元素分析とリンクしたフローサイトメトリーの方法および装置
分光分析法によって単細胞または単ビーズなどの粒子を連続分析するための装置(100)。該装置、すなわち元素フローサイトメーターは、粒子を連続的に導入する手段(102)と、粒子または該粒子上の分析対象物に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる手段(104)と、気化、原子化、励起またはイオン化された粒子の元素成分または該粒子に結合した元素タグを分析する手段(106)とを含む。さらに、分光分析法によって単細胞または単ビーズなどの粒子を連続分析する方法も開示される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光分析法によって、粒子、例えば、単細胞または単ビーズを連続的に分析するための装置および方法に関する。詳細には、本発明は元素のフローサイトメーターを提供する。
【背景技術】
【0002】
単一粒子、例えば、単細胞または単ビーズを分析する能力は、健康科学、人間および動物の食品科学、環境科学、法科学およびゲノミクスおよびプロテオミクスにおいて有益なツールである。
【0003】
健康科学において、細胞は、診断または生物医学研究目的のためのある特定クラスのメンバー、例えば正常細胞または癌細胞として認識される。細胞は、細胞外または細胞内[2]で、複数の抗原またはバイオマーカー[1]を保持し、それら抗原またはバイオマーカーは臨床医学[3]または生物医学研究[4]の目的のために定量化または定性化される。これらの方法は、特に、細胞に基づいた評価および毒性研究の開発における医薬品の開発に対して有益である。
【0004】
例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)はB細胞の特異の疾患と認識されている[5、6]。CLLは不確実な臨床像を伴う病気であり、しばしば誤診され、不適切な治療をもたらす。しかし、患者細胞の免疫表現型プロファイルのさらに詳細な研究により、患者の再分類を可能にし、これにより一層個人向けの診断および治療を可能にする。このような分類は、細胞膜ならびに細胞内の抗原についての多重目標分析と、それらの定性的および定量的な記述と、微小濃度変化の検討とを必要とする。
【0005】
健康科学における他の例としては、非ホジキンリンパ腫の細分類における単細胞の分析を含む。さらに、単細胞分析は、ヘルパーT細胞の免疫表現型のタイピング、およびHIV陽性患者におけるHIVの進行の度合いを示す、CD8T細胞に対するCD4の比率の測定において有効である。さらに、上記技術を用いて、手術後の患者における移植片拒絶反応とウイルス感染を識別するために、腎臓、心臓および骨髄の移植患者からの単細胞を分析するのに使用することができる。
【0006】
人間および動物食品科学においては、単細胞分析を利用して、人工合成ホルモン、農薬、除草剤または抗生物質を検出できる。最後に、環境科学においては、単細胞分析により、例えば、工場内の有害廃棄物または細菌細胞を検出できる。
【0007】
単細胞分析の公知の方法としては、蛍光活性化細胞分類装置(FACS)によるものである。FACSは、単細胞を走査することにより、単細胞がレーザビームを通過するときの細胞の生物学特性を測定する技術である。細胞は通常、対象とする細胞成分、例えば、細胞表面の受容体や細胞核のDNAに特異的な1つまたは複数の蛍光色素を用いて着色され、各細胞の蛍光は、細胞が励起ビームを横切るときに測定される。放出される蛍光量は細胞抗原に結合した蛍光プローブの量に比例するため、蛍光色素に結合した抗体は常套的に、細胞上および細胞内で定性的および定量的の両方で抗原を測定するための試薬として使用される。主として、研究者はFACS機の選別機能を利用して、特定の細胞集団の細胞受容体および他の膜抗原を検査する。選別機能は複数の細胞株において同時に抗体スクリーニングするために使用される(例えば、対象とする抗原を発現するトランスフェクションされた細胞株および抗原を発現しないコントロール細胞株)。単純化されたフローサイトメトリー機能においては、FACS機は、大抵の場合、選別なしに使用され、例えば、固定化された透過性細胞の使用および細胞内抗原の分析を可能にする。特定の抗体を使用して細胞表面および細胞内に発現している抗原を識別する常套的な多くのフローサイトメトリー方法や、臨床診断および治療のための普遍的な免疫測定法が開発されている。それらのいくつかは、様々な蛍光色素およびレーザの使用による多重化を含んでいる。この方法の欠点は、細胞染色方法の限界および困難性や、蛍光色素スペクトルの重なりと関係している。他の測定可能な光学的パラメータには、光吸収および光散乱を含み、後者は細胞の大きさ、形状、密度、粒度および色素取り込み量の測定に利用できる。
【0008】
2002年7月4日に公開番号US2002/0086441として公開された米国特許出願第09/905,907号および同第10/614,115号は、質量分析法による分析における分析対象物の標識化について開示している。生物活性物質(例えば、抗体およびアプタマー)は分析に先立って分析対象物質に標識化され、結合される。
【発明の開示】
【0009】
一般的な一態様では、本発明は、粒子を連続的に導入し、分光分析法によって粒子(例えば、単細胞または単ビーズといった単一粒子)を分析する装置を提供する。該装置、すなわち元素のフローサイトメーターは、連続的に単一粒子を導入する手段と、粒子または粒子に結合した元素タグを気化、原子化、および励起またはイオン化させる手段と、気化、原子化、イオン化および/または励起された粒子の元素成分、または粒子に結合した元素タグを分析する手段とを含む装置である。
【0010】
なお、用語「単一粒子を連続的に導入する手段」が使用されているが、これは、個別の「パケット」内に所定の数の粒子(例えば、2つ以上)を導入することを含んでいると理解すべきである。
【0011】
さらに、用語「気化、原子化および励起またはイオンさせる手段」は、原子化が必ずしも必要ではなく、したがって、この用語は、直後にイオン化が続く気化を含むか、または含まないこともあることを理解されたい。いくつかの用途、例えば、発光分光分析(OES)などにおいては、サンプルをイオン化するのが必須ではなく、原子種からの発光で十分である。OESについては、原子(またはイオン)を励起して発光を生じさせることだけが必要である。したがって、例えば「気化、原子化およびイオン化」は、気化、原子化およびイオン化(質量分析について)またはOESについては励起(原子およびイオンのどちらかまたは両方)を意味することを理解されるべきである。
【0012】
別の一般的な態様では、本発明は、連続的に導入される粒子、例えば、単細胞または単ビーズを分光分析により分析する方法を提供する。トリガーは、例えばデータ取得の開始を含む後続の分析を用いてイオン雲の到達を報告する。トリガーは、例えば、光散乱またはイオン電流の変化またはイオン成分の変化に基づいている。
【0013】
本発明の別の態様は、元素のフローサイトメーターであり、この装置は、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置に連続的に粒子を導入する手段と、連続的に粒子を導入する該手段の下流で粒子または粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置と、気化、原子化およびイオン化および/または励起された粒子または該粒子に結合した元素タグを分析する分光計とからなる。
【0014】
本発明の別の態様は、質量分析計に基づいたフローサイトメーターであり、この装置は、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる装置に粒子を連続的に導入する手段と、粒子を連続的に導入する該手段の下流に粒子または該粒子に結合した元素のタグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置と、気化、原子化およびイオン化させる装置の下流に機能的に接続された質量分析計とからなる。
【0015】
本発明の別の態様は、質量分析計に基づいたフローサイトメーターであり、この装置は、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる装置に粒子を連続的に導入する手段と、粒子を連続的に導入する該手段の下流に粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる装置と、気化、原子化およびイオン化させる装置の下流に機能的に接続されたイオン前処理装置と、および該イオン前処理装置の下流に機能的に接続された質量分光計とからなる。このイオン前処理装置は、質量分光計の一部として、好ましくは、その質量分析部の上流に設けてもよい。
【0016】
本発明の別の態様は、発光分析計に基づいたフローサイトメーターであり、この装置は、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置に粒子を連続的に導入する手段と、粒子を連続的に導入する該手段の下流で粒子または該粒子に結合した元素のタグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置と、粒子を気化、原子化および励起またはイオン化させる装置の下流で、気化、原子化および励起またはイオン化された粒子または該粒子に結合した元素タグを分析する発光分析計とからなる。
【0017】
本発明の別の態様は、気化、原子化および励起またはイオン化する装置に連続的に導入される粒子を分析する方法であって、この方法は、粒子または該粒子に結合した元素のタグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置に粒子または該粒子に結合した元素タグを連続的に導入し、気化、原子化および励起またはイオン化された粒子または該粒子に結合した元素タグを分光分析計に導入することからなる。
【0018】
元素タグを用いる単一粒子の標識化またはタグ化は、例えば、米国特許出願第09/905,907号および米国特許出願第10/614,115号に開示されている方法およびシステムを使用して実施され、この両出願を引用することにより本願明細書に取り込まれるものとする。米国特許出願第09/905,907号および米国特許出願第10/614,115号は、質量分析により分析対象物に結合した生物活性物質の分析に関する方法およびシステムを記載している。粒子の標識化およびタグ化に関する他の方法も役に立つ。例えば、粒子がビーズである場合、粒子自体は、ここに開示されるとおり、粒子表面または粒子内のいずれにも標識化できる。
【0019】
本発明の別の態様は、粒子、例えば白血病細胞の分析におけるアプタマーに基づいたアフィニティー生成物を提供することである。交差反応に対するアプタマーを選択することが可能である。これは、アプタマーが弱い交差反応を有するアフィニティー生成物であるため、大規模な、多様な分析に有効である。他の手段は、交差反応に対する抗体を証明することである。
本発明の別の態様は、本発明の方法を実行する試薬およびこれらの方法についての指示書を有するキットを提供することである。
【0020】
本発明の別の態様は、サンプル中の分析対象物を測定するためのキャリアとしてアフィニティー物質を有するビーズを提供することであり、さらに、標識元素またはタグ付き元素を含んでいる。元素タグは分析対象物上、アフィニティー物体上または(および)ビーズ上またはビーズ自体の中に存在する。
【0021】
定義
ICP−MS:誘導結合プラズマ質量分析計である。
FACS:蛍光活性化細胞選別器である。
単一粒子:単一の実体(要素、材料、元素、物質、構造、生体、物体、本体、物品または事物)または所定の数(例えば、2、3または4)の個別の実体の単一のパケットであり、単細胞、単ビーズ、単一細菌、単一ウイルス粒子、単一花粉粒子、チリダニなど単独微細虫を含むがこれらに限定されない。
【0022】
タグ(または標識):例えば分析対象物または分析対象物複合体を順次に認識するアフィニティー生成物への結合により、分析対象物またはその関連分析対象物複合体の存在についての識別可能な信号を提供する化学基である。本明細書に開示されるとおり、タグは、識別可能な信号を提供する元素または同位元素(またはそれらの複数の複製)を含む。タグは、例えば、分析対象物または該分析対象物の複合体と関連付けられ、かつ分析対象物の存在を決定するために測定される、元素または元素の同位元素を含む。タグはまた、例えば、粒子の表面または本体内に設けられるか、または別の粒子に結合され、他の粒子とその粒子を識別するのに役立つ、任意の識別可能な成分(例えば、元素または同位元素またはそれらの複数の複製)を含むことができる。
TOF−MS:飛行時間型質量分析計である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る元素のフローサイトメーターは、単一粒子(または細胞またはビーズの任意の特徴的な部分)、または壊変されるタグ元素の質量−電荷比または発光を利用して細胞またはビーズ上または内部に位置する分析対象物に結合したタグまたはラベルの元素成分を測定することにより、例えば、個々の細胞または微細ビーズを、気化、原子化および励起またはイオン化させる装置に連続的に導入される粒子を識別および定量分析するために提供される。タグは、重要な元素成分のみであるような、任意の化学的特質を取り得る。FACSと比較して、適切なタグの化学的構造は、FACSにおける固有の蛍光を提供するのに極めて重要である。
【0024】
元素のフローサイトメーターは、
粒子を連続的に導入(例えば、細胞ごとまたはビーズごとに)する手段であって、好ましくは離散型事象の分析に適用される手段;
粒子、または該粒子に結合した所定の分析対象物を定量化するために、粒子上または粒子内の、対象とする所定の分析対象物に結合した元素タグ(または分類可能な元素成分)を気化、原子化および励起またはイオン化させる手段;および
粒子、または粒子上の分析対象物に結合した元素タグの元素成分に関する情報を記録する手段
とを含む。これは、例えば、質量分析計(MS)によりまたは発光分光分析計(OES)により実行できる。
【0025】
本発明による元素フローサイトメーターは定量的で分析的な測定器である[7]。これらは、分析方法を利用して、生体サンプルまたは環境サンプルの定量的または定性的分析を行うことができる[8]。
アフィニティー物質を有するビーズは、サンプル中の分析対象物を測定するキャリアとして使用できる。元素タグまたは標識の配置は、分析対象物上、アフィニティー物質上および/またはビーズ自体の上または内部である。
【0026】
元素フローサイトメーターの具体的な実施態様としては、(1)質量分析計に基づいたフローサイトメーター(MS FC)および(2)発光分光分析計に基づいたフローサイトメーター(OES FC)を含む。
質量分析計に基づいたフローサイトメーター(MS FC)は、
粒子を連続的に導入する手段;
粒子および/または該粒子に結合した任意のタグを気化、原子化およびイオン化させる手段;および
気化、原子化およびイオン化された粒子および/または該粒子に結合した任意のタグの元素成分を分析する質量分析計
とからなる。
【0027】
本発明によるMS FCはさらに、質量分析計により分析される前にイオンを前処理するイオン前処理装置を含む。
単一粒子を気化、原子化およびイオン化させる手段は、グロー放電、黒鉛炉および容量結合プラズマ装置または他の適当な装置を含む。好ましくは、単一粒子を気化、原子化およびイオン化させる手段は誘導結合プラズマ(ICP)装置を含む。この理由は、ICP装置がプラズマ中の短い残留時間の間に細胞およびビーズを分解、気化、原子化およびイオン化させる能力を有し、そしてICPが特に、付随する物質に耐性を有し、プラズマガスの組成の変化に対して堅固であり、極めて効果的な有効な噴霧器およびイオン化装置であるからである。
【0028】
イオン前処理装置は、特に、気化器/アトマイザー(噴霧器)/イオナイザー(イオン化装置)内の雰囲気状態と質量分析計内の真空の間のインターフェイスとして作用する。これに加えて、この発生源から生じる極めて強力なイオン電流は、空間電荷が支配的であり、この空間電荷は、質量−電荷比(例えば、Ar+)に基づく加速電位および/または大部分のプラズマイオンの除去により低減される。TOF MSの場合においては、イオン前処理装置はさらに、TOF質量分析計の必要性に対してイオンの流れを調整し、例えば、イオンエネルギー分布を狭くし、質量分析計の軸に近接して平行イオンビームを集束する。
【0029】
質量分析計はどのような質量分析計であってもよい。例えば、四重極、アレイ検出器を備えた磁場型、3Dイオントラップまたはリニアイオントラップ質量分析計であってもよい。好ましくは、質量分析計は飛行時間型質量分析計(TOF MS)である。TOF MSは同時分析器であり、1つの粒子中の対象とするすべての質量を同時に記録できる。
【0030】
発光分光分析計に基づいたフローサイトメーター(OES FC)は、
粒子を連続的に導入する手段;
粒子および/または該粒子に結合した任意のタグを気化、原子化および励起またはイオン化させる手段;および
気化/原子化および励起またはイオン化された粒子および/または該粒子に結合した任意のタグの元素成分を分析する発光分光分析計
とからなる。
【0031】
単一粒子を気化、原子化および励起またはイオン化させる手段は、グロー放電、黒鉛炉および容量結合プラズマ装置または他の好適な装置を含む。好ましくは、単一粒子を気化、原子化およびイオン化させる手段は誘導結合プラズマ(ICP)装置を含む。その理由は、ICP装置がプラズマ中の短い残留時間の間に細胞およびビーズを分解、気化、原子化およびイオン化する能力を有し、およびICPが特に、付随する物質に耐性を有し、プラズマガスの組成の変化に対して堅固であり、極めて効果的な、有効な噴霧器およびイオン化装置であるからである。
【0032】
本発明による元素フローサイトメーターにより実行される処理は、さらに、単一粒子導入の手段と気化、原子化およびイオン化の手段との間にインライン分析工程を含む。
次に、実施態様を詳細に説明する。
【0033】
最も一般的な態様において、本発明は、フローサイトメーターのための検出器として元素分析器を備える。図1は、本発明の分析方法を実施する用途に適したサイトメーター100を示している。サイトメーター100は、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置104の上流に機能的に接続される、例えば、粒子を連続的に導入する手段102、例えば細胞または粒子注入器171(図2、3、4)を含む。粒子または元素タグの元素成分は、装置104に機能的に接続される分光分析計106により測定される。分光分析計106は、例えば、励起される原子および/またはイオンからの発光を検出する光学分光分析計157、またはイオンを検出する質量分析計116を含む。
【0034】
一つの実施態様においては、本発明は、質量分析計に基づいたフローサイトメーター(MS FC)101を提供する。このような実施態様は図2に示されている。
図2を参照すると、質量分析計に基づいたサイトメーター100の実施態様101は、粒子を連続的に導入する手段102、例えば、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置104、すなわち誘導結合プラズマ(ICP)気化器/噴霧器/イオン化装置の上流に機能的に接続された細胞または粒子注入器171を含む。図示された実施態様においては、手段102は任意のインライン溶解システム110を含む。
【0035】
イオン前処理装置112は、この例では、真空インターフェィス114、高域通過フィルター116およびガス充填「冷却」セル118を含み、ICP気化器/イオン化装置の下流に機能的に接続される。
飛行時間型(TOF)質量分析計106、116、126はイオン前処理装置の下流に機能的に接続される。
【0036】
単一粒子を分析するためのこのような実施態様による質量分析計に基づいたサイトメーター101を使用することにより、先行技術のシステムと比較して、大幅に改善された正確性、大きなダイナミックレンジおよび高感度を実現できる。さらに、多数の識別可能な元素および同位元素をタグとして使用できるため、そして質量分析計が極めて高感度(隣接する質量/電荷検出チャネルにおける信号の極めて小さな重なり)を提供するため、先行技術の蛍光発光に基づいた検出のフローサイトメーターに比較して高度の多重化(それぞれが識別可能にタグ付けされる、複数の分析対象物の同時測定)を促進する。さらに、隣接する質量/電荷検出チャネルの高分解度および質量分析計の大きな線形ダイナミックレンジのため、測定器は、所定の分析対象物に対して、および複数の分析対象物の間の両方で、大きなダイナミックレンジを提供する。したがって、多くの場合、一般的なタグ付け部は、分析対象物のコピー数が大幅に異なる分析において使用することができる;このことは、特定の分析に対しては多重分析に使用される複数の蛍光体の成分をしばしば調整し、同等の大きさの放射強度を提供してスペクトルの重なりを最小化しなければならないという、従来の蛍光発光の検出方法とは異なる方法である。したがって、このような実施態様は、研究者および臨床医に、大幅に改良された分析能力および予知能力を提供することができる。
【0037】
本発明のこの実施態様によるサイトメーターの別の重要な用途は、識別可能なビーズを多重評価することであり、この場合には、ビーズは元素成分により識別され、導入されるサンプル中の抗原を認識するアフィニティー生成物を付着し、該抗原はさらに、識別可能な元素を利用するサンドイッチ(または他の)アッセイ法を用いて認識される。
次に、図2の質量分析計に基づいたフローサイトメーター101の主要な構成要素および使用方法を詳細に説明する。
【0038】
タグ付け
ある特定の場合においては、粒子(例えば単細胞)はタグ付けを必要としない。
場合によっては、粒子はタグ付けを必要としない。例えば、単細胞は、質量分析計によりバックグラウンドに対して検出可能な元素を含むかまたは元素に結合されている場合、タグ付けは必要とされない。例えば、バイオレメディエーション(微生物を活用した汚染環境の修復)において、元素種を蓄積している、細菌細胞または植物細胞の分析については、追加のタグ付けは必要とされない。さらに、金属、例えばプラチナまたは金を含む薬剤の細胞内蓄積に対しては、追加のタグ付けを必要としない。
【0039】
単一粒子がタグ付けを必要とする事例
粒子のタグ付けは当業者には公知の多くの方法により実施される。例えば、サクシニミジルエステル部を有する蛍光色素は、蛋白質(抗体)の1級アミンと効果的に反応して安定な色素−蛋白質結合物を形成する。DNAをタグ付けするための第1工程では、アミンが修飾されたヌクレオチド、すなわち5−(3−アミノアリル)−dUTPは、従来の酵素のタグ付け方法を用いてDNAに組み込むことができる。第2工程では、アミンが修飾されたDNAは、アミン反応性蛍光色素を用いて化学的にタグ付けできる。抗体のビオチン化はメルカプト基を標的とする固相化学反応を用いて実施される。これらの方法はよく確立されており、例えば、Molecular Probe社、Pierce Chemical社、他を含む、様々な会社からキット形式で入手可能である。特定の化学反応は放射免疫化学において公知である。例えば、放射性核種(88/99)Yおよび(177)Luを使用することにより、環状ジエチレントリアミンペンタ酢酸無水物(cDTPA)、イソチオシアネートベンジル−DTPA(SCN−Bz−DTPA)または1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA)(PMID:14960657)を用いて抗体をタグ付けできる。
【0040】
タグ付けされた生物活性物質の元素分析は、引用した参照文献、米国特許出願第09/905,907号および第10/614,115号に開示されている。タグ付けされた生物活性物質、例えば、細胞成分と特異的に反応する抗体およびアプタマー等は、細胞をタグ付けするのに使用される。他のアフィニティー生成物は当業者には公知である。例えば、これらには、抗原、RNA、DNA、リポ蛋白質、糖蛋白質、ペプチド、ポリペプチド、ホルモン等が挙げられる。
【0041】
本発明によるシステムおよび方法の多くの使用において、単一元素または同位元素を用いて生物活性物質(例えば、抗体、アプタマーまたは抗原)のそれぞれをタグ付けすることは好都合であるが、抗体または抗原が複数の元素を用いてタグ付けすることは、当業者には容易に認識されるところである。250を超える安定な同位元素を有する80を超える天然に存在する元素が存在するので、選択される多数の元素、同位元素およびそれらの組み合わせが存在する。例えば、4つの異なる同位元素のみから構成される20の識別可能な3−原子タグおよび10の異なる同位元素から構成される100万の識別可能な15−原子タグまたは5つの異なる同位元素から構成される70−原子タグが存在する。例えば、多くが富化された形で商業的に入手可能であり、アフィニティー生成物のタグ付けに適した、十分な天然存在量の約167の安定な同位元素を含む特定の55の元素が存在する。例えば、ランタニド類および貴金属類の少なくとも50の「フロンティア」同位元素が存在する。これは、組み合わせて識別可能なタグを有する必要性から規定された制限内で、多数の生物学的にタグ付けされる複合体の同時測定を可能にする。タグ元素の相対的な存在量は、分析される所定のサンプル中の元素の相対的な存在量と大幅に異なる場合は、この方法は有利である。「大幅に異なる」ことにより、本発明の方法においては、分析されるサンプルに含まれるバックグラウンド元素全体にわたり目標とする抗体または抗原を検出することが可能であることを意味する。実際、タグ付けされた抗体または抗原の元素相互間の割合の差およびサンプルマトリックスを有利に使用して、サンプルを分析することができる。
【0042】
分析の間に干渉信号を生成しない元素タグを選択することは可能であり、したがって、2つ以上の分析測定を1つのサンプルにおいて同時に実施できる。さらに、元素タグは多くの元素を含むように生成できるため、測定される信号は大幅に増幅できる。
【0043】
タグ当たりの元素または同位元素の複数の複製を使用することにより、特に、例えば、本発明のICP−MS実施態様の使用において、感度を直線的に改善できる。最大23の同時分析対象物の多重分析のために、該タグは、例えば、Ru、Rh、Pd、Ag、In、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Re、Ir、PtおよびAuなどの、天然の同位元素分布を使用して都合よく構成することができる。これらの元素は、大抵の場合、生物学的サンプル中では稀に存在すると予測され、それぞれ、他の元素によりまたは他の元素の酸化物または水酸イオンにより大きく干渉されない10%を超えて天然に存在する少なくとも1つの同位元素を有する。より低い天然の存在量(例えば、143Nd、12.2%)のこれらの同位元素については、アイソトープが富化された同位体を用いるタグ付けは明らかに感度面での利点をもたらす。より高度な多重化が望まれる場合、市販の、富化された同位元素(生物学的システムにおいてありふれたものであると予測されない55の元素の167もの多数である)を用いることにより、可能性を提供する(当然であるが、利用度、費用および同位体の純度に依存する)。例えば、富化された形で取得されるランタニド類および貴金属類だけの少なくとも35の同位元素が挙げられ、これらは生物学的システムにおいてありふれたものと予測されず、相互干渉に関してはほぼ無関係である(ただし、分析対象物の複製数における大きな差が発生する場合はタグ付けするプロトコルの選択において若干の注意が必要になる。例えば、169Tmを用いてタグ付けされる分析対象物の複製数が185Erを用いてタグ付けされる分析対象物に比べて1000倍大きい場合、169TmO+は185Er+の測定に大きく干渉する。この理由は、TmO+が典型的にはTm+信号の約0.07%であるためである(ただし、FACSに関しては、この干渉の一部は、酸化物イオンの断片生成が安定で、測定できるために数学的に補正することができる)。特別な状況では、複数の元素または同位元素を用いて任意の生物活性物質をタグ付けすることは可能である(例えば、理論的には4つの同位元素から構成される20の識別可能な3−同位元素タグがある)。
【0044】
本発明は、ICPを通過する単細胞を分析することにより細胞の生物学的特性を測定するための新規で有力な技術の開発を可能にする。アフィニティー生成物(生物活性物質)として抗体を使用すると、質量分析計により検出されるタグ元素の量は、細胞に結合したタグ付けされたアフィニティー生成物の量に比例する。元素タグに結合した抗体は、常套的に試薬として使用され、定性的および定量的に抗原を測定し、例えば、対象とするマーカーの数においてほぼ無制限である、患者の免疫表現型タイピングのプロファイルを取得する。本発明により提供される別の利点は、分析エラーを生じる可能性のある「サンドイッチ免疫染色」によって抗体の信号を増大させる必要性を低減することである。
【0045】
本発明による方法は、検出器の信号の重なり、制限されるダイナミックレンジ、時間感受性信号、およびある場合には感度などの問題が生じる従来の方法(蛍光発光分析、放射免疫分析、化学ルミネセンス分析など)のアプローチとは異なる。したがって、本発明の方法は、実質的に信号の重なりがない大規模な多重化分析(アフィニティー化学の独立性および交差反応により主として制限される)の可能性を提供する。元素(同位元素)タグが特定のアフィニティー生成物と低量的に結合する場合、ICP−MSの定量的な特性は、同時に複数の抗原を完全に測定するための新しい機会を提供する。
【0046】
上記方法および装置は、例えば、細胞当たり各タグのそれぞれわずか100の複製であっても検出できる。細胞当たり各タグのそれぞれわずか100の複製の検出に対しては、タグ当たり少なくとも70の原子が必要とされると推定される。
【0047】
本発明は、大規模な多重化ビーズの分析を実施する可能性を提供する。現在の蛍光発光に基づいたフローサイトメーターでは、ビーズの分析のために頻繁に使用される。本出願においては、ビーズは典型的には割合を変えた2つの蛍光色素で標識され、典型的には蛍光色素の発光割合により測定される最大約100の識別可能なビーズを提供する(例えば、引用した米国特許第6,524,793号およびその中での引用文献を参照すること)。各ビーズはさらに、ビーズが入っている溶液中の分析対象物を認識するアフィニティー生成物(例えば、抗体)を付着し、異なる「色」の各ビーズは異なる分析対象物に対するアフィニティー生成物を有する。サンプル溶液に露出されると、捕捉された分析対象物は、第3の蛍光色素レポーターを有する別の抗体でサンドイッチされる。このように、フローサイトメーターの分析においては、ビーズを混合することができ、捕捉された分析対象物の複製数は第3の蛍光色素の発光により測定され、分析対象物の識別は蛍光色素を標識したビーズの発光割合により測定される。したがって、通常の蛍光検出器に基づいたフローサイトメーターは、100の高次オーダー(識別可能な「色」の数)として多重化ビーズの分析を実施する。ただし、実際にはかなり少ない数が使用され(おそらく信号の重なりのため)、このことが、蛍光発光強度の割合が大きい(発光波長分布に依存して、例えば、1桁または2桁の大きさ)場合、測定の正確さ(したがって、ビーズの識別の信頼性)を制限する。
【0048】
同様の方法は、本発明による質量分析計に基づいたフローサイトメーターを用いて実施可能であり、この方法によれば、多重化度合いが大幅に増加し、信号の重なりの問題が事実上除去されるという利点を有する。例えば、ビーズは、ビーズの識別を報告するために使用できる元素または同位元素の混合物を取り込むことができる(ビーズの表面上に、あるいは恐らくさらに好都合には、ビーズ本体内のいずれかに)。検出器が3桁の大きさのダイナミックレンジを有し、相対的な信号における3つのファクターを高い信頼性で測定できると仮定すると、ビーズに2つの元素を組み込むことにより63のビーズが識別可能となる。同一の仮定の下で、5つの元素の標識を使用することにより、識別可能な32,767のビーズを提供できるが、ダイナミックレンジが5桁の大きさの場合、同じ5−元素ラ標識は248,831の識別可能なビーズを提供する。さらに、これらの少数の標識化する元素を選択することにより、信号の重なりが存在しないようにすることができ(例えば、元素が少数の原子質量単位より高質量差で現れるように選択することにより)、それにより、広いダイナミックレンジの検出を可能にする。ビーズにより捕捉された分析対象物に対するサンドイッチアッセイは、なお一層異なる元素タグを使用して、それによりまたビーズで標識した元素から容易に識別することができる。さらに、この構成においては、各ビーズはビーズ当たり幾つかの異なる分析対象物を付着する幾つかのアフィニティー生成物を含むことができ、それぞれはさらに別の元素を使用してサンドイッチアッセイにより認識され、複数ビーズの間および単一ビーズ上の両方における多重分析を可能にする。1つの予想される用途としては、96−ウェルプレート(または384−ウェル、または1536−ウェル)に対するものであり、異なって標識されたビーズが各ウェルに提供され、各ウェルのビーズ表面上で元素タグ付き多重免疫測定が実施される。プレート(96または384または1536ウェル)の全含有物はプールでき、フローサイトメトリーにより分析される結果は、したがって、質量分析計タイプの「プレートリーダー」を提供する(その元素組成により測定されるとおり、ビーズの識別は分析が行われるウェルを識別する)。
【0049】
粒子を連続的に導入する手段
サンプル導入システム102は、他のフローサイトメーターサンプル導入システムにおいて現在使用されている幾つかの装置を含むことができる。例えば、現在、フローサイトメトリーに使用している、様々な形式のシース流注入を含む幾つかの、細胞または粒子注入器171システムが存在する。ICPの溶剤充填(典型的には25から80μL/分に対して最適)に対する考慮のため、特定の状況における「空気の流れ」(またはICPの場合、「アルゴンの流れ」)注入器が最適であると考えられる(ただし、現在の設計に関するいくつかの改良は、細胞の凝集を最小化するためには好ましい)。ICP装置を含むここに開示される目的に適するすべてのサンプル導入装置は、現在存在するかまたは以後に開発されるかまたは改良されるかどうかに関係なく、この目的に役立つであろう。
【0050】
発明者らが以下に報告する実施可能な実験については、小容積の噴霧室が採用された(J.L TodohおよびJ.M MermetのJ Anal At.Spectrometry、17巻、345−351頁、2002年に報告された設計概念に類似する)。この噴霧室は、凝縮された液体(使用した浮遊流量では実質的に存在しなかった)を除去するドレインを有し、ICPへの出口を除いて気体の出口を有していない。
【0051】
粒子を連続的に導入する手段は、細胞注入器171を含むことができる。適正な条件の下で、四重極に基づいたICP−MSシステムのイオン源への個々の細胞の導入に細胞注入器171を使用することにより、単細胞イオン化事象の検出性を実証し、細胞全体の導入が、特定の状況における細胞マトリックス全体の気化およびイオン化に関して実施可能であるかどうかを測定する。
【0052】
例えば、白血病の幹細胞は直径約15μmであり、約80%の水を含む。流れるプラズマ源およびイオン化装置を通過する通過時間は、完全なイオン化を可能にするには不十分である。これは内部の蛋白質マーカーの観察ができないことにより指摘される。幾つかのイオン源パラメータ(ガス流、電力、サンプリング深さ)を調整することにより、この欠陥を軽減できる。あるいは、インライン溶解成分を利用できる。
【0053】
なお、励起レーザーを用いる粒子の慎重な整列が重要であるFACS方法と比較して、本発明の方法は、気化器、噴霧器(アトマイザー)およびイオン化装置(イオナイザー)を用いる粒子の整列の緩和を可能にする(後で説明されるが、検出トリガーとして光散乱を利用するのでなければ)ことは注目される。この理由は、特にICPの場合、ICPを供給する注入器チューブ内の粒子の正確な位置は、検出信号にとってはあまり重要でないことによる(粒子を含む中央流路の流れが、加熱により急激に膨張することがその理由の一部であり、また中央流路流のすべてが事実上ICP−MS真空インターフェイスのサンプラーに吸入されることがその理由の一部である)。大部分の中央部分のみが実質的にスキマーを通して輸送されるが、いずれにせよ、真空インターフェイスへのサンプリングの前に中央流路流の実質的な混合が出現する。
【0054】
ICPに導入される粒子全体を気化し、少なくとも部分的に原子化およびイオン化することにより、粒子内に含まれる元素タグ(細胞内のタグまたはビーズ標識)の測定を可能にすることが望ましい。現在の知識で明らかな点は、約1μm未満の直径の固体粒子(例えば、ガラスまたは地質学的物質)、および約10μm未満の直径の液体エアロゾルは、ICPにおいて効果的に気化、原子化およびイオン化され、一方より大きい粒子は部分的にのみ気化されることである。これは、ICPを通る粒子の通過時間が短いため、大きな粒子への熱移動が完全な気化、原子化およびイオン化を可能にするには不十分であると推定される。この結果、約1μm未満の直径のビーズを使用することが好都合である(例えば、以下に説明する発明者らによる実施可能性の研究においては、約150nmのストバーシリカ(stober silica)粒子を使用した)。しかし、しばしば、細胞の直径は10μmより大きい。それにもかかわらず、以下に説明する発明者らによる実施可能性の実験では、この認められる最小の細胞よりも大きな細胞が、実際には、効果的に気化、原子化およびイオン化されることを示唆している。この結果から、発明者らは、ICPを通過する間に急激に加熱されると、細胞は、気化、原子化およびイオン化されるに十分小さい断片に分裂すると推定される。ある特定の事例では、粒子が大きすぎて、効果的な気化、原子化およびイオン化ができない可能性が残り、このことはビーズの細胞内タグまたは元素標識が観察できないことにより示されるであろう。この例においては、幾つかのイオン源パラメーター(ガス流、電力、サンプリング深さ)を調整して、この欠陥を軽減できる。あるいは、インライン溶解成分を利用できる。
【0055】
インライン溶解
インライン溶解システム110は、幾つかの情況下においては、有利に使用される。例えば、全細胞の導入が実施できない場合、インラインの溶解システムの使用が有利である。これは、本明細書に開示される目的に適する如何なる方法によっても実施することができ、当業者に現在知られている多数の方法を含み、細胞破壊をもたらすシース流の液体の酸性化、または浸透圧による細胞破壊を誘発する高純度(低導電率)水のシース流の液体の酸性化を含む。この例では、元素タグは保持され、サンプルを気化、原子化およびイオン化する装置に輸送される。ただし、トランジェントパルスはフローストリーム内での拡散によりわずかに広がる。
【0056】
気化/原子化/イオン化の手段
本明細書に開示される目的に適する任意の手段104、例えば黒鉛炉、グロー放電および容量結合型プラズマは、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化するために利用できる。好ましくは、気化器/噴霧器/イオン化装置は誘導結合プラズマである。事例によっては、気化、原子化およびイオン化および/または励起は、様々な装置および様々な時間(例えば、原子化およびイオン化および/または励起のためにICPと組み合わせた気化のための黒鉛炉内で)に発生する。
【0057】
誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)は、物質の元素成分、特に極微量成分を測定する好ましい手段である。環境(例えば、飲料水、川、海および廃水の分析)、地理(例えば、極微量元素のパターン化)、臨床(例えば、血液、血清および尿中の極微量金属の測定)および高純度物質(例えば半導体の試薬および成分)を含む、様々な用途で受け入れられている。
【0058】
ICP−MSは、質量分析計に誘導結合プラズマイオン化源を接続する。簡単に言えば、サンプル、最も一般的には噴霧により生成されるエアロゾルが、流れているアルゴンガス流に高周波(rf)エネルギーを結合して得られる高温大気圧プラズマ内に注入される。結果として生じるプラズマは、高温(約5000K)および同数の電子および正イオンの比較的高濃度(約1015cm−3)により特徴付けられる。上記したように、噴霧されたサンプル粒子が十分に小さいと仮定すると、サンプルは、プラズマを通過して流れるとき、即時に気化、原子化およびイオン化される。イオン化効率は、元素のイオン化ポテンシャルに対して逆におよび指数的に依存し、周期表の大多数の元素がほぼ100%イオン化される。イオン化されたサンプル成分を含む生成したプラズマは、イオンが中性化学種から分離され、質量分析される場合、真空中に抽出される。「質量指紋」はサンプルに含まれる元素を同定する。検出信号は直接および定量的に、サンプルの元素成分の濃度に比例する。この方法の注目すべき特定の属性には、広い線形ダイナミックレンジ(9桁の大きさ)、優れた感度(1兆分の1以下、またはアトモル/マイクロリットル、検出)、超高感度(四重極分析器に対して隣接する同位元素間の<10−6重なり)、計数−統計−限定された精度、完全な定量化、および付随マトリックスの許容度を含む。
【0059】
ICP−OESは上記した分析を実行する別の好ましい方法であり、サンプルの固体分が約1%を超える場合(1mL/分のオーダーの均質な液体の導入速度に対して)、特に利点がある。ICPにおいて使用される条件は、ICP−MS方法に関して説明されるものと同様である。ICP内で励起された中性原子およびイオンからの放射の検出は、サンプルの元素成分の定量的な測定を実現する。現在の大部分のICP−OES測定器は、周期表の大部分の元素について真の同時測定のためのアレイ検出を備えている。多くの好ましい事例では、ICP−OESは、広いダイナミックレンジおよび優れた分解能の検出チャネルをはじめとする、ICP−MSの望ましい特性のいくつかを保持している。別の例では、元素相互間または分子放射妨害の可能性があるが、このような例では、多くの場合、別の放射波長を利用できる。ここで考えられる用途に対する主な欠点は、その全体的に低い感度(事例によっては、バックグラウンド放射信号により制限される)、および所定の元素の同位元素を識別する能力がないことである。それにも関わらず、ICP−OESは簡単に使用でき、堅固であり、ICP−MSより安価であることが受け入れられ、したがって、本発明の方法に対して適用できる。
【0060】
イオン前処理装置
ある状況下では、例えばMS FCの場合、イオン前処理装置112を使用して、質量分析計のためにイオンを適当な状態に調整することができる。質量分析計は減圧(典型的には10―4トル未満)で作動し、上記したイオン源は典型的にはより高圧(例えば、従来のICPにおける大気圧)で作動するため、イオン前処理装置の1つの機能は、圧力低減工程(真空インターフェイス)によってサンプルから抽出されたイオンを効果的に輸送することである。この工程および後続工程では、引き続いて質量分析計に輸送される中性原子に対するイオンの割合を増加することが望ましい。イオン光学構成要素(イオンレンズ)は典型的には、イオンを局在化し、中性原子が真空ポンプを通して除去されることを可能にして、この機能を果たす。イオン光学系の追加の機能は、イオンビーム(空間およびエネルギー)を調整して、質量分析計への受け入れ条件に適合させることである。
【0061】
高域通過フィルター116および「冷却」セル118は、現存する、多くの適切な前処理形式のうちのわずか2つである。恐らく、他の形式が将来開発されるであろう。ここでの目的に適うあらゆる装置または方法が役立つであろう。
【0062】
プラズマを通過する単一粒子の短い残留時間のため、2つの分離したイオン処理(前処理)および質量分離技術が使用される。
【0063】
ICP源における粒子の気化、原子化およびイオン化の後、対象とする元素を含むイオン雲は、真空インターフェイスを通過し、前処理装置112内で調整される。この装置は、イオン雲から、ある一定のしきい値、好ましくは100m/z未満の質量を有するすべてのイオンを除去する。しきい値は、Ar+、Ar2+、ArO+、NO+、O+等のイオン雲から最も豊富なイオンを除外することにより、イオン雲の空間電荷の低減を可能にする。これは、後続の質量選択および検出(2次干渉、空間電荷問題、走査時間等)において重要である。説明すると、2次干渉は、気化器/噴霧器/イオン化装置の外側での如何なる機構によっても生成する干渉のことである。1次干渉(またはプラズマ生成干渉)は、通常、イオンまたはイオンビーム(流れ)内で多数のまたは高密度で表されるイオンを含むアルゴンまたは酸素である。これらの干渉はイオン流を支配して、それ自体の静電界(空間電荷)を生成するのに十分強力な高い全体電荷密度を生じさせる。空間電荷はデフォーカスを発生させ、分析対象物のイオンの強度を低下させる。干渉は周囲(または特別に導入された)ガスと反応して、同等に強い流れの2次干渉を発生する。1次および2次干渉は、大きいバックグラウンド信号を発生する。1次干渉は主にイオンを含むアルゴンまたは酸素であるため、低い質量−電荷比を有する(m/z<90)。したがって、イオン前処理装置は、この質量範囲内のすべてのイオンを排除するために使用できる。低い質量範囲(m/z=90−250)は、低いイオン数濃度(空間電荷ではない)を有し、反応性が少なく(この質量範囲の元素イオンの特性のため)、走査時間を低減できる(質問するチャネルが極めて少数であるため)。TOF実施態様の場合には、質量範囲内のすべてのイオンがフローチューブを通過するまで待つのに必要な時間が短くなり、より速い走査時間をもたらす。
【0064】
タグの最も確かな成分がしきい値より大きいm/zを有する元素を含むと仮定すると、前処理はタグ分析を干渉しない。前処理装置は、また所定の期間イオン雲を制限し、これにより、質量分析および検出の期間を延長するのに役立つ。好ましくは、前処理装置は、不活性ガスを充填したDRCセル(ダイナミック反応セル)として構成される。当業者には公知のように、イオン化学作用を無視してはならない。測定器軸に近接してイオンを熱し、集束させる(TOFの必要条件に対する前処理)ために使用される衝突ガスは、イオンとの反応のために使用される。これは自然発生する干渉が分解を必要とする(例えば、同一のm/zの2つの元素の同位元素)ときに使用される。元素タグが相互に干渉することは予測されないが、バイオ化合物を含む天然の金属は干渉するまたは干渉を受ける。当業者には公知のとおり、イオン分子化学作用を選択してこの干渉の可能性を低減できる。
【0065】
好適なイオン光学素子の繰返しは、質量分析計に対するICPの連結の最適化のために行われる。イオン光学素子は前処理装置のサブセットを構成する。これらの役割は、通常、イオン経路のある特定位置におけるイオンビーム断面の変形に関連する(例えば、集束、反射、加速等)。好ましくは、質量分析計106は飛行時間型質量分析計(TOF)126である。イオン光学設計には、(1)プラズマガスからのイオンの効果的な抽出(例えば、TOFは高真空を必要とする)、および(2)質量分析計の加速領域へのタグ元素の特異的、効果的な輸送を含む。
【0066】
前者は、真空ポンプのスロート内に直接中性プラズマ種を導入する、直角の真空インターフェイスを使用して行われる。目的特異的な真空システムは、コンポーネントに適応するように設計され、作製される。検出器の構成が組み込まれる。例えば、これは直接prOTOFTMから適用されるか、Perkin−Elmer InstrumentのTDC/ADC(時間−デジタルアナログ/アナログ−デジタル変換器)システムまたは個別の単一チャネル検出器である。
【0067】
後者に関しては、主な制限力は、真空中でプラズマが減衰するときの電荷分離の直後のイオン高電流の相互空間電荷反発力であり[9]、TOF構成では、加速領域においてそれ自体を再度アクティブにし、この結果、分解能および感度の低下を招く。この欠点は、比較的大きい原子量を有する元素タグが、主要なAr+プラズマイオンの質量/電荷より大きいイオンのみを透過する高域通過フィルター(rf−四重極のみ)と組み合わせた加速光学系を用いて対処される。さらに、衝突冷却用セルを組み込んでイオンのエネルギー分布を低減させ、イオン集束を可能にすることは有利であり、これにより、TOF加速器(感度)内での保持および高感度を含むスペクトル分解の両方が改善される。
【0068】
従来の溶液噴霧と比較して、感度で100倍の増加が必要とされる。従来の溶液噴霧は低効率である(約2%(1mL/min(ミリリットル/分))〜30%(80μL/min(マイクロリットル/分))の取り込み)。ただし、サンプルは、プラズマ中に直接注入され、同時に「感度」の向上を伴う。
【0069】
現在のICP−TOF−MS測定器については、2桁の大きさのゲイン(現在の四重極システムより約1桁大きいことを意味する)がさらに要求される。質量分析計に基づいたフローサイトメーターは、重い原子タグの検出には理想的である。約100amuより高質量範囲のみを測定すれば十分である。向上した感度に対してもっとも重大な障害の1つは、主要なAr+イオン(m/z=40)の空間電荷反発力である。本発明の方法は従来の元素分析の要求事項には制限されない(通常の元素分析器の質量範囲は、m/z=4からm/z=250である)ため、高質量イオンの透過のためのイオン光学系を最適化することが可能である。
【0070】
同時測定能力を有する従来のICP−MS(例えば、ICP−TOF−MS126またはICP−イオントラップ−MS)はMS FC101の検出器として適しているが、MS FC101の必要条件は従来の元素分析の用途の要件と全く異なることを認識しなければならない。特に、MS FCの用途においては、測定される(タグまたは標識として)元素は、上記したものに有利に選択され、すなわち、90原子質量単位(amu、dalton、トムソン)を用いて選択される。このような例では、低質量(例えば、Li、B、Na、Mg、Co他)および高質量(例えば、ランタニド類および貴金属類)に対して同時に最適な感度を提供する必要性はない。
【0071】
TOF分析器126を利用するある1つの方法は、加速されたビームは大きい空間電荷制限イオン電流を有するため、プラズマ膨張の比較的早期にイオンビームを加速して、ビームを高域通過濾波することである。これは、加圧されていない四重極タイプの装置の使用を通して可能になる。次に、TOFに注入する前に、劣化したイオンビームを減速することができる(加圧された多重極において衝突冷却されても、潜在的にイオン集束を可能にする)。このような連続抽出ビームの空間電荷制限は十分に高く、高質量イオンに対する感度を10倍に向上させる可能性が予測される。
【0072】
代替法または付随する方法としては、イオンビームをパルス抽出することである。低質量イオンは、所定の抽出領域において高速に加速されるため、Ar+イオン(および廃棄できる低質量イオン)は対象とする高質量イオンより先に走行する。好ましくは、前方を走行するイオンは、イオン光学系領域内を除いて、GBC TOFの「SmartGate」に類似する、直交パルスを使用して廃棄される(例えばWO98/33203を参照)。透過窓は、<100原子質量単位イオンを遮断するのに十分であるため、この事例では正確に定義する必要はない。さらに下流の冷却セルを利用してイオンを集束し、それらのエネルギーを標準化する。直交パルスが問題となる場合、パルス抽出されたイオンビーム全体はTOF抽出範囲に達することができるが、狭い質量窓が同時にTOFに注入される欠点を有する。簡単な計算(少なくとも若干のマージンにより可能性を高く見積り過ぎる)によれば、15%の負荷サイクルパルス抽出器が、電流(80Mcps/ppm)クワッドシステム(quad system)に対して最大28倍(m/z=100)および12倍(m/z=238)の感度の向上を達成できることを示す。これは、イオン光学系を通して100%の透過効率およびTOF(集束を必要とする)の100%の負荷サイクルと仮定する。
【0073】
イオン前処理装置はさらに、粒子事象トリガーを含み、これにより、個別の粒子からデータを取得する測定器質量選択および検出システムを起動し、そして事象間における測定器の活動停止状態を維持する。当業者に知られているように、これは多数の様々な方法で実施することができる。
したがって、イオン前処理装置は
真空インターフェイス;
真空インターフェイスの下流の高域通過質量フィルター;および
真空インターフェイスの下流のガス充填されたイオン冷却セル
とを含む。
【0074】
従来の元素分析器に比べて本発明によるMS FC101の設計を単純化するという特質の中には、様々なサンプルの種類およびマトリックスを許容するイオン化装置(例えば、ICP)の設計に対する必要性を単純化するサンプル(公知の緩衝剤における細胞またはビーズ)の相対的な不変性、ならびに元素相互間のマトリックス抑制効果(例えば、NaおよびCaが細胞の重要な成分であると認識する)に対する補正を提供する必要性と、広い範囲(タグ元素の選択に依存して)で、アルギド(argide)、酸化物および二重荷電イオンに起因するスペクトル干渉の存在に対する補正の必要性とを軽減するサンプルの全元素組成の相対的不変性(ICPの全イオン電流に関する)がある。したがって、本発明によるMs FCは測定される元素の選択性の理由から、一般的な元素分析用途に影響を与えないでサイトメトリック用途に有利に適合できる。例えば、ICP−MSによる従来の元素分析は、真空システム内への抽出、引き続くイオンの相互反発力により支障が生じる;当業者には公知のこの空間電荷効果は、プラズマサポートガスまたはO+、Ar+、ArO+、Ar2+などの豊富な溶剤から得られる低質量イオン、および場合によっては、Na+、Ca+、Cl+など他のサンプルマトリックス成分から得られる低質量イオンの圧倒的に大きなフラックスから主として派生する。なお、空間電荷効果の全体を形成するもっとも重要なこれらのイオンは、約80原子質量単位未満の低質量イオンである。したがって、真空システムへの抽出に続いて出来る限り早くこのような低質量のイオンを除去することが有利である。この理由は、このようにすることにより、空間電荷および他のイオンの透過を抑制するその関連する効果的なポテンシャル場バリヤーを軽減するからである。この軽減を達成するためのいくつかの手法が考えられ、これには、上記した、すなわち80原子質量単位のイオンを透過するように作動する、四重極装置などの高域通過質量フィルターの使用を含んでいる。特に、四重極は、イオン光学系領域に現存する圧力(典型的には約10−3トル)で作動できる。本出願におけるこのようなイオン前処理装置のさらなる利点は、この装置が低域通過質量フィルター機能(すなわち、選択された低質量と選択された高質量の間の帯域通過)を同時に提供するように作動できることである。飛行時間型質量分析計が使用される場合には、この帯域通過フィルターは、負荷サイクルの改善を実現する(感度の向上をもたらす)。この理由は、帯域通過フィルターが、前のパルスから現在のパルスの到達時間分布への高質量イオンの到達の侵入を、および前のパルスから現在のパルスの到達時間分布への低質量イオンの到達の侵入をも最小化するためである(「パルス」は飛行時間型質量分析計の飛行チューブに注入されるイオンパケットを意味する)。さらに、イオンが真空システムの入口(またはプラズマのデバイ長さが装置またはレンズの寸法と等しくなる点の近く)に達した際、可能な限り早くイオンを加速することにより、さらに、空間荷電効果を軽減できる。しかし、イオンが後に減速される場合(例えば、TOFに対する加速領域において)には、空間電荷効果は元に戻り、再度アクティブになり、感度の低減をもたらす。TOFの例においては、飛行チューブの方向にエネルギーが拡散するため、質量分解能が低減する。したがって、高域通過質量フィルターは、好適に設計されるとイオンの比較的高運動エネルギーにおいて機能を発揮でき、例えば、TOF質量分析計126の加速領域において、真空インターフェイスのすぐ下流およびさらに下流の両方で、空間電荷効果を軽減する加速光学系と協働して作動できる。
【0075】
当業者によく知られているように、さらに有利なことは、加圧多極セル(「冷却」セル)118内の非反応性緩衝ガスとの衝突による軸方向のイオンエネルギーの低減は、TOF質量分析における分解能および感度の向上を実現する(また、アレイ検出磁場型質量分析計に対しても同様であると予測される)。再度述べると、「冷却」セル118の前に配置する必要がある高域通過質量フィルター116は、「冷却」セル118と協働して有利に作動できる。この理由は、「冷却」セル118に先行するイオンの帯域通過が、「冷却」セル内では好ましくない(すなわち、感度の低下を生じる)大きい範囲の空間電荷効果を軽減するためである(これは、イオンが「冷却」セル内の衝突により速度が低下し、大量の低質量の「空間電荷誘発」イオンを最初に除去することなく、イオンを低速にすることにより、「冷却」セルの入口近くの空間電荷領域の大きなデフォーカスが突然発生する)。
【0076】
当業者によく知られているように、同重体であり、そのために干渉したり、あるいは干渉されたりするイオンを変質させるために、「冷却」セル118内に反応ガスを含ませることが有利な場合がある(米国特許第6,140,638号を参照)。さらに「冷却」セルを「トラップ・アンド・パルス」モードで作動させて、TOF加速パルスを用いて同期作動するように最適化し、その質量分析計に向上した負荷サイクル(したがって感度)を提供することができる。このように、MS FC 106はイオン加速光学系および高域通過質量フィルターとを有利に組み込むことができる。
【0077】
幾つかの質量分析計実施態様、特に、TOFおよびアレイ検出磁場型構成を含む実施態様については、ガス充填「冷却」セルの使用も有利である。特にTOF構成にとって、高域通過質量フィルターは低質量透過制限および高質量透過制限の両方を備える帯域通過質量フィルターとして有利に作動する。当業者には公知のとおり、高域通過質量フィルターおよび「冷却」セルは、単一ユニットとして組み合わされる(米国特許第6,140,638号を参照)。
【0078】
有利な点としては、最も重要なデータのみを含むように収集されたデータ量を最小化すること、あるいは、負荷サイクルにより制約される質量分析計(例えばTOF)の例においては、対象粒子が検出システムを通過するデータの測定値を整合させることである。従来のFACS方法においては、この整合は、粒子が励起領域を通過するときの光散乱の測定によりほとんどの場合達成できる;この光散乱特性(前方および側方への光散乱)は、診断値もまた有する粒子のサイズおよび粒度の情報を提供する。MS FCまたはOES FC法においては、光散乱を同様に利用できる。
【0079】
励起源がICPである場合、散乱事象は粒子を気化する前に検出される;この結果、信号生成には時間的遅延または空間的遅延に対応する遅延が必要。OES FCについては、これは、気化、原子化、イオン化および放射に必要とされる時間または距離である。MS FCについては、イオン化領域から質量分析計まで抽出されたイオンの通過時間に対応するさらなる遅延が必要とされる。当業者には明らかであるが、質量分析計、例えばアレイ検出磁場型質量分析計を連続的に監視するために、この遅延はアレイ検出器へのイオンの到達に適用されなければならない。例えばTOFおよびイオントラップなど他の質量分析計については、遅延は、例えば、TOFの飛行チューブに先行する加速領域またはイオントラップにイオンを導入するパルシングレンズなど、質量分析計にイオンを導入する装置に適用され、この遅延に対して後続の質量分析および検出が同期化される。
【0080】
MS FC 106に対しては、データ収集にトリガーを供給する別の方法が考慮される。例えば、イオン化装置(例えば、ICP)を通る粒子の通過は、抽出される主なイオンの質量分布における突然の連続的な変化をもたらすことが予測される(例えば、ICP−MSにおける主要なAr+信号は、C+、H+、Na+、Ca+等の同時生成により抑制される)。したがって、例えば、高域通過質量フィルターから放出されるイオン電流またはこのイオン電流放出の空間的位置は、大幅に変化し(様々な質量のイオンの安定性の特性における違いのため)、このイオン電流は、例えば高域通過質量フィルター内または外部の1つまたは複数の電極を用いて検出できる。さらに、検出される電流変化の大きさまたは持続時間は粒子のサイズまたは含有物と関連があり、さらに診断情報を提供できる。
【0081】
例えば、真空システムに抽出されるイオンビームに関連するイオン電流またはインピーダンスまたは磁界の変化を測定する検出器を含む、別のトリガー装置が考えられる。
必要に応じて、例えば高質量フィルターおよびガス充填イオン冷却器などの様々な構成要素を、単一ハウジング内に設けることができる。これにより、例えば、向上した耐久性、ならびに向上した動作、操作および設置品質を提供できる。
【0082】
質量分析計
前処理されたイオン雲は、同時式質量分析計を用いて分析できる。連続的な質量分析(例えば、四重極装置を利用する)もまた可能である。同時式質量分析器の例としては、TOF、3Dトラップおよびリニアトラップを含む。
MS FC 101法の利用が最も有利である(例えば、個別粒子の多重分析)、幾つかの例においては、同時式質量分析計が好ましい。例えば、気化器、噴霧器およびイオン化装置としてICPを使用する例では、単一粒子からの過渡的信号は20から200マイクロ秒の範囲の間、継続し、例えば、四重極質量分析計など連続的な質量分析計を使用する定量的な多重分析を可能にするには不十分である。そのような場合、好ましい質量分析計としては、TOF、アレイ検出磁場型、3Dイオントラップおよびリニアイオントラップが挙げられる。例えば、チューブ長さまたは衝突工程を通る、気化された粒子、原子またはイオンの輸送によって、気化、原子化およびイオン化させる装置の特性または過渡的信号の広がりのいずれかに起因して、過渡的信号の期間が著しく長い他の例においては(D.R.Bandura、VI BaranovおよびS.D.Tanner,J Anal.At.Spect.,2000年,V15,021−928など)、連続的質量分析器の有用性を見出すことができる。
【0083】
ICPに接続される通常の質量分析計106は、四重極質量分析計であり、この主な理由は堅牢性、使用の容易性、および低コストである点にある。ただし、四重極質量分析計は連続走査分析器であって、プラズマ源内の単一粒子からの過渡的信号の継続時間に比較して長い多重分析のためのサイクルタイムを有する。したがって、四重極質量分析計はこのような過渡的期間に相関性のある多重分析対象物信号を送出できない。多くの場合、四重極ICP−MS分析器は、疑似連続流れ内に存在するサンプルの分析のため、例えば霧状化およびレーザアブレーションのために使用される。四重極ICP−MS分析器は、例えば元素全体の信号化を対象とする多くの従来の免疫測定法などのような、均質サンプルの分析に適する。
【0084】
対照的に、図2に示される飛行時間(TOF)分析計126は、所定の時間内でイオンパケットをサンプリングし、それらイオンパケットを、イオンの質量−電荷比の関数であるポテンシャル場中のそれらの速度に従って時間的に拡散する、「同時」分析計であって、単一粒子により生成されるような短い過渡的事象の分析に適している。TOF分析計は公知であるが、本発明者らは、フローサイトメトリーに現在使用されているTOFまたは他の質量分析計を認識していない。商品化されているICP−TOF−MSは、極質量分析計に比べて数十〜数百倍の低感度であり、これは少なくとも一部は、イオン光学系およびTOF加速領域の極めて大きい空間電荷効果と、負荷サイクルの非効率とに起因する。適切なイオン光学系および本明細書に記載された他の概念を採用することにより、これらの欠点は軽減されるであろう。
【0085】
別の有用なサイトメーター構成は図3に示されるOES FC 151である。このOES FC 151とMS FC 101との差は、前者では、気化された粒子から発生する原子およびイオンの両方から放出される光が、集光されて、アレイ検出器を備える光学分光計に送られることである。OES FC 151のICP実施態様においては、放出光は、rf負荷コイルの上方の特定の「高さ」(好ましい観察高さはプラズマ状態の関数であるが、安定なICP状態では安定している)にあるICPによって半径方向に集光されるか、あるいは、図3に示したように、プラズマを通して注入装置(通常は、ガスのカーテンフローで冷却された観察インターフェイスを必要とする)を見下ろすことにより軸方向に集光される。半径方向および軸方向に観察されるICP−OES測定器の構成および使用は、当業者には公知である。
【0086】
本発明によるサイトメーターと従来の蛍光発光に基づいたフローサイトメトリーとの差は以下のとおりである:(1)細胞またはビーズまたは分析対象物が、蛍光色素よりもむしろ元素でタグ付けされる;(2)細胞またはビーズが気化、原子化および(要すれば、しかし通常は最適条件の下で自然に)イオン化され、それが検出される細胞およびビーズの元素成分である;(3)放射を誘発する励起が、蛍光色素の吸収帯におけるレーザ励起よりもむしろICP(対流および/または電子衝突加熱)から得られる;(4)周期表のほぼすべての元素が、ICPの動作条件下で励起されて蛍光発光(原子またはイオンのいずれか)するのに対して、従来のフローサイトメトリーにおける多重蛍光物質励起は一般に、2つ以上の励起レーザを必要とし、各レーザが、励起レーザの波長に一致する吸収帯を有する1つまたは複数の蛍光色素を励起する;(5)放射光が、例えば1次元または好ましくは2次元のエッシェル(eschelle)回折格子またはプリズムによって散乱され、検出器アレイ(例えば、CCDカメラ)で集光されるのに対して、従来のフローサイトメーターは帯域通過光学系を用いて、各蛍光色素に対する「最小干渉」波長を選択する;および(6)ICP−OESにおける放射波長が、蛍光発光に基づいたフローサイトメトリーの波長に比べてより狭く、そして原子相互間の干渉が少なく(放射スペクトルの優れた分解)、かつ容易に回避(代替の放射波長を選択することにより)されるように、一般に複数の使用、検出可能な波長がある。
【実施例1】
【0087】
白血病幹細胞を特異的標識化するためのアプタマーの開発
白血病幹細胞およびそれらの前駆細胞は精製することができる[10]。これらの細胞は、組み合わせスクリーニングの新規方法を用いて幹細胞および前駆細胞に対して選択することにより、アプタマー選択のターゲットとして使用できる。選択されたアプタマーは、そのスクリーニングの多重分析に係る他のアプタマーとの交差反応性に対して試験および選択される。アプタマーは、当業者には公知のとおり、識別可能な安定な同位元素タグを用いて標識化できる。
【実施例2】
【0088】
標識化MO7E細胞株の調製
慢性骨髄性白血病からのp210 bcr/ablチロシンキナーゼ融合タンパク質で形質導入された均一なMO7E細胞株が使用される。この細胞はCD33表面マーカーを発現し、また内部に多量のp210を含む。このマーカーは、市販されているタグ付きキット(NanoGoldTM、DELFIATM)を用いて好適にタグ付けされた抗体またはアプタマーでタグ付けできる。タグ付けされたアフィニティー生成物は固定された透過性細胞を用いて培養できる。
【実施例3】
【0089】
四重極ICP−MSに基づいたフローサイトメーターの準備
概念の説明は、四重極に基づいたICP−MSおよび実施例2のタグ付けされた細胞を用いて達成できる。
フローセルは、直接注入噴霧器またはシース−フロー非イオン化ナノスプレイヤーに基づいて構成できる。市販のフローサイトメーターは、蛍光に関連する部分を除いて改良を加えることで、利用可能である。
【0090】
タグ元素の1つの質量/電荷における単細胞監視は、走査モードに対する負荷サイクルを向上させ、この結果、細胞事象の多くが観察される。同一サンプル中の、しかし後の時間における第2の表面タグ元素の質量/電荷の後続の測定は、アフィニティー化学作用と検出の独立性を確認するものであり、これは好適な(TOF)検出器を用いる同時測定が可能であることを意味する。内部タンパク質マーカーの観察は、細胞の気化が達成できるという重要な証拠を提供するであろう。内部マーカーが検出できない場合には、インライン溶解を利用することができる。
【実施例4】
【0091】
プロトタイプの単一粒子注入器の開発
図4の注入器171を参照すると、注入器を用いて細胞(あるいはビーズまたは他の粒子)400を緩衝液と共に、ヒーター405で囲まれた脱溶剤チャンバー403内に注入する。緩衝液流は高圧ガスにより霧状化される。緩衝液および細胞(大部分は水)の揮発成分は、脱溶剤工程の間にエアロゾルからガス相に移行され、噴霧ガスの大部分と共に排出口407を通って脱溶剤チャンバーから外に放出される。大抵の場合、噴霧ガス流は注入器(噴霧器)の大きさと設計により制限される。したがって、完全な脱溶剤を達成するために、若干の補充ガスを導入できる。脱溶剤された重い細胞(またはビーズ)は、残りのガスと共に直線状の円筒流路409内に直接入り、EFCの気化器/噴霧器/イオン化装置104に導入される。一実施態様においては、この気化器/噴霧器/イオン化装置はICPプラズマであり、これは、〜1リットル/分のガスを導入できる。したがって、脱溶剤チャンバーと円筒形流路ハウジングとの間の空隙411を調整することにより、脱溶剤およびICPプラズマ中への流れを制御できる。
【実施例5】
【0092】
ICP−TOF−MSに基づいたフローサイトメーターの研究プロトタイプ測定器の準備
ICP−TOF−MS測定器は市場で入手可能である。TOF質量分析計は、例えば稀な白血病幹細胞の多様な分析に有益な同時分析計を備えている。
ICP−TOF−MSは、フローセルを装備できる。図1、2、3に示される測定器および好ましい実施態様に記載された測定器の構成要素は、組み合わせることができる。市販品の関連する構成要素(ELANTM ICP−MSおよびprOTOFTMオーソゴナルMALDI−TOF)は、作動システムの基本として調達できる。作動システムは、サイトメーターのプロトタイプの具体的データ収集の課題に対処するために若干の改良が必要となるであろう;当業者であれば適当な改良点はよく理解される。改良は、迅速、効率的な研究を可能にするように、ICP源およびTOF分析計に対する独立したコンピューター制御システムを操作することで十分である。
【0093】
測定器は、均質な水性サンプルの導入および均質な細胞消化物についての分析性能に関して評価される。ICP−TOF−MSに基づいたフローサイトメーターは、例えば、確立したヒト白血病細胞株(M07e、K562、HL−60)を用いて試験され、サイトメトリック用途の必要性に関する機能が検討される。研究用プロトタイプ測定器のダイナミックレンジ、存在量の感度、過渡信号パルス幅および検出モード(アナログ/デジタル)についての仕様を確立することができる。
以下の実施例では、免疫沈降および洗浄後に、サンプルをHClで酸性にして得た溶液を通常の噴霧化により比較的均質な溶液を生成することが、従来の四重極ICP−MS測定器(連続走査)を用いて証明された。
【実施例6】
【0094】
抗FLAG M2アガロースビーズ元素タグ付け免疫測定のダイナミックレンジ
図5はICP−MSとリンクした3×FLAG−BAPの免疫沈降分析の検量線である。M2アガロースビーズは、100μl当たり0.05ng〜1500ngの濃度範囲にわたり連続して希釈した3×FLAG−BAPのサンプルを取り込むために使用された。3×FLAG−BAPは、抗BAP1次抗体および抗マウス−ナノAu2次抗体を用いて検出した。希釈HClを用いてICP−MSサンプリングのナノゴールドタグを溶解した。この結果は、検出信号(金に対する)が抗原(FLAG−BAP)濃度に正比例すること、および少なくとも4.5桁の大きさの線形ダイナミックレンジを達成できることを示す。細胞またはビーズ当たり大きく異なる複製数で現れるバイオマーカーの同時測定を可能にするためには、サイトメトリック用途では大きなダイナミックレンジが重要である。
【0095】
ビーズを使用する利点は、ビーズ標識に従いヒットしたものをビンに入れることができる標識元素のサインによりビーズを識別することができるため、ビーズを導入することにより、全てのビーズとのヒットを発生させることができることである。予測されるレポーター元素の信号は計数され、ビンに入れられ、関連信号が目標とする細胞のサインに一致するとヒット信号を発生する。
【実施例7】
【0096】
ビーズを用いる2つのサイトカインの同時分析
TNF−αまたはIK−6のいずれかに対するFluorokineTM捕捉抗体に結合したビーズを混合し、TNF−αおよびIK−6を含むサイトカイン混合物に曝し、インキュベートし、その後、Eu(抗TNF−αに対し)およびTb(抗IL−6に対し)でタグ付けされたサイトカイン特異的抗体を用いて精査した。HClを用いて洗浄、消化した後、溶液をEuおよびTbについて分析した。図6は、この同時免疫測定試験から得られた検量線を示す。少なくとも3桁の大きさ以上の抗原濃度を有する信号直線性が見られた。
【実施例8】
【0097】
ICP−MSとリンクしたマレイル化免疫測定を用いる2つのタンパク質の同時測定
図7はICP−MS検出器に接続された、Reacti−bind Maleic Anhydride 96ウェルプレート内で実施される直接免疫測定を用いる2つのタンパク質の同時測定結果を示す。この試験では、l×PBS内の2つのタンパク質(ヒトIgGおよび3×FLAG−BAP)を室温で1時間、3回、インキュベートして、無水マレイン酸プレートのウェル表面に結合させた。陰性コントロールは、タンパク質を含まない100μlのPBSとした。該プレートは、1次抗体である抗ヒトFab’−ナノAuおよび抗FLAG−Euを用いて分析し、内部標準として、1ppb のIrおよび1ppbのHoを有する10%HClで洗浄し、酸性化した[11]。均質なサンプルが使用され、そこではICP−MSへの従来の噴霧器導入のために、元素タグが酸性溶液に放出される。なお、ナノゴールドタグを使用するIgGに対する感度は、Euタグを使用するFLAG−BAPの感度に比べてほぼ10倍の大きさであることに注目すべきである;この理由は、各ナノゴールドタグが約70の金の原子(Auはモノアイソトピック(単一同位体)である)を含むのに対し、各Euタグはわずか6〜10のEu原子を含み、Euの2つの天然同位元素(151Euおよび153Euであり、その和が測定される)の間にほぼ等しく分布しているからである。この実施例は、少なくとも2つのタンパク質が同時に免疫反応し、相互干渉なく検出できることを示し、また、感度は抗原の濃度およびタグ当たりの測定された同位元素の原子数により変化することを示している。
【実施例9】
【0098】
質量分析計により単細胞に結合した分析対象物を分析するためのキットの調製
キットは、(1)単細胞に結合した対象とする分析対象物に結合するタグ付けされた生物学的活性物質と、(2)質量分析計による単細胞分析の手順とからなり、組み立てられる。
【実施例10】
【0099】
法科学用途
本発明の方法および装置は法科学用途に利用できる。例えば、本発明の方法および装置を用いて、
抗原血液型(ABO式血液型およびルイス式血液型)を決定し、
体液(血液、精液、唾液)および他のバイオサンプル(全血、血漿、血清、尿、髄液、硝子体液、肝臓または毛髪)を識別し、
組織起源(種、個人識別情報、その他)を決定し、
親子関係を決定する、
ことができる。
【実施例11】
【0100】
輸血医療
本発明の方法および装置を輸血医療に利用して、
A型、B型およびD型の血液型タイピングの不一致を解明し、
幹細胞移植患者における移植白血球の起源を決定し、
移植片対宿主拒絶反応を有する患者のリンパ球の起源を決定する、
ことができる。
【実施例12】
【0101】
フローサイトメーターのICP−MS検出実施可能性試験
本発明者らは、本発明の概念を確証するために実施可能性試験を行った。従来の元素分析用に設計された(したがって、フローサイトメトリー用途には最適化されていない)四重極(連続質量走査)ICP−MS測定器を使用した。この測定器に2点だけ改良を加えた;すなわち、改良したサンプル導入システムを搭載し、オシロスコープを元の検出器システムの信号処理ハードウェアおよびソフトウェアと並列に接続した。
【0102】
サンプル導入システム102,800の概略が図8に示されている。細胞または他の粒子からなるサンプル400を、細管801により小容積噴霧室803に接続されたシリンジポンプを用いて(該噴霧室は凝縮液を除去するための排水管805を有し、かつ直径2mmの注入管807を通りICP内に入る出口を除いてガス出口を持たない)、吸引した。サンプルは50μL/分で注入し、その約半分は噴霧室803から排出され、残りの半分はICPに送られた。本発明者らは、このサンプル導入装置800が、あらゆる事例において高効率で単細胞をICPに送るのに必ずしも最適でないことは認識している。サンプル導入装置800は、分析状況に左右されるが、この事例では、粒子の少なくとも一部をICPに導入し、これにより実施可能性を示すのには十分であった。
【0103】
ICP−MS測定器の個別のダイノード検出器は、アナログまたはデジタル(パルス)のいずれかの信号を供給する。ダイノードチェーンに沿った途中で、アナログ信号は、検出器システムのハードウェアおよびソフトウェアでデジタル出力に変換される。デジタル(パルス)信号は、チェーンの最終ダイノードから取得され、増幅され、その振幅が所定のしきい値を超える信号パルス事象に対応する過渡信号が、検出器システムのハードウェアおよびソフトウェアでカウントされる。検出器システムのハードウェアおよびソフトウェアの構成は、各パルスの出力ではなく、特定の測定期間(最短で約100マイクロ秒)にわたるパルス全体の出力を提供するように構成できる。通常の操作においては、アナログダイノードで検出された信号が、特定のしきい値を超えると、下流のダイノードチェーンが動作しない(デジタル信号検出ができない)。アナログ信号が第2しきい値より大きい場合、検出器ファームウェアが測定器のイオン光学系の電圧を調整し、検出器からのイオンをデフォーカスさせて検出器を保護する。オシロスコープがアナログ出力にタップされ、検出器ハードウェアと並列に作動して、ICP内の単一粒子事象の期間(例えば、最小2〜3ナノ秒から最大数ミリ秒の分解能)全体にわたる過渡事象の測定を可能にする。
【0104】
これらの試験に使用された測定器は、短い過渡期間の間における複数の質量/電荷チャネルの測定能力を持たないため、ICP内の単細胞事象の多重分析は証明できなかった。ただし、単一質量/電荷検出チャネル事象の測定は、サイトメーター用途についてのICP−MS検出器システムの特定の重要特性の立証および評価を可能にした。本発明者らは、これら特性は、測定器構成の選択された実施態様に依存して若干の差を有し、同時質量分析計を用いて、単一粒子の多重分析を可能にする多数の質量/電荷検出チャネルの同時測定容易性のさらなる利点を有し、再生できると考える。
【0105】
実施可能性テスト1:単一粒子事象の検出および電流測定器の感度評価
MO7e細胞株はヒト巨核球性白血病由来の細胞である。MO7eはCD33抗原(67kDaの一本鎖膜貫通型糖タンパク、骨髄細胞表面抗原CD33前駆体(gp67))を発現する。この細胞は細胞当たり約5000〜10000コピーを発現すると考えられる。この細胞株を用いて、個々の細胞を本発明による方法で観測できることを立証し、電流測定器を用いてこの方法の感度を評価した。CD33表面マーカーは、モノクローナル抗CD33(IgGlマウス)およびNanogoldTMでタグ付けされた抗マウス2次抗体(タグ当たり約70Au原子)を使用して検出された。2次抗体染色の効率は約10%と推定される。
【0106】
材料
MO7e細胞をT75フラスコ内で3日間培養した。細胞濃度は血球計を用いて測定し、0.5×106細胞/mlであった。
コンジュゲートされていないモノクローナル抗体の抗CD33。
2mg/mlで供給され、イムノテック社のカタログ番号1134の0.1%アジ化ナトリウムを用いてPBS/BSA中で精製されたIgGl(マウス)アイソタイプ。
Nonogold社のナノゴールド(タグ当たり約70のAu原子)でコンジュゲートされた2次抗マウスIgG。
37%ホルマリンから調製された1%ホルマリン;PBS中で希釈されている。
洗浄および抗体希釈用緩衝剤PBS/1%BSA。
50mM重炭酸アンモニウム緩衝剤、PH8.0。
【0107】
操作手順
チューブをPBS/1%BSA中に1時間浸漬した。MO7e細胞を5分間1500rmp(約200gで)でペレット状にし、5mlのPBS中で再懸濁し、ペレット状にし、洗浄液を廃棄した。
細胞ペレットを3mlのPBS/1%BSA中で再懸濁し、以下のように表記された3つのエッペンドルフ型チューブ(約106細胞/チューブ)に分配した。
1次および2次抗体添加
2次抗体のみ添加
抗体添加なし。
1次抗体をPBS/1%BSA中で1:50に希釈し、氷上で30分間細胞ペレットに添加した。
細胞をPBS/1%BSAで一度洗浄した。
2次抗体をPBS/1%BSA中で1:50に希釈し、氷上で30分間細胞ペレットに添加した。
細胞をPBS/1%BSAで1回、PBSで1回洗浄した。
染色された生細胞を室温で10分間、1%ホルマリン/PBS中で固定し、氷上でこの固定液中に一晩放置した。
抗体を受け入れない細胞は、染色された細胞と調和するようにPBS/1%BSAだけを用いて処理した。
染色されたホルマリン固定細胞を、5分間1500rmp(約200gで)でペレット状にし、翌日、チューブ当たり1mlの50mM重炭酸アンモニウム緩衝剤、PH8.0中で再懸濁した。遠心分離後に上清液を廃棄し、新しい重炭酸塩(0.5〜1ml)を各チューブに添加した。
チューブをゆっくり回してペレットを分解し、5分間放置して大きな凝集体が底に沈殿するのを待ち、細胞懸濁液全体の上部25μLをICP−MS測定器に注入した。
【0108】
観測
個別細胞導入に対するAuの集積信号(パルス検出器)は、300〜500カウント/秒(cps)、2次抗体のみでは100cps未満、抗体なしでは10cps未満、緩衝剤のみでは3cps未満を得た。
図9は、100ppt Rh(1%HNO3)の分離した直接注入と、上記の細胞懸濁液(分離した注入、50mM NH4HNO3)サンプルとの重ね合わせた結果を示す。
図10は、図9に関連するオシロスコープデータを示す。図A(左側)はAr2+(約107cps)信号に対する信号を示す。上側の図形は比較的大きい時間窓(約100μs)をカバーし、この線から平均イオン信号率を測定できる。下側の図形線は単一イオン検出事象におけるパルスを示す(非常に拡大した時間スケールにわたる)。図B(右側)は細胞導入からのAu+を示す。上側の図形は、多重イオン信号パルスが観測されないことを示している。下側の図形線は単一Auイオン検出事象における信号パルスを示す。典型的には、1つだけのイオンパルスが粒子事象時間窓内で観測され、このことは細胞当たり約1つのAu原子のみが平均して観測されることを示唆している。
【0109】
検出効率
本発明者らは、以下の条件、すなわち―約1×106細胞/サンプル、25μL/分でサンプリングする50μL/分での1mL/サンプルがICPに送られる―として算出し、サンプル導入速度を(非常に)近似的に400細胞/秒と概算する。
したがって、本発明者らは細胞当たり約1つのAu原子が観測されると推定する。
使用した測定器の検出効率は、1%硝酸中に100ppt(兆分率、質量/容積)を含むサンプルの連続吸引から得られた信号から予測した。得られた信号は約2000cpsであって、以下の条件、すなわち―100ppt(10−10g/mL、原子量103g/モル、25μL/分でプラズマに送る―として算出してRhの検出効率1×10−5が提示され、2000cpsが観測されるプラズマに送られる2×108原子Rh/秒を生成した。本発明者らは、この効率を以下の事項に帰属する;すなわち、100%イオン化、真空インターフェイスの1%透過(中心プラズマの100%がサンプラーを通って吸入されるイオンを含み、サンプラー流の1%がスキマーを透過する)、10%が四重極質量分析計を透過、したがって約1%がイオン光学系を透過する。(これらの予測から、本発明者らは、サイトメトリック用途における感度の向上は、真空インターフェイス構成の保持を仮定して、主として質量分析計(例えば、高い負荷サイクルを有するTOF)の透過率、およびさらに重要な点は、イオン光学系(先の説明によれば、主として加速光学系および空間−電荷―誘導イオンの除去によって))の透過率を向上させることに集中すべきであると推論する。
【0110】
したがって、細胞当たり1つのAuイオン原子検出事象が得られ、およびこれがRh溶液として同一検出効率で得られる場合、MO7e細胞が、細胞当たり約1400のタグ付けされたCD33マーカーを平均化すると推定される。2つの抗体タグ付けの効率が、約10%であると仮定すると、細胞当たりのCD33の予測数は14000であり、これは先に引用された5000〜10000に整合する。細胞当たり少ないコピー数のタンパク質を検出できるように、高感度を備えることが望ましい。上に提示したイオン光学系の改良に加えて、直接免疫−タグ付け(ここで使用した2抗体サンドイッチと対照的に)が有利であると予測される。
【0111】
本発明者らは、本発明の方法はプラズマ中の単一粒子事象を検出することができると結論付ける。上記の試験は、この方法の感度を向上させるための研究の試みに対するガイダンスを提供する。同時質量分析計は、質量分析計検出器がフローサイトメトリーに与える多くの利点を助長するために必要である。
【0112】
実施可能性テスト2:単一粒子事象の過渡期間の予測
実施可能性テスト1で使用されたMO7e細胞サンプルは、MS FCの設計および最適化に重要な、単一粒子事象の過渡期間の予測の機会を提供する。細胞のNaCl含有量は0.9%w/wと予測される。16マイクロメータ細胞については、これは細胞当たりNaの2×1011原子に変換する。Na検出のこれらの試験に使用された測定器の効率、Rhに比べて低く、約1×10−6である。したがって、単細胞事象については、2×105イオンが検出器に到達するであろう。これは十分に大きい数であり、単一MO7e細胞事象に対応するNaイオンの到達期間が測定できる。
【0113】
単細胞事象により発生する過渡現象が100〜300マイクロ秒のオーダー(単分散された3〜65マイクロメータ粒子に関してOlesikにより報告されたとおり)である場合、(0.7〜2)×109の等価平均カウント率が達成される(それの約2倍のピーク電流)。
図11は幾つかの細胞導入事象の期間にわたりオシロスコープで検出されたNa+信号を示す。図Aに示されるデータは、細胞が30mM CaCl2緩衝剤に導入されたときのNa+信号を示す。図Bに示されるデータは、緩衝剤のみについての結果を表す。観測された信号の変化は、細胞群の細胞サイズ(容積したがってNa含有物)の変化を反映するか、またはNaが含有するMO7e細胞以外の粒子の存在を示す。ただし、本発明の目的にとって重要な観測は、単一粒子事象についての過渡信号が100〜150μsのオーダーであることである。
【0114】
ベースラインが図11に示される2つのデータセット間で大幅に異なっている。この差は、検出された第1細胞が高いしきい値検出器保護回路を始動させ、イオンのデフォーカスを引き起こす事実による。これは細胞当たり予測される2×105Naイオンが、109/秒を超える平均カウント率に対応する約100〜150μsの期間内に到達するため、第2しきい値検出器を始動させるのに十分であるためである。サンプル中に細胞が存在しない場合(図11の右側に示されるデータ)、検出器保護回路は始動しない。イオンの光学的デフォーカスは、約1000の係数でイオン輸送を抑制するように思われるが、これはベースラインデータの差を説明するものであり、これは安定または再現できる(定量的)デフォーカス係数を意味するものではない。
【0115】
MO7e導入事象による100〜150μsの期間の過渡信号は、10ミリ秒当たり約5〜6の頻度、すなわち秒当たり約500〜600細胞の頻度で観測された。これは先になされた予測値、および元のサンプル中の1mL当たり106個の細胞数の予測値に符合する(実施可能性テスト1の操作手順ステップ4、その後のステップ9で約1mL容積に減少する)。
【0116】
この試験から得られる重要な推定は、細胞について予測される大きいNa+信号、またはプラズマを通る粒子の通過結果としてのプラズマイオンの質量分布の変化に関係する効果が、細胞事象発生時にシステムを起動する手段を提供できる。さらに、Na+信号の大きさ(または細胞内の高濃度での他の元素の信号)、またはプラズマを通る粒子の通過結果としてのイオン分布変化に関係する効果の大きさは、粒子の物理的サイズと相関関係があり、これは、標的粒子の識別または粒子群から単一粒子を識別するのに重要である。
【0117】
この試験の重要な結論は、過渡信号が持続時間で約100〜150μsFWHMであることである。これは、ダイナミックレンジを実現するための設計検討事項に密接に関連する。さらに、これは、この期間の過渡信号により特徴付けされる粒子を約3000/秒の割合でシステムに導入できる根拠となる(したがって、1つの粒子に対応する信号が最大50%の時間で存在する)。より小さい細胞およびより小さいビーズは、短い過渡期間を有し、したがって、高い割合での導入を可能にする。
【0118】
実施可能性テスト3:現在のFACSと細胞注入を備えたICP−MSとの比較および細胞全体の気化の立証
本発明者らは、現在のFACSの性能と実施可能性テスト1に記載された細胞注入を備えたICP−MS測定器の性能とを直接比較する機会を得た。さらに、このテストは、細胞内タンパク質のタグ付けを可能にするように構成した;これらの内部タグを検出できる場合、これは、表面タグの気化でなく、細胞全体およびその含有物が気化され、原子化され、イオン化されたことを意味する。
【0119】
これらの試験に使用されたICP−MS測定器は同時検出器でないため、同一(ナノゴールド)タグを各抗原に使用でき、免疫−タグ付けを各サンプルおよび抗原に対して別個のガラス瓶内で実施した。このように、各サンプルに対する各抗原は別個の分析で測定された。サンプルは、実施可能性テスト1に記載されたように、ICP−MSに導入された。
【0120】
細胞注入を有するICP−MS分析におけるサンプルの調製
材料
ヒト単核細胞株:
MO7e親細胞株はヒト巨核球性白血病由来の細胞である。MO7eはCD33抗原(67kDa一本鎖膜貫通型糖タンパク、骨髄細胞表面抗原CD33前駆体(gp67))を表す。細胞当たり約5000〜10000のCD33抗原のコピー。
MBA−1およびMBA−4はp210 BCR/Abl発現プラスミドで形質転換されたM07eの安定クローンである。
HL−60(ATCCカタログ番号CCL−240)、抗CD33モノクローナル抗体の産生において抗原として使用される骨髄性白血病細胞株。
抗体:
抗CD33、マウスモノクロナール、コンジュゲートされていない、IgGl(マウス)アイソタイプ。0.1%アジ化ナトリウム(イムノテック社のカタログ番号1134)を用いてPBS/BSA中で精製され、2mg/mlで供給。
抗IgGl2a、マウス、(BD PharMingen、カタログ番号555571)(0.5mg/mlストック)
ウサギで生成された抗BCR抗体(Cell Signaling Techカタログ番号3902)、フローサイトメトリーに対して1:25で使用。
2次抗体:2001ナノゴールド−抗マウスIgG(NMI)および2004ナノゴールド−抗ウサギFab’(NRF)(Nanoprobes社)を製造業者の薦めに従い(1:50)で使用。
緩衝剤:
BD Biosciences FACS透過性溶液2(カタログ番号347692)
Ca++/Mg++を有するPBS;
PBS/1%BSA
37%ホルマリンから調製された1%および0.5%ホルマリン;PBS中で希釈
50mM重炭酸アンモニウム緩衝剤、PH8.0
操作手順:
チューブをPBA/1%BSA中に1時間浸漬した。
細胞を5分間1500rpm(〜200gで)でペレット状にし、5mlPBS中で再懸濁し、血球計を使用してカウントした。細胞生成量:
M07e−le6/ml
MBA−1−le6/ml
MBA−4−le6/ml
HL−60−le6/ml
生のM07e(チューブ番号1)およびHL−60(チューブ番号2)を氷上で30分間、抗体CD33(1:50)を用いて染色し、その後PBS/BSAで1回洗浄した。抗マウスIgG−Au(1:50)を、氷上でさらに30分間、洗浄された細胞ペレットに添加した。生きた染色細胞を1%ホルマリン/PBS中、10分間室温で固定し、48時間以上氷上でそのホルマリン/PBS液中に放置した。
【0121】
MBA−1(チューブ番号3)、MBA−4(チューブ番号4)、M07e(チューブ番号5)は透過処理し、FACS透過性溶液2中、10分間室温で固定した。1回洗浄後、細胞を10%FBSを用いて媒体中でインキュベートし、非特異的抗原部位を15分間室温でブロックした。
透過処理した細胞を抗BCR抗体(1:25(チューブ番号3,4,5)または非特異的IgG(チューブ番号30,40,50 w/o 1次抗体)を用いて、45分間室温で処理した。2次抗体を洗浄された細胞抗ウサギ−IgG−Au(1:50)に45分間室温で添加した。
染色された細胞を0.5%ホルマリン中での後固定の前に2度洗浄し、ホルマリンを50mM重炭酸アンモニウム緩衝剤に置きかえたときは、MS分析する前に週末の間、冷蔵庫内に保存した。
【0122】
FACS分析に対するサンプルの調製(上記と同時に実施)
材料
抗体:
抗IgG1−FITCマウスアイソタイプ(BD PharMingen)
マウス内で産生された抗CD45−FITC抗体(BD PharMingen)をフローサイトメトリーに対して1:50で使用。
CD45はすべてヒト白血球上で発現される。FACS設定のために陽性サンプルとして使用した。
2次蛍光抗体:抗マウスIgG−FITC(BD PharMingen)および抗ウサギFITC(Biolab)を(1:50)で使用した。
緩衝剤:
BD Biosciensces FACS透過性溶液2(カタログ番号347692)
Ca++/Mg++を有するPBS;
PBS/1%BSA
37%ホルマリンから調製された1%および0.5%ホルマリン;PBS中で希釈
50mM 重炭酸アンモニウム緩衝剤、PH8.0
操作手順:
細胞調製および1次抗体染色は、le6細胞/ml/チューブを用いてICP−MSに対するサンプルと並列に実施した。
蛍光2次抗体染色および細胞洗浄の全手順は、暗所で氷冷下、実施した。
最終PBS洗浄細胞をPBS(ホルマリンでない)中で再懸濁し、直ちにFACS(BD FACSCalibur)により処理した。
ゲートおよび設定は、正(R4)チャネルとして抗CD45−FITC染色HL−60を用い、負(R3)チャネルとして抗マウスIgG−FITC染色HL−60を用いて測定した。
【0123】
観測
ICP−MS検出(灰色)および従来のFACS(白色)の両方の結果が、図12にまとめて示されている。ICP−MSによる3重分析の標準偏差はエラーバーに示され、FACSについての等価不確実性は示されていない。
CD33(MO7eおよびHL60上の表面マーカー)およびBCR(MO7e、MBA1、MBA4における内部マーカー)は、FACSおよびICP−MS検出器の両方により測定した。これは細胞全体(透過処理した)およびそれら細胞の含有物がICP−MS内で気化、原子化、イオン化されたことを意味する。さらに、FACSおよびICP−MSの結果の大部分は、表面および内部マーカーの両方に対して、ならびに処理空白に対して主としてむしろよく一致する。
【0124】
本発明者らは、これらの結果から、FACSおよびICP−MS検出(現在の非最適測定器を使用する)は、単一抗原分析に匹敵する結果を提供する、と結論付けている。ICP−MS検出器の感度は上記したように向上し、同時質量分析計の組込みが高度な多重分析を可能にすると予測される。これはまた、この試験で使用されたMO7e、MBA1、MBA4細胞が効率的に気化、原子化、イオン化されたことを立証している。これは上記の任意のインライン溶解装置が、これらの細胞または同様の細胞に対しては必要がないことを示している。
【0125】
実施可能性テスト4:元素タグ付けされたビーズの作成および検出
多重分析に関する別の方法は、抗原を固定する様々な識別可能ビーズを使用することである。ビーズは概して、それらの表面に結合した捕獲親和剤(例えば、抗体)を有する。サンプルに曝された後、ビーズ−抗原複合体は、一般に、上記のとおり(本明細書内や2002年7月4日付け米国特許第2002/0086441号で公開された米国特許出願第09/905,907号および第10/614,115号)、元素または同位元素でタグ付けされる第2アフィニティー生成物(抗体、アプタマー等)に曝される。ビーズはそれらの元素組成(表面元素標識およびカプセル化された元素標識またはビーズ材料中に組み込まれた元素標識であってもよい)により識別される。ビーズの識別は、ビーズまたはサンプルに結合した捕獲親和剤の種類と連動している(例えば、異なる元素標識を有するビーズは異なるサンプルに曝されるか、あるいは96−または384−または1536−ウェルプレートの異なるウェル内に置かれる)。したがって、2次アフィニティー生成物タグを検出することにより、抗原の存在が測定され、そしてビーズの元素組成(元素標識)は、どの抗原が捕獲されるのか、あるいはその中に抗原が捕獲されたサンプルを指摘している。この方法は、Luminexに譲渡された米国特許第6,524,793号や、そこに引用されている文献を模倣している。
【0126】
ビーズは任意の適当な材料(例えば、ポリスチレン、アガロース、シリカ)であってもよい。各ビーズは1つまたは複数の親和性捕獲剤を含み、該ビーズ上に捕獲された抗原の多重分析が実施される。ビーズ内またはビーズ上に組み込まれた元素標識は、単一元素または同位元素、あるいは好ましくは、元素または同位元素の組み合わせであってもよい。例えば、検出器のダイナミックレンジが3桁の大きさであり、3つの要素の信号レベルの差が精度よく検出される場合、2つの元素標識は様々な比率で組み合わされて、63の識別可能なビーズを提供できる。同一条件の下で、5つの元素標識は、32,767の識別可能なビーズを提供できる。ダイナミックレンジが5桁で、信号中の3つの要素に対する5つの元素標識が精度よく検出される場合、248,831の識別可能なビーズが構成される。なお、ビーズはその目的のために使用される装置内(例えば、ICP)での完全な気化、原子化およびイオン化に適した大きさに製造できることが認識されている。また、より小さいビーズはより短い過渡期間を提供し、したがって、使用される特定粒子に対して粒子の導入速度を最適にできる。
【0127】
この方法の実施可能性を立証するために、直径約150nmのストバーシリカ粒子を各種ランタニド類(Ho、Tb、Tm)の溶液中で成長させた。このランタニド元素をシリカル粒子内に取り込んだ。シリカ粒子(ビーズ)は、実施可能性テスト1に記載したように、連続してICP−MS測定器に導入した。使用した測定器は、同時複数元素分析の能力がないため、ランタニド類およびシリコンに対する過渡信号は、様々なビーズに対して個別に測定された。
【0128】
図13は取得データの一部を示す。左側の図のデータは、Si+の検出を示し、ビーズが気化、原子化、およびイオン化されることを明瞭に示している。右側の図のデータは、Tb+の検出(Tb溶液中で成長したビーズ)を示している。Tb標識は、明瞭に検出される。種々のランタニド標識を有するビーズの混合物がサンプリングされる場合、種々のランタニド信号が種々のビーズを識別する。これはまた、ビーズが混合ランタニド類(または他の元素)の溶液中で成長でき、種々の元素を組み込むであろうことは明白であり、これにより、上記したよう、識別可能な多数のビーズが提供される、同時分析計のさらなる有用性は、ビーズ自身に結合した元素や、捕獲された抗原を認識する2次アフィニティー生成物に結合したタグに結合した元素を同時に検出できることである。
【0129】
したがって、ビーズ内の元素を検出できる(すなわち、ビーズがその原子成分に気化される)。元素内部「標識」の様々な組み合わせを用いて、ビーズを識別できる。仮にこれらビーズが、様々な抗原と結合する様々な表面抗体を保持し、これら抗原が異なるレポータータグを含む別の抗体により認識されるならば、多重分析は可能となる。あるいは、いろいろに標識化されたビーズは、同一表面抗体と共に使用できるが、異なるサンプル(96ウェルプレートなど)には異なるビーズを適用することにより、標識化されたアフィニティー生成物に関連する信号が、ビーズ組成に対応する信号で示されるサンプル中の抗原濃度を識別できる。
【0130】
上記した本発明の特定の実施態様に対しては、クレームに定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの修飾、変形、適応が可能である。
【0131】
参照文献
以下の出版物はここに引用することにより本明細書に取り込まれるものとする。
1.Hanayama,R.;Tanaka,M.;Miwa,K.;Shinohara,A.;Iwamatsu,A.;Nagata,S.; Identification of a factor that links apoptotic cells to phagocytes(アポトーシス細胞を食細胞に関連付ける因子の識別),Nature 2002,417,182−187。
2. Reif,K.;Ekland,E.H.;Ohl,L.;Nakano,H.;Lipp,M,;Forster,R.;Cyter,J.G.; Balanced responsiveness to chemoattractants from adjacent zones determines B−cell position(近接ゾーンからの化学誘引物質に対する平衡応答がB細胞位置を決定する),Nature 2002,416,94−99
3. Heppner,F.L.;Musahl,C.;Arrighi,I.;Klein,M.A.;Rulicke,T.;Oesch,B.;Zinkernagel R.M.;Kalinke,U.;Aguzzi,A.; Prevention of scrapie pathogenesis by transgenic expression of anti−prion protein antibodies(抗プリオンたんぱく質抗体のトランスジェニック発現によるスクラビー病の予防), Science 2001,294 178−182。
4. Shinkai,K.;Mohrs,M.;Locksley,R.M.; Helper T cells regulate type−2 innate immunity in vivo(ヘルパーT細胞がin vivoでタイプ2型の先天性免疫を調節する),Nature 2002,4420,825−82917,182−187。
5. Marx,J.;Mutant stem cells may seed cancer(変異幹細胞が癌の原因となる可能性がある),Science 2003 301:1308−1310。
6. Lapidot,T.C.Sirard J.Vormoor,B.Mudoch T.Hoang,J.Caceres−Cortes,M.Minden,B.paterson,M.Caligiuri,and J.E.Dick; A cell initiating human acute myeloid leukaemia after transplantation into SCID mice(SCIDマウスへの移植後にヒト急性骨髄性白血病を発生する細胞),Nature 1994,367,6464:645−648。
7. Meldrum,D.R.;Holl,M.R.; Tech.Sight. Microfluidics. Microscale bioanalytical systems(マイクロ流体:マイクロスケールバイオ分析システム),Science 2002,297 1197−1198。
8. Schenk,T.;Molendijk,A.;Irth,H.;Tjaden,U.R.;van der,G.J.;Liquid chromatography coupled on−line to flow cytometry for postcolumn homogeneous biochemical detection(ポストカラム均質生化学的検出のためのフローサイトメトリーにオンライン接続された液体クロマトグラフィー),Annal.Chem.2003.75,4272−4278。
9. S.D.Tannar.; Space charge in ICP−MS: Calculation and implications(ICP−MSにおける空間電荷:計算および推測),Spectromchimica Acta 1992 47B: 809−823。
10. Mazurier,F.;Doedens,M.;Gan,O.I.;Dick,J.E.; Rapid myeloerythroid repopulation after intrafemoral transplantation of NOD−SCID mice reveals a new class of human stem cells(NOD−SCIDマウスの大腿骨内移植後のミエロエリスロイドの急速な再生は、ヒト幹細胞の新しいクラスを明らかにする),Nat.Med.2003,9,959−963。
11. Quinn,Z.A.;Baranov,V.I.;Tanner,S.D.;Wrana J.L.; Simultaneous determination of proteins using an element−tagged immunoassay coupled with ICP−MS detection(ICP−MS検出結合元素タグ付け免疫アッセイを用いるタンパク質の同時測定),J.Anal.Atom.Spectorom.2002,17,892−896。
【0132】
[関連出願]
本出願は、2004年3月25日に出願された米国仮特許出願第60/555,952号「発明の名称:元素分析とリンクしたフローサイトメトリーニオケル方法および装置(Method and Apparatus for Flow Cytometry Linked with Elemental Analysis)」の利益を主張するものであり、この引用により上記仮出願の全内容が本明細書に取り込まれるものとする。
【0133】
本発明の譲受人に譲渡された、2001年7月17日に出願された米国特許出願第09/905,907号(公開番号US2002/0086441)の発明の名称「タグ付けされた生物活性物質の元素分析(Elemental Analysis of Tagged Biologically Active Materials)」および2003年7月3日に出願された米国特許出願第10/614,115号(公開番号US2004/0072250)の発明の名称「タグ付けされた生物活性物質の元素分析(Elemental Analysis of Tagged Biologically Active Materials)」の全内容は、引用することにより、ここに本明細書に取り込まれるものとする。
【0134】
1999年6月18日に出願された米国特許第6,524,793号の発明の名称「臨床検体の多重分析装置と方法(Multiplexed Analysis of Clinical Specimens Apparatus and Method)」、および1998年7月30日に公開された国際特許出願公開番号WO98/33203号の発明の名称「飛行時間型分光計における荷電粒子を除去するためのゲート(Gate for Eliminating Charged Particles in Time of Flight Spectrometers)」、および本願明細書の参照セクションで引用された各刊行物は、引用することにより、ここに本明細書に取り込まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明による質量分光計に基づいたフローサイトメーターの概略図である。
【図2】本発明による質量分光計に基づいたフローサイトメーターの実施態様の概略図である。
【図3】本発明による発光分光計(OES)に基づいたフローサイトメーターの実施態様の概略図である。
【図4】本発明による単一粒子注入装置の概略図である。
【図5】α−BAP1次抗体およびAuタグ付きα−マウス2次抗体へのアガロースビーズ固定化を用いるflag−BAPについての検量線である。
【図6】対応する1次抗体上で識別可能な(EuおよびTb)元素タグを用いて、同時にTNF−αおよびIL−6を検出する、Fluorkineビーズ分析のプロットである。
【図7】2つの蛋白質の同時定量化を示す、ICP MSに連係されたELISAに基づいた分析プロットである。
【図8】サンプル導入システムの概略図である。
【図9】100ppt Rh(1% HNO3)の標準溶液、および表面抗原CD33がAu粒子でタグ付けされたMO7E細胞浮遊液の直接注入に対し、時間の関数としてイオン信号を測定した結果を重ねて示す。
【図10】表面抗原CD33が、Au粒子でタグ付けされたMO7e細胞導入からのA(左側):Ar2+信号およびB(右側):Au+のオシロスコープ出力である。
【図11】Na+を連続的に監視する間に記録されたオシロスコープからのアナログ信号を示す。A(左側):30mM CaCl2における細胞浮遊液、およびB(右側):30mM CaCl2緩衝液。
【図12】従来のFACSおよび本発明の方法の両方による細胞表面蛋白質および細胞内蛋白質の分析における比較データを示す。
【図13】Tb溶液の存在下で成長したストバーシリカ粒子におけるSi+信号(A:左側)およびTb+信号(B:右側)を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光分析法によって、粒子、例えば、単細胞または単ビーズを連続的に分析するための装置および方法に関する。詳細には、本発明は元素のフローサイトメーターを提供する。
【背景技術】
【0002】
単一粒子、例えば、単細胞または単ビーズを分析する能力は、健康科学、人間および動物の食品科学、環境科学、法科学およびゲノミクスおよびプロテオミクスにおいて有益なツールである。
【0003】
健康科学において、細胞は、診断または生物医学研究目的のためのある特定クラスのメンバー、例えば正常細胞または癌細胞として認識される。細胞は、細胞外または細胞内[2]で、複数の抗原またはバイオマーカー[1]を保持し、それら抗原またはバイオマーカーは臨床医学[3]または生物医学研究[4]の目的のために定量化または定性化される。これらの方法は、特に、細胞に基づいた評価および毒性研究の開発における医薬品の開発に対して有益である。
【0004】
例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)はB細胞の特異の疾患と認識されている[5、6]。CLLは不確実な臨床像を伴う病気であり、しばしば誤診され、不適切な治療をもたらす。しかし、患者細胞の免疫表現型プロファイルのさらに詳細な研究により、患者の再分類を可能にし、これにより一層個人向けの診断および治療を可能にする。このような分類は、細胞膜ならびに細胞内の抗原についての多重目標分析と、それらの定性的および定量的な記述と、微小濃度変化の検討とを必要とする。
【0005】
健康科学における他の例としては、非ホジキンリンパ腫の細分類における単細胞の分析を含む。さらに、単細胞分析は、ヘルパーT細胞の免疫表現型のタイピング、およびHIV陽性患者におけるHIVの進行の度合いを示す、CD8T細胞に対するCD4の比率の測定において有効である。さらに、上記技術を用いて、手術後の患者における移植片拒絶反応とウイルス感染を識別するために、腎臓、心臓および骨髄の移植患者からの単細胞を分析するのに使用することができる。
【0006】
人間および動物食品科学においては、単細胞分析を利用して、人工合成ホルモン、農薬、除草剤または抗生物質を検出できる。最後に、環境科学においては、単細胞分析により、例えば、工場内の有害廃棄物または細菌細胞を検出できる。
【0007】
単細胞分析の公知の方法としては、蛍光活性化細胞分類装置(FACS)によるものである。FACSは、単細胞を走査することにより、単細胞がレーザビームを通過するときの細胞の生物学特性を測定する技術である。細胞は通常、対象とする細胞成分、例えば、細胞表面の受容体や細胞核のDNAに特異的な1つまたは複数の蛍光色素を用いて着色され、各細胞の蛍光は、細胞が励起ビームを横切るときに測定される。放出される蛍光量は細胞抗原に結合した蛍光プローブの量に比例するため、蛍光色素に結合した抗体は常套的に、細胞上および細胞内で定性的および定量的の両方で抗原を測定するための試薬として使用される。主として、研究者はFACS機の選別機能を利用して、特定の細胞集団の細胞受容体および他の膜抗原を検査する。選別機能は複数の細胞株において同時に抗体スクリーニングするために使用される(例えば、対象とする抗原を発現するトランスフェクションされた細胞株および抗原を発現しないコントロール細胞株)。単純化されたフローサイトメトリー機能においては、FACS機は、大抵の場合、選別なしに使用され、例えば、固定化された透過性細胞の使用および細胞内抗原の分析を可能にする。特定の抗体を使用して細胞表面および細胞内に発現している抗原を識別する常套的な多くのフローサイトメトリー方法や、臨床診断および治療のための普遍的な免疫測定法が開発されている。それらのいくつかは、様々な蛍光色素およびレーザの使用による多重化を含んでいる。この方法の欠点は、細胞染色方法の限界および困難性や、蛍光色素スペクトルの重なりと関係している。他の測定可能な光学的パラメータには、光吸収および光散乱を含み、後者は細胞の大きさ、形状、密度、粒度および色素取り込み量の測定に利用できる。
【0008】
2002年7月4日に公開番号US2002/0086441として公開された米国特許出願第09/905,907号および同第10/614,115号は、質量分析法による分析における分析対象物の標識化について開示している。生物活性物質(例えば、抗体およびアプタマー)は分析に先立って分析対象物質に標識化され、結合される。
【発明の開示】
【0009】
一般的な一態様では、本発明は、粒子を連続的に導入し、分光分析法によって粒子(例えば、単細胞または単ビーズといった単一粒子)を分析する装置を提供する。該装置、すなわち元素のフローサイトメーターは、連続的に単一粒子を導入する手段と、粒子または粒子に結合した元素タグを気化、原子化、および励起またはイオン化させる手段と、気化、原子化、イオン化および/または励起された粒子の元素成分、または粒子に結合した元素タグを分析する手段とを含む装置である。
【0010】
なお、用語「単一粒子を連続的に導入する手段」が使用されているが、これは、個別の「パケット」内に所定の数の粒子(例えば、2つ以上)を導入することを含んでいると理解すべきである。
【0011】
さらに、用語「気化、原子化および励起またはイオンさせる手段」は、原子化が必ずしも必要ではなく、したがって、この用語は、直後にイオン化が続く気化を含むか、または含まないこともあることを理解されたい。いくつかの用途、例えば、発光分光分析(OES)などにおいては、サンプルをイオン化するのが必須ではなく、原子種からの発光で十分である。OESについては、原子(またはイオン)を励起して発光を生じさせることだけが必要である。したがって、例えば「気化、原子化およびイオン化」は、気化、原子化およびイオン化(質量分析について)またはOESについては励起(原子およびイオンのどちらかまたは両方)を意味することを理解されるべきである。
【0012】
別の一般的な態様では、本発明は、連続的に導入される粒子、例えば、単細胞または単ビーズを分光分析により分析する方法を提供する。トリガーは、例えばデータ取得の開始を含む後続の分析を用いてイオン雲の到達を報告する。トリガーは、例えば、光散乱またはイオン電流の変化またはイオン成分の変化に基づいている。
【0013】
本発明の別の態様は、元素のフローサイトメーターであり、この装置は、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置に連続的に粒子を導入する手段と、連続的に粒子を導入する該手段の下流で粒子または粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置と、気化、原子化およびイオン化および/または励起された粒子または該粒子に結合した元素タグを分析する分光計とからなる。
【0014】
本発明の別の態様は、質量分析計に基づいたフローサイトメーターであり、この装置は、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる装置に粒子を連続的に導入する手段と、粒子を連続的に導入する該手段の下流に粒子または該粒子に結合した元素のタグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置と、気化、原子化およびイオン化させる装置の下流に機能的に接続された質量分析計とからなる。
【0015】
本発明の別の態様は、質量分析計に基づいたフローサイトメーターであり、この装置は、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる装置に粒子を連続的に導入する手段と、粒子を連続的に導入する該手段の下流に粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる装置と、気化、原子化およびイオン化させる装置の下流に機能的に接続されたイオン前処理装置と、および該イオン前処理装置の下流に機能的に接続された質量分光計とからなる。このイオン前処理装置は、質量分光計の一部として、好ましくは、その質量分析部の上流に設けてもよい。
【0016】
本発明の別の態様は、発光分析計に基づいたフローサイトメーターであり、この装置は、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置に粒子を連続的に導入する手段と、粒子を連続的に導入する該手段の下流で粒子または該粒子に結合した元素のタグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置と、粒子を気化、原子化および励起またはイオン化させる装置の下流で、気化、原子化および励起またはイオン化された粒子または該粒子に結合した元素タグを分析する発光分析計とからなる。
【0017】
本発明の別の態様は、気化、原子化および励起またはイオン化する装置に連続的に導入される粒子を分析する方法であって、この方法は、粒子または該粒子に結合した元素のタグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置に粒子または該粒子に結合した元素タグを連続的に導入し、気化、原子化および励起またはイオン化された粒子または該粒子に結合した元素タグを分光分析計に導入することからなる。
【0018】
元素タグを用いる単一粒子の標識化またはタグ化は、例えば、米国特許出願第09/905,907号および米国特許出願第10/614,115号に開示されている方法およびシステムを使用して実施され、この両出願を引用することにより本願明細書に取り込まれるものとする。米国特許出願第09/905,907号および米国特許出願第10/614,115号は、質量分析により分析対象物に結合した生物活性物質の分析に関する方法およびシステムを記載している。粒子の標識化およびタグ化に関する他の方法も役に立つ。例えば、粒子がビーズである場合、粒子自体は、ここに開示されるとおり、粒子表面または粒子内のいずれにも標識化できる。
【0019】
本発明の別の態様は、粒子、例えば白血病細胞の分析におけるアプタマーに基づいたアフィニティー生成物を提供することである。交差反応に対するアプタマーを選択することが可能である。これは、アプタマーが弱い交差反応を有するアフィニティー生成物であるため、大規模な、多様な分析に有効である。他の手段は、交差反応に対する抗体を証明することである。
本発明の別の態様は、本発明の方法を実行する試薬およびこれらの方法についての指示書を有するキットを提供することである。
【0020】
本発明の別の態様は、サンプル中の分析対象物を測定するためのキャリアとしてアフィニティー物質を有するビーズを提供することであり、さらに、標識元素またはタグ付き元素を含んでいる。元素タグは分析対象物上、アフィニティー物体上または(および)ビーズ上またはビーズ自体の中に存在する。
【0021】
定義
ICP−MS:誘導結合プラズマ質量分析計である。
FACS:蛍光活性化細胞選別器である。
単一粒子:単一の実体(要素、材料、元素、物質、構造、生体、物体、本体、物品または事物)または所定の数(例えば、2、3または4)の個別の実体の単一のパケットであり、単細胞、単ビーズ、単一細菌、単一ウイルス粒子、単一花粉粒子、チリダニなど単独微細虫を含むがこれらに限定されない。
【0022】
タグ(または標識):例えば分析対象物または分析対象物複合体を順次に認識するアフィニティー生成物への結合により、分析対象物またはその関連分析対象物複合体の存在についての識別可能な信号を提供する化学基である。本明細書に開示されるとおり、タグは、識別可能な信号を提供する元素または同位元素(またはそれらの複数の複製)を含む。タグは、例えば、分析対象物または該分析対象物の複合体と関連付けられ、かつ分析対象物の存在を決定するために測定される、元素または元素の同位元素を含む。タグはまた、例えば、粒子の表面または本体内に設けられるか、または別の粒子に結合され、他の粒子とその粒子を識別するのに役立つ、任意の識別可能な成分(例えば、元素または同位元素またはそれらの複数の複製)を含むことができる。
TOF−MS:飛行時間型質量分析計である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る元素のフローサイトメーターは、単一粒子(または細胞またはビーズの任意の特徴的な部分)、または壊変されるタグ元素の質量−電荷比または発光を利用して細胞またはビーズ上または内部に位置する分析対象物に結合したタグまたはラベルの元素成分を測定することにより、例えば、個々の細胞または微細ビーズを、気化、原子化および励起またはイオン化させる装置に連続的に導入される粒子を識別および定量分析するために提供される。タグは、重要な元素成分のみであるような、任意の化学的特質を取り得る。FACSと比較して、適切なタグの化学的構造は、FACSにおける固有の蛍光を提供するのに極めて重要である。
【0024】
元素のフローサイトメーターは、
粒子を連続的に導入(例えば、細胞ごとまたはビーズごとに)する手段であって、好ましくは離散型事象の分析に適用される手段;
粒子、または該粒子に結合した所定の分析対象物を定量化するために、粒子上または粒子内の、対象とする所定の分析対象物に結合した元素タグ(または分類可能な元素成分)を気化、原子化および励起またはイオン化させる手段;および
粒子、または粒子上の分析対象物に結合した元素タグの元素成分に関する情報を記録する手段
とを含む。これは、例えば、質量分析計(MS)によりまたは発光分光分析計(OES)により実行できる。
【0025】
本発明による元素フローサイトメーターは定量的で分析的な測定器である[7]。これらは、分析方法を利用して、生体サンプルまたは環境サンプルの定量的または定性的分析を行うことができる[8]。
アフィニティー物質を有するビーズは、サンプル中の分析対象物を測定するキャリアとして使用できる。元素タグまたは標識の配置は、分析対象物上、アフィニティー物質上および/またはビーズ自体の上または内部である。
【0026】
元素フローサイトメーターの具体的な実施態様としては、(1)質量分析計に基づいたフローサイトメーター(MS FC)および(2)発光分光分析計に基づいたフローサイトメーター(OES FC)を含む。
質量分析計に基づいたフローサイトメーター(MS FC)は、
粒子を連続的に導入する手段;
粒子および/または該粒子に結合した任意のタグを気化、原子化およびイオン化させる手段;および
気化、原子化およびイオン化された粒子および/または該粒子に結合した任意のタグの元素成分を分析する質量分析計
とからなる。
【0027】
本発明によるMS FCはさらに、質量分析計により分析される前にイオンを前処理するイオン前処理装置を含む。
単一粒子を気化、原子化およびイオン化させる手段は、グロー放電、黒鉛炉および容量結合プラズマ装置または他の適当な装置を含む。好ましくは、単一粒子を気化、原子化およびイオン化させる手段は誘導結合プラズマ(ICP)装置を含む。この理由は、ICP装置がプラズマ中の短い残留時間の間に細胞およびビーズを分解、気化、原子化およびイオン化させる能力を有し、そしてICPが特に、付随する物質に耐性を有し、プラズマガスの組成の変化に対して堅固であり、極めて効果的な有効な噴霧器およびイオン化装置であるからである。
【0028】
イオン前処理装置は、特に、気化器/アトマイザー(噴霧器)/イオナイザー(イオン化装置)内の雰囲気状態と質量分析計内の真空の間のインターフェイスとして作用する。これに加えて、この発生源から生じる極めて強力なイオン電流は、空間電荷が支配的であり、この空間電荷は、質量−電荷比(例えば、Ar+)に基づく加速電位および/または大部分のプラズマイオンの除去により低減される。TOF MSの場合においては、イオン前処理装置はさらに、TOF質量分析計の必要性に対してイオンの流れを調整し、例えば、イオンエネルギー分布を狭くし、質量分析計の軸に近接して平行イオンビームを集束する。
【0029】
質量分析計はどのような質量分析計であってもよい。例えば、四重極、アレイ検出器を備えた磁場型、3Dイオントラップまたはリニアイオントラップ質量分析計であってもよい。好ましくは、質量分析計は飛行時間型質量分析計(TOF MS)である。TOF MSは同時分析器であり、1つの粒子中の対象とするすべての質量を同時に記録できる。
【0030】
発光分光分析計に基づいたフローサイトメーター(OES FC)は、
粒子を連続的に導入する手段;
粒子および/または該粒子に結合した任意のタグを気化、原子化および励起またはイオン化させる手段;および
気化/原子化および励起またはイオン化された粒子および/または該粒子に結合した任意のタグの元素成分を分析する発光分光分析計
とからなる。
【0031】
単一粒子を気化、原子化および励起またはイオン化させる手段は、グロー放電、黒鉛炉および容量結合プラズマ装置または他の好適な装置を含む。好ましくは、単一粒子を気化、原子化およびイオン化させる手段は誘導結合プラズマ(ICP)装置を含む。その理由は、ICP装置がプラズマ中の短い残留時間の間に細胞およびビーズを分解、気化、原子化およびイオン化する能力を有し、およびICPが特に、付随する物質に耐性を有し、プラズマガスの組成の変化に対して堅固であり、極めて効果的な、有効な噴霧器およびイオン化装置であるからである。
【0032】
本発明による元素フローサイトメーターにより実行される処理は、さらに、単一粒子導入の手段と気化、原子化およびイオン化の手段との間にインライン分析工程を含む。
次に、実施態様を詳細に説明する。
【0033】
最も一般的な態様において、本発明は、フローサイトメーターのための検出器として元素分析器を備える。図1は、本発明の分析方法を実施する用途に適したサイトメーター100を示している。サイトメーター100は、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置104の上流に機能的に接続される、例えば、粒子を連続的に導入する手段102、例えば細胞または粒子注入器171(図2、3、4)を含む。粒子または元素タグの元素成分は、装置104に機能的に接続される分光分析計106により測定される。分光分析計106は、例えば、励起される原子および/またはイオンからの発光を検出する光学分光分析計157、またはイオンを検出する質量分析計116を含む。
【0034】
一つの実施態様においては、本発明は、質量分析計に基づいたフローサイトメーター(MS FC)101を提供する。このような実施態様は図2に示されている。
図2を参照すると、質量分析計に基づいたサイトメーター100の実施態様101は、粒子を連続的に導入する手段102、例えば、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置104、すなわち誘導結合プラズマ(ICP)気化器/噴霧器/イオン化装置の上流に機能的に接続された細胞または粒子注入器171を含む。図示された実施態様においては、手段102は任意のインライン溶解システム110を含む。
【0035】
イオン前処理装置112は、この例では、真空インターフェィス114、高域通過フィルター116およびガス充填「冷却」セル118を含み、ICP気化器/イオン化装置の下流に機能的に接続される。
飛行時間型(TOF)質量分析計106、116、126はイオン前処理装置の下流に機能的に接続される。
【0036】
単一粒子を分析するためのこのような実施態様による質量分析計に基づいたサイトメーター101を使用することにより、先行技術のシステムと比較して、大幅に改善された正確性、大きなダイナミックレンジおよび高感度を実現できる。さらに、多数の識別可能な元素および同位元素をタグとして使用できるため、そして質量分析計が極めて高感度(隣接する質量/電荷検出チャネルにおける信号の極めて小さな重なり)を提供するため、先行技術の蛍光発光に基づいた検出のフローサイトメーターに比較して高度の多重化(それぞれが識別可能にタグ付けされる、複数の分析対象物の同時測定)を促進する。さらに、隣接する質量/電荷検出チャネルの高分解度および質量分析計の大きな線形ダイナミックレンジのため、測定器は、所定の分析対象物に対して、および複数の分析対象物の間の両方で、大きなダイナミックレンジを提供する。したがって、多くの場合、一般的なタグ付け部は、分析対象物のコピー数が大幅に異なる分析において使用することができる;このことは、特定の分析に対しては多重分析に使用される複数の蛍光体の成分をしばしば調整し、同等の大きさの放射強度を提供してスペクトルの重なりを最小化しなければならないという、従来の蛍光発光の検出方法とは異なる方法である。したがって、このような実施態様は、研究者および臨床医に、大幅に改良された分析能力および予知能力を提供することができる。
【0037】
本発明のこの実施態様によるサイトメーターの別の重要な用途は、識別可能なビーズを多重評価することであり、この場合には、ビーズは元素成分により識別され、導入されるサンプル中の抗原を認識するアフィニティー生成物を付着し、該抗原はさらに、識別可能な元素を利用するサンドイッチ(または他の)アッセイ法を用いて認識される。
次に、図2の質量分析計に基づいたフローサイトメーター101の主要な構成要素および使用方法を詳細に説明する。
【0038】
タグ付け
ある特定の場合においては、粒子(例えば単細胞)はタグ付けを必要としない。
場合によっては、粒子はタグ付けを必要としない。例えば、単細胞は、質量分析計によりバックグラウンドに対して検出可能な元素を含むかまたは元素に結合されている場合、タグ付けは必要とされない。例えば、バイオレメディエーション(微生物を活用した汚染環境の修復)において、元素種を蓄積している、細菌細胞または植物細胞の分析については、追加のタグ付けは必要とされない。さらに、金属、例えばプラチナまたは金を含む薬剤の細胞内蓄積に対しては、追加のタグ付けを必要としない。
【0039】
単一粒子がタグ付けを必要とする事例
粒子のタグ付けは当業者には公知の多くの方法により実施される。例えば、サクシニミジルエステル部を有する蛍光色素は、蛋白質(抗体)の1級アミンと効果的に反応して安定な色素−蛋白質結合物を形成する。DNAをタグ付けするための第1工程では、アミンが修飾されたヌクレオチド、すなわち5−(3−アミノアリル)−dUTPは、従来の酵素のタグ付け方法を用いてDNAに組み込むことができる。第2工程では、アミンが修飾されたDNAは、アミン反応性蛍光色素を用いて化学的にタグ付けできる。抗体のビオチン化はメルカプト基を標的とする固相化学反応を用いて実施される。これらの方法はよく確立されており、例えば、Molecular Probe社、Pierce Chemical社、他を含む、様々な会社からキット形式で入手可能である。特定の化学反応は放射免疫化学において公知である。例えば、放射性核種(88/99)Yおよび(177)Luを使用することにより、環状ジエチレントリアミンペンタ酢酸無水物(cDTPA)、イソチオシアネートベンジル−DTPA(SCN−Bz−DTPA)または1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン四酢酸(DOTA)(PMID:14960657)を用いて抗体をタグ付けできる。
【0040】
タグ付けされた生物活性物質の元素分析は、引用した参照文献、米国特許出願第09/905,907号および第10/614,115号に開示されている。タグ付けされた生物活性物質、例えば、細胞成分と特異的に反応する抗体およびアプタマー等は、細胞をタグ付けするのに使用される。他のアフィニティー生成物は当業者には公知である。例えば、これらには、抗原、RNA、DNA、リポ蛋白質、糖蛋白質、ペプチド、ポリペプチド、ホルモン等が挙げられる。
【0041】
本発明によるシステムおよび方法の多くの使用において、単一元素または同位元素を用いて生物活性物質(例えば、抗体、アプタマーまたは抗原)のそれぞれをタグ付けすることは好都合であるが、抗体または抗原が複数の元素を用いてタグ付けすることは、当業者には容易に認識されるところである。250を超える安定な同位元素を有する80を超える天然に存在する元素が存在するので、選択される多数の元素、同位元素およびそれらの組み合わせが存在する。例えば、4つの異なる同位元素のみから構成される20の識別可能な3−原子タグおよび10の異なる同位元素から構成される100万の識別可能な15−原子タグまたは5つの異なる同位元素から構成される70−原子タグが存在する。例えば、多くが富化された形で商業的に入手可能であり、アフィニティー生成物のタグ付けに適した、十分な天然存在量の約167の安定な同位元素を含む特定の55の元素が存在する。例えば、ランタニド類および貴金属類の少なくとも50の「フロンティア」同位元素が存在する。これは、組み合わせて識別可能なタグを有する必要性から規定された制限内で、多数の生物学的にタグ付けされる複合体の同時測定を可能にする。タグ元素の相対的な存在量は、分析される所定のサンプル中の元素の相対的な存在量と大幅に異なる場合は、この方法は有利である。「大幅に異なる」ことにより、本発明の方法においては、分析されるサンプルに含まれるバックグラウンド元素全体にわたり目標とする抗体または抗原を検出することが可能であることを意味する。実際、タグ付けされた抗体または抗原の元素相互間の割合の差およびサンプルマトリックスを有利に使用して、サンプルを分析することができる。
【0042】
分析の間に干渉信号を生成しない元素タグを選択することは可能であり、したがって、2つ以上の分析測定を1つのサンプルにおいて同時に実施できる。さらに、元素タグは多くの元素を含むように生成できるため、測定される信号は大幅に増幅できる。
【0043】
タグ当たりの元素または同位元素の複数の複製を使用することにより、特に、例えば、本発明のICP−MS実施態様の使用において、感度を直線的に改善できる。最大23の同時分析対象物の多重分析のために、該タグは、例えば、Ru、Rh、Pd、Ag、In、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Re、Ir、PtおよびAuなどの、天然の同位元素分布を使用して都合よく構成することができる。これらの元素は、大抵の場合、生物学的サンプル中では稀に存在すると予測され、それぞれ、他の元素によりまたは他の元素の酸化物または水酸イオンにより大きく干渉されない10%を超えて天然に存在する少なくとも1つの同位元素を有する。より低い天然の存在量(例えば、143Nd、12.2%)のこれらの同位元素については、アイソトープが富化された同位体を用いるタグ付けは明らかに感度面での利点をもたらす。より高度な多重化が望まれる場合、市販の、富化された同位元素(生物学的システムにおいてありふれたものであると予測されない55の元素の167もの多数である)を用いることにより、可能性を提供する(当然であるが、利用度、費用および同位体の純度に依存する)。例えば、富化された形で取得されるランタニド類および貴金属類だけの少なくとも35の同位元素が挙げられ、これらは生物学的システムにおいてありふれたものと予測されず、相互干渉に関してはほぼ無関係である(ただし、分析対象物の複製数における大きな差が発生する場合はタグ付けするプロトコルの選択において若干の注意が必要になる。例えば、169Tmを用いてタグ付けされる分析対象物の複製数が185Erを用いてタグ付けされる分析対象物に比べて1000倍大きい場合、169TmO+は185Er+の測定に大きく干渉する。この理由は、TmO+が典型的にはTm+信号の約0.07%であるためである(ただし、FACSに関しては、この干渉の一部は、酸化物イオンの断片生成が安定で、測定できるために数学的に補正することができる)。特別な状況では、複数の元素または同位元素を用いて任意の生物活性物質をタグ付けすることは可能である(例えば、理論的には4つの同位元素から構成される20の識別可能な3−同位元素タグがある)。
【0044】
本発明は、ICPを通過する単細胞を分析することにより細胞の生物学的特性を測定するための新規で有力な技術の開発を可能にする。アフィニティー生成物(生物活性物質)として抗体を使用すると、質量分析計により検出されるタグ元素の量は、細胞に結合したタグ付けされたアフィニティー生成物の量に比例する。元素タグに結合した抗体は、常套的に試薬として使用され、定性的および定量的に抗原を測定し、例えば、対象とするマーカーの数においてほぼ無制限である、患者の免疫表現型タイピングのプロファイルを取得する。本発明により提供される別の利点は、分析エラーを生じる可能性のある「サンドイッチ免疫染色」によって抗体の信号を増大させる必要性を低減することである。
【0045】
本発明による方法は、検出器の信号の重なり、制限されるダイナミックレンジ、時間感受性信号、およびある場合には感度などの問題が生じる従来の方法(蛍光発光分析、放射免疫分析、化学ルミネセンス分析など)のアプローチとは異なる。したがって、本発明の方法は、実質的に信号の重なりがない大規模な多重化分析(アフィニティー化学の独立性および交差反応により主として制限される)の可能性を提供する。元素(同位元素)タグが特定のアフィニティー生成物と低量的に結合する場合、ICP−MSの定量的な特性は、同時に複数の抗原を完全に測定するための新しい機会を提供する。
【0046】
上記方法および装置は、例えば、細胞当たり各タグのそれぞれわずか100の複製であっても検出できる。細胞当たり各タグのそれぞれわずか100の複製の検出に対しては、タグ当たり少なくとも70の原子が必要とされると推定される。
【0047】
本発明は、大規模な多重化ビーズの分析を実施する可能性を提供する。現在の蛍光発光に基づいたフローサイトメーターでは、ビーズの分析のために頻繁に使用される。本出願においては、ビーズは典型的には割合を変えた2つの蛍光色素で標識され、典型的には蛍光色素の発光割合により測定される最大約100の識別可能なビーズを提供する(例えば、引用した米国特許第6,524,793号およびその中での引用文献を参照すること)。各ビーズはさらに、ビーズが入っている溶液中の分析対象物を認識するアフィニティー生成物(例えば、抗体)を付着し、異なる「色」の各ビーズは異なる分析対象物に対するアフィニティー生成物を有する。サンプル溶液に露出されると、捕捉された分析対象物は、第3の蛍光色素レポーターを有する別の抗体でサンドイッチされる。このように、フローサイトメーターの分析においては、ビーズを混合することができ、捕捉された分析対象物の複製数は第3の蛍光色素の発光により測定され、分析対象物の識別は蛍光色素を標識したビーズの発光割合により測定される。したがって、通常の蛍光検出器に基づいたフローサイトメーターは、100の高次オーダー(識別可能な「色」の数)として多重化ビーズの分析を実施する。ただし、実際にはかなり少ない数が使用され(おそらく信号の重なりのため)、このことが、蛍光発光強度の割合が大きい(発光波長分布に依存して、例えば、1桁または2桁の大きさ)場合、測定の正確さ(したがって、ビーズの識別の信頼性)を制限する。
【0048】
同様の方法は、本発明による質量分析計に基づいたフローサイトメーターを用いて実施可能であり、この方法によれば、多重化度合いが大幅に増加し、信号の重なりの問題が事実上除去されるという利点を有する。例えば、ビーズは、ビーズの識別を報告するために使用できる元素または同位元素の混合物を取り込むことができる(ビーズの表面上に、あるいは恐らくさらに好都合には、ビーズ本体内のいずれかに)。検出器が3桁の大きさのダイナミックレンジを有し、相対的な信号における3つのファクターを高い信頼性で測定できると仮定すると、ビーズに2つの元素を組み込むことにより63のビーズが識別可能となる。同一の仮定の下で、5つの元素の標識を使用することにより、識別可能な32,767のビーズを提供できるが、ダイナミックレンジが5桁の大きさの場合、同じ5−元素ラ標識は248,831の識別可能なビーズを提供する。さらに、これらの少数の標識化する元素を選択することにより、信号の重なりが存在しないようにすることができ(例えば、元素が少数の原子質量単位より高質量差で現れるように選択することにより)、それにより、広いダイナミックレンジの検出を可能にする。ビーズにより捕捉された分析対象物に対するサンドイッチアッセイは、なお一層異なる元素タグを使用して、それによりまたビーズで標識した元素から容易に識別することができる。さらに、この構成においては、各ビーズはビーズ当たり幾つかの異なる分析対象物を付着する幾つかのアフィニティー生成物を含むことができ、それぞれはさらに別の元素を使用してサンドイッチアッセイにより認識され、複数ビーズの間および単一ビーズ上の両方における多重分析を可能にする。1つの予想される用途としては、96−ウェルプレート(または384−ウェル、または1536−ウェル)に対するものであり、異なって標識されたビーズが各ウェルに提供され、各ウェルのビーズ表面上で元素タグ付き多重免疫測定が実施される。プレート(96または384または1536ウェル)の全含有物はプールでき、フローサイトメトリーにより分析される結果は、したがって、質量分析計タイプの「プレートリーダー」を提供する(その元素組成により測定されるとおり、ビーズの識別は分析が行われるウェルを識別する)。
【0049】
粒子を連続的に導入する手段
サンプル導入システム102は、他のフローサイトメーターサンプル導入システムにおいて現在使用されている幾つかの装置を含むことができる。例えば、現在、フローサイトメトリーに使用している、様々な形式のシース流注入を含む幾つかの、細胞または粒子注入器171システムが存在する。ICPの溶剤充填(典型的には25から80μL/分に対して最適)に対する考慮のため、特定の状況における「空気の流れ」(またはICPの場合、「アルゴンの流れ」)注入器が最適であると考えられる(ただし、現在の設計に関するいくつかの改良は、細胞の凝集を最小化するためには好ましい)。ICP装置を含むここに開示される目的に適するすべてのサンプル導入装置は、現在存在するかまたは以後に開発されるかまたは改良されるかどうかに関係なく、この目的に役立つであろう。
【0050】
発明者らが以下に報告する実施可能な実験については、小容積の噴霧室が採用された(J.L TodohおよびJ.M MermetのJ Anal At.Spectrometry、17巻、345−351頁、2002年に報告された設計概念に類似する)。この噴霧室は、凝縮された液体(使用した浮遊流量では実質的に存在しなかった)を除去するドレインを有し、ICPへの出口を除いて気体の出口を有していない。
【0051】
粒子を連続的に導入する手段は、細胞注入器171を含むことができる。適正な条件の下で、四重極に基づいたICP−MSシステムのイオン源への個々の細胞の導入に細胞注入器171を使用することにより、単細胞イオン化事象の検出性を実証し、細胞全体の導入が、特定の状況における細胞マトリックス全体の気化およびイオン化に関して実施可能であるかどうかを測定する。
【0052】
例えば、白血病の幹細胞は直径約15μmであり、約80%の水を含む。流れるプラズマ源およびイオン化装置を通過する通過時間は、完全なイオン化を可能にするには不十分である。これは内部の蛋白質マーカーの観察ができないことにより指摘される。幾つかのイオン源パラメータ(ガス流、電力、サンプリング深さ)を調整することにより、この欠陥を軽減できる。あるいは、インライン溶解成分を利用できる。
【0053】
なお、励起レーザーを用いる粒子の慎重な整列が重要であるFACS方法と比較して、本発明の方法は、気化器、噴霧器(アトマイザー)およびイオン化装置(イオナイザー)を用いる粒子の整列の緩和を可能にする(後で説明されるが、検出トリガーとして光散乱を利用するのでなければ)ことは注目される。この理由は、特にICPの場合、ICPを供給する注入器チューブ内の粒子の正確な位置は、検出信号にとってはあまり重要でないことによる(粒子を含む中央流路の流れが、加熱により急激に膨張することがその理由の一部であり、また中央流路流のすべてが事実上ICP−MS真空インターフェイスのサンプラーに吸入されることがその理由の一部である)。大部分の中央部分のみが実質的にスキマーを通して輸送されるが、いずれにせよ、真空インターフェイスへのサンプリングの前に中央流路流の実質的な混合が出現する。
【0054】
ICPに導入される粒子全体を気化し、少なくとも部分的に原子化およびイオン化することにより、粒子内に含まれる元素タグ(細胞内のタグまたはビーズ標識)の測定を可能にすることが望ましい。現在の知識で明らかな点は、約1μm未満の直径の固体粒子(例えば、ガラスまたは地質学的物質)、および約10μm未満の直径の液体エアロゾルは、ICPにおいて効果的に気化、原子化およびイオン化され、一方より大きい粒子は部分的にのみ気化されることである。これは、ICPを通る粒子の通過時間が短いため、大きな粒子への熱移動が完全な気化、原子化およびイオン化を可能にするには不十分であると推定される。この結果、約1μm未満の直径のビーズを使用することが好都合である(例えば、以下に説明する発明者らによる実施可能性の研究においては、約150nmのストバーシリカ(stober silica)粒子を使用した)。しかし、しばしば、細胞の直径は10μmより大きい。それにもかかわらず、以下に説明する発明者らによる実施可能性の実験では、この認められる最小の細胞よりも大きな細胞が、実際には、効果的に気化、原子化およびイオン化されることを示唆している。この結果から、発明者らは、ICPを通過する間に急激に加熱されると、細胞は、気化、原子化およびイオン化されるに十分小さい断片に分裂すると推定される。ある特定の事例では、粒子が大きすぎて、効果的な気化、原子化およびイオン化ができない可能性が残り、このことはビーズの細胞内タグまたは元素標識が観察できないことにより示されるであろう。この例においては、幾つかのイオン源パラメーター(ガス流、電力、サンプリング深さ)を調整して、この欠陥を軽減できる。あるいは、インライン溶解成分を利用できる。
【0055】
インライン溶解
インライン溶解システム110は、幾つかの情況下においては、有利に使用される。例えば、全細胞の導入が実施できない場合、インラインの溶解システムの使用が有利である。これは、本明細書に開示される目的に適する如何なる方法によっても実施することができ、当業者に現在知られている多数の方法を含み、細胞破壊をもたらすシース流の液体の酸性化、または浸透圧による細胞破壊を誘発する高純度(低導電率)水のシース流の液体の酸性化を含む。この例では、元素タグは保持され、サンプルを気化、原子化およびイオン化する装置に輸送される。ただし、トランジェントパルスはフローストリーム内での拡散によりわずかに広がる。
【0056】
気化/原子化/イオン化の手段
本明細書に開示される目的に適する任意の手段104、例えば黒鉛炉、グロー放電および容量結合型プラズマは、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化するために利用できる。好ましくは、気化器/噴霧器/イオン化装置は誘導結合プラズマである。事例によっては、気化、原子化およびイオン化および/または励起は、様々な装置および様々な時間(例えば、原子化およびイオン化および/または励起のためにICPと組み合わせた気化のための黒鉛炉内で)に発生する。
【0057】
誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)は、物質の元素成分、特に極微量成分を測定する好ましい手段である。環境(例えば、飲料水、川、海および廃水の分析)、地理(例えば、極微量元素のパターン化)、臨床(例えば、血液、血清および尿中の極微量金属の測定)および高純度物質(例えば半導体の試薬および成分)を含む、様々な用途で受け入れられている。
【0058】
ICP−MSは、質量分析計に誘導結合プラズマイオン化源を接続する。簡単に言えば、サンプル、最も一般的には噴霧により生成されるエアロゾルが、流れているアルゴンガス流に高周波(rf)エネルギーを結合して得られる高温大気圧プラズマ内に注入される。結果として生じるプラズマは、高温(約5000K)および同数の電子および正イオンの比較的高濃度(約1015cm−3)により特徴付けられる。上記したように、噴霧されたサンプル粒子が十分に小さいと仮定すると、サンプルは、プラズマを通過して流れるとき、即時に気化、原子化およびイオン化される。イオン化効率は、元素のイオン化ポテンシャルに対して逆におよび指数的に依存し、周期表の大多数の元素がほぼ100%イオン化される。イオン化されたサンプル成分を含む生成したプラズマは、イオンが中性化学種から分離され、質量分析される場合、真空中に抽出される。「質量指紋」はサンプルに含まれる元素を同定する。検出信号は直接および定量的に、サンプルの元素成分の濃度に比例する。この方法の注目すべき特定の属性には、広い線形ダイナミックレンジ(9桁の大きさ)、優れた感度(1兆分の1以下、またはアトモル/マイクロリットル、検出)、超高感度(四重極分析器に対して隣接する同位元素間の<10−6重なり)、計数−統計−限定された精度、完全な定量化、および付随マトリックスの許容度を含む。
【0059】
ICP−OESは上記した分析を実行する別の好ましい方法であり、サンプルの固体分が約1%を超える場合(1mL/分のオーダーの均質な液体の導入速度に対して)、特に利点がある。ICPにおいて使用される条件は、ICP−MS方法に関して説明されるものと同様である。ICP内で励起された中性原子およびイオンからの放射の検出は、サンプルの元素成分の定量的な測定を実現する。現在の大部分のICP−OES測定器は、周期表の大部分の元素について真の同時測定のためのアレイ検出を備えている。多くの好ましい事例では、ICP−OESは、広いダイナミックレンジおよび優れた分解能の検出チャネルをはじめとする、ICP−MSの望ましい特性のいくつかを保持している。別の例では、元素相互間または分子放射妨害の可能性があるが、このような例では、多くの場合、別の放射波長を利用できる。ここで考えられる用途に対する主な欠点は、その全体的に低い感度(事例によっては、バックグラウンド放射信号により制限される)、および所定の元素の同位元素を識別する能力がないことである。それにも関わらず、ICP−OESは簡単に使用でき、堅固であり、ICP−MSより安価であることが受け入れられ、したがって、本発明の方法に対して適用できる。
【0060】
イオン前処理装置
ある状況下では、例えばMS FCの場合、イオン前処理装置112を使用して、質量分析計のためにイオンを適当な状態に調整することができる。質量分析計は減圧(典型的には10―4トル未満)で作動し、上記したイオン源は典型的にはより高圧(例えば、従来のICPにおける大気圧)で作動するため、イオン前処理装置の1つの機能は、圧力低減工程(真空インターフェイス)によってサンプルから抽出されたイオンを効果的に輸送することである。この工程および後続工程では、引き続いて質量分析計に輸送される中性原子に対するイオンの割合を増加することが望ましい。イオン光学構成要素(イオンレンズ)は典型的には、イオンを局在化し、中性原子が真空ポンプを通して除去されることを可能にして、この機能を果たす。イオン光学系の追加の機能は、イオンビーム(空間およびエネルギー)を調整して、質量分析計への受け入れ条件に適合させることである。
【0061】
高域通過フィルター116および「冷却」セル118は、現存する、多くの適切な前処理形式のうちのわずか2つである。恐らく、他の形式が将来開発されるであろう。ここでの目的に適うあらゆる装置または方法が役立つであろう。
【0062】
プラズマを通過する単一粒子の短い残留時間のため、2つの分離したイオン処理(前処理)および質量分離技術が使用される。
【0063】
ICP源における粒子の気化、原子化およびイオン化の後、対象とする元素を含むイオン雲は、真空インターフェイスを通過し、前処理装置112内で調整される。この装置は、イオン雲から、ある一定のしきい値、好ましくは100m/z未満の質量を有するすべてのイオンを除去する。しきい値は、Ar+、Ar2+、ArO+、NO+、O+等のイオン雲から最も豊富なイオンを除外することにより、イオン雲の空間電荷の低減を可能にする。これは、後続の質量選択および検出(2次干渉、空間電荷問題、走査時間等)において重要である。説明すると、2次干渉は、気化器/噴霧器/イオン化装置の外側での如何なる機構によっても生成する干渉のことである。1次干渉(またはプラズマ生成干渉)は、通常、イオンまたはイオンビーム(流れ)内で多数のまたは高密度で表されるイオンを含むアルゴンまたは酸素である。これらの干渉はイオン流を支配して、それ自体の静電界(空間電荷)を生成するのに十分強力な高い全体電荷密度を生じさせる。空間電荷はデフォーカスを発生させ、分析対象物のイオンの強度を低下させる。干渉は周囲(または特別に導入された)ガスと反応して、同等に強い流れの2次干渉を発生する。1次および2次干渉は、大きいバックグラウンド信号を発生する。1次干渉は主にイオンを含むアルゴンまたは酸素であるため、低い質量−電荷比を有する(m/z<90)。したがって、イオン前処理装置は、この質量範囲内のすべてのイオンを排除するために使用できる。低い質量範囲(m/z=90−250)は、低いイオン数濃度(空間電荷ではない)を有し、反応性が少なく(この質量範囲の元素イオンの特性のため)、走査時間を低減できる(質問するチャネルが極めて少数であるため)。TOF実施態様の場合には、質量範囲内のすべてのイオンがフローチューブを通過するまで待つのに必要な時間が短くなり、より速い走査時間をもたらす。
【0064】
タグの最も確かな成分がしきい値より大きいm/zを有する元素を含むと仮定すると、前処理はタグ分析を干渉しない。前処理装置は、また所定の期間イオン雲を制限し、これにより、質量分析および検出の期間を延長するのに役立つ。好ましくは、前処理装置は、不活性ガスを充填したDRCセル(ダイナミック反応セル)として構成される。当業者には公知のように、イオン化学作用を無視してはならない。測定器軸に近接してイオンを熱し、集束させる(TOFの必要条件に対する前処理)ために使用される衝突ガスは、イオンとの反応のために使用される。これは自然発生する干渉が分解を必要とする(例えば、同一のm/zの2つの元素の同位元素)ときに使用される。元素タグが相互に干渉することは予測されないが、バイオ化合物を含む天然の金属は干渉するまたは干渉を受ける。当業者には公知のとおり、イオン分子化学作用を選択してこの干渉の可能性を低減できる。
【0065】
好適なイオン光学素子の繰返しは、質量分析計に対するICPの連結の最適化のために行われる。イオン光学素子は前処理装置のサブセットを構成する。これらの役割は、通常、イオン経路のある特定位置におけるイオンビーム断面の変形に関連する(例えば、集束、反射、加速等)。好ましくは、質量分析計106は飛行時間型質量分析計(TOF)126である。イオン光学設計には、(1)プラズマガスからのイオンの効果的な抽出(例えば、TOFは高真空を必要とする)、および(2)質量分析計の加速領域へのタグ元素の特異的、効果的な輸送を含む。
【0066】
前者は、真空ポンプのスロート内に直接中性プラズマ種を導入する、直角の真空インターフェイスを使用して行われる。目的特異的な真空システムは、コンポーネントに適応するように設計され、作製される。検出器の構成が組み込まれる。例えば、これは直接prOTOFTMから適用されるか、Perkin−Elmer InstrumentのTDC/ADC(時間−デジタルアナログ/アナログ−デジタル変換器)システムまたは個別の単一チャネル検出器である。
【0067】
後者に関しては、主な制限力は、真空中でプラズマが減衰するときの電荷分離の直後のイオン高電流の相互空間電荷反発力であり[9]、TOF構成では、加速領域においてそれ自体を再度アクティブにし、この結果、分解能および感度の低下を招く。この欠点は、比較的大きい原子量を有する元素タグが、主要なAr+プラズマイオンの質量/電荷より大きいイオンのみを透過する高域通過フィルター(rf−四重極のみ)と組み合わせた加速光学系を用いて対処される。さらに、衝突冷却用セルを組み込んでイオンのエネルギー分布を低減させ、イオン集束を可能にすることは有利であり、これにより、TOF加速器(感度)内での保持および高感度を含むスペクトル分解の両方が改善される。
【0068】
従来の溶液噴霧と比較して、感度で100倍の増加が必要とされる。従来の溶液噴霧は低効率である(約2%(1mL/min(ミリリットル/分))〜30%(80μL/min(マイクロリットル/分))の取り込み)。ただし、サンプルは、プラズマ中に直接注入され、同時に「感度」の向上を伴う。
【0069】
現在のICP−TOF−MS測定器については、2桁の大きさのゲイン(現在の四重極システムより約1桁大きいことを意味する)がさらに要求される。質量分析計に基づいたフローサイトメーターは、重い原子タグの検出には理想的である。約100amuより高質量範囲のみを測定すれば十分である。向上した感度に対してもっとも重大な障害の1つは、主要なAr+イオン(m/z=40)の空間電荷反発力である。本発明の方法は従来の元素分析の要求事項には制限されない(通常の元素分析器の質量範囲は、m/z=4からm/z=250である)ため、高質量イオンの透過のためのイオン光学系を最適化することが可能である。
【0070】
同時測定能力を有する従来のICP−MS(例えば、ICP−TOF−MS126またはICP−イオントラップ−MS)はMS FC101の検出器として適しているが、MS FC101の必要条件は従来の元素分析の用途の要件と全く異なることを認識しなければならない。特に、MS FCの用途においては、測定される(タグまたは標識として)元素は、上記したものに有利に選択され、すなわち、90原子質量単位(amu、dalton、トムソン)を用いて選択される。このような例では、低質量(例えば、Li、B、Na、Mg、Co他)および高質量(例えば、ランタニド類および貴金属類)に対して同時に最適な感度を提供する必要性はない。
【0071】
TOF分析器126を利用するある1つの方法は、加速されたビームは大きい空間電荷制限イオン電流を有するため、プラズマ膨張の比較的早期にイオンビームを加速して、ビームを高域通過濾波することである。これは、加圧されていない四重極タイプの装置の使用を通して可能になる。次に、TOFに注入する前に、劣化したイオンビームを減速することができる(加圧された多重極において衝突冷却されても、潜在的にイオン集束を可能にする)。このような連続抽出ビームの空間電荷制限は十分に高く、高質量イオンに対する感度を10倍に向上させる可能性が予測される。
【0072】
代替法または付随する方法としては、イオンビームをパルス抽出することである。低質量イオンは、所定の抽出領域において高速に加速されるため、Ar+イオン(および廃棄できる低質量イオン)は対象とする高質量イオンより先に走行する。好ましくは、前方を走行するイオンは、イオン光学系領域内を除いて、GBC TOFの「SmartGate」に類似する、直交パルスを使用して廃棄される(例えばWO98/33203を参照)。透過窓は、<100原子質量単位イオンを遮断するのに十分であるため、この事例では正確に定義する必要はない。さらに下流の冷却セルを利用してイオンを集束し、それらのエネルギーを標準化する。直交パルスが問題となる場合、パルス抽出されたイオンビーム全体はTOF抽出範囲に達することができるが、狭い質量窓が同時にTOFに注入される欠点を有する。簡単な計算(少なくとも若干のマージンにより可能性を高く見積り過ぎる)によれば、15%の負荷サイクルパルス抽出器が、電流(80Mcps/ppm)クワッドシステム(quad system)に対して最大28倍(m/z=100)および12倍(m/z=238)の感度の向上を達成できることを示す。これは、イオン光学系を通して100%の透過効率およびTOF(集束を必要とする)の100%の負荷サイクルと仮定する。
【0073】
イオン前処理装置はさらに、粒子事象トリガーを含み、これにより、個別の粒子からデータを取得する測定器質量選択および検出システムを起動し、そして事象間における測定器の活動停止状態を維持する。当業者に知られているように、これは多数の様々な方法で実施することができる。
したがって、イオン前処理装置は
真空インターフェイス;
真空インターフェイスの下流の高域通過質量フィルター;および
真空インターフェイスの下流のガス充填されたイオン冷却セル
とを含む。
【0074】
従来の元素分析器に比べて本発明によるMS FC101の設計を単純化するという特質の中には、様々なサンプルの種類およびマトリックスを許容するイオン化装置(例えば、ICP)の設計に対する必要性を単純化するサンプル(公知の緩衝剤における細胞またはビーズ)の相対的な不変性、ならびに元素相互間のマトリックス抑制効果(例えば、NaおよびCaが細胞の重要な成分であると認識する)に対する補正を提供する必要性と、広い範囲(タグ元素の選択に依存して)で、アルギド(argide)、酸化物および二重荷電イオンに起因するスペクトル干渉の存在に対する補正の必要性とを軽減するサンプルの全元素組成の相対的不変性(ICPの全イオン電流に関する)がある。したがって、本発明によるMs FCは測定される元素の選択性の理由から、一般的な元素分析用途に影響を与えないでサイトメトリック用途に有利に適合できる。例えば、ICP−MSによる従来の元素分析は、真空システム内への抽出、引き続くイオンの相互反発力により支障が生じる;当業者には公知のこの空間電荷効果は、プラズマサポートガスまたはO+、Ar+、ArO+、Ar2+などの豊富な溶剤から得られる低質量イオン、および場合によっては、Na+、Ca+、Cl+など他のサンプルマトリックス成分から得られる低質量イオンの圧倒的に大きなフラックスから主として派生する。なお、空間電荷効果の全体を形成するもっとも重要なこれらのイオンは、約80原子質量単位未満の低質量イオンである。したがって、真空システムへの抽出に続いて出来る限り早くこのような低質量のイオンを除去することが有利である。この理由は、このようにすることにより、空間電荷および他のイオンの透過を抑制するその関連する効果的なポテンシャル場バリヤーを軽減するからである。この軽減を達成するためのいくつかの手法が考えられ、これには、上記した、すなわち80原子質量単位のイオンを透過するように作動する、四重極装置などの高域通過質量フィルターの使用を含んでいる。特に、四重極は、イオン光学系領域に現存する圧力(典型的には約10−3トル)で作動できる。本出願におけるこのようなイオン前処理装置のさらなる利点は、この装置が低域通過質量フィルター機能(すなわち、選択された低質量と選択された高質量の間の帯域通過)を同時に提供するように作動できることである。飛行時間型質量分析計が使用される場合には、この帯域通過フィルターは、負荷サイクルの改善を実現する(感度の向上をもたらす)。この理由は、帯域通過フィルターが、前のパルスから現在のパルスの到達時間分布への高質量イオンの到達の侵入を、および前のパルスから現在のパルスの到達時間分布への低質量イオンの到達の侵入をも最小化するためである(「パルス」は飛行時間型質量分析計の飛行チューブに注入されるイオンパケットを意味する)。さらに、イオンが真空システムの入口(またはプラズマのデバイ長さが装置またはレンズの寸法と等しくなる点の近く)に達した際、可能な限り早くイオンを加速することにより、さらに、空間荷電効果を軽減できる。しかし、イオンが後に減速される場合(例えば、TOFに対する加速領域において)には、空間電荷効果は元に戻り、再度アクティブになり、感度の低減をもたらす。TOFの例においては、飛行チューブの方向にエネルギーが拡散するため、質量分解能が低減する。したがって、高域通過質量フィルターは、好適に設計されるとイオンの比較的高運動エネルギーにおいて機能を発揮でき、例えば、TOF質量分析計126の加速領域において、真空インターフェイスのすぐ下流およびさらに下流の両方で、空間電荷効果を軽減する加速光学系と協働して作動できる。
【0075】
当業者によく知られているように、さらに有利なことは、加圧多極セル(「冷却」セル)118内の非反応性緩衝ガスとの衝突による軸方向のイオンエネルギーの低減は、TOF質量分析における分解能および感度の向上を実現する(また、アレイ検出磁場型質量分析計に対しても同様であると予測される)。再度述べると、「冷却」セル118の前に配置する必要がある高域通過質量フィルター116は、「冷却」セル118と協働して有利に作動できる。この理由は、「冷却」セル118に先行するイオンの帯域通過が、「冷却」セル内では好ましくない(すなわち、感度の低下を生じる)大きい範囲の空間電荷効果を軽減するためである(これは、イオンが「冷却」セル内の衝突により速度が低下し、大量の低質量の「空間電荷誘発」イオンを最初に除去することなく、イオンを低速にすることにより、「冷却」セルの入口近くの空間電荷領域の大きなデフォーカスが突然発生する)。
【0076】
当業者によく知られているように、同重体であり、そのために干渉したり、あるいは干渉されたりするイオンを変質させるために、「冷却」セル118内に反応ガスを含ませることが有利な場合がある(米国特許第6,140,638号を参照)。さらに「冷却」セルを「トラップ・アンド・パルス」モードで作動させて、TOF加速パルスを用いて同期作動するように最適化し、その質量分析計に向上した負荷サイクル(したがって感度)を提供することができる。このように、MS FC 106はイオン加速光学系および高域通過質量フィルターとを有利に組み込むことができる。
【0077】
幾つかの質量分析計実施態様、特に、TOFおよびアレイ検出磁場型構成を含む実施態様については、ガス充填「冷却」セルの使用も有利である。特にTOF構成にとって、高域通過質量フィルターは低質量透過制限および高質量透過制限の両方を備える帯域通過質量フィルターとして有利に作動する。当業者には公知のとおり、高域通過質量フィルターおよび「冷却」セルは、単一ユニットとして組み合わされる(米国特許第6,140,638号を参照)。
【0078】
有利な点としては、最も重要なデータのみを含むように収集されたデータ量を最小化すること、あるいは、負荷サイクルにより制約される質量分析計(例えばTOF)の例においては、対象粒子が検出システムを通過するデータの測定値を整合させることである。従来のFACS方法においては、この整合は、粒子が励起領域を通過するときの光散乱の測定によりほとんどの場合達成できる;この光散乱特性(前方および側方への光散乱)は、診断値もまた有する粒子のサイズおよび粒度の情報を提供する。MS FCまたはOES FC法においては、光散乱を同様に利用できる。
【0079】
励起源がICPである場合、散乱事象は粒子を気化する前に検出される;この結果、信号生成には時間的遅延または空間的遅延に対応する遅延が必要。OES FCについては、これは、気化、原子化、イオン化および放射に必要とされる時間または距離である。MS FCについては、イオン化領域から質量分析計まで抽出されたイオンの通過時間に対応するさらなる遅延が必要とされる。当業者には明らかであるが、質量分析計、例えばアレイ検出磁場型質量分析計を連続的に監視するために、この遅延はアレイ検出器へのイオンの到達に適用されなければならない。例えばTOFおよびイオントラップなど他の質量分析計については、遅延は、例えば、TOFの飛行チューブに先行する加速領域またはイオントラップにイオンを導入するパルシングレンズなど、質量分析計にイオンを導入する装置に適用され、この遅延に対して後続の質量分析および検出が同期化される。
【0080】
MS FC 106に対しては、データ収集にトリガーを供給する別の方法が考慮される。例えば、イオン化装置(例えば、ICP)を通る粒子の通過は、抽出される主なイオンの質量分布における突然の連続的な変化をもたらすことが予測される(例えば、ICP−MSにおける主要なAr+信号は、C+、H+、Na+、Ca+等の同時生成により抑制される)。したがって、例えば、高域通過質量フィルターから放出されるイオン電流またはこのイオン電流放出の空間的位置は、大幅に変化し(様々な質量のイオンの安定性の特性における違いのため)、このイオン電流は、例えば高域通過質量フィルター内または外部の1つまたは複数の電極を用いて検出できる。さらに、検出される電流変化の大きさまたは持続時間は粒子のサイズまたは含有物と関連があり、さらに診断情報を提供できる。
【0081】
例えば、真空システムに抽出されるイオンビームに関連するイオン電流またはインピーダンスまたは磁界の変化を測定する検出器を含む、別のトリガー装置が考えられる。
必要に応じて、例えば高質量フィルターおよびガス充填イオン冷却器などの様々な構成要素を、単一ハウジング内に設けることができる。これにより、例えば、向上した耐久性、ならびに向上した動作、操作および設置品質を提供できる。
【0082】
質量分析計
前処理されたイオン雲は、同時式質量分析計を用いて分析できる。連続的な質量分析(例えば、四重極装置を利用する)もまた可能である。同時式質量分析器の例としては、TOF、3Dトラップおよびリニアトラップを含む。
MS FC 101法の利用が最も有利である(例えば、個別粒子の多重分析)、幾つかの例においては、同時式質量分析計が好ましい。例えば、気化器、噴霧器およびイオン化装置としてICPを使用する例では、単一粒子からの過渡的信号は20から200マイクロ秒の範囲の間、継続し、例えば、四重極質量分析計など連続的な質量分析計を使用する定量的な多重分析を可能にするには不十分である。そのような場合、好ましい質量分析計としては、TOF、アレイ検出磁場型、3Dイオントラップおよびリニアイオントラップが挙げられる。例えば、チューブ長さまたは衝突工程を通る、気化された粒子、原子またはイオンの輸送によって、気化、原子化およびイオン化させる装置の特性または過渡的信号の広がりのいずれかに起因して、過渡的信号の期間が著しく長い他の例においては(D.R.Bandura、VI BaranovおよびS.D.Tanner,J Anal.At.Spect.,2000年,V15,021−928など)、連続的質量分析器の有用性を見出すことができる。
【0083】
ICPに接続される通常の質量分析計106は、四重極質量分析計であり、この主な理由は堅牢性、使用の容易性、および低コストである点にある。ただし、四重極質量分析計は連続走査分析器であって、プラズマ源内の単一粒子からの過渡的信号の継続時間に比較して長い多重分析のためのサイクルタイムを有する。したがって、四重極質量分析計はこのような過渡的期間に相関性のある多重分析対象物信号を送出できない。多くの場合、四重極ICP−MS分析器は、疑似連続流れ内に存在するサンプルの分析のため、例えば霧状化およびレーザアブレーションのために使用される。四重極ICP−MS分析器は、例えば元素全体の信号化を対象とする多くの従来の免疫測定法などのような、均質サンプルの分析に適する。
【0084】
対照的に、図2に示される飛行時間(TOF)分析計126は、所定の時間内でイオンパケットをサンプリングし、それらイオンパケットを、イオンの質量−電荷比の関数であるポテンシャル場中のそれらの速度に従って時間的に拡散する、「同時」分析計であって、単一粒子により生成されるような短い過渡的事象の分析に適している。TOF分析計は公知であるが、本発明者らは、フローサイトメトリーに現在使用されているTOFまたは他の質量分析計を認識していない。商品化されているICP−TOF−MSは、極質量分析計に比べて数十〜数百倍の低感度であり、これは少なくとも一部は、イオン光学系およびTOF加速領域の極めて大きい空間電荷効果と、負荷サイクルの非効率とに起因する。適切なイオン光学系および本明細書に記載された他の概念を採用することにより、これらの欠点は軽減されるであろう。
【0085】
別の有用なサイトメーター構成は図3に示されるOES FC 151である。このOES FC 151とMS FC 101との差は、前者では、気化された粒子から発生する原子およびイオンの両方から放出される光が、集光されて、アレイ検出器を備える光学分光計に送られることである。OES FC 151のICP実施態様においては、放出光は、rf負荷コイルの上方の特定の「高さ」(好ましい観察高さはプラズマ状態の関数であるが、安定なICP状態では安定している)にあるICPによって半径方向に集光されるか、あるいは、図3に示したように、プラズマを通して注入装置(通常は、ガスのカーテンフローで冷却された観察インターフェイスを必要とする)を見下ろすことにより軸方向に集光される。半径方向および軸方向に観察されるICP−OES測定器の構成および使用は、当業者には公知である。
【0086】
本発明によるサイトメーターと従来の蛍光発光に基づいたフローサイトメトリーとの差は以下のとおりである:(1)細胞またはビーズまたは分析対象物が、蛍光色素よりもむしろ元素でタグ付けされる;(2)細胞またはビーズが気化、原子化および(要すれば、しかし通常は最適条件の下で自然に)イオン化され、それが検出される細胞およびビーズの元素成分である;(3)放射を誘発する励起が、蛍光色素の吸収帯におけるレーザ励起よりもむしろICP(対流および/または電子衝突加熱)から得られる;(4)周期表のほぼすべての元素が、ICPの動作条件下で励起されて蛍光発光(原子またはイオンのいずれか)するのに対して、従来のフローサイトメトリーにおける多重蛍光物質励起は一般に、2つ以上の励起レーザを必要とし、各レーザが、励起レーザの波長に一致する吸収帯を有する1つまたは複数の蛍光色素を励起する;(5)放射光が、例えば1次元または好ましくは2次元のエッシェル(eschelle)回折格子またはプリズムによって散乱され、検出器アレイ(例えば、CCDカメラ)で集光されるのに対して、従来のフローサイトメーターは帯域通過光学系を用いて、各蛍光色素に対する「最小干渉」波長を選択する;および(6)ICP−OESにおける放射波長が、蛍光発光に基づいたフローサイトメトリーの波長に比べてより狭く、そして原子相互間の干渉が少なく(放射スペクトルの優れた分解)、かつ容易に回避(代替の放射波長を選択することにより)されるように、一般に複数の使用、検出可能な波長がある。
【実施例1】
【0087】
白血病幹細胞を特異的標識化するためのアプタマーの開発
白血病幹細胞およびそれらの前駆細胞は精製することができる[10]。これらの細胞は、組み合わせスクリーニングの新規方法を用いて幹細胞および前駆細胞に対して選択することにより、アプタマー選択のターゲットとして使用できる。選択されたアプタマーは、そのスクリーニングの多重分析に係る他のアプタマーとの交差反応性に対して試験および選択される。アプタマーは、当業者には公知のとおり、識別可能な安定な同位元素タグを用いて標識化できる。
【実施例2】
【0088】
標識化MO7E細胞株の調製
慢性骨髄性白血病からのp210 bcr/ablチロシンキナーゼ融合タンパク質で形質導入された均一なMO7E細胞株が使用される。この細胞はCD33表面マーカーを発現し、また内部に多量のp210を含む。このマーカーは、市販されているタグ付きキット(NanoGoldTM、DELFIATM)を用いて好適にタグ付けされた抗体またはアプタマーでタグ付けできる。タグ付けされたアフィニティー生成物は固定された透過性細胞を用いて培養できる。
【実施例3】
【0089】
四重極ICP−MSに基づいたフローサイトメーターの準備
概念の説明は、四重極に基づいたICP−MSおよび実施例2のタグ付けされた細胞を用いて達成できる。
フローセルは、直接注入噴霧器またはシース−フロー非イオン化ナノスプレイヤーに基づいて構成できる。市販のフローサイトメーターは、蛍光に関連する部分を除いて改良を加えることで、利用可能である。
【0090】
タグ元素の1つの質量/電荷における単細胞監視は、走査モードに対する負荷サイクルを向上させ、この結果、細胞事象の多くが観察される。同一サンプル中の、しかし後の時間における第2の表面タグ元素の質量/電荷の後続の測定は、アフィニティー化学作用と検出の独立性を確認するものであり、これは好適な(TOF)検出器を用いる同時測定が可能であることを意味する。内部タンパク質マーカーの観察は、細胞の気化が達成できるという重要な証拠を提供するであろう。内部マーカーが検出できない場合には、インライン溶解を利用することができる。
【実施例4】
【0091】
プロトタイプの単一粒子注入器の開発
図4の注入器171を参照すると、注入器を用いて細胞(あるいはビーズまたは他の粒子)400を緩衝液と共に、ヒーター405で囲まれた脱溶剤チャンバー403内に注入する。緩衝液流は高圧ガスにより霧状化される。緩衝液および細胞(大部分は水)の揮発成分は、脱溶剤工程の間にエアロゾルからガス相に移行され、噴霧ガスの大部分と共に排出口407を通って脱溶剤チャンバーから外に放出される。大抵の場合、噴霧ガス流は注入器(噴霧器)の大きさと設計により制限される。したがって、完全な脱溶剤を達成するために、若干の補充ガスを導入できる。脱溶剤された重い細胞(またはビーズ)は、残りのガスと共に直線状の円筒流路409内に直接入り、EFCの気化器/噴霧器/イオン化装置104に導入される。一実施態様においては、この気化器/噴霧器/イオン化装置はICPプラズマであり、これは、〜1リットル/分のガスを導入できる。したがって、脱溶剤チャンバーと円筒形流路ハウジングとの間の空隙411を調整することにより、脱溶剤およびICPプラズマ中への流れを制御できる。
【実施例5】
【0092】
ICP−TOF−MSに基づいたフローサイトメーターの研究プロトタイプ測定器の準備
ICP−TOF−MS測定器は市場で入手可能である。TOF質量分析計は、例えば稀な白血病幹細胞の多様な分析に有益な同時分析計を備えている。
ICP−TOF−MSは、フローセルを装備できる。図1、2、3に示される測定器および好ましい実施態様に記載された測定器の構成要素は、組み合わせることができる。市販品の関連する構成要素(ELANTM ICP−MSおよびprOTOFTMオーソゴナルMALDI−TOF)は、作動システムの基本として調達できる。作動システムは、サイトメーターのプロトタイプの具体的データ収集の課題に対処するために若干の改良が必要となるであろう;当業者であれば適当な改良点はよく理解される。改良は、迅速、効率的な研究を可能にするように、ICP源およびTOF分析計に対する独立したコンピューター制御システムを操作することで十分である。
【0093】
測定器は、均質な水性サンプルの導入および均質な細胞消化物についての分析性能に関して評価される。ICP−TOF−MSに基づいたフローサイトメーターは、例えば、確立したヒト白血病細胞株(M07e、K562、HL−60)を用いて試験され、サイトメトリック用途の必要性に関する機能が検討される。研究用プロトタイプ測定器のダイナミックレンジ、存在量の感度、過渡信号パルス幅および検出モード(アナログ/デジタル)についての仕様を確立することができる。
以下の実施例では、免疫沈降および洗浄後に、サンプルをHClで酸性にして得た溶液を通常の噴霧化により比較的均質な溶液を生成することが、従来の四重極ICP−MS測定器(連続走査)を用いて証明された。
【実施例6】
【0094】
抗FLAG M2アガロースビーズ元素タグ付け免疫測定のダイナミックレンジ
図5はICP−MSとリンクした3×FLAG−BAPの免疫沈降分析の検量線である。M2アガロースビーズは、100μl当たり0.05ng〜1500ngの濃度範囲にわたり連続して希釈した3×FLAG−BAPのサンプルを取り込むために使用された。3×FLAG−BAPは、抗BAP1次抗体および抗マウス−ナノAu2次抗体を用いて検出した。希釈HClを用いてICP−MSサンプリングのナノゴールドタグを溶解した。この結果は、検出信号(金に対する)が抗原(FLAG−BAP)濃度に正比例すること、および少なくとも4.5桁の大きさの線形ダイナミックレンジを達成できることを示す。細胞またはビーズ当たり大きく異なる複製数で現れるバイオマーカーの同時測定を可能にするためには、サイトメトリック用途では大きなダイナミックレンジが重要である。
【0095】
ビーズを使用する利点は、ビーズ標識に従いヒットしたものをビンに入れることができる標識元素のサインによりビーズを識別することができるため、ビーズを導入することにより、全てのビーズとのヒットを発生させることができることである。予測されるレポーター元素の信号は計数され、ビンに入れられ、関連信号が目標とする細胞のサインに一致するとヒット信号を発生する。
【実施例7】
【0096】
ビーズを用いる2つのサイトカインの同時分析
TNF−αまたはIK−6のいずれかに対するFluorokineTM捕捉抗体に結合したビーズを混合し、TNF−αおよびIK−6を含むサイトカイン混合物に曝し、インキュベートし、その後、Eu(抗TNF−αに対し)およびTb(抗IL−6に対し)でタグ付けされたサイトカイン特異的抗体を用いて精査した。HClを用いて洗浄、消化した後、溶液をEuおよびTbについて分析した。図6は、この同時免疫測定試験から得られた検量線を示す。少なくとも3桁の大きさ以上の抗原濃度を有する信号直線性が見られた。
【実施例8】
【0097】
ICP−MSとリンクしたマレイル化免疫測定を用いる2つのタンパク質の同時測定
図7はICP−MS検出器に接続された、Reacti−bind Maleic Anhydride 96ウェルプレート内で実施される直接免疫測定を用いる2つのタンパク質の同時測定結果を示す。この試験では、l×PBS内の2つのタンパク質(ヒトIgGおよび3×FLAG−BAP)を室温で1時間、3回、インキュベートして、無水マレイン酸プレートのウェル表面に結合させた。陰性コントロールは、タンパク質を含まない100μlのPBSとした。該プレートは、1次抗体である抗ヒトFab’−ナノAuおよび抗FLAG−Euを用いて分析し、内部標準として、1ppb のIrおよび1ppbのHoを有する10%HClで洗浄し、酸性化した[11]。均質なサンプルが使用され、そこではICP−MSへの従来の噴霧器導入のために、元素タグが酸性溶液に放出される。なお、ナノゴールドタグを使用するIgGに対する感度は、Euタグを使用するFLAG−BAPの感度に比べてほぼ10倍の大きさであることに注目すべきである;この理由は、各ナノゴールドタグが約70の金の原子(Auはモノアイソトピック(単一同位体)である)を含むのに対し、各Euタグはわずか6〜10のEu原子を含み、Euの2つの天然同位元素(151Euおよび153Euであり、その和が測定される)の間にほぼ等しく分布しているからである。この実施例は、少なくとも2つのタンパク質が同時に免疫反応し、相互干渉なく検出できることを示し、また、感度は抗原の濃度およびタグ当たりの測定された同位元素の原子数により変化することを示している。
【実施例9】
【0098】
質量分析計により単細胞に結合した分析対象物を分析するためのキットの調製
キットは、(1)単細胞に結合した対象とする分析対象物に結合するタグ付けされた生物学的活性物質と、(2)質量分析計による単細胞分析の手順とからなり、組み立てられる。
【実施例10】
【0099】
法科学用途
本発明の方法および装置は法科学用途に利用できる。例えば、本発明の方法および装置を用いて、
抗原血液型(ABO式血液型およびルイス式血液型)を決定し、
体液(血液、精液、唾液)および他のバイオサンプル(全血、血漿、血清、尿、髄液、硝子体液、肝臓または毛髪)を識別し、
組織起源(種、個人識別情報、その他)を決定し、
親子関係を決定する、
ことができる。
【実施例11】
【0100】
輸血医療
本発明の方法および装置を輸血医療に利用して、
A型、B型およびD型の血液型タイピングの不一致を解明し、
幹細胞移植患者における移植白血球の起源を決定し、
移植片対宿主拒絶反応を有する患者のリンパ球の起源を決定する、
ことができる。
【実施例12】
【0101】
フローサイトメーターのICP−MS検出実施可能性試験
本発明者らは、本発明の概念を確証するために実施可能性試験を行った。従来の元素分析用に設計された(したがって、フローサイトメトリー用途には最適化されていない)四重極(連続質量走査)ICP−MS測定器を使用した。この測定器に2点だけ改良を加えた;すなわち、改良したサンプル導入システムを搭載し、オシロスコープを元の検出器システムの信号処理ハードウェアおよびソフトウェアと並列に接続した。
【0102】
サンプル導入システム102,800の概略が図8に示されている。細胞または他の粒子からなるサンプル400を、細管801により小容積噴霧室803に接続されたシリンジポンプを用いて(該噴霧室は凝縮液を除去するための排水管805を有し、かつ直径2mmの注入管807を通りICP内に入る出口を除いてガス出口を持たない)、吸引した。サンプルは50μL/分で注入し、その約半分は噴霧室803から排出され、残りの半分はICPに送られた。本発明者らは、このサンプル導入装置800が、あらゆる事例において高効率で単細胞をICPに送るのに必ずしも最適でないことは認識している。サンプル導入装置800は、分析状況に左右されるが、この事例では、粒子の少なくとも一部をICPに導入し、これにより実施可能性を示すのには十分であった。
【0103】
ICP−MS測定器の個別のダイノード検出器は、アナログまたはデジタル(パルス)のいずれかの信号を供給する。ダイノードチェーンに沿った途中で、アナログ信号は、検出器システムのハードウェアおよびソフトウェアでデジタル出力に変換される。デジタル(パルス)信号は、チェーンの最終ダイノードから取得され、増幅され、その振幅が所定のしきい値を超える信号パルス事象に対応する過渡信号が、検出器システムのハードウェアおよびソフトウェアでカウントされる。検出器システムのハードウェアおよびソフトウェアの構成は、各パルスの出力ではなく、特定の測定期間(最短で約100マイクロ秒)にわたるパルス全体の出力を提供するように構成できる。通常の操作においては、アナログダイノードで検出された信号が、特定のしきい値を超えると、下流のダイノードチェーンが動作しない(デジタル信号検出ができない)。アナログ信号が第2しきい値より大きい場合、検出器ファームウェアが測定器のイオン光学系の電圧を調整し、検出器からのイオンをデフォーカスさせて検出器を保護する。オシロスコープがアナログ出力にタップされ、検出器ハードウェアと並列に作動して、ICP内の単一粒子事象の期間(例えば、最小2〜3ナノ秒から最大数ミリ秒の分解能)全体にわたる過渡事象の測定を可能にする。
【0104】
これらの試験に使用された測定器は、短い過渡期間の間における複数の質量/電荷チャネルの測定能力を持たないため、ICP内の単細胞事象の多重分析は証明できなかった。ただし、単一質量/電荷検出チャネル事象の測定は、サイトメーター用途についてのICP−MS検出器システムの特定の重要特性の立証および評価を可能にした。本発明者らは、これら特性は、測定器構成の選択された実施態様に依存して若干の差を有し、同時質量分析計を用いて、単一粒子の多重分析を可能にする多数の質量/電荷検出チャネルの同時測定容易性のさらなる利点を有し、再生できると考える。
【0105】
実施可能性テスト1:単一粒子事象の検出および電流測定器の感度評価
MO7e細胞株はヒト巨核球性白血病由来の細胞である。MO7eはCD33抗原(67kDaの一本鎖膜貫通型糖タンパク、骨髄細胞表面抗原CD33前駆体(gp67))を発現する。この細胞は細胞当たり約5000〜10000コピーを発現すると考えられる。この細胞株を用いて、個々の細胞を本発明による方法で観測できることを立証し、電流測定器を用いてこの方法の感度を評価した。CD33表面マーカーは、モノクローナル抗CD33(IgGlマウス)およびNanogoldTMでタグ付けされた抗マウス2次抗体(タグ当たり約70Au原子)を使用して検出された。2次抗体染色の効率は約10%と推定される。
【0106】
材料
MO7e細胞をT75フラスコ内で3日間培養した。細胞濃度は血球計を用いて測定し、0.5×106細胞/mlであった。
コンジュゲートされていないモノクローナル抗体の抗CD33。
2mg/mlで供給され、イムノテック社のカタログ番号1134の0.1%アジ化ナトリウムを用いてPBS/BSA中で精製されたIgGl(マウス)アイソタイプ。
Nonogold社のナノゴールド(タグ当たり約70のAu原子)でコンジュゲートされた2次抗マウスIgG。
37%ホルマリンから調製された1%ホルマリン;PBS中で希釈されている。
洗浄および抗体希釈用緩衝剤PBS/1%BSA。
50mM重炭酸アンモニウム緩衝剤、PH8.0。
【0107】
操作手順
チューブをPBS/1%BSA中に1時間浸漬した。MO7e細胞を5分間1500rmp(約200gで)でペレット状にし、5mlのPBS中で再懸濁し、ペレット状にし、洗浄液を廃棄した。
細胞ペレットを3mlのPBS/1%BSA中で再懸濁し、以下のように表記された3つのエッペンドルフ型チューブ(約106細胞/チューブ)に分配した。
1次および2次抗体添加
2次抗体のみ添加
抗体添加なし。
1次抗体をPBS/1%BSA中で1:50に希釈し、氷上で30分間細胞ペレットに添加した。
細胞をPBS/1%BSAで一度洗浄した。
2次抗体をPBS/1%BSA中で1:50に希釈し、氷上で30分間細胞ペレットに添加した。
細胞をPBS/1%BSAで1回、PBSで1回洗浄した。
染色された生細胞を室温で10分間、1%ホルマリン/PBS中で固定し、氷上でこの固定液中に一晩放置した。
抗体を受け入れない細胞は、染色された細胞と調和するようにPBS/1%BSAだけを用いて処理した。
染色されたホルマリン固定細胞を、5分間1500rmp(約200gで)でペレット状にし、翌日、チューブ当たり1mlの50mM重炭酸アンモニウム緩衝剤、PH8.0中で再懸濁した。遠心分離後に上清液を廃棄し、新しい重炭酸塩(0.5〜1ml)を各チューブに添加した。
チューブをゆっくり回してペレットを分解し、5分間放置して大きな凝集体が底に沈殿するのを待ち、細胞懸濁液全体の上部25μLをICP−MS測定器に注入した。
【0108】
観測
個別細胞導入に対するAuの集積信号(パルス検出器)は、300〜500カウント/秒(cps)、2次抗体のみでは100cps未満、抗体なしでは10cps未満、緩衝剤のみでは3cps未満を得た。
図9は、100ppt Rh(1%HNO3)の分離した直接注入と、上記の細胞懸濁液(分離した注入、50mM NH4HNO3)サンプルとの重ね合わせた結果を示す。
図10は、図9に関連するオシロスコープデータを示す。図A(左側)はAr2+(約107cps)信号に対する信号を示す。上側の図形は比較的大きい時間窓(約100μs)をカバーし、この線から平均イオン信号率を測定できる。下側の図形線は単一イオン検出事象におけるパルスを示す(非常に拡大した時間スケールにわたる)。図B(右側)は細胞導入からのAu+を示す。上側の図形は、多重イオン信号パルスが観測されないことを示している。下側の図形線は単一Auイオン検出事象における信号パルスを示す。典型的には、1つだけのイオンパルスが粒子事象時間窓内で観測され、このことは細胞当たり約1つのAu原子のみが平均して観測されることを示唆している。
【0109】
検出効率
本発明者らは、以下の条件、すなわち―約1×106細胞/サンプル、25μL/分でサンプリングする50μL/分での1mL/サンプルがICPに送られる―として算出し、サンプル導入速度を(非常に)近似的に400細胞/秒と概算する。
したがって、本発明者らは細胞当たり約1つのAu原子が観測されると推定する。
使用した測定器の検出効率は、1%硝酸中に100ppt(兆分率、質量/容積)を含むサンプルの連続吸引から得られた信号から予測した。得られた信号は約2000cpsであって、以下の条件、すなわち―100ppt(10−10g/mL、原子量103g/モル、25μL/分でプラズマに送る―として算出してRhの検出効率1×10−5が提示され、2000cpsが観測されるプラズマに送られる2×108原子Rh/秒を生成した。本発明者らは、この効率を以下の事項に帰属する;すなわち、100%イオン化、真空インターフェイスの1%透過(中心プラズマの100%がサンプラーを通って吸入されるイオンを含み、サンプラー流の1%がスキマーを透過する)、10%が四重極質量分析計を透過、したがって約1%がイオン光学系を透過する。(これらの予測から、本発明者らは、サイトメトリック用途における感度の向上は、真空インターフェイス構成の保持を仮定して、主として質量分析計(例えば、高い負荷サイクルを有するTOF)の透過率、およびさらに重要な点は、イオン光学系(先の説明によれば、主として加速光学系および空間−電荷―誘導イオンの除去によって))の透過率を向上させることに集中すべきであると推論する。
【0110】
したがって、細胞当たり1つのAuイオン原子検出事象が得られ、およびこれがRh溶液として同一検出効率で得られる場合、MO7e細胞が、細胞当たり約1400のタグ付けされたCD33マーカーを平均化すると推定される。2つの抗体タグ付けの効率が、約10%であると仮定すると、細胞当たりのCD33の予測数は14000であり、これは先に引用された5000〜10000に整合する。細胞当たり少ないコピー数のタンパク質を検出できるように、高感度を備えることが望ましい。上に提示したイオン光学系の改良に加えて、直接免疫−タグ付け(ここで使用した2抗体サンドイッチと対照的に)が有利であると予測される。
【0111】
本発明者らは、本発明の方法はプラズマ中の単一粒子事象を検出することができると結論付ける。上記の試験は、この方法の感度を向上させるための研究の試みに対するガイダンスを提供する。同時質量分析計は、質量分析計検出器がフローサイトメトリーに与える多くの利点を助長するために必要である。
【0112】
実施可能性テスト2:単一粒子事象の過渡期間の予測
実施可能性テスト1で使用されたMO7e細胞サンプルは、MS FCの設計および最適化に重要な、単一粒子事象の過渡期間の予測の機会を提供する。細胞のNaCl含有量は0.9%w/wと予測される。16マイクロメータ細胞については、これは細胞当たりNaの2×1011原子に変換する。Na検出のこれらの試験に使用された測定器の効率、Rhに比べて低く、約1×10−6である。したがって、単細胞事象については、2×105イオンが検出器に到達するであろう。これは十分に大きい数であり、単一MO7e細胞事象に対応するNaイオンの到達期間が測定できる。
【0113】
単細胞事象により発生する過渡現象が100〜300マイクロ秒のオーダー(単分散された3〜65マイクロメータ粒子に関してOlesikにより報告されたとおり)である場合、(0.7〜2)×109の等価平均カウント率が達成される(それの約2倍のピーク電流)。
図11は幾つかの細胞導入事象の期間にわたりオシロスコープで検出されたNa+信号を示す。図Aに示されるデータは、細胞が30mM CaCl2緩衝剤に導入されたときのNa+信号を示す。図Bに示されるデータは、緩衝剤のみについての結果を表す。観測された信号の変化は、細胞群の細胞サイズ(容積したがってNa含有物)の変化を反映するか、またはNaが含有するMO7e細胞以外の粒子の存在を示す。ただし、本発明の目的にとって重要な観測は、単一粒子事象についての過渡信号が100〜150μsのオーダーであることである。
【0114】
ベースラインが図11に示される2つのデータセット間で大幅に異なっている。この差は、検出された第1細胞が高いしきい値検出器保護回路を始動させ、イオンのデフォーカスを引き起こす事実による。これは細胞当たり予測される2×105Naイオンが、109/秒を超える平均カウント率に対応する約100〜150μsの期間内に到達するため、第2しきい値検出器を始動させるのに十分であるためである。サンプル中に細胞が存在しない場合(図11の右側に示されるデータ)、検出器保護回路は始動しない。イオンの光学的デフォーカスは、約1000の係数でイオン輸送を抑制するように思われるが、これはベースラインデータの差を説明するものであり、これは安定または再現できる(定量的)デフォーカス係数を意味するものではない。
【0115】
MO7e導入事象による100〜150μsの期間の過渡信号は、10ミリ秒当たり約5〜6の頻度、すなわち秒当たり約500〜600細胞の頻度で観測された。これは先になされた予測値、および元のサンプル中の1mL当たり106個の細胞数の予測値に符合する(実施可能性テスト1の操作手順ステップ4、その後のステップ9で約1mL容積に減少する)。
【0116】
この試験から得られる重要な推定は、細胞について予測される大きいNa+信号、またはプラズマを通る粒子の通過結果としてのプラズマイオンの質量分布の変化に関係する効果が、細胞事象発生時にシステムを起動する手段を提供できる。さらに、Na+信号の大きさ(または細胞内の高濃度での他の元素の信号)、またはプラズマを通る粒子の通過結果としてのイオン分布変化に関係する効果の大きさは、粒子の物理的サイズと相関関係があり、これは、標的粒子の識別または粒子群から単一粒子を識別するのに重要である。
【0117】
この試験の重要な結論は、過渡信号が持続時間で約100〜150μsFWHMであることである。これは、ダイナミックレンジを実現するための設計検討事項に密接に関連する。さらに、これは、この期間の過渡信号により特徴付けされる粒子を約3000/秒の割合でシステムに導入できる根拠となる(したがって、1つの粒子に対応する信号が最大50%の時間で存在する)。より小さい細胞およびより小さいビーズは、短い過渡期間を有し、したがって、高い割合での導入を可能にする。
【0118】
実施可能性テスト3:現在のFACSと細胞注入を備えたICP−MSとの比較および細胞全体の気化の立証
本発明者らは、現在のFACSの性能と実施可能性テスト1に記載された細胞注入を備えたICP−MS測定器の性能とを直接比較する機会を得た。さらに、このテストは、細胞内タンパク質のタグ付けを可能にするように構成した;これらの内部タグを検出できる場合、これは、表面タグの気化でなく、細胞全体およびその含有物が気化され、原子化され、イオン化されたことを意味する。
【0119】
これらの試験に使用されたICP−MS測定器は同時検出器でないため、同一(ナノゴールド)タグを各抗原に使用でき、免疫−タグ付けを各サンプルおよび抗原に対して別個のガラス瓶内で実施した。このように、各サンプルに対する各抗原は別個の分析で測定された。サンプルは、実施可能性テスト1に記載されたように、ICP−MSに導入された。
【0120】
細胞注入を有するICP−MS分析におけるサンプルの調製
材料
ヒト単核細胞株:
MO7e親細胞株はヒト巨核球性白血病由来の細胞である。MO7eはCD33抗原(67kDa一本鎖膜貫通型糖タンパク、骨髄細胞表面抗原CD33前駆体(gp67))を表す。細胞当たり約5000〜10000のCD33抗原のコピー。
MBA−1およびMBA−4はp210 BCR/Abl発現プラスミドで形質転換されたM07eの安定クローンである。
HL−60(ATCCカタログ番号CCL−240)、抗CD33モノクローナル抗体の産生において抗原として使用される骨髄性白血病細胞株。
抗体:
抗CD33、マウスモノクロナール、コンジュゲートされていない、IgGl(マウス)アイソタイプ。0.1%アジ化ナトリウム(イムノテック社のカタログ番号1134)を用いてPBS/BSA中で精製され、2mg/mlで供給。
抗IgGl2a、マウス、(BD PharMingen、カタログ番号555571)(0.5mg/mlストック)
ウサギで生成された抗BCR抗体(Cell Signaling Techカタログ番号3902)、フローサイトメトリーに対して1:25で使用。
2次抗体:2001ナノゴールド−抗マウスIgG(NMI)および2004ナノゴールド−抗ウサギFab’(NRF)(Nanoprobes社)を製造業者の薦めに従い(1:50)で使用。
緩衝剤:
BD Biosciences FACS透過性溶液2(カタログ番号347692)
Ca++/Mg++を有するPBS;
PBS/1%BSA
37%ホルマリンから調製された1%および0.5%ホルマリン;PBS中で希釈
50mM重炭酸アンモニウム緩衝剤、PH8.0
操作手順:
チューブをPBA/1%BSA中に1時間浸漬した。
細胞を5分間1500rpm(〜200gで)でペレット状にし、5mlPBS中で再懸濁し、血球計を使用してカウントした。細胞生成量:
M07e−le6/ml
MBA−1−le6/ml
MBA−4−le6/ml
HL−60−le6/ml
生のM07e(チューブ番号1)およびHL−60(チューブ番号2)を氷上で30分間、抗体CD33(1:50)を用いて染色し、その後PBS/BSAで1回洗浄した。抗マウスIgG−Au(1:50)を、氷上でさらに30分間、洗浄された細胞ペレットに添加した。生きた染色細胞を1%ホルマリン/PBS中、10分間室温で固定し、48時間以上氷上でそのホルマリン/PBS液中に放置した。
【0121】
MBA−1(チューブ番号3)、MBA−4(チューブ番号4)、M07e(チューブ番号5)は透過処理し、FACS透過性溶液2中、10分間室温で固定した。1回洗浄後、細胞を10%FBSを用いて媒体中でインキュベートし、非特異的抗原部位を15分間室温でブロックした。
透過処理した細胞を抗BCR抗体(1:25(チューブ番号3,4,5)または非特異的IgG(チューブ番号30,40,50 w/o 1次抗体)を用いて、45分間室温で処理した。2次抗体を洗浄された細胞抗ウサギ−IgG−Au(1:50)に45分間室温で添加した。
染色された細胞を0.5%ホルマリン中での後固定の前に2度洗浄し、ホルマリンを50mM重炭酸アンモニウム緩衝剤に置きかえたときは、MS分析する前に週末の間、冷蔵庫内に保存した。
【0122】
FACS分析に対するサンプルの調製(上記と同時に実施)
材料
抗体:
抗IgG1−FITCマウスアイソタイプ(BD PharMingen)
マウス内で産生された抗CD45−FITC抗体(BD PharMingen)をフローサイトメトリーに対して1:50で使用。
CD45はすべてヒト白血球上で発現される。FACS設定のために陽性サンプルとして使用した。
2次蛍光抗体:抗マウスIgG−FITC(BD PharMingen)および抗ウサギFITC(Biolab)を(1:50)で使用した。
緩衝剤:
BD Biosciensces FACS透過性溶液2(カタログ番号347692)
Ca++/Mg++を有するPBS;
PBS/1%BSA
37%ホルマリンから調製された1%および0.5%ホルマリン;PBS中で希釈
50mM 重炭酸アンモニウム緩衝剤、PH8.0
操作手順:
細胞調製および1次抗体染色は、le6細胞/ml/チューブを用いてICP−MSに対するサンプルと並列に実施した。
蛍光2次抗体染色および細胞洗浄の全手順は、暗所で氷冷下、実施した。
最終PBS洗浄細胞をPBS(ホルマリンでない)中で再懸濁し、直ちにFACS(BD FACSCalibur)により処理した。
ゲートおよび設定は、正(R4)チャネルとして抗CD45−FITC染色HL−60を用い、負(R3)チャネルとして抗マウスIgG−FITC染色HL−60を用いて測定した。
【0123】
観測
ICP−MS検出(灰色)および従来のFACS(白色)の両方の結果が、図12にまとめて示されている。ICP−MSによる3重分析の標準偏差はエラーバーに示され、FACSについての等価不確実性は示されていない。
CD33(MO7eおよびHL60上の表面マーカー)およびBCR(MO7e、MBA1、MBA4における内部マーカー)は、FACSおよびICP−MS検出器の両方により測定した。これは細胞全体(透過処理した)およびそれら細胞の含有物がICP−MS内で気化、原子化、イオン化されたことを意味する。さらに、FACSおよびICP−MSの結果の大部分は、表面および内部マーカーの両方に対して、ならびに処理空白に対して主としてむしろよく一致する。
【0124】
本発明者らは、これらの結果から、FACSおよびICP−MS検出(現在の非最適測定器を使用する)は、単一抗原分析に匹敵する結果を提供する、と結論付けている。ICP−MS検出器の感度は上記したように向上し、同時質量分析計の組込みが高度な多重分析を可能にすると予測される。これはまた、この試験で使用されたMO7e、MBA1、MBA4細胞が効率的に気化、原子化、イオン化されたことを立証している。これは上記の任意のインライン溶解装置が、これらの細胞または同様の細胞に対しては必要がないことを示している。
【0125】
実施可能性テスト4:元素タグ付けされたビーズの作成および検出
多重分析に関する別の方法は、抗原を固定する様々な識別可能ビーズを使用することである。ビーズは概して、それらの表面に結合した捕獲親和剤(例えば、抗体)を有する。サンプルに曝された後、ビーズ−抗原複合体は、一般に、上記のとおり(本明細書内や2002年7月4日付け米国特許第2002/0086441号で公開された米国特許出願第09/905,907号および第10/614,115号)、元素または同位元素でタグ付けされる第2アフィニティー生成物(抗体、アプタマー等)に曝される。ビーズはそれらの元素組成(表面元素標識およびカプセル化された元素標識またはビーズ材料中に組み込まれた元素標識であってもよい)により識別される。ビーズの識別は、ビーズまたはサンプルに結合した捕獲親和剤の種類と連動している(例えば、異なる元素標識を有するビーズは異なるサンプルに曝されるか、あるいは96−または384−または1536−ウェルプレートの異なるウェル内に置かれる)。したがって、2次アフィニティー生成物タグを検出することにより、抗原の存在が測定され、そしてビーズの元素組成(元素標識)は、どの抗原が捕獲されるのか、あるいはその中に抗原が捕獲されたサンプルを指摘している。この方法は、Luminexに譲渡された米国特許第6,524,793号や、そこに引用されている文献を模倣している。
【0126】
ビーズは任意の適当な材料(例えば、ポリスチレン、アガロース、シリカ)であってもよい。各ビーズは1つまたは複数の親和性捕獲剤を含み、該ビーズ上に捕獲された抗原の多重分析が実施される。ビーズ内またはビーズ上に組み込まれた元素標識は、単一元素または同位元素、あるいは好ましくは、元素または同位元素の組み合わせであってもよい。例えば、検出器のダイナミックレンジが3桁の大きさであり、3つの要素の信号レベルの差が精度よく検出される場合、2つの元素標識は様々な比率で組み合わされて、63の識別可能なビーズを提供できる。同一条件の下で、5つの元素標識は、32,767の識別可能なビーズを提供できる。ダイナミックレンジが5桁で、信号中の3つの要素に対する5つの元素標識が精度よく検出される場合、248,831の識別可能なビーズが構成される。なお、ビーズはその目的のために使用される装置内(例えば、ICP)での完全な気化、原子化およびイオン化に適した大きさに製造できることが認識されている。また、より小さいビーズはより短い過渡期間を提供し、したがって、使用される特定粒子に対して粒子の導入速度を最適にできる。
【0127】
この方法の実施可能性を立証するために、直径約150nmのストバーシリカ粒子を各種ランタニド類(Ho、Tb、Tm)の溶液中で成長させた。このランタニド元素をシリカル粒子内に取り込んだ。シリカ粒子(ビーズ)は、実施可能性テスト1に記載したように、連続してICP−MS測定器に導入した。使用した測定器は、同時複数元素分析の能力がないため、ランタニド類およびシリコンに対する過渡信号は、様々なビーズに対して個別に測定された。
【0128】
図13は取得データの一部を示す。左側の図のデータは、Si+の検出を示し、ビーズが気化、原子化、およびイオン化されることを明瞭に示している。右側の図のデータは、Tb+の検出(Tb溶液中で成長したビーズ)を示している。Tb標識は、明瞭に検出される。種々のランタニド標識を有するビーズの混合物がサンプリングされる場合、種々のランタニド信号が種々のビーズを識別する。これはまた、ビーズが混合ランタニド類(または他の元素)の溶液中で成長でき、種々の元素を組み込むであろうことは明白であり、これにより、上記したよう、識別可能な多数のビーズが提供される、同時分析計のさらなる有用性は、ビーズ自身に結合した元素や、捕獲された抗原を認識する2次アフィニティー生成物に結合したタグに結合した元素を同時に検出できることである。
【0129】
したがって、ビーズ内の元素を検出できる(すなわち、ビーズがその原子成分に気化される)。元素内部「標識」の様々な組み合わせを用いて、ビーズを識別できる。仮にこれらビーズが、様々な抗原と結合する様々な表面抗体を保持し、これら抗原が異なるレポータータグを含む別の抗体により認識されるならば、多重分析は可能となる。あるいは、いろいろに標識化されたビーズは、同一表面抗体と共に使用できるが、異なるサンプル(96ウェルプレートなど)には異なるビーズを適用することにより、標識化されたアフィニティー生成物に関連する信号が、ビーズ組成に対応する信号で示されるサンプル中の抗原濃度を識別できる。
【0130】
上記した本発明の特定の実施態様に対しては、クレームに定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの修飾、変形、適応が可能である。
【0131】
参照文献
以下の出版物はここに引用することにより本明細書に取り込まれるものとする。
1.Hanayama,R.;Tanaka,M.;Miwa,K.;Shinohara,A.;Iwamatsu,A.;Nagata,S.; Identification of a factor that links apoptotic cells to phagocytes(アポトーシス細胞を食細胞に関連付ける因子の識別),Nature 2002,417,182−187。
2. Reif,K.;Ekland,E.H.;Ohl,L.;Nakano,H.;Lipp,M,;Forster,R.;Cyter,J.G.; Balanced responsiveness to chemoattractants from adjacent zones determines B−cell position(近接ゾーンからの化学誘引物質に対する平衡応答がB細胞位置を決定する),Nature 2002,416,94−99
3. Heppner,F.L.;Musahl,C.;Arrighi,I.;Klein,M.A.;Rulicke,T.;Oesch,B.;Zinkernagel R.M.;Kalinke,U.;Aguzzi,A.; Prevention of scrapie pathogenesis by transgenic expression of anti−prion protein antibodies(抗プリオンたんぱく質抗体のトランスジェニック発現によるスクラビー病の予防), Science 2001,294 178−182。
4. Shinkai,K.;Mohrs,M.;Locksley,R.M.; Helper T cells regulate type−2 innate immunity in vivo(ヘルパーT細胞がin vivoでタイプ2型の先天性免疫を調節する),Nature 2002,4420,825−82917,182−187。
5. Marx,J.;Mutant stem cells may seed cancer(変異幹細胞が癌の原因となる可能性がある),Science 2003 301:1308−1310。
6. Lapidot,T.C.Sirard J.Vormoor,B.Mudoch T.Hoang,J.Caceres−Cortes,M.Minden,B.paterson,M.Caligiuri,and J.E.Dick; A cell initiating human acute myeloid leukaemia after transplantation into SCID mice(SCIDマウスへの移植後にヒト急性骨髄性白血病を発生する細胞),Nature 1994,367,6464:645−648。
7. Meldrum,D.R.;Holl,M.R.; Tech.Sight. Microfluidics. Microscale bioanalytical systems(マイクロ流体:マイクロスケールバイオ分析システム),Science 2002,297 1197−1198。
8. Schenk,T.;Molendijk,A.;Irth,H.;Tjaden,U.R.;van der,G.J.;Liquid chromatography coupled on−line to flow cytometry for postcolumn homogeneous biochemical detection(ポストカラム均質生化学的検出のためのフローサイトメトリーにオンライン接続された液体クロマトグラフィー),Annal.Chem.2003.75,4272−4278。
9. S.D.Tannar.; Space charge in ICP−MS: Calculation and implications(ICP−MSにおける空間電荷:計算および推測),Spectromchimica Acta 1992 47B: 809−823。
10. Mazurier,F.;Doedens,M.;Gan,O.I.;Dick,J.E.; Rapid myeloerythroid repopulation after intrafemoral transplantation of NOD−SCID mice reveals a new class of human stem cells(NOD−SCIDマウスの大腿骨内移植後のミエロエリスロイドの急速な再生は、ヒト幹細胞の新しいクラスを明らかにする),Nat.Med.2003,9,959−963。
11. Quinn,Z.A.;Baranov,V.I.;Tanner,S.D.;Wrana J.L.; Simultaneous determination of proteins using an element−tagged immunoassay coupled with ICP−MS detection(ICP−MS検出結合元素タグ付け免疫アッセイを用いるタンパク質の同時測定),J.Anal.Atom.Spectorom.2002,17,892−896。
【0132】
[関連出願]
本出願は、2004年3月25日に出願された米国仮特許出願第60/555,952号「発明の名称:元素分析とリンクしたフローサイトメトリーニオケル方法および装置(Method and Apparatus for Flow Cytometry Linked with Elemental Analysis)」の利益を主張するものであり、この引用により上記仮出願の全内容が本明細書に取り込まれるものとする。
【0133】
本発明の譲受人に譲渡された、2001年7月17日に出願された米国特許出願第09/905,907号(公開番号US2002/0086441)の発明の名称「タグ付けされた生物活性物質の元素分析(Elemental Analysis of Tagged Biologically Active Materials)」および2003年7月3日に出願された米国特許出願第10/614,115号(公開番号US2004/0072250)の発明の名称「タグ付けされた生物活性物質の元素分析(Elemental Analysis of Tagged Biologically Active Materials)」の全内容は、引用することにより、ここに本明細書に取り込まれるものとする。
【0134】
1999年6月18日に出願された米国特許第6,524,793号の発明の名称「臨床検体の多重分析装置と方法(Multiplexed Analysis of Clinical Specimens Apparatus and Method)」、および1998年7月30日に公開された国際特許出願公開番号WO98/33203号の発明の名称「飛行時間型分光計における荷電粒子を除去するためのゲート(Gate for Eliminating Charged Particles in Time of Flight Spectrometers)」、および本願明細書の参照セクションで引用された各刊行物は、引用することにより、ここに本明細書に取り込まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明による質量分光計に基づいたフローサイトメーターの概略図である。
【図2】本発明による質量分光計に基づいたフローサイトメーターの実施態様の概略図である。
【図3】本発明による発光分光計(OES)に基づいたフローサイトメーターの実施態様の概略図である。
【図4】本発明による単一粒子注入装置の概略図である。
【図5】α−BAP1次抗体およびAuタグ付きα−マウス2次抗体へのアガロースビーズ固定化を用いるflag−BAPについての検量線である。
【図6】対応する1次抗体上で識別可能な(EuおよびTb)元素タグを用いて、同時にTNF−αおよびIL−6を検出する、Fluorkineビーズ分析のプロットである。
【図7】2つの蛋白質の同時定量化を示す、ICP MSに連係されたELISAに基づいた分析プロットである。
【図8】サンプル導入システムの概略図である。
【図9】100ppt Rh(1% HNO3)の標準溶液、および表面抗原CD33がAu粒子でタグ付けされたMO7E細胞浮遊液の直接注入に対し、時間の関数としてイオン信号を測定した結果を重ねて示す。
【図10】表面抗原CD33が、Au粒子でタグ付けされたMO7e細胞導入からのA(左側):Ar2+信号およびB(右側):Au+のオシロスコープ出力である。
【図11】Na+を連続的に監視する間に記録されたオシロスコープからのアナログ信号を示す。A(左側):30mM CaCl2における細胞浮遊液、およびB(右側):30mM CaCl2緩衝液。
【図12】従来のFACSおよび本発明の方法の両方による細胞表面蛋白質および細胞内蛋白質の分析における比較データを示す。
【図13】Tb溶液の存在下で成長したストバーシリカ粒子におけるSi+信号(A:左側)およびTb+信号(B:右側)を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を連続的に装置内に導入して、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる手段;
粒子を連続的に導入する前記手段の下流で、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置;および
前記気化、原子化および励起またはイオン化された粒子または該粒子に結合した前記元素タグを分析する分光計
とからなる、元素のフローサイトメーター。
【請求項2】
粒子を連続的に導入する前記手段が、1つずつ粒子を導入する、請求項1に記載の元素のフローサイトメーター。
【請求項3】
粒子を連続的に導入する前記手段が、細胞注入器である、請求項1に記載の元素のフローサイトメーター。
【請求項4】
粒子を連続的に装置内に導入して、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる手段;
粒子を連続的に導入する前記手段の下流で、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる装置;および
前記イオン前処理装置の下流で、この装置に機能的に接続された質量分析計
とからなる、質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項5】
気化、原子化およびイオン化させる前記装置が、誘導結合プラズマを含む、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項6】
粒子を連続的に導入する前記手段が細胞注入器を含む、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項7】
粒子を連続的に導入する前記手段と、気化、原子化およびイオン化させる前記装置との間にインライン溶解をさらに含む、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項8】
粒子を連続的に導入する前記手段と、気化、原子化およびイオン化させる前記装置との間にインライン脱溶媒をさらに含む、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項9】
前記質量分析計が、飛行時間型質量分析計からなる、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項10】
前記質量分析計が、アレイ検出磁場型質量分析計からなる、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項11】
前記質量分析計が、3Dイオントラップ質量分析計からなる、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項12】
前記質量分析計が、リニアイオントラップ質量分析計からなる、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項13】
粒子を連続的に装置内に導入して、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる手段;
粒子を連続的に導入する前記手段の下流で、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる装置;
気化、原子化およびイオン化させる前記装置の下流で、この装置に機能的に接続されたイオン前処理装置;および
前記イオン前処理装置の下流で、このイオン前処理装置に機能的に接続された質量分析計;
とからなる、質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項14】
前記イオン前処理装置が、
真空インターフェース;
前記真空インターフェースの下流にある高域通過質量フィルター;および
前記真空インターフェースの下流にあるガス充填イオン冷却セル;
とからの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項15】
前記高域通過質量フィルターが、高質量および低質量カットオフを有する帯域質量フィルターとして作動する、請求項14に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項16】
高域通過質量フィルターおよびガス充填イオン冷却セルを共有ハウジング内に含む、請求項14に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項17】
粒子を連続的に装置内に導入して、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる手段;
粒子を連続的に導入する前記手段の下流で、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる装置;および
前記イオン前処理装置の下流で、このイオン前処理装置に機能的に接続された質量分析計;
とからなる、質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項18】
気化、原子化およびイオン化させる前記装置が、誘導結合プラズマを含む、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項19】
粒子を連続的に導入する前記手段が、細胞注入器を含む、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項20】
粒子を連続的に導入する前記手段と、気化、原子化およびイオン化させる装置との間にインライン溶解をさらに含む、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項21】
粒子を連続的に導入する前記手段と、気化、原子化およびイオン化させる装置との間にインライン脱溶媒をさらに含む、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項22】
前記質量分析計が、飛行時間型質量分析計からなる、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項23】
前記質量分析計が、アレイ検出磁場型質量分析計からなる、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項24】
前記質量分析計が、3Dイオントラップ質量分析計からなる、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項25】
前記質量分析計が、リニアイオントラップ質量分析計からなる、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項26】
粒子を連続的に装置内に導入して、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる手段;
粒子を連続的に導入する前記手段の下流で、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置;および
粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させるための発光分光分析装置;
とからなる、発光分光分析装置に基づいたフローサイトメーター。
【請求項27】
気化、原子化およびイオン化する前記装置が、誘導結合プラズマを備えた、請求項26に記載の発光分光分析装置に基づいたフローサイトメーター。
【請求項28】
粒子を連続的に導入する前記手段が、細胞注入器を含む、請求項26に記載の発光分光分析装置に基づいたフローサイトメーター。
【請求項29】
粒子を連続的に導入する前記手段と、気化、原子化および励起またはイオン化させる装置との間にインライン溶解をさらに含む、請求項26に記載の発光分光分析装置に基づいたフローサイトメーター。
【請求項30】
粒子を連続的に導入する前記手段と、気化、原子化および励起またはイオン化させる装置との間にインライン脱溶媒をさらに含む、請求項26に記載の発光分光分析装置に基づいたフローサイトメーター。
【請求項31】
粒子を連続的に装置内に導入して、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させ、
気化、原子化および励起またはイオン化された粒子または該粒子に結合した元素タグを分光計に導入することからなる分光分析による粒子の分析方法。
【請求項32】
粒子を、元素タグを用いて標識化する工程をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
粒子がビーズであって、少なくとも1つの元素タグを前記ビーズの表面に結合させる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
粒子がビーズであって、少なくとも1つの元素タグを前記ビーズ内に組み込ませる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記分光計が、質量分析計からなる、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記質量分析計が、飛行時間型質量分析計からなる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記分光計が、発光分光分析装置からなる、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
粒子を標識化する少なくとも1つの試薬と、
分光分析法による粒子の連続分析のための指示書とを含む、分光分析法により粒子を連続的に分析するキット。
【請求項39】
元素または同位元素を、分光分析装置または質量分析計のいずれかおよびその信号または比率を用いて他の粒子と識別ができる、元素のフローサイトメーター(請求項1に記載)により測定可能な、元素または同位元素の少なくとも1つを含む粒子。
【請求項40】
元素または同位元素を、発光分光分析装置または質量分析計のいずれかおよびそれの信号または比率を用いて他の粒子と識別ができる、元素のフローサイトメーター(請求項1に記載)により測定可能な方法における、元素または同位元素の少なくとも1つを含む粒子の使用。
【請求項1】
粒子を連続的に装置内に導入して、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる手段;
粒子を連続的に導入する前記手段の下流で、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置;および
前記気化、原子化および励起またはイオン化された粒子または該粒子に結合した前記元素タグを分析する分光計
とからなる、元素のフローサイトメーター。
【請求項2】
粒子を連続的に導入する前記手段が、1つずつ粒子を導入する、請求項1に記載の元素のフローサイトメーター。
【請求項3】
粒子を連続的に導入する前記手段が、細胞注入器である、請求項1に記載の元素のフローサイトメーター。
【請求項4】
粒子を連続的に装置内に導入して、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる手段;
粒子を連続的に導入する前記手段の下流で、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる装置;および
前記イオン前処理装置の下流で、この装置に機能的に接続された質量分析計
とからなる、質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項5】
気化、原子化およびイオン化させる前記装置が、誘導結合プラズマを含む、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項6】
粒子を連続的に導入する前記手段が細胞注入器を含む、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項7】
粒子を連続的に導入する前記手段と、気化、原子化およびイオン化させる前記装置との間にインライン溶解をさらに含む、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項8】
粒子を連続的に導入する前記手段と、気化、原子化およびイオン化させる前記装置との間にインライン脱溶媒をさらに含む、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項9】
前記質量分析計が、飛行時間型質量分析計からなる、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項10】
前記質量分析計が、アレイ検出磁場型質量分析計からなる、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項11】
前記質量分析計が、3Dイオントラップ質量分析計からなる、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項12】
前記質量分析計が、リニアイオントラップ質量分析計からなる、請求項4に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項13】
粒子を連続的に装置内に導入して、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる手段;
粒子を連続的に導入する前記手段の下流で、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる装置;
気化、原子化およびイオン化させる前記装置の下流で、この装置に機能的に接続されたイオン前処理装置;および
前記イオン前処理装置の下流で、このイオン前処理装置に機能的に接続された質量分析計;
とからなる、質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項14】
前記イオン前処理装置が、
真空インターフェース;
前記真空インターフェースの下流にある高域通過質量フィルター;および
前記真空インターフェースの下流にあるガス充填イオン冷却セル;
とからの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項15】
前記高域通過質量フィルターが、高質量および低質量カットオフを有する帯域質量フィルターとして作動する、請求項14に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項16】
高域通過質量フィルターおよびガス充填イオン冷却セルを共有ハウジング内に含む、請求項14に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項17】
粒子を連続的に装置内に導入して、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる手段;
粒子を連続的に導入する前記手段の下流で、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化およびイオン化させる装置;および
前記イオン前処理装置の下流で、このイオン前処理装置に機能的に接続された質量分析計;
とからなる、質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項18】
気化、原子化およびイオン化させる前記装置が、誘導結合プラズマを含む、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項19】
粒子を連続的に導入する前記手段が、細胞注入器を含む、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項20】
粒子を連続的に導入する前記手段と、気化、原子化およびイオン化させる装置との間にインライン溶解をさらに含む、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項21】
粒子を連続的に導入する前記手段と、気化、原子化およびイオン化させる装置との間にインライン脱溶媒をさらに含む、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項22】
前記質量分析計が、飛行時間型質量分析計からなる、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項23】
前記質量分析計が、アレイ検出磁場型質量分析計からなる、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項24】
前記質量分析計が、3Dイオントラップ質量分析計からなる、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項25】
前記質量分析計が、リニアイオントラップ質量分析計からなる、請求項17に記載の質量分析計に基づいたフローサイトメーター。
【請求項26】
粒子を連続的に装置内に導入して、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる手段;
粒子を連続的に導入する前記手段の下流で、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させる装置;および
粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させるための発光分光分析装置;
とからなる、発光分光分析装置に基づいたフローサイトメーター。
【請求項27】
気化、原子化およびイオン化する前記装置が、誘導結合プラズマを備えた、請求項26に記載の発光分光分析装置に基づいたフローサイトメーター。
【請求項28】
粒子を連続的に導入する前記手段が、細胞注入器を含む、請求項26に記載の発光分光分析装置に基づいたフローサイトメーター。
【請求項29】
粒子を連続的に導入する前記手段と、気化、原子化および励起またはイオン化させる装置との間にインライン溶解をさらに含む、請求項26に記載の発光分光分析装置に基づいたフローサイトメーター。
【請求項30】
粒子を連続的に導入する前記手段と、気化、原子化および励起またはイオン化させる装置との間にインライン脱溶媒をさらに含む、請求項26に記載の発光分光分析装置に基づいたフローサイトメーター。
【請求項31】
粒子を連続的に装置内に導入して、粒子または該粒子に結合した元素タグを気化、原子化および励起またはイオン化させ、
気化、原子化および励起またはイオン化された粒子または該粒子に結合した元素タグを分光計に導入することからなる分光分析による粒子の分析方法。
【請求項32】
粒子を、元素タグを用いて標識化する工程をさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
粒子がビーズであって、少なくとも1つの元素タグを前記ビーズの表面に結合させる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
粒子がビーズであって、少なくとも1つの元素タグを前記ビーズ内に組み込ませる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記分光計が、質量分析計からなる、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記質量分析計が、飛行時間型質量分析計からなる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記分光計が、発光分光分析装置からなる、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
粒子を標識化する少なくとも1つの試薬と、
分光分析法による粒子の連続分析のための指示書とを含む、分光分析法により粒子を連続的に分析するキット。
【請求項39】
元素または同位元素を、分光分析装置または質量分析計のいずれかおよびその信号または比率を用いて他の粒子と識別ができる、元素のフローサイトメーター(請求項1に記載)により測定可能な、元素または同位元素の少なくとも1つを含む粒子。
【請求項40】
元素または同位元素を、発光分光分析装置または質量分析計のいずれかおよびそれの信号または比率を用いて他の粒子と識別ができる、元素のフローサイトメーター(請求項1に記載)により測定可能な方法における、元素または同位元素の少なくとも1つを含む粒子の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−530924(P2007−530924A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504231(P2007−504231)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000461
【国際公開番号】WO2005/093784
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(505377197)エムディーエス インコーポレイテッド ドゥーイング ビジネス スルー イッツ エムディーエス サイエックス ディヴィジョン (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000461
【国際公開番号】WO2005/093784
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(505377197)エムディーエス インコーポレイテッド ドゥーイング ビジネス スルー イッツ エムディーエス サイエックス ディヴィジョン (12)
【Fターム(参考)】
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