説明

偽造防止媒体

【課題】OVD機能を有する偽造防止媒体において、ロゴデザインといった意匠的影響を与えず、OVD機能を有する偽造防止媒体が製品に貼られた状態で、検証機能を気が付かれずに付与させることにより、個々の媒体の真贋、トレサビリティーなどの検証機能をもったOVD機能を有する偽造防止媒体提供することにある。
【解決手段】基材上に少なくとも一部あるいは全面にOVD成形層を有する偽造防止媒体において、OVD層の光透過率を80%以下とし、OVD成形層の裏面側に検証機能を形成した偽造防止媒体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止を必要とする各種情報表示媒体に関し、詳しくは商品券やクレジットカード等の有価証券あるいはブランド品や機器部品のパッケージ等、特に、偽造か否かの真偽判定を容易に行うことができ、真偽の検証が必要な物品に取り付けられる偽造防止媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ラベル、タグなどに偽造防止技術として、ICチップなどを装着した高い情報記録性を有する偽造防止媒体が知られているが、製造コストがかさむという問題点がある。それに対し比較的安価なOVD(Optical Variable Device)が利用される様になっている。
【0003】
OVDは、光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現するもので、ホログラムや回折格子、光学特性の異なる薄膜を重ねた多層薄膜のような、見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じさせるものである。
【0004】
OVDは高度な製造技術を要すること、独特な視覚効果を有し、一目で真偽が判定できることから有効な偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、証明書類等の一部、あるいは全面に、形成され使用されている。
【0005】
最近では、有価証券以外にもスポーツ用品やコンピュータ部品をはじめとする電気製品ソフトウエアー等に貼り付けられ、その製品の真正さを証明する認証シールや、それら商品のパッケージに貼りつけられる封印シールとしても広く使われている。
【0006】
このようにOVDは偽造が難しく確認が容易な偽造防止手段であるが、一見すると本物と見間違える様なOVDが貼られた偽造品が市場に出回っている。
【0007】
対策として、個々の媒体の真贋が判定できる様に、またトレサビリティーが取れる様に検証機能を印字する方法が取られる様になってきた(特許文献1)。
【0008】
しかし、ブランド品や高級品などに用いられるOVD成形層はメーカーロゴが全面にデザインされていることが多く、ロゴデザインの上に検証機能を印字することはメーカーにとって意匠的問題であり、ロゴを避けて印字する必要がある。
【0009】
ロゴを避けて印字する場合には、印字の大きさ、形状に制約が生じてしまうことが多く、偽造防止媒体の表面への印字は意匠性が下がることは否定できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−167920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はOVD機能を有する偽造防止媒体において、ロゴデザインといった意匠的影響を与えず、OVD機能を有する偽造防止媒体が製品に貼られた状態で、検証機能を気が付かれずに付与させることにより、個々の媒体の真贋、トレサビリティーなどの検証機能をもったOVD機能を有する偽造防止媒体提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基材上に少なくとも一部あるいは全面にOVD成形層を有する偽造防止媒体において、OVD層の光透過率を80%以下とし、OVD成形層の裏面側に検証機能層を形成したことを特徴とした偽造防止媒体である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記OVD層がOVD成形層の裏面側に0.3nm以上の膜厚のアルミニウム金属薄膜を有し、OVD層の光透過率が80%以下であることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体である。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記OVD層がOVD成形層の裏面側に隠蔽層を有していることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、OVD機能を損なうことなく、かつその存在が目視ではわからない検証機能を付与することが可能であり、製品に貼られている状態では検証機能が印字されていることは判断できないため、OVDの意匠を低下させることもなく、真贋の判断に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】偽造防止媒体一例の断面を示した概念図である。
【図2】本発明における偽造防止媒体の一例の断面を示した概念図である。
【図3】本発明における隠蔽層を設けた偽造防止媒体の一例の断面を示した概念図である。
【図4】本発明の比較例である偽造防止媒体の断面を示した概念図である。
【図5】本発明の比較例である偽造防止媒体の断面を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。本発明による偽造防止媒体は、少なくとも、基材3にOVD成形層1、検証機能部分(層)2を積層してなり、検証機能部分(層)2はOVD成形層1に隠蔽されている。そのため、目視で、その存在を確認することができない。また、有価証券、スポーツ用品などに貼られたOVDを剥がして裏面をみるまで偽造防止のための検証機能の存在に気が付かないため、真贋の判断に有効である。
【0018】
図1に偽造防止媒体一例を示すが、OVD成形層1は光の干渉を利用した画像層であり、立体画像の表現や見る角度により色が変化するカラーシフトを生じる表示体である。量産性やコストを考慮した場合には、レリーフ型ホログラム(回折格子)や多層薄膜方式のものが好ましく、一般にこれらのOVDが広く利用されている。
【0019】
レリーフ型のホログラム(回折格子)は光学的な撮影方式により、微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のマスター版を作製し、電気メッキ法により複製したニッケル製のプレス版にて量産を行う。すなわち、このプレス版を加熱しOVD形成層−樹脂層11に押し当て凹凸を複製する。
【0020】
OVD形成層−樹脂層11は、プレス版にて成形可能であるという性能が要求され、その材質は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂のいずれであっても良い。
【0021】
例をあげれば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加、架橋したウレタン樹脂や、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化樹脂、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等の紫外線あるいは電子線硬化樹脂を単独若しくはこれらを複合して使用できる。また上記以外のものであっても、OVD画像を形成可能である材料であれば、使用可能である。
【0022】
OVD形成層−アルミニウム金属層12は、OVD画像の回折効率を高めるためのものであり、レリーフ面を構成する高分子材料と屈折率の異なり、輝度、隠蔽性の高いアルミニウムを用いる。
【0023】
このOVD形成層−アルミニウム金属層12は一面に設けられていても良いが、絵柄、数字、文字等の検証機能を有するパターンで形成され、意匠性を向上すると共に、加工を複雑にし、より高い偽造防止効果を付与することができる。
【0024】
このOVD形成層−アルミニウム金属層12にアルミニウム薄膜を用いることは、光の反射光効果及び検証機能層を隠蔽する点において優れているためである。本発明において好適な材料であり、検証機能層を隠すためには透過率80%以下であることが好ましい。
【0025】
また、材料は単独あるいは積層して使用でき、真空蒸着法、スパッタリング等の公知の薄膜形成技術にて形成さる。アルミニウム薄膜の場合、透過率80%以下を得るためには0.3nm以上で形成される必要がある。
【0026】
検証機能部分(層)2は、全面に設けられていても良いが、絵柄だけ、文字だけ、数字だけ、絵柄と文字、文字と数字、数字と絵柄、あるいは絵柄と文字と数字、のいずれでもよい。また成型方法として、インキジェット、レーザー彫刻印字などを用いることができる。
【0027】
検証機能部分(層)2は、可視領域に吸収のある材料で形成したり、可視領域ではなく、紫外や赤外領域で検出可能な材料や、紫外線にて蛍光を発する材料を用いても良い。
【0028】
検証機能部分(層)2の隠蔽を高めるために隠蔽層16を設けても良い。酸化チタン、カーボンブラックなどの顔料、又は染料、金属粉などを用途、デザインにより選択するのが望ましい。
【実施例1】
【0029】
本発明を、具体的な実施例をあげて詳細に説明する。
【0030】
図2に実施例1の構成を示す。厚み25μmの透明ポリエチレンテレフタレートからなるPETフィルム4から成る基材3にOVD形成層−樹脂層11としてウレタン樹脂をグラビア法にて5μm塗布し、次いで、ロールエンボス法によりOVDレリーフパターンを形成した。
【0031】
続いて、真空蒸着法を用いてからなるアルミニウム金属層(0.4nm)13を積層し、OVD形成層−アルミニウム金属層12を設けた。その後、検証機能部分(層)2を、グラビア印刷法により、カーボンブラック顔料を添加してなるアクリル樹脂を使用して「OK」の検証機能文字5を1μmの厚みで印刷した。
【0032】
さらに、粘着層6として、アクリル系粘着剤をコンマコート法にて20μm設け、離型
紙7をラミネートし、偽造防止シールを作製し、これらのシールについて光透過率測定、および目視観察を行った。
【実施例2】
【0033】
図3に実施例2の構成を示す。厚み25μmの透明ポリエチレンテレフタレートからなるPETフィルム4から成る基材3にOVD形成層−樹脂層11としてウレタン樹脂をグラビア法にて5μm塗布し、次いで、ロールエンボス法によりOVDレリーフパターンを形成した。
【0034】
続いて、真空蒸着法を用いてZnS金属層(0.4nm)14を設けた。その上に、カーボンブラック顔料を添加してなるアクリル樹脂を隠蔽層16として1μmの厚みに積層し、その後、検証機能部分(層)2となる、酸化チタン顔料を添加してなるアクリル樹脂を使用して「OK」の検証機能文字5をグラビア印刷法にて1μmの厚みに印刷した。次に、粘着層6として、アクリル系粘着剤をコンマコート法にて20μm設け、離型紙7をラミネートし、偽造防止シールを作製した。これらのシールについて光透過率測定、及び目視観察を行った。
【0035】
<比較例1>
図4に比較例1の構成をしめす。厚み25μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムから成る基材3にOVD形成層−樹脂層11としてウレタン樹脂をグラビア法にて5μm塗布し、次いで、ロールエンボス法によりOVDレリーフパターンを形成した。続いて真空蒸着法を用いてZnS金属層(0.4nm)14を設けた。その後、検証機能部分(層)2として、グラビア印刷法により、カーボンブラック顔料を添加してなるアクリル樹脂を使用して「OK」の検証機能文字5を1μmの厚みで印刷した。
【0036】
次に、粘着層5として、アクリル系粘着剤をコンマコート法にて20μm設け、離型紙6をラミネートし、偽造防止シールを作製した。これらのシールについて光透過率測定、及び目視観察を行った。
【0037】
<比較例2>
図5に比較例2の構成を示す。厚み25μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムから成る基材3に、OVD形成層−樹脂層11としてウレタン樹脂をグラビア法にて5μm塗布し、次いで、ロールエンボス法によりOVDレリーフパターンを形成した。続いて真空蒸着法を用いて膜厚0.2nmのアルミニウム金属からなるアルミニウム金属層(0.2nm)15を設けた。
【0038】
その後、検証機能部分(層)2として、グラビア印刷法により、カーボンブラック顔料を添加してなるアクリ6として、アクリル系粘着剤をコンマコート法にて20μm設け、離型紙7をラミネートし、偽造防止シールを作製した。これらのシールについて光透過率測定、及び目視観察を行った。
【0039】
【表1】

評価結果を表1に示すが、比較例1、2では「OK」文字が確認された。一方、実施例1、2では「OK」文字が確認されず、検証機能層の有無が目視ではわからなかった。本発明によれば、メーカーロゴが全面にデザインされたOVD機能を持った偽造防止媒体において、OVD機能を損なうことなく、検証機能を付与することが可能であった。すなわち、製品に貼られてた状態で検証機能文字が印字されていることはわからないため、OVDの意匠を低下させることもなく、真贋の判断ができ、トレサビリティーなどの検証が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1・・・OVD成形層
2・・・検証機能部分(層)
3・・・基材(支持体)
4・・・PETフィルム
5・・・検証機能文字
6・・・粘着層
7・・・離型層
11・・・OVD形成層−樹脂層
12・・・OVD形成層−アルミニウム金属層
13・・・アルミニウム金属層(0.4nm)
14・・・ZnS金属層(0.4nm)
15・・・アルミニウム金属層(0.2nm)
16・・・隠蔽層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に少なくとも一部あるいは全面にOVD成形層を有する偽造防止媒体において、OVD層の光透過率を80%以下とし、OVD成形層の裏面側に検証機能層を形成したことを特徴とした偽造防止媒体。
【請求項2】
前記OVD層がOVD成形層の裏面側に0.3nm以上の膜厚のアルミニウム金属薄膜を有し、OVD層の光透過率が80%以下であることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体。
【請求項3】
前記OVD層がOVD成形層の裏面側に隠蔽層を有していることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−91333(P2012−91333A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238457(P2010−238457)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】