマトリックス状に形成された複数の凸部１１と、この複数の凸部１１のうち、潜像となる「Ｔ」を表現する位置となる凸部１１のみに設けられた情報となる文字部マーク１２と、複数の凸部１１のうち文字部マーク１２が設けられていない凸部１１に設けられた情報となる背景部マーク１３とから構成されている。凸部１１は、図１（ｃ）〜（ｅ）に示すように、円錐から頂点の部分が取り除かれた形状であって、シート基材２をエンボス版等で平面部３側から０．０５〜０．１ｍｍ程度窪ませることにより側面１１ａが形成され、平面部３との同一面が頂部１１ｂとなっている。そして、この頂部１１ｂからシート基材２の窪み方向に向かうに従ってその断面積が徐々に広くなり、凸部１１の底部においては、直径が０．５ｍｍ以下の円形状となっている。
【００１７】
文字部マーク１２は、複数の凸部１１のうち、潜像となる「Ｔ」を表現する位置となる凸部１１の側面１１ａの底部からの高さが第１の高さｈ1となる位置にて全周に渡って印刷によって設けられている。背景部マーク１３は、複数の凸部１１のうち文字部マーク１２が設けられていない凸部１１の側面１１ａの底部からの高さが第２の高さｈ2となる位置にて全周に渡って印刷によって設けられている。ここで、凸部１１の側面１１ａにて文字部マーク１２が設けられた高さｈ1と、背景部マーク１３が設けられた高さｈ2とは、背景部マーク１３が設けられた高さｈ2が文字部マーク１２が設けられた高さｈ1よりも低くなっている。
【００１８】
また、凸部１１は図１（ｆ），（ｇ）に示すように、その側面１１ａが周方向に４つの領域１４ａ〜１４ｄに分割されており、文字部マーク１２は、領域１４ａ〜１４ｄ毎に互いに異なる色となる４つのマーク色１２ａ〜１２ｄから構成され、また、背景部マーク１３は、領域１４ａ〜１４ｄ毎に互いに異なる色となる４つのマーク色１３ａ〜１３ｄから構成され、領域１４ａにおけるマーク色１２ａとマーク色１３ａ、領域１４ｂにおけるマーク色１２ｂとマーク色１３ｂ、領域１４ｃにおけるマーク色１２ｃとマーク色１３ｃ、領域１４ｄにおけるマーク色１２ｄとマーク色１３ｄとはそれぞれ同一の色となっている。
【００１９】
なお、本形態にて図示する偽造防止構造１０は、説明を簡単にするために縦横がそれぞれ１０個ずつの凸部１１が形成されたものであるが、その数を多くすればするほど、この偽造防止構造１０によって浮き上がらせることができる潜像となる文字を精細なものとすることができ、曲線等を表現しやすくなる。
【００２０】
以下に、上記のように構成された偽造防止シート１の製造方法について説明する。
【００２１】
まず、シート基材２の偽造防止構造１０が設けられる領域に、文字部マーク１２及び背景部マーク１３をそれぞれ円形状に印刷する。文字部マーク１２は、凸部１１が設けられる１０×１０のマトリックス状の領域のうち潜像となる「Ｔ」を形成する位置に印刷し、背景部マーク１３は、１０×１０のマトリックス状の領域のうち文字部マーク１２が印刷されない位置に印刷する。文字部マーク１２と背景部マーク１３とは、互いに相似形であって、その径は、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が設けられた領域に凸部１１を形成した際に、上述したように背景部マーク１３の高さが文字部マーク１２の高さよりも低くなるように、文字部マーク１２の径の方が背景部マーク１３の径よりも小さくなっている。これら文字部マーク１２と背景部マーク１３との組み合わせは、偽造防止構造１０によって浮かび上がる潜像（本形態においては「Ｔ」）に応じて予め設定されており、印刷データとして与えられる。また、これら文字部マーク１２と背景部マーク１３の印刷は、上述したようなプレ印刷と同時に行ってもよいし、上述したプレ印刷を行った後に行ってもよい。
【００２２】
次に、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が印刷された領域に、シート基材２の平面部３側からエンボス版を押し付けることにより複数の凸部１１を形成する。この際、凸部１１を文字部マーク１２及び背景部マーク１３に重なるように形成することにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３がそれぞれ、凸部１１の側面１１ａの全周に渡って設けられた形状となる。
【００２３】
上述したようにして偽造防止シート１が製造され、その後、用途に応じた情報がシート基材２の情報印刷領域４に印刷されて使用されることになる。
【００２４】
以下に、上述した偽造防止シート１の作用について説明する。
【００２５】
まず、図１に示した偽造防止シート１を正面、すなわち、シート基材２の平面部３の法線方向から観察した場合の作用について説明する。
【００２６】
図２は、図１に示した偽造防止シート１を正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、（ａ）は断面方向から見た図、（ｂ）は偽造防止構造１０における文字部マーク１２及び背景部マーク１３の見え方を示す図である。
【００２７】
図１に示した偽造防止シート１を、図２（ａ）に示すように、正面、すなわち平面部３の法線方向から観察した場合、複数の凸部１１にそれぞれ設けられた文字部マーク１２及び背景部マーク１３は、観察方向から遮るものが存在しないため、図２（ｂ）に示すように全ての文字部マーク１２及び背景部マーク１３が視認されることとなる。
【００２８】
文字部マーク１２と背景部マーク１３とは、凸部１１の側面１１ａにおいて平面部３からの高さが互いに異なるように設けられているものの、互いに相似形であり、かつ、偽造防止シート１を正面から観察した場合はその高さ方向から観察されることとなり、それにより、文字部マーク１２と背景部マーク１３とが略同一の形状として認識され、同一形状のマークが並んで形成されているものとして認識される。これは凸部１１が微細であるほどこれらが略同一の形状として認識されやすくなる。
【００２９】
また、図１に示した偽造防止シート１を正面から観察した場合は、凸部１１のそれぞれについて文字部マーク１２を構成する全てのマーク色１２ａ〜１２ｄが視認されるとともに、凸部１１のそれぞれについて背景部マーク１３を構成する全てのマーク色１３ａ〜１３ｄが視認されることになる。
【００３０】
次に、図１に示した偽造防止シート１に対する観察方向を正面、すなわち、シート基材２の平面部３の法線方向から鋭角をなす方向に変化させていった場合の作用について説明する。
【００３１】
図３は、図１に示した偽造防止シート１に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、（ａ）は観察方向を図１中Ｂ方向に変化させていった場合の凸部１１の見え方を示す図、（ｂ）は観察方向を図１中Ｃ方向に変化させていった場合の凸部１１の見え方を示す図、（ｃ）は観察方向を図１中Ｄ方向に変化させていった場合の凸部１１の見え方を示す図、（ｄ）は観察方向を図１中Ｅ方向に変化させていった場合の凸部１１の見え方を示す図である。
【００３２】
図１に示した偽造防止シート１に対する観察方向を正面から変化させていくと、凸部１１においては、側面１１ａが観察方向に対向する側のみが視認され、その反対側は凸部１１に隠れて視認されない状態となる。そのため、観察方向を図１中Ｂ方向に変化させていくと図３（ａ）に示すように、側面１１ａの分割された４つの領域１４ａ〜１４ｂのうち領域１４ａが観察方向に対向し、文字部マーク１２が形成された凸部１１においては文字部マーク１２のうちマーク色１２ａの部分が主に視認され、背景部マーク１３が形成された凸部１１においては背景部マーク１３のうちマーク色１３ａの部分が主に視認されることになる。これにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ａ，１３ａを主とした色で視認されることになる。
【００３３】
また、観察方向を図１中Ｃ方向に変化させていくと図３（ｂ）に示すように、側面１１ａの分割された４つの領域１４ａ〜１４ｂのうち領域１４ｂが観察方向に対向し、文字部マーク１２が形成された凸部１１においては文字部マーク１２のうちマーク色１２ｂの部分が主に視認され、背景部マーク１３が形成された凸部１１においては背景部マーク１３のうちマーク色１３ｂの部分が主に視認されることになる。これにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ｂ，１３ｂを主とした色で視認されることになる。
【００３４】
また、観察方向を図１中Ｄ方向に変化させていくと図３（ｃ）に示すように、側面１１ａの分割された４つの領域１４ａ〜１４ｂのうち領域１４ｃが観察方向に対向し、文字部マーク１２が形成された凸部１１においては文字部マーク１２のうちマーク色１２ｃの部分が主に視認され、背景部マーク１３が形成された凸部１１においては背景部マーク１３のうちマーク色１３ｃの部分が主に視認されることになる。これにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ｃ，１３ｃを主とした色で視認されることになる。
【００３５】
また、観察方向を図１中Ｅ方向に変化させていくと図３（ｄ）に示すように、側面１１ａの分割された４つの領域１４ａ〜１４ｂのうち領域１４ｄが観察方向に対向し、文字部マーク１２が形成された凸部１１においては文字部マーク１２のうちマーク色１２ｄの部分が主に視認され、背景部マーク１３が形成された凸部１１においては背景部マーク１３のうちマーク色１３ｄの部分が主に視認されることになる。これにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ｄ，１３ｄを主とした色で視認されることになる。
【００３６】
このように、図１に示した偽造防止シート１を正面から観察した場合は、文字部マーク１２及び背景部マーク１３がそれぞれ、４つのマーク色１２ａ〜１２ｄ，１３ａ〜１３ｄの４色で視認され、また、偽造防止シート１に対する観察方向を正面から鋭角をなす方向に変化させた場合は、文字部マーク１２及び背景部マーク１３がそれぞれ、４つのマーク色１２ａ〜１２ｄ，１３ａ〜１３ｄのうち観察方向に対向する領域のマーク色による色にて視認されることになり、文字部マーク部１２及び背景部マーク１３において、観察方向を変化させることにより、視認される色に変化が生じることになる。
【００３７】
次に、観察方向を偽造防止シート１に対してさらに鋭角をなす方向に変化させていった場合の作用について説明する。
【００３８】
図４は、図１に示した偽造防止シート１に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、（ａ）は断面方向から見た図、（ｂ）は背景部マーク１３が見えなくなる時の平面部３に対する観察方向の角度θ1を示す図、（ｃ）は（ｂ）に示した角度θ1にて文字部マーク１２を見た状態を示す図、（ｄ）は図１中Ｂ方向から偽造防止構造１０を見た場合の文字部マーク１２及び背景部マーク１３の見え方を示す図、（ｅ）は図１中Ｃ方向から偽造防止構造１０を見た場合の文字部マーク１２及び背景部マーク１３の見え方を示す図、（ｆ）は図１中Ｄ方向から偽造防止構造１０を見た場合の文字部マーク１２及び背景部マーク１３の見え方を示す図、（ｇ）は図１中Ｅ方向から偽造防止構造１０を見た場合の文字部マーク１２及び背景部マーク１３の見え方を示す図である。
【００３９】
図１に示した偽造防止シート１に対する観察方向を図３に示した状態から変化させていくと、シート基材２の平面部３に対する観察方向のなす角度がさらに鋭角になっていく。そして、シート基材２の平面部３に対する観察方向のなす角度が、図４（ｂ）に示すように角度θ1よりも小さくなると、凸部１１の側面１１ａに設けられた文字部マーク１２及び背景部マーク１３のうち背景部マーク１３が、その背景部マーク１３が設けられた凸部１１の観察方向側に隣接する凸部１１によって隠れて見えなくなる。なお、背景部マーク１３が凸部１１によって隠れて見えなくなる角度θ1は、図４（ｂ）に示すように、背景部マーク１３と、その背景部マーク１３が設けられた凸部１１の観察方向側に隣接する凸部１１の頂部１１ｂの端部との間の平面部３と平行となる方向についての距離をｗ1、背景部マーク１３と凸部１１の高さの差をｔ1とすると、角度θ1＝ｔａｎ-1（ｔ1／ｗ1）で表される。
【００４０】
一方、文字部マーク１２においては、シート基材２の平面部３に対する観察方向のなす角度が、背景部マーク１３が見えなくなる角度θ1となった場合においても、図４（ｃ）に示すように、その文字部マーク１２が設けられた凸部１１の観察方向側に隣接する凸部１１によって隠れない。
【００４１】
そのため、偽造防止シート１に対する観察方向を、例えば図１中Ｂ方向に変化させていき、シート基材２の平面部３に対する観察方向のなす角度がθ1よりも小さくなると、凸部１１の側面１１ａに設けられた文字部マーク１２及び背景部マーク１３のうち、全ての文字部マーク１２と観察方向最も手前の列を構成する凸部１１の側面１１ａに設けられた背景部マーク１３のみが見えることになり、図４（ｄ）に示すように、この文字部マーク１２によって構成される潜像「Ｔ」が浮かび上がって見えるようになる。またこの際、凸部１１の側面１１ａは、上述したように観察方向側のみが視認されることになるため、偽造防止シート１の偽造防止構造１０を図１中Ｂ方向から見た場合は、凸部１１の側面１１ａの領域１４ａが主に視認されることになり、それにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ａ，１３ａを主とした色で視認されることになる。
【００４２】
ここで、図１に示した偽造防止シート１においては、観察方向によって浮かび上がる潜像を構成する文字部マーク１２が、シート基材２に形成された凸部１１の側面１１ａの全周に渡って設けられ、かつ、複数の凸部１１がマトリックス状に形成されているため、シート基材２の平面部３と観察方向とのなす角度がθ1よりも小さければ、どの方向から観察した場合であっても、文字部マーク１２による潜像が浮かび上がって見えるようになる。
【００４３】
例えば、偽造防止シート１に対する観察方向を図１中Ｃ方向に変化させていくと、文字部マーク１２によって構成される潜像「Ｔ」が図４（ｅ）に示すように浮かび上がって見えるようになる。この場合においても、凸部１１の側面１１ａは領域１４ｂが主に視認されることになり、それにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ｂ，１３ｂを主とした色で視認されることになる。
【００４４】
また、偽造防止シート１に対する観察方向を図１中Ｄ方向に変化させていくと、文字部マーク１２によって構成される潜像「Ｔ」が図４（ｆ）に示すように浮かび上がって見えるようになる。この場合においても、凸部１１の側面１１ａは領域１４ｃが主に視認されることになり、それにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ｃ，１３ｃを主とした色で視認されることになる。
【００４５】
また、偽造防止シート１に対する観察方向を図１中Ｅ方向に変化させていくと、文字部マーク１２によって構成される潜像「Ｔ」が図４（ｇ）に示すように浮かび上がって見えるようになる。この場合においても、凸部１１の側面１１ａは領域１４ｄが主に視認されることになり、それにより、文字部マーク１２及び背景部マーク１３が、マーク色１２ｄ，１３ｄを主とした色で視認されることになる。
【００４６】
なお、上述したどの方向から観察した場合においても、マトリックス状に形成された凸部１１のうち観察方向最も手前の列を構成する凸部１１においては、側面１１ａに設けられた背景部マーク１３が視認可能な状態となるが、凸部１１の数が多かったり、図４（ｄ）〜（ｇ）に示したように文字部マーク１２によって構成される潜像の線幅がその背景部マーク１３による線幅よりも太かったりすること等によってこの背景部マーク１３が潜像とは無関係であることが認識できればよい。もし、観察方向最も手前の列を構成する凸部１１の側面１１ａに設けられた背景部マーク１３によって潜像が不明瞭となるような場合は、潜像を構成する文字部マーク１２を、マトリックス状に形成された複数の凸部１１のうち、周囲から離れた凸部１１に設ける等すればよい。
【００４７】
シート基材２の平面部３と観察方向とのなす角度がθ1よりも小さければ、上述したように、凸部１１の側面１１ａに設けられた文字部マーク１２及び背景部マーク１３のうち背景部マーク１３が隠れて見えなくなるが、シート基材２の平面部３と観察方向とのなす角度をさらに小さくしていき、シート基材２の平面部３に対する観察方向のなす角度が、図４（ｃ）に示すように角度θ2よりも小さくなると、凸部１１の側面１１ａに設けられた文字部マーク１２までもが、その文字部マーク１２が設けられた凸部１１の観察方向側に隣接する凸部１１によって隠れて見えなくなってしまう。すなわち、シート基材２の平面部３に対する観察方向のなす角度θが、θ2≦θ≦θ1である場合に、凸部１１の側面１１ａに設けられた文字部マーク１２及び背景部マーク１３のうち文字部マーク１２のみが視認可能となることにより潜像「Ｔ」が浮かび上がって見えることになる。なお、文字部マーク１２が凸部１１によって隠れて見えなくなる角度θ2は、図４（ｃ）に示すように、文字部マーク１２と、その文字部マーク１２が設けられた凸部１１の観察方向側に隣接する凸部１１の頂部１１ｂの端部との間の平面部３と平行となる方向についての距離をｗ2、文字部マーク１２と凸部１１の高さの差をｔ2とすると、角度θ2＝ｔａｎ-1（ｔ2／ｗ2）で表される。
【００４８】
このように、図１に示した偽造防止シート１を正面から観察した場合は、文字部マーク１２と背景部マーク１３とが、同一形状のマークが並んで形成されているものとして認識されるとともに、文字部マーク１２及び背景部マーク１３がそれぞれ、４つのマーク色１２ａ〜１２ｄ，１３ａ〜１３ｄの４つの色で視認され、また、偽造防止シート１に対する観察方向を正面から鋭角をなす方向に変化させた場合は、文字部マーク１２による潜像「Ｔ」が浮かび上がるとともに、その潜像「Ｔ」を構成する文字部マーク１２が、マーク色１２ａ〜１２ｄのうち観察方向に応じたマーク色にて視認されることになる。
【００４９】
また、偽造防止シート１の平面部３に対して鋭角をなす状態で、観察方向を平面部３に対して平行な方向に変化させると、その潜像「Ｔ」を構成する文字部マーク１２の色が観察方向に応じて変化していき、視認される潜像「Ｔ」の色に変化が生じることになる。
【００５０】
上述した偽造防止シート１は、複写した場合、シート基材２の情報印刷領域４に印刷された情報や、シート基材２に印刷により設けられた文字部マーク１２及び背景部マーク１３は複写されるものの、凸部１１までは再現できない。そのため、複写物の観察方向を変えていった場合であっても、文字部マーク１２による潜像は浮かび上がらず、また、文字部マーク１２及び背景部マーク１３の色が変化せず、それにより、真偽判別を行うことが可能となる。このように真偽判別を行う際、本形態の偽造防止シート１においては、偽造防止シート１に対する観察方向をシート基材２の平面部３の法線方向からどの方向に変化させていった場合であっても、文字部マーク１２による潜像が浮かび上がって見えるため、観察方向に制限されることなく潜像による真偽判別を容易に行うことができる。また、偽造防止シート１の平面部３に対して鋭角をなす状態で、観察方向を平面部３に対して平行な方向に変化させた場合においても、文字部マーク１２及び背景部マーク１３の色が４つのマーク色１２ａ〜１２ｄのまま変化せず、これによっても真偽判別を行うことができる。また、凸部１１が、シート基材２の平面部３を窪ませることによって形成されているため、シート基材２を表裏から見た場合や、直接触れた場合において、凸部１１が認識されにくく、凸部１１が再現しにくいものとなり、偽造防止機能を向上させることができる。
【００５１】
（他の実施の形態）
図５は、本発明の偽造防止媒体の他の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、（ａ）は全体の構成を示す図、（ｂ）は（ａ）に示した偽造防止構造１１０の詳細な構成を示す図、（ｃ）は（ｂ）に示した凸部１１１を斜めから見た詳細な構成を示す図、（ｄ）は（ｂ）に示した凸部１１１を正面から見た詳細な構成を示す図である。
【００５２】
本形態における偽造防止シート１０１は図５（ａ）に示すように、図１に示したものと同様に、その一部に複数の凸部１１１がマトリックス状に形成された偽造防止構造１１０が設けられて構成されている。複数の凸部１１１のそれぞれは、図５（ｃ）に示すように、図１に示したものと同様に、円錐から頂点の部分が取り除かれた形状であって、側面１１１ａと頂部１１１ｂとから構成されている。さらに、図５（ｃ），（ｄ）に示すように、側面１１１ａ及び頂部１１１ｂが、頂部１１１ｂの中心部を中心として側面１１１ａの周方向に４つの領域１１４ａ〜１１４ｄに分割され、分割された領域１１４ａ〜１１４ｄそれぞれが互いに異なるマーク色１１２ａ〜１１２ｄに塗られている。すなわち、凸部１１１の分割された４つの領域１１４ａ〜１１４ｄには、互いに異なるマーク色１１２ａ〜１１２ｄを具備する情報が表示されていることになる。
【００５３】
上記のように構成された偽造防止シート１０１においては、偽造防止シート１０１を正面から観察した場合は、凸部１１１に塗られたマーク色１１２ａ〜１１２ｄが等しい割合で視認され、観察方向を、偽造防止シート１０１に対して鋭角をなす方向に変化させていくと、凸部１１１の側面１１１ａにおいては、４つの領域１１４ａ〜１１４ｄのうち観察方向に応じた領域のみが視認されることになり、凸部１１１に塗られたマーク色１１２ａ〜１１２ｄのうちその領域に塗られたマーク色が主となる色で凸部１１１が視認されることとなり、これにより、真偽判別が可能となる。また、偽造防止シート１０１に対して鋭角をなす状態で、観察方向を偽造防止シート１０１に対して平行な方向に変化させた場合、観察方向に応じて視認される色が変化し、これによっても真偽判別を行うことができる。
【００５４】
なお、上述した実施の形態においては、凸部１１，１１１が４つの領域に分割され、その４つの領域毎に互いに異なるマーク色を具備してマークが表示されているが、凸部１１，１１１が分割される数は４つに限らず、その分割された領域毎に互いに異なる色を具備して情報が表示されていればよい。
【００５５】
また、凸部１１，１１１においては、円柱形のものや頂部１１ｂ，１１１ｂがない円錐形のものやドーム型のものとすることも考えられる。また、断面が矩形状となるものとすることも考えられる。また、シート基材２の平面部３を窪ませることによって形成されるものに限らず、シート基材２の平面部３から平面部３の法線方向に突出したものであってもよい。なお、図１に示したものにおいて凸部１１が円柱状のものである場合は、偽造防止シート１を正面から観察した場合、文字部マーク２及び背景部マーク３は視認されないことになる。
【００５６】
また、上述した実施の形態においては、偽造防止媒体として、紙からなるシート基材２に偽造防止構造１０，１１０が設けられた偽造防止シート１，１０１を例に挙げて説明したが、本発明はこのような偽造防止シート１，１０１に限らず、フィルムからなるシート基材や複数の樹脂層が積層されてなるカード基材に上述したような偽造防止構造１０，１１０を設けたものにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【００５７】
【図１】本発明の偽造防止媒体の実施の一形態となる偽造防止シートを示す図であり、（ａ）は全体の構成を示す図、（ｂ）は（ａ）に示した偽造防止構造の詳細な構成を示す図、（ｃ）は（ｂ）に示したＡ−Ａ’断面図、（ｄ）は文字部マークが設けられた凸部の構成を示す図、（ｅ）は背景部マークが設けられた凸部の構成を示す図、（ｆ）は文字部マークの詳細な構成を示すための凸部を正面から見た図、（ｇ）は背景部マークの詳細な構成を示すための凸部を正面から見た図である。
【図２】図１に示した偽造防止シートを正面から観察した場合の作用を説明するための図であり、（ａ）は断面方向から見た図、（ｂ）は偽造防止構造における文字部マーク及び背景部マークの見え方を示す図である。
【図３】図１に示した偽造防止シートに対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、（ａ）は観察方向を図１中Ｂ方向に変化させていった場合の凸部の見え方を示す図、（ｂ）は観察方向を図１中Ｃ方向に変化させていった場合の凸部の見え方を示す図、（ｃ）は観察方向を図１中Ｄ方向に変化させていった場合の凸部の見え方を示す図、（ｄ）は観察方向を図１中Ｅ方向に変化させていった場合の凸部の見え方を示す図である。
【図４】図１に示した偽造防止シート１に対する観察方向を正面から変化させていった場合の作用を説明するための図であり、（ａ）は断面方向から見た図、（ｂ）は背景部マークが見えなくなる時の平面部３に対する観察方向の角度θ1を示す図、（ｃ）は（ｂ）に示した角度θ1にて文字部マークを見た状態を示す図、（ｄ）は図１中Ｂ方向から偽造防止構造を見た場合の文字部マーク及び背景部マークの見え方を示す図、（ｅ）は図１中Ｃ方向から偽造防止構造を見た場合の文字部マーク及び背景部マークの見え方を示す図、（ｆ）は図１中Ｄ方向から偽造防止構造を見た場合の文字部マーク及び背景部マークの見え方を示す図、（ｇ）は図１中Ｅ方向から偽造防止構造を見た場合の文字部マーク及び背景部マークの見え方を示す図である。
【図５】本発明の偽造防止媒体の他の実施の形態となる偽造防止シートを示す図であり、（ａ）は全体の構成を示す図、（ｂ）は（ａ）に示した偽造防止構造の詳細な構成を示す図、（ｃ）は（ｂ）に示した凸部を斜めから見た詳細な構成を示す図、（ｄ）は（ｂ）に示した凸部を正面から見た詳細な構成を示す図である。
【符号の説明】
【００５８】
１，１０１ 偽造防止シート
２ シート基材
３ 平面部
４ 情報印刷領域
１０，１１０ 偽造防止構造
１１，１１１ 凸部
１１ａ，１１１ａ 側面
１１ｂ，１１１ｂ 頂部
１２ 文字部マーク
１２ａ〜１２ｄ，１３ａ〜１３ｄ，１１２ａ〜１１２ｄ，１１３ａ〜１１３ｄ マーク色
１３ 背景部マーク
１４ａ〜１４ｄ，１１４ａ〜１１４ｄ 領域
【特許請求の範囲】
【請求項１】
基材に側面を具備して形成された凸部を有し、
前記側面は、周方向に分割された複数の領域からなり、前記複数の領域毎に異なる色を具備する情報が表示されている偽造防止媒体。
【請求項１】
基材に側面を具備して形成された凸部を有し、
前記側面は、周方向に分割された複数の領域からなり、前記複数の領域毎に異なる色を具備する情報が表示されている偽造防止媒体。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２００９−４５７７９（Ｐ２００９−４５７７９Ａ）
【公開日】平成２１年３月５日（２００９．３．５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−２１２１７５（Ｐ２００７−２１２１７５）
【出願日】平成１９年８月１６日（２００７．８．１６）
【出願人】（０００１１０２１７）トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年３月５日（２００９．３．５）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年８月１６日（２００７．８．１６）
【出願人】（０００１１０２１７）トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Ｆターム（参考）】
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