説明

傷付き防止フィルム

【課題】擦傷復元性および耐汚染性に優れ、かつ耐候性、耐薬品性、耐折曲性および耐衝撃性にも優れ、傷付き防止フィルムや加飾フィルムとして有用なフィルムを提供する。
【解決手段】ビニル化合物共重合体およびポリイソシアネートからなる組成物の架橋物からなるフィルムにおいて、該ビニル化合物共重合体が下記モノマー単位:(A)水酸基を有しないビニル化合物(aモル%)、(B)水酸基を有する直鎖状または分岐状のアルキル基を有し、該アルキル基の炭素数が1〜6であるビニル化合物(bモル%)、および(C)下記式:CH=C(R)−COO−Y[ここで、RはHまたはCHであり、Yは末端に水酸基を有する直鎖状または分岐状飽和炭化水素基であり、Yは所望により開環ラクトン基(−CO−(CH)n−O−、ここでnは4〜6の整数である)、カーボネート基(−O−CO−O−)、エステル基(−CO−O−)、エーテル基(−O−)およびウレタン基(−NH−CO−O−)から成る群から選択される1以上の基を有していてもよく、かつ12〜120の炭素原子を有する]を有するビニル化合物(cモル%)から成り、上記a〜cが、a+b+c=100でありかつ下記式(1)および式(2):3(b+c)/4≦a≦4(b+c) ・・・(1)および4c/3 ≦b≦40c ・・・(2)を満たすところのフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の表面保護や装飾のために、物品に塗料を直接塗工することに代わる手段として用いられるフィルムに関する。特に、自動車の外装部、壁材、床材、冷蔵庫等白物家電製品などの表面保護や装飾のために使用されるフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のドアサッシュ等の外装部には、耐擦傷性、耐候性、耐久性、耐汚染性、防食性、意匠性などの機能を付与するために、その部材の材質に合わせて、メラミン系樹脂、イソシアネート系樹脂、ウレタン系樹脂などの硬化性樹脂塗料の直接塗工が施されてきた。
【0003】
また、家電製品筐体などには、耐擦傷性、耐久性、耐汚染性、意匠性などの機能を付与するために、紫外線硬化型のアクリル樹脂などのハードコート塗料の直接塗工が行われてきた。
【0004】
しかし、このような直接塗工には、非塗工面のマスキング、塗布、硬化、仕上げといった多数の工程を有すること、塗料の溶剤に対処するための作業環境整備や安全衛生管理を行う必要があること、均一に欠陥なく塗工するためには熟練を要すること、スプレー塗布では意匠性の幅に制限のあることなどの問題点があった。また、紫外線硬化型のハードコート塗料は紫外線による劣化が起きやすく、満足な耐候性が得られないという問題があった。
【0005】
そのため、塗料の直接塗工に代えて、フィルム化粧材を用いることが提案されている(特許文献1)。このフィルム化粧材の使用は、直接塗工における作業性、環境安全性、意匠性等の問題を解決するものの、耐擦傷性、耐候性、耐久性、耐汚染性および防食性などについては不充分である。
【0006】
また、高められた耐擦傷性を有する表面塗膜材料として、シロキサン構造を有する化合物を含む組成物の使用が広く行われている。上記化合物は、塗膜材料表面に潤滑性を与え、摩擦係数を低くすることにより、塗膜材料の耐擦傷性をより高めることができるからである。しかし、シロキサン構造を有する化合物は、他の成分との相溶性・混和性が低いためにブリードアウトし、耐汚染性を低下させるという問題がある。ポリジメチルシロキサン部分を有する共重合体を硬化して得られる塗膜材料も提案されているが(特許文献2)、この塗膜材料も、シロキサン構造の存在故に、耐汚染性はまだ十分であるとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−118061号公報
【特許文献2】特許第3999411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、物品の表面保護や装飾のために、塗料の直接塗工に代わる手段として有用であり、かつ耐擦傷性および耐汚染性に優れたフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、ビニル化合物共重合体およびポリイソシアネートからなる組成物の架橋物からなるフィルムにおいて、上記共重合体が特定の3種類のモノマー単位から成り、したがってポリジメチルシロキサン等のシロキサン構造を有しないことにより、耐擦傷性、特に擦傷復元性に優れるとともに、耐汚染性にも優れるフィルムが得られることを見出し、本発明を達成した。
【0010】
なお、擦傷復元性とは、フィルム表面に外圧が掛かったときは直ちに弾性変形し、容易には破壊に至らず、外圧が取り払われた後は、その変形が塑性変形として残留せずに復元するという性質を意味する。
【0011】
すなわち、本発明は、ビニル化合物共重合体およびポリイソシアネートからなる組成物の架橋物からなるフィルムにおいて、該ビニル化合物共重合体が、下記モノマー単位:
(A)水酸基を有しないビニル化合物(aモル%)、
(B)水酸基を有する直鎖状または分岐状のアルキル基を有し、該アルキル基の炭素数が1〜6であるビニル化合物(bモル%)、および
(C)下記式:
CH=C(R)−COO−Y
[ここで、RはHまたはCHであり、Yは末端に水酸基を有する直鎖状または分岐状飽和炭化水素基であり、Yは所望により開環ラクトン基(−CO−(CH)n−O−、ここでnは4〜6の整数である)、カーボネート基(−O−CO−O−)、エステル基(−CO−O−)、エーテル基(−O−)およびウレタン基(−NH−CO−O−)から成る群から選択される1以上の基を有していてもよく、かつ12〜120の炭素原子を有する]を有するビニル化合物(cモル%)
から成り、上記a〜cが、a+b+c=100でありかつ下記式(1)および式(2):
3(b+c)/4≦a≦4(b+c) ・・・(1)
4c/3 ≦b≦40c ・・・(2)
を満たすところのフィルムである。
また、本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に上記フィルムを有する積層フィルムも提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフィルムおよび積層フィルムは、フォークトモデルの粘弾性挙動を示す故に擦傷復元性に優れかつ耐汚染性に優れ、また耐候性、耐薬品性、耐折曲性および耐衝撃性にも優れるので、物品の表面への、例えば壁面や家電製品、自動車部品などの表面への塗料の直接塗工に代わる手段として、例えば傷付き防止フィルムや加飾フィルムとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のフィルムは、ビニル化合物共重合体およびポリイソシアネートからなる組成物の架橋物からなり、上記共重合体は、下記(A)〜(C)のモノマー単位から成る。
【0014】
モノマー(A)
モノマー(A)は、水酸基を有しないビニル化合物である。モノマー(A)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ステアリル(メタ)アクリレートおよびラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルおよびイソブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;スチレンおよびα−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等のシアノ基含有ビニル化合物;酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、弗化ビニルおよび弗化ビニリデン等のハロゲン元素含有ビニル化合物;グリシジル(メタ)アクリレートおよびアリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有ビニル化合物;アクリル酸およびメタクリル酸等のカルボキシル基含有ビニル化合物;および(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル化合物などを挙げることができる。中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよびn−ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0015】
モノマー(B)
モノマー(B)は、水酸基を有する直鎖状または分岐状のアルキル基を有するビニル化合物であり、該アルキル基の炭素数が1〜6、好ましくは2〜4である。モノマー(C)としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、ヒドロキシエチルアクリルアミドおよびアリルアルコール等が挙げられ、中でも、アクリル酸2−ヒドロキシエチルエステルおよびメタクリル酸2−ヒドロキシエチルエステルが好ましい。
【0016】
モノマー(C)
モノマー(C)は、下記式:
CH=C(R)−COO−Y
有するビニル化合物である。RはHまたはCHであり、Yは末端に水酸基を有する直鎖状または分岐状飽和炭化水素基であり、Yは所望により開環ラクトン基(−CO−(CH)n−O−、ここでnは4〜6の整数である)、カーボネート基(−O−CO−O−)、エステル基(−CO−O−)、エーテル基(−O−)およびウレタン基(−NH−CO−O−)(以降、「開環ラクトン基等」と言うことがある)から成る群から選択される1以上の基を有していてもよく、かつ12〜120の炭素原子を有する。Yの炭素数が少なすぎると、得られるフィルムの擦傷復元性に劣り、多過ぎると、耐汚染性に劣る。上記アルキル基の炭素数は、好ましくは25〜90、より好ましくは36〜90、さらに好ましくは40〜90である。
【0017】
モノマー(C)は、例えば、(メタ)アクリル酸と式OH−Yで表わされるところの両末端に水酸基を有する長鎖グリコール、例えば分子量202〜1714(炭素数12〜120)の長鎖グリコール、との脱水縮合により得られる。
【0018】
Yは所望により、上記開環ラクトン基等を有していてもよい。このような基を有することは、Yの炭素数の制御が容易である点で好ましい。より好ましくは、Yがポリラクトン構造および/またはポリカーボネート構造を有する。Yが分岐状である場合には、開環ラクトン基等が側鎖中よりも主鎖中に存在するのが好ましい。なお、Yが開環ラクトン基等を有するとき、Yの炭素数は、上記開環ラクトン基等に含まれる炭素の数を含む。
【0019】
Yが開環ラクトン基を有するモノマー(C)は、例えば、(メタ)アクリル酸とポリカプロラクトンジオールとの脱水縮合により得られる。上記脱水縮合は、公知の方法にしたがって、例えばベンゼンやトルエン等の有機溶剤中でp−トルエンスルホン酸などの酸触媒及びハイドロキノンやメチルハイドロキノンなどの重合禁止剤と共に加熱還流することにより、行われ得る。上記ポリカプロラクトンジオールとして、例えば、ダイセル化学工業株式会社製のプラクセル205(炭素数26)、プラクセル210(炭素数50)およびプラクセル220(炭素数104)が挙げられる。また、Yがポリ開環ラクトン構造を有するモノマー(C)の市販例として、例えば、ダイセル化学工業株式会社製のプラクセルFM5(ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン5mol付加品、CH=C(CH)−COO−C−O−(CO−C10−O)−H、Yの炭素数32)およびプラクセルFA10L(ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン10mol付加品、CH=CH−COO−C−O−(CO−C10−O)10−H、Yの炭素数62)が挙げられる。
【0020】
また、(メタ)アクリル酸とポリカーボネートジオールとの脱水縮合により、Yがポリカーボネート構造を有するモノマー(C)を製造することができる。上記ポリカーボネートジオールとして、例えば、ダイセル化学工業株式会社製のプラクセルCD205(炭素数27)、プラクセルCD210(炭素数48)およびプラクセルCD220(炭素数97)が挙げられる。
【0021】
日油(株)製のブレンマーPP−800(CH=CH−COO−(C−O)13−H、ポリプロピレングリコールモノアクリレート)もモノマー(C)として使用できる。
【0022】
本発明におけるビニル化合物共重合体は、上記モノマー(A)〜(C)の共重合によって得られる。モノマー(A)〜(C)の量は、それぞれaモル%、bモル%およびcモル%としたとき、a+b+c=100でありかつ下記式(1)および式(2)を満たすことが必要である。
3(b+c)/4≦a≦4(b+c) ・・・(1)
4c/3≦b≦40c ・・・(2)
【0023】
式(1)は、水酸基を有しないモノマー(A)のモル量(a)と水酸基を有するモノマー(B)および(C)の合計モル量(b+c)との関係を示す。a+b+c=100であるので、b+c=100−aの関係式を用いると、式(1)は42.9≦a≦80を意味する。したがって、20≦b+c≦57.1である。
【0024】
式(1)に関して、a>4(b+c)のとき(すなわち、a>80のとき)は、架橋密度が低すぎて、耐汚染性や耐熱性、耐候性および耐薬品性が低下する。3(b+c)/4>aのとき(すなわち、a<42.9のとき)は架橋密度が高くなり過ぎ、剛直でガラス的な硬化膜を与えるため、擦傷復元性が発現しなくなる。好ましくは、式(1)が、5(b+c)/6≦a≦5(b+c)/2である。これは、b+c=100−aの関係式を用いると、45.5≦a≦71.4を意味する。したがって、28.6≦b+c≦54.5である。
【0025】
式(2)は、水酸基を有するモノマー(B)および(C)のモル量の関係を示す。式(2)に関して、4c/3>bのとき、すなわちモノマー(B)の量が少な過ぎるまたはモノマー(C)の量が多過ぎるときは、架橋密度が低くなり過ぎ、耐汚染性や耐熱性、耐候性および耐薬品性が低下する。b>40cのとき、すなわちモノマー(B)の量が多過ぎるまたはモノマー(C)の量が少なすぎるときは、架橋密度が高くなり過ぎ、剛直でガラス的な硬化膜を与えるため、擦傷復元性が発現しなくなる。また、耐折り曲げ性や耐衝撃性が低下する場合もある。好ましくは、bおよびcが、8c/5≦b≦8c、より好ましくは2c≦b≦4cを満たす。
【0026】
上記ビニル化合物共重合体は、通常溶液重合によって製造される。溶液重合における溶剤として、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、およびエタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤などが挙げられ、これらを単独でまたは2以上の混合溶剤として用いることが出来る。必要に応じて、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドおよびアゾビスイソブチロニトリル等の重合開始剤を用いることもできる。重合温度は60〜160 ℃が好ましく、反応時間は5〜15時間であるのが好ましい。
【0027】
得られたビニル化合物共重合体を次いでポリイソシアネートと混合し、得られた混合塗料を熱可塑性樹脂フィルムの表面に塗工し、室温でまたは加熱により架橋することにより、本発明の積層フィルムを得ることができる。また、本発明のフィルムは、上記積層フィルムから熱可塑性樹脂フィルムを剥がすことにより得られる。
【0028】
塗工方法には、特に制限はなく、公知のウェブ塗布方法を使用することができる。具体的には、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアナイフコートおよびダイコートなどが挙げられる。塗膜の厚さは、乾燥、硬化後において10〜100μmであるのが好ましい。薄すぎると、得られる本発明のフィルムの擦傷復元性が発現しなくなる場合があり、厚すぎると塗布時に塗料が流れたり、不必要にコストが増大するという問題が生じ得る。
【0029】
上記ポリイソシアネートは、分子内に−N=C=O構造を有する化合物であり、具体的には、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネート、あるいは上記ポリイソシアネートのブロック型イソシアネート等のウレタン架橋剤を挙げることができる。好ましくは、メチレンビス−4−シクロヘキシルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体およびヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体等のポリイソシアネートが挙げられる。また、架橋の際には、必要に応じてジブチルスズジラウレートおよびジブチルスズジエチルヘキソエート等の触媒を添加してもよい。
【0030】
ポリイソシアネートの量は、ビニル化合物共重合体中の水酸基のモル数とポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル数との比が好ましくは1:0.7〜1:1.4、より好ましくは1:0.9〜1:1.2であるような量である。イソシアネート量が少なすぎると、耐汚染性や耐候性が低下する場合がある。また、イソシアネート量が多過ぎると、擦傷復元性や耐折り曲げ性が低下する場合がある。
【0031】
架橋は、室温乾燥または加熱乾燥により行うことが出来る。例えば、室温乾燥は6時間〜1週間かけて行うことが出来る。加熱乾燥は40〜300℃で5秒〜120分かけて行うことが出来る。乾燥の温度や時間は、混合塗料を塗布する熱可塑性樹脂フィルムの性質に合わせて適時選択することが望ましく、場合によっては加熱乾燥と室温乾燥を組み合わせて行うことも出来る。更に、軟化点が低い熱可塑性樹脂フィルムに対して加熱乾燥を行う場合には、乾燥の過程で熱可塑性樹脂フィルムが軟化してやぶれやしわ入り、収縮などの不具合が生じることもある。これを防ぐために、あらかじめ熱可塑性樹脂フィルムを金属やガラス、陶器、熱硬化性樹脂、軟化点が高い熱可塑性樹脂などの支持体の上に固定した後で混合塗料の塗布や乾燥を行う方法を適宜選択することができる。
【0032】
塗料が塗布されるところの上記熱可塑性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、非結晶性、低結晶性又は結晶性のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)やスチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体及びその水素添加物などのスチレン系樹脂、ポリアミド、アクリル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂のフィルムが挙げられ、無延伸フィルム、一軸延伸フィルムおよび二軸延伸フィルムを包含する。ポリ塩化ビニル樹脂や非結晶性ポリエステル樹脂の無延伸フィルム、あるいは延伸加工した結晶性ポリエステルフィルムが特に好ましい。また、塗料が熱可塑性樹脂フィルムに塗布されて得られた積層フィルムから熱可塑性樹脂フィルムを剥がして本発明のフィルムを得る場合には、熱可塑性樹脂フィルムの塗工面を予め離型処理しておくのが好ましい。
【0033】
上記熱可塑性樹脂フィルムの厚みは特に制限されないが、通常20〜500μmであり、後述する真空成形、メンブレンプレス成形、圧空プレス成形、インモールド成形またはインサート成形等への適用を考慮すると、好ましくは75〜300μmである。
【0034】
また、意匠性を付与する等の目的で本発明の積層フィルムの熱可塑性樹脂フィルムとは反対側の表面(すなわち塗膜表面)にエンボス加工を施す場合には、塗膜が弾性変形するという特性を有しているため、エンボス加工が困難になるという恐れがあるが、塗膜の厚みを10〜30μm、熱可塑性樹脂フィルムの厚みを80〜300μmとし、かつ表面粗度Rzが20μm以上のエンボスロールで押圧加工する事により、良好なエンボス形状を得る事が出来る。
【0035】
本発明のフィルムおよび積層フィルムは、擦傷復元性および耐汚染性に優れ、また耐候性、耐薬品性、耐折曲性および耐衝撃性にも優れるので、物品の表面への塗料の直接塗工に代わる手段として、例えば傷付き防止フィルムや加飾フィルムとして有用である。例えば、ドアサッシュ、モール、フェンダー、バンパー等の自動車部品、家電製品の筐体や情報表示部分、建築物の壁材や床材、家具製品等の表面に好適に使用され得る。
【0036】
本発明のフィルムまたは積層フィルムを、例えば壁材、床材、イメージグラフィックスおよび自動車ドアサッシュ等の平面的な部材に貼り付けて使用する場合には、本発明のフィルムの片面または本発明の積層フィルムの熱可塑性樹脂フィルムの上に粘着剤層や接着剤層を設け、所望の形状に切断して貼り付けることができる。貼り付けの際に、本発明のフィルムまたは積層フィルムと部材との間に空気が取り込まれて膨れを生じ、美観を損ねるのを防ぐために、上記粘着剤層や接着剤層の表面に空気抜けのための溝を設けるのが好ましい。一方、そのような気抜け溝を設けると、本発明のフィルム表面における上記溝と対応する部分に凹みができるという外観不良が発生する可能性があり、それを防止するため、気抜け溝のデザインは、溝の幅が好ましくは10〜200μm、より好ましくは50〜150μmである。また、溝の深さは好ましくは5〜50μm、より好ましくは10〜30μmであり、その断面形状は半円形である。更に、外観不良を発生させずに気泡を効率よく排出させるべく、溝を有する粘着剤層表面を鉛直方向より見たときの溝によって区切られる粘着剤層が正三角形、正四角形、菱形または正六角形の繰り返し構造であるように溝が配置されるのが推奨される。
【0037】
また、本発明のフィルムまたは積層フィルムを、例えば家電製品の筐体、自動車インストゥルパネル、シフトノブ、アシストグリップ等の立体的で複雑な形状の部材の表面保護や装飾のために使用する場合には、真空成形、メンブレンプレス成形、圧空プレス成形、インモールド成形またはインサート成形等により一体成形することができる。一体成形を行う場合には、本発明のフィルムの片面または本発明の積層フィルムの熱可塑性樹脂フィルムの上に粘着剤層または接着剤層を設けたものを上記部材と一体化させることが好ましい。真空成形を行う場合には、部材の複雑な形状に追随する必要があるため、熱可塑性樹脂フィルムのガラス転移点が60〜130℃であることが好ましく、具体的にはアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂およびアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂のフィルムが好ましい。また、真空成形では積層フィルムが伸ばされるため、本発明のフィルムにおいて、ビニル化合物共重合体の水酸基1当量に対してポリイソシアネートのイソシアネート基が0.7〜1.2当量であるようにするのが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
実施例1
窒素雰囲気下で、500ml容のフラスコにメチルイソブチルケトン100質量部を入れ、100℃に昇温した。また、表1に示すモル%のモノマー(A)、(B)および(C−1)の合計100質量部(すなわち、モノマー(A)29質量部、モノマー(B)15質量部およびモノマー(C−1)57質量部)および2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(株式会社日本ファインケム製、ABN−R )1質量部を混合し、この混合物を100℃のメチルイソブチルケトン中に3時間かけて滴下した。更に6時間かけて加熱還流を行い、目的の共重合体(固形分50%)を得た。
【0040】
得られたビニル化合物共重合体100質量部を34質量部のポリイソシアネートと混合して得た塗料を、東レフィルム加工(株)製のポリエステルフィルム「セラピール38」(商品名)の離型処理面上に乾燥後の塗膜厚みが50μmとなるように塗布した後、150℃で30分加熱し、更に室温で24時間放置して塗膜を形成した。この塗膜をセラピール38から剥離して、目的のフィルム(イ)を得た。得られたフィルムについて下記試験(1)〜(13)を行った。結果を表1に示す。
【0041】
実施例2〜13および比較例1〜6
表1に示す各モノマーを表1に示すモル%の量(括弧内の数字は質量部)で使用し、実施例1と同様に共重合して得られたビニル化合物共重合体100質量部を表1に示す量(質量部)のポリイソシアネートと混合して得た塗料を、ユニチカ(株)製のポリエステルフィルム「エンブレットS50」(商品名)の片面に乾燥後の塗膜厚みが20μmとなるように塗布した後、150℃で30分加熱し、更に室温で24時間放置して塗膜を形成し、目的の積層フィルム(ロ)を得た。得られた積層フィルムについて下記試験(1)〜(13)を行った。結果を表1に示す。
【0042】
使用した材料は以下の通りである。
モノマー(A):三菱レイヨン株式会社製、メチルメタクリレート
モノマー(B):株式会社日本触媒製、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、水酸基含有アルキル基の炭素数2
モノマー(C−1):ダイセル化学工業株式会社製のプラクセルFA10L、ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン10mol付加物、Yの炭素数62、分子量1256
モノマー(C−2):ダイセル化学工業株式会社製のプラクセルFM5、ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン5mol付加物、Yの炭素数32、分子量700
モノマー(C−3):ダイセル化学工業株式会社製のプラクセルFM3、ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン3mol付加物、Yの炭素数20、分子量472
モノマー(C−4):ダイセル化学工業株式会社製のプラクセルCD210(ポリカーボネートジオール、HO−(C12−O−CO−O)−C12−OH)とアクリル酸の脱水縮合物、Yの炭素数48、分子量1036
モノマー(C−5):ダイセル化学工業株式会社製のプラクセルCD220(ポリカーボネートジオール、HO−(C12−O−CO−O)13−C12−OH)とアクリル酸の脱水縮合物、Yの炭素数97、分子量2044
モノマー(C−6):下記方法で調製された化合物、Yの炭素数46、分子量1002
比較モノマー(C):ダイセル化学工業株式会社製のプラクセル230(ポリカプロラクトンジオール、炭素数158)とアクリル酸の脱水縮合物、Yの炭素数158、分子量3096
シロキサン化合物:信越化学工業株式会社製のX−22−2426、片末端メタクリル変性ポリジメチルシロキサン、分子量:約14000
ポリイソシアネート:日本ポリウレタン工業製のコロネートHX、固形分100%、NCO含量21.3質量%
【0043】
モノマー(C−6)の調製
ダイセル化学工業株式会社製のプラクセルFM2D(ヒドロキシエチルメタクリレートのカプロラクトン2mol付加物、分子量358)とアジピン酸(分子量146)とを酸触媒を用いて脱水縮合を行って末端カルボン酸変性メタクリレートを合成した。続いて、この末端カルボン酸変性メタクリレートにダイセル化学工業株式会社製のプラクセル205(カプロラクトン4量体のジオール、H−{O(CH CO}−O−CH−O−CH−O−{CO(CHO}−H、分子量534)を加え、酸触媒を用いて脱水縮合を行って末端水酸基含有メタクリレートモノマー(C−6)を得た。
【0044】
試験
(1)擦傷復元性
上記で得られたフィルム(イ)または積層フィルム(ロ)を長さ150mm×幅75mmに切り出して試験片とし、これを硝子板上に置いた。積層フィルム(ロ)の場合には塗膜面が表面になるように置いた。仲屋ブラシ工業製の4行真鍮ブラシ(荷重500gf)を用いて、試験片の表面を片道100mmの距離で10往復擦った後、真鍮ブラシを速やかに除去して表面についた擦傷が消失するまでの時間を観察した。
○:1分以内に擦傷が消失した。
△:1分超〜24時間以内に擦傷が消失した。
×:24時間以上経過しても擦傷が消失しなかった。
【0045】
(2)摩擦に対する耐擦傷性
上記で得られたフィルム(イ)または積層フィルム(ロ)を長さ200mm×幅25mmに切り出して試験片とし、これをJIS L 0849の学振試験機に置いた。積層フィルム(ロ)の場合には塗膜面が表面になるように置いた。続いて、学振試験機の摩擦端子に金巾3号を5重となる様に取り付けた後、500gf荷重を載せて試験片表面を100往復した後の表面の擦り傷の程度を確認した。
◎:擦り傷が見られなかった。
○:塗膜表面に10本未満の軽微な擦り傷が見られた。
△:塗膜表面に10本以上の軽微な擦り傷が見られた。
×:塗膜表面全体に明瞭な擦り傷が見られた。
【0046】
(3) 耐折曲げ性
上記で得られたフィルム(イ)または積層フィルム(ロ)を100mm×50mmの大きさに切り出し、日東電工製の両面テープNo.500Aを用いて厚さ0.3mmのアルミ板に貼り付けて試験片とした。積層フィルム(ロ)の場合には塗膜面が表面になるように貼り付けた。この試験片を、直径2mmのマンドレルを取り付けたJIS K 5600−5−1タイプ1の折り曲げ試験装置を用いて、塗膜面が外側になる様に2秒をかけて均等な速度で180°に折り曲げた。折り曲げ終了後、折り曲げた箇所の中央30mm部分について塗膜の割れの有無を確認した。
○:割れが生じなかった。
△:割れは生じないが、曲げた部分が白っぽくなった。
×:割れが生じた。
【0047】
(4)耐衝撃性
上記で得られたフィルム(イ)または積層フィルム(ロ)を100mm×50mmの大きさに切り出し、日東電工製の両面テープNo.500Aを用いて150mm×75mm×1mmのアルミ板に貼り付けて試験片とした。積層フィルム(ロ)の場合には塗膜面が表面になるように貼り付けた。この試験片を、JIS K 5600−5−3に基づいてφ1/4インチの鉄球を取り付けたデュポン式衝撃試験機に塗膜面が上になるように置き、荷重300gfの重りを20cmの高さから落下させて衝撃を与えた後に塗膜の割れの有無を評価した。
○:割れが生じなかった。
×:割れが生じた。
【0048】
(5)耐水性
上記試験(4)と同様の試験片を用い、これを40℃の温水に168時間浸漬した後に取り出し、1時間以内に塗膜の外観を、以下の基準にしたがって目視評価した。
○:変化が見られなかった。
△:肉眼では確認できないが顕微鏡を使用すると確認できる程度の非常に小さい膨れ、剥れまたは割れがあり、それらに起因する僅かな光沢低下や染みが肉眼で確認された。
×:膨れ、剥れまたは割れが肉眼で確認された。
【0049】
(6)耐湿性
上記試験(4)と同様の試験片を用い、これを50℃、95%RHの恒温恒湿槽に168時間放置した後に取り出し、1時間以内に塗膜の外観を、試験(5)と同様の評価基準にしたがって目視評価した。
【0050】
(7)耐熱性
上記試験(4)と同様の試験片を用い、これを100℃のギヤオーブンに1時間放置した後に取り出し、更に室温で1時間以上放置した後、塗膜の外観を、試験(5)と同様の評価基準にしたがって目視評価した。
【0051】
(8)耐酸性
上記試験(4)と同様の試験片を用い、これに10%希硫酸2mlを滴下して室温で24時間放置した後、十分に水洗した。この試験片を更に室温で1時間以上放置した後、塗膜の外観を、試験(5)と同様の評価基準にしたがって目視評価した。
【0052】
(9)耐塩基性
上記試験(4)と同様の試験片を用い、これに5%炭酸ナトリウム水溶液2mlを滴下して40℃で6時間放置した後、十分に水洗した。この試験片を更に室温で1時間以上放置した後、塗膜の外観を、試験(5)と同様の評価基準にしたがって目視評価した。
【0053】
(10)耐ガソリン性
上記試験(4)と同様の試験片を用い、これにJIS K 2202に準拠する1号ガソリン2mlを滴下して室温で24時間放置した後、十分に水洗した。この試験片を更に室温で2時間以上放置した後、塗膜の外観を、試験(5)と同様の評価基準にしたがって目視評価した。
【0054】
(11)耐アルコール性
上記試験(4)と同様の試験片を用い、これにエタノール2mlを滴下して室温で24時間放置した後、十分に水洗した。この試験片を更に室温で24時間以上放置した後、塗膜の外観を、試験(5)と同様の評価基準にしたがって目視評価した。
【0055】
(12)耐候性
上記試験(4)と同様の試験片を用い、これをサンシャインウェザオメーターで2000時間暴露した後、十分に水洗した。この試験片を更に室温で24時間以上放置した後、塗膜の外観を、試験(5)と同様の評価基準にしたがって目視評価した。
【0056】
(13)耐汚染性
上記試験(4)と同様の試験片を2個用意し、これらをそれぞれ屋外に180日間および360日間放置した後、十分に水洗した。これらの試験片を更に室温で24時間以上放置した後、塗膜の外観を、下記の評価基準にしたがって目視評価した。
○:どちらの試験片も外観の変化が見られなかった。
△:360日間放置した試験片のみに、光沢低下、膨れまたは剥れなどが確認された。
×:どちらの試験片にも、光沢低下、膨れまたは剥れなどが確認された。
【0057】
(14)取扱性
フィルム(イ)または積層フィルム(ロ)を100×25mmに切り抜き、これをA&D製テンシロンRTG−1310引張試験機にチャック間距離を50mmにして取り付け、引張速度200mm/minで引張試験を行った時の10%モジュラス値を測定した。この値が小さいほど、取扱中に破れる可能性が高く、取扱性に劣る。
○:10%モジュラス値が10N/25mm以上
△:10%モジュラス値が1N/25mm以上かつ10N/25mm未満
×:10%モジュラス値が1N/25mm未満
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示されるように、本発明のフィルムおよび積層フィルムは、擦傷復元性および耐汚染性に優れ、また耐候性、耐薬品性、耐折曲性および耐衝撃性にも優れる。
【0060】
一方、aが式(1)を満たさず、モノマー(A)の量が多過ぎる比較例1では、耐薬品性、耐候性および耐汚染性に劣り、モノマー(A)の量が少なすぎる比較例2では、擦傷復元性に劣った。bおよびcが式(2)を満たさず、モノマー(B)の量が多過ぎる比較例3では、擦傷復元性、耐折り曲げ性および耐衝撃性に劣り、モノマー(B)の量が少なすぎる比較例4では、耐汚染性に劣った。モノマー(C)として、末端水酸基含有アルキル基の炭素数が本発明の範囲より多いものを使用した比較例5では、耐汚染性に劣った。ビニル化合物共重合体がシロキサン構造を有する比較例6では、耐汚染性に劣った。
【0061】
実施例14
塩化ビニル樹脂(信越化学工業株式会社製、重合度1100)100質量部、ポリエステル系可塑剤{花王株式会社製、HA−5(商品名)}20質量部およびカーボンブラック(三菱化学株式会社製、MCF#1000(商品名))5質量部の組成物をカレンダー成形機により製膜し、基材フィルム(厚み100μm)を得た。この基材フィルムの一方の面に、塗膜厚みが15μmであること以外は実施例1と同様にして得られたフィルムを金属ロールにより貼り合せて積層フィルムを得た。次いで、この塗膜表面に、表面粗度Rzが30μmの梨地エンボスロールを100℃、5kgf/cmで押圧加工する事により、エンボス加工フィルム1を得た。
【0062】
実施例15
実施例14において塗膜厚みを25μmにした以外は実施例14と同様にして、エンボス加工フィルム2を得た。
【0063】
実施例16
実施例14において基材フィルムの厚みを250μmにした以外は実施例14と同様にして、エンボス加工フィルム3を得た。
【0064】
実施例17
実施例14において基材フィルムを、PET−G樹脂(イーストマンケミカル株式会社製、イースターG6763)100質量部およびカーボンブラック(三菱化学株式会社製、MCF#1000(商品名))5質量部の組成物を用いて押出ダイ成形機により製造した(厚み100μm)こと以外は実施例14と同様にして、エンボス加工フィルム4を得た。
【0065】
参考例1
実施例14においてエンボスロールの表面粗度Rzを10μmにした以外は実施例14と同様にして、エンボス加工フィルム5を得た。
【0066】
参考例2
実施例14において塗膜厚みを5μmにした以外は実施例14と同様にして、エンボス加工フィルム6を得た。
【0067】
参考例3
実施例14において塗膜厚みを40μmにした以外は実施例14と同様にして、エンボス加工フィルム7を得た。
【0068】
比較例7
塗膜のための塗料として、擦傷復元性を有しない、日本化工塗料株式会社製ALLEX26 K−37(商品名)100重量部とALLEX26硬化剤10重量部との塗料を使用した以外は実施例14と同様にして、エンボス加工フィルム8を得た。
【0069】
上記で得られたエンボス加工フィルム1〜8について、下記のエンボス加工性の試験および上記(1)および(13)の試験を行った。結果を表2に示す。
【0070】
エンボス加工性
得られたエンボス加工フィルムの塗膜表面を下記の評価基準にしたがって目視評価した。
○:エンボスが塗膜表面全体にわたって形成されており、塗膜の割れや穴開きもない。
×:エンボスがほとんどまたは全く形成されておらず、あるいは塗膜に割れや穴開きがある。
【0071】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル化合物共重合体およびポリイソシアネートからなる組成物の架橋物からなるフィルムにおいて、該ビニル化合物共重合体が下記モノマー単位:
(A)水酸基を有しないビニル化合物(aモル%)、
(B)水酸基を有する直鎖状または分岐状のアルキル基を有し、該アルキル基の炭素数が1〜6であるビニル化合物(bモル%)、および
(C)下記式:
CH=C(R)−COO−Y
[ここで、RはHまたはCHであり、Yは末端に水酸基を有する直鎖状または分岐状飽和炭化水素基であり、Yは所望により開環ラクトン基(−CO−(CH)n−O−、ここでnは4〜6の整数である)、カーボネート基(−O−CO−O−)、エステル基(−CO−O−)、エーテル基(−O−)およびウレタン基(−NH−CO−O−)から成る群から選択される1以上の基を有していてもよく、かつ12〜120の炭素原子を有する]を有するビニル化合物(cモル%)
から成り、上記a〜cが、a+b+c=100でありかつ下記式(1)および式(2):
3(b+c)/4≦a≦4(b+c) ・・・(1)
4c/3 ≦b≦40c ・・・(2)
を満たすところのフィルム。
【請求項2】
モノマー単位(C)におけるYが開環ラクトン基、カーボネート基、エステル基、エーテル基およびウレタン基から成る群から選択される1以上の基を有する、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
熱可塑性樹脂フィルムの少なくとも片面に、請求項1または2に記載のフィルムを有する積層フィルム。
【請求項4】
請求項1または2に記載のフィルムまたは請求項3に記載の積層フィルムからなる傷付き防止フィルム。
【請求項5】
請求項4に記載の傷付き防止フィルムを有する物品。

【公開番号】特開2012−197377(P2012−197377A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62879(P2011−62879)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000250384)リケンテクノス株式会社 (236)
【Fターム(参考)】