傾斜機能材料の製造方法及び装置
【課題】インクジェット方式の技術を用いた傾斜機能材料の製造方法、装置を提供する。
【解決手段】 Cuナノ粒子を含むCuインクをインクジェットヘッド50Cuから吐出されるCuナノ粒子インクの量と、インクジェットヘッド50Auから吐出されるAuナノ粒子を含むAuインクの量との比率を決定し、決定された比率にしたがってヘッド50Cu、ヘッド50Auからインクを吐出させて1つの層を形成し、基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層させ、最下層から最上層へ向かってCuインクの吐出量比率が減少するとともにAuインクの吐出量比率が増加し、かつ、Auインクに対するCuインクの相対的な吐出量比率が小さくなり、Cuインクに対するAuインクの相対的な吐出量比率が大きくなるように、Cuインクにおける各層間の吐出量、Auインクにおける各層間の吐出量、CuインクとAuインクとの各層間の相対的な吐出量比率を決定する。
【解決手段】 Cuナノ粒子を含むCuインクをインクジェットヘッド50Cuから吐出されるCuナノ粒子インクの量と、インクジェットヘッド50Auから吐出されるAuナノ粒子を含むAuインクの量との比率を決定し、決定された比率にしたがってヘッド50Cu、ヘッド50Auからインクを吐出させて1つの層を形成し、基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層させ、最下層から最上層へ向かってCuインクの吐出量比率が減少するとともにAuインクの吐出量比率が増加し、かつ、Auインクに対するCuインクの相対的な吐出量比率が小さくなり、Cuインクに対するAuインクの相対的な吐出量比率が大きくなるように、Cuインクにおける各層間の吐出量、Auインクにおける各層間の吐出量、CuインクとAuインクとの各層間の相対的な吐出量比率を決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は傾斜機能材料の製造方法及び装置に係り、特に、インクジェット方式の技術を用いて傾斜機能材料を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インク液滴をピエゾ素子のアクチュエータ等によりノズルから吐出し、紙等の記録媒体に着弾させて記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。近年のインクジェット記録装置では、ノズルの配列ピッチが高密度化されるとともに、数ピコリットルの微小なインク液滴が吐出可能になり、高解像度の画像を記録することが可能となっている。
【0003】
このようなインクジェット方式の装置を、画像記録以外の用途に用いる技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、セラミックス基板に無機結合材を含む貴金属インクを印刷し、その印刷領域にさらに貴金属のみからなるインクを上塗りした後、熱処理を施すことで導体を形成するセラミックス電子部品の製造方法が記載されている。
【0005】
このセラミックス基板上のインクは、熱処理によって、セラミックス基板に対して化学結合を生成してケミカルボンド成分として働くとともに、貴金属インクに対して拡散しあうことで、傾斜材料として機能する。
【0006】
この技術によれば、表面電極のセラミックス基板への固着強度を向上させながらも、導体の低効率を低く保つことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−88221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一つの材料の中で性質、機能、組成等が連続的もしくは多段階的になだらかに変化する傾斜機能材料が知られている。
【0009】
しかしながら、特許文献1は、基板と貴金属インクとの間に無機結合剤を含むインクを介在させて、基板との固着強度を確保しつつ貴金属単体なみの低い抵抗率を有する導体を形成する技術を開示しているものの、性質等が多段階的になだらかに変化する機能材料に関する開示はない。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、インクジェット方式の技術を用いた傾斜機能材料の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る傾斜機能材料の製造方法は、複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から前記第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料を製造する傾斜機能材料の製造方法であって、前記第1の材料を含む第1の機能性インクを第1のインクジェットヘッドに供給する工程と、前記第2の材料を含む第2の機能性インクを第2のインクジェットヘッドに供給する工程と、前記第1のインクジェットヘッドから吐出される第1の機能性インクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出される第2の機能性インクの量との比率を決定する制御工程と、前記決定された比率にしたがって前記第1のインクジェットヘッド及び/又は前記第2のインクジェットヘッドからインクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、前記形成工程を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層工程と、を含み、前記制御工程は、前記複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにインクの比率を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1のインクジェットヘッドから吐出される第1の機能性インクの量(体積)と第2のインクジェットヘッドから吐出される第2の機能性インクの量との比率(体積比率)を決定し、決定された比率にしたがってインクを吐出させて1つの層を形成する工程を繰り返して基材上に複数の層を積層し、複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにすることで、インクジェット方式の技術を用いて傾斜機能材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】傾斜機能を備えるバンプの図
【図2】バンプ作成装置の全体構成図
【図3】バンプ作成装置の描画部の概略図
【図4】描画混合法によるバンプ形成を説明するための図
【図5】バンプが形成されたICチップの実装後の状態で示す概略断面図
【図6】描画混合法の他の実施例を説明するための図
【図7】第2の実施形態に係るバンプ作成装置の全体構成図
【図8】混合インク法によるバンプ形成を説明するための図
【図9】エッジ部分に形成した撥液処理部を示す図
【図10】エッジ部分に形成したエッジ枠を示す図
【図11】基材とヘッドの関係を示す概略図ヘッドを示す図
【図12】インク層に発生する描画跡を示す図
【図13】描画跡への対策を説明するための図
【図14】描画混合法における各機能性インクの着弾位置を説明するための図
【図15】半乾燥状態を維持するための薬液付与を模式的に図示した説明図
【図16】混合層形成前に薬液を付与する薬液処理を模式的に図示した説明図
【図17】混合層形成後に薬液を付与する薬液処理を模式的に図示した説明図
【図18】混合層形成中に薬液を付与する薬液処理を模式的に図示した説明図
【図19】描画混合法において4種類の成分を用いたバンプ形成を模式的に図示した説明図
【図20】本発明のその他の実施形態に係る各機能性インクの着弾位置を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0015】
ここでは、ICウェハに形成されたICチップのパッド(電極)に対して、傾斜機能材料であるバンプを形成するバンプ作成装置について説明する。バンプとは、ICチップを直接プリント配線板に搭載する際に使用される、電気接続端子部に形成される半球形や台形状の金属突起である。
【0016】
通常、金(Au)は酸化しにくく安定した金属であり、柔らかいため、バンプのトップ面に使用される。しかし、価格が高いという欠点がある。
【0017】
これに対し、ICチップの電極に形成する膜としては、価格が安く、導電性が高く、現在の実装配線材料として一般的に用いられている銅(Cu)膜が適している。また、Auよりもマイグレーション耐性が優れている点でも、Cu膜を採用する利点がある。しかし、Cuは酸化しやすいという欠点があり、バンプのトップ面には適さない。
【0018】
したがって、図1に示すように、ICチップ21の電極22に作成されるバンプ23は、電極22側からトップ面へCuからAuに傾斜するように形成されることが好ましい。本実施の形態では、組成成分比がCu100%からAu100%となるバンプを描画混合法により作成する。描画混合法とは、複数(ここでは2種類)の純インク(100%の機能性インク)を描画により混合する方法である。なお、バンプの厚みは様々であるが、ここでは10μm程度とする。
【0019】
<第1の実施形態>
〔バンプ作成装置の構成〕
図2は、第1の実施形態に係るバンプ作成装置100の全体構成図であり、図3は、バンプ作成装置100の描画部10の概略図である。これらの図に示すように、バンプ作成装置100は、描画部10、焼結部70から構成され、描画部10は、フラットベッドタイプのインクジェット描画装置が用いられている。詳細には、描画部10は、基材であるICウェハ20が載置されるステージ30、ステージ30に載置されたICウェハ20を吸着保持するための吸着チャンバー40、ICウェハ20に向けて各インクを吐出するインクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Cu、を含み構成されている。
【0020】
ICウェハ20は、シリコンにより構成された平面略円形の板状部材であり、その表面には多数のICチップ21(図2、図3では不図示)が形成されている。
【0021】
ステージ30は、ICウェハ20の直径よりも広い幅寸法を有しており、図示しない移動機構により水平方向に自在に移動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ラックアンドピニオン機構、ボールネジ機構等を用いることができる。ステージ制御部43(図3では不図示)は、移動機構を制御することにより、ステージ30を所望の位置に移動させることができる。
【0022】
なお、インクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Cuを水平方向について自在に移動可能に構成し、固定されたICウェハ20に対してインクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Cuを移動させてもよいし、インクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Cu及びICウェハ20の両者を移動させてもよい。
【0023】
また、図3に示すように、ステージ30のウェハ保持面には多数の吸引穴31が形成されている。ステージ30下面には吸着チャンバー40が設けられており、この吸着チャンバー40がポンプ41(図3では不図示、図2参照)で真空吸引されることによって、ステージ30上のICウェハ20が吸着保持される。また、ステージ30はヒータ42(図3では不図示、図2参照)を備え、ヒータ42によりステージ30に吸着保持されたICウェハ20を加熱することが可能である。
【0024】
インクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Cuは、インクタンク60Au、インクタンク60Cu(図3では不図示、図2参照)から供給されるインクをICウェハ20の所望の位置に対して吐出するものであり、ここではピエゾ方式のアクチュエータを持つヘッドを用いている。インクジェットヘッド50Auと50Cuとは、図示しない固定手段により、それぞれができるだけ近づけて配置されて固定されている。
【0025】
インクタンク60Au、60Cuからインクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Cuに供給されるインクは、それぞれAuナノ粒子インク、Cuナノ粒子インクである。これらのインクは、それぞれの金属ナノ粒子を所定の有機溶剤に分散させたものである。なお、Cuナノ粒子インクは酸化しやすいため、バンプ作成装置100は、このCuナノ粒子インクの酸化を防止するために、窒素等の不活性ガス雰囲気中でバンプ作成を行うことが可能に構成されている。
【0026】
焼結部70は、ヒータを備えた炉であり、ICウェハ20を加熱することにより、描画部10によってICウェハ20上に形成されたバンプを焼結させることができる。
【0027】
〔バンプの作成〕
このように構成されたバンプ作成装置100を用いたバンプの作成について、図4を用いて説明する。
【0028】
まず、窒素雰囲気中に置かれた描画部10(図3参照)のステージ30上に、ICウェハ20を載置する。ICウェハ20は、裏面(ICチップ21が形成されていない面)がステージ30に接するように載置される。そして、吸着チャンバー40により、ICウェハ20のステージ30への吸着及び加熱を行う。ここでは、ウェハ20を70℃に加熱する。
【0029】
次に、吸着・加熱されたICウェハ20上に形成されているICチップ21の電極22の直上に、Cuナノ粒子インクを1層もしくは複数層分積層してCuナノ粒子インク層24−1を形成する。このCuナノ粒子インクの積層は、図4(a)に示すように、移動機構によりステージ30を移動させながら(図では左方向に移動)、インクジェットヘッド50Cuにより電極22に対してCuナノ粒子インクを吐出する。ここでは、インクジェットヘッド50Auからはインクの吐出を行わない。
【0030】
ここで、電極22はスパッタ法などにより形成された金属膜であるため、インクジェットヘッド50Cuにより吐出されたCuナノ粒子インクは、極端にぬれ広がって所望のパターンが形成できなかったり、コーヒー染み効果により膜中央の膜厚が薄くなりすぎたりして、適正な層を形成できない場合がある。
【0031】
このような現象は、本実施の形態のようにICウェハ20を加熱することにより低減することもできるが、さらに、ステージ30の1回の移動において、インクを全面に吐出させずに、ステージ30の1回の移動において着弾するドットとドットとの間隔を、所定のドット間隔(打滴格子間隔)よりも大きくして、ステージ30の複数回の移動により既に形成されたドット間を埋めていくように分割して吐出(間歇打ち)して1層を形成してもよい。
【0032】
このように形成したCuナノ粒子インク層24−1を、Cuナノ粒子インク中の溶剤成分を完全には蒸発しない程度に乾燥(半乾燥・半硬化)させる。具体的には、Cuナノ粒子インクの溶媒成分を完全に蒸発するように乾燥させるとき(全乾燥・全硬化)に与えるエネルギーよりも少ないエネルギーを与えて乾燥を行う。半乾燥状態では、Cuナノ粒子が隙間をもって積み重なっている状態となる。
【0033】
Cuナノ粒子インク層24−1を半乾燥状態にすることで、Cuナノ粒子インク層24−1に積層される混合層24−2(図4(b)参照)との境界における粒子の拡散が生じ、層間の密着性がより強固になる。
【0034】
次に、半乾燥状態となったCuナノ粒子インク層24−1の上に、Cuナノ粒子インクとAuナノ粒子インクとの混合層24−2を形成する。この混合層24−2の形成は、図4(b)に示すように、ステージ30を移動させながら、インクジェットヘッド50CuによりCuナノ粒子インクを吐出し、同時にインクジェットヘッド50AuによりAuナノ粒子インクを吐出して行う。
【0035】
このとき、Cuナノ粒子インクの吐出量(吐出体積)とAuナノ粒子インクの吐出量を、所望の比率(体積比率)に調整する。ここでは、Cuナノ粒子インクの吐出量が75%、Auナノ粒子インクの吐出量が25%となるように、インクジェットヘッド50Cuとインクジェットヘッド50Auとの各ノズルの吐出量を調整して吐出している。
【0036】
なお、Cuナノ粒子インク量とAuナノ粒子インク量との比率の調整は、描画のドット間ピッチ(ドット密度)によって調整してもよい。例えば、インクジェットヘッド50Cu及びインクジェットヘッド50Auの各ノズルの吐出量を一定としたまま、Cuナノ粒子インクを吐出するノズル数と、Auナノ粒子インクを吐出するノズル数との比率を75:25となるように、インクジェットヘッド50Cu及びインクジェットヘッド50Auの吐出を制御することにより、比率の調整を行うことも可能である。
【0037】
図4(c)に示すように、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを吐出させた後、それぞれの吐出量で吐出されたCuナノ粒子インクとAuナノ粒子インクとを拡散混合することにより、混合層24−2が積層される。
【0038】
Cuナノ粒子インク層24−1は半乾燥状態となっているため、その上に形成された混合層24−2のナノ粒子インクの溶媒はCuナノ粒子インク層24−1に受容されて、極端にぬれ広がることがない。
【0039】
即ち、ヒータ42による加熱温度は、インク(溶剤成分)の蒸発のしやすさにより調整する必要がある。溶剤の種類によっては、前述した70℃より低い温度、例えば、基板の温度を50℃程度にして描画してもよい。
【0040】
また、2つのインクジェットヘッド50Cu、インクジェットヘッド50Auはできるだけ近づけて配置されており、Cuナノ粒子インク又はAuナノ粒子インクの一方だけが乾燥して、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクの混合インクの層内での拡散混合が不十分になることが防止されている。
【0041】
なお、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを同時に吐出する際、インクジェットヘッド50Cuから吐出されるCuナノ粒子インクの液滴と、インクジェットヘッド50Auから吐出されるAuナノ粒子インクの液滴と、を飛翔中に空中で衝突させ、混合させてから着弾するようにしてもよい。
【0042】
さらに、詳細は後述するが、2つのインクジェットヘッド50Cu、インクジェットヘッド50Auはそれぞれのノズルが設けられる幅を1つのバンプパターンの幅(電極の幅)よりも大きく構成し、ステージ30の1回の移動により1つの層を形成することが好ましい。これにより、Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとが混ざりやすくなる。
【0043】
また、インクの拡散混合を促進するために、ステージ30を制御して基材であるICウェハ20を超音波処理してもよい。このとき、超音波による節が発生しにくくなるように、超音波の周波数をスイープさせたり、ICウェハ20の位置を変更しながら行うことが好ましい。
【0044】
このように形成した混合層24−2を、Cuナノ粒子インク層24−1と同様に半乾燥状態にすると、混合層24−2は量の比率が25:75のAuナノ粒子とCuナノ粒子が隙間をもって積み重なっている状態となる。
【0045】
次に、混合層24−2の上に混合層24−3を形成する。この混合層24−3の形成についても、図4(d)に示すように、ステージ30を移動させながら、インクジェットヘッド50Cuとインクジェットヘッド50Auとにより同時にインクを吐出する。ここでは、Cuナノ粒子インク、Auナノ粒子インクをともに50%の比率で吐出している。
【0046】
混合層24−2についても半乾燥状態となっているため、その上に形成された混合層2
4−3のナノ粒子インクの溶媒は、混合層24−2に受容される。インク吐出後、図4(e)に示すように、2つのインクを拡散混合することにより、混合層24−3が積層される。
【0047】
さらに、混合層24−3についても半乾燥させる。混合層24−3は量の比率が50:50のAuナノ粒子とCuナノ粒子が隙間をもって積み重なっている状態となる。
【0048】
このように、Cuナノ粒子インクとAuナノ粒子インクの吐出量の比率を段階的に(傾斜するように)変更しながら各混合層を形成し、最後にAuナノ粒子インク100%の層を形成する。
【0049】
全ての層の形成終了後、焼結部70において、窒素雰囲気中にて220℃程度で焼結させる。これにより、各層のナノ粒子が結晶化するとともに、各層の拡散が進み、段階的に形成した層が連続的となる。その結果、図1に示すように、組成成分比がCu100%からAu100%となるバンプ23が形成される。
【0050】
このように、下の層を半乾燥状態として上の層を形成することにより、その上下の層において、拡散がある程度進むようにしておく。このとき、上下の層の界面が無くなる状態、すなわち、完全に拡散混合して上下層の区別が無くなる状態とはならないようにする。
【0051】
なお、各層の形成が終わったあとに、ICウェハ20のICチップ21として機能していない領域にダミーパターンを積層し、レーザを用いた光学式変位センサ等によりダミーパターンの高さを測定してもよい。乾燥が進んでおらず、溶媒が残っている状態では、膜厚が高くなることから、ダミーパターンの高さにより乾燥状態を検出することができる。
【0052】
このようにバンプ23が形成されたICウェハ20は、ダイシング加工によりICチップ21毎にダイシングされ、ダイシングされたICチップ21はいわゆるフリップチップ実装により実装基板等に実装される。
【0053】
図5は、バンプ23が形成されたICチップ21の実装後の状態で示す概略断面図である。ICチップ21の電極22とプリント基板25の電極26とは、バンプ23を介して電気的に接続され、さらにモールド樹脂27により封止されている。
【0054】
バンプ23のボトム面(電極22側の面)はCuで構成されているため、ICチップ21の電極22とマイグレーション現象への耐性を高くして接続されている。また、バンプ23のトップ面(電極22と反対側の面)はAuから構成されているために実装が容易となり、プリント基板25の電極26と低抵抗で適切に接続される。
【0055】
以上説明したように、インクジェットヘッドを用いて傾斜機能材料であるバンプを形成することができる。また、本実施形態の描画混合法によれば、形成する層の数にかかわらず、機能性インクの種類とインクジェットヘッドの個数が少なくて済むという利点がある。Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合層は、それぞれのインクの混合比率が段階的に傾斜されるように形成されれば、何層積層してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、インクジェットヘッド50Cuとインクジェットヘッド50Auとにおいて、同時にCuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを吐出して各層を形成したが、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを順に吐出してもよい。
【0057】
例えば、混合層24−2を形成する場合に、図6(a)に示すように、まずインクジェットヘッド50CuによりCuナノ粒子インク層24−1の上の全面にCuナノ粒子インクを吐出する。
【0058】
次に、図6(b)に示すように、インクジェットヘッド50AuによりAuナノ粒子インクを全面に吐出する。その後、図6(c)に示すように、それぞれのインクを拡散混合することで、同様に混合層24−2を形成することができる。
【0059】
このように、それぞれのインクを順に吐出して1つの層を形成する場合であって、2つのインクの吐出量に差がある場合、即ち、2つのインクの吐出量の比率が50%ずつでない場合は、吐出量の多い方のインクを先に吐出するように構成してもよい。
【0060】
特に、先に吐出するインクの乾燥が激しい場合(後に吐出するインクの乾燥に対して先に吐出するインクの乾燥が速く進行する特性を有する場合)等は、吐出量が少ないほど乾燥の進行が早まるため、吐出量が多い方のインクを先に吐出することが好ましい。これにより、2種類のインクの拡散混合をスムーズに進ませることができる。
【0061】
さらにこの場合、後から吐出することになる吐出量の少ない方のインクについては、所定のサイズよりも小さい液滴によってドットピッチ密度を高くして吐出してもよい。これにより、拡散混合する時間を短くすることができる。
【0062】
また、先に吐出したインクを着弾させた位置に、後から吐出するインクを重ねて着弾させるようにしてもよい。特に、間歇打ちを行ってドットとドットが離れている場合に、先に吐出したインクと同じ位置に乾燥させる前に着弾させると、それぞれのインクの拡散混合がしやすくなる。
【0063】
なお、間歇打ちと2ヘッドによる同時打滴を併用して、混合されるインク(ドット)を同時に着弾させる態様も可能である。また、ドット間の着弾干渉を防止するために、離散的に配置されたドット(2種類のインクが十分に拡散されたドット)を乾燥させながら、離散的に配置されたドット間を埋めるドットが形成される態様が好ましい。
【0064】
離散的に配置されたドットを乾燥させる具体例として、後から付与されるインクを加熱しておく形態が挙げられる。2ヘッドを十分に近接して配置することで、より高い効果を得ることができる。
【0065】
例えば、混合層24−2を形成する際に、1回目の走査でインクジェットヘッド50CuによりCuナノ粒子インクを間歇打ちにより吐出したとする。図14(a)は、Cuナノ粒子インク層24−1上に着弾したCuナノ粒子インク24−2−Cu―1を示す。
【0066】
次に、2回目の走査でインクジェットヘッド50AuによりAuナノ粒子インクを間歇打ちにより吐出する。このとき、インクジェットヘッド50Auは、図14(b)に示すように、吐出されたAuナノ粒子インク24−2−Au−1が、1回目の走査で着弾されているCuナノ粒子インク24−2−Cu−1と同じ位置に重ねて着弾するように吐出する。
【0067】
さらに、3回目の走査でインクジェットヘッド50CuによりCuナノ粒子インクが間歇打ちされる。図14(c)は、Cuナノ粒子インク24−2−Cu−1の間に着弾されたCuナノ粒子インク24−2−Cu−2を示す。
【0068】
その後、4回目の走査では、インクジェットヘッド50Auにより、Auナノ粒子インクがCuナノ粒子インク24−2−Cu−2と同じ着弾位置に重ねて着弾されるように吐出させる。図14(d)に示すように、吐出されたAuナノ粒子インク24−2−Au−2が、2回目の走査で着弾されているCuナノ粒子インク24−2−Cu−2と同じ位置に重ねて着弾するように吐出する。
【0069】
以後同様に、Cuナノ粒子インク層24−1の全面にインクを吐出し、その後、拡散混合させる。このように、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを吐出することにより、混合層24−2を形成する際の拡散混合の時間を短縮することができる。
【0070】
また、2種類のインクのうち一方のインクの乾燥の進行が速い場合は、当該一方のインクを後から吐出するようにしてもよい。
【0071】
なお、2種類のインクのうち一方のインクをインクジェット方式以外の方法で塗布し、他方のインクのみインクジェット方式で吐出してもよい。例えば、各混合層におけるインクの混合比率が、99:1、98:2、97:3、96:4、95:5といったように、量の比率に大きな差がある範囲で傾斜する場合に、少ない比率の方の機能性インクをインクジェット方式を用いて吐出することにより、効率的に傾斜機能材料を形成することができる。
【0072】
なお、インクジェット方式以外の塗布方法としては、ドクターブレード、スリットコート、スピンコート、スプレーコート、スクリーン印刷等を採用することができる。
【0073】
また、本実施形態では、Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクの2つの純インクを用いて各混合層を形成したが、これらを拡散混合したインクを併用してもよい。例えば、2つの純インクと、Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合比率が50:50の混合インクとの3種類のインクを同時に用いて混合層を形成することが考えられる。
【0074】
混合インクの分だけインクジェットヘッドの数が増加するが、混合インクは予め2つの純インクが十分拡散混合されているため、インク吐出後の拡散混合に要する時間を短縮することができる。
【0075】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。第1の実施形態では、複数の純インクを吐出して描画により拡散混合する描画混合法によって、傾斜機能材料であるバンプの各層を形成したが、第2の実施形態では、予め拡散混合した混合インクを吐出することにより各層を形成する。
【0076】
〔バンプ作成装置の構成〕
図7は、第2の実施形態に係るバンプ作成装置101の全体構成図である。同図に示すように、本実施形態に係るバンプ作成装置101は描画部11を備え、描画部11は、5種類のインクを貯蔵するインクタンク60−1〜60−5と、各インクタンク60−1〜60−5からインクが供給されるインクジェットヘッド50−1〜50−5を備えている。各インクジェットヘッド50−1〜50−5は、各インクタンク60−1〜60−5から供給されるインクをICウェハ20に対して吐出する。
【0077】
各インクタンク60−1〜60−5から各インクジェットヘッド50−1〜50−5に供給されるインクは、Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合比率がそれぞれ0:100、25:75、50:50、75:25、100:0となっている。即ち、インクタンク60−1からはCuナノ粒子インクの純インクが、インクタンク60−5からはAuナノ粒子インクの純インクが、60−2〜60−4からはAuナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとが所定の比率で拡散混合された混合インクが供給される。
【0078】
〔バンプの作成〕
第1の実施形態と同様に、ステージ30上にICウェハ20を載置し、吸着及び加熱を行う(図3参照)。
【0079】
次に、吸着・加熱されたICウェハ20上に形成されているICチップ21の電極22の直上に、Cuナノ粒子インクを1層もしくは数層分積層してCuナノ粒子インク層28−1を形成する。このCuナノ粒子インクの積層は、図8(a)に示すように、移動機構によりステージ30を移動させながら(図では左方向に移動)、インクジェットヘッド50−1により電極22に対してインクタンク60−1から供給されるインク(Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合比率が0:100のCuナノ粒子インクの純インク)を吐出する。このとき、その他のインクジェットヘッド50−2〜50−5からはインクの吐出を行わない。
【0080】
したがって、このように形成されたCuナノ粒子インク層28−1は、図4(a)〜(e)に示すCuナノ粒子インク層24−1と同様の層となる。ここで、Cuナノ粒子インク中の溶媒が蒸発する程度に乾燥(半乾燥・半硬化)させると、Cuナノ粒子が隙間をもって積み重なっている状態となる。
【0081】
次に、Cuナノ粒子インク層28−1の上に、インクジェットヘッド50−2によりインクタンク60−2から供給される混合インク(Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合比率が25:75の混合インク)を吐出して、混合層28−2を形成する。
【0082】
混合層28−2の形成は、図8(b)に示すように、ステージ30を移動させながら、インクジェットヘッド50−2により混合インクを吐出する。第1の実施形態と同様に、Cuナノ粒子インク層28−1が半乾燥状態であるため、その上に形成された混合層28−2のナノ粒子インクの溶媒がCuナノ粒子インク層28−1に受容されて、極端にぬれ広がることがない。したがって、加熱温度はインクの蒸発のしやすさにより調整する必要がある。
【0083】
この混合層28−2についても半乾燥させることで、混合層28−2はAuナノ粒子及びCuナノ粒子が隙間をもって積み重なっている状態となる。
【0084】
さらに、混合層28−2の上に、インクジェットヘッド50−3によりインクタンク60−3から供給される混合インク(Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合比率が50:50の混合インク)を吐出して、混合層28−3を形成する。
【0085】
混合層28−2が半乾燥状態であるため、その上に形成された混合層28−3のナノ粒子インクの溶媒は、混合層28−2に受容される。さらに、混合層28−3についても半乾燥させる。
【0086】
このように、各混合インクをCuナノ粒子インクの混合比率が多い順(Auナノ粒子インクの混合比率が少ない順)に吐出して各混合層を積層し、最後にインクジェットヘッド50−5によりインクタンク60−5から供給されるAuナノ粒子インク(Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合比率が100:0のAuナノ粒子インクの純インク)を吐出して、Auナノ粒子インク100%の層(Auナノ粒子インク層28−5)を形成する(図8(c))。
【0087】
全ての層28−1〜28−5を形成終了後、焼結部70において窒素雰囲気中にて220℃程度で焼結させることにより、各層のナノ粒子が結晶化する。その結果、図1に示すような組成成分比がCu100%からAu100%となるバンプ23が形成される。このバンプ23により、図5に示すようにICチップ21をプリント基板25に実装することができる。
【0088】
以上説明したように、混合インクを用いて、傾斜機能材料を形成することができる。本実施形態のインク混合法によれば、インクの段階で充分に拡散混合されているため、機能の傾斜の変化の精度が高い傾斜機能材料を作成することができる。また、第1の実施形態の描画混合法と比較すると、2種類の機能性インクを拡散混合する時間が不要となるため、プロセス時間が短くて済むという利点がある。
【0089】
また、各混合層を形成する際に、複数回にわたって基材とインクジェットヘッド50−1〜50−5とを相対移動させて、1回の相対移動において間歇打滴を行ってドットを離散的配置させ、後からの相対移動において該離散的に配置されたドット間を埋めるように構成してもよい。
【0090】
かかる態様では、各層を構成するドット(インク)の着弾干渉が防止され、各層の形状の変形が防止される。そうすると、各層の変形に起因するコーヒー染み(コーヒーリング)の発生が防止される。
【0091】
本実施形態では、Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合層を3層形成したが、層の数はこれに限定されるものではなく、それぞれのインクの混合比率が傾斜されるように積層できれば何層でもよい。なお、形成する層の数だけインクタンクとインクジェットヘッドを用意する必要がある。
【0092】
<その他の変形例>
上記のように、本発明の一実施形態としてバンプの作成を例に説明したが、本発明に係る傾斜機能材料の製造方法、装置は、様々な変形例を有する。
【0093】
〔生成可能な傾斜機能材料〕
上記のバンプ作成装置では、マイグレーション耐性を持つCuから酸化しにくいAuへの傾斜機能を持つバンプを作成したが、本発明で生成可能な傾斜機能材料はこのような傾斜機能に限定されるものではなく、変化が人工的に構造化され、制御されている材料が生成可能である。
【0094】
具体的には、材料を構成する元素の組成、分子の組成、結晶構造、分子結晶構造、結晶配向、粒径、粒界、結合状態等が、連続的もしくは多段階的に変化する傾斜機能材料が生成可能である。
【0095】
機能としては、高耐熱性から高機械適正へ、絶縁性から導電性へ、高屈折率から低屈折率へ、金属光沢性から低反射性へ、高硬度から高密着性へ、生体適正から人工物適性へ、塑性から高硬度、撥水性から親水性へ等が生成可能である。
【0096】
また、成分としては、無機物から有機物へ、高分子量から低分子量へ、高密度膜から低密度膜へ、金属材料から絶縁材料へ、磁性から非磁性へ等が生成可能である。
【0097】
本発明によれば、インクジェット方式のヘッドを用いて、下層から上層へ向かって性質、機能、組成等が連続的に又は段階的に変化する傾斜機能材料を生成することができる。また、本発明により生成した傾斜機能材料は、電子デバイス部品、機械部品、医療部品として利用することができる。
【0098】
〔基材〕
本実施の形態では、平面板状部材であるシリコンのウェハ上に傾斜機能材料を生成しているが、基材はこれに限定されるものではない。
【0099】
例えば、リジッドな平板状物として、シリコンウェハ以外にもガラス板やガラスエポキシ基板、機械部品となる金属板等を用いることができる。
【0100】
また、フレキシブルな平板状物として、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、液晶ポリマー等の有機フイルムやインクジェット受容紙等の紙等を用いることができる。このような平板状のフレキシブル性のある基材を用いる場合には、ロール・トゥ・ロールで使用するドラムに固定して、傾斜機能材料を生成してもよい。
【0101】
また、立体物として、光学部品のレンズ、携帯電話のような筐体の表側あるいは裏側、ギア等の機械部品、歯のインプラントの部品、複雑な形状をもつ基材等を用いることができる。立体的な基材を用いる場合には、基材とインクジェットヘッドのノズルとの距離を一定に保つ機構を備えることが好ましい。また、基材の形状に応じたインク吐出を行ってもよい。例えば、円柱状の基材であれば、基材を回転させながらインクを吐出することにより、効率よく傾斜機能材料を生成することができる。
【0102】
このように、材質としてはガラス、半導体、金属、有機物等、いずれであっても可能である。プリント基板(ガラスエポキシ基板)の複合材料や、インクジェット受容紙のような積層材料でもよい。
【0103】
また、生成する傾斜機能材料は、基材の表面に膜として形成するだけでもよい。
【0104】
溶剤タイプのインクの場合、内容物(微粒子など)を受容層の最表面に残して、溶剤を吸収してしまうことができる。例えば、Agナノ粒子インクの場合には、受容層が溶剤を吸収するときにAgナノ粒子インク中の分散剤に影響を与えて、低温で導電性を発現することがあり、加熱処理が不要となる場合がある。
【0105】
〔基材の状態及び描画前処理〕
撥液性を有する基材の場合、機能性インクで最下層を描画することが難しい。このような場合には、機能性インクをはじかない程度に基材の表面を親液性の方向に改質してもよい。
【0106】
この濡れ性の改質方法としては、UVオゾン処理、O2アッシング、コロナ放電処理、下地層塗布、薄膜形成等が採用できる。このうち、下地層には、ポリイミド等の有機膜、ガラスコート等を用いることができる。
【0107】
また、化学的処理を行ってぬれ製の改質を行ってもよい。例えば、ポリエチレン基材を硫酸クロム酸混合液に浸すことにより、親水化させることができる。また、撥水性の強いテフロン(登録商標)基材をNa/NH3混合液に浸漬することで、表面が酸素修飾し、親水化させることができる。
【0108】
さらに、シラン系カップリング剤によれば、様々な基材に対して、官能基の種類によって親有機溶媒化させたり、親水化させたりすることができる。
【0109】
また、シリコン基材であれば、熱酸化膜を形成して水系溶液に対して親水化させたり、HF処理により、撥水化させることができる。
【0110】
有機フイルム基材であれば、石英水銀灯などを用いてUV照射処理をすることにより、表面に酸素が修飾され、親水化させることができる。
【0111】
また、プラズマ表面処理を行ってもよい。真空のチャンバーにAr、N2、O2、CF4、C2F6等のガスを導入してプラズマ表面処理を行うと、表面の油分を除く洗浄効果や表面との反応の効果により、親水化、撥水化させることができる。なお、真空チャンバーを利用しない大気圧プラズマ処理を行ってもよい。この場合、真空を利用しないため、簡易に表面を改質することができる。
【0112】
さらに、ゾルゲル法、スパッタ、プラズマCVD等により酸化チタン等の光触媒の膜を形成し、紫外線を照射することにより超親水化させることもできる。光触媒の膜をパターニングしたり、マスクを用いて選択的に照射したりすることにより、1つの基材上において親撥のパターニングを行ったものと同様の効果を得ることもできる。
【0113】
その他の描画前処理として、基材表面に密着性を増すための層を塗布してもよい。例えば、ラテックスなどの有機物、密着性に優れた金属種等が採用できる。
【0114】
それとは逆に、生成した傾斜機能材料を独立した小部品として使用する場合や、他の基材に転写して使用する場合には、基材と生成した傾斜機能材料とが容易に分離可能となるように、密着力が弱くなるような処理をしてもよい。
【0115】
密着力を弱くするためには、完全には撥液しない範囲において、溶液と基材表面がぬれにくい方向に調整すればよい。このように生成するには、バッファ層(離型層)を導入することが考えられる。予め、基材にぬれにくく、機能性インクともぬれにくいバッファ層となる膜を基材表面にコーティングしておくことにより、傾斜機能材料の生成後、バッファ層と基材とが剥がれるようになる。
【0116】
例えば、PET等の基材上に、有機フイルムのポリエチレングリコールの薄い膜を形成しておき、水系の機能性インクで傾斜機能材料を作成すればよい。
【0117】
基材の全面に傾斜機能材料を生成するのではなく、基材の特定部分にパターニングする場合には、基材に付着した機能性インクが、そのパターンのエッジから大きくはみ出さないように、予め基材表面に、親液性、撥液性のパターニングを行ってもよい。
【0118】
親液性、撥液性のパターニングの方法としては、各種印刷技術、フォトリソグラフィ技術、レーザーダイレクトイメージング、光触媒技術の応用などがあり、さらに適宜それらを組み合わせて使用することも可能である。
【0119】
また、基材に付着した機能性インクが、そのパターンのエッジから大きくはみ出さないようにするためには、その他にインクジェット描画の前に、予め枠による凹状の領域を設けてから、描画してもよい。この場合、枠の側面に親液性を付与して濡れ性を高めておいてもよい。さらに、枠の上面の撥液性を高めて、インクがはみ出さないようにしてもよい。
【0120】
基材には、受容層があってもよく、その受容層を必要なところにだけパターニングしておいてもよい。また、これらの方法を併用してもよい。
【0121】
〔撥液処理枠〕
上の層を形成した後に、上の層のインクが下の層のエッジ部分からこぼれ落ちたり、はみ出したりすると、層の高さが不均一になり、機能材料として不具合を生じる可能性がある。このような現象を防止するために、下の層を形成した後に、その層のエッジ部分を、次に形成する上の層のインクに対して撥液性にしてもよい。
【0122】
図9(a)は、ICチップ21の電極22の直上にインク層80−1を形成後、そのエッジ部分に撥液処理部81を形成したときの上面図、及び破線A−Aにおける断面図である。また、図9(b)は、その後インク層80−1の上にインク層80−2を形成したときの上面図、及び破線A−Aにおける断面図である。
【0123】
図9に示すように、インク層80−1の表面に吐出されたインク層80−2を形成するインクは、インク層80−1のエッジ部分に形成された撥液処理部81により、撥液処理部81の外側にはみ出すことがない。したがって、インク層80−1の上層に適切にインク層80−2を形成することができる。
【0124】
撥液処理部81を形成するには、フォトマスクを用いたパターニングや、ダイレクトレーザーイメージング、レーザを走査する方法や、インクジェットによるパターニング、スクリーン印刷等の各種印刷技術を利用できる。
【0125】
このように、インク層のエッジ部分を撥液性にすることで、精度の高い傾斜機能材料を形成することができる。
【0126】
〔エッジ枠〕
上の層のインクが下の層のエッジ部分からこぼれ落ちたり、はみ出したりすることを防止するために、撥液処理ではなく、エッジ部分に凸状の枠を設ける処理を行ってもよい。
【0127】
図10(a)は、ICチップ21の電極22の直上にインク層82−1を形成後、そのエッジ部分にエッジ枠83−1を形成したときの上面図、及び破線A−Aにおける断面図である。
【0128】
エッジ枠83−1の生成には、インクジェットによるパターニングや、スクリーン印刷などの各種印刷技術を利用可能である。インクジェットによるパターニングを用いる場合には、UVモノマーインクを用いてパターンを形成し、その直後に露光を行って硬化させて生成する方法が有効である。
【0129】
ここで、「モノマーインク」とは、機能性モノマー(重合性化合物)を主成分とするインクであり、界面活性剤、重合開始剤、重合禁止剤、モノマー以外の溶剤などが含まれていてもよい。また、顔料、金属ナノ粒子、セラミック粒子などの微粒子を分散させてもよいし、機能性ポリマーなどを溶解させてもよい。
【0130】
図10(b)は、図10(a)に示したインク層82−1の上に、インク層82−2を形成したときの上面図、及び破線A−Aにおける断面図である。
【0131】
同図に示すように、インク層82−1の表面に吐出されたインク層82−2を形成するインクは、インク層82−1のエッジ部分に形成されたエッジ枠83−1により、エッジ枠83−1の外側にはみ出すことがない。したがって、インク層82−1の上層に適切にインク層82−2を形成することができる。
【0132】
さらに、図10(c)は、図10(b)に示す状態から、エッジ枠83−2、83−3を形成しながらインク層82−3、82−4を形成し、さらにエッジ枠83−4を形成したときを示す断面図である。
【0133】
このエッジ枠83−4により、インクがはみ出すことなく、インク層82−4の上にさらにインク層を形成することができる。
【0134】
このように、インク層のエッジに逐次枠を設けてからその上のインク層を形成していくことで、インク層が多層の場合や、パターンが複雑な場合であっても、精度の高い傾斜機能材料を形成することができる。
【0135】
〔スピンコートの併用〕
基材の全面に傾斜機能材料を形成する場合等、各層を形成後に、スピンコートを行ってから次の上の層を形成してもよい。スピンコートを併用することにより、層の高さを薄膜化して層厚を調整し、基材面内の層の高さを均一化することが可能となる。また、単純にスピンコートにより傾斜機能材料を形成するよりも、インクジェット方式の技術を併用することにより、省液化が可能となる。
【0136】
なお、インクジェット方式により全層を積層した後に、スピンコートしてもよい。これにより、上記と同様の効果が得られる場合もある。
【0137】
〔半乾燥〕
本発明においては、下側に形成された層の上にインクを吐出して上側の層を形成する際、下の層がインク中の溶剤成分が完全には蒸発していない程度に乾燥(半乾燥)されていることが重要となる。
【0138】
乾燥の速いインクを用いており、吐出後にすぐに乾燥してしまう場合には、上の層を形成する直前に、下の層の乾燥程度を緩和するような薬液処理を施してもよい。図15(a)に示すように、Cuナノ粒子インク層24−1に混合層24−2が積層されると、図15(b)に示すように、混合層24−2の完全硬化を抑制するために、インクジェットヘッド50Sから混合層24−2の表面へ薬液24’が付与される。
【0139】
そうすると、薬液24’を付与しない場合に比べて、混合層24−2の乾燥の進行を遅らせて、好ましい半乾燥状態を維持したまま、次の層を形成しうる。図15(c)は、混合層24−2の表面に、次の混合層を形成するためのCuナノ粒子インク及びAuナの粒子インクを吐出させる状態が図示されている。
【0140】
例えば、薬液24’として溶剤インクが適用される場合であれば、その溶剤を予め下の層に塗布しておいてもよいし、その溶剤に浸漬してもよい。また、同じ溶剤でなくとも、水系インクの場合であれば水やアルコール、溶剤インクの場合であれば同様の極性や分子量をもつ溶剤を用いてもよい。
【0141】
さらに、上の層を形成する直前でなく、上の層を形成した後に、下の層の乾燥を緩和するような薬液処理をしてもよい。このような処理は、上の層からも薬液が浸透するため有効である。また、上下の層で同じ溶剤、もしくは下の層のコンテンツを溶解するような溶剤を上の層のインクに使用してもよい。
【0142】
さらに、当該薬液処理は、混合層を構成する複数のインク間(層内)における拡散を促進させる。図16から図18は、形態別の薬液処理を模式的に図示した説明図である。図16(a)から(c)は、混合層の形成に先立って薬液を付与する形態、図17(a)から(c)は、混合層の形成後に薬液を付与する形態、図18(a)から(c)は、混合層の形成中に薬液を付与する形態が図示されている。
【0143】
図16(a)は、Cuナノ粒子インク層24−1の表面にインクジェットヘッド50Sから薬液24’が付与される状態である。図16(b)は、Cuナノ粒子インク層24−1の表面に薬液24’が付与された状態で、インクジェットヘッド50CuからCuナノ粒子インクが付与される状態であり、図16(c)は、Cuナノ粒子インクが付与された状態で、インクジェットヘッド50AuからAuナノ粒子インクが付与される状態である。
【0144】
図16(c)に図示された状態では、Cuナノ粒子インク層24−1の表面近傍に薬液が受容されている。
【0145】
このようにして、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクによる混合層の形成に先立ち、薬液24’を付与しておくことで、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクの乾燥が抑制されるとともに、当該混合層内においてCuナノ粒子とAuナノ粒子との拡散を促進させることができる。
【0146】
また、下層(Cuナノ粒子インク層24−1)の乾燥の進行が緩和されるとともに、当該混合層(上層)との境界近傍における層間の拡散も生じるので、下層と上層との密着性が強化される。
【0147】
図17(a)は、Cuナノ粒子インク層24−1の表面にインクジェットヘッド50CuからCuナノ粒子インクが付与される状態であり、図17(b)は、Cuナノ粒子インク上にインクジェットヘッド50AuからAuナノ粒子インクが付与される状態である。
【0148】
図17(c)は、混合層を形成するCuナノ粒子インクとAuナノ粒子インクが付与された後に、インクジェットヘッド50Sから薬液24’が付与される状態である。このようにして、混合層を構成するCuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを付与した後に薬液24’を付与することで、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクの乾燥を抑制しつつ(仮に、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクの乾燥が進行したとしても、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを薬液により溶かしながら)、当該混合層内においてCuナノ粒子とAuナノ粒子との拡散を促進させることができる。
【0149】
また、当該混合層(次の混合層形成における下層)の乾燥の進行が緩和され、好ましい半乾燥状態が維持されるとともに、次に形成される上層との境界近傍において生じる層間の拡散により、当該上層との密着性が強化される。
【0150】
図18(a)は、Cuナノ粒子インク層24−1の表面にインクジェットヘッド50CuからCuナノ粒子インクが付与される状態である。図18(b)は、Cuナノ粒子インクの上にインクジェットヘッド50Sから薬液24’が付与される状態であり、図18(c)は、薬液24’が付与されたCuナノ粒子インクの上にインクジェットヘッド50AuからAuナノ粒子インクが付与される状態である。
【0151】
このようにして、混合層を形成する途中で薬液24’を付与することで、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクの乾燥を抑制しつつ、当該混合層内においてCuナノ粒子とAuナノ粒子との拡散を促進させることができる。
【0152】
上記のような薬液の塗布には、インクジェット方式のヘッドを用いることが好ましい。同じ装置内で塗布できるため構成がシンプルになるとともに、インクジェットの省液性により薬液の使用量が少なくて済むという利点がある。
【0153】
また、下の層の形成が終わった段階、もしくはその途中で、溶剤の乾燥程度を測定して、上の層の形成にフィードバックしてもよい。例えば、レーザ等により層のラフネスや反射強度を測定し、乾燥の目安とする。
【0154】
機能材料として用いない領域や、別途測定用のダミー領域を設け、その領域に接触することにより乾燥程度の測定を行ってもよい。また、吸収する繊維や紙を膜に接触させて、溶剤インクの吸収程度により乾燥程度を判断してもよい。乾燥程度の判断により、次の層の吐出のタイミングを決定し、下の層の更なる硬化を行う。
【0155】
紫外線の照射により硬化させるUVモノマーインク等の場合であれば、完全に硬化させるために必要な露光量よりも少ない露光量で照射し、上下層の拡散を促進させてもよい。また、UVモノマーインクの硬化は、層の形成が終わった後に全体を露光してもよいし、ヘッドやステージの走査に沿って同時に走査可能なUV−LED等のコンパクトなUV露光源を用いて、液滴の着弾直後に硬化させてもよい。
【0156】
UVモノマーインクは、加熱しても溶媒の蒸発が起こりにくい性質を有しているので、モノマーインクが用いられる場合には、加熱により層内及び層間の拡散を促進させることが可能である。
【0157】
なお、精密なパターンを形成する場合は、液滴の着弾直後に露光する方法が適している。UVモノマーインクを用いた場合も、上述の溶剤インクの場合と同様に、乾燥程度、固化程度を測定してもよい。
【0158】
UVモノマーインクなどのモノマーインクを用いる場合には、蛍光を利用して硬化度を測定する形態もありうる。
【0159】
〔描画部の装置構成〕
本実施の形態では、描画部にフラットベッドタイプのインクジェット描画装置が用いられているが、装置の構成についてもこれに限定されるものではない。
【0160】
まず、基材をセットする部位は、フラットベッドタイプの他、ドラムタイプでもよく、ベルト搬送であってもよい。また、インクジェットヘッドと基材とが相対的に移動すればよい。したがって、本実施形態のようにヘッドを固定して基材を稼動させる場合に限られず、基材を固定してインクジェットヘッドをXY方向に稼動させてもよい。また、これらを併用し、XY方向のうち一方をインクジェットヘッドが移動し、他方を基材が移動するように構成しても構わない。
【0161】
また、機能インクの描画方式は、シリアルプリンタ方式でもよいし、ラインプリンタ方式でもよい。大面積を効率よく描画するためには、シングルパスによるラインプリンタ方式の装置が適している。シングルパスであれば、インクジェットヘッドとインクが打滴される基材の各領域とが1回通過するだけで、各領域の全面にインクを吐出することができる。
【0162】
また、インクジェットの方式としては、コンティニュアス型、オンデマンド型のいずれでもよい。数10cm四方以上の大面積に描画する場合には、ノズルが複数あるオンデマンド型が好ましい。
【0163】
オンデマンド型の吐出方式を特徴付けるアクチュエータは、ピエゾ方式、サーマル方式、ソリッド方式、静電吸引方式等の種々の方式を用いることができる。ピエゾ方式は、水系以外に、有機溶剤系を吐出することも可能であり、機能性インクの吐出に適している。また、ノズルの並びについても、単列に配置、複数列に配置、千鳥格子状に配置のいずれでも構わない。
【0164】
これに対し、1mm以上の高さの枠があるような、凹状の基板に描画する場合は、比較的、飛翔距離の長いコンティニュアス型が適している。なお、飛翔距離が比較的短くなるピエゾ方式でも、ヘッドと基材の間に静電界を併用することで、飛翔距離を確保して描画
することも可能である。
【0165】
機能性インクの組成物のうち粒子系が大きいものを含む場合には、ノズル詰まりの可能性が低い、静電吸引方式やアコースティックジェットのヘッドが適している。
【0166】
1ピコリットル以下の微小な液滴量をコントロールして吐出する場合は、静電吸引方式の一種の、ニードル先端からインクを吐出するタイプが好ましい。
【0167】
インクタンクからインクジェットヘッドまでの供給路の間に、脱気モジュールを設けることが好ましい。脱気処理した機能性インクを用いることにより、インクジェットヘッドからの吐出を安定させることができる。
【0168】
また、ノズルから吐出される吐出液滴の直径と同等もしくはさらに小さいドットピッチ間隔で高密度に描画する場合であって、一度吐出した機能性インクにより液膜が形成された後に、基材やその液膜に対してさらに機能性インクを吐出する場合、脱気した機能性インクを用いると、液膜に発生する泡が減少することが、実験により確認されている。なお、ここでいう液膜とは、インクジェットヘッドによる描画により狙ったパターンの領域に液滴を付与し、それらが連結して液体の膜状になった状態をいう。
【0169】
脱気方法としては、脱気フィルターを通す方法や、超音波処理を行う方法等を採用することができる。
【0170】
〔インクジェットヘッドのヘッド長〕
描画混合法において2つのインクを吐出して混合層を形成する場合には、基材の一辺よりもインクジェットヘッドのヘッドセットの合計長(ヘッド長)が長くなるように構成し(長尺ヘッド)、シングルパスで各層を形成することが好ましい。特に、図6で説明したように2つのインクを順に吐出する場合、後から吐出する方のインクは、シングルパスで形成することが好ましい。後から吐出する方のインクが、インクジェットヘッドを複数回走査して分割して吐出するように構成されていると、1回目の走査と2回目の走査との間で、時間の経過が大きくなり、拡散の程度に違いが生じるという問題点が発生する。このような現象を防止するために、長尺のヘッドを用いてシングルパスで吐出を行う。
【0171】
図11(a)は、基材90上に形成する傾斜機能材料の領域91と、ヘッド50との幅方向の関係を示す概略図である。
【0172】
例えば、図11(a)に示すように、ヘッド50のノズル51が基材90の幅よりも長く配列されていることが好ましい。このように構成することにより、ヘッド50と基材90との相対的な移動を1回行うことで(シングルパス)、ヘッド50から領域91へのインクの吐出を適切に行うことができる。なお、ヘッド50が基材90の幅よりも小さくても、ノズル51の配列が領域91の幅よりも長く形成されていればよい。
【0173】
また、基材90のサイズが大きい等の理由により、図11(a)のようにヘッド50を構成することが困難な場合には、図11(b)に示すように、短尺の各ヘッドモジュール52を複数組み合わせることにより、基材90の幅をカバーする長さを有するヘッドセット53を構成し、このヘッドセット53を1つのヘッド50として扱ってもよい。
【0174】
〔装置の環境〕
機能性インクを吐出する場合、形成した層を乾燥させる場合、拡散混合する場合、最終的に完全固化し機能発現させる場合等、全体の製造プロセスを通じて、不活性ガスを充満させた雰囲気で行うことが好ましい。
【0175】
大気中で下の層を乾燥させるときには、表面に層厚よりずっと薄い酸化された表面層が形成される場合がある。この酸化された表面層は、次の上の層を形成した後に上下層の間である程度の拡散をさせようとするときに、界面となって障害となる場合がある。また、不要な界面が生じることにより、界面からの剥離などの不具合を生じる場合がある。
【0176】
したがって、不活性ガス中で各プロセスを行うことにより、酸化された表面層の形成の防止し、傾斜機能材料の発現に有効である。なお、不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等を用いることができる。
【0177】
〔コーヒー染み現象対策〕
コーヒー染み現象を防止するため、機能性インクに沸点の違う溶剤を2種混合してもよい。コーヒー染み現象が生じると、コーヒーリングと呼ばれる膜内のエッジで膜厚が盛り上がり、層内での厚みが不均一となり、機能材料としてみたときに、不具合を生じることがある。
【0178】
沸点の違う溶剤を2種混合した機能性インクを用いて層を形成することにより、コーヒー染み現象を緩和させることができる。
【0179】
〔焼結部の構成〕
焼結部においてインクを乾燥もしくは固化させる手段としては、ホットプレートやアニール炉等での加熱の他、赤外線ランプ、LED、レーザ等による光の照射、ハロゲンランプを集光することにより瞬時に加熱を行うRTA(ラピッドサーマルアニール)法、マイクロ波による加熱、電子線によるエネルギー付与等がある。
【0180】
これらの乾燥方法等は、各層毎の形成後でも、全層を積層した後でも用いることが可能である。
【0181】
なお、赤外線やRTA等は、インクジェット装置の近傍に配置する構成にしてもよい。また、アニール炉を除き、真空状態で行ってもよい。真空状態で行うことにより、クラックの発生を防止することができる。さらに、上記の方法等により加熱しながら、同時に加圧処理を行ってもよい。これにより、形成された層の密度を高める効果や、機能発現を幇助する効果がある。
【0182】
なお、UVモノマーインク等、紫外線照射での(活性エネルギーの付与による)化学反応により硬化するようなインクを用いた場合は、UV露光(活性エネルギー照射)を行えばよい。
【0183】
〔描画跡対策〕
第1の実施形態の描画混合法、第2の実施形態の混合インク法によらず、乾燥が速いインクを用いた場合では、インクを吐出した層に描画跡が発生する可能性がある。
【0184】
図12は、沸点が160℃程度の有機溶剤系インクを使用して、60℃程度に加熱した基材に対して図面左から右へ、さらに上から下へラスタスキャン的に1つのノズルからインクを吐出してインク層92を形成した例を示す。このように、横1列への吐出が終了後に1段下の列を吐出する場合、乾燥の速いインクを用いているとすでに吐出した列が乾燥しており、次の列を描画した際に描画跡ができてしまう。
【0185】
このような描画跡が発生すると、インク層92の描画跡の方向による異方性が大きくなり、傾斜機能材料として好ましくない。
【0186】
このような異方性を低減するために、ヘッドと基材の走査方向を変更することが有効である。
【0187】
図13(a)は、インクジェットヘッド54と基材93上に形成する傾斜機能材料の領域94との相対移動関係を示す概略図である。インクジェットヘッド54と基材93は、図中の矢印のように相対移動されるとともにインクジェットヘッド54から機能性インクを吐出し、領域94にインク層を形成する。図3に示す装置であれば、ステージ制御部43によりステージ30が移動する。
【0188】
このとき、インクジェットヘッド54から吐出している機能性インクの乾燥が速いと、図12に示すような領域94のインク層には描画跡が発生する。
【0189】
したがって、領域94へのインク吐出終了後、図13(b)に示すように、相対移動の方向を90度変更させて、再び領域94へのインク吐出を行う。図3に示す装置であれば、ステージ制御部43によりステージ30の移動方向を変更すればよい。
【0190】
なお、図13(c)に示すように、基材93の向きを90度変更してから、同様の向きのラスタスキャン方式によって再び領域94へのインク吐出を行ってもよい。図3に示す装置であれば、ステージ30を90度回転させた後、図13(a)で示す方向と同じ方向に相対移動してインクを吐出すればよい。
【0191】
基材93側ではなく、インクジェットヘッド54が移動するように構成された装置においても同様であり、インクジェットヘッド54の移動方向を変更してもよいし、インクジェットヘッド54の移動方向を変更せずにステージ30を90度回転させてもよい。
【0192】
このように、相対移動してインクを吐出した後、90度異なる方向の相対移動によりさらにインクを吐出して1つの層を形成することで、描画跡が発生する場合であっても、異方性を低減することができる。なお、ここでは相対移動の方向を90度変更したが、略90度であればよい。
【0193】
〔異なる成分を経由する傾斜機能材料の生成〕
本実施の形態では、2種類の成分から成る傾斜機能材料を生成したが、成分の数は2種類に限定されるものではない。例えば、単純に機能性インクを混合するだけでは傾斜機能材料として機能を発揮しない場合がある。
【0194】
このような場合、例えば導電性と生体特性とを互いに徐々に変化させる場合であれば、Ag→Au→Pt→Tiのように、異なる成分を経由させるように各層を形成してもよい。このように、多種成分の傾斜機能材料であっても、本発明を用いて生成可能である。
【0195】
図19(a)から(e)は、描画混合法により4種類の成分から成る傾斜機能材料を生成する形態を模式的に図示した説明図である。4種類の成分として、Ag、Au、Pt、Tiが適用され、インクジェットヘッド50Ag、インクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Pt、インクジェットヘッド50Tiのそれぞれから、Agナノ粒子インク、Auナノ粒子インク、Ptナノ粒子インク、Tiナノ粒子インクが吐出される。
【0196】
図19(a)は、最下層となるAgナノ粒子インクによるAgナノ粒子インク層24−11が形成されるAgナノ粒子インク層形成工程が模式的に図示されている。Agナノ粒子インク層形成工程は、インクジェットヘッド50AgからAgナノ粒子インクを吐出させ、インクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Pt、インクジェットヘッド50Tiからインクを吐出させない。
【0197】
図19(b)は、Agナノ粒子インク層24−11の表面に混合層24−12を形成する工程が模式的に図示されている。Agナノ粒子インクが80%、Auナノ粒子インクが15%、Ptナノ粒子インクが5%、Tiナノ粒子インクが0%の比率で各インクを吐出させ、各インクを十分に拡散混合させる。
【0198】
図19(c)は、Agナノ粒子インク層24−11の上に、混合層(Agナノ粒子インク、Auナノ粒子インク、Ptナノ粒子インク、Tiナノ粒子インクの混合比率が80:15:5;0の混合層)24−12が形成された状態が模式的に図示されている。
【0199】
図19(d)は、先に形成された混合層24−12に積層される混合層24−13(図19(e)参照)を形成する工程は模式的に図示されている。
【0200】
図19(d)に示す混合層形成工程は、Agナノ粒子インクが60%、Auナノ粒子インクが25%、Ptナノ粒子インクが10%、Tiナノ粒子インクが5%の比率で各インクを吐出させ、各インクを十分に拡散混合させる。
【0201】
図19(e)は、混合層24−12に混合比率が異なる混合層24−13が積層された状態が模式的に図示されている。このようにして、4種類のインクの混合比率を適宜変更しながら、傾斜機能材料が形成される。
【0202】
なお、傾斜機能材料の最上層及び最下層を混合層とする形態や、すべての成分の混合比率が単純増加又は単純減少しない形態(例えば、一部の成分が一定の混合比率となる形態や増加、減少の両方を含む形態)も可能である。
【0203】
図19(a)〜(e)では、描画混合法において4種類(3種類以上)の成分を用いた傾斜機能材料が生成される態様を例示したが、もちろん、インク混合法においても3種類以上の成分を用いて傾斜機能材料を生成することも可能である。
【0204】
〔その他の実施形態〕
図20(a)、(b)は、2種類の成分を用いた傾斜機能材料を生成する際に、量比の少ない成分(Auナノ粒子インク)を先に付与し、量比の多い成分を後に付与する形態の説明図である。
【0205】
図20(a)に斜線ハッチを付したドット24−2−Au−1は、先に付与されたAuナノ粒子インクによるドットである。一方、破線により図示したドット24−2−Cu−1は、Auナノ粒子インクが付与された後に付与されるCuナノ粒子インクによる仮想的なドットである。
【0206】
Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの量比は2:8であり、この比率でAuナノ粒子インクによるドット24−2−Au−1とCuナノ粒子インクによるドット24−2−Cu−1の数量比率が決められている。
【0207】
なお、図示されていないが、Auナノ粒子インクによるドット24−2−Au−1と同じ打滴位置にもCuナノ粒子インクによるドット24−2−Cu−1が形成される。
【0208】
図20(b)は、先に付与されたAuナノ粒子インクによるドット24−2−Au−1が十分に濡れ広がった状態で、Cuナノ粒子インクが付与された状態が図示されている。
【0209】
このようにして、先に付与されたAuナノ粒子インクによるドット24−2−Au−1が十分に濡れ広げられて十分に薄くなることで、Auナノ粒子インクによるドット24−2−Au−1とCuナノ粒子インクによるドット24−2−Cu−1とは、Cuナノ粒子インクによるドット24−2−Cu−1が濡れ広がとともに、厚み方向に拡散混合されるので、拡散混合に必要な時間を短縮することができる。
【0210】
先に付与されるAuナノ粒子インクによるドット24−2−Au−1の濡れ性を向上させるために、電極22(下地)に改質処理(親液処理)が施されることや、Auナノ粒子インクに濡れ性を向上させる成分が添加されることが好ましい。
【0211】
傾斜機能材料を構成する複数の成分に対応した複数のインクは、表面張力(表面エネルギー)が大きい順に付与するとよい。相対的に表面張力が小さいインクを先に付与し、相対的に表面張力が大きいインクを後から付与すると、後から付与された相対的に表張力が大きいインクが十分に拡散混合されずに、層内で成分の分布が生じてしまう。
【0212】
また、図示は省略するが、後から付与されるインクを最密充填(ヘキサゴナル)に描画すると、拡散混合に要する時間を短縮することができる。
【0213】
以上説明した本発明に係る傾斜機能材料の製造方法及び装置は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0214】
〔付記〕
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0215】
(発明1):複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から前記第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料を製造する傾斜機能材料の製造方法であって、前記第1の材料を含む第1の機能性インクを第1のインクジェットヘッドに供給する工程と、前記第2の材料を含む第2の機能性インクを第2のインクジェットヘッドに供給する工程と、前記第1のインクジェットヘッドから吐出される第1の機能性インクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出される第2の機能性インクの量との比率を決定する制御工程と、前記決定された比率にしたがって前記第1のインクジェットヘッド及び/又は前記第2のインクジェットヘッドからインクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、前記形成工程を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層工程と、を含み、前記制御工程は、前記複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにインクの比率を決定することを特徴とする傾斜機能材料の製造方法。
【0216】
本発明によれば、第1のインクジェットヘッドから吐出される第1の機能性インクの量(体積)と第2のインクジェットヘッドから吐出される第2の機能性インクの量との比率(体積比率)を決定し、決定された比率にしたがってインクを吐出させて1つの層を形成する工程を繰り返して基材上に複数の層を積層し、複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにすることで、インクジェット方式の技術を用いて傾斜機能材料を製造することができる。
【0217】
本発明において、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの比率は、第1の機能性インクを100%としてもよいし、第2の機能性インクを100%としてもよい。
【0218】
本発明に係る機能性材料は、第1の材料及び第2の材料と異なる第3の機能性材料を含有する第3の機能性インクを用いる態様や、第1、第2及び第3の材料とは異なる第4の機能性材料を含有する第4の機能性インクを用いる態様もありうる。
【0219】
すなわち、本発明に係る機能性材料の製造方法は、1種類又は2種類以上の機能性インクを用いて基材上に液膜を形成し、機能性インクの混合比率(体積比率)が異なる液膜を積み重ねるように機能性インクの混合比率を連続的に変更して、基材から液膜の厚み方向について機能性インクの混合比率が傾斜傾向を示す傾斜機能材料を生成することを特徴とする。
【0220】
(発明2):発明1に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成工程は、前記第1の機能性インクと前記第2の機能性インクとの混合インクからなる層を形成する際に、表面張力の大きいインクを先に吐出させ、表面張力の小さいインクを後から吐出させることを特徴とする。
【0221】
かかる態様によれば、基材上に付与された第1の機能性インクと第2の機能性インクとの拡散混合が確実になされる。
【0222】
(発明3):発明1又は2に記載の機能性材料の製造方法において、前記形成工程は、第1の機能性インクを間歇吐出させて離散的に配置する第1の間歇吐出工程と、離散的に配置された前記第1の機能性インクと同じ位置に前記第2の機能性インクを間歇吐出させる第2の間歇吐出工程と、前記第2の間歇吐出工程の後に、離散的に配置された前記第1の機能性インクの間を補間するように前記第1の機能性インクを吐出させる第1の補間吐出工程と、前記第1の補間吐出工程により吐出させた第1の機能性インクと同じ位置に、前記第2の機能性インクを吐出させる第2の補間吐出工程と、を含むことを特徴とする。
【0223】
かかる態様によれば、第1の機能性インクを離散的に配置させることで、第1の機能性インクの着弾干渉が防止され、離散的に配置された第2の機能性インクを離散的に配置された第1の機能性インクと同じ位置に吐出させることで、当該同じ位置において、第1の機能性インクと第2の機能性インクとを滴単位で拡散混合させることができる。
【0224】
かかる態様において、比率の大きいインクを第1の機能性インクとし、比率の小さいインクを第2の機能性インクとする形態がある。比率に対応して、1回の吐出における第1の機能性インクの吐出量と第2の機能性インクの吐出量を異ならせる態様がありうる。
【0225】
(発明4):発明1又は2に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成工程は、前記第1のインクジェットヘッド及び前記第2のインクジェットヘッドのうち、一方のインクジェットヘッドから吐出させたインクの打滴位置に、他方のインクジェットヘッドからインクを吐出させることを特徴とする。
【0226】
(発明5):発明1から4のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記積層工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層内における第1の機能性材料又は第2の機能性材料の拡散を促進させる第1の補助インクが付与される第1の補助インク付与工程を含むことを特徴とする。
【0227】
かかる態様によれば、第1の機能性材料又は第2の機能性材料の層内における拡散が促進され、好ましい第1の機能性インク及び第2の機能性インクの混合層を形成しうる。
【0228】
(発明6):発明5に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記第1の補助インク付与工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層を形成する前に、前記第1の補助インクが付与されることを特徴とする。
【0229】
かかる態様によれば、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの混合層を形成する際の混合が促進され、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの混合が不十分に成ることが防止される。
【0230】
(発明7):発明5に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記第1の補助インク付与工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層を形成する際の前記第1の機能性インクが付与され前記第2の機能性インクが付与される前に、前記第1の補助インクが付与されることを特徴とする。
【0231】
かかる態様によれば、先に付与されたインクの乾燥が抑制され、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの混合が促進される。
【0232】
(発明8):発明5に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記第1の補助インク付与工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層が形成された後に、前記第1の補助インクが付与されることを特徴とする。
【0233】
かかる態様によれば、後から付与されたインクの拡散が抑制され、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの混合が促進される。
【0234】
(発明9):発明1から8のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記基材の前記第1の機能性インク又は前記第2の機能性インクが付与される面に、改質処理を施す改質処理工程を含み、前記形成工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクからなる層を形成する際に、前記第1の機能性インクの量と第2の機能性インクの量のうち、比率が小さい方を先に吐出させることを特徴とする。
【0235】
かかる態様によれば、比率が小さいインクを十分に濡れ広がらせた後に、比率の大きいインクが付与されるので、前記第1の機能性インク又は前記第2の機能性インクの厚み方向の混合が促進され、拡散混合の時間を短縮しうる。
【0236】
(発明10):発明1から8のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクからなる層を形成する際に、前記第1の機能性インクの量と第2の機能性インクの量のうち、比率が大きい方を先に吐出させることを特徴とする。
【0237】
かかる態様によれば、基材の前記第1の機能性インク又は前記第2の機能性インクの濡れ広がりが促進される。また、先に吐出させたインクが乾燥して、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの拡散混合がされないことを防止しうる。
【0238】
(発明11):発明1から10のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記基材上において、前記第1のインクジェットヘッドから吐出された第1の機能性インクと前記第2のインクジェットヘッドから吐出された第2の機能性インクとを拡散混合する拡散混合工程を含むことを特徴とする。
【0239】
かかる態様によれば、2つの機能性インクが十分に拡散混合された層を形成することができる。
【0240】
(発明12):発明11に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記拡散混合工程は、前記基材を超音波処理する工程を含むことを特徴とする。
【0241】
かかる態様によれば、比率が異なる複数の機能性インクを拡散混合させることができ、拡散混合工程の効率化が見込まれる。
【0242】
かかる態様によれば、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの拡散混合の時間を短縮することができる。
【0243】
(発明13):複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から前記第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料を製造する傾斜機能材料の製造方法であって、前記第1の材料を含む第1の機能性インクと前記第2の材料を含む第2の機能性インクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクを複数のインクジェットヘッドのそれぞれのインクジェットヘッドに供給する工程と、前記複数のインクジェットヘッドから1つのインクジェットヘッドを順に選択する選択工程であって、前記第1の機能性インクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に選択する選択工程と、前記選択されたインクジェットヘッドから混合インクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、前記形成工程を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層工程と、を含むたことを特徴とする傾斜機能材料の製造方法。
【0244】
本発明によれば、第1の機能性インクと第2の機能性インクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクをそれぞれのインクジェットヘッドに供給し、第1の機能性インクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に混合インクを吐出させて各層を形成し、基材上に複数の層を積層するようにしたので、インクジェット方式の技術を用いて傾斜機能材料を製造することができる。
【0245】
本発明における混合インクは、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの混合比率が100:0でもよいし、当該混合比率が0:100でもよい。
【0246】
(発明14):発明13に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成工程は、前記基材と前記複数のインクジェットヘッドとを相対的に複数回移動させながら前記混合インクによる1つの層を形成し、前記基材と前記複数のインクジェットヘッドとの1回の相対移動により前記混合インクを離散的に配置させ、前記基材と前記複数のインクジェットヘッドとの複数回の相対移動によって離散的に配置された前記混合インクの間を補間することを特徴とする。
【0247】
かかる態様によれは、1つの層を形成する際の着弾干渉を防止することで、着弾干渉によるインク(ドット)形状の変形による、層が円環状に変形するコーヒー染みの発生を防止しうる。
【0248】
(発明15):発明1から14のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成された層を半乾燥させる半乾燥工程を含むことを特徴とする。
【0249】
かかる態様によれば、各層間の境界近傍における拡散が生じ、各層間の密着性を向上させることができる。
【0250】
(発明16):発明1から15のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記積層工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層を形成した後に、前記形成された層と次に形成される層との境界近傍における拡散を生じさせる第2の補助インクが付与される第2の補助インク付与工程を含むことを特徴とする。
【0251】
かかる態様によれば、先に形成された層と後に形成された層との密着性が強化される。
【0252】
第1の補助インクと第2の補助インクとを共通化してもよい。
【0253】
(発明17):発明1から16のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記複数の層は、前記第1の機能性インクだけを含み前記第2の機能性インクを含まない混合インク、及び/又は前記第2の機能性インクだけを含み前記第1の機能性インクを含まない混合インクを有することを特徴とする。
【0254】
かかる態様によれば、第1の材料だけを含む層及び/又は第2の材料だけを含む層を形成することができる。
【0255】
(発明18):発明15から17のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記半乾燥工程は、前記形成された層の乾燥が速い場合には乾燥を遅らせることを特徴とする。
【0256】
かかる態様によれば、乾燥の進行が速いインクを用いた場合であっても、乾燥の進行を抑制することで半乾燥状態にすることができ、各層間の境界近傍における拡散を促進させることができる。
【0257】
例えば、第1の機能性インクの溶媒又は第2の機能性インクの溶媒を含む薬液を吐出させる工程を含む態様があり得る。
【0258】
(発明19):発明15から18のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成された層の乾燥の程度を測定する工程を備え、前記半乾燥工程は、前記測定された乾燥の程度に基づいて半乾燥させることを特徴とする。
【0259】
かかる態様によれば、適切に半乾燥状態にすることができる。
【0260】
かかる態様における計測する工程は、層の形成終了後、層の形成途中に測定を行う形態がありうる。
【0261】
傾斜機能材料として用いない領域、測定用のダミー領域を設ける形態もありうる。
【0262】
(発明20):発明1から19のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、各層の形成後に該形成された層の外周部を次に吐出されるインクに対して撥液化する撥液化工程を備えたことを特徴とする。
【0263】
かかる態様によれば、次に吐出されるインクが下の層からはみ出すことを防止することができる。
【0264】
(発明21):発明1から20のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、各層の形成後に該形成された層の外周部に次に吐出されるインクを取り囲むための枠を設ける枠生成工程を備えたことを特徴とする。
【0265】
かかる態様によれば、次に吐出されるインクが下の層からはみ出すことを防止することができる。
【0266】
(発明22):発明1から21のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成工程の前に、前記基材の表面を最初に吐出されるインクに対して親液化する親液化工程を備えたことを特徴とする。
【0267】
かかる態様によれば、基材の直上に最初に形成される層を適切に形成することができる。
【0268】
(発明23):発明1から22のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記各工程が不活性ガス雰囲気内で行われることを特徴とする。
【0269】
かかる態様によれば、形成された各層の酸化を防止することができる。
【0270】
(発明24):発明1から23のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記積層体を所定の焼結温度で焼結する焼結工程を備えたことを特徴とする。
【0271】
かかる態様によれば、適切な積層体を形成することがきできる。
【0272】
前記得られた積層体に対して硬化エネルギーを付与して前記積層体を完全硬化させる硬化工程を含む態様も可能である。
【0273】
かかる態様によれば、各層が結晶化されるとともに各層間の境界近傍における拡散が促進され、段階的に形成された複数の層が連続的になり、適切な積層体を形成することができる。
【0274】
かかる態様における硬化工程は、熱エネルギーの付与により積層体を硬化させる形態(焼成工程)や、紫外線等の活性光線の付与により積層体を硬化させる形態が含まれる。
【0275】
(発明25):複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から該第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料の製造装置であって、前記第1の材料を含む第1の機能性インクを吐出する第1のインクジェットヘッドと、前記第2の材料を含む第2の機能性インクを吐出する第2のインクジェットヘッドと、前記第1のインクジェットヘッドから吐出されるインクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出されるインクの量を制御する制御手段と、前記第1のインクジェットヘッドと前記第2のインクジェットヘッドとからインクを吐出させて1つの層を形成する形成手段と、前記形成手段により複数の層を積層して積層体を得る積層手段と、を備え、前記制御手段は、前記複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにインクの比率を決定することを特徴とする傾斜機能材料の製造装置。
【0276】
本発明によれば、第1のインクジェットヘッドから吐出される第1の機能性インクの量と第2のインクジェットヘッドから吐出される第2の機能性インクの量との比率を決定し、決定された比率にしたがってインクを吐出させて層を形成することにより基材上に複数の層を積層し、この複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにすることで、インクジェット方式の技術を用いて傾斜機能材料を製造することができる。
【0277】
(発明26):発明25に記載の傾斜機能材料の製造装置において、前記第1のインクジェットヘッド及び/又は第2のインクジェットヘッドと前記基材とを所定の方向に相対移動する移動手段を備え、前記第1のインクジェットヘッド及び/又は第2のインクジェットヘッドは、インク滴を吐出する複数のノズルが前記基材に形成すべき層の前記所定の方向と直交する方向の全域にわたって配列されており、前記形成手段は、前記移動手段による前記第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドの1回の相対移動において、1つの層を形成することを特徴とする。
【0278】
かかる態様によれば、第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドと基材とを相対的に1回だけ移動させて、基材の全域に対して第1の機能性インク及び第2の機能性インクを付与するシングルパス方式を用いて、効率よく各層を形成することができる。
【0279】
(発明27):発明25に記載の傾斜機能材料の製造装置において、前記第1のインクジェットヘッド及び/又は第2のインクジェットヘッドと前記基材とを相対移動する移動手段と、前記相対移動の向きを略90度変更する変更手段と、を備え、前記形成手段は、前記移動手段による相対移動時にインクを吐出させた後、前記変更手段により前記相対移動の向きを90度変更してから再び移動手段による相対移動時にインクを吐出させることを特徴とする。
【0280】
かかる態様によれば、描画跡に起因する異方性の発生を防止することができる。
【0281】
(発明28):複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から該第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料の製造装置であって、前記第1の材料を含む第1の機能性インクと前記第2の材料を含む第2の機能性インクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクを前記複数のインクジェットヘッドのそれぞれに供給する手段と、前記複数のインクジェットヘッドから1つのインクジェットヘッドを順に選択する選択手段であって、前記第1の混合インクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に選択する選択手段と、前記選択されたインクジェットヘッドから混合インクを吐出させて1つの層を形成する形成手段と、前記形成手段により層の形成を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層手段と、を備えたことを特徴とする傾斜機能材料の製造装置。
【0282】
本発明によれば、第1の機能性インクと第2の機能性インクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクをそれぞれのインクジェットヘッドに供給し、第1の機能性インクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に混合インクを吐出させて各層を形成し、基材上に複数の層を積層するようにしたので、インクジェット方式の技術を用いて傾斜機能材料を製造することができる。
【0283】
(発明29):発明25から28のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造装置において、前記形成手段は、コンティニュアス型のインクジェット方式により1つの層を形成することを特徴とする。
【0284】
かかる態様によれば、凹状の基材に対しても適切に各層を形成することができる。
【0285】
(発明30):発明25から28のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造装置において、前記第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドはピエゾ方式であり、吐出されたインクの飛翔距離を延ばすための電界を印加する電界印加手段を備えたことを特徴とする。
【0286】
これにより、インクの飛翔距離を延ばして適切に各層を形成することができる。
【符号の説明】
【0287】
10、11…描画部、20…ICウェハ、21…ICチップ、22…電極、23…バンプ、24−1〜24−3、28−1〜28−5、80−1、80−2…インク層、30…ステージ、40…吸着チャンバー、41…ポンプ、42…ヒータ、43…ステージ制御部、50Au、50Cu、50−1〜50−5、54…インクジェットヘッド、51…ノズル、53…ヘッドセット、70…焼結部、81…撥液処理部、83−1〜83−4…エッジ枠、91、94…領域、93…基材、100、101…バンプ作成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は傾斜機能材料の製造方法及び装置に係り、特に、インクジェット方式の技術を用いて傾斜機能材料を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インク液滴をピエゾ素子のアクチュエータ等によりノズルから吐出し、紙等の記録媒体に着弾させて記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。近年のインクジェット記録装置では、ノズルの配列ピッチが高密度化されるとともに、数ピコリットルの微小なインク液滴が吐出可能になり、高解像度の画像を記録することが可能となっている。
【0003】
このようなインクジェット方式の装置を、画像記録以外の用途に用いる技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、セラミックス基板に無機結合材を含む貴金属インクを印刷し、その印刷領域にさらに貴金属のみからなるインクを上塗りした後、熱処理を施すことで導体を形成するセラミックス電子部品の製造方法が記載されている。
【0005】
このセラミックス基板上のインクは、熱処理によって、セラミックス基板に対して化学結合を生成してケミカルボンド成分として働くとともに、貴金属インクに対して拡散しあうことで、傾斜材料として機能する。
【0006】
この技術によれば、表面電極のセラミックス基板への固着強度を向上させながらも、導体の低効率を低く保つことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−88221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一つの材料の中で性質、機能、組成等が連続的もしくは多段階的になだらかに変化する傾斜機能材料が知られている。
【0009】
しかしながら、特許文献1は、基板と貴金属インクとの間に無機結合剤を含むインクを介在させて、基板との固着強度を確保しつつ貴金属単体なみの低い抵抗率を有する導体を形成する技術を開示しているものの、性質等が多段階的になだらかに変化する機能材料に関する開示はない。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、インクジェット方式の技術を用いた傾斜機能材料の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る傾斜機能材料の製造方法は、複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から前記第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料を製造する傾斜機能材料の製造方法であって、前記第1の材料を含む第1の機能性インクを第1のインクジェットヘッドに供給する工程と、前記第2の材料を含む第2の機能性インクを第2のインクジェットヘッドに供給する工程と、前記第1のインクジェットヘッドから吐出される第1の機能性インクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出される第2の機能性インクの量との比率を決定する制御工程と、前記決定された比率にしたがって前記第1のインクジェットヘッド及び/又は前記第2のインクジェットヘッドからインクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、前記形成工程を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層工程と、を含み、前記制御工程は、前記複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにインクの比率を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1のインクジェットヘッドから吐出される第1の機能性インクの量(体積)と第2のインクジェットヘッドから吐出される第2の機能性インクの量との比率(体積比率)を決定し、決定された比率にしたがってインクを吐出させて1つの層を形成する工程を繰り返して基材上に複数の層を積層し、複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにすることで、インクジェット方式の技術を用いて傾斜機能材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】傾斜機能を備えるバンプの図
【図2】バンプ作成装置の全体構成図
【図3】バンプ作成装置の描画部の概略図
【図4】描画混合法によるバンプ形成を説明するための図
【図5】バンプが形成されたICチップの実装後の状態で示す概略断面図
【図6】描画混合法の他の実施例を説明するための図
【図7】第2の実施形態に係るバンプ作成装置の全体構成図
【図8】混合インク法によるバンプ形成を説明するための図
【図9】エッジ部分に形成した撥液処理部を示す図
【図10】エッジ部分に形成したエッジ枠を示す図
【図11】基材とヘッドの関係を示す概略図ヘッドを示す図
【図12】インク層に発生する描画跡を示す図
【図13】描画跡への対策を説明するための図
【図14】描画混合法における各機能性インクの着弾位置を説明するための図
【図15】半乾燥状態を維持するための薬液付与を模式的に図示した説明図
【図16】混合層形成前に薬液を付与する薬液処理を模式的に図示した説明図
【図17】混合層形成後に薬液を付与する薬液処理を模式的に図示した説明図
【図18】混合層形成中に薬液を付与する薬液処理を模式的に図示した説明図
【図19】描画混合法において4種類の成分を用いたバンプ形成を模式的に図示した説明図
【図20】本発明のその他の実施形態に係る各機能性インクの着弾位置を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0015】
ここでは、ICウェハに形成されたICチップのパッド(電極)に対して、傾斜機能材料であるバンプを形成するバンプ作成装置について説明する。バンプとは、ICチップを直接プリント配線板に搭載する際に使用される、電気接続端子部に形成される半球形や台形状の金属突起である。
【0016】
通常、金(Au)は酸化しにくく安定した金属であり、柔らかいため、バンプのトップ面に使用される。しかし、価格が高いという欠点がある。
【0017】
これに対し、ICチップの電極に形成する膜としては、価格が安く、導電性が高く、現在の実装配線材料として一般的に用いられている銅(Cu)膜が適している。また、Auよりもマイグレーション耐性が優れている点でも、Cu膜を採用する利点がある。しかし、Cuは酸化しやすいという欠点があり、バンプのトップ面には適さない。
【0018】
したがって、図1に示すように、ICチップ21の電極22に作成されるバンプ23は、電極22側からトップ面へCuからAuに傾斜するように形成されることが好ましい。本実施の形態では、組成成分比がCu100%からAu100%となるバンプを描画混合法により作成する。描画混合法とは、複数(ここでは2種類)の純インク(100%の機能性インク)を描画により混合する方法である。なお、バンプの厚みは様々であるが、ここでは10μm程度とする。
【0019】
<第1の実施形態>
〔バンプ作成装置の構成〕
図2は、第1の実施形態に係るバンプ作成装置100の全体構成図であり、図3は、バンプ作成装置100の描画部10の概略図である。これらの図に示すように、バンプ作成装置100は、描画部10、焼結部70から構成され、描画部10は、フラットベッドタイプのインクジェット描画装置が用いられている。詳細には、描画部10は、基材であるICウェハ20が載置されるステージ30、ステージ30に載置されたICウェハ20を吸着保持するための吸着チャンバー40、ICウェハ20に向けて各インクを吐出するインクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Cu、を含み構成されている。
【0020】
ICウェハ20は、シリコンにより構成された平面略円形の板状部材であり、その表面には多数のICチップ21(図2、図3では不図示)が形成されている。
【0021】
ステージ30は、ICウェハ20の直径よりも広い幅寸法を有しており、図示しない移動機構により水平方向に自在に移動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ラックアンドピニオン機構、ボールネジ機構等を用いることができる。ステージ制御部43(図3では不図示)は、移動機構を制御することにより、ステージ30を所望の位置に移動させることができる。
【0022】
なお、インクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Cuを水平方向について自在に移動可能に構成し、固定されたICウェハ20に対してインクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Cuを移動させてもよいし、インクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Cu及びICウェハ20の両者を移動させてもよい。
【0023】
また、図3に示すように、ステージ30のウェハ保持面には多数の吸引穴31が形成されている。ステージ30下面には吸着チャンバー40が設けられており、この吸着チャンバー40がポンプ41(図3では不図示、図2参照)で真空吸引されることによって、ステージ30上のICウェハ20が吸着保持される。また、ステージ30はヒータ42(図3では不図示、図2参照)を備え、ヒータ42によりステージ30に吸着保持されたICウェハ20を加熱することが可能である。
【0024】
インクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Cuは、インクタンク60Au、インクタンク60Cu(図3では不図示、図2参照)から供給されるインクをICウェハ20の所望の位置に対して吐出するものであり、ここではピエゾ方式のアクチュエータを持つヘッドを用いている。インクジェットヘッド50Auと50Cuとは、図示しない固定手段により、それぞれができるだけ近づけて配置されて固定されている。
【0025】
インクタンク60Au、60Cuからインクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Cuに供給されるインクは、それぞれAuナノ粒子インク、Cuナノ粒子インクである。これらのインクは、それぞれの金属ナノ粒子を所定の有機溶剤に分散させたものである。なお、Cuナノ粒子インクは酸化しやすいため、バンプ作成装置100は、このCuナノ粒子インクの酸化を防止するために、窒素等の不活性ガス雰囲気中でバンプ作成を行うことが可能に構成されている。
【0026】
焼結部70は、ヒータを備えた炉であり、ICウェハ20を加熱することにより、描画部10によってICウェハ20上に形成されたバンプを焼結させることができる。
【0027】
〔バンプの作成〕
このように構成されたバンプ作成装置100を用いたバンプの作成について、図4を用いて説明する。
【0028】
まず、窒素雰囲気中に置かれた描画部10(図3参照)のステージ30上に、ICウェハ20を載置する。ICウェハ20は、裏面(ICチップ21が形成されていない面)がステージ30に接するように載置される。そして、吸着チャンバー40により、ICウェハ20のステージ30への吸着及び加熱を行う。ここでは、ウェハ20を70℃に加熱する。
【0029】
次に、吸着・加熱されたICウェハ20上に形成されているICチップ21の電極22の直上に、Cuナノ粒子インクを1層もしくは複数層分積層してCuナノ粒子インク層24−1を形成する。このCuナノ粒子インクの積層は、図4(a)に示すように、移動機構によりステージ30を移動させながら(図では左方向に移動)、インクジェットヘッド50Cuにより電極22に対してCuナノ粒子インクを吐出する。ここでは、インクジェットヘッド50Auからはインクの吐出を行わない。
【0030】
ここで、電極22はスパッタ法などにより形成された金属膜であるため、インクジェットヘッド50Cuにより吐出されたCuナノ粒子インクは、極端にぬれ広がって所望のパターンが形成できなかったり、コーヒー染み効果により膜中央の膜厚が薄くなりすぎたりして、適正な層を形成できない場合がある。
【0031】
このような現象は、本実施の形態のようにICウェハ20を加熱することにより低減することもできるが、さらに、ステージ30の1回の移動において、インクを全面に吐出させずに、ステージ30の1回の移動において着弾するドットとドットとの間隔を、所定のドット間隔(打滴格子間隔)よりも大きくして、ステージ30の複数回の移動により既に形成されたドット間を埋めていくように分割して吐出(間歇打ち)して1層を形成してもよい。
【0032】
このように形成したCuナノ粒子インク層24−1を、Cuナノ粒子インク中の溶剤成分を完全には蒸発しない程度に乾燥(半乾燥・半硬化)させる。具体的には、Cuナノ粒子インクの溶媒成分を完全に蒸発するように乾燥させるとき(全乾燥・全硬化)に与えるエネルギーよりも少ないエネルギーを与えて乾燥を行う。半乾燥状態では、Cuナノ粒子が隙間をもって積み重なっている状態となる。
【0033】
Cuナノ粒子インク層24−1を半乾燥状態にすることで、Cuナノ粒子インク層24−1に積層される混合層24−2(図4(b)参照)との境界における粒子の拡散が生じ、層間の密着性がより強固になる。
【0034】
次に、半乾燥状態となったCuナノ粒子インク層24−1の上に、Cuナノ粒子インクとAuナノ粒子インクとの混合層24−2を形成する。この混合層24−2の形成は、図4(b)に示すように、ステージ30を移動させながら、インクジェットヘッド50CuによりCuナノ粒子インクを吐出し、同時にインクジェットヘッド50AuによりAuナノ粒子インクを吐出して行う。
【0035】
このとき、Cuナノ粒子インクの吐出量(吐出体積)とAuナノ粒子インクの吐出量を、所望の比率(体積比率)に調整する。ここでは、Cuナノ粒子インクの吐出量が75%、Auナノ粒子インクの吐出量が25%となるように、インクジェットヘッド50Cuとインクジェットヘッド50Auとの各ノズルの吐出量を調整して吐出している。
【0036】
なお、Cuナノ粒子インク量とAuナノ粒子インク量との比率の調整は、描画のドット間ピッチ(ドット密度)によって調整してもよい。例えば、インクジェットヘッド50Cu及びインクジェットヘッド50Auの各ノズルの吐出量を一定としたまま、Cuナノ粒子インクを吐出するノズル数と、Auナノ粒子インクを吐出するノズル数との比率を75:25となるように、インクジェットヘッド50Cu及びインクジェットヘッド50Auの吐出を制御することにより、比率の調整を行うことも可能である。
【0037】
図4(c)に示すように、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを吐出させた後、それぞれの吐出量で吐出されたCuナノ粒子インクとAuナノ粒子インクとを拡散混合することにより、混合層24−2が積層される。
【0038】
Cuナノ粒子インク層24−1は半乾燥状態となっているため、その上に形成された混合層24−2のナノ粒子インクの溶媒はCuナノ粒子インク層24−1に受容されて、極端にぬれ広がることがない。
【0039】
即ち、ヒータ42による加熱温度は、インク(溶剤成分)の蒸発のしやすさにより調整する必要がある。溶剤の種類によっては、前述した70℃より低い温度、例えば、基板の温度を50℃程度にして描画してもよい。
【0040】
また、2つのインクジェットヘッド50Cu、インクジェットヘッド50Auはできるだけ近づけて配置されており、Cuナノ粒子インク又はAuナノ粒子インクの一方だけが乾燥して、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクの混合インクの層内での拡散混合が不十分になることが防止されている。
【0041】
なお、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを同時に吐出する際、インクジェットヘッド50Cuから吐出されるCuナノ粒子インクの液滴と、インクジェットヘッド50Auから吐出されるAuナノ粒子インクの液滴と、を飛翔中に空中で衝突させ、混合させてから着弾するようにしてもよい。
【0042】
さらに、詳細は後述するが、2つのインクジェットヘッド50Cu、インクジェットヘッド50Auはそれぞれのノズルが設けられる幅を1つのバンプパターンの幅(電極の幅)よりも大きく構成し、ステージ30の1回の移動により1つの層を形成することが好ましい。これにより、Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとが混ざりやすくなる。
【0043】
また、インクの拡散混合を促進するために、ステージ30を制御して基材であるICウェハ20を超音波処理してもよい。このとき、超音波による節が発生しにくくなるように、超音波の周波数をスイープさせたり、ICウェハ20の位置を変更しながら行うことが好ましい。
【0044】
このように形成した混合層24−2を、Cuナノ粒子インク層24−1と同様に半乾燥状態にすると、混合層24−2は量の比率が25:75のAuナノ粒子とCuナノ粒子が隙間をもって積み重なっている状態となる。
【0045】
次に、混合層24−2の上に混合層24−3を形成する。この混合層24−3の形成についても、図4(d)に示すように、ステージ30を移動させながら、インクジェットヘッド50Cuとインクジェットヘッド50Auとにより同時にインクを吐出する。ここでは、Cuナノ粒子インク、Auナノ粒子インクをともに50%の比率で吐出している。
【0046】
混合層24−2についても半乾燥状態となっているため、その上に形成された混合層2
4−3のナノ粒子インクの溶媒は、混合層24−2に受容される。インク吐出後、図4(e)に示すように、2つのインクを拡散混合することにより、混合層24−3が積層される。
【0047】
さらに、混合層24−3についても半乾燥させる。混合層24−3は量の比率が50:50のAuナノ粒子とCuナノ粒子が隙間をもって積み重なっている状態となる。
【0048】
このように、Cuナノ粒子インクとAuナノ粒子インクの吐出量の比率を段階的に(傾斜するように)変更しながら各混合層を形成し、最後にAuナノ粒子インク100%の層を形成する。
【0049】
全ての層の形成終了後、焼結部70において、窒素雰囲気中にて220℃程度で焼結させる。これにより、各層のナノ粒子が結晶化するとともに、各層の拡散が進み、段階的に形成した層が連続的となる。その結果、図1に示すように、組成成分比がCu100%からAu100%となるバンプ23が形成される。
【0050】
このように、下の層を半乾燥状態として上の層を形成することにより、その上下の層において、拡散がある程度進むようにしておく。このとき、上下の層の界面が無くなる状態、すなわち、完全に拡散混合して上下層の区別が無くなる状態とはならないようにする。
【0051】
なお、各層の形成が終わったあとに、ICウェハ20のICチップ21として機能していない領域にダミーパターンを積層し、レーザを用いた光学式変位センサ等によりダミーパターンの高さを測定してもよい。乾燥が進んでおらず、溶媒が残っている状態では、膜厚が高くなることから、ダミーパターンの高さにより乾燥状態を検出することができる。
【0052】
このようにバンプ23が形成されたICウェハ20は、ダイシング加工によりICチップ21毎にダイシングされ、ダイシングされたICチップ21はいわゆるフリップチップ実装により実装基板等に実装される。
【0053】
図5は、バンプ23が形成されたICチップ21の実装後の状態で示す概略断面図である。ICチップ21の電極22とプリント基板25の電極26とは、バンプ23を介して電気的に接続され、さらにモールド樹脂27により封止されている。
【0054】
バンプ23のボトム面(電極22側の面)はCuで構成されているため、ICチップ21の電極22とマイグレーション現象への耐性を高くして接続されている。また、バンプ23のトップ面(電極22と反対側の面)はAuから構成されているために実装が容易となり、プリント基板25の電極26と低抵抗で適切に接続される。
【0055】
以上説明したように、インクジェットヘッドを用いて傾斜機能材料であるバンプを形成することができる。また、本実施形態の描画混合法によれば、形成する層の数にかかわらず、機能性インクの種類とインクジェットヘッドの個数が少なくて済むという利点がある。Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合層は、それぞれのインクの混合比率が段階的に傾斜されるように形成されれば、何層積層してもよい。
【0056】
また、本実施形態では、インクジェットヘッド50Cuとインクジェットヘッド50Auとにおいて、同時にCuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを吐出して各層を形成したが、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを順に吐出してもよい。
【0057】
例えば、混合層24−2を形成する場合に、図6(a)に示すように、まずインクジェットヘッド50CuによりCuナノ粒子インク層24−1の上の全面にCuナノ粒子インクを吐出する。
【0058】
次に、図6(b)に示すように、インクジェットヘッド50AuによりAuナノ粒子インクを全面に吐出する。その後、図6(c)に示すように、それぞれのインクを拡散混合することで、同様に混合層24−2を形成することができる。
【0059】
このように、それぞれのインクを順に吐出して1つの層を形成する場合であって、2つのインクの吐出量に差がある場合、即ち、2つのインクの吐出量の比率が50%ずつでない場合は、吐出量の多い方のインクを先に吐出するように構成してもよい。
【0060】
特に、先に吐出するインクの乾燥が激しい場合(後に吐出するインクの乾燥に対して先に吐出するインクの乾燥が速く進行する特性を有する場合)等は、吐出量が少ないほど乾燥の進行が早まるため、吐出量が多い方のインクを先に吐出することが好ましい。これにより、2種類のインクの拡散混合をスムーズに進ませることができる。
【0061】
さらにこの場合、後から吐出することになる吐出量の少ない方のインクについては、所定のサイズよりも小さい液滴によってドットピッチ密度を高くして吐出してもよい。これにより、拡散混合する時間を短くすることができる。
【0062】
また、先に吐出したインクを着弾させた位置に、後から吐出するインクを重ねて着弾させるようにしてもよい。特に、間歇打ちを行ってドットとドットが離れている場合に、先に吐出したインクと同じ位置に乾燥させる前に着弾させると、それぞれのインクの拡散混合がしやすくなる。
【0063】
なお、間歇打ちと2ヘッドによる同時打滴を併用して、混合されるインク(ドット)を同時に着弾させる態様も可能である。また、ドット間の着弾干渉を防止するために、離散的に配置されたドット(2種類のインクが十分に拡散されたドット)を乾燥させながら、離散的に配置されたドット間を埋めるドットが形成される態様が好ましい。
【0064】
離散的に配置されたドットを乾燥させる具体例として、後から付与されるインクを加熱しておく形態が挙げられる。2ヘッドを十分に近接して配置することで、より高い効果を得ることができる。
【0065】
例えば、混合層24−2を形成する際に、1回目の走査でインクジェットヘッド50CuによりCuナノ粒子インクを間歇打ちにより吐出したとする。図14(a)は、Cuナノ粒子インク層24−1上に着弾したCuナノ粒子インク24−2−Cu―1を示す。
【0066】
次に、2回目の走査でインクジェットヘッド50AuによりAuナノ粒子インクを間歇打ちにより吐出する。このとき、インクジェットヘッド50Auは、図14(b)に示すように、吐出されたAuナノ粒子インク24−2−Au−1が、1回目の走査で着弾されているCuナノ粒子インク24−2−Cu−1と同じ位置に重ねて着弾するように吐出する。
【0067】
さらに、3回目の走査でインクジェットヘッド50CuによりCuナノ粒子インクが間歇打ちされる。図14(c)は、Cuナノ粒子インク24−2−Cu−1の間に着弾されたCuナノ粒子インク24−2−Cu−2を示す。
【0068】
その後、4回目の走査では、インクジェットヘッド50Auにより、Auナノ粒子インクがCuナノ粒子インク24−2−Cu−2と同じ着弾位置に重ねて着弾されるように吐出させる。図14(d)に示すように、吐出されたAuナノ粒子インク24−2−Au−2が、2回目の走査で着弾されているCuナノ粒子インク24−2−Cu−2と同じ位置に重ねて着弾するように吐出する。
【0069】
以後同様に、Cuナノ粒子インク層24−1の全面にインクを吐出し、その後、拡散混合させる。このように、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを吐出することにより、混合層24−2を形成する際の拡散混合の時間を短縮することができる。
【0070】
また、2種類のインクのうち一方のインクの乾燥の進行が速い場合は、当該一方のインクを後から吐出するようにしてもよい。
【0071】
なお、2種類のインクのうち一方のインクをインクジェット方式以外の方法で塗布し、他方のインクのみインクジェット方式で吐出してもよい。例えば、各混合層におけるインクの混合比率が、99:1、98:2、97:3、96:4、95:5といったように、量の比率に大きな差がある範囲で傾斜する場合に、少ない比率の方の機能性インクをインクジェット方式を用いて吐出することにより、効率的に傾斜機能材料を形成することができる。
【0072】
なお、インクジェット方式以外の塗布方法としては、ドクターブレード、スリットコート、スピンコート、スプレーコート、スクリーン印刷等を採用することができる。
【0073】
また、本実施形態では、Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクの2つの純インクを用いて各混合層を形成したが、これらを拡散混合したインクを併用してもよい。例えば、2つの純インクと、Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合比率が50:50の混合インクとの3種類のインクを同時に用いて混合層を形成することが考えられる。
【0074】
混合インクの分だけインクジェットヘッドの数が増加するが、混合インクは予め2つの純インクが十分拡散混合されているため、インク吐出後の拡散混合に要する時間を短縮することができる。
【0075】
<第2の実施形態>
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。第1の実施形態では、複数の純インクを吐出して描画により拡散混合する描画混合法によって、傾斜機能材料であるバンプの各層を形成したが、第2の実施形態では、予め拡散混合した混合インクを吐出することにより各層を形成する。
【0076】
〔バンプ作成装置の構成〕
図7は、第2の実施形態に係るバンプ作成装置101の全体構成図である。同図に示すように、本実施形態に係るバンプ作成装置101は描画部11を備え、描画部11は、5種類のインクを貯蔵するインクタンク60−1〜60−5と、各インクタンク60−1〜60−5からインクが供給されるインクジェットヘッド50−1〜50−5を備えている。各インクジェットヘッド50−1〜50−5は、各インクタンク60−1〜60−5から供給されるインクをICウェハ20に対して吐出する。
【0077】
各インクタンク60−1〜60−5から各インクジェットヘッド50−1〜50−5に供給されるインクは、Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合比率がそれぞれ0:100、25:75、50:50、75:25、100:0となっている。即ち、インクタンク60−1からはCuナノ粒子インクの純インクが、インクタンク60−5からはAuナノ粒子インクの純インクが、60−2〜60−4からはAuナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとが所定の比率で拡散混合された混合インクが供給される。
【0078】
〔バンプの作成〕
第1の実施形態と同様に、ステージ30上にICウェハ20を載置し、吸着及び加熱を行う(図3参照)。
【0079】
次に、吸着・加熱されたICウェハ20上に形成されているICチップ21の電極22の直上に、Cuナノ粒子インクを1層もしくは数層分積層してCuナノ粒子インク層28−1を形成する。このCuナノ粒子インクの積層は、図8(a)に示すように、移動機構によりステージ30を移動させながら(図では左方向に移動)、インクジェットヘッド50−1により電極22に対してインクタンク60−1から供給されるインク(Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合比率が0:100のCuナノ粒子インクの純インク)を吐出する。このとき、その他のインクジェットヘッド50−2〜50−5からはインクの吐出を行わない。
【0080】
したがって、このように形成されたCuナノ粒子インク層28−1は、図4(a)〜(e)に示すCuナノ粒子インク層24−1と同様の層となる。ここで、Cuナノ粒子インク中の溶媒が蒸発する程度に乾燥(半乾燥・半硬化)させると、Cuナノ粒子が隙間をもって積み重なっている状態となる。
【0081】
次に、Cuナノ粒子インク層28−1の上に、インクジェットヘッド50−2によりインクタンク60−2から供給される混合インク(Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合比率が25:75の混合インク)を吐出して、混合層28−2を形成する。
【0082】
混合層28−2の形成は、図8(b)に示すように、ステージ30を移動させながら、インクジェットヘッド50−2により混合インクを吐出する。第1の実施形態と同様に、Cuナノ粒子インク層28−1が半乾燥状態であるため、その上に形成された混合層28−2のナノ粒子インクの溶媒がCuナノ粒子インク層28−1に受容されて、極端にぬれ広がることがない。したがって、加熱温度はインクの蒸発のしやすさにより調整する必要がある。
【0083】
この混合層28−2についても半乾燥させることで、混合層28−2はAuナノ粒子及びCuナノ粒子が隙間をもって積み重なっている状態となる。
【0084】
さらに、混合層28−2の上に、インクジェットヘッド50−3によりインクタンク60−3から供給される混合インク(Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合比率が50:50の混合インク)を吐出して、混合層28−3を形成する。
【0085】
混合層28−2が半乾燥状態であるため、その上に形成された混合層28−3のナノ粒子インクの溶媒は、混合層28−2に受容される。さらに、混合層28−3についても半乾燥させる。
【0086】
このように、各混合インクをCuナノ粒子インクの混合比率が多い順(Auナノ粒子インクの混合比率が少ない順)に吐出して各混合層を積層し、最後にインクジェットヘッド50−5によりインクタンク60−5から供給されるAuナノ粒子インク(Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合比率が100:0のAuナノ粒子インクの純インク)を吐出して、Auナノ粒子インク100%の層(Auナノ粒子インク層28−5)を形成する(図8(c))。
【0087】
全ての層28−1〜28−5を形成終了後、焼結部70において窒素雰囲気中にて220℃程度で焼結させることにより、各層のナノ粒子が結晶化する。その結果、図1に示すような組成成分比がCu100%からAu100%となるバンプ23が形成される。このバンプ23により、図5に示すようにICチップ21をプリント基板25に実装することができる。
【0088】
以上説明したように、混合インクを用いて、傾斜機能材料を形成することができる。本実施形態のインク混合法によれば、インクの段階で充分に拡散混合されているため、機能の傾斜の変化の精度が高い傾斜機能材料を作成することができる。また、第1の実施形態の描画混合法と比較すると、2種類の機能性インクを拡散混合する時間が不要となるため、プロセス時間が短くて済むという利点がある。
【0089】
また、各混合層を形成する際に、複数回にわたって基材とインクジェットヘッド50−1〜50−5とを相対移動させて、1回の相対移動において間歇打滴を行ってドットを離散的配置させ、後からの相対移動において該離散的に配置されたドット間を埋めるように構成してもよい。
【0090】
かかる態様では、各層を構成するドット(インク)の着弾干渉が防止され、各層の形状の変形が防止される。そうすると、各層の変形に起因するコーヒー染み(コーヒーリング)の発生が防止される。
【0091】
本実施形態では、Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの混合層を3層形成したが、層の数はこれに限定されるものではなく、それぞれのインクの混合比率が傾斜されるように積層できれば何層でもよい。なお、形成する層の数だけインクタンクとインクジェットヘッドを用意する必要がある。
【0092】
<その他の変形例>
上記のように、本発明の一実施形態としてバンプの作成を例に説明したが、本発明に係る傾斜機能材料の製造方法、装置は、様々な変形例を有する。
【0093】
〔生成可能な傾斜機能材料〕
上記のバンプ作成装置では、マイグレーション耐性を持つCuから酸化しにくいAuへの傾斜機能を持つバンプを作成したが、本発明で生成可能な傾斜機能材料はこのような傾斜機能に限定されるものではなく、変化が人工的に構造化され、制御されている材料が生成可能である。
【0094】
具体的には、材料を構成する元素の組成、分子の組成、結晶構造、分子結晶構造、結晶配向、粒径、粒界、結合状態等が、連続的もしくは多段階的に変化する傾斜機能材料が生成可能である。
【0095】
機能としては、高耐熱性から高機械適正へ、絶縁性から導電性へ、高屈折率から低屈折率へ、金属光沢性から低反射性へ、高硬度から高密着性へ、生体適正から人工物適性へ、塑性から高硬度、撥水性から親水性へ等が生成可能である。
【0096】
また、成分としては、無機物から有機物へ、高分子量から低分子量へ、高密度膜から低密度膜へ、金属材料から絶縁材料へ、磁性から非磁性へ等が生成可能である。
【0097】
本発明によれば、インクジェット方式のヘッドを用いて、下層から上層へ向かって性質、機能、組成等が連続的に又は段階的に変化する傾斜機能材料を生成することができる。また、本発明により生成した傾斜機能材料は、電子デバイス部品、機械部品、医療部品として利用することができる。
【0098】
〔基材〕
本実施の形態では、平面板状部材であるシリコンのウェハ上に傾斜機能材料を生成しているが、基材はこれに限定されるものではない。
【0099】
例えば、リジッドな平板状物として、シリコンウェハ以外にもガラス板やガラスエポキシ基板、機械部品となる金属板等を用いることができる。
【0100】
また、フレキシブルな平板状物として、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、液晶ポリマー等の有機フイルムやインクジェット受容紙等の紙等を用いることができる。このような平板状のフレキシブル性のある基材を用いる場合には、ロール・トゥ・ロールで使用するドラムに固定して、傾斜機能材料を生成してもよい。
【0101】
また、立体物として、光学部品のレンズ、携帯電話のような筐体の表側あるいは裏側、ギア等の機械部品、歯のインプラントの部品、複雑な形状をもつ基材等を用いることができる。立体的な基材を用いる場合には、基材とインクジェットヘッドのノズルとの距離を一定に保つ機構を備えることが好ましい。また、基材の形状に応じたインク吐出を行ってもよい。例えば、円柱状の基材であれば、基材を回転させながらインクを吐出することにより、効率よく傾斜機能材料を生成することができる。
【0102】
このように、材質としてはガラス、半導体、金属、有機物等、いずれであっても可能である。プリント基板(ガラスエポキシ基板)の複合材料や、インクジェット受容紙のような積層材料でもよい。
【0103】
また、生成する傾斜機能材料は、基材の表面に膜として形成するだけでもよい。
【0104】
溶剤タイプのインクの場合、内容物(微粒子など)を受容層の最表面に残して、溶剤を吸収してしまうことができる。例えば、Agナノ粒子インクの場合には、受容層が溶剤を吸収するときにAgナノ粒子インク中の分散剤に影響を与えて、低温で導電性を発現することがあり、加熱処理が不要となる場合がある。
【0105】
〔基材の状態及び描画前処理〕
撥液性を有する基材の場合、機能性インクで最下層を描画することが難しい。このような場合には、機能性インクをはじかない程度に基材の表面を親液性の方向に改質してもよい。
【0106】
この濡れ性の改質方法としては、UVオゾン処理、O2アッシング、コロナ放電処理、下地層塗布、薄膜形成等が採用できる。このうち、下地層には、ポリイミド等の有機膜、ガラスコート等を用いることができる。
【0107】
また、化学的処理を行ってぬれ製の改質を行ってもよい。例えば、ポリエチレン基材を硫酸クロム酸混合液に浸すことにより、親水化させることができる。また、撥水性の強いテフロン(登録商標)基材をNa/NH3混合液に浸漬することで、表面が酸素修飾し、親水化させることができる。
【0108】
さらに、シラン系カップリング剤によれば、様々な基材に対して、官能基の種類によって親有機溶媒化させたり、親水化させたりすることができる。
【0109】
また、シリコン基材であれば、熱酸化膜を形成して水系溶液に対して親水化させたり、HF処理により、撥水化させることができる。
【0110】
有機フイルム基材であれば、石英水銀灯などを用いてUV照射処理をすることにより、表面に酸素が修飾され、親水化させることができる。
【0111】
また、プラズマ表面処理を行ってもよい。真空のチャンバーにAr、N2、O2、CF4、C2F6等のガスを導入してプラズマ表面処理を行うと、表面の油分を除く洗浄効果や表面との反応の効果により、親水化、撥水化させることができる。なお、真空チャンバーを利用しない大気圧プラズマ処理を行ってもよい。この場合、真空を利用しないため、簡易に表面を改質することができる。
【0112】
さらに、ゾルゲル法、スパッタ、プラズマCVD等により酸化チタン等の光触媒の膜を形成し、紫外線を照射することにより超親水化させることもできる。光触媒の膜をパターニングしたり、マスクを用いて選択的に照射したりすることにより、1つの基材上において親撥のパターニングを行ったものと同様の効果を得ることもできる。
【0113】
その他の描画前処理として、基材表面に密着性を増すための層を塗布してもよい。例えば、ラテックスなどの有機物、密着性に優れた金属種等が採用できる。
【0114】
それとは逆に、生成した傾斜機能材料を独立した小部品として使用する場合や、他の基材に転写して使用する場合には、基材と生成した傾斜機能材料とが容易に分離可能となるように、密着力が弱くなるような処理をしてもよい。
【0115】
密着力を弱くするためには、完全には撥液しない範囲において、溶液と基材表面がぬれにくい方向に調整すればよい。このように生成するには、バッファ層(離型層)を導入することが考えられる。予め、基材にぬれにくく、機能性インクともぬれにくいバッファ層となる膜を基材表面にコーティングしておくことにより、傾斜機能材料の生成後、バッファ層と基材とが剥がれるようになる。
【0116】
例えば、PET等の基材上に、有機フイルムのポリエチレングリコールの薄い膜を形成しておき、水系の機能性インクで傾斜機能材料を作成すればよい。
【0117】
基材の全面に傾斜機能材料を生成するのではなく、基材の特定部分にパターニングする場合には、基材に付着した機能性インクが、そのパターンのエッジから大きくはみ出さないように、予め基材表面に、親液性、撥液性のパターニングを行ってもよい。
【0118】
親液性、撥液性のパターニングの方法としては、各種印刷技術、フォトリソグラフィ技術、レーザーダイレクトイメージング、光触媒技術の応用などがあり、さらに適宜それらを組み合わせて使用することも可能である。
【0119】
また、基材に付着した機能性インクが、そのパターンのエッジから大きくはみ出さないようにするためには、その他にインクジェット描画の前に、予め枠による凹状の領域を設けてから、描画してもよい。この場合、枠の側面に親液性を付与して濡れ性を高めておいてもよい。さらに、枠の上面の撥液性を高めて、インクがはみ出さないようにしてもよい。
【0120】
基材には、受容層があってもよく、その受容層を必要なところにだけパターニングしておいてもよい。また、これらの方法を併用してもよい。
【0121】
〔撥液処理枠〕
上の層を形成した後に、上の層のインクが下の層のエッジ部分からこぼれ落ちたり、はみ出したりすると、層の高さが不均一になり、機能材料として不具合を生じる可能性がある。このような現象を防止するために、下の層を形成した後に、その層のエッジ部分を、次に形成する上の層のインクに対して撥液性にしてもよい。
【0122】
図9(a)は、ICチップ21の電極22の直上にインク層80−1を形成後、そのエッジ部分に撥液処理部81を形成したときの上面図、及び破線A−Aにおける断面図である。また、図9(b)は、その後インク層80−1の上にインク層80−2を形成したときの上面図、及び破線A−Aにおける断面図である。
【0123】
図9に示すように、インク層80−1の表面に吐出されたインク層80−2を形成するインクは、インク層80−1のエッジ部分に形成された撥液処理部81により、撥液処理部81の外側にはみ出すことがない。したがって、インク層80−1の上層に適切にインク層80−2を形成することができる。
【0124】
撥液処理部81を形成するには、フォトマスクを用いたパターニングや、ダイレクトレーザーイメージング、レーザを走査する方法や、インクジェットによるパターニング、スクリーン印刷等の各種印刷技術を利用できる。
【0125】
このように、インク層のエッジ部分を撥液性にすることで、精度の高い傾斜機能材料を形成することができる。
【0126】
〔エッジ枠〕
上の層のインクが下の層のエッジ部分からこぼれ落ちたり、はみ出したりすることを防止するために、撥液処理ではなく、エッジ部分に凸状の枠を設ける処理を行ってもよい。
【0127】
図10(a)は、ICチップ21の電極22の直上にインク層82−1を形成後、そのエッジ部分にエッジ枠83−1を形成したときの上面図、及び破線A−Aにおける断面図である。
【0128】
エッジ枠83−1の生成には、インクジェットによるパターニングや、スクリーン印刷などの各種印刷技術を利用可能である。インクジェットによるパターニングを用いる場合には、UVモノマーインクを用いてパターンを形成し、その直後に露光を行って硬化させて生成する方法が有効である。
【0129】
ここで、「モノマーインク」とは、機能性モノマー(重合性化合物)を主成分とするインクであり、界面活性剤、重合開始剤、重合禁止剤、モノマー以外の溶剤などが含まれていてもよい。また、顔料、金属ナノ粒子、セラミック粒子などの微粒子を分散させてもよいし、機能性ポリマーなどを溶解させてもよい。
【0130】
図10(b)は、図10(a)に示したインク層82−1の上に、インク層82−2を形成したときの上面図、及び破線A−Aにおける断面図である。
【0131】
同図に示すように、インク層82−1の表面に吐出されたインク層82−2を形成するインクは、インク層82−1のエッジ部分に形成されたエッジ枠83−1により、エッジ枠83−1の外側にはみ出すことがない。したがって、インク層82−1の上層に適切にインク層82−2を形成することができる。
【0132】
さらに、図10(c)は、図10(b)に示す状態から、エッジ枠83−2、83−3を形成しながらインク層82−3、82−4を形成し、さらにエッジ枠83−4を形成したときを示す断面図である。
【0133】
このエッジ枠83−4により、インクがはみ出すことなく、インク層82−4の上にさらにインク層を形成することができる。
【0134】
このように、インク層のエッジに逐次枠を設けてからその上のインク層を形成していくことで、インク層が多層の場合や、パターンが複雑な場合であっても、精度の高い傾斜機能材料を形成することができる。
【0135】
〔スピンコートの併用〕
基材の全面に傾斜機能材料を形成する場合等、各層を形成後に、スピンコートを行ってから次の上の層を形成してもよい。スピンコートを併用することにより、層の高さを薄膜化して層厚を調整し、基材面内の層の高さを均一化することが可能となる。また、単純にスピンコートにより傾斜機能材料を形成するよりも、インクジェット方式の技術を併用することにより、省液化が可能となる。
【0136】
なお、インクジェット方式により全層を積層した後に、スピンコートしてもよい。これにより、上記と同様の効果が得られる場合もある。
【0137】
〔半乾燥〕
本発明においては、下側に形成された層の上にインクを吐出して上側の層を形成する際、下の層がインク中の溶剤成分が完全には蒸発していない程度に乾燥(半乾燥)されていることが重要となる。
【0138】
乾燥の速いインクを用いており、吐出後にすぐに乾燥してしまう場合には、上の層を形成する直前に、下の層の乾燥程度を緩和するような薬液処理を施してもよい。図15(a)に示すように、Cuナノ粒子インク層24−1に混合層24−2が積層されると、図15(b)に示すように、混合層24−2の完全硬化を抑制するために、インクジェットヘッド50Sから混合層24−2の表面へ薬液24’が付与される。
【0139】
そうすると、薬液24’を付与しない場合に比べて、混合層24−2の乾燥の進行を遅らせて、好ましい半乾燥状態を維持したまま、次の層を形成しうる。図15(c)は、混合層24−2の表面に、次の混合層を形成するためのCuナノ粒子インク及びAuナの粒子インクを吐出させる状態が図示されている。
【0140】
例えば、薬液24’として溶剤インクが適用される場合であれば、その溶剤を予め下の層に塗布しておいてもよいし、その溶剤に浸漬してもよい。また、同じ溶剤でなくとも、水系インクの場合であれば水やアルコール、溶剤インクの場合であれば同様の極性や分子量をもつ溶剤を用いてもよい。
【0141】
さらに、上の層を形成する直前でなく、上の層を形成した後に、下の層の乾燥を緩和するような薬液処理をしてもよい。このような処理は、上の層からも薬液が浸透するため有効である。また、上下の層で同じ溶剤、もしくは下の層のコンテンツを溶解するような溶剤を上の層のインクに使用してもよい。
【0142】
さらに、当該薬液処理は、混合層を構成する複数のインク間(層内)における拡散を促進させる。図16から図18は、形態別の薬液処理を模式的に図示した説明図である。図16(a)から(c)は、混合層の形成に先立って薬液を付与する形態、図17(a)から(c)は、混合層の形成後に薬液を付与する形態、図18(a)から(c)は、混合層の形成中に薬液を付与する形態が図示されている。
【0143】
図16(a)は、Cuナノ粒子インク層24−1の表面にインクジェットヘッド50Sから薬液24’が付与される状態である。図16(b)は、Cuナノ粒子インク層24−1の表面に薬液24’が付与された状態で、インクジェットヘッド50CuからCuナノ粒子インクが付与される状態であり、図16(c)は、Cuナノ粒子インクが付与された状態で、インクジェットヘッド50AuからAuナノ粒子インクが付与される状態である。
【0144】
図16(c)に図示された状態では、Cuナノ粒子インク層24−1の表面近傍に薬液が受容されている。
【0145】
このようにして、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクによる混合層の形成に先立ち、薬液24’を付与しておくことで、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクの乾燥が抑制されるとともに、当該混合層内においてCuナノ粒子とAuナノ粒子との拡散を促進させることができる。
【0146】
また、下層(Cuナノ粒子インク層24−1)の乾燥の進行が緩和されるとともに、当該混合層(上層)との境界近傍における層間の拡散も生じるので、下層と上層との密着性が強化される。
【0147】
図17(a)は、Cuナノ粒子インク層24−1の表面にインクジェットヘッド50CuからCuナノ粒子インクが付与される状態であり、図17(b)は、Cuナノ粒子インク上にインクジェットヘッド50AuからAuナノ粒子インクが付与される状態である。
【0148】
図17(c)は、混合層を形成するCuナノ粒子インクとAuナノ粒子インクが付与された後に、インクジェットヘッド50Sから薬液24’が付与される状態である。このようにして、混合層を構成するCuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを付与した後に薬液24’を付与することで、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクの乾燥を抑制しつつ(仮に、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクの乾燥が進行したとしても、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクを薬液により溶かしながら)、当該混合層内においてCuナノ粒子とAuナノ粒子との拡散を促進させることができる。
【0149】
また、当該混合層(次の混合層形成における下層)の乾燥の進行が緩和され、好ましい半乾燥状態が維持されるとともに、次に形成される上層との境界近傍において生じる層間の拡散により、当該上層との密着性が強化される。
【0150】
図18(a)は、Cuナノ粒子インク層24−1の表面にインクジェットヘッド50CuからCuナノ粒子インクが付与される状態である。図18(b)は、Cuナノ粒子インクの上にインクジェットヘッド50Sから薬液24’が付与される状態であり、図18(c)は、薬液24’が付与されたCuナノ粒子インクの上にインクジェットヘッド50AuからAuナノ粒子インクが付与される状態である。
【0151】
このようにして、混合層を形成する途中で薬液24’を付与することで、Cuナノ粒子インク及びAuナノ粒子インクの乾燥を抑制しつつ、当該混合層内においてCuナノ粒子とAuナノ粒子との拡散を促進させることができる。
【0152】
上記のような薬液の塗布には、インクジェット方式のヘッドを用いることが好ましい。同じ装置内で塗布できるため構成がシンプルになるとともに、インクジェットの省液性により薬液の使用量が少なくて済むという利点がある。
【0153】
また、下の層の形成が終わった段階、もしくはその途中で、溶剤の乾燥程度を測定して、上の層の形成にフィードバックしてもよい。例えば、レーザ等により層のラフネスや反射強度を測定し、乾燥の目安とする。
【0154】
機能材料として用いない領域や、別途測定用のダミー領域を設け、その領域に接触することにより乾燥程度の測定を行ってもよい。また、吸収する繊維や紙を膜に接触させて、溶剤インクの吸収程度により乾燥程度を判断してもよい。乾燥程度の判断により、次の層の吐出のタイミングを決定し、下の層の更なる硬化を行う。
【0155】
紫外線の照射により硬化させるUVモノマーインク等の場合であれば、完全に硬化させるために必要な露光量よりも少ない露光量で照射し、上下層の拡散を促進させてもよい。また、UVモノマーインクの硬化は、層の形成が終わった後に全体を露光してもよいし、ヘッドやステージの走査に沿って同時に走査可能なUV−LED等のコンパクトなUV露光源を用いて、液滴の着弾直後に硬化させてもよい。
【0156】
UVモノマーインクは、加熱しても溶媒の蒸発が起こりにくい性質を有しているので、モノマーインクが用いられる場合には、加熱により層内及び層間の拡散を促進させることが可能である。
【0157】
なお、精密なパターンを形成する場合は、液滴の着弾直後に露光する方法が適している。UVモノマーインクを用いた場合も、上述の溶剤インクの場合と同様に、乾燥程度、固化程度を測定してもよい。
【0158】
UVモノマーインクなどのモノマーインクを用いる場合には、蛍光を利用して硬化度を測定する形態もありうる。
【0159】
〔描画部の装置構成〕
本実施の形態では、描画部にフラットベッドタイプのインクジェット描画装置が用いられているが、装置の構成についてもこれに限定されるものではない。
【0160】
まず、基材をセットする部位は、フラットベッドタイプの他、ドラムタイプでもよく、ベルト搬送であってもよい。また、インクジェットヘッドと基材とが相対的に移動すればよい。したがって、本実施形態のようにヘッドを固定して基材を稼動させる場合に限られず、基材を固定してインクジェットヘッドをXY方向に稼動させてもよい。また、これらを併用し、XY方向のうち一方をインクジェットヘッドが移動し、他方を基材が移動するように構成しても構わない。
【0161】
また、機能インクの描画方式は、シリアルプリンタ方式でもよいし、ラインプリンタ方式でもよい。大面積を効率よく描画するためには、シングルパスによるラインプリンタ方式の装置が適している。シングルパスであれば、インクジェットヘッドとインクが打滴される基材の各領域とが1回通過するだけで、各領域の全面にインクを吐出することができる。
【0162】
また、インクジェットの方式としては、コンティニュアス型、オンデマンド型のいずれでもよい。数10cm四方以上の大面積に描画する場合には、ノズルが複数あるオンデマンド型が好ましい。
【0163】
オンデマンド型の吐出方式を特徴付けるアクチュエータは、ピエゾ方式、サーマル方式、ソリッド方式、静電吸引方式等の種々の方式を用いることができる。ピエゾ方式は、水系以外に、有機溶剤系を吐出することも可能であり、機能性インクの吐出に適している。また、ノズルの並びについても、単列に配置、複数列に配置、千鳥格子状に配置のいずれでも構わない。
【0164】
これに対し、1mm以上の高さの枠があるような、凹状の基板に描画する場合は、比較的、飛翔距離の長いコンティニュアス型が適している。なお、飛翔距離が比較的短くなるピエゾ方式でも、ヘッドと基材の間に静電界を併用することで、飛翔距離を確保して描画
することも可能である。
【0165】
機能性インクの組成物のうち粒子系が大きいものを含む場合には、ノズル詰まりの可能性が低い、静電吸引方式やアコースティックジェットのヘッドが適している。
【0166】
1ピコリットル以下の微小な液滴量をコントロールして吐出する場合は、静電吸引方式の一種の、ニードル先端からインクを吐出するタイプが好ましい。
【0167】
インクタンクからインクジェットヘッドまでの供給路の間に、脱気モジュールを設けることが好ましい。脱気処理した機能性インクを用いることにより、インクジェットヘッドからの吐出を安定させることができる。
【0168】
また、ノズルから吐出される吐出液滴の直径と同等もしくはさらに小さいドットピッチ間隔で高密度に描画する場合であって、一度吐出した機能性インクにより液膜が形成された後に、基材やその液膜に対してさらに機能性インクを吐出する場合、脱気した機能性インクを用いると、液膜に発生する泡が減少することが、実験により確認されている。なお、ここでいう液膜とは、インクジェットヘッドによる描画により狙ったパターンの領域に液滴を付与し、それらが連結して液体の膜状になった状態をいう。
【0169】
脱気方法としては、脱気フィルターを通す方法や、超音波処理を行う方法等を採用することができる。
【0170】
〔インクジェットヘッドのヘッド長〕
描画混合法において2つのインクを吐出して混合層を形成する場合には、基材の一辺よりもインクジェットヘッドのヘッドセットの合計長(ヘッド長)が長くなるように構成し(長尺ヘッド)、シングルパスで各層を形成することが好ましい。特に、図6で説明したように2つのインクを順に吐出する場合、後から吐出する方のインクは、シングルパスで形成することが好ましい。後から吐出する方のインクが、インクジェットヘッドを複数回走査して分割して吐出するように構成されていると、1回目の走査と2回目の走査との間で、時間の経過が大きくなり、拡散の程度に違いが生じるという問題点が発生する。このような現象を防止するために、長尺のヘッドを用いてシングルパスで吐出を行う。
【0171】
図11(a)は、基材90上に形成する傾斜機能材料の領域91と、ヘッド50との幅方向の関係を示す概略図である。
【0172】
例えば、図11(a)に示すように、ヘッド50のノズル51が基材90の幅よりも長く配列されていることが好ましい。このように構成することにより、ヘッド50と基材90との相対的な移動を1回行うことで(シングルパス)、ヘッド50から領域91へのインクの吐出を適切に行うことができる。なお、ヘッド50が基材90の幅よりも小さくても、ノズル51の配列が領域91の幅よりも長く形成されていればよい。
【0173】
また、基材90のサイズが大きい等の理由により、図11(a)のようにヘッド50を構成することが困難な場合には、図11(b)に示すように、短尺の各ヘッドモジュール52を複数組み合わせることにより、基材90の幅をカバーする長さを有するヘッドセット53を構成し、このヘッドセット53を1つのヘッド50として扱ってもよい。
【0174】
〔装置の環境〕
機能性インクを吐出する場合、形成した層を乾燥させる場合、拡散混合する場合、最終的に完全固化し機能発現させる場合等、全体の製造プロセスを通じて、不活性ガスを充満させた雰囲気で行うことが好ましい。
【0175】
大気中で下の層を乾燥させるときには、表面に層厚よりずっと薄い酸化された表面層が形成される場合がある。この酸化された表面層は、次の上の層を形成した後に上下層の間である程度の拡散をさせようとするときに、界面となって障害となる場合がある。また、不要な界面が生じることにより、界面からの剥離などの不具合を生じる場合がある。
【0176】
したがって、不活性ガス中で各プロセスを行うことにより、酸化された表面層の形成の防止し、傾斜機能材料の発現に有効である。なお、不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン等を用いることができる。
【0177】
〔コーヒー染み現象対策〕
コーヒー染み現象を防止するため、機能性インクに沸点の違う溶剤を2種混合してもよい。コーヒー染み現象が生じると、コーヒーリングと呼ばれる膜内のエッジで膜厚が盛り上がり、層内での厚みが不均一となり、機能材料としてみたときに、不具合を生じることがある。
【0178】
沸点の違う溶剤を2種混合した機能性インクを用いて層を形成することにより、コーヒー染み現象を緩和させることができる。
【0179】
〔焼結部の構成〕
焼結部においてインクを乾燥もしくは固化させる手段としては、ホットプレートやアニール炉等での加熱の他、赤外線ランプ、LED、レーザ等による光の照射、ハロゲンランプを集光することにより瞬時に加熱を行うRTA(ラピッドサーマルアニール)法、マイクロ波による加熱、電子線によるエネルギー付与等がある。
【0180】
これらの乾燥方法等は、各層毎の形成後でも、全層を積層した後でも用いることが可能である。
【0181】
なお、赤外線やRTA等は、インクジェット装置の近傍に配置する構成にしてもよい。また、アニール炉を除き、真空状態で行ってもよい。真空状態で行うことにより、クラックの発生を防止することができる。さらに、上記の方法等により加熱しながら、同時に加圧処理を行ってもよい。これにより、形成された層の密度を高める効果や、機能発現を幇助する効果がある。
【0182】
なお、UVモノマーインク等、紫外線照射での(活性エネルギーの付与による)化学反応により硬化するようなインクを用いた場合は、UV露光(活性エネルギー照射)を行えばよい。
【0183】
〔描画跡対策〕
第1の実施形態の描画混合法、第2の実施形態の混合インク法によらず、乾燥が速いインクを用いた場合では、インクを吐出した層に描画跡が発生する可能性がある。
【0184】
図12は、沸点が160℃程度の有機溶剤系インクを使用して、60℃程度に加熱した基材に対して図面左から右へ、さらに上から下へラスタスキャン的に1つのノズルからインクを吐出してインク層92を形成した例を示す。このように、横1列への吐出が終了後に1段下の列を吐出する場合、乾燥の速いインクを用いているとすでに吐出した列が乾燥しており、次の列を描画した際に描画跡ができてしまう。
【0185】
このような描画跡が発生すると、インク層92の描画跡の方向による異方性が大きくなり、傾斜機能材料として好ましくない。
【0186】
このような異方性を低減するために、ヘッドと基材の走査方向を変更することが有効である。
【0187】
図13(a)は、インクジェットヘッド54と基材93上に形成する傾斜機能材料の領域94との相対移動関係を示す概略図である。インクジェットヘッド54と基材93は、図中の矢印のように相対移動されるとともにインクジェットヘッド54から機能性インクを吐出し、領域94にインク層を形成する。図3に示す装置であれば、ステージ制御部43によりステージ30が移動する。
【0188】
このとき、インクジェットヘッド54から吐出している機能性インクの乾燥が速いと、図12に示すような領域94のインク層には描画跡が発生する。
【0189】
したがって、領域94へのインク吐出終了後、図13(b)に示すように、相対移動の方向を90度変更させて、再び領域94へのインク吐出を行う。図3に示す装置であれば、ステージ制御部43によりステージ30の移動方向を変更すればよい。
【0190】
なお、図13(c)に示すように、基材93の向きを90度変更してから、同様の向きのラスタスキャン方式によって再び領域94へのインク吐出を行ってもよい。図3に示す装置であれば、ステージ30を90度回転させた後、図13(a)で示す方向と同じ方向に相対移動してインクを吐出すればよい。
【0191】
基材93側ではなく、インクジェットヘッド54が移動するように構成された装置においても同様であり、インクジェットヘッド54の移動方向を変更してもよいし、インクジェットヘッド54の移動方向を変更せずにステージ30を90度回転させてもよい。
【0192】
このように、相対移動してインクを吐出した後、90度異なる方向の相対移動によりさらにインクを吐出して1つの層を形成することで、描画跡が発生する場合であっても、異方性を低減することができる。なお、ここでは相対移動の方向を90度変更したが、略90度であればよい。
【0193】
〔異なる成分を経由する傾斜機能材料の生成〕
本実施の形態では、2種類の成分から成る傾斜機能材料を生成したが、成分の数は2種類に限定されるものではない。例えば、単純に機能性インクを混合するだけでは傾斜機能材料として機能を発揮しない場合がある。
【0194】
このような場合、例えば導電性と生体特性とを互いに徐々に変化させる場合であれば、Ag→Au→Pt→Tiのように、異なる成分を経由させるように各層を形成してもよい。このように、多種成分の傾斜機能材料であっても、本発明を用いて生成可能である。
【0195】
図19(a)から(e)は、描画混合法により4種類の成分から成る傾斜機能材料を生成する形態を模式的に図示した説明図である。4種類の成分として、Ag、Au、Pt、Tiが適用され、インクジェットヘッド50Ag、インクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Pt、インクジェットヘッド50Tiのそれぞれから、Agナノ粒子インク、Auナノ粒子インク、Ptナノ粒子インク、Tiナノ粒子インクが吐出される。
【0196】
図19(a)は、最下層となるAgナノ粒子インクによるAgナノ粒子インク層24−11が形成されるAgナノ粒子インク層形成工程が模式的に図示されている。Agナノ粒子インク層形成工程は、インクジェットヘッド50AgからAgナノ粒子インクを吐出させ、インクジェットヘッド50Au、インクジェットヘッド50Pt、インクジェットヘッド50Tiからインクを吐出させない。
【0197】
図19(b)は、Agナノ粒子インク層24−11の表面に混合層24−12を形成する工程が模式的に図示されている。Agナノ粒子インクが80%、Auナノ粒子インクが15%、Ptナノ粒子インクが5%、Tiナノ粒子インクが0%の比率で各インクを吐出させ、各インクを十分に拡散混合させる。
【0198】
図19(c)は、Agナノ粒子インク層24−11の上に、混合層(Agナノ粒子インク、Auナノ粒子インク、Ptナノ粒子インク、Tiナノ粒子インクの混合比率が80:15:5;0の混合層)24−12が形成された状態が模式的に図示されている。
【0199】
図19(d)は、先に形成された混合層24−12に積層される混合層24−13(図19(e)参照)を形成する工程は模式的に図示されている。
【0200】
図19(d)に示す混合層形成工程は、Agナノ粒子インクが60%、Auナノ粒子インクが25%、Ptナノ粒子インクが10%、Tiナノ粒子インクが5%の比率で各インクを吐出させ、各インクを十分に拡散混合させる。
【0201】
図19(e)は、混合層24−12に混合比率が異なる混合層24−13が積層された状態が模式的に図示されている。このようにして、4種類のインクの混合比率を適宜変更しながら、傾斜機能材料が形成される。
【0202】
なお、傾斜機能材料の最上層及び最下層を混合層とする形態や、すべての成分の混合比率が単純増加又は単純減少しない形態(例えば、一部の成分が一定の混合比率となる形態や増加、減少の両方を含む形態)も可能である。
【0203】
図19(a)〜(e)では、描画混合法において4種類(3種類以上)の成分を用いた傾斜機能材料が生成される態様を例示したが、もちろん、インク混合法においても3種類以上の成分を用いて傾斜機能材料を生成することも可能である。
【0204】
〔その他の実施形態〕
図20(a)、(b)は、2種類の成分を用いた傾斜機能材料を生成する際に、量比の少ない成分(Auナノ粒子インク)を先に付与し、量比の多い成分を後に付与する形態の説明図である。
【0205】
図20(a)に斜線ハッチを付したドット24−2−Au−1は、先に付与されたAuナノ粒子インクによるドットである。一方、破線により図示したドット24−2−Cu−1は、Auナノ粒子インクが付与された後に付与されるCuナノ粒子インクによる仮想的なドットである。
【0206】
Auナノ粒子インクとCuナノ粒子インクとの量比は2:8であり、この比率でAuナノ粒子インクによるドット24−2−Au−1とCuナノ粒子インクによるドット24−2−Cu−1の数量比率が決められている。
【0207】
なお、図示されていないが、Auナノ粒子インクによるドット24−2−Au−1と同じ打滴位置にもCuナノ粒子インクによるドット24−2−Cu−1が形成される。
【0208】
図20(b)は、先に付与されたAuナノ粒子インクによるドット24−2−Au−1が十分に濡れ広がった状態で、Cuナノ粒子インクが付与された状態が図示されている。
【0209】
このようにして、先に付与されたAuナノ粒子インクによるドット24−2−Au−1が十分に濡れ広げられて十分に薄くなることで、Auナノ粒子インクによるドット24−2−Au−1とCuナノ粒子インクによるドット24−2−Cu−1とは、Cuナノ粒子インクによるドット24−2−Cu−1が濡れ広がとともに、厚み方向に拡散混合されるので、拡散混合に必要な時間を短縮することができる。
【0210】
先に付与されるAuナノ粒子インクによるドット24−2−Au−1の濡れ性を向上させるために、電極22(下地)に改質処理(親液処理)が施されることや、Auナノ粒子インクに濡れ性を向上させる成分が添加されることが好ましい。
【0211】
傾斜機能材料を構成する複数の成分に対応した複数のインクは、表面張力(表面エネルギー)が大きい順に付与するとよい。相対的に表面張力が小さいインクを先に付与し、相対的に表面張力が大きいインクを後から付与すると、後から付与された相対的に表張力が大きいインクが十分に拡散混合されずに、層内で成分の分布が生じてしまう。
【0212】
また、図示は省略するが、後から付与されるインクを最密充填(ヘキサゴナル)に描画すると、拡散混合に要する時間を短縮することができる。
【0213】
以上説明した本発明に係る傾斜機能材料の製造方法及び装置は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0214】
〔付記〕
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0215】
(発明1):複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から前記第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料を製造する傾斜機能材料の製造方法であって、前記第1の材料を含む第1の機能性インクを第1のインクジェットヘッドに供給する工程と、前記第2の材料を含む第2の機能性インクを第2のインクジェットヘッドに供給する工程と、前記第1のインクジェットヘッドから吐出される第1の機能性インクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出される第2の機能性インクの量との比率を決定する制御工程と、前記決定された比率にしたがって前記第1のインクジェットヘッド及び/又は前記第2のインクジェットヘッドからインクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、前記形成工程を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層工程と、を含み、前記制御工程は、前記複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにインクの比率を決定することを特徴とする傾斜機能材料の製造方法。
【0216】
本発明によれば、第1のインクジェットヘッドから吐出される第1の機能性インクの量(体積)と第2のインクジェットヘッドから吐出される第2の機能性インクの量との比率(体積比率)を決定し、決定された比率にしたがってインクを吐出させて1つの層を形成する工程を繰り返して基材上に複数の層を積層し、複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにすることで、インクジェット方式の技術を用いて傾斜機能材料を製造することができる。
【0217】
本発明において、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの比率は、第1の機能性インクを100%としてもよいし、第2の機能性インクを100%としてもよい。
【0218】
本発明に係る機能性材料は、第1の材料及び第2の材料と異なる第3の機能性材料を含有する第3の機能性インクを用いる態様や、第1、第2及び第3の材料とは異なる第4の機能性材料を含有する第4の機能性インクを用いる態様もありうる。
【0219】
すなわち、本発明に係る機能性材料の製造方法は、1種類又は2種類以上の機能性インクを用いて基材上に液膜を形成し、機能性インクの混合比率(体積比率)が異なる液膜を積み重ねるように機能性インクの混合比率を連続的に変更して、基材から液膜の厚み方向について機能性インクの混合比率が傾斜傾向を示す傾斜機能材料を生成することを特徴とする。
【0220】
(発明2):発明1に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成工程は、前記第1の機能性インクと前記第2の機能性インクとの混合インクからなる層を形成する際に、表面張力の大きいインクを先に吐出させ、表面張力の小さいインクを後から吐出させることを特徴とする。
【0221】
かかる態様によれば、基材上に付与された第1の機能性インクと第2の機能性インクとの拡散混合が確実になされる。
【0222】
(発明3):発明1又は2に記載の機能性材料の製造方法において、前記形成工程は、第1の機能性インクを間歇吐出させて離散的に配置する第1の間歇吐出工程と、離散的に配置された前記第1の機能性インクと同じ位置に前記第2の機能性インクを間歇吐出させる第2の間歇吐出工程と、前記第2の間歇吐出工程の後に、離散的に配置された前記第1の機能性インクの間を補間するように前記第1の機能性インクを吐出させる第1の補間吐出工程と、前記第1の補間吐出工程により吐出させた第1の機能性インクと同じ位置に、前記第2の機能性インクを吐出させる第2の補間吐出工程と、を含むことを特徴とする。
【0223】
かかる態様によれば、第1の機能性インクを離散的に配置させることで、第1の機能性インクの着弾干渉が防止され、離散的に配置された第2の機能性インクを離散的に配置された第1の機能性インクと同じ位置に吐出させることで、当該同じ位置において、第1の機能性インクと第2の機能性インクとを滴単位で拡散混合させることができる。
【0224】
かかる態様において、比率の大きいインクを第1の機能性インクとし、比率の小さいインクを第2の機能性インクとする形態がある。比率に対応して、1回の吐出における第1の機能性インクの吐出量と第2の機能性インクの吐出量を異ならせる態様がありうる。
【0225】
(発明4):発明1又は2に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成工程は、前記第1のインクジェットヘッド及び前記第2のインクジェットヘッドのうち、一方のインクジェットヘッドから吐出させたインクの打滴位置に、他方のインクジェットヘッドからインクを吐出させることを特徴とする。
【0226】
(発明5):発明1から4のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記積層工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層内における第1の機能性材料又は第2の機能性材料の拡散を促進させる第1の補助インクが付与される第1の補助インク付与工程を含むことを特徴とする。
【0227】
かかる態様によれば、第1の機能性材料又は第2の機能性材料の層内における拡散が促進され、好ましい第1の機能性インク及び第2の機能性インクの混合層を形成しうる。
【0228】
(発明6):発明5に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記第1の補助インク付与工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層を形成する前に、前記第1の補助インクが付与されることを特徴とする。
【0229】
かかる態様によれば、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの混合層を形成する際の混合が促進され、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの混合が不十分に成ることが防止される。
【0230】
(発明7):発明5に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記第1の補助インク付与工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層を形成する際の前記第1の機能性インクが付与され前記第2の機能性インクが付与される前に、前記第1の補助インクが付与されることを特徴とする。
【0231】
かかる態様によれば、先に付与されたインクの乾燥が抑制され、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの混合が促進される。
【0232】
(発明8):発明5に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記第1の補助インク付与工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層が形成された後に、前記第1の補助インクが付与されることを特徴とする。
【0233】
かかる態様によれば、後から付与されたインクの拡散が抑制され、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの混合が促進される。
【0234】
(発明9):発明1から8のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記基材の前記第1の機能性インク又は前記第2の機能性インクが付与される面に、改質処理を施す改質処理工程を含み、前記形成工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクからなる層を形成する際に、前記第1の機能性インクの量と第2の機能性インクの量のうち、比率が小さい方を先に吐出させることを特徴とする。
【0235】
かかる態様によれば、比率が小さいインクを十分に濡れ広がらせた後に、比率の大きいインクが付与されるので、前記第1の機能性インク又は前記第2の機能性インクの厚み方向の混合が促進され、拡散混合の時間を短縮しうる。
【0236】
(発明10):発明1から8のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクからなる層を形成する際に、前記第1の機能性インクの量と第2の機能性インクの量のうち、比率が大きい方を先に吐出させることを特徴とする。
【0237】
かかる態様によれば、基材の前記第1の機能性インク又は前記第2の機能性インクの濡れ広がりが促進される。また、先に吐出させたインクが乾燥して、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの拡散混合がされないことを防止しうる。
【0238】
(発明11):発明1から10のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記基材上において、前記第1のインクジェットヘッドから吐出された第1の機能性インクと前記第2のインクジェットヘッドから吐出された第2の機能性インクとを拡散混合する拡散混合工程を含むことを特徴とする。
【0239】
かかる態様によれば、2つの機能性インクが十分に拡散混合された層を形成することができる。
【0240】
(発明12):発明11に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記拡散混合工程は、前記基材を超音波処理する工程を含むことを特徴とする。
【0241】
かかる態様によれば、比率が異なる複数の機能性インクを拡散混合させることができ、拡散混合工程の効率化が見込まれる。
【0242】
かかる態様によれば、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの拡散混合の時間を短縮することができる。
【0243】
(発明13):複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から前記第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料を製造する傾斜機能材料の製造方法であって、前記第1の材料を含む第1の機能性インクと前記第2の材料を含む第2の機能性インクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクを複数のインクジェットヘッドのそれぞれのインクジェットヘッドに供給する工程と、前記複数のインクジェットヘッドから1つのインクジェットヘッドを順に選択する選択工程であって、前記第1の機能性インクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に選択する選択工程と、前記選択されたインクジェットヘッドから混合インクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、前記形成工程を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層工程と、を含むたことを特徴とする傾斜機能材料の製造方法。
【0244】
本発明によれば、第1の機能性インクと第2の機能性インクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクをそれぞれのインクジェットヘッドに供給し、第1の機能性インクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に混合インクを吐出させて各層を形成し、基材上に複数の層を積層するようにしたので、インクジェット方式の技術を用いて傾斜機能材料を製造することができる。
【0245】
本発明における混合インクは、第1の機能性インクと第2の機能性インクとの混合比率が100:0でもよいし、当該混合比率が0:100でもよい。
【0246】
(発明14):発明13に記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成工程は、前記基材と前記複数のインクジェットヘッドとを相対的に複数回移動させながら前記混合インクによる1つの層を形成し、前記基材と前記複数のインクジェットヘッドとの1回の相対移動により前記混合インクを離散的に配置させ、前記基材と前記複数のインクジェットヘッドとの複数回の相対移動によって離散的に配置された前記混合インクの間を補間することを特徴とする。
【0247】
かかる態様によれは、1つの層を形成する際の着弾干渉を防止することで、着弾干渉によるインク(ドット)形状の変形による、層が円環状に変形するコーヒー染みの発生を防止しうる。
【0248】
(発明15):発明1から14のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成された層を半乾燥させる半乾燥工程を含むことを特徴とする。
【0249】
かかる態様によれば、各層間の境界近傍における拡散が生じ、各層間の密着性を向上させることができる。
【0250】
(発明16):発明1から15のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記積層工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層を形成した後に、前記形成された層と次に形成される層との境界近傍における拡散を生じさせる第2の補助インクが付与される第2の補助インク付与工程を含むことを特徴とする。
【0251】
かかる態様によれば、先に形成された層と後に形成された層との密着性が強化される。
【0252】
第1の補助インクと第2の補助インクとを共通化してもよい。
【0253】
(発明17):発明1から16のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記複数の層は、前記第1の機能性インクだけを含み前記第2の機能性インクを含まない混合インク、及び/又は前記第2の機能性インクだけを含み前記第1の機能性インクを含まない混合インクを有することを特徴とする。
【0254】
かかる態様によれば、第1の材料だけを含む層及び/又は第2の材料だけを含む層を形成することができる。
【0255】
(発明18):発明15から17のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記半乾燥工程は、前記形成された層の乾燥が速い場合には乾燥を遅らせることを特徴とする。
【0256】
かかる態様によれば、乾燥の進行が速いインクを用いた場合であっても、乾燥の進行を抑制することで半乾燥状態にすることができ、各層間の境界近傍における拡散を促進させることができる。
【0257】
例えば、第1の機能性インクの溶媒又は第2の機能性インクの溶媒を含む薬液を吐出させる工程を含む態様があり得る。
【0258】
(発明19):発明15から18のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成された層の乾燥の程度を測定する工程を備え、前記半乾燥工程は、前記測定された乾燥の程度に基づいて半乾燥させることを特徴とする。
【0259】
かかる態様によれば、適切に半乾燥状態にすることができる。
【0260】
かかる態様における計測する工程は、層の形成終了後、層の形成途中に測定を行う形態がありうる。
【0261】
傾斜機能材料として用いない領域、測定用のダミー領域を設ける形態もありうる。
【0262】
(発明20):発明1から19のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、各層の形成後に該形成された層の外周部を次に吐出されるインクに対して撥液化する撥液化工程を備えたことを特徴とする。
【0263】
かかる態様によれば、次に吐出されるインクが下の層からはみ出すことを防止することができる。
【0264】
(発明21):発明1から20のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、各層の形成後に該形成された層の外周部に次に吐出されるインクを取り囲むための枠を設ける枠生成工程を備えたことを特徴とする。
【0265】
かかる態様によれば、次に吐出されるインクが下の層からはみ出すことを防止することができる。
【0266】
(発明22):発明1から21のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記形成工程の前に、前記基材の表面を最初に吐出されるインクに対して親液化する親液化工程を備えたことを特徴とする。
【0267】
かかる態様によれば、基材の直上に最初に形成される層を適切に形成することができる。
【0268】
(発明23):発明1から22のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記各工程が不活性ガス雰囲気内で行われることを特徴とする。
【0269】
かかる態様によれば、形成された各層の酸化を防止することができる。
【0270】
(発明24):発明1から23のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法において、前記積層体を所定の焼結温度で焼結する焼結工程を備えたことを特徴とする。
【0271】
かかる態様によれば、適切な積層体を形成することがきできる。
【0272】
前記得られた積層体に対して硬化エネルギーを付与して前記積層体を完全硬化させる硬化工程を含む態様も可能である。
【0273】
かかる態様によれば、各層が結晶化されるとともに各層間の境界近傍における拡散が促進され、段階的に形成された複数の層が連続的になり、適切な積層体を形成することができる。
【0274】
かかる態様における硬化工程は、熱エネルギーの付与により積層体を硬化させる形態(焼成工程)や、紫外線等の活性光線の付与により積層体を硬化させる形態が含まれる。
【0275】
(発明25):複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から該第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料の製造装置であって、前記第1の材料を含む第1の機能性インクを吐出する第1のインクジェットヘッドと、前記第2の材料を含む第2の機能性インクを吐出する第2のインクジェットヘッドと、前記第1のインクジェットヘッドから吐出されるインクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出されるインクの量を制御する制御手段と、前記第1のインクジェットヘッドと前記第2のインクジェットヘッドとからインクを吐出させて1つの層を形成する形成手段と、前記形成手段により複数の層を積層して積層体を得る積層手段と、を備え、前記制御手段は、前記複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにインクの比率を決定することを特徴とする傾斜機能材料の製造装置。
【0276】
本発明によれば、第1のインクジェットヘッドから吐出される第1の機能性インクの量と第2のインクジェットヘッドから吐出される第2の機能性インクの量との比率を決定し、決定された比率にしたがってインクを吐出させて層を形成することにより基材上に複数の層を積層し、この複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにすることで、インクジェット方式の技術を用いて傾斜機能材料を製造することができる。
【0277】
(発明26):発明25に記載の傾斜機能材料の製造装置において、前記第1のインクジェットヘッド及び/又は第2のインクジェットヘッドと前記基材とを所定の方向に相対移動する移動手段を備え、前記第1のインクジェットヘッド及び/又は第2のインクジェットヘッドは、インク滴を吐出する複数のノズルが前記基材に形成すべき層の前記所定の方向と直交する方向の全域にわたって配列されており、前記形成手段は、前記移動手段による前記第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドの1回の相対移動において、1つの層を形成することを特徴とする。
【0278】
かかる態様によれば、第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドと基材とを相対的に1回だけ移動させて、基材の全域に対して第1の機能性インク及び第2の機能性インクを付与するシングルパス方式を用いて、効率よく各層を形成することができる。
【0279】
(発明27):発明25に記載の傾斜機能材料の製造装置において、前記第1のインクジェットヘッド及び/又は第2のインクジェットヘッドと前記基材とを相対移動する移動手段と、前記相対移動の向きを略90度変更する変更手段と、を備え、前記形成手段は、前記移動手段による相対移動時にインクを吐出させた後、前記変更手段により前記相対移動の向きを90度変更してから再び移動手段による相対移動時にインクを吐出させることを特徴とする。
【0280】
かかる態様によれば、描画跡に起因する異方性の発生を防止することができる。
【0281】
(発明28):複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から該第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料の製造装置であって、前記第1の材料を含む第1の機能性インクと前記第2の材料を含む第2の機能性インクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクを前記複数のインクジェットヘッドのそれぞれに供給する手段と、前記複数のインクジェットヘッドから1つのインクジェットヘッドを順に選択する選択手段であって、前記第1の混合インクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に選択する選択手段と、前記選択されたインクジェットヘッドから混合インクを吐出させて1つの層を形成する形成手段と、前記形成手段により層の形成を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層手段と、を備えたことを特徴とする傾斜機能材料の製造装置。
【0282】
本発明によれば、第1の機能性インクと第2の機能性インクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクをそれぞれのインクジェットヘッドに供給し、第1の機能性インクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に混合インクを吐出させて各層を形成し、基材上に複数の層を積層するようにしたので、インクジェット方式の技術を用いて傾斜機能材料を製造することができる。
【0283】
(発明29):発明25から28のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造装置において、前記形成手段は、コンティニュアス型のインクジェット方式により1つの層を形成することを特徴とする。
【0284】
かかる態様によれば、凹状の基材に対しても適切に各層を形成することができる。
【0285】
(発明30):発明25から28のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造装置において、前記第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドはピエゾ方式であり、吐出されたインクの飛翔距離を延ばすための電界を印加する電界印加手段を備えたことを特徴とする。
【0286】
これにより、インクの飛翔距離を延ばして適切に各層を形成することができる。
【符号の説明】
【0287】
10、11…描画部、20…ICウェハ、21…ICチップ、22…電極、23…バンプ、24−1〜24−3、28−1〜28−5、80−1、80−2…インク層、30…ステージ、40…吸着チャンバー、41…ポンプ、42…ヒータ、43…ステージ制御部、50Au、50Cu、50−1〜50−5、54…インクジェットヘッド、51…ノズル、53…ヘッドセット、70…焼結部、81…撥液処理部、83−1〜83−4…エッジ枠、91、94…領域、93…基材、100、101…バンプ作成装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から前記第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料を製造する傾斜機能材料の製造方法であって、
前記第1の材料を含む第1の機能性インクを第1のインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記第2の材料を含む第2の機能性インクを第2のインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記第1のインクジェットヘッドから吐出される第1の機能性インクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出される第2の機能性インクの量との比率を決定する制御工程と、
前記決定された比率にしたがって前記第1のインクジェットヘッド及び/又は前記第2のインクジェットヘッドからインクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、
前記形成工程を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層工程と、
を含み、
前記制御工程は、前記複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにインクの比率を決定することを特徴とする傾斜機能材料の製造方法。
【請求項2】
前記形成工程は、前記第1の機能性インクと前記第2の機能性インクとの混合インクからなる層を形成する際に、表面張力の大きいインクを先に吐出させ、表面張力の小さいインクを後から吐出させることを特徴とする請求項1に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項3】
前記形成工程は、第1の機能性インクを間歇吐出させて離散的に配置する第1の間歇吐出工程と、
離散的に配置された前記第1の機能性インクと同じ位置に前記第2の機能性インクを間歇吐出させる第2の間歇吐出工程と、
前記第2の間歇吐出工程の後に、離散的に配置された前記第1の機能性インクの間を補間するように前記第1の機能性インクを吐出させる第1の補間吐出工程と、
前記第1の補間吐出工程により吐出させた第1の機能性インクと同じ位置に、前記第2の機能性インクを吐出させる第2の補間吐出工程と、
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項4】
前記形成工程は、前記第1のインクジェットヘッド及び前記第2のインクジェットヘッドのうち、一方のインクジェットヘッドから吐出させたインクの打滴位置に、他方のインクジェットヘッドからインクを吐出させることを特徴とする請求項1又は2に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項5】
前記積層工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層内における第1の機能性材料又は第2の機能性材料の拡散を促進させる第1の補助インクが付与される第1の補助インク付与工程を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項6】
前記第1の補助インク付与工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層を形成する前に、前記第1の補助インクが付与されることを特徴とする請求項5に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項7】
前記第1の補助インク付与工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層を形成する際の前記第1の機能性インクが付与され前記第2の機能性インクが付与される前に、前記第1の補助インクが付与されることを特徴とする請求項5に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項8】
前記第1の補助インク付与工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層が形成された後に、前記第1の補助インクが付与されることを特徴とする請求項5に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項9】
前記基材の前記第1の機能性インク又は前記第2の機能性インクが付与される面に、改質処理を施す改質処理工程を含み、
前記形成工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクからなる層を形成する際に、前記第1の機能性インクの量と第2の機能性インクの量のうち、比率が小さい方を先に吐出させることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項10】
前記形成工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクからなる層を形成する際に、前記第1の機能性インクの量と第2の機能性インクの量のうち、比率が大きい方を先に吐出させることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項11】
前記基材上において、前記第1のインクジェットヘッドから吐出された第1の機能性インクと前記第2のインクジェットヘッドから吐出された第2の機能性インクとを拡散混合する拡散混合工程を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項12】
前記拡散混合工程は、前記基材を超音波処理する工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項13】
複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から前記第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料を製造する傾斜機能材料の製造方法であって、
前記第1の材料を含む第1の機能性インクと前記第2の材料を含む第2の機能性インクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクを複数のインクジェットヘッドのそれぞれのインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記複数のインクジェットヘッドから1つのインクジェットヘッドを順に選択する選択工程であって、前記第1の機能性インクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に選択する選択工程と、
前記選択されたインクジェットヘッドから混合インクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、
前記形成工程を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層工程と、
を含むことを特徴とする傾斜機能材料の製造方法。
【請求項14】
前記形成工程は、前記基材と前記複数のインクジェットヘッドとを相対的に複数回移動させながら前記混合インクによる1つの層を形成し、前記基材と前記複数のインクジェットヘッドとの1回の相対移動により前記混合インクを離散的に配置させ、前記基材と前記複数のインクジェットヘッドとの複数回の相対移動によって離散的に配置された前記混合インクの間を補間することを特徴とする請求項13に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項15】
前記形成された層を半乾燥させる半乾燥工程を含むことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項16】
前記積層工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層を形成した後に、前記形成された層と次に形成される層との境界近傍における拡散を生じさせる第2の補助インクが付与される第2の補助インク付与工程を含むことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項17】
前記複数の層は、前記第1の機能性インクだけを含み前記第2の機能性インクを含まない混合インク、及び/又は前記第2の機能性インクだけを含み前記第1の機能性インクを含まない混合インクを有することを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項18】
前記半乾燥工程は、前記形成された層の乾燥が速い場合には乾燥を遅らせることを特徴とする請求項15から17のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項19】
前記形成された層の乾燥の程度を測定する工程を備え、
前記半乾燥工程は、前記測定された乾燥の程度に基づいて半乾燥させることを特徴とする請求項15から18のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項20】
各層の形成後に該形成された層の外周部を次に吐出されるインクに対して撥液化する撥液化工程を備えたことを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項21】
各層の形成後に該形成された層の外周部に次に吐出されるインクを取り囲むための枠を設ける枠生成工程を備えたことを特徴とする請求項1から20のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項22】
前記形成工程の前に、前記基材の表面を最初に吐出されるインクに対して親液化する親液化工程を備えたことを特徴とする請求項1から21のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項23】
前記各工程が不活性ガス雰囲気内で行われることを特徴とする請求項1から22のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項24】
前記積層体を所定の焼結温度で焼結する焼結工程を備えたことを特徴とする請求項1から23のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項25】
複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から該第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料の製造装置であって、
前記第1の材料を含む第1の機能性インクを吐出する第1のインクジェットヘッドと、
前記第2の材料を含む第2の機能性インクを吐出する第2のインクジェットヘッドと、
前記第1のインクジェットヘッドから吐出されるインクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出されるインクの量を制御する制御手段と、
前記第1のインクジェットヘッドと前記第2のインクジェットヘッドとからインクを吐出させて1つの層を形成する形成手段と、
前記形成手段により複数の層を積層して積層体を得る積層手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにインクの比率を決定することを特徴とする傾斜機能材料の製造装置。
【請求項26】
前記第1のインクジェットヘッド及び/又は第2のインクジェットヘッドと前記基材とを所定の方向に相対移動する移動手段を備え、
前記第1のインクジェットヘッド及び/又は第2のインクジェットヘッドは、インク滴を吐出する複数のノズルが前記基材に形成すべき層の前記所定の方向と直交する方向の全域にわたって配列されており、
前記形成手段は、前記移動手段による前記第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドの1回の相対移動において、1つの層を形成することを特徴とする請求項25に記載の傾斜機能材料の製造装置。
【請求項27】
前記第1のインクジェットヘッド及び/又は第2のインクジェットヘッドと前記基材とを相対移動する移動手段と、
前記相対移動の向きを略90度変更する変更手段と、
を備え、
前記形成手段は、前記移動手段による相対移動時にインクを吐出させた後、前記変更手段により前記相対移動の向きを90度変更してから再び移動手段による相対移動時にインクを吐出させることを特徴とする請求項25に記載の傾斜機能材料の製造装置。
【請求項28】
複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から該第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料の製造装置であって、
前記第1の材料を含む第1の機能性インクと前記第2の材料を含む第2の機能性インクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクを前記複数のインクジェットヘッドのそれぞれに供給する手段と、
前記複数のインクジェットヘッドから1つのインクジェットヘッドを順に選択する選択手段であって、前記第1の混合インクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に選択する選択手段と、
前記選択されたインクジェットヘッドから混合インクを吐出させて1つの層を形成する形成手段と、
前記形成手段により層の形成を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層手段と、
を備えたことを特徴とする傾斜機能材料の製造装置。
【請求項29】
前記形成手段は、コンティニュアス型のインクジェット方式により1つの層を形成することを特徴とする請求項25から28のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造装置。
【請求項30】
前記第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドはピエゾ方式であり、
吐出されたインクの飛翔距離を延ばすための電界を印加する電界印加手段を備えたことを特徴とする請求項25から28のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造装置。
【請求項1】
複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から前記第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料を製造する傾斜機能材料の製造方法であって、
前記第1の材料を含む第1の機能性インクを第1のインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記第2の材料を含む第2の機能性インクを第2のインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記第1のインクジェットヘッドから吐出される第1の機能性インクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出される第2の機能性インクの量との比率を決定する制御工程と、
前記決定された比率にしたがって前記第1のインクジェットヘッド及び/又は前記第2のインクジェットヘッドからインクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、
前記形成工程を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層工程と、
を含み、
前記制御工程は、前記複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにインクの比率を決定することを特徴とする傾斜機能材料の製造方法。
【請求項2】
前記形成工程は、前記第1の機能性インクと前記第2の機能性インクとの混合インクからなる層を形成する際に、表面張力の大きいインクを先に吐出させ、表面張力の小さいインクを後から吐出させることを特徴とする請求項1に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項3】
前記形成工程は、第1の機能性インクを間歇吐出させて離散的に配置する第1の間歇吐出工程と、
離散的に配置された前記第1の機能性インクと同じ位置に前記第2の機能性インクを間歇吐出させる第2の間歇吐出工程と、
前記第2の間歇吐出工程の後に、離散的に配置された前記第1の機能性インクの間を補間するように前記第1の機能性インクを吐出させる第1の補間吐出工程と、
前記第1の補間吐出工程により吐出させた第1の機能性インクと同じ位置に、前記第2の機能性インクを吐出させる第2の補間吐出工程と、
を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項4】
前記形成工程は、前記第1のインクジェットヘッド及び前記第2のインクジェットヘッドのうち、一方のインクジェットヘッドから吐出させたインクの打滴位置に、他方のインクジェットヘッドからインクを吐出させることを特徴とする請求項1又は2に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項5】
前記積層工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層内における第1の機能性材料又は第2の機能性材料の拡散を促進させる第1の補助インクが付与される第1の補助インク付与工程を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項6】
前記第1の補助インク付与工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層を形成する前に、前記第1の補助インクが付与されることを特徴とする請求項5に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項7】
前記第1の補助インク付与工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層を形成する際の前記第1の機能性インクが付与され前記第2の機能性インクが付与される前に、前記第1の補助インクが付与されることを特徴とする請求項5に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項8】
前記第1の補助インク付与工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層が形成された後に、前記第1の補助インクが付与されることを特徴とする請求項5に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項9】
前記基材の前記第1の機能性インク又は前記第2の機能性インクが付与される面に、改質処理を施す改質処理工程を含み、
前記形成工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクからなる層を形成する際に、前記第1の機能性インクの量と第2の機能性インクの量のうち、比率が小さい方を先に吐出させることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項10】
前記形成工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクからなる層を形成する際に、前記第1の機能性インクの量と第2の機能性インクの量のうち、比率が大きい方を先に吐出させることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項11】
前記基材上において、前記第1のインクジェットヘッドから吐出された第1の機能性インクと前記第2のインクジェットヘッドから吐出された第2の機能性インクとを拡散混合する拡散混合工程を含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項12】
前記拡散混合工程は、前記基材を超音波処理する工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項13】
複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から前記第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料を製造する傾斜機能材料の製造方法であって、
前記第1の材料を含む第1の機能性インクと前記第2の材料を含む第2の機能性インクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクを複数のインクジェットヘッドのそれぞれのインクジェットヘッドに供給する工程と、
前記複数のインクジェットヘッドから1つのインクジェットヘッドを順に選択する選択工程であって、前記第1の機能性インクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に選択する選択工程と、
前記選択されたインクジェットヘッドから混合インクを吐出させて1つの層を形成する形成工程と、
前記形成工程を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層工程と、
を含むことを特徴とする傾斜機能材料の製造方法。
【請求項14】
前記形成工程は、前記基材と前記複数のインクジェットヘッドとを相対的に複数回移動させながら前記混合インクによる1つの層を形成し、前記基材と前記複数のインクジェットヘッドとの1回の相対移動により前記混合インクを離散的に配置させ、前記基材と前記複数のインクジェットヘッドとの複数回の相対移動によって離散的に配置された前記混合インクの間を補間することを特徴とする請求項13に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項15】
前記形成された層を半乾燥させる半乾燥工程を含むことを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項16】
前記積層工程は、前記第1の機能性インク及び前記第2の機能性インクの混合層を形成した後に、前記形成された層と次に形成される層との境界近傍における拡散を生じさせる第2の補助インクが付与される第2の補助インク付与工程を含むことを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項17】
前記複数の層は、前記第1の機能性インクだけを含み前記第2の機能性インクを含まない混合インク、及び/又は前記第2の機能性インクだけを含み前記第1の機能性インクを含まない混合インクを有することを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項18】
前記半乾燥工程は、前記形成された層の乾燥が速い場合には乾燥を遅らせることを特徴とする請求項15から17のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項19】
前記形成された層の乾燥の程度を測定する工程を備え、
前記半乾燥工程は、前記測定された乾燥の程度に基づいて半乾燥させることを特徴とする請求項15から18のいずれか1項に記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項20】
各層の形成後に該形成された層の外周部を次に吐出されるインクに対して撥液化する撥液化工程を備えたことを特徴とする請求項1から19のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項21】
各層の形成後に該形成された層の外周部に次に吐出されるインクを取り囲むための枠を設ける枠生成工程を備えたことを特徴とする請求項1から20のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項22】
前記形成工程の前に、前記基材の表面を最初に吐出されるインクに対して親液化する親液化工程を備えたことを特徴とする請求項1から21のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項23】
前記各工程が不活性ガス雰囲気内で行われることを特徴とする請求項1から22のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項24】
前記積層体を所定の焼結温度で焼結する焼結工程を備えたことを特徴とする請求項1から23のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造方法。
【請求項25】
複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から該第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料の製造装置であって、
前記第1の材料を含む第1の機能性インクを吐出する第1のインクジェットヘッドと、
前記第2の材料を含む第2の機能性インクを吐出する第2のインクジェットヘッドと、
前記第1のインクジェットヘッドから吐出されるインクの量と前記第2のインクジェットヘッドから吐出されるインクの量を制御する制御手段と、
前記第1のインクジェットヘッドと前記第2のインクジェットヘッドとからインクを吐出させて1つの層を形成する形成手段と、
前記形成手段により複数の層を積層して積層体を得る積層手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記複数の層が上層にいくほど前記第1の機能性インクの比率が小さい層であって前記第2の機能性インクの比率が大きい層となるようにインクの比率を決定することを特徴とする傾斜機能材料の製造装置。
【請求項26】
前記第1のインクジェットヘッド及び/又は第2のインクジェットヘッドと前記基材とを所定の方向に相対移動する移動手段を備え、
前記第1のインクジェットヘッド及び/又は第2のインクジェットヘッドは、インク滴を吐出する複数のノズルが前記基材に形成すべき層の前記所定の方向と直交する方向の全域にわたって配列されており、
前記形成手段は、前記移動手段による前記第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドの1回の相対移動において、1つの層を形成することを特徴とする請求項25に記載の傾斜機能材料の製造装置。
【請求項27】
前記第1のインクジェットヘッド及び/又は第2のインクジェットヘッドと前記基材とを相対移動する移動手段と、
前記相対移動の向きを略90度変更する変更手段と、
を備え、
前記形成手段は、前記移動手段による相対移動時にインクを吐出させた後、前記変更手段により前記相対移動の向きを90度変更してから再び移動手段による相対移動時にインクを吐出させることを特徴とする請求項25に記載の傾斜機能材料の製造装置。
【請求項28】
複数のインクジェットヘッドから基材にインクを吐出することにより、第1の材料から該第1の材料とは異なる第2の材料へ傾斜する傾斜機能材料の製造装置であって、
前記第1の材料を含む第1の機能性インクと前記第2の材料を含む第2の機能性インクとが混合された混合インクであって、それぞれ異なる比率で混合された複数の混合インクを前記複数のインクジェットヘッドのそれぞれに供給する手段と、
前記複数のインクジェットヘッドから1つのインクジェットヘッドを順に選択する選択手段であって、前記第1の混合インクの比率の高い混合インクが供給されるインクジェットヘッドから順に選択する選択手段と、
前記選択されたインクジェットヘッドから混合インクを吐出させて1つの層を形成する形成手段と、
前記形成手段により層の形成を繰り返して基材上に複数の層を積層して積層体を得る積層手段と、
を備えたことを特徴とする傾斜機能材料の製造装置。
【請求項29】
前記形成手段は、コンティニュアス型のインクジェット方式により1つの層を形成することを特徴とする請求項25から28のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造装置。
【請求項30】
前記第1のインクジェットヘッド及び第2のインクジェットヘッドはピエゾ方式であり、
吐出されたインクの飛翔距離を延ばすための電界を印加する電界印加手段を備えたことを特徴とする請求項25から28のいずれかに記載の傾斜機能材料の製造装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図1】
【図5】
【図3】
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【図13】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図1】
【図5】
【公開番号】特開2012−4555(P2012−4555A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111602(P2011−111602)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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