説明

傾き検出機能付き電動ドライバ及び電動ドライバによるネジ締め付け方法

【課題】ネジ締め作業者に注意力の維持を求めなくても、ドライバビットの軸とネジ締め面の法線とのなす角度が一定値以内であるときだけにモータの回転を可能にする。
【解決手段】 重力方向に関するドライバビット12の軸の角度を検知する3軸加速度センサを内蔵し、傾き検出モードで、ネジ締め面2の法線とドライバビットの軸が同一となったときに、該3軸加速度センサで検出した該軸の角度をネジ締め角度として記憶手段に記憶し、通常動作モードで、該記憶手段に記憶した該ネジ締め角度と該3軸加速度センサで検出した該軸の角度との差が所定角度以内であるときだけに、該ドライバビット駆動用のモータの回転を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾き検出機能付き電動ドライバ及び電動ドライバによるネジ締め付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動ドライバを用いて、ネジ穴の設けられた対象物にネジ(雄ネジ)を締め付ける際には、ドライバビット(単に、ビットと称されることもある。)の軸がネジ締め面に垂直でないときは、ネジのネジ山や対象物のネジ穴を損傷し、あるいはドライバビットの先端の磨耗を早めたりする。ネジ締め面とは、ネジ穴の開口が設けられた対象物の表面領域であって、そのネジ穴の開口縁を含む領域の平面を指し、そのネジ穴の軸と直交する。ドライバビットは磁化されており、ドライバビットにネジの頭を吸着することにより、ドライバビットの先端はネジの頭の穴に嵌り、ネジはドライバビットに同軸に取り付けられる。
【0003】
ネジ締め面を水平に設定したときにおけるドライバビットの軸の垂直からの傾きが所定角度を超えたときには、電動ドライバのモータの駆動回路を遮断する「垂直検知機能付き電動ドライバ」なる発明が特許文献1に開示されている。特許文献1の技術では、電動ドライバ本体に可動導体を吊るし、電動ドライバ本体が所定角度を超えて傾くと、可動導体と導体受け部との接触が遮断する構造を採用している。そして、特許文献1の電動ドライバの構造では、モータの駆動回路にその接触部を電気的に直列に配置することにより、ドライバビットの軸が所定角度を超えて傾いたときに、電動ドライバのモータの駆動回路が遮断され、モータの回転が自動的に停止する。
【0004】
特許文献2には、対象物が床又は天井であるときに、ドライバビットをネジ締め面に垂直に設定することを容易にする「センサ付き電動ドライバ」なる考案が開示されている。この特許文献2の技術では、水平姿勢指示器を電動ドライバの本体に備え、ドライバビットの向きが垂直であることを目視より認識することにより、ドライバビットの軸とネジ締め面の法線とのなす角度を一定値以内に保持できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−36136号公報
【特許文献2】実開平4−104514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された垂直検知機能付き電動ドライバは、ネジ締め面を水平に設定したときにおけるドライバビットの軸がネジ締め面の法線(ネジ締め面に対し垂直な線)から所定角度を超えて傾いたときには、電動ドライバのモータの回転を停止できる。しかしながら、特許文献1に記載された垂直検知機能付き電動ドライバは、ネジ締め面が水平に設定できないときは、使用できない。
【0007】
特許文献2に記載されたセンサ付き電動ドライバは、ネジ締め面が床や天井等という水平面であるときに、ドライバビットの軸とネジ締め面の法線とのなす角度を一定値以内に保持できる。しかしながら、特許文献2に記載されたセンサ付き電動ドライバは、水平姿勢指示器を目視より認識することにより、ドライバビットの向きが垂直であることを判定できるようにしているから、ネジ締め作業中は注意力を継続的に維持し続けなければ、ドライバビットの軸とネジ締め面の法線とのなす角度を一定値以内に保持できない。
【0008】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、ネジ締め面が水平でなくても、ネジ締め面の法線とドライバビットの軸が同一であることを判定でき、またネジ締め作業者に注意力の維持を求めなくても、ドライバビットの軸とネジ締め面の法線とのなす角度が所定値以内であるときだけにモータの回転を可能にする傾き検出機能付き電動ドライバ及び電動ドライバによるネジ締め付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために本発明は次の手段を提供する。
(1)本発明の傾き検出機能付き電動ドライバは、重力方向に関するドライバビットの軸の角度を検知する3軸加速度センサを内蔵し、傾き検出モードで、ネジ締め面の法線とドライバビットの軸が同一となったときに、該3軸加速度センサで検出した該軸の角度をネジ締め角度として記憶手段に記憶し、通常動作モードで、該記憶手段に記憶した該ネジ締め角度と該3軸加速度センサで検出した該軸の角度との差が所定角度以内であるときだけに、該ドライバビット駆動用のモータの回転を可能にする。
(2)本発明の電動ドライバによるネジ締め付け方法は、内蔵の3軸加速度センサにより重力方向に関するドライバビットの軸の角度を検知し、傾き検出モードで、ネジ締め面の法線とドライバビットの軸が同一となったときに、該3軸加速度センサで検出した該軸の角度をネジ締め角度として記憶し、通常動作モードで、該記憶した該ネジ締め角度と該3軸加速度センサで検出した該軸の角度との差が所定角度以内であるときだけに、該ドライバビット駆動用のモータの回転を可能にする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ネジ締め面の法線とドライバビットの軸が同一であることを判定でき、またネジ締め作業者に注意力の維持を求めなくても、ドライバビットの軸とネジ締め面の法線とのなす角度が所定角度以内であるときだけにモータの回転を可能にする傾き検出機能付き電動ドライバ及び電動ドライバによるネジ締め付け方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態である傾き検出機能付き電動ドライバにおける動作モードを示す図である。
【図2】図1に示した本発明の一実施形態の傾き検出機能付き電動ドライバの正面図(A)及び他の実施形態の傾き検出機能付き電動ドライバの正面図(B)である。
【図3】図1に示した本発明の一実施形態である傾き検出機能付き電動ドライバの要部を示す図である。
【図4】図1に示した本発明の一実施形態である傾き検出機能付き電動ドライバが面接触状態であるときにおける要部を示す正面図(A)およびその電動ドライバがセンサ接触検知状態であるときにおける要部を示す正面図(B)である。
【図5】図1に示した本発明の一実施形態である傾き検出機能付き電動ドライバにより、ネジ締め面が水平線に対し傾斜しているときにおけるネジ締め角度を検出しているときの検出加速度を例示する図(A)、及びその電動ドライバにより、ネジ締め面が水平であるときにおけるネジ締め角度を検出しているときの検出加速度を例示する図(B)である。
【図6】図1に示した本発明の一実施形態の傾き検出機能付き電動ドライバにおいて、モータの回転制御に関連する主要な構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の傾き検出機能付き電動ドライバにおける可動部の変形例を示す斜視図(A)及び平面図(B)である。
【図8】図1に示した本発明の一実施形態である傾き検出機能付き電動ドライバの要部であって、図3に示す構成にばね70を付加した構成(変形例)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1から図6は本発明の一実施形態である傾き検出機能付き電動ドライバを示す図である。以下に、図1から図6を参照してその傾き検出機能付き電動ドライバ及びその電動ドライバによるネジ締め付け方法を説明する。
【0013】
本実施の形態の傾き検出機能付き電動ドライバ1は、電動ドライバ本体11、電動ドライバ本体11に備えられる切替スライドスイッチ13、固定部14、可動部15、センサ起動スイッチ(接触感知手段)21a,21b、3軸加速度センサ22、制御部23、モータ24を含んで構成される。図において、符号100は切替スライドスイッチ13のスライド方向を示す矢印であり、符号101は可動部15の進退方向を示す矢印である。また、符号11aは傾き検出機能付き電動ドライバ本体11の先端部を示す。符号14a及び14bは、固定部14における上部及び下部の内側面をそれぞれ示し、符号14cは、固定部14の一方の端面であって、傾き検出の際に、ネジ締めの対象物におけるネジ締め面2に接触させる側の面を示す。符号15aは可動部15の上部に設けた鍔部を示し、符号15a1は鍔部15aのセンサ起動スイッチ側端面を示し、符号15bは、可動部15の一方の端面であって、センサ起動スイッチ21a,21bから遠い側のものを示す。
【0014】
また、図3に示すように、aはドライバビット12の径、bは可動部15における鍔部15aの径、cは可動部15の内周面の径、dは固定部14の外径、eは固定部14の下部にあって、可動部15の外周の摺動面との摺動面をなす円筒内面14b(内周)の径、fは可動部15の外周の摺動面の径である。a,b,c,d,e及びfの関係は、d>b>e>f>c>aである。可動部15の内周面の径cはドライバビット12の径aより大きいので、図4(B)に示すようにドライバビット12の先端が可動部15の端面15b付近までに至る状態(図1(D)の加速度測定時)も可能である。図4(A)に示すように、固定部14におけるセンサ起動スイッチ21a,21bの接触部から固定部14の一方の端面14c(図3参照)までの距離gと、可動部15の中心線方向の長さhとは等しい。hは、可動部15の端面15a1と15bとの距離である。
【0015】
固定部14は、電動ドライバ本体11の筐体に設けられ、その筐体に設けられている円筒(図示は省略)の内周を案内面として、ドライバビット12の軸方向に進退可能である。固定部14の内周には、径が鍔部15aの径bより僅か大きく、可動部15の鍔部15aと摺動する上部摺動面と、径がeであり、可動部15の下部と摺動する下部摺動面14bが設けてある。その上部摺動面と下部摺動面14bとの境界が段差14dをなしている。上部摺動面はセンサ起動スイッチ21a,21bの取付面14eと段差14dとの間にあり、下部摺動面14bは段差14dと端面14cとの間にある。切替スライドスイッチ13は固定部14に連結されている。切替スライドスイッチ13の手動操作により、ドライバビット12の軸方向に固定部14を進退させることができる。本実施の形態では、まず固定部14をドライバビット12の軸方向に進出させて傾き検出モード(図1(C))とする。
【0016】
可動部15は、頭部に設けた径bの鍔部15aと、鍔部15aと一体であって径fの本体部とでなり、外周の摺動面で固定部14の内周の摺動面と摺動し、固定部14の軸方向に進退可能である。鍔部15aの径bは、固定部14の上部摺動面の径b'(b'の図示は省略。)より僅かに小さいが、鍔部15aの外周が固定部14の上部摺動面にほぼ接触する程度にその上部摺動面の径b'に近い。ただし、鍔部15aの厚みは極く薄いので、bとb'との差は僅かでも、可動部15はその軸を固定部14の軸に対し傾き得る。可動部15の頭部に設けた鍔部15aの径bが固定部14の下部摺動面の内周(径:e)より大きいので、可動部15が固定部14から抜け落ちることはない。電動ドライバ本体11を手で保持し、電動ドライバ本体11の姿勢を調整し、ドライバビット12の先端が垂直に下方を向くようにすると、可動部15は自重により、最下端まで下がる。可動部15が最下端にあるとき、鍔部15aの下面は、固定部14における径eの段差に当接している。この状態が図1(C)に示す傾き検出モードである。
【0017】
検出モードにおいて、電動ドライバ本体11をネジ締め対象物のネジ締め面2に近接させ、図4(A)に示すように、可動部15の先端側(図1の下側)の端面15b(図3参照)をネジ締め面2に当接させ、更に電動ドライバ本体11を下げ、図4(B)に示すように、固定部14の先端側(図1の下側)の端面14c(図3参照)をネジ締め面2に当接させる。このように、傾き検出モードから更に電動ドライバ本体11を下げる過程で、可動部15は固定部14内に後退し、図1(D)の加速度測定の状態に至る。この加速度測定の状態は、前述の面接触状態に対応する。図1(D)の加速度測定状態は図4(B)に示す状態と同じである。
【0018】
電動ドライバ本体11の上下方向(ドライバビット12の軸方向)移動は手動で行う。そこで、電動ドライバ本体11の姿勢は必ずしも安定せず、加速度測定の状態(図1(D))では、ネジ締め面2に当接した固定部14の端面14cは、ネジ締め面2に平行であることもあるし、平行でない場合もあり得る。固定部14はドライバビット12と同軸であるから、固定部14の端面14cがネジ締め面2に平行に当接すれば、ドライバビット12の軸とネジ締め面2とは直交し、すなわちドライバビット12の軸はネジ締め面2の法線に一致する。
【0019】
前述のように、固定部14におけるセンサ起動スイッチ21a,21bから固定部14の一方の端面14c(図3参照)までの距離gと、可動部15の中心線方向の長さ(端面15a1と15bとの距離)hとは等しいので、固定部14の端面14cがネジ締め面2に平行であれば、図1(D)及び図4(B)に示す加速度測定時には、可動部15の上側端面(鍔部15aの上側端面15a1)はセンサ起動スイッチ21a及び21bの接触部に等しい力で同時に接触し、センサ起動スイッチ21a及び21bは接触を感知し、接触信号を出力する。この接触信号は、制御部23(図6)に設けてある判定部に送られる。判定部は、センサ起動スイッチ21a及び21bの両方から接触信号を受けたときに、ドライバビット12の軸と同軸の固定部14の端面14cがネジ締め面2に平行に接触している、即ち、ドライバビット12の軸とネジ締め面2とは直交していると判定し、他方、センサ起動スイッチ21a又は21bの一方からのみ接触信号を受けたときは、固定部14の端面14cがネジ締め面2に平行に接触していない、即ち、ドライバビット12の軸とネジ締め面2とは直交していないと判定する。このように、判定部が、ドライバビット12の軸と同軸の固定部14の端面14cがネジ締め面2に平行に接触していると判定したとき、ドライバビット12の軸がネジ締め面2に直交しているので、このときのドライバビット12の軸の角度でネジ締め面2のネジ穴にネジを締め付けることにより、ネジ頭部の穴やネジ穴に損傷を与えることなく、またドライバビット12の先端の磨耗も少なくすることができる。したがって、本実施の形態の傾き検出機能付き電動ドライバは、ネジ締め作業者に注意力の維持を求めなくても、ドライバビット12の軸とネジ締め面2の法線とのなす角度が一定値以内であるときだけにモータの回転を可能にする。
【0020】
そこで、本実施の形態では、傾き検出モードにおいて、センサ起動スイッチ21a及び21bが同時に接触を検知したときにおける3軸加速度センサ22(図6)で検知したドライバビット12の角度をネジ締め角度としてネジ締め角度記憶メモリに記憶する。そして、本実施の形態の電動ドライバによりネジ締め面2のネジ穴にネジを締め付ける通常動作モード(図1(B))では、3軸加速度センサ22(図6)で検知したドライバビット12の角度とその記憶メモリに記憶したネジ締め角度との差である軸傾き角度が所定角度以下であるか否かをモータ回転許容部で判断し、その軸傾き角度が所定角度以下であるときだけに、モータに電源が供給でき、モータが回転できるようにしてある。図1(A)は、通常モードにおいてネジ締め面2に設けてあるネジ穴(図示省略)にネジ3を締め付ける状態を示している。軸傾き角度が所定角度以下であるとモータ回転許容部が判定しないときは、ドライバビット12を回転させるモータには電源は供給されない。判定部、ネジ締め角度記憶メモリ及びモータ回転許容部は、図6の制御部23に設けられる。
【0021】
本実施例の電動ドライバ1では、固定部14の下部摺動面14bの径eが可動部15の本体部の摺動面の径fより相当に大きく、固定部14の下部摺動面14bと可動部15の本体部の摺動面とは、密着していない。そこで、3軸加速度センサ22による加速度測定時に、固定部14の端面14cがネジ締め面2に平行に当接していないと、可動部15の中心線が、固定部14の中心線(ドライバビット12と同軸)と平行ではなくなり、可動部15の中心線は固定部14の中心線に対し傾く。この状態では、固定部14の端面14cの一部および可動部15の端面15bがネジ締め面2に接触し、可動部15の上側端面15a1がセンサ起動スイッチ21aに接触しても、可動部15の上側端面15a1は他方のセンサ起動スイッチ21bには接触しない。
【0022】
傾き検出モード(図1(C))において、上述のように、センサ起動スイッチ21a及び21bの一方のみが接触を感知したときは、3軸加速度センサ22で測定したドライバビット12の軸角度をネジ締め角度記憶メモリに記憶しない。
【0023】
上記実施の形態では、説明を容易にするために、センサ起動スイッチ21は2つ(21a及び21b)であるとした。しかし、センサ起動スイッチ21の個数が3又はそれ以上であれば、傾き検出モードにおいて、ドライバビット12の軸がネジ締め面2の法線に対してなす角度が閾値以内であるか否かを判定部で正確に判定できるので、センサ起動スイッチ21の個数が3又はそれ以上あることが好ましい。
【0024】
上記実施の形態では、ネジ締め面2が水平面にある場合を想定して説明した。しかし、本実施の形態は、ネジ締め面2が水平面から傾斜していても実施可能である。例えば、図5(A)に示すように、ネジ締め面2が水平面から45度傾いていても、可動部15は、傾き検出モードにおいて、自重により固定部14からネジ締め面2側に向かって滑り降りるので、可動部15の端面15bをネジ締め面2に当接することができる。
【0025】
上記実施の形態では、傾き検出モードにおいて、可動部15が自重により固定部14からネジ締め面2側に向かって滑り降りるとしたが、ネジ締め面2が垂直近くまで水平面から傾いていたり、ネジ締め面2が水平であっても天井のように、ドライバビット12の軸を上向きにせざるを得ないときは、以上に説明した実施の形態は適用できないの。このような用途には、図8に示すように、ばね70を設け、可動部15にセンサ起動スイッチ21から固定部14の端面14cの方向に向かう付勢を与える。図8は、図1から図6に示した実施の形態の変形例である。図8の変形例では、鍔部15aの径を図3のものよりやや大きくし、また固定部14におけるセンサ起動スイッチ21の外側に溝を設け、その鍔部15aの外縁近傍と溝との間にばね70を設けてある。図8の変形例の採用により、ネジ締め面2が垂直近くまで水平面から傾いていたり、ネジ締め面2が水平であっても、天井のように、ドライバビット12の軸を上向きにせざるを得ないときでも、ネジ締めが可能である。このときのドライバビット12の軸の角度でネジ締め面2のネジ穴にネジを締め付けることにより、ネジ頭部の穴やネジ穴に損傷を与えることなく、またドライバビット12の先端の磨耗も少なくすることができる。
【0026】
図7は、変形例の可動部50を示す図である。図7において、50a,50b,50c,50dは可動部50の摺動円柱、50eは可動部50におけるドライバビット挿入円筒を示す。図7(A)は斜視図、同図(B)は平面図である。図3に構造を詳しく示した図1乃至図6の実施の形態では、可動部15は一本の円筒でなっていたが、図7の可動部70は、4本の摺動円柱を備える。図7の変形例は、4本の円柱であるが、3本以上の多角形であってもよい。
【0027】
以上に、実施形態を挙げ、本発明を詳しく説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものでないことは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 傾き検出機能付き電動ドライバ
2 ネジ締め面
3 ネジ
11 傾き検出機能付き電動ドライバ本体
11a 傾き検出機能付き電動ドライバ本体の先端部
12 ドライバビット
13 切替スライドスイッチ
14 固定部
14a 鍔部15aの摺動面と摺動する固定部14の内側面
14b 可動部15下部摺動面と摺動する固定部14の内側面
14c ネジ締め面2に接触する側の固定部の端面
14d 固定部14における段差
14e 固定部14におけるセンサ起動スイッチ21a,21bの取付面
15 可動部
15a 可動部15の鍔部
15a1 鍔部15aのセンサ起動スイッチ側端面
15b ネジ締め面2に接触する側の可動部の端面
21,21a,21b センサ起動スイッチ(接触感知手段)
22 3軸加速度センサ
23 制御部
24 モータ
50 可動部(変形例)
50a,50b,50c,50d 可動部50の摺動円柱
50e 可動部50におけるドライバビット挿入円筒
70 ばね
100 切替スライドスイッチのスライド方向を示す矢印
101 可動部の進退方向を示す矢印
a ドライバビット12の径
b 可動部15における鍔部15aの外径
c 可動部15の内周面の径
d 固定部14の外径
e 固定部14の下部にあって、可動部15の外周の摺動面との摺動面をなす円筒内面(内周)の径
f 可動部15の外周の摺動面の径(外径)
g センサ起動スイッチ21の接触部から一方の端面14cまでの距離
h 可動部15の中心線方向の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力方向に関するドライバビットの軸の角度を検知する3軸加速度センサを内蔵し、傾き検出モードで、ネジ締め面の法線とドライバビットの軸が同一となったときに、該3軸加速度センサで検出した該軸の角度をネジ締め角度として記憶手段に記憶し、通常動作モードで、該記憶手段に記憶した該ネジ締め角度と該3軸加速度センサで検出した該軸の角度との差が所定角度以内であるときだけに、該ドライバビット駆動用のモータの回転を可能にすることを特徴とする傾き検出機能付き電動ドライバ。
【請求項2】
前記傾き検出モードにおいて前記ドライバビットの軸がネジ締め面の法線と同一であることを検出する傾き検出手段と、前記通常動作モードにおいて前記差が所定角度以内であるときだけに前記モータの回転を可能にするモータ回転許容手段を有し、
前記傾き検出手段は、前記軸と同軸の第1の円筒形摺動面を内周に有する固定部と、第1の円筒形摺動面と摺動する第2の円筒形摺動面を外周に有する可動部と、手動操作に応じ該固定部の一方の端面を前記ドライバビットの先端より更に先まで延伸させる固定部延伸手段と、該固定部に取り付けられた複数の接触感知手段と、該ドライバビットの軸がネジ締め面の法線と同一であるか否かを判定する傾き判定手段とを有してなり、
前記記憶手段は、前記ドライバビットの軸がネジ締め面の法線と同一であると該判定手段が判定したときにおける該3軸加速度センサで検出した該軸の角度を前記ネジ締め角度として記憶し、
前記固定部の一方の端面であり、前記傾き検出モードにおいて前記ネジ締め面に当接される側のネジ締め面当接端面は、前記軸に直交する平面であり、
前記可動部における第2の円筒形摺動面をなす円筒の中心線方向の両端面は該中心線に直交する平面であり、
前記接触感知手段の接触部と前記ネジ締め面当接端面との距離は、前記可動部の前記中心線方向の長さに等しく、
第2の摺動面を第1の摺動面に摺動させながら前記可動部を前記接触感知手段から離隔させる向きの前記軸方向に移動させ、該可動部の前記端面の一方を前記ネジ締め面に接触させた状態を面接触状態と称し、該面接触状態を経て、第2の摺動面を第1の摺動面に摺動させながら該可動部を該接触感知手段に近接させる向きの前記軸方向に移動させ、少なくとも1つの該接触感知手段が接触を検知し、しかも前記ネジ締め面当接端面を該ネジ締め面に平行に接触させた状態をセンサ接触検知状態と称するとき、
前記傾き判定手段は、前記センサ接触検知状態において、全ての前記複数の接触感知手段が前記接触を検知したときだけに、前記ドライバビットの軸がネジ締め面の法線と同一であると判定する
ことを特徴とする傾き検出機能付き電動ドライバ。
【請求項3】
前記可動部を前記接触感知手段から遠ざける向きの前記軸方向に、該可動部を付勢するばねを有することを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の傾き検出機能付き電動ドライバ。
【請求項4】
内蔵の3軸加速度センサにより重力方向に関するドライバビットの軸の角度を検知し、傾き検出モードで、ネジ締め面の法線とドライバビットの軸が同一となったときに、該3軸加速度センサで検出した該軸の角度をネジ締め角度として記憶し、通常動作モードで、該記憶した該ネジ締め角度と該3軸加速度センサで検出した該軸の角度との差が所定角度以内であるときだけに、該ドライバビット駆動用のモータの回転を可能にすることを特徴とする電動ドライバによるネジ締め付け方法。
【請求項5】
前記傾き検出モードにおいて前記ドライバビットの軸がネジ締め面の法線と同一であることを検出する傾き検出手段と、前記通常動作モードにおいて前記差が所定角度以内であるときだけに、前記モータの回転を可能にするモータ回転許容手段を有し、
前記傾き検出モードにおいて、前記軸と同軸の第1の円筒形摺動面を内周に有する固定部と、第1の円筒形摺動面と摺動する第2の円筒形摺動面を外周に有する可動部と、手動操作に応じ該固定部の一方の端面を前記ドライバビットの先端より更に先まで延伸させる固定部延伸手段と、該固定部に取り付けられた複数の接触感知手段と、該軸の傾き角度が前記閾値以内であるか否かを判定する傾き判定手段とを有してなる傾き検出手段により、前記ドライバビットの軸がネジ締め面の法線と同一であることを検出し、
前記固定部の一方の端面であり、前記傾き検出モードにおいて前記ネジ締め面に当接される側のネジ締め面当接端面は、前記軸に直交する平面としておき、
前記可動部における第2の円筒形摺動面をなす円筒の中心線方向の両端面は該中心線に直交する平面としておき、
前記接触感知手段の接触部と前記ネジ締め面当接端面との距離は、前記可動部の前記中心線方向の長さに等しくしておき、
第2の摺動面を第1の摺動面に摺動させながら前記可動部を前記接触感知手段から離隔させる向きの前記軸方向に移動させ、該可動部の前記端面の一方を前記ネジ締め面に接触させた状態を面接触状態と称し、該面接触状態を経て、第2の摺動面を第1の摺動面に摺動させながら該可動部を該接触感知手段に近接させる向きの前記軸方向に移動させ、少なくとも1つの該接触感知手段が接触を検知し、しかも前記ネジ締め面当接端面を該ネジ締め面に平行に接触させた状態をセンサ接触検知状態と称するとき、
前記傾き判定手段により、前記センサ接触検知状態において、全ての前記複数の接触感知手段が前記接触を検知したときだけに、前記ドライバビットの軸がネジ締め面の法線と同一であると判定する
ことを特徴とする請求項4に記載の電動ドライバによるネジ締め付け方法。
【請求項6】
前記可動部を前記接触感知手段から遠ざける向きの前記軸方向に、該可動部をばねにより付勢することを特徴とする請求項4又は5の何れかに記載の電動ドライバによるネジ締め付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−194483(P2011−194483A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61014(P2010−61014)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000227205)NECインフロンティア株式会社 (1,047)