像担持体及びこれを用いた画像形成装置
【課題】画像形成装置に用いられる部品を減らし、画像形成装置の価格及び重量を低減し、画像形成プロセスを簡易化する画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置に用いられる像担持体であって、当該像担持体の外周表面の帯電体層が、体積抵抗が1015Ωcm以上、かつロックウェルM硬度が70度以上の樹脂で構成されている像担持体及びこれを用いた画像形成装置である。
【解決手段】画像形成装置に用いられる像担持体であって、当該像担持体の外周表面の帯電体層が、体積抵抗が1015Ωcm以上、かつロックウェルM硬度が70度以上の樹脂で構成されている像担持体及びこれを用いた画像形成装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電体層を有する像担持体とその像担持体を用いた画像形成装置に関し、特に、プリンタ、ファクシミリ、複写機などのオンデマンド印刷装置に用いられる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オンデマンド印刷装置のうち、電子写真方式の印刷装置は、印刷速度が速く、記録媒体の材質の画像品質に与える影響が比較的小さい等の利点があることから、広く用いられてきている。
【0003】
このような電子写真方式の印刷装置に用いられる画像形成装置は、例えば、図7に示されるように、帯電器19により像担持体である感光体1'が負の電位に一様に帯電され、その後、レーザ発振走査装置等の露光手段20によって感光体1'が露光され、静電潜像が感光体1'に形成される。また、現像剤容器6中の負極性の現像剤7が、導電性のスポンジローラ等からなる現像剤供給ローラ9によって導電性の弾性体からなる現像ローラ8に塗布され、現像ローラ8に現像剤7が担持される。その後、現像剤規制ブレード10により、現像ローラ8上の現像剤7が規制されて薄層状の現像剤層が形成される。
【0004】
そして、現像ローラ8の回転によって現像ローラ8上の現像剤7が静電画像が形成された感光体1'に接触し、現像剤7が感光体1'上の静電画像が形成された部分に移行し、静電潜像が現像され可視化されるというものである(特許文献1、2参照)。
さらに、この可視化された画像を普通紙等の記録媒体に印刷する場合は、図7に示されるように、記録媒体供給装置11により搬送される普通紙等の記録媒体12が、感光体1'及び転写ローラ13等によりなる転写部に搬送され、感光体1'から現像剤7が転写ローラ13に向かって移行することにより、記録媒体12上に転写される。そして、記録媒体12が定着装置14に搬送され、そこで現像剤7が記録媒体12に定着して印刷が完了する。
【0005】
また、電子写真方式の印刷装置に用いられる画像形成装置として、電界カーテン装置を有する画像形成装置もある(特許文献3〜5参照)。
この電界カーテン装置を有する画像形成装置は、例えば、特許文献5に記載されているように、帯電器により像担持体である感光体が正の電位に一様に帯電され、その後、レーザ発振走査装置等の露光手段によって感光体が露光され、静電潜像が感光体に形成されるというものである。
【0006】
この電子写真方式の印刷装置の画像形成装置は、画像形成装置によっても異なるが、像担持体である感光体、レーザ発振走査装置、帯電器とその電源、現像ローラ、現像剤供給ローラ、現像剤規制ブレード、電界カーテン装置等の多数の部品を含むものであり、画像形成装置の価格が高く、重量も重くなるという問題がある。特に、像担持体である感光体及びレーザ発振走査装置等は精密で高価な部品であり、画像形成装置、ひいては、印刷装置の価格を高くしている原因の一つである。
さらに、この電子写真方式の印刷装置では、帯電、露光、現像、転写、定着というように画像形成プロセスが複雑であるという問題もある。
【0007】
そこで、部品の数を減らし、価格及び重量を低減することができる画像形成装置として、レーザ発振走査装置を用いずに針電極、書込電極等の安価な帯電装置により像担持体の表面に静電潜像を書き込む画像形成装置がある(特許文献6、7参照)。
例えば、特許文献6に記載の画像形成装置は、表面に絶縁性の無機ガラス層を有する像担持体に、針電極を用いて静電潜像を書き込むものであり、特許文献7に記載の画像形成装置は、アルミニウム等の導電性材料からなり、接地されている基材と、この基材の外周に形成された絶縁性を有する帯電体層からなる像担持体に、書込電極を用いて静電潜像を書き込むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3381975号公報
【特許文献2】特開平7−234584号公報
【特許文献3】特開昭63−13068号公報
【特許文献4】特公平5−31146号公報
【特許文献5】特開2008−52034号公報
【特許文献6】特公昭63−45104号公報
【特許文献7】特開2002−172813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献6に記載の基材の外周表面上に絶縁性の無機ガラス層を有する像担持体では、無機ガラス層は物理的吸着水特性が極めてよいことから、無機ガラスの表面に水分がよく吸着し、この吸着した水分によりガラス表面の電気伝導率が高められて像担持体の帯電電荷が漏洩し、画像の解像度が低下してしまうという問題がある。
【0010】
さらに、特許文献7に記載のアルミニウム等の導電性基材の外周表面上に形成された絶縁性を有する帯電体層からなる像担持体では、具体的な帯電体層の材料等は開示されていない。仮に、帯電体層として無機ガラス層を形成した場合は、上記特許文献6と同様の問題が生じることになる。
また、帯電体層として樹脂を用いることも考えられるが、例えば、ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂などの体積抵抗が低い樹脂では、高解像度の画像が得られないという問題があり、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの硬度が低い樹脂では、耐擦性が不足し、印刷枚数の増加に伴い画像に傷などの不具合が生じるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記のような実情に鑑みて鋭意検討されたものであり、像担持体として、高い体積抵抗及び硬度を有する像担持体を提供することにより、画像形成装置に用いられる部品を減らし、画像形成装置の価格及び重量を低減し、画像形成プロセスを簡易化でき、高解像度の画像が得られる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、像担持体の外周表面の帯電体層が、所定の体積抵抗及びロックウェルM硬度を有する樹脂で形成されている像担持体を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1) 画像形成装置に用いられる像担持体であって、当該像担持体の外周表面の帯電体層が、体積抵抗が1015Ωcm以上、かつロックウェルM硬度が70度以上の樹脂で形成されている像担持体、
(2) 帯電体層が基材の外周表面上に形成されている上記(1)に記載の像担持体、
(3) 基材が導電性基材である上記(2)に記載の像担持体、
(4) 像担持体が円筒である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の像担持体、
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の像担持体、当該像担持体の帯電体層に静電潜像を形成するための帯電装置、現像剤を当該帯電体層に移行させるための現像ローラ、当該現像ローラに現像剤を付着させるための現像剤供給ローラ及び当該現像ローラ上の現像剤を規制するための現像剤規制ブレードを有する画像形成装置、
(6) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の像担持体、当該像担持体の帯電体層に静電潜像を形成するための帯電装置及び現像剤を当該帯電体層に移行させるための電界カーテン装置を有する画像形成装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の像担持体を用いれば、画像形成装置に用いられる部品を減らすことができ、その結果、画像形成装置の価格及び重量を低減し、画像形成プロセスを簡易化でき、高解像度の画像が得られる画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の像担持体の一構成例を示す斜視図である。
【図2】本発明の像担持体の他の構成例を示す斜視図である。
【図3】本発明の画像形成装置を用いて印刷をおこなう場合の一構成例を示す模式図である。
【図4】本発明の画像形成装置を用いてカラー印刷をおこなう場合の一構成例を示す模式図である。
【図5】本発明の画像形成装置を用いてカラー印刷をおこなう場合の他の構成例を示す模式図である。
【図6】本発明の画像形成装置の他の構成例を示す模式図である。
【図7】従来の画像形成装置を用いて印刷をおこなう場合の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
〔像担持体〕
本発明の画像形成装置に用いられる像担持体は、像担持体の外周表面に帯電体層が形成されているものであり、像担持体全体が帯電体層となっていても、基材の外周表面上に帯電体層が形成されているものであってもよい。
図1は、本発明の実施の形態に係る像担持体の一構成例を示す斜視図である。図1において、1は像担持体であり、2は帯電体層である。図1では、円筒状の樹脂により帯電体層2が形成されており、この帯電体層2がそのまま像担持体1となっている。このような像担持体1(帯電体層2)は、樹脂を押出成形法等により製造することができる。
また、上記図1では、像担持体1を円筒状の像担持体としたが、円筒状の像担持体に限らず、ベルト状の像担持体とすることもできる。
【0017】
帯電体層2は、体積抵抗が1015Ωcm以上、かつロックウェルM硬度が70度以上の樹脂から形成されている。
体積抵抗が1015Ωcm未満では、静電潜像を形成する際に電荷の漏洩が生じ、潜像に隣接する領域のコントラストが不明瞭となり、高解像度の画像が得られにくくなるからである。体積抵抗の測定法は、JIS K6911を用い得る。また、ロックウェルM硬度が70度未満では、耐擦性が不足するため、印刷枚数の増加に伴い帯電体層と後記する帯電装置や記録媒体との接触により帯電体層に傷等が発生し、画像の不具合が発生しやすくなるからである。
体積抵抗としては、1016Ωcm以上がさらに好ましい。また、ロックウェルM硬度としては、80度以上がさらに好ましい。
【0018】
ここで、樹脂の硬さの基準として、ロックウェルM硬度を採用したのは、ロックウェルR硬度やショア硬度と比較して、耐擦性の優れる高硬度領域の測定に適するからである。
このような体積抵抗及びロックウェルM硬度を有する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂を例示することができるが、特に、ポリカーボネートは、溶媒に溶解して塗料を作製することが容易であるため、帯電体層2を作製しやすいので好ましい。
また、これらの樹脂には、帯電性を調整するため、サリチル酸金属錯体等の帯電制御剤を混合してもよい。
帯電体層2をそのまま像担持体1として用いる場合の像担持体1(帯電体層2)の厚さは、0.5〜20mmが好ましく、1〜10mmがより好ましく、1〜3mmがさらに好ましい。この範囲であれば、電位を保持し、強度を保ち、重量を軽くすることができるからである。
【0019】
また、図2は、本発明の像担持体の他の構成例を示す斜視図である。図2において、1は像担持体であり、2は帯電体層であり、3は基材である。図2では、円筒状の基材3の外周表面上に帯電体層2が形成されており、これにより、像担持体1が構成されている。
そして、基材3の外周表面上に形成される帯電体層2としては、上記したような体積抵抗が1015Ωcm以上、かつロックウェルM硬度が70度以上の樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂を用いることができる。
【0020】
また、基材3の材料は特に限定されず、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂、これらの樹脂にカーボンファイバーやカーボンブラック等の導電性材料を添加して導電性を持たせた樹脂、アルミニウム、ステンレス、ジュラルミン、銅、鉄等の導電性を有する金属(合金を含む。以下同じ。)を用いることができる。特に軽量化を考慮した場合は、アルミニウム、ジュラルミンが好ましい。
導電性を持たせた樹脂及び導電性を有する金属のような導電性を有する材料を基材3として用いた場合は、帯電体層2を薄層とすることにより、帯電電位に対する帯電電荷量が少なくなるため、帯電・除電が容易になるため好ましい態様である。
【0021】
基材3の材料として樹脂を用いる場合は、押出成形法等の製法により円筒状に製造した樹脂をそのまま用いたり、板状の樹脂を丸める等して円筒状にして用いたりすることができる。また、金属を用いる場合は、引き抜き等の製法により円筒状に製造した金属管をそのまま使用したり、板状の金属を丸める等して円筒状にしたものを用いることができる。
基材3の厚さは、0.5〜20mmが好ましく、1〜10mmがより好ましく、1〜3mmがさらに好ましい。この範囲であれば、像担持体の強度を保ち、重量を軽くすることができるからである。
帯電体層2の厚さは、基材3を被覆することができる程度の厚さを有していればよく、厚さ0.05〜300μmが好ましく、0.1〜100μmがより好ましく、1〜10μmがさらに好ましい。この範囲であれば、電位を保持することができるからである。
【0022】
このような円筒状の基材3の外周表面上に帯電体層2が形成された像担持体1は、円筒状の基材3の上に、溶融状態の樹脂を塗布したり、溶剤に樹脂を溶解して塗料を作製し、この塗料を塗布したり、熱、紫外線、電子線等で架橋できる樹脂を塗布した後に硬化させる等の方法により作製することができる。塗布方法は、ドクターブレード、グラビアロール等のロール、スプレー、ディッピング等により塗布する方法を用いることができる。
例えば、帯電体層2の樹脂としてポリカーボネート樹脂を用いる場合は、塩化メチレンとトリクロロエタンの混合溶媒にポリカーボネート樹脂を溶解して塗料とし、この塗料を上記した塗布方法により塗布して、円筒状の基材3の外周表面上に帯電体層2を形成することができる。
【0023】
また、基材3を円筒状にする前に上記の方法により基材上に帯電体層2を形成し、その後、基材3を丸める等して円筒状にして像担持体1を作製してもよい。
このような円筒状の像担持体1は、その端部には樹脂又は金属のフランジ等が設置され、このフランジ等を駆動装置に接続させるようにして、画像形成装置に組み込むことができる。
【0024】
〔帯電装置〕
帯電装置は、像担持体の帯電体層の所望の部分と接触しその部分に電荷を与えて、帯電体層に静電潜像を形成するためのものである。帯電装置は、絶縁性の基板に像担持体の軸方向と同一の方向に導電性の微細な電極が複数形成されており、像担持体の軸方向と直交する方向に一列又は複数列電極が配列されているような公知のものを用いることができる。例えば、いわゆる針電極や櫛形電極が形成された帯電装置、前記特許文献7(特開2002−172813号公報)の図17に開示されているような基板に微細な電極が複数配列された帯電装置を好ましく用いることができる。
【0025】
帯電装置の電極及び電極間の幅は、静電潜像に高解像度が要求される場合は小さくする等静電潜像の解像度等を考慮して適宜決定することができる。
電極の幅は、例えば、3〜350μmが好ましく、20〜200μmがより好ましく、40〜100μmがさらに好ましい。また、電極間の幅は、例えば、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましく、5〜30μmがさらに好ましい。このような電極の幅及び電極間の幅の範囲であれば、電極の形成が容易であり、像担持体に高解像度の静電潜像を付与することができるようになるからである。
【0026】
電極の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムにスクリーン板を用いて所定の位置に導電性ペーストを印刷する方法、基板上に所望の厚さの導電層を形成し、電極として残したい部分のみにレジストパターンを被覆した後、ブラスト材を噴射して電極部以外の導電性材料を切削除去するサンドブラスト法や、樹脂フィルム上に感光性樹脂を用いてレジストパターンを形成し、レジスト凹部へ導電性ペーストを埋め込んだ後レジストを除去するリフトオフ法(アディティブ法)や、所望の厚さの導電層を形成し、電極として残したい部分のみレジストパターンを被覆した後、化学的エッチングにより、電極部以外の導電性材料を除去するエッチング法など、種々の方法を採用することができる。また、基材上に銀等を蒸着等して、電極パターンを形成することもできる。
特に、帯電装置は、像担持体の帯電体層に接触するものであるから、帯電装置の基材は樹脂やゴムを主体とするある程度の軟らかさを有するものが好ましく、薄板状やフィルム状のものが好ましい。
【0027】
〔像担持体を有する画像形成装置及びこれを用いた印刷〕
次に、本発明の像担持体を有する画像形成装置について説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置を用いて印刷をおこなう場合の一構成例を示す模式図である。
1は像担持体であり、5は帯電装置であり、6は現像剤容器であり、7は現像剤であり、8は現像ローラであり、9は現像剤供給ローラであり、10は現像剤規制ブレードであり、11は記録媒体供給装置であり、12は記録媒体であり、13は転写ローラであり、14は定着固定装置である。
【0028】
像担持体1は、図1又は2に示すような構成の像担持体を用いる。帯電装置5は、像担持体1の帯電体層2の所望の部分に所定の解像度で電位を与えて帯電させることができるものであればよく、上記したような帯電装置を用いることができる。
この帯電装置5は、現像プロセスの上流に位置し、さらに上流には帯電体層2の電位を接地等により放電させる手段や、所定の電位と逆極性に帯電させる手段を設け、静電潜像を安定化させるようにしてもよい。
【0029】
現像剤容器6内の現像剤7は、負極性を有するトナー、正極性を有するトナー等を用いることができる。例えば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の熱溶融性樹脂、サリチル酸金属錯体等の帯電制御剤、カーボンブラック、酸化銅、黄鉛、ニッケルチタンイエロー、ベンガラ、リソールレッド等の着色剤及び融点調整成分等を混練り粉砕等、又は内部ないし外部添加して重合した、粒子等の現像剤を用いることができる。
【0030】
また、現像ローラ8、現像剤供給ローラ9及び現像剤規制ブレード10は、電子写真方式の画像形成装置に通常用いられる現像ローラ、現像剤供給ローラ及び現像剤規制ブレードを用いることができる。現像ローラ8としては、例えば、金属のシャフト等の外周に、ポリウレタンフォーム、シリコーンゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPR)等を設けた導電性の弾性体等からなる現像ローラを例示できる。さらに、現像ローラ8の表面は、面粗度、電気抵抗あるいは現像剤の帯電性を調整する目的等のため、さらには、現像剤の現像ローラからの離型性を調整する目的等のために塗装してもよい。現像剤供給ローラ9としては、導電性のポリウレタンフォーム等の導電性のスポンジローラ等からなる現像剤供給ローラを例示できる。現像剤規制ブレード10としては、金属板等の支持部材の一端に断面形状が凸状のポリウレタン、ゴム等の弾性体、ブラシからなるブレードを設けた現像剤規制ブレードを例示できる。
さらに、記録媒体供給装置11、記録媒体12、転写ローラ13及び定着固定装置14は、電子写真方式の印刷装置に通常用いられる記録媒体供給装置、記録媒体、転写ローラ13及び定着固定装置を用いることができる。
【0031】
本発明の画像形成装置及びこの画像形成装置を用いて印刷する場合の方法について、トナーが正帯電の場合を例に取り、以下に具体的に説明する。
像担持体1は、帯電装置5によって、例えば、像担持体1の帯電体層2の現像剤7を移行させない部分の電位をプラス300Vに帯電させ、現像剤6を移行させたい部分を接地し電位をプラス5Vに帯電させる。これにより、静電潜像が像担持体1の帯電体層2に形成される。
【0032】
また、現像剤容器6内に存在する現像剤7をプラス200Vの電源に接続した現像剤供給ローラ9によりプラス200Vの電源に接続した現像ローラ8に塗布して、現像ローラ8に現像剤7を担持させる。このとき、現像ローラ8上の現像剤7は、現像剤供給ローラ9により撹拌・摩擦され正帯電し、現像剤規制ブレード10の一方端と現像ローラ8の表面との当接部で、現像ローラ8上の現像剤7を規制して薄層上の現像剤層を形成する。その後、現像ローラ8の回転により現像ローラ8上の現像剤7が像担持体1の帯電体層2に接触し、帯電体層2のプラス5Vに帯電した部分に現像剤7が移行する。そして、プラス300Vに帯電した部分には現像剤7が移行しないので、これにより像担持体1の帯電体層2に形成された静電潜像が現像され可視化される。
【0033】
そして、記録媒体供給装置11により搬送される普通紙等の記録媒体12が、像担持体1及び転写ローラ13等によりなる転写部に搬送され、像担持体1の帯電体層2から現像剤7が例えば、マイナス250Vに帯電した転写ローラ13に向かって移行することにより、記録媒体12上に転写される。その後、記録媒体12は定着固定装置14に搬送され、現像剤7が記録媒体12に定着され、印刷が完了する。
上記の方法では、現像ローラ8から像担持体1の帯電体層2の現像剤7を移行させる部分の電位をプラス5Vとしたが、現像剤7を移行させる部分を接地してゼロ電位としたり、転写ローラ13よりはるかに低い−5〜−50V程度の負電圧を印加して微弱に負帯電させたりすることもできる。特に、ゼロ電位から微弱に正帯電させた状態が好ましい。
さらに、像担持体1の帯電体層2は、所定の電位となるように電圧を印加するが、電圧印加に先立って、接地等の方法で放電させたり、所定の電位とは逆電極に帯電させたりする等の方法により、静電潜像を安定化させるのも好ましい態様である。
【0034】
以上、現像剤7が正極性を有するトナーを用いた場合の画像形成装置及びこの画像形成装置を用いて印刷する場合の方法について説明したが、現像剤7が負極性を有するトナーを用いた場合は、像担持体1の帯電体層2はマイナスに帯電させることにより、帯電体層2に形成された静電潜像が反転現像され可視化され、転写ローラ13をプラスに帯電させることにより、現像剤7を記録媒体12に転写させることができる。なお、正極性を有するトナーを用いた方が、像担持体1の帯電体層2を帯電させる際のオゾン発生を抑制することができるので好ましい。
このように、本発明の像担持体1によれば、現像剤7の負極性、正極性のいずれによっても、像担持体を変える必要がなく、一つの像担持体によって、負極性及び正極性のいずれの現像剤も用いることができるという利点もある。
【0035】
さらに、図3には図示していないが、本発明の画像形成装置に、従来の画像形成装置と同様に像担持体1の帯電体層2に付着している転写残りの現像剤7や、紙粉等の記録媒体12からの移行物質を除去するクリーニング装置を設けることもできる。クリーニング装置を設ける場合は、転写部の下流側、静電潜像形成より上流側に配置する。
【0036】
〔像担持体を有する画像形成装置を用いたカラー印刷〕
次に、本発明の画像形成装置を用いてカラー印刷をおこなう方法について説明する。
図4及び5は、本発明の画像形成装置を用いてカラー印刷をおこなう場合の構成例を示す模式図であり、図4は、いわゆる中間転写ベルト型のカラー印刷装置であり、図5は、いわゆる記録媒体タンデム型のカラー印刷装置である。
【0037】
図4において、15は中間転写ベルトであり、16は2次転写ローラであり、17は中間転写ベルトを回転させるための回転ローラである。図5において、18は記録媒体搬送ベルトであり、19は記録媒体搬送ベルトを回転させるための回転ローラである。さらに、図4及び5では、図面下方からイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順にそれぞれの色を有する現像剤を有する画像成形装置21〜24が配置されている。これらの画像形成装置21〜24の構成については、図3に示すような画像形成装置と同じであるので、ここでは省略する。また、図4及び5において、図3の部品と同じ部品については同じ番号を用いた。
【0038】
図4の中間転写ベルト型のカラー印刷装置の場合は、まず、イエローの画像成形装置21から中間転写ベルト15へイエローの現像剤を転写ローラ(1次転写ローラ)13で転写し、次いで、マゼンタの画像成形装置22、シアンの画像成形装置23、ブラックの画像成形装置24により、マゼンタ、シアン、ブラックの各現像剤を順次転写し、2次転写ローラで各現像剤をさらに記録媒体12に転写して、定着固定装置14により定着させ、カラー印刷が完了する。
また、必要に応じて、図示しない弾性ローラやブレードで中間転写ベルト15をクリーニングしたり、除電したりすることができる。
【0039】
図5の記録媒体タンデム型のカラー画像形成装置の場合は、まず、イエローの画像成形装置21から記録媒体搬送ベルト18により搬送された記録媒体12へイエローの現像剤を転写ローラ13で転写し、次いで、マゼンタの画像成形装置22、シアンの画像成形装置23、ブラックの画像成形装置24により、マゼンタ、シアン、ブラックの各現像剤を順次転写して、定着固定装置14により定着させ、カラー印刷が完了する。
また、必要に応じて、図示しない弾性ローラやブレードで記録媒体搬送ベルトをクリーニングしたり、除電したりすることができる。
【0040】
なお、図4及び5では、図面下方からイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順にそれぞれの色を有する現像剤を有する画像成形装置が配置されているが、この順は適宜入れ替えることができる。
このほかにも、電子写真方式の4サイクル方式のカラー印刷も採用することができる。
【0041】
〔電界カーテン装置を有する画像形成装置〕
本発明の像担持体は、上記したような画像形成装置に限らず、電界カーテン装置を有する画像形成装置等の像担持体として用いることができる。
図6は、本発明の画像形成装置の他の構成例を示す模式図であり、本発明の像担持体を用いた電界カーテン装置を有する画像形成装置の一構成例を示すものである。
1は像担持体であり、5は帯電装置であり、6は現像剤容器であり、7は現像剤であり、31は電界カーテンパネルであり、32は電極であり、33は電界カーテン駆動用のn相交流電源である。
【0042】
像担持体1及び帯電装置5については、上述したので、ここでは説明を省略する。
電界カーテンパネル31上には、複数の電極32が形成されており、電界カーテン駆動用のn相交流電源33により、この複数の電極32に電圧が印加されるようになっている。
また、現像剤容器6は、現像剤7、電界カーテンパネル31等を収納しており、その一部が開口している開口部を有しており、その開口部で電界カーテンパネル31上に形成された複数の電極32の一部が像担持体1に対面している。
【0043】
さらに、電界カーテンパネル31及び複数の電極32の一部が現像剤容器6内の現像剤だまりの中に入り込んでいる。そして、この複数の電極32に、電界カーテン駆動用のn相交流電源33により位相の異なる三相以上の交流電圧を印加すると、この複数の電極32に移動電界が生じ、現像剤容器6内の現像剤だまりから現像剤7が次々に電極32の上方に搬送されるようになっている。
ここで、電界カーテン装置とは、少なくとも、電界カーテンパネル31、電界カーテンパネル31上に形成された複数の電極32及び電界カーテン駆動用のn相交流電源33を含む装置を意味する。
【0044】
このような画像形成装置では、例えば、現像剤7として負極性を有するトナーを用いた場合、帯電装置5によって、像担持体1の帯電体層2の現像剤7を移行させない部分の電位をマイナスに帯電させ、現像剤6を移行させたい部分をプラスに帯電させる。すると、像担持体1が電極32の対面電極となり、電極32上の現像剤7が像担持体1の帯電体層2のプラスに帯電した部分に移行する。そして、マイナスに帯電した部分には現像剤7が移行しないので、これにより像担持体1の帯電体層2に形成された静電潜像が反転現像され可視化されるようになる。
なお、図6では、電界カーテンパネル31が水平に配置されている場合を示したが、水平に限らず、斜めでも、一部が斜めで一部が水平のものであってもよい。また、図6では、現像剤容器6の底面が水平の場合を示したが、像担持体1に移行されなかった現像剤7を現像剤だまりに回収できるように現像剤容器6の底面を斜めにしてもよい。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
(1)像担持体
直径40mm、厚さ1.5mm、長さ220mmのアルミニウム製の円筒状の導電性基材3の外周表面上にポリカーボネート(三菱化学社製)を塩化メチレンとトリクロロエタンの混合溶媒に溶解した塗料を塗布・乾燥し、厚さ40μmの帯電体層2を形成し、図2に示すような、静電潜像を形成するための像担持体1(像担持体1a)を製造した。
【0046】
そして、帯電体層2の材料であるポリカーボネートの体積抵抗を測定するために、直径100mm、厚さ2mmの試料を作製し、エーディーシー社製の絶縁抵抗計を用いてJIS K6911法により測定したところ、その体積抵抗は1016Ωcmであった。
また、帯電体層2の材料であるポリカーボネートのロックウェルM硬度を測定するために、直径100mm、厚さ2mmの試料を作製し、松沢精機社製の硬度計を用いてJIS K6911法により測定したところ、そのロックウェルM硬度は82度であった。
【0047】
(2)帯電装置
帯電装置5として、櫛形の電極を有するフレキシブル・プリント基板からなる帯電装置を用いた。
(3)現像剤
スチレンアクリル樹脂(60質量部)、カーボンブラック(35質量部)、ワックス(4質量部)、樹脂酸変成シアン化合物の帯電制御剤(1質量部)等をミキサーで混練し、粉砕、分級して、粒径6μmの正の帯電性を有する現像剤7を得た。
【0048】
(4)現像ローラ
特許第2990005号公報に記載されている方法により、末端にアリル型の第一級水酸基を有するポリブタジエン系のポリオールとトリレンジイソシアネート(TDI)との反応により得られたポリウレタン樹脂を金属シャフトの外周に有する外形が16mmの現像ローラ8を得た。
(5)現像剤供給ローラ
特許第2855335号公報に記載されている方法により、ポリウレタンフォームで、無電界メッキを施した直径6mmの硫黄快削鋼軸を被覆し、ポリウレタン系熱溶融フィルム接着剤で接着し、フォーム部の外形が12mmとなるように切削して現像剤供給ローラを得た。
【0049】
(6)現像剤規制ブレード
特開2004−163615号公報に記載されているようなブレードの長さ方向に突出するリブが設けられている現像剤規制ブレード10を用いた。
(7)画像形成装置
上記の像担持体1、帯電装置5、現像剤7、現像ローラ8、現像供給ローラ9等を有する図3に示すような画像形成装置を用いた。
【0050】
(8)印刷条件
図3に示すような画像形成装置を用いて普通紙の記録媒体12に印刷した。
このとき、記録媒体12としてはゼロックス社製4420普通紙を用い、現像ローラ8と現像供給ローラ9の電位はプラス200Vとし、転写ローラ13の電位はマイナス250Vとした。
まず、帯電装置5により、像担持体1aの帯電体層2の現像剤7を移行させない部分の電位をプラス300Vに帯電させ、現像剤7を移行させたい部分の電位をプラス5Vに帯電させた。
次いで、記録媒体供給装置11から搬送された普通紙の記録媒体12を転写部に送り、像担持体1aと転写ローラ13とにより印刷し、定着固定装置14により現像剤5を定着した。この印刷物を目視により観察したところ、良好な画像が得られていることを確認した。
【0051】
実施例2
(1)像担持体
直径40mm、厚さ1.5mm、長さ220mmのポリカーボネート製(三菱化学社製)の円筒状の基材を押出成形法により形成し、それをそのまま図1に示すような、静電潜像を形成するための像担持体1(像担持体1b)とした。
そして、この像担持体1b(帯電体層2)の材料であるポリカーボネートは、実施例1と同じであるので、体積抵抗は1016Ωcmであり、ロックウェルM硬度は82度である。
【0052】
(2)画像形成装置及び印刷条件
像担持体1bのほか、実施例1と同様の帯電装置5、現像剤7、現像ローラ8、現像剤供給ローラ9及び現像剤規制ブレード10を用いて、図3に示すような画像形成装置を構成し、この画像形成装置用いて、実施例1と同様の印刷条件で、普通紙の記録媒体12に印刷し、現像剤5を定着した。この印刷物を目視により観察したところ、実施例1と同様に良好な画像が得られていることを確認した。
【0053】
実施例3
(1)像担持体
直径40mm、厚さ1.5mm、長さ220mmのポリアセタール(ポリプラスチック社製)の円筒状の基材を射出成形法により形成し、それをそのまま図1に示すような、静電潜像を形成するための像担持体1(像担持体1b)とした。
そして、同材料を直径100mm、厚さ2mmの円板に成形した試料の体積抵抗及びロックウェルM硬度を実施例1と同様に測定したところ、体積抵抗は1017Ωcmであり、ロックウェルM硬度は90度であった。
(2)画像形成装置及び印刷条件
この像担持体1bを用いて、実施例2と同様の画像形成装置及び印刷条件で、印刷物を印刷した。この印刷物を目視により観察したところ、実施例1と同様に良好な画像が得られていることを確認した。
【0054】
比較例1
(1)像担持体
直径40mm、厚さ1.5mm、長さ220mmのフェノール樹脂(日立化成社製)の円筒状の帯電体層2を射出成形法により形成し、それをそのまま図1に示すような、静電潜像を形成するための像担持体1(像担持体1b)とした。
そして、帯電体層2の材料であるフェノール樹脂の体積抵抗及びロックウェルM硬度を実施例3と同様に測定したところ、体積抵抗は1013Ωcmであり、ロックウェルM硬度は95度であった。
(2)画像形成装置及び印刷条件
この像担持体1bを用いて、実施例2と同様の画像形成装置及び印刷条件で、印刷物を印刷した。この印刷物を目視により観察したところ、実施例1より画像の解像度が劣っており、高精彩な画像の輪郭がぼやけていた。
【0055】
比較例2
(1)像担持体
比較例1と同様にして、ポリプロピレン樹脂(三井化学社製)の円筒状の基材を射出成形法により形成し、それをそのまま図1に示すような、静電潜像を形成するための像担持体1(像担持体1b)とした。
そして、帯電体層2の材料であるフェノール樹脂の体積抵抗及びロックウェルM硬度を実施例3と同様に測定したところ、体積抵抗は1016Ωcmであり、ロックウェルM硬度は65度であった。
(2)画像形成装置及び印刷条件
この像担持体1bを用いて、実施例2と同様の画像形成装置及び印刷条件で、印刷物を印刷した。この印刷物を目視により観察したところ、当初は良好な画像が得られたが、印刷枚数の増加にともない、白い筋が発生するようになり、像担持体表面を観察したところ、周方向に傷が発生していた。
【0056】
以上、実施例及び比較例の結果から、本発明の像担持体を用いれば、像担持体、帯電装置、現像ローラ、現像剤供給ローラ、現像剤規制ブレード等の部品により画像形成装置を構成することができ、精密で高価な感光体及びレーザ発振走査装置等、さらに重量のある帯電器とその電源を用いなくても良好な印刷ができ、画像形成装置に用いられる部品の数を減らし、画像形成装置の価格及び重量を低減することができ、画像成形プロセスを簡易化することができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の帯電体層を有する像担持体及びその像担持体を用いた画像形成装置は、プリンタ、ファクシミリ、複写機などのオンデマンド印刷装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 像担持体
2 帯電体層
3 基材
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電体層を有する像担持体とその像担持体を用いた画像形成装置に関し、特に、プリンタ、ファクシミリ、複写機などのオンデマンド印刷装置に用いられる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オンデマンド印刷装置のうち、電子写真方式の印刷装置は、印刷速度が速く、記録媒体の材質の画像品質に与える影響が比較的小さい等の利点があることから、広く用いられてきている。
【0003】
このような電子写真方式の印刷装置に用いられる画像形成装置は、例えば、図7に示されるように、帯電器19により像担持体である感光体1'が負の電位に一様に帯電され、その後、レーザ発振走査装置等の露光手段20によって感光体1'が露光され、静電潜像が感光体1'に形成される。また、現像剤容器6中の負極性の現像剤7が、導電性のスポンジローラ等からなる現像剤供給ローラ9によって導電性の弾性体からなる現像ローラ8に塗布され、現像ローラ8に現像剤7が担持される。その後、現像剤規制ブレード10により、現像ローラ8上の現像剤7が規制されて薄層状の現像剤層が形成される。
【0004】
そして、現像ローラ8の回転によって現像ローラ8上の現像剤7が静電画像が形成された感光体1'に接触し、現像剤7が感光体1'上の静電画像が形成された部分に移行し、静電潜像が現像され可視化されるというものである(特許文献1、2参照)。
さらに、この可視化された画像を普通紙等の記録媒体に印刷する場合は、図7に示されるように、記録媒体供給装置11により搬送される普通紙等の記録媒体12が、感光体1'及び転写ローラ13等によりなる転写部に搬送され、感光体1'から現像剤7が転写ローラ13に向かって移行することにより、記録媒体12上に転写される。そして、記録媒体12が定着装置14に搬送され、そこで現像剤7が記録媒体12に定着して印刷が完了する。
【0005】
また、電子写真方式の印刷装置に用いられる画像形成装置として、電界カーテン装置を有する画像形成装置もある(特許文献3〜5参照)。
この電界カーテン装置を有する画像形成装置は、例えば、特許文献5に記載されているように、帯電器により像担持体である感光体が正の電位に一様に帯電され、その後、レーザ発振走査装置等の露光手段によって感光体が露光され、静電潜像が感光体に形成されるというものである。
【0006】
この電子写真方式の印刷装置の画像形成装置は、画像形成装置によっても異なるが、像担持体である感光体、レーザ発振走査装置、帯電器とその電源、現像ローラ、現像剤供給ローラ、現像剤規制ブレード、電界カーテン装置等の多数の部品を含むものであり、画像形成装置の価格が高く、重量も重くなるという問題がある。特に、像担持体である感光体及びレーザ発振走査装置等は精密で高価な部品であり、画像形成装置、ひいては、印刷装置の価格を高くしている原因の一つである。
さらに、この電子写真方式の印刷装置では、帯電、露光、現像、転写、定着というように画像形成プロセスが複雑であるという問題もある。
【0007】
そこで、部品の数を減らし、価格及び重量を低減することができる画像形成装置として、レーザ発振走査装置を用いずに針電極、書込電極等の安価な帯電装置により像担持体の表面に静電潜像を書き込む画像形成装置がある(特許文献6、7参照)。
例えば、特許文献6に記載の画像形成装置は、表面に絶縁性の無機ガラス層を有する像担持体に、針電極を用いて静電潜像を書き込むものであり、特許文献7に記載の画像形成装置は、アルミニウム等の導電性材料からなり、接地されている基材と、この基材の外周に形成された絶縁性を有する帯電体層からなる像担持体に、書込電極を用いて静電潜像を書き込むものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3381975号公報
【特許文献2】特開平7−234584号公報
【特許文献3】特開昭63−13068号公報
【特許文献4】特公平5−31146号公報
【特許文献5】特開2008−52034号公報
【特許文献6】特公昭63−45104号公報
【特許文献7】特開2002−172813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献6に記載の基材の外周表面上に絶縁性の無機ガラス層を有する像担持体では、無機ガラス層は物理的吸着水特性が極めてよいことから、無機ガラスの表面に水分がよく吸着し、この吸着した水分によりガラス表面の電気伝導率が高められて像担持体の帯電電荷が漏洩し、画像の解像度が低下してしまうという問題がある。
【0010】
さらに、特許文献7に記載のアルミニウム等の導電性基材の外周表面上に形成された絶縁性を有する帯電体層からなる像担持体では、具体的な帯電体層の材料等は開示されていない。仮に、帯電体層として無機ガラス層を形成した場合は、上記特許文献6と同様の問題が生じることになる。
また、帯電体層として樹脂を用いることも考えられるが、例えば、ホルマリン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂などの体積抵抗が低い樹脂では、高解像度の画像が得られないという問題があり、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などの硬度が低い樹脂では、耐擦性が不足し、印刷枚数の増加に伴い画像に傷などの不具合が生じるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記のような実情に鑑みて鋭意検討されたものであり、像担持体として、高い体積抵抗及び硬度を有する像担持体を提供することにより、画像形成装置に用いられる部品を減らし、画像形成装置の価格及び重量を低減し、画像形成プロセスを簡易化でき、高解像度の画像が得られる画像形成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、像担持体の外周表面の帯電体層が、所定の体積抵抗及びロックウェルM硬度を有する樹脂で形成されている像担持体を採用することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1) 画像形成装置に用いられる像担持体であって、当該像担持体の外周表面の帯電体層が、体積抵抗が1015Ωcm以上、かつロックウェルM硬度が70度以上の樹脂で形成されている像担持体、
(2) 帯電体層が基材の外周表面上に形成されている上記(1)に記載の像担持体、
(3) 基材が導電性基材である上記(2)に記載の像担持体、
(4) 像担持体が円筒である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の像担持体、
(5) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の像担持体、当該像担持体の帯電体層に静電潜像を形成するための帯電装置、現像剤を当該帯電体層に移行させるための現像ローラ、当該現像ローラに現像剤を付着させるための現像剤供給ローラ及び当該現像ローラ上の現像剤を規制するための現像剤規制ブレードを有する画像形成装置、
(6) 上記(1)〜(4)のいずれかに記載の像担持体、当該像担持体の帯電体層に静電潜像を形成するための帯電装置及び現像剤を当該帯電体層に移行させるための電界カーテン装置を有する画像形成装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の像担持体を用いれば、画像形成装置に用いられる部品を減らすことができ、その結果、画像形成装置の価格及び重量を低減し、画像形成プロセスを簡易化でき、高解像度の画像が得られる画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の像担持体の一構成例を示す斜視図である。
【図2】本発明の像担持体の他の構成例を示す斜視図である。
【図3】本発明の画像形成装置を用いて印刷をおこなう場合の一構成例を示す模式図である。
【図4】本発明の画像形成装置を用いてカラー印刷をおこなう場合の一構成例を示す模式図である。
【図5】本発明の画像形成装置を用いてカラー印刷をおこなう場合の他の構成例を示す模式図である。
【図6】本発明の画像形成装置の他の構成例を示す模式図である。
【図7】従来の画像形成装置を用いて印刷をおこなう場合の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
〔像担持体〕
本発明の画像形成装置に用いられる像担持体は、像担持体の外周表面に帯電体層が形成されているものであり、像担持体全体が帯電体層となっていても、基材の外周表面上に帯電体層が形成されているものであってもよい。
図1は、本発明の実施の形態に係る像担持体の一構成例を示す斜視図である。図1において、1は像担持体であり、2は帯電体層である。図1では、円筒状の樹脂により帯電体層2が形成されており、この帯電体層2がそのまま像担持体1となっている。このような像担持体1(帯電体層2)は、樹脂を押出成形法等により製造することができる。
また、上記図1では、像担持体1を円筒状の像担持体としたが、円筒状の像担持体に限らず、ベルト状の像担持体とすることもできる。
【0017】
帯電体層2は、体積抵抗が1015Ωcm以上、かつロックウェルM硬度が70度以上の樹脂から形成されている。
体積抵抗が1015Ωcm未満では、静電潜像を形成する際に電荷の漏洩が生じ、潜像に隣接する領域のコントラストが不明瞭となり、高解像度の画像が得られにくくなるからである。体積抵抗の測定法は、JIS K6911を用い得る。また、ロックウェルM硬度が70度未満では、耐擦性が不足するため、印刷枚数の増加に伴い帯電体層と後記する帯電装置や記録媒体との接触により帯電体層に傷等が発生し、画像の不具合が発生しやすくなるからである。
体積抵抗としては、1016Ωcm以上がさらに好ましい。また、ロックウェルM硬度としては、80度以上がさらに好ましい。
【0018】
ここで、樹脂の硬さの基準として、ロックウェルM硬度を採用したのは、ロックウェルR硬度やショア硬度と比較して、耐擦性の優れる高硬度領域の測定に適するからである。
このような体積抵抗及びロックウェルM硬度を有する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂を例示することができるが、特に、ポリカーボネートは、溶媒に溶解して塗料を作製することが容易であるため、帯電体層2を作製しやすいので好ましい。
また、これらの樹脂には、帯電性を調整するため、サリチル酸金属錯体等の帯電制御剤を混合してもよい。
帯電体層2をそのまま像担持体1として用いる場合の像担持体1(帯電体層2)の厚さは、0.5〜20mmが好ましく、1〜10mmがより好ましく、1〜3mmがさらに好ましい。この範囲であれば、電位を保持し、強度を保ち、重量を軽くすることができるからである。
【0019】
また、図2は、本発明の像担持体の他の構成例を示す斜視図である。図2において、1は像担持体であり、2は帯電体層であり、3は基材である。図2では、円筒状の基材3の外周表面上に帯電体層2が形成されており、これにより、像担持体1が構成されている。
そして、基材3の外周表面上に形成される帯電体層2としては、上記したような体積抵抗が1015Ωcm以上、かつロックウェルM硬度が70度以上の樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂を用いることができる。
【0020】
また、基材3の材料は特に限定されず、例えば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリカーボネート等の樹脂、これらの樹脂にカーボンファイバーやカーボンブラック等の導電性材料を添加して導電性を持たせた樹脂、アルミニウム、ステンレス、ジュラルミン、銅、鉄等の導電性を有する金属(合金を含む。以下同じ。)を用いることができる。特に軽量化を考慮した場合は、アルミニウム、ジュラルミンが好ましい。
導電性を持たせた樹脂及び導電性を有する金属のような導電性を有する材料を基材3として用いた場合は、帯電体層2を薄層とすることにより、帯電電位に対する帯電電荷量が少なくなるため、帯電・除電が容易になるため好ましい態様である。
【0021】
基材3の材料として樹脂を用いる場合は、押出成形法等の製法により円筒状に製造した樹脂をそのまま用いたり、板状の樹脂を丸める等して円筒状にして用いたりすることができる。また、金属を用いる場合は、引き抜き等の製法により円筒状に製造した金属管をそのまま使用したり、板状の金属を丸める等して円筒状にしたものを用いることができる。
基材3の厚さは、0.5〜20mmが好ましく、1〜10mmがより好ましく、1〜3mmがさらに好ましい。この範囲であれば、像担持体の強度を保ち、重量を軽くすることができるからである。
帯電体層2の厚さは、基材3を被覆することができる程度の厚さを有していればよく、厚さ0.05〜300μmが好ましく、0.1〜100μmがより好ましく、1〜10μmがさらに好ましい。この範囲であれば、電位を保持することができるからである。
【0022】
このような円筒状の基材3の外周表面上に帯電体層2が形成された像担持体1は、円筒状の基材3の上に、溶融状態の樹脂を塗布したり、溶剤に樹脂を溶解して塗料を作製し、この塗料を塗布したり、熱、紫外線、電子線等で架橋できる樹脂を塗布した後に硬化させる等の方法により作製することができる。塗布方法は、ドクターブレード、グラビアロール等のロール、スプレー、ディッピング等により塗布する方法を用いることができる。
例えば、帯電体層2の樹脂としてポリカーボネート樹脂を用いる場合は、塩化メチレンとトリクロロエタンの混合溶媒にポリカーボネート樹脂を溶解して塗料とし、この塗料を上記した塗布方法により塗布して、円筒状の基材3の外周表面上に帯電体層2を形成することができる。
【0023】
また、基材3を円筒状にする前に上記の方法により基材上に帯電体層2を形成し、その後、基材3を丸める等して円筒状にして像担持体1を作製してもよい。
このような円筒状の像担持体1は、その端部には樹脂又は金属のフランジ等が設置され、このフランジ等を駆動装置に接続させるようにして、画像形成装置に組み込むことができる。
【0024】
〔帯電装置〕
帯電装置は、像担持体の帯電体層の所望の部分と接触しその部分に電荷を与えて、帯電体層に静電潜像を形成するためのものである。帯電装置は、絶縁性の基板に像担持体の軸方向と同一の方向に導電性の微細な電極が複数形成されており、像担持体の軸方向と直交する方向に一列又は複数列電極が配列されているような公知のものを用いることができる。例えば、いわゆる針電極や櫛形電極が形成された帯電装置、前記特許文献7(特開2002−172813号公報)の図17に開示されているような基板に微細な電極が複数配列された帯電装置を好ましく用いることができる。
【0025】
帯電装置の電極及び電極間の幅は、静電潜像に高解像度が要求される場合は小さくする等静電潜像の解像度等を考慮して適宜決定することができる。
電極の幅は、例えば、3〜350μmが好ましく、20〜200μmがより好ましく、40〜100μmがさらに好ましい。また、電極間の幅は、例えば、1〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましく、5〜30μmがさらに好ましい。このような電極の幅及び電極間の幅の範囲であれば、電極の形成が容易であり、像担持体に高解像度の静電潜像を付与することができるようになるからである。
【0026】
電極の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムにスクリーン板を用いて所定の位置に導電性ペーストを印刷する方法、基板上に所望の厚さの導電層を形成し、電極として残したい部分のみにレジストパターンを被覆した後、ブラスト材を噴射して電極部以外の導電性材料を切削除去するサンドブラスト法や、樹脂フィルム上に感光性樹脂を用いてレジストパターンを形成し、レジスト凹部へ導電性ペーストを埋め込んだ後レジストを除去するリフトオフ法(アディティブ法)や、所望の厚さの導電層を形成し、電極として残したい部分のみレジストパターンを被覆した後、化学的エッチングにより、電極部以外の導電性材料を除去するエッチング法など、種々の方法を採用することができる。また、基材上に銀等を蒸着等して、電極パターンを形成することもできる。
特に、帯電装置は、像担持体の帯電体層に接触するものであるから、帯電装置の基材は樹脂やゴムを主体とするある程度の軟らかさを有するものが好ましく、薄板状やフィルム状のものが好ましい。
【0027】
〔像担持体を有する画像形成装置及びこれを用いた印刷〕
次に、本発明の像担持体を有する画像形成装置について説明する。
図3は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置を用いて印刷をおこなう場合の一構成例を示す模式図である。
1は像担持体であり、5は帯電装置であり、6は現像剤容器であり、7は現像剤であり、8は現像ローラであり、9は現像剤供給ローラであり、10は現像剤規制ブレードであり、11は記録媒体供給装置であり、12は記録媒体であり、13は転写ローラであり、14は定着固定装置である。
【0028】
像担持体1は、図1又は2に示すような構成の像担持体を用いる。帯電装置5は、像担持体1の帯電体層2の所望の部分に所定の解像度で電位を与えて帯電させることができるものであればよく、上記したような帯電装置を用いることができる。
この帯電装置5は、現像プロセスの上流に位置し、さらに上流には帯電体層2の電位を接地等により放電させる手段や、所定の電位と逆極性に帯電させる手段を設け、静電潜像を安定化させるようにしてもよい。
【0029】
現像剤容器6内の現像剤7は、負極性を有するトナー、正極性を有するトナー等を用いることができる。例えば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の熱溶融性樹脂、サリチル酸金属錯体等の帯電制御剤、カーボンブラック、酸化銅、黄鉛、ニッケルチタンイエロー、ベンガラ、リソールレッド等の着色剤及び融点調整成分等を混練り粉砕等、又は内部ないし外部添加して重合した、粒子等の現像剤を用いることができる。
【0030】
また、現像ローラ8、現像剤供給ローラ9及び現像剤規制ブレード10は、電子写真方式の画像形成装置に通常用いられる現像ローラ、現像剤供給ローラ及び現像剤規制ブレードを用いることができる。現像ローラ8としては、例えば、金属のシャフト等の外周に、ポリウレタンフォーム、シリコーンゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPR)等を設けた導電性の弾性体等からなる現像ローラを例示できる。さらに、現像ローラ8の表面は、面粗度、電気抵抗あるいは現像剤の帯電性を調整する目的等のため、さらには、現像剤の現像ローラからの離型性を調整する目的等のために塗装してもよい。現像剤供給ローラ9としては、導電性のポリウレタンフォーム等の導電性のスポンジローラ等からなる現像剤供給ローラを例示できる。現像剤規制ブレード10としては、金属板等の支持部材の一端に断面形状が凸状のポリウレタン、ゴム等の弾性体、ブラシからなるブレードを設けた現像剤規制ブレードを例示できる。
さらに、記録媒体供給装置11、記録媒体12、転写ローラ13及び定着固定装置14は、電子写真方式の印刷装置に通常用いられる記録媒体供給装置、記録媒体、転写ローラ13及び定着固定装置を用いることができる。
【0031】
本発明の画像形成装置及びこの画像形成装置を用いて印刷する場合の方法について、トナーが正帯電の場合を例に取り、以下に具体的に説明する。
像担持体1は、帯電装置5によって、例えば、像担持体1の帯電体層2の現像剤7を移行させない部分の電位をプラス300Vに帯電させ、現像剤6を移行させたい部分を接地し電位をプラス5Vに帯電させる。これにより、静電潜像が像担持体1の帯電体層2に形成される。
【0032】
また、現像剤容器6内に存在する現像剤7をプラス200Vの電源に接続した現像剤供給ローラ9によりプラス200Vの電源に接続した現像ローラ8に塗布して、現像ローラ8に現像剤7を担持させる。このとき、現像ローラ8上の現像剤7は、現像剤供給ローラ9により撹拌・摩擦され正帯電し、現像剤規制ブレード10の一方端と現像ローラ8の表面との当接部で、現像ローラ8上の現像剤7を規制して薄層上の現像剤層を形成する。その後、現像ローラ8の回転により現像ローラ8上の現像剤7が像担持体1の帯電体層2に接触し、帯電体層2のプラス5Vに帯電した部分に現像剤7が移行する。そして、プラス300Vに帯電した部分には現像剤7が移行しないので、これにより像担持体1の帯電体層2に形成された静電潜像が現像され可視化される。
【0033】
そして、記録媒体供給装置11により搬送される普通紙等の記録媒体12が、像担持体1及び転写ローラ13等によりなる転写部に搬送され、像担持体1の帯電体層2から現像剤7が例えば、マイナス250Vに帯電した転写ローラ13に向かって移行することにより、記録媒体12上に転写される。その後、記録媒体12は定着固定装置14に搬送され、現像剤7が記録媒体12に定着され、印刷が完了する。
上記の方法では、現像ローラ8から像担持体1の帯電体層2の現像剤7を移行させる部分の電位をプラス5Vとしたが、現像剤7を移行させる部分を接地してゼロ電位としたり、転写ローラ13よりはるかに低い−5〜−50V程度の負電圧を印加して微弱に負帯電させたりすることもできる。特に、ゼロ電位から微弱に正帯電させた状態が好ましい。
さらに、像担持体1の帯電体層2は、所定の電位となるように電圧を印加するが、電圧印加に先立って、接地等の方法で放電させたり、所定の電位とは逆電極に帯電させたりする等の方法により、静電潜像を安定化させるのも好ましい態様である。
【0034】
以上、現像剤7が正極性を有するトナーを用いた場合の画像形成装置及びこの画像形成装置を用いて印刷する場合の方法について説明したが、現像剤7が負極性を有するトナーを用いた場合は、像担持体1の帯電体層2はマイナスに帯電させることにより、帯電体層2に形成された静電潜像が反転現像され可視化され、転写ローラ13をプラスに帯電させることにより、現像剤7を記録媒体12に転写させることができる。なお、正極性を有するトナーを用いた方が、像担持体1の帯電体層2を帯電させる際のオゾン発生を抑制することができるので好ましい。
このように、本発明の像担持体1によれば、現像剤7の負極性、正極性のいずれによっても、像担持体を変える必要がなく、一つの像担持体によって、負極性及び正極性のいずれの現像剤も用いることができるという利点もある。
【0035】
さらに、図3には図示していないが、本発明の画像形成装置に、従来の画像形成装置と同様に像担持体1の帯電体層2に付着している転写残りの現像剤7や、紙粉等の記録媒体12からの移行物質を除去するクリーニング装置を設けることもできる。クリーニング装置を設ける場合は、転写部の下流側、静電潜像形成より上流側に配置する。
【0036】
〔像担持体を有する画像形成装置を用いたカラー印刷〕
次に、本発明の画像形成装置を用いてカラー印刷をおこなう方法について説明する。
図4及び5は、本発明の画像形成装置を用いてカラー印刷をおこなう場合の構成例を示す模式図であり、図4は、いわゆる中間転写ベルト型のカラー印刷装置であり、図5は、いわゆる記録媒体タンデム型のカラー印刷装置である。
【0037】
図4において、15は中間転写ベルトであり、16は2次転写ローラであり、17は中間転写ベルトを回転させるための回転ローラである。図5において、18は記録媒体搬送ベルトであり、19は記録媒体搬送ベルトを回転させるための回転ローラである。さらに、図4及び5では、図面下方からイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順にそれぞれの色を有する現像剤を有する画像成形装置21〜24が配置されている。これらの画像形成装置21〜24の構成については、図3に示すような画像形成装置と同じであるので、ここでは省略する。また、図4及び5において、図3の部品と同じ部品については同じ番号を用いた。
【0038】
図4の中間転写ベルト型のカラー印刷装置の場合は、まず、イエローの画像成形装置21から中間転写ベルト15へイエローの現像剤を転写ローラ(1次転写ローラ)13で転写し、次いで、マゼンタの画像成形装置22、シアンの画像成形装置23、ブラックの画像成形装置24により、マゼンタ、シアン、ブラックの各現像剤を順次転写し、2次転写ローラで各現像剤をさらに記録媒体12に転写して、定着固定装置14により定着させ、カラー印刷が完了する。
また、必要に応じて、図示しない弾性ローラやブレードで中間転写ベルト15をクリーニングしたり、除電したりすることができる。
【0039】
図5の記録媒体タンデム型のカラー画像形成装置の場合は、まず、イエローの画像成形装置21から記録媒体搬送ベルト18により搬送された記録媒体12へイエローの現像剤を転写ローラ13で転写し、次いで、マゼンタの画像成形装置22、シアンの画像成形装置23、ブラックの画像成形装置24により、マゼンタ、シアン、ブラックの各現像剤を順次転写して、定着固定装置14により定着させ、カラー印刷が完了する。
また、必要に応じて、図示しない弾性ローラやブレードで記録媒体搬送ベルトをクリーニングしたり、除電したりすることができる。
【0040】
なお、図4及び5では、図面下方からイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順にそれぞれの色を有する現像剤を有する画像成形装置が配置されているが、この順は適宜入れ替えることができる。
このほかにも、電子写真方式の4サイクル方式のカラー印刷も採用することができる。
【0041】
〔電界カーテン装置を有する画像形成装置〕
本発明の像担持体は、上記したような画像形成装置に限らず、電界カーテン装置を有する画像形成装置等の像担持体として用いることができる。
図6は、本発明の画像形成装置の他の構成例を示す模式図であり、本発明の像担持体を用いた電界カーテン装置を有する画像形成装置の一構成例を示すものである。
1は像担持体であり、5は帯電装置であり、6は現像剤容器であり、7は現像剤であり、31は電界カーテンパネルであり、32は電極であり、33は電界カーテン駆動用のn相交流電源である。
【0042】
像担持体1及び帯電装置5については、上述したので、ここでは説明を省略する。
電界カーテンパネル31上には、複数の電極32が形成されており、電界カーテン駆動用のn相交流電源33により、この複数の電極32に電圧が印加されるようになっている。
また、現像剤容器6は、現像剤7、電界カーテンパネル31等を収納しており、その一部が開口している開口部を有しており、その開口部で電界カーテンパネル31上に形成された複数の電極32の一部が像担持体1に対面している。
【0043】
さらに、電界カーテンパネル31及び複数の電極32の一部が現像剤容器6内の現像剤だまりの中に入り込んでいる。そして、この複数の電極32に、電界カーテン駆動用のn相交流電源33により位相の異なる三相以上の交流電圧を印加すると、この複数の電極32に移動電界が生じ、現像剤容器6内の現像剤だまりから現像剤7が次々に電極32の上方に搬送されるようになっている。
ここで、電界カーテン装置とは、少なくとも、電界カーテンパネル31、電界カーテンパネル31上に形成された複数の電極32及び電界カーテン駆動用のn相交流電源33を含む装置を意味する。
【0044】
このような画像形成装置では、例えば、現像剤7として負極性を有するトナーを用いた場合、帯電装置5によって、像担持体1の帯電体層2の現像剤7を移行させない部分の電位をマイナスに帯電させ、現像剤6を移行させたい部分をプラスに帯電させる。すると、像担持体1が電極32の対面電極となり、電極32上の現像剤7が像担持体1の帯電体層2のプラスに帯電した部分に移行する。そして、マイナスに帯電した部分には現像剤7が移行しないので、これにより像担持体1の帯電体層2に形成された静電潜像が反転現像され可視化されるようになる。
なお、図6では、電界カーテンパネル31が水平に配置されている場合を示したが、水平に限らず、斜めでも、一部が斜めで一部が水平のものであってもよい。また、図6では、現像剤容器6の底面が水平の場合を示したが、像担持体1に移行されなかった現像剤7を現像剤だまりに回収できるように現像剤容器6の底面を斜めにしてもよい。
【実施例】
【0045】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1
(1)像担持体
直径40mm、厚さ1.5mm、長さ220mmのアルミニウム製の円筒状の導電性基材3の外周表面上にポリカーボネート(三菱化学社製)を塩化メチレンとトリクロロエタンの混合溶媒に溶解した塗料を塗布・乾燥し、厚さ40μmの帯電体層2を形成し、図2に示すような、静電潜像を形成するための像担持体1(像担持体1a)を製造した。
【0046】
そして、帯電体層2の材料であるポリカーボネートの体積抵抗を測定するために、直径100mm、厚さ2mmの試料を作製し、エーディーシー社製の絶縁抵抗計を用いてJIS K6911法により測定したところ、その体積抵抗は1016Ωcmであった。
また、帯電体層2の材料であるポリカーボネートのロックウェルM硬度を測定するために、直径100mm、厚さ2mmの試料を作製し、松沢精機社製の硬度計を用いてJIS K6911法により測定したところ、そのロックウェルM硬度は82度であった。
【0047】
(2)帯電装置
帯電装置5として、櫛形の電極を有するフレキシブル・プリント基板からなる帯電装置を用いた。
(3)現像剤
スチレンアクリル樹脂(60質量部)、カーボンブラック(35質量部)、ワックス(4質量部)、樹脂酸変成シアン化合物の帯電制御剤(1質量部)等をミキサーで混練し、粉砕、分級して、粒径6μmの正の帯電性を有する現像剤7を得た。
【0048】
(4)現像ローラ
特許第2990005号公報に記載されている方法により、末端にアリル型の第一級水酸基を有するポリブタジエン系のポリオールとトリレンジイソシアネート(TDI)との反応により得られたポリウレタン樹脂を金属シャフトの外周に有する外形が16mmの現像ローラ8を得た。
(5)現像剤供給ローラ
特許第2855335号公報に記載されている方法により、ポリウレタンフォームで、無電界メッキを施した直径6mmの硫黄快削鋼軸を被覆し、ポリウレタン系熱溶融フィルム接着剤で接着し、フォーム部の外形が12mmとなるように切削して現像剤供給ローラを得た。
【0049】
(6)現像剤規制ブレード
特開2004−163615号公報に記載されているようなブレードの長さ方向に突出するリブが設けられている現像剤規制ブレード10を用いた。
(7)画像形成装置
上記の像担持体1、帯電装置5、現像剤7、現像ローラ8、現像供給ローラ9等を有する図3に示すような画像形成装置を用いた。
【0050】
(8)印刷条件
図3に示すような画像形成装置を用いて普通紙の記録媒体12に印刷した。
このとき、記録媒体12としてはゼロックス社製4420普通紙を用い、現像ローラ8と現像供給ローラ9の電位はプラス200Vとし、転写ローラ13の電位はマイナス250Vとした。
まず、帯電装置5により、像担持体1aの帯電体層2の現像剤7を移行させない部分の電位をプラス300Vに帯電させ、現像剤7を移行させたい部分の電位をプラス5Vに帯電させた。
次いで、記録媒体供給装置11から搬送された普通紙の記録媒体12を転写部に送り、像担持体1aと転写ローラ13とにより印刷し、定着固定装置14により現像剤5を定着した。この印刷物を目視により観察したところ、良好な画像が得られていることを確認した。
【0051】
実施例2
(1)像担持体
直径40mm、厚さ1.5mm、長さ220mmのポリカーボネート製(三菱化学社製)の円筒状の基材を押出成形法により形成し、それをそのまま図1に示すような、静電潜像を形成するための像担持体1(像担持体1b)とした。
そして、この像担持体1b(帯電体層2)の材料であるポリカーボネートは、実施例1と同じであるので、体積抵抗は1016Ωcmであり、ロックウェルM硬度は82度である。
【0052】
(2)画像形成装置及び印刷条件
像担持体1bのほか、実施例1と同様の帯電装置5、現像剤7、現像ローラ8、現像剤供給ローラ9及び現像剤規制ブレード10を用いて、図3に示すような画像形成装置を構成し、この画像形成装置用いて、実施例1と同様の印刷条件で、普通紙の記録媒体12に印刷し、現像剤5を定着した。この印刷物を目視により観察したところ、実施例1と同様に良好な画像が得られていることを確認した。
【0053】
実施例3
(1)像担持体
直径40mm、厚さ1.5mm、長さ220mmのポリアセタール(ポリプラスチック社製)の円筒状の基材を射出成形法により形成し、それをそのまま図1に示すような、静電潜像を形成するための像担持体1(像担持体1b)とした。
そして、同材料を直径100mm、厚さ2mmの円板に成形した試料の体積抵抗及びロックウェルM硬度を実施例1と同様に測定したところ、体積抵抗は1017Ωcmであり、ロックウェルM硬度は90度であった。
(2)画像形成装置及び印刷条件
この像担持体1bを用いて、実施例2と同様の画像形成装置及び印刷条件で、印刷物を印刷した。この印刷物を目視により観察したところ、実施例1と同様に良好な画像が得られていることを確認した。
【0054】
比較例1
(1)像担持体
直径40mm、厚さ1.5mm、長さ220mmのフェノール樹脂(日立化成社製)の円筒状の帯電体層2を射出成形法により形成し、それをそのまま図1に示すような、静電潜像を形成するための像担持体1(像担持体1b)とした。
そして、帯電体層2の材料であるフェノール樹脂の体積抵抗及びロックウェルM硬度を実施例3と同様に測定したところ、体積抵抗は1013Ωcmであり、ロックウェルM硬度は95度であった。
(2)画像形成装置及び印刷条件
この像担持体1bを用いて、実施例2と同様の画像形成装置及び印刷条件で、印刷物を印刷した。この印刷物を目視により観察したところ、実施例1より画像の解像度が劣っており、高精彩な画像の輪郭がぼやけていた。
【0055】
比較例2
(1)像担持体
比較例1と同様にして、ポリプロピレン樹脂(三井化学社製)の円筒状の基材を射出成形法により形成し、それをそのまま図1に示すような、静電潜像を形成するための像担持体1(像担持体1b)とした。
そして、帯電体層2の材料であるフェノール樹脂の体積抵抗及びロックウェルM硬度を実施例3と同様に測定したところ、体積抵抗は1016Ωcmであり、ロックウェルM硬度は65度であった。
(2)画像形成装置及び印刷条件
この像担持体1bを用いて、実施例2と同様の画像形成装置及び印刷条件で、印刷物を印刷した。この印刷物を目視により観察したところ、当初は良好な画像が得られたが、印刷枚数の増加にともない、白い筋が発生するようになり、像担持体表面を観察したところ、周方向に傷が発生していた。
【0056】
以上、実施例及び比較例の結果から、本発明の像担持体を用いれば、像担持体、帯電装置、現像ローラ、現像剤供給ローラ、現像剤規制ブレード等の部品により画像形成装置を構成することができ、精密で高価な感光体及びレーザ発振走査装置等、さらに重量のある帯電器とその電源を用いなくても良好な印刷ができ、画像形成装置に用いられる部品の数を減らし、画像形成装置の価格及び重量を低減することができ、画像成形プロセスを簡易化することができることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の帯電体層を有する像担持体及びその像担持体を用いた画像形成装置は、プリンタ、ファクシミリ、複写機などのオンデマンド印刷装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 像担持体
2 帯電体層
3 基材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に用いられる像担持体であって、当該像担持体の外周表面の帯電体層が、体積抵抗が1015Ωcm以上、かつロックウェルM硬度が70度以上の樹脂で構成されている像担持体。
【請求項2】
帯電体層が基材の外周表面上に形成されている請求項1に記載の像担持体。
【請求項3】
基材が導電性基材である請求項2に記載の像担持体、
【請求項4】
像担持体が円筒である請求項1〜3のいずれかに記載の像担持体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の像担持体、当該像担持体の帯電体層に静電潜像を形成するための帯電装置、現像剤を当該像担持体の表面に移行させるための現像ローラ、当該現像ローラに現像剤を付着させるための現像剤供給ローラ及び当該現像ローラ上の現像剤を規制するための現像剤規制ブレードを有する画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の像担持体、当該像担持体の帯電体層に静電潜像を形成するための帯電装置及び現像剤を当該帯電体層に移行させるための電界カーテン装置を有する画像形成装置。
【請求項1】
画像形成装置に用いられる像担持体であって、当該像担持体の外周表面の帯電体層が、体積抵抗が1015Ωcm以上、かつロックウェルM硬度が70度以上の樹脂で構成されている像担持体。
【請求項2】
帯電体層が基材の外周表面上に形成されている請求項1に記載の像担持体。
【請求項3】
基材が導電性基材である請求項2に記載の像担持体、
【請求項4】
像担持体が円筒である請求項1〜3のいずれかに記載の像担持体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の像担持体、当該像担持体の帯電体層に静電潜像を形成するための帯電装置、現像剤を当該像担持体の表面に移行させるための現像ローラ、当該現像ローラに現像剤を付着させるための現像剤供給ローラ及び当該現像ローラ上の現像剤を規制するための現像剤規制ブレードを有する画像形成装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の像担持体、当該像担持体の帯電体層に静電潜像を形成するための帯電装置及び現像剤を当該帯電体層に移行させるための電界カーテン装置を有する画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−43561(P2011−43561A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190097(P2009−190097)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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