説明

備品管理システム

【課題】複数の施設における試薬及び消耗品を含む備品を、在庫切れを起こすことなく管理局が備品を一括して管理することができる備品管理システムを提供すること。
【解決手段】複数の施設A〜Nに設置された自動分析装置10で使用される備品の情報を管理局がネットワーク3を介して管理する備品管理システム1。各施設は、RFIDタグ19aを貼付した備品が19配置される情報交換部16aと、情報交換部に配置される備品に貼付されたRFIDタグとの間で備品に関する情報を交換する第1のリーダライタ17と、自動分析装置に装着される備品に貼付されたRFIDタグとの間で備品に関する情報を交換すると共に、第1のリーダライタと備品に関する情報を共有する第2のリーダライタ12と、第1及び第2のリーダライタが受信した備品に関する情報を処理する処理装置11,18とを備え、管理局が複数の施設における備品をリアルタイムで一括管理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の施設に設置された自動分析装置で使用される備品をネットワークを介して管理する備品管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、測定項目ごとに対応する試薬を1つ必要とし、30〜50項目にも及ぶ検査項目を分析する生化学自動分析装置にあっては、用いる試薬の数も多くなり、在庫管理が煩雑となる。このため、自動分析装置のユーザは、常に欠品がないように試薬の在庫管理をする必要があり、備品を含む作業マテリアル又は補給物の在庫管理を行うことができる分析システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−32642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された分析システムは、個々のユーザ側における在庫管理であり、複数のユーザを一括した在庫管理ではない。しかも、特許文献1の分析システムは、在庫の発注が個々のユーザからの自動発注であることから、個々のユーザから単発で在庫の発注が行われ、供給するメーカ側にあっては突発的な発注に対応しなければならないことから物流上の負担が大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の施設における試薬及び消耗品を含む備品を、在庫切れを起こすことなく管理局が備品を一括して管理することができる備品管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る備品管理システムは、複数の施設に設置された自動分析装置で使用される備品の情報をネットワークを介して管理局に送信し、前記管理局が前記複数の施設における備品を管理する備品管理システムであって、前記各施設は、RFIDタグを貼付した備品が配置される情報交換部と、前記備品が前記情報交換部に配置されたときに、前記RFIDタグとの間で前記備品に関する情報を交換すると共に、前記ネットワークに接続される第1のリーダライタと、前記自動分析装置に設けられ、前記備品が当該自動分析装置に装着されたときに、前記RFIDタグとの間で前記備品に関する情報を交換すると共に、前記第1のリーダライタと前記備品に関する情報を共有し、前記ネットワークに接続される第2のリーダライタと、前記第1及び第2のリーダライタが受信した前記備品に関する情報を処理する処理装置と、を備え、前記管理局が前記複数の施設における備品をリアルタイムで一括管理することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る備品管理システムは、上記の発明において、前記自動分析装置は、前記備品の管理情報を表示する表示装置を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる備品管理システムは、複数の施設における試薬及び消耗品を含む備品を、在庫切れを起こすことなく管理局が備品を一括して管理することができ、この結果メーカ側における物流上の負担が大きく軽減されるという効果を奏する。しかも、本発明の備品管理システムは、リーダライタが備品に貼付したRFIDタグとの間で備品に関する情報を自動的に交換するので、管理局は、複数の施設における今現在の情報に基づいて備品をリアルタイムで一括管理することができる。また、第1のリーダライタは、情報交換部の内部あるいは外部にアンテナを配置することができるので、第1のリーダライタのアンテナの設置位置を適宜変更することができ、第1のリーダライタを設ける設計上の自由度が増すという効果を奏する。
【0009】
また、請求項2に係る備品管理システムは、自動分析装置は、備品の管理情報を表示する表示装置を備えているので、分析に関する情報の他に、備品の管理情報を表示することで、備品の在庫管理ミスの発生や誤った備品を自動分析装置にセットする事故の発生を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の備品管理システムにかかる実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、備品管理システムの一例を示す全体構成図である。図2は、第1のリーダライタと試薬箱との配置を示す斜視図である。備品管理システム1は、図1に示すように、管理局2と複数の施設A〜Nがネットワーク3を介して接続されている。
【0011】
管理局2は、メーカ側の管理部門であり、自動分析装置が設置されたユーザ側の複数の施設A〜Nにおける前記自動分析装置の試薬及び消耗品を含む備品をリアルタイムで一括管理する管理装置2aを有している。管理局2は、ネットワーク3を介して代理店4に施設Aへの試薬及び消耗品を含む備品の補充を発注し、ネットワーク3を介して製造部門5に代理店4への備品の供給に関する指示を出す。管理装置2aは、パーソナルコンピュータやワークステーション等の情報端末が使用される。
【0012】
ここで、試薬は、試薬容器に入ったものが試薬箱に複数収納され、試薬容器及び試薬箱の双方にRFIDタグが貼付されている。また、消耗品には、自動分析装置で使用する分析用ランプや分注装置で使用するディスポーザブルチップ等がある。
【0013】
ネットワーク3は、公衆通信回線,インターネット,LAN,専用ネットワーク或いはイントラネット等の各種ネットワークを用いることができる。
【0014】
複数の施設A〜Nは同様に構成され、例えば、施設Aは、図1に示すように、自動分析装置10、ネットワーク接続装置15、保冷庫16、第1リーダライタ17及びデータ処理装置18を備えている。
【0015】
自動分析装置10は、血液等の生体試料を分析する装置であり、制御装置11、第2リーダライタ12及び表示装置13を備え、ネットワーク接続装置15及びネットワーク3を介して管理局2の管理装置2aと接続されている。制御装置11は、自動分析装置10及び第2リーダライタ12の作動の制御や第2リーダライタ12が受信した備品に関する情報データを処理して自動分析装置10で用いられる備品を管理するコンピュータであり、図示しない中央処理装置と記憶装置とを有している。第2リーダライタ12は、制御装置11の制御の下に自動分析装置10にセットされる試薬容器14に貼付されたRFIDタグ14aから情報を読み出し、あるいはRFIDタグ14aに情報を書き込む。第2リーダライタ12は、RFIDタグ14aから読み出し、あるいは書き込んだ試薬容器14に関する情報を第1リーダライタ17に出力し、第1リーダライタ17と試薬容器14に関する情報を共有する。表示装置13は、分析結果を含む動作履歴等の分析に関する情報の他に、試薬及び消耗品を含む備品の管理情報を表示する。ここで、RFIDタグ14aに記録される情報としては、試薬名,内容量,製造年月日,使用期限,納品日,試薬残量(使用量),後述する試薬箱19のコード番号等がある。
【0016】
ネットワーク接続装置15は、ネットワークアダプタとルータの機能を有し、例えば、ローカルルータが使用される。
【0017】
保冷庫16は、複数の試薬箱19を低温に保持して保管する部分の少なくとも一部がガラスからなる冷蔵庫であり、図1に示すように、情報交換部となる載置台16aに複数の試薬箱19が載置されている。試薬箱19は、複数の試薬容器14(図1参照)が収納され、試薬箱19の表面にはRFIDタグ19aが貼付されている。ここで、試薬箱19に貼付されるRFIDタグ19aには、試薬名,内容量,製造年月日,使用期限,納品日,試薬残量(使用量),試薬箱19のコード番号等の情報が記録される。
【0018】
第1リーダライタ17は、交信距離が長いUHF帯域の電波を用いており、図2に示すように、RFIDタグ19aに対して電波の送受信を行うアンテナ17aとRFIDタグ19aとの間の交信制御及び上位機器とRFIDタグ19aとの間のプロトコル交換を行うコントローラ17bとを有している。このとき、第1リーダライタ17は、試薬箱19に貼付したRFIDタグ19a及び試薬箱19内の複数の試薬容器14に貼付したRFIDタグ14aとの間で電波を送受信することにより、RFIDタグ14a,19aから情報を読み出し、RFIDタグ14a,19aに情報を書き込むことができる。また、第1リーダライタ17は、読み出した情報を管理局2に直接ネットワーク3を介して送信することも、或いは、データ処理装置18及びネットワーク接続装置15を経由してネットワーク3を介して管理局2に送信することもできる。
【0019】
データ処理装置18は、第1リーダライタ17及びRFIDタグ19aの制御及びデータ処理を行うもので、パーソナルコンピュータやワークステーション等が使用される。
【0020】
以上のように構成される備品管理システム1による備品管理の一例を、例えば、施設Aについて説明する。先ず、納品される試薬は、試薬箱19に収納された状態で保冷庫16に収容される。すると、第1リーダライタ17は、試薬箱19に貼付したRFIDタグ19a及び試薬箱19内の複数の試薬容器14に貼付したRFIDタグ14aに記録された試薬に関する所定の情報を読み出し、納品された事実としての納品日時をRFIDタグ14a,19aに書き込む。これらの情報は、第1リーダライタ17が直接ネットワーク3を介して管理局2に送信する。このため、管理局2は、施設A〜Nに納品された試薬箱19内の複数の試薬容器14をリアルタイムの下に一括して自動的に管理することができる。また、第1リーダライタ17がRFIDタグ14a,19aとの間で情報を自動的に交換するので、ユーザは、納品された試薬箱19内の複数の試薬容器14を個々にチェックする必要やチェック漏れがなく、煩雑なチェック作業から解放される。
【0021】
このとき、代理店4によって納品された試薬が管理局2の発注した試薬と異なっている場合には、管理局2がネットワーク3を介して施設Aにその旨の警報を発する。このため、備品管理システム1は、納品ミスが発生しても適正に対処することができる。また、第1リーダライタ17は、納品された試薬の情報をデータ処理装置18及びネットワーク接続装置15を経由してネットワーク3を介して管理局2に送信してもよい。
【0022】
一方、代理店4によって納品された試薬が管理局2の発注した試薬と同一である場合、管理局2は警報を発することはない。施設Aにおいては、自動分析装置10のオペレータが複数の試薬箱19のうち特定の試薬箱19から試薬容器14を取り出し、これを自動分析装置10にセットする。すると、保冷庫16側においては、第1リーダライタ17が特定の試薬箱19に貼付したRFIDタグ19a及び取り出した試薬容器14に貼付したRFIDタグ14aから試薬箱19のコード番号及び試薬容器14の情報を読み出し、ネットワーク3を介して管理局2に送信する。第1リーダライタ17は、前記と同様に、これらの情報をデータ処理装置18及びネットワーク接続装置15を経由してネットワーク3を介して管理局2に送信してもよい。
【0023】
一方、自動分析装置10側においては、第2リーダライタ12が、制御装置11の制御の下に、使用済みとなって取り出される試薬容器14のRFIDタグ14aに記録された情報を読み出した後、新たにセットされる試薬容器14のRFIDタグ14aから情報を読み出す。このとき、第2リーダライタ12は、新たな試薬容器14のRFIDタグ14aから読み出した情報中に納品日時に関する情報がない場合や、誤った試薬容器をセットしようとした場合等には、その試薬は在庫情報として登録されていない旨の警報を発する。この警報は、例えば、警報音や表示装置13における警報表示によって行うことができる。これにより、オペレータに試薬容器14についてチェックさせ、在庫管理ミスの発生や誤った試薬容器をセットする事故の発生を未然に防止することができる。
【0024】
このようにして新たな試薬容器14がセットされた自動分析装置10は、各種分析操作が実行されるのに伴い複数の試薬容器14の試薬が消費される。これら試薬容器14内の試薬は、例えば、各分析操作の終了ごとに計量されて各試薬容器14のRFIDタグ14aに記録されると共に、試薬情報としてネットワーク接続装置15からネットワーク3を介して管理局2へ伝送される。管理局2は、この試薬情報に基づいて不足している試薬を施設Aに補充するようにネットワーク3を介して代理店4に発注するか、あるいは不足している試薬を施設Aに供給するようにネットワーク3を介して製造部門5から代理店4へ指示することができる。
【0025】
以上説明したように、備品管理システム1は、ユーザ側が在庫管理をしなくとも、メーカ側の管理局2が、施設A〜Nにおける複数の試薬を、在庫切れを起こすことなく一括して自動的に管理することができる。しかも、備品管理システム1は、リーダライタが備品に貼付したRFIDタグとの間で備品に関する情報を自動的に交換するので、複数の施設における今現在の情報に基づいて管理局が備品をリアルタイムで一括管理することができる。このため、備品管理システム1は、複数の施設A〜Nに対する備品の供給を、ユーザ側からの突発的な発注を避けて、メーカ側の主導の下に行うことができるので、物流におけるメーカ側の負担が大きく軽減される。
【0026】
また、自動分析装置10は、制御装置11が自動分析装置10で用いられる消耗品を管理しており、例えば、分析用ランプが予め設定された点灯時間を経過した場合や、ディスポーザブルチップの残量が所定数以下になった場合には、これらの情報をネットワーク接続装置15からネットワーク3を介して管理局2へ伝送する。これらの情報に基づき、管理局2は、ネットワーク3を介して代理店4に消耗品を施設Aへ補充するように発注し、あるいはネットワーク3を介して製造部門5に代理店4が消耗品を施設Aへ補充するように指示を出すことができる。この結果、備品管理システム1は、ユーザが在庫管理をしなくとも、施設A〜Nにおける消耗品を、在庫切れを起こすことなく、管理局2がリアルタイムの下に一括して自動的に管理することができる。
【0027】
このように、備品管理システム1は、複数の施設A〜Nにおける試薬及び消耗品を含む備品を管理局2がネットワーク3を介してリアルタイムの下に一括して管理するので、ユーザにおける在庫管理の手間が軽減される。また、備品管理システム1は、複数の施設A〜Nに対する備品の供給を、ユーザ側からの突発的な発注を避けて、メーカ側の主導の下に行うことができるので、物流におけるメーカ側の負担が大きく軽減される。
【0028】
なお、UHF帯域よりも周波数が小さく、交信距離が短い電波を用いるとき、第1リーダライタ17は、図3に示すように、載置台16a或いは側壁16bを情報交換部として載置台16aや側壁16bにアンテナ(図示せず)を設ける。これによって、第1リーダライタ17は、前記アンテナと試薬箱19に貼付したRFIDタグ19aとの間の距離を小さくして交信距離が短い場合に対応することができる。このとき、コントローラ17bは、図3に示すように、保冷庫16の外部に設置する。
【0029】
また、例えば、図4に示すように、保冷庫16の近傍に情報交換部となる情報交換テーブル20を設けてもよい。このとき、第1リーダライタ17は、情報交換テーブル20にアンテナ(図示せず)を設け、情報交換テーブル20の近傍にコントローラ17bを設ける。このようにすると、部品管理システム1は、納品された備品を一旦情報交換テーブル20上に置くだけで、保冷庫16に収容する試薬のみならず、分析用ランプやディスポーザブルチップ等の消耗品を含む備品までを包括的に管理することができる。このため、ユーザは、備品管理上の手間が殆どかからない。この場合、情報交換テーブル20は、必ずしもテーブルの形態とする必要はない。
【0030】
さらに、代理店4は、管理局2と管理情報を共有することにより、複数の施設A〜Nにおける備品の在庫状況を管理し、製造部門5に備品の供給を発注してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかる備品管理システムは、複数の施設における試薬及び消耗品を含む備品を、在庫切れを起こすことなく管理局が一括して管理するのに有用であり、特に、管理局としてのメーカが試薬及び消耗品を含む備品をリアルタイムで一括して管理するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】備品管理システムの一例を示す全体構成図である。
【図2】第1のリーダライタと試薬箱との配置を示す斜視図である。
【図3】第1のリーダライタの第1の変形例を示す斜視図である。
【図4】第1のリーダライタの第2の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 備品管理システム
2 管理局
2a 管理装置
3 ネットワーク
4 代理店
5 製造部門
10 自動分析装置
11 制御装置
12 第2リーダライタ
13 表示装置
14 試薬容器
14a RFIDタグ
15 ネットワーク接続装置
16 保冷庫
16a 載置台
16b 側壁
17 第1リーダライタ
17a アンテナ
17b コントローラ
18 データ処理装置
19 試薬箱
19a RFIDタグ
20 情報交換テーブル
A〜N 施設

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施設に設置された自動分析装置で使用される備品の情報をネットワークを介して管理局に送信し、前記管理局が前記複数の施設における備品を管理する備品管理システムであって、
前記各施設は、
RFIDタグを貼付した備品が配置される情報交換部と、
前記備品が前記情報交換部に配置されたときに、前記RFIDタグとの間で前記備品に関する情報を交換すると共に、前記ネットワークに接続される第1のリーダライタと、
前記自動分析装置に設けられ、前記備品が当該自動分析装置に装着されたときに、前記RFIDタグとの間で前記備品に関する情報を交換すると共に、前記第1のリーダライタと前記備品に関する情報を共有し、前記ネットワークに接続される第2のリーダライタと、
前記第1及び第2のリーダライタが受信した前記備品に関する情報を処理する処理装置と、
を備え、前記管理局が前記複数の施設における備品をリアルタイムで一括管理することを特徴とする備品管理システム。
【請求項2】
前記自動分析装置は、前記備品の管理情報を表示する表示装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の備品管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−314327(P2007−314327A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147310(P2006−147310)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】