説明

傷みやすい商品の配達方法

本発明は傷みやすい商品を配達する装置に関する。特に、傷みやすい商品が輸送中に受けるストレスを監視する装置に関する。特に、切り花および/または野菜を配達する装置および方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傷みやすい商品を配達する方法に関する。特に、本発明は、傷みやすい商品が輸送中に受けるストレスを監視する方法、および商品の保管寿命(shelf life)を予測するために収集した情報の使用に関する。特に、本発明は、切り花および/または野菜を配達する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製品を追跡し、サプライチェーン中の製品の経過を追うための多数の方法が開発されている。たとえば、国際公開第03/060752号は、サプライチェーン・マネジメント方法に関する。それは、特に、リアルタイムの在庫管理のための方法を開示している。また、国際公開第05/008554号は荷物追跡および物流管理(logistics)に関する。それは、特に、製品がサプライチェーンの中を進むときに、製品の状態が追跡されることを可能にする方法を開示している。米国特許出願公開第2006/111845号明細書は、種々の処理の進行を独自の識別子に関連づけ、その情報をデータ保管場所に格納することによって、サプライチェーン中の農産物の在庫を追跡する方法に関する。これらの方法の多くは無線自動識別(RFID)タグを利用する。
【0003】
保管および輸送中に傷みやすい商品が耐える環境条件は、商品の最終的な保管寿命に重要な影響を及ぼす。温度のような環境要因の検出が、そのような商品の保管寿命を監視するために使用し得ることが知られている。たとえば、国際公開第2005/106813号は、傷みやすい製品のための保管寿命監視検出自動応答装置システムに関する。その出願は、製品サプライチェーンの多数のセグメントにわたって傷みやすい製品の保全性を監視するためにそのシステムを使用することについて概論的に記述している。米国特許出願公開第2004/181363号明細書は、工業製品の残りの寿命を示すための装置に関する。その装置は、製品の保存に関係する1つ以上の環境変数を検出し、製品の残りの寿命を評価するためにそのデータを使用する。
【0004】
良好な保管寿命の維持は切り花産業において特に問題となる。切り花の最適の貯蔵および輸送温度は2〜5℃である。たとえば望ましくない環境条件に由来するストレスが、保管寿命の減少と相関があることが知られている。不十分な冷蔵チェーンが花に及ぼす影響としては、高い到着温度、進行させられたつぼみの開きおよびむらのある成熟、増加したボトリティス感染、短縮された花瓶寿命、破壊されそして曲がった茎、およびしなびたまたは傷んだ葉が挙げられる。貯蔵温度の切り花の品質に及ぼす影響は、セリケル(Celikel)ら,園芸学(HortScience),第37巻,第1号,p.148−150、およびセバロス(Cevallos)ら,Acta Hort,第517巻に説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第03/060752号
【特許文献2】国際公開第05/008554号
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/111845号明細書
【特許文献4】国際公開第2005/106813号
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/181363号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】セリケル(Celikel)ら,園芸学(HortScience),第37巻,第1号,p.148−150
【非特許文献2】セバロス(Cevallos)ら,Acta Hort,第517巻
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図1(A〜D)は、4バッチのバラをケニアからドイツの輸入業者倉庫に輸送する間に取得された温度記録を示す。1バッチは各々19箱または20箱の切り花からなり、そして温度は2日間の輸送期間にわたって等間隔に読み取られた。データは、花は栽培者の敷地を離れる前に5℃に冷却されたが、花のまわりの微小環境中の温度は輸送中にかなり上昇し、そして花は17〜24℃の間の温度で倉庫に到着したことを示している。データは、目的地に到着したときの花の温度の輸送間のばらつきが非常に重要になりえることを示している。さらに、花の1つの輸送の中でさえ、花の各バッチが輸送されるときに受ける温度誘発ストレスに大きな変化が観察される。この問題は、切り花産業界の中では広く認識されている。
【0008】
この問題は、サプライチェーンにおける温度制御された貨物自動車の使用によって克服することができるかもしれない。しかし、信頼できる冷蔵チェーンのインフラを確立するために冷蔵装置を備え付けそして維持する費用が高いので、この解決法は、特にケニアとコロンビアのような重要な花産出国では実用的ではない。
したがって、これまでに受けたストレスがより少なく、それ故により長い保管寿命を有するであろう花を容易に識別することができるように、花の各バッチがさらされる環境条件を監視することは望ましい。また、保管寿命を減少させそして傷みやすい品物の老化を加速し得る病気の発症を監視することも望ましい。
【0009】
同様に、野菜が輸送および貯蔵中にさらされる環境条件は、それらの保管寿命に重要な影響を及ぼす。切り花の場合と同じように、野菜の最適の輸送温度は2〜5℃である。図2(A〜D)は、4バッチの野菜をケニアから英国に輸送する間に取得された温度記録を示す。各バッチは、ズッキーニ、豆およびニラなどの、数種の野菜を含んでいた。データは、野菜のまわりの微小環境中の温度が輸送中にかなり上昇し、野菜が時には15℃を超える高温で倉庫に到着したことを示している。データは、重要な変化がそれらの目的地に到着したときの野菜の温度が輸送間でばらつきがあることも示している。
切り花の場合と同じように、これまでに受けたストレスがより少なく、したがってより長い保管寿命を有するであろう花を容易に識別することができるように、野菜の各バッチがさらされる環境条件および病気の発症を監視することは望ましい。
【0010】
サプライチェーン中に等間隔で温度のような環境情報を取得するデータ自動記録装置が知られている。さらに、温度誘発ストレスが保管寿命と相関があり得ることが知られている。しかし、既存のデータ自動記録装置は、目的地に到着したときの、輸送中に取得されたデータのダウンロードおよびそれに続く解析に依存する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、傷みやすい商品が輸送されているときに、その商品の期待される保管寿命を予測する保管寿命予測装置に関する。所望により、その装置は、また、商品が輸送されるときに、商品がさらされる環境条件の変化を考慮に入れるために定期的に予測される保管寿命および病気の発症の表示を更新する。さらに、その装置は、リアルタイムでサプライチェーンを通して保管寿命予測を前方へ中継する。
【0012】
本発明によれば、傷みやすい商品を配達するための装置であって、商品の近傍で環境条件を測定しそして所望により病原体感染を示す化合物を検出する少なくとも1つの検出器、検出器によって集められたデータを無線読取り装置(RF reader)に伝達する、各検出器または1群の検出器に連結された無線自動識別タグ(RFID tag)、サプライチェーン中の下流の地点に無線読取り装置からデータを伝える手段、および環境条件および病原体検知データを用いて商品の保管寿命を予測し、そして予測された保管寿命を用いて特定の流通経路への商品の道順を決めるコンピュータープログラムを含む装置が提供される。
【0013】
その装置は、任意の傷みやすい商品の配達に適用することができ、傷みやすい商品としては、限定するものではないが、肉、果実、野菜、ワイン、植物、切り花、医薬品などが挙げられる。好ましい実施態様において、その装置は切り花の配達のために用いられる。別の好ましい実施態様において、その装置は野菜の配達のために用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1Aは、切り花をケニアからドイツに輸送したときの温度記録(ケニアのバラ、2006年9月13日〜14日)を示す。
【図1B】図1Bは、切り花をケニアからドイツに輸送したときの温度記録(ケニアのバラ、2006年9月15日〜16日)を示す。
【図1C】図1Cは、切り花をケニアからドイツに輸送したときの温度記録(ケニアのバラ、2006年10月3日〜4日)を示す。
【図1D】図1Dは、切り花をケニアからドイツに輸送したときの温度記録(ケニアのバラ、2006年9月4日〜5日)を示す。
【0015】
【図2A】図2Aは、野菜をケニアからドイツに輸送したときの温度記録(ケニアの野菜、2006年11月13日〜15日)を示す。
【図2B】図2Bは、野菜をケニアからドイツに輸送したときの温度記録(ケニアの野菜、2006年11月14日〜16日)を示す。
【図2C】図2Cは、野菜をケニアからドイツに輸送したときの温度記録(ケニアの野菜、2006年11月20日〜22日)を示す。
【図2D】図2Dは、野菜をケニアからドイツに輸送したときの温度記録(ケニアの野菜、2006年11月23日〜25日)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の1つの実施態様において、検出器は規則的な時間的間隔で商品の近傍の環境条件および/または病原体感染を示す化合物を測定する。たとえば、検出器は、1時間に少なくとも1回、2回、3回、6回、12回または30回、または1分間に1回、2回、3回、6回、12回、30回または60回、読み取りを行なうことができる。検出器によるデータ収集の頻度に上限はない。好ましくは、検出器は、1時間に少なくとも6回、すなわち10分毎に1回読み取りを行なう。
【0017】
検出器は商品のすぐ近くに配置され、たとえば、検出器は個々の品、箱、木枠、パレットまたは積み荷のそれぞれに取り付けられまたはそれぞれの中に入れられる。いくつもの環境条件または環境条件と病原体感染の示す化合物の両方を測定することが望ましい場合には、2つ以上の検出器を用いてもよい。本発明は、配達される傷みやすい商品の保管寿命に影響を及ぼす、または他の方法で配達される傷みやすい商品の保管寿命を決めるのに役に立つ、任意の環境条件を測定する検出器を含む。
【0018】
好ましくは、各無線自動識別タグには、検出器によって収集される環境データと共に無線読取り装置に伝達される特有の識別子が割り当てられる。したがって、ある期間にわたって任意の1つの無線自動識別タグから集められたデータは、その特定の無線自動識別タグおよびそれが関連づけられた実際の商品がどんな環境条件にさらされたかを調べるために解析することができる。特有の識別子は1つのタグに明示してもよいし、あるいはそれが流通網に沿って進むときに、生産物のバッチまたは品目に付けられる一連のタグにわたって再度割り当ててもよい。用いられる検出器は、たとえば、温度、湿度、エチレン、加速度、周辺光、酸素、栄養物質利用性、真菌胞子または腐敗しやすい生産物の寿命に影響を及ぼすかもしれない他の任意の周囲条件を含むことができる。
【0019】
無線読取り装置は受動的または能動的手段によって無線自動識別タグからデータを集める。たとえば、無線読取り装置が、データを伝達するきっかけとなる適切な信号を無線自動識別タグに送ってもよい。その代わりに、無線自動識別タグが、能動的に、連続的にまたは定期的にデータを伝達してもよい。装置を作動可能な状態にするときに、使用者が、環境データが伝達されそして収集される時間的間隔を指定することができる。所望により、使用者は、他のいかなる時にも、データ収集のための時間的間隔を変更することもできる。環境条件の変化が検出されることおよび商品の保管寿命ができるだけ正確に予測することができることを確実にするのに十分な頻度でデータを収集しなければならない。たとえば、データは、毎時1〜60回、各無線自動識別タグから収集することができる。本発明の1つの態様においては、データは、毎時2〜30回、収集される。好ましくは、データは、毎時6〜12回、各無線自動識別タグから収集される。より好ましくは、データは、毎時6回、7回、8回、9回、10回、11回または12回、各無線自動識別タグから収集される。これは5〜10分毎に一度環境データを収集するのと同じである。データ収集の頻度に上限はないが、能動的な無線自動識別検出器タグ(RFID-sensor tag)については、これはおそらく電源の容量によって制限されるであろう。この電源は、使い捨ての素子であってもよいし、再充電可能な装置であってもよいし、それら2つの組み合わせであってもよい。再充電可能な装置を利用する場合は、無線自動識別タグに再度エネルギーを与えるために、電力スカベンジング技術(power scavenging techniques)を組込むことができ、電力スカベンジング技術としては、限定するものではないが、光起電の、運動の、電磁気の伝達からの電力(power from photovoltaic, kinetic, electromagnetic transmission)または温度差源(temperature differential sources)が挙げられる。受動的な無線自動識別検出器タグについては、発生順の記録を格納する非電気的な方法を用いてもよく、たとえば検出器要素の配列中の、永久的な、時間依存性の、化学的変化による方法を用いてもよい。
【0020】
無線自動識別タグの数およびそれらの無線読取り装置への接近に依存して、2つ以上の無線読取り装置を含むことが適切な場合がある。別個のタグが個々の品目のそれぞれに付けられまたは関連づけられるときは、無線自動識別タグの数は単一の無線読取り装置の容量を超える場合があり、そこで数個の無線読取り装置が必要とされる場合がある。その代わりに、単一の読取り装置を用い、そして読取り装置が十分な処理能力(bandwidth)を有していなければ、無線自動識別タグはそれらのデータ・ストリームを待ち行列に入れるように設定することができる。本発明のさらなる態様においては、データは、タグからタグへそして読取り装置へのデータ移動(data-hopping)によって受信アンテナで直接通信されていないタグから取り戻してもよい。上記したような技術は当技術分野においてよく知られている。
【0021】
無線読取り装置からサプライチェーンの下流の地点にデータを伝達するために、いかなる適切な手段を用いてもよい。そのデータは、任意の望ましい頻度、たとえば毎時1回、2回、3回、6回、12回、30または60回、またはより多くの頻度で、伝達されてもよい。そのような方式としては、直接的有線接続、直接的有線ハブへの無線LANまたは広域無線ネットワーク、たとえば携帯電話システムが挙げられる。当業者は、この点で用いることができる他の技術に精通している。無線データ(RF data)は、商品の予測される保管寿命を計算するためにアルゴリズムによってデータを処理するコンピューターに適切に伝達される。その後、保管寿命予測は、サプライチェーンの下流に伝達される。
【0022】
本発明のさらなる実施態様において、検出器は、温度、相対湿度、圧力、振動およびエチレン濃度からなる群から選択される1つまたはそれ以上の環境条件を測定する。保管寿命に影響を与えるまたは保管寿命を示す任意の適切な環境条件を監視することができる。たとえば切り花においては、ストレスを引き起こしそしてそのために保管寿命の短縮をもたらすかもしれない要因としては、限定するものではないが、温度、相対湿度、光およびエチレン濃度が挙げられている。花瓶寿命および野菜保管寿命は、輸送中のストレスの量および/または記録された温度プロフィールに基づいて予測することができる。
【0023】
検出器は傷みやすい商品の病原体誘発ストレスを検出するためにも用いることができる。ボトリティス、アスペルギルスおよびペニシリウムのような菌の病原体は、傷みやすい商品の品質を直接低下させるだけでなく、それらの老化速度も加速する。
【0024】
感染前検知は、商品が病原体感染しやすいかどうかを示すために、温度、湿度および物理的損傷のような環境条件に加えて、輸送されている傷みやすい商品からの生の検体(たとえば、糖およびフェノール類のような液体の検体、ならびにエタノールおよびアセトアルデヒドのような蒸気の検体)を監視することを含むことができる。検体は、当業者に知られている種々の非侵入性の手法、たとえば振動分光法(IR)、蛍光分光法(UV)、屈折率、イオン選択性電界効果トランジスター(ISFET)、分子インプリントポリマー(MIP)、によって検出することができる。
【0025】
既に生じた病原体感染の検知は、(cAMP、カルシウムおよびイノシトール三リン酸のような)信号分子、ヒドロキシプロリンに富んだ糖タンパク質、およびフェノール類の放出を検出する分子結合法に基づくことができる。また、病原体感染の結果として生じ得る細胞壁の木質化の増加は、後方散乱光の変化の測定によって検出することができる。
【0026】
本発明のさらなる実施態様においては、検出器は、エチレン、糖、フェノール類、エタノール、アセトアルデヒド、ヒドロキシプロリンに富んだ糖タンパク質、cAMP、カルシウムおよびイノシトール三リン酸からなる群から選択される、病原体感染を示す1種またはそれ以上の化合物を検出する。また、検出器は、それらの化合物のいずれかの存在を検出するだけでなく、それらの量も測定してもよく、その結果、検出された化合物の量の経時変化を監視することができる。
【0027】
本発明の別の実施態様においては、予測される保管寿命は、測定された環境条件のすべての変化を反映するために定期的に再計算される。好ましくは、新しいデータを受け取るごとに、予測される保管寿命が再度計算される。好ましくは、予測される保管寿命は10分ごとに少なくとも一度再計算される。コンピュータープログラムは、アルゴリズムに環境データを入力することによって保管寿命計算を行なう。適切なアルゴリズムは、温度のような環境条件と時間の関係に基づく。これらは、当業者に知られており、切り花または野菜の特定の種のような個々の商品に特異的であるように適合させることができる。コンピューターモデルは、好ましくは、栽培品種についての情報、ならびに所望により、化学物質適用、肥料供給、湿気および光のような栽培中になされた入力を含む。農学データはコンピューターモデルの正確さを高めるのに有用である。そのようなコンピューターモデルの手本は、バラ種ローザ・カニーナ(Rosa canina)およびローザ・インディカ(Rosa indica)について公に報告されており、そこでは温度情報対時間が植物老化および病気への感染しやすさの予測と関係づけられている。
【0028】
病原体感染を検出するために用いることができる適切なアルゴリズムを開発するために、まず感染したときに起こる検知可能な変化が何かを決めることが必要である。そのような変化は、恐らく、特定の種類の傷みやすい商品に特異的であり、たとえば切り花の場合には特定の花の種に特異的であり、そして当業者によって容易に決定することができる。
【0029】
冷蔵サプライチェーン中を進行中の傷みやすい商品の保管寿命のリアルタイム予測において用いることができる1つの方法は、化学バッチプロセスにおける品質管理に基づいたバッチの最後の(end-of-batch)製品品質のオンライン予測に現在用いられている手法である多変量統計的プロセス管理(MSPC)手法である。別の方法は、動力学モデル化(KM)手法であり、それは、傷みやすい製品の老化を、動力学的にモデル化された品質内容の崩壊するプロセスと見なす。
【0030】
本発明の装置はサプライチェーン中のすべての人に利点を与える。これは、切り花サプライチェーンに関して以下に例示されるが、野菜を含む他の傷みやすい商品のサプライチェーンにも同様に適用可能である。
【0031】
栽培者が競売で売る花が保管寿命予測または保証をもつと考えられるので、栽培者は利益を得る。高品質の花にはプレミアがつくので、保管寿命保証は、栽培者が自己の花について得る競売値段に直接影響を与える。反対に、より低い品質の花は非常に安く売ることができ、それにより、栽培者が低品質のために売れ残った品を処分する費用を最小限にすることができる。さらに、長い年月の間に、栽培者は、予測された保管寿命によって自己の花を選別することができるとのよい評判を得るであろう。そして、これは栽培者の未来事業によい影響を及ぼす。
【0032】
有害な環境条件にさらされておらず、したがって長い保管寿命を持つであろうことを輸入業者が分かっている花を競売で購入することができるので、輸入業者は利益を得る。このように、輸入業者は小売り業者に信頼できる高品質製品を供給し、そして続いて売ることができない低品質商品を輸入する費用をも最小限にする。
【0033】
小売り業者は高品質の商品を調達し、保管寿命を約束または保証してこれらを消費者に売ることができるので、小売り業者は利益を得る。さらに、小売り業者が保管寿命が長い花を購入した場合、損傷が起こる前に小売り業者がそれらを販売しなければならない期間がより長くなり、したがって収入の損失を最小限にすることができる。また、小売り業者は高品質の花を供給するとの評判を得るので、小売り業者は割り増し価格でこれらを売ることができる。
【0034】
最後に、消費者は保管寿命が長い高品質の花を買っていることを知っているので、消費者は利益を得る。
【0035】
本発明の装置はサプライチェーンにおけるいくつかの点でさらに利点を与える。商品の箱が輸送中にストレスを受けた場合は、サプライチェーンの下流に中継される保管寿命予測は、これを識別するであろう。そして直ちに適切な処置を講じることができる。たとえば、部分的に品質を回復するために、影響を受けた商品または箱に矯正的クラッシュ再冷却(corrective crash re-chilling)を適用することができる。あるいは、病原体感染が検出された場合は、原因の病原体を殺しそして感染の広がりを防ぐために、治療のための化学処理を適用することができ、それによって商品の品質および保管寿命を維持する。適切な治療のための化学処理は当業者によく知られている。たとえば、ボトリティス感染が切り花のバラに検出された場合は、殺カビ剤Switch(登録商標)のスプレーまたは霧塗布を行なうことができる。
【0036】
あるいは、全積み荷から不良品を除去しそして金銭が低品質商品を輸送して浪費されないことを保証するために、ストレスを受けた商品または感染した商品を捨ておよび/またはより高い高品質の商品と交換することができる。あるいは、予測保管寿命がより長い商品だけを長い輸送時間にさらすことを保証するために、商品を特定の地理的位置に出荷し、または特定の輸送方式(たとえば道路、鉄道、海路、空路)によって出荷することができる。あるいは、より低い品質の商品は非常に安い価格で売り、および/または保管寿命が長い高い品質の商品のみを要求する小売り業者にはより低い品質の商品が行かないようにすることができる。
【0037】
1つの実施態様において、その装置は低品質商品にサプライチェーン警報を与えてもよい。輸入業者または小売り業者に行く途中の商品が輸送中にストレスを受けまたは感染したことを輸入業者または小売り業者があらかじめ知っていれば、到着時に輸入業者または小売り業者が輸送中の集めた環境データをダウンロードしたときのみ商品の品質が低下していることを発見するよりはむしろ、輸入業者または小売り業者は直ちに処置を講ずることができる。たとえば、輸入業者または小売り業者は、高品質商品の予測される不足量を穴埋めする新しい注文を出すこともできるし、別の供給者から不足量を調達することもできるし、輸入業者の場合には高品質商品の不足量が生じそうであることを小売り業者に警告することもできる。
【0038】
本発明のさらなる利点は特定の場所へ商品のバッチを向ける能力である。たとえば、切り花の場合には、高品質の花を高級な花屋に向け、逆により低い品質の花を低品質スーパーマーケットに向けることができる。高水準のストレスにさらされた花を最も早い機会に処分し、それにより、売ることができない不良品を輸送する費用を最小限にすることができ、栽培者、輸入業者および小売り業者のよい評判を維持することができる。
【0039】
この装置は、また、サプライチェーンにおけるすべての当事者に商品の品質を目に見えるようにすることを保証する。従って、既知の品質の商品は、サプライチェーンのすべての段階において、少なくとも部分的にはその品質によって決定される価格で、信頼できるものとしてかつ一貫して売ることができる。
【0040】
本発明によれば、商品が経時的にさらされる環境条件を測定して、環境条件データを発生させる工程、所望により病原体感染を示す化合物の存在を検出する工程、環境条件および病原体検出データを用いて、商品の予測保管寿命を計算する工程、および予測保管寿命に従って特定の流通経路への商品の道順を決めることができるように、サプライチェーンにおける下流の地点に予測保管寿命データを送る工程を含む、傷みやすい商品を配達する方法が提供される。好ましい実施態様においては、商品は切り花および/または野菜である。
【0041】
本発明の1つの実施態様においては、環境条件および病原体感染を示す化合物の存在は、商品に隣接した1つ以上の検出器によって測定される。検出器は、商品に取り付けられてもよいし、商品の1つ以上のバッチ、箱または木枠に取り付けられてもよく、任意の適切な環境条件を測定し、または上述したような任意の適切な化合物を検出する。本発明の別の実施態様においては、環境条件および病原体感染を示す化合物の存在は、上述したように時間的に規則正しく測定される。本発明のさらなる実施態様においては、予測される保管寿命は、上述したように、測定された環境条件のすべての変化、または病原体感染を示す化合物の存在を反映するために、定期的に再計算される。
【0042】
本発明によれば、サプライチェーンにおける傷みやすい商品の配達を決定するための前記装置の使用が提供される。好ましい実施態様においては、商品は切り花および/または野菜である。
【0043】
本発明によれば、予測される保管寿命に基づいて傷みやすい商品の小売価格を決定するための前記装置の使用が提供される。好ましい実施態様においては、商品は切り花および/または野菜である。
【0044】
本発明によれば、前記装置および/または前記方法を用いて商品を配達することを含む、傷みやすい商品について保管寿命保証サービスを顧客に提供する方法が提供される。好ましい実施態様においては、商品は切り花および/または野菜である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傷みやすい商品を配達する装置であって、
a)商品の近傍で環境条件を測定しそして所望により病原体感染を示す化合物を検出する少なくとも1つの検出器、
b)検出器によって収集されたデータを無線読取り装置に伝達する、各検出器または一群の検出器に連結された無線自動識別タグ、
c)無線読取り装置からサプライチェーンにおける下流の地点にデータを伝達する手段、および
d)環境条件および病原体検出データを用いて商品の保管寿命を予測し、そして予測された保管寿命を用いて特定の流通経路への商品の道順を決めるコンピュータープログラム
を含む装置。
【請求項2】
検出器が規則的な時間的間隔で商品の近傍で環境条件または病原体感染を示す化合物を測定する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
検出器が、温度、相対湿度、圧力および振動からなる群から選択された1種以上の環境条件を測定する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
検出器が、エチレン、糖、フェノール類、エタノール、アセトアルデヒド、ヒドロキシプロリンに富んだ糖タンパク質、cAMP、カルシウムおよびイノシトール三リン酸からなる群から選択された病原体感染を示す1種以上の化合物を検出する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
予測される保管寿命が、測定された環境条件の変化を反映するように定期的に再計算される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
商品が切り花または野菜である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
傷みやすい商品を配達する方法であって、
a)商品が経時的にさらされる環境条件を測定して、環境条件データを発生させる工程、
b)所望により病原体感染を示す化合物を検出する工程、
c)環境条件および病原体検出データを用いて商品の予測される保管寿命を計算する工程、および
d)予測された保管寿命に従って特定の流通経路への商品の道順を決めることができるように、サプライチェーンにおける下流の地点に予測された保管寿命データを送る工程
を含む、方法。
【請求項8】
環境条件および化合物の検出が、商品の近傍にある1つ以上の検出器によって測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
環境条件および化合物の検出が、時間的に規則正しく測定される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
予測される保管寿命が、測定された環境条件または病原体感染を示す化合物の変化を反映するために定期的に再計算される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
商品が切り花または野菜である、請求項7〜10のいずれか1に記載の方法。
【請求項12】
サプライチェーンにおける傷みやすい商品の配達を決定するための、請求項1に記載の装置の使用。
【請求項13】
予測された保管寿命に基づいて傷みやすい商品の小売価格を決定するための、請求項1に記載の装置の使用。
【請求項14】
請求項1に記載の装置および/または請求項7に記載の方法を用いて商品を配達することを含む、傷みやすい商品について保管寿命保証サービスを顧客に提供する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公表番号】特表2010−516588(P2010−516588A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545991(P2009−545991)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000130
【国際公開番号】WO2008/087396
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)