説明

偽造防止転写箔、偽造防止媒体、偽造防止基材及び印刷物

【課題】反射輝度をより高くすることができる偽造防止媒体、偽造防止媒体を含んだ偽造防止基材、そして当該偽造防止基材を含んだ印刷物を提供する
【解決手段】偽造防止転写箔10は、保護層12の一方の面に接して設けられた回折格子層13と、回折格子層13の、保護層12側とは反対側の面に接して設けられて反射層14とを含み、保護層12は、ノルボルネンとエチレンの共重合構造を含有する樹脂で形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を有するOVD(Optical Variable Device)が施された偽造防止転写箔、当該偽造防止転写箔を含む偽造防止媒体、当該偽造防止媒体を含む偽造防止基材、そして当該偽造防止基材を含む印刷物に関するものであって、特に有価証券類(例えば、紙幣や商品券等)の偽造防止や真贋判定のために用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
紙幣や商品券などの有価証券類には、しばしば印刷技術や転写技術を用いて偽造防止のための加工が施されることがある。
様々な偽造防止のための加工技術がある中で、OVDを利用するケースが継続的に増加している。このOVDは、例えばホログラムや回折格子、光学特性の異なる薄膜を重ねた多層膜を含んで形成されている。このため、OVDは、見る角度により色彩が変化するので、光の干渉を用いた立体画像や特殊な装飾画像を表現し得る場合がある。このように、OVDによって表現された精細な画像は容易には偽造できないため、OVDは代表的な偽造防止技術となっている。
【0003】
有価証券類に対しては、上記OVDの中でもホログラム転写箔が多く採用されている。このホログラム転写箔は、プラスチックフィルムに支持される形で剥離・保護層、ホログラム形成層、反射層、接着層などの機能を有する薄膜が積層して形成されており、例えば近代の全世界の通貨単位の約半分に用いられている。このように、ホログラム転写箔は、前記偽造防止のための加工技術として、最も広く採用されている技術の一つである。なお、上記従来技術としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。
【0004】
ところで、ホログラムの真贋判定の一つに、高い反射輝度による目視の手法がある。しかしながら、真正品のホログラム転写箔であっても、材料や構成、製造手法により反射輝度に大きな差が生じる場合がある。この場合には、高い反射輝度が得られないため、目視による真贋判定が困難となるといった課題がある。また、ホログラム転写箔の各製造工程においても塗工や乾燥時の熱や圧力、化学反応等により一般的には塗工する層が多い場合は、工程毎に反射輝度が徐々に低下する場合がある。この場合にも、高い反射輝度が得られないため、目視による真贋判定が困難となるといった課題がある。例えば、特許文献1に記載されたホログラム転写箔は、基材上の剥離層の上に保護層を設けて耐性を付与する構造を有するが、積層数または塗工工程数の増加は、熱、圧力及び層間の屈折率差による目視輝度の低下を招く場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−40256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、反射輝度をより高くすることができる偽造防止転写箔、当該偽造防止転写箔を含む偽造防止媒体、当該偽造防止媒体を含む偽造防止基材、そして当該偽造防止基材を含む印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本願発明の一態様は、保護層と、前記保護層の一方の面に接して設けられた回折格子層と、前記回折格子層の、前記保護層側とは反対側の面に接して設けられて反射層とを含み、前記保護層は、ノルボルネンとエチレンの共重合構造を含有する樹脂で形成されていることを特徴とする偽造防止転写箔である。
上記態様によれば、保護層はノルボルネンとエチレンの共重合構造を含有する樹脂で形成されているので、従来技術と比較して、保護層の透明度(つまり、可視光の透過度)を高めることができる。よって、反射輝度をより高くすることができる。
【0008】
また、本願発明の別の態様は、前記回折格子層は、ホログラムとなっていることとしても良い。
上記態様によれば、前記回折格子層はホログラムとなっているので、前記回折格子層がホログラムでない場合と比較して、光の反射率を高めることができる。よって、反射輝度をより高くすることができる。
【0009】
また、前記偽造防止転写箔に対して、前記保護層の、前記回折格子層側とは反対側の面に接して設けられた支持体と、前記反射層の、前記回折格子層側とは反対側の面に接して設けられた接着層と、をさらに加えて偽造防止媒体としても良い。
上記態様によれば、接着層を含んでいるので、反射輝度をより高くした偽造防止媒体を基材(例えば、紙やフィルム)に張り付けることができる。
【0010】
また、本願発明の他の態様は、上記態様の偽造防止転写箔を含むことを特徴とする偽造防止基材である。
上記態様によれば、上記態様の偽造防止転写箔を含んだ偽造防止基材を製造することができる。
また、本願発明の他の態様は、上記態様の偽造防止基材を含むことを特徴とする印刷物である。
【0011】
上記態様によれば、上記態様の偽造防止基材を含んだ偽造防止基材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明に係る偽造防止媒体を示す断面図。
【図2】本願発明に係る偽造防止基材を示す断面図。
【図3】本願発明に係る偽造防止基材を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る偽造防止媒体9及び偽造防止基材8を図1〜図3を参照しながら説明する。
図1は、本願発明に係る偽造防止媒体9を示す断面図である。そして、図2は本願発明に係る偽造防止基材8を示す断面図である。また、図3は、図2に示した偽造防止基材8を示す平面図である。
【0014】
図1には、保護層12と回折格子層13と反射層14とを積層してなる偽造防止転写箔10が示され、この偽造防止転写箔10は、具体的には、保護層12の一方の面に回折格子層13が設けられている。そして、回折格子層13の、保護層12側とは反対側の面に反射層14が設けられている。
また、本実施形態では、前記偽造防止転写箔10に対して、支持体11と接着層15とを積層して偽造防止媒体9を構成している。この偽造防止媒体9は、具体的には、偽造防止転写箔10に含まれる保護層12の、回折格子層13側とは反対側の面に支持体11が設けられている。そして、偽造防止転写箔10に含まれる反射層14の、回折格子層13側とは反対側の面に接着層15が設けられている。
【0015】
なお、上記各層の形成に一般的に用いられる樹脂類及び金属類等を用いることができる。
また、回折格子層13によって生じる文字や絵などの図柄は、偽造防止転写箔10の転写面積内における任意に所望された位置にあり、且つその位置が任意に所望された位置に対して±0.5mm以内であることとしても良い。
【0016】
また、偽造防止媒体9は、反射層14を部分的に除去するディメタライズド加工が施されたホログラムであることとしても良い。
さらに、偽造防止媒体9に施されたディメタライズド加工が、回折格子層13によって生じる文字や絵などの図柄に対し、任意に所望された位置に施されており、且つその位置が任意に所望された位置に対して±0.5mm以内であることとしても良い。
【0017】
図2には、偽造防止転写箔10と基材20とが接着層15を介して接着された構造体、即ち偽造防止基材8が示されている。
なお、この偽造防止基材8は、偽造防止媒体9に含まれる接着層15と基材20とを密着させた後、偽造防止媒体9に含まれる支持体11を保護層12から剥離させることで得られる。
【0018】
また、この偽造防止基材8の基材20として、紙や合成樹脂フィルムなどを用いることができる。このため、この紙や合成樹脂フィルムなどに印刷を施すことにより、偽造防止転写箔10を含んだ印刷物を製造することができる(図示せず)。
以下、本願発明の実施例と比較例とについて説明する。
[実施例]
本発明に係る偽造防止基材8は、以下のようにして得られた。
(用紙)
基材20となる用紙にはOCR用紙を用いた。
(偽造防止転写箔)
偽造防止媒体9に含まれる支持体11の材料にはPETフィルムを用いた。回折格子層13にはウレタン系樹脂を用いた。反射層14には蒸着アルミを用いた。接着層15には塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合系樹脂を用いた。そして、保護層12には環状オレフィンとエチレンの共重合体を主剤とする樹脂であるTOPAS5013S−04(ポリプラスチックス株式会社製)を用いた。
【0019】
なお、この保護層12は透明性の高い単一の薄膜である。また、本願請求項に記載された「ノルボルネン」とは、環状オレフィンの一種である。
(転写機)
基材20に偽造防止転写箔10(つまり、ホログラム転写箔)を転写する転写機には、NAVITAS社製のアップダウン型熱転写装置を用いた。
(輝度測定)
回折格子を形成する際のエンボス加工後における回折効率(輝度)を測定した所、平均値は1.19%であった。
【0020】
[比較例]
本願発明に係る偽造防止転写箔と比較するために、比較例の偽造防止基材8は以下のようにして得られた。
(用紙)
基材20となる用紙にはOCR用紙を用いた。
(偽造防止転写箔)
偽造防止媒体9に含まれる支持体11の材料にはPETフィルムを用いた。回折格子層13にはウレタン系樹脂を用いた。反射層14には蒸着アルミを用いた。接着層15には塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合系樹脂を用いた。そして、保護層12にはポリエチレンワックスによる剥離層及びメラミン樹脂による保護層の複合積層体を用いた。
【0021】
(転写機)
基材20に偽造防止転写箔10を転写する転写機には、NAVITAS社製のアップダウン型熱転写装置を用いた。
(輝度測定)
回折格子を形成する際のエンボス加工後における回折効率(輝度)を測定した所、平均値は1.06%であった。
以上の結果から、本願発明に係る偽造防止転写箔10は、高い反射輝度を有することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本願発明に係る偽造防止転写箔10は、有価証券類などの物品に容易な真贋判定機能を付与することが可能であり、紙幣やIDカードなどの偽造防止用部材として使用される。
【符号の説明】
【0023】
8 偽造防止基材
9 偽造防止媒体
10 偽造防止転写箔
11 支持体
12 保護層
13 回折格子層
14 反射層
15 接着層
20 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保護層と、
前記保護層の一方の面に接して設けられた回折格子層と、
前記回折格子層の、前記保護層側とは反対側の面に接して設けられて反射層とを含み、
前記保護層は、ノルボルネンとエチレンの共重合構造を含有する樹脂で形成されていることを特徴とする偽造防止転写箔。
【請求項2】
前記回折格子層は、ホログラムとなっていることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止転写箔。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の偽造防止転写箔に対して、
前記保護層の、前記回折格子層側とは反対側の面に接して設けられた支持体と、
前記反射層の、前記回折格子層側とは反対側の面に接して設けられた接着層と、をさらに加えたことを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の偽造防止転写箔を含むことを特徴とする偽造防止基材。
【請求項5】
請求項4に記載の偽造防止基材を含むことを特徴とする印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−252028(P2012−252028A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122056(P2011−122056)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】