偽造防止媒体
【課題】偽造が面倒な偏光技術を用いた潜像技術を採用したうえで、不正な剥離行為を含む貼り換えの防止を実現し得るようにした偽造防止媒体を提供することにある。
【解決手段】支持基材11上に部分的に表面処理を施して接着性を向上させた基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層14,15と接着層16を順次積層してなる偽造防止媒体であり、位相差層14,15と支持基材11の接着強度が、前記基材の表面処理部分13が非処理部分12に比して大に設定して構成したものである。
【解決手段】支持基材11上に部分的に表面処理を施して接着性を向上させた基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層14,15と接着層16を順次積層してなる偽造防止媒体であり、位相差層14,15と支持基材11の接着強度が、前記基材の表面処理部分13が非処理部分12に比して大に設定して構成したものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の偽造防止及び真贋判定を行うための隠し文字や隠しパターンを、フィルタを用いることによって潜像として表示される貼り換え防止機能つき偽造防止媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高級酒などの比較的高価な商品や電化製品の消耗品など、偽造されては困る物品などにおいては、それらの真贋を判定するために、商品本体やそれを包装したケース等に偽造防止シールを貼り付ける方法が採用されている。この偽造防止シールには、目視による判定(オバート機能)または検証器を用いた判定(コバート機能)により真贋判定を行えるようなセキュリティ機能が設けられており、それを判定することで本物であるか否かが確認できる。
【0003】
しかし、この目視により真贋判定が行える偽造防止媒体は、偽造されやすいために、偏光技術を用いた潜像技術として、偏光フィルムを重ねることにより潜像を出現させ真贋判定を行う方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この偏光技術を用いた潜像技術は、高度な技術と設備が必要となることで、偽造が難しいため、不正行為を抑止することが出来る。
【0004】
しかしながら、不正業者などが、正規物品を偽造した不正物品を扱う場合には、正規物品に貼り付けられている偽造防止シールを綺麗に取外して、その不正物品に使い回し貼り付けることにより、購入者に対して正規物品と不正物品とを見分け難くすることができてしまうという問題を有する。
【0005】
そこで、例えば目視判定が行えるホログラムは、不正に剥がそうとすると、その痕跡が残るという技術を利用して支持基材とホログラム層、或いはこれらの間に設けられた剥離層と基材またはホログラム層で剥離するようにして、被着物から故意に剥離させた場合に少なくともホログラムの一部又は全体が破壊され、何らかの手が加えられたことを判別可能とした構成のものがある。具体的には、基材とホログラム形成層との間にパターン状の剥離層を形成しておき、このホログラム脆性シールの貼付後、このホログラムシールを端部から剥がそうとすると基材とホログラム形成層とがパターン状に剥離する技術が提案されている(例えば、引用文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−314810号公報
【特許文献2】実公平5−48210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記引用文献2に開示される目視判定を行う技術では、まだ、偽造され易いうえ、脆性パターンを含ませることも容易に出来るため、偽造される虞を有する。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、偽造が面倒な偏光技術を用いた潜像技術を採用したうえで、不正な剥離行為を含む貼り換えの防止を実現し得るようにした偽造防止媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に記載の発明は、支持基材上に部分的に表面処理を施して接着性を向上させた基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と接着層を順次積層してなる偽造防止媒体であり、前記位相差層と前記支持基材の接着強度が、前記基材の表面処理部分が非処理部分に比して大に設定して構成した。
【0010】
また、本願請求項2に記載の発明は、支持基材上に部分的に表面処理を施し接着性を向上させた基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と、反射層と、接着層とを順に積層してなる偽造防止媒体であり、前記位相差層と前記支持基材の接着強度が、前記基材の表面処理部分が非処理部分に比して大に設定して構成した。
【0011】
また、本願請求項3に記載の発明は、支持基材上に部分的に表面処理を施し接着性を向上させてなる基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層とOVD層と接着層を順次積層してなる偽造防止媒体であり、前記位相差層と前記支持基材の接着強度が、前記基材の表面処理部分が非処理部分に比して大に設定して構成した。
【0012】
また、本願請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3において表面処理をコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電子線照射処理、酸化剤による表面の酸化処理のいずれかで処理するように構成した。
【0013】
また、本願請求項5に記載の発明は、支持基材上に一部分に脆性剥離層を設け、さらに少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記支持基材と位相差層の接着強度が、前記脆性剥離層が設けられていない部分の脆性剥離層が設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0014】
また、本願請求項6に記載の発明は、支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と該位相差層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記位相差層と接着層の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0015】
また、本願請求項7に記載の発明は、支持基材上に一部分に脆性剥離層を設け、さらに少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と反射層と接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記支持基材と位相差層の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0016】
また、本願請求項8に記載の発明は、支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と該位相差層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、反射層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記位相差層と反射層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0017】
また、本願請求項9に記載の発明は、支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と反射層と該反射層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記反射層と接着層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0018】
また、本願請求項10に記載の発明は、支持基材上に一部分に脆性剥離層を設け、さらに少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層とOVD層と接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記支持基材と位相差層の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0019】
また、本願請求項11に記載の発明は、支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層とOVD層と該OVD層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記OVD層と接着層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0020】
また、本願請求項12に記載の発明は、支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と該位相差層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、OVD層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記位相差層とOVD層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、潜像を用いた確実な偽造を実現したうえで、不正に剥がそうとするとパターンにて破壊するため、再利用することができなり、不正な剥離行為を含む貼り換えの防止が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図2】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図3】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図4】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図5】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図6】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図7】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図8】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図9】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図10】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図11】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図12】図11の偽造防止媒体を被着物に貼付けた状態を示した断面図である。
【図13】図12の貼付け状態から剥離した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る偽造防止媒体について、図1〜11を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係る偽造防止媒体を示すもので、支持基材11上に部分的な表面処理を行い、その処理部分13の接着性を非処理部分12に比して向上させており、その面上に位相差層14及び、この位相差層14とは異なる方向に光軸を持つ位相差層15が積層される。そして、この位相差層14,15上には、接着層16が積層される。
【0025】
図2〜図11は、それぞれ他の実施の形態を示すもので、図2の実施の形態では、位相差層14,15と接着層16との間に反射層17が介在されて積層される。
【0026】
そして、図3の実施の形態では、位相差層14,15と接着層16との間に後述するセキュリティ機能層であるOVD層18が介在されて積層される。
【0027】
この図1〜図3に示す実施の形態に係る偽造防止媒体は、例えば接着層16を被着物20(図12参照)に貼付けた後、接着層16を端部より剥がすと、支持基材11の処理部分13に比して非処理部分12の接着性が弱いために該非処理部分12のみが剥がれて破壊され、その再使用が不可となる。
【0028】
図4の実施の形態では、支持基材11上に位相差層14及び、この位相差層14とは異なる方向に光軸を持つ位相差層15が積層され、この位相差層14,15には、接着層16が積層される。そして、位相差層14,15の支持基材11側の一方面には、脆性剥離層19が形成される。また、図5の実施の形態では、位相差層14,15の他方面に、脆性剥離層19が形成される。
【0029】
図6の実施の形態では、図4の実施の形態において位相差層14,15と接着層16との間に反射層17が介在される。そして、図7の実施の形態では、位相差層14,15と接着層16との間に反射層17を介在させて、脆性剥離層19が反射層17に位相差層14,15に対向して積層される。図8の実施の形態では、位相差層14,15と接着層16との間に反射層17を介在させて、脆性剥離層19が接着層16に反射層17に対向させて積層される。
【0030】
図9の実施の形態では、図4の実施の形態において位相差層14,15と接着層16との間にOVD層18が介在されて積層される。図10の実施の形態では、位相差層14,15と接着層16との間にOVD層18を介在させて、脆性剥離層19がOVD層18に位相差層14,15に対向して積層される。
【0031】
図11の実施の形態では、位相差層14,15と接着層16との間にOVD層18を介在させて、脆性剥離層19が接着層16にOVD層18に対向させて積層される。この実施の形態においては、例えば図12に示すように接着層16が被着物20に貼付けた後、接着層16を端部より剥がすと、脆性剥離層19の設けられている部分が支持基材11との接着性がないため、支持基材11より剥がれる。これにより、偽造防止媒体は、被着物20から剥がそうとすると、その脆性剥離層19のパターンに沿って、図13に示すように破壊され、再使用が困難となる。
【0032】
このことは、図4〜図10の実施の形態において、その接着層16を被着物20に貼付けた後、該被着物20から剥がされると、同様に脆性剥離層19のパターンに沿って破壊されて再使用が困難となる。
【0033】
上記支持基材11としては、押出加工やキャスト加工により作製された無延伸フィルム及び、延伸加工により作製された延伸フィルム等を用いる事ができる。延伸フィルムには、伸ばし方により、1軸延伸フィルム及び2軸延伸フィルムがあり、両者とも使用できる。
【0034】
これらの無延伸フィルム及び延伸フィルムの材料としては、セロハン、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン(PO)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等があげられる。特に、支持基材の上に設けられる位相差層14,15の位相差値を乱さないため、無延伸フィルムが好ましい。
【0035】
支持基材11の処理部分13は、コロナ処理、プラズマ処理、電子線照射処理、酸化剤による表面の酸化処理等のいずれかから選択され、これらの処理のうち、支持基材11の表面の改質処理では、支持基材11の表面に、−OH、=Oなどの官能基を付与し、これにより基材表面の表面張力を高め、塗れ性、接着力が向上するものである。また、多孔化、粗面化などの表面処理によっても接着性を非処理面と異なるようにすることができる。このような表面処理は処理部分と位相差層14、15との接着力が、非処理部分と位相差層14、15との接着力よりも大きく、かつ接着層16と被着材との接着力よりも大きいことが望ましい。脆性機能を満たすには、支持基材11の塗れ指数として50dyn/cm以上、もしくは非処理部分12と処理部分13との塗れ指数の差が10dyn/cm以上であることが好ましい。
【0036】
また、脆性剥離層19としては、アクリル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、スチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂やその塗料にシリコンオイルを混入させることも可能であり、脆性剥離層19が接している部分により材料を選ぶことが出来る。脆性剥離層19が接する部分、支持基材11もしくは位相差層14、15、接着層16、反射層17、セキュリティ機能層であるOVD18に接着せずに剥離性を有する塗料を用いるとよい。
【0037】
光軸がパターン配置された位相差層14,15として、複屈折性を持つ液晶材料を用いることができる。複屈折とは、物質の屈折率が光軸方向によって異なることで、そのため物質中を光が通過するときにその速度が異なってくる。そのため、物質通過後の光には通過速度の差の分だけ位相差が生じる。
【0038】
ここで、配向膜を2軸方向に配向処理をし、その上に液晶を塗布することで2軸に配向された液晶を得ることができる。液晶材料を配向させるための配向膜の配向処理には、例えば光配向法もしくはラビング配向法を用いることができる。
【0039】
光配向法とは、配向膜に偏光等の異方性を有する光を照射もしくは非偏光光を斜めから照射し、配向膜内の分子の再配列や異方的な化学反応を誘起する方法で、配向膜に異方性を与え、これによって液晶分子が配向することを利用したものである。光配向のメカニズムとしては、アゾベンゼン誘導体の光異方化、桂皮酸エステル、クマリン、カルコンやベンゾフェノン等の誘導体の光二量化や架橋、ポリイミド等の光分解等があげられる。
【0040】
具体的には、適当な波長帯域の偏光光もしくは斜めからの非偏光光によりパターン露光することにより行われる。また、2軸方向に配向させる場合は、フォトマスクで配向方向を変えたい部分をカバーしてパターン露光し、さらにフォトマスクでカバーされていた未露光部を処理するため方向を変えて露光すれば良い。または、一度全面をパターン露光した後に、部分的にフォトマスクでカバーして方向を変えて再度露光しても良い。
【0041】
ラビング配向法は、基材上にポリマー溶液を塗布して作成した配向膜を布で擦る方法で、擦った方向に配向膜表面の性質が変化し、この方向に液晶分子が並ぶという性質を利用したものである。配向膜には、ポリイミド、PVA等が用いられる。
【0042】
光軸を2軸方向に配向させる場合には、配向方向を変えたい部分をマスクでカバーして布で擦った後にマスクを除去し、今度は先ほどラビングした部分をマスクでカバーし、再び方向を変えて布で擦った後、マスクを除去する。または、全面を布で擦った後に、部分的にマスクでカバーし、方向変えて布で擦った後、マスクを除去しても良い。
【0043】
これら配向膜を形成する方法としては、グラビアコーティング法、マイクログラビアコーティング法等の公知の手法を用いることができる。
【0044】
液晶材料としては、メソゲン基の両端にアクリレートを設けた光硬化型液晶モノマー、EB若しくはUVで硬化させる高分子液晶、ポリマー主鎖にメソゲン基を提げた高分子液晶、分子主鎖自体が配向する液晶性高分子を用いることができる。これらの液晶は、塗布後、相転移を起こすNI点より少し下の温度で熱処理することにより、配向を促進することが可能である。
【0045】
接着層16は、接する層を冒すものでなければ、一般的な粘着材料を用いて形成することが出来る。例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系の粘着剤を単独、もしくはアルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマーなどの凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリルなどに代表される改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤などの添加剤を必要に応じて添加したものを用いることが出来る。接着層16の形成には公知のグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などの印刷方法やバーコート法、グラビア法、ロールコート法などの塗布方法などを用いることが出来る。
【0046】
反射層17の材料としては、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Agなどの金属材料の単体、またはこれらの化合物などが挙げられる。
【0047】
また、膜面に垂直な光に対してほぼ透明であるが、斜光に対して屈折率に応じて反射特性を示す透明な反射層17も単層または多層で使用できる。透明な反射層として使用できる材料の例を以下に挙げる。以下に示す化学式または化合物名の後に続くカッコ内の数値は屈折率nを示す。セラミックスとしては、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、WO3(5)、SiO(5)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5)、MgO(1)、SiO2(1.45)、MgF2(4)、CeF3(1)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1)、Al2O3(1)、GaO(2)などが挙げられる。有機ポリマーとしては、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)などが挙げられるがこの限りでない。
【0048】
反射層17を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法など公知の方法を適宜使用することができる。また、光反射効果を有するインキ等を公知の印刷方法により設ける方法でもよい。
【0049】
本発明におけるセキュリティ機能層には、目視により真偽判定が可能な材料を用いることが好ましい。このような材料として、OVD機能材料があげられる。
【0050】
上記OVD(Optical Variable Device)層18とは、光の干渉を利用した画像であり、立体画像の表現や見る角度により色が変化するカラーシフトを生じる表示体であって、目視により真偽判定が可能な媒体である。その中でホログラムや回折格子などのようなOVDとしては、光の干渉縞を微細な凹凸パターンとして平面に記録するレリーフ型や、体積方向に干渉縞を記録する体積型が挙げられる。
【0051】
また、ホログラムや回折格子とは手法が異なるが、光学特性の異なるセラミックスや金属材料の薄膜を積層した多層膜方式や、或いは液晶材料等による見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる材料もその例である。これらOVDは、立体画像やカラーシフトといった独特な印象を与え、また高度な製造技術を要することから、偽造防止の有効な手段と言える。
【0052】
これらOVDの中でも量産性やコストを考慮した場合には、レリーフ型ホログラム(又はレリーフ型回折格子)や多層薄膜方式のものが好ましく、一般にこれらのOVDが広く利用されている。
【0053】
ここで、レリーフ型ホログラムについて述べる。
このレリーフ型ホログラム又はレリーフ型回折格子は、それぞれホログラム又は回折格子を成す微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のプレス版を用いて量産を行う。すなわち、このプレス版でOVD層18を加熱・加圧して、微細な凹凸パターンを複製する。
OVD層18は、その回折効率を高めるためのものであり、レリーフ面を構成する高分子材料とは屈折率の異なる材料からなる。用いる材料としては、屈折率の異なるTiO2、Si2O3、SiO、Fe2O3、ZnS、などの高屈折率材料や、より反射効果の高いAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au等の金属材料が挙げられ、これらの材料が単独あるいは積層して使用される。これらの材料は前述の通り、真空蒸着法、スパッタリング等の公知の薄膜形成技術にて形成される
さらに、多層薄膜方式について述べる。
多層薄膜方式を用いる場合、前述したようにOVD層18は、異なる光学適性を有する多層薄膜層からなり、金属薄膜、セラミックス薄膜又はそれらを併設してなる複合薄膜として積層形成される。例えば,屈折率の異なる薄膜を積層する場合、高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜を組み合わせても良く、また特定の組み合わせを交互に積層するようにしてもよい。それらの組み合わせにより、所望の多層薄膜を得ることができる。
この多層薄膜層は、セラミックスや金属などの材料が用いられ、おおよそ2つ以上の高屈折率材料と屈折率が1.5程度の低屈折率材料を所定の膜厚で積層したものである。以下に、用いられる材料の例を挙げる。
【0054】
先ず、セラミックスとしては、Sb2O3(3.0=屈折率n:以下同じ)、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O3(2.0)、WO3(2.0)、SiO(2.0)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(2.0)、MgO(1.6)、SiO2(1.5)、MgF2(1.4)、CeF3(1.6)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1.6)、Al2O3(1.6)、GaO(1.7)等がある。
そして、金属単体又は合金の薄膜としては、例えば、Al、Fe、Mg、Zn、Au、Ag、Cr、Ni、Cu、Si等が挙げられる。
【0055】
また、低屈折率の有機ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフロロエチレン(1.35)、ポリメチルメタアクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)等が挙げられる。
【0056】
これらの高屈折率材料、または30%〜60%透過の金属薄膜から少なくとも一種を選択し、低屈折率材料から少なくとも一種選択し、所定の厚さで交互に積層させる事により、特定の波長の可視光に対する吸収または反射を示すようになる。
上記した各材料から屈折率、反射率、透過率等の光学特性や耐候性、層間密着性などに基づき適宜選択され、薄膜として積層され多層薄膜層を形成する。形成方法は公知の手法を用いることができ、膜厚、成膜速度、積層数、あるいは光学膜厚(=n・d、n:屈折率、d:膜厚)などの制御が可能な、通常の真空蒸着法、スパッタリング法にて形成される。
【0057】
さらには、カラーシフトを生じる材料としては、例えばコレステリック液晶が挙げられる。コレステリック液晶は、螺旋状に配向する液晶で、特定の波長の右又は左の円偏光を反射する偏光分離能を持つ。反射する波長は、螺旋周期のピッチにより決まり、また、円偏光の左右は、螺旋の方向によって決まる。通常の観察光では偏光の左右光が混在しているため画像の確認は出来ないが、偏光フィルタをかざすことによって偏光の一方のみを取り出すことが出来、画像として認識できるものである。つまり、潜像技術と言われるものであり、コレステリック液晶は、反射光が角度により反射波長が変化すため、一見、カラーシフトインキとして用いられ、カモフラージュすることができる。なお、カラーシフトを生じる材料としては、コレステリック液晶に限定されるものではなく同様の効果を発揮するものであればよい。
【実施例1】
【0058】
本発明による実施例1について説明する。
TACフィルムを支持基材11とし、O形状の孔をパターン状に複数個形成したポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムからなるマスクを重ね、コロナ処理装置を用いて、出力200W/m2 ,速度10m/minの処理条件により、基材表面に放電照射しコロナ処理を行った。これにより、支持基材11の処理部分13の塗れ指数は54dyne/cmであり、基材のマスクされた非処理部分12の塗れ指数は38dyne/cmとなり、塗れ性が向上した。
【0059】
表面処理を施した支持基材11上に溶剤に配向膜用樹脂を溶解した配向膜溶液をマイクログラビア法で塗布し成膜を行った。その後、ラビング布を用いて光学機能層1と2をそれぞれ0°方向、45°方向にパターン状にラビング処理を行い、配向膜を作製した。その後、DIC株式会社製のUVキュアラブル液晶UCL−008をマイクログラビアにて塗工し、酸素雰囲気下でUV硬化を行い、位相差層14、15を得た。
【0060】
位相差層14,15上に、反射層17としてアルミニウムを真空蒸着法にて厚さ80nmで成膜した。その後、接着層16として、東洋インキ製造社製のBPS5160(50部)を、ダイレクトグラビアにて10μmで設けると共に、離型紙を貼り合わせ、所定の大きさに切り取り偽造防止媒体を得た。
【0061】
これを、偽造防止を行いたい被着物20に貼り付け、検証フィルタを用いて検証を行ったところ、上記位相差層14,15のパターンにて潜像が出現した。さらに検証フィルタを回転させると、潜像のネガとポジが反転し、本物であることが確認された。その後、偽造防止媒体を再度利用しようと端部より剥がそうと試みた。すると、コロナ処理部分13及び未処理部分12で位相差層14,15との接着力が異なるため、O形状の孔をパターン状に破壊の痕跡を残すことが出来、偽造防止媒体を復元できなくなった。そのため、偽造防止媒体の再利用や、変造、改変が極めて困難となり、不正行為を防止することができた。
【実施例2】
【0062】
次に、本発明による実施例2について説明する。
TACフィルムを支持基材11とし、脆性剥離層19をO形状パターンに設け、さらに溶剤に配向膜用樹脂を溶解した配向膜溶液をマイクログラビア法で塗布し成膜を行った。その後、ラビング布を用いて光学機能層1と2をそれぞれ0°方向、45°方向にパターン状にラビング処理を行い、配向膜を作製した。その後、DIC株式会社製のUVキュアラブル液晶UCL−008をマイクログラビアにて塗工し、酸素雰囲気下でUV硬化を行い、位相差層14,15を得た。
【0063】
位相差層14,15上に、反射層17としてアルミニウムを真空蒸着法にて厚さ80nmで成膜した。その後、接着層16として、東洋インキ製造社製のBPS5160(50部)を、ダイレクトグラビアにて10μmで設けると共に、離型紙を貼り合わせ、所定の大きさに切り取り偽造防止媒体を得た。
【0064】
これを、偽造防止を行いたい被着物20に貼り付け、検証フィルタを用いて検証を行ったところ、上記位相差層14,15のパターンにて潜像が出現した。さらに検証フィルタを回転させると、潜像のネガとポジが反転し、本物であることが確認された。その後、偽造防止媒体を再度利用しようと端部より剥がそうと試みた。すると、脆性剥離層19を設けた部分は、支持基材11との界面で剥離をしてしまい、O形状のパターン状に破壊の痕跡を残すことが出来、偽造防止媒体を復元できなくなった。そのため、偽造防止媒体の再利用や、変造、改変が極めて困難となり、不正行為を防止することができた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明による偽造防止媒体は、各種物品の偽造防止と共に、確実な真贋判定を実現して、購入者による信頼性の高い物品購入を可能とし、商取引における不正行為の防止に寄与することができる。
【符号の説明】
【0066】
11…支持基材
12…表面処理を施された部分
13…表面処理を施されていない部分
14…位相差層
15,14…位相差層
16…接着層
17…反射層
18…OVD層
19…脆性剥離層
20…被着物
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の偽造防止及び真贋判定を行うための隠し文字や隠しパターンを、フィルタを用いることによって潜像として表示される貼り換え防止機能つき偽造防止媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高級酒などの比較的高価な商品や電化製品の消耗品など、偽造されては困る物品などにおいては、それらの真贋を判定するために、商品本体やそれを包装したケース等に偽造防止シールを貼り付ける方法が採用されている。この偽造防止シールには、目視による判定(オバート機能)または検証器を用いた判定(コバート機能)により真贋判定を行えるようなセキュリティ機能が設けられており、それを判定することで本物であるか否かが確認できる。
【0003】
しかし、この目視により真贋判定が行える偽造防止媒体は、偽造されやすいために、偏光技術を用いた潜像技術として、偏光フィルムを重ねることにより潜像を出現させ真贋判定を行う方式が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この偏光技術を用いた潜像技術は、高度な技術と設備が必要となることで、偽造が難しいため、不正行為を抑止することが出来る。
【0004】
しかしながら、不正業者などが、正規物品を偽造した不正物品を扱う場合には、正規物品に貼り付けられている偽造防止シールを綺麗に取外して、その不正物品に使い回し貼り付けることにより、購入者に対して正規物品と不正物品とを見分け難くすることができてしまうという問題を有する。
【0005】
そこで、例えば目視判定が行えるホログラムは、不正に剥がそうとすると、その痕跡が残るという技術を利用して支持基材とホログラム層、或いはこれらの間に設けられた剥離層と基材またはホログラム層で剥離するようにして、被着物から故意に剥離させた場合に少なくともホログラムの一部又は全体が破壊され、何らかの手が加えられたことを判別可能とした構成のものがある。具体的には、基材とホログラム形成層との間にパターン状の剥離層を形成しておき、このホログラム脆性シールの貼付後、このホログラムシールを端部から剥がそうとすると基材とホログラム形成層とがパターン状に剥離する技術が提案されている(例えば、引用文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−314810号公報
【特許文献2】実公平5−48210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記引用文献2に開示される目視判定を行う技術では、まだ、偽造され易いうえ、脆性パターンを含ませることも容易に出来るため、偽造される虞を有する。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、偽造が面倒な偏光技術を用いた潜像技術を採用したうえで、不正な剥離行為を含む貼り換えの防止を実現し得るようにした偽造防止媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に記載の発明は、支持基材上に部分的に表面処理を施して接着性を向上させた基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と接着層を順次積層してなる偽造防止媒体であり、前記位相差層と前記支持基材の接着強度が、前記基材の表面処理部分が非処理部分に比して大に設定して構成した。
【0010】
また、本願請求項2に記載の発明は、支持基材上に部分的に表面処理を施し接着性を向上させた基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と、反射層と、接着層とを順に積層してなる偽造防止媒体であり、前記位相差層と前記支持基材の接着強度が、前記基材の表面処理部分が非処理部分に比して大に設定して構成した。
【0011】
また、本願請求項3に記載の発明は、支持基材上に部分的に表面処理を施し接着性を向上させてなる基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層とOVD層と接着層を順次積層してなる偽造防止媒体であり、前記位相差層と前記支持基材の接着強度が、前記基材の表面処理部分が非処理部分に比して大に設定して構成した。
【0012】
また、本願請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3において表面処理をコロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電子線照射処理、酸化剤による表面の酸化処理のいずれかで処理するように構成した。
【0013】
また、本願請求項5に記載の発明は、支持基材上に一部分に脆性剥離層を設け、さらに少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記支持基材と位相差層の接着強度が、前記脆性剥離層が設けられていない部分の脆性剥離層が設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0014】
また、本願請求項6に記載の発明は、支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と該位相差層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記位相差層と接着層の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0015】
また、本願請求項7に記載の発明は、支持基材上に一部分に脆性剥離層を設け、さらに少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と反射層と接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記支持基材と位相差層の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0016】
また、本願請求項8に記載の発明は、支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と該位相差層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、反射層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記位相差層と反射層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0017】
また、本願請求項9に記載の発明は、支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と反射層と該反射層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記反射層と接着層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0018】
また、本願請求項10に記載の発明は、支持基材上に一部分に脆性剥離層を設け、さらに少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層とOVD層と接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記支持基材と位相差層の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0019】
また、本願請求項11に記載の発明は、支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層とOVD層と該OVD層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記OVD層と接着層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【0020】
また、本願請求項12に記載の発明は、支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と該位相差層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、OVD層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記位相差層とOVD層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大に設定して構成した。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、潜像を用いた確実な偽造を実現したうえで、不正に剥がそうとするとパターンにて破壊するため、再利用することができなり、不正な剥離行為を含む貼り換えの防止が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図2】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図3】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図4】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図5】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図6】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図7】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図8】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図9】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図10】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図11】この発明の他の実施の形態に係る偽造防止媒体の要部を断面して示した断面図である。
【図12】図11の偽造防止媒体を被着物に貼付けた状態を示した断面図である。
【図13】図12の貼付け状態から剥離した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る偽造防止媒体について、図1〜11を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係る偽造防止媒体を示すもので、支持基材11上に部分的な表面処理を行い、その処理部分13の接着性を非処理部分12に比して向上させており、その面上に位相差層14及び、この位相差層14とは異なる方向に光軸を持つ位相差層15が積層される。そして、この位相差層14,15上には、接着層16が積層される。
【0025】
図2〜図11は、それぞれ他の実施の形態を示すもので、図2の実施の形態では、位相差層14,15と接着層16との間に反射層17が介在されて積層される。
【0026】
そして、図3の実施の形態では、位相差層14,15と接着層16との間に後述するセキュリティ機能層であるOVD層18が介在されて積層される。
【0027】
この図1〜図3に示す実施の形態に係る偽造防止媒体は、例えば接着層16を被着物20(図12参照)に貼付けた後、接着層16を端部より剥がすと、支持基材11の処理部分13に比して非処理部分12の接着性が弱いために該非処理部分12のみが剥がれて破壊され、その再使用が不可となる。
【0028】
図4の実施の形態では、支持基材11上に位相差層14及び、この位相差層14とは異なる方向に光軸を持つ位相差層15が積層され、この位相差層14,15には、接着層16が積層される。そして、位相差層14,15の支持基材11側の一方面には、脆性剥離層19が形成される。また、図5の実施の形態では、位相差層14,15の他方面に、脆性剥離層19が形成される。
【0029】
図6の実施の形態では、図4の実施の形態において位相差層14,15と接着層16との間に反射層17が介在される。そして、図7の実施の形態では、位相差層14,15と接着層16との間に反射層17を介在させて、脆性剥離層19が反射層17に位相差層14,15に対向して積層される。図8の実施の形態では、位相差層14,15と接着層16との間に反射層17を介在させて、脆性剥離層19が接着層16に反射層17に対向させて積層される。
【0030】
図9の実施の形態では、図4の実施の形態において位相差層14,15と接着層16との間にOVD層18が介在されて積層される。図10の実施の形態では、位相差層14,15と接着層16との間にOVD層18を介在させて、脆性剥離層19がOVD層18に位相差層14,15に対向して積層される。
【0031】
図11の実施の形態では、位相差層14,15と接着層16との間にOVD層18を介在させて、脆性剥離層19が接着層16にOVD層18に対向させて積層される。この実施の形態においては、例えば図12に示すように接着層16が被着物20に貼付けた後、接着層16を端部より剥がすと、脆性剥離層19の設けられている部分が支持基材11との接着性がないため、支持基材11より剥がれる。これにより、偽造防止媒体は、被着物20から剥がそうとすると、その脆性剥離層19のパターンに沿って、図13に示すように破壊され、再使用が困難となる。
【0032】
このことは、図4〜図10の実施の形態において、その接着層16を被着物20に貼付けた後、該被着物20から剥がされると、同様に脆性剥離層19のパターンに沿って破壊されて再使用が困難となる。
【0033】
上記支持基材11としては、押出加工やキャスト加工により作製された無延伸フィルム及び、延伸加工により作製された延伸フィルム等を用いる事ができる。延伸フィルムには、伸ばし方により、1軸延伸フィルム及び2軸延伸フィルムがあり、両者とも使用できる。
【0034】
これらの無延伸フィルム及び延伸フィルムの材料としては、セロハン、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィン(PO)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等があげられる。特に、支持基材の上に設けられる位相差層14,15の位相差値を乱さないため、無延伸フィルムが好ましい。
【0035】
支持基材11の処理部分13は、コロナ処理、プラズマ処理、電子線照射処理、酸化剤による表面の酸化処理等のいずれかから選択され、これらの処理のうち、支持基材11の表面の改質処理では、支持基材11の表面に、−OH、=Oなどの官能基を付与し、これにより基材表面の表面張力を高め、塗れ性、接着力が向上するものである。また、多孔化、粗面化などの表面処理によっても接着性を非処理面と異なるようにすることができる。このような表面処理は処理部分と位相差層14、15との接着力が、非処理部分と位相差層14、15との接着力よりも大きく、かつ接着層16と被着材との接着力よりも大きいことが望ましい。脆性機能を満たすには、支持基材11の塗れ指数として50dyn/cm以上、もしくは非処理部分12と処理部分13との塗れ指数の差が10dyn/cm以上であることが好ましい。
【0036】
また、脆性剥離層19としては、アクリル樹脂、塩化ゴム系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、スチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂やその塗料にシリコンオイルを混入させることも可能であり、脆性剥離層19が接している部分により材料を選ぶことが出来る。脆性剥離層19が接する部分、支持基材11もしくは位相差層14、15、接着層16、反射層17、セキュリティ機能層であるOVD18に接着せずに剥離性を有する塗料を用いるとよい。
【0037】
光軸がパターン配置された位相差層14,15として、複屈折性を持つ液晶材料を用いることができる。複屈折とは、物質の屈折率が光軸方向によって異なることで、そのため物質中を光が通過するときにその速度が異なってくる。そのため、物質通過後の光には通過速度の差の分だけ位相差が生じる。
【0038】
ここで、配向膜を2軸方向に配向処理をし、その上に液晶を塗布することで2軸に配向された液晶を得ることができる。液晶材料を配向させるための配向膜の配向処理には、例えば光配向法もしくはラビング配向法を用いることができる。
【0039】
光配向法とは、配向膜に偏光等の異方性を有する光を照射もしくは非偏光光を斜めから照射し、配向膜内の分子の再配列や異方的な化学反応を誘起する方法で、配向膜に異方性を与え、これによって液晶分子が配向することを利用したものである。光配向のメカニズムとしては、アゾベンゼン誘導体の光異方化、桂皮酸エステル、クマリン、カルコンやベンゾフェノン等の誘導体の光二量化や架橋、ポリイミド等の光分解等があげられる。
【0040】
具体的には、適当な波長帯域の偏光光もしくは斜めからの非偏光光によりパターン露光することにより行われる。また、2軸方向に配向させる場合は、フォトマスクで配向方向を変えたい部分をカバーしてパターン露光し、さらにフォトマスクでカバーされていた未露光部を処理するため方向を変えて露光すれば良い。または、一度全面をパターン露光した後に、部分的にフォトマスクでカバーして方向を変えて再度露光しても良い。
【0041】
ラビング配向法は、基材上にポリマー溶液を塗布して作成した配向膜を布で擦る方法で、擦った方向に配向膜表面の性質が変化し、この方向に液晶分子が並ぶという性質を利用したものである。配向膜には、ポリイミド、PVA等が用いられる。
【0042】
光軸を2軸方向に配向させる場合には、配向方向を変えたい部分をマスクでカバーして布で擦った後にマスクを除去し、今度は先ほどラビングした部分をマスクでカバーし、再び方向を変えて布で擦った後、マスクを除去する。または、全面を布で擦った後に、部分的にマスクでカバーし、方向変えて布で擦った後、マスクを除去しても良い。
【0043】
これら配向膜を形成する方法としては、グラビアコーティング法、マイクログラビアコーティング法等の公知の手法を用いることができる。
【0044】
液晶材料としては、メソゲン基の両端にアクリレートを設けた光硬化型液晶モノマー、EB若しくはUVで硬化させる高分子液晶、ポリマー主鎖にメソゲン基を提げた高分子液晶、分子主鎖自体が配向する液晶性高分子を用いることができる。これらの液晶は、塗布後、相転移を起こすNI点より少し下の温度で熱処理することにより、配向を促進することが可能である。
【0045】
接着層16は、接する層を冒すものでなければ、一般的な粘着材料を用いて形成することが出来る。例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系の粘着剤を単独、もしくはアルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマーなどの凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリルなどに代表される改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤などの添加剤を必要に応じて添加したものを用いることが出来る。接着層16の形成には公知のグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などの印刷方法やバーコート法、グラビア法、ロールコート法などの塗布方法などを用いることが出来る。
【0046】
反射層17の材料としては、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Agなどの金属材料の単体、またはこれらの化合物などが挙げられる。
【0047】
また、膜面に垂直な光に対してほぼ透明であるが、斜光に対して屈折率に応じて反射特性を示す透明な反射層17も単層または多層で使用できる。透明な反射層として使用できる材料の例を以下に挙げる。以下に示す化学式または化合物名の後に続くカッコ内の数値は屈折率nを示す。セラミックスとしては、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、WO3(5)、SiO(5)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5)、MgO(1)、SiO2(1.45)、MgF2(4)、CeF3(1)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1)、Al2O3(1)、GaO(2)などが挙げられる。有機ポリマーとしては、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)などが挙げられるがこの限りでない。
【0048】
反射層17を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法など公知の方法を適宜使用することができる。また、光反射効果を有するインキ等を公知の印刷方法により設ける方法でもよい。
【0049】
本発明におけるセキュリティ機能層には、目視により真偽判定が可能な材料を用いることが好ましい。このような材料として、OVD機能材料があげられる。
【0050】
上記OVD(Optical Variable Device)層18とは、光の干渉を利用した画像であり、立体画像の表現や見る角度により色が変化するカラーシフトを生じる表示体であって、目視により真偽判定が可能な媒体である。その中でホログラムや回折格子などのようなOVDとしては、光の干渉縞を微細な凹凸パターンとして平面に記録するレリーフ型や、体積方向に干渉縞を記録する体積型が挙げられる。
【0051】
また、ホログラムや回折格子とは手法が異なるが、光学特性の異なるセラミックスや金属材料の薄膜を積層した多層膜方式や、或いは液晶材料等による見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる材料もその例である。これらOVDは、立体画像やカラーシフトといった独特な印象を与え、また高度な製造技術を要することから、偽造防止の有効な手段と言える。
【0052】
これらOVDの中でも量産性やコストを考慮した場合には、レリーフ型ホログラム(又はレリーフ型回折格子)や多層薄膜方式のものが好ましく、一般にこれらのOVDが広く利用されている。
【0053】
ここで、レリーフ型ホログラムについて述べる。
このレリーフ型ホログラム又はレリーフ型回折格子は、それぞれホログラム又は回折格子を成す微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のプレス版を用いて量産を行う。すなわち、このプレス版でOVD層18を加熱・加圧して、微細な凹凸パターンを複製する。
OVD層18は、その回折効率を高めるためのものであり、レリーフ面を構成する高分子材料とは屈折率の異なる材料からなる。用いる材料としては、屈折率の異なるTiO2、Si2O3、SiO、Fe2O3、ZnS、などの高屈折率材料や、より反射効果の高いAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au等の金属材料が挙げられ、これらの材料が単独あるいは積層して使用される。これらの材料は前述の通り、真空蒸着法、スパッタリング等の公知の薄膜形成技術にて形成される
さらに、多層薄膜方式について述べる。
多層薄膜方式を用いる場合、前述したようにOVD層18は、異なる光学適性を有する多層薄膜層からなり、金属薄膜、セラミックス薄膜又はそれらを併設してなる複合薄膜として積層形成される。例えば,屈折率の異なる薄膜を積層する場合、高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜を組み合わせても良く、また特定の組み合わせを交互に積層するようにしてもよい。それらの組み合わせにより、所望の多層薄膜を得ることができる。
この多層薄膜層は、セラミックスや金属などの材料が用いられ、おおよそ2つ以上の高屈折率材料と屈折率が1.5程度の低屈折率材料を所定の膜厚で積層したものである。以下に、用いられる材料の例を挙げる。
【0054】
先ず、セラミックスとしては、Sb2O3(3.0=屈折率n:以下同じ)、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O3(2.0)、WO3(2.0)、SiO(2.0)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(2.0)、MgO(1.6)、SiO2(1.5)、MgF2(1.4)、CeF3(1.6)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1.6)、Al2O3(1.6)、GaO(1.7)等がある。
そして、金属単体又は合金の薄膜としては、例えば、Al、Fe、Mg、Zn、Au、Ag、Cr、Ni、Cu、Si等が挙げられる。
【0055】
また、低屈折率の有機ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフロロエチレン(1.35)、ポリメチルメタアクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)等が挙げられる。
【0056】
これらの高屈折率材料、または30%〜60%透過の金属薄膜から少なくとも一種を選択し、低屈折率材料から少なくとも一種選択し、所定の厚さで交互に積層させる事により、特定の波長の可視光に対する吸収または反射を示すようになる。
上記した各材料から屈折率、反射率、透過率等の光学特性や耐候性、層間密着性などに基づき適宜選択され、薄膜として積層され多層薄膜層を形成する。形成方法は公知の手法を用いることができ、膜厚、成膜速度、積層数、あるいは光学膜厚(=n・d、n:屈折率、d:膜厚)などの制御が可能な、通常の真空蒸着法、スパッタリング法にて形成される。
【0057】
さらには、カラーシフトを生じる材料としては、例えばコレステリック液晶が挙げられる。コレステリック液晶は、螺旋状に配向する液晶で、特定の波長の右又は左の円偏光を反射する偏光分離能を持つ。反射する波長は、螺旋周期のピッチにより決まり、また、円偏光の左右は、螺旋の方向によって決まる。通常の観察光では偏光の左右光が混在しているため画像の確認は出来ないが、偏光フィルタをかざすことによって偏光の一方のみを取り出すことが出来、画像として認識できるものである。つまり、潜像技術と言われるものであり、コレステリック液晶は、反射光が角度により反射波長が変化すため、一見、カラーシフトインキとして用いられ、カモフラージュすることができる。なお、カラーシフトを生じる材料としては、コレステリック液晶に限定されるものではなく同様の効果を発揮するものであればよい。
【実施例1】
【0058】
本発明による実施例1について説明する。
TACフィルムを支持基材11とし、O形状の孔をパターン状に複数個形成したポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムからなるマスクを重ね、コロナ処理装置を用いて、出力200W/m2 ,速度10m/minの処理条件により、基材表面に放電照射しコロナ処理を行った。これにより、支持基材11の処理部分13の塗れ指数は54dyne/cmであり、基材のマスクされた非処理部分12の塗れ指数は38dyne/cmとなり、塗れ性が向上した。
【0059】
表面処理を施した支持基材11上に溶剤に配向膜用樹脂を溶解した配向膜溶液をマイクログラビア法で塗布し成膜を行った。その後、ラビング布を用いて光学機能層1と2をそれぞれ0°方向、45°方向にパターン状にラビング処理を行い、配向膜を作製した。その後、DIC株式会社製のUVキュアラブル液晶UCL−008をマイクログラビアにて塗工し、酸素雰囲気下でUV硬化を行い、位相差層14、15を得た。
【0060】
位相差層14,15上に、反射層17としてアルミニウムを真空蒸着法にて厚さ80nmで成膜した。その後、接着層16として、東洋インキ製造社製のBPS5160(50部)を、ダイレクトグラビアにて10μmで設けると共に、離型紙を貼り合わせ、所定の大きさに切り取り偽造防止媒体を得た。
【0061】
これを、偽造防止を行いたい被着物20に貼り付け、検証フィルタを用いて検証を行ったところ、上記位相差層14,15のパターンにて潜像が出現した。さらに検証フィルタを回転させると、潜像のネガとポジが反転し、本物であることが確認された。その後、偽造防止媒体を再度利用しようと端部より剥がそうと試みた。すると、コロナ処理部分13及び未処理部分12で位相差層14,15との接着力が異なるため、O形状の孔をパターン状に破壊の痕跡を残すことが出来、偽造防止媒体を復元できなくなった。そのため、偽造防止媒体の再利用や、変造、改変が極めて困難となり、不正行為を防止することができた。
【実施例2】
【0062】
次に、本発明による実施例2について説明する。
TACフィルムを支持基材11とし、脆性剥離層19をO形状パターンに設け、さらに溶剤に配向膜用樹脂を溶解した配向膜溶液をマイクログラビア法で塗布し成膜を行った。その後、ラビング布を用いて光学機能層1と2をそれぞれ0°方向、45°方向にパターン状にラビング処理を行い、配向膜を作製した。その後、DIC株式会社製のUVキュアラブル液晶UCL−008をマイクログラビアにて塗工し、酸素雰囲気下でUV硬化を行い、位相差層14,15を得た。
【0063】
位相差層14,15上に、反射層17としてアルミニウムを真空蒸着法にて厚さ80nmで成膜した。その後、接着層16として、東洋インキ製造社製のBPS5160(50部)を、ダイレクトグラビアにて10μmで設けると共に、離型紙を貼り合わせ、所定の大きさに切り取り偽造防止媒体を得た。
【0064】
これを、偽造防止を行いたい被着物20に貼り付け、検証フィルタを用いて検証を行ったところ、上記位相差層14,15のパターンにて潜像が出現した。さらに検証フィルタを回転させると、潜像のネガとポジが反転し、本物であることが確認された。その後、偽造防止媒体を再度利用しようと端部より剥がそうと試みた。すると、脆性剥離層19を設けた部分は、支持基材11との界面で剥離をしてしまい、O形状のパターン状に破壊の痕跡を残すことが出来、偽造防止媒体を復元できなくなった。そのため、偽造防止媒体の再利用や、変造、改変が極めて困難となり、不正行為を防止することができた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明による偽造防止媒体は、各種物品の偽造防止と共に、確実な真贋判定を実現して、購入者による信頼性の高い物品購入を可能とし、商取引における不正行為の防止に寄与することができる。
【符号の説明】
【0066】
11…支持基材
12…表面処理を施された部分
13…表面処理を施されていない部分
14…位相差層
15,14…位相差層
16…接着層
17…反射層
18…OVD層
19…脆性剥離層
20…被着物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材上に部分的に表面処理を施して接着性を向上させた基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と接着層を順次積層してなる偽造防止媒体であり、
前記位相差層と前記支持基材の接着強度が、前記基材の表面処理部分が非処理部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
支持基材上に部分的に表面処理を施し接着性を向上させた基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と、反射層と、接着層とを順に積層してなる偽造防止媒体であり、
前記位相差層と前記支持基材の接着強度が、前記基材の表面処理部分が非処理部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項3】
支持基材上に部分的に表面処理を施し接着性を向上させてなる基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層とOVD層と接着層を順次積層してなる偽造防止媒体であり、
前記位相差層と前記支持基材の接着強度が、前記基材の表面処理部分が非処理部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項4】
前記表面処理は、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電子線照射処理、酸化剤による表面の酸化処理のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の偽造防止媒体。
【請求項5】
支持基材上に一部分に脆性剥離層を設け、さらに少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記支持基材と位相差層の接着強度が、前記脆性剥離層が設けられていない部分の脆性剥離層が設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項6】
支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と該位相差層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記位相差層と接着層の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項7】
支持基材上に一部分に脆性剥離層を設け、さらに少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と反射層と接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記支持基材と位相差層の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項8】
支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と該位相差層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、反射層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記位相差層と反射層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項9】
支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と反射層と該反射層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記反射層と接着層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項10】
支持基材上に一部分に脆性剥離層を設け、さらに少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層とOVD層と接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記支持基材と位相差層の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項11】
支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層とOVD層と該OVD層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記OVD層と接着層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項12】
支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と該位相差層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、OVD層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記位相差層とOVD層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項1】
支持基材上に部分的に表面処理を施して接着性を向上させた基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と接着層を順次積層してなる偽造防止媒体であり、
前記位相差層と前記支持基材の接着強度が、前記基材の表面処理部分が非処理部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
支持基材上に部分的に表面処理を施し接着性を向上させた基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と、反射層と、接着層とを順に積層してなる偽造防止媒体であり、
前記位相差層と前記支持基材の接着強度が、前記基材の表面処理部分が非処理部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項3】
支持基材上に部分的に表面処理を施し接着性を向上させてなる基材に、少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層とOVD層と接着層を順次積層してなる偽造防止媒体であり、
前記位相差層と前記支持基材の接着強度が、前記基材の表面処理部分が非処理部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項4】
前記表面処理は、コロナ処理、オゾン処理、プラズマ処理、電子線照射処理、酸化剤による表面の酸化処理のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の偽造防止媒体。
【請求項5】
支持基材上に一部分に脆性剥離層を設け、さらに少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、前記支持基材と位相差層の接着強度が、前記脆性剥離層が設けられていない部分の脆性剥離層が設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項6】
支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と該位相差層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記位相差層と接着層の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項7】
支持基材上に一部分に脆性剥離層を設け、さらに少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と反射層と接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記支持基材と位相差層の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項8】
支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と該位相差層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、反射層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記位相差層と反射層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項9】
支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と反射層と該反射層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記反射層と接着層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項10】
支持基材上に一部分に脆性剥離層を設け、さらに少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層とOVD層と接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記支持基材と位相差層の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項11】
支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層とOVD層と該OVD層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記OVD層と接着層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項12】
支持基材上に少なくとも2軸方向にパターン配置された位相差層と該位相差層の少なくとも一部を覆う脆性剥離層、OVD層、接着層を順次積層している偽造防止媒体であり、
前記位相差層とOVD層間の接着強度が、前記脆性剥離層の設けられていない部分が脆性剥離層の設けられている部分に比して大であることを特徴とする偽造防止媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−103283(P2012−103283A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248930(P2010−248930)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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