説明

傾斜カッタ

【課題】 さほど熟練がなくても切断作業が簡単で、作業者によらず切断面の仕上がりがほぼ均質となる傾斜カッタを提供する。
【解決手段】 ブレード300を保持するスライド操作部170が、スライド台の傾斜したスロット130内に装着される。ブレード300は、スプリング160を介して、スロット130の延在方向に相対的にスライド可能に、スライド操作部170に連結されていて、かつ、スライド操作部170に対してスロット外側へと突出する方向へ付勢されている。スライド操作部170が収納位置にあるとき、スプリングによってブレード300が最も突出側に付勢された場合でもブレード先端301はスロット内に収納されている。一方、スライド操作部170が突出位置にあるとき、スプリングによってブレードが最も突出側に付勢された場合には、ブレード先端がスロットから一定距離だけ突出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある程度の厚みを有するシートあるいは厚紙等の切断対象を、その厚み方向に対して斜めに切断する傾斜カッタに関する。
【背景技術】
【0002】
このような傾斜カッタとして、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されたものが知られている。
しかしながら、特許文献1および特許文献2のいずれのカッタにおいても、切断作業中に刃先の突出量を微調整する送り機構を備えていない。したがって、使用者は、カッタを左右にスライドさせながら手先の感覚で刃先の送り量を調節する必要があり、切断作業にかなりの熟練が必要となる。
【0003】
【特許文献1】実開昭57-136694号公報
【特許文献2】特許第3483605号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、さほど熟練がなくても簡単に切断作業を行うことができて、作業者によらず切断面の仕上がりがほぼ均質となる傾斜カッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明により次の特徴を備えた傾斜カッタが提供される。
本発明の傾斜カッタは「ブレードを出し入れ可能に保持するスライド台」と「スライド台と係合してスライド往復可能に案内するガイド部材」とを備える。あるいは、傾斜カッタは「ブレードを出し入れ可能に保持し、ガイド部材に案内されてスライド往復するスライド台」単独で構成されてもよい。
スライド台は「そのスライド面に対して傾斜して延在するスロット」と「ブレードを保持してスロット内にスライド可能に装着されたスライド操作部」とを備える。
ブレードは、付勢部材を介して、スロットの延在方向に相対的にスライド可能に、スライド操作部に連結されていて、かつ、当該付勢部材により、スライド操作部に対してスロット外側へと突出する方向へ付勢されている。
スライド操作部は「付勢部材によってブレードが最も突出側に付勢された場合でもブレード先端がスロット内に収納される収納位置」と「付勢部材によってブレードが最も突出側に付勢された場合にブレード先端がスロットから一定距離だけ突出する突出位置」とに、スロット内で選択的に固定できる。
【発明の効果】
【0006】
上記構成を備えた本発明の傾斜カッタにおいては、スライド操作部を突出位置に固定するだけで、ブレードは、その先端が予め定められた一定量だけ外部に突出するよう位置する。ブレード先端は、切断対象に圧接した際に当該圧接力によってスロット内に退避するが、上記一定量だけ先端が突出する位置へと付勢手段で付勢されている。
したがって、切断対象の上でスライド台を往復移動させると、付勢手段による付勢力によって、ブレード先端が徐々に切断対象に食い込むように突出し、最終的には上記一定量だけ先端が突出する位置に戻る。そして、ブレード先端はそれ以上突出しない。また、このときの突出量(切断対象に対する食込量)は、予め一定量に定まっている。
つまり、切断対象に対する食込量は誰が操作しても同じであり、しかも、切断作業に際しては、スライド台を何回か往復させるうちにブレード先端が徐々にその突出量を増していくので切断面が綺麗に仕上がる。
このように、切断部の深さが作業者によらず一定で、しかも付勢手段を用いてブレード先端の突出量を徐々に増加させているので、切断面の仕上がりに関して、作業者によるバラツキは殆どなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る傾斜カッタを示す斜視図である。
この傾斜カッタは、スライド台100とガイド部材200とで構成される。スライド台100は、後述するように、ブレード300を出し入れ可能に保持しており、ガイド部材200に案内されてスライド往復する。
【0008】
ガイド部材200は、細長い板状の部材であって、その一側辺に沿って延びる直線状のガイド溝201を有している。スライド台100は、その前端に沿って底面側に係合部101を有している。
スライド台100は、その係合部101をガイド部材200のガイド溝201内に係合させた状態で、ガイド部材200に沿ってスライド往復する(図2参照)。
【0009】
この傾斜カッタは、例えば、一枚の厚紙を切り抜いて額縁用の化粧枠を作成するのに使用される。図3(a)、(b)は、この傾斜カッタによって作成される化粧枠1を示している。化粧枠1は、一枚の厚紙の中央部1aを切除して枠状体としたものである。図3(b)の一部破断図から分かるように、その切断面は、枠体表面に対して傾斜している。
【0010】
≪スライド台100の構成≫
図4は、スライド台100およびスライド操作部170の構造を示す分解図である。スライド台100は、切断対象(例えば、上記厚紙)の表面上をスライドする台座部110と、台座部上に設けた傾斜部120とを有する。
台座部110は、その裏面(スライド面)を切断対象の表面に当接させた状態で、当該表面上をスライドする。
傾斜部120の中央には、当該傾斜に沿って延在する直線状のスロット130が形成されている。このスロット130内に、ブレード300を保持したスライド操作部170がスライド可能に装着される。
【0011】
≪スライド操作部170の構成≫
スライド操作部170は、本体171と操作板176とから構成される。本体171には、係合突起180が横方向(矢印B方向)に相対スライド可能に組み込まれている。係合突起180は、スプリング188によって外側へ向けて付勢されており、通常は、スライド操作部170の側方に突出している。
操作板176は、本体171に対して、相対スライド可能に嵌め合わされている。操作板176の裏面には係合フック177が立設されていて(図5(a)参照)、この係合フック177が本体171の上面に形成された係合孔173内にスライド可能に係合している。この結果、操作板176は、本体171に対して相対スライド可能となる。
また、操作板176の裏面には傾斜面178が形成されていて(図6参照)、これが係合突起180と一体的に形成された傾斜面181と当接している。係合突起180は、スプリング188によって突出方向に付勢されているので、この付勢力により、操作板176は、通常は、本体171に対して最も前方側(矢印A方向)に位置することとなる。
【0012】
なお、後述するように、操作板176を後方側に引くと、操作板176は、本体171に対して後方に相対スライドし、操作板176裏面の傾斜面178が傾斜面181を押圧する。これにより、係合突起180は、スプリング188の付勢力に抗して、スライド操作部170内に退避する(引っ込む)。
【0013】
≪スプリング160によるスライド操作部170とブレード300との連結≫
ブレード300は、スプリング160を介して、スライド操作部170に連結される。このスプリング160により、ブレード300は、スライド操作部170に対して、スロット外へ突出する方向(矢印A方向)に付勢されている。
図示の例では、ブレード300はブレード保持体150に不動に固定されていて、このブレード保持体150を介して、ブレード300がスプリング160に連結されている。ただし、本発明では、ブレード300自体がスライド操作部170に対して突出方向に付勢されていればよいので、他の構成を採用することも可能である。
【0014】
ブレード保持体150は、裏面に2本の突起156が形成されていて、これらの突起156がブレード300に形成した係止孔302と係合する(図5(b)参照)。すなわち、ブレード300は、ブレード保持体150に不動に固定され、これと一体となって挙動する。
【0015】
スライド操作部170の本体171には下方に突出する係合フック175が形成されていて、この係合フック175がブレード保持体150に形成した係合孔155内にスライド可能に係合している。この結果、スライド操作部170とブレード保持体155とが(すなわち、スライド操作部170とブレード300とが)、相対スライド可能に連結されている。
また、スプリング160は、その一端がブレード保持体側の係止部152に固定され、他端がスライド操作部側の係止部172に固定されている。このスプリング160によって、ブレード保持体150は、スライド操作部170に対して相対的に矢印A方向に(すなわち、ブレード300をスロット130から前方へ突出させる方向に)付勢される。
【0016】
≪3つの係合位置≫
既に説明したように、スライド操作部170は、その側面から突出する係合突起180を備える。係合突起180は、スプリング188によって退避可能(後退可能)に突出方向に付勢されている。
一方、図示の例では、スロット130の側面に長手方向に沿って3つの係合凹部131、132、133が形成されている。これら3つの係合凹部131、132、133のうちのいずれか1つと係合突起180とが係合することで、スライド操作部170は、スロット130内において異なる3つの位置に固定され得る。
【0017】
(1)係合突起180が係合凹部131と係合した場合(収納位置)
この場合、スライド操作部170は「収納位置」にある。すなわち、この状態では、スプリング160によってブレード300が最も突出側に付勢されている場合でも、ブレード先端301はスロット130から外部に突出することはなく、スロット130内に収納された状態となっている。
【0018】
(2)係合突起180が係合凹部132と係合した場合(第1突出位置)
この場合、スライド操作部170は「第1突出位置」にある。すなわち、この状態において、スプリング160によってブレード300が最も突出側に付勢された場合には、ブレード先端301がスロット130から“一定距離”だけ突出する。
切断対象(厚紙等)上でガイド部材200を所望の切断ラインに沿って配置し、この状態にあるスライド台100をスライド移動させることで、切断作業を行うことができる。切断対象に対するブレード先端301の食込量(すなわち、切断深さ)は、上記“一定距離”に等しい。
【0019】
(3)係合突起180が係合凹部133と係合した場合(第2突出位置)
この場合、スライド操作部170は「第2突出位置」にある。すなわち、この状態においても、係合凹部132と係合した場合と同様にブレード先端301がスロット130から突出する。ただし、ブレード先端301の突出量(食込量)は、上記「第1突出位置」にある場合よりも大きくなる。
【0020】
なお、図示はしていないが、スロット側面にさらに多くの係合凹部を形成して、ブレード先端301の突出量が異なる「第3突出位置」、「第4突出位置」・・・を設けてもよい。
【0021】
≪ブレード300のガタツキを防止するための圧接機構≫
本発明においては、ブレード300を保持したスライド操作部170がスロット130内でスライドする。このスライドの際におけるブレード300のガタツキを防止して、切断面の仕上げを綺麗にするための機構を、図5を参照して説明する。
図5(b)は、組み合わせた状態にあるブレード保持体150およびスライド操作部170を側方から示している。図5(a)は、図5(b)中のa−a線断面図である。
【0022】
スライド操作部170の本体171下面側には傾斜カム面170a、170bが形成されており、一方、ブレード保持体150の上面側には傾斜カム面150a、150bが形成されている。前述した通り、スライド操作部本体171とブレード保持体150とは、スプリング160で連結されていて、互いに引き合う方向に付勢されている。この結果、傾斜カム面150aと170aとが圧接し、傾斜カム面150bと170bとが圧接している。
【0023】
このように、傾斜カム面150aと170aとの協働、並びに傾斜カム面150bと170bとの協働により、スライド操作部本体171には図中上方向(矢印U)の力が作用し、ブレード保持体150には図中下方向(矢印D)の力が作用する。すなわち、この状態でスロット130内に装着されると、スライド操作部170およびブレード保持体150は、それぞれスロット130内の対向する壁面に圧接する。この結果、スロット130内でのブレード300のガタツキを防止することができる。
【0024】
このようにして、スロット130内でのブレード300のガタツキを防止することで、例えば切断対象が厚手のマット紙等の抵抗の大きなものである場合であっても、綺麗に切断することができる。
【0025】
なお、図示した構成の他にも、別部材である圧縮コイルばね(図示せず)をブレード保持体150とスライド操作部本体171との間に挟み込む等すれば、上記と同様に、スロット130内でのブレード300のガタツキを防止できる。ただ、図示の例のように傾斜カム面を利用すれば、スプリング160の付勢力をガタツキ防止にも併用でき、部品点数を節約できるというメリットがある。
【0026】
≪オートロック機構≫
既に説明した通り、図示の傾斜カッタにおいては、係合突起180がスロットに沿って設けたいずれかの係合凹部131、132、133に係合することで、スライド操作部170の位置が固定される。そして、スライド操作部170の操作板176を指で操作することで、スライド操作部170(およびブレード300)の位置をスライドさせることができる。一方、ブレード300に対して直接外力が作用した場合には、当該外力に抗して、スライド操作部170の位置を不動に固定する(オートロック機構)。
すなわち、オートロック機構の作用は、次の通りである。
(i)スライド操作部170の操作板176を操作することで、スライド操作部170を前方に押し出すことも、手前側(後方側)に収納することも、両方とも可能である。
(ii)収納方向への外力がブレード300に直接作用した場合には、当該外力に抗して、スライド操作部170が不動にロックされる。
【0027】
以上の機能を実現するための、各構成部分の作用を、図6を参照して以下に説明する。図6は、スロット130内にあるスライド操作部170を模式的に示している。
【0028】
(1)スライド操作部170を前方へと操作する場合
今、係合突起180が係合凹部131内に係合して、スライド操作部170が「収納位置」にあるとする(図6中の破線)。この状態から、スライド操作部170を前方(矢印A方向)にスライドさせる(このとき、実際には、スライド操作部170の操作板176を指で前方に押圧している)と、係合突起180の前方側の傾斜面180aが、係合凹部131の前方側の傾斜面131aに圧接する。その場合、傾斜面同士の協働により、係合突起180はスプリング188の付勢力に抗して退避する(引っ込む)。その結果、スライド操作部170は前方にスライドし、係合突起180は、次の係合凹部132と係合する。
また、同様の原理で、スライド操作部170をさらに前方にスライドさせると、係合突起180は、係合凹部132から離脱して、次の係合凹部133と係合する。
以上のように、スライド操作部170の操作板176を前方側へ押し出すことで、スライド操作部170を前方にスライドさせることができる。
【0029】
(2)スライド操作部170を後方へと操作する場合
今、係合突起180が係合凹部133内に係合して、スライド操作部170が「第2突出位置」にあるとする。この状態から、操作板176を後方にスライド操作すると、操作板176は、スライド操作部の本体171に対して相対的に後方にスライドする。操作板176の裏面には傾斜面178が形成されていて、この傾斜面178が係合突起180と一体的に形成された傾斜面181に圧接する。傾斜面同士の協働により、係合突起180はスプリング188の付勢力に抗して退避する(引っ込む)。この結果、スライド操作部170全体が後方へスライドし、係合突起180は、次の係合凹部132と係合する。
また、同様の原理で、スライド操作部170の操作板176をさらに後方へスライドさせると、係合突起180は、係合凹部132から離脱して、次の係合凹部131と係合する。
以上のように、スライド操作部170の操作板176を後方へ引き戻すことで、スライド操作部170を後方にスライドさせることができる。
【0030】
(3)収納方向への外力がブレード300に直接作用する場合
今、係合突起180が係合凹部133内に係合して、スライド操作部170が「第2突出位置」にあり、切断作業が行われているとする。
切断作業中においては、切断対象から直接ブレード300に収納方向の外力が直接作用する(ユーザが操作板176を操作しない限り、操作板176には外力は作用しない)。
この場合は、操作板176が本体171に対して相対移動することはないので、傾斜面同士の協働によって係合突起180が退避するということは起こらない。すなわち、係合突起180は外部に突出し、係合凹部133と係合したままである。
ここで、係合突起180の後方側の側面180b、および係合凹部133の後方側の側面133bは、いずれも傾斜面ではなく、スロット130の延在方向にほぼ直交して延びる直立面とされている。したがって、係合突起180の後方側面(直立面)180bが係合凹部133の後方側面(直立面)133bに圧接することで、スライド操作部170全体が後方へスライドすることを防止する(オートロックが作用する)。
このように、ブレード300に直接収納方向の外力が作用した場合には、スライド操作部170のスライドがロックされる。
【0031】
なお、係合凹部131、132、133のすべてが同様に、傾斜面と直立面とを有する形状とされているので、どの係合凹部に対しても同じ機能が達成される。4つ以上の係合凹部を設ける場合も同じである。
【0032】
このようなオートロック機構により、特別な操作をしなくとも、切断作業中に不用意にスライド操作部170(およびブレード300)が後退してしまうことを確実に防止できる。その反面、ユーザがブレード300を収納したい場合には、単にスライド操作部170の操作板176を指で後方側に引くだけで、簡単にブレード300を収納できる。
【0033】
なお、図6に示したものとは別のオートロック機構として、ブレードに直接作用する力が引出方向および収納方向のいずれに作用した場合でも、オートロックを機能させるものを採用してもよい。すなわち、
(i)収納方向および引出方向の両方について、当該方向に外力がブレード300に直接作用した場合には、当該外力に抗して、スライド操作部170が不動にロックされる。
(ii)スライド操作部170の操作板176を操作することで、スライド操作部170を前方に押し出すことも、手前側(後方側)に収納することも、両方とも可能である(この点については、図6のオートロック機構と同様である)。
【0034】
このようなオートロックを達成するための具体的な構成は、例えば、次の通りである。
まず、
(i)各係合凹部131、132、133の前方側(図6中下側)を直立面に変更する。すなわち、各係合凹部の前方側(図6中下側)および後方側(図6中上側)を両方とも直立面とする。また、これに適合するよう、係合突起180の両側面180a、180bをともに直立面とする。
これにより、引出方向の外力がブレード300に直接作用した場合には、「各係合凹部131、132、133の前方側の直立面」と「係合突起180の前方側の直立面」とが圧接して、ブレード300が引出方向にスライドすることを禁止する(オートロックが作用する)。同様に、収納方向の外力がブレード300に直接作用した場合には、「各係合凹部131、132、133の後方側の直立面」と「係合突起180の後方側の直立面」とが圧接して、ブレード300が収納方向にスライドすることを禁止する(オートロックが作用する)。
つまり、収納方向および引出方向の両方について、当該方向に外力がブレード300に直接作用した場合に、当該外力に抗して、スライド操作部170が不動にロックされる。
そして、
(ii)「係合突起180と一体形成される傾斜面181」および「操作板176の裏面に形成される傾斜面178」のいずれか一方を、2つの傾斜面を備えたV字状斜面に、他方を、それに適合する2つの斜面を備えた逆V字状斜面とする。そして、操作板176をスライド操作部本体171に対して前後方向の両方に相対スライド可能に構成する。
このような構成とすると、操作板176を指で前方および後方のいずれの方向にスライドさせた場合であっても、傾斜面同士の協働により係合突起180が引っ込んで、スライド操作部170は前方または後方にスライドすることが可能となる。
【0035】
以上のオートロック機構では、ブレードを出し入れする場合は、必ず手動で操作板176をスライドさせて、オートロックを解除する。
【0036】
≪実際の切断工程の例≫
図1〜図6の如く構成された傾斜カッタを用いて厚紙を切断する切断工程の一例を、図7〜図12を参照して説明する。図7〜図12のそれぞれにおいては、切断作業中における傾斜カッタの断面図とともに、スライド操作部170と係合凹部131、132、133との係合状態を模式的に併せて示している。
【0037】
≪図7≫
まず、厚紙400上の所望の切断ラインに沿ってガイド部材(定規)200をセットし、これにスライド台100を係合させる。このとき、スライド操作部170は係合凹部131と係合していて「収納位置」にある。つまり、ブレード先端301は、未だ、スライド台100のスロット130内に収容されていて、外部には突出していない。
【0038】
≪図8≫
次に、スライド操作部170を指で操作して、係合凹部132と係合させる。このときスライド操作部170は「第1突出位置」にあり、スプリング160の付勢力により、ブレード先端301を外部に突出させようとするが、実際には、厚紙400によってスロット130内に押し戻された結果となっている。
すなわち、ブレード先端301が厚紙表面に突き刺さり、かつ、スプリング160によって、さらに厚紙内部へと食い込むよう付勢された状態となっている。
【0039】
≪図9≫
その状態で、スライド台100を定規200に沿って往復移動させる。この往復移動を繰り返すうちに、ブレード先端301は、スプリング160の付勢力によって、徐々に厚紙内部へと進入する。
スライド操作部170が「第1突出位置」にある場合の、ブレード先端301の最大突出量は予め決まっている。したがって、それに合わせた厚みを有する厚紙を予め選択しておけば、ブレード先端301は厚紙を貫通し、これで切断が完了する。
【0040】
≪図10、図11≫
切断が完了すると、スライド操作部170を手前側に引き戻すように操作する。この場合、係合突起180がスライド操作部170内に退避するので、スライド操作部170を引き戻すことが可能である。
スライド操作部170が「収納位置」までくると、係合突起180が再度突出して、係合凹部131と係合する。
【0041】
≪図12≫
図12では、厚紙401は、図7〜図11の場合より厚いものを切断している。その場合は、まず、スライド操作部170を「第1突出位置」にセットして、厚紙401の中間位置まで最初に切断し、次に、スライド操作部170を「第2突出位置」にセットして、最終的に厚紙401を貫通するまで切断することが好ましい。これには、次のような利点がある。
【0042】
(i)切断開始時におけるスプリング付勢力が過剰になるのを防止できる。ブレード先端301が最初から深く食い込むと切断面が綺麗に仕上がらないが、多段階の切断工程を経ることで、これを防止できる。
(ii)切断完了時におけるスプリング付勢力の低下を防止できる。切断完了時の付勢力が不足すると貫通に時間を要するが、多段階の切断工程を採用することで、切断完了時においても十分な付勢力を確保できる。
なお、「第3突出位置」、「第4突出位置」・・・をさらに設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態に係る傾斜カッタを示す斜視図。
【図2】図1の傾斜カッタの使用方法を説明する斜視図。
【図3】図1の傾斜カッタで作成される化粧枠を説明する斜視図。
【図4】図1の傾斜カッタを構成するスライド台を説明する分解図。
【図5】図1の傾斜カッタを構成するスライド操作部の構造を説明する図。
【図6】図1の傾斜カッタにおけるオートロック機構の原理を説明する模式図。
【図7】図1の傾斜カッタを用いた具体的な切断工程の一例を説明する図。
【図8】図1の傾斜カッタを用いた具体的な切断工程の一例を説明する図。
【図9】図1の傾斜カッタを用いた具体的な切断工程の一例を説明する図。
【図10】図1の傾斜カッタを用いた具体的な切断工程の一例を説明する図。
【図11】図1の傾斜カッタを用いた具体的な切断工程の一例を説明する図。
【図12】図1の傾斜カッタを用いた具体的な切断工程の一例を説明する図。
【符号の説明】
【0044】
1 化粧枠
1a 中央部
100 スライド台
101 係合部
110 台座部
120 傾斜部
130 スロット
131 係合凹部
131a 傾斜面
131b 直立面
132 係合凹部
132a 傾斜面
132b 直立面
133 係合凹部
133a 傾斜面
133b 直立面
150 ブレード保持体
150a、150b 傾斜カム面
152 係止部
155 係合孔
156 突起
160 スプリング
170 スライド操作部
170a、170b 傾斜カム面
171 スライド操作部の本体
172 係止部
173 係合孔
175 係合フック
176 操作板
177 係合フック
178 傾斜面
180 係合突起
180a 傾斜面
180b 直立面
181 傾斜面
188 スプリング
200 ガイド部材
201 ガイド溝
300 ブレード
301 ブレード先端
302 係合孔
400、401 厚紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード(300)を出し入れ可能に保持するスライド台(100)と、スライド台と係合してスライド往復可能に案内するガイド部材(200)と、を備えた傾斜カッタであって、
スライド台(100)は、そのスライド面に対して傾斜して延在するスロット(130)と、ブレード(300)を保持してスロット(130)内にスライド可能に装着されたスライド操作部(170)と、を備えていて、
ブレード(300)は、付勢部材(160)を介して、スロット(130)の延在方向に相対的にスライド可能に、スライド操作部(170)に連結されていて、かつ、当該付勢部材(160)により、スライド操作部(170)に対してスロット(130)外側へと突出する方向へ付勢されていて、
スライド操作部(170)は、付勢部材(160)によってブレード(300)が最も突出側に付勢された場合でもブレード先端(301)がスロット(130)内に収納される収納位置と、付勢部材(160)によってブレード(300)が最も突出側に付勢された場合にブレード先端(301)がスロット(130)から一定距離だけ突出する突出位置とに、スロット(130)内で選択的に固定されることを特徴とする、傾斜カッタ。
【請求項2】
ブレード(300)を出し入れ可能に保持し、ガイド部材(200)に案内されてスライド往復するスライド台(100)で構成される傾斜カッタであって、
スライド台(100)は、そのスライド面に対して傾斜して延在するスロット(130)と、ブレード(300)を保持してスロット(130)内にスライド可能に装着されたスライド操作部(170)と、を備えていて、
ブレード(300)は、付勢部材(160)を介して、スロット(130)の延在方向に相対的にスライド可能に、スライド操作部(170)に連結されていて、かつ、当該付勢部材(160)により、スライド操作部(170)に対してスロット(130)外側へと突出する方向へ付勢されていて、
スライド操作部(170)は、付勢部材(160)によってブレード(300)が最も突出側に付勢された場合でもブレード先端(301)がスロット(130)内に収納される収納位置と、付勢部材(160)によってブレード(300)が最も突出側に付勢された場合にブレード先端(301)がスロット(130)から一定距離だけ突出する突出位置とに、スロット(130)内で選択的に固定されることを特徴とする、傾斜カッタ。
【請求項3】
上記一定距離が異なる複数の突出位置に、スライド操作部(170)を固定可能であることを特徴とする、請求項1または2記載の傾斜カッタ。
【請求項4】
上記ブレード(300)は、ブレード保持体(150)に不動に固定されていて、当該ブレード保持体(150)を介して上記付勢部材(160)に連結されており、
ブレード保持体(150)およびスライド操作部(170)は、それぞれ、傾斜カム面(150a、150b、170a、170b)を備え、上記付勢部材(160)によって、当該傾斜カム面(150a、150b、170a、170b)を介して圧接しており、
当該傾斜カム面同士の協働により、スライド操作部(170)およびブレード保持体(150)は、それぞれスロット(130)内の対向する壁面に圧接し、これにより、スロット(130)内でのブレード(300)のガタツキを防止していることを特徴とする、請求項1または2記載の傾斜カッタ。
【請求項5】
上記スライド操作部(170)は、退避可能に弾性的に突出する係合突起(180)を備えていて、当該係合突起(180)がスロット側面に設けた係合凹部(131、132、133)に係合することで、上記収納位置または突出位置に固定され、
係合凹部は、ブレードスライド方向における前方側面が当該スライド方向に対して傾斜した傾斜面(131a、132a、133a)とされている一方、後方側面が同スライド方向に対してほぼ直交する直立面(131b、132b、133b)とされていて、
係合突起(180)もまた、ブレードスライド方向における前方側面が当該スライド方向に対して傾斜した傾斜面(180a)とされている一方、後方側面が同スライド方向に対してほぼ直交する直立面(180b)とされていて、
スライド操作部(170)に前方側へと外力を加えた場合には、係合凹部の傾斜面(131a、132a、133a)と係合突起の傾斜面(180a)との協働により、係合突起(180)が退避して、スライド操作部(170)の前方側へのスライドを許容し、
スライド操作部(170)および係合突起(180)は、互いに協働する傾斜面(178、181)をそれぞれ有しており、スライド操作部(170)に後方側へと外力を加えた場合には、当該傾斜面同士の協働により、係合突起(180)が退避して、スライド操作部(170)の後方側へのスライドを許容し、
後方側への外力がブレード(300)に直接作用した場合には、係合凹部の直立面(131b、132b、133b)と係合突起の直立面(180b)とが当接することで、当該外力に抵抗してスライド操作部(170)の後方へのスライドを禁止することを特徴とする、請求項1または2記載の傾斜カッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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