僧帽弁システム
【解決手段】 心臓弁輪に対し確実にかつ整列して配置されるように適合された人工弁を開示する。本人工弁を、非侵襲的に、たとえば経カテーテル技法を介して配置することができる。本人工弁は、弾性リングと、弾性リングに対して取り付けられる複数のリーフレット膜と、可撓性リングに対して移動可能に取り付けられる複数の位置決め要素とを有することができる。位置決め要素の各々は、それぞれの第1細長組織穿孔要素、第2細長組織穿孔要素および第3細長組織穿孔要素を含む、解剖学的構造の組織の別個の対応する部位と同時に係合するように協働して構成され寸法が決められた、近位組織係合領域、中間組織係合領域、遠位組織係合領域を画定する。近位組織係合領域、中間組織係合領域、遠位組織係合領域は、人工弁の解剖学的構造に対する位置を安定化するように、解剖学的構造の組織の別個の対応する部位と同時に係合するように協働して構成され寸法が決められ、組織の別個の対応する部位とそのように同時に係合する目的で、第1細長組織穿孔要素、第2細長組織穿孔要素および第3細長組織穿孔要素のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に血流の方向と反対に向けられ、そのうちの少なくとも別の1つが、少なくとも部分的に血流の方向に沿って向けられる。本人工弁はまた、人工弁の周囲において人工弁の周辺部を血液の逆流に対して封止するように、弾性リングに対して取り付けられるスカートを有することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有利な人工弁システムおよび人工心臓弁を配置する関連方法/システムに関し、特に、心臓弁輪に対し確実にかつ整列して配置されるように適合された人工僧帽弁およびそれを配置するための関連方法/システムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓弁逆流は、病気または損傷の結果、心臓弁が完全に閉鎖しない場合に発生する。虚血性疾患および変性(脱出)疾患による僧帽弁逆流は、リモデリングにより左心室拡張および機能不全の一因となることが明らかとなっており、心イベント率および死亡率の上昇に関係している。現在、機能不全の心臓弁を、開胸手術により生物学的または機械的人工弁と置き換えることができるが、全身麻酔および心肺バイパスを用いることで死亡、発作、感染、出血および合併症の著しい危険を伴う。
【0003】
僧帽弁狭窄に対する経皮的バルーン弁形成術の成功に基づき、研究者は、手術なしで弁心臓疾患を治療する他の代替方法を探究してきた。たとえば、Cribier他は、生物学的人工弁が縫い込まれたバルーン拡張型ステントについて記載している。(「Percutaneous Transcatheter Implantation of an Aortic Valve Prosthesis for Calcific Aortic Stenosis」(Circulation,Dec.10,2002,pages 3006−3008)を参照されたい。)Cribierの装置は、石灰化大動脈弁狭窄症の治療に利用される。Bonhoeffer他は、肺動脈弁疾患を治療するために挿入されるウシ静脈(頸静脈)弁を用いる同様のステント手法について記載している。(「Percutaneous Insertion of the Pulmonary Valve」(Journal of the American College of Cardiology,Vol.39,No.10,May 15,2002,pages 1664−1669)を参照されたい。他には、僧帽弁リーフレットにクリップを配置すること(米国特許第6,629,534号明細書)、冠状静脈洞から僧帽弁輪をつかむこと(米国特許第6,537,314号明細書)、または機械的に適所に保持される膨張可能な心臓弁を配置すること(米国特許第5,554,185号明細書)を含む、僧帽弁疾患に対する修復技法が開発されている。
【0004】
Norred(米国特許第6,482,228号明細書)は、リブおよび円形エラストマーキャノピーを有する人工心臓弁が、手術なしに移植領域に送達されるためにカテーテル内に挿入されるように折り畳まれる、経皮的大動脈弁移植を開示している。上行大動脈に入ると、人工心臓弁の本体およびリーフレットは、縫合糸状部材の中心柱を引っ張ることにより、傘のように開く。ヒンジ継手を用いて、小型の傘が製作される。しかしながら、人工大動脈弁は、生物学的大動脈弁の上方の大動脈溝に弁を固定するように上行大動脈内で拡張されるステントシステムを用いて固定される。傘構造を開くために使用される縫合糸状部材は、ステントシステムの一部として配置される。こうした設計は、人工心臓弁を生物学的弁の位置に配置するには適していない。
【0005】
本技術分野では、固定システムが、バルーン拡張型ステントかまたは自己拡張ステント設計のいずれかを必要とする受動的なシステムである、他のステント人工心臓弁が記述されている。たとえば、こうしたステント設計は、米国特許第6,454,799号明細書、米国特許出願公開第2002/0138138号明細書、米国特許第6,582,462号明細書、同第6,458,153号明細書、同第6,425,916号明細書および同第5,855,601号明細書に記載されている。これらステント人工心臓弁は、一旦配置されると、位置を変えること、再び折り畳むこと、かつ容易に取り除くことができないことが理解されよう。さらに、この設計を利用する初期大動脈弁配置で明らかであったように、石灰化位置に配置される際のステントの剛性により、ステントの外側の周囲で逆流が起こる可能性がある。また、心臓が鼓動している間に移動している血液の柱内でバルーンを膨張させなければならず、それを正確に配置する機会は一度しかないため、これら設計を配置することも困難である。
【0006】
さらなる難題は、ステント心臓弁を、カルシウムで厚くなっていない弁輪に配置する場合に発生する。ステント設計は、弁輪の高さが増大しており、かつ石灰化大動脈弁狭窄においてカルシウムの存在により幅が厚くなっている大動脈位置に少しだけ有利に適している。しかしながら、大動脈弁疾患の他の原因でかつ僧帽弁位置におけるように、カルシウムが存在しない場合、ステントを比較的薄い弁輪に固定することは困難であり得る。さらに、ステントがバルーン上で折り重なり、その後塑性変形により拡張する性質により、その初期サイズの最終サイズに対する比率が制限され、それにより必要に迫られて非常に大きい外形を有することになり、カルシウム沈着によって低減されていない大きい径を有する弁輪において、カテーテルによる経皮的挿入がより困難になる。
【0007】
Herrmann他(米国特許出願公開第2007/0016286号明細書)は、移植のために患者の心臓に送達されるカテーテルの内部で折り畳むことができる、経皮的に挿入される双安定人工心臓弁を開示している。この心臓弁は、弾性環状リングと、各々の一端が環状リングに連結している複数の脚を有する本体部材と、外力が加わることにより第1位置から第2位置まで調整可能な爪であって、それにより第2位置で周囲の心臓組織が爪に進入することが可能になる爪と、環状リング、本体部材および/または脚に連結されたリーフレット膜とを有している。開示されているリーフレット膜は、内部の血流を阻止する第1位置と、内部の血流を可能にする第2位置とを有している。心臓弁は、外力が取り除かれると、爪が第1位置に弾性的に戻って爪内に配置された心臓組織を把持し、それにより心臓弁が適所に保持されるように設計されている。本体部材および爪を、一体設計に統合することができる。そのように設計された心臓弁を、僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁または三尖弁に対する人工弁として、環状リングを心臓のそれぞれ僧帽弁、大動脈弁、肺静脈弁または三尖弁の開口に嵌合するように適合させることにより、用いることができる。
【0008】
Machold他(米国特許出願公開第2004/0127982号明細書)は、機能不全心臓弁の弁輪に取り付けられるように寸法が決められかつ構成されている移植片を開示している。移植片は、使用時、弁輪の上方にかつ/または弁輪に沿って弁輪の主軸を横切って延在する。移植片は、主軸寸法および/または他の周囲の解剖学的構造を再形成、より機能的な解剖学的形状および張力を回復するように意図されている。Machold他は、レールによって接合され、かつ心臓弁輪における移植片の固定および安定化を促進する他の構造を支持する、一対の支柱(strut)を企図している。固定機構を、心室において弁輪に隣接する弁輪内心臓組織に係合するように弁輪の面の下方に配置することができ、かつ/または弁輪または心房の組織と係合するように弁輪の面にまたはその上方に配置することができる。Machold他はさらに、支柱自体に対してほとんどまたはまったく力を加えずに、支柱を用いて移植片を弁に簡単に配置することができることも開示している。この構成では、Machold設計の弁輪を再形成する力は、交連の上方のレールから発生する。
【0009】
画像ガイダンスの下で、移植片の前端におけるMachold他の支柱にはシースがなく、支柱は弁輪の後交連において逆に着座する。支柱に関連する固定構造または機構もまた、弁輪の平面の下方にかつ/または上方に隣接する組織と接触するように配置される。図25Bに示すように、シースが、接合線に沿って後方から前方の方向に接合線に沿って引き抜かれる際、送達カテーテルは、後交連内において先行する支柱に対する力を維持する。弁輪に対して移植片を配置する同様の構造は、Vazquez他(米国特許第6,287,339号明細書)によって開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今日までの労力にも関わらず、カテーテルを介して挿入するために薄型を可能にするが、バルーンまたはステントがない状態では、一旦配置されると外形が大きくなる、改善された人工心臓弁設計が依然として必要とされている。人工弁配置の正確さとともに安全性を向上させるように、配置し、折り畳み、取り除き、後に再度配置することができる、人工心臓弁設計もまた望まれる。さらに、心臓に対して有効に整列しかつ/または方向付けることができ、最も望ましくは、心臓に対して実質的に自己整列式かつ/または自己配向式である、人工心臓弁設計も依然として必要とされている。こうした有利な人工心臓弁に対する確実かつ有効な配置システムおよび方法もまた必要とされている。
【0011】
これらおよび他の必要は、以下の詳細な説明から明らかとなるように、開示されている人工弁設計および配置システム/方法によって対処される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書では、有利な人工弁システムおよび人工弁を配置する方法/システムが開示されている。本開示の例示的な実施形態では、心臓弁輪に対して確実にかつ整列して配置されるように適合された人工僧帽弁が提供される。開示される人工弁システムを、最小侵襲的に、たとえば経カテーテル技法を介して配置することができる。
【0013】
例示的な人工弁は、弾性リングと、弾性リングに対して取り付けられる複数のリーフレット膜と、可撓性リングに対して移動可能に取り付けられる複数の位置決め要素とを有する。位置決め要素の各々は、第1細長組織穿孔要素を含む近位組織係合領域と、人工弁を通る血流の方向に沿って近位組織係合領域から隔置され、かつ第2細長組織穿孔要素を含む、遠位組織係合領域と、近位組織係合領域と遠位組織係合領域との間に配置され、かつ第3細長組織穿孔要素を含む、中間組織係合領域とを画定する。近位組織係合領域、遠位組織係合領域および中間組織係合領域は、解剖学的構造の組織の別個の対応する部位と同時に係合することにより、人工弁の解剖学的構造に対する位置を安定化するように、協働して構成され寸法が決められ、組織の別個の対応する部位とそのように同時に係合する目的で、第1細長組織穿孔要素、第2細長組織穿孔要素および第3細長組織穿孔要素のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に血流の方向と反対に向けられ、そのうちの少なくとも別の1つが、少なくとも部分的に血流の方向に沿って向けられる。
【0014】
第1細長組織係合要素および第2細長組織係合要素のうちの少なくとも一方が、フォークの歯を有することができる。たとえば、第1細長組織係合要素および第2細長組織係合要素のうちの少なくとも一方が、協働して、本来の弁組織(たとえば弁輪あるいは1つまたは複数の弁尖)の特定の部位を穿孔し、人工弁をそれに対して連結し、かつ/または固定する、一対の近接した外側に延在するフォークの歯を画定するフォークを有することができる。フォークの歯は、歯が本来の弁組織領域内に収容され得る深さを制限するように歯の間に入る本来の弁組織部位の一部と係合する、横方向に延在するウェブ領域によって接合される。別の例では、近位組織係合領域および遠位組織係合領域のうちの少なくとも一方が、さらに、それぞれ第1細長組織穿孔要素または第2細長組織穿孔要素が収容され得る深さを制限するように、組織の対応する部位と係合する、弓形面を画定することができる。第3細長組織穿孔要素は、シェブロン形かえしを含むことができる。
【0015】
組織の別個の対応する部位とそのように同時に前記のように係合する目的で、1)第1細長組織穿孔要素を、少なくとも部分的に血流の方向と反対に向けることができ、第3細長組織穿孔要素を、少なくとも部分的に血流の方向に沿って向けることができ、2)第2細長組織穿孔要素を、少なくとも部分的に血流の方向と反対に向けることができ、前記第3細長組織穿孔要素を、少なくとも部分的に血流の方向に沿って向けることができ、3)第1細長組織穿孔要素、第2細長組織穿孔要素および第3細長組織穿孔要素のうちの2つを、少なくとも部分的に血流の方向と反対に向けることができ、そのうちの他の1つを、少なくとも部分的に血流の方向に沿って向けることができる。
【0016】
複数の位置決め要素の各々を、第1細長組織穿孔要素、第2細長組織穿孔要素および第3細長組織係合要素のうちの少なくとも2つが、人工弁の送達カテーテル内での位置決めを容易にするように、少なくとも部分的に血流の方向に沿って向く第1位置と、第1細長組織穿孔要素、第2細長組織穿孔要素および第3細長組織穿孔要素のうちの少なくとも2つが、組織と係合するように少なくとも部分的に血流の方向と反対に向く第2位置との間で、弾性リングに対して回転することにより、実質的に完全に反転するように適合させることができる。
【0017】
弾性リングは、フープ面を画定しフープ面内の対応する数の間隙によって分離される、複数のフープセグメントを有することができ、かつ/または複数のリーフレット膜の別個のそれぞれ1つと結合するフープ面を画定する複数のフープセグメントと、複数のリーフレット膜のそれぞれ隣接するリーフレット膜の間に別個のそれぞれの中間面を形成する、対応する数の保持具とを有することができる。弾性リングは、円形または楕円形周縁形状を画定してもよい。
【0018】
本人工弁は、弾性リングの周縁形状に対して実質的に中心に配置されるハブと、弾性リングに対して放射状に向けられ、かつ(i)ハブおよび(ii)複数の位置決め要素のうちの対応する位置決め要素に対して取り付けられる複数の脚とをさらに有することができる。脚を、位置決め要素が実質的に脚に対して回転固定されるように位置決め要素に対して取り付けることができる。脚は、中間継手と継手から延在する対応する脚長さ部分とを有することができ、人工弁の送達カテーテル内での位置決めを容易にするために脚が折り畳まれるのを可能にする。
【0019】
複数の位置決め要素の各々は一対の開口を有することができ、人口弁の移植中に位置決め要素の回転位置を遠隔で制御するように、位置決め要素が、対の開口を通してループ状にされる対応するフィラメントによって解放可能に係合されるのを可能にする。弾性リングを、罹患心臓弁に対して移植されるように適合させることができ、その際、第1組織穿孔要素は、罹患心臓弁の弁輪に関連する組織内に収容され、第2組織穿孔要素は、罹患心臓弁の弁尖に関連する組織内に収容される。
【0020】
本人工弁は、人工弁の周縁において血液の逆流に対して少なくとも部分的に封止するように、弾性リングに対して取り付けられるスカートをさらに有することができる。
【0021】
開示されている人工弁に関連するさらなる有利な特徴、構造および機能は、以下の例示的な実施形態の説明を特に添付図面ととともに読むことによって明らかとなろう。
【0022】
当業者が、開示されている人工弁システムおよび関連する配置システム/方法を作成しかつ用いるのに役立つように、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本開示による例示的な人工弁システムの下向きの斜視図である。
【図2】心臓弁輪に対して配置された本開示による例示的な人工弁システムの部分側断面図である。
【図3A】例示的な人工心臓弁が例示的な送達構造内に配置されている、本開示による例示的な人工弁システムの側面図である。
【図3B】同様に例示的な送達構造内に配置されているように示されている、図3Aの例示的な人口弁システムの部分側断面図である。
【図4A−C】本開示の例示的な実施形態による、弁輪に対する人工心臓弁の経皮的配置を示す概略図である。
【図4D−F】本開示の例示的な実施形態による、弁輪に対する人工心臓弁の経皮的配置を示す概略図である。
【図4G−I】本開示の例示的な実施形態による、弁輪に対する人工心臓弁の経皮的配置を示す概略図である。
【図5】本開示による位置決め要素の変形の略斜視図である。
【図6】本開示による位置決め要素の変形の略斜視図である。
【図7】本開示による位置決め要素の変形の略斜視図である。
【図8】本開示による人工心臓弁の変形の略側面図および斜視図である。
【図9】本開示による人工心臓弁の変形の略側面図および斜視図である。
【図10】本開示による人工心臓弁の変形の略側面図および斜視図である。
【図11】本開示による人工心臓弁の変形の略側面図および斜視図である。
【図12】本開示による人工心臓弁の変形の略側面図および斜視図である。
【図13】本開示による可撓性リングの側面図である。
【図14】本開示による可撓性リングの斜視図である。
【図15】本開示による送達カテーテル内に収容された例示的な人工弁の略側面図である。
【図16】本発明による送達カテーテル内から外側に配置されている例示的な人工弁の連続した側面図のうちの1つである。
【図17】本発明による送達カテーテル内から外側に配置されている例示的な人工弁の連続した側面図のうちの1つである。
【図18】本発明による送達カテーテル内から外側に配置されている例示的な人工弁の連続した側面図のうちの1つである。
【図19】本発明による送達カテーテル内から外側に配置されている例示的な人工弁の連続した側面図のうちの1つである。
【図20】本発明による送達カテーテル内から外側に配置されている例示的な人工弁の連続した側面図のうちの1つである。
【図21】本開示による位置決め要素の略斜視図である。
【図22】図21の位置決め要素を組み込んだ人工弁の略斜視図である。
【図23】図22の人工弁の側立面図である。
【図24】図22の人工弁の平面図である。
【図25】図22の人工弁の底面図である。
【図26A−B】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁の弁輪に対する経皮的配置を示す略側面図である。
【図26C−D】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁の弁輪に対する経皮的配置を示す略側面図である。
【図26E−F】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁の弁輪に対する経皮的配置を示す略側面図である。
【図26G】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁の弁輪に対する経皮的配置を示す略側面図である。
【図27】本開示の例示的な実施形態による図22の人工弁の変形の略斜視図である。
【図28A】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁のさまざまな構成要素の位置および向きを遠隔で操作するシステムおよび方法を示す略斜視図である。
【図28B】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁のさまざまな構成要素の位置および向きを遠隔で操作するシステムおよび方法を示す略斜視図である。
【図28C】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁のさまざまな構成要素の位置および向きを遠隔で操作するシステムおよび方法を示す略斜視図である。
【図28D】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁のさまざまな構成要素の位置および向きを遠隔で操作するシステムおよび方法を示す略斜視図である。
【図28E】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁のさまざまな構成要素の位置および向きを遠隔で操作するシステムおよび方法を示す略斜視図である。
【図28F】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁のさまざまな構成要素の位置および向きを遠隔で操作するシステムおよび方法を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示による有利な人工弁システムおよび配置システム/方法を提供する。開示されているシステムおよび方法により、外科医/臨床医は、侵襲的な外科的介入なしに心臓弁機能を向上させることができる。実際に、開示されている人工弁システムにより、人工心臓弁を所望の解剖学的位置まで経皮的に送達することができる。開示されている人工弁システムは、所望の解剖学的部位/現場に配置されると、心臓弁輪に対する人工心臓弁の確実かつ整列した位置合せを容易にする。本明細書で開示されている人工心臓弁の経皮送達により、人工心臓弁の効率的かつ有効な臨床的配置が可能になる。開示されている人工心臓弁および関連送達技法により、既存の弁尖を取り除く必要なしに弁機能が改善されること、人工弁を経皮的に有効にかつ効率的に送達することができること、解剖学的部位に対して適切な方向付けを確実にするように、人工弁を弁輪に対して配置することができることを含む、多数の臨床的利点が提供される。
【0025】
最初に図1を参照すると、例示的な人工弁システム100が概略的に示されている。人工弁システム100は、人工心臓弁102および送達構造104を有している。人工弁102は、可撓性リング106を有している。可撓性リング106に対して、複数のリーフレット部材108、弁スカート110および弾性要素112が取り付けられている。弾性要素112は、ハブ114および複数の脚116を有することができ、脚116の各々は、ハブ114から(たとえば図1に示すように規則的な放射状の配置で)延在し、対応する複数の取付要素118の個々のものを介して可撓性リング106に対して移動可能に取り付けられている。人工弁102は、対応する複数の位置決め要素120をさらに有することができ、こうした位置決め要素120の各々は、弾性要素112の脚116のうちの1つに取り付けられている。
【0026】
図1の例示的な実施形態に示すように、人工弁102は3つのリーフレット膜108を有することができ、各リーフレット膜108は、可撓性リング106に対して取り付けられると、内側に向かって弓なりに曲がった向きをとる。所望の血流機能が達成されるのであれば、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、より多いかまたは少ないリーフレット膜108を採用することができる。リーフレット膜108を異種移植組織から調製することができ、たとえば、弁リーフレットを、低温保存または化学的に保存されたウシ心膜弁またはブタ心臓弁組織等、標準的な生物学的または人工の人工弁材料から調製することができる。リーフレット膜108の調製に、人工膜材料、たとえば繊維強化マトリクス材料を採用することも可能である。リーフレット膜108を、従来の手段、たとえば、複数のリーフレット膜108の各々が可撓性リング106に対して下方に延在するように、可撓性リング106を全体としてまたは部分的に包囲する輪および/またはカフの作成により、可撓性リング106に対して固定することができる。
【0027】
図1をさらに参照すると、弁スカート110は、可撓性リング106の範囲全体に、たとえば可撓性リング106の円周全体に延在することができる。弁スカート110を、単一の連続構造から形成してもよく、または、合わせて可撓性リング106の円周に沿って延在する、複数の隣接するかつ/または部分的に重なる要素によって画定してもよい。本開示の例示的な実施形態によれば、弁スカート110を可撓性リング106に対して縫合してもよい。別法として、弁スカート110の縁にカフを形成してもよく、こうしたカフは、内部に可撓性リング106を受け入れるように適合されている。カフは、弁スカート110の縁全体に沿って延在してもよく、または弁スカート110が可撓性リング106に対して間隔を空けて取り付けられるように、弁スカート110の長さに沿って不連続な間隔で画定されてもよい。弁スカート110を、種々の実質的に可撓性のかつ/または柔軟な材料、たとえば血流と適合性がある異種移植組織または人工材料、たとえば非血栓形成性材料から調製してもよい。実際に、本開示の例示的な実施形態では、弁スカート110およびリーフレット膜108を、一体/連続構造として、たとえば所望の異種移植かつ/または人工材料から調製してもよく、こうした一体/連続構造を、両要素の機能(すなわち、リーフレット膜機能および弁スカート機能)が達成されるように、可撓性リング106に対して有利に取り付けることができる。
【0028】
弁スカート110の厚さは、縁から縁まで実質的に一様であってもよく、またはその長さに沿って変化してもよい。たとえば、本開示の例示的な実施形態では、弁スカート110は、可撓性リング106に隣接する領域では厚く、可撓性リング106から相対的に遠い領域では薄くなり、それにより、隣接する解剖学的構造/組織に対するより有効な封止機能を提供するように、後者の領域における弁スカート110の可撓性が向上する、ということが考えられる。可撓性リング106に隣接する厚い方の領域は、弁スカート110が可撓性リング106から外れる可能性を低減する役割を果たすことができる。
【0029】
図1の例示的な実施形態は、可撓性リング106に対して単一方向、すなわち下方に延在する弁スカート110を示すが、本開示により、弁スカート110が可撓性リング106に対して上方および下方の両方に延在してもよい、ということが考えられる。弁スカート110の何らかのこうした実施態様では、弁スカート110を可撓性リング106に対して固定する取付手段は、必ずしもその縁に配置されない。そうではなく、こうした取付手段、たとえばカフおよび/縫合を、弁スカート110の中間線/領域に沿って配置してもよい。このように、弁スカート110の第1部分は、可撓性リング106の上方に自由に延在することができ、弁スカート110の第2部分は、可撓性リング106の下方に自由に延在することができる。弁スカート110の両方の部分、すなわち可撓性リング106の上方の部分および下方の部分は、より詳細に後述するように、人工弁102が患者の解剖学的構造に対して配置された時、人工弁102をその患者の解剖学的構造に対して封止するように有利に機能する。注目すべきは、可撓性リング106の上方に延在する弁スカート110の部分は、より詳細に後述するように、位置決め要素120に関する構造に対応するように切欠きまたは切れ目を有することができる、ということである。弁スカート110は、周囲の解剖学的構造に対する所望のレベルの封止を達成するために有効な下方の長さを有することができる。たとえば、弁スカート110は、下方の長さが可撓性リング106に対して約5mm〜約15mmであってもよい。弁スカート110が可撓性リング106の上方および下方の両方に延在する実施態様では、弁スカート110の上方に延在する部分に対して同様の寸法が考えられる。
【0030】
より優れた安全性/安定性のために、弁スカート110を、弾性要素112に対して(たとえば弾性要素112の脚116のうちの1つまたは複数に)、仮付けするか、または少なくとも何らかの方法で固定することができる。代替実施形態では、弁スカート110を、位置決め要素120の外側に放射状に配置してもよい。
【0031】
図1に示すように、弾性要素112は、取付要素118を介して可撓性リング106に対し円周方向に隔置して取り付けられた3つの脚116を有することができる。各脚116を、弓形形状を含むかまたは呈するように、あるいは可撓性リング106の近傍で撓曲するように、構成するかまたは適合させることができる。脚116を、互いに対して約120°隔置させてもよいが、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、脚116の別の数および/または間隔を採用してもよい。取付要素118は、ハブ114に対するかつ/または可撓性リング106に対する脚116の回転運動および/または逆転運動を可能とするように、脚116に対して任意の好適な形状、設計、構成および/または取付技法のものであってもよい。たとえば、取付要素118は実質的にC字型かつ/または管形状であってもよい。取付要素118を、たとえば、適当な取付技法、たとえば仮付け溶接により、脚116のそれぞれの下側(たとえばその弓形部分または撓曲部分内)に取り付けることができる。
【0032】
弾性要素114の脚116と弁スカート110との間のあり得る相互作用に戻ると、取付要素118は、弁スカート110がこうした円周領域において可撓性リング106に固定される程度まで、弁スカート110の上に重なることができる。さらに、弁スカート110を、脚116のうちの1つまたは複数の、それが弁スカート110の上に延在する下側に、仮付けし、接着し、または他の方法で接合してもよい。
【0033】
さらに図1を参照すると、位置決め要素120の各々を、組織に係合するように、かつ/または人工弁102を組織に対して配置するように、成形し、構成し、かつ/または他の方法で適合させることができる。たとえば、各位置決め要素120は、外面122、外面122と反対側の内面124、上方弓形領域126、および上方弓形領域126と反対側の下方弓形領域128を画定することができる。位置決め要素120の各々を、弾性要素112の対応する脚116に、たとえば位置決め要素120の内面124と脚116の対応する外面との間の溶接により、結合(たとえば固定接合)することができる。位置決め要素120を、その上方弓形領域126が可撓性リング106の上方に延在する(たとえば人工弁102が図1に示す向きをとる場合)ように寸法を決めることができる。位置決め要素120の上方弓形領域126および下方弓形領域128を、より詳細に後述するように、人工弁102の心臓弁輪に対する位置決めを容易にする距離だけ隔置することができる。たとえば、上方弓形領域126および下方弓形領域128を、約7mmと約25mmとの間だけ隔置してもよい。位置決め要素120および脚116を、適当な厚さ/ゲージのステンレス鋼またはニチノール等、少なくともある程度の可撓性/変形(たとえば弾性変形)を可能にする材料から製作することができる。位置決め要素120および/または脚116に対する他の材料もあり得る。
【0034】
位置決め要素120の下方弓形領域128は、一対の隔置された開口130、132を有することができる。送達構造104は、複数のフィラメントまたはコード134を有することができ、各コード134は、位置決め要素120に、そこに形成されている一対の隔置された開口130、132を介して通されており、それにより、コード134の別個の長さ部分(length)136が、開口130、132から離れる方向にかつ弾性要素112のハブ114に向かって放射状に内側に延在する。図2においてより明確に分かるように、弾性要素112のハブ114は、1つまたは複数のルーメン200(たとえば中心に位置するルーメン200)を有することができ、送達構造104は、1つまたは複数の対応するルーメン204(たとえば軸方向に位置するルーメン)を有する送達管202を有することができ、コード134の長さ部分136は、位置決め要素120のそれぞれの下方弓形領域128からハブ114に向かって、そのルーメン200内に入りかつその内部を通り、送達管202のルーメン204内に入りかつその内部を通ることができる。コード134のこうした長さ部分136により、かつ/またはこうしたコード134のこうした長さ部分136を、位置決め要素120の下方弓形領域128からハブ114および/または送達管202を介してこのように引き回すことにより、人工弁102の弁輪および/または関連する心臓組織に対する配置を容易にすることができる。
【0035】
送達管202は可撓性であってもよく、1つまたは複数のルーメン204は、コード134の複数の長さ部分136が通るのに適応することができる。図1および図2の例示的な実施形態では、3つの位置決め要素120が人工弁102に関連しており、各位置決め要素120は別個のコード134と相互作用する。したがって、ハブ114および送達管200のそれぞれのルーメン200、204を、位置決め要素120のそれぞれの下方弓形領域128にまたはその近くに形成された一対の隔置された開口130、132を通る各コード134のルーピングに基づいて、コード134の最小6つの別個の長さ部分136を収容するように、適当に寸法を決めることができかつ/または適当な数にすることができる。
【0036】
また図2の断面図から明らかであるように、弾性要素112の脚116は、そのハブ114とかつ/または可撓性リング106と協働して、たとえば配置プロセス中にかつ/またはインサイチュでの人工弁102の耐用年数の間に、人工弁102に安定性を提供することができる。脚116と可撓性リング106との間のかつ/または脚116とハブ114との間の構造的相互作用により、外科医/臨床医は、コード134の長さ部分136および送達構造104を利用して、人工弁102を遠隔で操作する(たとえば、脚116を可撓性リング106に対してかつ/またはハブ114に対して遠隔で移動/回転させる)ことができる。脚116の各々は、たとえば、人工弁102がそのカテーテルベースの送達のために折り畳まれるのを容易にするために、そのそれぞれの長さに沿って1つまたは複数の継手(たとえば、その中間点にまたはその近くに1つまたは複数のリビングヒンジ)を有することができる。本開示による実施形態では、1つまたは複数のこうした継手は、インサイチュでの人工弁102の配置時に、可撓性リング106をその完全な直径(または少なくともその実質的な部分)まで伸長させるか、または他の方法で実質的にそれが自力で伸長するのに役立つ、ばね力の送達を容易にするように、エネルギーを貯蔵することができる。本開示による実施形態では、1つまたは複数のこうした継手は、さらに、位置決め要素120を放射状に外側に(たとえば、対応する組織と確実に係合する方向に、かつ/またはカテーテル内送達に関連する圧縮形状から放射状に外側に)付勢するようにエネルギーを貯蔵することができる。本開示の少なくともいくつかの例示的な実施形態によれば、ハブ114から3つの脚116が延在することができ、それにより、弾性要素112は、配置中、かつ/またはインサイチュで移植されている間、人工弁102を拡張させ/かつ支持する「三脚」型形状を呈する(たとえば、可撓性リング106が、人工弁102の意図された機能と一貫する形状を呈しかつ/または維持し、かつ/または位置決め要素120を放射状に外側に付勢するのに役立つ)。
図2をさらに参照すると、人工弁システム100の人工弁102は、患者の心臓弁輪「A」および心臓壁「W」と整列し係合しているように示されている。人工弁102はさらに、心臓弁尖構造「V」に取って変わるように示されている(たとえば、人工弁102は、弁尖構造Vがもはや適切に提供していない弁機能を提供する目的で、弁輪A内に移植される)。弁輪Aは、説明を容易にするために拡大しかつ対称的に示されている。関連する解剖学的構造の実際の幾何学的詳細および寸法の詳細は、当業者には既知である。図2に示すように、それぞれの位置決め要素120の上方弓形領域126の各々を、弁輪Aの上部の対応する部分と係合するように有利に配置することができる。このように、少なくとも、位置決め要素120を、互いに協働して人口弁102を弁輪Aに対して整列させるように採用することができる。図2に示すように、下方弓形領域128の各々を、弁輪Aの下方の壁Wの対応する部分と係合するように有利に配置することができる。このように、少なくとも、位置決め要素120を、互いに協働して人工弁102を解剖学的環境全体に対して安定化し固定するように採用することができる。
【0037】
外科医/臨床医は、人工弁102の弁輪Aまたは壁Wに対する位置/向きに不満であるかまたは不満になるか、あるいは人工弁102の配置に関して何らかの他の不満または疑問を有しているかまたは募らせる場合、コード134のそれぞれの長さ部分136を、ハブ114および送達管202を通して放射状に内側にかつ/または上方に十分引っ張るかあるいは他の方法で操作するかまたは移動させることにより、位置決め要素120の下方弓形領域128を内側に偏向し、位置決め要素120の下方弓形領域128が壁Wから外れるようにすることができる。そして、外科医/臨床医は、送達管202を送達カテーテル(別個に図示せず)に対して所望の程度まで引っ張るか、押すか、あるいは他の方法で操作するかまたは移動させることにより、解剖学的環境全体に対して人工弁102の構造を再配置することができる。こうした操作を、たとえば、ハブ114および弾性要素112の脚116を介して人工弁102に伝えることができる。本開示の実施形態によれば、人工弁102を図2に示す弁輪Aに対する位置まで送達した後、外科医/臨床医は、人工弁102を少なくとも部分的に上方に戻るように引っ張るように選択することができ、それにより、位置決め要素の下方弓形領域128が弁輪Aの下方部分の対応する部分と係合し、かつ/または心臓弁尖構造Vと係合し、それにより少なくとも場合によっては、人工弁102が弁輪A内に特に確実に収容されかつ/または固定されることになる。
【0038】
外科医/臨床医は、人工弁102の弁輪Aおよび/または壁Wに対する位置に満足すると、コード134を、その一方の長さ部分136を他方の長さ部分136を緩めたままで十分な程度まで外側に引っ張ることにより、送達管202を介して人工弁102から引き出すことができる。外科医/臨床医は、さらに、送達管202を弾性要素112のハブ114から引き離すことにより、送達構造104の残りの部分を人工弁102から引き出すことができる。送達管202をハブ114から分離する手段は、種々の形態をとることができ、たとえば、ハブ114に関連する対応するソケットから外すことができる送達管202の端部のねじ山構成であってもよい。バヨネットロック機構、戻り止め係合機構等、さらなる(たとえば別の)連結および/または分離手段が可能であり、その少なくともいくつかについて後にさらに説明する。
【0039】
それぞれの位置決め要素120の1つまたは複数の組織係合面の上に、中に、かつ/またはそれを通して、組織係合機構、たとえばかえし、タック等を形成することができる。たとえば、こうした機構を、位置決め要素120の外面122に、たとえば上方弓形領域126および/または下方弓形領域128内に形成することができる。さらに、表面処理および/または付属構造を位置決め要素120に関連付けることにより組織内方成長を促進することができ、それにより、本開示による移植された人工弁の安定性/安全性がさらに向上する。たとえば、組織内方成長を促進する生物学的コーティングおよび/または材料またはファブリック、たとえばDACRONTM材料を、位置決め要素120のそれぞれの外面122の所望の部分/領域に付してもよい。
【0040】
開示されている人工弁ならびに人工弁システムおよび方法を、種々の解剖学的部位に、たとえば僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁または三尖弁の人工弁として適用することができる。開示されている人工弁の実施形態を、特に僧帽弁の用途に適用することができる。所望の臨床的用途に応じて、人工弁システム100および/または人工弁102を、環状リングを、必要な解剖学的空間、たとえば心臓の僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁または三尖弁の開口に嵌合するように適合させることにより、こうした使用に対応するような寸法にすることができる。
【0041】
図3Aおよび図3Bを参照すると、人工心臓弁102は、カテーテル302のルーメン300内で折畳み形状をとることができる。さらに、位置決め要素120を、対向する外側の力が加えられていない時にこうした構造(たとえば図1に示すような)に対して占有する傾向があり得る相対的な位置または向きに比較して、実質的に反転させ、たとえば、それらが取り付けられている可撓性リング106に対してかつ弾性要素112のハブ114に対しておよそ180°回転させることができる。可撓性リング106を、実質的に変形させることも可能であり、弾性要素112の脚116を、人工弁102がカテーテル302内に嵌合することができるように偏向させることができる。この反転した向きでは、それぞれの位置決め要素120に関連する上方弓形領域126および下方弓形領域128を、送達管202に向かって内側に向けることができる。本開示の例示的な実施形態では、それぞれの位置決め要素120の上方弓形部分126および下方弓形部分128は、それぞれの先端304、306が関連付けられかつ/またはそこで終端することが可能であり、こうした先端304、306は、切取り部(図3Aおよび図3Bには図示せず)、たとえば弓形切欠きを特徴として有していてもよく、こうした切取り部は、位置決め要素120が図3Aおよび図3Bに示す実質的に反転した向きにある時、送達管202の実質的円柱形状と協働するように適合される。
【0042】
図4A〜図4Iを参照すると、開示されている人工弁102を経皮的に送達し所望の解剖学的位置に配置するステップの例示的な一連の手順が概略的に示されている。図4A〜図4Cに示すように、人工弁102を、遠位端402を有する送達カテーテル400内の、たとえば僧帽弁、大動脈弁、肺静脈弁または三尖弁に隣接する所望の解剖学的位置に進めることができる。本開示の実施形態によれば、人工弁102を、僧帽弁腔に経中隔的に、または大動脈弁、肺動脈弁または三尖弁の腔に直接静脈または動脈送達により、送達することができる。例示的な実施形態では、人工弁を、送達カテーテル400内に形成されているかまたは他の方法で存在する対応するガイドワイヤルーメン(図示せず)と協働するガイドワイヤ(図示せず)を用いて、所望の位置まで進めることができる。人工弁102を、送達カテーテル400内に、関連するガイドワイヤに沿って折り畳まれた/反転した向きで(たとえば送達管202によって押されることにより)移植位置(たとえば僧帽弁の場合は左心房)まで前進させることができ、そこで、人工弁102は、そこでの後続する移植のために罹患弁に隣接して配置される。別法として、人工弁102を送達カテーテル400内の遠位端402にまたはその近くに事前に配置してもよく、人工弁102および送達カテーテル400の遠位端402をともに、関連するガイドワイヤに沿って同時に前進させてもよい。
【0043】
送達カテーテル400の遠位端402が所望の解剖学的位置、たとえば弁輪「A」の必要な程度に近接する範囲内まで送達されると、送達管202を送達カテーテル400に対して伸長させ、人工弁102を遠位端402の対応する開口を介してカテーテルの外側に押し出すことができる。人工弁102が遠位端402を出ると、人工弁102のいくつかの構成要素、特に可撓性リング106および弾性要素112(図2)の脚116の弾性特性により、少なくとも可撓性リング106が自動的にその非変形/非圧縮形状に戻ることができ(たとえば図4Bにかつ一連の図4A〜図4Iにおける後のすべての図に示すように)、それはたとえば円形、楕円形等であり得る。図4Cに最もよく示すように、外科医/臨床医が、人工弁102が送達カテーテル400から出てくるのを可能にすると、外科医/臨床医側にそれ以上の積極的な動作もなしに、人工弁102は、最終的に、完全に弛緩する傾向にあり、概して非変形向きをとることができ、そこでは、位置決め要素120は、水平面を越えて外方にかつ下方に回転することにより逆転したかまたは反転することが分かる(たとえば、その外面122が再び概して外側に面し、その上方弓形領域126および下方弓形領域128が再び外側に向けられる)。弁スカート110を、所望の解剖学的位置に配置されると有利な封止機能(たとえば弁脱出に対するように)を行うように適当に実質的に下方に向けかつ配置することができる。
【0044】
外科医/臨床医は、位置決め要素120の下方弓形領域128を、図4Cに示す人工弁102、より詳細にはその位置決め要素120の向きから、コード134(図2)のそれぞれの長さ部分136を、位置決め要素120の可撓性リング106およびハブ114(図2)に対する逆転または反転運動を継続するように(図4D参照)、ハブ114(図2)および送達管202に向かって放射状に内側にかつまたはそれを通して上方に十分な程度引っ張り、図4Dおよび図4Eに示すように一連の向きを進み、図4Fに示す特に顕著な向きに達するようにすることにより、内側に偏向させることができる。たとえば、本開示の実施形態によれば、外科医/臨床医は、送達カテーテル400の外側にかつ患者の身体の外側に配置された複数のコード134(図2)の長さ部分136のそれぞれの近位端(図示せず)を把持するかまたは他の方法で掴み、こうした端部を送達カテーテル400および患者の身体の外側に引っ張ることにより、位置決め要素120のこうした偏向に対応することができる。コード134の長さ部分136をこのように引き出すことにより、位置決め要素120の下方弓形領域128が放射状に内側に、たとえば下方弓形領域128の先端306が少なくとも部分的に罹患弁に向かって下方に延在する地点まで引っ張られる。図4Gおよび図4Hに示すように、このように下方に向けられかつ相対的により近接して隔置された下方弓形領域128を、患者の弁尖膜(たとえば図2の弁構造Vを参照)を偏向させかつ/または他の方法で人工弁102の患者の罹患弁内への下方の前進を容易にするように、プローブまたは「プラウ」のように利用することができ、それにより、人工弁102は、弁輪Aに対する適当な移植高さおよび適当な横方向位置に配置されることが可能である。
【0045】
図4Hに最もよく示すように、それぞれの位置決め要素120の上方弓形領域126を、人工弁102の弁輪Aに対する位置決め/整列を容易にするように、共通平面内に、たとえば「トップハット」のように収容されるように協働して適合させることができる。人工弁102によって示されかつ位置決め要素120によってまとめて画定される円周方向に断続的な態様により、経皮的導入中の位置決め要素120の逆転と、最終的な移植およびインサイチュでの弁機能時における有効な整列および組織係合/安定性とをともに容易にすることができる。たとえば、複数の上方弓形領域126の各々が弁輪Aの上部の対応する部分に実質的に係合すると、人工弁102を概して所望の方法で整列させることができる。
【0046】
人工弁102を、ここで、たとえば従来の撮像機器を通して見られるように、外科医/臨床医によって望まれる方法で、弁輪Aに対してさらに配置しかつ/または空間的に方向付けることができる。(注目すべきは、位置決め要素120(および特にその上方弓形領域126)は、人工弁102の弁輪Aに対する適切な位置決めおよび空間的方向付けを確定するようにその画像認識を容易にするように、実質的に放射線不透過性であり得る、ということである)。たとえば、その時点で、外科医/臨床医は、複数のコード134(図2)の長さ部分136内で蓄積された張力を弛緩させ始めることができ、それにより、弾性要素112(図2)の脚116(図2)にかつ/または位置決め要素120に含まれるエネルギー/ばね力の対応する蓄積により、位置決め要素120の下方弓形領域128が再び放射状に外側に回転始めるようにするのを可能にし始めることができる。またたとえば、図4Iに示すように、下方弓形領域128を、そのそれぞれの先端306が壁Wを含む心臓組織と接触しかつ/または係合するのを可能にするように十分な程度まで、放射状に外側に回転させることができる。弾性要素112の脚116および/または位置決め要素120が、こうした組織係合を可能にするために十分な程度まで後退すると、さらにそれぞれの先端306が合わせて壁Wに対して押圧しかつ/または壁Wに対して実質的に適所に埋め込まれるように、十分なエネルギー/ばね力を依然として保持することができる。こうした結集したばね力は、位置決め要素120の下方弓形領域128が、人工弁102の垂直に上方の引出しまたは変位に対するある程度の抵抗を提供することができるために十分であり得る。そのある程度の抵抗は、たとえば、弁輪Aを横切ってかつ/または弁輪Aに対して配置された上方弓形要素126によって提供されるその垂直に下方の変位に対して、自然に強い程度の抵抗に少なくとも匹敵する程度の抵抗である。
【0047】
また図4Iに示すように、人工弁102が弁輪Aに対して適切に位置決めされ方向付けられることが確定されると、コード134(図2)を位置決め要素120から引き出すことができる。その後、送達構造104の残り部分を、人工弁102から切り離しかつ/または分離することができ(たとえば、送達管202をハブ114(図2)から切り離すことができ)、それにより、人工弁102が、患者の罹患心臓弁に対し、その機能的代用としての役割を果たすように適当な位置に置かれる。位置決め要素120は、本来の弁尖膜(図2の弁構造V参照)を開放位置に維持する役割を果たすことができ、可撓性リング106に対して取り付けられているリーフレット膜108および弁スカート110の各々は、内部を通る血流の適当な方向制御を確実にするように機能することができる。
【0048】
開示されている人工弁および関連する送達構造/方法は、既存のシステムに対して多数の利点を提供する。たとえば、開示されている人工弁に関連する位置決め要素は、弁輪とともに弁輪の下方の心室腔の壁と係合するよう有利に機能することができる、上方弓形領域および下方弓形領域を有し、それにより、それに対して人工弁が(たとえば再配置可能に)確実に整列し安定化される。さらに、人工弁の反転可能かつ折畳み可能な態様(たとえば、カテーテル導入およびカテーテルを出る際の人工弁の自動拡張の目的で)により、開示されている人工弁システムの効率的な経皮送達およびインサイチュ操作を容易にすることができる。さらに、開示されている弁スカートは、本来あり得る(たとえばこうしたスカートおよび/またはそれによって提供される環状封止機能がない)場合に比較して、インサイチュに配置された場合に開示されている人工弁の封止機能を向上させることができる。さらに、位置決め要素の上方弓形領域の「トップハット」形状および/または機能は、弁輪および関連する解剖学的構造に対して人工弁を正確にかつ確実に配置するよう有利に機能することができる。
【0049】
開示されている設計および移植方法は大規模な手術を必要としない可能性があり、開示されている位置決め要素は、安定しかつ適切に整列された移植、中心血流および/またはリーフレット膜に対する安定したプラットフォームを提供するように機能することができる。さらに、位置決めは、ステント等のバルーン拡張型装置より正確であり得る。さらに、かつステントとは異なり、位置決めを、(たとえば所望の移植位置および/または向きが達成されるまで)繰り返すことができる可能性がある。本明細書に記載されている人工心臓弁はまた、ステントに対しそれが付着する十分な組織がない可能性のある罹患弁の状態で(たとえば、一般的に僧帽弁疾患に関する場合のように)、弁輪に対する固定を可能にすることもできる。
【0050】
本開示の例示的な実施形態によれば、罹患心臓弁に隣接するかつ/またはその近くの接続する血管に配置されるように構成されたステントを使用することを特徴とする、いくつかの既存の人工心臓弁実施態様とは異なり、人工心臓弁を、罹患心臓弁の部位に直接(squarely)配置することができ、したがって、移植中かまたは移植後、あるいはインサイチュの手術中であるか否かに関わらず、罹患心臓弁との間に間隔を空けた関係で配置されるように設計される。その結果、手術者または外科医が、本開示の実施形態によって提供され得るように、罹患心臓弁の開口に人工心臓弁をより正確に配置するために、人工心臓弁を再配置しかつ/または再度固定する能力を、著しく向上させることができる。
【0051】
本開示の位置決め要素120を、図5〜図7に示すものを含む複数の変形のうちの1つまたは複数によって実現することができる。より詳細には、図5に示す位置決め要素500は、位置決め要素120のこうした変形の1つである。位置決め要素500は、上方弓形領域502および下方弓形領域504と、それらの間に配置された中間領域506と、外面508とを有することができる。組織の内方成長を促進するために、外面508の中間領域506の付近に穴512のアレイ510が形成されることが可能であり、それによりインサイチュでの位置および向きの安定性が向上する。ここで図6を参照すると、位置決め要素600は、位置決め要素120の別のこうした変形である。位置決め要素600は、上方弓形領域602および下方弓形領域604と、それらの間に配置された中間領域606と、外面608とを有することができる。組織の確実な係合を容易にするために、中間領域606の付近の外面608から延在するスパイクまたは突起(spur)612のアレイ610を設けることができ、同様にインサイチュでの位置および向きの安定性が向上する。図7に示す位置決め要素700は、さらに別の位置決め要素120の変形である。位置決め要素700は、上方弓形領域702および下方弓形領域704と、それらの間に配置された中間領域706と、外面708とを有することができる。組織の内方成長および組織の確実な係合の両方を促進するために、中間領域706の付近の外面708に、穴712のアレイ710を形成することができ、かつそこから延在するようにスパイクまたは突起714を設けることができ、この場合もまたインサイチュでの位置および向きの安定性が向上する。図5〜図7では、穴512および712ならびに突起612および714は、それぞれの位置決め要素500、600、700のそれぞれの中間領域506、606、706に現われているように示されているが、こうした特徴を、別法として、かつ/またはさらに、その上方弓形領域502、602、702および下方弓形領域504、604、704の一方または両方に配置してもよい。
【0052】
位置決め要素120の別の変形は、図8の位置決め要素800によって具現化される。弾性要素804の脚802が位置決め要素800を支持することができ、位置決め要素800はさらに、組織係合先端808を有する下方弓形領域806を有することができ、組織係合先端808は、下方弓形領域806の後退状態において、位置決め要素の中間領域810に向かって内側にかつ/またはそれに向かって下方に延在するように、巻き取られるかまたは「巻き上げられる」ことが可能である。配置構造812が、先端808を、患者の心臓壁(図示せず)を構成する心臓組織と係合することができるように外側に向けなおすことができるように、下方弓形領域806を巻き出すように、下方弓形領域806(たとえばその先端808の近く)に取り付けられたコード814を有することができる。外科医/臨床医は、位置決め要素800の位置決め中にコード814を外側に引っ張ることができ、先端808が心臓組織と係合し始めると、コード814を解放することができ、それにより下方弓形領域806(たとえばコイル・ばね構成を有するもの)に固有の蓄積されたエネルギー/ばね力が、心臓組織に追加の力で突き当たることができる。複数の位置決め要素800を人工弁816(別に図示せず)に設けることにより、少なくとも幾分かの反力の均衡を達成することができ、位置決め要素800の上方弓形領域818は、下方弓形領域806と同様の巻取り構成(別個に図示せず)を有することができる。
【0053】
人工弁102の変更バージョンは人工弁900によって具現化され、それは図9に部分的にかつ概略的に示されている。人工弁900は、弾性要素902を有することができ、それは、上述した弾性要素112に関連する脚116と概して同様の脚904を有している。脚904は、上ジョー908、下ジョー910、および上ジョー908と下ジョー910との間に配置されたヒンジ912を有する、爪906を支持することができる。人工弁900は、互いに向かって閉鎖するように爪906の上ジョー908および下ジョー910を付勢し、かつ患者の心臓壁の心臓組織と確実に係合するための、ねじりばね(図示せず)をさらに有することができる。配置構造914が、上ジョー908および下ジョー910に取り付けられたコード916を有することができる。外科医/臨床医は、爪906の位置決め中に爪906を開放したまま保持するようコード916を外方に引くことができる。爪906が心臓組織(たとえば図2に示すような弁輪A)係合し始めると、外科医/臨床医はコード916を解放することができてもよく、それにより、ばね付勢が上ジョー908および下ジョー910に作用することができ、それによって爪906が心臓組織に付着することができる。人工弁900に、複数の爪906(図示せず)を設けてもよい。
【0054】
人工弁102のそれぞれの代替的な変更バージョンは、それぞれ図10、図11および図12に部分的かつ概略的に示されている人工弁1000、1100および1200によってさらに具現化されている。図10の人工弁1000は、ハブ1006から延在する複数の脚1004を有する弾性要素1002を有することができる。脚1004は、それ自体がばねであってもよく、弓形または撓曲領域1010において接合された少なくとも2つの板ばね1008を有することができる。人工弁1000は1つまたは複数の係合要素1012をさらに有することができ、その各々は、人工弁1000を罹患心臓弁に対してかつ/またはそれに関連する弁輪に対して適所に固定するために適合であるように、心臓組織を穿孔しかつ/または他の方法でそれと侵襲的に係合する複数のフォーク(prong)1014を有することができる。係合要素1012を、脚1004の板ばね1008のうちの1つによって支持することができ、人工弁1000は、図10に示すように2つの係合要素1012(たとえば各々2つのフォーク1014を有する)の複数のセットを有することができる。
【0055】
図11の人工弁1100は、ハブ1106から延在する複数の脚1104を有する弾性要素1102を有することができる。脚1104自体がばねであってもよく、弓形または撓曲領域1110において接合された少なくとも2つの板ばね1108を有することができる。人工弁1100は、1つまたは複数の係合要素1112をさらに有することができ、その各々は、V字型で共通の連結点から外側に延在する2つのアーム1114を有することができる。人工弁1100は、係合要素1112を患者の罹患心臓弁に関連する弁輪の周囲で閉鎖する目的で、係合要素1112のアーム1114を合わせて付勢する付勢ばね(概略的に参照数字1116で示す)をさらに有することができる。係合要素1112を、脚1104の板ばね1108のうちの1つによって支持することができ、人工弁1100は複数のこうした係合要素1112を有することができる。
【0056】
図12の人工弁1200は、ハブ1206から延在する複数の脚1204を有する弾性要素1202を有することができる。脚1204自体がばねであってもよく、弓形または撓曲領域1210において接合された少なくとも2つの板ばね1208を有する。人工弁1200は、1つまたは複数の係合要素1212をさらに有することができ、その各々は、人工弁1200を罹患心臓弁に対して固定するために適当であるように心臓組織と係合する複数の歯1214を有することができる。係合要素1212を、脚1204の板ばね1208のうちの1つに直接取り付けることができる(たとえば、人工弁1200は、図12に示すように各々歯1214の2つの列を有する複数の係合要素1212を有していてもよい)。実施形態(別個には図示せず)によっては、係合要素1212は、脚1204に対して少なくとも幾分かの程度まで可動であり得るように、歯1214の2つの列の間の中心位置において蝶番式であってもよい。したがって、少なくともいくつかのこうした実施形態では、係合要素1212を、他の点では図9を参照して上述した爪906と構造的かつ機能的に同様な歯付き爪として利用することができる。
【0057】
上述した可撓性リング106の変形は、図13および図14に示す可撓性リング1300によって具現化される。可撓性リング1300は、3次元形状(たとえば図14に示す3次元形状)を呈するように外側に伸長する傾向があり得る(たとえばいかなる実質的圧縮力もなしに)ように弾性であってもよく、その場合、可撓性リング1300は、特徴的な横方向の幅または寸法のほかに、実質的な垂直高さを有していなくてもよい。より詳細には、可撓性リング1300は、複数のフープセグメント1302を有することができる。フープセグメント1302を、共通の水平面内に含めることができ(たとえば、可撓性リング1300がその最大幅および高さまで伸張した時)、そこで、フープセグメントを、可撓性リング1300の高さの範囲の少なくとも一部を構成する、共通水平面に対して垂直に延在する対応する数の結合セグメント1304によって分離しかつ/または結合することができる。各フープセグメント1302は、上述した弁スカート110と同様の弁スカート、上述したリーフレット膜108と同様の少なくとも1つのリーフレット膜、および/または上述したものと同様の関連する弁輪またはカフのうちの1つまたは複数の確実な結合を容易にするように、切欠き1306をさらに有することができる。たとえば、こうした結合を、弁スカート、リーフレット膜および/またはカフの可撓性リング1300の円周に対するかつ/またはその周囲での相対移動を制限するように、切欠き1306内に少なくとも部分的に収容された結節縫合(図示せず)を介して得ることができる。結合セグメント1304の各々は、弓形または撓曲領域1310において接合された2つの板ばね1308を有するばねを備えることができ、それにより、可撓性リング1300は、放射状に圧縮されているように、かつ/または、可撓性リング1300が一部を形成する対応する人工弁(別個には図示せず)を圧縮するために、かつ/またはこうした人工弁を狭いゲージのカテーテル(図示せず)に通すように適した、小型形状を有するように、特に適用可能であり得る。より詳細には、可撓性リング1300は、フープセグメント1302(たとえば結合セグメント1304に関連する)の面においてその円周に断続的な切れ目を有することができるため、その形状は、可撓性リング1300によって示される弾性放射状圧縮性にさらに寄与することができる。結合セグメント1304の撓曲領域1310は、さらに、切欠き1306と機能的に同様の固定点としての役割を果たすことができる。たとえば、こうした切欠き1306を、本開示の実施形態による可撓性リング1300を組み込んだ人工心臓弁(図示せず)の対応するリーフレット膜(図示せず)間に形成された合せ目継目(図13〜図14には図示せず、たとえば図16〜図20に関して後に例示し説明する対応する構造を参照)を固定し、かつ/またはその長さの範囲を制限する固定点として使用することができる。
【0058】
本開示による人工弁102の変形は、図15に示す人工弁1500によって具現化される。人工弁1500の弾性要素1502は、上述した弾性要素112と構造的にかつ機能的に同様であってもよい。弾性要素1502の脚1504は、送達管202に向かって内側に屈曲することができる。たとえば、脚1504を、人工弁1500の拡張された放射状圧縮を促進するように、送達管202に向かって内側に屈曲するように適合させることができる。こうした脚1504の屈曲により、さらに、人工弁1500が、本来より、より内径の小さいカテーテル1508のルーメン1506に沿って通ることを可能にすることができる。
【0059】
本開示による人工弁システム100の変更バージョンは、図16、図17、図18、図19および図20においてさまざまな動作段階に示されている人工弁システム1600によって具現化される。人工弁システム1600は、実質的にすべての構造的かつ機能的特徴を含む人工弁102の変更バージョンである人工弁1602を有することができ、少なくともいくつかの例外について後述する。人工弁1602は、ハブ1608から放射状に外側に延在する複数の脚1606と、複数のリーフレット膜1610とを有する弾性要素1604を有することができる。リーフレット膜1610間の合せ目1612を、リーフレット膜1610間に形成されたそれぞれの縫合継目1614を介して部分的に閉鎖するか、または部分的に長さを制限することができる。たとえば、縫合継目1614は、人工弁1602の可撓性リング1616から、または可撓性リング1616の下方に間隔を空けた関係の位置から(たとえば、リーフレット膜1610の各々が単一構成のより大きい膜構造の一部を形成する人工弁(特に図示せず)の実施形態におけるように)、リーフレット膜1610のそれぞれの自由端または遠位縁と一致する点まで下方に延在することができる。人工弁システム1600は、ケーブル1602と、送達構造104の対応する態様と構造的にかつ機能的に類似する送達管1622とを有することに加えて、ハブ1608から下方に延在する塔1624をさらに有する送達構造1618をさらに有することができる。
【0060】
塔1624は、それによって提供され得る他の機能の中でも特に、少なくとも人工弁システム1600の中心軸1624を画定するのに関与することができ、さらに、脚1606がハブ1608とぶつかる高さ(たとえば図20において概して1626で示す)と、ケーブル1620が中心軸1625から外側に延在しかつ/または配置される高さ(たとえば図20において概して1628で示す)との間の軸方向(たとえば垂直または長手方向)の分離をもたらすことができる。図16〜図20に示すように、こうした構成は、リーフレット膜1610によりかつ/またはそれらの間に配置された縫合継目1614により占有される高さ(たとえば図18において概して1630で示す)から概して離れる方向にケーブル1620を変位させかつ/または引き回すという利点を有することができる。より詳細には、こうした構成は、ケーブル1620が、人工弁1602の配置、その位置の調整、および/または他の方法での移植のプロセス中に、リーフレット膜1610および/または縫合継目1614の縫合糸をすり減らすかまたは切断する危険を、有利に低減しかつ/または失くすことができる。こうした危険は、本実施形態による人工心臓弁の任意の特定の実施形態に関して必ずしも存在するものではない。たとえば、こうした危険が、実現性が低いかまたはすべての実際の目的に対し存在しない、図1、図2、図3A〜図3Bおよび図4A〜図4Iに関して本明細書で示し説明した人工心臓弁102の本開示による実施形態がある。しかしながら、たとえば、縫合継目1614の縫合糸および/またはリーフレット膜1610の特定の寸法またはそれらに対して指定された特定の材料が、インサイチュで最大の機能および/または耐久性を提供する目的で最適化されるが、こうした最適化が、不都合なことに、こうした構成要素を、人工弁移植中にケーブル1620との摩擦相互作用から損傷する危険が高い状態にするという影響を及ぼす実施形態を含む、本開示による少なくともいくつかの人工心臓弁実施形態に関して、こうした危険が存在し得ることが考えられる。こうした環境では、少なくとも、ケーブル1620とリーフレット膜1610との間、かつ/またはケーブル1620と縫合継目1614との間に適当な軸方向分離をもたらす、塔1624またはそれに構造的かつ/または機能的に類似する別の構成要素を使用することにより、特定の利点を提供することができる。
【0061】
図20において特に明らかであるように、こうした構成は、さらに、脚1608がハブ1606とぶつかる場所において弾性要素1604に著しい屈曲を加えることにより、さらなるエネルギーおよび/またはばね力を弾性要素1604内に蓄積することができる。たとえば、図16〜図20に連続して示すように、それによって弾性要素1604に十分な大きさの屈曲を加えることができ、それにより、ハブ1606がカテーテル1634の対応する配置プロセス中に、それぞれの位置決め要素1632の高さより実質的に完全に上方の高さまで上昇し、そこで、位置決め要素1632を、人工弁1602を患者の罹患心臓弁に対して配置する用意をして、可撓性リング1616およびハブ1608に対して逆転または反転させることができる。ハブ1608のこのような位置決め要素1632に対する上昇した配置は、罹患心臓弁(特に図示せず)内の人工弁1602の最終的なインサイチュ構成においてさらに持続することができ、それにより、ハブ1608の高さは、対応する弁輪A(比較のために図2参照)の高さと同一かまたはそれより上昇することができかつ/またはそのまま維持することができる。さらに、こうした環境では、脚1608は、i)脚1608がもはや有効にハブ1608から上方に垂直に延在しないか、またはii)脚1608がハブ1606から上方に延在し続ける程度が実質的に低減し、かつ/またはiii)脚1608が、ハブ1608から実質的に完全に下方に延在するように、可撓性リング1616に対して実質的に完全に逆転しているように、ハブ1606に対して最終構成を有することができる。弾性要素1604の脚1608のそのハブ1606に対するかつ/または可撓性リング1616に対するこれら構成のいずれか1つまたはすべてが、弾性要素1604を越えるかまたはそれを通る血液の流れにおけるある程度の渦または乱流の発生を低減するという有利な効果を有することができる。こうした環境では、関連する血液量における過度な組織損傷の危険を低減することができる。より詳細には、上述したようにこうした渦および/または乱流を減じることができる程度まで、人工心臓弁1602を通りかつこうした組織損傷に関連しかつ/またはそれをもたらす可能性のある血液の流れのせん断力特性の程度および/または大きさを、有益に調整し、制限し、かつ/または低減することができる。
【0062】
本開示の例示的な実施形態によれば、位置決め要素120の変更バージョンは、図21の位置決め要素2100によって具現化される。位置決め要素2100を、金属材料から製作することができる。たとえば、位置決め要素2100を、ニッケル・チタン合金ニチノール等、形状記憶合金(SMA、スマート合金(smart alloy)、記憶金属(memory metal)またはマッスルワイヤ(muscle wire)としても知られる)から製作することができる。位置決め要素2100は、近位端領域2102および遠位端領域2104と、近位端領域2102と遠位端領域2104との間に配置された中間領域2106とを有することができる。
【0063】
位置決め要素2100の中間領域2106および遠位端領域2104は、まとめて、罹患心臓弁(別個に図示せず)に関連する弁尖組織等の心臓組織と侵襲的に掛合しかつ/または他の方法で係合するフック2108を画定することができ、それにより、少なくとも部分的に、位置決め要素2100をこうした弁に対して固定する。たとえば、フック2108は、少なくとも部分的に位置決め要素2100の中間領域2106によって画定されるシャンク部2110と、位置決め要素2100の遠位端領域2104によって画定される撓曲部2112およびかえし部2114とを有することができる。かえし部2114の自由端2116は、かえし部2114が心臓弁尖の組織を穿孔することができるように十分鋭利であり、かつ/または尖っている。たとえば、かえし部2114およびその自由端2116を、左心室側から本来の心臓弁を通って少なくとも部分的に血流の方向に対して上方に延在し、かつ、かえし部2114が心臓弁尖のうちの1つまたは複数を穿孔し、それらと連結し、かつ/または固定されることができるように、寸法を決め、成形し、方向付けし、かつ/または構成することができる。
【0064】
フック2108のかえし部2114は、限定されないが図21に示す形状を含む、任意の好適な形状をとることができ、かえし部2114が、各々が先端部2120で終端する一対の歯(tine)2118を有する上向きフォークの形態で提供される場合も含まれる。本発明の実施形態によれば、歯2118の先端部2120の各々は、心臓弁尖の組織に対して配置可能であり、かえし部2114に対し(たとえば、位置決め要素2100が一部を形成する人工弁の移植中に、外科医が位置決め要素2100を上方に引っ張る場合等、シャンク部2110からかつ/または撓曲部2112を介して)加えられる上方に向けられた適度な量の力により、歯2118が心臓弁尖を穿孔しその組織内に突入することができるように、十分鋭利である。
【0065】
本発明の実施形態によれば、フック2108のかえし部2114はさらに、歯2118間に配置されかつ湾曲面2124を画定するウェブ領域2112を画定することができる。湾曲面2124を、歯2118の先端部2120を画定する半径に比べて比較的大きい半径によって画定することができる。そして、先端部2120は、ウェブ面2124上の最下点2128に対する歯2118の高さ寸法2126を画定することができる。こうした状況では、かえし部2114の歯2118を、心臓弁尖の組織内に少なくとも高さ寸法2126と実質的に等価な深さまで突入させることができる。また、または別法として、心臓弁尖の組織内をそれ以上引き裂くかまたは切り込まないように、ウェブ面2124に関連する半径が十分大きくてもよく、かつ/またはウェブ面2124の縁が十分に鈍いかまたは丸くてもよい。言い換えれば、ウェブ面2124は、歯2118が、人工心臓弁の移植に関連する通常の操作力および付勢力を受ける際に心臓弁の組織内に突入することができる深さに関する実際の制限を、高さ寸法2126の形態で確立するように、適当な寸法、形状および/または構成であり得る。
【0066】
図21にはフック2108のかえし部2114を示し、かえし部2114が、各々が先端部2120で終端する一対の歯2118を有する上向きフォークの形態で提供されることを含むように上述したが、かえし部2114の他の構成も可能である。たとえば、こうした他の構成には、必ずしも限定されないが、かえし部に対して3つ以上の歯を有する上向きフォーク、かえし部に対し、組織穿孔深さを制限する別の方法で構成された特徴が(たとえば、包囲する「柄(hilt)」または適当なフランジまたは他の表面の形態で)設けられる、上向きの、フォーク形でない、組織穿孔要素/槍状部材(spear)/かえし、および、かえし部に対し、組織穿孔深さを制限する別個の特徴が設けられていない、上向きの、フォーク形でない、組織穿孔要素/槍状部材/かえし等があり得る。
【0067】
位置決め要素2100の近位端領域2102は、罹患心臓弁(別個に図示せず)に関連する弁輪組織等の心臓組織と侵襲的に掛合しかつ/または他の方法で係合するフック2130を画定することができ、それにより、少なくとも部分的に位置決め要素2100をこうした弁に対して固定する。たとえば、フック2130は、撓曲部2132と、位置決め要素2100の近位端領域2102によって画定されるかえし部2134とを有することができる。かえし部2134の自由端2136は、かえし部2134が心臓弁輪の組織を穿孔することができるように十分鋭利であり、かつ/または尖っていてもよい。たとえば、かえし部2134およびその自由端2126を、少なくとも部分的に本来の心臓弁を通って血流の方向に対して上方に延在し、かえし部2134が左心室側から(たとえば心臓弁輪の面の下方から)心臓弁輪を穿孔し、それと接触し、かつ/またはそれに固定されることができるように、寸法を決め、成形し、方向付けし、かつ/または構成することができる。
【0068】
フック2130のかえし部2134は、限定されないが図21に示す形状を含む任意の好適な形状をとることができ、それには、かえし部2114が、各々が先端部2140で終端する一対の歯2138を有する上向きフォークの形態で提供される場合が含まれる。本発明の実施形態によれば、歯2138の先端部2140の各々は、心臓弁の弁輪に対して配置可能であり、かえし部2134に対し(たとえば、位置決め要素2100が一部を形成する人工弁の移植中に、外科医が位置決め要素2100を上方に引っ張る場合等、撓曲部2132を介して)加えられる上方に向けられた適度な量の力により、歯2138が心臓弁尖を穿孔し、その組織内に突入することができるように、十分鋭利である。
【0069】
本発明の実施形態によれば、フック2130のかえし部2134はさらに、歯2138間に配置されかつ湾曲面2144を画定するウェブ領域2142を画定することができる。湾曲面2144を、歯2138の先端部2140を画定する半径に比べて比較的大きい半径によって画定することができる。そして、先端部2140は、ウェブ面2144上の最下点2148に対する歯2138の高さ寸法2146を画定することができる。こうした状況では、かえし部2134の歯2138を、心臓弁尖の組織内に少なくとも高さ寸法2146と実質的に等価な深さまで突入させることができる。また、または別法として、心臓弁尖の組織をそれ以上切り裂くかまたは切り込まないように、ウェブ面2144に関連する半径が十分大きくてもよく、かつ/またはウェブ面2144の縁が十分鈍いかまたは他の方法で丸くてもよい。言い換えれば、ウェブ面2144は、歯2138が、人工心臓弁の移植に関連する通常の操作力および付勢力を受ける際に心臓弁の組織内に突入することができる深さに関する実際の制限を、たとえば高さ寸法2146の形態で確立するように、適当な寸法、形状および/または構成であり得る。
【0070】
図21にはフック2130のかえし部2134を示し、かえし部2134が、各々が先端部2140で終端する一対の歯2138を有する上向きフォークの形態で提供されることを含むように上述したが、かえし部2134の他の構成も可能である。たとえば、こうした他の構成には、必ずしも限定されないが、かえし部に対して3つ以上の歯を含む上向きフォーク、かえし部に対し、組織穿孔深さを制限する別の方法で構成された特徴が(たとえば、包囲する「柄」または適当なフランジまたは他の表面の形態で)設けられる、上向きの、フォーク形でない、組織穿孔要素/槍状部材/かえし、および、かえし部に対し、組織穿孔深さを制限する別個の特徴が設けられていない、上向きの、フォーク形でない、組織穿孔要素/槍状部材/かえし等があり得る。
【0071】
近位端領域2102と遠位端領域2104との間に配置された中間領域2106は、各々が先端部2152で終端する複数の外側にかつ下方に延在するかえし2150を画定する、外側に面する側または面2148を含むことができる。本発明の実施形態によれば、かえし2150の先端部2152の各々は、対応して角度をなす尖端に関連するシェブロン(山形)を画定することができ、心臓弁尖の組織に対して配置可能であり、かつ、中間領域2106に加えられる適度な量の下方に向けられた力(たとえば、位置決め要素2100が一部を形成する人工弁の移植中に外科医が位置決め要素2100を下方に引っ張る場合等)により、かえし2150が心臓弁輪および/または弁尖の対応する隣接部分を穿孔し、その組織内に突入することができるように、十分鋭利であり得る。本発明の実施形態によれば、外側に面する側または面2148はさらに、開口または貫通孔2154(たとえば、かえし2150を形成する特定の方法からもたらされ得るように、寸法および形状が概ねかえし2150に対応する)を画定することができる。こうした状況では、開口または貫通孔2154を、本明細書で説明するように位置決め要素2100が他の方法で取り付けられまたは固定される弁尖に関連する心臓組織の移植後内方成長を促進するように、寸法を決めかつ/または成形することができる。
【0072】
図21には中間領域2106を示し、先端部2152で終端し、その先端部が、対応して角度が付けられた尖端に関連するシェブロンを画定する、かえし部2050について説明するように上述したが、先端部2152および/またはかえし部2150の他の構成も可能である。また、かつ/または別法として、中間領域2106は、心臓弁尖の組織を穿孔するかえし以外のまたは異なる要素を含むことができる。たとえば、こうした他の構成には、必ずしも限定されないが、2つ以上の歯を含む下向きフォーク、外側に面する側または面2148以外の(またはそれに加えて)深さ制限機能が(たとえば、包囲する「柄」または適当なフランジまたは他の表面の形態で)設けられる下向きの組織穿孔要素/槍状部材/かえし等を画定する、中間領域2106を含むことができる。
【0073】
さらに図21を参照すると、位置決め要素2100の近位端領域2102および遠位端領域2104の各々は開口2156を有することができ、それらの各々を、位置決め要素2100内に通されるフィラメントまたはコード(たとえば、直径が0.008インチ±0.002インチのコードまたはケーブル)を収容するように寸法を決め成形することができる。開口2156の構造および特定の機能については、位置決め要素2100を組み込んだ人工心臓弁を罹患心臓弁に対して遠隔で操作しかつ移植することができる方法に関して、より詳細に後述する。
【0074】
ここで図22、図23、図24および図25を参照すると、上述した位置決め要素2100の3つのセットを含む例示的な人工心臓弁2200が概略的に示されている。本開示の例示的な実施形態によれば、人工心臓弁2200は、図1に関して示す上述した人工心臓弁102の変形バージョンであってもよい。たとえば、本開示は、人工心臓弁102との類似点および相違点の両方を特徴として有する人工心臓弁2200の実施形態を包含する。
【0075】
上述したように、人工心臓弁2200のいくつかの特徴、態様および機能は、人工心臓弁102の対応する特徴、態様および機能と実質的に同様であってもよい。人工心臓弁2200の少なくとも他のいくつかの特徴、態様および機能は、人工心臓弁102の対応する特徴、態様および機能と少なくとも幾分か異なっているが、依然として類似するものとみなすことができる。したがって、人工心臓弁102のさまざまな特徴、態様および機能の上記説明が人工心臓弁2200の以下の説明と矛盾しない程度まで、前者はこれにより後者に組み込まれる。
【0076】
人工心臓弁2200は、可撓性リング2202(たとえば弾性リング)を有することができる。可撓性リング2202に関して、複数(たとえば3つ)のリーフレット膜2204と、スカート2206と、弾性要素2208と、が取り付けられている(便宜上、かつ人工心臓弁2200の他の構成要素の説明を容易にするために、図22に示すスカート2206を図23、図24および図25の各々では省略している)。弾性要素2208は、ハブ2210と複数(たとえば3つ)の脚2212を有することができ、脚2212の各々は、ハブ2210から延在し(たとえば、互いに約120°間隔が空けられた規則的な放射状配置で)、かつ対応する複数(たとえば3つ)の取付要素2214の各々を介して可撓性リング2202に対し移動可能に取り付けられている。
【0077】
可撓性リング2202および弾性要素2208の各々を、金属材料から製作することができる。たとえば、可撓性リング2202および弾性要素2208を、ニッケル・チタン合金ニチノール等の形状記憶合金(SMA、スマート合金、記憶金属またはマッスルワイヤとしても知られる)から製作することができる。人工弁2200は、対応する複数(たとえば3つ)の上述した位置決め要素2100をさらに有することができ、各位置決め要素2100は、弾性要素2208の脚2212のうちの1つに取り付けられている。
【0078】
図22、図23、図24および図25の例示的な実施形態に示すように、リーフレット膜2204の各々は、可撓性リング2202に対して取り付けられると下方に弓なりに曲がった向きをとることができる。所望の血流機能が達成されるのであれば、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、より多いか少ないリーフレット膜2204を採用することができる。リーフレット膜2204を、異種移植組織からかつ/または人工膜材料から調製することができ、複数のリーフレット膜2204の各々が可撓性リング2202に対して下方に延在するように、従来の手段により(たとえば縫合を介して)可撓性リング2202に固定することができる。別法として、またはさらに、リーフレット膜2204は、寸法および迅速な閉鎖機能に対して最適化されたウシ心膜組織を含んでもよい。
【0079】
スカート2206を、弁周囲逆流(すなわち、人工心臓弁2200の周辺部における血液の逆流)に対して制御するように構成し寸法を決めることができる。たとえば、スカート2206を、不規則な弁開口に対し、装置/弁輪中間面におけるいかなる漏出をも最小限にするよう人工心臓弁2200の移植に対して標準化するように対応する目的で、十分な寸法とすることができる。図22に示すように、スカート2206は、可撓性リング2202の範囲全体に、たとえば可撓性リング2202の円周全体に延在することができる。スカート2206を、単一の連続構造から形成してもよく、または、(必ずしも限定されないが)図22に示すその実質的に円形形状からそれる例を含む、合わせて可撓性リング2202の円周に沿って延在する、複数の隣接するかつ/または部分的に重なる要素によって画定してもよい。たとえば、スカート2206のいくつかのこうした例(図示せず)には、脚2212の放射状台(station)の間のスカート2206の外周縁が、放射状に外側にかつ/または下方に弓なりに曲がり、それにより少なくともある程度、三つ葉のクローバーの葉の外観に近づく場合があり得る。スカート2206の他のこうした例のいくつかには、スカートの外周縁が、脚2212の放射状台において、かつ脚2212の放射状台の間で、外側に弓なりに曲がり、合計6つの葉または「裂片」を形成する場合もあり得る。本開示の例示的な実施形態によれば、特に図22に示すように、スカート2206を可撓性リング2202に対して縫合することができる。
【0080】
スカート2206を、好適に可撓性でありかつ/または柔軟な材料であり、また心臓弁組織と適合する、種々の材料から製作することができる。たとえば、本開示の実施形態によれば、スカート2206の材料は、心臓弁輪または弁尖からの組織内方成長を促進し、かつ/またはスカート2206が周囲の弁組織内に埋め込まれるのを可能にする等、人口弁2200をインサイチュでその周縁の血液の逆流に対して封止するという意味で有用であり得る、機能または特徴を含みまたは画定することができる。たとえば、スカート2206を、製造された抜き型で設計された形状に切断されたポリエステルダブルベロアおよび/またはDacronファブリックの2つの層から製作することができる。スカート2206の内径部分を、たとえばポリエステル糸で可撓性リング2202に縫合することができる。スカート2206の一部は、少なくとも部分的に位置決め要素2100の上を通ることができる。たとえば、スカート2206の外径は、最下のかえし2150(図21)の下方で位置決め要素2100の上を通ることができ、その外径部分を、小径のニチノールワイヤのフープ2215を捕捉するように閉鎖して縫合し(図示せず)、本来の弁面に対して放射状の力を提供することができる。1つまたは複数の一体型の放射状ニチノールワイヤをさらに、スカート2206の一部として組み込み、弾性要素2208に固定して、スカート2206に支持を提供しかつスカート2206が「裏返る」かまたは「座屈する」のを防止することができる。スカート2206の一部を、位置決め要素2100に縫合するかまたは他の方法で取り付けることができる。さらに、かつ/または別法として、スカート2206を省略し、代りに、適当な厚さおよび/または密度の開放気泡、連接ウレタンまたはPTFE発泡体、あるいはポリエステルフェルト等の発泡体または発泡体状材料から製作された、放射状に延在するバンパ(図示せず)を用いることができる。
【0081】
図22、図23、図24および図25に示すように、弾性要素2208の各脚2212を、可撓性リング2202の上縁の付近で弓形状を示すかまたは撓曲するように構成することができ、かつ/または弓形状をとるかまたは撓曲するように適合させることができる。取付要素2214は、脚2212が、スカート2206、可撓性リング2202およびハブ2210のうちの1つまたは複数に対してまたはそれらの各々に対して、回転運動するかつ/または逆転運動することができるように、スカート2206に対してかつ/または脚2212に対して任意の適当な形状、設計、構成および/または取付技法のものであり得る。たとえば、取付要素2214は、実質的にC字型であってもよく、かつ/またはドーナツ形であってもよい。取付要素2214の各々を、たとえば、スカート2206の上面2216に隣接して結合する(たとえば固定接合する)ことができ、それらは各々、各脚2212に形成された一対の対応する開口2218を貫通することができる。(別法として、取付要素2214を、スカート2206の一部として一体的に形成してもよい。)スカート2206を、脚2212のうちの1つまたは複数の下側に、かつ/または位置決め要素2100のうちの1つまたは複数に(それらはスカート2206の上に配置され)、仮付けし、接着し、または他の方法で接合することができる。
【0082】
位置決め要素2100の各々を、弾性要素2208の対応する脚2212に、たとえば位置決め要素2100の内面と脚2212の対応する外面との間に溶接によって、結合する(たとえば固定接合する)ことができる。位置決め要素2100を、その近位端が可撓性リング2202の上縁より上方に延在するように寸法を決めることができる(たとえば、人工弁2200が、図22、図23、図24および図25に示す向きをとる場合)。位置決め要素2100の近位端および遠位端を、より詳細に後述するように、人工弁2200の心臓弁輪に対する(たとえば僧帽弁輪に対する)位置決めを容易にする間隔で配置することができる。たとえば、位置決め要素2100の近位端および遠位端を、約7mmと約25mmとの間で隔置することができる。上述したように、位置決め要素2100および脚2212を、適当な厚さ/ゲージのステンレス鋼またはニチノール等、少なくともある程度の可撓性/変形(たとえば弾性変形)を可能とする材料から製作することができる。位置決め要素2100および/または脚2212の他の材料もあり得る。
【0083】
脚2212および位置決め要素2100の個々の組立部品各々を、複数のリーフレット膜2204の隣接するリーフレット膜2204間に形成された複数(たとえば3つ)の合せ目2220のうちのそれぞれ1つに実質的に垂直に整列させ、かつ/またはその真上に配置することができる。(言い換えれば、脚2212および位置決め要素2100の組立部品のいずれもが、必ずしも、複数のリーフレット膜2204のいずれかの特定の1つの上に実質的にまたは少なくとも部分的に垂直に位置合せされる必要はない。)こうした状況では、リーフレット膜2204は、こうした構造の真下の周辺空間とは対照的に、脚2212および位置決め要素2100の放射状台間の周辺空間内を占有しかつ/またはそこで機能することができる。こうした構成は、少なくとも以下の理由(複数可)で有利であり得る。すなわち、脚2212の周囲の一様な血流を促進すること、リーフレット膜2204が脚2212と接触しないようにすること、および位置決め要素2100および脚2212がリーフレット膜の動きとは無関係に本来の組織と係合することができることである。
【0084】
可撓性リング2202は、図1の上述した可撓性リング106の変形であってもよく、かつ/または図13および図14に示す上述した可撓性リング1300のいくつかの特徴を共有してもよい。可撓性リング2202は、三次元形状(たとえば、図22に示す三次元形状)をとるように外側に伸張する傾向があり得る(たとえばいかなる実質的な圧縮力もなしに)という点で、弾性であり得、可撓性リング2202は、特徴的な横方向の幅すなわち直径に加えて、少なからぬ(non insubstantial)垂直高さを有することができる。より詳細には、特に図23および図25を参照すると、可撓性リング2202は複数のフープセグメント2221を有することができる。フープセグメント2221を、共通の水平面内に含めることができ(たとえば、可撓性リング2202がその最大幅および高さまで伸張した時)、フープセグメント2221を、対応する数の保持具2222によって分離しかつ/または結合することができる。保持具2222は、共通水平面に対して垂直にかつ/または実質的に垂直に延在し、可撓性リング2202の高さ範囲の少なくとも一部を構成し、かつ遠位撓曲部2226によって接合される第1アームおよび第2アーム2224を含む。保持具2222は、リーフレット膜2204間の合せ目の少なくとも周縁部分を受け入れかつ保持するように機能することができる。各個々のフープセグメント2221を、複数のリーフレット膜2204の対応する1つに関連付けることができ、リーフレット膜の各々を、実質的に個々のフープセグメント2221の対応する1つのみに沿って可撓性リングに結合(たとえば縫合)することができる。そして、各保持具2222を、複数のリーフレット膜2204の隣接するリーフレット膜2204間の中間面に関連付けることができる。こうした状況では、リーフレット膜2204の隣接する対の対応する外周縁が接する場所では、それらは、対応する保持具2222のアーム2224間においてそれらの高さ全体に沿って(たとえば、フープセグメント2221によって画定される共通水平面から遠位撓曲部2226まで)結合されかつ/または封止される。
【0085】
ここで図26A、図26B、図26C、図26D、図26E、図26Fおよび図26Gを参照すると、上述した人工弁2200を経皮的に送達し所望の解剖学的位置で位置決めする例示的な一連のステップが概略的に示されている。本開示の例示的な実施形態によれば、図26A〜図26Gに示す一連のステップは、図4A〜図4Iに対して示し上述した人工心臓弁102を経皮的に送達し位置決めする一連のステップの変更バージョンであってもよい。たとえば、本開示は、図4A〜図4Iに関して示し上述した人工心臓弁102を経皮的に送達し位置決めする一連のステップとの類似点および相違点をともに特徴として有する、上述した人工弁2200を経皮的に送達し位置決めする一連のステップの実施形態を包含する。
【0086】
上述したように、図26A〜図26Gに示す一連のステップのいくつかの特徴および態様は、図4A〜図4Iに関して示し上述した一連のステップと実質的に同様であってもよい。図26A〜図26Gに示す一連のステップの少なくともいくつかの他の特徴および態様は、図4A〜図4Iに関して示し上述した一連のステップの対応する特徴および態様と少なくとも幾分かは異なるが、依然としてそれらと類似するとみなすことができる。したがって、図4A〜図4Iに示す一連のステップの上記説明が図26A〜図26Gに示す一連のステップの上述した説明と矛盾しない範囲で、ここでは前者は後者内に組み込まれる。
【0087】
図26Aに示すように、人工弁2200が、所望の解剖学的位置(たとえば僧帽弁に隣接する)においてたとえばカテーテル(図示せず)の遠位端から出ると、人工弁2200のいくつかの構成要素、特に可撓性リング2202および弾性要素2208の脚2212の弾性特性により、可撓性リング2202が自動的に非変形/非圧縮形状をとり、位置決め要素2100が水平面を越えて外側にかつ下方に回転することにより逆転または反転することができる。こうした非変形/非圧縮形状では、位置決め要素2100の外面2148は概して外側に面することができ、近位端領域2102のかえし部2134および遠位端領域2104のかえし部2114は、概して外側にかつ/または上方に延在している。
【0088】
図26Aに示す人工弁2200、より詳細にはその位置決め要素2100の向きから、外科医/臨床医は、人口弁位置決め装置2600を用いて、位置決め要素2100の遠位端領域2104および近位端領域2102の両方を内側に偏向させることができ、それにより、図26Bに示すように、人工弁2200を略放射状に圧縮する。より詳細には、外科医は、3つの別個のコード2602(たとえば、直径が0.008インチ±0.002インチのニチノールケーブル等の金属ケーブル)のそれぞれの長さ部分を非常に楽に(snugly)上方に引っ張ることにより、位置決め要素2100のすべてを、締め付ける(cinch)ような動作で放射状に内側に引っ張ることができ、その後、位置決め要素2100の近位端領域および遠位端領域のかえし部は、依然として概して外側にかつ/または上方に延在するように観察される。そして、図26Cおよび図26Dに示すように、外科医/臨床医が人工弁2200を僧帽弁内まで遠隔で低下させることができ、その段階で、外科医/臨床医は、位置決め要素2100の放射状に圧縮された遠位端領域2104を「すき」のように用いて、弁尖Vをある程度放射状に外側に押すことができ(たとえば、人工弁2200の罹患弁内における挿入に対応するように)、そのステップにより、外科医/臨床医は、さらなる移植ステップに備えて、位置決め要素2100の近位端領域2102を弁輪Aの略高さに配置することができる。
【0089】
そして、外科医/臨床医は、図26Eに示すように、位置決め要素2100の近位端領域2102が弁輪Aの対応する組織に対して放射状に外側に伸張しかつ拡張することができるように、コード2602に対する張力を注意深く緩め始めることができ、その間、依然として十分に、その遠位端領域2104が互いにから離れるように伸張しまたは拡張しないようにする(たとえば、位置決め要素の遠位端領域がその近位端領域に比較してある程度互いに締め付けられたままであるようにする)ことができる。その後、外科医/臨床医は、人口弁2200を短く上方に引っ張り、位置決め要素の近位端領域のかえし部が、弁輪Aの組織の心室側(たとえば、左心室側)を穿孔し、それと連結し、それに固定され、且つ/またはその中に収容されるようにすることができる。ここで図26Fを参照すると、外科医/臨床医は、この時、コード2602に対する残っている張力を緩めて、位置決め要素2100の遠位端領域2104が外側に伸張または拡張することができるようにして、弁尖Vをさらに放射状に外側に押し退ける(sweep)。ここで図26Gを参照すると、外科医/臨床医はその後、人口弁2200をもう一度上方に短く引っ張ることができ、それにより、位置決め要素2100の遠位端領域2104のかえし部2114が、弁尖Vの組織を穿孔し、それと連結し、それに固定され、かつ/またはその中に収容される。コード2602に張力をかけかつ緩めることにより、上述したように人工弁2200を上方に2度引っ張るのを再び行い、かつ/または望まれるかまたは必要であると考えられ得るようにさらに上方に引っ張るプロセスにおいて、外科医/臨床医は、さらに、中間領域の下方に延在するかえし2150が、弁輪Aおよび/または弁尖Vの心室側組織を穿孔しかつ/またはその中に収容されるようにすることができる。このように、人工弁2200は、異なる方向に向けられている組織穿孔要素を用いて、非常に確実に、罹患僧帽弁の弁輪Aおよび弁尖Vに対して適所に収容され、かつ/または取り付けられる。他の利点もあるが特に、これにより有効に、移植プロセスが本開示に従って完了すると、人工弁2200が、罹患弁に関して所望の位置から機能的に重大な程度まで垂直に移動しなくなることが保証される。
【0090】
ここで図27を参照すると、上述した位置決め要素2100の3つのセットを含む別の例示的な人工心臓弁2700が示されている。本開示の例示的な実施形態によれば、人工心臓弁2700は、図22〜図25に関して示し上述した人工心臓弁2200の変形であってもよい。より詳細には、人工心臓弁2700は、少なくとも後述することを除き、人工心臓弁2200の弾性要素2208と実質的に類似する弾性要素2702を含む。弾性要素2702は、弾性要素2702の面積を(たとえば約0.095平方インチ以下まで)低減する目的で、人工心臓弁2200の脚2212およびハブ2210の少なくともいくつかの実施形態と比べて、比較的幅の狭い外形を有する脚2704およびハブ2706を有することができる。このように低減した外形によって提供される利点には、人工心臓弁2700を通る血流との干渉が低減すること、および人工心臓弁2700のリーフレットが脚2704と接触しかつ/または脚2704によってすり減らされる可能性が低減することがあり得る。たとえば、ハブ2706から外側に延在する(たとえば、中心軸からおよそ64°の角度等、中心軸から約45°と約85°との間の角度を形成する)各脚2704の第1細長領域2707の幅を、人工心臓弁2200の脚2212と比較して、1/3以上低減させることができる。別の例では、ハブ2706の幅を、人工心臓弁2200のハブ2210と比較して1/3以上低減させることができる。別法として、かつ/またはさらに、脚2706を、部分的にまたは実質的に完全に支柱またはワイヤ(図示せず)(たとえば、平行に延在し、かつ脚2706および/または脚2212と同じかまた類似するフープ強度を示す、2つの近接したワイヤの対)と置き換えることができる。
【0091】
弾性要素2702は、人工心臓弁2200の位置決め要素2100の1つまたは複数の実施形態と比較して全長が短縮された位置決め要素2708をさらに有することができ、それにより、いかなる定着力の低下もなしに比較的短いかつ/またはより細い外形がもたらされる。位置決め要素2708のこうした長さの低減によって提供される利点には、罹患した本来の心臓弁に隣接した(たとえば左心房内の)人工心臓弁2700の完全な展開が可能になること、人工心臓弁2700の心臓弁輪内への導入中にその心房内(たとえば左心房内)での前進を容易にすること、およびこうした導入後の心臓弁輪に対する人工心臓弁2700の方向付けおよび再方向付けを容易にすることがあり得る。(各脚2704の第1細長領域2707から外側に延在する(たとえば、およそ104°の夾角等、約85°と約125°との間の夾角を形成する)各脚2704の第2細長領域2710は、脚2704の位置決め要素2708の取付(たとえば溶接による)を容易にするように、第1細長領域2707より幾分か幅寸法が大きくてもよい。)3つのかえしの代りに、位置決め要素2708は2つのかえし2712を特徴として有することができる。かえし2712を、たとえば、位置決め要素2708の面2714に沿っておよそ1/8インチで隔置することができ、それは、概して下方に(たとえば心房から離れる方向にかつ心室腔に向かって)かつ面2714に対しておよそ60°等、面2714に対して約50°と約70°との間の角度で外側に向いている。各位置決め要素2708の下方の遠位端2716を、120度に湾曲させることができる。かえし2712に、ケーブルガイド穴(図示せず)もまた形成することができる。
【0092】
人工心臓弁2700は、少なくとも後述することを除き、人工心臓弁2200の可撓性リング2202に実質的に類似する可撓性リング2718をさらに有する。可撓性リング2718は、リーフレット合せ目を受け入れるアーム2722を画定する一定間隔で(たとえば120°で)配置された保持具2720を有することができ、アーム2722には戻り止め2724(たとえば縫い止めとして有用な「スカラップ」)が形成されている。全体的に、本開示の実施形態によれば、保持具2720を、脚2704および位置決め要素2708と回転整列するように配置することができる。別法として(図示せず)、保持具2720をそれらとずれる(たとえば60°ずれる)ように配置してもよく、この構成により、少なくとも場合によっては、人工心臓弁2700の枠構造全体を折り重ねるかつ/または折り畳むプロセスが容易になる。可撓性リング2718は、保持具2720の間に延在するフープセグメント2726をさらに有することができる。
【0093】
ここで図28A、図28B、図28C、図28D、図28Eおよび図28Fを参照すると、上述した人工心臓弁2200を経皮的に送達し所望の解剖学的位置で位置決めする例示的な一連のステップが、概略的に示されている。本開示の例示的な実施形態によれば、図28A〜図26Fに示す一連のステップは、図26A〜図26Gに関して示し上述した人工心臓弁2200を経皮的に送達し位置決めする一連のステップの変形であり得る。図22の人工心臓弁2200の弾性要素2208(図22)、位置決め要素2100およびスカート2206を遠隔で操作するシステムおよび関連方法を、位置決め要素2100の遠位端2104の下方の視点からの人口心臓弁2200を示す(たとえば、罹患心臓弁に対する移植中、心室腔から見た場合に人工心臓弁が現われ得るように)一連の概略図で示す。
【0094】
少なくとも部分的に図26Aおよび上述したその説明に対応する図28Aに示すように、人工弁位置決め装置2600は、弾性要素2208(図22)および位置決め要素2100を操作するための3つの別個のコード2602に加えて、スカート2206を操作するためのループ2804を形成するようにコード分配管2802の遠位端から外側に延在する、別個のコード2800を有することができる。たとえば、スカート2206の外周縁2808に沿って、コード2800のループ2804を通すことができる複数の穿孔2806を設けることができる。
【0095】
図28Aに示す人工弁2200、より詳細にはその位置決め要素2100の向きから、外科医/臨床医は、人口弁位置決め装置2600を用いて、位置決め要素2100の遠位端領域2104および近位端領域2102(図21)の両方を内側に偏向させることができ、それにより、図28B、図28Cおよび図28Dに連続して示すように、人工弁2200を概して放射状に圧縮する。同時に、外科医は、コード2800(たとえば、直径が0.008インチ±0.002インチのニチノールケーブル等の金属ケーブル)のそれぞれの長さ部分を非常に楽に上方に引っ張ることにより、スカートの周縁2808を締め付けるような動作で放射状に内側に引っ張ることができる。そして、外科医/臨床医が人工弁2200を僧帽弁内に遠隔で下降させることができ(図26Cおよび図26D参照)、それにより、外科医/臨床医は、さらなる移植ステップに備えて、位置決め要素2100の近位端領域2102を弁輪A(図26D)のおおよその高さに配置することができる。
【0096】
そして、外科医/臨床医は、位置決め要素2100の近位端領域2102次いで遠位端領域2104が、そのかえし2150とともに、外側に伸張し、弁輪Aおよび/または弁尖V(図26E、図26Fおよび図26G参照)の対応する組織(たとえば左心室側組織)と係合しそれを穿孔することができるように、図28Eに示すようにコード2602の張力を注意深く緩め始めることができる。ここで図28Fを参照すると、外科医/臨床医は、この時、スカート2206の周縁2808が、そこに埋め込まれている1つまたは複数の弾性要素(たとえば小径のニチノールワイヤのフープ2215(図22))の力の下で外側に伸張しまたは拡張することができるように、コード2800に対する張力を緩めることができる。このように、人工弁2200を、インサイチュでその周辺の血液の逆流に対して有効に封止することができる。
【0097】
本発明を詳細に上述したが、当業者は、本発明の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、多くの追加の変更が可能であることを容易に理解するであろう。こうしたいかなる変更も、以下の特許請求の範囲において定義されるように本発明の範囲内に含まれるように意図されている。
【技術分野】
【0001】
本開示は、有利な人工弁システムおよび人工心臓弁を配置する関連方法/システムに関し、特に、心臓弁輪に対し確実にかつ整列して配置されるように適合された人工僧帽弁およびそれを配置するための関連方法/システムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓弁逆流は、病気または損傷の結果、心臓弁が完全に閉鎖しない場合に発生する。虚血性疾患および変性(脱出)疾患による僧帽弁逆流は、リモデリングにより左心室拡張および機能不全の一因となることが明らかとなっており、心イベント率および死亡率の上昇に関係している。現在、機能不全の心臓弁を、開胸手術により生物学的または機械的人工弁と置き換えることができるが、全身麻酔および心肺バイパスを用いることで死亡、発作、感染、出血および合併症の著しい危険を伴う。
【0003】
僧帽弁狭窄に対する経皮的バルーン弁形成術の成功に基づき、研究者は、手術なしで弁心臓疾患を治療する他の代替方法を探究してきた。たとえば、Cribier他は、生物学的人工弁が縫い込まれたバルーン拡張型ステントについて記載している。(「Percutaneous Transcatheter Implantation of an Aortic Valve Prosthesis for Calcific Aortic Stenosis」(Circulation,Dec.10,2002,pages 3006−3008)を参照されたい。)Cribierの装置は、石灰化大動脈弁狭窄症の治療に利用される。Bonhoeffer他は、肺動脈弁疾患を治療するために挿入されるウシ静脈(頸静脈)弁を用いる同様のステント手法について記載している。(「Percutaneous Insertion of the Pulmonary Valve」(Journal of the American College of Cardiology,Vol.39,No.10,May 15,2002,pages 1664−1669)を参照されたい。他には、僧帽弁リーフレットにクリップを配置すること(米国特許第6,629,534号明細書)、冠状静脈洞から僧帽弁輪をつかむこと(米国特許第6,537,314号明細書)、または機械的に適所に保持される膨張可能な心臓弁を配置すること(米国特許第5,554,185号明細書)を含む、僧帽弁疾患に対する修復技法が開発されている。
【0004】
Norred(米国特許第6,482,228号明細書)は、リブおよび円形エラストマーキャノピーを有する人工心臓弁が、手術なしに移植領域に送達されるためにカテーテル内に挿入されるように折り畳まれる、経皮的大動脈弁移植を開示している。上行大動脈に入ると、人工心臓弁の本体およびリーフレットは、縫合糸状部材の中心柱を引っ張ることにより、傘のように開く。ヒンジ継手を用いて、小型の傘が製作される。しかしながら、人工大動脈弁は、生物学的大動脈弁の上方の大動脈溝に弁を固定するように上行大動脈内で拡張されるステントシステムを用いて固定される。傘構造を開くために使用される縫合糸状部材は、ステントシステムの一部として配置される。こうした設計は、人工心臓弁を生物学的弁の位置に配置するには適していない。
【0005】
本技術分野では、固定システムが、バルーン拡張型ステントかまたは自己拡張ステント設計のいずれかを必要とする受動的なシステムである、他のステント人工心臓弁が記述されている。たとえば、こうしたステント設計は、米国特許第6,454,799号明細書、米国特許出願公開第2002/0138138号明細書、米国特許第6,582,462号明細書、同第6,458,153号明細書、同第6,425,916号明細書および同第5,855,601号明細書に記載されている。これらステント人工心臓弁は、一旦配置されると、位置を変えること、再び折り畳むこと、かつ容易に取り除くことができないことが理解されよう。さらに、この設計を利用する初期大動脈弁配置で明らかであったように、石灰化位置に配置される際のステントの剛性により、ステントの外側の周囲で逆流が起こる可能性がある。また、心臓が鼓動している間に移動している血液の柱内でバルーンを膨張させなければならず、それを正確に配置する機会は一度しかないため、これら設計を配置することも困難である。
【0006】
さらなる難題は、ステント心臓弁を、カルシウムで厚くなっていない弁輪に配置する場合に発生する。ステント設計は、弁輪の高さが増大しており、かつ石灰化大動脈弁狭窄においてカルシウムの存在により幅が厚くなっている大動脈位置に少しだけ有利に適している。しかしながら、大動脈弁疾患の他の原因でかつ僧帽弁位置におけるように、カルシウムが存在しない場合、ステントを比較的薄い弁輪に固定することは困難であり得る。さらに、ステントがバルーン上で折り重なり、その後塑性変形により拡張する性質により、その初期サイズの最終サイズに対する比率が制限され、それにより必要に迫られて非常に大きい外形を有することになり、カルシウム沈着によって低減されていない大きい径を有する弁輪において、カテーテルによる経皮的挿入がより困難になる。
【0007】
Herrmann他(米国特許出願公開第2007/0016286号明細書)は、移植のために患者の心臓に送達されるカテーテルの内部で折り畳むことができる、経皮的に挿入される双安定人工心臓弁を開示している。この心臓弁は、弾性環状リングと、各々の一端が環状リングに連結している複数の脚を有する本体部材と、外力が加わることにより第1位置から第2位置まで調整可能な爪であって、それにより第2位置で周囲の心臓組織が爪に進入することが可能になる爪と、環状リング、本体部材および/または脚に連結されたリーフレット膜とを有している。開示されているリーフレット膜は、内部の血流を阻止する第1位置と、内部の血流を可能にする第2位置とを有している。心臓弁は、外力が取り除かれると、爪が第1位置に弾性的に戻って爪内に配置された心臓組織を把持し、それにより心臓弁が適所に保持されるように設計されている。本体部材および爪を、一体設計に統合することができる。そのように設計された心臓弁を、僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁または三尖弁に対する人工弁として、環状リングを心臓のそれぞれ僧帽弁、大動脈弁、肺静脈弁または三尖弁の開口に嵌合するように適合させることにより、用いることができる。
【0008】
Machold他(米国特許出願公開第2004/0127982号明細書)は、機能不全心臓弁の弁輪に取り付けられるように寸法が決められかつ構成されている移植片を開示している。移植片は、使用時、弁輪の上方にかつ/または弁輪に沿って弁輪の主軸を横切って延在する。移植片は、主軸寸法および/または他の周囲の解剖学的構造を再形成、より機能的な解剖学的形状および張力を回復するように意図されている。Machold他は、レールによって接合され、かつ心臓弁輪における移植片の固定および安定化を促進する他の構造を支持する、一対の支柱(strut)を企図している。固定機構を、心室において弁輪に隣接する弁輪内心臓組織に係合するように弁輪の面の下方に配置することができ、かつ/または弁輪または心房の組織と係合するように弁輪の面にまたはその上方に配置することができる。Machold他はさらに、支柱自体に対してほとんどまたはまったく力を加えずに、支柱を用いて移植片を弁に簡単に配置することができることも開示している。この構成では、Machold設計の弁輪を再形成する力は、交連の上方のレールから発生する。
【0009】
画像ガイダンスの下で、移植片の前端におけるMachold他の支柱にはシースがなく、支柱は弁輪の後交連において逆に着座する。支柱に関連する固定構造または機構もまた、弁輪の平面の下方にかつ/または上方に隣接する組織と接触するように配置される。図25Bに示すように、シースが、接合線に沿って後方から前方の方向に接合線に沿って引き抜かれる際、送達カテーテルは、後交連内において先行する支柱に対する力を維持する。弁輪に対して移植片を配置する同様の構造は、Vazquez他(米国特許第6,287,339号明細書)によって開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今日までの労力にも関わらず、カテーテルを介して挿入するために薄型を可能にするが、バルーンまたはステントがない状態では、一旦配置されると外形が大きくなる、改善された人工心臓弁設計が依然として必要とされている。人工弁配置の正確さとともに安全性を向上させるように、配置し、折り畳み、取り除き、後に再度配置することができる、人工心臓弁設計もまた望まれる。さらに、心臓に対して有効に整列しかつ/または方向付けることができ、最も望ましくは、心臓に対して実質的に自己整列式かつ/または自己配向式である、人工心臓弁設計も依然として必要とされている。こうした有利な人工心臓弁に対する確実かつ有効な配置システムおよび方法もまた必要とされている。
【0011】
これらおよび他の必要は、以下の詳細な説明から明らかとなるように、開示されている人工弁設計および配置システム/方法によって対処される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書では、有利な人工弁システムおよび人工弁を配置する方法/システムが開示されている。本開示の例示的な実施形態では、心臓弁輪に対して確実にかつ整列して配置されるように適合された人工僧帽弁が提供される。開示される人工弁システムを、最小侵襲的に、たとえば経カテーテル技法を介して配置することができる。
【0013】
例示的な人工弁は、弾性リングと、弾性リングに対して取り付けられる複数のリーフレット膜と、可撓性リングに対して移動可能に取り付けられる複数の位置決め要素とを有する。位置決め要素の各々は、第1細長組織穿孔要素を含む近位組織係合領域と、人工弁を通る血流の方向に沿って近位組織係合領域から隔置され、かつ第2細長組織穿孔要素を含む、遠位組織係合領域と、近位組織係合領域と遠位組織係合領域との間に配置され、かつ第3細長組織穿孔要素を含む、中間組織係合領域とを画定する。近位組織係合領域、遠位組織係合領域および中間組織係合領域は、解剖学的構造の組織の別個の対応する部位と同時に係合することにより、人工弁の解剖学的構造に対する位置を安定化するように、協働して構成され寸法が決められ、組織の別個の対応する部位とそのように同時に係合する目的で、第1細長組織穿孔要素、第2細長組織穿孔要素および第3細長組織穿孔要素のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に血流の方向と反対に向けられ、そのうちの少なくとも別の1つが、少なくとも部分的に血流の方向に沿って向けられる。
【0014】
第1細長組織係合要素および第2細長組織係合要素のうちの少なくとも一方が、フォークの歯を有することができる。たとえば、第1細長組織係合要素および第2細長組織係合要素のうちの少なくとも一方が、協働して、本来の弁組織(たとえば弁輪あるいは1つまたは複数の弁尖)の特定の部位を穿孔し、人工弁をそれに対して連結し、かつ/または固定する、一対の近接した外側に延在するフォークの歯を画定するフォークを有することができる。フォークの歯は、歯が本来の弁組織領域内に収容され得る深さを制限するように歯の間に入る本来の弁組織部位の一部と係合する、横方向に延在するウェブ領域によって接合される。別の例では、近位組織係合領域および遠位組織係合領域のうちの少なくとも一方が、さらに、それぞれ第1細長組織穿孔要素または第2細長組織穿孔要素が収容され得る深さを制限するように、組織の対応する部位と係合する、弓形面を画定することができる。第3細長組織穿孔要素は、シェブロン形かえしを含むことができる。
【0015】
組織の別個の対応する部位とそのように同時に前記のように係合する目的で、1)第1細長組織穿孔要素を、少なくとも部分的に血流の方向と反対に向けることができ、第3細長組織穿孔要素を、少なくとも部分的に血流の方向に沿って向けることができ、2)第2細長組織穿孔要素を、少なくとも部分的に血流の方向と反対に向けることができ、前記第3細長組織穿孔要素を、少なくとも部分的に血流の方向に沿って向けることができ、3)第1細長組織穿孔要素、第2細長組織穿孔要素および第3細長組織穿孔要素のうちの2つを、少なくとも部分的に血流の方向と反対に向けることができ、そのうちの他の1つを、少なくとも部分的に血流の方向に沿って向けることができる。
【0016】
複数の位置決め要素の各々を、第1細長組織穿孔要素、第2細長組織穿孔要素および第3細長組織係合要素のうちの少なくとも2つが、人工弁の送達カテーテル内での位置決めを容易にするように、少なくとも部分的に血流の方向に沿って向く第1位置と、第1細長組織穿孔要素、第2細長組織穿孔要素および第3細長組織穿孔要素のうちの少なくとも2つが、組織と係合するように少なくとも部分的に血流の方向と反対に向く第2位置との間で、弾性リングに対して回転することにより、実質的に完全に反転するように適合させることができる。
【0017】
弾性リングは、フープ面を画定しフープ面内の対応する数の間隙によって分離される、複数のフープセグメントを有することができ、かつ/または複数のリーフレット膜の別個のそれぞれ1つと結合するフープ面を画定する複数のフープセグメントと、複数のリーフレット膜のそれぞれ隣接するリーフレット膜の間に別個のそれぞれの中間面を形成する、対応する数の保持具とを有することができる。弾性リングは、円形または楕円形周縁形状を画定してもよい。
【0018】
本人工弁は、弾性リングの周縁形状に対して実質的に中心に配置されるハブと、弾性リングに対して放射状に向けられ、かつ(i)ハブおよび(ii)複数の位置決め要素のうちの対応する位置決め要素に対して取り付けられる複数の脚とをさらに有することができる。脚を、位置決め要素が実質的に脚に対して回転固定されるように位置決め要素に対して取り付けることができる。脚は、中間継手と継手から延在する対応する脚長さ部分とを有することができ、人工弁の送達カテーテル内での位置決めを容易にするために脚が折り畳まれるのを可能にする。
【0019】
複数の位置決め要素の各々は一対の開口を有することができ、人口弁の移植中に位置決め要素の回転位置を遠隔で制御するように、位置決め要素が、対の開口を通してループ状にされる対応するフィラメントによって解放可能に係合されるのを可能にする。弾性リングを、罹患心臓弁に対して移植されるように適合させることができ、その際、第1組織穿孔要素は、罹患心臓弁の弁輪に関連する組織内に収容され、第2組織穿孔要素は、罹患心臓弁の弁尖に関連する組織内に収容される。
【0020】
本人工弁は、人工弁の周縁において血液の逆流に対して少なくとも部分的に封止するように、弾性リングに対して取り付けられるスカートをさらに有することができる。
【0021】
開示されている人工弁に関連するさらなる有利な特徴、構造および機能は、以下の例示的な実施形態の説明を特に添付図面ととともに読むことによって明らかとなろう。
【0022】
当業者が、開示されている人工弁システムおよび関連する配置システム/方法を作成しかつ用いるのに役立つように、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本開示による例示的な人工弁システムの下向きの斜視図である。
【図2】心臓弁輪に対して配置された本開示による例示的な人工弁システムの部分側断面図である。
【図3A】例示的な人工心臓弁が例示的な送達構造内に配置されている、本開示による例示的な人工弁システムの側面図である。
【図3B】同様に例示的な送達構造内に配置されているように示されている、図3Aの例示的な人口弁システムの部分側断面図である。
【図4A−C】本開示の例示的な実施形態による、弁輪に対する人工心臓弁の経皮的配置を示す概略図である。
【図4D−F】本開示の例示的な実施形態による、弁輪に対する人工心臓弁の経皮的配置を示す概略図である。
【図4G−I】本開示の例示的な実施形態による、弁輪に対する人工心臓弁の経皮的配置を示す概略図である。
【図5】本開示による位置決め要素の変形の略斜視図である。
【図6】本開示による位置決め要素の変形の略斜視図である。
【図7】本開示による位置決め要素の変形の略斜視図である。
【図8】本開示による人工心臓弁の変形の略側面図および斜視図である。
【図9】本開示による人工心臓弁の変形の略側面図および斜視図である。
【図10】本開示による人工心臓弁の変形の略側面図および斜視図である。
【図11】本開示による人工心臓弁の変形の略側面図および斜視図である。
【図12】本開示による人工心臓弁の変形の略側面図および斜視図である。
【図13】本開示による可撓性リングの側面図である。
【図14】本開示による可撓性リングの斜視図である。
【図15】本開示による送達カテーテル内に収容された例示的な人工弁の略側面図である。
【図16】本発明による送達カテーテル内から外側に配置されている例示的な人工弁の連続した側面図のうちの1つである。
【図17】本発明による送達カテーテル内から外側に配置されている例示的な人工弁の連続した側面図のうちの1つである。
【図18】本発明による送達カテーテル内から外側に配置されている例示的な人工弁の連続した側面図のうちの1つである。
【図19】本発明による送達カテーテル内から外側に配置されている例示的な人工弁の連続した側面図のうちの1つである。
【図20】本発明による送達カテーテル内から外側に配置されている例示的な人工弁の連続した側面図のうちの1つである。
【図21】本開示による位置決め要素の略斜視図である。
【図22】図21の位置決め要素を組み込んだ人工弁の略斜視図である。
【図23】図22の人工弁の側立面図である。
【図24】図22の人工弁の平面図である。
【図25】図22の人工弁の底面図である。
【図26A−B】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁の弁輪に対する経皮的配置を示す略側面図である。
【図26C−D】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁の弁輪に対する経皮的配置を示す略側面図である。
【図26E−F】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁の弁輪に対する経皮的配置を示す略側面図である。
【図26G】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁の弁輪に対する経皮的配置を示す略側面図である。
【図27】本開示の例示的な実施形態による図22の人工弁の変形の略斜視図である。
【図28A】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁のさまざまな構成要素の位置および向きを遠隔で操作するシステムおよび方法を示す略斜視図である。
【図28B】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁のさまざまな構成要素の位置および向きを遠隔で操作するシステムおよび方法を示す略斜視図である。
【図28C】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁のさまざまな構成要素の位置および向きを遠隔で操作するシステムおよび方法を示す略斜視図である。
【図28D】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁のさまざまな構成要素の位置および向きを遠隔で操作するシステムおよび方法を示す略斜視図である。
【図28E】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁のさまざまな構成要素の位置および向きを遠隔で操作するシステムおよび方法を示す略斜視図である。
【図28F】本開示の例示的な実施形態による、図22〜図25の人工心臓弁のさまざまな構成要素の位置および向きを遠隔で操作するシステムおよび方法を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示による有利な人工弁システムおよび配置システム/方法を提供する。開示されているシステムおよび方法により、外科医/臨床医は、侵襲的な外科的介入なしに心臓弁機能を向上させることができる。実際に、開示されている人工弁システムにより、人工心臓弁を所望の解剖学的位置まで経皮的に送達することができる。開示されている人工弁システムは、所望の解剖学的部位/現場に配置されると、心臓弁輪に対する人工心臓弁の確実かつ整列した位置合せを容易にする。本明細書で開示されている人工心臓弁の経皮送達により、人工心臓弁の効率的かつ有効な臨床的配置が可能になる。開示されている人工心臓弁および関連送達技法により、既存の弁尖を取り除く必要なしに弁機能が改善されること、人工弁を経皮的に有効にかつ効率的に送達することができること、解剖学的部位に対して適切な方向付けを確実にするように、人工弁を弁輪に対して配置することができることを含む、多数の臨床的利点が提供される。
【0025】
最初に図1を参照すると、例示的な人工弁システム100が概略的に示されている。人工弁システム100は、人工心臓弁102および送達構造104を有している。人工弁102は、可撓性リング106を有している。可撓性リング106に対して、複数のリーフレット部材108、弁スカート110および弾性要素112が取り付けられている。弾性要素112は、ハブ114および複数の脚116を有することができ、脚116の各々は、ハブ114から(たとえば図1に示すように規則的な放射状の配置で)延在し、対応する複数の取付要素118の個々のものを介して可撓性リング106に対して移動可能に取り付けられている。人工弁102は、対応する複数の位置決め要素120をさらに有することができ、こうした位置決め要素120の各々は、弾性要素112の脚116のうちの1つに取り付けられている。
【0026】
図1の例示的な実施形態に示すように、人工弁102は3つのリーフレット膜108を有することができ、各リーフレット膜108は、可撓性リング106に対して取り付けられると、内側に向かって弓なりに曲がった向きをとる。所望の血流機能が達成されるのであれば、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、より多いかまたは少ないリーフレット膜108を採用することができる。リーフレット膜108を異種移植組織から調製することができ、たとえば、弁リーフレットを、低温保存または化学的に保存されたウシ心膜弁またはブタ心臓弁組織等、標準的な生物学的または人工の人工弁材料から調製することができる。リーフレット膜108の調製に、人工膜材料、たとえば繊維強化マトリクス材料を採用することも可能である。リーフレット膜108を、従来の手段、たとえば、複数のリーフレット膜108の各々が可撓性リング106に対して下方に延在するように、可撓性リング106を全体としてまたは部分的に包囲する輪および/またはカフの作成により、可撓性リング106に対して固定することができる。
【0027】
図1をさらに参照すると、弁スカート110は、可撓性リング106の範囲全体に、たとえば可撓性リング106の円周全体に延在することができる。弁スカート110を、単一の連続構造から形成してもよく、または、合わせて可撓性リング106の円周に沿って延在する、複数の隣接するかつ/または部分的に重なる要素によって画定してもよい。本開示の例示的な実施形態によれば、弁スカート110を可撓性リング106に対して縫合してもよい。別法として、弁スカート110の縁にカフを形成してもよく、こうしたカフは、内部に可撓性リング106を受け入れるように適合されている。カフは、弁スカート110の縁全体に沿って延在してもよく、または弁スカート110が可撓性リング106に対して間隔を空けて取り付けられるように、弁スカート110の長さに沿って不連続な間隔で画定されてもよい。弁スカート110を、種々の実質的に可撓性のかつ/または柔軟な材料、たとえば血流と適合性がある異種移植組織または人工材料、たとえば非血栓形成性材料から調製してもよい。実際に、本開示の例示的な実施形態では、弁スカート110およびリーフレット膜108を、一体/連続構造として、たとえば所望の異種移植かつ/または人工材料から調製してもよく、こうした一体/連続構造を、両要素の機能(すなわち、リーフレット膜機能および弁スカート機能)が達成されるように、可撓性リング106に対して有利に取り付けることができる。
【0028】
弁スカート110の厚さは、縁から縁まで実質的に一様であってもよく、またはその長さに沿って変化してもよい。たとえば、本開示の例示的な実施形態では、弁スカート110は、可撓性リング106に隣接する領域では厚く、可撓性リング106から相対的に遠い領域では薄くなり、それにより、隣接する解剖学的構造/組織に対するより有効な封止機能を提供するように、後者の領域における弁スカート110の可撓性が向上する、ということが考えられる。可撓性リング106に隣接する厚い方の領域は、弁スカート110が可撓性リング106から外れる可能性を低減する役割を果たすことができる。
【0029】
図1の例示的な実施形態は、可撓性リング106に対して単一方向、すなわち下方に延在する弁スカート110を示すが、本開示により、弁スカート110が可撓性リング106に対して上方および下方の両方に延在してもよい、ということが考えられる。弁スカート110の何らかのこうした実施態様では、弁スカート110を可撓性リング106に対して固定する取付手段は、必ずしもその縁に配置されない。そうではなく、こうした取付手段、たとえばカフおよび/縫合を、弁スカート110の中間線/領域に沿って配置してもよい。このように、弁スカート110の第1部分は、可撓性リング106の上方に自由に延在することができ、弁スカート110の第2部分は、可撓性リング106の下方に自由に延在することができる。弁スカート110の両方の部分、すなわち可撓性リング106の上方の部分および下方の部分は、より詳細に後述するように、人工弁102が患者の解剖学的構造に対して配置された時、人工弁102をその患者の解剖学的構造に対して封止するように有利に機能する。注目すべきは、可撓性リング106の上方に延在する弁スカート110の部分は、より詳細に後述するように、位置決め要素120に関する構造に対応するように切欠きまたは切れ目を有することができる、ということである。弁スカート110は、周囲の解剖学的構造に対する所望のレベルの封止を達成するために有効な下方の長さを有することができる。たとえば、弁スカート110は、下方の長さが可撓性リング106に対して約5mm〜約15mmであってもよい。弁スカート110が可撓性リング106の上方および下方の両方に延在する実施態様では、弁スカート110の上方に延在する部分に対して同様の寸法が考えられる。
【0030】
より優れた安全性/安定性のために、弁スカート110を、弾性要素112に対して(たとえば弾性要素112の脚116のうちの1つまたは複数に)、仮付けするか、または少なくとも何らかの方法で固定することができる。代替実施形態では、弁スカート110を、位置決め要素120の外側に放射状に配置してもよい。
【0031】
図1に示すように、弾性要素112は、取付要素118を介して可撓性リング106に対し円周方向に隔置して取り付けられた3つの脚116を有することができる。各脚116を、弓形形状を含むかまたは呈するように、あるいは可撓性リング106の近傍で撓曲するように、構成するかまたは適合させることができる。脚116を、互いに対して約120°隔置させてもよいが、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、脚116の別の数および/または間隔を採用してもよい。取付要素118は、ハブ114に対するかつ/または可撓性リング106に対する脚116の回転運動および/または逆転運動を可能とするように、脚116に対して任意の好適な形状、設計、構成および/または取付技法のものであってもよい。たとえば、取付要素118は実質的にC字型かつ/または管形状であってもよい。取付要素118を、たとえば、適当な取付技法、たとえば仮付け溶接により、脚116のそれぞれの下側(たとえばその弓形部分または撓曲部分内)に取り付けることができる。
【0032】
弾性要素114の脚116と弁スカート110との間のあり得る相互作用に戻ると、取付要素118は、弁スカート110がこうした円周領域において可撓性リング106に固定される程度まで、弁スカート110の上に重なることができる。さらに、弁スカート110を、脚116のうちの1つまたは複数の、それが弁スカート110の上に延在する下側に、仮付けし、接着し、または他の方法で接合してもよい。
【0033】
さらに図1を参照すると、位置決め要素120の各々を、組織に係合するように、かつ/または人工弁102を組織に対して配置するように、成形し、構成し、かつ/または他の方法で適合させることができる。たとえば、各位置決め要素120は、外面122、外面122と反対側の内面124、上方弓形領域126、および上方弓形領域126と反対側の下方弓形領域128を画定することができる。位置決め要素120の各々を、弾性要素112の対応する脚116に、たとえば位置決め要素120の内面124と脚116の対応する外面との間の溶接により、結合(たとえば固定接合)することができる。位置決め要素120を、その上方弓形領域126が可撓性リング106の上方に延在する(たとえば人工弁102が図1に示す向きをとる場合)ように寸法を決めることができる。位置決め要素120の上方弓形領域126および下方弓形領域128を、より詳細に後述するように、人工弁102の心臓弁輪に対する位置決めを容易にする距離だけ隔置することができる。たとえば、上方弓形領域126および下方弓形領域128を、約7mmと約25mmとの間だけ隔置してもよい。位置決め要素120および脚116を、適当な厚さ/ゲージのステンレス鋼またはニチノール等、少なくともある程度の可撓性/変形(たとえば弾性変形)を可能にする材料から製作することができる。位置決め要素120および/または脚116に対する他の材料もあり得る。
【0034】
位置決め要素120の下方弓形領域128は、一対の隔置された開口130、132を有することができる。送達構造104は、複数のフィラメントまたはコード134を有することができ、各コード134は、位置決め要素120に、そこに形成されている一対の隔置された開口130、132を介して通されており、それにより、コード134の別個の長さ部分(length)136が、開口130、132から離れる方向にかつ弾性要素112のハブ114に向かって放射状に内側に延在する。図2においてより明確に分かるように、弾性要素112のハブ114は、1つまたは複数のルーメン200(たとえば中心に位置するルーメン200)を有することができ、送達構造104は、1つまたは複数の対応するルーメン204(たとえば軸方向に位置するルーメン)を有する送達管202を有することができ、コード134の長さ部分136は、位置決め要素120のそれぞれの下方弓形領域128からハブ114に向かって、そのルーメン200内に入りかつその内部を通り、送達管202のルーメン204内に入りかつその内部を通ることができる。コード134のこうした長さ部分136により、かつ/またはこうしたコード134のこうした長さ部分136を、位置決め要素120の下方弓形領域128からハブ114および/または送達管202を介してこのように引き回すことにより、人工弁102の弁輪および/または関連する心臓組織に対する配置を容易にすることができる。
【0035】
送達管202は可撓性であってもよく、1つまたは複数のルーメン204は、コード134の複数の長さ部分136が通るのに適応することができる。図1および図2の例示的な実施形態では、3つの位置決め要素120が人工弁102に関連しており、各位置決め要素120は別個のコード134と相互作用する。したがって、ハブ114および送達管200のそれぞれのルーメン200、204を、位置決め要素120のそれぞれの下方弓形領域128にまたはその近くに形成された一対の隔置された開口130、132を通る各コード134のルーピングに基づいて、コード134の最小6つの別個の長さ部分136を収容するように、適当に寸法を決めることができかつ/または適当な数にすることができる。
【0036】
また図2の断面図から明らかであるように、弾性要素112の脚116は、そのハブ114とかつ/または可撓性リング106と協働して、たとえば配置プロセス中にかつ/またはインサイチュでの人工弁102の耐用年数の間に、人工弁102に安定性を提供することができる。脚116と可撓性リング106との間のかつ/または脚116とハブ114との間の構造的相互作用により、外科医/臨床医は、コード134の長さ部分136および送達構造104を利用して、人工弁102を遠隔で操作する(たとえば、脚116を可撓性リング106に対してかつ/またはハブ114に対して遠隔で移動/回転させる)ことができる。脚116の各々は、たとえば、人工弁102がそのカテーテルベースの送達のために折り畳まれるのを容易にするために、そのそれぞれの長さに沿って1つまたは複数の継手(たとえば、その中間点にまたはその近くに1つまたは複数のリビングヒンジ)を有することができる。本開示による実施形態では、1つまたは複数のこうした継手は、インサイチュでの人工弁102の配置時に、可撓性リング106をその完全な直径(または少なくともその実質的な部分)まで伸長させるか、または他の方法で実質的にそれが自力で伸長するのに役立つ、ばね力の送達を容易にするように、エネルギーを貯蔵することができる。本開示による実施形態では、1つまたは複数のこうした継手は、さらに、位置決め要素120を放射状に外側に(たとえば、対応する組織と確実に係合する方向に、かつ/またはカテーテル内送達に関連する圧縮形状から放射状に外側に)付勢するようにエネルギーを貯蔵することができる。本開示の少なくともいくつかの例示的な実施形態によれば、ハブ114から3つの脚116が延在することができ、それにより、弾性要素112は、配置中、かつ/またはインサイチュで移植されている間、人工弁102を拡張させ/かつ支持する「三脚」型形状を呈する(たとえば、可撓性リング106が、人工弁102の意図された機能と一貫する形状を呈しかつ/または維持し、かつ/または位置決め要素120を放射状に外側に付勢するのに役立つ)。
図2をさらに参照すると、人工弁システム100の人工弁102は、患者の心臓弁輪「A」および心臓壁「W」と整列し係合しているように示されている。人工弁102はさらに、心臓弁尖構造「V」に取って変わるように示されている(たとえば、人工弁102は、弁尖構造Vがもはや適切に提供していない弁機能を提供する目的で、弁輪A内に移植される)。弁輪Aは、説明を容易にするために拡大しかつ対称的に示されている。関連する解剖学的構造の実際の幾何学的詳細および寸法の詳細は、当業者には既知である。図2に示すように、それぞれの位置決め要素120の上方弓形領域126の各々を、弁輪Aの上部の対応する部分と係合するように有利に配置することができる。このように、少なくとも、位置決め要素120を、互いに協働して人口弁102を弁輪Aに対して整列させるように採用することができる。図2に示すように、下方弓形領域128の各々を、弁輪Aの下方の壁Wの対応する部分と係合するように有利に配置することができる。このように、少なくとも、位置決め要素120を、互いに協働して人工弁102を解剖学的環境全体に対して安定化し固定するように採用することができる。
【0037】
外科医/臨床医は、人工弁102の弁輪Aまたは壁Wに対する位置/向きに不満であるかまたは不満になるか、あるいは人工弁102の配置に関して何らかの他の不満または疑問を有しているかまたは募らせる場合、コード134のそれぞれの長さ部分136を、ハブ114および送達管202を通して放射状に内側にかつ/または上方に十分引っ張るかあるいは他の方法で操作するかまたは移動させることにより、位置決め要素120の下方弓形領域128を内側に偏向し、位置決め要素120の下方弓形領域128が壁Wから外れるようにすることができる。そして、外科医/臨床医は、送達管202を送達カテーテル(別個に図示せず)に対して所望の程度まで引っ張るか、押すか、あるいは他の方法で操作するかまたは移動させることにより、解剖学的環境全体に対して人工弁102の構造を再配置することができる。こうした操作を、たとえば、ハブ114および弾性要素112の脚116を介して人工弁102に伝えることができる。本開示の実施形態によれば、人工弁102を図2に示す弁輪Aに対する位置まで送達した後、外科医/臨床医は、人工弁102を少なくとも部分的に上方に戻るように引っ張るように選択することができ、それにより、位置決め要素の下方弓形領域128が弁輪Aの下方部分の対応する部分と係合し、かつ/または心臓弁尖構造Vと係合し、それにより少なくとも場合によっては、人工弁102が弁輪A内に特に確実に収容されかつ/または固定されることになる。
【0038】
外科医/臨床医は、人工弁102の弁輪Aおよび/または壁Wに対する位置に満足すると、コード134を、その一方の長さ部分136を他方の長さ部分136を緩めたままで十分な程度まで外側に引っ張ることにより、送達管202を介して人工弁102から引き出すことができる。外科医/臨床医は、さらに、送達管202を弾性要素112のハブ114から引き離すことにより、送達構造104の残りの部分を人工弁102から引き出すことができる。送達管202をハブ114から分離する手段は、種々の形態をとることができ、たとえば、ハブ114に関連する対応するソケットから外すことができる送達管202の端部のねじ山構成であってもよい。バヨネットロック機構、戻り止め係合機構等、さらなる(たとえば別の)連結および/または分離手段が可能であり、その少なくともいくつかについて後にさらに説明する。
【0039】
それぞれの位置決め要素120の1つまたは複数の組織係合面の上に、中に、かつ/またはそれを通して、組織係合機構、たとえばかえし、タック等を形成することができる。たとえば、こうした機構を、位置決め要素120の外面122に、たとえば上方弓形領域126および/または下方弓形領域128内に形成することができる。さらに、表面処理および/または付属構造を位置決め要素120に関連付けることにより組織内方成長を促進することができ、それにより、本開示による移植された人工弁の安定性/安全性がさらに向上する。たとえば、組織内方成長を促進する生物学的コーティングおよび/または材料またはファブリック、たとえばDACRONTM材料を、位置決め要素120のそれぞれの外面122の所望の部分/領域に付してもよい。
【0040】
開示されている人工弁ならびに人工弁システムおよび方法を、種々の解剖学的部位に、たとえば僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁または三尖弁の人工弁として適用することができる。開示されている人工弁の実施形態を、特に僧帽弁の用途に適用することができる。所望の臨床的用途に応じて、人工弁システム100および/または人工弁102を、環状リングを、必要な解剖学的空間、たとえば心臓の僧帽弁、大動脈弁、肺動脈弁または三尖弁の開口に嵌合するように適合させることにより、こうした使用に対応するような寸法にすることができる。
【0041】
図3Aおよび図3Bを参照すると、人工心臓弁102は、カテーテル302のルーメン300内で折畳み形状をとることができる。さらに、位置決め要素120を、対向する外側の力が加えられていない時にこうした構造(たとえば図1に示すような)に対して占有する傾向があり得る相対的な位置または向きに比較して、実質的に反転させ、たとえば、それらが取り付けられている可撓性リング106に対してかつ弾性要素112のハブ114に対しておよそ180°回転させることができる。可撓性リング106を、実質的に変形させることも可能であり、弾性要素112の脚116を、人工弁102がカテーテル302内に嵌合することができるように偏向させることができる。この反転した向きでは、それぞれの位置決め要素120に関連する上方弓形領域126および下方弓形領域128を、送達管202に向かって内側に向けることができる。本開示の例示的な実施形態では、それぞれの位置決め要素120の上方弓形部分126および下方弓形部分128は、それぞれの先端304、306が関連付けられかつ/またはそこで終端することが可能であり、こうした先端304、306は、切取り部(図3Aおよび図3Bには図示せず)、たとえば弓形切欠きを特徴として有していてもよく、こうした切取り部は、位置決め要素120が図3Aおよび図3Bに示す実質的に反転した向きにある時、送達管202の実質的円柱形状と協働するように適合される。
【0042】
図4A〜図4Iを参照すると、開示されている人工弁102を経皮的に送達し所望の解剖学的位置に配置するステップの例示的な一連の手順が概略的に示されている。図4A〜図4Cに示すように、人工弁102を、遠位端402を有する送達カテーテル400内の、たとえば僧帽弁、大動脈弁、肺静脈弁または三尖弁に隣接する所望の解剖学的位置に進めることができる。本開示の実施形態によれば、人工弁102を、僧帽弁腔に経中隔的に、または大動脈弁、肺動脈弁または三尖弁の腔に直接静脈または動脈送達により、送達することができる。例示的な実施形態では、人工弁を、送達カテーテル400内に形成されているかまたは他の方法で存在する対応するガイドワイヤルーメン(図示せず)と協働するガイドワイヤ(図示せず)を用いて、所望の位置まで進めることができる。人工弁102を、送達カテーテル400内に、関連するガイドワイヤに沿って折り畳まれた/反転した向きで(たとえば送達管202によって押されることにより)移植位置(たとえば僧帽弁の場合は左心房)まで前進させることができ、そこで、人工弁102は、そこでの後続する移植のために罹患弁に隣接して配置される。別法として、人工弁102を送達カテーテル400内の遠位端402にまたはその近くに事前に配置してもよく、人工弁102および送達カテーテル400の遠位端402をともに、関連するガイドワイヤに沿って同時に前進させてもよい。
【0043】
送達カテーテル400の遠位端402が所望の解剖学的位置、たとえば弁輪「A」の必要な程度に近接する範囲内まで送達されると、送達管202を送達カテーテル400に対して伸長させ、人工弁102を遠位端402の対応する開口を介してカテーテルの外側に押し出すことができる。人工弁102が遠位端402を出ると、人工弁102のいくつかの構成要素、特に可撓性リング106および弾性要素112(図2)の脚116の弾性特性により、少なくとも可撓性リング106が自動的にその非変形/非圧縮形状に戻ることができ(たとえば図4Bにかつ一連の図4A〜図4Iにおける後のすべての図に示すように)、それはたとえば円形、楕円形等であり得る。図4Cに最もよく示すように、外科医/臨床医が、人工弁102が送達カテーテル400から出てくるのを可能にすると、外科医/臨床医側にそれ以上の積極的な動作もなしに、人工弁102は、最終的に、完全に弛緩する傾向にあり、概して非変形向きをとることができ、そこでは、位置決め要素120は、水平面を越えて外方にかつ下方に回転することにより逆転したかまたは反転することが分かる(たとえば、その外面122が再び概して外側に面し、その上方弓形領域126および下方弓形領域128が再び外側に向けられる)。弁スカート110を、所望の解剖学的位置に配置されると有利な封止機能(たとえば弁脱出に対するように)を行うように適当に実質的に下方に向けかつ配置することができる。
【0044】
外科医/臨床医は、位置決め要素120の下方弓形領域128を、図4Cに示す人工弁102、より詳細にはその位置決め要素120の向きから、コード134(図2)のそれぞれの長さ部分136を、位置決め要素120の可撓性リング106およびハブ114(図2)に対する逆転または反転運動を継続するように(図4D参照)、ハブ114(図2)および送達管202に向かって放射状に内側にかつまたはそれを通して上方に十分な程度引っ張り、図4Dおよび図4Eに示すように一連の向きを進み、図4Fに示す特に顕著な向きに達するようにすることにより、内側に偏向させることができる。たとえば、本開示の実施形態によれば、外科医/臨床医は、送達カテーテル400の外側にかつ患者の身体の外側に配置された複数のコード134(図2)の長さ部分136のそれぞれの近位端(図示せず)を把持するかまたは他の方法で掴み、こうした端部を送達カテーテル400および患者の身体の外側に引っ張ることにより、位置決め要素120のこうした偏向に対応することができる。コード134の長さ部分136をこのように引き出すことにより、位置決め要素120の下方弓形領域128が放射状に内側に、たとえば下方弓形領域128の先端306が少なくとも部分的に罹患弁に向かって下方に延在する地点まで引っ張られる。図4Gおよび図4Hに示すように、このように下方に向けられかつ相対的により近接して隔置された下方弓形領域128を、患者の弁尖膜(たとえば図2の弁構造Vを参照)を偏向させかつ/または他の方法で人工弁102の患者の罹患弁内への下方の前進を容易にするように、プローブまたは「プラウ」のように利用することができ、それにより、人工弁102は、弁輪Aに対する適当な移植高さおよび適当な横方向位置に配置されることが可能である。
【0045】
図4Hに最もよく示すように、それぞれの位置決め要素120の上方弓形領域126を、人工弁102の弁輪Aに対する位置決め/整列を容易にするように、共通平面内に、たとえば「トップハット」のように収容されるように協働して適合させることができる。人工弁102によって示されかつ位置決め要素120によってまとめて画定される円周方向に断続的な態様により、経皮的導入中の位置決め要素120の逆転と、最終的な移植およびインサイチュでの弁機能時における有効な整列および組織係合/安定性とをともに容易にすることができる。たとえば、複数の上方弓形領域126の各々が弁輪Aの上部の対応する部分に実質的に係合すると、人工弁102を概して所望の方法で整列させることができる。
【0046】
人工弁102を、ここで、たとえば従来の撮像機器を通して見られるように、外科医/臨床医によって望まれる方法で、弁輪Aに対してさらに配置しかつ/または空間的に方向付けることができる。(注目すべきは、位置決め要素120(および特にその上方弓形領域126)は、人工弁102の弁輪Aに対する適切な位置決めおよび空間的方向付けを確定するようにその画像認識を容易にするように、実質的に放射線不透過性であり得る、ということである)。たとえば、その時点で、外科医/臨床医は、複数のコード134(図2)の長さ部分136内で蓄積された張力を弛緩させ始めることができ、それにより、弾性要素112(図2)の脚116(図2)にかつ/または位置決め要素120に含まれるエネルギー/ばね力の対応する蓄積により、位置決め要素120の下方弓形領域128が再び放射状に外側に回転始めるようにするのを可能にし始めることができる。またたとえば、図4Iに示すように、下方弓形領域128を、そのそれぞれの先端306が壁Wを含む心臓組織と接触しかつ/または係合するのを可能にするように十分な程度まで、放射状に外側に回転させることができる。弾性要素112の脚116および/または位置決め要素120が、こうした組織係合を可能にするために十分な程度まで後退すると、さらにそれぞれの先端306が合わせて壁Wに対して押圧しかつ/または壁Wに対して実質的に適所に埋め込まれるように、十分なエネルギー/ばね力を依然として保持することができる。こうした結集したばね力は、位置決め要素120の下方弓形領域128が、人工弁102の垂直に上方の引出しまたは変位に対するある程度の抵抗を提供することができるために十分であり得る。そのある程度の抵抗は、たとえば、弁輪Aを横切ってかつ/または弁輪Aに対して配置された上方弓形要素126によって提供されるその垂直に下方の変位に対して、自然に強い程度の抵抗に少なくとも匹敵する程度の抵抗である。
【0047】
また図4Iに示すように、人工弁102が弁輪Aに対して適切に位置決めされ方向付けられることが確定されると、コード134(図2)を位置決め要素120から引き出すことができる。その後、送達構造104の残り部分を、人工弁102から切り離しかつ/または分離することができ(たとえば、送達管202をハブ114(図2)から切り離すことができ)、それにより、人工弁102が、患者の罹患心臓弁に対し、その機能的代用としての役割を果たすように適当な位置に置かれる。位置決め要素120は、本来の弁尖膜(図2の弁構造V参照)を開放位置に維持する役割を果たすことができ、可撓性リング106に対して取り付けられているリーフレット膜108および弁スカート110の各々は、内部を通る血流の適当な方向制御を確実にするように機能することができる。
【0048】
開示されている人工弁および関連する送達構造/方法は、既存のシステムに対して多数の利点を提供する。たとえば、開示されている人工弁に関連する位置決め要素は、弁輪とともに弁輪の下方の心室腔の壁と係合するよう有利に機能することができる、上方弓形領域および下方弓形領域を有し、それにより、それに対して人工弁が(たとえば再配置可能に)確実に整列し安定化される。さらに、人工弁の反転可能かつ折畳み可能な態様(たとえば、カテーテル導入およびカテーテルを出る際の人工弁の自動拡張の目的で)により、開示されている人工弁システムの効率的な経皮送達およびインサイチュ操作を容易にすることができる。さらに、開示されている弁スカートは、本来あり得る(たとえばこうしたスカートおよび/またはそれによって提供される環状封止機能がない)場合に比較して、インサイチュに配置された場合に開示されている人工弁の封止機能を向上させることができる。さらに、位置決め要素の上方弓形領域の「トップハット」形状および/または機能は、弁輪および関連する解剖学的構造に対して人工弁を正確にかつ確実に配置するよう有利に機能することができる。
【0049】
開示されている設計および移植方法は大規模な手術を必要としない可能性があり、開示されている位置決め要素は、安定しかつ適切に整列された移植、中心血流および/またはリーフレット膜に対する安定したプラットフォームを提供するように機能することができる。さらに、位置決めは、ステント等のバルーン拡張型装置より正確であり得る。さらに、かつステントとは異なり、位置決めを、(たとえば所望の移植位置および/または向きが達成されるまで)繰り返すことができる可能性がある。本明細書に記載されている人工心臓弁はまた、ステントに対しそれが付着する十分な組織がない可能性のある罹患弁の状態で(たとえば、一般的に僧帽弁疾患に関する場合のように)、弁輪に対する固定を可能にすることもできる。
【0050】
本開示の例示的な実施形態によれば、罹患心臓弁に隣接するかつ/またはその近くの接続する血管に配置されるように構成されたステントを使用することを特徴とする、いくつかの既存の人工心臓弁実施態様とは異なり、人工心臓弁を、罹患心臓弁の部位に直接(squarely)配置することができ、したがって、移植中かまたは移植後、あるいはインサイチュの手術中であるか否かに関わらず、罹患心臓弁との間に間隔を空けた関係で配置されるように設計される。その結果、手術者または外科医が、本開示の実施形態によって提供され得るように、罹患心臓弁の開口に人工心臓弁をより正確に配置するために、人工心臓弁を再配置しかつ/または再度固定する能力を、著しく向上させることができる。
【0051】
本開示の位置決め要素120を、図5〜図7に示すものを含む複数の変形のうちの1つまたは複数によって実現することができる。より詳細には、図5に示す位置決め要素500は、位置決め要素120のこうした変形の1つである。位置決め要素500は、上方弓形領域502および下方弓形領域504と、それらの間に配置された中間領域506と、外面508とを有することができる。組織の内方成長を促進するために、外面508の中間領域506の付近に穴512のアレイ510が形成されることが可能であり、それによりインサイチュでの位置および向きの安定性が向上する。ここで図6を参照すると、位置決め要素600は、位置決め要素120の別のこうした変形である。位置決め要素600は、上方弓形領域602および下方弓形領域604と、それらの間に配置された中間領域606と、外面608とを有することができる。組織の確実な係合を容易にするために、中間領域606の付近の外面608から延在するスパイクまたは突起(spur)612のアレイ610を設けることができ、同様にインサイチュでの位置および向きの安定性が向上する。図7に示す位置決め要素700は、さらに別の位置決め要素120の変形である。位置決め要素700は、上方弓形領域702および下方弓形領域704と、それらの間に配置された中間領域706と、外面708とを有することができる。組織の内方成長および組織の確実な係合の両方を促進するために、中間領域706の付近の外面708に、穴712のアレイ710を形成することができ、かつそこから延在するようにスパイクまたは突起714を設けることができ、この場合もまたインサイチュでの位置および向きの安定性が向上する。図5〜図7では、穴512および712ならびに突起612および714は、それぞれの位置決め要素500、600、700のそれぞれの中間領域506、606、706に現われているように示されているが、こうした特徴を、別法として、かつ/またはさらに、その上方弓形領域502、602、702および下方弓形領域504、604、704の一方または両方に配置してもよい。
【0052】
位置決め要素120の別の変形は、図8の位置決め要素800によって具現化される。弾性要素804の脚802が位置決め要素800を支持することができ、位置決め要素800はさらに、組織係合先端808を有する下方弓形領域806を有することができ、組織係合先端808は、下方弓形領域806の後退状態において、位置決め要素の中間領域810に向かって内側にかつ/またはそれに向かって下方に延在するように、巻き取られるかまたは「巻き上げられる」ことが可能である。配置構造812が、先端808を、患者の心臓壁(図示せず)を構成する心臓組織と係合することができるように外側に向けなおすことができるように、下方弓形領域806を巻き出すように、下方弓形領域806(たとえばその先端808の近く)に取り付けられたコード814を有することができる。外科医/臨床医は、位置決め要素800の位置決め中にコード814を外側に引っ張ることができ、先端808が心臓組織と係合し始めると、コード814を解放することができ、それにより下方弓形領域806(たとえばコイル・ばね構成を有するもの)に固有の蓄積されたエネルギー/ばね力が、心臓組織に追加の力で突き当たることができる。複数の位置決め要素800を人工弁816(別に図示せず)に設けることにより、少なくとも幾分かの反力の均衡を達成することができ、位置決め要素800の上方弓形領域818は、下方弓形領域806と同様の巻取り構成(別個に図示せず)を有することができる。
【0053】
人工弁102の変更バージョンは人工弁900によって具現化され、それは図9に部分的にかつ概略的に示されている。人工弁900は、弾性要素902を有することができ、それは、上述した弾性要素112に関連する脚116と概して同様の脚904を有している。脚904は、上ジョー908、下ジョー910、および上ジョー908と下ジョー910との間に配置されたヒンジ912を有する、爪906を支持することができる。人工弁900は、互いに向かって閉鎖するように爪906の上ジョー908および下ジョー910を付勢し、かつ患者の心臓壁の心臓組織と確実に係合するための、ねじりばね(図示せず)をさらに有することができる。配置構造914が、上ジョー908および下ジョー910に取り付けられたコード916を有することができる。外科医/臨床医は、爪906の位置決め中に爪906を開放したまま保持するようコード916を外方に引くことができる。爪906が心臓組織(たとえば図2に示すような弁輪A)係合し始めると、外科医/臨床医はコード916を解放することができてもよく、それにより、ばね付勢が上ジョー908および下ジョー910に作用することができ、それによって爪906が心臓組織に付着することができる。人工弁900に、複数の爪906(図示せず)を設けてもよい。
【0054】
人工弁102のそれぞれの代替的な変更バージョンは、それぞれ図10、図11および図12に部分的かつ概略的に示されている人工弁1000、1100および1200によってさらに具現化されている。図10の人工弁1000は、ハブ1006から延在する複数の脚1004を有する弾性要素1002を有することができる。脚1004は、それ自体がばねであってもよく、弓形または撓曲領域1010において接合された少なくとも2つの板ばね1008を有することができる。人工弁1000は1つまたは複数の係合要素1012をさらに有することができ、その各々は、人工弁1000を罹患心臓弁に対してかつ/またはそれに関連する弁輪に対して適所に固定するために適合であるように、心臓組織を穿孔しかつ/または他の方法でそれと侵襲的に係合する複数のフォーク(prong)1014を有することができる。係合要素1012を、脚1004の板ばね1008のうちの1つによって支持することができ、人工弁1000は、図10に示すように2つの係合要素1012(たとえば各々2つのフォーク1014を有する)の複数のセットを有することができる。
【0055】
図11の人工弁1100は、ハブ1106から延在する複数の脚1104を有する弾性要素1102を有することができる。脚1104自体がばねであってもよく、弓形または撓曲領域1110において接合された少なくとも2つの板ばね1108を有することができる。人工弁1100は、1つまたは複数の係合要素1112をさらに有することができ、その各々は、V字型で共通の連結点から外側に延在する2つのアーム1114を有することができる。人工弁1100は、係合要素1112を患者の罹患心臓弁に関連する弁輪の周囲で閉鎖する目的で、係合要素1112のアーム1114を合わせて付勢する付勢ばね(概略的に参照数字1116で示す)をさらに有することができる。係合要素1112を、脚1104の板ばね1108のうちの1つによって支持することができ、人工弁1100は複数のこうした係合要素1112を有することができる。
【0056】
図12の人工弁1200は、ハブ1206から延在する複数の脚1204を有する弾性要素1202を有することができる。脚1204自体がばねであってもよく、弓形または撓曲領域1210において接合された少なくとも2つの板ばね1208を有する。人工弁1200は、1つまたは複数の係合要素1212をさらに有することができ、その各々は、人工弁1200を罹患心臓弁に対して固定するために適当であるように心臓組織と係合する複数の歯1214を有することができる。係合要素1212を、脚1204の板ばね1208のうちの1つに直接取り付けることができる(たとえば、人工弁1200は、図12に示すように各々歯1214の2つの列を有する複数の係合要素1212を有していてもよい)。実施形態(別個には図示せず)によっては、係合要素1212は、脚1204に対して少なくとも幾分かの程度まで可動であり得るように、歯1214の2つの列の間の中心位置において蝶番式であってもよい。したがって、少なくともいくつかのこうした実施形態では、係合要素1212を、他の点では図9を参照して上述した爪906と構造的かつ機能的に同様な歯付き爪として利用することができる。
【0057】
上述した可撓性リング106の変形は、図13および図14に示す可撓性リング1300によって具現化される。可撓性リング1300は、3次元形状(たとえば図14に示す3次元形状)を呈するように外側に伸長する傾向があり得る(たとえばいかなる実質的圧縮力もなしに)ように弾性であってもよく、その場合、可撓性リング1300は、特徴的な横方向の幅または寸法のほかに、実質的な垂直高さを有していなくてもよい。より詳細には、可撓性リング1300は、複数のフープセグメント1302を有することができる。フープセグメント1302を、共通の水平面内に含めることができ(たとえば、可撓性リング1300がその最大幅および高さまで伸張した時)、そこで、フープセグメントを、可撓性リング1300の高さの範囲の少なくとも一部を構成する、共通水平面に対して垂直に延在する対応する数の結合セグメント1304によって分離しかつ/または結合することができる。各フープセグメント1302は、上述した弁スカート110と同様の弁スカート、上述したリーフレット膜108と同様の少なくとも1つのリーフレット膜、および/または上述したものと同様の関連する弁輪またはカフのうちの1つまたは複数の確実な結合を容易にするように、切欠き1306をさらに有することができる。たとえば、こうした結合を、弁スカート、リーフレット膜および/またはカフの可撓性リング1300の円周に対するかつ/またはその周囲での相対移動を制限するように、切欠き1306内に少なくとも部分的に収容された結節縫合(図示せず)を介して得ることができる。結合セグメント1304の各々は、弓形または撓曲領域1310において接合された2つの板ばね1308を有するばねを備えることができ、それにより、可撓性リング1300は、放射状に圧縮されているように、かつ/または、可撓性リング1300が一部を形成する対応する人工弁(別個には図示せず)を圧縮するために、かつ/またはこうした人工弁を狭いゲージのカテーテル(図示せず)に通すように適した、小型形状を有するように、特に適用可能であり得る。より詳細には、可撓性リング1300は、フープセグメント1302(たとえば結合セグメント1304に関連する)の面においてその円周に断続的な切れ目を有することができるため、その形状は、可撓性リング1300によって示される弾性放射状圧縮性にさらに寄与することができる。結合セグメント1304の撓曲領域1310は、さらに、切欠き1306と機能的に同様の固定点としての役割を果たすことができる。たとえば、こうした切欠き1306を、本開示の実施形態による可撓性リング1300を組み込んだ人工心臓弁(図示せず)の対応するリーフレット膜(図示せず)間に形成された合せ目継目(図13〜図14には図示せず、たとえば図16〜図20に関して後に例示し説明する対応する構造を参照)を固定し、かつ/またはその長さの範囲を制限する固定点として使用することができる。
【0058】
本開示による人工弁102の変形は、図15に示す人工弁1500によって具現化される。人工弁1500の弾性要素1502は、上述した弾性要素112と構造的にかつ機能的に同様であってもよい。弾性要素1502の脚1504は、送達管202に向かって内側に屈曲することができる。たとえば、脚1504を、人工弁1500の拡張された放射状圧縮を促進するように、送達管202に向かって内側に屈曲するように適合させることができる。こうした脚1504の屈曲により、さらに、人工弁1500が、本来より、より内径の小さいカテーテル1508のルーメン1506に沿って通ることを可能にすることができる。
【0059】
本開示による人工弁システム100の変更バージョンは、図16、図17、図18、図19および図20においてさまざまな動作段階に示されている人工弁システム1600によって具現化される。人工弁システム1600は、実質的にすべての構造的かつ機能的特徴を含む人工弁102の変更バージョンである人工弁1602を有することができ、少なくともいくつかの例外について後述する。人工弁1602は、ハブ1608から放射状に外側に延在する複数の脚1606と、複数のリーフレット膜1610とを有する弾性要素1604を有することができる。リーフレット膜1610間の合せ目1612を、リーフレット膜1610間に形成されたそれぞれの縫合継目1614を介して部分的に閉鎖するか、または部分的に長さを制限することができる。たとえば、縫合継目1614は、人工弁1602の可撓性リング1616から、または可撓性リング1616の下方に間隔を空けた関係の位置から(たとえば、リーフレット膜1610の各々が単一構成のより大きい膜構造の一部を形成する人工弁(特に図示せず)の実施形態におけるように)、リーフレット膜1610のそれぞれの自由端または遠位縁と一致する点まで下方に延在することができる。人工弁システム1600は、ケーブル1602と、送達構造104の対応する態様と構造的にかつ機能的に類似する送達管1622とを有することに加えて、ハブ1608から下方に延在する塔1624をさらに有する送達構造1618をさらに有することができる。
【0060】
塔1624は、それによって提供され得る他の機能の中でも特に、少なくとも人工弁システム1600の中心軸1624を画定するのに関与することができ、さらに、脚1606がハブ1608とぶつかる高さ(たとえば図20において概して1626で示す)と、ケーブル1620が中心軸1625から外側に延在しかつ/または配置される高さ(たとえば図20において概して1628で示す)との間の軸方向(たとえば垂直または長手方向)の分離をもたらすことができる。図16〜図20に示すように、こうした構成は、リーフレット膜1610によりかつ/またはそれらの間に配置された縫合継目1614により占有される高さ(たとえば図18において概して1630で示す)から概して離れる方向にケーブル1620を変位させかつ/または引き回すという利点を有することができる。より詳細には、こうした構成は、ケーブル1620が、人工弁1602の配置、その位置の調整、および/または他の方法での移植のプロセス中に、リーフレット膜1610および/または縫合継目1614の縫合糸をすり減らすかまたは切断する危険を、有利に低減しかつ/または失くすことができる。こうした危険は、本実施形態による人工心臓弁の任意の特定の実施形態に関して必ずしも存在するものではない。たとえば、こうした危険が、実現性が低いかまたはすべての実際の目的に対し存在しない、図1、図2、図3A〜図3Bおよび図4A〜図4Iに関して本明細書で示し説明した人工心臓弁102の本開示による実施形態がある。しかしながら、たとえば、縫合継目1614の縫合糸および/またはリーフレット膜1610の特定の寸法またはそれらに対して指定された特定の材料が、インサイチュで最大の機能および/または耐久性を提供する目的で最適化されるが、こうした最適化が、不都合なことに、こうした構成要素を、人工弁移植中にケーブル1620との摩擦相互作用から損傷する危険が高い状態にするという影響を及ぼす実施形態を含む、本開示による少なくともいくつかの人工心臓弁実施形態に関して、こうした危険が存在し得ることが考えられる。こうした環境では、少なくとも、ケーブル1620とリーフレット膜1610との間、かつ/またはケーブル1620と縫合継目1614との間に適当な軸方向分離をもたらす、塔1624またはそれに構造的かつ/または機能的に類似する別の構成要素を使用することにより、特定の利点を提供することができる。
【0061】
図20において特に明らかであるように、こうした構成は、さらに、脚1608がハブ1606とぶつかる場所において弾性要素1604に著しい屈曲を加えることにより、さらなるエネルギーおよび/またはばね力を弾性要素1604内に蓄積することができる。たとえば、図16〜図20に連続して示すように、それによって弾性要素1604に十分な大きさの屈曲を加えることができ、それにより、ハブ1606がカテーテル1634の対応する配置プロセス中に、それぞれの位置決め要素1632の高さより実質的に完全に上方の高さまで上昇し、そこで、位置決め要素1632を、人工弁1602を患者の罹患心臓弁に対して配置する用意をして、可撓性リング1616およびハブ1608に対して逆転または反転させることができる。ハブ1608のこのような位置決め要素1632に対する上昇した配置は、罹患心臓弁(特に図示せず)内の人工弁1602の最終的なインサイチュ構成においてさらに持続することができ、それにより、ハブ1608の高さは、対応する弁輪A(比較のために図2参照)の高さと同一かまたはそれより上昇することができかつ/またはそのまま維持することができる。さらに、こうした環境では、脚1608は、i)脚1608がもはや有効にハブ1608から上方に垂直に延在しないか、またはii)脚1608がハブ1606から上方に延在し続ける程度が実質的に低減し、かつ/またはiii)脚1608が、ハブ1608から実質的に完全に下方に延在するように、可撓性リング1616に対して実質的に完全に逆転しているように、ハブ1606に対して最終構成を有することができる。弾性要素1604の脚1608のそのハブ1606に対するかつ/または可撓性リング1616に対するこれら構成のいずれか1つまたはすべてが、弾性要素1604を越えるかまたはそれを通る血液の流れにおけるある程度の渦または乱流の発生を低減するという有利な効果を有することができる。こうした環境では、関連する血液量における過度な組織損傷の危険を低減することができる。より詳細には、上述したようにこうした渦および/または乱流を減じることができる程度まで、人工心臓弁1602を通りかつこうした組織損傷に関連しかつ/またはそれをもたらす可能性のある血液の流れのせん断力特性の程度および/または大きさを、有益に調整し、制限し、かつ/または低減することができる。
【0062】
本開示の例示的な実施形態によれば、位置決め要素120の変更バージョンは、図21の位置決め要素2100によって具現化される。位置決め要素2100を、金属材料から製作することができる。たとえば、位置決め要素2100を、ニッケル・チタン合金ニチノール等、形状記憶合金(SMA、スマート合金(smart alloy)、記憶金属(memory metal)またはマッスルワイヤ(muscle wire)としても知られる)から製作することができる。位置決め要素2100は、近位端領域2102および遠位端領域2104と、近位端領域2102と遠位端領域2104との間に配置された中間領域2106とを有することができる。
【0063】
位置決め要素2100の中間領域2106および遠位端領域2104は、まとめて、罹患心臓弁(別個に図示せず)に関連する弁尖組織等の心臓組織と侵襲的に掛合しかつ/または他の方法で係合するフック2108を画定することができ、それにより、少なくとも部分的に、位置決め要素2100をこうした弁に対して固定する。たとえば、フック2108は、少なくとも部分的に位置決め要素2100の中間領域2106によって画定されるシャンク部2110と、位置決め要素2100の遠位端領域2104によって画定される撓曲部2112およびかえし部2114とを有することができる。かえし部2114の自由端2116は、かえし部2114が心臓弁尖の組織を穿孔することができるように十分鋭利であり、かつ/または尖っている。たとえば、かえし部2114およびその自由端2116を、左心室側から本来の心臓弁を通って少なくとも部分的に血流の方向に対して上方に延在し、かつ、かえし部2114が心臓弁尖のうちの1つまたは複数を穿孔し、それらと連結し、かつ/または固定されることができるように、寸法を決め、成形し、方向付けし、かつ/または構成することができる。
【0064】
フック2108のかえし部2114は、限定されないが図21に示す形状を含む、任意の好適な形状をとることができ、かえし部2114が、各々が先端部2120で終端する一対の歯(tine)2118を有する上向きフォークの形態で提供される場合も含まれる。本発明の実施形態によれば、歯2118の先端部2120の各々は、心臓弁尖の組織に対して配置可能であり、かえし部2114に対し(たとえば、位置決め要素2100が一部を形成する人工弁の移植中に、外科医が位置決め要素2100を上方に引っ張る場合等、シャンク部2110からかつ/または撓曲部2112を介して)加えられる上方に向けられた適度な量の力により、歯2118が心臓弁尖を穿孔しその組織内に突入することができるように、十分鋭利である。
【0065】
本発明の実施形態によれば、フック2108のかえし部2114はさらに、歯2118間に配置されかつ湾曲面2124を画定するウェブ領域2112を画定することができる。湾曲面2124を、歯2118の先端部2120を画定する半径に比べて比較的大きい半径によって画定することができる。そして、先端部2120は、ウェブ面2124上の最下点2128に対する歯2118の高さ寸法2126を画定することができる。こうした状況では、かえし部2114の歯2118を、心臓弁尖の組織内に少なくとも高さ寸法2126と実質的に等価な深さまで突入させることができる。また、または別法として、心臓弁尖の組織内をそれ以上引き裂くかまたは切り込まないように、ウェブ面2124に関連する半径が十分大きくてもよく、かつ/またはウェブ面2124の縁が十分に鈍いかまたは丸くてもよい。言い換えれば、ウェブ面2124は、歯2118が、人工心臓弁の移植に関連する通常の操作力および付勢力を受ける際に心臓弁の組織内に突入することができる深さに関する実際の制限を、高さ寸法2126の形態で確立するように、適当な寸法、形状および/または構成であり得る。
【0066】
図21にはフック2108のかえし部2114を示し、かえし部2114が、各々が先端部2120で終端する一対の歯2118を有する上向きフォークの形態で提供されることを含むように上述したが、かえし部2114の他の構成も可能である。たとえば、こうした他の構成には、必ずしも限定されないが、かえし部に対して3つ以上の歯を有する上向きフォーク、かえし部に対し、組織穿孔深さを制限する別の方法で構成された特徴が(たとえば、包囲する「柄(hilt)」または適当なフランジまたは他の表面の形態で)設けられる、上向きの、フォーク形でない、組織穿孔要素/槍状部材(spear)/かえし、および、かえし部に対し、組織穿孔深さを制限する別個の特徴が設けられていない、上向きの、フォーク形でない、組織穿孔要素/槍状部材/かえし等があり得る。
【0067】
位置決め要素2100の近位端領域2102は、罹患心臓弁(別個に図示せず)に関連する弁輪組織等の心臓組織と侵襲的に掛合しかつ/または他の方法で係合するフック2130を画定することができ、それにより、少なくとも部分的に位置決め要素2100をこうした弁に対して固定する。たとえば、フック2130は、撓曲部2132と、位置決め要素2100の近位端領域2102によって画定されるかえし部2134とを有することができる。かえし部2134の自由端2136は、かえし部2134が心臓弁輪の組織を穿孔することができるように十分鋭利であり、かつ/または尖っていてもよい。たとえば、かえし部2134およびその自由端2126を、少なくとも部分的に本来の心臓弁を通って血流の方向に対して上方に延在し、かえし部2134が左心室側から(たとえば心臓弁輪の面の下方から)心臓弁輪を穿孔し、それと接触し、かつ/またはそれに固定されることができるように、寸法を決め、成形し、方向付けし、かつ/または構成することができる。
【0068】
フック2130のかえし部2134は、限定されないが図21に示す形状を含む任意の好適な形状をとることができ、それには、かえし部2114が、各々が先端部2140で終端する一対の歯2138を有する上向きフォークの形態で提供される場合が含まれる。本発明の実施形態によれば、歯2138の先端部2140の各々は、心臓弁の弁輪に対して配置可能であり、かえし部2134に対し(たとえば、位置決め要素2100が一部を形成する人工弁の移植中に、外科医が位置決め要素2100を上方に引っ張る場合等、撓曲部2132を介して)加えられる上方に向けられた適度な量の力により、歯2138が心臓弁尖を穿孔し、その組織内に突入することができるように、十分鋭利である。
【0069】
本発明の実施形態によれば、フック2130のかえし部2134はさらに、歯2138間に配置されかつ湾曲面2144を画定するウェブ領域2142を画定することができる。湾曲面2144を、歯2138の先端部2140を画定する半径に比べて比較的大きい半径によって画定することができる。そして、先端部2140は、ウェブ面2144上の最下点2148に対する歯2138の高さ寸法2146を画定することができる。こうした状況では、かえし部2134の歯2138を、心臓弁尖の組織内に少なくとも高さ寸法2146と実質的に等価な深さまで突入させることができる。また、または別法として、心臓弁尖の組織をそれ以上切り裂くかまたは切り込まないように、ウェブ面2144に関連する半径が十分大きくてもよく、かつ/またはウェブ面2144の縁が十分鈍いかまたは他の方法で丸くてもよい。言い換えれば、ウェブ面2144は、歯2138が、人工心臓弁の移植に関連する通常の操作力および付勢力を受ける際に心臓弁の組織内に突入することができる深さに関する実際の制限を、たとえば高さ寸法2146の形態で確立するように、適当な寸法、形状および/または構成であり得る。
【0070】
図21にはフック2130のかえし部2134を示し、かえし部2134が、各々が先端部2140で終端する一対の歯2138を有する上向きフォークの形態で提供されることを含むように上述したが、かえし部2134の他の構成も可能である。たとえば、こうした他の構成には、必ずしも限定されないが、かえし部に対して3つ以上の歯を含む上向きフォーク、かえし部に対し、組織穿孔深さを制限する別の方法で構成された特徴が(たとえば、包囲する「柄」または適当なフランジまたは他の表面の形態で)設けられる、上向きの、フォーク形でない、組織穿孔要素/槍状部材/かえし、および、かえし部に対し、組織穿孔深さを制限する別個の特徴が設けられていない、上向きの、フォーク形でない、組織穿孔要素/槍状部材/かえし等があり得る。
【0071】
近位端領域2102と遠位端領域2104との間に配置された中間領域2106は、各々が先端部2152で終端する複数の外側にかつ下方に延在するかえし2150を画定する、外側に面する側または面2148を含むことができる。本発明の実施形態によれば、かえし2150の先端部2152の各々は、対応して角度をなす尖端に関連するシェブロン(山形)を画定することができ、心臓弁尖の組織に対して配置可能であり、かつ、中間領域2106に加えられる適度な量の下方に向けられた力(たとえば、位置決め要素2100が一部を形成する人工弁の移植中に外科医が位置決め要素2100を下方に引っ張る場合等)により、かえし2150が心臓弁輪および/または弁尖の対応する隣接部分を穿孔し、その組織内に突入することができるように、十分鋭利であり得る。本発明の実施形態によれば、外側に面する側または面2148はさらに、開口または貫通孔2154(たとえば、かえし2150を形成する特定の方法からもたらされ得るように、寸法および形状が概ねかえし2150に対応する)を画定することができる。こうした状況では、開口または貫通孔2154を、本明細書で説明するように位置決め要素2100が他の方法で取り付けられまたは固定される弁尖に関連する心臓組織の移植後内方成長を促進するように、寸法を決めかつ/または成形することができる。
【0072】
図21には中間領域2106を示し、先端部2152で終端し、その先端部が、対応して角度が付けられた尖端に関連するシェブロンを画定する、かえし部2050について説明するように上述したが、先端部2152および/またはかえし部2150の他の構成も可能である。また、かつ/または別法として、中間領域2106は、心臓弁尖の組織を穿孔するかえし以外のまたは異なる要素を含むことができる。たとえば、こうした他の構成には、必ずしも限定されないが、2つ以上の歯を含む下向きフォーク、外側に面する側または面2148以外の(またはそれに加えて)深さ制限機能が(たとえば、包囲する「柄」または適当なフランジまたは他の表面の形態で)設けられる下向きの組織穿孔要素/槍状部材/かえし等を画定する、中間領域2106を含むことができる。
【0073】
さらに図21を参照すると、位置決め要素2100の近位端領域2102および遠位端領域2104の各々は開口2156を有することができ、それらの各々を、位置決め要素2100内に通されるフィラメントまたはコード(たとえば、直径が0.008インチ±0.002インチのコードまたはケーブル)を収容するように寸法を決め成形することができる。開口2156の構造および特定の機能については、位置決め要素2100を組み込んだ人工心臓弁を罹患心臓弁に対して遠隔で操作しかつ移植することができる方法に関して、より詳細に後述する。
【0074】
ここで図22、図23、図24および図25を参照すると、上述した位置決め要素2100の3つのセットを含む例示的な人工心臓弁2200が概略的に示されている。本開示の例示的な実施形態によれば、人工心臓弁2200は、図1に関して示す上述した人工心臓弁102の変形バージョンであってもよい。たとえば、本開示は、人工心臓弁102との類似点および相違点の両方を特徴として有する人工心臓弁2200の実施形態を包含する。
【0075】
上述したように、人工心臓弁2200のいくつかの特徴、態様および機能は、人工心臓弁102の対応する特徴、態様および機能と実質的に同様であってもよい。人工心臓弁2200の少なくとも他のいくつかの特徴、態様および機能は、人工心臓弁102の対応する特徴、態様および機能と少なくとも幾分か異なっているが、依然として類似するものとみなすことができる。したがって、人工心臓弁102のさまざまな特徴、態様および機能の上記説明が人工心臓弁2200の以下の説明と矛盾しない程度まで、前者はこれにより後者に組み込まれる。
【0076】
人工心臓弁2200は、可撓性リング2202(たとえば弾性リング)を有することができる。可撓性リング2202に関して、複数(たとえば3つ)のリーフレット膜2204と、スカート2206と、弾性要素2208と、が取り付けられている(便宜上、かつ人工心臓弁2200の他の構成要素の説明を容易にするために、図22に示すスカート2206を図23、図24および図25の各々では省略している)。弾性要素2208は、ハブ2210と複数(たとえば3つ)の脚2212を有することができ、脚2212の各々は、ハブ2210から延在し(たとえば、互いに約120°間隔が空けられた規則的な放射状配置で)、かつ対応する複数(たとえば3つ)の取付要素2214の各々を介して可撓性リング2202に対し移動可能に取り付けられている。
【0077】
可撓性リング2202および弾性要素2208の各々を、金属材料から製作することができる。たとえば、可撓性リング2202および弾性要素2208を、ニッケル・チタン合金ニチノール等の形状記憶合金(SMA、スマート合金、記憶金属またはマッスルワイヤとしても知られる)から製作することができる。人工弁2200は、対応する複数(たとえば3つ)の上述した位置決め要素2100をさらに有することができ、各位置決め要素2100は、弾性要素2208の脚2212のうちの1つに取り付けられている。
【0078】
図22、図23、図24および図25の例示的な実施形態に示すように、リーフレット膜2204の各々は、可撓性リング2202に対して取り付けられると下方に弓なりに曲がった向きをとることができる。所望の血流機能が達成されるのであれば、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、より多いか少ないリーフレット膜2204を採用することができる。リーフレット膜2204を、異種移植組織からかつ/または人工膜材料から調製することができ、複数のリーフレット膜2204の各々が可撓性リング2202に対して下方に延在するように、従来の手段により(たとえば縫合を介して)可撓性リング2202に固定することができる。別法として、またはさらに、リーフレット膜2204は、寸法および迅速な閉鎖機能に対して最適化されたウシ心膜組織を含んでもよい。
【0079】
スカート2206を、弁周囲逆流(すなわち、人工心臓弁2200の周辺部における血液の逆流)に対して制御するように構成し寸法を決めることができる。たとえば、スカート2206を、不規則な弁開口に対し、装置/弁輪中間面におけるいかなる漏出をも最小限にするよう人工心臓弁2200の移植に対して標準化するように対応する目的で、十分な寸法とすることができる。図22に示すように、スカート2206は、可撓性リング2202の範囲全体に、たとえば可撓性リング2202の円周全体に延在することができる。スカート2206を、単一の連続構造から形成してもよく、または、(必ずしも限定されないが)図22に示すその実質的に円形形状からそれる例を含む、合わせて可撓性リング2202の円周に沿って延在する、複数の隣接するかつ/または部分的に重なる要素によって画定してもよい。たとえば、スカート2206のいくつかのこうした例(図示せず)には、脚2212の放射状台(station)の間のスカート2206の外周縁が、放射状に外側にかつ/または下方に弓なりに曲がり、それにより少なくともある程度、三つ葉のクローバーの葉の外観に近づく場合があり得る。スカート2206の他のこうした例のいくつかには、スカートの外周縁が、脚2212の放射状台において、かつ脚2212の放射状台の間で、外側に弓なりに曲がり、合計6つの葉または「裂片」を形成する場合もあり得る。本開示の例示的な実施形態によれば、特に図22に示すように、スカート2206を可撓性リング2202に対して縫合することができる。
【0080】
スカート2206を、好適に可撓性でありかつ/または柔軟な材料であり、また心臓弁組織と適合する、種々の材料から製作することができる。たとえば、本開示の実施形態によれば、スカート2206の材料は、心臓弁輪または弁尖からの組織内方成長を促進し、かつ/またはスカート2206が周囲の弁組織内に埋め込まれるのを可能にする等、人口弁2200をインサイチュでその周縁の血液の逆流に対して封止するという意味で有用であり得る、機能または特徴を含みまたは画定することができる。たとえば、スカート2206を、製造された抜き型で設計された形状に切断されたポリエステルダブルベロアおよび/またはDacronファブリックの2つの層から製作することができる。スカート2206の内径部分を、たとえばポリエステル糸で可撓性リング2202に縫合することができる。スカート2206の一部は、少なくとも部分的に位置決め要素2100の上を通ることができる。たとえば、スカート2206の外径は、最下のかえし2150(図21)の下方で位置決め要素2100の上を通ることができ、その外径部分を、小径のニチノールワイヤのフープ2215を捕捉するように閉鎖して縫合し(図示せず)、本来の弁面に対して放射状の力を提供することができる。1つまたは複数の一体型の放射状ニチノールワイヤをさらに、スカート2206の一部として組み込み、弾性要素2208に固定して、スカート2206に支持を提供しかつスカート2206が「裏返る」かまたは「座屈する」のを防止することができる。スカート2206の一部を、位置決め要素2100に縫合するかまたは他の方法で取り付けることができる。さらに、かつ/または別法として、スカート2206を省略し、代りに、適当な厚さおよび/または密度の開放気泡、連接ウレタンまたはPTFE発泡体、あるいはポリエステルフェルト等の発泡体または発泡体状材料から製作された、放射状に延在するバンパ(図示せず)を用いることができる。
【0081】
図22、図23、図24および図25に示すように、弾性要素2208の各脚2212を、可撓性リング2202の上縁の付近で弓形状を示すかまたは撓曲するように構成することができ、かつ/または弓形状をとるかまたは撓曲するように適合させることができる。取付要素2214は、脚2212が、スカート2206、可撓性リング2202およびハブ2210のうちの1つまたは複数に対してまたはそれらの各々に対して、回転運動するかつ/または逆転運動することができるように、スカート2206に対してかつ/または脚2212に対して任意の適当な形状、設計、構成および/または取付技法のものであり得る。たとえば、取付要素2214は、実質的にC字型であってもよく、かつ/またはドーナツ形であってもよい。取付要素2214の各々を、たとえば、スカート2206の上面2216に隣接して結合する(たとえば固定接合する)ことができ、それらは各々、各脚2212に形成された一対の対応する開口2218を貫通することができる。(別法として、取付要素2214を、スカート2206の一部として一体的に形成してもよい。)スカート2206を、脚2212のうちの1つまたは複数の下側に、かつ/または位置決め要素2100のうちの1つまたは複数に(それらはスカート2206の上に配置され)、仮付けし、接着し、または他の方法で接合することができる。
【0082】
位置決め要素2100の各々を、弾性要素2208の対応する脚2212に、たとえば位置決め要素2100の内面と脚2212の対応する外面との間に溶接によって、結合する(たとえば固定接合する)ことができる。位置決め要素2100を、その近位端が可撓性リング2202の上縁より上方に延在するように寸法を決めることができる(たとえば、人工弁2200が、図22、図23、図24および図25に示す向きをとる場合)。位置決め要素2100の近位端および遠位端を、より詳細に後述するように、人工弁2200の心臓弁輪に対する(たとえば僧帽弁輪に対する)位置決めを容易にする間隔で配置することができる。たとえば、位置決め要素2100の近位端および遠位端を、約7mmと約25mmとの間で隔置することができる。上述したように、位置決め要素2100および脚2212を、適当な厚さ/ゲージのステンレス鋼またはニチノール等、少なくともある程度の可撓性/変形(たとえば弾性変形)を可能とする材料から製作することができる。位置決め要素2100および/または脚2212の他の材料もあり得る。
【0083】
脚2212および位置決め要素2100の個々の組立部品各々を、複数のリーフレット膜2204の隣接するリーフレット膜2204間に形成された複数(たとえば3つ)の合せ目2220のうちのそれぞれ1つに実質的に垂直に整列させ、かつ/またはその真上に配置することができる。(言い換えれば、脚2212および位置決め要素2100の組立部品のいずれもが、必ずしも、複数のリーフレット膜2204のいずれかの特定の1つの上に実質的にまたは少なくとも部分的に垂直に位置合せされる必要はない。)こうした状況では、リーフレット膜2204は、こうした構造の真下の周辺空間とは対照的に、脚2212および位置決め要素2100の放射状台間の周辺空間内を占有しかつ/またはそこで機能することができる。こうした構成は、少なくとも以下の理由(複数可)で有利であり得る。すなわち、脚2212の周囲の一様な血流を促進すること、リーフレット膜2204が脚2212と接触しないようにすること、および位置決め要素2100および脚2212がリーフレット膜の動きとは無関係に本来の組織と係合することができることである。
【0084】
可撓性リング2202は、図1の上述した可撓性リング106の変形であってもよく、かつ/または図13および図14に示す上述した可撓性リング1300のいくつかの特徴を共有してもよい。可撓性リング2202は、三次元形状(たとえば、図22に示す三次元形状)をとるように外側に伸張する傾向があり得る(たとえばいかなる実質的な圧縮力もなしに)という点で、弾性であり得、可撓性リング2202は、特徴的な横方向の幅すなわち直径に加えて、少なからぬ(non insubstantial)垂直高さを有することができる。より詳細には、特に図23および図25を参照すると、可撓性リング2202は複数のフープセグメント2221を有することができる。フープセグメント2221を、共通の水平面内に含めることができ(たとえば、可撓性リング2202がその最大幅および高さまで伸張した時)、フープセグメント2221を、対応する数の保持具2222によって分離しかつ/または結合することができる。保持具2222は、共通水平面に対して垂直にかつ/または実質的に垂直に延在し、可撓性リング2202の高さ範囲の少なくとも一部を構成し、かつ遠位撓曲部2226によって接合される第1アームおよび第2アーム2224を含む。保持具2222は、リーフレット膜2204間の合せ目の少なくとも周縁部分を受け入れかつ保持するように機能することができる。各個々のフープセグメント2221を、複数のリーフレット膜2204の対応する1つに関連付けることができ、リーフレット膜の各々を、実質的に個々のフープセグメント2221の対応する1つのみに沿って可撓性リングに結合(たとえば縫合)することができる。そして、各保持具2222を、複数のリーフレット膜2204の隣接するリーフレット膜2204間の中間面に関連付けることができる。こうした状況では、リーフレット膜2204の隣接する対の対応する外周縁が接する場所では、それらは、対応する保持具2222のアーム2224間においてそれらの高さ全体に沿って(たとえば、フープセグメント2221によって画定される共通水平面から遠位撓曲部2226まで)結合されかつ/または封止される。
【0085】
ここで図26A、図26B、図26C、図26D、図26E、図26Fおよび図26Gを参照すると、上述した人工弁2200を経皮的に送達し所望の解剖学的位置で位置決めする例示的な一連のステップが概略的に示されている。本開示の例示的な実施形態によれば、図26A〜図26Gに示す一連のステップは、図4A〜図4Iに対して示し上述した人工心臓弁102を経皮的に送達し位置決めする一連のステップの変更バージョンであってもよい。たとえば、本開示は、図4A〜図4Iに関して示し上述した人工心臓弁102を経皮的に送達し位置決めする一連のステップとの類似点および相違点をともに特徴として有する、上述した人工弁2200を経皮的に送達し位置決めする一連のステップの実施形態を包含する。
【0086】
上述したように、図26A〜図26Gに示す一連のステップのいくつかの特徴および態様は、図4A〜図4Iに関して示し上述した一連のステップと実質的に同様であってもよい。図26A〜図26Gに示す一連のステップの少なくともいくつかの他の特徴および態様は、図4A〜図4Iに関して示し上述した一連のステップの対応する特徴および態様と少なくとも幾分かは異なるが、依然としてそれらと類似するとみなすことができる。したがって、図4A〜図4Iに示す一連のステップの上記説明が図26A〜図26Gに示す一連のステップの上述した説明と矛盾しない範囲で、ここでは前者は後者内に組み込まれる。
【0087】
図26Aに示すように、人工弁2200が、所望の解剖学的位置(たとえば僧帽弁に隣接する)においてたとえばカテーテル(図示せず)の遠位端から出ると、人工弁2200のいくつかの構成要素、特に可撓性リング2202および弾性要素2208の脚2212の弾性特性により、可撓性リング2202が自動的に非変形/非圧縮形状をとり、位置決め要素2100が水平面を越えて外側にかつ下方に回転することにより逆転または反転することができる。こうした非変形/非圧縮形状では、位置決め要素2100の外面2148は概して外側に面することができ、近位端領域2102のかえし部2134および遠位端領域2104のかえし部2114は、概して外側にかつ/または上方に延在している。
【0088】
図26Aに示す人工弁2200、より詳細にはその位置決め要素2100の向きから、外科医/臨床医は、人口弁位置決め装置2600を用いて、位置決め要素2100の遠位端領域2104および近位端領域2102の両方を内側に偏向させることができ、それにより、図26Bに示すように、人工弁2200を略放射状に圧縮する。より詳細には、外科医は、3つの別個のコード2602(たとえば、直径が0.008インチ±0.002インチのニチノールケーブル等の金属ケーブル)のそれぞれの長さ部分を非常に楽に(snugly)上方に引っ張ることにより、位置決め要素2100のすべてを、締め付ける(cinch)ような動作で放射状に内側に引っ張ることができ、その後、位置決め要素2100の近位端領域および遠位端領域のかえし部は、依然として概して外側にかつ/または上方に延在するように観察される。そして、図26Cおよび図26Dに示すように、外科医/臨床医が人工弁2200を僧帽弁内まで遠隔で低下させることができ、その段階で、外科医/臨床医は、位置決め要素2100の放射状に圧縮された遠位端領域2104を「すき」のように用いて、弁尖Vをある程度放射状に外側に押すことができ(たとえば、人工弁2200の罹患弁内における挿入に対応するように)、そのステップにより、外科医/臨床医は、さらなる移植ステップに備えて、位置決め要素2100の近位端領域2102を弁輪Aの略高さに配置することができる。
【0089】
そして、外科医/臨床医は、図26Eに示すように、位置決め要素2100の近位端領域2102が弁輪Aの対応する組織に対して放射状に外側に伸張しかつ拡張することができるように、コード2602に対する張力を注意深く緩め始めることができ、その間、依然として十分に、その遠位端領域2104が互いにから離れるように伸張しまたは拡張しないようにする(たとえば、位置決め要素の遠位端領域がその近位端領域に比較してある程度互いに締め付けられたままであるようにする)ことができる。その後、外科医/臨床医は、人口弁2200を短く上方に引っ張り、位置決め要素の近位端領域のかえし部が、弁輪Aの組織の心室側(たとえば、左心室側)を穿孔し、それと連結し、それに固定され、且つ/またはその中に収容されるようにすることができる。ここで図26Fを参照すると、外科医/臨床医は、この時、コード2602に対する残っている張力を緩めて、位置決め要素2100の遠位端領域2104が外側に伸張または拡張することができるようにして、弁尖Vをさらに放射状に外側に押し退ける(sweep)。ここで図26Gを参照すると、外科医/臨床医はその後、人口弁2200をもう一度上方に短く引っ張ることができ、それにより、位置決め要素2100の遠位端領域2104のかえし部2114が、弁尖Vの組織を穿孔し、それと連結し、それに固定され、かつ/またはその中に収容される。コード2602に張力をかけかつ緩めることにより、上述したように人工弁2200を上方に2度引っ張るのを再び行い、かつ/または望まれるかまたは必要であると考えられ得るようにさらに上方に引っ張るプロセスにおいて、外科医/臨床医は、さらに、中間領域の下方に延在するかえし2150が、弁輪Aおよび/または弁尖Vの心室側組織を穿孔しかつ/またはその中に収容されるようにすることができる。このように、人工弁2200は、異なる方向に向けられている組織穿孔要素を用いて、非常に確実に、罹患僧帽弁の弁輪Aおよび弁尖Vに対して適所に収容され、かつ/または取り付けられる。他の利点もあるが特に、これにより有効に、移植プロセスが本開示に従って完了すると、人工弁2200が、罹患弁に関して所望の位置から機能的に重大な程度まで垂直に移動しなくなることが保証される。
【0090】
ここで図27を参照すると、上述した位置決め要素2100の3つのセットを含む別の例示的な人工心臓弁2700が示されている。本開示の例示的な実施形態によれば、人工心臓弁2700は、図22〜図25に関して示し上述した人工心臓弁2200の変形であってもよい。より詳細には、人工心臓弁2700は、少なくとも後述することを除き、人工心臓弁2200の弾性要素2208と実質的に類似する弾性要素2702を含む。弾性要素2702は、弾性要素2702の面積を(たとえば約0.095平方インチ以下まで)低減する目的で、人工心臓弁2200の脚2212およびハブ2210の少なくともいくつかの実施形態と比べて、比較的幅の狭い外形を有する脚2704およびハブ2706を有することができる。このように低減した外形によって提供される利点には、人工心臓弁2700を通る血流との干渉が低減すること、および人工心臓弁2700のリーフレットが脚2704と接触しかつ/または脚2704によってすり減らされる可能性が低減することがあり得る。たとえば、ハブ2706から外側に延在する(たとえば、中心軸からおよそ64°の角度等、中心軸から約45°と約85°との間の角度を形成する)各脚2704の第1細長領域2707の幅を、人工心臓弁2200の脚2212と比較して、1/3以上低減させることができる。別の例では、ハブ2706の幅を、人工心臓弁2200のハブ2210と比較して1/3以上低減させることができる。別法として、かつ/またはさらに、脚2706を、部分的にまたは実質的に完全に支柱またはワイヤ(図示せず)(たとえば、平行に延在し、かつ脚2706および/または脚2212と同じかまた類似するフープ強度を示す、2つの近接したワイヤの対)と置き換えることができる。
【0091】
弾性要素2702は、人工心臓弁2200の位置決め要素2100の1つまたは複数の実施形態と比較して全長が短縮された位置決め要素2708をさらに有することができ、それにより、いかなる定着力の低下もなしに比較的短いかつ/またはより細い外形がもたらされる。位置決め要素2708のこうした長さの低減によって提供される利点には、罹患した本来の心臓弁に隣接した(たとえば左心房内の)人工心臓弁2700の完全な展開が可能になること、人工心臓弁2700の心臓弁輪内への導入中にその心房内(たとえば左心房内)での前進を容易にすること、およびこうした導入後の心臓弁輪に対する人工心臓弁2700の方向付けおよび再方向付けを容易にすることがあり得る。(各脚2704の第1細長領域2707から外側に延在する(たとえば、およそ104°の夾角等、約85°と約125°との間の夾角を形成する)各脚2704の第2細長領域2710は、脚2704の位置決め要素2708の取付(たとえば溶接による)を容易にするように、第1細長領域2707より幾分か幅寸法が大きくてもよい。)3つのかえしの代りに、位置決め要素2708は2つのかえし2712を特徴として有することができる。かえし2712を、たとえば、位置決め要素2708の面2714に沿っておよそ1/8インチで隔置することができ、それは、概して下方に(たとえば心房から離れる方向にかつ心室腔に向かって)かつ面2714に対しておよそ60°等、面2714に対して約50°と約70°との間の角度で外側に向いている。各位置決め要素2708の下方の遠位端2716を、120度に湾曲させることができる。かえし2712に、ケーブルガイド穴(図示せず)もまた形成することができる。
【0092】
人工心臓弁2700は、少なくとも後述することを除き、人工心臓弁2200の可撓性リング2202に実質的に類似する可撓性リング2718をさらに有する。可撓性リング2718は、リーフレット合せ目を受け入れるアーム2722を画定する一定間隔で(たとえば120°で)配置された保持具2720を有することができ、アーム2722には戻り止め2724(たとえば縫い止めとして有用な「スカラップ」)が形成されている。全体的に、本開示の実施形態によれば、保持具2720を、脚2704および位置決め要素2708と回転整列するように配置することができる。別法として(図示せず)、保持具2720をそれらとずれる(たとえば60°ずれる)ように配置してもよく、この構成により、少なくとも場合によっては、人工心臓弁2700の枠構造全体を折り重ねるかつ/または折り畳むプロセスが容易になる。可撓性リング2718は、保持具2720の間に延在するフープセグメント2726をさらに有することができる。
【0093】
ここで図28A、図28B、図28C、図28D、図28Eおよび図28Fを参照すると、上述した人工心臓弁2200を経皮的に送達し所望の解剖学的位置で位置決めする例示的な一連のステップが、概略的に示されている。本開示の例示的な実施形態によれば、図28A〜図26Fに示す一連のステップは、図26A〜図26Gに関して示し上述した人工心臓弁2200を経皮的に送達し位置決めする一連のステップの変形であり得る。図22の人工心臓弁2200の弾性要素2208(図22)、位置決め要素2100およびスカート2206を遠隔で操作するシステムおよび関連方法を、位置決め要素2100の遠位端2104の下方の視点からの人口心臓弁2200を示す(たとえば、罹患心臓弁に対する移植中、心室腔から見た場合に人工心臓弁が現われ得るように)一連の概略図で示す。
【0094】
少なくとも部分的に図26Aおよび上述したその説明に対応する図28Aに示すように、人工弁位置決め装置2600は、弾性要素2208(図22)および位置決め要素2100を操作するための3つの別個のコード2602に加えて、スカート2206を操作するためのループ2804を形成するようにコード分配管2802の遠位端から外側に延在する、別個のコード2800を有することができる。たとえば、スカート2206の外周縁2808に沿って、コード2800のループ2804を通すことができる複数の穿孔2806を設けることができる。
【0095】
図28Aに示す人工弁2200、より詳細にはその位置決め要素2100の向きから、外科医/臨床医は、人口弁位置決め装置2600を用いて、位置決め要素2100の遠位端領域2104および近位端領域2102(図21)の両方を内側に偏向させることができ、それにより、図28B、図28Cおよび図28Dに連続して示すように、人工弁2200を概して放射状に圧縮する。同時に、外科医は、コード2800(たとえば、直径が0.008インチ±0.002インチのニチノールケーブル等の金属ケーブル)のそれぞれの長さ部分を非常に楽に上方に引っ張ることにより、スカートの周縁2808を締め付けるような動作で放射状に内側に引っ張ることができる。そして、外科医/臨床医が人工弁2200を僧帽弁内に遠隔で下降させることができ(図26Cおよび図26D参照)、それにより、外科医/臨床医は、さらなる移植ステップに備えて、位置決め要素2100の近位端領域2102を弁輪A(図26D)のおおよその高さに配置することができる。
【0096】
そして、外科医/臨床医は、位置決め要素2100の近位端領域2102次いで遠位端領域2104が、そのかえし2150とともに、外側に伸張し、弁輪Aおよび/または弁尖V(図26E、図26Fおよび図26G参照)の対応する組織(たとえば左心室側組織)と係合しそれを穿孔することができるように、図28Eに示すようにコード2602の張力を注意深く緩め始めることができる。ここで図28Fを参照すると、外科医/臨床医は、この時、スカート2206の周縁2808が、そこに埋め込まれている1つまたは複数の弾性要素(たとえば小径のニチノールワイヤのフープ2215(図22))の力の下で外側に伸張しまたは拡張することができるように、コード2800に対する張力を緩めることができる。このように、人工弁2200を、インサイチュでその周辺の血液の逆流に対して有効に封止することができる。
【0097】
本発明を詳細に上述したが、当業者は、本発明の新規な教示および利点から実質的に逸脱することなく、多くの追加の変更が可能であることを容易に理解するであろう。こうしたいかなる変更も、以下の特許請求の範囲において定義されるように本発明の範囲内に含まれるように意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工弁であって、
a.弾性リングと、
b.前記弾性リングに対して取り付けられる複数のリーフレット膜と、
c.前記可撓性リングに対して移動可能に取り付けられる複数の位置決め要素であって、各々が、第1細長組織穿孔要素を含む近位組織係合領域と、当該人工弁を通る血流の方向に沿って前記近位組織係合領域から隔置され、かつ第2細長組織穿孔要素を含む、遠位組織係合領域と、前記近位組織係合領域と前記遠位組織係合領域との間に配置され、かつ第3細長組織穿孔要素を含む、中間組織係合領域とを画定する、位置決め要素と
を具備し、
前記近位組織係合領域、前記遠位組織係合領域および前記中間組織係合領域が、解剖学的構造の組織の別個の対応する部位と同時に係合することにより、当該人工弁の前記解剖学的構造に対する位置を安定化するように、協働して構成され寸法が決められ、前記組織の別個の対応する部位とそのように同時に係合する目的で、前記第1細長組織穿孔要素、前記第2細長組織穿孔要素および前記第3細長組織穿孔要素のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に前記血流の方向と反対に向けられ、そのうちの少なくとも別の1つが、少なくとも部分的に前記血流の方向に沿って向けられる、人工弁。
【請求項2】
前記第1細長組織係合要素および前記第3細長組織係合要素のうちの少なくとも一方が、フォークの歯である、請求項1に記載の人工弁。
【請求項3】
前記近位組織係合領域および前記遠位組織係合領域のうちの少なくとも一方が、さらに、前記第1細長組織穿孔要素または前記第3細長組織穿孔要素のそれぞれが前記組織内に収容され得る深さを制限するように、前記組織の対応する部位と係合する、弓形面を画定する、請求項1に記載の人工弁。
【請求項4】
前記第2細長組織穿孔要素がシェブロン形かえしである、請求項1に記載の人工弁。
【請求項5】
前記組織の別個の対応する部位と前記のように同時に係合する目的で、前記第1細長組織穿孔要素が、少なくとも部分的に前記血流の方向と反対に向けられ、前記第2細長組織穿孔要素が、少なくとも部分的に前記血流の方向に沿って向けられる、請求項1に記載の人工弁。
【請求項6】
前記組織の別個の対応する部位と前記のように同時に係合する目的で、前記第3細長組織穿孔要素が、少なくとも部分的に前記血流の方向と反対に向けられ、前記第2細長組織穿孔要素が、少なくとも部分的に前記血流の方向に沿って向けられる、請求項1に記載の人工弁。
【請求項7】
前記組織の別個の対応する部位と前記のように同時に係合する目的で、前記第1細長組織穿孔要素、前記第2細長組織穿孔要素および前記第3細長組織穿孔要素のうちの2つが、少なくとも部分的に前記血流の方向と反対に向けられ、そのうちの他の1つが、少なくとも部分的に前記血流の方向に沿って向けられる、請求項1に記載の人工弁。
【請求項8】
前記複数の位置決め要素の各々が、前記第1細長組織穿孔要素、前記第2細長組織穿孔要素および前記第3細長組織係合要素のうちの少なくとも2つが、当該人工弁の送達カテーテル内での位置決めを容易にするように、少なくとも部分的に前記血流の方向に沿って向く第1位置と、前記第1細長組織穿孔要素、前記第2細長組織穿孔要素および前記第3細長組織穿孔要素のうちの前記少なくとも2つが、組織と係合するように少なくとも部分的に前記血流の方向と反対に向く第2位置との間で、前記弾性リングに対して回転することにより、実質的に完全に反転するように適合される、請求項1に記載の人工弁。
【請求項9】
前記弾性リングが、フープ面を画定し、かつ前記フープ面内の対応する数の間隙によって分離される、複数のフープセグメントを有する、請求項1に記載の人工弁。
【請求項10】
前記弾性リングが、前記複数のリーフレット膜の別個のそれぞれ1つと結合するフープ面を画定する複数のフープセグメントと、前記複数のリーフレット膜のそれぞれ隣接するリーフレット膜の間に別個のそれぞれの中間面を形成する、対応する数の保持具とを有する、請求項1に記載の人工弁。
【請求項11】
前記弾性リングが、円形または楕円形周縁形状を画定する、請求項1に記載の人工弁。
【請求項12】
前記弾性リングの周縁形状に対して実質的に中心に配置されるハブと、前記弾性リングに対して放射状に向けられ、かつ(i)前記ハブおよび(ii)前記複数の位置決め要素のうちの対応する位置決め要素に対して取り付けられる複数の脚とをさらに具備する、請求項1に記載の人工弁。
【請求項13】
前記脚が、前記位置決め要素が実質的に前記脚に対して回転固定されるように前記位置決め要素に対して取り付けられる、請求項12に記載の人工弁。
【請求項14】
前記脚が、中間継手と前記継手から延在する対応する脚長さ部分とを有し、当該人工弁の送達カテーテル内での位置決めを容易にするために前記脚が折り畳まれるのを可能にする、請求項12に記載の人工弁。
【請求項15】
前記複数の位置決め要素の各々が一対の開口を有し、当該人口弁の移植中に前記位置決め要素の回転位置を遠隔で制御するように、前記位置決め要素が、前記対の前記開口を通してループ状にされる対応するフィラメントによって解放可能に係合されるのを可能にする、請求項1に記載の人工弁。
【請求項16】
前記第1組織穿孔要素が、前記罹患心臓弁の弁輪に関連する組織内に収容され、かつ前記第2組織穿孔要素が、前記罹患心臓弁の弁尖に関連する組織内に収容されるように、前記弾性リングが、罹患心臓弁に対して移植されるように適合される、請求項1に記載の人工弁。
【請求項17】
当該人工弁の周囲において血液の逆流に対して少なくとも部分的に封止するように、前記弾性リングに対して取り付けられるスカートをさらに具備する、請求項1に記載の人工弁。
【請求項1】
人工弁であって、
a.弾性リングと、
b.前記弾性リングに対して取り付けられる複数のリーフレット膜と、
c.前記可撓性リングに対して移動可能に取り付けられる複数の位置決め要素であって、各々が、第1細長組織穿孔要素を含む近位組織係合領域と、当該人工弁を通る血流の方向に沿って前記近位組織係合領域から隔置され、かつ第2細長組織穿孔要素を含む、遠位組織係合領域と、前記近位組織係合領域と前記遠位組織係合領域との間に配置され、かつ第3細長組織穿孔要素を含む、中間組織係合領域とを画定する、位置決め要素と
を具備し、
前記近位組織係合領域、前記遠位組織係合領域および前記中間組織係合領域が、解剖学的構造の組織の別個の対応する部位と同時に係合することにより、当該人工弁の前記解剖学的構造に対する位置を安定化するように、協働して構成され寸法が決められ、前記組織の別個の対応する部位とそのように同時に係合する目的で、前記第1細長組織穿孔要素、前記第2細長組織穿孔要素および前記第3細長組織穿孔要素のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的に前記血流の方向と反対に向けられ、そのうちの少なくとも別の1つが、少なくとも部分的に前記血流の方向に沿って向けられる、人工弁。
【請求項2】
前記第1細長組織係合要素および前記第3細長組織係合要素のうちの少なくとも一方が、フォークの歯である、請求項1に記載の人工弁。
【請求項3】
前記近位組織係合領域および前記遠位組織係合領域のうちの少なくとも一方が、さらに、前記第1細長組織穿孔要素または前記第3細長組織穿孔要素のそれぞれが前記組織内に収容され得る深さを制限するように、前記組織の対応する部位と係合する、弓形面を画定する、請求項1に記載の人工弁。
【請求項4】
前記第2細長組織穿孔要素がシェブロン形かえしである、請求項1に記載の人工弁。
【請求項5】
前記組織の別個の対応する部位と前記のように同時に係合する目的で、前記第1細長組織穿孔要素が、少なくとも部分的に前記血流の方向と反対に向けられ、前記第2細長組織穿孔要素が、少なくとも部分的に前記血流の方向に沿って向けられる、請求項1に記載の人工弁。
【請求項6】
前記組織の別個の対応する部位と前記のように同時に係合する目的で、前記第3細長組織穿孔要素が、少なくとも部分的に前記血流の方向と反対に向けられ、前記第2細長組織穿孔要素が、少なくとも部分的に前記血流の方向に沿って向けられる、請求項1に記載の人工弁。
【請求項7】
前記組織の別個の対応する部位と前記のように同時に係合する目的で、前記第1細長組織穿孔要素、前記第2細長組織穿孔要素および前記第3細長組織穿孔要素のうちの2つが、少なくとも部分的に前記血流の方向と反対に向けられ、そのうちの他の1つが、少なくとも部分的に前記血流の方向に沿って向けられる、請求項1に記載の人工弁。
【請求項8】
前記複数の位置決め要素の各々が、前記第1細長組織穿孔要素、前記第2細長組織穿孔要素および前記第3細長組織係合要素のうちの少なくとも2つが、当該人工弁の送達カテーテル内での位置決めを容易にするように、少なくとも部分的に前記血流の方向に沿って向く第1位置と、前記第1細長組織穿孔要素、前記第2細長組織穿孔要素および前記第3細長組織穿孔要素のうちの前記少なくとも2つが、組織と係合するように少なくとも部分的に前記血流の方向と反対に向く第2位置との間で、前記弾性リングに対して回転することにより、実質的に完全に反転するように適合される、請求項1に記載の人工弁。
【請求項9】
前記弾性リングが、フープ面を画定し、かつ前記フープ面内の対応する数の間隙によって分離される、複数のフープセグメントを有する、請求項1に記載の人工弁。
【請求項10】
前記弾性リングが、前記複数のリーフレット膜の別個のそれぞれ1つと結合するフープ面を画定する複数のフープセグメントと、前記複数のリーフレット膜のそれぞれ隣接するリーフレット膜の間に別個のそれぞれの中間面を形成する、対応する数の保持具とを有する、請求項1に記載の人工弁。
【請求項11】
前記弾性リングが、円形または楕円形周縁形状を画定する、請求項1に記載の人工弁。
【請求項12】
前記弾性リングの周縁形状に対して実質的に中心に配置されるハブと、前記弾性リングに対して放射状に向けられ、かつ(i)前記ハブおよび(ii)前記複数の位置決め要素のうちの対応する位置決め要素に対して取り付けられる複数の脚とをさらに具備する、請求項1に記載の人工弁。
【請求項13】
前記脚が、前記位置決め要素が実質的に前記脚に対して回転固定されるように前記位置決め要素に対して取り付けられる、請求項12に記載の人工弁。
【請求項14】
前記脚が、中間継手と前記継手から延在する対応する脚長さ部分とを有し、当該人工弁の送達カテーテル内での位置決めを容易にするために前記脚が折り畳まれるのを可能にする、請求項12に記載の人工弁。
【請求項15】
前記複数の位置決め要素の各々が一対の開口を有し、当該人口弁の移植中に前記位置決め要素の回転位置を遠隔で制御するように、前記位置決め要素が、前記対の前記開口を通してループ状にされる対応するフィラメントによって解放可能に係合されるのを可能にする、請求項1に記載の人工弁。
【請求項16】
前記第1組織穿孔要素が、前記罹患心臓弁の弁輪に関連する組織内に収容され、かつ前記第2組織穿孔要素が、前記罹患心臓弁の弁尖に関連する組織内に収容されるように、前記弾性リングが、罹患心臓弁に対して移植されるように適合される、請求項1に記載の人工弁。
【請求項17】
当該人工弁の周囲において血液の逆流に対して少なくとも部分的に封止するように、前記弾性リングに対して取り付けられるスカートをさらに具備する、請求項1に記載の人工弁。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A−C】
【図4D−F】
【図4G−I】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26A−B】
【図26C−D】
【図26E−F】
【図26G】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
【図28F】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A−C】
【図4D−F】
【図4G−I】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26A−B】
【図26C−D】
【図26E−F】
【図26G】
【図27】
【図28A】
【図28B】
【図28C】
【図28D】
【図28E】
【図28F】
【公表番号】特表2010−518947(P2010−518947A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550619(P2009−550619)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/054410
【国際公開番号】WO2008/103722
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509237963)エンドバルブ、インク. (3)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/054410
【国際公開番号】WO2008/103722
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509237963)エンドバルブ、インク. (3)
【出願人】(500429103)ザ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ペンシルバニア (102)
【Fターム(参考)】
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