説明

偽造防止用ICラベル

【課題】高いセキュリティ機能を有し、高精度な真贋判定を行うことができる偽造防止用ICラベルを提供する。
【解決手段】偽造防止用ICラベル1は、粘着剤が設けられたラベル基材2と、ラベル基材に設けられ、識別情報を記憶したICチップ3と、識別情報を送信する、一方向に延びる線状のアンテナ4とを有するICタグ7と、ラベル基材上に、アンテナの短辺方向に並べて設けられたセキュリティ機能層13とを備え、ラベル基材とICタグに切込みが形成されており、ラベル基材に形成された切込みの少なくとも一部は、セキュリティ機能層が設けられた側において、ICタグに形成された切込みと平面視において連続し、かつ、ラベル基材の周縁に達しないように形成されており、ラベル基材は、アート紙または上質紙から形成され、粘着剤は、粘着力が8000mN/25mm以上、150N/25mm以下の感圧性接着剤であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品やその包装物に貼り付けて使用する偽造防止用ICラベルに関する。
本願は、2006年5月16日に出願された特願2006−136284号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、高級酒などの高価な商品や電化製品の消耗品など、偽造防止を要する物品などにおいては、それらの真贋を判定するために、商品本体やそれを包装したケース等に封印ラベルが貼り付けられる。
しかし、不正業者などが、正規物品を偽造した不正物品を扱う場合、正規物品に貼り付けられている封印ラベルに類似した封印ラベルをその不正物品に貼り付けることがあり、そのような場合、購入者が正規物品と不正物品とを見分け難くなる。
【0003】
そこで、高いセキュリティ機能を有するICタグを搭載することで、偽造防止機能を持つ封印ラベル等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特に、固有の識別情報が記憶されたICチップを埋め込むことで、個々の商品の判別が可能となる。
また、貼り替え防止のために、貼り替えの痕跡が残る溶剤発色紙を用いたセキュリティシールも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−150924号公報
【特許文献2】特開平10−250228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような封印ラベル自体は、カラーコピーなどの手段によって容易に偽造できる。したがって、正規物品に貼り付けられている封印ラベルからICタグのみを取り外し、その取り外したICタグを偽造した封印ラベルに貼り付けることによって、ICタグを容易に使い回すことができてしまうという問題がある。そのため、真贋判定の精度が低下してしまう。
また、封印ラベルを貼り付けずにICタグのみを貼り付けた場合には、見た目での真贋判別が困難である。また、この場合にICタグが破損すると、ICタグの情報読み取りが不可能となり、真贋判別ができなくなる。
【0006】
従来の溶剤発色紙は、溶剤発色層に塩基性染料や顕色剤が含まれており、この溶剤発色層上に印刷を施すことは従来考慮されていない。従来の溶剤発色紙においては、顕色剤の作用により溶剤発色層の凝集力が低いので、溶剤発色層の上層に施した印刷部が剥離するという問題がある。溶剤発色層の凝集力を高めるために顕色剤の添加量を調整しても、所定の溶剤でラベルが剥離された場合には、発色による剥離痕が残らない。さらに、顕色剤が用いられているために、サーマル紙が経時とともに退色するのと同様に、溶剤発色紙も経時とともに退色してしまう。退色は湿度や温度に応じて顕著となるので、従来の溶剤発色紙は、数ヶ月にわたり使用されるセキュリティシールには不向きである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、より高いセキュリティ機能を有し、高精度な真贋判定を行うことができる偽造防止用ICラベルの提供を目的とする。
【0008】
本発明の偽造防止用ICラベルは、被貼付体に貼り付けるための粘着剤が設けられたラベル基材と、前記ラベル基材に設けられ、所定の識別情報を記憶したICチップと、前記識別情報を無線で送信する、一方向に延びる線状のアンテナとを有する非接触IC媒体と、前記ラベル基材上に、前記アンテナの短辺方向に並べて設けられたセキュリティ機能部とを備え、前記ラベル基材と前記非接触IC媒体に切込みが形成されており、前記ラベル基材に形成された切込みの少なくとも一部は、前記セキュリティ機能部が設けられた側において、前記非接触IC媒体に形成された切込みと平面視において連続し、かつ、前記ラベル基材の周縁に達しないように形成されており、前記ラベル基材は、アート紙または上質紙から形成され、前記粘着剤は、粘着力が8000mN/25mm以上、150N/25mm以下の感圧性接着剤であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の偽造防止用ICラベルによれば、高いセキュリティ機能を有し、高精度な真贋判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明に係る偽造防止用ICラベルの第1の実施形態における偽造防止用ICラベルおよび剥離シートの側断面図である。
【図2】図2は、同偽造防止用ICラベルの平面図である。
【図3A】図3Aは、本発明に係る偽造防止用ICラベルの第2の実施形態を示す側断面図である。
【図3B】図3Bは、同偽造防止用ICラベルの平面図である。
【図4A】図4Aは、本発明に係る偽造防止用ICラベルの第3の実施形態を示す平面図である。
【図4B】図4Bは、同偽造防止用ICラベルの側面図である。
【図4C】図4Cは、同偽造防止用ICラベルのICチップとアンテナとの分解図である。
【図5】図5は、商品が内蔵されたボックスにICラベルを貼り付けて封印した状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、ICタグをラベル基材に対して傾斜させて設けた偽造防止用ICラベルを、被貼付体に貼り付けた様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態におけるICラベル(偽造防止用ICラベル)について、図面を参照して説明する。
図1及び図2は、本発明の第1の実施形態に係るICラベルを示す。
【0012】
<第1の実施形態>
(ICラベル1の構造および動作)
ICラベル(偽造防止用ICラベル)1は、矩形シート状のラベル基材2を備えている。
ラベル基材2の両主面のうち、第1主面2aには、後述する溶剤発色層(溶剤検出部)15が設けられている。溶剤発色層15の表面には、被貼付体の名称などの各種情報が印刷された印刷層11が設けられている。
ラベル基材2の第2主面2bには、ラベル基材2を被貼付体に貼り付けるための接着層(粘着剤)5が設けられている。
【0013】
接着層5の表面には、無線通信を行うためのICタグ(非接触IC媒体)7が設けられている。さらに、接着層5の表面には、容易に剥離できるような剥離シート6が仮粘着されている。剥離シート6としては、紙製又はプラスチック製のシートにシリコン樹脂などの離型剤層がコーティングなどによって積層されているセパレータが用いられる。
ICタグ7には、駆動電池を持たないパッシブ型のICチップを有する。パッシブ型に代えて、ICチップの駆動電池を有するアクティブ型を用いてもよい。この場合には、ICタグ7の構造は煩雑化するが、読取り距離を伸張できる。
【0014】
ICタグ7は、ベースフィルム8によって接着層5に貼り付けられている。ICタグ7は、アルミや銅などの金属により形成されたアンテナ4と、このアンテナ4の長手方向の中央部に搭載され、アンテナ4に電気的に接続されたICチップ3とを備えている。
【0015】
アンテナ4は、例えば、送受信される電波がマイクロ波以上の周波数を有するとき、使用周波数の波長をλとすると、アンテナ4の長手方向の長さをλ/2近傍に設定すると、電波の送受信効率の良いダイポール形のアンテナとして形成可能である。
例えば、電波の使用周波数を2.45GHzとすると、ダイポール型におけるアンテナ4の長手方向の最適長さは約40mm〜60mm程度である。
【0016】
アンテナ4は、図示しない情報読取装置からの電波を受け、その長手方向に生じる電位差を、駆動電力としてICチップ3に供給する。ICチップ3の動作に十分な電力が供給できる程度の強度を有する電波をアンテナ4が受信すると、ICチップ3は稼動状態となる。
【0017】
一般的に、偽造防止用ICラベルは、ICチップを破壊せずに剥ぎ取る事ができないように、すなわちICチップの破損を伴わない貼り替えが困難であるように製造される。よって、偽造防止用ICラベルを貼り付けた後で意図せずに生じるICチップの破損は極めて重大な問題であるから、破損しにくいICチップを用いる必要がある。
【0018】
ICチップに、幅と奥行きがそれぞれ0.5mm以下、高さ0.1mm以下という寸法のものを採用した場合、ICチップが著しく機械的破壊に対して強くなる事が、以下の文献に技術的根拠と共に示されている。
文献「IEEE MICRO,NOVEMBER−December 2001,20
01, “An Ultra Small Individual Recognition Security Chip”, Kazuo Takaragi,et al」
よって、ICラベル1に、幅と奥行きがそれぞれ同時に0.5mm以下、高さ0.1mm以下という寸法のICチップを採用した場合、ICチップの破損を防止できる。
【0019】
本実施形態のICチップ3は、正方形状に形成されており、その辺部の長さ寸法が0.5mm、高さ寸法が0.1mmとされている。
辺部の長さ寸法は、0.5mmに代えて、適宜変更可能である。
ICチップ3の形状は、例えば長方形状などに、適宜変更可能である。
このような寸法のチップは、例えば幅0.4mm、奥行き0.4mm、高さ0.1mm程度という寸法にて、(株)日立製作所のミューチップ(登録商標)で既に実現されており、技術的にそのようなICチップを量産製造する事が可能である事が周知となっている。
【0020】
ICチップ3の動作に十分な電力を供給できる程度の強度を有する電波が照射されると、電波を受信したアンテナ4からの電力供給を受けて、ICチップ3は稼動状態となる。
情報読取装置から放射される電波に対して、放射強度の変調をしたり、又は放射強度の変調をしながら強度変調のタイミングや位相を変化させたりすることにより、情報読取装置は、読み出しのためのタイミング信号やコマンドを、放射される電波に重畳させてこれらをICチップ3に送信する。
【0021】
ICチップ3は、情報読取装置からの電波に重畳されたタイミング信号やコマンドに合わせて、ICチップ3が有する情報を情報読取装置に返送する。例えば、ICチップ3が有する情報を元に、情報読取装置から放射される電波の強度変調に合わせて、ICチップ3自身が有するインピーダンスの値を変化させることで、ICタグ7から再放射される電波の強度を変化させる。情報読取装置は、この再放射の強度を測定する事で、ICチップ3に格納されている情報を読み出す。
【0022】
このような情報読取装置からICチップ3に対するタイミング信号やコマンドの送信の手続き、及びICチップ3から情報読取装置に対する情報の伝達の手続きの事を、エアプロトコルと称する。
使用周波数がマイクロ波の周波数未満の周波数の場合、例えば13.56MHzとすると、ダイポールアンテナではなく、コイル状のアンテナが多用される。
【0023】
上記は、偽造防止用ICラベルに用いられるICチップの情報読み出し動作の一例である。
ラベル基材を剥離しようとすると、ICタグが破断することにより、アンテナの長手方向の電圧差の発生効率が低下したり、アンテナとICチップとのインピーダンスマッチングの条件が悪くなったり、又はアンテナとICチップとの電気的接続が破断されるなどして、ICチップの稼動が停止したり、ICチップからの情報読み出しが正常に行われなくなる。ICチップの情報が読み出せないということは、アンテナやICチップの不具合、及びこの組み合わせ条件の悪化を意味する。これは偽造防止用ICラベルの破壊や剥離を試みようとした履歴、又はそのような行為が現存する可能性を示唆する。
【0024】
(ICラベル1の識別情報および複製防止)
本実施形態のICタグ7においては、ICチップ3に、このICチップ3を識別するための識別ID(識別情報)が記憶されている。すなわち、ICチップ3は、メモリを備えており、このメモリに識別IDが記憶されている。
本実施形態において、ラベル基材2の第1主面2aには、それ自身の複製を防止するためのセキュリティ機能層(セキュリティ機能部)13が設けられている。
セキュリティ機能層13としては、目視により、又は簡単な機器を用いることにより、真偽判定が可能な材料を用いることが好ましい。このような材料として、例えば、(1)OVD(光学変化素子:Optical Variable Device)機能材料、(2)蛍光材料若しくは蓄光材料、又は(3)液晶材料などがあげられる。
【0025】
本実施形態においてセキュリティ機能層13は、(1)OVD機能材料、(2)蛍光材料若しくは蓄光材料、又は(3)液晶材料の少なくともいずれか一つの材料からなっている。
以下では、(1)OVD機能材料、(2)蛍光材料若しくは蓄光材料、(3)液晶材料について、順に説明する。
【0026】
(1)まず、OVD機能材料について説明する。
OVD(Optical Variable Device)とは、光の干渉を利用して画像を形成し、見る角度による色の変化(カラーシフト)や立体画像を生じる表示体であって、目視により真偽判定が可能な媒体である。その中でホログラムや回折格子などのようなOVDとしては、光の干渉縞を微細な凹凸パターンとして平面に記録するレリーフ型ホログラムや、厚さ方向(深さ方向)に干渉縞を記録する体積型ホログラム(volume hologram)が挙げられる。
ホログラムや回折格子とは手法が異なるが、光学特性の異なるセラミックスや金属材料の薄膜を積層した多層薄膜方式や、或いは液晶材料等によるカラーシフトを生じる材料もその例である。これらOVDは、立体画像やカラーシフトによる独特な印象を与え、また高度な製造技術を要することから、偽造防止のためのセキュリティ機能層13に好適である。
【0027】
これらOVDの中でも量産性やコストを考慮した場合には、レリーフ型ホログラム(又はレリーフ型回折格子)や多層薄膜方式のものが好ましく、一般にこれらのOVDが広く利用されている。
【0028】
(レリーフ型ホログラムまたはレリーフ型回折格子)
レリーフ型ホログラム又はレリーフ型回折格子は、それぞれホログラム又は回折格子を成す微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のプレス版を用いて量産される。すなわち、このプレス版でOVD形成層を加熱・加圧して、微細な凹凸パターンが複製される。
【0029】
OVD形成層は、その回折効率を高めるためのものであり、レリーフ面を構成する高分子材料とは屈折率の異なる材料からなる。用いられる材料としては、屈折率の異なるTiO、Si、SiO、Fe、ZnS、などの高屈折率材料や、反射効果の高いAl、Sn、Cr、Ni、Cu、Au等の金属材料が挙げられる。OVD形成層には、これらの材料が単独あるいは積層して使用される。これらの材料は真空蒸着法、スパッタリング等の公知の薄膜形成技術にて形成される。その膜厚は用途によって異なるが、0.5〜100nm程度である。
なお、ホログラムはICタグ7の通信に影響を及ぼすことがないように、金属蒸着の部分を限定するか、又は非金属蒸着材料による透明ホログラムを用いることが望ましい。
【0030】
(多層薄膜方式)
多層薄膜方式を用いる場合、OVD形成層は、異なる光学特性を有する多層薄膜層からなり、金属薄膜、セラミックス薄膜又はそれらを併設した複合薄膜として積層形成される。例えば,屈折率の異なる薄膜を積層する場合、高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜とを組み合わせても良く、また特定の組み合わせを交互に積層するようにしてもよい。それらの組み合わせにより、所望の多層薄膜を得ることができる。
【0031】
この多層薄膜層は、セラミックスや金属、有機ポリマーなどの材料を用いて、おおよそ2種以上の高屈折率材料と屈折率が1.5程度の低屈折率材料を所定の膜厚で積層したものである。以下に、用いられる材料の例を挙げる。
セラミックスとしては、Sb(2.0=屈折率n:以下同じ)、Fe(2.7)、TiO(2.6)、CdS(2.6)、CeO(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、WO(2.0)、SiO(2.0)、Si(2.5)、In(2.0)、PbO(2.6)、Ta(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO(2.0)、MgO(1.6)、SiO(1.5)、MgF(1.4)、CeF(1.6)、CaF(1.3〜1.4)、AlF(1.6)、Al(1.6)、GaO(1.7)等がある。
【0032】
金属単体又は合金の薄膜の材料としては、例えば、Al、Fe、Mg、Zn、Au、Ag、Cr、Ni、Cu、Si等が挙げられる。
低屈折率の有機ポリマーとしては、例えば、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフロロエチレン(1.35)、ポリメチルメタアクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.60)等が挙げられる。
【0033】
これらの高屈折率材料、又は30%〜60%透過の金属薄膜から選択した少なくとも一種と、低屈折率材料から選択した少なくとも一種とを、所定の厚さで交互に積層させる事により、特定の波長の可視光に対する吸収又は反射を示す多層薄膜層が得られる。
なお、金属から構成される薄膜は、構成材料の状態や形成条件などにより、屈折率などの光学特性が変わってくるため、ここでは一定の条件における値を示している。
【0034】
上記各材料から、屈折率、反射率、透過率等の光学特性や耐候性、層間密着性などに基づき適宜選択した材料を薄膜として積層して、多層薄膜層が形成される。多層薄膜層の形成には、膜厚、成膜速度、積層数、あるいは光学膜厚(=n・d、n:屈折率、d:膜厚)などの制御が可能な、通常の真空蒸着法、スパッタリング法等の公知の手法を用いることができる。
【0035】
これらOVD(ホログラム、回折格子、あるいは多層薄膜層)を非常に薄い箔状にして、ICラベル1に転写するか、又はラベルに漉き込むか、又は微細化したOVD箔を樹脂バインダー中に分散してインキ化して印刷するかによって、ICラベル1を剥がして再利用することを不可能にするセキュリティ機能層13が得られる。
【0036】
(2)次いで、蛍光材料又は蓄光材料について説明する。
蛍光材料又は蓄光材料として、管理がされているインキ(セキュリティ用にメーカーが製造、販売、出荷を管理しており、一般市場では入手不可能なインキ等)、又は入手が困難な特殊なインキ(希少材料や高価な材料を使用して製造された高価なインキや、特殊な物理現象を示す材料を使用して製造されたインキ等)を、ICラベル1に印刷法によって設けた場合、必要に応じて簡易検証器を用いることによって目視で真贋判定が可能なセキュリティ機能層13が得られる。
例えば、紫外線や赤外光を照射すると発光するインキや蛍光インキ、蛍光繊維などを印刷したり、紙に漉き込んだりすることにより、セキュリティ機能層13としての蛍光発色部が形成される。
【0037】
紫外線や赤外光を照射すると発光するインキで描かれた文字やパターンの画像(蛍光発色部)が、ブラックランプ(紫外線)又は赤外線(780nm以上)の照射により発光する。その結果、本来、可視光線(400〜700nm)下で検知されなかった画像が、目視又は受光素子を通じて検証できる。特に材料限定の特定波長を返すため、簡易検証器での検証が容易で確実となる。蛍光発色部に用いられる材料は、紫外線又は赤外線の照射により色調パターンが変化し、インキ樹脂中に分散する場合に屈折率が前記インキ樹脂と同一又は近似する無色透明のものが好ましい。
【0038】
蛍光材料又は蓄光材料として、蛍光体がある。
蛍光体には、紫外線発光蛍光体及び赤外線発光蛍光体があり、以下にはその例を挙げる。
紫外線蛍光体は、紫外線を照射することにより可視波長領域の光を発光するもので、例えばCaCl:Eu2+,CaWO,ZnO:ZnSiO:Mn,YS:Eu,ZnS:Ag,YVO:Eu,Y:Eu,GdS:Tb,LaS:Tb,YAl12:Ce等がある。
これら蛍光体は、ブラックライトを照射した際の発光が目視で碓認できるか、又は検出器の受光素子にて蛍光が検知可能となる量でインキに添加される。
【0039】
赤外線発光蛍光体は、赤外線を照射することにより、可視波長領域の光を発光するものと、赤外波長領域の光を発光するものとがある。
前者の蛍光体として、例えばYF:YB,Er,ZnS:CuCo等がある。
また後者の蛍光体として、例えばLiNd0.9Yb0.112,LiBi0.2Nd0.7Yb0.112,Nd0.9Yb0.1Nd(MoO,NaNb0.3Yb0.112,Nd0.8Yb0.2Na(WO,Nd0.8Yb0.2Na(Mo0.5WO0.5,Ce0.05Gd0.05Nd0.75Yb0.25Na(W0.7Mo0.3,Nd0.3Yb0.1Al(BO,Nd0.9Yb0.1Al2.7Cr0.3(BO,Nd0.4,Nd0.8Yb0.2(PO等がある。後者の蛍光体は、赤外線の波長800nm近辺の光を照射することにより、980nm〜1020nmに発光スペクトルのピークを有する赤外線を発光する。
インキ中の赤外線発光蛍光体の添加量は、発光が目視で確認できるか、又は検出器の受光素子が蛍光を検出可能となるようにする。
【0040】
これらの蛍光材料または蓄光材料が添加された特殊なインキをラベル基材2の表面上に印刷するか、又はラベル基材2内に漉き込むか、又はこれらを行う際に全体を星型など特殊な形状にすることで、偽造防止効果の高いセキュリティ機能層13が得られる。
【0041】
(3)次いで、液晶材料について説明する。
液晶材料としては、例えばコレステリック液晶が挙げられる。
コレステリック液晶は、螺旋状に配向する液晶で、特定の波長の右又は左の円偏光を反射する偏光分離能を持つ。反射する波長は、螺旋周期のピッチにより決まり、円偏光の左右は、螺旋の方向によって決まる。通常の観察光では偏光の左右光が混在しているために画像の確認は出来ないが、偏光フィルタを通じて円偏光の一方のみを通過させることにより、画像として認識可能である。つまり、潜像技術と言われるものである。コレステリック液晶は、反射光が角度により反射波長が変化するため、カラーシフトインキとして用いることにより、像をカモフラージュすることができる。
液晶材料は、コレステリック液晶に限定されず、コレステリック液晶と同様の効果を発揮するものであればよい。
【0042】
(ラベル基材の脆性)
本実施形態におけるラベル基材2は、脆性を有している。
すなわち、ラベル基材2は、脆性を有するフィルムや紙によって形成されている。
ラベル基材2の材質としては、例えば、カオリン、炭酸カルシウムなどの可塑剤を適量混合して脆質化した脆性塩化ビニル、脆性ポリエステルなどの合成樹脂フィルムや、又は、セルロースアセテート、低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイドなどの高結晶性プラスチック素材を溶液成膜により形成したフィルムなどがあげられる。その他の材質として、UV硬化法合成樹脂又はカオリン、炭酸カルシウムなどの粉体を適量混合したUV硬化型合成樹脂を用い、その樹脂薄膜をUV照射により硬化乾燥させて成膜したフィルムなどがあげられる。また、合成繊維での不織布、又は、アート紙、コート紙、上質紙などの用紙があげられる。
ラベル基材2が脆性を有することにより、被貼付体に貼り付けられたICラベル1を剥がそうとすると、ラベル基材2が破断されるので、偽造防止効果を奏する。
【0043】
ラベル基材2には、破断され易くするために、図2に示すように、ラベル基材2に、切り込み20,21,22が形成されている。
切り込み20、21の形状は、必要に応じて適宜変更可能であり、直線でも曲線でもよい。さらに、ICラベル1を剥がすとき、アンテナ4も同時に破断され易くするために、ベースフィルム8にも切り込み23を設けることができ、またアンテナ4も脆性の基材を用いることができる。例えば、脆性質の塩化ビニルやコート紙などを用いることができる。
切り込み23はベースフィルム8に形成されている。ただし、アンテナ4には同切り込み23が形成されていない。
これにより、切り込み22,23を起点としてラベル基材2及びアンテナ4が切断され、完全に非接触ICラベルとしての機能を破壊できる。また、切り込み23をアンテナ4に設けず、ベースフィルム8に設けることにより、アンテナ4の効率の低下を防止しつつ、アンテナ4が破断され易い。
なお、切り込み23をアンテナ4にまで達するように設けることもできる。この場合、アンテナ4をさらに容易に破断できる。
【0044】
(溶剤発色層)
本実施形態におけるラベル基材2の第1主面2aには、溶剤発色層(溶剤検出部)15が設けられている。
溶剤発色層15は、被貼付体に貼り付けられたラベル基材2を剥離するための剥離溶剤に溶解する。なお、溶剤発色層15を剥離溶剤と化学反応させるようにしてもよい。
溶剤発色層15は、水不溶性でかつ有機溶剤に対して可溶性の染料粒子を樹脂バインダー中に顔料等と分散状態で保持した構造である。接着層5の粘着剤は、有機溶剤に対して可溶性を示す。ICラベル1の剥離を試みる場合、溶解性の弱い有機溶剤(エチルアルコールや除光液として用いられるアセトンなど)や市販のシールはがし液等を用いて、ラベル基材2を被貼付体から剥がそうとしても、溶剤発色層15に分散状態で保持された染料が溶解し、ラベル基材2に発色として痕跡が残る。すなわち、溶剤発色層15は、溶剤発色機能を有する。
本発明で使用する染料粒子は、水不溶性でかつ有機溶剤に可溶性であれば何れでも使用できるが、ロイコ染料や蛍光増白剤などの染料が使用できる。
【0045】
ICラベル1は、ドライヤなどの熱で接着層5の粘着剤を軟化させて剥がされることも想定される。この場合、上記の染料は溶融する温度までに至らず、発色による痕跡が残らないので、偽造防止効果が不十分である。
そこで、熱刺激によってロイコ染料と結合する顕色剤とロイコ染料とを分散させることにより、熱刺激に対して発色するサーマル発色材料を溶剤発色層15に設ける。この場合、溶剤発色層15は、サーマル発色機能を有する。サーマル発色の場合、無色か淡色のロイコ染料を使用し、サーマルで反応した際にロイコ染料を色調として顕在化させるのが好ましい。
溶剤発色層15は、溶剤発色機能又はサーマル発色機能の少なくとも一方の機能を有していれば、本発明の効果を得ることができる。
【0046】
(ラベル基材2の脆性と接着層5の粘着力)
偽造防止用ラベルにおいて、ラベル基材の剥離痕跡を残すためには、被貼付体からラベル基材を剥がそうとした際にラベル基材が破断するように、接着層の粘着力(接着力)をラベル基材の引張り強度、破断強度、もしくは引き裂き強度のうち小さなものと同等以上とすることが望ましい。
したがって、本実施形態では、例えば70g/mの上質紙から形成したラベル基材2を用いた場合、接着層5の粘着力(JIS Z0237)は、8000mN/25mm以上に設定される。硬化過程なしに接着作用を生じる粘着剤(感圧性接着剤:pressure-sensitive adhesive)を用いた場合、粘着力の上限は150N/25mmに設定されるが、硬化過程後に強力な接着作用を生じる接着剤を用いた場合、これ以上の粘着力(接着力)を接着層に具備させてもよい。
なお、接着層の粘着力はラベル基材の破断強度より大きいことが望まれるが、ラベル基材を切り込み等で脆弱化することにより、粘着層の粘着力が8000mN/25mm以上であれば剥離の痕跡を残すことができる。
【0047】
(JIS Z0237 粘着力試験について)
ここで、JIS Z0237に規定される粘着力試験について説明する。
まず、接着層が形成された試験片(幅25mm、長さ250mm、試験数3)を、ステンレス板に貼付する。この試験片を、180°折り返す方向に300mm/minで引張りながらステンレス板から一気に剥離し、この剥離に要する力を20mm間隔で4点測定する。これを3点の試験片について同様に行い、それらの平均値を粘着力(単位:mN/25mm)とする。
【0048】
以上より、本実施形態におけるICラベル1によれば、ラベル基材2をカラーコピーなどにより複製しようとしても、セキュリティ機能層13が設けられていることから、オリジナルとまったく同じものを複製することを防止できる。そのため、カラーコピー機による偽造・改ざん・変造をはじめ不正行為を防止することができる。また特殊な光を与えることで検証をより確実かつ迅速に行うこともできる。さらには受光素子を用いることで機械による判定も可能となる。
また、ICチップ3に識別IDが記憶されていることから、個々のICタグ7を判別できる。
そのため、ICタグ7による電気的な確認と、セキュリティ機能層13による視覚的(光学的)な確認との二重のセキュリティ管理を行うことができ、高精度な真贋判定ができる。さらに、セキュリティ管理だけでなく、ICチップ3に各種情報を記憶しておくことにより、物流などのトレーサビリティも得られ、貴重品、個人情報などの厳重な管理も可能となる。
【0049】
また、ラベル基材2が脆性を有していることから、被貼付体に貼り付けられたラベル基材2を引き剥がそうとした場合、その引き剥がそうとする力により、ラベル基材2は容易に破断する。そのため、ラベル基材2の形態をそのまま維持しながら、そのラベル基材2を剥がすことを防止できる。
また、接着層5の粘着力が、8000mN/25mm以上に設定されていることから、被貼付体に貼り付けられたラベル基材2を引き剥がそうとした場合に、ラベル基材2を確実に破断させることができる。あるいは、ラベル基材2を剥がした痕跡を残すことができる。
【0050】
さらに、ラベル基材2およびベースフィルム8に切り込み20,21,22,23が設けられていることから、ラベル基材2を引き剥がそうとした場合に、ラベル基材2を確実に破断させることができる。このとき、切り込み22,23により、アンテナ4も同時に破断させることができ、ICチップ3に記憶された情報の読み取りを不能にできる。
また、ラベル基材2に溶剤発色層15が設けられていることから、溶剤や市販のシールはがし液等を用いてラベルを被貼付体から破損せずに剥がそうとすると、ラベル基材2が発色するので、その痕跡を残すことができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のICラベル1においては、幅と奥行きがそれぞれ同時に0.5mm、高さ0.1mmという寸法のICチップ3を採用し、かつICラベル1の表面にセキュリティ機能層13を設け、かつラベル基材2として脆性な材料を用いており、かつ溶剤発色層15が設けられていることから、剥離が困難であり、かつラベル基材2表面のコピー等による偽造ラベルの製造が困難であり、かつICチップ3が破壊され難いことから、常に偽造防止効果や犯罪防止効果を最大限得られる。
【0052】
(ICラベル1の使用方法)
ICラベル1は、物体の偽造を実施しようとすると必ずICラベル1を剥がしたり破ったりせざるを得ない箇所に貼り付けておくことが好ましい。
例えば、偽造防止を要する物体を、開口部を通じてケースの中に入れ、ケースを蓋で閉じる。ケースと蓋の合せ面を跨ぐようにICラベル1を貼り付け封印しておく。この場合、偽造防止を要する物体をケースから取り出すため、ケースから蓋を分離すると、封印しているICラベル1が必然的に破壊され、蓋を開けたことが一目瞭然となる。
開封によりICラベル1のICタグ7が破断されてICチップ3の情報が読み取れなくなる事により、蓋を開けたことが判定可能である。
よって、暗黙に蓋を開けて偽造防止を要する物体をケースから取り出す行為が実施し難くなり、偽造防止効果や犯罪防止効果が得られる。
【0053】
また、ICラベル1の破断の目視チェックや、ICチップ3の情報の読み取りチェックを定期的に繰り返しておく。ある特定の回次のチェックの際にはラベル基材2は破断しておらずICチップ3の情報が読み出せていても、次の回次のチェックでラベル基材2の破断又はICチップ3の読取り不能が生じた場合、特定の回次のチェックと、次の回次のチェックとの間で蓋が空けられたことが推定される。よって、暗黙に蓋を開けて偽造防止を要する物体をケースから取り出す行為が実施し難くなり、偽造防止効果や犯罪防止効果が得られる。
【0054】
また、情報読取装置によるICチップ3の読取り動作を頻繁に(例えば1秒に1回)繰り返しておき、ICチップ3の情報読取りが不可能になった時点で、ICラベル1の破断行為が発生している事を判定する。この判定に従い、
(1)判定結果を自動的に管理者、警備員、警察に音響、光、電話、無線、ネットワーク等の遠隔連絡手段を経由して通知する、
(2)判定がなされた事で自動的にICラベル1の周囲状況のカメラやビデオ撮影を行う、
(3)判定がなされた事で連続的にICラベル1の周囲状況を撮影するカメラやビデオの
画像・動画の自動保存を行う、
(4)判定がなされた事で自動的に警報を鳴動させる、
(5)判定がなされた事で自動的に警告ランプを点灯・点滅を開始させる、
(6)判定がなされた事で自動的にドアを閉じるなどの空間的な遮断装置を動作させる、
(7)判定がなされた事で自動的にICラベル1が貼られた機器やその周辺機器の動作を中断する、
(8)判定がなされた事で自動的にICラベル1が貼られた機器やその周辺機器に対して機械的ロックをかける、
等のシステムを作動させることにより、偽造防止効果や犯罪防止効果が得られる。
【0055】
このような自動的に作動する偽造防止システムが具備されている事を、ICラベル1が貼られた物が存在する周囲に掲示したり、ICラベル1が貼られた物の近くに立ち寄る可能性のある人間を対象にこれを周知したりすることにより、偽造行為や犯罪行為を未然に防止する効果がある。
【0056】
本実施形態のICラベル1においては、縦横寸法がそれぞれ0.5mmで厚み寸法が0.1mmのICチップ3を採用し、かつICラベル1の表面にセキュリティ機能層13を設け、かつラベル基材2として脆性な材料を用いることができる。この場合、剥離が困難であり、かつラベル表面のコピー等による偽造ラベルの防止が可能であり、かつICチップ3が破壊され難いことから、常に偽造防止効果や犯罪防止効果を最大限得られる。
【0057】
なお、本実施形態におけるICチップ3に記憶された情報を読み取り専用としてもよい。すなわち、ICチップ3に、読み取り専用(書き換え不能)のメモリが設けられ、この読み取り専用メモリに識別IDなどが記憶される。
このようにした場合、ICラベル1が被貼付体に貼り付けられ、かつICチップ3のメモリに識別IDを記録した後は、ICラベル1が被貼付体から剥がされて識別IDが被貼
付体から失われたり、識別IDが改変されたりする事もなく、さらにラベル基材2の表面のコピー等による偽造ラベルの防止が可能となる。
これにより、常に識別IDの真正性が確保されるという効果がある。
識別IDの真正性や妥当性を確保することは、ICチップ3からの識別IDの読み出しの精度を高める事を意味し、即ち識別IDが読み取れなくなる事の検出の精度を高める事を意味し、よって、先に述べた偽造防止効果や犯罪防止効果を更に改善できる。
【0058】
ICチップ3に記憶される識別IDを読み取り専用にするだけでなく、識別IDを唯一無二のIDとしてもよい。すなわち、識別IDを、個々のICチップ3ごとの固有識別ID(固有識別情報)とする。
このようにした場合、ICラベル1が被貼付体に貼り付けられた後は、ICラベル1が被貼付体から剥がされて固有識別IDが対象物から失われたり、かつ固有識別IDが改変されたりする事も無く、かつ、書き込み可能なICチップ3の場合に起こりがちな重複した識別IDの登録等の心配も無い。これにより、常に固有識別IDの真正性と妥当性が確保されるという効果がある。
【0059】
(固有識別IDの管理方法)
固有識別IDを唯一無二のIDとするためには、以下のような管理方法が考えられる。
すなわち、顧客からICラベル1の受注を受けた受注者は、ICラベル1の製造者にICラベル1の製造を注文する。ICラベル1の製造者は、ICタグ7の製造者にICタグ7の製造を注文する。ICタグ7の製造者はICチップ3の製造者にICチップ3の製造を注文する。ICチップ3の製造者は、ID管理者に対して固有識別IDの発行を依頼する。
但し、上記の受注者、ICラベル1の製造者、ICタグ7の製造者、ICチップ3の製造者、ID管理者については、そのうちの全部又は一部が同一の者又は団体であっても良い。また、それぞれが複数存在しても構わない。
【0060】
(固有識別IDの発行)
ID管理者は、過去に発行した識別ID(発行済み識別ID)や、管理の都合上で割り当てが好ましくない識別ID等の情報を、ID発行機内に蓄えてある。このID発行機は、発行済み識別IDや好ましくない識別ID等を避け、固有の特性を持った固有識別IDを新たに発行する。ID発行者は、このID発行機を用いて、固有の特性を持った固有識別IDを新たに発行する。
【0061】
ID管理者はID管理業務をID管理委託先に委託することが出来る。ID管理者は、予めID管理委託先に委託すべきID空間を指定する。ID空間とは、指定可能なIDの集合である。ID管理委託先が複数存在する場合、ID管理者は、それぞれのID管理委託先に委託するID空間が重複しないようにする。ID管理委託先は、ID発行機を有している。このID発行機には、過去に発行した識別ID(発行済み識別ID)、管理の都合上で割り当てが好ましくない識別ID等の情報、利用可能なID空間などの情報が蓄えられている。ID管理委託先は、このID発行機を用いて、他のどのID管理委託先が有するID発行機が発行する識別IDとも、或いはID管理者が有するID発行機が発行するIDとも、どれにも重複しない固有の特性を持った固有識別IDを新たに発行する。
【0062】
ID管理者又はID管理委託先が有するID発行機は、固有の特性を有する新たな固有識別IDを発行し、新たな発行済み識別IDとして過去の発行済み識別IDに追加登録する。新たに発行された固有の特性のある固有識別IDを、ICチップ3の製造者に連絡する。
【0063】
ここではID管理者又はID管理委託先として、人間を想定した場合の説明を行ったが、人間ではなくても、注文に応じて自動的にID発行機にID発行を指示する指示装置、指示プログラム、或いは指示システムであってもかまわない。
【0064】
(固有識別IDを有するICチップの製造)
上記のように得られた固有の特性のある固有識別IDを元に、ICチップ3の製造者は、ICチップ製造装置を用いてICチップ3を製造する。ICチップ3の製造の歩留まりの関係で、得られた固有識別IDの全てがICチップ3に記録されるとは限らないので、ICチップ3の出荷検査の過程で出荷する固有識別IDを再度記録する場合がある。
【0065】
(ICタグの製造)
上記のように得られたICチップ3を元に、ICタグ7の製造者は、ICタグ製造装置を用いてICタグ7を製造する。ICタグ7の製造の歩留まりの関係で、得られたICチップ3の全てがICタグ7として出荷されるとは限らないので、ICタグ7の出荷検査の過程でICチップ3に記録された固有識別IDを読み出し、これを再度記録する場合がある。
【0066】
(ICラベルの製造)
ICラベル1の製造者は、ラベル製造装置を用い、得られたICタグ7を元にICラベル1を製造する。ICラベル1の製造の歩留まりの関係で、得られたICタグ7の全てがICラベル1として出荷されるとは限らないので、ICラベル1の出荷検査の過程でICチップ3に記録された固有識別IDを読み出し、これを再度記録する場合がある。
【0067】
(ICラベルの納入)
受注者は、ICラベル1をICラベル1の製造者から受け取り、これを注文者に納入する。この際、納入するICラベル1のそれぞれ存在するICチップ3に記録された固有識別IDのリストを受注者はICラベル1の製造者から受け取り、これも注文者に納入する場合がある。
【0068】
以上の過程により、固有の特性のある固有識別IDが記録されたICチップ3を有するICラベル1が確実に得られる。固有識別IDを有する本実施形態のICラベル1が対象物に貼り付けられた後は、ICラベル1が貼り付けられた対象物から剥がされて固有識別IDが対象物から失われたり、かつ固有識別IDが改変されたりする事が無く、かつ固有識別IDが重複する心配も無く、かつラベル表面のコピー等による偽造ラベルの防止が可能であるから、常に固有識別IDの真正性と妥当性が確保される。
【0069】
(識別IDによる管理)
ICチップ3に記憶される識別IDを読み取り専用にし、識別IDを唯一無二のIDとすると、ICラベル1が貼られた被貼付体の管理情報をICチップ3のメモリ内容を更新して行くことが出来ない。よって、被貼付体の管理情報等は、識別ID等の情報とともに、情報読取装置に接続されたデータ管理装置を経由してデータベースに登録され、逐次必要に応じてデータベースの内容が更新される。
【0070】
ICチップ3に格納された識別ID等の情報が情報読取装置によって読み取られた場合、この識別ID等の情報を基に、データ管理装置を経由して、該当するデータベース上の被貼付体の管理情報を検索する。得られた管理情報はデータ管理装置又は情報読取装置に戻される。戻された管理情報が、ICラベル1、及びそのICラベル1が貼り付けられた被貼付体の現状と合致しているか否かを判断する事により、偽造等の不正行為が無いかどうかをチェックする。
すなわち、識別IDが、被貼付体を管理する管理情報と関連付けられている。
【0071】
被貼付体を管理する管理情報としては、例えば、ICラベル1が貼られた被貼付体の形状、色、型番、管理番号等がある。
オペレーターが、ICラベル1のICチップ3に格納された識別ID等の情報を、情報読取装置に読みこませる。データ管理装置は、識別ID等の情報を基に、データベース上の管理情報を検索する。得られた管理情報はデータ管理装置又は情報読取装置に戻される。
これによりオペレーターは、データベース上に登録されている情報であるICラベル1が貼られた被貼付体の形状、色、型番、管理番号等を得る。得られた情報(データベース上の情報)と、現状のICラベル1が貼られた被貼付体の形状、色、型番、管理番号等を比較する事により、ICラベル1が貼り替えられていないか、又はICラベル1が貼られた被貼付体に偽造等が無いか、チェックする事が可能である。
【0072】
ICチップ3に格納された識別ID等の情報が情報読取装置によって読み取られた際、この識別ID等の情報と共に、データ管理装置を経由して、更新すべき管理情報を、該当するデータベース上の管理情報に付与・更新する。
以上の方法により、ICラベル1及びICラベル1が貼り付けられた被貼付体の管理方法を構築する事が出来る。
【0073】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図3A及び図3Bは、本発明の第2の実施形態を示したものである。
図3A及び図3Bにおいて、図1及び図2に記載の構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態と上記第1の実施形態とは基本的構成は同一であり、ここでは異なる点についてのみ説明する。
【0074】
本実施形態においては、接着層5の表面に、光学的に読み取り可能な光学識別ID(光学識別情報)が刻印されたナンバリング印字部(光学識別部)12が設けられている。
ナンバリング印字部12には、印刷インキをレーザー照射により削って除去するレーザー刻印などによって文字などが形成されている。そのため、ナンバリング印字部12の光学識別IDは、改ざんされにくい。
【0075】
このような光学識別IDとしては、目視も可能な例として単純な英数字などがあり、機械的な読取りの例として1次元バーコード、2次元バーコード、電子透かし等の技術により識別IDが重畳された任意の画像、ドットや記号の配列、等がある。
【0076】
このような光学識別IDは、ICチップ3に記録された識別IDと以下のように関連を持たせることができる。
【0077】
すなわち、データベース上での光学識別IDと、ICチップ3の識別IDとの関連付けとして、ICチップ3の識別IDから光学識別IDをデータ変換で生成し、光学識別IDからICチップ3の識別IDをデータ変換で生成する。
データ変換の例として、CRC(Cyclic Redundancy Check)やハッシュなどを含む関数変換、対称暗号化、非対称暗号化、などを用いる事が出来る。
【0078】
このような光学識別IDを用いた場合、目視又は光学的読取装置により、簡便にICラベル1の真正性を確認することが出来る。
このような光学識別IDを、セキュリティ機能層(セキュリティ機能部)13が設けられたICラベル1の表面に形成することにより、すなわち、ナンバリング印字部12とセキュリティ機能層13とをラベル基材2の同一面に設けることにより、ICラベル1の写真的なコピーを防止出来る。
【0079】
このような光学識別IDを、セキュリティ機能層13の上部若しくは下部に印刷するか、又はセキュリティ機能層13にインクを混合させておき、レーザー刻印によって印刷することにより、光学識別IDの偽造や改変を防止する事が出来る。
【0080】
また、光学識別IDをICチップ3に記録させることができる。この場合、ICチップ3の情報を読み出した際にICチップ3に登録されている光学識別IDを取り出す事が出来る。ICチップ3から取り出された光学識別IDと、ICラベル1に印刷された光学識別IDとを比較する事により、ICラベル1の偽造を防止できる。
【0081】
本実施形態のICラベル1では、上記のように、識別ID等の情報が書き換え不可能なICチップ3を用いて、かつこの識別IDを唯一無二のIDとしてもよい。
このような場合、ICチップ3に記録されている識別ID等の情報と共に、光学識別IDをデータベース上で関連付けておく。ICチップ3に記録されている識別ID等の情報を情報読取装置によって読み出し、識別ID等の情報を基にデータベース上に登録されている光学識別IDを得る。こうして得られたデータベース上の光学識別IDと、ICラベル1に印刷された光学識別IDとを比較する事により、ICラベル1の偽造を防止できる。この場合はICチップ3の識別ID等の情報の偽造の恐れが無いため、特にICラベル1の偽造を防止する効果が大きい。
【0082】
また、本実施形態のICラベル1では、識別ID等の情報が書き換え不可能なICチップ3を用いて、かつこの識別IDを唯一無二のIDとし、さらに、メモリに記録された識別ID等の情報からCRCやハッシュなどを含む関数変換、対称暗号化、非対称暗号化、などを用いて生成した光学識別IDがICラベル1に印刷されていてもよい。
この場合、ICチップ3の識別ID等の情報を情報読取装置によって読み取り、光学識別IDを生成した際と同一のデータ変換を情報読取装置によって実施して比較用光学識別IDを生成する。この生成された比較用光学識別IDとICラベル1に印刷された光学識別IDとを比較する事により、ICラベル1の偽造を防止できる。
【0083】
この場合は、ICチップ3の識別ID等の偽造の恐れが無いため、特にICラベル1の偽造を防止する効果が大きい。また、光学識別IDを生成してICラベル1に印刷する際の光学識別ID生成のデータ変換のアルゴリズムと、情報読取装置で読み取られたICチップ3の識別ID等の情報から情報読取装置で比較用光学識別IDを生成するデータ変換のアルゴリズムとが同一でないと、両アルゴリズムの光学識別IDが一致しない。すなわち、情報読取装置に正しいデータ変換のアルゴリズムが入っているか否かの検証も可能であり、情報読取装置の真正性の検査も出来る。
【0084】
さらに、書き換え不能型のメモリに製造時に識別ID等の情報を書き込むことにより、識別ID等の情報が書き換え不可能であり、かつこの識別IDが唯一無二のIDであるメモリを使った場合においても、データベースにアクセスすることなく、その場で簡便にICラベル1の偽造を防止できる。
【0085】
上記において、メモリに記録された識別ID等の情報から、ハッシュなどを含む関数変換、対称暗号化、非対称暗号化、などを用いてデータ変換を行い、光学識別IDを生成することを記載した。このデータ変換に際して、任意の暗号鍵を用いることができる。
このような場合、ICラベル1に印刷された光学識別IDと、ICチップ3の識別IDの情報に基づいて情報読取装置の内部で生成する比較用光学識別IDとが一致するのは、以下の二つの条件が満たされた場合のみである。
1)ICラベル1に印刷する際の光学識別ID生成のデータ変換のアルゴリズムと、情報読取装置で読み取られたICチップ3の識別ID等の情報から情報読取装置で比較用光学識別IDを生成するデータ変換のアルゴリズムとが同一であること。
2)ICラベル1に印刷する際の光学識別ID生成のデータ変換のアルゴリズムで用いた暗号鍵と、情報読取装置で読み取られたICチップ3の識別ID等の情報から情報読取装置で比較用光学識別IDを生成するデータ変換のアルゴリズムで用いた暗号鍵とが同一であること。
【0086】
特に、情報読取装置に対して暗号鍵をオペレーターが入力するようにし、かつ暗号鍵は所定の人のみしか知られないように管理すると、情報読取装置の真正性、及びオペレーターの真正性(暗号鍵を知っている人か知らない人か)の双方が検査できる。
【0087】
識別IDは、次のようなIDフォーマットにて構築する事が出来る。
識別ID=ヘッダー+サービス識別子+サービスID+ユニークID+EDC
ここで、ヘッダーとは、識別IDの種別を規定するものであり、識別IDのビット長、利用するタイミング信号やコマンドの種別の規定、IDフォーマットの種別、その他、識別ID全般にかかる情報を登録する。
【0088】
サービス識別子は、サービスIDのビット長を規定する。
サービスIDは、識別IDのグルーピングを行うものであり、顧客ごと、用途ごと、利用目的ごと、管理目的ごと、その他、識別IDのグループごとに同一のIDを設定する。
ユニークIDは、少なくとも個々のサービス識別子の中では重複する事の無い識別IDである。即ち、サービスIDおよびユニークIDの連なりが、識別IDとしての固有の特性を確保している。
【0089】
EDC(Error Detection Code)は、EDC部分を除いた識別IDからデータ変換により生成されるコードである。EDCは、識別IDの真正性を確認する目的がある。すなわち、識別IDの読み取り動作の誤作動等で識別IDに異常が発生した場合、識別IDの読取りで読み取られたEDCと、読み取られた識別IDからEDCを除いた部分からデータ変換により生成されたEDCとを比較することによって、識別IDの真正性を確認する。読み取られたEDCとデータ変換で生成されたEDCとが一致していれば、識別IDの真正性が確認されたものと判断する。一致していなければ、読取りエラーが発生したか、又は無効な識別IDであると判断し、その識別IDを真正なものであるとは扱わない。なお、これらのEDC生成のためのデータ変換には、CRCやハッシュなどを含む関数変換、対称暗号化、非対称暗号化、などを用いる事が出来る。
【0090】
また、ヘッダーは省略する事が出来る。
サービス識別子が固定した情報であればこれを省略する事が出来る。この場合、サービスIDを固定長とするか、又は省略する。
また、サービスIDは省略する事が出来る。この場合、サービス識別子にサービスIDが無いことを示す情報を登録するか、或いはサービス識別子とサービスIDの双方を省略する。サービスIDが無い場合は、ユニークIDを用いて識別IDとしての固有の特性を確保する。
EDCは、識別IDの真正性に対する要求が弱い場合、これを省略する事が出来る。
【0091】
このようなIDフォーマットを採用し、かつサービスIDを利用した場合、識別IDを読み取っただけで識別IDが属する顧客ごと、用途ごと、利用目的ごと、管理目的ごと、その他、識別IDのグループごとの区別が付く。
【0092】
例えば、ある特定の目的の為にICラベル1を用いる場合、その目的に用いるICラベル1のICチップ3には特定のサービスIDを利用すると共に、それ以外の目的にはそのサービスIDを利用しない。このような管理を実施する事により、識別IDを読んでサービスIDを識別するだけで、そのサービスIDがその特定目的に適したものかを判断する事ができ、ひいては識別IDがその特定目的に適したものかを判断する事ができる。
【0093】
識別IDを読んだ後に、データ変換や、識別IDを情報処理装置に送付してデータベースにアクセスするなどの処理が必要となる場合があるが、サービスIDの認識により目的に適した識別IDのみを処理することにより、無用な処理を減らしてシステムの信頼性を向上させる事が出来る。また、読み取られた識別IDに所定のサービスIDが含まれているか否かにより、簡便に偽造防止用ラベルの真正性が判定出来る。
【0094】
また、識別IDと管理情報とをデータベースで保持している場合でも、読み取られた識別IDに所定のサービスIDが含まれているか否かにより、簡便に偽造防止用ラベルの真正性の判定が可能なため、データベースに接続されていない状況においても簡便にICラベル1の真正性の判定が可能である。この事は、情報読取装置が小型簡便な装置であり必ずしもデータベースへの接続性を有さないハンディー型の装置である場合などは、特に有用となる。
【0095】
例えば、顧客Aが自社の建屋B内に存在する複数の備品の管理の為にサービスIDが“0001”であるICラベル1を、それぞれの備品の一ずつに1枚ずつ貼り付ける。ID発行機を用いるID発行者は、顧客Aと直接的又は間接的に諮り、顧客Aが建屋B内に有する備品に貼り付けるICラベル1のみにサービスIDとして“0001”を割り当て、それ以外の目的にはサービスIDが“0001”を含む識別IDを発行しない。
一方で、顧客Cは自社の社員が社外に持ち出すノートパソコンのそれぞれにICラベル1を貼り付ける。ID発行機を用いるID発行者は、顧客Cと直接的又は間接的に諮り、顧客Cが自社の社員の持ち出し用ノートパソコンに貼り付けるICラベル1のみにサービスIDとして“0010”を割り当て、それ以外の目的にはサービスIDが“0010”を含む識別IDを発行しない。
【0096】
顧客Aは、情報読取装置で識別IDを読み取った際に、そのサービスIDが“0001”であれば、ICラベル1が貼られた物品は建屋B内に存在する備品として登録されているものである事を即座に認識可能であり、真正性の判定を簡便に実施する事が出来る。また、顧客Cは、情報読取装置で識別IDを読み取った際に、そのサービスIDが“0010”であれば、ICラベル1が貼られた物品は自社の社員の持ち出し用ノートパソコンとして登録されているものである事を即座に認識可能であり、真正性の判定を簡便に実施する事が出来る。
【0097】
顧客Aは、識別IDを読み出し、サービスIDが“0001”である場合のみ、識別IDを情報処理装置に送付して建屋B内に存在する備品の管理用のデータベースにアクセスし、必要なデータ処理を行う。サービスIDが“0001”で無い場合は、このような処理をしない事により、不必要なデータ処理を行う事が無く、無用な処理を減らしてシステムの信頼性を向上させる事が出来る。顧客Bにも、サービスIDが“0010”の場合のみにデータ処理を行う事で、同様の効果が得られる。
【0098】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図4Aから図4Cは、本発明の第3の実施形態を示す。
図4Aから図4Cにおいて、図1から図3Bに記載の構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態と上記第1の実施形態とは基本的構成は同一であり、ここでは異なる点についてのみ説明する。
【0099】
本実施形態においては、アンテナ4の長手方向の中央部に、ICチップ3とアンテナ4との間でインピーダンスマッチングを行うための、かぎ状のアンテナスリット26が形成されている。そして、このアンテナスリット26により、スタブ27が形成されている。
アンテナスリット26の幅は、ICチップ3の端子間隔(電極30の間隔)よりも狭い。アンテナスリット26を挟んで互いに対向する給電部29が設けられている。ICチップ3はアンテナスリット26をまたぐようにして配され、電極30と給電部29とが電気的に接続されている。
【0100】
本実施形態では、アンテナスリット26により形成されるスタブ27をアンテナ4とICチップ3との間に直列に接続することで、スタブ27が、アンテナ入力インピーダンスに関するインダクタ成分として働く。このインダクタ成分により、ICチップ3の入力インピーダンスのキャパシティブ成分を相殺し、アンテナ入力インピーダンスとICチップ3の入力インピーダンスのマッチングを図ることができる。そして、インピーダンスマッチングを適切に設定する事で、アンテナ4に発生した電力がICチップ3に効率良く伝えられる。
【0101】
このようなインピーダンスマッチングは、例えばICラベル1で用いる各種材料や、ICラベル1が貼り付けられる被貼付体の誘電率の影響で変化する。この場合、アンテナスリット26の長さを変化させることで、インピーダンスマッチングの改善を図ることができる。逆に言うと、ICラベル1に必要な材料や貼り付けられる被貼付体の材料や環境をベースに、アンテナスリット26の最適設計を図ることが必要となる場合がある。
【0102】
なお、上記第1から第3の実施形態において、ICタグ7をラベル基材2に対して斜めに傾斜させて設けてもよい。
この場合、図6に示すように、ケース37と蓋38との合わせ面39を跨ぐようにICラベル1を貼り付けると、ICタグ7も合わせ面39を跨ぐようにして配置される。
そのため、ケース37から蓋38を分離すると、封印しているICラベル1だけでなく、ICタグ7をも破壊できる。また、ICタグ7を取り出そうとして、合わせ面39に沿ってラベル基材2を切断すると、ICタグ7をも切断することになり、ICタグ7の使い回しを確実に防止できる。
【0103】
次に、本発明の具体的実施例および比較例について説明する。
各実施例において、ICタグ(非接触IC媒体)は共通のものを用いた。
【0104】
(各実施例のICタグ)
厚さ38μmのPETフィルム(ベースフィルム)上に形成したアルミニウム薄膜をエッチングして、アンテナを形成した。アンテナの周囲には、図2,3Bに示したものと同様の切り込み23を、4mm間隔で形成した。このアンテナの給電端子とICチップの金製バンプを、異方導電性接着剤を用いて熱圧着により電気的に接続、固定して、ICタグを作成した。
【0105】
(実施例1)
幅60mm、長さ39mm、厚さ90μmのアート紙からなるラベル基材に切り込みを設けた。切り込みは、図2,3Bに示したものと同様である。すなわち、ラベル基材の外周に設けた切り込み20は、長さ3mmの切り込みを1.5mmの幅でジグザグに連続させた形状である。ラベル基材の各角部に設けた切り込み21は、図2および図3Bに示したように、各片の長さ7.5mmの切り込みをラベル基材の角部の外形に沿わせ、角部を切らずに残したL字状に設けられている。この切り込み21の角部が切れやすいため、被貼付体に貼付されたラベルが剥がされた痕跡として発見されやすい。切り込み22は、アンテナ設置部分に4mm間隔で、アンテナの切り込み23に重なるように設けた。ラベル基材の表面(第1主面)に、溶剤発色性のインキを塗布して、溶剤発色層を形成した。溶剤発色層の上に、オフセット印刷により絵柄を印刷して、印刷層を形成した。印刷層の上に、紫外線が照射された場合に発光する蛍光インキをセキュリティ機能層13として印刷した。
ラベル基材の裏面(第2主面)に、30000mN/25mmの粘着力を持つアクリル系の粘着剤を塗布し、ここに前記非接触IC媒体(ICタグ)を接着して、ICラベルAを作製した。なお、粘着剤上には、クラフト紙の片面にポリエチレンをラミネートし、その上にシリコン処理を施したセパレータ(厚さ112μm)を剥離シートとして仮粘着した。
【0106】
(実施例2)
前記実施例1と同様の切り込みが設けられたラベル基材の第1主面上に溶剤発色層、印刷層、および紫外線により発光するセキュリティ機能層13を形成し、さらにその上に波長780nmの赤外線を照射することによって発色する特殊なインキを印刷して第2のセキュリティ機能層13を形成した。ラベル基材の第2主面に、30000mN/25mmの粘着力を持つアクリル系の粘着剤を塗布し、ここに前記非接触IC媒体(ICタグ)を接着して、ICラベルBを作製した。なお、粘着剤上には、実施例1と同様のセパレータ(厚さ112μm)を剥離シートとして仮粘着した。
【0107】
(比較例1)
脆性のフィルム基材の表面に絵柄を印刷して印刷層を形成した。このフィルム基材の裏面には、実施例1や実施例2と同じ非接触IC媒体を用いて、アンテナの周囲の切り込み23がないICタグを積層形成した。フィルム基材には、周囲にのみ切り込みを設けた。すなわち、各実施例に比較してラベル表面およびICタグ部分の切り込みがなく、溶剤発色層およびセキュリティ機能層のない(印刷層のみを有する)ICラベルCを作製した。
【0108】
(比較例2)
脆性のフィルム基材の表面に絵柄を印刷して印刷層を形成し、裏面には比較例1と同様にICタグを積層形成した。
その上に5000mN/25mmの粘着力を持つ接着層を設け、ICラベルDを作製した。
【0109】
(実験)
このようにして作製した、実施例1,2及び比較例1,2のICラベルA,B,C,Dを、図5のように商品が内蔵されたボックス33に貼り付けた。その後、ICラベルA,B,C,Dをボックス33から慎重に剥がした。
【0110】
実施例1及び2のICラベルA,Bでは、4種類の切り込みを起点にして、ラベル基材、及びアンテナが同時に切断され、完全に非接触ICラベルとしての機能を破壊することができた。さらに、溶剤を用いてICラベルA,Bをボックス33から剥がしたところ、溶剤発色層が溶剤により発色して、その痕跡をはっきり確認することができた。また、ICタグのみ抜き取ったラベル基材をカラーコピーして、切り込みも真正物と同様に入れたものは、セキュリティ機能層が無いので偽造品として確認できた。さらに、実施例2のICラベルBでは、赤外光ランプを照射することによりセキュリティ機能層を確認することができ、非常に類似した偽造品、複製品との判別が可能であった。
【0111】
それに対し、比較例1及び2のICラベルC,Dでは、勢いよく剥がした際には、切り込みや接着強度の違いからラベル基材の破断が期待できるが、慎重に剥がした際にはラベルが破断せず、特に、アンテナの破断は困難であった。また、溶剤等を用いることによって、容易にボックス33から剥がすことができた。そして剥がしたICラベルC,Dを他のボックスに再び貼りつけて、再利用することもできた。さらに、ICラベルの図柄をカラーコピーすることで類似品を容易に作製することもできた。
【0112】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を
逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0113】
1 ICラベル(偽造防止用ICラベル)
2 ラベル基材
3 ICチップ
4 アンテナ
5 接着層(粘着剤)
6 剥離シート
7 ICタグ(非接触IC媒体)
12 ナンバリング印字部(光学識別部)
13 セキュリティ機能層(セキュリティ機能部)
15 溶剤発色層(溶剤検出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被貼付体に貼り付けるための粘着剤が設けられたラベル基材と、
前記ラベル基材に設けられ、所定の識別情報を記憶したICチップと、前記識別情報を無線で送信する、一方向に延びる線状のアンテナとを有する非接触IC媒体と、
前記ラベル基材上に、前記アンテナの短辺方向に並べて設けられたセキュリティ機能部と、
を備え、
前記ラベル基材と前記非接触IC媒体に切込みが形成されており、
前記ラベル基材に形成された切込みの少なくとも一部は、前記セキュリティ機能部が設けられた側において、前記非接触IC媒体に形成された切込みと平面視において連続し、かつ、前記ラベル基材の周縁に達しないように形成されており、
前記ラベル基材は、アート紙または上質紙から形成され、
前記粘着剤は、粘着力が8000mN/25mm以上、150N/25mm以下の感圧性接着剤であることを特徴とする偽造防止用ICラベル。
【請求項2】
前記切込みの少なくとも一部は、前記アンテナと前記セキュリティ機能部との間に存在しており、かつその延長線上に前記セキュリティ機能部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止用ICラベル。
【請求項3】
前記粘着剤は、前記ラベル基材と前記非接触IC媒体との間に設けられており、前記非接触IC媒体と前記被貼付体とが非接着の状態で前記被貼付体に貼り付けられることを特徴とする請求項1または2に記載の偽造防止用ICラベル。
【請求項4】
前記ラベル基材に、前記被貼付体に貼り付けられた前記ラベル基材を剥離するための剥離溶剤により溶解するか、又は、前記剥離溶剤と化学反応する溶剤検出部が設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の偽造防止用ICラベル。
【請求項5】
前記ラベル基材に、熱を受けることによって色相が変化するか、または熱の作用によって化学反応する熱検出部が設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の偽造防止用ICラベル。
【請求項6】
前記識別情報が、個々の前記ICチップの固有識別情報である請求項1から5のいずれか一項に記載の偽造防止用ICラベル。
【請求項7】
前記ICチップが、読み取り専用メモリを備え、前記識別情報が、前記読み取り専用メモリに記憶されている請求項6に記載の偽造防止用ICラベル。
【請求項8】
前記ラベル基材に、光学的に読み取り可能な光学識別情報を有する光学識別部が前記セキュリティ機能部と前記ラベル基材の同一面に設けられ、前記識別情報と前記光学識別情報とが互いに対応付けられている請求項7に記載の偽造防止用ICラベル。
【請求項9】
前記光学識別情報が前記セキュリティ機能部の上部若しくは下部に印刷されていることを特徴とする請求項7に記載の偽造防止用ICラベル。
【請求項10】
前記光学識別情報は、前記識別情報から関数変換、対称暗号化、非対称暗号化のいずれかを用いて生成されていることを特徴とする請求項8または9に記載の偽造防止用ICラベル。



【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−29865(P2013−29865A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235084(P2012−235084)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【分割の表示】特願2008−515593(P2008−515593)の分割
【原出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】