説明

偽造防止材及びこれを備えた印刷基材

【課題】 印刷基材に漉き込まれた偽造防止材(スレッド)が印刷基材の開口部から表裏異なったパターンとして表出する偽造防止材及びこれを備えた印刷基材を提供する。
【解決手段】
透明なフィルム基材111上に、少なくとも、セキュリティ層112、第一の金属薄膜層113からなる表用積層材11と、透明なフィルム基材121上に、少なくとも、セキュリティ層122、第二の金属薄膜層123からなる裏用積層材12とが、透明な接着剤層6を介して、前記第一の金属薄膜層113と第二の金属薄膜層123の表出面で貼り合わされた偽造防止材1、およびこのような偽造防止材1を備えた印刷基材を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止材と、偽造防止材が紙の一部に形成された印刷基材に関する。
【背景技術】
【0002】
紙の層間にスレッドと呼ばれるプラスチックの帯を挿入した偽造防止用紙は、従来から商品券や株券などの有価証券,紙幣などに使用されている。
スレッドを挿入した偽造防止用紙の多くは、用紙内部に漉き込まれたスレッドの一部が用紙表面に表出したものである。
これら、スレッドの多くは金属光沢を有するプラスチックの細い帯になっており、基材(多くの場合、紙)に部分的に表出するように漉き込まれている。
このような偽造防止用紙が広い分野で利用されてくると、市販されている金属光沢を有する転写箔を使って、紙に部分的に表出するように転写した偽物が現れる。
また、スレッドが漉き込まれた偽造防止用紙が広い分野で使用されてくると、それが当たり前のように感じられてしまい、偽造防止の効果が低下してくる。
そこで、用紙基材の一部を除去することにより開けられた複数個の窓から、スレッドを目視することができる「スレッド入り偽造防止用紙」(例えば、特許文献1参照)が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−172897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術は、紙の層間にスレッドを形成し、紙の表裏からスレッドの同じ部分を視認できるようにしたり、違った部分を視認できるようにした技術である。
そこで本発明の偽造防止材及びこれを備えた印刷基材は、印刷基材に漉きこまれた偽造防止材(スレッド)が印刷基材の開口部から表裏異なったパターンとして表出する偽造防止材及びこれを備えた印刷基材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題の目的を達成するために、本発明の偽造防止材の第一の態様は、透明なフィルム基材上に、少なくとも、光回折構造が形成されているかセキュリティ図柄が印刷されている層であるセキュリティ層、金属部の一部を除去したことによりパターンが形成されている第一の金属薄膜層からなる表用積層材と、透明なフィルム基材上に、少なくとも、光回折構造が形成されているかセキュリティ図柄が印刷されている層であるセキュリティ層、金属部の一部を除去したことによりパターンが形成されている第二の金属薄膜層からなる裏用積層材とが、透明な接着剤層を介して、前記第一の金属薄膜層と前記第二の金属薄膜層の表出面で貼り合わされており、おもて側から見たときと裏側から見たときとで異なるパターンが視認され、かつ、金属部を除去した部分から各々他方の積層材側の金属薄膜層が視認できることを特徴とするものである。
【0006】
また、第二の態様は、第一の態様の偽造防止材において、前記第一の金属薄膜層と前記第二の金属薄膜層は、異なる色の金属により構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
また、第三の態様は、第一の態様の偽造防止材において、前記第一の金属薄膜層と前記第二の金属薄膜層は、同一色の金属により構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
また、第四の態様は、第一から第三何れかの態様の偽造防止材において、前記第一の金属薄膜層および前記第二の金属薄膜層の少なくとも一方は、不透明に成膜されていることを特徴とするものである。
【0009】
また、第五の態様は、第一から第四何れかの態様の偽造防止材において、前記接着剤層は、透明な着色接着剤層であることを特徴とするものである。
【0010】
また、第六の態様は、第一から第五何れかの態様の偽造防止材を備えた印刷基材であって、前記偽造防止材は帯状の形態をなし、前記印刷基材の一部にスレッドとして漉き込まれていることを特徴とするものである。
【0011】
また、第七の態様は、第六の態様の印刷基材において、前記印刷基材には、帯状のスレッドに沿って当該スレッドの一部を表出する複数の表裏開口部が形成されていて、表裏の開口からスレッドの同一部分の異なるパターンが視認できることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
1)本発明の偽造防止材の第一の態様のように、透明なフィルム基材上に、少なくとも、光回折構造が形成されているかセキュリティ図柄が印刷されている層であるセキュリティ層、金属部の一部を除去したことによりパターンが形成されている第一の金属薄膜層からなる表用積層材と、透明なフィルム基材上に、少なくとも、光回折構造が形成されているかセキュリティ図柄が印刷されている層であるセキュリティ層、金属部の一部を除去したことによりパターンが形成されている第二の金属薄膜層からなる裏用積層材とが、透明な接着剤層を介して、前記第一の金属薄膜層と前記第二の金属薄膜層の表出面で貼り合わされており、おもて側から見たときと裏側から見たときとで異なるパターンが視認され、かつ、金属部を除去した部分から各々他方の積層材側の金属薄膜層が視認できることによって、偽造防止材を表裏から見た場合に、表裏異なったパターンを表出することができ、同一面積中に二倍の情報を保持させることができる。
2)また、第二の態様のように、第一の態様の偽造防止材において、前記第一の金属薄膜層と前記第二の金属薄膜層は異なる色の金属により構成されていることによって、表裏から視認される反射色が異なり、開口部が小さくても表裏のパターンの違いを一段と視認し易くすることができる。
3)また、第三の態様のように、第一の態様の偽造防止材において、前記第一の金属薄膜層と前記第二の金属薄膜層は同一色の金属により構成されていることによって、第五の態様との組み合わせで、表裏から視認される反射色が異なり、開口部が小さくても表裏のパターンの違いを一段と視認し易くすることができる。
4)また、第四の態様のように、第一から第三何れかの態様の偽造防止材において、前記第一の金属薄膜層および前記第二の金属薄膜層の少なくとも一方は、不透明に成膜されていることによって、意匠効果を高めることができる。
5)また、第五の態様にように、第一から第四何れかの態様の偽造防止材において、接着剤層は、透明な着色接着剤層であることによって、表裏から視認される反射色が異なり、開口部が小さくても表裏のパターンの違いを視認し易くすることができる。
6)また、第六の態様にように、第一から第五何れかの態様の偽造防止材を備えた印刷基材であって、偽造防止材は帯状の形態をなし、印刷基材の一部にスレッドとして漉き込まれたことによって、スレッド漉き込み印刷用紙の偽造防止効果を高めることができる。
7)また、第七の態様のように、第六の態様の印刷基材において、印刷基材には、帯状のスレッドに沿って当該スレッドの一部を表出する複数の表裏開口部が形成されていることによって、例えば、開口部が印刷基材を貫通する状態になっている箇所では、スレッドの表裏に異なるパターンを表出することができ、スレッド漉き込み印刷用紙の偽造防止効果を一段と高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の偽造防止材の一例について説明するための図である。
【図2】図1のA−A線断面について説明するための図である。
【図3】図1のA−A線断面の、他の一例について説明するための図である。
【図4】図1のA−A線断面の、他の一例について説明するための図である。
【図5】従来の偽造防止材の一例について説明するための図である。
【図6】従来の偽造防止材の、他の一例について説明するための図である。
【図7】本発明の偽造防止材を備えた印刷基材を使用した印刷物の一例について説明するための図である。
【図8】図7のB−B線断面の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の偽造防止材及びこれを備えた印刷基材について説明する。
図1は、本発明の偽造防止材の一例について説明するための図,図2は、図1のA−A線断面について説明するための図,図3は、図1のA−A線断面の他の一例について説明するための図,図4は、図1のA−A線断面の他の一例について説明するための図,図5は、従来の偽造防止材の一例について説明するための図,図6は、従来の偽造防止材の他の一例について説明するための図,図7は、本発明の偽造防止材を備えた印刷基材を使用した印刷物の一例について説明するための図,図8は、図7のB−B線断面の一例について説明するための図、である。
以下の説明では、セキュリティ層について、光回折構造が形成された層の例で説明する。また、第一の金属薄膜層と第二の金属薄膜層に形成されたパターンは、お互いが重ならないように形成されたパターンの例で説明する。
【0015】
図1を参照して、本発明の偽造防止材の一例について説明する。
図1のa図は、本発明の偽造防止材1の一例を、おもて側から見たときの状態を示し、b図は、a図の裏側を示したものである。
図示しないが、本実施形態の偽造防止材1は、上述のa図に示す表用積層材11と、b図に示す裏用積層材12が中間で接着剤6によって貼り合わされた構造になっている。
おもて側から見た時に、b図に示した「アルファベット」の文字図柄によるセキュリティ層は視認されず、また、裏側から見た時には、a図に示した「飛行機」の図柄によるセキュリティ層は視認されない。
このように、互いに反対側のセキュリティ層が視認されないのは、後述する第一の金属薄膜層及び第二の金属薄膜層に反射されることによる。
【0016】
セキュリティ層は光回折構造が形成された層、または、セキュリティ図柄が印刷された層になっている。
セキュリティ層が、光回折構造になっている場合は透明な樹脂層に微細な凹凸が形成され、セキュリティ図柄が印刷された層になっている場合は印刷インキによって文字,罫線,イラスト,写真を含む図柄の何れか又はこれらの組み合わせで印刷されている。
【0017】
図2を参照して、図1のA−A線断面について説明する。
本発明の偽造防止材1は、おもて用(以下、表用と記載する)積層材11と裏用積層材12が中間で接着剤6によって貼り合わされた構造になっている。
表用積層材11は表出面から、透明なフィルム基材111,セキュリティ層112,第一の金属薄膜層113の順に、また、裏用積層材12は表出面から、透明なフィルム基材121,セキュリティ層122,第二の金属薄膜層123の順に積層され、第一の金属薄膜層113と第二の金属薄膜層123の表出面で接着剤層6を介して接着されている。
この場合の接着剤6は、透明なフィルム基材111側,透明なフィルム基材121側何れの側からも視認することはできない。従って、接着剤層6は、着色されていても無色でもよい。また、接着剤層6は、粘着剤で構成されていてもよい。
セキュリティ層112,122には、光回折構造が微細な凹凸で形成されているか、または、印刷による図柄などが印刷インキによって形成されている。
【0018】
透明なフィルム基材111,121と、セキュリティ層112,122の間、及び、第一の金属薄膜層113,第二の金属薄膜層123と接着剤の間には接着性を高める樹脂層が設けられる場合もある。
【0019】
図3を参照して、図1のA−A線断面の、他の一例について説明する。
図3の偽造防止材2の例は、第一の金属薄膜層と第二の金属薄膜層が同一色の場合の例である。
d図に示す偽造防止材2を表用積層材の透明なフィルム基材211側から見た時に、c図に示すように、第一の金属薄膜層213の一部が「六角形のパターン」にデメタライズ(除去)され、「六角形のパターン」2131の内側からセキュリティ層212を介して接着剤層6が視認される。
接着剤層6が透明な無色の接着剤層の場合は、「六角形のパターン」2131の内側からセキュリティ層212を介して第二の金属薄膜層223の色が視認される。
接着剤層6が透明な着色接着剤層の場合は、「六角形のパターン」2131の内側からセキュリティ層212を介して第二の金属薄膜層223の色が着色されて視認される。
d図に示す偽造防止材2を裏用積層材の透明なフィルム基材221側から見た時に、e図に示すように、第二の金属薄膜層223の一部が「星形のパターン」にデメタライズされ、「星形のパターン」2231の内側からセキュリティ層222を介して接着剤層6が視認される。
接着剤層6が透明な無色の接着剤層の場合は、「星形のパターン」2231の内側からセキュリティ層222を介して第一の金属薄膜層213の色が視認される。
接着剤層6が透明な着色接着剤層の場合は、「星形のパターン」2231の内側からセキュリティ層222を介して第一の金属薄膜層213の色が着色されて視認される。
【0020】
図4を参照して、図1のA−A線断面の、他の一例について説明する。
図4の偽造防止材3の例は、第一の金属薄膜層の色と第二の金属薄膜層の色が異なる場合の例である。
g図に示す偽造防止材3を表用積層材の透明なフィルム基材311側から見た時に、f図に示すように、第一の金属薄膜層313の一部が「六角形のパターン」にデメタライズされ、「六角形のパターン」3131の内側からセキュリティ層312を介して接着剤層6が視認される。
接着剤層6が透明な無色の接着剤層の場合は、「六角形のパターン」3131の内側からセキュリティ層312を介して第二の金属薄膜層323の色が、第一の金属薄膜層の色とは異なる色で視認される。
接着剤層6が透明な着色接着剤層の場合は、「六角形のパターン」3131の内側からセキュリティ層312を介して第二の金属薄膜層323の色が着色されて第一の金属薄膜層の色とは異なり、第二の金属薄膜層323の色とも異なる色で視認される。
g図に示す偽造防止材3を裏用積層材の透明なフィルム基材321側から見た時に、h図に示すように、第二の金属薄膜層323の一部が「星形のパターン」にデメタライズされ、「星形のパターン」3231の内側からセキュリティ層322を介して接着剤層6が視認される。
接着剤層6が透明な無色の接着剤層の場合は、「星形のパターン」3231の内側からセキュリティ層322を介して第一の金属薄膜層313の色が視認される。
接着剤層6が透明な着色接着剤層の場合は、「星形のパターン」3231の内側からセキュリティ層322を介して第一の金属薄膜層313の色が着色されて視認される。
【0021】
ここで、セキュリティ層に形成される光回折構造の一例について説明する。
一般に、光回折構造の使用方法として、光回折構造が形成されたベースフィルムのまま使用する方法と、光回折構造が形成された樹脂部だけ対象物に転写して使用する方法がある。
光回折構造がベースフィルムのまま使用される場合は、ベースフィルムの片側に熱硬化性の樹脂層が形成され、熱硬化性の樹脂層に光回折構造が形成され、光回折構造の上に多くの場合薄い金属による反射層が形成され、その上に粘着剤層または接着剤層が形成され、テープ状にスリットされ、またはラベル状に打ち抜かれて使用される。
光回折構造が形成された樹脂部だけが対象物に転写されて使用される場合は、耐熱性を有する基材フィルム上に剥離層が形成され、その上に、例えば、熱硬化性の樹脂層が形成され、熱硬化性の樹脂層に光回折構造が形成され、反射層が形成され、その上に感熱接着剤層が形成されて、熱せられた金属の型などによって、接着剤層を含めた極めて薄い光回折構造形成層が紙などの印刷物上に転写されて使用される。
【0022】
前記反射層は、前述の光回折構造形成層に反射性を与えるために設けられる。反射層には、不透明な反射層と、透明性を有する反射層とがあるが、意匠効果を高める手段として使用する場合は、ニッケル,クロム,アルミニウム,鉄,チタン,銀,金などの金属単体により不透明な反射層を成膜したり、アルミニウムにチタンを混ぜたり、ニッケルにクロムを混ぜて合金による不透明な反射層を成膜する。
反射層を形成する方法としては、スパッタリング法,真空蒸着法,イオンブレーティング法などがあり、目的によって使い分ける。
多くの場合で使用されるスパッタリング法は、スパッタリング装置内に製膜したい金属(ターゲット)を設置し、金属と基材フィルムの間に高電圧をかける。スパッタリング装置内にアルゴンガスを導入すると、アルゴンガスが帯電してイオン化される。発生したイオンが高速移動し、金属に衝突すると、金属ターゲットの表面の原子がはじき飛ばされ、プラズマ中にある基板に到達して薄膜を形成する。
【0023】
また、セキュリティ層の樹脂,接着剤などの形成手段として、グラビアコート,ダイコート,ナイフコート,ロールコートなどの一般的なコーティング方法、および、シルクスクリーン印刷,グラビア印刷などの印刷方法などがあり、その中から適宜、選択して使用する。
【0024】
セキュリティ層の樹脂には、前述の光回折構造を形成する以外に、文字や図柄を含むパターンを通常のインキで印刷して使用することができる。
セキュリティ層に文字や図柄を含むパターンを印刷して使用する場合、マイクロ文字をあしらったパターンや、これらパターンに反射層を付加し、金属光沢を付与したりして使用することができる。
セキュリティ層の樹脂に印刷をして使用する場合は、例えば、特殊な波長領域で発色するインキを用いたり、角度を変化させると異なる色で反射する液晶インキなどを用いて使用することができる。
また、上述の通常の印刷部で構成する場合は、例えば、印刷基材に印刷する印刷内容や、金額などを隠し文字として印刷し、使用することができる。
【0025】
図5を参照して、従来の偽造防止材の一例について説明する。
従来の偽造防止材4は、図の上部から、透明なフィルム基材411、透明な樹脂層412、第一の金属薄膜層413が順次形成された構成になっている。従って、偽造防止材を透明なフィルム基材411側から見ても、第一の金属薄膜層413側から見ても、同一の状態が視認される。
【0026】
図6を参照して、従来の偽造防止材の、他の一例について説明する。
従来の偽造防止材5は、図の上部から、透明なフィルム基材511、透明な樹脂層512、第一の金属薄膜層513が順次形成された構成になっている。また、第一の金属薄膜層513がデメタライズされてパターン5131が形成されている。
偽造防止材5を透明なフィルム基材511側から見ても、第一の金属薄膜層513側から見ても、同一の状態が視認される。
【0027】
図7を参照して、本発明の偽造防止材を備えた印刷基材を使用した印刷物の一例について説明する。
紙の層間に偽造防止材を挿入した偽造防止用紙は、商品券や株券などの有価証券,紙幣などに多く使用される。
図に示す印刷基材9の例は、印刷基材9の層間に偽造防止材1が抄きこまれた「スレッド入り紙」の一例である。
「スレッド入り紙」として、大きく2種類のものが使用されている。
その一つは、用紙内部に挿入されたスレッドが用紙の表裏何れか片側だけに規則的に表出するものや、用紙の表裏に交互に表出する状態で漉き込まれたものである。
他の一つは、用紙を貫通するように形成され、直線状に並べられた複数の開口部にスレッドが表出するものである。
図7に示す印刷基材の例は、後者の例に近く、基材(基紙)の上層基材にスレッドを埋め込み、下層基材にスレッドが規則的に表出する開口部を設けた例である。
【0028】
図8を参照して、図7のB−B線断面の一例について説明する。
印刷基材9の抄紙工程で、下層基材91が最初に形成され、その上部に上層基材92が積層される。前記積層の直前に、偽造防止材(以下、スレッドという)1が上層基材92に埋め込まれる状態で形成される。
前述したように、開口部911の部分は、下層基材91を貫通する開口部となっている。
その結果、下層基材91の開口部からは、スレッド1の同一部分を表裏から視認することができる状態になっている。
スレッド1の層構成は、図2,図3,図4で説明したとおりであるが、スレッド1を印刷基材9に固定するために接着剤層8をスレッドの最下部に設けている。
また、抄紙段階で印刷基材9の層間にスレッドを形成する際に、スレッドの最上部、透明なフィルム基材の幅方向端部表面に上層基材の一部611を薄く形成させることもできる。その場合にスレッド1の一部を印刷基材9に固定するためにスレッドの最上部にも接着剤層8を設ける。
【0029】
(材料)
一部、図2,図8を参照して本実施形態の偽造防止材と印刷基材の材料について製造手順を踏まえて説明する。
本実施形態の印刷基材9は、有価証券などで利用される坪量70〜150g/m2の基紙を使用する。そのため、上層基紙92と下層基紙91のつけ比率を10:50〜25:120の範囲内で行う。
また、紙料は、NBKP,LBKPに、白土,紙力増強剤,サイズ剤,硫酸バンドを適量加え調製する。
偽造防止材1は、厚さ16〜25μmの透明なフィルム基材111,123に、厚さ2〜6μmの熱硬化性の透明樹脂層を形成し、透明樹脂層に光回折構造を形成し、光回折構造の表面に、スパッタリング手段などによって、厚さ0.04〜0.08μmのアルミニウムや胴などによる第一の金属薄膜層113,第二の金属薄膜層123を形成する。
第一の金属薄膜層113,第二の金属薄膜層123は光回折構造の反射層となる。
第一の金属薄膜層113,第二の金属薄膜層123に公知のデメタライズ手段(パターンニング手段)によってパターンを形成する。
第一の金属薄膜層113,第二の金属薄膜層123いずれかの表面にロールコーティング手段などを使用して接着剤を塗布し、第一の金属薄膜層113と第二の金属薄膜層123を貼り合わせる。接着剤層6は、前述のように無色透明にしたり、着色された透明状態にする。
透明なフィルム基材111,121の表出面に、例えば、ビニル系の感熱接着剤を5〜10μmの厚さに塗工する。
広幅のスレッド用ロールを、スリッターで微細な帯状にスリットし、スレッドとする。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の偽造防止材は、商品券や株券などの有価証券,紙幣などに利用される。
【符号の説明】
【0031】
1,2,3 本実施形態の偽造防止材,スレッド
4,5 従来の偽造防止材
6 接着剤(粘着剤含む)
7 商品券
8 接着剤
9 印刷基材
11 表用積層材
12 裏用積層材
91 下層基材
92 上層基材
111,121,211,221,311,321,411,511 透明なフィルム基材
112,122,212,222,312,322,412,512 セキュリティ層
113,213,313 第一の金属薄膜層
123,223,323 第二の金属薄膜層
2131,2231,3131,3231,5131 金属部を除去したことによるパターン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なフィルム基材上に、少なくとも、光回折構造が形成されているかセキュリティ図柄が印刷されている層であるセキュリティ層、金属部の一部を除去したことによりパターンが形成されている第一の金属薄膜層からなる表用積層材と、
透明なフィルム基材上に、少なくとも、光回折構造が形成されているかセキュリティ図柄が印刷されている層であるセキュリティ層、金属部の一部を除去したことによりパターンが形成されている第二の金属薄膜層からなる裏用積層材とが、透明な接着剤層を介して、前記第一の金属薄膜層と前記第二の金属薄膜層の表出面で貼り合わされており、おもて側から見たときと裏側から見たときとで異なるパターンが視認され、かつ、金属部を除去した部分から各々他方の積層材側の金属薄膜層が視認できることを特徴とする偽造防止材。
【請求項2】
請求項1に記載の偽造防止材において、
前記第一の金属薄膜層と前記第二の金属薄膜層は、異なる色の金属により構成されていることを特徴とする偽造防止材。
【請求項3】
請求項1に記載の偽造防止材において、
前記第一の金属薄膜層と前記第二の金属薄膜層は、同一色の金属により構成されていることを特徴とする偽造防止材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の偽造防止材において、
前記第一の金属薄膜層および前記第二の金属薄膜層の少なくとも一方は、不透明に成膜されていることを特徴とする偽造防止材。
【請求項5】
請求項1〜4何れかに記載の偽造防止材において、
前記接着剤層は、透明な着色接着剤層であることを特徴とする偽造防止材。
【請求項6】
請求項1〜5何れかに記載の偽造防止材を備えた印刷基材であって、
前記偽造防止材は帯状の形態をなし、前記印刷基材の一部にスレッドとして漉き込まれていることを特徴とする偽造防止材を備えた印刷基材。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷基材において、
前記印刷基材には、帯状のスレッドに沿って当該スレッドの一部を表出する複数の表裏開口部が形成されていて、表裏の開口からスレッドの同一部分の異なるパターンが視認できることを特徴とする偽造防止材を備えた印刷基材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−33263(P2013−33263A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201815(P2012−201815)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【分割の表示】特願2006−304683(P2006−304683)の分割
【原出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】