説明

元素分析装置

【課題】下部電極の位置を可及的に低くして、その上方に設けられる上部電極3及び試料投入部4の高さ位置を低くし、作業性及び操作性を向上するとともに、元素分析装置の小型化を可能にする。
【解決手段】元素分析装置100において、下部電極2を昇降移動させるためのエアシリンダ等の昇降駆動部52を下部電極2の鉛直投影領域外、つまり下部電極2の側方に設け、下部電極2と昇降駆動部52を連結部材53により接続している。連結部材53は、下部電極2の下面2aにおいて、下部電極2の中心軸上に力が作用するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、元素分析装置に関し、特に元素分析装置に用いられる下部電極の昇降移動機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の元素分析装置において、例えば特許文献1に示すように、上部電極及び下部電極に狭持されたるつぼに測定試料を収容して、電圧を印加することにより、るつぼ内の測定試料を加熱溶解して、それによって生じたガスを分析して前記測定試料の元素を分析するものがある。
【0003】
そして、下部電極は、エアシリンダ等の昇降駆動部により上部電極に対して昇降移動するように構成されている。具体的には、特許文献2に示すように、昇降移動機構は、下部電極の下方に設けられ、下部電極の重心を通る鉛直線上(下部電極の中心軸)に力が加わるように構成されている。
【0004】
しかしながら、昇降駆動部を下部電極の下方に設けるものであると、下部電極の最下端位置が、昇降駆動部の設置スペースにより制限され、また、その設置スペースは、昇降駆動部のストローク量に応じて決定されるため、下部電極を低くすることには限界がある。
【0005】
また、下部電極の上方には、上部電極及び試料投入部が、この順で設けられており、下部電極の位置が高くなれば、当然上部電極及び試料投入部の位置も高くなってしまい、試料投入時などにおける装置の操作性及び作業性を低下させてしまうという問題がある。また、元素分析装置の小型化にも限界がある。
【特許文献1】特公平07−40027号公報
【特許文献2】特公昭58−23886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、下部電極の位置を可及的に低くして、その上方に設けられる上部電極及び試料投入部の高さ位置を低くし、作業性及び操作性を向上するとともに、元素分析装置の小型化を可能にすることをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係る元素分析装置は、上部電極及びその上部電極に対して昇降移動する下部電極を備え、それら電極により試料を収容するるつぼを狭持し、当該電極に電圧を印加することにより、前記るつぼを加熱して、それによって生じるガスから前記試料の元素を分析する元素分析装置であって、前記下部電極の鉛直投影領域外に設けられ、前記下部電極を昇降移動する昇降駆動部と、一端に前記下部電極を支持する支持部を有し、他端が前記昇降駆動部に接続される連結部材と、を具備することを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、下部電極の鉛直投影領域外に昇降駆動部が設け、下部電極の下方に昇降駆動部を設けない構造とすることができるので、下部電極の位置を低くすることができる。したがって、下部電極の上部に設けられる上部電極及び試料等入部の高さ位置を低くすることができ、試料投入時などの操作性及び作業性を向上させることができる。また、元素分析装置の高さを低くすることができ、小型化を可能にすることができる。
【0009】
下部電極がガイド機構によりその昇降移動を案内されるものである場合において、下部電極の姿勢を維持したまま昇降移動させることにより、ガイド機構がつかえることなくスムーズに昇降移動するためには、前記支持部が、前記下部電極の下面における重心位置を通る鉛直線上に接触又は接続されることが望ましい。
【0010】
上部電極及び下部電極によりるつぼを狭持した場合等に、連結部材が撓むことによって、下部電極の姿勢が変化してしまいガイド機構がつかえてしまうこと、或いは、上部電極及び下部電極によりるつぼを均等な力により狭持するためには、前記支持部と前記下部電極の下面との間に設けられ、前記支持部により与えられる力のうち、鉛直方向に沿った力のみを下部電極の下面に伝達するリンク機構を備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
このように構成した本発明によれば、下部電極の位置を可及的に低くして、その上方に設けられる上部電極及び試料投入部の高さ位置を低くし、作業性及び操作性を向上するとともに、元素分析装置の小型化を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図1は元素分析装置100の電極部分を主として示す斜視図、図2は下降位置Pにある下部電極2、連結部材53及び昇降駆動部52を示す模式図、図3は上昇位置Qにある下部電極2、連結部材53及び昇降駆動部52を示す模式図である。
【0013】
<装置構成>
【0014】
本実施形態に係る元素分析装置100は、金属試料中に含まれる元素を分析する元素分析装置100であって、図1に示すように、金属試料及び/又はフラックス(以下、特に区別しない場合は「試料」という。)を収容する黒鉛るつぼRを上部電極3と下部電極2とで狭持して、上部電極3の上側に設けられた試料投入部4によって、前記るつぼRに試料を投入し、電圧を印加する(るつぼRに通電する)ことにより、るつぼR内の試料を加熱溶解して、その時に発生する分析用ガスを図示しない分析部に送って分析し、測定試料に含まれる元素を分析するものである。
【0015】
本実施形態の分析部としては、例えば一酸化炭素(CO)を測定する非分散赤外線検出器等の酸素成分検出部と、例えば窒素(N)を測定する熱伝導度検出器等の窒素成分検出部とが考えられる。その他、水素成分分析部などでも良い。
【0016】
上部電極3は、基台101に立設された一対のベース部材102の上部に固定されている。また、当該上部電極3の上部には、上部電極3及び下部電極2により狭持されたるつぼRに試料を投入するための試料投入部4が固定される。
【0017】
下部電極2は、昇降移動機構5により、上部電極3から鉛直下方に離間し、電極面21上に黒鉛るつぼRが載置される下降位置P(図2参照)と、上部電極3との間でるつぼRを狭持する上昇位置Q(図3参照)との間を昇降移動するものである。
【0018】
昇降移動機構5は、図1〜図3に示すように、下部電極2の昇降移動を案内するガイド機構51と、下部電極2を昇降移動させる昇降駆動部52と、下部電極2及び昇降駆動部52を連結する連結部材53とを備えている。
【0019】
ガイド機構51は、一対のベース部材102の互いに対向する面と反対側の面に鉛直方向に沿って設けられたレール511と、当該レール511上をスライドするとともに、上部電極3に対向して下部電極2を保持するスライド部材512と、からなる。
【0020】
スライド部材512は、各ベース部材102に設けられたレール511に対して、両サイドから2つの転動体で挟み込むようにしてスライド可能に構成されている。
【0021】
昇降駆動部52は、後述する連結部材53の接続部532Aに接続される駆動軸521を有するエアシリンダである。このエアシリンダ52は、図示しない圧縮空気源から電磁弁を介して供給される空気圧により動作する。なお、電磁弁は、図示しない制御機器により制御される。
【0022】
また、昇降駆動部52は、図2等に示すように、下部電極2の鉛直投影(正投影)領域外に設けられており、下部電極2の側方に当該下部電極2と接触しないように設けられている。つまり、昇降駆動部52の鉛直投影領域が、下部電極2の鉛直投影領域と重ならないように設けられている。つまり、下部電極2と基台101との間に昇降駆動部52が設けられていない配置としている。
【0023】
さらに、本実施形態の下部電極2はガイド機構51により案内されるので、昇降駆動部52は、ガイド機構51の鉛直投影領域外に設けられている。つまり、ガイド機構51と基台101との間に昇降駆動部52が設けられていない配置としている。
【0024】
連結部材53は、側面視において概略L字形状をなすものである。具体的に連結部材53は、図2及び図3に示すように、下部電極2の下面2aに接続される支持部531Aを有し、当該下部電極2の下面2aに沿って設けられる水平部531と、当該水平部531に連続して設けられ、昇降駆動部52に接続される接続部532Aを有し、下部電極2の側面に沿って設けられる垂直部532とからなる。そして、連結部材53は、支持部531A以外において下部電極2に接触せず、支持部531Aのみが下部電極2に接続される構造としている。
【0025】
支持部531Aは、水平部531から鉛直上方に立設されている。また、水平部531は、下部電極2の下面2aとの間に隙間を形成するように設けられ、鉛直部532は、下部電極2の側面との間に空隙を形成するように設けられている。
【0026】
また、水平部531及び鉛直部532と下部電極2との間に形成された空隙は、下部電極2を昇降移動させる場合、又は下部電極2を上部電極3に嵌合させる場合等において、連結部材53が撓んだとしても、水平部531及び鉛直部532が下部電極2と接触しないように設定されている。
【0027】
支持部531Aは、下部電極2の下面2aにおける重心を通る鉛直線上に位置する。つまり、支持部531Aの中心軸は、下部電極2の重心を通る鉛直線(本実施形態では、下部電極2の中心軸と同じ)と略同軸上に設けられる。
【0028】
具体的に支持部531Aは、リンク機構54を介して下部電極2の下面2aに接続されている。このリンク機構54は、支持部531Aから受ける力のうち、鉛直方向に沿った力のみを下部電極2の下面2aに伝達するものである。
【0029】
本実施形態のリンク機構54は、自在継手を用いたものであり、例えばボールジョイントを用いることができる。これにより、連結部材53が撓むことにより、支持部531Aの中心軸が下部電極2の中心軸に対して傾いた場合であっても、支持部531Aの下部電極2に作用する力が、下部電極2の中心軸と同軸上となるようにしている。このようなものであれば、下部電極2には、常に鉛直方向の力だけが作用し、下部電極2の姿勢を保ちながら昇降移動させることができる。また、下部電極2及び連結部材53がリンク機構により接続されているので、下部電極2が上昇位置にある場合、下部電極2及び上部電極3はOリングにより密着されており、この下部電極2を下降位置Pに移動させる場合に、Oリングの摩擦に対抗して安定して下部電極2を上部電極3から抜脱することができる。
【0030】
接続部532Aは、後述する昇降駆動部52の駆動軸521に接続されている。また、本実施形態の昇降駆動部52は、その駆動軸521が下降位置Pにある下部電極2の下面2aよりも上方に位置するので、接続部532Aは、下部電極2の下面2aよりも上側であり、且つ下部電極2の側方に配置されることになる。
【0031】
<本実施形態の効果>
【0032】
このように構成した本実施形態に係る元素分析装置100によれば、連結部材53の接続部532Aが、下部電極2の鉛直投影よりも外部に位置し、昇降駆動部52が下部電極2の下側に配置されないので、下部電極2の位置を低くすることができる。したがって、下部電極2の上部に設けられる上部電極3及び試料等入部の高さ位置を低くすることができ、試料投入作業などの作業性及び操作性を向上させることができる。また、元素分析装置100の高さを低くすることができ、小型化を可能にすることができる。
【0033】
また、支持部531Aが下部電極の重心を通る鉛直線上に接続され、また、支持部531Aと下部電極2の下面2aとの間にリンク機構54が設けられているので、下部電極の昇降する姿勢を変化させることなく、昇降移動させることができ、ガイド機構51による下部電極の昇降移動をスムーズにすることができ、さらに、下部電極2及び上部電極3によりるつぼRを狭持する場合に、均等な力によりるつぼを挟み込むことができる。
【0034】
<その他の変形実施形態>
【0035】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。以下の説明において前記実施形態に対応する部材には同一の符号を付すこととする。
【0036】
例えば、前記実施形態では、連結部材の支持部及び下部電極の下面の間にリンク機構を設けているが、リンク機構を設けずに、支持部が下部電極の下面に実質的に点接触して、下部電極を支持するようにしても良い。
【0037】
また、前記実施形態の連結部材は、側面視において概略L字形状をなすものであったが、その他、支持部以外において下部電極と接触しない形状であれば良く、例えば、側面視において概略湾曲形状をなすものであっても良い。
【0038】
加えて、支持部は下部電極の下面において重心を通る鉛直線上に接続されているが、下部電極の下面においてその他の部分に接続されても良いし、下部電極の側面に接続されるものであっても良い。
【0039】
さらに、支持部は、下部電極に直接接続されるものであっても良いし、スライド部材などの中間部材を介して接続されているものであっても良い。
【0040】
また、黒鉛るつぼの他に、セラミックるつぼを用いるものであっても良い。この場合、分析装置本体は高周波加熱炉を備えるものであり、試料中に存在する炭素や硫黄などを分析するものであっても良い。
【0041】
その他、前述した実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係る元素分析装置の電極部分を主として示す斜視図。
【図2】下降位置にある下部電極、連結部材及び昇降駆動部を示す模式図。
【図3】上昇位置にある下部電極、連結部材及び昇降駆動部を示す模式図。
【符号の説明】
【0043】
100・・・元素分析装置
R ・・・るつぼ
2 ・・・下部電極
3 ・・・上部電極
52 ・・・昇降駆動部
53 ・・・連結部材
531A・・・支持部
54 ・・・リンク機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極及びその上部電極に対して昇降移動する下部電極を備え、それら電極により試料を収容するるつぼを狭持し、当該電極に電圧を印加することにより、前記るつぼを加熱して、それによって生じるガスから前記試料の元素を分析する元素分析装置であって、
前記下部電極の鉛直投影領域外に設けられ、前記下部電極を昇降移動する昇降駆動部と、
一端に前記下部電極を支持する支持部を有し、他端が前記昇降駆動部に接続される連結部材と、を具備する元素分析装置。
【請求項2】
前記支持部が、前記下部電極の下面における重心を通る鉛直線上に接触又は接続される請求項1記載の元素分析装置。
【請求項3】
前記支持部と前記下部電極の下面との間に設けられ、前記支持部により与えられる力のうち、鉛直方向に沿った力のみを下部電極の下面に伝達するリンク機構を備える請求項2記載の元素分析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate