説明

偽造防止用シートの作製方法及びその真偽判別方法

【課題】ハートレー変換を用いて秘匿画像を画像データに埋め込んだ場合でも、そのハートレー画像の一部のみでは、秘匿画像を検出することが不可能な偽造防止用シートの作製方法及びその真偽判別方法に関するものである。
【解決手段】偽造防止用シートは、ハートレー画像データ生成後に、ハートレー画像データをハートレー変換により秘匿画像データを復元することが不可能な大きさに分割して複数の第一領域データを生成したのち、複数の第一領域データに対して、ハートレー画像データのどこに位置していたかを示す固有の位置情報を付与し、位置情報が付与されたハートレー画像データを基材に所定の方法により施すことで作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉眼では判断できない秘匿画像が埋め込まれた、偽造防止用シートの作製方法及びその真偽判別方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像データに、肉眼では判断できない秘匿画像を合成する技術として位相変調、周波数変調等の各変調方式がある。これらの各変調方式を用いて、秘匿画像が合成されたデータを生成し、その生成したデータを基に作製した偽造防止用シートは、イメージスキャナ、イメージセンサカメラ等を用いて秘匿画像を検出することで、真偽判別を行う。
【0003】
特許文献1においては、周波数変調の一種であるハートレー変換を用いた、秘匿画像の合成方法が開示されている。ハートレー変換を用いて秘匿画像を合成した際には、所定のピクセルがあれば、その画像データの一部からでも、秘匿画像を検出することが可能となる。よって、偽造防止用シートの一部に、破れ、汚れ等の欠損が生じた場合でも、それらの欠損を除いた部分が検出可能なピクセルであれば、そこから秘匿画像を検出することが可能である。
【0004】
図34は、特許文献1における秘匿画像の合成方法により作製された、偽造防止用シート(S)を示す平面図の一例である。偽造防止用シート(S)には、ハートレー変換を用いて秘匿画像が合成された、ハートレー画像(E)が、印刷により付与されている。
【0005】
図35は、特許文献1における、偽造防止用シート作製方法を示すフローチャートである。次に、このフローチャートに順じて、特許文献1における、一つの秘匿画像データが埋め込まれた偽造防止用シート(S)の作製方法について説明する。
【0006】
ステップ(以下、「st」とする。)001では、原画像データ(f)及び秘匿画像データ(g)を取得する。原画像データ(f)とは、前述したハートレー画像(E)を生成するのに必要な原画像を、デジタルデータ化した画像データであり、秘匿画像データ(g)とは、ハートレー変換後の原画像データ(f)と合成する秘匿画像を、デジタルデータ化した画像データであり、いずれも白画素及び黒画素により構成されたデジタルデータである。
【0007】
ハートレー変換とは、周波数解析手法の一つで、一次元解析法と二次元解析法との二つの手法があり、特許文献1で用いている二次元解析方法では、ハートレー変換の特性上、画像データの画素数が2×2でしか原画像データや秘匿画像データを作成することができないことから、取得する原画像データ(f)及び秘匿画像データ(g)の画素数は、2×2である必要がある。
【0008】
また、取得した原画像データ(f)と、秘匿画像データ(g)は、同じ画素数とする。原画像データ(f)と、秘匿画像データ(g)の画素数が異なる場合は、ハートレー変換及び周波数解析手法の特性上、原画像データ(f)の画素数が2×2で、秘匿画像(g)を作成した場合、秘匿画像の画素数は原画像データの画素数に依存するため、同じ画素数のデータを作成することができないことから、後述するハートレー画像データ(E’)を作成することができない。よって、原画像データ(f)及び秘匿画像データ(g)は、同じ画素数とする必要がある。
【0009】
次に、st002では、原画像データ(f)をハートレー変換して実数配列(F)を生成する。
【0010】
実数信号系列x[n](n=0,1,・・・,N−1,Nはデータ数)のハートレー変換出力X[k](k=0,1,・・・,N−1)は、数1で定義される。原画像データ(f)は、ピクセルの二次元配列であるため、例えば、一次元ハートレー変換によって画像データのハートレー変換を行う場合には、まず、原画像データ(f)の行ごとに一次元ハートレー変換を行った後に配列の転置を行い、次に、列ごとに一次元ハートレー変換を行った後に配列の転置を行う。
【0011】
【数1】

【0012】
次に、st003では、実数配列(F)と秘匿画像データ(g)を、それぞれ合成し、合成実数配列(H)を生成する。
【0013】
合成実数配列(H)の配列要素値を(H(u,v))とし、αを実数(α≧0)とし、H(u,v)=(g’(u,v))×((F(u,v))+α)となるように座標(u,v)ごとにH(u,v)の値を算出し、合成実数配列(H)を生成する。ここで、g’(u,v)の値は、0又は1のいずれかである。
【0014】
次に、st004では、合成実数配列(H)を逆ハートレー変換し、ハートレー画像データ(E’)を生成する。
【0015】
ここで、実数信号系列X[k](k=0,1,・・・,N−1,Nはデータ数)の逆ハートレー変換出力x[n](n=0,1,・・・,N−1)は、数2で定義される。
【0016】
【数2】

【0017】
合成実数配列(H)は、二次元配列であるため、例えば、一次元逆ハートレー変換によって合成実数配列(H)の逆ハートレー変換を行う場合には、まず、合成実数配列(H)の各行ごとに一次元逆ハートレー変換を行った後に配列の転置を行い、次に、列ごとに一次元逆ハートレー変換を行った後に配列の転置を行う。生成したハートレー画像データ(E’)は、秘匿画像データ(g)が復元可能な所定のピクセルとする。
【0018】
最後に、生成したハートレー画像データ(E’)を、印刷機、抄紙機等に送信したのち、紙、プラスチック、金属、布を含む所定の基材(1)の表面に施すことで、一つの秘匿画像データ(g’)が潜像化された偽造防止用シート(S)と成る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第4296314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、特許文献1においては所定のピクセルがあれば、その一部からでも秘匿画像を検出することが可能となるため、真正の偽造防止用シートの一部を用いて作製した偽造製品でも真正品と同じ秘匿画像が検出可能となる。よって、更なる改善の余地がある。
【0021】
本発明は、上記課題の解決を目的とするものであり、具体的には、ハートレー変換を用いて秘匿画像を画像データに埋め込んだ場合でも、そのハートレー画像の一部のみでは、秘匿画像を検出することが不可能な偽造防止用シートの作製方法及びその真偽判別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前述の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、原画像データと秘匿画像データとを取得する画像データ取得工程と、原画像データにハートレー変換を行い二次元の実数配列を生成する工程と、二次元の実数配列と秘匿画像データとを合成して合成実数配列を生成する工程と、合成実数配列に逆ハートレー変換を行いハートレー画像データを生成する工程とを少なくとも有する偽造防止用シートの作製方法であって、ハートレー画像データ生成後に、ハートレー画像データをハートレー変換により秘匿画像データを復元することが不可能な大きさに分割して複数の第一領域データを生成する工程と、複数の第一領域データに対して、ハートレー画像データのどこに位置していたかを示す固有の位置情報である第一位置情報を付与する工程と、基材を読取装置で読み取り、その読み取った画像を画像データとした基準領域データを取得する工程と、基準領域データに基準点を付与し、基準点を付与した基準領域データを第一領域データと同じ大きさに分割して複数の分割基準領域データを生成する工程と、複数の分割基準領域データに対して、基準領域データのどこに位置していたかを示す固有の位置情報である基準位置情報を付与する工程と、第一位置情報を付与した複数の第一領域データと、基準位置情報を付与した複数の分割基準領域データを基に合成したハートレー画像データを生成する工程と、第一位置情報及び基準位置情報が付与されたハートレー画像データを基材に所定の方法により施すことを特徴とする。
【0023】
また、請求項2の発明は、請求項1記載の偽造防止用シートの作製方法において、秘匿画像データを復元することが不可能な大きさは、1ピクセル以上4096ピクセル未満であることを特徴とする。
【0024】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2記載の作製方法で得られた偽造防止用シートの真偽判別方法であって、基材における、少なくとも基準点及び複数の第一領域が配置された箇所に可視光又は赤外光を照射し、透過又は反射の読取画像データを取得する工程と、読取画像データを、基準点を基に第一領域データと同じ大きさに分割して複数の分割読取画像データを生成する工程と、位置情報リストを基に、複数の分割読取画像データにあらかじめ付与した基準位置情報及び第一位置情報を読み取る工程と、複数の分割読取画像データから読み取った基準位置情報及び第一位置情報を基に、複数の分割読取画像データをハートレー変換することで秘匿画像データを復元することが可能な大きさの検出画像データを生成する工程と、検出画像データをハートレー変換して判別画像データを生成する、判別画像データ生成工程と、判別画像データと、あらかじめ取得した秘匿画像データとを比較及び照合し、真偽判別を行う工程から成ることを特徴とする。
【0025】
また、請求項4の発明は、請求項3記載の偽造防止用シートの真偽判別方法において、秘匿画像データを復元することが可能な大きさは、1024ピクセル以上であること特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上のような構成の本発明に関わる偽造防止用シートは、秘匿画像が埋め込まれた画像データをハートレー変換することが不可能な大きさに分割したのちに埋め込んでいることから、その分割した際の各々の領域に付与した固有の位置情報を用いなくては、秘匿画像を読み取ることができない。よって、従来よりも秘匿性が向上した偽造防止用シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】偽造防止用シート(S1)を示す平面図の一例。
【図2】第一ハートレー画像(2a)を示す模式図。
【図3】第一領域(2)の詳細を示す模式図。
【図4】基準位置情報(i3)を示す模式図。
【図5】偽造防止用シート(S2)の第一変形例を示す平面図の一例。
【図6】第二ハートレー画像(3a)を示す模式図。
【図7】第二領域(3)の詳細を示す模式図。
【図8】偽造防止用シート(S3)の第二変形例を示す平面図の一例。
【図9】偽造防止用シート作製装置(100)を示すブロック図。
【図10】偽造防止用シート(S2)の作製方法を示すフローチャート。
【図11】各原画像データ(f1、f2)及び各秘匿画像データ(g1、g2)の一例。
【図12】各秘匿画像データ(g1’、g2’)を示す図。
【図13】各実数配列(F1、F2)を示す図。
【図14】各実数配列(F1、F2)と各秘匿画像データ(g1’、g2’)の配列要素値を示す図。
【図15】各実数配列(F1、F2)の三次元表示を示す図。
【図16】第一秘匿画像データ(g1’)、第一配列要素値(F1(u,v)+α)及び第一合成実数配列(H1)の三次元表示を示す図。
【図17】第一原画像データ(f1)及び第一秘匿画像データ(g1)を示す図。
【図18】第一ハートレー画像データ(2a’)及び第一判別画像データ(Z1)を示す図。
【図19】各ハートレー画像データ(2a’、3a’)を示す図。
【図20】第一ハートレー画像データ(2a’)を第一のピクセルに分割する際の模式図。
【図21】第一領域データ(m)へ、第一位置情報(i1)を付与する模式図。
【図22】基準領域データ(L’)を第一のピクセルに分割する際の模式図。
【図23】分割基準領域データ(L)へ、基準位置情報(i3)を付与する模式図。
【図24】合成データ(p)を示す模式図。
【図25】合成データリスト(P)を示す模式図。
【図26】各領域データ(m、n)を示す模式図。
【図27】真偽判別装置(300)を示すブロック図。
【図28】偽造防止用シート(S2)の真偽判別方法を示すフローチャート。
【図29】読取画像データ(t)を示す図。
【図30】複数の分割読取画像データ(T)を示す図。
【図31】第一検出画像データ(W1)を生成する手順を示す模式図。
【図32】所定のビット位置と所定のビット幅の一例を示す図。
【図33】各判別画像データ(Z1)の一例を示す図。
【図34】特許文献1における偽造防止用シート(S)を示す平面図の一例。
【図35】特許文献1における偽造防止用シート(S)の作製方法を示すフローチャート。
【図36】特許文献1における偽造防止用シート作製装置(100)を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であればその他色々な形態が実施可能である。
【0029】
(偽造防止用シート)
図1は、本発明における偽造防止用シート(S1)を示す平面図の一例である。偽造防止用シート(S1)は、紙幣、パスポート等の貴重印刷物であり、紙、プラスチックカード等の基材(1)上に店舗名、券種等が、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック等の一般的に用いられるインキにより付与されている。偽造防止用シート(S1)には、基材(1)上における少なくとも一部に第一ハートレー画像(2a)の一部である複数の第一領域(2)が、重なることなく配置されている。
【0030】
図2は、第一ハートレー画像(2a)を示す模式図である。第一ハートレー画像(2a)とは、第一原画像(2b)をハートレー変換したのち第一秘匿画像(2c)と合成し、逆ハートレー変換した画像である。なお、このハートレー画像の生成方法についての詳細は後述する偽造防止用シート作製工程において説明する。
【0031】
生成された第一ハートレー画像(2a)においては、第一秘匿画像(2c)が肉眼では判断できない画像として合成されている。第一ハートレー画像(2a)を、第一のピクセル(h×w)に分割することで第一領域(2)が複数生成される。つまり、前述した基材(1)上に付与されていた第一領域(2)は、第一ハートレー画像(2a)を第一のピクセルに分割したうちの一つである。
【0032】
第一のピクセルとは、一つの第一領域(2)に対してハートレー変換を行った場合においても第一秘匿画像(2c)を復元することが不可能な大きさのことである。
【0033】
前述のとおり、第一ハートレー画像(2a)から複数の第一領域(2)を生成し、その複数の第一領域(2)を基材(1)上に配置することで、第一秘匿画像(2c)が秘匿情報として偽造防止用シート(S1)に付与される。
【0034】
通常、作製した偽造防止用シート(S1)の真偽判別を行う場合は、前述した特許文献1に示すように基材(1)上に配置した第一ハートレー画像(2a)をハートレー変換することで復元された画像と、第一秘匿画像(2c)とを比較及び照合することで行う。よって、通常であれば第一ハートレー画像(2a)を分割して基材(1)上に配置する場合には、第一ハートレー画像(2a)をハートレー変換した際に、第一秘匿画像(2c)を復元することが可能なピクセルに分割したのち配置する必要がある。
【0035】
しかしながら「発明が解決しようとする課題」で述べたように、ハートレー変換可能なピクセルとして埋め込んだ場合には、イメージスキャナ、イメージセンサカメラ等を用いて簡単に第一秘匿画像(2c)を復元することが可能となることから、さらに秘匿性が向上した偽造防止用シートが求められていた。そこで、第一ハートレー画像(2a)をハートレー変換した場合でも、第一秘匿画像(2c)を復元することが不可能なピクセルに分割したのち、基材(1)上に配置した偽造防止用シート(S1)を提供するものが本発明である。
【0036】
第一のピクセルは、1ピクセル以上4096ピクセル未満とする。なお、第一のピクセルとは、一辺(w又はh)のピクセル数ではなく、面積(h×w)内におけるピクセル総数のことを言う。1ピクセル未満とした場合には、画像を作成できないという理由から偽造防止用シート(S1)から、画像を復元する際に用いられる各位置情報(i1、i2、i3)を付与することができない。なお、位置情報についての詳細は後述する。また、4096ピクセル以上の場合には、一つの第一領域(2)をハートレー変換することで第一秘匿画像(2c)が復元されることから、従来と比較して秘匿性が向上したとは言えない。よって、第一のピクセルは1ピクセル以上4096ピクセル未満とする。
【0037】
第一のピクセルは、第一秘匿画像(2c)のデータ量により前述した1ピクセル以上4096ピクセル未満の範囲内で変化する。データ量が多いとき、つまり第一秘匿画像(2c)のパターンが複雑な場合には大きいピクセルであっても第一秘匿画像(2c)を復元することができない。よって、1ピクセル以上4096ピクセル未満であればいずれの大きさとすることも可能である。一方、データ量が少ないとき、例えば図2において第一秘匿画像(2c)は四つのドットから成る画像であるが、二つのドットから成る画像である場合には、データ量が少なくなる。その場合に大きいピクセルとすると、第一秘匿画像(2c)が復元される可能性がある。よって、データ量が少ない場合には、第一のピクセルは小さいピクセル(例えば1024ピクセル未満)とする必要がある。以下、本発明における第一のピクセルとは同じ大きさのピクセルであることから説明を省略する。
【0038】
第一領域(2)は、基材(1)上にオフセット印刷、スクリーン印刷等の各種印刷、エンボス加工、すき入れ又はレーザ加工により形成する。オフセット印刷、スクリーン印刷等の各種印刷による第一領域(2)の形成は、第一領域(2)の図柄を基に基材(1)に対して公知のオフセット印刷、スクリーン印刷等の各種印刷方法に適した版面及びインキを用いて印刷を行うことで、インキにより形成する。
【0039】
エンボス加工による第一領域(2)の形成は、第一領域(2)の図柄に合わせた凹型及び凸型と、エンボス加工を行うことが可能な公知のエンボス加工機を用いて形成する。また、すき入れによる第一領域(2)の形成は、基材(1)を紙とした際にすき入れを施すことが可能な公知の抄紙機を用いて形成し、レーザ加工による第一領域(2)の形成は、基材(1)の一部に対してレーザ加工を行うことが可能な公知のレーザ加工装置を用いて形成する。
【0040】
図3は、第一領域(2)の詳細を示す模式図である。図3(a)に示すように、第一領域(2)は第一位置情報(i1)を有する。第一位置情報(i1)とは、一つの第一領域(2)が図3(b)に示す分割前の第一ハートレー画像(2a)におけるどこに位置していたかを示す固有の位置情報である。複数の第一領域(2)は、互いに異なる第一位置情報(i1)を有する。
【0041】
なお、本発明においては模式的に示すため各位置情報(i1、i3)を図3に示し、後述する各位置情報(i2)を図7に示すが、実際には肉眼で視認することはできない。各位置情報(i1、i2、i3)は、後述する本発明の偽造防止用シート(S1)を作製する偽造防止用シート作製装置(100)の記憶部(190)へと記憶されている。各位置情報(i1、i2、i3)は、偽造防止用シート(S1)を真偽判別する際に必要となることから、偽造防止用シート(S1)作製時に記憶部(190)へ記憶しておく。
【0042】
図3(a)に示す第一領域(2)については、第一位置情報(i1)が、(0,0)であることから図3(b)に示す分割前の第一ハートレー画像(2a)における対応する座標位置である、xy座標(0,0)に位置していたことになる。図3における位置情報においては、第一ハートレー画像(2a)の左下を基準点(0,0)として各第一領域(2)における左下位置(x,y)が特定可能となるように表現している。なお、基準点(0,0)については左下に限らず右下、中心等適宜設定することが可能である。同様に、第一領域(2)を特定可能とする位置についても、左下位置に限らず右下、中心等適宜設定することが可能である。
【0043】
なお、本発明における各位置情報(i1、i2、i3)は、いずれもxy座標による直交座標系に限らず、極座標系、斜交座標系によっても示すことが可能であり、どの座標系により示すかは適宜選択することが可能であり以下説明を省略する。
【0044】
第一領域(2)は、さらに基準位置情報(i3)を有する。図4は、基準位置情報(i3)を示す模式図である。基準位置情報(i3)とは、複数の第一領域(2)及び後述する複数の第二領域(3)が、各々、基材(1)上におけるどこに位置しているかを示す固有の位置情報である。基準位置情報(i3)は、例えば、図4に示すように、基材(1)の左下を基準点(0,0)として基材(1)を分割することで生成された、各々の領域(1a)における左下位置(x,y)が特定可能となるように表現している。
【0045】
このように、前述した図1に示す本発明の偽造防止用シート(S1)は、第一ハートレー画像(2a)を第一秘匿画像(2c)を復元することが不可能なピクセルに分割したのち基材(1)上に配置している。そのため、第一秘匿画像(2c)を復元しようとした場合においても、一つの第一領域(2)からは復元することができない。よって、従来よりも秘匿性が向上した偽造防止用シート(S1)となる。
【0046】
(第一変形例)
前述した偽造防止用シート(S1)は秘匿画像が一つ埋め込まれていたが、秘匿画像を複数個付与することも可能である。以下、一例として秘匿画像が二つ付与された偽造防止用シート(S2)について説明する。
【0047】
図5は、本発明における偽造防止用シート(S2)の第一変形例を示す平面図の一例である。偽造防止用シート(S2)には、前述した第一ハートレー画像(2a)の一部である複数の第一領域(2)と、さらに第二ハートレー画像(3a)の一部である複数の第二領域(3)が配置されている。複数の第二領域(3)は、基材(1)上における少なくとも一部に複数の第一領域(2)と重なることなく配置されている。また、複数の第二領域(3)は、互いに重なることなく基材(1)上に配置されている。
【0048】
図6は、第二ハートレー画像(3a)を示す模式図である。第二ハートレー画像(3a)は、第二原画像(3b)をハートレー変換したのち、第二秘匿画像(3c)と合成し、逆ハートレー変換した画像である。第二ハートレー画像(3a)を第一のピクセル(w×h)に分割することで、第二領域(3)が複数生成される。つまり、第二領域(3)は第二ハートレー画像(3a)を第一のピクセルに分割したうちの一つである。
【0049】
図7は、第二領域(3)の詳細を示す模式図である。図7(a)に示すように、第二領域(3)は第二位置情報(i2)を有する。第二位置情報(i2)とは、図7(b)に示す分割前の第二ハートレー画像(3a)におけるどこに位置していたかを示す固有の位置情報であり、複数の第二領域(3)は全てが互いに異なる第二位置情報(i2)を有する。図7(a)に示す第二領域(3)については、第二位置情報(i2)が(0,1)であることから、図7(b)に示す分割前の第二ハートレー画像(3a)の対応する座標位置であるxy座標で示す(0,1)に位置していたことになる。また、第二領域(3)においても、前述した第一領域(2)と同様に基準位置情報(i3)を有する。
【0050】
このように、第一変形例における偽造防止用シート(S2)は、複数のハートレー画像(2a、3a)を、各々秘匿画像(2c、3c)を復元することが不可能なピクセルに分割したのち、互いに重なることなく基材(1)上に配置している。そのため、各秘匿画像(2c、3c)を復元しようとした場合においても、一つの第一領域(2)及び第二領域(3)からは、復元することができない。
【0051】
また、複数の秘匿画像(2c、3c)を復元させるためには、前述した一つの秘匿画像を復元させるよりもさらに手順を踏むことから、従来と比べよりセキュリティ性が向上した偽造防止用シート(S2)となる。
【0052】
なお、第二領域(3)は、前述した第一領域(2)と同様に各種印刷、エンボス加工、すき入れ又はレーザ加工により基材(1)上に形成する。
【0053】
第一変形例においては、発明を明確に説明するために図5では第一領域(2)を黒いベタ領域として図示したが、実際には図1に示す第一領域(2)と同一である。以下、本発明では、第一領域(2)及び第二領域(3)を同じ図に図示する場合には、第一領域(2)を黒いベタ領域として図示する。
【0054】
(第二変形例)
図8(a)は、偽造防止用シート(S3)の第二変形例を示す平面図の一例である。前述した偽造防止用シート(S1、S2)における秘匿画像(2c、3c)の秘匿性を、さらに向上させるために、複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)(図示せず)と少なくとも一部重畳するように、カムフラージュ画像(c)を付与してもよい。
【0055】
図8(b)は、カムフラージュ画像(c)を示す平面図である。カムフラージュ画像(c)とは、基材(1)上に配置した複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)を肉眼によって視認した際の視認性を低下させるために付与する、文字、絵柄等の印刷模様であり、赤外透過特性を有するインキにより形成する。
【0056】
本発明の偽造防止用シート(S1、S2、S3、以下「S1、S2、S3」を示す際には「S」とする。)の真偽判別を行う場合は、基材(1)上に配置した複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)が配置された箇所に可視光又は赤外光を照射し、透過画像データ又は反射画像データである読取画像データ(t)を取得したのち、その取得した画像データを基に真偽判別を行う。
【0057】
第一領域(2)及び/又は第二領域(3)を、すき入れ、エンボス加工、レーザ加工等、基材(1)上へ凹凸形状として付与した場合には、その偽造防止用シート(S)は、複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)が配置された箇所に可視光又は赤外光を照射し、透過画像データを取得したのち、その取得した透過画像データを基に真偽判別を行う。
【0058】
透過画像データを取得する際に用いられるイメージスキャナには、可視光を照射するものと、赤外光を照射するものがある。赤外光を照射するIRイメージスキャナにおいては、赤外光を照射し、透過画像データを取得する構成となっている。そのことから、複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)を基材(1)上へ凹凸形状として付与し、さらに、その上にカムフラージュ画像(c)を赤外透過特性を有するインキにより形成する。
【0059】
それにより、肉眼では重畳して形成したカムフラージュ画像(c)により、複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)の隠ぺい性が向上する。また、IRイメージスキャナを用いて透過画像データを取得する際には、赤外透過特性を有するインキにより付与されたカムフラージュ画像(c)は透過画像データを取得することができず、複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)の透過画像データのみを、カムフラージュ画像(c)の影響を受けずに取得することが可能となる。
【0060】
次に、本発明の偽造防止用シート(S)の作製装置を説明する。
【0061】
(偽造防止用シート作製装置)
図9に示す偽造防止用シート作製装置(100)は、画像データ取得部(110)、ハートレー変換部(120)、配列並べ換え部(130)、実数配列生成部(140)、逆ハートレー変換部(150)、データ分割部(160)、位置情報付与部(170)、データ合成部(180)、記憶部(190)、出力部(200)及び制御部(210)から構成されている。なお、図9に示す偽造防止用シート作製装置(100)は、本出願人が先に出願している特許第4296314に記載された印刷物作製装置に、本発明の偽造防止用シート(S)を作製するのに必要な、データ分割部(160)及び位置情報付与部(170)を追加した構成としている。
【0062】
次に、図10に示すフローチャートに順じて、前述した図9に示した偽造防止用シート作製装置(100)を用いて、本発明における二つの秘匿画像データが埋め込まれた偽造防止用シート(S2)の作製方法について説明する。
【0063】
st101では、図9の画像データ取得部(110)で、偽造防止用シート(S)を作製するにあたり必要な、各原画像データ(f1、f2)、各秘匿画像データ(g1、g2)及び基準領域データ(L’)を取得する。
【0064】
図11(a)は、第一原画像データ(f1)の一例であり、図11(b)は、第二原画像データ(f2)の一例であり、図11(c)は、第一秘匿画像データ(g1)の一例であり、図11(d)は、第二秘匿画像データ(g2)の一例である。
【0065】
第一原画像データ(f1)とは、前述した第一ハートレー画像(2a)を生成するのに必要な原画像をデジタルデータ化した画像データであり、第二原画像データ(f2)は、前述した第二ハートレー画像(3a)を生成するのに必要な第二原画像(3b)をデジタルデータ化した画像データである。
【0066】
原画像をデジタルデータ化した画像データとは、原画像をスキャナ等の読取装置で読み取り、その読み取り結果を一般的な画像形式(BMP、JPEG、TIFF、PNG、PDF、PSD、PDD等)としたデータのことである。以下、デジタルデータ化した画像データとは、所望の画像をスキャナ等の読取装置で読み取り、その読み取り結果を一般的な画像形式(BMP、JPEG、TIFF、PNG、PDF、PSD、PDD等)としたデータのことであり以下説明を省略する。
【0067】
第一秘匿画像データ(g1)とは、ハートレー変換後の第一原画像データ(f1)と合成する秘匿画像をデジタルデータ化した画像データであり、第二秘匿画像データ(g2)は、ハートレー変換後の第二原画像データ(f2)と合成する秘匿画像をデジタルデータ化した画像データである。
【0068】
基準領域データ(L’)とは、前述した偽造防止用シート(S)に用いられる基材(1)を、スキャナ等の読取装置で読み取り、その読み取り結果を一般的な画像形式(BMP、JPEG、TIFF、PNG、PDF、PSD、PDD等)としたデータであり、基材(1)の平面形状と同一形状の画像データである。本発明においては、基材(1)の一部に複数の周波数情報を埋め込む際、基材(1)上のどこの場所に周波数情報を埋め込んだのか、その位置を把握する必要があるため、第一領域(2)、第二領域(3)及び基材(1)は位置情報を有すことが必須となっている。そのため、基材(1)の平面と同一形状の画像データである基準領域データ(L’)を用いることで、基材(1)上のどこの位置へ各領域(2、3)を配置したのかを把握することが可能となる。
【0069】
なお、前述した偽造防止用シート(S)が、さらに、カムフラージュ画像(c)を有する構成では、画像データ取得部(110)において前述した各原画像データ(f1、f2)、各秘匿画像データ(g1、g2)及び基準領域データ(L’)と同様に、カムフラージュ画像データ(c’)の取得も行う。カムフラージュ画像データ(c’)とは、前述したカムフラージュ画像(c)の元となる原画像を、デジタルデータ化した画像データである。
【0070】
取得した、各原画像データ(f1、f2)と、各秘匿画像データ(g1、g2)は、前述した特許文献1と同様に同じ画素数とする。
【0071】
なお、st102とし、図9の配列並べ換え部(130)により、各秘匿画像データ(g1、g2)に配列の並べ換えを行ってもよい。
【0072】
配列並べ換え部(130)は、各秘匿画像データ(g1、g2)をそれぞれ垂直方向に二等分するとともに、水平方向に二等分した四つの部分配列のうち、右上の部分配列を左下の部分配列の位置に移動し、左下の部分配列を右上の部分配列の位置に移動し、左上の部分配列を右下の部分配列の位置に移動し、右下の部分配列を左上の部分配列の位置に移動し、四つの部分配列の並べ換えを行い、各秘匿画像データ(g1’、g2’)を生成する。
【0073】
配列の並べ換えを行う理由としては、画像をハートレー変換して生成した各実数配列(F1、F2)を表示する際、標準表示又は光学表示が用いられる。標準表示では、中心が高周波成分で周辺部が低周波成分となるように表示する。一方、光学表示では、中心部が低周波成分で周辺部が高周波成分となるように表示する。人間の目は、画像の低周波成分には敏感で見えやすく、高周波には鈍感で見えづらい特性がある。そのことから、中心部の見えやすい個所が低周波成分となる光学表示が一般的に用いられる。配列の並べ換えを行うことで、各実数配列(F1、F2)における、中心部が低周波成分で周辺部が高周波成分となり、光学表示に適した配列となる。
【0074】
なお、この配列の並べ換えを行わなければ本発明の効果がなくなるというものではなく、配列の並べ換えを行わなくとも、偽造防止用シート(S)を作製することは可能である。
【0075】
図12(a)は、図11(c)の第一秘匿画像データ(g1)の配列を並べ換えた第一秘匿画像データ(g1’)であり、図12(b)は、図11(d)の第二秘匿画像データ(g2)の配列を並べ換えた第二秘匿画像データ(g2’)を示す。
【0076】
次に、st103では、ハートレー変換部(120)において、各原画像データ(f1、f2)をハートレー変換して各実数配列(F1、F2)を生成する。
【0077】
図13(a)は、図11(a)に示した第一原画像データ(f1)をハートレー変換することで生成した第一実数配列(F1)であり、図13(b)は、図11(b)に示した第二原画像データ(f2)をハートレー変換することで生成した第二実数配列(F2)である。
【0078】
次に、st104では、実数配列生成部(140)において、各実数配列(F1、F2)と各秘匿画像データ(g1'、g2’)を、それぞれ合成し、各合成実数配列(H1、H2)を生成する。
【0079】
図14(a)は、図13(a)における第一実数配列(F1)の第一配列要素値F1(u,v)を示し、図14(c)は、図12(a)の第一秘匿画像データ(g1’)の配列要素値g1’(u,v)を示し、図14(b)は、図13(b)における第二実数配列(F2)の第二配列要素値F2(u,v)を示し、図14(d)は、図12(b)の第二秘匿画像データ(g2’)の配列要素値g2’(u,v)を示す。
【0080】
図15(a)は、図13(a)の第一実数配列(F1)の三次元表示であり、図15(b)は、第一実数配列(F1)における第一配列要素値F1(u,v)に実数α(α=16384.0)を加えた二次元配列の三次元表示であり、 図15(c)は、図13(b)の第二実数配列(F2)の三次元表示であり、図15(d)は、第二実数配列(F2)における第二配列要素値F2(u,v)に実数α(α=16384.0)を加えた二次元配列の三次元表示である。
【0081】
図16(a)は、図12(a)の第一秘匿画像データ(g1’)の三次元表示であり、図16(b)は、図15(b)と同じ図である第一配列要素値(F1(u,v)+α)の二次元配列を三次元表示したものであり、図16(c)は、図16(a)と図16(b)との積を求めた結果であり、第一配列要素値H1(u,v)、つまり{g1’(u,v)×(F1(u,v)+α)}の二次元配列である第一合成実数配列(H1)を三次元表示したものである。
【0082】
また、図16(d)は、図12(b)の第二秘匿画像データ(g2’)の三次元表示であり、図16(e)は、図15(d)と同じ図である第二配列要素値(F2(u,v)+α)の二次元配列を三次元表示したものであり、図16(f)は、図16(d)と図16(e)との積を求めた結果であり、第二配列要素値H2(u,v)、つまり{g2’(u,v)×(F2(u,v)+α)}の二次元配列である第二合成実数配列(H2)を三次元表示したものである。
【0083】
ここで、図14の各実数配列(F1、F2)の各配列要素値(F1(u,v)、F2(u,v))は、F1(u,v)、F2(u,v)≧0となる場合と、F1(u,v)、F2(u,v)<0となる場合がある。図9の実数配列生成部(140)では、F1(u,v)、F2(u,v)≧0とF1(u,v)、F2(u,v)<0のどちらの場合においても、H1(u,v)、H2(u,v)=((g1’(u,v)、g2’(u,v))×(F1(u,v)、F1(u,v))+α)となるように座標(u,v)ごとにH1(u,v)、H2(u,v)の値を算出し、各合成実数配列(H1、H2)を生成する方法と、(F1(u,v)、F2(u,v))≧0の場合は、H1(u,v)、H2(u,v)=((g1’(u,v)、g2’(u,v))×(F1(u,v)、F1(u,v))+α)となるように座標(u,v)ごとにH1(u,v)、H2(u,v)の値を算出し、F1(u,v)、F1(u,v)<0の場合は、H1(u,v)、H2(u,v)=((g1’(u,v)、g2’(u,v))×(F1(u,v)、F1(u,v))−α)となるように座標(u,v)ごとにH1(u,v)、H2(u,v)の値を算出し、各合成実数配列(H1、H2)を生成する方法のいずれかを選択することができる。
【0084】
ここで、各実数配列(F1、F2)の各配列要素値F(u,v)に実数α(α≧0)を加えたり、あるいは、F1(u,v)、F2(u,v)<0の場合に、F1(u,v)、F2(u,v)から実数α(α≧0)を差し引いたりする理由について説明する。
【0085】
図17(a)に、画素数が256×256で画素値が約128でほぼ一定の値を有する第一原画像データ(f1)の一例を示す。図17(b)は、図11と同じ第一秘匿画像データ(g1)であり、画素数が256×256である。
【0086】
図18(a)は、図17(a)の第一原画像データ(f1)と図17(b)の第一秘匿画像データ(g1)とを基にして生成した実数α=0.0の場合の第一ハートレー画像データ(2a’)であり、図18(b)は、図18(a)の第一ハートレー画像データ(2a’)を印刷した後、後述する偽造防止用シート(S)の真偽判別を行う、図27の真偽判別装置(300)における読取画像データ取得部(310)で読み込み、判別画像データ生成部(370)で生成した第一判別画像データ(Z1)である。
【0087】
図18(c)は、図17(a)の第一原画像データ(f1)と図17(b)の第一秘匿画像データ(g1)とを基にして生成した実数α=256.0の場合の第一ハートレー画像データ(2a’)であり、図18(d)は、図18(c)の第一ハートレー画像データ(2a’)を印刷した後、後述する偽造防止用シート(S)の真偽判別を行う、図27の真偽判別装置(300)における読取画像データ取得部(310)で読み込み、判別画像データ生成部(370)で生成した第一判別画像データ(Z1)である。
【0088】
図18(b)の第一判別画像データ(Z1)においては、図17(b)の第一秘匿画像データ(g1)のパターンが弱く現れ、図18(d)の第一判別画像データ(Z1)では、図17(b)の第一秘匿画像データ(g1)のパターンが強く現れている。
【0089】
以上のことから、各実数配列(F1、F2)の各配列要素値F(u,v)に実数α(α≧0)を加えたり、あるいは、F(u,v)<0の場合に、F(u,v)から実数α(α≧0)を差し引く理由は、各原画像データ(f1、f2)と各秘匿画像データ(g1、g2)とを基にして各ハートレー画像データ(2a’、3a’)を生成する際に、実数αの値を0以上の適切な値に設定して各実数配列(F1、F2)の各配列要素値F(u,v)に加えたり、あるいは、F1(u,v)、F2(u,v)<0の場合に、F1(u,v)、F2(u,v)から実数αを差し引くことによって、図27の判別画像データ生成部(370)で生成される各判別画像データ(Z1、Z2(図示せず))の画質を向上させることができるからである。
【0090】
なお、実数αの値を変更することで、各判別画像データ(Z1、Z2)の画質を変更することが可能だが、理想値としては、各ハートレー画像データ(2a’、3a’)のピクセルが256×256の場合、αの値を16384.0とすることが望ましく、各ハートレー画像データ(2a’、3a’)のピクセルを128×128とした場合、αの値は4096.0とすることが望ましく、さらには各ハートレー画像データ(2a’、3a’)のピクセルを64×64等の場合には、αの値は1024とすることが望ましい。このように、各ハートレー画像データ(2a’、3a’)の大きさに対応したα値を適宜設定することが必要である。
【0091】
次に、st105では、逆ハートレー変換部(150)において、各合成実数配列(H1、H2)を逆ハートレー変換し、各ハートレー画像データ(2a’、3a’)を生成する。
【0092】
図19(a)は、第一合成実数配列(H1)を逆ハートレー変換して生成した第一ハートレー画像データ(2a’)であり、図19(b)は、第二合成実数配列(H2)を逆ハートレー変換して生成した第二ハートレー画像データ(3a’)である。各ハートレー画像データ(2a’、3a’)は、画素数が256×256で、8ビットの階調を有する。
【0093】
次に、st106では、データ分割部(160)により生成した、各ハートレー画像データ(2a’、3a’)を、第一のピクセルに分割し、複数の第一領域データ(m)及び/又は複数の第二領域データ(n)を生成する。
【0094】
図20は、第一ハートレー画像データ(2a’)を第一のピクセルに分割する際の模式図である。図20(a)では、一例として第一ハートレー画像データ(2a’)を垂直方向において上下均等に2分割し、さらにその画像データを水平方向では左右均等に2分割することで4分割し、第一のピクセル(w×h)に分割する。第一のピクセルは前述のとおり、1ピクセル以上4096ピクセル未満である。
【0095】
図20(b)は、第一ハートレー画像データ(2a’)を第一のピクセルに分割したうちの一つを拡大した図である。つまり、本発明における一つの第一領域データ(m)を示す模式図である。第一領域データ(m)とは、前述した基材(1)上に形成される第一領域(2)の元となる画像データである。
【0096】
なお、複数の第一領域データ(m)を生成する際には、前述した4分割に限らず所望の数だけ分割することも可能である、また、均等ではなく、一つ一つの第一領域データ(m)が、それぞれ異なるピクセルでもよい。さらには、第一領域データ(m)の形状は、図20(b)に示すれ正方形に限らず、長方形、三角形等とすることも可能である。いずれの場合においても、本発明では、第一領域データ(m)が、第一のピクセルとなっていればよい。
【0097】
同様に、第二ハートレー画像データ(3a’)も、図9のデータ分割部(160)において第一のピクセルに分割し、複数の第二領域データ(n)を生成する。
【0098】
次に、st107では、位置情報付与部(170)により、複数の第一領域データ(m)及び/又は複数の第二領域データ(n)が、各ハートレー画像データ(2a’、3a’)におけるどこに位置していたかを示す固有の位置情報(i1、i2、i3)を付与する。
【0099】
図21は、第一領域データ(m)へ、固有の位置情報である第一位置情報(i1)を付与する模式図である。図21においては、第一ハートレー画像データ(2a’)を分割することで、複数の第一領域データ(m1、m2、m3、m4。以下、m1〜m4を示す時は「m」とする)を生成した。前述のとおり、第一位置情報(i1)とは、図19(a)に示す分割前の第一ハートレー画像データ(2a’)におけるどこに位置していたかを示す固有の位置情報である。
【0100】
図21(a)に示すように、第一領域データ(m1)では(0,0)の第一位置情報(i1)を有し、第一領域データ(m2)では、(0,1)の第一位置情報(i1)を有し、第一領域データ(m3)においては、(1,0)の第一位置情報(i1)を有し、さらに、第一領域データ(m4)では、(1,1)の第一位置情報(i1)を有する。このように、複数の第一領域データ(m)は、互いに異なる第一位置情報(i1)を有する。
【0101】
複数の第一領域データ(m)に付与した各第一位置情報(i1)は、全て、図9に示す記憶部(190)へ記憶される。記憶部(190)においては、図21(b)に示すように、第一位置情報リスト(I1)を作成し、HD、MO、コンパクトメモリ、メモリーカード等へデータベース形式により記憶させる。
【0102】
第一位置情報リスト(I1)とは、複数の第一領域データ(m)に付与した第一位置情報(i1)を一覧にしたリストのことである。同様に、複数の第二領域データ(n)においても、各々の領域データ(n)が、第二ハートレー画像データ(3a’)におけるどこに位置していたかを示す、固有の位置情報である第二位置情報(i2)を付与し、その第二位置情報(i2)を、図9に示す記憶部(190)へと記憶する。
【0103】
次に、st108では、図9の画像データ取得部(110)において、基材(1)の寸法(縦×横)を、デジタルデータ化した基準領域データ(L’)を取得する。
【0104】
図22(a)は、基準領域データ(L’)を示す模式図である。基材(1)における少なくとも一部とは、複数の各領域データ(m、n)を付与する箇所のことである。本発明においては、少なくとも複数の各領域データ(m、n)を付与する箇所のみが、後述する基準位置情報(i3)を有していればよい。そのことから、基準領域データ(L’)は、少なくとも一部の、複数の各領域データ(m、n)を付与する箇所を含む平面形状と同一形状の画像をデジタルデータ化した画像であればよい。
【0105】
基準領域データ(L’)は、複数の画素から形成される。後述する、st111において、基準領域データ(L’)、第一領域データ(m)及び第二領域データ(n)を合成することから、第一領域データ(m)及び第二領域データ(n)と同じ画素数である必要がある。なお、基準領域データ(L’)の取得方法については、前述した各原画像データ(f1、f2)の取得方法と同様であることから、省略する。
【0106】
次に、st109では、基準領域データ(L’)を、図9のデータ分割部(160)により、第一のピクセルに分割し、複数の分割基準領域データ(L)を生成する。
【0107】
図22(b)は、基準領域データ(L’)を第一のピクセルに分割する際の模式図である。後述する、st111において、基準領域データ(L’)、第一領域データ(m)及び第二領域データ(n)を合成する際に、一つの分割基準領域データ(L)へ、一つの第一領域データ(m)又は一つの第二領域データ(n)を、一つずつ配置する。一つの分割基準領域データ(L)が、各領域データ(m、n)よりも小さいピクセルである場合には、複数の分割基準領域データ(L)に対して一つの各領域データ(m、n)が配置される。それにより、一つの各領域データ(m、n)が有する固有の位置情報(i1、i2)に対して分割基準領域データ(L)が、複数の位置情報を有することになり、固有の位置情報を基に生成する真偽判別画像を生成することができなくなる。よって、一つの分割基準領域データ(L)の画素数は、前述した一つの第一領域データ(m)及び一つの第二領域データ(n)と同じ、第一のピクセルにする必要がある。
【0108】
図22(b)では、前述した各ハートレー画像データ(2a’、3a’)と同様に、垂直方向と水平方向において、均等に基準領域データ(L’)を分割することで、第一のピクセルに分割し、複数の分割基準領域データ(L)を生成する。
【0109】
図22(c)は、基準領域データ(L’)を、第一のピクセルに分割したうちの一つを拡大した図である。つまり、本発明における分割基準領域データ(L)を示す模式図である。第一領域データ(m)とは、第一領域(2)を基材(1)上へ付与する際の元となる画像データである。
【0110】
次に、st110では、複数の分割基準領域データ(L)が、各々、基準領域データ(L’)におけるどこに位置していたかを示す固有の位置情報を付与する。
【0111】
図23は、分割基準領域データ(L)へ、固有の位置情報である基準位置情報(i3)を付与する模式図である。図23(a)においては、基準領域データ(L’)を分割することで、複数の分割基準領域データ(L1、L2、・・・、L111、L112)を生成した。
【0112】
図23(a)に示すように、分割基準領域データ(L1)は(0,0)の基準位置情報(i3)を有し、分割基準領域データ(L2)は(0,1)の基準位置情報(i3)を有し、・・・、分割基準領域データ(L111)は(15,5)の基準位置情報(i3)を有し、さらに、分割基準領域データ(L112)は(15,6)の基準位置情報(i3)を有する。このように、複数の分割基準領域データ(L1、L2、・・・、L111、L112)は、互いに異なる基準位置情報(i3)を有する。
【0113】
複数の分割基準領域データ(L1、L2、・・・、L111、L112)に付与した各位置情報(i1、i2、i3)は、全て図9に示す記憶部(190)へ記憶される。記憶部(190)においては、図23(b)に示すように、基準位置情報リスト(I3)を作成し、HD、MO、メモリーカード等へデータベース形式により記憶させる。
【0114】
次に、st111では、固有の位置情報が付与された複数の第一領域データ(m)及び/又は複数の第二領域データ(n)を、基準位置情報(i3)が付与された複数の分割基準領域データ(L)へ、一つずつ配置して合成データ(p)を生成する。
【0115】
図24(a)は、複数の第一領域データ(m1、m2、m3、m4)であり、図24(b)は、複数の第二領域データ(n1、n2、n3、n4)であり、図24(c)は、複数の第一領域データ(m1、m2、m3、m4)及び複数の第二領域データ(n1、n2、n3、n4)を複数の分割基準領域データ(L)へ一つずつ配置することで生成された合成データ(p)である。
【0116】
前述のとおり、各領域データ(m、n)は、それぞれ、各ハートレー画像データ(2a’、3a’)を分割することで生成される。よって、各領域データ(m、n)は、その一つ一つが、各ハートレー画像データ(2a’、3a’)内において、異なる位置に配置していた領域であり、各々が異なる固有の位置情報(i1、i2)を有する。よって、一つの分割基準領域データ(L)へ、複数の各領域データ(m、n)を配置し、その合成データ(p)を基に作製した偽造防止用シート(S)から、各秘匿画像データ(g)を復元する際には、一つの分割基準領域データ(L)から複数の各領域データ(m、n)が検出される。それにより、各位置情報(i1、i2、i3)を基に復元する秘匿画像は、復元することができなくなる。
【0117】
図25は、合成データ(p)における、各位置情報(i1、i2、i3)を基に生成した合成データリスト(P)である。作製した合成データリスト(P)は、前述した各位置情報リスト(I1、I2、I3)と同様に、図9の記憶部(190)へ記憶させる、偽造防止用シート(S)から、各秘匿画像データ(g)を復元する際には、合成データリスト(P)を基に秘匿画像を復元して真偽判別を行う。
【0118】
なお、各領域データ(m、n)については、分割した全てを複数の分割基準領域データ(L)へ配置する必要はない。図26は、分割基準領域データ(L)へ配置する、各領域データ(m、n)を示す模式図である。本発明においては、図26(a)に示すように、図19において図示した各ハートレー画像データ(2a’、3a’)を分割することで生成した複数の各領域データ(m、n)は、一つの各領域データ(m、n)に対してハートレー変換を行っても、前述した各秘匿画像(2c、3c)が復元されない、第一のピクセル(w×h)とする必要があった。
【0119】
また、各領域データ(m、n)を基に作製した偽造防止用シート(S)を用いて秘匿画像を復元する際には、基材(1)上に配置した複数の各領域(2、3)を、固有の位置情報を基に、第一秘匿画像(2c)が復元可能なピクセルへと復元し、その復元データをハートレー変換することで、各秘匿画像(2c、3c)を復元している。よって、基材(1)上に配置した複数の各領域(2、3)のそれぞれの面積の総和は、各秘匿画像(2c、3c)が復元可能なピクセルとなる必要がある。各秘匿画像(2c、3c)が復元可能なピクセルとは、1024ピクセル以上である。1024ピクセル未満であれば、各秘匿画像(2c、3c)を復元することができない。
【0120】
よって、基材(1)上に配置する各領域(2、3)の元となる各領域データ(m、n)は、1024ピクセル以上あればよい。よって、図26(a)に示すように、例えば、第一ハートレー画像データ(2a’)が32×32ピクセルであるならば、四等分により生成した第一領域データ(m)は、全て配置する必要があるが、図26(b)に示すように、第一ハートレー画像データ(2a’)が48×48ピクセルであるならば、九等分により生成した第一領域データ(m)は、全て配置する必要はなく、第一秘匿画像(2c)が復元可能なピクセルである1024ピクセル以上となる、四つを適宜選択し配置することとする。
【0121】
最後に、st112では、出力部(200)から合成データ(p)を、印刷機、抄紙機等に送信したのち、紙、プラスチック、金属、布を含む所定の基材(1)の表面に施すことで、二つの秘匿画像(2c、3c)が潜像化された偽造防止用シート(S)を作製する。
【0122】
印刷機においては、合成データ(p)を、基材(1)上における所定の位置に、所定の解像度で出力することによって作製される。また、抄紙機においては、合成データ(p)を用いて、公知のすき入れ方法により、複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)を紙媒体等へ付与することで、偽造防止用シート(S)と成る。
【0123】
以上のように、本発明の偽造防止用シート(S)には、二つの秘匿画像(2c、3c)を、各々ハートレー変換を行うことが不可能なピクセルに分割したのち、固有の位置情報(i1、i2、i3)を有する複数の第一領域(2)及び複数の第二領域(3)として埋め込んでいる。よって、偽造防止用シート(S)に可視光又は赤外光を照射し、透過又は反射の読取画像データをハートレー変換しても、二つの秘匿画像(2c、3c)は復元されず、固有の位置情報(i1、i2、i3)を用いることで、初めて復元することが可能となる。よって、本発明の偽造防止用シート(S)は、従来よりも秘匿画像の秘匿性が向上したシートと成る。
【0124】
次に、図8では前述した複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)(図示せず)と少なくとも一部重畳するように、カムフラージュ画像(c)が付与された偽造防止用シート(S3)の作製方法を説明する。
【0125】
複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)と少なくとも一部重畳するように、カムフラージュ画像(c)を付与する場合においては、合成画像付与工程(st112)後に、カムフラージュ画像付与工程(st113)を設ける。
【0126】
st113は、複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)を少なくとも一部重畳するように、赤外透過特性を有するインキでカムフラージュ画像(c)を付与する工程である。まず、カムフラージュ画像(c)の元となる原画像データ(図示せず)を取得する。なお、原画像データの取得方法については、前述したst101と同様であることから、説明を省略する。
【0127】
次に、原画像データを、複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)を少なくとも一部重畳するように、印刷機を用いて、所定の解像度で、赤外透過特性を有するインキにより基材(1)上へ出力することで、偽造防止用シート(S3)と成る。
【0128】
次に、本発明の偽造防止用シート(S)の真偽判別装置を説明する。
【0129】
(真偽判別装置)
図27に示す真偽判別装置(300)は、読取画像データ取得部(310)と、データ分割部(320)と、位置情報読取部(330)と、検出画像データ生成部(340)と、ハートレー変換部(350)と、配列並べ換え部(360)と、判別画像データ生成部(370)と、真偽判別部(380)と、記憶部(390)とから構成されている。なお、図27に示す真偽判別装置(300)は、本出願人が先に出願している特許第4296314に記載された真偽判別装置に、本発明の偽造防止用シート(S)の真偽判別に必要な、データ分割部(320)、位置情報読取部(330)、検出画像データ生成部(340)及び判別画像データ生成部(370)を追加した構成としている。
【0130】
次に、図27に示した真偽判別装置(300)を用いて、本発明における二つの秘匿画像データが埋め込まれた偽造防止用シート(S2)の真偽判別方法について、図28に示すフローチャートに順じて説明する。
【0131】
st201では、図27の読取画像データ取得部(310)において、基材(1)上における、少なくとも複数の第一領域(2)及び複数の第二領域(3)が配置された箇所に、可視光又は赤外光を照射し、透過画像データ又は反射画像データである読取画像データ(t)を取得する。
【0132】
図29は、IRイメージスキャナ(EPSON社製「型番:ES−2200」)を用いて、図5の偽造防止用シート(S2)を300dpi、8ビットのグレースケール画像として読み取った読取画像データ(t)である。図29の読取画像データ(t)は、画素数が256×256の二次元配列であり、1画素当たり8ビットの階調を有する。
【0133】
読取画像データ(t)においては、図29に示す、偽造防止用シート(S2)の全体を示すデジタルデータに限らず、少なくとも複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)を含んでいればよい。なお、複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)の配置箇所を有している場合は、当該配置箇所のみを読み取り、読取画像データ(t)を取得する。
【0134】
なお、前述した図8に示すように、複数の第一領域(2)及び/又は複数の第二領域(3)(図示せず)と少なくとも一部重畳するように、カムフラージュ画像(c)が付与された偽造防止用シート(S3)を真偽判別する場合においては、読取画像データ取得工程(st201)と、後述するデータ分割工程(st203)との間に、カムフラージュ画像除去工程(st202)を設ける。
【0135】
カムフラージュ画像は、赤外透過特性を有するインキで作製された画像であることから、IRイメージスキャナで赤外透過光読取データ採取することにより、カムフラージュ画像の影響を受けずに、赤外透過した部分のみ読取データを採取することができる。
【0136】
次に、st203では、データ分割部(320)により、読取画像データ(t)を、第一のピクセルに分割し、複数の分割読取画像データ(T)を生成する。
【0137】
図30は、複数の分割読取画像データ(T)を示す図である。なお、読取画像データ(t)を、第一のピクセルに分割する方法については、前述した図20に示す第一ハートレー画像データ(2a’)を、第一のピクセルに分割する方法と同様であることから、説明を省略する。
【0138】
次に、st204では、位置情報読取部(330)により、複数の分割読取画像データ(T)に、あらかじめ付与された、各位置情報(i3、i1、i2)を読み取る。
【0139】
まず、はじめに、基準点(0,0)を読み取る。基準点とは、偽造防止用シート(S2)を作製する際に設定した基準点のことである。次に、基準点から、複数の分割読取画像データ(T)への距離を基に、複数の分割読取画像データ(T)に付与された基準位置情報(i3)を、それぞれ読み出す。次に、読み出した基準位置情報(i3)を用いて、あらかじめ作製した図25に示す合成データリスト(P)から、第一位置情報(i1)又は第二位置情報(i2)を読み出す。
【0140】
合成データリスト(P)から、分割読取画像データ(T1)においては、(0,0)の基準位置情報(i3)であり、かつ、(0,1)の第二位置情報(i2)が埋め込まれていることが分かる。また、合成データリスト(P)に記載されていない、分割読取画像データ(T2)においては、(0,1)の基準位置情報(i3)であり、第一位置情報(i1)及び第二位置情報(i2)は、埋め込まれていないことが分かる。
【0141】
次に、st205では、検出画像データ生成部(340)により、基準位置情報(i3)と、第一位置情報(i1)及び第二位置情報(i2)を基に、第二のピクセルである第一検出画像データ(W1)及び第二検出画像データ(W2)を生成する。
【0142】
図31は、一例として第一検出画像データ(W1)を生成する手順を示す模式図である。図31(a)に示すように、複数の分割読取画像データ(T)から、第一位置情報(i1)が埋め込まれた、分割読取画像データ(T)を、あらかじめ作製した図25に示す合成データリスト(P)を基に抽出する。次に、第一位置情報(i1)に基づき、第一検出画像データ(W1)を生成する。例えば、分割読取画像データ(T20)は、第一位置情報(i1)が(1,0)である。そのことから、偽造防止用シート(S2)作製時において、第一ハートレー画像データ(2a’)を、前述のとおり、二行―二列に四分割した際の、基準点(0,0)から一列目であり、かつ、二行目に位置することがわかる。
【0143】
また、他の分割読取画像データ(T)においても、第一位置情報(i1)を読み取り、それを基に、各分割読取画像データ(T)から図31(c)に示す第一検出画像データ(W1)を生成する。第一検出画像データ(W1)は、第二のピクセル(w×h)である。
【0144】
第二のピクセルとは、生成した第一検出画像データ(W1)に対してハートレー変換を行った場合に、第一秘匿画像(2c)を復元することが可能な大きさのことである。第一位置情報(i1)を基に、第二のピクセルであり第一検出画像データ(W1)を生成することで、初めて第一秘匿画像(2c)を復元することが可能となる。よって、従来よりも、秘匿性が向上した偽造防止用シート(S3)を提供することが可能となる。
【0145】
第二のピクセルは、1024ピクセル以上とする。1024ピクセル以上とすることで、第一検出画像データ(W1)に対して後述する工程において、ハートレー変換を行った場合に、偽造防止用シート(S2)の真偽判別を行う為に必要な、第一判別画像データ(Z1)を生成することが可能となる。1024ピクセル未満とした場合には、第一秘匿画像データ(g1)を、ハートレー変換した場合に、偽造防止用シート(S2)が真正品であっても、第一秘匿画像(2c)を復元することができない。よって、第二のピクセルは、1024ピクセルとする。
【0146】
第二のピクセルは第一秘匿画像(2c)のデータ量により前述した1024ピクセル以上の範囲内で変化する。データ量が多いとき、つまり第一秘匿画像(2c)のパターンが複雑な場合に、第二のピクセルを1024ピクセルとすると、第一秘匿画像(2c)は一部が欠ける、不鮮明な画像となる等の真偽判別することができない画像として復元される。よって、パターンが複雑な場合には4096ピクセル以上の大きさとする必要がある。一方データ量が少ないとき、例えば図2において第一秘匿画像(2c)は四つのドットから成る画像であるが、二つのドットから成る画像である場合には、データ量が少なくなる。その場合には第二のピクセルは小さいピクセルであっても、第一秘匿画像(2c)を復元することが可能となる。よって、データ量が少ない場合には、第二のピクセルは小さいピクセル(例えば1024ピクセル)とする必要がある。以下、本発明における第二のピクセルとは同じ大きさのピクセルであることから、説明を省略する。
【0147】
同様に、第二位置情報(i2)を基に、第二のピクセルである、第二検出画像データ(W2)を生成する。
【0148】
次に、st207では、第一検出画像データ(W1)及び第二検出画像データ(W2)を、それぞれハートレー変換して第一判別画像データ(Z1)及び第二判別画像データ(Z2)を生成する。
【0149】
一例として、第一検出画像データ(W1)から、第一判別画像データ(Z1)を生成する方法について説明する。まず、前述した第一検出画像データ(W1)を、ハートレー変換部(350)により、ハートレー変換し、二次元の第一実数データ配列(J1)に変換する。ハートレー変換の方法は、前述したst103で述べた方法と同様である。ここで、第一検出画像データ(W1)をハートレー変換して二次元の第一実数データ配列(J1)に変換する理由は、二次元の第一実数データ配列(J1)に対して後述する一連の処理を施すことにより、潜像化された第一秘匿画像(2c)のパターンを、第一判別画像データ(Z1)において得るためである。
【0150】
なお、st206では、図9の配列並べ換え部(130)で述べた方法に基づいて、配列並べ換え部(360)により、各二次元の実数データ配列(J1、J2)の配列並べ換えを行い、二次元の実数データ配列(J'1、J’2)を生成してもよい。
【0151】
次に、各二次元の実数データ配列(J'1、J’2)における画素ごとの実数データの振幅を求めるため、画素ごとの実数データの絶対値を求める。
【0152】
次に、ルックアップテーブル変換等の階調変換を行うため、二次元の実数データ配列(J'1、J’2)における画素ごとの実数データの絶対値の小数を切り捨て、又は、切り上げ、又は四捨五入し、各二次元の整数データ配列(E1、E2)を生成する。
【0153】
次に、後述するst209で行う真偽判別に適した階調を有する各判別画像データ(Z1、Z2)を生成するために、各二次元の整数データ配列(E1、E2)に所定の階調変換を行う。階調変換の一例としては、例えば、二次元の第一整数データ配列(E1)における画素ごとの整数データが、符号なし32ビット整数の場合、この符号なし32ビット整数を符号なし8ビット整数に変換するルックアップテーブルを用いて、画素ごとの整数データの階調を32ビットから8ビットに変換してもよい。
【0154】
図32は、二進数で表した符号なし32ビット整数における所定のビット位置と所定のビット幅の一例を示す図である。階調変換の別の例としては、二次元の第一整数データ配列(E1)における画素ごとの整数データが、符号なし32ビット整数の場合、符号なし32ビット整数を二進数で表し、下位ビットの2ビット目から上位ビットの32ビット目の間で、第一判別画像データ(Z1)に、秘匿画像データ(g1)のパターンを得るのに適したビット位置を選択し、このビット位置を起点として所定のビット幅、例えばビット幅が8ビットの二進数データを抽出して画素ごとの整数データの階調を32ビットから8ビットに変換してもよい。
【0155】
図33は、各判別画像データ(Z1、Z2)の一例であり第一判別画像データ(Z1)を示す。図33の例は、図33(a)に示す第一検出画像データ(W1)をハートレー変換し、図33(b)に示す二次元の第一実数データ配列(J1)を生成し、この二次元の第一実数データ配列(J1)の配列並べ換えを行い、図33(c)に示す二次元の第一実数データ配列(J'1)を生成する。
【0156】
次に、判別画像データ生成部(370)により、二次元の第一実数データ配列(J'1)における画素ごとの実数データの絶対値の小数を四捨五入し、画素ごとの整数データが符号なし32ビット整数となる二次元の第一整数データ配列を生成し、二次元の第一整数データ配列における画素ごとの符号なし32ビット整数を二進数で表し、この二進数の下位から15ビット目のビット位置を起点として下位方向にビット幅が8ビットの二進数データを抽出し、画素ごとの整数データの階調を32ビットから8ビットに変換する。
【0157】
さらに、この各画素が8ビットの階調を有する二次元の第一整数データ配列(E1)に1/4乗補正のルックアップテーブル変換を行い、コントラストを改善することで、図11(c)の第一秘匿画像データ(g1)のパターンを、目視可能な画像パターンとして図33(d)に示す第一判別画像データ(Z1)を得たものである。
【0158】
次にst208では、図27の真偽判別部(380)において、各判別画像データ(Z1、Z2)との比較、照合を行うため、図27の記憶部(390)から各秘匿画像データ(g1、g2)の読み出しを行う。
【0159】
次に、st209では、真偽判別部(380)により、偽造防止用シート(S2)が真正なシートか否かを判別するために、各判別画像データ(Z1、Z2)と、あらかじめ記憶されている各秘匿画像データ(g1、g2)とを比較及び照合し、真偽判別を行う。
【0160】
ここで、各判別画像データ(Z1、Z2)と、各秘匿画像データ(g1、g2)の類似度が、あらかじめ定めた類似度以上となるときに、偽造防止用シート(S2)を真正なシートとして判別し、st210で、真偽判別結果を出力する。
【0161】
機械による真偽判別方法としては、例えば正規化相関等のパターンマッチング手法を用いて、各判別画像データ(Z1、Z2)と各秘匿画像データ(g1、g2)との類似度を、それぞれ数値化し、この類似度があらかじめ定めた類似度以上となるときに、偽造防止用シート(S2)を、真正なシートとして判別する。また、目視による真偽判別方法としては、例えば人間が目視できるように各判別画像データ(Z1、Z2)と各秘匿画像データ(g1、g2)の両方を、出力物、ディスプレイ等に画像表示し、両者を目視によって比較及び照合して真偽判別を行う。
【符号の説明】
【0162】
1 基材
2 第一領域
m 第一領域データ
2a 第一ハートレー画像
2a’ 第一ハートレー画像データ
2b 第一原画像
2c 第一秘匿画像
3 第二領域
n 第二領域データ
3a 第二ハートレー画像
3a’ 第二ハートレー画像データ
3b 第二原画像
3c 第二秘匿画像
i1 第一位置情報
i2 第二位置情報
i3 基準位置情報
c カムフラージュ画像
c’ カムフラージュ画像データ
S1、S2、S3 偽造防止用シート
100 偽造防止用シート作製装置
110 画像データ取得部
120 ハートレー変換部
130 配列並べ換え部
140 実数配列生成部
150 逆ハートレー変換部
160 データ分割部
170 位置情報付与部
180 データ合成部
190 記憶部
200 出力部
210 制御部
300 真偽判別装置
310 読取画像データ取得部
320 データ分割部
330 位置情報読取部
340 検出画像データ生成部
350 ハートレー変換部
360 配列並べ換え部
370 判別画像データ生成部
380 真偽判別部
390 記憶部
f1 第一原画像データ
f2 第二原画像データ
g1 第一秘匿画像データ
g1’ 配列並べ換え後の第一秘匿画像データ
g2 第二秘匿画像データ
g2’ 配列並べ換え後の第二秘匿画像データ
H 第一合成実数配列
H’ 第二合成実数配列
L’ 基準領域データ
L 分割基準領域データ
t 読取画像データ
T 分割読取画像データ
p 合成データ
F1 第一実数配列
F2 第二実数配列
W1 第一検出画像データ
W2 第二検出画像データ
Z1 第一判別画像データ
Z2 第二判別画像データ
E1 二次元の第一整数データ配列
E2 二次元の第二整数データ配列
J1 二次元の第一実数データ配列
J’1 配列並び替え後の二次元の第一実数データ配列
J2 二次元の第二実数データ配列
J’2 配列並び替え後の二次元の第二実数データ配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像データと秘匿画像データとを取得する画像データ取得工程と、
前記原画像データにハートレー変換を行い二次元の実数配列を生成する工程と、
前記二次元の実数配列と前記秘匿画像データとを合成して合成実数配列を生成する工程と、
前記合成実数配列に逆ハートレー変換を行いハートレー画像データを生成する工程とを少なくとも有する偽造防止用シートの作製方法であって、
前記ハートレー画像データ生成後に、前記ハートレー画像データをハートレー変換により前記秘匿画像データを復元することが不可能な大きさに分割して複数の第一領域データを生成する工程と、
前記複数の第一領域データに対して、前記ハートレー画像データのどこに位置していたかを示す固有の位置情報である第一位置情報を付与する工程と、
基材を読取装置で読み取り、その読み取った画像を画像データとした基準領域データを取得する工程と、
前記基準領域データに基準点を付与し、前記基準点を付与した基準領域データを前記第一領域データと同じ大きさに分割して複数の分割基準領域データを生成する工程と、
前記複数の分割基準領域データに対して、前記基準領域データのどこに位置していたかを示す固有の位置情報である基準位置情報を付与する工程と、
前記第一位置情報を付与した前記複数の第一領域データと、前記基準位置情報を付与した前記複数の分割基準領域データを基に合成したハートレー画像データを生成する工程と、
前記第一位置情報及び前記基準位置情報が付与されたハートレー画像データを前記基材に所定の方法により施すことを特徴とする偽造防止用シートの作製方法。
【請求項2】
前記秘匿画像データを復元することが不可能な大きさは、1ピクセル以上4096ピクセル未満であることを特徴とする請求項1記載の偽造防止用シートの作製方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の作製方法で得られた偽造防止用シートの真偽判別方法であって、
前記基材における、少なくとも前記基準点及び前記複数の第一領域が配置された箇所に可視光又は赤外光を照射し、透過又は反射の読取画像データを取得する工程と、
前記読取画像データを、前記基準点を基に前記第一領域データと同じ大きさに分割して複数の分割読取画像データを生成する工程と、
前記位置情報リストを基に、前記複数の分割読取画像データにあらかじめ付与した基準位置情報及び第一位置情報を読み取る工程と、
前記複数の分割読取画像データから読み取った前記基準位置情報及び前記第一位置情報を基に、前記複数の分割読取画像データをハートレー変換することで前記秘匿画像データを復元することが可能な大きさの検出画像データを生成する工程と、
前記検出画像データをハートレー変換して判別画像データを生成する、判別画像データ生成工程と、
前記判別画像データと、あらかじめ取得した秘匿画像データとを比較及び照合し、真偽判別を行う工程から成ることを特徴とする、偽造防止用シートの真偽判別方法。
【請求項4】
前記秘匿画像データを復元することが可能な大きさは、1024ピクセル以上であること特徴とする請求項3記載の偽造防止用シートの真偽判別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公開番号】特開2013−26948(P2013−26948A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161690(P2011−161690)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】