説明

元素分析装置

【課題】上部電極又は下部電極に対する清掃体の位置を調節可能にする。
【解決手段】元素分析装置1の清掃ユニット6が、上部電極3を清掃する第1清掃体61と、下部電極4を清掃する第2清掃体62と、前記第1清掃体61を上部電極3側に、第2清掃体62を下部電極4側に保持し、前記上部電極3及び前記下部電極4に狭持される保持部63と、装置本体に設けられ、前記各清掃体61、62が前記各電極に対向する対向位置及びその対向位置から離間した退避位置の間で前記保持部63を進退移動するとともに、前記対向位置において前記下部電極4の昇降動作により前記保持部63を昇降自在に支持する駆動昇降機構64と、前記保持部63の下部電極4側に設けられ、前記保持部63が前記上部電極3及び前記下部電極4により狭持されるときの、前記下部電極4と前記第2清掃体62との距離を調節する距離調節機構65と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄鋼や非鉄金属、セラミックスなどの測定試料中に含まれる炭素(C)、窒素(N)、水素(H)、硫黄(S)、酸素(O)等の元素を分析する元素分析装置に関し、特に元素分析装置に用いられる上部電極及び下部電極を清掃するための清掃ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の元素分析装置において、例えば特許文献1に示すように、上部電極及び下部電極に狭持された黒鉛るつぼに測定試料を収容して、電圧を印加することにより、るつぼ内の測定試料を加熱溶解して、それによって生じたガスを分析して前記測定試料の元素を分析するものがある。
【0003】
このように、上部電極及び下部電極は黒鉛るつぼと接触しており、また、溶解した測定試料、フラックス等の一部が飛散して付着することから、上部電極及び下部電極が汚れてしまう。そして、電極面が汚れると、その汚れが電気抵抗になって、るつぼを狭持したときに、るつぼに電流が流れにくくなり、測定試料などの加熱が不十分になって、分析用ガスの抽出性能が低下する等の問題がある。
【0004】
したがって、分析用ガスの抽出が終わると上部電極及び下部電極の清掃を行うことが必要である。
【0005】
そして従来、上部電極及び下部電極を清掃するものとして、特許文献2に示す自動清掃装置がある。
【0006】
この自動清掃装置は、上部電極を清掃する回転ブラシ及び下部電極を清掃する回転ブラシを有する清掃ユニットを上部電極及び下部電極の間に位置させ、下部電極を上昇させることにより、清掃ユニットを上昇させて、各回転ブラシを各電極に圧接させた後に、回転ブラシを回転させて、電極を清掃するというものである。
【0007】
しかしながら、各回転ブラシを各電極に圧接して回転することにより清掃するので、回転ブラシのブラシ毛がすり減ってしまい、回転ブラシが電極に十分に接触しなくなってしまう。その結果、電極の清掃が不十分になり、付着しているダスト等が電気抵抗になって、試料などの加熱が不十分になり、分析用ガスの抽出性能が低下してしまうという問題がある。
【特許文献1】特許2949501号公報
【特許文献2】特公昭58−23886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、上部電極又は下部電極に対する清掃体の位置を調節可能にすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る元素分析装置は、上部電極及び下部電極により、試料を収容するるつぼを狭持し、当該電極に電圧を印加することにより、前記るつぼを加熱して、前記試料によって生じるガスから前記試料の元素を分析する元素分析装置であって、前記上部電極及び前記下部電極により狭持されて、それら電極を清掃する清掃ユニットを備え、当該清掃ユニットが、前記上部電極を清掃する第1清掃体及び/又は前記下部電極を清掃する第2清掃体と、前記第1清掃体を上部電極側及び/又は第2清掃体を下部電極側に保持し、前記上部電極及び前記下部電極に狭持される保持部と、装置本体に設けられ、前記各清掃体が前記各電極に対向する対向位置及びその対向位置から離間した退避位置の間で前記保持部を移動するとともに、前記対向位置において前記保持部を昇降自在に支持する駆動昇降機構と、前記保持部の上部電極側及び/又は下部電極側に設けられ、前記保持部が前記上部電極及び前記下部電極により狭持されるときの、前記上部電極と前記第1清掃体との距離及び/又は前記下部電極と前記第2清掃体との距離を調節する距離調節機構と、を具備することを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、上部電極と第1清掃体との距離及び/又は下部電極と第2清掃体との距離を調節することができるので、第1清掃体又は第2清掃体がすり減って、各電極と十分な接触が得られなくなった場合に、それら清掃体と各電極と距離を調節することにより、十分な接触を図ることができ、電極の清掃を確実に行うことができる。
【0011】
距離調節機構の具体的な実施の態様としては、前記距離調節機構が、一端が前記保持部の上部電極側又は前記下部電極側に設けられ、他端に第1ねじ部を有する本体部と、一端に前記第1ねじ部に螺合する第2ねじ部を有し、他端が下部電極の昇降動作により前記上部電極又は前記下部電極と接触する可動部と、からなるものであることが挙げられる。
【0012】
清掃によるダストの飛散を防ぐためには、前記本体部及び前記可動部が、前記第1清掃体又は第2清掃体の周囲を包囲するものであり、前記可動部の電極開口縁が前記上部電極又は前記下部電極に接触することが望ましい。
【0013】
本体部及び可動部はねじ機構により連結されているので、本体部に対して可動部が回転し清掃体と電極との距離が変化してしまう可能性がある。この問題を解決するためには、前記距離調節機構が、前記本体部に対して前記可動部を固定するための固定機構を備えていることが望ましい。
【0014】
固定機構の具体的な実施の態様としては、前記固定機構が、前記可動部の側周壁に設けられた貫通孔と、前記本体部に固定され、前記貫通孔に嵌り込む突起部と、からなるものであることが考えられる。
【0015】
可動部の側周壁に設けられた貫通孔から外部にダストが飛散することを防止するためには、前記突起部が、前記保持部又は前記本体部に固定され、前記可動部を覆うカバー部材の内周面に設けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、電極に対する清掃体の距離を調節することができ、電極の清掃を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図1は元素分析装置1の電極部分3、4及び清掃ユニット6を主として示す断面図であり、図2は、元素分析装置1のガスフロー図であり、図3は吸着管ユニット100及びユニット取付機構200の模式図であり、図4は清掃ユニット6の斜視図であり、図5はカバー部材9を取り外した状態を示す部分拡大斜視図であり、図6は内部構造を省略した図1のA−A線断面図であり、図7は清掃ユニット6の手順を示す図である。
【0018】
<装置構成>
【0019】
本実施形態に係る元素分析装置1は、金属中に含まれる元素を分析する金属中元素分析装置であって、金属などの測定試料及び/又はフラックス(以下、特に区別しないときは「試料」という。)を収容する黒鉛るつぼ2を上部電極3と下部電極4とで狭持して、上部電極3の上側に設けられた試料導入部5から前記るつぼ2に試料を導入し、電圧を印加する(るつぼ2に通電する)ことにより、るつぼ2内の試料を加熱溶解して、その時に発生する分析用ガスを図示しない分析部に送って分析し、測定試料に含まれる元素を分析するものである。
【0020】
本実施形態の分析部としては、例えば一酸化炭素(CO)を測定する非分散赤外線検出器等の酸素成分検出部と、例えば窒素(N)を測定する熱伝導度検出器等の窒素成分検出部とが考えられる。その他、水素成分分析部や硫黄成分検出部などでも良い。
【0021】
上部電極3は、図1に示すように、試料導入部5の下部に固定され、その下側に開口したるつぼ収容空間S1を有している。その空間S1の上面には、るつぼ2(図4)の上端面と接触して電圧を印加するための電極面31が形成されている。また、るつぼ収容空間S1の内周面は、測定時に下部電極4がシール部材(Oリング)を介して気密に嵌合される。また、上部電極3の側壁(下部電極4が嵌合される部分より上)には、分析用ガスを図示しない分析部に導くための導入管(図示しない)が接続されるガス取り出し孔(図示しない)が設けられている。上部電極3の内部には、冷却水を流通させるための流通路S2が形成されている。なお、電極面31には、保護のためタングステンからなる環状板が固定されている。この環状板には、径方向に延びる凹部が、円周方向に複数設けられており、これにより上部電極3及び下部電極4でるつぼ2を狭持しても、るつぼ内部の空間とるつぼ収容空間S1、ひいては導入管と繋がり、分析用ガスを導入管に導くことができる。
【0022】
また、下部電極4は、図1に示すように、電極面41上に黒鉛るつぼ2が載置され、例えば下部電極4が、図示しない昇降機構により上部電極3に対して昇降移動するものである。また、下部電極4の内部には、冷却水を流通させる流通路S3が形成されている。なお、電極面41も、前記上部電極3の電極面31同様、保護のためタングステンからなる円板が固定されている。
【0023】
このように構成した元素分析装置1のガスフロー図を図2に示す。
【0024】
上部電極3及び下部電極4から構成される抽出炉により抽出された分析用ガスは、キャリアガス(例えばHeガス)とともに、ダストフィルタを介して、一酸化炭素を測定する非分散赤外線検出器に導入される。その後、装置内部に設けられた酸化部(酸化銅)により一酸化炭素が二酸化炭素(CO)に酸化される。そして、そのガスから二酸化炭素及び水を吸着除去するための脱二酸化炭素部、脱水部が設けられている。この脱二酸化炭素部、脱水部により二酸化炭素及び水が除去されたキャリアガス及び分析用ガスは、窒素(N)を測定する熱伝導度検出器に導入される。
【0025】
ダストフィルタ、脱二酸化炭素部及び脱水部はともに、吸着管ユニット100により構成されている。
【0026】
吸着管ユニット100は、キャリアガス及び分析用ガスが流れる流通路上に設けられ、そのガスから特定の成分を吸着して除去するものであり、図3に示すように、前記特定成分を吸着する吸着剤が充填された円筒状の充填管101と、当該充填管101の両端開口部101aを閉塞する弾性体からなる閉塞部材102とからなる。充填管101は、例えば耐熱透明ガラス管である。また、閉塞部材102は、耐熱性を有し、一定の弾力性を有するものであり、充填管101の開口部101aを気密に閉塞する。また、閉塞部材102は、後述するユニット取付機構200のニードル管202、203が突き刺さりやすくするため、中央部分に十字状の肉薄部(溝)が形成されている。
【0027】
この吸着管ユニット100の製造方法は、まず充填管101の一方の開口部101aを閉塞部材102により気密に閉塞し、他方の開口部101aから吸着剤を充填する。そして、他方の開口部101aを閉塞部材102により気密に閉塞する。
【0028】
ダストフィルタの吸着管ユニット100には、吸着剤として石英ウールを充填し、脱二酸化炭素部の吸着管ユニット100には、吸着剤としてアスカライト(登録商標)を充填し、脱水部の吸着管ユニット100には、吸着剤として過塩素酸マグネシウムを充填する。なお、脱二酸化炭素部及び脱水部を1つの吸着管ユニット100として構成する場合には、吸着剤としてアスカライト及び過塩素酸マグネシウムを充填する。
【0029】
また、吸着管ユニット100は、装置本体に設けられたユニット取付機構200により、流通路上に設けられる。
【0030】
ユニット取付機構200は、図3に示すように、装置本体に設けられ、長尺形状をなす枠体201と、当該枠体201の一端部に設けられ、吸着管ユニット100の一方の閉塞部材102に突き刺さる第1ニードル管202と、当該第1ニードル管202に対して進退移動可能に前記枠体201の他端部に設けられ、前記吸着管ユニット100の他方の閉塞部材102に突き刺さる第2ニードル管203と、を備えている。
【0031】
第1ニードル管202は、枠体201に固定された接続部204により流通管12に接続されている。また、第2ニードル管203は、枠体201に対して進退移動可能なねじ部205の先端に設けられ、このねじ部205により流通管12に接続されている。このねじ部205は、枠体201に回転可能に設けられたナット部206と螺合しており、ナット部206を回転させることにより、第1ニードル管202に対して第2ニードル管203が進退移動する。なお、第2ニードル管203を進退移動させる機構としては、ねじ機構に限られない。
【0032】
また、枠体201には、吸着管の取り付けを容易にするための案内片207が設けられている。この案内片207は、吸着管ユニット100の軸方向への移動のみを許容するものであり、吸着管ユニット100を案内片207に接触させると、閉塞部材102が、ニードル管202、203と例えばほぼ同軸になり、閉塞部材102の前記薄肉部がニードル管202、203の先端と対向する。
【0033】
ユニット取付機構200による吸着管ユニット100の取り付け手順について説明する。まず吸着管ユニット100を枠体201の案内片207に接触させる。その後、吸着管ユニット100の一方の閉塞部材102を第2ニードル管203に押し当てて、第2ニードル管203を閉塞部材102に突き刺す。その後、他方の閉塞部材102に第1ニードル管202が突き刺さるまで、ナット部206を回転させる。このとき、閉塞部材102が、弾性体から形成されているので、ニードル管202、203との気密性が保たれつつ、キャリアガス及び分析用ガスが、吸着管ユニット100内を流れる。
【0034】
この吸着管ユニット100により、従来のように吸着管内の吸着剤のみを交換(再充填)するという煩わしい作業を省くことができ、吸着剤の交換作業を簡単化することができる。
【0035】
しかして、本実施形態の元素分析装置1は清掃ユニット6を備えている。
【0036】
この清掃ユニット6は、上部電極3及び下部電極4により狭持されて、それら電極3、4を清掃するものであり、第1清掃体61と、第2清掃体62と、第1清掃体61及び第2清掃体62を保持する保持部63と、当該保持部63を下部電極4の動作により昇降自在に駆動する駆動昇降機構64と、下部電極4と第2清掃体62との距離を調節する距離調節機構65と、を備えている。
【0037】
以下、第1清掃体61、第2清掃体62、保持部63、駆動昇降機構64及び距離調節機構65について説明する。
【0038】
第1清掃体61(上部電極清掃体)は、図1及び図4に示すように、上部電極3を清掃するものであり、本実施形態では回転ブラシである。具体的には、第1清掃体61は、上部電極3の電極面31を清掃するため第1電極面ブラシ611と、上部電極3の試料通過孔3aを清掃するための通過孔ブラシ612と、それらブラシ611、612を保持する第1基体613とからなる。
【0039】
第1電極面ブラシ611は、例えばステンレス製のブラシ毛からなり、通過孔ブラシ612は、例えばナイロン製のブラシ毛からなる。また、通過孔ブラシ612は、電極面ブラシ611よりも先端側に設けられている。第1基体613は、後述する清掃体回転機構7の第1駆動軸74に固定される。
【0040】
第2清掃体62(下部電極清掃体)は、図1に示すように、下部電極4を清掃するものであり、前記第1清掃体61と同様、回転ブラシである。具体的には、第2清掃体62は、下部電極4の電極面を清掃する第2電極面ブラシ621と、下部電極4の電極面41の周辺部を清掃するための周辺部ブラシ622と、それらブラシを保持する第2基体623とからなる。
【0041】
第2電極面ブラシ621は、例えばステンレス製のブラシ毛からなり、周辺部ブラシ622は、例えばナイロン製のブラシ毛からなる。なお、第2電極面ブラシ621の外側に周辺部ブラシ622が設けられている。第2基体623は、後述する清掃体回転機構7の第2駆動軸75に固定される。
【0042】
保持部63は、図1及び図4に示すように、上部電極3及び下部電極4に狭持されるものであり、基端部が後述する駆動昇降機構64の回転軸642に連結され、その先端部の上部電極3側に第1清掃体61を保持し、下部電極4側に第2清掃体62を保持する。
【0043】
また、保持部63は、内部に吸気通路63Aを有する(図1参照)。この吸気通路63Aは、保持部63基端側上面に形成された接続口と、保持部63先端側上面に形成された上部電極側開口及び保持部63先端側下面に設けられた下部電極側開口とを連通するものである。上部電極側開口は、第1駆動軸74と同心円上となるように形成されている。
【0044】
また、保持部63基端側上面には、接続口と連通するように、弾性材料からなる中空の連結体66が設けられている。そして、下部電極4の上昇動作により保持部63が上昇したときに、連結体66が、装置本体11に設けられた吸引口11Aと連結するようにしている。吸引口11Aは、装置1の外部に設けられた吸引装置(図示しない)に接続されている。
【0045】
さらに、保持部63において、上部電極側開口の開口縁には、上部電極3の下面と接触するシール部材67が設けられている。
【0046】
また、保持部63には、第1清掃体61及び第2清掃体62を回転するための清掃体回転機構7が設けられている。
【0047】
清掃体回転機構7は、図1に示すように、保持部63の基端側下面に固定されたモータ等のアクチュエータ71と、アクチュエータ71の駆動軸に固定された第1プーリ72と、保持部63の先端側に設けられた第2プーリ73と、当該第1プーリ72の回転駆動を第2プーリ73に伝達する伝達ベルト73と、第2プーリ73の上面に設けられ、第1清掃体61の第1基体に連結される第1駆動軸74と、第2プーリ73の下面に設けられ、第2清掃体62の第2基体に連結される第2駆動軸75とからなる。なお、アクチュエータは、図示しない制御部により制御される。
【0048】
駆動昇降機構64は、装置本体11に設けられ、各清掃体61、62が各電極3、4に対向する対向位置及びその対向位置から離間した退避位置の間で、保持部63を進退移動するとともに、前記対向位置において前記下部電極4の昇降動作により前記保持部63を昇降自在に支持するものである。
【0049】
具体的には、駆動昇降機構64は、図1に示すように、保持部63が固定される固定部641と、その固定部641に設けられた貫通孔に相対回転不能且つ軸方向にスライド可能に挿通された回転軸642と、当該回転軸642の下端部に連結され、当該回転軸642を回転させるアクチュエータ643とからなる。これらは、ブラケット644により装置本体11に固定される。なお、アクチュエータ643は、図示しない制御部により制御される。
【0050】
このような駆動昇降機構64により、アクチュエータ643により回転軸642を回転させると、回転軸642と相対回転不能な保持部63も回転する。これにより、保持部63は、回転軸642を回転中心として、対向位置と退避位置との間を回転移動する。
【0051】
また、回転軸642と固定部641とは軸方向にスライド可能であり、保持部63が下部電極4により押し上げられるに従って、保持部63は回転軸642をスライドして上昇する。
【0052】
距離調節機構65は、本実施形態では、保持部63の下部電極4側に設けられ、保持部63が上部電極3及び前記下部電極4により狭持されるときの、下部電極4と第2清掃体62との距離、つまり下部電極4の電極面41に対する第2清掃体62の高さを調節するものである。
【0053】
その構成は、図1、図4及び/又は図5に示すように、保持部63が上部電極3及び下部電極4により狭持されるときに、保持部63と下部電極4との間に介在するものであり、保持部63に固定される本体部651と、下部電極4に接触し、その接触部と本体部651と距離が調節可能に本体部651に設けられる可動部652とからなる。
【0054】
本体部651は、保持部63の先端側下面に固定され、第1ねじ部6511を有するものである。
【0055】
そして本体部651は、第2清掃体62の基端側周囲を包囲するものであり、第2駆動軸75と同心円上に形成された内側周面を有し、その内側周面に可動部652が螺合される第1ねじ部6511が形成されている。また、本体部651は、第1ねじ部6511よりも下部電極4側において、第2清掃体62を向く方向に開口し、本体部651の下部電極側開口と連通する吸気路651aを内部に有する。
【0056】
可動部652は、概略管状をなすものであり、前記第1ねじ部6511に螺合する第2ねじ部6521と、第2清掃体62の先端側周囲を包囲し、下部電極4の昇降動作により下部電極4と接触する接触部を有する筒部6522と、からなる。このとき、接触部は、筒部6522の電極側開口縁である。このように、筒部6522の電極側開口縁が下部電極4と接触しているので、清掃による外部へのダストの飛散を防ぐことができ、作業環境の悪化を防止できる。
【0057】
そして、第2ねじ部6521を第1ねじ部6511に螺合させることにより、可動部652が本体部651に取り付けられ、可動部652を螺進又は螺退させることによって、本体部651と接触部との距離が調節され、第2電極面ブラシ621と下部電極4との相対的位置が近づき又は遠のく。
【0058】
さらに距離調節機構65は、本体部651に対して可動部652を固定するための固定機構8を備えている。
【0059】
固定機構8は、図6に示すように、可動部652の側周壁に設けられた凹部としての貫通孔81と、本体部651に固定され、貫通孔81に嵌り込む突起部82とからなる。
【0060】
貫通孔81は、可動部652の側周壁に、正面視において、第1ねじ部6511から筒部6522に向けて概略U字状をなすように形成されている(図5参照)。なお、貫通孔81の形状は、概略U字形状に限られず、円形状等であってもよい。
【0061】
本実施形態の貫通孔81は、可動部652の周方向において、等間隔に複数個設けられている。本実施形態では、図6に示すように4つである。このように貫通孔81を等間隔で複数個設けているので、本体部651に対する可動部652の回転を所定角度毎に行うことができ、第2清掃体62と下部電極4との距離において、所定距離毎の調節が可能になる。また、貫通孔81としているので、可動部652内部にある第2清掃体62の状態を見ることができる。
【0062】
突起部82は、可動部652を覆うカバー部材9の内周面に設けられている。
【0063】
このカバー部材9は、図6に示すように、平面視において概略U字状をなすものであり、その両端部には装着時に本体部651の後端部に引っ掛かる係止凸部91が形成されている。また、カバー部材9の上端には、保持部63に設けられたスライド溝631にスライドして嵌る挿着部92が設けられている(図5参照)。
【0064】
そして、挿着部92をスライド溝631に挿入して、本体部651の後端部に係止凸部91が係止するようにカバー部材9を本体部651に取り付けると、カバー部材9の内周面に設けた突起部82が、可動部652に設けた貫通孔81に嵌り込む。このとき、カバー部材9により可動部652を固定した状態において、固定された貫通孔81の反対側にある貫通孔81は、本体部651の吸気路651aの開口に相対する位置に有り、下部電極4からのダストを好適に吸引することができる。
【0065】
この固定機構8により、清掃時等において、可動部652が本体部651に固定されるので、可動部652が勝手に回転して第2清掃体62と下部電極4との距離が変化することを防ぐことができる。
【0066】
また、カバー部材9により固定機構8の突起部82を構成していることから、可動部652の側周壁に設けられた貫通孔81から外部にダストが飛散することを防止することができる。
【0067】
<清掃手順>
【0068】
次に、このように構成した清掃ユニット6の清掃手順について説明する。
【0069】
まず、駆動昇降機構64により、退避位置にある保持部63を対向位置に回転移動させる(図7(a))。このとき、本体部651の回転方向を向く側面に設けたるつぼ除去手段6512が下部電極4上のるつぼを除去する。
【0070】
そして、下部電極4を上昇させると、下部電極4の電極面41の周辺部は、可動部652の電極側開口縁に接触する(図7(b))。このとき、第2清掃体62のブラシ621、622は、下部電極4の電極面41及びその周辺部に押圧接触した状態である。
【0071】
その後、下部電極4を上昇させると、保持部63が持ち上げられ、保持部63の先端側上面に設けたシール部材67が、上部電極3の下面に接触する(図7(c))。このとき、第1清掃体61のブラシ611、612は、上部電極3の電極面31及び試料通過孔3aに押圧接触した状態である。また、連結体66は、装置本体11に設けられた吸引口11Aに接続される。
【0072】
次に、清掃体回転機構7により清掃体61、62を回転させると、上部電極3及び下部電極4の清掃が行われる。このとき、上部電極3に生じるダストは、上部電極3側開口から吸引されて、保持部63の吸気通路63Aを通り吸引口11Aから外部に排出される。また、下部電極4に生じるダストは、本体部651の吸気路651a及び保持部63の吸気通路63Aを通り吸引口11Aから外部に排出される。
【0073】
清掃後、下部電極4を下降させると、対向位置において可動部652の電極側開口縁と、下部電極4における電極面41の周辺部とが離れる。その後、駆動昇降機構64により、保持部63を退避位置に回転移動させる。
【0074】
<距離調節手順>
【0075】
次に、第2清掃体62のブラシ621、622が摩耗によりすり減った場合において、距離調節機構65を用いて、下部電極4と第2清掃体62との距離を小さくする調節手順について説明する。
【0076】
まず、図5に示す破線矢印方向にカバー部材9を本体部651から取り外す。その後、貫通孔81から第2清掃体62の状態を観察し、下部電極4と十分な接触を保てる程度に、図5中の実線矢印方向に、可動部652を回転させる。このとき、可動部652を一定角度回転させる度に、可動部652を下部電極4に被せて、第2清掃体62のブラシ621、622と電極面41及びその周辺部との接触具合を貫通孔81から観察することができる。
【0077】
なお、下部電極4と第2清掃体62との距離を大きくする場合には、図中の矢印方向とは逆に回転させればよい。
【0078】
<本実施形態の効果>
【0079】
このように構成した本実施形態に係る元素分析装置1によれば、下部電極4と第2清掃体62との距離を調節することができるので、第2清掃体62がすり減って、下部電極4と十分な接触が得られなくなった場合に、第2清掃体62と下部電極4との距離を調節することにより、十分な接触を図ることができ、下部電極4の清掃を確実に行うことができる。したがって、下部電極4の清掃が不十分になり、付着しているダスト等が電気抵抗になって、試料などの加熱が不十分になり、分析用ガスの抽出性能が低下してしまうという問題を解決することができる。
【0080】
<その他の変形実施形態>
【0081】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0082】
例えば、前記実施形態では、距離調節機構65を下部電極4側に設けているが、上部電極3側に設けても良い。また、下部電極4側及び上部電極3側の両方に設けても良い。
【0083】
また、前記距離調節機構65の本体部651は、吸気路651aを有さず、第1ねじ部6511のみを有するものであっても良い。
【0084】
さらに、前記距離調節機構65は、ねじ機構を用いたものであったが、その他の機構を用いたものであっても良い。例えば、距離調節機構65が、保持部63に固定された本体部651と、当該本体部651に対して進退移動可能に設けられた可動部652と、本体部651に対して可動部652をラッチ固定するラッチ固定部とを備えているものであっても良い。
【0085】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本実施形態に係る元素分析装置の電極部分及び清掃ユニットを主として示す断面図。
【図2】同実施形態における元素分析装置のガスフロー図。
【図3】同実施形態における吸着管ユニット及びユニット取付機構の模式図。
【図4】同実施形態における清掃ユニットの斜視図。
【図5】同実施形態における清掃ユニットのカバー部材を取り外した状態を示す部分拡大斜視図
【図6】内部構造を省略した図1のA−A線断面図。
【図7】清掃手順を示す模式図。
【符号の説明】
【0087】
1 ・・・元素分析装置
2 ・・・るつぼ
3 ・・・上部電極
4 ・・・下部電極
6 ・・・清掃ユニット
61 ・・・第1清掃体
62 ・・・第2清掃体
63 ・・・保持部
64 ・・・駆動昇降機構
65 ・・・距離調節機構
651 ・・・本体部
6511・・・第1ねじ部
652 ・・・可動部
6521・・・第2ねじ部
8 ・・・固定機構
81 ・・・貫通孔
82 ・・・突起部
9 ・・・カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極及び下部電極により、試料を収容するるつぼを狭持し、当該電極に電圧を印加することにより、前記るつぼを加熱して、前記試料によって生じるガスから前記試料の元素を分析する元素分析装置であって、
前記上部電極及び前記下部電極により狭持されて、それら電極を清掃する清掃ユニットを備え、
当該清掃ユニットが、
前記上部電極を清掃する第1清掃体及び/又は前記下部電極を清掃する第2清掃体と、
前記第1清掃体を上部電極側及び/又は第2清掃体を下部電極側に保持し、前記上部電極及び前記下部電極に狭持される保持部と、
装置本体に設けられ、前記各清掃体が前記各電極に対向する対向位置及びその対向位置から離間した退避位置の間で前記保持部を移動するとともに、前記対向位置において前記保持部を昇降自在に支持する駆動昇降機構と、
前記保持部の上部電極側及び/又は下部電極側に設けられ、前記保持部が前記上部電極及び前記下部電極により狭持されるときの、前記上部電極と前記第1清掃体との距離及び/又は前記下部電極と前記第2清掃体との距離を調節する距離調節機構と、を具備する元素分析装置。
【請求項2】
前記距離調節機構が、
前記保持部の上部電極側又は前記下部電極側に設けられ、第1ねじ部を有する本体部と、
前記第1ねじ部に螺合する第2ねじ部を有し、前記上部電極又は前記下部電極と接触する可動部と、からなる請求項1記載の元素分析装置。
【請求項3】
前記本体部及び前記可動部が、前記第1清掃体又は第2清掃体の周囲を包囲するものであり、
前記可動部の電極側開口縁が前記上部電極又は前記下部電極に接触する請求項2記載の元素分析装置。
【請求項4】
前記距離調節機構が、前記本体部に対して前記可動部を固定するための固定機構を備えている請求項2又は3記載の元素分析装置。
【請求項5】
前記固定機構が、
前記可動部の側周壁に設けられた貫通孔と、
前記本体部に対して固定され、前記貫通孔に嵌り込む突起部と、からなる請求項4記載の元素分析装置。
【請求項6】
前記突起部が、前記保持部又は前記本体部に固定され、前記可動部を覆うカバー部材の内周面に設けられている請求項5記載の元素分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−53121(P2009−53121A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−221877(P2007−221877)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】