偽造防止用紙
【課題】本発明の課題は、OVDが備える高度な視覚効果を変化させる事なく、人間の視覚でその特徴を把握し、真贋判定を容易に行える偽造防止用紙を提供する事である。
【解決手段】光学的変化を発現させるOVDを有する偽造防止用紙において、偽造防止用紙の基材中または基材上のOVDとは別の部分に、OVDによって発現した反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるプリズム構造を備えた事を特徴とする偽造防止用紙としたものである。
【解決手段】光学的変化を発現させるOVDを有する偽造防止用紙において、偽造防止用紙の基材中または基材上のOVDとは別の部分に、OVDによって発現した反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるプリズム構造を備えた事を特徴とする偽造防止用紙としたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止を必要とする種類の用紙に関わり、詳しくは、偽造防止用紙に施された光学的変化を発現させる表示体の真贋判定が容易にできる偽造防止用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偽造を防止する手段としては、簡単に真似する事のできない微細構造や色調変化を施したり、または他の光学機能フィルムを判定子として、それとの組み合わせでのみある光学的現象が観察されるような構成としたり、更には専用の読取装置でのみ一定のパターン等が読み取れるようにするなど、様々な態様が技術の進歩とともに実用化されてきた。
【0003】
その中でも、実際の運用上の簡便さから、最も利用されている偽造防止表示体としては、光学的変化を発現させるOVD(光学可変素子:”Optical(ly) Variable Device”の略)であるホログラムや回折構造体などが挙げられる。ホログラムは、二光束干渉などの光学的撮影方法により、微細な凹凸パターンや、屈折率分布を設ける事で作製され、回折構造体は、微小なエリアに回折格子を配置したものを画素として回折格子像が作製される。
上記ホログラムや回折構造体は、双方ともに偽造困難で、カラーコピー機等による複写も困難で、また意匠的にも優れる事から、クレジットカードやIDカード、各種有価証券、証明書等に広く用いられている。
しかしながら、実際の運用上ではホログラムや回折構造体の真偽判定は人の目に委ねられるため、微視的には粗悪な偽造品であっても全ての人が肉眼で一様に正確な真偽判定を行う事は容易でない。
【0004】
また、上述のようなホログラムや回折構造体が流通、普及していく中で、偽造技術も進歩していくため、より偽造が困難な表示体が求められている。
例えば、表面レリーフ構造のホログラムや回折構造体は密着露光により複製される恐れがある。
偽造を防ぐため、例えば回折効果を持つ細かいパターンの配置に工夫を凝らす事が特許文献1に記載されている。この表示体は、目視では情報が読み取れないようにセキュリティ情報の有無を分かり難くしている。従って、真正品か否かの判断は目視では困難であるから、その判定には読み取り機械を使用する事になる。
また、密着露光法で複製されたホログラムや回折構造体は、オリジナルと比較すれば精度の低下を確認できるが、通常複製品は複製品のみで流通するため、専門家ではない一般の人には真正品か否かの判断が困難であるという問題がある。
【0005】
微細な凹凸を設けた基材は、入射した光の反射を抑える事が知られている。例えば、ある種の反射防止フィルムは、フィルム基材表面に細かい凹凸のエンボス加工を施したり、フィルム形成樹脂そのものにフィラーを混ぜ込む事で、フィルムの屈折率に分布を持たせるとともに、フィルム表面に凹凸を形成する。
近年では、この凹凸を更に微細に、凸部の周期を光の波長以下とする事で、光の反射を防ぎ入射光を制御できる事が開示されている(例えば特許文献2参照)。この技術は、凸部の周期が光の波長以下、特に50〜250nm程度とする事で、光の反射を抑制し、光制御シートに適用したというものである(以下、この様な光の波長以下の凸部周期を持つ凹凸構造を、微細レリーフと称する)。
また、微細レリーフに反射層を備える事で、回折光を制御し、回折光が観察可能な表示体とする事が開示されている。(例えば特許文献3参照)
しかし、このような微細レリーフに反射層を設けた構成の表示体は、従来の回折構造体より高精度な製造技術が必要なため偽造が困難である事から偽造防止効果は高いが、表示体の水平方向に近い角度から観察しなければ回折光が発生しないため、従来の回折構造の観察方法では、回折光の観察が難しいという問題がある。
【0006】
また、1つの偽造防止用紙上に特殊な加工がなされた透明部と不透明部を設け、これらを重ね合わせた時にモアレが現れる事が開示されている。(例えば特許文献4参照)この技術には不透明部に回折構造を用いる事が記載されてはいるが、この回折構造単体は凸レンズの効果を発現させるためのものであり、偽造防止用OVDのような表示体ではなく、透明部と重ね合わせて初めて視覚的な効果を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2002−505774号公報
【特許文献2】特開2007−48688号公報
【特許文献3】特開2008−275740号公報
【特許文献4】特表2008−513816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題の解決を目的としている。即ち、本発明の課題は、OVDが備える高度な視覚効果を変化させる事なく、人間の視覚でその特徴を把握し、真贋判定を容易に行える偽造防止用紙を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、光学的変化を発現させるOVDを有する偽造防止用紙において、偽造防止用紙の基材中または基材上のOVDとは別の部分に、OVDによって発現した反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるプリズム構造を備えた事を特徴とする偽造防止用紙としたものである。
【0010】
請求項2の発明では、光学的変化を発現させるOVDを有する偽造防止用紙において、偽造防止用紙の基材中または基材上のOVDとは別の部分に透明部を設け、この透明部の一部が、OVDによって発現した反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるためのプリズム構造を備えている事を特徴とする請求項1に記載の偽造防止用紙としたものである。
【0011】
請求項3の発明では、OVDが少なくとも2種類からなり、OVDの反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるための透明なプリズム構造も、少なくとも2種類からなる事を特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止用紙としたものである。
【0012】
請求項4の発明では、前記OVDの少なくとも1種類が回折光を発現させる回折構造からなり、更にこの回折構造が、隣接する凸部の中心間距離が200nm〜400nmの範囲、凹部の深さが100nm以上である事を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の偽造防止用紙としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0014】
即ち、本発明の偽造防止用紙は、偽造防止用のOVDの真偽判定で反射光や回折光を観察する時に、偽造防止用紙をいろいろな角度に何度も傾けたり深い角度にまで傾ける事無
く、プリズム構造部を重ね合わせるだけで、複数種類の反射光や回折光を容易に観察する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る偽造防止用紙の第1の例を示す平面図。
【図2】本発明に係る偽造防止用紙の第1の例を示す断面図、及び通常時のOVDにおける入射光、反射光、回折光のモデル図(図1のA−A断面)。
【図3】図1の偽造防止用紙の真贋判定時の平面図。
【図4】図1の偽造防止用紙の真贋判定時の断面図、及び真贋判定時の入射光、反射光、回折光のモデル図。(図3のB−B断面)。
【図5】本発明の偽造防止用紙の真贋判定時のOVD及びプリズム構造部の拡大断面図と入射光、反射光、回折光のモデル図(図4のC部の拡大)。
【図6】本発明に係る偽造防止用紙の第2の例を示す平面図。
【図7】本発明に係る偽造防止用紙の第2の例を示す断面図(図6のD−D断面)。
【図8】本発明に係る偽造防止用紙の第2の例を示す断面図(図6のE−E断面)。
【図9】本発明に係る第3の例を示す平面図。
【図10】本発明に係る偽造防止用紙の第3の例を示す断面図(図9のF−F断面)。
【図11】本発明に係る偽造防止用紙の第3の例を示す断面図(図9のG−G断面)。
【図12】図9の偽造防止用紙の真贋判定時の平面図。
【図13】図9の偽造防止用紙の真贋判定時の断面図、及び真贋判定時の入射光、反射光、回折光のモデル図(図9のF’−F’断面)。
【図14】図9の偽造防止用紙の真贋判定時の断面図、及び真贋判定時の入射光、反射光、回折光のモデル図(図9のG’−G’断面)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る偽造防止用紙の第1の例を示す平面図である。
図1の偽造防止用紙1は、基材11上に光学可変素子であるOVD12が帯状に貼付されている。尚、このOVD12はその光学変化を直接目視で観察できれば、窓開き状に基材11中に漉き込まれていたり、帯状ではない別の形状に貼付されていても良い。OVD12は、観察する角度によって図柄や色彩、明るさなどが変化する表示体からなり、図1では例えば破線で囲んだ“OVD”の文字がOVD121であり、図1は真正面から見た図であるため、中央部の“OVD”のOVD121は明るさが暗く、用紙端に近いOVD121では真正面ではなく角度が変化するので、輝度が少し増している。
図1の偽造防止用紙1の基材11には穿孔部13があり、穿孔部13を覆うようにプリズムシート14が貼付されている。尚、このプリズムシート14は、図2に断面を示したようにプリズムの凹凸がある面を基材11側とし、その反対面は平面である。
【0018】
図2は、図1で示した偽造防止用紙1の断面図であり、OVD12が回折構造体である場合の光学的な特性を図示したものである。
OVD12の回折構造部121に照明光121aが入射した場合、正反射光121bと回折光121cが発生し、観察者は121cの角度から観察できるように偽造防止用紙1または顔を傾ける事で回折光121cを観察する事ができる。
【0019】
図3は、本発明の偽造防止用紙1の真贋判定を行う時の状態を示した平面図で、偽造防止用紙1を折り曲げてOVD12にプリズムシート14を密着させながら穿孔部13からOVD12を観察した状態を示している。
【0020】
図4は、図3のB−B断面と回折構造部121の光学的な特性を示したもので、OVD
12の回折構造部121に照明光121aが入射した場合、正反射光121bと回折光121cが発生し、プリズムシート14によって入射光及び反射光、回折光の角度が各々変化する事を示している。
【0021】
図5は、図4におけるプリズムシート14と回折構造部121とが接触した部分Cを拡大した断面図で、プリズムによる光の屈折効果の詳細を示したものである。プリズムシート14は、観察面側に頂角αのV字形状のプリズム構造を有し、その反対面は回折構造部121と密着するために平坦な形状となっている。一方、回折構造部121は、プリズムシート14と接する面が平坦で、その反対面に回折構造であるレリーフが形成されている。
このような構造による屈折効果は、照明光121aがプリズムシート14にθ1の角度で入射した時、空気とプリズムシートの屈折率の差によって照明光121aの入射角度がθ2に変化して回折構造部121に入射する。これにより、回折構造部121では反射光121bと回折光121cが発生し、各々プリズムシートの屈折によって、反射光121bは射出角がθ2からθ1に、回折光121cは射出角がθ4からθ3に変化して射出される。この時の屈折現象は、空気の屈折率とプリズムシートの屈折率との差により発現し、一般的には空気の屈折率は約1.0、プリズムシートに使用できる透明材料であるガラスや樹脂の屈折率は1.5〜2.5程度であるため、空気の1.0よりも大きくなり、スネルの法則(n1Sinθ1=n2Sinθ2)により、θ1>θ2、θ4>θ3となる。
【0022】
図6は本発明に係る偽造防止用紙の第2の例を示す平面図である。図6の偽造防止用紙2には、穿孔部13を覆うように透明部15が設けられており、透明部15の上半分は光の入射や射出の向きを変えるためのV型構造であるプリズム部151であり、透明部15の下半分は透明で平坦な形状からなる平坦部152である。
【0023】
図7は、図6のD−Dの断面、また、図8は、図6のE−Eの断面を示す断面図である。
【0024】
図9は本発明に係る偽造防止用紙の第3の例を示す平面図である。図9の偽造防止用紙3のOVD12には、回折光を発現させるための入射角が異なる2種類の回折構造として、回折構造部121と回折構造部122が形成されており、透明部15には回折構造部121に対応した頂角のプリズム構造部153と、回折構造部122に対応した頂角のプリズム構造部154が形成され、穿孔部13を覆っている。また、図10は、図9のF−F断面の断面図で、図11は、図9のG−G断面の断面図である。
【0025】
図12は本発明の偽造防止用紙3の真贋判定を行う時の状態を示した平面図で、偽造防止用紙3を折り曲げてOVD12にプリズムシート14を密着させながら穿孔部13からOVD12を観察した状態で、図9のF−F及びG−Gは、真贋判定時には図12のF’−F’及びG’−G’のような状態となる。また、図12のように回折構造部121を、プリズム構造部153を通して観察した場合、少ない傾き角で回折構造部121’のような回折光が観察され、回折構造部122もプリズム構造部154を通して観察した場合には、更に正面に近い角度で回折構造部122’のような回折光を観察する事が出来る。
【0026】
図13は、図12におけるF’−F’断面図、図14は図12におけるG’−G’断面図で、更に、各々プリズム構造部153及びプリズム構造部154を通って、光がOVD12に入射し、反射光と回折光が発生する時の光路を示したもので番号末尾にaが付く光路が入射光、番号末尾にbが付く光路が反射光、番号末尾にcが付く光路が回折光を示している
【0027】
以下、本発明の偽造防止用紙の構成について、詳細に説明する。
【0028】
(基材)
基材11は偽造防止用紙1乃至4の基材であり、紙や樹脂の単体またはその積層体、もしくは紙や樹脂の複合単体や積層体、または樹脂を主材料として製造された合成紙など、偽造防止用紙に使用される材料であれば何れの材質でも良い。
【0029】
(OVD)
OVD12は、基材として樹脂フィルムが使用できる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、耐熱塩化ビニルフィルム等が使用できる。これらの樹脂の中で、耐熱性が高く厚みが安定している事から、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが好ましく使用できる。
【0030】
基材上に設けられるOVDとしては、回折構造物に金属反射層を設けたものや、多層薄膜である光学多層干渉膜やコレステリック液晶の層、観察する角度に応じて異なる色彩を見る事ができる粉末を含有するインキ等が利用可能であるが、観察する角度で複数の画像が切り替わったり、色が変化したりする角度を大きく変える事が出来る回折構造体が望ましい。また、偽造防止用紙の基材11に貼付するための接着層を設けても良い。
【0031】
前記レリーフ型回折格子は、その表面に微細な凹凸パターンの形態で回折格子を記録したものである。このような凹凸パターンは、例えば、二光束干渉法を使用して感光性樹脂の表面に互いに可干渉の2本の光線を照射してこの感光性樹脂表面に干渉縞を生成させ、この干渉縞を凹凸の形態で感光性樹脂に記録する事で形成できる。尚、この二光束性干渉法によって形成された干渉縞も回折格子であり、前記2本の光線の選択によって任意の立体画像を回折格子パターンとして記録する事が可能で、観察する角度に応じて異なる画像(以下チェンジング画像と言う)が見られるように記録する事が可能である。
【0032】
本発明に用いられる回折格子構造物により発現する画像パターンを記録する方法については、前記二光束干渉法の他にもイメージホログラムやレインボーホログラム、インテグラルホログラムなど、従来から知られているホログラムの製造方法により作製が可能である。
【0033】
また、レリーフ型回折格子の凹凸パターンは、電子線硬化型樹脂の表面に電子線を照射して、回折格子となる縞状パターンに露光する事によって回折構造物を形成する事も可能である。この場合には、その干渉縞を1本ごとに制御する事ができるため、ホログラムと同様に任意の立体画像やチェンジング画像を記録する事ができる。また、画像をドット状の画素領域に分割し、この画素領域ごとに異なる回折格子を記録し、これら画素の集合で全体の画像を表現する事も可能である。画素は円形のドットの他、星形のドットでも良い。
【0034】
また、誘起表面レリーフ形成法によって、前記凹凸パターンを形成する事も可能である。すなわち、アゾベンゼンを鎖側に持つポリマーのアモルファス薄膜に対して、青色〜緑色に渡る範囲の或る波長を有した数十mW/cm2程度の比較的弱い光を照射する事によって、数μmスケールでポリマー分子の移動を起こし、結果、薄膜表面に凹凸によるレリーフを形成する事ができる。
【0035】
そして、このように形成された凹凸パターンを有するレリーフ型のマスター版の表面に電気メッキ法で金属膜を形成する事によって、レリーフ型マスター版の凹凸パターンを複製し、これをプレス版とする。そして、回折構造121や122を形成するためのOVD
形成層にこのプレス版を熱圧着し、薄膜表面に凹凸パターンからなるレリーフを転写する事で、回折構造体が形成される。
【0036】
このようなOVD形成層に使用される樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂等が使用できる。例えば、熱可塑性樹脂では、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。また、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加して架橋させたウレタン樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等が使用できる。また、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂としては、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等が使用できる。
【0037】
前記OVD12が回折構造体の場合には、回折構造体に接するように反射層が設けられる。この場合の反射層としては、反射輝度が高い点で金属薄膜が好ましく利用できる。この金属薄膜に用いられる金属としては、例えば、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、真鍮等が挙げられる。そして、真空製膜法を利用してこの金属薄膜を形成する事ができる。真空製膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用でき、厚みは5〜1000nm程度に制御できれば良い。
【0038】
また、金属粉末や透明材料の粉末を含むインキを印刷して薄膜としても良い。この場合、粉末としては粒子径500nm以下のものが好ましい。薄膜の厚みは0.1〜20μmが好ましく、印刷方式として、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等、公知の印刷方法が利用できる。
【0039】
尚、反射層を任意のパターンに加工して部分反射層としても良い。この部分反射層を形成する方法として、以下の方法が用いられる。
【0040】
即ち、その第1の方法は、前述の印刷方式を利用する方法である。また、第2の方法は、回折構造体に画像パターン状の開口部を有するマスクを重ねて反射層を部分的に各々の工程で真空製膜する事により、画像パターン状に製膜する方法である。
【0041】
その第3の方法は、まず、溶剤溶解性の樹脂層を回折構造体上にネガパターン状に設け、この溶剤溶解性樹脂層を被覆して全面一様な反射層を形成した後、溶剤で前記の溶剤溶解性樹脂層を溶解して除去すると同時に、この溶剤溶解性樹脂層上に重ねられた反射層を除去する事によって、回折構造体上に画像パターン状に残存した反射層を部分反射層とする方法である。
【0042】
また、その第4の方法は、まず、OVD12上に、OVD形成層から剥離しやすい樹脂層をネガパターン状に設け、この樹脂層を被覆して全面一様に反射層を形成した後、粘着ロールや粘着紙等に押し当てる事によって粘着ロールや粘着紙等にネガパターン状に転写させて除去し、結果、反射層が画像パターン状に残存され、部分反射層となる方法である。
【0043】
次に、その第5の方法は、OVD形成層上の全面一様に反射層を形成し、この反射層上に耐薬品性の樹脂層を画像パターン状に設け、アルカリ性または酸性のエッチング液を適用して露出している反射層を溶解して除去し、部分反射層とする方法である。この場合、反射層を画像パターン状に加工したした後、前記耐薬品性樹脂層を除去しても良いが、そのまま部分反射層上に残存させて、耐薬品性を持たせるための保護層として利用する事もできる。
【0044】
次に、その第6の方法はOVD形成層上に全面一様に形成された反射層に感光性樹脂層
を形成し、画像パターン状に露光・現像した後、アルカリ性または酸性のエッチング液を適用して露出した反射層を溶解して除去する方法である。この場合も、残存する感光性樹脂層をそのまま残存させて、耐薬品性を持たせる保護層として利用する事ができる。
【0045】
また、その第7の方法は、全面一様に形成された反射層にレーザ光を照射して除去する事により、残存する反射層がそのまま部分反射層として画像パターン状となる方法である。
【0046】
(接着層)
接着層としては、熱及び圧力によって被転写物である基材11に接着するものであれば良く、公知の感熱性接着材料を使用する事ができる。
【0047】
(その他の層)
図には示さないが、その他の層として各層間の密着性をより強固なものとするためにアンカー層を設けたり、OVD12の全面または一部を着色する着色層を設けたり、文字や絵柄を印刷するために印刷層を追加する事ができる。これらのインキとしては、周知の密着向上剤や接着剤、染料や顔料を用いた着色剤、または印刷インキなどをそれぞれ使用する事ができる。
【0048】
(プリズムシート)
プリズムシート14に使用される基材としては、樹脂フィルムが使用できる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、耐熱塩化ビニルフィルム等が使用できる。これらの樹脂の中で、耐熱性が高く厚みが安定している事から、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが好ましく使用できる。
【0049】
プリズムシート14におけるV字形状のプリズム構造部を構成するための樹脂としては、可視光が透過できる透明性を有していれば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂等が使用できる。例えば、熱可塑性樹脂では、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
また、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加して架橋させたウレタン樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等が使用できる。この内、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂としては、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等も使用でき、V字のプリズム形状の加工は、切削や金属版による熱圧エンボス、射出成型等により作製出来る。尚、本発明では、透明な樹脂を用いて所望の形状に作製できれば、特に前記樹脂や作製方法に限定されるものではない。
【0050】
また、プリズムシートの形状は、前記OVD12と接する側を平面とし、その反対面を規則的にV型構造としたものである。入射光や回折光、反射光などの各々の光はスネルの法則に従い、プリズムシート14のV型構造の界面に光が臨界角以内の角度で入射する時と射出される時に、各々空気とプリズムシートとの界面で屈折して進み、その屈折角は、プリズムシート14を構成する材料の屈折率nと頂角αによって決まるため、屈折率nと頂角αを適切に設計する事で、回折光の射出角度を任意に設定する事が可能となる。
【実施例】
【0051】
次に、実施例によって本発明を説明する。
<実施例1>
【0052】
本発明第1の例である偽造防止用紙について説明する。
まず、プリズムシートの基材として25μm厚みのポリエチレンテレフタレート(通称PET)フィルムを使用した。この基材に、紫外線硬化タイプのアクリル樹脂をバーコート法により5μmの膜厚に均一に塗布し、角度が79°の頂角を持つV字型の溝が一定間隔で並んだ形状を持つNi製のエンボス版を押し当てながら紫外線を照射して硬化させ、所望のプリズムシートを作製した。
【0053】
次に、偽造防止用紙の原料となる針葉樹パルプを水中で叩解し、サイズ剤(デンプン質)、填料(炭酸カルシウム)を添加したスラリーを作製し、手漉き装置を用いて任意の形状に設計された窓開き部からプリズムシートが露出するように紙層中に漉き込んで脱水、乾燥させ、秤量150g/m2の偽造防止用紙の基材を作製した。
【0054】
次に、OVDとして12μmのPETフィルムを基材とし、この基材の片面に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚1.5μmのOVD形成層を形成した後、ロールエンボス法によりプレス版を熱圧してその表面に回折構造を発生させるための凹凸を同時に形成した。
【0055】
次に、このOVD形成層の全面に真空蒸着法にてアルミニウム蒸着膜を膜厚50nmにて均一に形成し、反射層を形成した。
【0056】
この反射層上に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚3μmのホットメルトタイプの接着層を形成した。
【0057】
最後に、基材上の、漉き込まれているプリズムシートから離れた位置に、帯状のOVDを160℃に熱した熱ロールにより基材に貼付し、本発明第1の事例である偽造防止用紙を作製した。
【0058】
「OVD形成層インキ組成物」
アクリル樹脂 20.0重量部
反応性シリコーン 1.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
【0059】
「接着層インキ組成物」
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 15.0重量部
アクリル樹脂 10.0重量部
シリカ 1.0重量部
メチルエチルケトン 44.0重量部
トルエン 30.0重量部
【0060】
<実施例2>
次に実施例2として、本発明第4の例である偽造防止用紙について説明する。
まず、プリズムシートの基材として25μm厚みのポリエチレンテレフタレート(通称PET)フィルムを使用した
この基材に、紫外線硬化タイプのアクリル樹脂をバーコート法により5μmの膜厚に均一に塗布し、角度が50°の頂角を持つV字型の溝が一定間隔で並んだ形状を持つNi製のエンボス版を押し当てながら紫外線を照射して硬化させ、所望のプリズムシートを作製した。
【0061】
次に、偽造防止用紙の原料である針葉樹パルプを水中で叩解し、サイズ剤(デンプン質)、填料(炭酸カルシウム)を添加したスラリーを作製し、手漉き装置を用いて任意の形状に設計された窓開き部からプリズムシートが露出するように紙層中に漉き込んで脱水、乾燥させ、秤量150g/m2の偽造防止用紙の基材を作製した。
【0062】
次に、OVDの基材として12μmのPETフィルムを基材とし、この基材の片面に、下記組成物からなるインキをバーコート法によって塗布・乾燥し、膜厚2.5μmのOVD形成層を形成した後、回折構造の凹部の深さが400nm、凹部のピッチ(中心間距離)が360nmの凹凸構造と、高さが500nm、ピッチが1μmの波状の凹凸構造の2種類の回折構造を持つNi版を前記OVD形成層に押し当て、PETフィルム面側からOVD形成層に向けて紫外線を照射してインキを硬化させる事により、所望の回折構造を形成した。
【0063】
次に、このOVD形成層の全面に真空蒸着法にてアルミニウム蒸着膜を膜厚50nmにて均一に形成し、反射層を形成した。
【0064】
また、この反射層上に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚3μmのホットメルトタイプの接着層を形成した。
【0065】
最後に、基材上に漉き込まれたプリズムシートから離れた位置に、帯状のOVDを160℃に熱した熱ロールにより基材に貼付し、本発明第4の事例である偽造防止用紙を作製した。
【0066】
「OVD形成層インキ組成物」
紫外線硬化型アクリル樹脂 20.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
【0067】
「接着層インキ組成物」
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 15.0重量部
アクリル樹脂 10.0重量部
シリカ 1.0重量部
メチルエチルケトン 44.0重量部
トルエン 30.0重量部
【0068】
<比較例>
比較例として、実施例1及び2におけるプリズムシートが無い他は、全て同じ層構成、材料からなる偽造防止用紙を作製した。
【0069】
実施例1で作製した偽造防止用紙を中心付近で折り曲げ、プリズムシートをOVDに密着させ、プリズムシート越しにOVDを観察したところ、正面から30°の角度で回折光を観察する事が出来た。また、そのままの状態でプリズムシート部を手でずらし、OVDに何も被せない状態でOVDを観察した場合には、この角度では回折光は観察されず、更に角度が大きくなるように傾けた所で回折光が観察された。このように、実施例1で作製した偽造防止用紙では、手でプリズムシートを上下または左右に動かすだけで、観察する角度を変える事無く、OVDの回折光の有り無し状態による真贋判定が可能であり、プリズムシートのおかげで、プリズムシートが無い状態の比較例で作製した偽造防止用紙よりも、より正面に近い角度で回折光を観察する事ができた。
【0070】
次に、実施例2で作製した偽造防止用紙をその中心付近で折り曲げ、プリズムシート部
をOVDに密着させてOVDを観察したところ、正面から15°の角度に傾けた状態で文字の色彩が変化して回折光を観察する事が出来、更にそこから角度を22°に変化させると、更に緑色の回折光を観察する事ができた。一方、プリズムシートがない状態の比較例で作製した偽造防止用紙では、正面から15°及び20°では回折光を観察する事が出来ず、もっと深い角度に傾ける事によって回折光が観察され、観察者によっては水平近くの角度による回折光に気付かない者もいた。よって、プリズムシートを重ね合わせる事で、2種類のOVDの回折光を観察する際に、少ない観察角度変化で観察する事ができ、更に、プリズムシート部を前後、または左右にずらす事で回折光の有無が分かるので、複数種類のOVDが混在しても真贋判定がし易かった。
【0071】
このように、本発明の偽造防止用紙は、プリズムシートを設ける事によって、1種類の回折構造のみならず、複数種類の回折構造を持つ偽造防止用紙でも、容易に回折光を観察する事が可能であり、真贋判定も容易に行える偽造防止用紙である事が分かった。
【符号の説明】
【0072】
1・・・・本発明に係る第1の例である偽造防止用紙
2・・・・本発明に係る第2の例である偽造防止用紙
3・・・・本発明に係る第3の例を示す偽造防止用紙
11・・・・本発明に係る第1の例乃至第4の例を示す偽造防止用紙の基材
12・・・・OVD(光学可変素子)
13・・・・穿孔部
14・・・・プリズムシート
15・・・・透明部
121・・・・回折構造部
122・・・・回折構造部
121a・・・・入射光
121b・・・・反射光
121c・・・・回折光
122a・・・・入射光
122b・・・・反射光
122c・・・・回折光
151・・・・プリズム構造部
152・・・・平坦部
153・・・・プリズム構造部
154・・・・プリズム構造部
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止を必要とする種類の用紙に関わり、詳しくは、偽造防止用紙に施された光学的変化を発現させる表示体の真贋判定が容易にできる偽造防止用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、偽造を防止する手段としては、簡単に真似する事のできない微細構造や色調変化を施したり、または他の光学機能フィルムを判定子として、それとの組み合わせでのみある光学的現象が観察されるような構成としたり、更には専用の読取装置でのみ一定のパターン等が読み取れるようにするなど、様々な態様が技術の進歩とともに実用化されてきた。
【0003】
その中でも、実際の運用上の簡便さから、最も利用されている偽造防止表示体としては、光学的変化を発現させるOVD(光学可変素子:”Optical(ly) Variable Device”の略)であるホログラムや回折構造体などが挙げられる。ホログラムは、二光束干渉などの光学的撮影方法により、微細な凹凸パターンや、屈折率分布を設ける事で作製され、回折構造体は、微小なエリアに回折格子を配置したものを画素として回折格子像が作製される。
上記ホログラムや回折構造体は、双方ともに偽造困難で、カラーコピー機等による複写も困難で、また意匠的にも優れる事から、クレジットカードやIDカード、各種有価証券、証明書等に広く用いられている。
しかしながら、実際の運用上ではホログラムや回折構造体の真偽判定は人の目に委ねられるため、微視的には粗悪な偽造品であっても全ての人が肉眼で一様に正確な真偽判定を行う事は容易でない。
【0004】
また、上述のようなホログラムや回折構造体が流通、普及していく中で、偽造技術も進歩していくため、より偽造が困難な表示体が求められている。
例えば、表面レリーフ構造のホログラムや回折構造体は密着露光により複製される恐れがある。
偽造を防ぐため、例えば回折効果を持つ細かいパターンの配置に工夫を凝らす事が特許文献1に記載されている。この表示体は、目視では情報が読み取れないようにセキュリティ情報の有無を分かり難くしている。従って、真正品か否かの判断は目視では困難であるから、その判定には読み取り機械を使用する事になる。
また、密着露光法で複製されたホログラムや回折構造体は、オリジナルと比較すれば精度の低下を確認できるが、通常複製品は複製品のみで流通するため、専門家ではない一般の人には真正品か否かの判断が困難であるという問題がある。
【0005】
微細な凹凸を設けた基材は、入射した光の反射を抑える事が知られている。例えば、ある種の反射防止フィルムは、フィルム基材表面に細かい凹凸のエンボス加工を施したり、フィルム形成樹脂そのものにフィラーを混ぜ込む事で、フィルムの屈折率に分布を持たせるとともに、フィルム表面に凹凸を形成する。
近年では、この凹凸を更に微細に、凸部の周期を光の波長以下とする事で、光の反射を防ぎ入射光を制御できる事が開示されている(例えば特許文献2参照)。この技術は、凸部の周期が光の波長以下、特に50〜250nm程度とする事で、光の反射を抑制し、光制御シートに適用したというものである(以下、この様な光の波長以下の凸部周期を持つ凹凸構造を、微細レリーフと称する)。
また、微細レリーフに反射層を備える事で、回折光を制御し、回折光が観察可能な表示体とする事が開示されている。(例えば特許文献3参照)
しかし、このような微細レリーフに反射層を設けた構成の表示体は、従来の回折構造体より高精度な製造技術が必要なため偽造が困難である事から偽造防止効果は高いが、表示体の水平方向に近い角度から観察しなければ回折光が発生しないため、従来の回折構造の観察方法では、回折光の観察が難しいという問題がある。
【0006】
また、1つの偽造防止用紙上に特殊な加工がなされた透明部と不透明部を設け、これらを重ね合わせた時にモアレが現れる事が開示されている。(例えば特許文献4参照)この技術には不透明部に回折構造を用いる事が記載されてはいるが、この回折構造単体は凸レンズの効果を発現させるためのものであり、偽造防止用OVDのような表示体ではなく、透明部と重ね合わせて初めて視覚的な効果を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2002−505774号公報
【特許文献2】特開2007−48688号公報
【特許文献3】特開2008−275740号公報
【特許文献4】特表2008−513816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題の解決を目的としている。即ち、本発明の課題は、OVDが備える高度な視覚効果を変化させる事なく、人間の視覚でその特徴を把握し、真贋判定を容易に行える偽造防止用紙を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、上記課題を達成するために、まず請求項1の発明では、光学的変化を発現させるOVDを有する偽造防止用紙において、偽造防止用紙の基材中または基材上のOVDとは別の部分に、OVDによって発現した反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるプリズム構造を備えた事を特徴とする偽造防止用紙としたものである。
【0010】
請求項2の発明では、光学的変化を発現させるOVDを有する偽造防止用紙において、偽造防止用紙の基材中または基材上のOVDとは別の部分に透明部を設け、この透明部の一部が、OVDによって発現した反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるためのプリズム構造を備えている事を特徴とする請求項1に記載の偽造防止用紙としたものである。
【0011】
請求項3の発明では、OVDが少なくとも2種類からなり、OVDの反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるための透明なプリズム構造も、少なくとも2種類からなる事を特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止用紙としたものである。
【0012】
請求項4の発明では、前記OVDの少なくとも1種類が回折光を発現させる回折構造からなり、更にこの回折構造が、隣接する凸部の中心間距離が200nm〜400nmの範囲、凹部の深さが100nm以上である事を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の偽造防止用紙としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上の構成であるから、下記に示す如き効果がある。
【0014】
即ち、本発明の偽造防止用紙は、偽造防止用のOVDの真偽判定で反射光や回折光を観察する時に、偽造防止用紙をいろいろな角度に何度も傾けたり深い角度にまで傾ける事無
く、プリズム構造部を重ね合わせるだけで、複数種類の反射光や回折光を容易に観察する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る偽造防止用紙の第1の例を示す平面図。
【図2】本発明に係る偽造防止用紙の第1の例を示す断面図、及び通常時のOVDにおける入射光、反射光、回折光のモデル図(図1のA−A断面)。
【図3】図1の偽造防止用紙の真贋判定時の平面図。
【図4】図1の偽造防止用紙の真贋判定時の断面図、及び真贋判定時の入射光、反射光、回折光のモデル図。(図3のB−B断面)。
【図5】本発明の偽造防止用紙の真贋判定時のOVD及びプリズム構造部の拡大断面図と入射光、反射光、回折光のモデル図(図4のC部の拡大)。
【図6】本発明に係る偽造防止用紙の第2の例を示す平面図。
【図7】本発明に係る偽造防止用紙の第2の例を示す断面図(図6のD−D断面)。
【図8】本発明に係る偽造防止用紙の第2の例を示す断面図(図6のE−E断面)。
【図9】本発明に係る第3の例を示す平面図。
【図10】本発明に係る偽造防止用紙の第3の例を示す断面図(図9のF−F断面)。
【図11】本発明に係る偽造防止用紙の第3の例を示す断面図(図9のG−G断面)。
【図12】図9の偽造防止用紙の真贋判定時の平面図。
【図13】図9の偽造防止用紙の真贋判定時の断面図、及び真贋判定時の入射光、反射光、回折光のモデル図(図9のF’−F’断面)。
【図14】図9の偽造防止用紙の真贋判定時の断面図、及び真贋判定時の入射光、反射光、回折光のモデル図(図9のG’−G’断面)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る偽造防止用紙の第1の例を示す平面図である。
図1の偽造防止用紙1は、基材11上に光学可変素子であるOVD12が帯状に貼付されている。尚、このOVD12はその光学変化を直接目視で観察できれば、窓開き状に基材11中に漉き込まれていたり、帯状ではない別の形状に貼付されていても良い。OVD12は、観察する角度によって図柄や色彩、明るさなどが変化する表示体からなり、図1では例えば破線で囲んだ“OVD”の文字がOVD121であり、図1は真正面から見た図であるため、中央部の“OVD”のOVD121は明るさが暗く、用紙端に近いOVD121では真正面ではなく角度が変化するので、輝度が少し増している。
図1の偽造防止用紙1の基材11には穿孔部13があり、穿孔部13を覆うようにプリズムシート14が貼付されている。尚、このプリズムシート14は、図2に断面を示したようにプリズムの凹凸がある面を基材11側とし、その反対面は平面である。
【0018】
図2は、図1で示した偽造防止用紙1の断面図であり、OVD12が回折構造体である場合の光学的な特性を図示したものである。
OVD12の回折構造部121に照明光121aが入射した場合、正反射光121bと回折光121cが発生し、観察者は121cの角度から観察できるように偽造防止用紙1または顔を傾ける事で回折光121cを観察する事ができる。
【0019】
図3は、本発明の偽造防止用紙1の真贋判定を行う時の状態を示した平面図で、偽造防止用紙1を折り曲げてOVD12にプリズムシート14を密着させながら穿孔部13からOVD12を観察した状態を示している。
【0020】
図4は、図3のB−B断面と回折構造部121の光学的な特性を示したもので、OVD
12の回折構造部121に照明光121aが入射した場合、正反射光121bと回折光121cが発生し、プリズムシート14によって入射光及び反射光、回折光の角度が各々変化する事を示している。
【0021】
図5は、図4におけるプリズムシート14と回折構造部121とが接触した部分Cを拡大した断面図で、プリズムによる光の屈折効果の詳細を示したものである。プリズムシート14は、観察面側に頂角αのV字形状のプリズム構造を有し、その反対面は回折構造部121と密着するために平坦な形状となっている。一方、回折構造部121は、プリズムシート14と接する面が平坦で、その反対面に回折構造であるレリーフが形成されている。
このような構造による屈折効果は、照明光121aがプリズムシート14にθ1の角度で入射した時、空気とプリズムシートの屈折率の差によって照明光121aの入射角度がθ2に変化して回折構造部121に入射する。これにより、回折構造部121では反射光121bと回折光121cが発生し、各々プリズムシートの屈折によって、反射光121bは射出角がθ2からθ1に、回折光121cは射出角がθ4からθ3に変化して射出される。この時の屈折現象は、空気の屈折率とプリズムシートの屈折率との差により発現し、一般的には空気の屈折率は約1.0、プリズムシートに使用できる透明材料であるガラスや樹脂の屈折率は1.5〜2.5程度であるため、空気の1.0よりも大きくなり、スネルの法則(n1Sinθ1=n2Sinθ2)により、θ1>θ2、θ4>θ3となる。
【0022】
図6は本発明に係る偽造防止用紙の第2の例を示す平面図である。図6の偽造防止用紙2には、穿孔部13を覆うように透明部15が設けられており、透明部15の上半分は光の入射や射出の向きを変えるためのV型構造であるプリズム部151であり、透明部15の下半分は透明で平坦な形状からなる平坦部152である。
【0023】
図7は、図6のD−Dの断面、また、図8は、図6のE−Eの断面を示す断面図である。
【0024】
図9は本発明に係る偽造防止用紙の第3の例を示す平面図である。図9の偽造防止用紙3のOVD12には、回折光を発現させるための入射角が異なる2種類の回折構造として、回折構造部121と回折構造部122が形成されており、透明部15には回折構造部121に対応した頂角のプリズム構造部153と、回折構造部122に対応した頂角のプリズム構造部154が形成され、穿孔部13を覆っている。また、図10は、図9のF−F断面の断面図で、図11は、図9のG−G断面の断面図である。
【0025】
図12は本発明の偽造防止用紙3の真贋判定を行う時の状態を示した平面図で、偽造防止用紙3を折り曲げてOVD12にプリズムシート14を密着させながら穿孔部13からOVD12を観察した状態で、図9のF−F及びG−Gは、真贋判定時には図12のF’−F’及びG’−G’のような状態となる。また、図12のように回折構造部121を、プリズム構造部153を通して観察した場合、少ない傾き角で回折構造部121’のような回折光が観察され、回折構造部122もプリズム構造部154を通して観察した場合には、更に正面に近い角度で回折構造部122’のような回折光を観察する事が出来る。
【0026】
図13は、図12におけるF’−F’断面図、図14は図12におけるG’−G’断面図で、更に、各々プリズム構造部153及びプリズム構造部154を通って、光がOVD12に入射し、反射光と回折光が発生する時の光路を示したもので番号末尾にaが付く光路が入射光、番号末尾にbが付く光路が反射光、番号末尾にcが付く光路が回折光を示している
【0027】
以下、本発明の偽造防止用紙の構成について、詳細に説明する。
【0028】
(基材)
基材11は偽造防止用紙1乃至4の基材であり、紙や樹脂の単体またはその積層体、もしくは紙や樹脂の複合単体や積層体、または樹脂を主材料として製造された合成紙など、偽造防止用紙に使用される材料であれば何れの材質でも良い。
【0029】
(OVD)
OVD12は、基材として樹脂フィルムが使用できる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、耐熱塩化ビニルフィルム等が使用できる。これらの樹脂の中で、耐熱性が高く厚みが安定している事から、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが好ましく使用できる。
【0030】
基材上に設けられるOVDとしては、回折構造物に金属反射層を設けたものや、多層薄膜である光学多層干渉膜やコレステリック液晶の層、観察する角度に応じて異なる色彩を見る事ができる粉末を含有するインキ等が利用可能であるが、観察する角度で複数の画像が切り替わったり、色が変化したりする角度を大きく変える事が出来る回折構造体が望ましい。また、偽造防止用紙の基材11に貼付するための接着層を設けても良い。
【0031】
前記レリーフ型回折格子は、その表面に微細な凹凸パターンの形態で回折格子を記録したものである。このような凹凸パターンは、例えば、二光束干渉法を使用して感光性樹脂の表面に互いに可干渉の2本の光線を照射してこの感光性樹脂表面に干渉縞を生成させ、この干渉縞を凹凸の形態で感光性樹脂に記録する事で形成できる。尚、この二光束性干渉法によって形成された干渉縞も回折格子であり、前記2本の光線の選択によって任意の立体画像を回折格子パターンとして記録する事が可能で、観察する角度に応じて異なる画像(以下チェンジング画像と言う)が見られるように記録する事が可能である。
【0032】
本発明に用いられる回折格子構造物により発現する画像パターンを記録する方法については、前記二光束干渉法の他にもイメージホログラムやレインボーホログラム、インテグラルホログラムなど、従来から知られているホログラムの製造方法により作製が可能である。
【0033】
また、レリーフ型回折格子の凹凸パターンは、電子線硬化型樹脂の表面に電子線を照射して、回折格子となる縞状パターンに露光する事によって回折構造物を形成する事も可能である。この場合には、その干渉縞を1本ごとに制御する事ができるため、ホログラムと同様に任意の立体画像やチェンジング画像を記録する事ができる。また、画像をドット状の画素領域に分割し、この画素領域ごとに異なる回折格子を記録し、これら画素の集合で全体の画像を表現する事も可能である。画素は円形のドットの他、星形のドットでも良い。
【0034】
また、誘起表面レリーフ形成法によって、前記凹凸パターンを形成する事も可能である。すなわち、アゾベンゼンを鎖側に持つポリマーのアモルファス薄膜に対して、青色〜緑色に渡る範囲の或る波長を有した数十mW/cm2程度の比較的弱い光を照射する事によって、数μmスケールでポリマー分子の移動を起こし、結果、薄膜表面に凹凸によるレリーフを形成する事ができる。
【0035】
そして、このように形成された凹凸パターンを有するレリーフ型のマスター版の表面に電気メッキ法で金属膜を形成する事によって、レリーフ型マスター版の凹凸パターンを複製し、これをプレス版とする。そして、回折構造121や122を形成するためのOVD
形成層にこのプレス版を熱圧着し、薄膜表面に凹凸パターンからなるレリーフを転写する事で、回折構造体が形成される。
【0036】
このようなOVD形成層に使用される樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂等が使用できる。例えば、熱可塑性樹脂では、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられる。また、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加して架橋させたウレタン樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等が使用できる。また、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂としては、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等が使用できる。
【0037】
前記OVD12が回折構造体の場合には、回折構造体に接するように反射層が設けられる。この場合の反射層としては、反射輝度が高い点で金属薄膜が好ましく利用できる。この金属薄膜に用いられる金属としては、例えば、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、真鍮等が挙げられる。そして、真空製膜法を利用してこの金属薄膜を形成する事ができる。真空製膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用でき、厚みは5〜1000nm程度に制御できれば良い。
【0038】
また、金属粉末や透明材料の粉末を含むインキを印刷して薄膜としても良い。この場合、粉末としては粒子径500nm以下のものが好ましい。薄膜の厚みは0.1〜20μmが好ましく、印刷方式として、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等、公知の印刷方法が利用できる。
【0039】
尚、反射層を任意のパターンに加工して部分反射層としても良い。この部分反射層を形成する方法として、以下の方法が用いられる。
【0040】
即ち、その第1の方法は、前述の印刷方式を利用する方法である。また、第2の方法は、回折構造体に画像パターン状の開口部を有するマスクを重ねて反射層を部分的に各々の工程で真空製膜する事により、画像パターン状に製膜する方法である。
【0041】
その第3の方法は、まず、溶剤溶解性の樹脂層を回折構造体上にネガパターン状に設け、この溶剤溶解性樹脂層を被覆して全面一様な反射層を形成した後、溶剤で前記の溶剤溶解性樹脂層を溶解して除去すると同時に、この溶剤溶解性樹脂層上に重ねられた反射層を除去する事によって、回折構造体上に画像パターン状に残存した反射層を部分反射層とする方法である。
【0042】
また、その第4の方法は、まず、OVD12上に、OVD形成層から剥離しやすい樹脂層をネガパターン状に設け、この樹脂層を被覆して全面一様に反射層を形成した後、粘着ロールや粘着紙等に押し当てる事によって粘着ロールや粘着紙等にネガパターン状に転写させて除去し、結果、反射層が画像パターン状に残存され、部分反射層となる方法である。
【0043】
次に、その第5の方法は、OVD形成層上の全面一様に反射層を形成し、この反射層上に耐薬品性の樹脂層を画像パターン状に設け、アルカリ性または酸性のエッチング液を適用して露出している反射層を溶解して除去し、部分反射層とする方法である。この場合、反射層を画像パターン状に加工したした後、前記耐薬品性樹脂層を除去しても良いが、そのまま部分反射層上に残存させて、耐薬品性を持たせるための保護層として利用する事もできる。
【0044】
次に、その第6の方法はOVD形成層上に全面一様に形成された反射層に感光性樹脂層
を形成し、画像パターン状に露光・現像した後、アルカリ性または酸性のエッチング液を適用して露出した反射層を溶解して除去する方法である。この場合も、残存する感光性樹脂層をそのまま残存させて、耐薬品性を持たせる保護層として利用する事ができる。
【0045】
また、その第7の方法は、全面一様に形成された反射層にレーザ光を照射して除去する事により、残存する反射層がそのまま部分反射層として画像パターン状となる方法である。
【0046】
(接着層)
接着層としては、熱及び圧力によって被転写物である基材11に接着するものであれば良く、公知の感熱性接着材料を使用する事ができる。
【0047】
(その他の層)
図には示さないが、その他の層として各層間の密着性をより強固なものとするためにアンカー層を設けたり、OVD12の全面または一部を着色する着色層を設けたり、文字や絵柄を印刷するために印刷層を追加する事ができる。これらのインキとしては、周知の密着向上剤や接着剤、染料や顔料を用いた着色剤、または印刷インキなどをそれぞれ使用する事ができる。
【0048】
(プリズムシート)
プリズムシート14に使用される基材としては、樹脂フィルムが使用できる。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、耐熱塩化ビニルフィルム等が使用できる。これらの樹脂の中で、耐熱性が高く厚みが安定している事から、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが好ましく使用できる。
【0049】
プリズムシート14におけるV字形状のプリズム構造部を構成するための樹脂としては、可視光が透過できる透明性を有していれば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂等が使用できる。例えば、熱可塑性樹脂では、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
また、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加して架橋させたウレタン樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等が使用できる。この内、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂としては、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等も使用でき、V字のプリズム形状の加工は、切削や金属版による熱圧エンボス、射出成型等により作製出来る。尚、本発明では、透明な樹脂を用いて所望の形状に作製できれば、特に前記樹脂や作製方法に限定されるものではない。
【0050】
また、プリズムシートの形状は、前記OVD12と接する側を平面とし、その反対面を規則的にV型構造としたものである。入射光や回折光、反射光などの各々の光はスネルの法則に従い、プリズムシート14のV型構造の界面に光が臨界角以内の角度で入射する時と射出される時に、各々空気とプリズムシートとの界面で屈折して進み、その屈折角は、プリズムシート14を構成する材料の屈折率nと頂角αによって決まるため、屈折率nと頂角αを適切に設計する事で、回折光の射出角度を任意に設定する事が可能となる。
【実施例】
【0051】
次に、実施例によって本発明を説明する。
<実施例1>
【0052】
本発明第1の例である偽造防止用紙について説明する。
まず、プリズムシートの基材として25μm厚みのポリエチレンテレフタレート(通称PET)フィルムを使用した。この基材に、紫外線硬化タイプのアクリル樹脂をバーコート法により5μmの膜厚に均一に塗布し、角度が79°の頂角を持つV字型の溝が一定間隔で並んだ形状を持つNi製のエンボス版を押し当てながら紫外線を照射して硬化させ、所望のプリズムシートを作製した。
【0053】
次に、偽造防止用紙の原料となる針葉樹パルプを水中で叩解し、サイズ剤(デンプン質)、填料(炭酸カルシウム)を添加したスラリーを作製し、手漉き装置を用いて任意の形状に設計された窓開き部からプリズムシートが露出するように紙層中に漉き込んで脱水、乾燥させ、秤量150g/m2の偽造防止用紙の基材を作製した。
【0054】
次に、OVDとして12μmのPETフィルムを基材とし、この基材の片面に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚1.5μmのOVD形成層を形成した後、ロールエンボス法によりプレス版を熱圧してその表面に回折構造を発生させるための凹凸を同時に形成した。
【0055】
次に、このOVD形成層の全面に真空蒸着法にてアルミニウム蒸着膜を膜厚50nmにて均一に形成し、反射層を形成した。
【0056】
この反射層上に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚3μmのホットメルトタイプの接着層を形成した。
【0057】
最後に、基材上の、漉き込まれているプリズムシートから離れた位置に、帯状のOVDを160℃に熱した熱ロールにより基材に貼付し、本発明第1の事例である偽造防止用紙を作製した。
【0058】
「OVD形成層インキ組成物」
アクリル樹脂 20.0重量部
反応性シリコーン 1.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
【0059】
「接着層インキ組成物」
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 15.0重量部
アクリル樹脂 10.0重量部
シリカ 1.0重量部
メチルエチルケトン 44.0重量部
トルエン 30.0重量部
【0060】
<実施例2>
次に実施例2として、本発明第4の例である偽造防止用紙について説明する。
まず、プリズムシートの基材として25μm厚みのポリエチレンテレフタレート(通称PET)フィルムを使用した
この基材に、紫外線硬化タイプのアクリル樹脂をバーコート法により5μmの膜厚に均一に塗布し、角度が50°の頂角を持つV字型の溝が一定間隔で並んだ形状を持つNi製のエンボス版を押し当てながら紫外線を照射して硬化させ、所望のプリズムシートを作製した。
【0061】
次に、偽造防止用紙の原料である針葉樹パルプを水中で叩解し、サイズ剤(デンプン質)、填料(炭酸カルシウム)を添加したスラリーを作製し、手漉き装置を用いて任意の形状に設計された窓開き部からプリズムシートが露出するように紙層中に漉き込んで脱水、乾燥させ、秤量150g/m2の偽造防止用紙の基材を作製した。
【0062】
次に、OVDの基材として12μmのPETフィルムを基材とし、この基材の片面に、下記組成物からなるインキをバーコート法によって塗布・乾燥し、膜厚2.5μmのOVD形成層を形成した後、回折構造の凹部の深さが400nm、凹部のピッチ(中心間距離)が360nmの凹凸構造と、高さが500nm、ピッチが1μmの波状の凹凸構造の2種類の回折構造を持つNi版を前記OVD形成層に押し当て、PETフィルム面側からOVD形成層に向けて紫外線を照射してインキを硬化させる事により、所望の回折構造を形成した。
【0063】
次に、このOVD形成層の全面に真空蒸着法にてアルミニウム蒸着膜を膜厚50nmにて均一に形成し、反射層を形成した。
【0064】
また、この反射層上に、下記組成物からなるインキを塗布・乾燥し、膜厚3μmのホットメルトタイプの接着層を形成した。
【0065】
最後に、基材上に漉き込まれたプリズムシートから離れた位置に、帯状のOVDを160℃に熱した熱ロールにより基材に貼付し、本発明第4の事例である偽造防止用紙を作製した。
【0066】
「OVD形成層インキ組成物」
紫外線硬化型アクリル樹脂 20.0重量部
メチルエチルケトン 50.0重量部
酢酸エチル 30.0重量部
【0067】
「接着層インキ組成物」
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 15.0重量部
アクリル樹脂 10.0重量部
シリカ 1.0重量部
メチルエチルケトン 44.0重量部
トルエン 30.0重量部
【0068】
<比較例>
比較例として、実施例1及び2におけるプリズムシートが無い他は、全て同じ層構成、材料からなる偽造防止用紙を作製した。
【0069】
実施例1で作製した偽造防止用紙を中心付近で折り曲げ、プリズムシートをOVDに密着させ、プリズムシート越しにOVDを観察したところ、正面から30°の角度で回折光を観察する事が出来た。また、そのままの状態でプリズムシート部を手でずらし、OVDに何も被せない状態でOVDを観察した場合には、この角度では回折光は観察されず、更に角度が大きくなるように傾けた所で回折光が観察された。このように、実施例1で作製した偽造防止用紙では、手でプリズムシートを上下または左右に動かすだけで、観察する角度を変える事無く、OVDの回折光の有り無し状態による真贋判定が可能であり、プリズムシートのおかげで、プリズムシートが無い状態の比較例で作製した偽造防止用紙よりも、より正面に近い角度で回折光を観察する事ができた。
【0070】
次に、実施例2で作製した偽造防止用紙をその中心付近で折り曲げ、プリズムシート部
をOVDに密着させてOVDを観察したところ、正面から15°の角度に傾けた状態で文字の色彩が変化して回折光を観察する事が出来、更にそこから角度を22°に変化させると、更に緑色の回折光を観察する事ができた。一方、プリズムシートがない状態の比較例で作製した偽造防止用紙では、正面から15°及び20°では回折光を観察する事が出来ず、もっと深い角度に傾ける事によって回折光が観察され、観察者によっては水平近くの角度による回折光に気付かない者もいた。よって、プリズムシートを重ね合わせる事で、2種類のOVDの回折光を観察する際に、少ない観察角度変化で観察する事ができ、更に、プリズムシート部を前後、または左右にずらす事で回折光の有無が分かるので、複数種類のOVDが混在しても真贋判定がし易かった。
【0071】
このように、本発明の偽造防止用紙は、プリズムシートを設ける事によって、1種類の回折構造のみならず、複数種類の回折構造を持つ偽造防止用紙でも、容易に回折光を観察する事が可能であり、真贋判定も容易に行える偽造防止用紙である事が分かった。
【符号の説明】
【0072】
1・・・・本発明に係る第1の例である偽造防止用紙
2・・・・本発明に係る第2の例である偽造防止用紙
3・・・・本発明に係る第3の例を示す偽造防止用紙
11・・・・本発明に係る第1の例乃至第4の例を示す偽造防止用紙の基材
12・・・・OVD(光学可変素子)
13・・・・穿孔部
14・・・・プリズムシート
15・・・・透明部
121・・・・回折構造部
122・・・・回折構造部
121a・・・・入射光
121b・・・・反射光
121c・・・・回折光
122a・・・・入射光
122b・・・・反射光
122c・・・・回折光
151・・・・プリズム構造部
152・・・・平坦部
153・・・・プリズム構造部
154・・・・プリズム構造部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的変化を発現させるOVDを有する偽造防止用紙において、偽造防止用紙の基材中または基材上のOVDとは別の部分に、OVDによって発現した反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるプリズム構造を備えた事を特徴とする偽造防止用紙。
【請求項2】
光学的変化を発現させるOVDを有する偽造防止用紙において、偽造防止用紙の基材中または基材上のOVDとは別の部分に透明部を設け、この透明部の少なくとも一部が、OVDによって発現した反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるためのプリズム構造を備えている事を特徴とする請求項1に記載の偽造防止用紙。
【請求項3】
前記OVDが少なくとも2種類からなり、そのOVDの反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるための透明なプリズム構造も少なくとも2種類からなる事を特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止用紙。
【請求項4】
前記OVDの少なくとも1種類が回折光を発現させる回折構造からなり、更にその回折構造の隣接する凸部の中心間距離が200nm〜400nm、凹部の深さが100nm以上である事を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の偽造防止用紙。
【請求項1】
光学的変化を発現させるOVDを有する偽造防止用紙において、偽造防止用紙の基材中または基材上のOVDとは別の部分に、OVDによって発現した反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるプリズム構造を備えた事を特徴とする偽造防止用紙。
【請求項2】
光学的変化を発現させるOVDを有する偽造防止用紙において、偽造防止用紙の基材中または基材上のOVDとは別の部分に透明部を設け、この透明部の少なくとも一部が、OVDによって発現した反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるためのプリズム構造を備えている事を特徴とする請求項1に記載の偽造防止用紙。
【請求項3】
前記OVDが少なくとも2種類からなり、そのOVDの反射光や回折光の入射角と反射角を変化させるための透明なプリズム構造も少なくとも2種類からなる事を特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止用紙。
【請求項4】
前記OVDの少なくとも1種類が回折光を発現させる回折構造からなり、更にその回折構造の隣接する凸部の中心間距離が200nm〜400nm、凹部の深さが100nm以上である事を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の偽造防止用紙。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−126070(P2011−126070A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284989(P2009−284989)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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