説明

傾斜構造体、傾斜構造体の製造方法、分光フィルター及び分光センサー

【課題】微小な傾斜構造体を製造することを課題とする。
【解決手段】傾斜構造体の製造方法は、基板部13aの上に軸部13bを形成し、軸部の上面が露出し、且つ軸部の上面と接続する上面を有する犠牲膜を基板部13aの上に形成し、軸部の上面及び犠牲膜の上面に傾斜構造体膜7を形成し、軸部の上面と軸部の側面によって構成される角部の上に位置する傾斜構造体膜7の膜厚を薄く加工することにより、傾斜構造体膜に前記角部の上に位置する薄膜部11を形成し、傾斜構造体膜7と基板部13aとの間の犠牲膜を除去し、傾斜構造体膜と基板部との間に液体18を供給し、液体18を除去することにより、ステッキングを発生させ、傾斜構造体膜を薄膜部11で曲げ、傾斜構造体膜の端部を基板部に接合することで、基板部と傾斜構造体膜によって鋭角を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な傾斜構造体、傾斜構造体の製造方法、この傾斜構造体を用いた分光フィルター及び分光センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
医療や農業、環境等の分野では、対象物の診断や検査をするために分光センサーが用いられている。例えば、医療の分野では、ヘモグロビンの光吸収を利用して血中酸素飽和度を測定するパルスオキシメータが用いられる。また、農業の分野では、糖分の光吸収を利用して果実の糖度を測定する糖度計が用いられる。
【0003】
下記の特許文献1には、干渉フィルターと光電変換素子との間を光学的に接続する光ファイバーによって入射角度を制限することにより、光電変換素子への透過波長帯域を制限する分光イメージングセンサーが開示されている。
【0004】
ところで、従来の分光センサーでは、小型化が困難である。小型の分光センサーを作製するには、微小な傾斜構造体を形成することが求められる。また、高性能光学デバイスに使用される分光フィルターなどでは微小な傾斜構造体が要求されることが多いが、微小な傾斜構造体を製造するのは難しい。
また、微小な傾斜構造体を製造できれば、分光センサーに限らず、種々の用途に使用することが考えられる。
【0005】
従来の技術では、微小な傾斜構造体は金型を使用して製造している。しかしながら、金型を使用して微小な傾斜構造体を製造すると、次のような課題がある。
(1)金型作製には多額の費用が掛かるため、多額な初期投資が必要となり、傾斜構造体の製造コストが増大する。
(2)金型を使用していくうちに金型が摩耗するため、金型の定期的な買い替えが必要となり、ランニングコストが増大する。
(3)傾斜構造体の些細な形状変更に対しても新規に金型を作製する必要があるため、コストが高くなるだけでなく、金型を作製するための長い時間も必要となる。
(4)金型の特徴として傾斜構造体の材料が金型で形成可能な材料(例えば樹脂等)に制限されてしまう。
(5)金型の微細化の限界が傾斜構造体の微細化の限界となるため、微小な傾斜構造体を作製するのは困難である。
(6)傾斜構造体を半導体素子と一体化しようとする場合、高精度な接合技術などが必要となるため、半導体素子との一体化が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−129908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術では、微小な傾斜構造体を製造するのは困難であった。
本発明は、この技術的課題に鑑みてなされたものである。本発明の幾つかの態様は、微小な傾斜構造体、傾斜構造体の製造方法、この傾斜構造体を用いた分光フィルター及び分光センサーに関連している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の幾つかの態様において、傾斜構造体は、基板部の上に形成された軸部と、
前記軸部の上面に一端が形成され、前記基板部に他端が接合された傾斜構造体膜と、
前記傾斜構造体膜に形成され、前記軸部の上面と前記軸部の側面によって構成される角部の上に位置され、前記傾斜構造体膜より膜厚の薄い薄膜部と、
を具備し、
前記傾斜構造体膜は、前記薄膜部で曲げられており、
前記基板部と前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成している。
【0009】
本発明の他の態様において、傾斜構造体は、基板部の上に形成された軸部と、
前記軸部の上面に一端が形成され、前記基板部に他端が接合された薄膜と、
前記薄膜の上に形成され、前記薄膜より膜厚の厚い傾斜構造体膜と、
を具備し、
前記傾斜構造体膜は、前記薄膜の他端の上に形成され、前記軸部の上面と前記軸部の側面によって構成される角部の上には形成されず、
前記薄膜は、前記角部の上で曲げられており、
前記基板部と前記薄膜及び前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成している。
【0010】
本発明の他の態様において、傾斜構造体は、基板部の上に形成された狭軸部と、
前記狭軸部の上面に一端が形成され、前記基板部に他端が接合され、前記狭軸部の幅より厚い膜厚を有する傾斜構造体膜と、
を具備し、
前記狭軸部は曲げられており、
前記基板部と前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成している傾斜構造体。
【0011】
本発明の他の態様において、傾斜構造体は、基板部の上に形成された狭軸部と、
前記狭軸部の上面に形成され、前記狭軸部の幅より広い幅を有する傾斜構造体膜と、
前記基板部の上に形成された、前記狭軸部に対向する基底部と、
前記基底部の上面に形成され、前記傾斜構造体膜の上部が接合された基部と、
を具備し、
前記狭軸部は曲げられており、
前記基部と前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成している。
【0012】
本発明の他の態様において、分光フィルターは、前述した何れかの態様の傾斜構造体を用いて光の波長を制限するフィルターである。
【0013】
本発明の他の態様において、分光センサーは、通過する光の入射角度を制御する角度制御フィルターと、
前記角度制御フィルターを通過できる光の波長を制限する前述の分光フィルターと、
前記角度制御フィルター及び前記分光フィルターを通過した光を検出する受光素子と、
を具備する。
【0014】
本発明の他の態様において、傾斜構造体の製造方法は、基板部の上に軸部を形成し、
前記軸部の上面が露出し、且つ前記軸部の上面と接続する上面を有する犠牲膜を前記基板部の上に形成し、
前記軸部の上面及び前記犠牲膜の上面に傾斜構造体膜を形成し、
前記軸部の上面と前記軸部の側面によって構成される角部の上に位置する前記傾斜構造体膜の膜厚を薄く加工することにより、前記傾斜構造体膜に前記角部の上に位置する薄膜部を形成し、
前記傾斜構造体膜と前記基板部との間の前記犠牲膜を除去し、
前記傾斜構造体膜と前記基板部との間に液体を供給し、
前記液体を除去することにより、前記傾斜構造体膜を前記薄膜部で曲げ、前記傾斜構造体膜の端部を前記基板部に接合することで、前記基板部と前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成する。
この態様によれば、半導体プロセスを用いることができ、微小な傾斜構造体を製造することが容易となる。
【0015】
本発明の他の態様において、傾斜構造体の製造方法は、基板部の上に軸部を形成し、
前記軸部の上面が露出し、且つ前記軸部の上面と接続する上面を有する犠牲膜を前記基板部の上に形成し、
前記軸部の上面及び前記犠牲膜の上面に薄膜を形成し、
前記薄膜の上に傾斜構造体膜を形成し、
前記傾斜構造体膜及び前記薄膜を加工することにより前記犠牲膜を露出させ、
前記軸部の上面と前記軸部の側面によって構成される角部の上に位置する前記傾斜構造体膜を除去することにより、前記角部の上に位置する前記薄膜を露出させ、
前記薄膜と前記基板部との間の前記犠牲膜を除去し、
前記薄膜と前記基板部との間に液体を供給し、
前記液体を除去することにより、前記薄膜を前記角部の上で曲げ、前記薄膜の端部を前記基板部に接合することで、前記基板部と前記薄膜及び前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成する。
【0016】
本発明の他の態様において、傾斜構造体の製造方法は、基板部の上に狭軸部を形成し、
前記狭軸部の上面が露出し、且つ前記狭軸部の上面と接続する上面を有する犠牲膜を前記基板部の上に形成し、
前記狭軸部の上面及び前記犠牲膜の上面に、前記狭軸部の幅より厚い膜厚を有する傾斜構造体膜を形成し、
前記傾斜構造体膜と前記基板部との間の前記犠牲膜を除去し、
前記傾斜構造体膜と前記基板部との間に液体を供給し、
前記液体を除去することにより、前記狭軸部を曲げ、前記傾斜構造体膜の端部を前記基板部に接合することで、前記基板部と前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成する。
【0017】
本発明の他の態様において、傾斜構造体の製造方法は、基板部の上に、狭軸部及び該狭軸部に対向する基底部を形成し、
前記狭軸部及び前記基底部それぞれの上面が露出し、且つ前記狭軸部及び前記基底部それぞれの上面と接続する上面を有する犠牲膜を前記基板部の上に形成し、
前記狭軸部の上面及び前記犠牲膜の上面に、前記狭軸部の幅より広い幅を有する傾斜構造体膜を形成するとともに、前記基底部の上面に前記傾斜構造体膜に対向する基部を形成し、
前記狭軸部と前記基底部との間及び前記傾斜構造体膜と前記基板部との間それぞれの前記犠牲膜を除去し、
前記傾斜構造体膜と前記基部との間及び前記狭軸部と前記基底部との間に液体を供給し、
前記液体を除去することにより、前記狭軸部を曲げ、前記傾斜構造体膜の上部を前記基部に接合することで、前記基部と前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(A)〜(F)は第1の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図
【図2】(A)〜(E)は第1の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図
【図3】(A)〜(C)は第1の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図
【図4】(A)〜(E)は第2の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図
【図5】(A)〜(D)は第2の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図
【図6】(A)〜(F)は第3の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図
【図7】(A)〜(F)は第3の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図
【図8】(A)〜(F)は第4の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図
【図9】(A)〜(F)は第4の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図
【図10】本発明の第5の実施形態に係る分光センサーを示す模式図
【図11】本発明の第6の実施形態に係る分光センサーを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。また同一の構成要素には同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0020】
<1.第1の実施形態>
図1乃至図3は、本発明の第1の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。この傾斜構造体の製造方法は、半導体プロセス技術を応用することで、低コスト且つ微細化が容易な方法である。
【0021】
まず、基材(図示せず)の上に軸部材料及び基板材料となる第1の材料膜13を成膜する(図1(A))。
次に、第1の材料膜13の上にレジスト膜15を形成し、このレジスト膜15をマスクとして第1の材料膜13をエッチング加工することにより、基板部13aの上に軸部13bを形成する(図1(B))。
【0022】
次に、レジスト膜15を除去する(図1(C))。
次に、基板部13a及び軸部13bの上に犠牲膜17を成膜する(図1(D))。
次に、犠牲膜17をCMP(Chemical Mechanical Polishing)により平坦化することにより、軸部13bの上面を露出させ、且つ軸部13bの上面と接続する上面を有する犠牲膜17を基板部13aの上に形成する(図1(E))。但し、基板部13a及び軸部13bの上に塗布するだけで図1(E)に示すような状態とすることができる犠牲膜17であれば、CMPで平坦化する工程は不要である。このような犠牲膜17としては例えばSOG(Spin On Glass)膜、有機膜、レジスト膜が考えられる。
【0023】
次に、軸部13bの上面及び犠牲膜17の上面に傾斜構造体膜となる第2の材料膜19を成膜する(図1(F))。
次に、第2の材料膜19の上にレジスト膜21を形成し、このレジスト膜21をマスクとして第2の材料膜19をエッチング加工する。これにより、軸部13bの上面及び犠牲膜17の上面に第2の材料膜19からなる傾斜構造体膜7を形成する(図2(A))。
【0024】
次に、レジスト膜21を除去する(図2(B))。
次に、傾斜構造体膜7及び犠牲膜17の上にレジスト膜23を形成し、このレジスト膜23をマスクとして傾斜構造体膜7をエッチング加工する。つまり、軸部13bの上面と軸部13bの側面によって構成される角部の上に位置する傾斜構造体膜7の膜厚を薄く加工する(図2(C))。これにより、傾斜構造体膜7に前記角部の上に位置する薄膜部であるヒンジ部11が形成される。なお、ヒンジ部11は、前記角部に隣接する位置に形成されても良い。
【0025】
次に、レジスト膜23を除去する(図2(D))。
次に、犠牲膜17をウェットエッチングまたはドライエッチングによって除去することにより、傾斜構造体膜7と基板部13aとの間に空間を形成する(図2(E))。この際の傾斜構造体膜7は、厚さが薄く形成されたヒンジ部11によって軸部13bに繋がった状態である。このため、軸部13bとヒンジ部11の接続部で傾斜構造体膜7が折れ曲がりやすくなっている。
【0026】
次に、基板部13a及び傾斜構造体膜7の上、傾斜構造体膜7と基板部13aとの間の空間内に液体18を供給する(図3(A))。
次に、この液体18を除去することにより、傾斜構造体膜7と基板部13aとの間に液体18が残る(図3(B))。このように液体18を傾斜構造体膜7と基板部13aとの間に残すには、表面張力が大きい液体18を用いることが好ましいため、液体18としては例えば水を用いることが好ましい。
【0027】
次に、傾斜構造体膜7と基板部13aとの間に残した液体18を乾燥させて除去することによりステッキングを発生させる。その結果、傾斜構造体膜7がヒンジ部11で曲げられ、傾斜構造体膜7の端部が基板部13aに接合され、それにより基板部13aと傾斜構造体膜7によって鋭角が構成される。つまり、傾斜構造体膜7を基板部13aの表面に対して所定の角度だけ傾斜させることができる(図3(C))。この際、傾斜構造体膜7のヒンジ部11の厚さを薄くしているため、傾斜構造体膜7が撓んだり湾曲することを抑制できる。言い換えると、傾斜構造体膜7のヒンジ部11を厚くすると、ステッキングが発生したときに、傾斜構造体膜7が湾曲しやすくなる。
【0028】
傾斜構造体膜7の長さと軸部13bの高さ制御することにより、傾斜構造体膜7と基板部13aとの角度を所望の角度となるように精度良く形成することができる。
【0029】
なお、傾斜構造体膜7となる第2の材料膜19に犠牲膜17とのエッチング選択比を持たせることができれば、傾斜構造体膜7及び犠牲膜17に種々の材料を用いることができるし、傾斜構造体膜自体に後述する分光機能(薄膜積層構造)や反射機能を持たせても良い。
【0030】
軸部材料、基板材料、傾斜構造体となる第2の材料膜19、犠牲膜17及び犠牲膜除去材は、表1に示す組合せ1〜7を用いることができる。
【0031】
【表1】

【0032】
本実施形態によれば、半導体プロセスを用いることにより、低コストで微細な傾斜構造体を容易に作製することが可能となる。
また、本実施形態では、従来技術に比べて以下のような効果を得ることができる。
(1)金型作製に比べてマスク作製費用は小額であるため、初期投資が小額となり、傾斜構造体の製造コストを低減できる。
(2)マスクは非接触で使用されるため、金型のように摩耗しない。従って、ランニングコストを低減できる。
(3)傾斜構造体膜7の長さ方向(横方向)の形状変更は新規マスクの作製で対応し、軸部13bの高さ方向(縦方向)の形状変更はエッチング加工又は成膜条件の変更で対応できるため、形状変更に対するコスト及び時間を低減できる。
(4)半導体プロセスで使用できる材料であれば、傾斜構造体膜の材料に制限がない。
(5)傾斜構造体を半導体加工技術を用いて製造するため、傾斜構造体の微細化が容易である。
(6)傾斜構造体を半導体素子と一体化することが容易であり、素子毎に所望の傾斜構造体を製造できる。
【0033】
<2.第2の実施形態>
図4及び図5は、本発明の第2の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図であり、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付し、同一部分の説明を省略する。
【0034】
まず、図1(A)〜(E)の工程を第1の実施形態と同様に行う。
次に、軸部13bの上面及び犠牲膜17の上面にヒンジ材料からなる薄膜25を成膜する(図4(A))。
次に、薄膜25の上に傾斜構造体膜となる第2の材料膜19を成膜する(図4(B))。
【0035】
次に、第2の材料膜19の上にレジスト膜29を形成し、このレジスト膜29をマスクとして第2の材料膜19及び薄膜25をエッチング加工する。これにより、軸部13bの上面及び犠牲膜17の上面に薄膜を残し、犠牲膜17を露出させる(図4(C))。
【0036】
次に、レジスト膜29を除去し、第2の材料膜19の上にレジスト膜31を形成し、このレジスト膜31をマスクとして第2の材料膜19をエッチング加工する。レジスト膜31については、レジスト膜29を除去せずに、レジスト膜29を再露光して形成してもよい。これにより、軸部13bの上面と軸部13bの側面によって構成される角部の上に位置する第2の材料膜19を除去することにより、前記角部の上に位置する薄膜25を露出させ、薄膜25の上に第2の材料膜19からなる傾斜構造体膜7を形成する(図4(D))。
【0037】
次に、レジスト膜31を除去する(図4(E))。
次に、図2(E)に示す工程と同様に、薄膜25と基板部13aとの間の犠牲膜17をウェットエッチングまたはドライエッチングによって除去する(図5(A))。
【0038】
次に、図3(A)に示す工程と同様に液体18を供給する(図5(B))。
次に、図3(B)に示す工程と同様に液体18を除去することにより、薄膜25と基板部13aとの間に液体18が残る(図5(C))。
【0039】
次に、図3(C)に示す工程と同様に、薄膜25と基板部13aとの間に残した液体18を乾燥させて除去することによりステッキングを発生させる。その結果、薄膜25が前記角部の上で曲げられ、薄膜25の端部が基板部13aに接合され、それにより基板部13aと薄膜25及び傾斜構造体膜7によって鋭角が構成される。つまり、傾斜構造体膜7を基板部13aの表面に対して所定の角度だけ傾斜させることができる(図5(D))。なお、前記角部の上の薄膜25がヒンジ部11に相当する。
【0040】
傾斜構造体膜7及び薄膜部25それぞれの長さと軸部13bの高さ制御することにより、傾斜構造体膜7及び薄膜部25と基板部13aとの角度を所望の角度となるように精度良く形成することができる。
【0041】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
<3.第3の実施形態>
図6及び図7は、本発明の第3の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。この傾斜構造体の製造方法は、半導体プロセス技術を応用することで、低コスト且つ微細化が容易な方法である。
【0043】
まず、基材(図示せず)の上に基板材料及びヒンジ材料となる第1の材料膜33を成膜する(図6(A))。
次に、第1の材料膜33の上にレジスト膜32を形成し、このレジスト膜32をマスクとして第1の材料膜33をエッチング加工することにより、基板部33aの上にヒンジ部としての狭軸部33bを形成する(図6(B))。
【0044】
次に、レジスト膜32を除去する(図6(C))。
次に、基板部33a及び狭軸部33bの上に犠牲膜17を成膜する(図6(D))。
次に、犠牲膜17をCMPにより平坦化することにより、狭軸部33bの上面を露出させ、且つ狭軸部33bの上面と接続する上面を有する犠牲膜17を基板部33aの上に形成する(図6(E))。但し、基板部33a及び狭軸部33bの上に塗布するだけで図6(E)に示すような状態とすることができる犠牲膜17であれば、CMPで平坦化する工程は不要である。このような犠牲膜17としては例えばSOG膜、有機膜、レジスト膜が考えられる。
【0045】
次に、狭軸部33bの上面及び犠牲膜17の上面に傾斜構造体膜となる第2の材料膜19を成膜する(図6(F))。第2の材料膜19は、狭軸部33bの幅より厚い膜厚を有する。
次に、第2の材料膜19の上にレジスト膜39を形成し、このレジスト膜39をマスクとして第2の材料膜19をエッチング加工する。これにより、狭軸部33bの上面及び犠牲膜17の上面に第2の材料膜19からなる傾斜構造体膜7を形成する(図7(A))。
【0046】
次に、レジスト膜39を除去する(図7(B))。
次に、犠牲膜17をウェットエッチングまたはドライエッチングによって除去することにより、傾斜構造体膜7と基板部33aとの間に空間を形成する(図7(C))。この際の傾斜構造体膜7は、厚さが薄く形成されたヒンジ部11としての狭軸部33bによって基板部33aに保持された状態である。このため、ヒンジ部11が曲がりやすくなっている。
【0047】
次に、基板部33a及び傾斜構造体膜7の上、傾斜構造体膜7と基板部33aとの間の空間内に液体18を供給する(図7(D))。
次に、この液体18を除去することにより、傾斜構造体膜7と基板部33aとの間に液体18が残る(図7(E))。このように液体18を傾斜構造体膜7と基板部33aとの間に残すには、表面張力が大きい液体18を用いることが好ましいため、液体18としては例えば水を用いることが好ましい。
【0048】
次に、傾斜構造体膜7と基板部33aとの間に残した液体18を乾燥させて除去することによりステッキングを発生させる。その結果、狭軸部であるヒンジ部11が曲げられ、傾斜構造体膜7の端部が基板部33aに接合され、それにより基板部33aと傾斜構造体膜7によって鋭角が構成される。つまり、傾斜構造体膜7を基板部33aの表面に対して所定の角度だけ傾斜させることができる(図7(F))。この際、ヒンジ部11の厚さを薄くしているため、傾斜構造体膜7が撓んだり湾曲することを抑制できる。
【0049】
傾斜構造体膜7の長さとヒンジ部11の高さを制御することにより、傾斜構造体膜7と基板部33aとの角度を所望の角度となるように精度良く形成することができる。
【0050】
なお、傾斜構造体膜7となる第2の材料膜19に犠牲膜17とのエッチング選択比を持たせることができれば、傾斜構造体膜7及び犠牲膜17に種々の材料を用いることができるし、傾斜構造体膜自体に後述する分光機能(薄膜積層構造)や反射機能を持たせても良い。
【0051】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
<4.第4の実施形態>
図8及び図9は、本発明の第4の実施形態に係る傾斜構造体の製造方法を示す断面図である。この傾斜構造体の製造方法は、半導体プロセス技術を応用することで、低コスト且つ微細化が容易な方法である。
【0053】
まず、基材(図示せず)の上に基板材料、ヒンジ材料、基底部材料となる第1の材料膜45を成膜する(図8(A))。
次に、第1の材料膜45の上にレジスト膜46を形成し、このレジスト膜46をマスクとして第1の材料膜45をエッチング加工することにより、基板部45aの上に、ヒンジ部としての狭軸部45b及び該狭軸部45bに対向する基底部45cを形成する(図8(B))。
【0054】
次に、レジスト膜46を除去する(図8(C))。
次に、基板部45a、狭軸部45b及び基底部45cの上に犠牲膜17を成膜する(図8(D))。
次に、犠牲膜17をCMPにより平坦化することにより、狭軸部45b及び基底部45cそれぞれの上面を露出させ、且つ狭軸部45b及び基底部45cそれぞれの上面と接続する上面を有する犠牲膜17を基板部45aの上に形成する(図8(E))。但し、基板部45a、狭軸部45b及び基底部45cの上に塗布するだけで図8(E)に示すような状態とすることができる犠牲膜17であれば、CMPで平坦化する工程は不要である。このような犠牲膜17としては例えばSOG膜、有機膜、レジスト膜が考えられる。
【0055】
次に、狭軸部45b及び基底部45cそれぞれの上面及び犠牲膜17の上面に傾斜構造体膜及び基部となる第2の材料膜49を成膜する(図8(F))。
次に、第2の材料膜49の上にレジスト膜51を形成し、このレジスト膜51をマスクとして第2の材料膜49をエッチング加工する。これにより、狭軸部45bの上面及び犠牲膜17の上面に、狭軸部45bの幅より広い幅を有する傾斜構造体膜7を形成するとともに、基底部45cの上面に傾斜構造体膜7に対向する基部49aを形成する(図9(A))。
【0056】
次に、レジスト膜51を除去する(図9(B))。
次に、犠牲膜17をウェットエッチングまたはドライエッチングによって除去することにより、狭軸部45bと基底部45cとの間及び傾斜構造体膜7と基板部45aとの間それぞれに空間を形成する(図9(C))。この際の傾斜構造体膜7は、幅が狭く形成されたヒンジ部としての狭軸部45bによって基板部45aに保持された状態である。このため、狭軸部45bが曲がりやすくなっている。
【0057】
次に、基板部45a及び傾斜構造体膜7の上、傾斜構造体膜7と基板部45aとの間の空間内、傾斜構造体膜7と基部49aとの間の空間内、狭軸部45bと基底部45cとの間の空間内それぞれに液体18を供給する(図9(D))。
次に、この液体18を除去することにより、傾斜構造体膜7と基部49aとの間及び狭軸部45bと基底部45cとの間に液体18が残る(図9(E))。このように液体18を傾斜構造体膜7と基部49aとの間に残すには、表面張力が大きい液体18を用いることが好ましいため、液体18としては例えば水を用いることが好ましい。
【0058】
次に、傾斜構造体膜7と基部49aとの間に残した液体18を乾燥させて除去することによりステッキングを発生させる。その結果、狭軸部であるヒンジ部11が曲げられ、傾斜構造体膜7の上部が基部49aに接合され、それにより基部49aと傾斜構造体膜7によって鋭角が構成される。つまり、傾斜構造体膜7を基部49aの表面に対して所定の角度だけ傾斜させることができる(図9(F))。この際、ヒンジ部11の幅を薄くしているため、傾斜構造体膜7が撓んだり湾曲することを抑制できる。
【0059】
傾斜構造体膜7の長さと傾斜構造体膜7と基部49aとの間隔を制御することにより、傾斜構造体膜7と基部49aとの角度を所望の角度となるように精度良く形成することができる。
【0060】
なお、傾斜構造体膜7となる第2の材料膜49に犠牲膜17とのエッチング選択比を持たせることができれば、傾斜構造体膜7及び犠牲膜17に種々の材料を用いることができるし、傾斜構造体膜自体に後述する分光機能(薄膜積層構造)や反射機能を持たせても良い。
【0061】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
<5.第5の実施形態>
図10は、本発明の第5の実施形態に係る分光センサーを示す模式図である。
図10に示す分光センサーは、受光素子を有する光学素子部10と、角度制御フィルター部20と、透過型分光フィルター部30とを具備している。
【0063】
光学素子部10が形成される半導体基板1には、フォトダイオード3を有する受光素子に所定の逆バイアス電圧を印加したり、受光素子において発生した光起電力に基づく電流を検知し、当該電流の大きさに応じたアナログ信号を増幅してデジタル信号に変換したりする電子回路(図示せず)が形成されている。
【0064】
<5−1.角度制御フィルター部20>
角度制限フィルター5は、フォトダイオード3が形成された半導体基板3上に形成されている。本実施形態の角度制限フィルター5においては、遮光体によって光路壁部が形成され、この光路壁部に囲まれた光路5aが形成されている。遮光体は、フォトダイオード3によって受光しようとする波長の光を実質的に透過しない材料によって構成され、半導体基板1上に、例えば格子状の所定パターンで複数層にわたって連続的に形成されることにより、遮光体の積層方向の光路5aを形成する。
【0065】
この遮光体によって形成された光路壁部によって、光路内を通過する光の入射角度が制限される。すなわち、光路内に入射した光が、光路の向きに対して所定の制限角度以上に傾いている場合には、光が遮光体に当たり、一部が遮光体に吸収され、残りが反射される。光路を通過するまでの間に反射が繰り返されることによって反射光が弱くなるので、角度制限フィルター5を通過できる光は、実質的に、光路に対する傾きが所定の制限角度未満の光に制限される。
【0066】
遮光体に囲まれた領域には、透光性(フォトダイオード3によって受光しようとする波長の光に対する透光性を言う。)を有する酸化シリコン等が形成されている。
【0067】
上述の態様においては、半導体加工技術を用いて、半導体基板1上に、格子状の所定パターンで複数層にわたって遮光体を形成することによって光路壁部が形成されるので、微細なパターンの形成が可能であり、小型の角度制限フィルターの製造が可能となる。また、部材を貼り合わせて分光センサーを構成する場合と比べて、製造プロセスを簡素化し、接着材による透過光の減少も抑制できる。
【0068】
<5−2.透過型分光フィルター部30>
透過型分光フィルター部30は、角度制限フィルター5上に形成された分光用積層薄膜9を有している。この分光用積層薄膜9は、酸化シリコン(SiO)等の低屈折率の薄膜と、酸化チタン(TiO)等の高屈折率の薄膜とを、半導体基板1に対して僅かに傾斜させて多数積層したものである。
低屈折率の薄膜及び高屈折率の薄膜は、それぞれ例えばサブミクロンオーダーの所定膜厚とし、これを例えば計60層程度にわたって積層することにより、全体で例えば6μm程度の厚さとする。
【0069】
低屈折率の薄膜及び高屈折率の薄膜の半導体基板1に対する傾斜角度θ及びθは、フォトダイオード3によって受光しようとする光の設定波長に応じて、例えば0[deg]以上30[deg]以下に設定する。
【0070】
低屈折率の薄膜及び高屈折率の薄膜を半導体基板1に対して傾斜させるために、例えば、角度制限フィルター5上に透光性を有する傾斜構造体膜7を形成し、傾斜構造体膜7の上に低屈折率の薄膜及び高屈折率の薄膜を成膜する。傾斜構造体膜7は、前述した第1〜第4の実施形態それぞれによる傾斜構造体の製造方法によって製造したものを用いることができる。なお、本実施形態では、傾斜構造体膜7の上に分光用積層薄膜9を形成しているが、これに限定されず、傾斜構造体膜7自体を分光用積層薄膜9として形成したものを用いても良い。また、フォトダイオードP/Daに入射される入射光4の透過型分光フィルター部30には傾斜構造体膜7が使われていない。
【0071】
このように、フォトダイオード3によって受光しようとする光の設定波長に応じて異なる傾斜角度θ及びθを有する傾斜構造体膜7を予め形成しておくことにより、低屈折率の薄膜及び高屈折率の薄膜は、フォトダイオード3によって受光しようとする光の設定波長によらず、同一の膜厚で、共通の工程により成膜することができる。
【0072】
以上の構成により、透過型分光フィルター部30は、角度制限フィルター5に所定の制限角度範囲内で入射する光4の波長を制限する。
すなわち、透過型分光フィルター部30に入射した入射光は、低屈折率の薄膜と高屈折率の薄膜との境界面において、一部は反射光となり、一部は透過光となる。そして、反射光の一部は、他の低屈折率の薄膜と高屈折率の薄膜との境界面において再度反射して、上述の透過光と合波する。このとき、反射光の光路長と一致する波長の光は、反射光と透過光の位相が一致して強めあい、反射光の光路長と一致しない波長の光は、反射光と透過光の位相が一致せずに弱めあう(干渉する)。
【0073】
ここで、反射光の光路長は、入射光の向きに対する低屈折率の薄膜及び高屈折率の薄膜の傾斜角度によって決まる。従って、上述の干渉作用が、例えば計60層に及ぶ低屈折率の薄膜及び高屈折率の薄膜において繰り返されると、入射光の入射角度に応じて、特定の波長の光のみが透過型分光フィルター部30を透過し、所定の出射角度(例えば、透過型分光フィルター部30への入射角度と同じ角度)で透過型分光フィルター部30から出射する。
【0074】
角度制限フィルター5は、所定の制限角度範囲内で角度制限フィルター5に入射した光のみを通過させる。従って、透過型分光フィルター部30と角度制御フィルター部20とを通過する光の波長は、低屈折率の薄膜及び高屈折率の薄膜の半導体基板1に対する傾斜角度θ及びθと、角度制御フィルター部20が通過させる入射光の制限角度範囲とによって決まる所定範囲の波長に制限される。
【0075】
<5−3.光学素子部10>
光学素子部10は、透過型分光フィルター部30及び角度制御フィルター部20を通過した光を受光して光起電力に変換する素子である。
図10には、透過型分光フィルター部30の傾斜角度θによって決まる波長の光を受光するためのフォトダイオードP/Dcと、傾斜角度θによって決まる波長の光を受光するためのフォトダイオードP/Dbと、傾斜角度0°によって決まる波長の光を受光するためのフォトダイオードP/Daとが図示されている。
【0076】
フォトダイオードは、半導体基板1にイオン注入等によって形成した各種の半導体領域を含んでいる。
【0077】
角度制御フィルター部20を通過してきた光がフォトダイオードで受光され、光起電力が発生することにより、電流が発生する。この電流を、電子回路(図示せず)によって検知することにより、フォトダイオードで受光した光を検知することができる。
【0078】
<5−4.第5の実施形態の製造方法>
ここで、第5の実施形態に係る分光センサーの製造方法について簡単に説明する。分光センサーは、最初に半導体基板1にフォトダイオード3を形成し、次に、フォトダイオード3の上に角度制御フィルター部20を形成し、次に、角度制御フィルター部20の上に透過型分光フィルター部30を形成することによって製造する。
本実施形態によれば、半導体プロセスによって一貫して製造することができ、素子(フォトダイオード)毎に所望の傾斜構造体を用いた透過型分光フィルター部を形成することができる。
【0079】
<6.第6の実施形態>
図11は、本発明の第6の実施形態に係る分光センサーを示す模式図であり、図10と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
図11に示す分光センサーは、受光素子を有する光学素子部10と、角度制御フィルター部20と、反射型分光フィルター部30aとを具備している。
【0080】
<6−1.角度制御フィルター部20>
角度制御フィルター部20は、反射型分光フィルター部30aの上方に形成されている。角度制御フィルター部20は、反射型分光フィルター部30aと離間して形成しても良いし、接触させて形成しても良い。
【0081】
<6−2.反射型分光フィルター部30a>
反射型分光フィルター部30aは、傾斜構造体膜7の上に形成された分光用積層薄膜9を有している。
【0082】
反射型分光フィルター部30aは、角度制限フィルター5から所定の制限角度範囲内で出射する光4の波長を制限する。
【0083】
入射光の入射角度に応じて、特定の波長の光のみが反射型分光フィルター部30aを反射し、所定の出射角度で反射型分光フィルター部30から出射する。
【0084】
反射型分光フィルター部30aと角度制御フィルター部20とを通過する光の波長は、低屈折率の薄膜及び高屈折率の薄膜の傾斜角度θ及びθと、角度制御フィルター部20が通過させる入射光の制限角度範囲とによって決まる所定範囲の波長に制限される。
【0085】
<6−3.光学素子部10>
光学素子部10は、角度制御フィルター部20を通過し、反射型分光フィルター部30aを反射した光を受光して光起電力に変換する素子である。
図11には、反射型分光フィルター部30aの傾斜角度θによって決まる波長の光を受光するためのフォトダイオードと、傾斜角度θによって決まる波長の光を受光するためのフォトダイオードとが図示されている。
【符号の説明】
【0086】
1…半導体基板、3…フォトダイオード、5…角度制限フィルター、5a…光路、7…傾斜構造体膜、9…分光用積層薄膜、11…ヒンジ部、13…第1の材料膜、13a…基板部、13b…軸部、17…犠牲膜、18…液体、19…第2の材料膜、20…角度制御フィルター部、25…薄膜、30…透過型分光フィルター部、30a…反射型分光フィルター部、33…第1の材料膜、33a…基板部、33b…狭軸部、45…第1の材料膜、45a…基板部、45b…狭軸部、45c…基底部、49…第2の材料膜、49a…基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部の上に形成された軸部と、
前記軸部の上面に一端が形成され、前記基板部に他端が接合された傾斜構造体膜と、
前記傾斜構造体膜に形成され、前記軸部の上面と前記軸部の側面によって構成される角部の上に位置され、前記傾斜構造体膜より膜厚の薄い薄膜部と、
を具備し、
前記傾斜構造体膜は、前記薄膜部で曲げられており、
前記基板部と前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成している傾斜構造体。
【請求項2】
基板部の上に形成された軸部と、
前記軸部の上面に一端が形成され、前記基板部に他端が接合された薄膜と、
前記薄膜の上に形成され、前記薄膜より膜厚の厚い傾斜構造体膜と、
を具備し、
前記傾斜構造体膜は、前記薄膜の他端の上に形成され、前記軸部の上面と前記軸部の側面によって構成される角部の上には形成されず、
前記薄膜は、前記角部の上で曲げられており、
前記基板部と前記薄膜及び前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成している傾斜構造体。
【請求項3】
基板部の上に形成された狭軸部と、
前記狭軸部の上面に一端が形成され、前記基板部に他端が接合され、前記狭軸部の幅より厚い膜厚を有する傾斜構造体膜と、
を具備し、
前記狭軸部は曲げられており、
前記基板部と前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成している傾斜構造体。
【請求項4】
基板部の上に形成された狭軸部と、
前記狭軸部の上面に形成され、前記狭軸部の幅より広い幅を有する傾斜構造体膜と、
前記基板部の上に形成された、前記狭軸部に対向する基底部と、
前記基底部の上面に形成され、前記傾斜構造体膜の上部が接合された基部と、
を具備し、
前記狭軸部は曲げられており、
前記基部と前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成している傾斜構造体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一項記載の傾斜構造体を用いて光の波長を制限する分光フィルター。
【請求項6】
通過する光の入射角度を制御する角度制御フィルターと、
前記角度制御フィルターを通過できる光の波長を制限する請求項5に記載の分光フィルターと、
前記角度制御フィルター及び前記分光フィルターを通過した光を検出する受光素子と、
を具備する分光センサー。
【請求項7】
基板部の上に軸部を形成し、
前記軸部の上面が露出し、且つ前記軸部の上面と接続する上面を有する犠牲膜を前記基板部の上に形成し、
前記軸部の上面及び前記犠牲膜の上面に傾斜構造体膜を形成し、
前記軸部の上面と前記軸部の側面によって構成される角部の上に位置する前記傾斜構造体膜の膜厚を薄く加工することにより、前記傾斜構造体膜に前記角部の上に位置する薄膜部を形成し、
前記傾斜構造体膜と前記基板部との間の前記犠牲膜を除去し、
前記傾斜構造体膜と前記基板部との間に液体を供給し、
前記液体を除去することにより、前記傾斜構造体膜を前記薄膜部で曲げ、前記傾斜構造体膜の端部を前記基板部に接合することで、前記基板部と前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成する傾斜構造体の製造方法。
【請求項8】
基板部の上に軸部を形成し、
前記軸部の上面が露出し、且つ前記軸部の上面と接続する上面を有する犠牲膜を前記基板部の上に形成し、
前記軸部の上面及び前記犠牲膜の上面に薄膜を形成し、
前記薄膜の上に傾斜構造体膜を形成し、
前記傾斜構造体膜及び前記薄膜を加工することにより前記犠牲膜を露出させ、
前記軸部の上面と前記軸部の側面によって構成される角部の上に位置する前記傾斜構造体膜を除去することにより、前記角部の上に位置する前記薄膜を露出させ、
前記薄膜と前記基板部との間の前記犠牲膜を除去し、
前記薄膜と前記基板部との間に液体を供給し、
前記液体を除去することにより、前記薄膜を前記角部の上で曲げ、前記薄膜の端部を前記基板部に接合することで、前記基板部と前記薄膜及び前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成する傾斜構造体の製造方法。
【請求項9】
基板部の上に狭軸部を形成し、
前記狭軸部の上面が露出し、且つ前記狭軸部の上面と接続する上面を有する犠牲膜を前記基板部の上に形成し、
前記狭軸部の上面及び前記犠牲膜の上面に、前記狭軸部の幅より厚い膜厚を有する傾斜構造体膜を形成し、
前記傾斜構造体膜と前記基板部との間の前記犠牲膜を除去し、
前記傾斜構造体膜と前記基板部との間に液体を供給し、
前記液体を除去することにより、前記狭軸部を曲げ、前記傾斜構造体膜の端部を前記基板部に接合することで、前記基板部と前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成する傾斜構造体の製造方法。
【請求項10】
基板部の上に、狭軸部及び該狭軸部に対向する基底部を形成し、
前記狭軸部及び前記基底部それぞれの上面が露出し、且つ前記狭軸部及び前記基底部それぞれの上面と接続する上面を有する犠牲膜を前記基板部の上に形成し、
前記狭軸部の上面及び前記犠牲膜の上面に、前記狭軸部の幅より広い幅を有する傾斜構造体膜を形成するとともに、前記基底部の上面に前記傾斜構造体膜に対向する基部を形成し、
前記狭軸部と前記基底部との間及び前記傾斜構造体膜と前記基板部との間それぞれの前記犠牲膜を除去し、
前記傾斜構造体膜と前記基部との間及び前記狭軸部と前記基底部との間に液体を供給し、
前記液体を除去することにより、前記狭軸部を曲げ、前記傾斜構造体膜の上部を前記基部に接合することで、前記基部と前記傾斜構造体膜によって鋭角を構成する傾斜構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−218453(P2011−218453A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86767(P2010−86767)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】