説明

偽造防止磁気テープ転写シートおよびカード

【課題】
耐熱性が高く、カード製造時の高温加工による、光学薄膜の白化が少ない偽造防止磁気テープ転写シートを提供する。
【解決手段】
シート状の支持体上に、転写の際に該支持体から剥離し被転写体に移行可能な転写層を備えており、該転写層は該支持体に近い側から、少なくとも、(イ)回折光を発生させるための微小な凹凸面を有する透明な回折構造形成層、(ロ)前記凹凸面の凹凸に密着して設けられた光学薄膜から成り、該回折構造形成層を透過してきた光を反射させる回折効果層、(ハ)該回折効果層を被覆して設けてある耐熱層、(ニ)該耐熱層を被覆して設けてある磁気記録層、及び、(ホ)該磁気記録層を被覆して設けてある接着層、を具備することを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シート、及び該偽造防止磁気テープ転写シートで転写したカードを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止を必要とする各種情報表示媒体に関し、詳しくはキャッシュカードやクレジットカード等の磁気カードを製造する際の部品となる、偽造防止磁気テープ転写シート、及び該偽造防止磁気テープ転写シートで転写したカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、偽造防止手段として光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現し得る、回折構造や回折格子、光学特性の異なる薄膜を重ねることにより、見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる多層薄膜のようなOVD[OVDは、”Optical(ly) Variable Device”の略。尚、OVDの同義語にDOVIDもあり、”Diffractive Optical(ly) Variable Imaging Device”の略である。]が利用されるようになってきている。これらOVDは高度な製造技術を要すること、独特な視覚効果を有し、一瞥で真偽が判定できることから有効な偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、証明書類等の一部にあるいは全面に形成され使用されている。最近では、有価証券以外にもスポーツ用品やコンピュータ部品をはじめとする電気製品ソフトウエアー等に貼り付けられ、その製品の真正さを証明する認証シールや、それら商品のパッケージに貼りつけられる封印シールとしても広く使われるようになってきた。
【0003】
一方、キャッシュカード、及びクレジットカード等では、特許文献1のような、磁気層と回折構造を一体化する事で、カードデザイン上有利であり、しかも機械情報処理を行なえる磁気カードが知られており、また、これらカードの製造方法は、主に回折構造入磁気偽造防止磁気テープ転写シートをカード基材へ転写接着させる方法が公知である。
【0004】
しかし、これらカードの製造工程では、接着剤塗工工程、磁気テープ転写工程、積層ラミネート工程、等の高熱を使用する加工工程が有り、特に近年では特許文献2のような耐熱性に優れた、ポリカーボネートを含む耐熱ポリマー材料を使用したカードが普及されている。これら耐熱カードの製造工程では、140℃以上の温度による積層ラミネート工程が想定される。
【0005】
従来技術は以下の通り。
【特許文献1】特開平6−167920号公報
【特許文献2】特開平6−167921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の様に特許文献2の様な場合でも、偽造防止磁気テープ転写シートについても相当の耐熱性が要求される。カード製造時の高温加工工程において、偽造防止磁気テープ転写シートが高温に曝された場合、回折構造形成層に使用されている樹脂が熱により収縮又は膨張し、この収縮・膨張についていくことのできない光学薄膜に細かいひび割れが生じて、その結果、光学薄膜が白化するという問題があった。
【0007】
本発明は前記従来の技術が抱える問題点に鑑み提案されたものであり、従来技術よりも耐熱性が高く、カード製造時の高温加工による、光学薄膜の白化が少ない事を特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シート、及び該偽造防止磁気テープ転写シートで転写したカードを提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明が提供する手段を次に挙げる。
【0009】
請求項1に記載の発明は、シート状の支持体上に、転写の際に該支持体から剥離し被転写体に移行可能な転写層を備えており、該転写層は該支持体に近い側から、少なくとも、(イ)回折光を発生させるための微小な凹凸面を有する透明な回折構造形成層、
(ロ)前記凹凸面の凹凸に密着して設けられた光学薄膜から成り、該回折構造形成層を透過してきた光を反射させる回折効果層、
(ハ)該回折効果層を被覆して設けてある耐熱層、
(ニ)該耐熱層を被覆して設けてある磁気記録層、
及び、
(ホ)該磁気記録層を被覆して設けてある接着層、
を具備することを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シートを提供するものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の偽造防止磁気テープ転写シートであって、前記光学薄膜が光を反射する金属反射膜であることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シートを提供するものである。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の偽造防止磁気テープ転写シートであって、前記光学薄膜が、前記回折構造形成層よりも屈折率が高く、光の透過性を有する透明反射膜であることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シートを提供するものである。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、シート状の支持体上に、転写の際に該支持体から剥離し被転写体に移行可能な転写層を備えており、該転写層は該支持体に近い側から、少なくとも、
(ヘ)部分的に設けられた光学薄膜から成り、この光学薄膜から構造色を有する色光を発生させるOVD層、
(ト)該OVD層を被覆して設けてある耐熱層、
(チ)該耐熱層を被覆して設けてある磁気記録層、
及び、
(リ)該磁気記録層を被覆して設けてある接着層、
を具備することを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シートを提供するものである。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4何れかに記載の偽造防止磁気テープ転写シートであって、前記耐熱層が、ガラス転移温度が150℃以上である樹脂成分を60%以上含んでいることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シートを提供するものである。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1〜5何れかに記載の偽造防止磁気テープ転写シートであって、前記回折構造形成層のさらに外側に保護層設けられていることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シートを提供するものである。
【0015】
また、請求項7に記載の発明は、請求項6記載の偽造防止磁気テープ転写シートであって、前記保護層が、ガラス転移温度が150℃以上である樹脂から構成されていることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シートを提供するものである。
【0016】
また、請求項8に記載の発明は、(イ’)回折光を発生させるための微小な凹凸面を有
する透明な回折構造形成層、
(ロ’)前記凹凸面の凹凸に密着して設けられた光学薄膜から成り、該回折構造形成層を透過してきた光を反射させる回折効果層、
(ハ’)該回折効果層を被覆して設けてある耐熱層、
(ニ’)該耐熱層を被覆して設けてある磁気記録層、
及び、
(ホ’)該磁気記録層を被覆して設けてある接着層、
(ヌ)カード基材、
を順に具備することを特徴とする偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードを提供するものである。
【0017】
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードであって、前記光学薄膜が光を反射する金属反射膜であることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シートを提供するものである。
【0018】
また、請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードであって、前記光学薄膜が、前記回折構造形成層よりも屈折率が高く、光の透過性を有する透明反射膜であることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シートを提供するものである。
【0019】
また、請求項11に記載の発明は、(ヘ)部分的に設けられた光学薄膜から成り、この光学薄膜から構造色を有する色光を発生させるOVD層、
(ト)該OVD層を被覆して設けてある耐熱層、
(チ)該耐熱層を被覆して設けてある磁気記録層、
及び、
(リ)該磁気記録層を被覆して設けてある接着層、
(ル)カード基材、
を順に具備することを特徴とする偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードを提供するものである。
【0020】
また、請求項12に記載の発明は、請求項8〜11何れかに記載の偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードであって、前記耐熱層が、ガラス転移温度が150℃以上である樹脂成分を60%以上含んでいることを特徴とする偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードを提供するものである。
【0021】
また、請求項13に記載の発明は、請求項8〜12何れかに記載の偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードであって、前記回折構造形成層のさらに外側に保護層設けられていることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードを提供するものである。
【0022】
また、請求項14に記載の発明は、請求項13記載の偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードであって、前記保護層が、ガラス転移温度が150℃以上である樹脂から構成されていることを特徴とする偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードを提供するものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明の偽造防止磁気テープ転写シートおよびカードは、回折効果層の回折構造形成層と逆側に耐熱層を設けることにより、耐熱性が高く、カード製造時の光学薄膜の白化が少ない事を特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シート、及び該偽造防止磁気テープ転写シートで転写した磁気カードを提供する事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の偽造防止磁気テープ転写シート、及び偽造防止磁気テープ転写シートで転写したカードの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は前記の偽造防止磁気テープ転写シートの断面を示すもので、図2は偽造防止磁気テープ転写シートをカードに転写貼付している図である。
【0025】
前記偽造防止磁気テープ転写シート(1)の層構成は、保護層は転写する際の転写性能を高める意図で設けられるため必須層ではないが、請求項6、13も併せて説明するために加えた層構成で以下説明する。なお、同様に剥離層、あるいは離型層を必要に応じて適宜加えた層構成も可能である。
【0026】
説明する偽造防止磁気テープ転写シート(1)の層構成は、支持体(2)の片面に保護層(3)、回折構造形成層(4)、回折効果層(5)、耐熱層(6)磁気記録層(7)、接着層(8)を順次形成してなるものである。
【0027】
前記偽造防止磁気テープ転写シートに於ける支持体2としては厚みが安定しており、かつ耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いるのが一般的であるが、これに限るものではない。その他の材料としては、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム等が耐熱性の高いフィルムとして知られており、同様の目的で使用することが可能である。また、他のフィルム、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、耐熱塩化ビニル等の材料でも、塗液の塗工条件、さらに言えば乾燥条件が許せば使用可能である。
【0028】
前記偽造防止磁気テープ転写シートに於ける保護層3としてはポリメチルメタクリレート樹脂と他の熱可塑性樹脂、例えば塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体もしくはニトロセルロース樹脂との混合物、又はポリメチルメタクリレート樹脂とポリエチレンワックスとの混合物等が挙げられ、又、酢酸セルロース樹脂と熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、熱硬化型アクリル樹脂もしくはメラミン樹脂との混合物が好ましい例として挙げられる。
【0029】
支持体2と保護層3との関係としては、材質どうしの関係で何もしなくても剥離可能な場合もあるが、一般的には剥離層もしくは離型層と呼ばれる層を中間に設けて剥離可能にするとか、どちらかの層に剥離を容易にする表面処理を行うことが必要に応じて設けられる。
【0030】
この中間の層は、一方の層に剥離層もしくは離型層という形で設けられるものでも、剥がした結果、その中間の層自体の中程から剥がれて両層にそれぞれ部分的に残る構成でも構わない。
【0031】
前記偽造防止磁気テープ転写シートに於いて、回折構造形成層4は、その表面に回折格子を構成する凹凸を付与し、この上に、かつ、この凹凸に沿って設けられる回折効果層4に凹凸を付与するものである。そして、回折効果層4の凹凸表面で反射された回折光は互いに干渉して構造色を有するに至る。一般に、この回折現象によって得られる構造色は、観察者の位置によって異なる色彩を有する。
【0032】
回折構造形成層4は、その表面にプレス版にて前記凹凸を成形することが可能であるという性能が要求され、その主となる材質は熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂のいずれであっても良い。
【0033】
回折構造形成層4に使用可能な材料は、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加、架橋したウレタン樹脂や、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化樹脂、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等の紫外線あるいは電子線硬化樹脂を、単独もしくはこれらを複合して使用できる。また、前記以外のものであっても、前記凹凸を形成可能であれば適宜使用してよい。
【0034】
一方、微細凹凸形状を構成する回折格子としては、可干渉な二光線を干渉させて得られる干渉縞を感光材料に感光させるホログラフィ技術が利用できる。このホログラフィ技術によって、例えば、上記構造色を制御して、奥行き感のある立体的画像を構成することが可能である。
【0035】
また、微小な画素毎にホログラフィ技術を適用して回折格子を形成し、これら回折格子を有する画素を多数配列して画面全体を構成することにより、高い輝感とコントラストを有する画像を表現することも可能である。なお、ホログラフィ技術に限らず、電子線により感光材料に回折格子を直接描画することにより、回折格子を有する前記画素を設けることも可能である。
【0036】
なお、回折格子を有する画素をそれぞれ適当な形状(例えば、星型、等)で形成する手法や、これら画素で肉眼では見えない細かな文字(いわゆるマイクロ文字)を形成する手法、回折格子を使用していながらあたかも写真のように被写体の色彩を忠実に再現する手法、あるいは、回折格子を使用して、見る角度によって全く違う複数の画像を表現する手法等が開発されており、これら手法を利用することもできる。
【0037】
前記偽造防止磁気テープ転写シートに於いて、回折効果層5の材質としては、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、又は、Au、Ag等の金属材料の単体か、若しくは、その化合物等の公知の真空蒸着材料、及びスパッタリング材料が挙げられる。
【0038】
一方、回折効果層5に高輝性光反射インキを使用する際は、アルミニウム、銀、ニッケル、金、銅、錫、インジウム、コバルト等の微細な金属粉、または金属ナノ粒子等を有機高分子樹脂に分散して得られた高輝性光反射インキを使用することが出来る。この場合には、回折構造形成層のレリーフ形成面を溶剤によりアタックさせない様にする注意が必要であるが、グラビア印刷法・フレキソ印刷法・スクリーン印刷法等の公知印刷手段により形成可能である。この様な印刷方式にて回折効果層を設ける場合には、乾燥後の膜厚が0.1〜10μm程度になるように調整すれば良い。
【0039】
前記偽造防止磁気テープ転写シートに於いて、耐熱層6は、前記回折構造形成層4及び回折効果層5のレリーフ形状を、カード製造工程の熱加工においても、上述した保護層と共にレリーフ形状を維持する役割を果たす。
【0040】
上記の目的を達成するために、筆者らの鋭意研究の結果、耐熱層の材料には、ガラス転移温度が150℃以上である樹脂成分を60%以上含むことが重要であるとの結論に至った。ガラス転移温度が150℃未満であると、熱がかかった場合に、結晶状態を保つことができずに耐熱層自体が軟化し、レリーフ形状を維持することができない。
【0041】
耐熱層には、ガラス転移温度150℃以上の樹脂以外に40%まで、従来既知の各種フィラー、充填剤、着色剤等を混ぜることができる。ここでは、特に材質に関しては限定しない。
【0042】
添加量に関して説明をすると、40%を超えて着色剤等を添加した場合、分散性が悪く塗膜強度が低下するため耐熱性が劣る結果となる。また、印刷適性が悪い(塗液の流動性や版乾き等)、塗液の保存性(沈降、凝集等)が悪いなどの理由が挙げられる。添加量の40%は、単純な重量比のことでは無く、比重を1と換算した場合の比率である。例えば、白色顔料である沈降性硫酸バリウム(比重5.5)を添加する場合には、比重1の樹脂成分60重量部に対して、220重量部まで添加することが可能である。
【0043】
次に、ガラス転移温度150℃以上の樹脂としては、汎用溶剤に溶解(若しくは分散:エマルジョン型)可能であり、熱可塑性の樹脂であることが好ましい。ここで、使用可能な樹脂としては、ポリカーボネート樹脂(Tg.140〜150℃)、ポリアリレート樹脂(Tg.193℃)、ポリスルホン樹脂(Tg.190℃)、ポリエーテルスルホン樹脂(Tg.225℃)、ポリエーテルイミド樹脂(Tg.200℃以上)、環状ポリオレフィン共重合体(Tg.171℃)、変性ノルボルネン系樹脂(Tg.171℃)、ポリアミドイミド樹脂(Tg.200℃以上)、ポリイミド樹脂(Tg.250℃以上)等を挙げることができるが、これに限定されるものでは無い。その他、収縮等の問題無き場合には、熱硬化系、湿気硬化系、紫外線硬化系、電子線硬化系樹脂等を使用しても良い。
【0044】
次に、耐熱層6の膜を形成する際には、例えばグラビア印刷法・フレキソ印刷法・スクリーン印刷法等の公知印刷手段により形成可能である。この様な印刷方式にて耐熱層を設ける場合には、乾燥後の膜厚が0.1〜3.0μm程度になるように調整すれば良い。
【0045】
耐熱層の膜厚が0.1μm以下になると、塗工時の均一な膜厚管理が困難となり、また、3.0μm以上となると、耐熱層の吸熱により、接着層8とカード基材との密着不良が生じ易くなる。
【0046】
前記偽造防止磁気テープ転写シートに於いて、磁気記録層6は例えば公知の磁気塗料を用いて印刷もしくは塗布方法により形成したものである。磁気塗料としては例えば、ブチラール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、アクリル樹脂、スチレン/マレイン酸共重合樹脂等の合成樹脂をバインダー樹脂とし、必要に応じ、ニトリルゴム等のゴム系樹脂、ウレタンエラストマーを添加し、磁性体としてはγ−Fe23、Co含有Fe23、Fe34、バリウムフエライト、ストロンチウムフエライト、Co・Ni・Fe・Crの単独もしくは合金、希土類Co磁性体の他、界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル、カーボンその他の顔料を必要に応じて添加し、3本ロール、サンドミル、ボールミル等により混練して作成したものを用いることができる。
【0047】
磁気記録層6は上記の塗布型以外にも、近年高密度記録の可能な点で注目されている蒸着、特に斜方蒸着によって形成された金属薄膜型のものでもよい。例えばニッケルやコバルトの単独もしくは合金の斜方蒸着膜がその具体例である。
【0048】
前記偽造防止磁気テープ転写シートは偽造防止磁気テープ転写シートに於ける接着層7としては、様々なカード基材(例えば、塩ビ、PET−G、ポリカーボネート、ポリ乳酸)に接した状態で熱および圧力を与えられることにより、被転写材に接着する機能を有する公知の感熱樹脂(感熱性接着材料)が使用される。
【0049】
以上、一実施例を説明してきたが、意匠性を向上すべく各層を着色することや表面に印刷を施す等、使用の目的により適宜利用可能である。また、各層の接着性を鑑み、各層間に接着アンカー層を設けることも可能である。
【0050】
前記偽造防止磁気テープ転写シートに於いて、保護層3から金属反射層5までの総厚み
は2〜10μであり、好ましくは2〜6μである。上記厚みを2〜10μの範囲にすることにより、機械情報処理に支障なく磁気カードに使用することが出来る。
【0051】
上記のように構成される前記偽造防止磁気テープ転写シート1を形成するに当たっては種々の方法があるが、例えば、支持体2片面に保護層3を従来公知の方法で塗布した後、回折構造形成層4を形成する樹脂組成物を塗布し、従来公知の方法で回折構造形成部9を形成する。次に、回折効果層5を真空蒸着法により形成した後、耐熱層6、磁気記録層7、接着層8を順次塗布して偽造防止磁気テープ転写シート1を形成する。
【0052】
上記の様に構成される偽造防止磁気テープ転写シート1を使用するに際しては、例えば、図2、図3に示す如く、偽造防止磁気テープ転写シート1を所要の大きさ、形状に切断し、カード基材10に例えば加熱融着する等により貼着した後、支持体2を剥離して回折構造形成部9及び磁気記録層7を有するカードを形成することで本発明の磁気カードが得られる。形成された本発明の磁気カードはカードに回折構造形成部9及び磁気記録層7が一体に形成されており、必要に応じてカード表面の占有面積を小さくすることが出来、その結果カードの装飾性を与える部分が大きくなり、装飾性大なるカードが得られる。又、磁気記録層7上面に回折構造形成部9が形成されているため、磁気記録層7の黒色、茶色等の色が隠れて美麗なカードが得られる。
【0053】
図4は、前記偽造防止磁気テープ転写シート1の他の実施例を示すもので、保護層3と回折構造形成層4との間に着色層11を設けたものである。着色層11としては、合成樹脂が使用可能であり、樹脂中に顔料を添加して着色した樹脂組成物を塗布して形成してもよく、合成樹脂のフィルム上に印刷を施したものを貼着して形成してもよい。着色層11が形成された偽造防止磁気テープ転写シート1はカード等に使用した際、カラフルなデザインのカードを得ることが出来る。以下具体的実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【実施例1】
【0054】
基材として厚み25μのポリエステルフィルムを用い、このフィルムの片面に下記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)の各組成物を用い、保護層(厚さ1.5μm)、回折構造形成層(厚さ1.5μm)、回折効果層(50nm)、耐熱層(1μm)、磁気記録層(15μm)、接着層(3μm)を順次塗布形成して偽造防止磁気テープ転写シートを作成した。尚、金属反射層は塗布ではなく真空蒸着法を用いて積層した。
【0055】
上記積層した偽造防止磁気テープ転写シートを0.1ミリの透明硬質塩化ビニルフィルムに熱転写し、支持体を取り除いた後、乳白及び透明硬質塩化ビニルフィルムを0.7〜0.8ミリの厚さになるように積層し、加熱,加圧により一枚の板にし、打ち抜きによりカードサイズ(54ミリ×86ミリ)に打ち抜くことにより、回折構造、磁気入りのプラスチックカードを作成した。得られたカードは美麗な外観を呈し、耐熱性が高く、カード製造時の光学薄膜の白化が少ない事を特徴とする、該偽造防止磁気テープ転写シートを貼付した磁気カードとなった。
【0056】
(1)剥離性保護層組成物
アクリル樹脂(Tg.105℃)・・19.2重量部
ポリエチレンパウダー・・・・・・・0.8重量部
メチルエチルケトン・・・・・・・・45.0重量部
トルエン・・・・・・・・・・・・・35.0重量部
(2)回折構造形成層組成物
ウレタン樹脂・・・・・・・・・・・20.0重量部
メチルエチルケトン・・・・・・・・50.0重量部
酢酸エチル・・・・・・・・・・・・30.0重量部
(3)回折効果層組成物
アルミニウム
(4)耐熱層組成物
変性ノルボルネン樹脂(Tg.171℃)・・20.0重量部
沈降性硫酸バリウム(比重5.5)・・・・・10.0重量部
メチルエチルケトン・・・・・・・40.0重量部
トルエン・・・・・・・・・・・・30.0重量部
(5)磁気記録層組成物
γ−Fe23・・・・・・・・・・30重量部
塩酸ビニル酢酸ビニル重合体・・・・・3重量部
ポリウレタンエラストマー・・・・・20重量部
トルエン・・・・・・・・・・・・・15重量部
メチルエチルケトン・・・・・・・・15重量部
イソプロピルアルコール・・・・・・16重量部
(6)接着層組成物
塩酸ビニル酢酸ビニル重合体・・・・20重量部
アクリル樹脂・・・・・・・・・・・10重量部
酢酸エチル・・・・・・・・・・・・20重量部
トルエン・・・・・・・・・・・・・50重量部
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の磁気カードの実施例に用いられる偽造防止磁気テープ転写シートを示す縦断面図である。
【図2】偽造防止磁気テープ転写シートをカード基材に装着し支持体を剥離して本発明の磁気カードを製造している状態を示す縦断面図である。
【図3】図2の剥離した状態を示す縦断面図である。
【図4】本発明の磁気カードの他の実施例に用いられる偽造防止磁気テープ転写シートを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 回折構造入磁気偽造防止磁気テープ転写シート
2 支持体
3 保護層
4 回折構造形成層
5 回折効果層
6 耐熱層
7 磁気記録層
8 接着層
9 回折効果形成部
10 カード基材
11 着色層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の支持体上に、転写の際に該支持体から剥離し被転写体に移行可能な転写層を備えており、該転写層は該支持体に近い側から、少なくとも、
(イ)回折光を発生させるための微小な凹凸面を有する透明な回折構造形成層、
(ロ)前記凹凸面の凹凸に密着して設けられた光学薄膜から成り、該回折構造形成層を透過してきた光を反射させる回折効果層、
(ハ)該回折効果層を被覆して設けてある耐熱層、
(ニ)該耐熱層を被覆して設けてある磁気記録層、
及び、
(ホ)該磁気記録層を被覆して設けてある接着層、
を具備することを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シート。
【請求項2】
請求項1に記載の偽造防止磁気テープ転写シートであって、前記光学薄膜が光を反射する金属反射膜であることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シート。
【請求項3】
請求項1に記載の偽造防止磁気テープ転写シートであって、前記光学薄膜が、前記回折構造形成層よりも屈折率が高く、光の透過性を有する透明反射膜であることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シート。
【請求項4】
シート状の支持体上に、転写の際に該支持体から剥離し被転写体に移行可能な転写層を備えており、該転写層は該支持体に近い側から、少なくとも、
(ヘ)部分的に設けられた光学薄膜から成り、この光学薄膜から構造色を有する色光を発生させるOVD層、
(ト)該OVD層を被覆して設けてある耐熱層、
(チ)該耐熱層を被覆して設けてある磁気記録層、
及び、
(リ)該磁気記録層を被覆して設けてある接着層、
を具備することを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シート。
【請求項5】
請求項1〜4何れかに記載の偽造防止磁気テープ転写シートであって、前記耐熱層が、ガラス転移温度が150℃以上である樹脂成分を60%以上含んでいることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シート。
【請求項6】
請求項1〜5何れかに記載の偽造防止磁気テープ転写シートであって、前記回折構造形成層のさらに外側に保護層設けられていることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シート。
【請求項7】
請求項6記載の偽造防止磁気テープ転写シートであって、前記保護層が、ガラス転移温度が150℃以上である樹脂から構成されていることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シート。
【請求項8】
(イ’)回折光を発生させるための微小な凹凸面を有する透明な回折構造形成層、
(ロ’)前記凹凸面の凹凸に密着して設けられた光学薄膜から成り、該回折構造形成層を透過してきた光を反射させる回折効果層、
(ハ’)該回折効果層を被覆して設けてある耐熱層、
(ニ’)該耐熱層を被覆して設けてある磁気記録層、
及び、
(ホ’)該磁気記録層を被覆して設けてある接着層、
(ヌ)カード基材、
を順に具備することを特徴とする偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカード。
【請求項9】
請求項8に記載の偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードであって、前記光学薄膜が光を反射する金属反射膜であることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シート。
【請求項10】
請求項8に記載の偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードであって、前記光学薄膜が、前記回折構造形成層よりも屈折率が高く、光の透過性を有する透明反射膜であることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シート。
【請求項11】
(ヘ)部分的に設けられた光学薄膜から成り、この光学薄膜から構造色を有する色光を発生させるOVD層、
(ト)該OVD層を被覆して設けてある耐熱層、
(チ)該耐熱層を被覆して設けてある磁気記録層、
及び、
(リ)該磁気記録層を被覆して設けてある接着層、
(ル)カード基材、
を順に具備することを特徴とする偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカード。
【請求項12】
請求項8〜11何れかに記載の偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードであって、前記耐熱層が、ガラス転移温度が150℃以上である樹脂成分を60%以上含んでいることを特徴とする偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカード。
【請求項13】
請求項8〜12何れかに記載の偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードであって、前記回折構造形成層のさらに外側に保護層設けられていることを特徴とする、偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカード。
【請求項14】
請求項13記載の偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカードであって、前記保護層が、ガラス転移温度が150℃以上である樹脂から構成されていることを特徴とする偽造防止磁気テープ転写シートを貼付したカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−49643(P2008−49643A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230255(P2006−230255)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】