説明

元素分析装置

【課題】元素分析装置における電極の清掃又は交換などメンテナンスにおいて、電極内部の残留冷却水を簡単に排水できる。
【解決手段】元素分析装置100の上部電極3が、装置本体に固定される本体部31と、本体部31に着脱可能に取り付けられる分離部32とに分離可能であり、本体部31及び分離部32により内部に冷却水が流通する内部流通路S3が形成される。そして、上部電極3には、内部流通路S3に冷却水を導入する冷却水導入ポートP1と、内部流通路S3から冷却水を導出する冷却水導出ポートP2と、内部流通路S3から冷却水導入ポートP1又は冷却水導出ポートP2へ残留冷却水を排出するために内部流通路S3内に空気が導入される空気導入ポートP3と、が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、元素分析装置に関し、特に元素分析装置に用いられる電極に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の元素分析装置において、例えば特許文献1に示すように、上部電極及び下部電極に狭持されたるつぼに測定試料を収容して、電圧を印加することにより、るつぼ内の測定試料を加熱溶解して、それによって生じたガスを分析して前記測定試料の元素を分析するものがある。
【0003】
そして、上部電極は、装置本体に固定される本体部と、当該本体部に着脱可能に取り付けられ、るつぼと接触する電極面を有する分離部とからなり、本体部の嵌合部(嵌合孔)に、分離部の被嵌合部を、Oリング等のシール部材を介して冷却水に対して液密(気密)に嵌め込むことにより取り付けられる。このとき、本体部及び分離部により上部電極の内部に冷却水が流通する内部流通路が形成される。
【0004】
ここで、るつぼには黒鉛製のものを用いることがあり、測定後に電極面を含む分離部全体が汚れてしまったり、また、測定を繰り返すと電極面が損耗してしまったりすることから、上部電極を定期的に清掃や交換などのメンテナンスを行う必要がある。
【0005】
そして、このメンテナンスの際に、内部流通路内の冷却水を廃棄する必要があるところ、従来は、上部電極の冷却水導入ポート及び冷却水導出ポートに接続された冷却水導入管及び冷却水導出管を外し、内部流通路を大気開放して内部の冷却水を排水するようにしている。
【0006】
しかしながら、メンテナンス等において、本体部から分離部を取り外す際に、内部流通路内に冷却水が残留していると、分離部を取り外したときに外部に漏れ出て作業者及び周囲を濡らしてしまい、作業に支障をきたすという問題がある。また、この問題は、冷却水導出ポートを内部流通路内においてできるだけ低い位置に設けることによって、内部流通路内に残留する冷却水を少なくすることができるものの、残留する冷却水を完全に除去することはできず、電極を取り外す際にどうしても冷却水が漏れ出てしまうという問題がある。
【特許文献1】特公平07−40027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、元素分析装置における電極の清掃又は交換などメンテナンスにおいて、電極内部の冷却水を簡単に排水できるようにして、作業性を向上させることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る元素分析装置は、試料を収容するるつぼを一対の電極により狭持し、当該電極に電圧を印加することにより、前記るつぼを加熱して、それによって生じるガスから前記試料の元素を分析する元素分析装置であって、前記少なくとも一方の電極が、装置本体に固定される本体部と、前記本体部に着脱可能に取り付けられ、るつぼに接触する分離部と、前記本体部及び前記分離部により内部に形成され、冷却水を流通させるための内部流通路と、前記内部流通路に冷却水を導入する冷却水導入ポートと、前記内部流通路から冷却水を導出する冷却水導出ポートと、前記内部流通路から前記冷却水導入ポート又は前記冷却水導出ポートへ残留冷却水を排出するために当該内部流通路内に空気を導入する空気導入ポートと、を具備することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、電極の清掃又は交換などのメンテナンスにおいて、本体部から分離部を取り外す前に、空気導入ポートから空気を送り込むことによって、内部流通路に残留する冷却水を冷却水導入ポート又は冷却水導出ポートから排出することができる。したがって、流通路内に残留する冷却水を簡単に排水することができ、メンテナンスなどの作業性を向上させることができる。
【0010】
内部流通路内において冷却水を満遍なく流通させるとともに、本体部から分離部の取り外し前において、残留冷却水をできるだけ完全に排出できるようにするためには、前記冷却水導入ポート及び前記冷却水導出ポートが同一側に設けられ、前記空気導入ポートが前記冷却水導入ポート及び冷却水導出ポートの反対側に設けられていることが望ましい。
【0011】
分離部が消耗品である場合において、分離部に冷却水導入ポート、冷却水導出ポート又は空気導入ポートが設けられるものであれば、製造コストが高くなってしまうという問題がある。この問題を解決するためには、前記冷却水導入ポート、冷却水導出ポート及び空気導入ポートが本体部に設けられていることが望ましい。
【0012】
分析工程において冷却水が空気導入ポートに流入しないようにするためには、前記空気導入ポートに接続された開閉弁と、前記開閉弁を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置が、分析工程において、前記開閉弁を閉塞して前記空気導入ポートを遮断し、電極分解工程において、前記開閉弁を開放して前記空気導入ポートから空気を導入することが望ましい。これならば、開閉弁を自動で切り換えることができ、分析工程(冷却水循環時)において、誤って開閉弁を開放した状態を防止できる安全な構成にすることができる。
【0013】
前記電極の一方を駆動するエアシリンダ、及び当該エアシリンダに圧縮空気を供給する圧縮空気源を有する駆動機構を備えるものである場合において、前記空気導入ポートに接続される空気供給管が、前記駆動機構の圧縮空気源に接続されていることが望ましい。これならば、元素分析装置の構成を簡単にするとともに小型化できる。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、元素分析装置における電極の清掃又は交換などメンテナンスにおいて、電極内部の冷却水を簡単に排水できるようにして、作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図1は元素分析装置100のるつぼ2をセットした状態を示す電極部分を主として示す断面図、図2は上部電極3の分離斜視図、図3は上部電極3の側面図、図4は上部電極3の平面図である。なお、図3及び図4には、冷却水導入ポートP1、冷却水導出ポートP2及び空気導入ポートP3は図示しない。
【0016】
<装置構成>
【0017】
本実施形態に係る元素分析装置100は、金属試料中に含まれる元素を分析する元素分析装置であって、図1に示すように、金属試料及び/又はフラックス(以下、特に区別しない場合は「試料」という。)を収容する黒鉛るつぼ2を上部電極3と下部電極4とで狭持して、上部電極3の上側に設けられた試料導入部111によって、前記るつぼ2に試料を投入し、電圧を印加する(るつぼ2に通電する)ことにより、るつぼ2内の試料を加熱溶解して、その時に発生する分析用ガスを図示しない分析部に送って分析し、測定試料に含まれる元素を分析するものである。
【0018】
本実施形態の分析部としては、例えば一酸化炭素(CO)を測定する非分散赤外線検出器等の酸素成分検出部と、例えば窒素(N)を測定する熱伝導度検出器等の窒素成分検出部とが考えられる。その他、水素成分分析部などでも良い。
【0019】
また、下部電極4は、電極面41上に黒鉛るつぼ2が載置され、図示しない昇降機構により上部電極3に対して昇降移動するものである。なお、昇降機構は、エアシリンダと、当該エアシリンダに電磁弁を介して圧縮空気を供給する圧縮空気源と、を備えている。電磁弁は、図示しない制御機器により制御される。
【0020】
また、下部電極4の内部には、冷却水を流通させる流通路S1が形成されている。図1中、4Aは、流通路S1内に冷却水を導入するための冷却水導入ポートであり、4Bは、流通路S1から外部に冷却水を導出するための冷却水導出ポートである。なお、電極面41上には、保護のためタングステンからなる円板が固定されている。
【0021】
しかして、本実施形態の元素分析装置100の上部電極3は、図1〜図4に示すように、装置本体11に固定される本体部31と、その本体部31にシール部材33を介して回動可能に取り付けられ、るつぼ2に接触する電極面323を有する分離部32と、本体部31及び分離部32により内部に形成され、冷却水を流通させるための内部流通路S3と、内部流通路S3に冷却水を導入する冷却水導入ポートP1と、内部流通路S3から冷却水を導出する冷却水導出ポートP2と、内部流通路S3から冷却水導入ポートP1又は冷却水導出ポートP2へ残留冷却水を排出するために内部流通路S3内に空気を導入する空気導入ポートP3と、を備えている。
【0022】
本体部31は、特に図1及び図2に示すように、概略回転体形状をなす筒状部材であり、装置本体11の試料投入部111の下端部にねじ等により固定されている。
【0023】
分離部32は、特に図1及び図2に示すように、概略回転体形状をなす筒状部材であり、本体部31の下面とシール部材(Oリング)33を介して気密に接触する大径部321と、当該大径部321の上面に同軸上に設けられ、本体部31内に挿入されて、本体部31の上端開口311とシール部材(Oリング)33を介して気密に嵌合する小径部322とからなる。
【0024】
また、分離部32は、その下側に開口したるつぼ収容空間S2が形成され、その空間S2の上面には、るつぼ2の上端面と接触して電圧を印加するための電極面323が形成されている。電極面323には、保護のためタングステンからなる環状板が固定されている。この環状板には、内側周面から外側周面に向かって径方向に延びる凹溝が、円周方向に複数設けられており、これにより上部電極3及び下部電極4でるつぼ2を狭持しても、るつぼ内部の空間とるつぼ収容空間S2、さらには、るつぼ内部の空間と導入管6とが繋がり、分析用ガスを導入管6に導くことができる。
【0025】
るつぼ収容空間S2を形成する大径部321の内周面には、測定時に下部電極4がシール部材(Oリング)を介して気密に嵌合される。また、大径部321の側壁(下部電極4が嵌合される部分より上)には、分析用ガスを図示しない分析部に導くための導入管6が接続されるガス取り出し孔321aが設けられている。
【0026】
そして、本体部31に分離部32を装着することによって、本体部31の内周面と分離部32の外周面とにより、上部電極3内部に冷却水を流通させる内部流通路S3が形成される。また、本体部31に分離部32を装着した際には、本体部31の下面と分離部32の大径部321の上面とが、シール部材(Oリング)33を介して、軸方向に対して垂直に接触する。なお、装着時には、ねじ7によって分離部32を本体部31に固定する。
【0027】
冷却水導入ポートP1、冷却水導出ポートP2、及び空気導入ポートP3は、図1に示すように、本体部31の側壁に設けられている。
【0028】
冷却水導入ポートP1には、図示しない冷却水供給管が接続され、冷却水導出ポートP2には、図示しない冷却水導出管が接続される。これら冷却水供給管及び冷却水導出管は、図示しないポンプに接続され、分析工程中、特に電極3、4への電圧印加時に冷却水が流される。
【0029】
また、冷却水導入ポートP1及び冷却水導出ポートP2は、本体部31において同一側に設けられ、冷却水導入ポートP1が上側に、冷却水導出ポートP2が下側に設けられている。そして、冷却水導入ポートP1から内部流通路S3に流入した冷却水は、内部流通路S3を循環して冷却水導出ポートP2から流出する。なお、後述する冷却水を排水する際にできるだけ冷却水を排水しやすくするため、冷却水導出ポートP2を内部流通路S3内において可及的に低い位置(下側)に設けている。
【0030】
一方、空気導入ポートP3は、本体部31において、前記冷却水導入ポートP1及び冷却水導出ポートP2とは反対側上部に設けられている。この空気導入ポートP3には開閉弁として電磁弁7が接続され、当該電磁弁7には、空気供給管8が接続されている。電磁弁7は図示しない制御装置により制御され、空気供給管8は、前述した昇降機構の圧縮空気源に接続されている。このように、共通の圧縮空気源を用いることにより、元素分析装置100の構成を簡単にするとともに小型化できる。なお、制御装置は、電磁弁7の制御の他に電極3、4への電圧印加又は冷却水の循環も制御するものであり、電磁弁7が開放されている状態において、電圧印加又は冷却水の循環を行わないようにしている。一方、制御装置は、電圧印加又は冷却水の循環を行っている状態において、電磁弁7を閉塞して開放しないようにしている。
【0031】
次に、電磁弁7の動作とともに、上部電極3のメンテナンス作業について説明する。
【0032】
分析工程において電磁弁7は閉塞されており、内部流通路S3には、冷却水が循環されている。そして、分析終了後、上部電極3の分離部32を分離して交換する電極分解工程において、まず、冷却水供給管を冷却水導入ポートP1から外し、冷却水導出管を冷却水導出ポートP2から外す。これにより、内部流通路S3を大気開放して、内部流通路S3内の冷却水の大半を排水する。
【0033】
次に、ユーザが制御装置を操作することにより、制御装置は、電磁弁7を開放して、内部流通路S3内に圧縮空気を一定時間吹き込む。これにより、内部流通路S3内に残留していた冷却水は、空気とともに主として冷却水導出ポートP2から外部に排出される。このとき、空気導入ポートP3は、冷却水導入ポートP1及び冷却水導出ポートP2の反対側に設けられているため、空気導入ポートP3から導入された圧縮空気は、直接的に冷却水導入ポートP1及び冷却水導出P2に向かって流れるため、残留冷却水を可及的に排出できる。そして、ユーザによる制御装置の操作又は予め記憶された制御プログラムによって、制御装置は電磁弁7を閉塞する。
【0034】
その後、ユーザが、分離部32を本体部31から分離して、清掃した分離部32又は新しい分離部32を装着する。また、本体部31の冷却水導入ポートP1に冷却水供給管及び冷却水導出ポートP2に冷却水導出管を接続する。これにより、上部電極3のメンテナンス作業が終了する。
【0035】
最後に、上部電極3に設けられた取り外し補助機構5について説明する。
【0036】
この取り外し補助機構5は、本体部31及び分離部32の間に介在して設けられ、回転方向の力を軸方向の力に変換して前記本体部31から分離部32の取り外しを補助するものである。
【0037】
この取り外し補助機構5は、特に図3等に示すように、本体部31に設けられ、軸方向に対して傾斜する案内面501と、分離部32に設けられ、本体部31に対して分離部32を回転させたときに案内面501上をスライド移動する被案内部502と、から構成される。本実施形態の案内面501は案内部材51に設けられ、被案内部502は被案内部材52に設けられている。
【0038】
案内部材51は、本体部31とは別体をなすものであり、本体部31の外側周面から外側に突出してするように、本体部31にねじ固定される(図2参照)。
【0039】
具体的に案内部材51は、図3及び図4に示すように、概略部分円環状(具体的には、概略1/4円環状)をなし、その周方向における所定位置から軸方向下側に折れ曲がっている第1屈曲部511を備え、当該第1屈曲部511の下面に前記案内面501が形成されている。
【0040】
つまり案内面501は、本体部31の外側周面から外側に延出し、平面視において本体部31の外周面に沿って設けられ(図4参照)、側面視において、分離部32の回転方向に対向するように、本体部31の下面よりも下方に傾斜した面である(図3参照)。
【0041】
また、案内部材51において、第1屈曲部511以外の平面部512の内側面には、本体部31の下面に設けられた固定凹部(図示しない)に嵌ってねじ留めされる突出固定部(図示しない)が2つ設けられている。
【0042】
さらに案内部材51は、本体部31の下面に本体部31の回転軸に対して軸対称となるように2つ設けられている(図4参照)。
【0043】
被案内部材52は、分離部32とは別体をなすものであり、分離部32の外側周面から外側に突出するように、分離部32にねじ固定される。
【0044】
具体的に被案内部材52は、図3及び図4に示すように、前記案内部材51とほぼ同一形状であり、略部分円環状(具体的には、概略1/4円環状)をなし、その周方向における所定位置において、前記案内部材51の第1屈曲部511に対向するように、軸方向下側に折れ曲がっている第2屈曲部521を備え、当該第2屈曲部521に前記被案内部である被案内面502が形成されている。
【0045】
つまり被案内面502は、分離部32の外側周面から外側に延出し、平面視において分離部32の外周面に沿って設けられ(図2参照)、側面視において、分離部32の回転方向を向くように、分離部32の大径部321の上面よりも下方に傾斜した面である(図3参照)。
【0046】
また、被案内部材52において、第2屈曲部521以外の平面部522の内側面には、前記案内部材51と同様、図2に示すように、分離部32の大径部321上面に設けられた固定凹部3211に嵌ってねじ留めされる突出固定部5211が2つ設けられている。
【0047】
さらに被案内部材52は、分離部32の大径部321上面に、分離部32の回転軸に対して軸対称となるように2つ設けられている。
【0048】
このような分離部32を本体部31に取り付ける際には、被案内面502が前記案内面501に対向するように、本体部31に装着し、ねじ7により固定する。一方、本体部31から分離部32を取り外す際には、ねじ7を取り外し、分離部32を本体部31に対して回転させることにより、被案内面502が案内面501に接触した後、案内面501上をスライド移動する。このとき、案内面501と被案内面502との接触面は、軸方向に対して傾斜する面である。これにより、分離部32の回転方向の力が軸方向(抜脱方向)の力に変換されて、分離部32を取り外すことができる。
【0049】
<本実施形態の効果>
【0050】
このように構成した本実施形態に係る元素分析装置100によれば、上部電極3の清掃又は交換などのメンテナンスにおいて、本体部31から分離部32を取り外す前に、空気導入ポートP3から空気を送り込むことによって、内部流通路S3に残留する冷却水を冷却水導入ポートP1又は冷却水導出ポートP2から排出することができる。したがって、内部流通路S3内に残留する冷却水を簡単に排水することができ、メンテナンスなどの作業性を向上させることができる。
【0051】
また、空気導入ポートP3に電磁弁7を介して空気供給管8が設けられ、当該電磁弁7は、制御装置により電極分離工程以外は閉塞され、電極分離工程のみ開放されるように自動制御されているので、分析工程(冷却水循環時)において、誤って電磁弁7を開放し、冷却水が空気供給管8内を逆流すること又は空気が内部流路S3内に流入することを防止できる。
【0052】
また、取り外し保持機構5を設けているので、シール部材(Oリング)33の軸方向(抜脱方向)の摩擦抵抗に関わらず、分離部32を本体部31に対して回転させるという簡単な操作のみで、本体部31から分離部32を取り外すことができ、電極3の清掃及び交換などのメンテナンスの作業性を向上させることができる。
【0053】
さらに、案内部材51及び被案内部材52はそれぞれ、本体部31及び分離部32と別体であることから、従来の本体部31及び分離部32への加工を可及的に少なくすることができる。つまり、本体部31と分離部32の大径部321との接触面を従来同様、軸方向に対して垂直にすることができ、本体部31及び分離部32の内部構造を変更する必要がない。
【0054】
その上、被案内部を被案内面502とし、案内面501と面接触するようにしているので、スライド移動に際して面圧の低減及び高剛性化が可能となり、分離部32の取り外しが確実になる。
【0055】
以上により本実施形態の元素分析装置100によれば、内部流通路S3内に残留する冷却水を簡単に排水することができるとともに、本体部31から分離部32を簡単に取り外すことができるので、上部電極3のメンテナンスの作業性を極めて向上させることができる。
【0056】
<その他の変形実施形態>
【0057】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0058】
例えば、前記実施形態では、冷却水導入ポート、冷却水導出ポート及び空気導入ポートが独立して設けられているが、空気導入ポートを冷却水導入ポート又は冷却水導出ポートと共通にしても良い。例えば空気導入ポート及び冷却水導入ポートを共通にした場合、冷却水導入ポートに接続される冷却水供給管の途中に空気供給管を分岐させるとともに、当該分岐点に切替弁を設けて、当該切替弁によって、冷却水の導入及び空気の導入を切り換えるようにしても良い。この場合、冷却水を排水するときは、冷却水導出ポートから冷却水導出管を外し、冷却水の排水を行う。
【0059】
また、前記実施形態では、冷却水導入ポート及び冷却水導出ポートが本体部の同一側に設けられ、冷却水導入ポートが上側、冷却水導出ポートが下側に設けられるものであったが、例えば各ポートを反対側に設ける等、本体部の同一側に設けないようにしても良いし、冷却水導入ポートを下側、冷却水導出ポートを上側に設けるようにしても良い。一方、空気導入ポートも冷却水導入ポート及び冷却水導出ポートの反対側に設けなくても良い。
【0060】
さらに、前記実施形態では、空気導入ポートから空気を導入する際に、冷却水導入ポート及び冷却水導出ポートの両方を開放しているが、一方のポートを閉塞して、他方のポートのみから空気及び残留冷却水が排出するようにしても良い。例えば、内部流通路の上側に設けられたポート(冷却水導入ポート)を閉塞して、下側に設けられたポート(冷却水導出ポート)のみから空気及び残留冷却水を排出する。これにより、残留冷却水をより完全に排出できるようになる。
【0061】
その上、前記実施形態の電磁弁は、空気導入ポートに直接接続されたものであったが、空気導入ポートに接続された空気導入管に電磁弁を設けるようにしても良い。
【0062】
加えて、前記実施形態では、ユーザが制御装置を操作することにより、制御装置が電磁弁を開放するようにしているが、例えば、冷却水導入ポート及び冷却水導出ポートそれぞれから冷却水供給管及び冷却水導出管が外されたことを検知して自動的に電磁弁を開放するようにしても良い。
【0063】
また、前記実施形態では、上部電極に適用した場合について説明したが、下部電極に適用しても良い。
【0064】
取り外し補助機構に関して言うと、例えば、前記実施形態では、案内面を本体部に、被案内部を分離部に設けたが、案内面を分離部に設け、被案内部を本体部に設けるようにしても良い。
【0065】
また、前記実施形態では、被案内部は第2屈曲部により形成された面であったが、被案内部が、分離部の外側周面に設けられたピン等のスライド部材であっても良い。
【0066】
さらに、取り外し補助機構を、本体部と分離部との接触面のうち全部又は一部を軸方向に対して傾斜させて構成しても良い。この場合、取り外し補助機構は、本体部の下面の全部又は一部に形成された軸方向に傾斜した第1傾斜面と、分離部(大径部)の上面の全部又は一部に形成され、本体部に分離部を取り付けたときに前記第1傾斜面と接触する第2傾斜面と、から構成される。
【0067】
加えて、前記実施形態では、取り外し補助機構を上部電極に設けたものであったが、下部電極に設けても良い。
【0068】
また、前記実施形態の空気供給管に、昇降機構の圧縮空気源とは異なる別の圧縮空気源を接続しても良い。
【0069】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施形態に係る元素分析装置のるつぼをセットした状態を示す電極部分を主として示す模式的断面図。
【図2】同実施形態における上部電極の分離斜視図。
【図3】同実施形態における上部電極の側面図。
【図4】同実施形態における上部電極の平面図。
【符号の説明】
【0071】
100・・・元素分析装置
R ・・・るつぼ
3 ・・・上部電極
31 ・・・本体部
32 ・・分離部
33 ・・・シール部材
4 ・・・下部電極
S3 ・・・内部流通路
P1 ・・・冷却水導入ポート
P2 ・・・冷却水導出ポート
P3 ・・・空気導入ポート
7 ・・・電磁弁
8 ・・・空気供給管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を収容するるつぼを一対の電極により狭持し、当該電極に電圧を印加することにより、前記るつぼを加熱して、それによって生じるガスから前記試料の元素を分析する元素分析装置であって、
前記少なくとも一方の電極が、
装置本体に固定される本体部と、
前記本体部に着脱可能に取り付けられ、るつぼに接触する分離部と、
前記本体部及び前記分離部により内部に形成され、冷却水を流通させるための内部流通路と、
前記内部流通路に冷却水を導入する冷却水導入ポートと、
前記内部流通路から冷却水を導出する冷却水導出ポートと、
前記内部流通路から前記冷却水導入ポート又は前記冷却水導出ポートへ残留冷却水を排出するために当該内部流通路内に空気を導入する空気導入ポートと、を具備する元素分析装置。
【請求項2】
前記冷却水導入ポート及び前記冷却水導出ポートが同一側に設けられ、
前記空気導入ポートが前記冷却水導入ポート及び冷却水導出ポートの反対側に設けられている請求項1記載の元素分析装置。
【請求項3】
前記空気導入ポートに接続された開閉弁と、
前記開閉弁を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置が、分析工程において、前記開閉弁を閉塞して前記空気導入ポートを遮断し、電極分解工程において、前記開閉弁を開放して前記空気導入ポートから空気を導入する請求項1又は2記載の元素分析装置。
【請求項4】
前記電極の一方を駆動するエアシリンダ、及び当該エアシリンダに圧縮空気を供給する圧縮空気源を有する駆動機構を備え、
前記空気導入ポートに接続される空気供給管が、前記駆動機構の圧縮空気源に接続されている請求項1、2又は3記載の元素分析装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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