説明

偽造防止用樹脂粒子の製造方法、偽造防止用インクの製造方法、偽造防止用シートの製造方法

【課題】犠牲層を用いずに、タガント粒子として用いられる偽造防止用樹脂粒子を製造する。
【解決手段】拡大して観察されることで識別可能である偽造防止用樹脂粒子の製造方法において、基材上のネガ型感光性樹脂層を露光し、前記ネガ型感光性樹脂層内に所定パターンの潜像を形成する露光工程と、前記ネガ型感光性樹脂層を現像して未露光部分を除去し、前記潜像に対応する形状の、前記ネガ型感光性樹脂層の露光部分を、樹脂粒子として前記基材から剥離する剥離工程と、を具備することを特徴とする偽造防止用樹脂粒子の製造方法である。前記露光工程において、前記潜像が、前記基材と接触していないことを特徴とする。また、前記露光工程において、階調マスクを用いて露光することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、会員証などのカード類、紙幣、株券、商品券、宝くじ券、手形、小切手、入場券などの有価証券・金券類、各種証明書、高額商品の下げ札などに付与し、いわゆるタガントとして用いられる偽造防止用の粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有価証券類など、偽造を防止することが必要とされる物品において、タガント(taggant、なお、タゲント(taggent)とも呼ばれる)と呼ばれる偽造防止用の添加物が用いられてきた。タガントとしては、高度に偽造が困難であること、真贋判定を容易にかつ迅速に実施できること、安価であることが求められている。
【0003】
このようなタガント粒子として、光学的な拡大装置を用いて観察可能に構成され、かつ模様化がなされた微小マーカーが開示されている。この微小マーカーは、集積回路の技術分野におけるリソグラフィーの手法によって形成されたものであるか、または他のマイクロ・マシニングの技術分野の手法によって形成されたものであって、図形、ロゴ、個人的な署名、日付、言葉等の、そのデザインの内容に基づき情報をもったものとして認識されるように構成されたものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−230512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のタガント粒子の製造方法としては、基材と構造層(タガント粒子)との間に犠牲層を設け、所定の溶液に浸漬させて犠牲層を溶解し、構造層を基材から剥離させることで、製造されており、犠牲層が必要であった。犠牲層とは、最終的に除去することを前提に形成した層であり、部分的に膜を形成したり、あるいは二つの膜を分離したりする場合によく用いられる。この犠牲層があると、タガント粒子が犠牲層から剥離しない場合もある上、使い捨ての犠牲層の分の原材料費や、犠牲層の形成工程があることによる製造工程数増加による製品コストの増加があるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、犠牲層を用いずに、タガント粒子として用いられる偽造防止用樹脂粒子を製造することである。
【0007】
前述した目的を達成するために、以下の発明を提供する。
(1)拡大して観察されることで識別可能である偽造防止用樹脂粒子の製造方法において、基材上のネガ型感光性樹脂層を露光し、前記ネガ型感光性樹脂層内に所定パターンの潜像を形成する露光工程と、前記ネガ型感光性樹脂層を現像して未露光部分を除去し、前記潜像に対応する形状の、前記ネガ型感光性樹脂層の露光部分を、樹脂粒子として前記基材から剥離する剥離工程とを具備することを特徴とする偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
(2)前記露光工程において、前記潜像が、前記基材と接触していないことを特徴とする(1)に記載の偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
(3)前記露光工程において、階調マスクを用いて露光することを特徴とする(1)または(2)に記載の偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
(4)前記露光工程において、デジタルマイクロミラーデバイスを用いて露光することを特徴とする(1)または(2)に記載の偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
(5)前記ネガ型感光性樹脂層の厚さが1μm以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
(6)前記樹脂粒子のサイズが10〜300μmであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
(7)前記ネガ型感光性樹脂が、着色用の顔料を含むことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
(8)拡大して観察されることで識別可能である樹脂粒子を含有する偽造防止用インクの製造方法において、基材上のネガ型感光性樹脂層を露光し、前記ネガ型感光性樹脂層内に所定パターンの潜像を形成する露光工程と、前記ネガ型感光性樹脂層を現像して未露光部分を除去し、前記潜像に対応する形状の、前記ネガ型感光性樹脂層の露光部分を、樹脂粒子として前記基材から剥離する剥離工程と、前記樹脂粒子を分散媒に分散する分散工程と、を具備することを特徴とする偽造防止用インクの製造方法。
(9)拡大して観察されることで識別可能である樹脂粒子を含有する偽造防止用シートの製造方法において、基材上のネガ型感光性樹脂層を露光し、前記ネガ型感光性樹脂層内に所定パターンの潜像を形成する露光工程と、前記ネガ型感光性樹脂層を現像して未露光部分を除去し、前記潜像に対応する形状の、前記ネガ型感光性樹脂層の露光部分を、樹脂粒子として前記基材から剥離する剥離工程と、前記樹脂粒子を樹脂に分散する分散工程と、前記樹脂を硬化させる硬化工程と、を具備することを特徴とする偽造防止用シートの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、犠牲層を用いずに、タガント粒子として用いられる偽造防止用樹脂粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(a)、(b)本発明にかかる粒子1a、1bを示す斜視図。
【図2】(a)〜(d)本発明にかかる粒子1aの製造方法を示す概略断面図。
【図3】(a)〜(d)本発明にかかる粒子1bの製造方法を示す概略断面図。
【図4】(a)本発明にかかる有価証券31を示す平面図、(b)(a)でのA−A’断面を示す断面図。
【図5】(a)本発明にかかるカード41を示す平面図、(b)(a)でのB−B’断面を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
(粒子1aの構成)
図1(a)、(b)は、本発明にかかる粒子1a、1bを示す図である。図1(a)に示す粒子1aは、樹脂製の樹脂粒子であり、平板状の基体5に三次元状の文字である識別部3aが施されており、基体5の輪郭と識別部3aが、拡大して観察されることで識別可能である。すなわち、基体5の輪郭や基体5に施された形状、模様もしくは色彩等の意匠を拡大して観察されることで識別可能である。図1(a)では、円板状の基体5の上に立体的な文字が形成されているが、基体の形状は、円板に限られるものではなく、楕円形や多角形、星型など、様々な形状が使用できる。また、基体5上に設けられる識別部3aとしては、文字以外にも、様々な数字、記号、図形のほか、立体的な花やデザインなどを施すことができる。また、識別部3aの立体的な構造は、立体的に観察されるために、深さが1μm以上であることが好ましい。
【0012】
なお、形状が識別可能であるとは、人為的な形状が形成されており、意図せずに自然に形成される形状から区別できることを意味する。そのため、粒子1aを付与した物品を偽造する場合、物品の外形等の複製ができても、粒子1aの複製までは困難であるので、真正の物品と偽造された物品とを判別できる。また、真正の物品同士でも、付与する粒子1aを互いに識別できるようにすることで、製造時期や用途などを判別可能である。
【0013】
粒子を構成する樹脂としては、特に限定されないが、後述する製造方法で製造するために、ネガ型感光性樹脂から構成されることが好ましい。
【0014】
ネガ型感光性樹脂は特に限定されることはなく、一般的に使用されるネガ型感光性樹脂を用いることができる。例えば、架橋型樹脂をベースとした化学増幅型感光性樹脂、具体的にはポリビニルフェノールに架橋剤を加え、さらに酸発生剤を加えた化学増幅型感光性樹脂等が挙げられる。また、アクリル系ネガ型感光性樹脂として、紫外線照射によりラジカル成分を発生する光重合開始剤と、分子内にアクリル基を有し、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する成分と、その後の現像により未露光部が溶解可能となる官能基、例えば、アルカリ溶液による現像の場合は酸性基をもつ成分とを含有するものを用いることができる。上記のアクリル基を有する成分のうち、比較的低分子量の多官能アクリル分子としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、テトラメチルペンタトリアクリレート(TMPTA)等が挙げられる。また、高分子量の多官能アクリル分子としては、スチレン‐アクリル酸‐ベンジルメタクリレート共重合体の一部のカルボン酸基部分にエポキシ基を介してアクリル基を導入したポリマーや、メタクリル酸メチル‐スチレン‐アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0015】
また、ネガ型感光性樹脂に、着色用の顔料を含むことで、着色した粒子1aを得ることができ、意匠性及び、偽造防止効果が向上する。
【0016】
粒子1aの厚さ、すなわち、本発明においては、基体5のみの厚さではなく、識別部3aの厚さも含む厚さは、2μm以上であることが好ましく、25μm以下であることが好ましい。厚さが薄すぎると、強度が保てず、取り扱いの際に粒子が破損しやすいうえ、粒子に形成された三次元構造が、立体的に観察されない。一方、厚さが厚すぎると、製造時の感光性樹脂の厚膜の形成が困難になるほか、樹脂や分散媒への分散性が悪く、取り扱い時に不便である。
【0017】
粒子1aのサイズは、10〜300μmであることが好ましい。小さすぎると、ルーペなどの簡易な拡大器具を使用して粒子を観察することができず、顕微鏡などのより複雑な装置を使用しないと、真贋判定ができなくなる。また、大きすぎると、拡大器具を使用せずとも肉眼により粒子の特徴を認識可能となり、偽造防止効果が低下する。ここで、サイズとは、粒子を平面視した際の、最長の長さであり、例えば形状が四角形であればその対角線の長さであり、形状が楕円であればその長軸の長さである。
また、図1での「(公序良俗違反につき、不掲載)」の文字は、裸眼では認識できず、ルーペなどを用いて認識できる程度の大きさである。
【0018】
(粒子1aの効果)
本発明の粒子1aは、肉眼では粒子1aの特徴が把握できず、ルーペなどの装置で初めて特徴を把握できるため、付与した物品に偽造防止技術が施されていることが容易にはわからない。そのため、粒子1aは、目視で確認できる偽造防止技術と比べて、より高い偽造防止効果を発揮することができる。
【0019】
本発明の粒子1aは、製造がより困難な三次元形状を有するため、偽造防止効果が向上する。
【0020】
(粒子1aの用途)
粒子1aを水溶性バインダーなどの分散媒に分散すると、偽造防止用インクが得られる。このような偽造防止用インクを用いて、シルク・スクリーン印刷などで印刷することで簡便に物品に粒子を付与することができる。
【0021】
粒子1aを紫外線硬化型樹脂などに分散し、乾燥または硬化することで、偽造防止用シートが得られる。例えば、粒子が分散した透明な紫外線硬化型樹脂をフィルムなどの物品上に塗布し、紫外線を照射し、硬化させることで、物品に、粒子が付与された透明なシートを形成することができる。また、粒子1aを、押出成型機や射出成型機中にてPVC、PP、ABS、AES、PS等と混合させ、押出成型や射出成型をすることで、粒子が含まれた樹脂成型品が得られる。その結果、粒子が付与され、偽造防止技術が盛り込まれたシート、カード等の各種樹脂成型品が得られる。
【0022】
また、有価証券またはカードに、粒子を含むインクで印刷することや、粒子が含まれたシートを貼付するか、塗布により形成することで、粒子が付与された有価証券、カードが得られる。例えば、図4に示すように、有価証券31は、帯状の粒子含有部33を形成する。粒子含有部33は、粒子を含むインクを帯状に印刷して形成することや、粒子が含まれた帯状のシートを貼付するか、塗布により形成することで得られる。また、図5に示すように、カード41は、斑状の粒子含有部43を形成する。粒子含有部43は、粒子を含むインクを斑状に印刷して形成することや、粒子が含まれた斑状のシートを貼付するか、塗布により形成することで得られる。なお、ATMなどの機械で取り扱いやすくするため、粒子含有部43が、カードの面より飛び出さないように、カード41の凹部に形成されている。なお、有価証券には、紙幣、株券、商品券、宝くじ券、手形、小切手、入場券が含まれ、カードには、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、会員証が含まれる。
【0023】
(粒子1bの構成)
図1(b)に示す粒子1bは、樹脂からなる粒子であり、略平板状であるが、輪郭及び貫通部の形状が、拡大して観察されることで識別可能である。図1(b)では、円板状の基体5に貫通部からなる識別部3bが形成されているが、基体の形状も円板に限られるものではなく、楕円形や多角形、ハート型、星型、動物の外形、文字の外形、数字の外形、記号の外形、図形の外形など、様々な形状を採用できる。また、基体5に設けられる識別部3bとしては、文字以外にも、様々な数字、記号、図形などを施すことができる。
【0024】
また、粒子1bを構成するネガ型感光性樹脂としては、粒子1aに使用したネガ型感光性樹脂と同様の樹脂を使用できる。また、粒子1aと同様に、着色用の顔料を加えて、着色した粒子1bを得ることができる。
【0025】
粒子1bの厚さは、1μm以上であることが好ましく、25μm以下であることが好ましい。厚さが薄すぎると、強度が保てず、取り扱いの際に粒子が破損しやすくなる。一方、厚さが厚すぎると、製造時の感光性樹脂の厚膜の形成が困難になるほか、樹脂や分散媒への分散性が悪く、取り扱い時に不便である。
【0026】
粒子1bのサイズは、10〜300μmであることが好ましい。小さすぎると、ルーペなどの簡易な拡大器具を使用して粒子を観察することができず、顕微鏡などのより複雑な装置を使用しないと、真贋判定ができなくなる。また、大きすぎると、拡大器具を使用せずとも肉眼により粒子の特徴を認識可能となり、偽造防止効果が低下する。
【0027】
(粒子1bの効果)
本発明の粒子1bは、肉眼では粒子1bの特徴が把握できず、ルーペなどの装置で初めて特徴を把握できるため、付与した物品に偽造防止技術が施されていることが容易にはわからない。そのため、粒子1bは、目視で確認できる偽造防止技術と比べて、より高い偽造防止効果を発揮することができる。また、粒子1bは、粒子1aと同様の用途に使用することができる。
【0028】
(粒子1aの製造方法)
次に、立体的な識別部3aを有する粒子1aの製造方法について説明する。
図2(a)は、露光工程の準備として、基材上にネガ型感光性樹脂層を形成する工程を示す。
図2(b)は、露光工程を示す。露光工程とは、基材上のネガ型感光性樹脂層を露光し、前記ネガ型感光性樹脂層内に所定パターンの潜像を形成する工程である。
図2(c)は、剥離工程を示す。剥離工程とは、前記ネガ型感光性樹脂層を現像して未露光部分を除去し、前記潜像に対応する形状の、前記ネガ型感光性樹脂層の露光部分を、樹脂粒子として前記基材から剥離する工程である。
図2(d)は、剥離後の個片化した粒子を示す。
【0029】
まず、図2(a)に示すように、基材9の上に、ネガ型感光性樹脂層7を形成する。ネガ型感光性樹脂層7は、ドライフィルムレジストの貼付や、ネガ型感光性樹脂の塗布などにより形成される。
【0030】
(基材9)
基材9は特に限定されるものではなく、フォトリソグラフィーに一般的に用いられる基材を使用することができる。例えば、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、ホワイトサファイアなどの可撓性のない透明なリジット材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルムなどの可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。前記フレキシブル材としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、シンジオタクティック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロヘキセン、ポリノルボルネン系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等からなるものを挙げることができるが、一般的なプラスチックからなるものも使用可能である。
【0031】
また、ネガ型感光性樹脂の塗布方法としては、例えばスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、ダイコート法等がある。
【0032】
その後、図2(b)に示すように、階調マスク13を介して、露光光11を照射し、ネガ型感光性樹脂層7に所定のパターンの潜像23を形成する。
【0033】
階調マスク13は、透明基板15上に、遮光膜と半透明膜が設けられ、露光光11が透過する透過部17、露光光11が透過するが透過部17ほどは透過しない半透過部19と、露光光11をほぼ透過しない遮光部21が形成されている。階調マスクの詳細については後述する。
【0034】
露光光11が照射されたネガ型感光性樹脂は、光化学反応により、硬化する。露光光11の強度に応じて硬化するため、階調マスク13の透過部17に対応する箇所は、より深い箇所のネガ型感光性樹脂まで感光し、半透過部19に対応する箇所は、より浅い箇所までのネガ型感光性樹脂が感光する。そのため、階調マスク13の透過度に応じて、高低を有する潜像23が得られる。
【0035】
この際、ネガ型感光性樹脂が硬化した領域である、潜像23が基材9まで到達せず、基材9と接触していないことが好ましい。潜像23と基材9が接触すると、次工程の現像工程において、粒子1aが基材9から剥離しにくくなるからである。
【0036】
なお、図2(b)においては、階調マスク13を用いてネガ型感光性樹脂層7を露光したが、デジタルマイクロミラーデバイスを用いて、マスクレス露光をして潜像23を形成してもよいし、レーザーや電子線で直接描画して潜像23を形成しても良い。デジタルマイクロミラーデバイス(デジタルミラーデバイス、DMDとも呼ばれる)とは、個別に駆動できる多数の微小鏡面(マイクロミラー)を平面に配列した素子である。各ミラーを個別に駆動することにより、表示画素ごとに光の投射を制御することができるため、マスクを用いずに所定のパターンで露光することができる。
【0037】
図2(c)に示すとおり、基材9などを現像液に浸し、露光光11が照射されずに硬化していないネガ型感光性樹脂を溶解し、潜像23のみを取り出し、粒子1aとする。それぞれの粒子1aを分離して個片化するとともに、粒子1aを基材9から剥離させる。
【0038】
その結果、図2(d)に示すとおり、個片化した粒子1aが得られる。
【0039】
本発明の製造方法によると、粒子1aと基材9との間に犠牲層を設けなくとも粒子1aを製造可能であるため、犠牲層の材料のコストが削減できる。
【0040】
また、本発明の製造方法によると、犠牲層を形成する工程と犠牲層を除去する工程が必要なくなり、潜像23の現像と同時に粒子1aを基材9から剥離することが行われるため、工程数を削減でき、粒子1aの製造コストを削減できる。
【0041】
また、本発明の製造方法によると、一枚の基材9上に複数の粒子1aを形成でき、一回の露光・現像で大量の粒子1aを製造可能である。特に、フォトマスクを縮小投影した露光エリアを移動させながら、ウエハ全面を露光可能なステッパー露光をすることで、基板9のほぼ全面に多数の粒子を形成することが好ましい。
【0042】
(粒子1bの製造方法)
次に、二次元的な構造を有する粒子1bの製造方法について説明する。
図3(a)は、露光工程の準備として、基材上にネガ型感光性樹脂を形成する工程を示す。
図3(b)は、露光工程を示す。露光工程とは、基材上のネガ型感光性樹脂層を露光し、前記ネガ型感光性樹脂層内に所定パターンの潜像を形成する工程である。
図3(c)は、剥離工程を示す。剥離工程とは、前記ネガ型感光性樹脂層を現像して未露光部分を除去し、前記潜像に対応する形状の、前記ネガ型感光性樹脂層の露光部分を、樹脂粒子として前記基材から剥離する工程である。
図3(d)は、剥離後の個片化した粒子を示す。
【0043】
まず、粒子1aの製造工程と同様に、図3(a)に示すように、基材9の上に、ネガ型感光性樹脂層7を形成する。
【0044】
その後、図3(b)に示すように、マスク25を介して、露光光11を照射し、ネガ型感光性樹脂層7に所定のパターンの潜像27を形成する。
【0045】
マスク25は、透明基板15上に、遮光膜が設けられており、露光光11が透過する透過部17と、遮光膜により露光光11がほぼ透過しない遮光部21とが形成されている。
【0046】
露光光11が照射されたネガ型感光性樹脂は、光化学反応により、硬化する。マスク25の透過部17に対応する箇所に、硬化した潜像27が得られる。
【0047】
この際、ネガ型感光性樹脂が硬化した領域である、潜像27が基材9まで到達せず、基材9と接触していないことが好ましい。潜像27と基材9が接触すると、次工程の現像工程において、粒子1bが基材9から剥離しにくくなるからである。
【0048】
図3(c)に示すとおり、基材9などを現像液に浸し、露光光11が照射されずに硬化していないネガ型感光性樹脂を溶解し、潜像27に対応する形状の、露光光11が照射されて硬化したネガ型感光性樹脂のみを基板9から剥離し、粒子1bとする。それぞれの粒子1bを個片化して分離するとともに、粒子1bを基材9から剥離させる。
【0049】
その結果、図3(d)に示すとおり、貫通部からなる識別部3bを有する、個片化した粒子1bが得られる。
【0050】
本発明の製造方法によると、粒子1bと基材9との間に犠牲層を設けなくとも粒子1bを製造できるため、犠牲層の材料コストが削減できる。
【0051】
また、本発明の製造方法によると、犠牲層を形成する工程と犠牲層を除去する工程が必要なくなり、潜像27の現像と同時に粒子1bを基材9から剥離できるため、工程数を削減でき、粒子1bの製造コストを削減できる。
【0052】
また、本発明の製造方法によると、ステッパー露光などをすることで、一枚の基材9上に複数の粒子1bを形成でき、一回の露光・現像で大量の粒子1bを製造可能である。
【0053】
(階調マスク)
階調マスクは、透明基板と、遮光膜と、透過率調整機能を有する半透明膜とが順不同に積層され、透明基板上に遮光膜が設けられた遮光部と、透明基板上に半透明膜のみが設けられた半透過部と、透明基板上に遮光膜および半透明膜のいずれも設けられていない透過部とを有する。
【0054】
遮光膜は、実質的に露光光を透過しないものであり、露光波長における平均透過率が0.1%以下であることが好ましい。遮光膜としては、一般にカラーフィルタに用いられる遮光膜を用いることができ、例えばクロム、酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム、モリブデンシリサイド、タンタル、アルミニウム、ケイ素、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素などの膜が挙げられる。中でも、クロム、酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム等のクロム系膜が好適に用いられる。このようなクロム系膜は、最も使用実績があり、コスト、品質の点で好ましいからである。このクロム系膜は、単層であってもよく、2層以上が積層されたものであってもよい。
【0055】
遮光膜の膜厚としては、特に限定されるものではなく、例えばクロム膜の場合には50nm〜150nm程度とすることができる。
【0056】
遮光膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD)が用いられる。成膜後、遮光膜のパターニングを行う。パターニング方法は特に限定されないが、通常はリソグラフィー法が用いられる。
【0057】
半透明膜を得る方法には、露光機の解像限界以下の微細なスリットやメッシュのパターンを遮光膜に形成する方法と、任意の透過率を有する膜をさらに積層する方法とのいずれかが用いられる。通常、前者の膜を用いるものをグレートーンマスクやスリットマスク、後者の膜を用いるものをハーフトーンマスクやスタックドレイヤーマスクなどと呼ぶ。
【0058】
ハーフトーンマスクに使用される任意の透過率を有する半透明膜としては、例えばクロム、モリブデンシリサイド、タンタル、アルミニウム、ケイ素等の酸化物、窒化物、炭化物などの膜が挙げられる。半透明膜および遮光膜を同一エッチング設備、工程でパターニングし得るという利点から、半透明膜と遮光膜が同系の材料からなる膜であることが好ましい。前述するように遮光膜がクロム系膜であることが好ましいことから、半透明膜も、酸化クロム、窒化クロム、酸化窒化クロム、酸化窒化炭化クロムなどのクロム系膜であることが好ましい。また、これらのクロム系膜は、機械的強度に優れており、さらには安定しているため、長時間の使用に耐えうるマスクとすることができる。
【0059】
また、半透明膜は、単層であってもよく、複数の層で構成されていてもよい。これにより、複数の透過率を有する多階調のマスクとすることができる。
【0060】
半透明膜の膜厚としては、例えばクロム膜の場合は5nm〜50nm程度とすることができ、また酸化クロム膜の場合は5nm〜150nm程度とすることができる。半透明膜の透過率はその膜厚により変わるので、膜厚を制御することで所望の透過率とすることができる。また、半透明膜が酸素、窒素、炭素などを含む場合は、その透過率は組成により変わるので、膜厚と組成とを同時にコントロールすることで所望の透過率を実現できる。
【0061】
半透明膜の成膜方法としては、例えばスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD)が用いられる。例えばスパッタリング法を用いて酸化窒化炭化クロム膜を成膜する場合は、アルゴンガス等のキャリアガス、酸素(炭酸)ガス、窒素ガスを反応装置内に導入し、クロムターゲットを用いた反応性スパッタリング法にて酸化窒化炭化クロム膜を成膜することができる。この際、酸化窒化炭化クロム膜の組成の制御は、アルゴンガス、酸素(炭酸)ガス、窒素ガスの流量の割合を制御することにより行うことができる。成膜後、パターニングを行い、半透明膜を形成する。
【実施例】
【0062】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
ガラス基板(HOYA製NA−35)上に、ネガ型のドライフィルムレジスト(東京応化工業社製ORDYL PR、厚さ20μm)を用いてネガ型感光性樹脂層を形成した。
その後、ステッパー露光機を用いて、階調マスクを介して365nmの紫外線を250mJ/cmの露光量で露光した。その後、炭酸ナトリウムを成分とするアルカリ現像液(炭酸ナトリウム0.7%水溶液)にて現像を行い、粒子を個片化し、基板より剥離した。その後、現像液から粒子を回収し、純水で3回リンスし、水分散体を得た。
これらの大きさが200μmであり、厚い部分が10μmで、薄い部分が5μmの3D形状の粒子であった。
【0063】
水溶性紫外線硬化樹脂(荒川化学製AQ−9)5gに対し、開始剤(Merck製ダロキュア1173)0.5g添加し、攪拌し、できた液にタガント水溶液を1g添加し攪拌した。スピンコーターにてガラス基材(HOYA製NA−35)上にバーコーターにて塗布した。UVアライナーにて照射(20mW/s 360sec)し、成膜した。印刷された偽造防止用インクは、肉眼では粒子の形状を把握できなかったが、ルーペを用いて拡大すると、粒子が識別できた。
【0064】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0065】
1a、1b………粒子
3a、3b………識別部
5………基体
7………ネガ型感光性樹脂層
9………基材
11………露光光
13………階調マスク
15………透明基板
17………透過部
19………半透過部
21………遮光部
23………潜像
25………マスク
27………潜像
31………有価証券
33………粒子含有部
41………カード
43………粒子含有部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大して観察されることで識別可能である偽造防止用樹脂粒子の製造方法において、
基材上のネガ型感光性樹脂層を露光し、前記ネガ型感光性樹脂層内に所定パターンの潜像を形成する露光工程と、
前記ネガ型感光性樹脂層を現像して未露光部分を除去し、前記潜像に対応する形状の、前記ネガ型感光性樹脂層の露光部分を、樹脂粒子として前記基材から剥離する剥離工程と、
を具備することを特徴とする偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記露光工程において、前記潜像が、前記基材と接触していないことを特徴とする請求項1に記載の偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記露光工程において、階調マスクを用いて露光することを特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記露光工程において、デジタルマイクロミラーデバイスを用いて露光することを特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ネガ型感光性樹脂層の厚さが1μm以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂粒子のサイズが10〜300μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
前記ネガ型感光性樹脂が、着色用の顔料を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の偽造防止用樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
拡大して観察されることで識別可能である樹脂粒子を含有する偽造防止用インクの製造方法において、
基材上のネガ型感光性樹脂層を露光し、前記ネガ型感光性樹脂層内に所定パターンの潜像を形成する露光工程と、
前記ネガ型感光性樹脂層を現像して未露光部分を除去し、前記潜像に対応する形状の、前記ネガ型感光性樹脂層の露光部分を、樹脂粒子として前記基材から剥離する剥離工程と
前記樹脂粒子を分散媒に分散する分散工程と、
を具備することを特徴とする偽造防止用インクの製造方法。
【請求項9】
拡大して観察されることで識別可能である樹脂粒子を含有する偽造防止用シートの製造方法において、
基材上のネガ型感光性樹脂層を露光し、前記ネガ型感光性樹脂層内に所定パターンの潜像を形成する露光工程と、
前記ネガ型感光性樹脂層を現像して未露光部分を除去し、前記潜像に対応する形状の、前記ネガ型感光性樹脂層の露光部分を、樹脂粒子として前記基材から剥離する剥離工程と
前記樹脂粒子を樹脂に分散する分散工程と、
前記樹脂を硬化させる硬化工程と、
を具備することを特徴とする偽造防止用シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−250354(P2012−250354A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122132(P2011−122132)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【公序良俗違反の表示】
特許法第64条第2項第4号の規定により明細書の一部または全部を不掲載とする。
特許法第64条第2項第4号の規定により図面の一部または全部を不掲載とする。
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】