説明

傷の治療

本発明は、傷の治療方法、およびルーズなガラス系繊維から成る3次元圧縮可能なボディーを含んで成り、この繊維が、P5、SiOおよびBから成る群から選択される1つ又はそれよりも多いガラス形成剤を含んで成り、繊維の少なくとも約25重量%が、約200nm〜約4000nmの直径、および直径に対するアスペクト比が少なくとも10となる長さを有する傷の治療処置のための被覆材である。他の形状では、ガラスは、傷に塗布される軟膏又はクリーム内に粒子形状で存在する。更に、他の形状では、ガラスは、傷を閉じるための縫合糸中に形成される繊維として、又は傷を閉じるための外科用グルー中の粒子として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裂傷、糖尿病性潰瘍、床擦れおよびやけど等で開いた傷を治療するための生体適合性被覆材に関する。
【0002】
本発明は、陸軍省の協定W81XWH−08−1−7065により、政府のサポートの下で作られた。政府は、本発明についていくつかの権利を有していると思われる。
【背景技術】
【0003】
米国特許第7638484号に記載されているように、(i)炎症、(ii)線維芽細胞の増殖、(iii)血管増生、(iv)結合組織合成、(v)上皮形成および(vi)傷の縮小は、皮膚開口部の治療の間に生じるプロセスである。栄養失調、感染および薬剤を含む様々な要因が治療プロセスに影響を及ぼす。
【0004】
米国特許第7605298号には、マトリックス表面に結合する抗菌活性物質としてAg、Cuおよび/又はZnを含んで成る傷の被覆剤が開示されている。被覆剤は、吸収性を有したマトリックスおよび抗菌活性物質により形成された第1層を含んで成る。この抗菌活性物質は、マトリックス表面に化学的に又は物理的に結合されている。この物質を含んで成るマトリックスの表面は、親水性ポリマーで覆われている。このマトリックスは、繊維を含んで成り、又不織材料、ガーゼ、発泡材料又は別の可撓性吸収性材料から成る。発泡材料は傷から排出される材料と結合し、それによって傷から離れる利点を有するので、発泡材料は治療プロセスを妨げない。マトリックスは少なくとも1つの繊維を含んで成り、又は少なくとも1つの繊維から形成される。
【0005】
米国特許第7517536号には、可撓性ベース層および抗菌性材料を含んで成る傷の被覆材が開示されている。抗菌性材料は、活性炭素を運ぶ貴金属を含んで成る。活性炭素は、活性炭素パウダー、活性炭素粒子、活性炭素繊維から選択される。貴金属は、銀、金、パラジウム、プラチナ、銅および亜鉛から成る群から選択される。
【0006】
米国特許第7495146号には、液体状の溶解性材料に懸濁した粒子状の銀化合物と銅化合物とを用いて、治療する傷に近い電気化学ポテンシャルを作用させる傷の被覆材が開示されている。
【0007】
米国特許第5977428号には、微量栄養素として銅を含む化合物又は錯体、および多孔性容器に密封された複数の吸収性のある乾燥ヒドロゲル粒子を含んで成る吸収性のある被覆材が開示されている。多孔性容器は傷に付着しない。吸収性のあるヒドロゲル粒子は、滲出液を吸収した後、多孔性容器に密封されたままである。
【0008】
米国特許第7166549号には、抗菌剤、抗炎症薬、化粧品製造での食料サプリメントとして加えられる傷を治療するパウダー、医薬品の制汗剤、プラスチックおよびポリマー、トイレットペーパー、染料、漆、石膏および浄化手段中の粉砕したケイ酸塩ガラスリボンが開示されている。
【0009】
特許出願公報WO80/02378号には、哺乳類の血管新生および内皮活性を促進する吸収性のあるプラスチック、エチレン/ビニル酢酸塩、コラーゲン又はアルブミン材料から製造されたキャリアが開示されている。このキャリアは、チューブ、シート、糸又はネット状に形成され、例えば、皮膚潰瘍に覆われる。
【0010】
裂傷、糖尿病潰瘍、床擦れおよびやけど等に限定されるものではないが、開いた傷を治療するためのプロセスを素早くするための新しい試みが継続して必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、圧縮可能なルーズなガラス系繊維から成る3次元ボディーを含んで成る傷の治療処置のための可撓性被覆材に関する。この繊維は、P5、SiOおよびBから成る群から選択される1つ又はそれよりも多いガラス形成剤を含んで成る。少なくとも約25重量%の繊維は、約200nm〜約4000nmの直径を有しており、幅に対するアスペクト比が少なくとも10となる長さを有する。
【0012】
又、本発明は、結合ガラス系繊維から成る3次元ボディーを含んで成る傷を治療処置するための硬い被覆材に関する。この繊維は、P5、SiOおよびBから成る群から選択される1つ又はそれよりも多いガラス形成剤を含んで成る。少なくとも約25重量%の繊維は、約200nm〜約4000nmの直径を有しており、幅に対するアスペクト比が少なくとも10となる長さを有する。
【0013】
別の態様では、本発明は、P5、SiOおよびBから成る群から選択される1つ又はそれよりも多いガラス形成剤を含んで成る3次元の圧縮可能なボディー、および生体適合性材料に化学的に溶解した約0.05重量%〜10重量%の濃度であるAg、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される1つ又はそれよりも多い微量元素を含んで成る、傷を治療処置するための被覆材に関する。
【0014】
更に、本発明は、軟膏系キャリア、および軟膏系キャリアに混合される生体適合性材料から成るガラス系粒子を含んで成る傷の治療処置するための生体適合性を有した軟膏又はクリームに関する。このガラス系粒子は、P5、SiOおよびBから成る群から選択されるガラス形成剤、および生体適合性材料に化学的に溶解した約0.05重量%〜10重量%の濃度であるAg、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される1つ又はそれよりも多い微量元素を含んで成る。
【0015】
又、本発明は、傷を閉じるための生体適合性を有した外科用のグルーに関する。このグルーは、接着剤、接着剤に混合される生体適合性材料から成るガラス系粒子を含んで成る。このガラス系粒子は、P5、SiOおよびBから成る群から選択されるガラス形成剤、および生体適合性材料に化学的に溶解した約0.05重量%〜10重量%の濃度であるAg、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される1つ又はそれよりも多い微量元素を含んで成る。
【0016】
更なる態様では、本発明は、傷を閉じるための外科用縫合糸である。この縫合糸は、P5、SiOおよびBから成る群から選択されるガラス形成剤を含んで成る生体適合性材料から成るガラス系繊維、および生体適合性材料に化学的に溶解した約0.05重量%〜10重量%の濃度であるAg、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される1つ又はそれよりも多い微量元素を含んで成る。この縫合糸は、外部にポリマーコーティングを含んで成る。
【0017】
別の態様では、本発明は、傷に被覆材又は軟膏若しくはクリームを用いること、又は傷を閉じるためのグルーを用いることを含む傷を処置するための方法に関する。
【0018】
本発明の他の目的および特徴は、一部明らかであって、一部下記にて示す。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の傷を治療処置する被覆材のルーズなガラス系繊維から成る3次元の圧縮可能なボディーの写真である。
【図2】図2は、ルーズなガラス系繊維の至るところにガラスミクロスフェアが分散されたルーズなガラス系繊維から成るボディーの走査型電子顕微鏡(SEM)の画像である。
【図3】図3は、本発明の被覆材のルーズなガラス系繊維から成るボディーの高拡大SEMの画像である。
【図4】図4は、下記に説明するように傷の治癒経過を示す写真である。
【図5】図5は、下記に説明するように傷の治癒経過を示す写真である。
【図6】図6は、下記に説明するように傷の治癒経過を示す写真である。
【図7】図7は、下記に説明するように傷の治癒経過を示す写真である。
【図8】図8は、下記に説明するように傷の治癒経過を示す写真である。
【図9】図9は、下記に説明するように傷の治癒経過を示す写真である。
【図10】図10は、下記に説明するように傷の治癒経過を示す写真である。
【図11】図11は、下記に説明するように傷の治癒経過を示す写真である。
【図12】図12は、下記に説明するように傷の治癒経過を示す写真である。
【図13】図13は、下記に説明するように傷の治癒経過を示す写真である。
【図14】図14は、下記に説明するように傷の治癒経過を示す写真である。
【図15】図15は、下記に説明するように時間を関数とした傷面積のグラフ図である。
【図16】図16は、本発明の治療した傷の組織染色(H&E)の写真である。
【図17】図17は、本発明の治療した傷の組織染色(H&E)の写真である。
【図18】図18は、本発明の治療した傷の組織染色(H&E)の写真である。
【図19】図19は、本発明の治療した傷の組織染色(H&E)の写真である。
【図20】図20は、本発明の治療した傷の組織染色(H&E)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明では、P5、SiOおよびBから成る群から選択される1つ又はそれよりも多いガラス形成剤を含んで成る生体適合性および生分解性を有したガラスが、傷を治療処置するために用いられる。このガラスは、開いた傷に保持されるため、又は傷上に塗布される層として用いられるため、ルーズなガラス系繊維から成る可撓性を有する3次元の圧縮可能なボディーを含む様々な形を採る。別の形状では、ガラスは、傷に塗布される軟膏又はクリーム中で粒子形状である。更に他の形状では、ガラスは、傷を閉じるための縫合糸に形成される繊維として、又は傷を閉じるための外科用のグルー中の粒子として用いられる。
【0021】
図1に示されるように、ルーズなガラス系繊維から成る3次元の圧縮可能なボディーである本発明の第1態様では、ボディーは、約200nm(0.2μm(ミクロン))〜約4000nm(4μm)の直径である繊維を含んで成る。図3は、高倍率で様々な繊維径を示すボディーのSEM画像である。例えば、ある態様では、繊維は、約250nm(0.25μm)〜約3000nm(3μm)、例えば、約300nm(0.2μm)〜約2000nm(2μm)の直径を有する。これら特に直径の小さな繊維は、可撓性を有しているので潰れずに圧縮可能なボディー内に形成される。この繊維は、コットンボールのような手触りを有する。ある態様では、ボディーは、これらの寸法を満たす繊維のみから成る。一方で他の態様では、ボディーは、他の大きさの繊維、マイクロスフェア、粒子、リボン、フレーク等の他のガラス形態を加えたこれら寸法条件を満たす繊維を含む。繊維は、概して断面が円形である。しかし、繊維の断面形状は、やや平たく、楕円状、他の形状又は円形状でなくてよい。断面は繊維長さに対して横断寸法である。従って、本明細書で使用する「直径」は円断面の直径を指すのみではなく、他の横断寸法、円断面ではない直径も指す。
【0022】
アッセンブリ中の繊維数は、多くの態様で重要なものではなく、繊維長さ、被覆材の大きさ、および他のファクターに応じて変わる。例えば、多くの態様では、何百又は何千もの繊維があり、典型的には少なくとも約10、少なくとも約50又は少なくとも約200の繊維がある。繊維数の上限は被覆材の大きさにより決定され、ある態様では約50000以下であり、他の態様ではそれよりも多く含む。
【0023】
図2に示すように、ボディーは、細かいガラス繊維に加えて、少なくとも約10μm、例えば約10μm〜約500μm、例えば約20μm〜約300μmの直径を有するマイクロスフェア又はビーズを含んでもよい。マイクロスフェアに加えて又はマイクロスフェアに代えて、これらの要素は、標準ではない粒子又は標準である粒子、リボン、フレーク、中空球又は他の形状であってよい。ある態様では、マイクロスフェアが好ましい一方で、その形状は多くの態様で重要ではなく、他の事項よりも材料の有用性により決定される。
【0024】
ガラス繊維から成る3次元のボディーは、概して図1に示されるような非圧縮状態にある際、圧力がかからないリラックスした第1状態にある。又、ボディーが異なる形になり、傷に塗布される際に概して圧縮状態にある際、ボディーは圧力がかかった第2状態にある。ボディーが概して圧縮されない状態で圧力がかからない一方で、各繊維が湾曲する際、ある程度の圧力が繊維にかかる。リラックス状態では、ボディーは少なくとも約30体積%である空隙を有する。すなわち、ボディーは、ボディーの少なくとも約30体積%がガラス材料により占有されていない空間を有しているということである。例えば、ボディーは、リラックス状態で約30体積%〜約90体積%、例えば約40体積%〜約75体積%の空隙を有する。ボディーは圧縮されない状態で傷に塗布されてよい。又は、ボディーを圧縮して、空隙を約10体積%〜約75体積%、例えば約10体積%〜約50体積%にしてもよい。例えば、ボディーは、約40体積%〜約75体積%の圧縮されない空隙および約10体積%〜約30体積%の圧縮される空隙を有していてよい。
【0025】
圧縮可能なボディーの初期の表面積は、全て繊維であるかどうかや繊維の大きさ等の形態に応じて変わる。更に、単位体積当たりの表面積は、圧縮、傷への塗布、および生分解の間に変化する。一般的に、本発明のある態様の圧縮可能なボディーのリラックス状態、圧縮されない状態における表面積/バルク体積は、約1cm−1〜約2000cm−1、例えば約50cm−1〜約500cm−1である。
【0026】
図1〜3に示される態様では、繊維は、ボディーにランダムな方向に配置される。別の態様では、繊維はボディーが形成される方法により決定されてよい又は特定の用途により決定されてよい場合、繊維は織物であってよい。例えば、ある態様では、ボディーは、織布又はガーゼの形態と同様に、傷に塗布される織物層の形状である。この層は傷の周縁を覆ってよい。この層により全被覆材が構成されてよく、又は多層被覆材等の多重構造の被覆材が構成されてよい。層は全被覆材を構成してもよいが、本明細書での「層」は被覆材の別の要素を覆う又は覆われる単一層と厳密に限定されない。
【0027】
単一層が形成される場合、ボディーは、股関節インプラント又は骨修復インプラント等のインプラントを覆う又は塗布するのに適当である。これにより、ボディーでインプラントが固定される。更に、この用途でのガラス繊維から成るボディーは、ガラス材料中に化学的に溶解する微量元素を取り入れることで、インプラント部位に微量元素を運ぶのに適当である。ガラスボディーが層であるこれらの用途では、ガラスボディーは可撓性がある。ランダムに配置された織物繊維においても、これらの態様が用いられてよい。
【0028】
3次元のボディーは長さ、幅および厚さを有する。図1に示されるような不規則な形状である態様では、これらの寸法は、x、yおよびz方向各々に最も大きい又は最大の大きさを示す。例えば、図1に示される特定の態様では、長さ約75mm(物差しで示されるように3インチ)、幅約50mmおよび厚さ約5mm〜25mmを有する。一般的に、ボディーの寸法は、塗布される傷の大きさにより決定される。それ故、ボディーは、少なくとも約10mm、例えば約10mm〜約250mm、例えば約10mm〜150mm、約10mm〜約50mm、又は約50mm〜約200mmの非圧縮長さおよび幅を典型的に有する。ボディーは、約2mm〜約100mm又は約5mm〜30mm等少なくとも約2mmの非圧縮厚さを典型的に有する。ボディーは、より大きな寸法で製造又はエンドユーザー又は仲介業者に供給されてよい。
【0029】
ボディーが層形状であるこれらの態様では、厚さは約1mm〜10mm等、例えば10mm以下のように概して小さい。ある態様では、約1mm〜約3mmの厚さである。層は、例えば約10〜約300mmの長さおよび幅を有する正方形状であってよい。又は、層は、例えば約10〜約75mmの幅および約50〜約250mmの長さを有する長方形状であってよい。又、層は、約10〜約75mmの幅および約25mmよりも長い長さを有するロール形状であってよい。ボディーが層である、ある好ましい態様では、ボディーは、ボディー厚さの約5〜約30倍の長さおよび幅を有する。
【0030】
ある態様では、ボディーにおいて、繊維と少なくとも簡単に結合し、可撓性を有したボディーを硬いボディーへと変える結合操作が行われる。これにより、結合されたガラス系繊維から成る3次元のボディーを含んで成る傷を治療処置するための硬い被覆材が得られる。
【0031】
別の態様の本発明は、傷を治療処置するための生体適合性のある軟膏又はクリームである。この態様により、当業者が決定する軟膏系又はクリーム系キャリアが特定の傷を処置するために適当である。生体適合性材料から成るガラス系粒子は、軟膏系又はクリーム系キャリアに混合される。ガラス系粒子は、P5、SiOおよびBから成る群から選択されるガラス形成剤を含んで成る。ガラス系粒子は、生体適合性材料に化学的に溶解した約0.05重量%〜10重量%の濃度であるAg、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される1つ又はそれよりも多い微量元素を更に含んで成る。
【0032】
別の態様の本発明は、傷を閉じるための生体適合性を有した外科用グルーである。このグルーは、当業者により決定される特定の傷を処置するために適当である接着剤を含んで成る。又、グルーは、接着剤に混合される生体適合性材料から成るガラス系粒子を含んで成る。ガラス系粒子は、P5、SiOおよびBから成る群から選択されるガラス形成剤を含んで成る。又、ガラス系粒子は、生体適合性材料に化学的に溶解した約0.05重量%〜10重量%の濃度であるAg、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される1つ又はそれよりも多い微量元素を更に含んで成る。軟膏、クリーム又はグルー中のガラス系粒子の粒子径は、約1μm〜約300μm、例えば約3μm〜約50μmである。グルー、軟膏およびクリームの文脈において、用語「粒子」には繊維が含まれる。
【0033】
別の態様は、傷を閉じるための外科用縫合糸である。この外科用縫合糸は、P5、SiOおよびBから成る群から選択されるガラス形成剤を含んで成る生体適合性材料のガラス系繊維を含んで成る。ガラス系繊維は、生体適合性材料に化学的に溶解した約0.05重量%〜10重量%の濃度であるAg、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される1つ又はそれよりも多い微量元素を更に含んで成る。好ましくは、グルーは外部にポリマーコーティング(又は外部ポリマーコーティング)を有する。
【0034】
前述の各態様と関連して、Ag、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZn等の微量元素、特に好ましい態様では、Ag、Cu、Sr、Znおよび/又はFeが、ガラスに好ましくは取り入れられる。銀は、感染防御特性を有する。これらの他の要素は、血管形成に有効な内皮細胞遊走に影響し、組織再生にとって重要である。このようにして、これら微量元素は、傷の治療等の組織成長を促進する際に重要な機能を果たす血管新生を促進する。これは、部位に骨成長ファクターを供して骨の成長を促すことを言う骨伝導性を促進することと区別される。無血管状態を増やすことを含む血管新生、すなわち血管増大は骨伝導性と区別される。
【0035】
1つ又はそれよりも多い微量元素が用いられるこれらの例では、微量元素は少なくとも約0.05重量%又は少なくとも約0.1重量%の濃度でガラスに取り込まれる。多くの例では、濃度は(要素につき)10重量%以下又は5重量%以下、例えば約0.05重量%〜約5重量%、例えば約0.1重量%〜約2.5重量%である。生体適合性ガラス材料がホウ酸塩系又はリン酸塩系である場合、微量元素の濃度は5重量%以下である。生体適合性ガラス材料がケイ酸塩系である場合、微量元素の濃度は5重量%よりも高く、10重量%以下であってよい。微量元素は、Ag、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される。ある好ましい態様では、微量元素は、Ag、Cu、Fe、SrおよびZnから成る群から1つ又はそれよりも多く選択される。1つよりも多いこれら微量元素は、単一組成で用いられる。又、これら元素は、本発明により微量元素として使用されない場合においても、より多く存在してよい。例えば、0.4重量%のCuおよび15重量%のSrを含むガラスは、本発明に従い微量元素としてCuを含む。又、0.4重量%のCuおよび15重量%のSrを含むガラスは、本発明に従い微量元素としてではないSrを含む。この材料は、Sr量を制限することなく、材料のCu量によって約0.05重量%〜10重量%の濃度のAg、Cu、Fe、SrおよびZnから成る群から選択される微量元素の本明細書の要件を満たす。
【0036】
Cuが望まれる場合、ガラスへのCuの源は、CuO又はCuO等の銅酸化物又は硝酸銅又は硫酸銅等の他の銅化合物であってよい。ある態様では、Cuは約0.05重量%〜約5重量%(約0.06〜6重量%のCuO、約0.055〜5.5重量%のCuO)の濃度、例えば約0.1重量%〜約2.5重量%(約0.12〜3重量%のCuO、約0.11〜3重量%のCuO)の濃度で取り入れられる。好ましい態様では、約1.2重量%〜約2.4重量%のCuOを供する場合、約1重量%〜約2重量%のCuが用いられる。
【0037】
Srが望まれる場合、ガラスへのSrの源は、SrO等の酸化物又はSrCO等の他のSr化合物であってよい。ある態様では、Srは約0.05重量%〜約5重量%(約0.06〜5.90重量%のSrO)の濃度、例えば約0.1重量%〜約2.5重量%(約0.12〜2.95重量%のSrO)の濃度で取り入れられる。好ましい態様では、約1.18重量%〜約2.36重量%のSrOを供する場合、約1重量%〜約2重量%のSrが用いられる。
【0038】
Znが望まれる場合、ガラスへのZrの源は、ZnO等の酸化物又はZn(PO−xHO等の他のZn化合物であってよい。ある態様では、Znは約0.05重量%〜約5重量%(約0.06〜6.0重量%のZnO)の濃度、例えば約0.1重量%〜約2.5重量%(約0.12〜3.0重量%のZnO)の濃度でガラスに取り入れられる。好ましい態様では、約1.20重量%〜約2.40重量%のZnOを供する場合、約1重量%〜約2重量%のZnが用いられる。
【0039】
Feが望まれる場合、ガラスへのFeの源は、FeO、Fe、Fe等の酸化物又はFeSO−7HO等の他のFe化合物であってよい。ある態様では、Feは約0.05重量%〜約5重量%(約0.06〜6.45重量%のFeO)の濃度、例えば約0.1重量%〜約2.5重量%(約0.13〜3.23重量%のFeO)の濃度でガラスに取り入れられる。好ましい態様では、約1.29重量%〜約2.58重量%のFeOを供する場合、約1重量%〜約2重量%のFeが用いられる。
【0040】
Agが望まれる場合、ガラスへのAgの源は、AgNO又はAgPOであってよい。ある態様では、Feは約0.05重量%〜約5重量%の濃度、例えば約0.1重量%〜約2.5重量%の濃度で取り入れられる。
【0041】
本発明のある態様でのガラス形成剤は、所望の生分解性を得るために平衡させた濃度にある。例えば、ある態様では、ガラス形成剤のホウ酸塩、ケイ酸塩およびリン酸塩の濃度は、各々又材料NaO、CaOおよびKO中の他の成分に対して52.95重量%、0重量%および4.0重量%に平衡に各々保たれている。これに関して平衡に保つことは、他の成分を有する、例えばホウ酸塩および他の成分を含みリン酸塩又はケイ酸塩を含まないガラスを有する、あるガラス形成剤の濃度を平衡に保つことを含む。
【0042】
多くの好ましい態様では、ガラス形成剤の濃度を平衡に保って、傷への塗布から2週間以内にガラスの少なくとも約20重量%が生分解する。例えば、ガラス形成剤の濃度を平衡に保って、生後9〜11週目で体重200〜300gのフィッシャー344のラットの表面にある傷への塗布から2週間以内にガラスの少なくとも約20重量%が生分解する。この測定では、生体適合性材料の(相対)標準偏差が25%であり、個体数が10であるラットでテストが行われる。換言すれば、10のこれらボディー、軟膏、クリーム、グルー又は縫合糸がラットの傷に塗布されると、平均でガラスの少なくとも約20重量%が2週間以内に生分解し、ラットの少なくとも68%でガラスの少なくとも15重量%が生分解し、およびラットの少なくとも90%でガラスの少なくとも10重量%が生分解する。ほとんどの例で生分解は、重量減少する際に生じるが、材料が別の反応をする際にも生じる。
【0043】
同様に、別の態様では、ガラス形成剤の濃度を平衡に保って、ボディー、軟膏、クリーム、グルー又は縫合糸中の微量元素濃度の少なくとも約20重量%が、哺乳類宿主への塗布の2週間以内に宿主内に放出される。例えば、ガラス形成剤の濃度を平衡に保って、生後9〜11週目で体重200〜300gのフィッシャー344のラットへの塗布2週間以内に、微量元素の濃度の少なくとも約20重量%が宿主内に放出される。この測定では、生体適合性材料の(相対)標準偏差が25%であり、個体数が10であるラットでテストが行われる。換言すれば、10のこれらボディー、軟膏、クリーム、グルー又は縫合糸がラットの傷に塗布されると、平均で微量元素の濃度の少なくとも約20重量%が2週間以内に放出され、ラットの少なくとも68%で微量元素濃度の少なくとも15重量%が放出され、ラットの少なくとも90%で微量元素濃度の少なくとも10重量%が放出される。
【0044】
一方では、ほとんどの態様でガラスは、宿主へ塗布後にそれ程すばやく生分解しないので、適切に血管形成を促進するのに十分な程長い間、微量元素を供しない。例えば、材料の少なくとも30重量%は少なくとも2週間残存し、2週間以内に生分解しない。すなわち、ガラス形成剤の濃度を平衡に保つことで、生体適合性ガラス材料の少なくとも約30重量%は、生後9〜11週目で体重200〜300gのフィッシャー344のラットへの塗布後少なくとも2週間、ボディー、軟膏、クリーム、グルー又は縫合糸中に残存している。この測定では、生体適合性材料の(相対)標準偏差が25%であり、個体数が10であるラットでテストが行われる。換言すれば、10のこれらボディー、軟膏、クリーム、グルー又は縫合糸がラットの傷に塗布されると、平均でガラスの少なくとも約30重量%が2週間以内に生分解せず、ラットの少なくとも68%でガラスの少なくとも22.5重量%が2週間以内に生分解しない。又、ラットの少なくとも90%で、ガラスの少なくとも15重量%が2週間以内に生分解しない。
【0045】
更に、これらの態様では、微量元素の濃度の少なくとも30重量%が少なくとも2週間
ボディー、軟膏、クリーム、グルー又は縫合糸中に残存している。すなわち、ガラス形成剤の濃度を平衡に保つことで、微量元素の少なくとも約30重量%は、生後9〜11週目で体重200〜300gのフィッシャー344のラットへの塗布後少なくとも2週間残存している。この測定では、生体適合性材料の(相対)標準偏差が25%であり、個体数が10であるラットでテストが行われる。換言すれば、10のこれらボディー、軟膏、クリーム、グルー又は縫合糸がラットの傷に塗布されると、平均で微量元素濃度の少なくとも約50重量%が少なくとも2週間残存し、ラットの少なくとも68%で微量元素の濃度の少なくとも22.5重量%が少なくとも2週間ボディー、軟膏、クリーム、グルー又は縫合糸中に残存する。又、ラットの少なくとも90%で、微量元素の濃度の少なくとも15重量%が少なくとも2週間残存する。
【0046】
本発明のある態様では、ガラスは、哺乳類宿主に1日に、ガラス1gにつき特定の微量元素の放出速度で微量元素を放出する。放出速度は、宿主内に放出される所望の微量元素の量を決定し、次いで、この速度を得るために生体適合性を有した組成物又は組成物の組み合わせを選ぶことにより、事実上決定される。上記に示すように、ガラス形成剤は、所望の生分解性を得るために平衡に保たれた濃度を有する。関連した態様では、表面積が大きくなると、反応が活発になって放出速度が速くなるので、単位体積当たりの表面積を制御することで放出速度を制御することができる。ガラスの生分解速度は宿主により異なり、ガラスにより異なり、微量元素により異なり、すなわち多くのファクターに依存することを当業者は認識している。例えば、平均心拍速度が速い身体的に活発な宿主により、生分解が促され、それによって、より速い速度での微量元素の放出が促されてよい。ある態様では、組成物は、1日にガラス1gにつき微量元素の約0.5〜約100E−7モル、例えば、1日にガラス1gにつき微量元素の約1〜約25E−7モル、1日にガラス1gにつき微量元素の約1〜約20E−7モル、又は1日にガラス1gにつき微量元素の約3〜約12E−7モルの微量元素(Cu)の放出速度を有する。
【0047】
上記に示すように、発明性を有するガラスボディーおよび他のフォームは、生理液と接触すると、生分解し又は反応する。しかしながら、(例えば、24時間以上又は24時間以下で)水性溶液に相対的に素早く溶解する「水溶性」として特徴づけられる論文と比べると、本発明の生体適合性材料は、水又は生理液等の水溶液に素早く溶解しない。すなわち、この材料は、微細な繊維のため数日〜数週、ミクロスフェアおよび直径の大きな粒子のため概して数週〜数月水溶液とゆっくりと反応する。当業者が理解しているとおり、「水溶性」である材料は相対的に素早く溶解し、「非水溶性」である材料は水に完全に溶けない又は少なくとも溶解することのみが困難である材料である。一般的に、この特徴付けの下、本発明の実施態様で用いられるガラスは、非水溶性ではなく水溶性ではなく、むしろ、中間の水溶性である。
【0048】
ボディー、軟膏、クリーム、グルー又は縫合糸のガラス材料は、毒性がなく、すなわち宿主の生態組織に有害でない点で生体適合性を有する。又、ヒドロキシアパタイトが形成されないという点から、本発明の好ましい組成物(Ca−フリー)は生物的に活性していない。すなわち、この組成物は生物活性を欠く。生物活性とは、リン酸カルシウム層の成長を促し、又は骨前駆体のリン酸カルシウム化合物に転化する、すなわち、骨と材料との結合を促すリン酸を含有する哺乳類液での材料の能力を指す。
【0049】
ある態様では、特に明記しない限り本明細書に記載される全てのパーセンテージは重量換算であるという前提の下、用いられるガラスは下記事項を含むホウ酸塩系ガラス材料である。

【0050】
これら態様でのKOおよびMgOの濃度は、各々約1重量%〜約25重量%である。ほとんどの態様では、1つ又はそれよりも多いLiO、NaO、KOおよびRbOは、約1重量%〜約50重量%、例えば約5重量%〜約20重量%の重なる濃度にある。1つ又はそれよりも多いMgO、SrO、BaOおよびCaOは、約1重量%〜約50重量%、例えば約5重量%〜約40重量%の重なる濃度にある。Cuが任意の含有微量元素である場合、この組成物は、CuO、CuO又は他のCu化合物として0.05重量%〜5重量%又は0.01重量%〜2.5重量%のCuを更に含む。遷移金属元素は、d−バンドが1原子に最大10個以下の電子を含む元素であり、とりわけCoおよびNiを含む。確かに、本発明で使用されるZnやFe等の微量元素は、遷移金属である。これら微量元素の微量元素濃度が約0.1重量%〜約2.5重量%等の特定の範囲にある場合、繊維元素が微量元素であることにかかわらず、遷移元素の濃度はその範囲内である。ZnとFeが2.5重量%以上である場合、遷移元素は微量元素ではない。
【0051】
本発明に有効な典型的なガラス材料は、以下のとおりである。
<表1>微量元素を含有する生体適合性を有したホウ酸塩ガラス(重量%)


【0052】
多くの態様では、圧縮可能なボディー又はガラス粒子は、これら組成要件又は本明細書の他の狭義の説明を満たす成分のみから構成される、又はこれら組成要件又は本明細書の他の狭義の説明を満たす成分から基本的に構成される。しかし、一般的に、ある態様では、これらの内容を満たさない他の材料を取り入れてもよい。
【0053】
Ag、Cu又は他の所定の微量元素を本発明に従い取り込んでよい本明細書内の追加のホウ酸塩系材料は、下記の重量%を含む。なお、1つ又はそれよりも多い他の微量元素を類似濃度でCuに加えて又はCuの代わりに含めてよいことに留意することを要する。
<表2>追加のホウ酸塩系ガラスの重量組成

【0054】
Cuに加えて、および/又はAg、Cu、Fe、SrおよびZnに加えて、生体適合性を有したホウ酸塩系ガラス材料は、1〜25重量%のNaO、1〜25重量%のKO、1〜40重量%のCaO、1〜25重量%MgOおよび1〜10重量%のPと組み合わせた40〜80重量%のB又は50〜80重量%のB又は本明細書に記載する更に狭義の範囲のBを含んで成る。すなわち、成分材料は、40〜80重量%のB、1〜25重量%のLiOおよび1〜40重量%のCaOを含んでよい。すなわち、成分材料は、40〜80重量%のB、1〜25重量%のNaOおよび1〜40重量%のCaOを含んでよい。すなわち、成分材料は、40〜80重量%のB、1〜25重量%のNaOおよび1〜40重量%のBaOを含んでよい。すなわち、成分材料は、40〜80重量%のB、1〜25重量%のLiOおよび1〜25重量%のMgOを含んでよい。すなわち、成分材料は、40〜80重量%のB、1〜25重量%のLiOおよび1〜40重量%のBaOを含んでよい。本明細書の生体適合性材料は重量%で様々な酸化物を含有するものとして記載されている。しかし、当業者は、最終のガラス又はガラス/結晶組成物において、酸化物化合物は解離されており、B、SiO、P等の特定の酸化物は別々に同定されず、又は必ず別々に存在するという事を理解している。しかしながら、最終の組成物が個々の酸化物を含有したものであると当業者が考えていることは通常であるので、本明細書ではそのようにしている。この事から、本明細書の組成物は同等の基準に基づく。
【0055】
好ましい態様では、微量元素を含む本発明に用いられる生体適合性を有したガラスは、約40〜80重量%のB、例えば約50〜80重量%のBを含んでいるのでホウ酸塩系である。ホウ酸塩系材料は、容易な作成、結晶化せずに相対的に低い温度でガラス粒子、ミクロスフェア又は繊維内に作成できること等生物学的使用のためいくつかの重要な利点、特に生体適合性を有している。ケイ酸塩系材料と比較して本明細書に開示されているホウ酸塩系材料は、より速い反応速度、低溶融温度、結晶化耐性があり、シリカがない例では、ボディー中でゆっくりと分解する。本明細書の多くの他の好ましい態様では、最大約18重量%のSiOを用いる一方、材料は、ケイ酸塩−フリーであり、0.1重量%以下のケイ酸塩を含んでおり又はケイ酸塩を使用しない。ホウ酸塩ガラス繊維は、生体内反応においてしばしば中空繊維を形成する一方で、ケイ酸塩ガラスは、この繊維を形成しない。ホウ酸塩ガラス繊維は、生体内で血管形成し易い。又、本明細書に記載するホウ酸塩材料は、体液と反応する際、生体内でホウ素を放出する。
【0056】
ある用途で特定の選択的態様があり、ガラス中の(元素の又はCaO若しくは他の化合物中の)Ca濃度は約5重量%以下で制御されている。ある好ましい態様では、約0.5重量%以下、例えば0.2重量%以下、更に0.1重量%以下にCa濃度が、正確に制御される。Ca濃度を正確に制御するこの態様の利点は、生理リン酸含有液にさらされて、リン酸カルシウム化合物、アパタイトタイプの化合物、および関連する非晶質リン酸カルシウム(ACP)の形成を回避できることである。アパタイト化合物は、ヒドロキシアパタイトCa(PO(OH)、フルオロアパタイトCa(POF、非晶質リン酸カルシウム(ACP)および他のカルシウム含有化合物を含む。すなわち、ある態様では、例えば類似のSr又はBa化合物よりも放射線不透過性が相対的に低いので、Caアパタイト化合物の形成を回避することに利点がある。ある態様では、より素早く又は更にゆっくりと分解する化合物を形成するためにCaアパタイト化合物を回避することに利点がある。粘度、溶融温度、および/又は結晶化傾向等の溶融特性を制御するためにCaを回避することに利点がある。Caフリー組成物には生物活性がない。生物活性とはリン含有の哺乳類液でリン酸カルシウム層の成長を促し、又は骨前駆体のリン酸カルシウム化合物に転化する材料の能力を指す。
【0057】
ある態様で用いられる生体適合性を有したCaフリーの材料は、アルカリ酸化物およびアルカリ土類酸化物から選択される残渣を有した約40重量%〜約90重量%のBおよび下記に示す他の任意の成分を含む。例えば、この材料は重量濃度換算で

を含む。
【0058】
更に、材料は、CuO、CuO又は他のCu化合物として0.05〜5又は0.01〜2.5重量%の濃度のCuおよび/又は他の微量元素を任意に含む。これら態様では、上記に示すように低レベルのCaが含まれる。他の態様では、実質的にCaフリーであり、又Caは無く又は0.1重量%以下のCaを含む。
【0059】
ある好ましい態様では、ガラスは、約50重量%〜約80重量%のB、LiO、NaO、KO、RbOおよびこれらの組合せから成る群から選択される約5重量%〜約20重量%のアルカリ酸化物成分、およびMgO、SrO、BaO、およびこれらの組合せから成る群から選択される約5重量%〜約40重量%のアルカリ土類酸化物成分を含む。任意の成分は、P、SiO、Al、Fおよび遷移金属元素を含む。ランタノイドは、ある好ましい態様から厳密にそして正確に除去される。ある態様では、生体適合性材料は、約50重量%〜約80重量%のB、LiO、NaO、KO、RbOおよびこれらの組合せから成る群から選択される約5重量%〜約20重量%のアルカリ酸化物成分、MgO、SrO、BaOおよびこれらの組合せから成る群から選択される約5重量%〜約40重量%のアルカリ土類成分、およびCuO、CuO又は他のCu化合物として約0.05〜5重量%のCuから基本的に構成される。
【0060】
本発明によりCuを取り入れているホウ酸塩系Caフリー材料は、重量換算で下記のものを含んでいる。なお、1つ又はそれよりも多い他の微量元素が、類似の濃度でCuに加えて又はCuに代えて含まれていてもよい。
<表3>Caフリーのホウ酸塩ガラスの重量組成

【0061】
本発明のある態様では、ガラスは、約5〜約25重量%、例えば約8〜約20重量%の重複する濃度でアルカリ酸化物LiO、NaO、KOおよび/又はRbOの少なくとも2つを含むために選択される。ガラスの加工性および製造性を改善する、結晶化傾向を低減するために2つ又はそれよりも多いアルカリ化合物を含めることがよいと分かった。1種以上のアルカリ(例えば、混合アルカリ)を用いることで、ガラスのコストを下げ、体液との反応速度を改善し、組織成長および組織再生に有効な追加元素を供することができる。
【0062】
ある態様の更なる特徴は、MgO、SrO、BaO、CaOおよびこれらの組合せから成る群から選択されるアルカリ土類酸化物の重複する濃度が、約1重量%〜約50重量%、例えば約1重量%〜約30重量%又は約8重量%〜約25重量%の範囲にあることである。これらの態様では、1〜45重量%の重複した範囲、例えば5〜25重量%の範囲で2つ又はそれよりも多いアルカリ土類酸化物が含まれる。SrOが10重量%よりも高いSr濃度を得る濃度にある場合、本明細書の微量元素に限定されない。
【0063】
Cuおよび/又は他の微量元素を取り込み、又混合アルカリ酸化物を用いるこれら態様は、約40重量%〜約80重量%のBを含む。これら態様では、Cu又は他の微量元素化合物に加えて、約40重量%〜約80重量%のB、LiO、NaO、KOおよびRbOから成る群から選択される混合アルカリ酸化物、およびMgO、SrO、BaO又はCaOの1つから基本的に構成される。他の態様では、Cu又は他の微量元素化合物に加えて、約40重量%〜約80重量%のB、LiO、NaO、KOおよびRbOから成る群から選択される2つ又はそれよりも多いアルカリ酸化物、およびMgO、SrO、BaO又はCaOから成る群から選択される2つ又はそれよりも多いアルカリ土類酸化物から基本的に構成される。例えば、表2の組成物Aは、約40〜約80重量%のB、重複する約5重量%〜約25重量%のLiO、NaO、KOおよびRbOから成る群から選択される2つ又はそれよりも多いアルカリ酸化物、重複する約8重量%〜約25重量%のMgO、SrO、BaO又はCaOからの2つ又はそれよりも多いアルカリ土類酸化物から基本的に構成される。他の態様では、1つ又はそれよりも多いP、SiO、Al、Fおよび遷移金属元素を任意に含む。
【0064】
本発明は、約60〜約82重量%、好ましくは約70〜約80重量%のB組成物を多く有する生体適合性を有したガラス材料の繊維又は粒子を使用することを含む。これら態様では、重複する約1重量%〜約50重量%、例えば、約5重量%〜約25重量%、更には約8重量%〜約20重量%のLiO、NaO、KO、RbOおよびこれら組合せから成る群から選択されるアルカリ酸化物、およびこの範囲で重複する任意の2つ又はそれよりも多いアルカリ酸化物を用いる。又、これら態様では、約1重量%〜約50重量%、例えば、1重量%〜30重量%、更には約8重量%〜約25重量%のMgO、SrO、BaO、CaOおよびこれら組合せから成る群から選択されるアルカリ土類酸化物、およびこの範囲で重複する任意の2つ又はそれよりも多いアルカリ土類酸化物を用いる。これら態様では、表3中の組成物II、III、IVおよびVII等のこれら成分から基本的に構成される。一方、他の態様では、1つ又はそれよりも多いP、SiO、Al、Fおよび遷移金属元素を任意に含む。
【0065】
前述の混合アルカリおよび高濃度のホウ酸塩を用いる態様では、上記に示す方法で、Ca化合物の形成を回避するために、Ca濃度は0.5重量%以下、例えば、0.2重量%又は0.1重量%以下を含む約5重量%以下に正確に制御されてよい。又、ヒドロキシアパタイト、他のリン酸カルシウム、又は非晶質リン酸カルシウムを形成し易くする最大約40重量%のCaOを含む2つ又はそれよりも多いアルカリ酸化物を含む態様がある。
【0066】
本発明のある典型的な材料は、おおよそ40〜80重量%のB、0.05〜5重量%のCuO、並びにNaO、KO、MgOおよびPを含む。より具体的には、本発明の材料は、40〜90重量%のB、0.1〜5重量%のCuO、1〜25重量%のNaO、1〜25重量%のKO、1〜25重量%のMgOおよび1〜10重量%のPを含む、又はから基本的に構成される。
【0067】
他の態様での本発明は、哺乳類の体液に少なくとも部分的に溶解したリン酸塩系又はケイ酸塩系材料から形成されるガラスを用いる。銅又は他の微量元素が、上記に記載する濃度で生体適合性材料に任意に取り込まれる。これら態様では、Pおよび/又はSiOはガラス形成剤であり、Pは約20〜約65重量%であり、又はSiOは約20〜約60重量%から成る。又、これら材料は、約8重量%〜約55重量%、例えば約10重量%〜約52重量%の濃度の1つ又はそれよりも多いLiO、NaO、KO、RbO、CsO又はこれら組合せから成るアルカリ金属酸化物成分を含む。又、これらリン酸塩系ガラスおよびケイ酸塩系ガラスの多くが、CaO、CaF又はこれらの混合物の1つであるカルシウム成分を含む。例えば、これらガラスの多くは、約5重量%〜約40重量%のCaO若しくはCaF又はこれらの混合物、例えば約10重量%〜約30重量%のCaO若しくはCaF又はこれらの混合物、又は約10重量%〜約15重量%のCaO若しくはCaF又はこれらの混合物を含む。従って、これら態様の1つでは、約20〜約65重量%のP、1つ又はそれよりも多い約8〜約55重量%のLiO、NaO、KO、RbO、CsO又はこれら混合物、約5〜約40重量%のCaO又はCaFのカルシウム成分、および約0.05重量%〜約5重量%、例えば約0.1重量%〜約2.5重量%の濃度の任意のCuが含まれる。別の態様では、約20〜約65重量%のP、1つ又はそれよりも多い約10〜約52重量%のLiO、NaO、KO、RbO、CsO又はこれら混合物、約5〜約40重量%のCaO、CaF又はこれらの混合物のカルシウム成分、および約0.05重量%〜約5重量%、例えば約0.1重量%〜約2.5重量%の濃度の任意のCu又は他の微量元素が含まれる。別の態様では、約20〜約65重量%のP、1つ又はそれよりも多い約8〜約55重量%のLiO、NaO、KO、RbO、CsO又はこれら混合物、約10〜約30重量%のCaO、CaF又はこれらの混合物のカルシウム成分、および約0.05重量%〜約5重量%、例えば約0.1重量%〜約2.5重量%の濃度の任意のCu又は他の微量元素が含まれる。別の態様では、約20〜約60重量%のSiO、1つ又はそれよりも多い約8〜約55重量%のLiO、NaO、KO、RbO、CsO又はこれら混合物、約5〜約40重量%のCaO又はCaFのCaOのカルシウム成分、および約0.05重量%〜約5重量%、例えば約0.1重量%〜約2.5重量%の濃度のCu又は他の微量元素が含まれる。別の態様では、約20〜約60重量%のSiO、1つ又はそれよりも多い約10〜約52重量%のLiO、NaO、KO、RbO、CsO又はこれら混合物、約5〜約40重量%のCaO又はCaF又はこれらの混合物のCaO又はCaF又はこれらの混合物のカルシウム成分、および約0.05重量%〜約5重量%、例えば約0.1重量%〜約2.5重量%の濃度のCu又は他の微量元素が含まれる。別の態様では、約20〜約60重量%のSiO、1つ又はそれよりも多い約8〜約55重量%のLiO、NaO、KO、RbO、CsO又はこれら混合物、約10〜約30重量%のCaO又はCaF又はこれらの混合物のCaO又はCaF又はこれらの混合物のカルシウム成分、および約0.05重量%〜約5重量%、例えば約0.1重量%〜約2.5重量%の濃度のCu又は他の微量元素が含まれる。ある態様では、CaFは厳密に回避され、カルシウム成分はCaOである。
【0068】
本発明の有用なCuおよび他の微量元素を含むケイ酸塩系ガラスの例は、以下のとおりである。
<表4>生体適合性を有するケイ酸塩系ガラスの組成物の重量パーセント

【0069】
本発明の有用なCu又は他の微量元素を含む生体適合性を有したリン酸塩系ガラスの例は表5に示される。
<表5>生体適合性を有するリン酸塩系ガラスの組成物の重量パーセント

【0070】
これらリン酸塩系の形成では、約5重量%〜約25重量%、例えば約8重量%〜20重量%の重複する濃度のアルカリ酸化物LiO、NaO、KOおよび/又はRbOの少なくとも2つを含めることに利点がある。上記に示すように、2つ又はそれよりも多いアルカリ化合物を含めることで、繊維を作成する上で重要なガラスの加工性および製造性を改善する結晶化傾向を低減することができる利点を有する。1種以上のアルカリ(例えば、混合アルカリ)を用いることで、ガラスのコストを下げ、体液との反応速度を改善し、組織成長と組織再生に有効な追加元素を供することができる。
【0071】
これらリン酸塩系態様の更なる特徴は、MgO、SrO、BaO、CaOおよびこれらの組合せから成る群から選択されるアルカリ土類酸化物の重複する濃度が、約1重量%〜約50重量%、例えば約1重量%〜約30重量%又は約8重量%〜約25重量%の範囲にあることである。これらの態様では、1〜45重量%の重複した範囲、例えば5〜25重量%の範囲で2つ又はそれよりも多いアルカリ土類酸化物が含まれる。SrOが10重量%よりも高いSr濃度を得る濃度にある場合、本明細書の微量元素に限定されない。
【0072】
又、意図的にある特性に影響を与えるため、異なる成分組成物を用いる本発明の選択的態様がある。例えば、ある態様では、圧縮可能なボディー、軟膏、クリーム、グルー又は縫合糸には、10〜90重量%の上記から選択されるある組成物を有する成分、および10〜90重量%の異なる組成物の成分が用いられる。更に、2種以上の成分が用いられてもよい。すなわち、材料は、考えた組成物の第1成分材料を含んで成る少なくとも10重量%の成分と、第2成分材料を含んで成る少なくとも10重量%の成分とを含んでよい。第1および第2成分材料は、互いに異なる組成物を有する。第1成分材料のみがCuおよび/又は他の微量元素を含んでよいと考える。これにより、例えば、ゆっくりと反応する繊維又は粒子と組み合わせた素早く反応する繊維又は粒子の選択肢、又はCaフリー繊維又は粒子を有するCa含有繊維又は粒子の選択肢が可能となる。従って、標準組成成分を選択し、標準組成成分と非標準組成成分とを組み合わせて、提示される塗布のため、すなわち、宿主の特定の要求のため、効果的にカスタマイズし又は全ての組成物にドープさせることができる。又、成長ファクター又は宿主まで届けるための薬を含む中空球を圧縮可能なボディー、軟膏、クリーム、グルー又は縫合糸と組み合わせることができる。
【0073】
ガラスを製造する方法は、本発明では厳密に限定されない。例えば、ガラスの準備工程では、個々の分析用試薬成分を秤量し、十分に混合し、および約1〜4時間、900〜1500℃の範囲の温度で、プラチナ坩堝内で溶融する。次いで、溶融物をスチール又は銅板で急冷して、所望の大きさの粒子まで細かくしたガラスを形成する。溶融物の形成の際、好ましい組成物から成る材料を繊維又は粒子に簡単に形成させることができる。溶融物から直接的に手によって抜き出すこと、又は回転ドラムにより広げて繊維を抜き出すことができる。
【0074】
生体適合性材料は、ガラス、ガラスセラミック、又は自然に存在するセラミックであってよい。しかしながら、一般的に、本発明においてはガラスの状態であることが好ましい。何故なら、同じ組成物から成る結晶又は部分的に結晶に対応するものよりも、強度があり、又より化学的に均質であるからである。ここで、用語「ガラス」とは、全てガラスである材料と、ガラス部分および結晶部分から成る材料とを含めて使用している。従って、成分材料の約5重量%以下、より好ましくは1重量%以下が結晶材料であるので、生体適合性材料は実質的にはガラスである。上記説明に対応する本発明の多くの態様で使用されているガラスは、例えば、任意の1つ又はそれよりも多いCu化合物等の微量元素化合物に加えて、アルカリ酸化物およびアルカリ土類酸化物等の塩基性酸化物を有する1つ又はそれよりも多い(既知のガラス形成酸化物である)SiO、B、P等の酸化物の混合物を溶解することで作成される、少なくとも99重量%の非晶質の固体又は結晶ではない固体である。選択的な態様では、繊維又は粒子は、ガラスおよび多くの態様で完全に(100%)結晶ではない繊維として機能する結晶を含むガラスセラミック繊維を含む。繊維又は粒子は、ヒドロキシアパタイトの薄い層を形成するために、予め反応させたガラス繊維又は粒子等の予め反応させた生体適合性を有するガラスであってよい。
【実施例1】
【0075】
図1のルーズなガラス系繊維の圧縮可能なボディーを含んで成る被覆材を、53重量%のB3、20重量%のCaO、12重量%のKO、6重量%のNaO、5重量%のMgO、4重量%のPの組成物から成るガラスから用意した。図2に示すように、繊維を形成する過程で形成された、いくつかの残留ビーズ(ミクロスフェア)があった。図3に示すように、繊維径は約300nm〜約2000nmであった。ミクロスフェアは直径がより大きく、図2に示すように約20ミクロン〜約300ミクロンであった。
【0076】
ラットの皮膚欠損をふさぐ実験で、図1の圧縮可能なボディーを使用した。約15mm径で約2mmの厚さの円盤状のものを形成するために、手で形作った。図4に示すように、傷にこの円筒形状のものを設けた。ラットは、生後9〜11週目、体重200〜300gであるフィッシャー344のラットであった。注入する前に、被覆材を2回エチルアルコールで洗浄し、小型箱形炉内で2.5時間250℃で殺菌した。塗布するため、ラットの背中の毛を剃り、ヨウ素で消毒し、70%のエタノールで洗浄した。各ラットをイソフルオリンおよび医療グレードの酸素の混合物で麻酔した。被覆材の塗布後、感染症を防ぐため0.1mLのペニシリンGプロカインを各ラットの大腿部に注入した。回復するまでの間、外気を有したかご内の加熱パッドにラッドを置いた。
【0077】
図5〜10は、コントロールした傷(左側)と圧縮可能なボディーで覆われた傷(右側)の治療の経過を示す画像の代表的なセットを示す。0日目では、全ての傷を塞ぐ被覆材で覆われた傷(白いエリア)をはっきりと示している。図5〜10の画像により示されるように、2つの傷を3週間監視した。そして、それらの画像は、被覆材で覆われた傷がコントロールした傷と略同じ速さで治癒したことを示している。
【0078】
図11〜14は、被覆材の恩恵を示すためにいくつかの選択した高拡大画像を示している。(被覆材のない)コントロールは左側であり、繊維被覆材で覆った傷は右側である。図11は、0日目の開いた傷を示している。傷は湿っており、露出した組織があらわれている。図12は、4日後の傷を示している。コントロールした傷の組織が乾燥し、その外見はダークグレー色になっており、被覆材で覆われた側は標準のかさぶたのように見える。下部にある組織と反応する被覆材により生じたかさぶたが現れて、有益な一時的なバリアが形成される。図13と図14では、傷が閉じるにつれて傷からかさぶたが剥離することが見られる。図13と図14のコントロール側にあるかさぶたは、色が暗く、乾燥している。
【0079】
各傷の面積を定期的に測定し、各コントロールした傷と被覆材で覆った傷の平均面積を計算し、時間に対してプロットした。図15のグラフでは、コントロールした傷と被覆材で覆われた傷との閉口の違いはほとんどなかったことを示している。しかしながら、被覆材で覆われた傷は周縁からこの傷を保護するバリアを有しており、初めは傷の閉口がゆっくりであるものの、バリアにより有害な病原体が外に出やすくなった。
【0080】
22日後に、組織学的分析のため犠牲にされた動物の傷と周囲組織が治癒した。図16は、被覆材で覆われた傷の代表的な組織断面図である。ガラス繊維はこれら写真では見えないが、ガラス繊維は、体液に溶解し、又はかさぶたが剥離する際に除去される。被覆材から離れた動物と反応するガラスミクロスフェアが、図18、19および20に示される。しかしながら、図18および19に見られるミクロスフェアは、傷を閉じる前の繊維のインジケーターとして作用する。傷の大きさは、傷に残った反応させたミクロスフェアの大きさと近似していた。おおよその元の傷のサイズ(直径で1cm以下)を図16に示し、顕著な治癒が見られる。
【0081】
図16〜20は、生体内で反応して、ヒドロキシアパタイトから成る中空ミクロスフェアを形成するガラスミクロスフェアを示す。開示した組成物から成るガラスを生体内環境に設けて反応させることで、ヒドロキシアパタイトを形成することが先の実験により分かった。図18は図17の拡大図であり、血管が反応ガラス玉の近くに見られる。生体内で反応するとガラスから放出されるホウ素が動物内での血管新生効果を生み出し、傷の治療プロセスを高めることが、この血管より明らかである。又、図19の矢印に示すように、2つの反応させたミクロスフェアに近接する血管があった。又、図20の矢印に示すように、反応させたミクロスフェアの近傍に3つの血管があった(丸で囲んでいる)。
【0082】
図16〜20にある組織学的な画像から、被覆材の存在下で生じる組織が、周囲の自然の組織と同様に現れている。図16に示す2つの垂直な点線の間の短い水平な矢印により、皮下組織の未治癒部が示されているが、22日後、真皮および表皮層が完全に治癒され、(図20に示す)皮下組織がほとんど完全に治癒された。図20は、いくつかの反応させたガラス玉を有した完全に治癒されていない皮下組織を示す。目に見える壊死組織又は有害組織はなく、脂肪沈着した髪が、図17に示す近接する回復した組織にあるのと同様に再成長した組織にある。
【0083】
上記に示すように、本発明のいくつかの目的が達成され、他の利点も得られた。
【0084】
本発明又は好ましい態様の要素を導く際、冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は1つ又は他の要素があることを示している。用語「comprising」、「including」および「having」は含有していること意味し、列挙した要素以外に追加の要素があってよいことを示している。
【0085】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記組成物および方法に様々な変更がなされてよいので、上記記載に含まれるおよび添付の図面に示される全ての事項は、例示であって限定されるべきではないと解釈されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傷の治療処置のための可撓性被覆材であって、
ルーズなガラス系繊維から成る3次元圧縮可能なボディーを含んで成り、
ガラス系繊維が、P5、SiOおよびBから成る群から選択される1つ又はそれよりも多いガラス形成剤を含んで成り、
ガラス系繊維の少なくとも約25重量%が、約200nm〜約4000nmの直径および該直径に対するアスペクト比が少なくとも10となる長さを有している、被覆材。
【請求項2】
生体適合性材料が、Ag、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される1つ又はそれよりも多い微量元素を含んで成り、
生体適合性材料に化学的に溶解した微量元素が、約0.05〜10重量%の濃度を有している、請求項1に記載の被覆材。
【請求項3】
1つ又はそれよりも多い微量元素が、均一にガラス系繊維内に分散されており、それによって前記ガラス系繊維の生分解の際に徐放するようになっている、請求項2に記載の被覆材。
【請求項4】
ガラス系繊維が、
約40〜約80重量%のB
LiO、NaO、KOおよびRbOから成る群から選択される1つ又はそれよりも多いアルカリ酸化物、および
MgO、SrO、BaOおよびCaOから成る群から選択される1つ又はそれよりも多いアルカリ土類酸化物を含んで成る、請求項1〜3のいずれかに記載の被覆材。
【請求項5】
圧縮可能なボディーが、第1組成物から成る繊維、および第1組成物とは異なる第2組成物から成る繊維を含んで成る、請求項1〜4のいずれかに記載の被覆材。
【請求項6】
5、SiO、Bおよびこれらの組合せから成る群から選択されるガラス形成剤を含んで成り、約10〜約500μmの直径を有している、約1〜約25重量%のガラス系粒子を更に含んで成り、前記粒子がガラス系繊維間に分配されている、請求項1〜5のいずれかに記載の被覆材。
【請求項7】
ガラス系粒子がミクロスフェアである、請求項6に記載の被覆材。
【請求項8】
ガラス系繊維が、生体適合性材料に化学的に溶解した約0.05〜10重量%の濃度のCuを含んで成る、請求項1〜7のいずれかに記載の被覆材。
【請求項9】
ガラス系繊維が不規則に方向づけされている、請求項1〜8のいずれかに記載の被覆材。
【請求項10】
圧縮されていない状態の圧縮可能なボディーが、少なくとも約30体積%の空隙を有している、請求項1〜9のいずれかに記載の被覆材。
【請求項11】
圧縮されていない状態の圧縮可能なボディーが、約5mm〜約30mmの厚さを有している、請求項1〜10のいずれかに記載の被覆材。
【請求項12】
圧縮可能なボディーが層である、請求項1〜11のいずれかに記載の被覆材。
【請求項13】
圧縮可能なボディーが、ボディーの厚さの約5〜約30倍の長さおよび幅を有する層である、請求項1〜11のいずれかに記載の被覆材。
【請求項14】
層が織物である、請求項1〜13のいずれかに記載の被覆材。
【請求項15】
傷の治療処置のための被覆材であって、
5、SiOおよびBから成る群から選択される1つ又はそれよりも多いガラス形成剤を含んで成るガラス系の生体適合性材料から成る3次元のボディー、および
Ag、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される1つ又はそれよりも多い微量元素
を含んで成り、
生体適合性材料に化学的に溶解した微量元素が約0.05〜10重量%の濃度を有している、被覆材。
【請求項16】
傷の治療処置のための硬い被覆材であって、
結合したガラス系繊維から成る3次元のボディーを含んで成り、
ガラス系繊維が、P5、SiOおよびBから成る群から選択される1つ又はそれよりも多いガラス形成剤を含んで成り、
ガラス系繊維の少なくとも約25重量%が、約200nm〜約4000nmの直径および該直径に対するアスペクト比が少なくとも10となる長さを有している、被覆材。
【請求項17】
傷の治療処置のための生体適合性を有した軟膏又はクリームであって、
軟膏系又はクリーム系のキャリア、
該軟膏系又はクリーム系のキャリアに混合された生体適合性材料から成るガラス系粒子、および
生体適合性材料に化学的に溶解した微量元素であって、約0.05〜10重量%の濃度のAg、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される1つ又はそれよりも多い微量元素
を含んで成り、
ガラス系粒子が、P5、SiOおよびBから成る群から選択されるガラス形成剤を含んで成る、軟膏又はクリーム。
【請求項18】
傷を閉じるための生体適合性を有した外科用グルーであって、
グルーが、
接着剤、
接着剤に混合される生体適合性材料から成るガラス系粒子および/又は繊維、並びに、
生体適合性材料に化学的に溶解した微量元素であって、約0.05〜10重量%の濃度のAg、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される1つ又はそれよりも多い微量元素
を含んで成り、
ガラス系粒子が、P5、SiOおよびBから成る群から選択されるガラス形成剤を含んで成る、グルー。
【請求項19】
傷を閉じるための外科用縫合糸であって、
縫合糸が、
5、SiOおよびBから成る群から選択されるガラス形成剤を含んで成る生体適合性材料から成るガラス系繊維、および
生体適合性材料に化学的に溶解した微量元素であって、約0.05〜10重量%の濃度のAg、Cu、F、Fe、Mn、Mo、Ni、SrおよびZnから成る群から選択される1つ又はそれよりも多い微量元素
を含んで成り、
縫合糸が外部にポリマーコーティングを含んで成る、縫合糸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2013−516285(P2013−516285A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548119(P2012−548119)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2011/020362
【国際公開番号】WO2011/085092
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(501305844)ザ・キュレーターズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミズーリ (12)
【氏名又は名称原語表記】THE CURATORS OF THE UNIVERSITY OF MISSOURI
【Fターム(参考)】