説明

偽造防止用素材

【課題】 本発明の目的は、偽造防止効果が高く、かつ真贋判定も容易に行うことのできる偽造防止用素材を提供することにある。
【解決手段】 同一基体(12)平面上に近接して設けられた2以上の多変色性塗装体(14a,14b,14c)が、基体(12)の垂線を基準として−45度の角度をなす入射光に対し、観察角30度から60度で異なる色調を示し、観察角−20度から0度で近似の色調を示すことを特徴とする偽造防止用素材(10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止用素材、特にその偽造防止機構及び意匠性の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、銀行券、株券、小切手などの有価証券類やパスポート、IDカードなどの身分証明書類の偽造が増加しており、その被害は甚大である。またその偽造技術もより高度化しているため、本物と区別し難い精巧な贋物の作製が容易になっており、これらの真贋判定については熟練した鑑定者や特殊な鑑定装置によれば贋物と鑑定し得るが、一般の人では判別が非常に難しくなっている。
偽造防止の手段としては、印刷インキに特殊な材料を用いる、特殊な印刷技巧を用いた印刷を行う(例えば特許文献1、2)、等の方法が提案されている。
【特許文献1】特開平5−177919号公報
【特許文献2】特許2514003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
印刷インキに特殊な材料を用いる偽造防止の一つの手段としては、印刷インキに蛍光顔料等の特殊な材料を使用し、紫外光源下において目視での判別を可能とした印刷物がある。該印刷物は、紫外線領域の特定波長の光を照射すると、蛍光顔料を含むインキによる印刷部が可視領域の特定波長の蛍光を発することから目視での判別が可能となる。
しかし、蛍光材料の入手は比較的容易で、前記蛍光材料を使用した物で複製印刷物を簡単に作製することが可能であり、複製印刷物に使用した前記蛍光材料が前記印刷物に使用されている蛍光顔料と化学構造が異なっても、前記特定波長の光を照射した場合に類似の波長の蛍光(同系色)を発するものであると目視での判別が困難となる。さらに、前記蛍光顔料等の特殊な材料は非常に高価であり、材料コストの割には簡単に偽造されるという問題もある。
【0004】
印刷技法を駆使することにより偽造防止を行うことも可能であり、例えば特許文献1では、有色のオフセット画線と無色透明の凹版画線を角度を変えて重ね刷りすることによって、ある特定の角度から見た場合のみにモアレが認識することが可能な印刷物について示されている。
しかし、特許文献1の手法によれば、贋物を作製することは非常に困難となるが、印刷画像を緻密に設計し、かつそれを再現するための高度な印刷技術を要する。
【0005】
また、外観が美麗であることから、ホログラムが偽造防止素材として使用されることがあるが、ホログラムについても有知識者をもってしては比較的簡単にその偽造が可能であるという問題点を有している。すなわち、身分証明書等の任意部位に形成されたホログラム層に対してレーザ光を照射し、かつ、その反射レーザ光を予めセットした感光性材料へ入射させることにより、上記ホログラム層に形成された凹凸パターンをその感光性材料に複写する、いわゆるデッドコピーが比較的容易に行えるからである。
【0006】
また、最近では、セキュリティを要する物品には、新しい意匠性を持ち、偽造防止効果の高い偽造防止要素が望まれている。
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、その目的は、偽造防止効果が高く、かつ真贋判定も容易に行うことのできる偽造防止用素材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明者らは、多変色性塗装体の観察角度による色調の変化を利用し、偽造防止効果及び意匠性を同時に高めることを実現した。
すなわち、本発明の偽造防止用素材は、同一基体平面上に近接して設けられた二つ以上の多変色性塗装体が、基体の垂線を基準として−45度の角度をなす入射光に対し、観察角30度から60度で異なる色調を示し、観察角−20度から0度で近似の色調を示すことを特徴とする。
なお、ここでいう「近接」とは、二つの塗装体の各境界が完全に重なっているもの、間に僅かな間隙を設けて配置しているもの、のいずれの場合も指している。
上記の偽造防止用素材において、前記同一基体平面上に近接して設けられた二つ以上の多変色性塗装体の色差が、観察角0度で5以下、観察角30度で10以上であることが好適である。
上記の偽造防止用素材において、前記多変色性塗装体は、有色干渉顔料を構成要素として含み、該有色干渉顔料は、薄片状物質と該薄片状物質を被覆する被覆層とで構成されていることが好適である。
上記の偽造防止用素材において、前記有色干渉顔料の被覆層は、前記薄片状物質と異なる屈折率を持つ無色誘電体層からなる第1の層、及び着色層からなる第2の層が積層された構成であることが好適である。
上記の偽造防止用素材において、前記着色干渉顔料の被覆層は、高屈折率の無色誘電体層からなる第1の層、及び低屈折率の無色誘電体層からなる第2の層、及び高屈折率の無色誘電体層からなる第3の層、及び着色層からなる第4の層が積層された構成であることが好適である。
上記の偽造防止用素材において、前記着色層がアルミン酸コバルト、コバルト含有ガラスまたは酸化コバルトからなることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の偽造防止用素材によれば、同一基体平面上に近接して設けられた二つ以上の多変色性塗装体が、基体の垂線を基準として−45度の角度をなす入射光に対し、観察角30度から60度で異なる色調を示し、観察角−20度から0度で近似の色調を示すことにより、容易に真贋判定ができ、また高い偽造防止効果及び意匠性を持つ偽造防止用素材を提供することができる。
また、本発明の偽造防止用素材によれば、多色性塗装体の構成要素として有色干渉顔料を用いたことにより、近接して設けられた二つ以上の多変色性塗装体が、近似の色調を持つ場合と、異なる色調を持つ場合とをはっきりと区別することができるため、真贋判定も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照して説明する。また、以下の実施形態により、本発明の範囲を限定するものではない。
図1は、本発明に係る実施形態の偽造防止用素材の平面図である。同図の偽造防止用素材10は、基体12と、該基体平面上に近接して設けられた複数の多変色性塗装体14a、14b、14cとによって構成される。
なお、本明細書中でいう「近接」とは、二つの塗装体の各境界が完全に重なっているもの、各境界間に僅かな間隙(数ミリ程度)を設けて配置しているもの、のいずれの場合も指している。例えば、二つの塗装体間の間隙が数mmのものや、その間に他の塗装体を設けたものでもよい。
図2のように、基体12平面に対する垂線を基準として、−45°方向から白色光光源の光を基体12へ入射する。光の入射面で観察方向の角度(同図のα)を変え、異なる角度から観察したときの近接する多色性塗装体の色差を測定する。ここで、基体の垂線に対して、光源のある方向を−(マイナス)方向、逆側方向を+(プラス)方向とする。すると、本実施形態の偽造防止用素材では、拡散色が強く観察される角度領域(−20°〜0°の領域)では近似の色調を呈し、それ以外の角度領域(30°〜60°の領域)では異なる色調を呈する。
色差ΔEは、CIELab表色系で、L値の差ΔL、a値の差Δa、及びb値の差Δbを用いて、下記の式で定義される。
【数1】

そして、近似の色差とは、上記色差ΔEが5未満のこととする。また、色差ΔEが10以上のときを異なる色と定義する。
さらに、観察角が0°のとき、近接する多色性塗装体の色差が5以下、観察角が30°で色差が10以上であることが好適である。
本実施形態では、多変色性塗装体が被覆層を有する薄片状物質からなる有色干渉顔料をその構成要素として含んでおり、それぞれの多変色性塗装体に含まれる有色干渉顔料の干渉層の光学的厚さを変えることで異なる干渉色を発現させるようにする。すると、正反射光が強く観察される角度領域では、有色干渉顔料の干渉色が強く観察されるため、それぞれの多変色性塗装体は異なった色調に観察される。一方、有色干渉顔料の干渉層の外側に着色層を設けているため、拡散反射光が強く観察される角度領域では、着色層そのものの色調が強く発現する。そのため、拡散光が強く観察される角度領域では、近似の色調を発現させることが可能となる。
有色干渉顔料の着色層としては、アルミン酸コバルト、コバルト含有ガラスまたは酸化コバルトの青色顔料を用いることが好適である。
図3は、図1の実施形態の変形例である。同図の偽造防止用素材10では、多色性塗装体14a,14b,14cを同心円状に設けている。なお、図1、図3で示した多色性塗装体の配置に限定されず、その他の配置も可能である。さらに、これらは配置の例を示したものであり、近接する画線のエッジ部分にグラデーションを持たせたり、画線の間に非印刷部分を設けてもよい。こうすることによって、拡散反射光が強く観察される角度での色調の一致をより強く認識させることができる。同様に近接する画線の境界部分に黒等の線を配して、拡散反射光が強く観察される角度で、近接する画線の重なりによって強調されてしまう境界部分の重なりまたは非印刷部をカムフラージュできる。
また、塗装体を基体に描かれた模様、文字等を認識することができる程度に塗装体の厚さや顔料配合率を調整すると、パスポートや免許証等の証明書、カード等に印刷された写真、文字等の上に設ける場合に対応できる。また、パーソナルデータが後で印字等される製品に対しても、用紙にあらかじめ近接して有色干渉顔料を使用した画線を設けておいても、有色干渉顔料を含む画線の上に印刷または印字をすることもできる。
また、上記の偽造防止用素材の製造方法において、塗装体を基体に印刷する工程の印刷方法としては、フレキソ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、孔版印刷のいずれか又は二つ以上を適宜選択することができる。
【0011】
有色干渉顔料
本実施形態で用いる多色性塗装体の構成要素としての有色干渉顔料について以下に述べる。図4に示す有色干渉顔料20は、薄片状物質22と、該薄片状物質22を被覆する被覆層24とで構成されている。また、図4の実施形態では、被覆層24は、薄片状物質と異なる屈折率を有する無色誘電体層からなる干渉層26と、着色層28とからなっている。
本実施形態では、薄片状物質として白雲母系雲母を、干渉層として薄片状物質より高い屈折率を有する二酸化チタンを用いる。
また、着色層としては、アルミン酸コバルト、コバルト含有ガラスまたは酸化コバルトを用いることが好適である。着色層は、着色干渉顔料の最外層となるため、上記の材料を用いることで、濃酸、濃アルカリに対して安定であり、優れた耐熱性を有することになる。また、上記の材料は、高い透明性を持つため、干渉層によって生じる干渉色と組み合わせることで、高い多変色性を得ることができる。
図5は、有色干渉顔料の他の実施形態である。図4に対応する構成要素には符号100を加え説明を省略する。
図5の有色干渉顔料120では、被覆層124は、干渉層126と、該干渉層128を被覆する着色層とを含んでおり、干渉層126は、高屈折率の無色誘電体層からなる第1の層126a、その上を被覆する低屈折率の無色誘電体層からなる第2の層126b、さらにその上を被覆する高屈折率の無色誘電体層からなる第3の層126cとで構成されている。
つまり、干渉層126は、互いに異なる屈折率を持つ無色誘電体層を交互に積層して構成されている。ここで、二つの層の屈折率の差は1.5以上が好適である。
本実施形態では、薄片状物質として雲母を、高屈折率の無色誘電体層として二酸化チタンを、低屈折率の無色誘電体層として、二酸化ケイ素を用いた。干渉層を三層とすることで、高い彩度の干渉色を得ることができる。
上記の高屈折率の無色誘電体層としては、上記で示したもの以外にも、例えば、ZrO、CeO、In、ITO、SnO、ZnO等が挙げられる。
低屈折率の無色誘電体層としては、上記で示したもの以外にも、例えば、MgF、CaF、Al、MgO等が挙げられる。
着色層としては、上記で示したもの以外にも、例えばリチウムコバルトチタネート、ニッケルコバルトチタネート等を用いてもよい。また、特許文献2に示されたものの中から、干渉色の異なる光輝性顔料を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
以上のような有色干渉顔料を塗料組成物に適宜配合して、多色性塗料として用いる。塗料組成物としては、特に限定されないが、バインダー樹脂、溶剤等が配合されたものが挙げられる。
バインダー樹脂とは、顔料混合粉体を基材上に安定に密着させうる樹脂であり、溶剤型インキ、紫外線硬化型インキ等を使用することができ、基材上に塗工後は顔料混合粉体を包埋した状態で基材上に被膜を形成するものである。インキの種類は基材との相性や、形成被膜被膜強度、膜厚等によって選択されるので特に限定されないが、通常塗料や印刷インキのバインダーとして用いられているものを使用することができる。
【0013】
上記インキの印刷方法としては、フレキソ印刷、グラビア印刷、凸版印刷、孔版印刷等の方法があり、適切な方法を選択すればよい。
【0014】
溶剤型インキは主に色材、熱可塑性樹脂、溶剤等からなりたっている。熱可塑性樹脂としては、ギルソナイト、マレイン酸樹脂、環化ゴム、硬化ロジン、石油樹脂、ニトロセルロース、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、アマニ油、変性フェノール樹脂、フマル酸樹脂、エポキシエステル樹脂、エポキシアミノ樹脂、エポキシフェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、鉱油ワニス、ケトン樹脂、塩化ゴム、エチルセルロース、尿素樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0015】
また、本実施形態に係る多色性塗料に配合される溶剤としては、一般に塗料やインキに用いられる溶剤を用いることが可能であり、通常バインダー樹脂を良好に溶解して作業性を向上させ、且つこの樹脂溶液中に光輝性有色顔料が良好に分散配合できるものであれば特に限定されない。例えば、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。溶剤としては揮発性の有機溶剤が多く用いられるが、場合によっては水等を配合しても良い。
【0016】
本発明の金属光沢を有する組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲であれば組成物の特性を調節するために前記必須成分の他に通常塗料やインキに配合されている各種添加剤を配合してもよい。例えば、可塑剤、ワックス、湿潤剤、安定剤、染顔料、静電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、レベリング剤、重合禁止剤、フィラー剤、沈降防止剤等が挙げられる。
【0017】
紫外線硬化型インキは、主に色材、プレポリマー、モノマー、光開始剤、添加剤等よりなっている。
プレポリマーとしては、アクリル系が主流であり、UVインキの主成分である。例えば、ポリオールアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、アルキドアクリレート、ポリエーテルアクリレート等である。ポリオールアクリレートとしては、ペンタエリスリトールアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等がある。エポキシアクリレートとしては、エポキシ化乾性油アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルアクリレート、変性ビスフェノールAエポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレート、脂肪族エポキシアクリレート等がある。ウレタンアクリレートとしては、ポリカーボネイトアクリレート、ヒドロキシル基含有アクリレート、ジイソシアネートとヒドロキシル含有物の反応生成物等がある。ポリエステルアクリレートとしては、油類、変性アルキド、変性ポリエステルなどをベースとして、これにアクロイル基を導入し、さらにウレタン化したようなものがある。
【0018】
モノマーとしては、モノアクリレート、ジアクリレート、トリアクリレートがある。モノアクリレートとしては、ヒドロキシブチルアクリレート、ジシクロペンタジエンアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、シクロヘキシルアクリレート等がある。ジアクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等がある。トリアクリレートとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等がある。
【0019】
光開始剤としては、アリルケトン型や、ベンゾフェノンとその誘導体等が使用される。また、アミンやチオールは水素供与体として添加される。
【0020】
添加剤としては、ミスト防止剤、滑剤、酸化防止剤、乾燥剤、湿潤剤、粘度改良剤、ワックス等が挙げられる。
【0021】
本発明において配合される顔料は、疎水性、分散性、耐光性等の向上の目的から、表面処理を行っても良い。表面処理剤としては特に制限されないが、例えばシリコーン油、脂肪酸金属塩、アルキルリン酸、アルキルリン酸のアルカリ金属塩又はアミン塩、N−モノ長鎖(炭素数8〜22)脂肪族アシル塩基性アミノ酸、パーフルオロアルキル基を有するリン酸エステル等が挙げられる。
【0022】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。まず、本実施形態で用いられる有色干渉顔料の製造例1〜6を次に示す。
製造例1
金色干渉を有するルチル型二酸化チタン/シリカ/ルチル型二酸化チタン被覆雲母(メルク社製Timiron Splendid Gold)100重量部に対し、水1000重量部を加え、攪拌分散させた。これに、含水塩化コバルト(CoCl・6HO)11.89重量部、含水硫酸アルミニウム(Al(SO・14HO)72.27重量部を水に溶解して水溶液にして滴下し、攪拌しながら80℃まで昇温した。さらに2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)を滴下して、溶液のpHを9に調整した。生成したTi-Co-Al系複合酸化物被覆雲母を濾過、水洗し、150℃で12時間乾燥させた後、900℃で1時間焼成した。得られた粉末は水色の外観色を有し、金色の干渉色を発するものであった。
【0023】
製造例2
赤色干渉を有するルチル型二酸化チタン/シリカ/ルチル型二酸化チタン被覆雲母(メルク社製Timiron Splendid Red)100重量部に対し、水1000重量部を加え、攪拌分散させた。これに、含水塩化コバルト(CoCl・6HO)11.89重量部、含水硫酸アルミニウム(Al(SO・14HO)72.27重量部を水に溶解して水溶液にして滴下し、攪拌しながら80℃まで昇温した。さらに2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)を滴下して、溶液のpHを9に調整した。生成したTi-Co-Al系複合酸化物被覆雲母を濾過、水洗し、150℃で12時間乾燥させた後、900℃で1時間焼成した。得られた粉末は水色の外観色を有し、赤色の干渉色を発するものであった。
【0024】
製造例3
緑色干渉を有するルチル型二酸化チタン/シリカ/ルチル型二酸化チタン被覆雲母(メルク社製Timiron Splendid Green)100重量部に対し、水1000重量部を加え、攪拌分散させた。これに、含水塩化コバルト(CoCl・6HO)11.89重量部、含水硫酸アルミニウム(Al(SO・14HO)72.27重量部を水に溶解して水溶液にして滴下し、攪拌しながら80℃まで昇温した。さらに2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)を滴下して、溶液のpHを9に調整した。生成したTi-Co-Al系複合酸化物被覆雲母を濾過、水洗し、150℃で12時間乾燥させた後、900℃で1時間焼成した。得られた粉末は水色の外観色を有し、緑色の干渉色を発するものであった。
【0025】
製造例4
赤色干渉を有するルチル型二酸化チタン被覆雲母(メルク社製Iriodin211)100重量部に対し、水1000重量部を加え、攪拌分散させた。これに、含水塩化コバルト(CoCl・6HO)11.89重量部、含水硫酸アルミニウム(Al(SO・14HO)72.27重量部を水に溶解して水溶液にして滴下し、攪拌しながら80℃まで昇温した。さらに2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)を滴下して、溶液のpHを9に調整した。生成したTi-Co-Al系複合酸化物被覆雲母を濾過、水洗し、150℃で12時間乾燥させた後、900℃で1時間焼成した。得られた粉末は水色の外観色を有し、赤色の干渉色を発するものであった。
【0026】
製造例5
緑色干渉を有するルチル型二酸化チタン被覆雲母(メルク社製Iriodin231)100重量部に対し、水1000重量部を加え、攪拌分散させた。これに、含水塩化コバルト(CoCl・6HO)11.89重量部、含水硫酸アルミニウム(Al(SO・14HO)72.27重量部を水に溶解して水溶液にして滴下し、攪拌しながら80℃まで昇温した。さらに2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)を滴下して、溶液のpHを9に調整した。生成したTi-Co-Al系複合酸化物被覆雲母を濾過、水洗し、150℃で12時間乾燥させた後、900℃で1時間焼成した。得られた粉末は水色の外観色を有し、緑色の干渉色を発するものであった。
【0027】
製造例6
金色干渉を有するルチル型二酸化チタン被覆雲母(メルク社製Iriodin201)100重量部に対し、水1000重量部を加え、攪拌分散させた。これに、含水塩化コバルト(CoCl・6HO)11.89重量部、含水硫酸アルミニウム(Al(SO・14HO)72.27重量部を水に溶解して水溶液にして滴下し、攪拌しながら80℃まで昇温した。さらに2mol/lの水酸化ナトリウム水溶液(NaOH)を滴下して、溶液のpHを9に調整した。生成したTi-Co-Al系複合酸化物被覆雲母を濾過、水洗し、150℃で12時間乾燥させた後、900℃で1時間焼成した。得られた粉末は水色の外観色を有し、金色の干渉色を発するものであった。
【0028】
実施例1
表1に示す処方例1、2、3の各配合量(重量比で示した)で混合した粉末1重量部とニトロン(武蔵塗料製)15重量部をホモディスパーにて均一に分散した後、10μmのバーコーターにてコート紙上に塗工し、室温にて乾燥を行い、膜厚3μmの塗装体を得た。
【0029】
比較例1
表1に示す処方例1、2、3の各配合量で混合した粉末1重量部とニトロン(武蔵塗料製)15重量部をホモディスパーにて均一に分散した後、50μmのバーコーターにてコート紙上に塗工し、室温にて乾燥を行い、膜厚14μmの塗装体を得た。
【0030】
実施例2
表1に示す処方例1、2、3の各配合量で混合した粉末1重量部とグラビア印刷用メジュ−ム10重量部を均一に混合し、分散させた後、あらかじめ文字が印刷されているコート紙にグラビア印刷を行い、膜厚2μmの塗装体を得た。
【0031】
【表1】

【0032】
試験例1
粉末1重量部とニトロン(武蔵塗料製)15重量部とをホモディスパーで均一に分散させ、バーコーターにてコート紙上に塗布した塗装体を乾燥後、20×100mmの大きさに切り取り測定用試料とした。測定はJIS Z 8723に記載された色比較用ブース内で人工昼光白色光源を使用し、試料の法線から−45度の角度で光を照射し、観察角度0度方向及び30度方向での色調の一致について視感により2以上の試料を離間して判定を行った。視感判定の評価基準は観察角度0度方向での色調が同一と認められる場合を5、色調が同一と認められない場合を1として5段階で評価を行い、観察角度30度方向での色調が同一と認められない場合を5、色調が同一と認められる場合を1として5段階で評価を行った。
【0033】
試験例2
粉末1重量部とニトロン(武蔵塗料製)15重量部とをホモディスパーで均一に分散させ、バーコーターにてコート紙上に塗布した塗装体を乾燥後、20×100mmの大きさに切り取り測定用試料とした。村上色彩技術研究所製の変角分光測色機(GCMS−3)、光源としてハロゲンランプを用い、測色を行った。基体の法線を基準として、入射角−45度で光を入射させ、受光角を−25度から65度まで10度間隔で変更しながら測定をおこなった(図2を参照)。
【0034】
図6は実施例1の各多変色素材を試験例2に従い測色し、(CIELab表色系)のa値b値をプロットしたものである。図6から分かるように、実施例1では拡散色が強く観察される角度域(−20°〜0°の間)では近似色を呈し、それ以外の干渉色の影響を受ける角度域(30°〜60°の間)では、干渉色に応じた鮮やかな色調をしている。
一方、図7は比較例1の多変色素材を試験例1に従い測色しa値b値をプロットしたものであるが、干渉色に起因する正反射近傍の彩度は高いものの、低反射角度領域では青色顔料の色調に干渉の色調が加わるため、近似色を示す角度域が非常に狭い。
【0035】
表2は実施例1、比較例1の各多変色素材を試験例1に準じて視感評価を行った結果であり、表3は実施例1の各多変色素材の色差を測定したものであり、表4は比較例1の各多変色素材の色差を測定したものである。表3から分かるように、実施例1では各多変色素材の受光角30度未満では、色差はそれほど大きく無いものの、30度以上で急激に色差が増大する。一方、比較例1では30度以上で急激に色差が増大するものの、30度未満でも、色差が大きく、色調の近似が実現されていない。
この試験結果から分かるように、同一基体平面上に近接して設けられた二つ以上の多変色性塗装体が、基体の垂線を基準として−45度の角度をなす入射光に対し、観察角30度から60度で異なる色調を示し、観察角−20度から0度で近似の色調を示すこと、色差が観察角0度で5以下、観察角30度で10以上であることが必要である。また、実施例1や比較例1のような塗装体中の顔料配合率(質量比)が19%である場合、観察角度が−20°〜0°の範囲で色差が5未満の近似色を得るためには塗装体の膜厚を10μm以下にする必要がある。
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
試験例3
粉末1重量部とグラビア印刷用メジューム10重量部を均一に混合し分散させた後、文字が印刷されているコート紙にグラビア印刷を行い、乾燥後自然昼色光照明下で目視にて角度による色調の変化と基体に印刷された文字を確認した。
実施例2を試験例2に従いその色調を確認すると、観察角度を変えることである角度では同一の淡青色と認識される色から干渉色に対応した金色、赤色、緑色に各々変化し、さらに基体に印刷された文字が十分に確認することができた。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係る偽造防止用素材の概略構成図
【図2】多変色性塗装体の角度による色調変化の観察方法の説明図
【図3】本発明の実施形態に係る偽造防止用素材の概略構成図
【図4】本発明の実施形態に用いられる有色干渉顔料の概略構成図
【図5】本発明の実施形態に用いられる有色干渉顔料の概略構成図
【図6】本発明の実施例1に係る多変色性塗装体の角度による色調変化を示す図
【図7】本発明の比較例1に係る多変色性塗装体の角度による色調変化を示す図
【符号の説明】
【0041】
10 偽造防止用素材
12 基体
14a 多色性塗装体
14b 多色性塗装体
14c 多色性塗装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一基体平面上に近接して設けられた二つ以上の多変色性塗装体が、基体の垂線を基準として−45度の角度をなす入射光に対し、観察角30度から60度で異なる色調を示し、観察角−20度から0度で近似の色調を示すことを特徴とする偽造防止用素材。
【請求項2】
請求項1記載の偽造防止用素材において、
前記同一基体平面上に近接して設けられた二つ以上の多変色性塗装体の色差が、観察角0度で5以下、観察角30度で10以上であることを特徴とする偽造防止用素材。
【請求項3】
請求項1及び2記載の偽造防止用素材において、
前記多変色性塗装体は、有色干渉顔料を構成要素として含み、
該有色干渉顔料は、薄片状物質と該薄片状物質を被覆する被覆層とで構成されていることを特徴とする偽造防止用素材。
【請求項4】
請求項3記載の偽造防止用素材において、
前記有色干渉顔料の被覆層は、前記薄片状物質と異なる屈折率を持つ無色誘電体層からなる第1の層、及び着色層からなる第2の層が積層された構成であることを特徴とする偽造防止用素材。
【請求項5】
請求項3記載の偽造防止用素材において、
前記着色干渉顔料の被覆層は、高屈折率の無色誘電体層からなる第1の層、及び低屈折率の無色誘電体層からなる第2の層、及び高屈折率の無色誘電体層からなる第3の層、及び着色層からなる第4の層が積層された構成であることを特徴とする偽造防止用素材。
【請求項6】
請求項4または5のいずれかに記載の偽造防止用素材において、
前記着色層がアルミン酸コバルト、コバルト含有ガラスまたは酸化コバルトからなることを特徴とする偽造防止用素材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−231608(P2006−231608A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47049(P2005−47049)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】