説明

傾斜板を有する空間形成材およびその使用方法

【課題】本願発明は、空間形成材を配列した空間内での水流の方向の調整、流速を変化させることができる新規空間形成材の提案にある。
【解決手段】相対向する接地辺を有する盤体間を当該盤体の接地辺に対し傾斜した傾斜板にて接続した傾斜板を有する空間形成材であり、本空間形成材を傾斜板の傾きを揃えあるいは相互に変えて配列し、得られた空間内を流れる水の流れの向きあるいはその速度を変えて雨水等の貯留空間、軽量盛土、漁礁ブロック、消波ブロック、水の浄化装置などとして使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な部材の使用技術に属する。
【背景技術】
【0002】
容器状、テーブル状、パイプ、空間形成材など、図13に示すような部材を配列して空間を形成し、その空間を雨水等の貯留空間、軽量盛土の充填材あるいは漁礁などに使用する例が知られている。雨水等の貯留空間としては雨水の流出抑制あるいは有効利用を目的として貯留・浸透槽とする例が特開昭62-101097、特開昭62-126179、特開平9-296486、特開平11-43971、特開平10-115778、特開平10-195937、特開平10-77666などに提案されている。又軽量盛土あるいは漁礁ブロックとしての使用する例が特開平11-36383に開示されている。
【0003】
雨水の貯留空間として使用する場合には、屋根雨水あるいは舗装面のみを流れてきた雨水を貯留する場合は、雨水中の懸濁物である砂泥の量は極めて少ないが、U字溝、用水路などを経由して流れてくる雨水等を貯留する場合は、その雨水と共に流れ込む砂泥量は無視できず、貯留空間の容量を減ずることとなり、その除去・清掃の必要がある。そのため特開2002-129640には槽の底面に傾斜を設け槽の特定範囲に集め処理しやすくする例が記載されている。また特開2006-241701には部材の形状を工夫し部材の中に傾斜板を挿入し水の流れ方向を調節することで同じ効果を得る例が提示されている。
槽の底面に傾斜面を設ける方法は、施工が難しく、部材内に傾斜板を設ける方法は、必要とする部材を構成する部品の数が多く組立ての手間がかかり、さらに各部品をそれぞれ成形する必要がある。
また漁礁ブロックとして使用する場合にも、提案された部材では漁礁内の水流は一律に決まり、その内部での水流の向き、流速を変えることは不可能であり、漁礁内に変化に富んだ生育環境を提供することはできない。
【0004】
【特許文献1】特開昭62-101097
【特許文献2】特開昭62-126179
【特許文献3】特開平9-296486
【特許文献4】特開平11-43971
【特許文献5】特開平10-115778
【特許文献6】特開平10-195937
【特許文献7】特開平10-77666
【特許文献8】特開2002-129640
【特許文献9】特開2006-241701
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明は、空間形成材を配列した空間内での水流の方向の調整、流速を変化させることができる新規空間形成材の提案にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1の発明は、相対向する接地辺を有する盤体間を当該盤体の接地辺に対し傾斜した傾斜板にて接続した空間形成材である。空間形成材を配列して得られる空間内部の水流の向きを変えるため、空間形成材の相対向する盤体間を接続する板を接地辺に平行な平行板ではなく傾斜板とした。
本第2の発明は、本第1の発明である空間形成材を地下に配列し、水の貯留空間を形成し、その貯留空間に水を貯留する雨水等の貯留・浸透施設である。貯留空間内の水流の向きを調整できるよう空間形成材に傾斜板を設けた。
本第3の発明は、本第1の発明である空間形成材を水面下に配列した漁礁である。漁礁内の水流を調節できるよう空間形成材に傾斜板を設けた。
【発明の効果】
【0007】
(1)本発明の空間形成材は傾斜板の向きを垂直方向として配置することで上下に分割する型による成形が可能である。
(2) 本発明の空間形成材は傾斜板を有するため、雨水等の貯留空間を形成する時、空間形成材の傾斜板の向きを揃えることで、水流の向きを傾斜板の向きに応じて変えることができる。
(3) 発明の空間形成材は傾斜板を有するため、漁礁ブロックを形成する時、空間形成材の傾斜板の向きを揃えあるいは変えることで漁礁内の水流の向き、流速を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を、図を用いて、より詳細に説明する。
図1ないし図4は、本第1の発明である傾斜板を有する空間形成材の例を示す概念図である。
本空間形成材は、図1ないし図4に示すように、相対向して設けられた盤体間を盤体の接地辺に対して傾斜する傾斜板によって接続したものである。盤体は矩形平板、H型平板、正6角形状平板など接地辺を有する板状部材であり、互いに相接しながら配列可能な形状であればよい。また図2に示すように中心部に開口を設けたものであってもよく、表面に透孔のあるもの、配列した時相接する辺に隙間が生ずるものであってもよい。例えば、図3に示すように盤体がH型のものである。
【0009】
図4は盤体および/あるいは中間板を傾斜させたものである。
図4aは、空間形成材の一例であり、斜視図と平面・側面および側断面で模式的に示したものである。盤体は垂直・平行で中間板は傾斜している。なお傾斜板は盤体で形成される矩形空間に対し隙間を設けて設けられている。中間板を傾斜させることで中間板に透孔を設けることが容易となる。
図4bは、他の空間形成材を平面・側面および側断面で模式的に示したものである。盤体・中間板共に傾斜を設けた。
図4cは、他の空間形成材を平面・側面および側断面を模式的に示したものである。盤体・中間板共に傾斜を設けたものであり、図4bとの差は中間板の傾斜を一部逆とした例である。
図4dは、図4bに示した空間形成材の傾斜板を外側に延ばしたものである。
外側に延びた傾斜板にはオスメスの継ぎ手を設けることができる。
【0010】
傾斜板は図5aに示すように盤体の面の辺端から辺端まで一枚の板で接続するものであっても、図5bに示すように辺端に対し隙間を設けたものでも、図5cに示すように分割されたものでもよい。
本空間形成材の盤体および傾斜板の形状、枚数などは、その使用する目的に応じて変えることができる。空間形成材相互間の水の流れを確保するため、盤体に透孔あるいは盤体の縁に凹部を設けることもできる。
【0011】
本空間形成材は必要に応じ相対向する盤体間に図1ないし図5に示すように、中間板を挿入することができる。強度などが要求される場合は、その要求に応じてその数を決めることができる。中間板は盤体と水平もしくは、図4、図5に示すように空間形成材の傾斜板の中心に対し互いに面対称となるように配置することが好ましい。空間形成材内部の水の流れを確保するため中間板に透孔を設けることができる。
【0012】
以下本空間形成材の製法に付き説明する。
図1に示す空間形成材は例えば、図1bに示す向きに配置することで、上下に脱着する型によって成形できる。図2ないし図4に示す空間形成材も上記と同様に成形できる。
【0013】
また図2a、bに示す空間形成材は、同図に示すL型部材を2個組み合わせ接続して成形できる。接続方法は継手、接着剤、帯による緊縛、ボルト・ナット、磁石など既存の方法が使用できる。
【0014】
いずれの形状においても熱加塑性樹脂などを原料として射出成形可能であり、モルタル、コンクリート製等としても同様に型を用いて成形できる。図1ないし図5に示す空間形成材の傾斜板の傾きは接地辺に対し45度であるが、例えば図1に示す空間形成材、図2に示すL型部材をその頂点を中心として回転させることにより、傾斜板の傾きは45度に限らず設定できる。
【0015】
上記空間形成材を、配列し、必要に応じて空間形成材をいくつかまとめて紐で縛り、あるいは全体をまとめて縛ることで空間を形成する。紐に限らず、ボルト・ナットを使用しても、空間形成材を構成する盤体、傾斜板、中間板に凹部凸部を設け、契合させてもよい。
なおH形平板あるいは正6角形状板を盤体とする空間形成材では盤体を2分した空間形成材と共に図6に示すように配列することができる。
配置方向は盤体を底面とした縦方向に配置することも可能である。
【0016】
以下、本空間形成材の使用分野につき説明する。
図1に示す空間形成材の傾斜板を同じ向きに配列すれば図7a、7cに示すように傾斜板の傾斜は空間全体を通し45度下向きに設定できる。また図7b、7dに示すように、傾斜板の向きを途中で反対方向に配置すれば両側から中心に向かって下向きとなるように設定できる。図7eに示すように、傾斜板の傾きを水流が中心に向かうように設定することも可能である。
【0017】
本空間形成材は雨水等の貯留空間として利用することができる。
本空間形成材を図7aに示すように配置し、雨水等の貯留空間とすれば、水中に懸濁する砂泥は、流入口から排出口まで徐々に傾斜板上に沈積していくと同時に、水の流れにより順次押し流され傾斜板の傾斜に沿って水の流れ方向に誘導され貯留空間の端部に集積される。また本配列をその中心で逆にすれば図7bに示すように水中に懸濁する砂泥は、水の流れに沿って、両側の流入口から中心に向かうので貯留空間の中心に集積される。集積部と排出口を連結すれば集積された砂泥は貯留空間の外部へと排出される。これは、盤体間での図5に示す傾斜板の配置によらず同様である。
【0018】
例えば、図8aに示すように、本空間形成材を地下に配列して槽を形成し、傾斜板の向きを左右対称となるように揃え、水流を中央に誘導することで砂泥を槽の中心部に集め、そこにU字溝を設けておくことで、砂泥はU字溝内に沈積するようになる。U字溝に繋がる排出管を介して砂泥を排出することができる。中央に限らず、槽の端に誘導してもよい。なお砂泥の誘導を考慮する必要のない場合は図8bに示すように傾斜板の向きは特に揃える必要はない。
【0019】
例えば、図1に示す空間形成材を図7のように配列すれば側面及び上面に隙間が生ずる。この隙間から土砂の浸入を防ぐため壁材で覆うあるいは本空間形成材の傾斜板の数、あるいは中間板の数を変え、上記隙間がシート強度の許容範囲内となれば壁材を使用することなくシートで覆うことで土砂の貯留空間内への浸入を防ぐことができる。
こうして得られた貯留空間を必要に応じて壁材あるいは透水シートを併用して覆い浸透槽とし、遮水シートで覆い貯留槽とすることは従来技術と同様である。
【0020】
また必要に応じて図8に示すように、泥だめますあるいは沈砂池、流入管、溢流管、オリフィス、流出管などの付帯設備を設けて雨水等の貯留・浸透施設とすることは従来の技術と何ら変わることがない。空間形成材を配列することで貯留空間を形成するため、特に上記したように傾斜板による傾斜を揃えなくとも貯留・浸透槽としての機能は従来と同じである。
【0021】
本空間形成材を樹脂製とし、配列して得られる空間を透水性のシートで覆い、土壌の代わりとすることで図9に示すように土壌の軽量化を図ることができる。
【0022】
コンクリート製とし、水中に配列し、漁礁として使用できる。例えば図10に示すように水中に配列すれば、水は傾斜板に沿って流れるため、水流の向きを内部で変えることができる。また傾斜板で囲まれた部分は、流速が小さくなるため流の比較的少ない部分を形成することも可能である。漁礁の内部に多様な空間を形成することができるため、種類の異なる魚類に対し、あるいは生育段階に応じた環境が与えられる。
【0023】
また護岸に図11に示すように、隙間の生じるように傾斜板を設けた本空間形成材の傾斜板の向きを波と対向するように配列すれば、一部の波は空間形成材の奥に流れ込み、一部の波は傾斜板にて反射されるため波浪の衝撃を吸収することができる。そのため消波ブロックとして使用できる。
【0024】
あるいは貯留空間を形成し、その内部に多孔性、あるいは繊維状の表面積の大きい物質を充填し、水質浄化などに使用することも可能である。本空間形成材の傾斜板の傾斜を図12に示すように、上下で互い違いとなるように配列することで、狭い空間においても長い浄化距離を得ることができる。
【0025】
本空間形成材をブロック塀として使用することもできる。傾斜板の向きを外に向かって下向きに並べれば、外から中は見通しができないが、風は通るブロック塀とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】は、空間形成材およびその形成手段を示す概念図である。
【図2】は、L型部材を使用した空間形成材およびそれらを形成する概念図である。
【図3】は、空間形成材の他の例を示す概念図である。
【図4】は、空間形成材の盤体・中間板の傾きを示す概念図である。
【図5】は、傾斜板の形状を示す概念図である。
【図6】は、H形平板、正6角形状平板である盤体の空間形成材の配列例を示す。
【図7】は、傾斜板の向きにより水流の向きを調節する概念図である。
【図8】は、雨水等の貯留・浸透槽として使用する例の概念図である。
【図9】は、軽量盛土として使用する例の概念図である。
【図10】は、漁礁として使用する例の概念図である。
【図11】は、消波ブロックとして使用する例の概念図である。
【図12】は、水の浄化装置として使用する例の概念図である。
【図13】は、単位部材の例を示す概念図である。
【0027】
1 空間形成材
2 盤体
3 傾斜板
4 中間板
5 L型部材
6 雨水等の貯留・浸透槽
61 貯留槽
62 浸透槽
63 透水シート
64 保護シート
65 遮水シート
7 軽量盛土
8 漁礁ブロック
9 消波ブロック
10 水の浄化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する接地辺を有する盤体間を当該盤体の接地辺に対し傾斜した傾斜板にて接続した傾斜板を有することを特徴とする空間形成材。
【請求項2】
請求項1記載の傾斜板を有する空間形成材を地下に配列し、貯留空間を形成し、当該貯留空間を水の貯留空間としたことを特徴とする雨水等の貯留・浸透施設。
【請求項3】
請求項1記載の傾斜板を有する空間形成材を水面下に配列したことを特徴とする漁礁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−255756(P2008−255756A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105813(P2007−105813)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(303005229)
【Fターム(参考)】