説明

偽造防止用フィルム

【課題】複写した偽造品と容易に区別することができ、皺になりにくく、かつ、印刷の密着性に優れる偽造防止用フィルムを提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂を含有する基材層(A)の片面に偽造防止処理が施されており、該偽造防止処理が施されている面の上に、熱可塑性樹脂を含有する表面層(B)が形成されており、前記偽造防止処理が前記基材層(A)の片面に溶融熱転写、電子写真方式またはインクジェットによる印刷を行った後に延伸処理することによりなされていることを特徴とする偽造防止用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止および改ざん防止が要求される銀行券、手形、小切手、トラベラーズチェック、有価証券、カード類などに用いることができる偽造防止用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
現代社会には、銀行券、小切手、有価証券、カード類といった偽造や複製が禁じられている書面やカードが多数出回っている。これらの偽造や複製は、単に法律により禁止するだけではなく、技術的に不可能にすることが、社会秩序を維持するために必要とされている。しかしながら、近年では複写技術や複製技術が目覚ましい進歩を遂げていることから、偽造品や複写物が作製される危険性は年々高まりつつある。現に偽造犯罪は最近になって増えつつあり、その技術もより精巧になっている。
【0003】
そこで、偽造や複製を防止するための技術がこれまでにも種々開発されている。
例えば、外観で偽造を見破るようにする技術がある。具体的には、印刷物内に蛍光発色物質を存在させる技術;磁性インキを用いて印刷し、磁気作用によるインキの濃度の変化を視覚的に検知できるようにする技術(特許文献1);フォトクロミックの感光色素を含む印刷インキを用いて印刷する技術(特許文献2);特定の反射分光特性を持つインキや、反射率に所定値以上の差がある2種以上のインキを用いて印刷する技術;一定の角度から見たときに色が変わって見える印刷物(特許文献3);すかし模様(潜像)を施した印刷物(特許文献4および特許文献5)などがある。
【0004】
また、複写すると文字、図柄の判読が困難になるような細工を施した印刷物、あるいは警告マークが複写紙上に現れるようにしたものも開発されている(特許文献6)。
さらに、複写物を判別機にかけたときにエラーが出るように、特殊な磁性インキを用いて印刷した印刷物;複写物の印刷の網点の粗密差が原本(真券)と異なるように複写されるような印刷を施したもの(特許文献7および特許文献8;肉眼では判読できない文字を印字し、隠蔽文字が判別機で読み取れるようにしたもの(特許文献9)もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−177919号公報
【特許文献2】特開昭60−79992号公報
【特許文献3】特開平5−177919号公報
【特許文献4】特公平4−18078号公報
【特許文献5】実開昭58−168457号公報
【特許文献6】実開昭59−64271号公報
【特許文献7】特公昭56−19273号公報
【特許文献8】特公平2−51742号公報)
【特許文献9】特開昭62−130874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように様々な偽造防止策が開発されているが、これらの原本は写真製版的に複製できるものが多く、完全な偽造防止策とはなり難い。また、特に真券のように使用しているうちに皺になり、判別機にかけたときに「使用不可」と判定されて戻されるものも多い。
これらの従来技術の問題点を考慮して、本発明は、複写した偽造品と容易に区別することができ、皺になりにくく、かつ、印刷の密着性に優れる偽造防止用フィルムを提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂を含む基材層に偽造防止処理を施して、その上に熱可塑性樹脂を含む層を積層することにより、所期の効果を示す偽造防止用フィルムを提供しうることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂を含有する基材層(A)の片面に偽造防止処理が施されており、該偽造防止処理が施されている面の上に、熱可塑性樹脂を含有する表面層(B)が形成されていることを特徴とする偽造防止用フィルムを提供する。
本発明の偽造防止用フィルムは、基材層(A)の裏面に裏面層(C)が形成されていることが好ましく、特に基材層(A)の両面に偽造防止処理が施されており、各面の上に表面層(B)と裏面層(C)がそれぞれ形成されていることが好ましい。また、偽造防止処理は、基材層(A)の表面に施されたエンボス加工または印刷であることが好ましい。基材層(A)は複層構造を有していてもよい。また、本発明の偽造防止用フィルムは不透明度が1〜60%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の偽造防止用フィルムを複写すると、識別模様の明度またはコントラストが変化するために、複写物と真正物を容易に区別することが可能である。また、本発明の偽造防止用フィルムは、皺になりにくく、かつ、印刷適性、透かしに優れているために、紙幣、証券、秘密文書等に好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の偽造防止用フィルムについて詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を意味する。
本発明の偽造防止用フィルムは、偽造防止処理が施された基材層(A)の上に表面層(B)が形成された構造を有し、さらに裏面層(C)を有することが好ましい。そこで、本発明の偽造防止用フィルムを構成する各層について順に説明し、さらにその製法や適用について説明する。
【0010】
基材層(A)
本発明の偽造防止用フィルムを構成する基材層(A)は、少なくとも熱可塑性樹脂を含む層である。
基材層(A)に用いられる熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいはプロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。更にポリオレフィン系樹脂の中でも、コスト面、耐水性、耐薬品性の面からプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレンを用いることがより好ましい。
かかるプロピレン系樹脂としては、アイソタクティックないしはシンジオタクティックおよび種々の程度の立体規則性を示すプロピレン単独重合体(ポリプロピレン)、プロピレンを主成分とし、これと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン,4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体を好ましく使用することができる。これらの共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体であってもよい。
【0011】
基材層(A)には、熱可塑性樹脂の他に、無機微細粉末および/または有機フィラーを配合することが好ましい。
無機微細粉末としては、平均粒径が通常0.01〜15μm、好ましくは0.01〜8μm、更に好ましくは0.03〜4μmのものを使用することができる。具体的には、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナなどを使用することができる。
有機フィラーとしては、分散後の平均粒径が通常0.01〜15μm、好ましくは0.01〜8μm、更に好ましくは0.03〜4μmのものを使用することができる。有機フィラーとしては、主成分である熱可塑性樹脂とは異なる種類の樹脂を選択することが好ましい。例えば熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である場合には、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6,ナイロン−6,6、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等で融点が120℃〜300℃、ないしはガラス転移温度が120℃〜280℃であるものを用いるいことが好ましい。
【0012】
基材層(A)には、更に必要により、安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤、蛍光増白剤、着色剤等を配合してもよい。
安定剤としては、例えば立体障害フェノール系やリン系、アミン系等の安定剤を0.001〜1重量%配合することができる。光安定剤としては、例えば立体障害アミンやベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤を0.001〜1重量%配合することができる。無機微細粉末の分散剤としては、例えばシランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等を0.01〜4重量%配合することができる。蛍光増白剤としては、例えばイミダゾール型、イミダゾロン型、トリアゾール型、チアゾール型、オキサゾール型、オキサジアゾール型、クマリン型、カルボスチリル型、チアジアゾール型、ナフタルイミド型、ピラゾロン型等、具体的には2.5−ビス[5−t−ブチルベンゾオキザゾリル(2)]チオフェン、ジシクロヘキシルフタレート、4−メトキシナフタル酸−N−メチルイミド、ジアミノスチルベンジルスルホン酸誘導体、ジアミノスチルベン誘導体等を0.001〜1重量%配合することができる。着色剤としては、各種顔料で着色されたカラーペレットを5〜30重量%配合することができる。
【0013】
本発明の偽造防止用フィルムを構成する基材層(A)は、単層構造を有していても、2層以上の複層構造を有していてもよい。また、基材層(A)または基材層(A)を構成する層の一部は、少なくとも一軸方向に延伸されていてもよい。
基材層(A)が層(A1)、層(A2)、層(A3)の3層構造[A1/A2/A3]を有する場合、(A1+A3)の厚みは1μm以上であり、(A1+A3)とA2の厚みの比は1:40〜1:10であることが好ましい。基材層(A)の厚みは25〜100μmであることが好ましく、30〜75μmであることがより好ましく、40〜60μmであることが特に好ましい。
【0014】
表面層(B)および裏面層(C)
本発明の偽造防止用フィルムを構成する基材層(A)の片面には、表面層(B)が形成されている。また、基材層(A)の反対側の面には、裏面層(C)が形成されていることが好ましい。
これらの表面層(B)および裏面層(C)は、いずれも熱可塑性樹脂を含有する。また、表面層(B)および裏面層(C)には、無機微細粉末および/または有機フィラーを好ましく配合することができる。表面層(B)および裏面層(C)に用いられる熱可塑性樹脂、無機微細粉末、有機フィラーとしては、基材層(A)に用いられるものと同じものを使用することができる。さらに、表面層(B)および裏面層(C)には、上記安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤、蛍光増白剤、着色剤等を配合してもよい。
表面層(B)および裏面層(C)はそれぞれ単層構造を有していても、2層以上の複層構造を有していてもよい。また、表面層(B)および裏面層(C)を構成する層の一部は、少なくとも一軸方向に延伸されていてもよい。表面層(B)および裏面層(C)の厚さは、それぞれ5〜50μmであることが好ましく、10〜40μmであることがより好ましい。
【0015】
本発明の偽造防止用フィルムは、基材層(A)の各面に表面層(B)と裏面層(C)がそれぞれ形成されている構造を有することが好ましい。特に、基材層(A)がポリオレフィン系樹脂40〜99.5重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー60〜0.5重量%を含有し、表面層(B)と裏面層(C)がポリオレフィン系樹脂25〜100重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー75〜0重量%を含有する偽造防止用フィルムが好ましい。さらに、基材層(A)がポリオレフィン系樹脂50〜97重量%、無機微細粉末および/または有機フィラー50〜3重量%を含有し、表面層(B)と裏面層(C)がポリオレフィン系樹脂30〜97重量%、無機微細粉末70〜3重量%を含有する偽造防止用フィルムがより好ましい。
【0016】
基材層(A)に含まれる無機微細粉末および/または有機フィラーが60重量%を超えると、縦延伸後に行う横延伸時に延伸樹脂フィルムが破断し易くなる傾向がある。また、表面層(B)および裏面層(C)に含まれる無機微細粉末および/または有機フィラーが75重量%を超えると、横延伸後の表面層(B)の表面強度が低く、使用時の機械的衝撃等により表面層(B)が破壊しやすくなる傾向がある。
本発明の偽造防止用フィルムを構成する基材層(A)と表面層(B)の間、基材層(A)と裏面層(C)の間、表面層(B)の上、裏面層(C)の上には、それぞれ他の層を設けてもよい。
【0017】
偽造防止処理
本発明の偽造防止用フィルムを構成する基材層(A)の片面または両面には、偽造防止処理が施されている。偽造防止処理は、基材層(A)の表面に直接処理を行うものであってもよいし、基材層(A)の上に偽造防止処理を施された層を形成するものであってもよい。好ましいのは、基材層(A)の表面にエンボス加工または、印刷を施す態様である。
【0018】
エンボス加工の方法としては、例えば、平版プレス機、ロールエンボス機等公知の各種プレス、エンボス機を用い、熱、圧力によりエンボス版の凹凸形状を賦形する方法を挙げることができる。上記ロールエンボス法は円筒状のエンボス版の凹凸形状を対象材料に熱圧で賦形する方法である。具体的には、例えば、基材層(A)が押出機に接続された単層または多層のTダイやIダイを使用して溶融状態でフィルム状に押し出され、次いで冷却ロールにて冷却されフィルム成形される際に、フィルム表面にエンボスロールを押圧して賦形した後、冷却して形状を固定する方法を例示することができる。また、第1層(A)の冷却後でも、加熱ロールで押印賦形可能である。
この際エンボスロールの凸部が接触したフィルム部分は、延伸時に白化する。また、冷却フィルム上に、霧吹きなどを用い、噴霧状の水を吹き付けることにより水滴のついたフィルム部分が急激に冷却され延伸時に白化する。
【0019】
偽造防止処理のために行う印刷としては、溶融熱転写、電子写真方式、インクジェットなど種々の印刷方式が適用できる。特に、溶融熱転写方式に用いられているワックス、レジンタイプインキによる印刷を行う場合、まずインキ密着の弱いフィルムに画像を転写し、このフィルムの印字面の裏面から加熱ロールなどを利用して未延伸フィルムに熱圧着することにより画像転写が可能である。したがって、この方法によれば成形ラインに印刷装置を設置しなくてもよい。
印刷による偽造防止処理は、基材層(A)を延伸する前の未延伸状態のときに行うことが好ましい。基材層(A)を一軸延伸する場合は縦延伸前、二軸延伸する場合は縦延伸前または横延伸前に印刷を実施する。
【0020】
本明細書でいう偽造防止処理には、基材層(A)と表面層(B)の間、基材層(A)と裏面層(C)の間に、偽造防止処理が施された層を挟みこむ態様も含まれる。偽造防止処理が施された層としては、例えば印刷された層を挙げることができる。このような偽造防止処理が施された層は、例えば基材層(A)の延伸後に積層して、さらにその上に表面層(B)または裏面層(C)を形成することにより挟みこむことができる。例えば、一軸延伸した表面層(B)/二軸延伸した基材層(A)/一軸延伸した裏面層(C)からなる偽造防止用フィルムを調製するときは、(A)層の縦延伸後であって、(B)層を溶融ラミネーションする直前に、あらかじめ印刷してあるフィルム(D)を挿入し、(B)/(D)/(A)/(D)/(B)あるいは、(B)/(D)/(A)/(B)積層体とし偽造防止用フィルムとすることができる。
【0021】
印刷済フィルム(D)は無延伸フィルム、一軸延伸フィルム、二軸延伸フィルム、またはこれらの積層体であってもよいが、後工程の横延伸応力上昇を抑える意味から一軸延伸フィルムがより好ましい。また、印刷方法としては、電子写真方式、溶融熱転写、リライタブルマーキング、およびインクジェットプリンターの使用は勿論のこと、凸版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、溶剤型オフセット印刷、紫外線硬化型オフセット印刷、オフセット、フレキソ、グラビア、スクリーン、インクジェット、電子写真、溶融熱転写など種々印刷方式が適用できる。これらの印刷画像は、その後工程での延伸倍率を考慮し、1/(延伸倍率)倍に縮小された画像であることが好ましい。
【0022】
本発明の偽造防止用フィルムには、更に偽造防止のために加熱刻印することも可能である。本発明の偽造防止フィルムの不透明度が1〜60%と低ければ、加熱刻印を行ったときにその加工部の加圧部はより不透明度が低くなり、半透明または透明になる。加熱刻印時の加圧部以外は元の半透明のままであるので、太陽光、蛍光灯などの光源に透かした場合、鮮明な刻印が得られ偽造か否か一見して判断できる。ただし、完全な透明フィルムでは、不鮮明な刻印となり一見して偽造か否か判断しにくくなる傾向がある。また、不透明フィルムの場合、熱刻印加工適性は良好であるが、複写機を用いての偽造が容易になる傾向がある。したがって、不透明度が上記の範囲内にあるフィルムに加熱刻印した本発明の偽造防止用フィルムは特に好ましい。
【0023】
また、無機微細粉末及び/又は有機フィラーを多量に含む場合、常温にて刻印加圧すれば、加熱刻印時とは逆にフィルム内に含まれるポイドがつぶれて加圧部は不透明になり、加圧部以外は元の半透明なままになる。このため、鮮明な刻印が得られ偽造か否か一見して判断できる。
これらの加熱または常温での刻印加工は、上記のような偽造防止効果があるだけでなく、目の不自由な人にも、指先の感覚だけで容易に紙幣等の種類が判断可能であり有用である。
【0024】
本発明の偽造防止用フィルムには、上記の偽造防止処理方法の1つを選択して施してもよいし、2つ以上を選択して組み合わせて施してもよい。1つを選択して施せば、より安価に高度な偽造防止効果を持たせることができる。また、2つ以上を選択して組み合わせて施せば、より偽造防止効果を高めることができる。
【0025】
偽造防止用フィルムの製造と加工
本発明の偽造防止用フィルムは、当業者に公知の種々の方法を組み合わせることによって製造することができる。いかなる方法により製造された偽造防止用フィルムであっても、請求項1に記載される条件を満たすものである限り本発明の範囲内に包含される。
典型的な製造方法として、偽造防止用フィルムを構成する層を成形した後に延伸する方法を挙げることができる。
成形方法は特に限定されず、公知の種々の方法が使用できる。具体的には、スクリュー型押出機に接続された単層または多層のTダイやIダイを使用して溶融樹脂をフィルム状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形、熱可塑性樹脂と有機溶媒やオイルとの混合物のキャスト成形またはカレンダー成形後の溶剤やオイルの除去、熱可塑性樹脂の溶液からの成形と溶媒除去などによって成形することができる。
【0026】
延伸方法も特に限定されず、公知の種々の方法を使用することができる。延伸の具体的な方法としては、ロール群の周速差を利用したロール間延伸、テンターオーブンを利用したクリップ延伸などを挙げることができる。より具体的には、ロール群の周速差を利用した縦延伸、テンターオーブンを使用した横延伸、圧延、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸などを用いることができる。各層の延伸は一軸延伸であっても、二軸以上の延伸であってもよい。例えば、表面層(B)/基材層(A)/裏面層(C)の3層構造からなるフィルムを作製するときには、各層の延伸軸数を、一軸/二軸/一軸、一軸/一軸/一軸、二軸/二軸/二軸等のように、任意に組み合わせることができる。
【0027】
延伸倍率は特に限定されず、目的と使用する熱可塑性樹脂の特性により適宜選択される。例えば、熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体ないしその共重合体を使用するとき、一軸延伸する場合は約1.2〜12倍が好ましく、2〜10倍がより好ましく、二軸延伸する場合は面積倍率で1.5〜60倍が好ましく、10〜50倍がより好ましい。その他の熱可塑性樹脂を使用する時には一軸延伸する場合は1.2〜10倍が好ましく、2〜5倍がより好ましく、二軸延伸する場合は面積倍率で1.5〜20倍が好ましく、4〜12倍がより好ましい。更に、必要に応じて高温での熱処理を施すことができる。
【0028】
延伸は、非結晶樹脂を用いる場合はガラス転移温度以上、結晶性樹脂の場合には非結晶部分のガラス転移温度以上から結晶部の融点以下の好適な公知の温度範囲で行うことができる。一般に、延伸は、使用する熱可塑性樹脂の融点より2〜60℃低い温度で行うことが好ましい。熱可塑性樹脂としてプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)を用いるときは152〜164℃、高密度ポリエチレン(融点121〜134℃)を用いるときは110〜120℃、ポリエチレンテレフタレート(融点246〜252℃)を用いるときは104〜115℃で延伸することが好ましい。
また、延伸速度は20〜350m/分にすることが好ましい。
【0029】
本発明の偽造防止用フィルムを構成する各層の延伸と積層の順序は特に制限されない。例えば、基材層(A)および表面層(B)を別々に延伸した後に積層することによって製造してもよいし、基材層(A)および表面層(B)を積層した後にまとめて延伸することによって製造してもよい。裏面層(C)を有する場合は、3層を別々に延伸してから積層してもよいし、先に積層してからまとめて延伸してもよいし、あるいは基材層(A)および裏面層(C)を積層して延伸した後に、延伸または未延伸の表面層(B)を積層することによって製造したものであってもよい。これらの方法は適宜組み合わせることもできる。
好ましい製造方法は、複数の層を積層した後にまとめて延伸する工程を含むものである。別個に延伸して積層する場合に比べると簡便でありコストも安くなる。
【0030】
層中に無機微細粉末および/または有機フィラーを含有する場合、延伸することによってフィルム表面に微細な亀裂が生じ、フィルム内部には微細な空孔が生じる。延伸後の本発明の偽造防止用フィルムは、空孔率が1〜20%であることが好ましく、2〜10%であることがより好ましい。20%を超えると不透明度が高くなりすぎて偽造防止用フィルムとして適さなくなる傾向がある。
【0031】
空孔率は以下の式により算出される。
【式1】
【0032】

式(1)のρ0は延伸フィルムの真密度を表わし、ρは延伸フィルムの密度(JIS P−8118)を表す。延伸前の材料が多量の空気を含有するものでない限り、真密度は延伸前の密度にほぼ等しい。
【0033】
本発明の偽造防止用フィルムの最外層を構成する熱可塑性樹脂層の帯電防止および各種印刷適性向上のために、積層構造の成形後に表面処理を行って表面改質を行うことが好ましい。表面処理の方法としては、表面酸化処理と表面処理剤による処理の組み合わせを挙げることができる。
表面酸化処理としては、フィルムに一般的に使用されるコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理などを単独または組み合わせて行うことができる。これらのうちで好ましいのはコロナ処理、フレーム処理である。コロナ処理の処理量は、600〜12,000J/m2(10〜200W・分/m2)であることが好ましく、1,200〜9,000J/m2(20〜180W・分/m2)であることがより好ましい。フレーム処理の場合は、8,000〜200,000J/m2であることが好ましく、20,000〜100,000J/m2であることがより好ましい。
【0034】
表面処理剤としては、主として下記のプライマー、帯電防止性ポリマーより選ばれたもので、単独あるいは2成分以上の混合物を挙げることができる。ドライラミネート時の密着性向上と帯電防止の観点から、表面処理剤として好ましいものはプライマーないしはプライマーと帯電防止性ポリマーとの組み合わせである。
【0035】
表面処理剤を構成するプライマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、炭素数1〜12のアルキル変性ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)およびポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物およびポリアミンポリアミドのエピクロルヒドリン付加物等のポリエチレンイミン系重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸アミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、ポリアクリルアミドの誘導体、オキサゾリン基含有アクリル酸エステル系重合体、ポリアクリル酸エステル等のアクリル酸エステル系重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂;またポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリプロピレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体等の水分散性樹脂等が用いられる。
【0036】
これらの内で好ましくは、ポリエチレンイミン系重合体およびウレタン樹脂、ポリアクリル酸エステル等であり、より好ましくはポリエチレンイミン系重合体であり、更に好ましくは重合度が20〜3,000のポリエチレンイミン、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加体、ないしはこれらが炭素数1〜24のハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、ハロゲン化シクロアルキル、ハロゲン化ベンジル基によって変性された変性ポリエチレンイミンである。
【0037】
表面処理剤を構成する帯電防止ポリマーとしてはカチオン系ポリマー、アニオン系ポリマー、両性系ポリマーが挙げられる。カチオン系ポリマーとしては、四級アンモニウム塩構造やホスホニウム塩構造を有するポリマー、窒素含有アクリル系ポリマー、四級アンモニウム塩構造の窒素を有するアクリル系ないしはメタクリル系ポリマーが挙げられる。両性系ポリマーとしては、ベタイン構造の窒素を有するアクリル系ないしはメタクリル系ポリマーが挙げられる。またカチオン系ポリマーとしては、スチレン−無水マレイン酸共重合体ないしはそのアルカリ金属塩、エチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩ないしはエチレン−メタクリル酸共重合体のアルカリ金属塩などが挙げられる。特に好ましいのは、四級アンモニウム塩構造の窒素を有するアクリル系ないしはメタクリル系ポリマーである。
帯電防止ポリマーの分子量は、重合温度、重合開始剤の種類および量、溶剤使用量、連鎖移動剤等の重合条件により任意のレベルとすることができる。得られる重合体の分子量は一般に1,000〜1,000,000であるが、中でも1,000〜500,000の範囲が好ましい。
【0038】
本発明に用いる表面処理剤は、必要に応じて架橋剤、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩等を含むものであってもよい。
表面処理剤に架橋剤を添加することにより、さらに塗膜強度や耐水性を向上させることができる。架橋剤としては、グリシジルエーテル、グリシジルエステル等のエポキシ系化合物、エポキシ樹脂、イソシアネート系、オキサゾリン系、ホルマリン系、ヒドラジド系等の水分散型樹脂が挙げられる。架橋剤の添加量は、通常、上記の表面改質剤の溶媒を除いた有効成分100重量部に対して100重量部以下の範囲である。
【0039】
表面処理剤に用いるアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩として、水溶性の無機塩、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、亜硫酸ナトリウム、その他のアルカリ性塩、および塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、トリポリ燐酸ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウム、アンモニウム明礬等が挙げられる。添加量は、通常、上記の表面改質剤の溶媒を除いた有効成分100重量部に対して50重量部以下である。
さらに、表面改質剤には、界面活性剤、消泡剤、水溶性或いは水分散性の微粉末物質その他の助剤を含ませることもできる。これらの任意成分の量は、通常、上記の表面改質剤の溶媒を除いた有効成分100重量部に対して20重量部以下である。
【0040】
これらの表面処理剤の各成分は、水或いはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の親水性溶剤に溶解させてから用いることができる。中でも水溶液の形態で用いるのが典型的である。溶液濃度は通常0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%程度である。
塗工方法はロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーター、リバースコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター等により行われ、必要によりスムージングを行ったり、乾燥工程を経て、余分な水や親水性溶剤が除去される。
塗工量は乾燥後の固形分として0.005〜5g/m2、好ましくは0.01〜2g/m2である。
表面処理のタイミングは、縦または横延伸の前後のいずれであってもよい。また、表面処理剤は一段の塗工でも多段の塗工でも構わない。
【0041】
これらの表面処理を行った後には、必要に応じて表面に筆記性付与層、印刷品質向上層、熱転写受容層、感熱記録層、インクジェット受容層などを表面処理剤に用い得る塗工方法と同様の方法で設けることができる。
【0042】
また、この様にして得られた本発明の偽造防止用フィルムには、表面層(B)や裏面層(C)の表面に記録層を設けることができる。この記録層には、電子写真方式、昇華熱転写、溶融熱転写、ダイレクトサーマル、リライタブルマーキング、およびインクジェットプリンターを用いた印刷は勿論のこと、凸版印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、溶剤型オフセット印刷、紫外線硬化型オフセット印刷、フィルムの形態でもロールの形態の輪転方式の印刷を施すことができる。
【0043】
本発明の偽造防止用フィルムの適用
本発明の偽造防止用フィルムの物性は、その使用目的や使用環境等に応じて適宜調節することができる。
本発明の偽造防止用フィルムの不透明度(JIS P8138)は、1〜60%であることが好ましく、5〜55%であることがより好ましく、15〜50%であることが特に好ましい。不透明度が60%を超えると、基材層(A)に対して行うエンボス加工による白化縞や印刷が明瞭に見えず、偽造防止性が低下する傾向がある。
また、本発明の偽造防止用フィルムの白色度(JIS L1015)は、60〜100%であることが好ましく、70〜100%であることがより好ましい。白色度がこの範囲を外れると、表面層(B)、裏面層(C)に印刷される文字や画像が不鮮明になって識別が困難になり、また、外観も好ましくなくなる傾向がある。
さらに、本発明の偽造防止用フィルムの厚さは、50〜200μmであることが好ましく、60〜150μmであることがより好ましく、80〜120μmであることが特に好ましい。厚さが50μm未満では強度が不十分で耐久性に劣り、200μmを超えると例えば銀行券(紙幣)としては腰がありすぎて取り扱いにくくなる傾向がある。
これらの物性は、周知の方法を適宜組み合わせることによって調整することができる。
【0044】
本発明の偽造防止用フィルムは、基材層(A)に偽造防止処理が施されているために、複写すると複写物であることが簡単にわかるという利点がある。
例えば、エンボス加工による偽造防止を施した本発明の偽造防止用フィルムを用いて作製した真券を、銀塩写真紙、熱転写画像受容紙、ポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルム等よりなるOHPシート等を用いての複写すると、複写機のコピー押さえ蓋がアルミニウム板製である場合は、真券の半透明部分が複写物では青黒く印刷される。このため、真券と複写物の半透明部分を目視で比較すれば、両者を容易に区別することができる。また、複写機のコピー押さえ蓋が白色のプラスチック板、布地、または白ボール紙である場合は、真券の透かし部にある基材模様が、コピー紙上では紙の色だけになって消失し、コピーしたOHPフィルム上では透明になって消失してしまう。このため、真券と複写物のすかし部分を目視で比較して基材模様の有無を確認すれば、容易に両者を区別することができる。
【0045】
また、印刷による偽造防止を施した本発明の偽造防止用フィルムを用いて作製した真券を複写した場合は、真券の印刷部の複写画像のコントラストが大幅に変わるため、画像が不鮮明になり、濃度も低くなる。このため、真券と複写物の画像の鮮明度を目視で比較することにより、両者を容易に区別することができる。
なお、本発明の偽造防止用フィルムの偽造防止効果を確実に発揮させるために、記録層などへの印刷が施されていない部分(すかし部分)を意図的に設けておくことが好ましい。
【0046】
本発明の偽造防止用フィルムは、偽造防止が必要とされるものに幅広く適用することができる。例えば、銀行券、手形、小切手、トラベラーズチェック、宝くじ、商品券、株券、その他の有価証券、各種カード類、入場券、切符、身分証明書、運転免許証、住民票、戸籍謄本、印鑑証明書、パスポート、ビザ、預金証書、質権設定書などに適用することができる。特に、本発明の偽造防止用フィルムを用いて紙幣を製造した場合は、外観は従来の単なる紙幣に見えて、違和感を与えない。また、耐水性、耐久性にも優れており、多様な用途に供することが可能である。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0048】
<実施例1>
メルトフローレート(MFR)4g/10分のプロピレン単独重合体87重量部に対し、平均粒径3μmの重質炭酸カルシウム3重量部、MFRが10g/10分の高密度ポリエチレン10重量部、プロピレン単独重合体と重質炭酸カルシウムの合計量100重量部に対して3−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール0.05重量部とフェノール系安定剤(チバガイキー社製、商品名イルガノックス1010)0.08重量部、リン系安定剤(ジー・イー・プラスチック社製、商品名ウエストン618)0.05重量部を配合し、組成物(A)とした。この組成物(A)を250℃に設定した押出機にて混練した後、230℃に設定した押出機に接続したTダイより鏡面状キャストロールに押し出し、裏面を冷却装置にて冷却しながら、100℃に加熱された深さ0.5mmのエンボスロールにてヘリンボーン柄のエンボス加工を行って無延伸フィルムを得た。このフィルムを160℃に加熱して、周速の異なるロール群からなる縦延伸機で縦方向に4.6倍延伸した。
【0049】
一方、上記組成物(A)と同じ配合組成の組成物(B)と組成物(C)を240℃に設定した押出機で溶融混練し、上記で得た組成物(A)の延伸フィルムの両面にそれぞれ押し出しラミネートすることにより、3層積層物(B/A/C)を得た。
【0050】
得られた3層積層物をテンターオーブンにて160℃に加熱した後、横方向に9倍延伸した。ついで、テンターオーブンに続いた熱セットゾーン(設定温度165℃)を通過させた。
このフィルムの両面に、印加エネルギー密度90W・分/m2にてコロナ放電処理を行い、両面に、ブチル変性ポリエチレンイミン、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、および第4級アンモニウム塩構造を有するアクリル酸アルキルエステル系重合体の等量混合物を含む水溶液を、ロールコーターを用いて、乾燥後の塗工量が片面あたり約0.1g/m2となるように塗工し、乾燥した。得られた3層積層フィルムの各層の厚さ(B/A/C)は、25μm/50μm/25μmであった。
得られた偽造防止用フィルムは、基材層(A)と表面層(B)の間、および基材層(A)と裏面層(C)の間にエンボス加工に由来する規則正しいパターンの白化縞を有していた。また、偽造防止用フィルムの不透明度、白色度、空孔率は表1に示すとおりであった。
【0051】
得られたフィルムの両面に、大日本インキ化学工業(株)のオフセット印刷インキPOP・K墨、POP・K藍、POP・K紅、POP・K黄を用いて図柄を印刷した。この際、透かし部が残るように20mm円の未印刷部分を残した。
カラー複写機(富士ゼロックス社製、Docu Color 1250)を用いて、上記偽造防止用フィルムをコピー原紙としてカラーコピーした。コピー被写体として、パルプ紙、ポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムよりなるOHPフィルムを用い、すかし部の白化縞がコピーされるかどうかを以下の基準で評価し、結果を表1に示した。
○:すかし部の不定形の白化縞がコピーされない。被写体にパルプ紙を
用いた場合はすかし部が白色のままに、OHPフィルムの場合はす
かし部が透明のままになる。
×:すかし部の不定形の白化縞がコピーされる。
【0052】
また、上記偽造防止用フィルムをコピー被写体としてカラーコピー機によりコピー原紙への複写を試みた。その結果、転写ロールの熱により、上記偽造防止用フィルムの通紙は困難(通紙不可)であり、カラーコピーは不可能であることが確認された。
【0053】
<実施例2>
実施例1と同様に組成物(A)を250℃に設定した押出機にて混練した後、230℃に設定した押出機に接続したTダイより鏡面状キャストロールに押し出し、裏面を冷却装置にて冷却して無延伸フィルムを得た。このフィルムを160℃の温度に加熱し、縦延伸直前のロール近傍に設置した装置にて水を噴霧し、周速の異なるロールで縦方向に4.2倍延伸した。以下、実施例1と同様の操作を行い、厚さ90μmの3層積層フィルムを得た。得られた3層積層フィルムの各層の厚さ(B/A/C)は、20μm/50μm/20μmであった。 得られた偽造防止用フィルムは,基材層(A)と表面層(B)の間、および基材層(A)と裏面層(C)の間に不定形の白化縞を有していた。また、偽造防止用フィルムの不透明度、白色度、空孔率は表1に示すとおりであった。
実施例1と同様の偽造防止性評価を行った結果を表1に示す。
【0054】
<実施例3>
実施例1と同じ組成物(A)と、MFRが4g/10分、融点が137℃(DSCピーク温度)のエチレン・プロピレン共重合体(b)、MFRが4g/10分、密度が0.91g/cm3、融点が110℃(DSCピーク温度)のメタロセン・ポリエチレン(c)を230℃に設定した押出機に接続したTダイより共押し出しし、(b)/(A)/(c)の3層積層物を得た。この積層物を155℃に加熱して、周速の異なるロール群からなる縦延伸機で縦方向に4.6倍延伸した後、ロール状に巻き取った。このようにして厚み50μm、不透明度20%の一軸延伸フィルム(D)を得た。このロール状フィルム(D)の(b)面側に、TEC社製オンサイトカラープリンタCB−418−T1にて、延伸方向に対し垂直方向に1/9倍縮小された画像を印字した。
【0055】
一方、これとは別に、実施例1と同様に組成物(A)を250℃に設定した押出機にて混練した後、230℃に設定した押出機に接続したTダイより鏡面状キャストロールに押し出し、裏面を冷却装置にて冷却して無延伸フィルムを得た。このフィルムを155℃に加熱して、周速の異なるロール群からなる縦延伸機で縦方向に4.6倍延伸して、組成物(A)の縦延伸フィルムを得た。
【0056】
上記で得た一軸延伸フィルム(D)の(c)面側が組成物(A)の縦延伸フィルムに接するように重ね合わせ(一軸延伸フィルム(D)をロールから巻き出し供給する)、得られた2層積層物(D/A)の両面に、実施例1と同じ配合組成の組成物(B)と組成物(C)を240℃に設定した押出機で押し出し、4層積層物(B/D/A/C)を得た。
【0057】
得られた4層積層物をテンターオーブンにて160℃に加熱した後、横方向に9倍延伸した。ついで、テンターオーブンに続いた熱セットゾーン(設定温度165℃)を通過させて、厚さ110μmの4層積層フィルムを得た。4層積層フィルムの各層の厚さ(B/D/A/C)は、25μm/5μm/55μm/25μmであった。得られたフィルムは基材層(A)と表面層(B)の間に印刷した偽造防止層(D)を有していた。また、偽造防止用フィルムの不透明度、白色度、空孔率は表1に示すとおりであった。
【0058】
実施例3で得られたフィルムに対して、実施例1と同様の偽造防止性評価試験を行った。ただし、すかし部の白化縞がコピーされるかどうかを以下の基準で評価した。結果を表1に示した。
○:すかし部の内部印刷部が不鮮明になり、コピー原紙と異なる。
×:すかし部の内部印刷部が鮮明であり、コピー原紙と見分けがつか
ない。
【0059】
また、上記偽造防止用フィルムをコピー被写体としてカラーコピー機によりコピー原紙への複写を試みた。その結果、転写ロールの熱により、上記偽造防止用フィルムの通紙は困難(通紙不可)であり、カラーコピーは不可能であることが確認された。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含有する基材層(A)の片面に偽造防止処理が施されており、該偽造防止処理が施されている面の上に、熱可塑性樹脂を含有する表面層(B)が形成されており、前記偽造防止処理が前記基材層(A)の片面に溶融熱転写、電子写真方式またはインクジェットによる印刷を行った後に延伸処理することによりなされていることを特徴とする偽造防止用フィルム。
【請求項2】
前記基材層(A)の裏面に裏面層(C)が形成されていることを特徴とする請求項1の偽造防止用フィルム。
【請求項3】
前記基材層(A)の両面に偽造防止処理が施されており、該偽造防止処理が施されている各面の上に表面層(B)と裏面層(C)がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項2の偽造防止用フィルム。
【請求項4】
前記基材層(A)がポリオレフィン系樹脂50〜97重量%と、無機微細粉末および/または有機フィラー50〜3重量%を含有し、前記表面層(B)と前記裏面層(C)がポリオレフィン系樹脂30〜97重量%と、無機微細粉末70〜3重量%を含有することを特徴とする請求項2または3の偽造防止用フィルム。
【請求項5】
基材層(A)が複層構造を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の偽造防止用フィルム。
【請求項6】
不透明度が1〜60%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の偽造防止用フィルム。

【公開番号】特開2012−991(P2012−991A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154326(P2011−154326)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【分割の表示】特願2001−283040(P2001−283040)の分割
【原出願日】平成13年9月18日(2001.9.18)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】