説明

充填されたナノ粒子

充填されたナノ粒子は、反応性化学物質をカプセルに閉じ込めるナノサイズ・ポリマーシェルを含む。他の側面では、充填されたナノ粒子は、ポリマーに付着した反応性官能基を含むコアをカプセルに閉じ込めるナノサイズ・ポリマーシェルを含む。下記を含む充填されたナノ粒子を製造するミニエマルション重合工程である。モノマー、重合を助ける重合開始剤あるいは触媒、反応性化学物質、界面活性剤および水を含む混合物を用意し;水中で分散したナノサイズ粒子のミニエマルションを形成する混合物を煎断し、なおナノサイズ粒子は反応性化学物質と組み合わされたモノマーを含む;その後、ミニエマルションを加熱してモノマーを重合し、反応性化学物質をカプセルに閉じ込めるナノサイズ・ポリマーシェルを含む充填されたナノ粒子を製造する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
活性物質を含むポリマー・マイクロカプセルの生産について、種々のカプセル化方式が知られている。マイクロカプセルは、一般に次の一またはそれ以上の方法を使用して製造される。すなわち、二相分離、界面およびin situ重合、スプレー乾燥、スプレー凝結、溶剤蒸発およびコーティングである。
【0002】
多くのカプセル化の化学現象を利用できるが、従来方法のどれもが、触媒、機能性染料および反応中間体のような反応性化学物質を含むナノサイズ・カプセルを製造するプロセスを教示していない。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、反応性化学物質をカプセルに閉じ込めるナノサイズ・ポリマーシェルを含む充填されたナノ粒子に関する。
【0004】
さらに本発明は、ポリマーに付着した反応性官能基を含むコアをカプセルに閉じ込めるナノサイズ・ポリマーシェルを含む充填されたナノ粒子に関する。
【0005】
さらに本発明は、下記を備えた充填されたナノ粒子を製造するミニエマルション重合工程に関する:モノマーを含む混合物、重合を助ける重合開始剤あるいは触媒、反応性化学物質、界面活性剤および水を準備し;水中で分散したナノサイズ粒子のミニエマルションを形成するために混合物を煎断し、なおナノサイズ粒子は反応性化学物質と組み合わされたモノマーを含む;その後、ミニエマルションを加熱してモノマーを重合し、反応性化学物質をカプセルに閉じ込めるナノサイズ・ポリマーシェルを含む、充填されたナノ粒子を製造する。
【0006】
さらに本発明は、コアシェル・ナノ粒子を製造する二段階ミニエマルション重合工程に関する。第一段階では、コアが次のステップによって製造される:(i)第1のモノマー、反応性化学物質、界面活性剤および水を含む混合物を準備し;(ii)水中で分散したナノサイズ粒子状物質のミニエマルションを形成するために混合物を煎断し、なおナノサイズ粒子は、反応性化学物質に付着した第1のモノマーを含む;その後、(iii)ミニエマルションを加熱して第1のモノマーを重合して、反応性化学物質と組み合わされた第1のモノマーを含むナノサイズのコアを製造する。第二段階では、コアをカプセルに閉じ込めたポリマーシェルが、次のステップによって製造される:(i)水中で分散するナノサイズ粒子のミニエマルションを用意し、なおナノサイズ粒子はコアと組み合わされた第二のモノマーを含む;その後、(ii)ミニエマルションを加熱して第二のモノマーを重合し、コアをカプセルに閉じ込める第2のポリマーのシェルを含むコアシェル・ナノ粒子を製造する。
【0007】
本発明の様々な目的および利点は、添付図面を参照して理解される、好適な実施形態についての下記の詳細な説明から、当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1で述べられた工程のような、ポリ(メチルメタクリレート)などのポリマーによってカプセルに閉じ込められた炭酸プロピレンを含む充填されたナノ粒子を製造するミニエマルション重合工程の一例のフローチャートである。
【図2】実施例2で述べられた工程のような、ポリスチレンから作られたシェルによってカプセルに閉じ込められたポリ(メチルメタクリレート)および炭酸ビニルエチレンから作られたコアを含むコアシェル・ナノ粒子を製造する二段階ミニエマルション重合工程の一例のフローチャートである。
【図3】実施例2で述べられた反応のような、ポリスチレンから作られたシェルによってカプセルに閉じ込められたポリ(アルキルアクリレート)および炭酸ビニルエチレンから作られたコアを含むコアシェル・ナノ粒子を製造する二段階ミニエマルション重合工程の反応スキームの一例を示す。
【好適な実施形態の詳細な説明】
【0009】
本発明は、反応性化学物質をカプセルに閉じ込めるナノサイズ・ポリマーシェルを含む、充填されたナノ粒子に関する。ここで使用する「ナノ粒子」の語は、任意の1次元において、ナノサイズ以下にされた粒子を意味する。例えばナノ粒子は、約10nmから約1000nmまでの範囲内のサイズを持っていてもよい。
【0010】
ナノ粒子のシェルは任意の好適なポリマーあるいは異なるポリマーの組み合わせから製造することができる。本発明のある実施形態では、シェルは重合工程によって製造され、得られるポリマーは開始モノマーの選択に依存する。例えば以下に述べられているように、実施形態のひとつとしては、ナノ粒子シェルはフリーラジカルの水性ミニエマルション重合工程で製造されるので、モノマーはそのような工程に適しているものが選択される。そのようなモノマーは、付加重合に耐えうる、少なくとも1のエチレン部が不飽和の基を含んでいてもよい。
【0011】
いくつかのモノマーの非限定的な例としては、C1-C18アルキルメタクリレート、C1-C18アルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸およびビニル芳香族モノマーの群から選ばれたモノマーを好適に含むであろう。格別のいくつかの例としては、メチルメタクリレート(MMA)、n-ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート、ブチルメタクリレート、スチレン、アクリル酸およびメタクリル酸を含む。MMAがモノマーとして使用される場合、得られるポリマーはポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を含み、スチレンがモノマーとして使用される場合、得られるポリマーはポリスチレンを含む。他のモノマーの例としては、ブタジエン及びイソプレンブタジエン、イタコン酸などの共役ジエン;酢酸ビニル、バーサチック酸ビニル、エチレン、ジビニルベンゼンあるいはビニルトルエン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、ラウリン酸ビニルおよびステアリン酸ビニルなどのビニルアルコールやモノカルボン酸のエステル、およびその他のα、β-モノエチレン部位が不飽和のモノ-およびジカルボン酸を含むことが好ましい。
【0012】
充填されたナノ粒子の反応性化学物質には、化学反応に関与することができる任意の化学種がなりえる。反応性化学物質のいくつかの例には、触媒、機能性染料、反応中間体、およびイソシアネート基、エポキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基あるいは炭酸基などの反応性官能基を含む化合物が含まれる。特定の実施形態としては、反応性化学物質が、反応性炭酸塩部分を含んでいる。反応性炭酸塩のいくつかの例としては、炭酸プロピレン(PC)、炭酸ビニルエチレン(VEC)、炭酸エチレン、炭酸1、2-ブチレンおよび炭酸2、3-ブチレンなどの環状炭酸アルキレン類がある。
【0013】
充填されたナノ粒子は、任意の好適な方法によって製造することができる。実施形態の一つとしては、ナノ粒子はミニエマルション重合によって製造される。ミニエマルション重合工程では、1または数種のモノマー、反応性化学物質、界面活性剤および水を含有する水性混合物が用意される。混合物はさらに架橋剤と重合開始剤を含んでいてもよい。原料の混合は、任意の好適な順序ですることができる。図1に示したように、工程の一実施形態としては、重合開始剤、モノマー、架橋剤および反応性化学物質(炭酸プロピレン)を含む第一の混合物(Mix I)が用意され、界面活性剤と水を含む第二の混合物(Mix II)が用意され、その後、前記2つの混合物が混ぜ合わされる。
【0014】
任意の好適な界面活性剤あるいは種々の界面活性剤の組み合わせを、本工程において使用することができる。界面活性剤は、陰イオン性、陽イオン性、両イオン性、中性、低分子量、巨大分子、合成、天然成分抽出あるいは由来とすることもできる。いくつかの、しかし限定されない例としては、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸エステル、フルオロ界面活性剤、エトキシ化アルキルフェノール、エトキシ化硫酸アルキルフェノール、燐酸エステル界面活性剤、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ポリオキシエチレン化された長連鎖アミンおよびそれらの四級化された誘導体、エトキシ化シリコーン、アルカノールアミン凝縮液、ポリエチレンオキシド-co-ポリプロピレン酸化物ブロック共重合体、N-アルキルベタイン、N-アルキルアミンオキシドおよびフルオロカーボン-ポリ(エチレンオキシド)ブロック界面活性が含まれる。
【0015】
さらに、任意の好適な重合開始剤あるいは種々の重合開始剤の組み合わせを、本工程において使用することができる。重合開始剤は任意の好適な水溶性および/または油溶性のフリーラジカル開始剤を含んでいてもよい。いくつかの使用されうる重合開始剤の例にはアゾ重合開始剤を含み、具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾジニトリル類;過酸化-ジ-tert-ブチルや過酸化ジクミルなどの過酸化ジアルキル類;クメンヒドロペルオキシドやtert-ブチルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;tert-ブチル過安息香酸、tert-ブチル過ピバル酸、tertブチル過-3、5、5-トリメチルヘキサン酸、あるいはtert-ブチル-過-2-ヘキサン酸エチルなどの過酸エステル類;ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシルペルオキソジ炭酸カリウム、ナトリウムあるいはアンモニウム ペルオキソ二硫酸などのペルオキソジ炭酸塩類;ベンズピナコールシリルエーテルなどのC--C-開裂重合開始剤;あるいは非酸化性の重合開始剤と過酸化水素の組み合わせである。
【0016】
任意の好適な架橋剤あるいはグラフトリンカー、あるいはそれらの種々の組み合わせでも、本工程において使用することができる。いくつかの例には、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)やトリメチロールプロパントリメタクリレートなどのエチレン部が不飽和のモノマー、ブチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジアクリレート、オリゴエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレートなどのアルカンポリオール-ポリアクリレートもしくはアルカンポリオール-ポリメタクリレート、およびアリルアクリレート、マレイン酸ジアリル、アリルメタクリルレート、ジビニルベンゼン、ジビニルピリジン、ジビニルトルエン、フタル酸ジアリル、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルキシレン、ジビニルエチルベンゼン、ジビニルスルホン、ジビニルケトン、ジビニルスルフィド、アリルメタクリレート、マレイン酸ジアリル、フマル酸ジアリル、琥珀酸ジアリル、炭酸ジアリル、マロン酸ジアリル、蓚酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、セバシン酸ジアリル、セバシン酸ジビニル、酒石酸ジアリル、ケイ酸ジアリル、トリカルバリル酸トリアリル、アコニット酸トリアリル、クエン酸トリアリル、リン酸トリアリル、N、N-メチレンジメタクリルアミド、N、N-メチレンジメタクリルアミド、N、N-エチレンジアクリルアミド、トリビニルベンゼンなどの不飽和カルボン酸アリルエステル、およびグリコール、グリセリン、ペンタエリトリトール、レゾルシノール、グリコールモノチオおよびジチオ誘導体のポリビニルエーテルが含まれる。
【0017】
モノマー、反応性化学物質および他の原料の混合物には、適宜、希釈剤が含まれていてもよい。任意の好適な希釈剤あるいは種々の希釈剤の組み合わせを使用することができる。好適な希釈剤のいくつかの例には、炭化水素、なかでもヘキサンおよびヘプタン、ハロゲン化炭化水素、なかでも塩素化炭化水素などを含む。特定の、しかし限定されない例には、ノナン、プロパン、イソブタン、ペンタン、メチルシクロペンタン、イソヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2-メチルブタン、2、2-ジメチルブタン、2、3-ジメチルブタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2、2-ジメチルペンタン、2、3-ジメチルペンタン、2、4-ジメチルペンタン、3、3-ジメチルペンタン、2-メチルヘプタン、3-エチルヘキサン、2、5-ジメチルヘキサン、2、24、-トリメチルペンタン、オクタン、ヘプタン、ブタン、エタン、メタン、デカン、ドデカン、ウンデカン、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、1、1-ジメチルシクロペンタン、cis-1、2-ジメチルシクロペンタン、trans-1、2-ジメチルシクロペンタン、trans-1、3-ジメチルシクロペンタン、エチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、o‐キシレン、p-キシレン、m‐キシレン、および上記のもののすべてのハロゲン化バージョンが含まれる。
【0018】
原料の水性混合物が用意された後、混合物は水中で分散されたナノサイズ粒子のミニエマルションを形成するため、煎断にさらされる。ナノサイズ粒子は、反応性化学物質と組み合わされたモノマーを含む。任意の好適な剪断装置を使用することができる。例えば、高剪断場は、超音波ソニファイア(ultrasonifier)、ホモジナイザーおよびミクロ流動化器(microfluidiser)などの装置によって作ることができ、それら装置が機械剪断力および/またはキャビテーションに依存して、モノマーをナノサイズ粒子へと破壊する。特定の例としては、混合物はMisonixの超音波の液体処理システムを使用して超音波で処理される。図1に示したように、Mix IとMix IIは(それが重合ステップに先立つ物質であるので)プレエマルションと呼ばれるミニエマルションを製造するために混ぜ合わされ、その後超音波処理される。
【0019】
図1でさらに示したように、その後、プレエマルションは重合反応装置へ投入され、モノマーを重合するため所定時間加熱される。重合反応装置は、モノマーを重合し、充填されたナノ粒子を製造することができる、任意の好適な連続またはバッチ装置とすることができる。約0.5時間〜約10時間の範囲内で、1回あたり約50℃〜約100℃の温度範囲内などといった、任意の好適な重合温度や時間を用いることができる。
【0020】
図1に示した重合工程の最終製品は、反応性化学物質をカプセルに閉じ込めたナノサイズ・ポリマーシェルを含む、充填されたナノ粒子である。好ましくは、ポリマーシェル内に反応性化学物質をカプセルに閉じ込めることにおいて、重合工程が効率的である。ある実施形態では、重合工程で、混合物に加えられた反応性化学物質の少なくとも約70 wt%が、好適には少なくとも約80 wt%がカプセルに閉じ込められる。
【0021】
本発明の別の実施形態では、充填されたナノ粒子は、ポリマーに付着した反応性化学物質を含むコアをカプセルに閉じ込めるナノサイズ・ポリマーシェルを含む。これらの粒子はコアシェル・ナノ粒子と呼ぶことができる。上記のものや他のもののいずれも、シェルとコアで使用されるポリマーおよび反応性化学物質になりうる。
【0022】
コアシェル・ナノ粒子は任意の好適な方法によって製造することができる。図2と3で示したように、実施形態の一つとしては、それらは二段階ミニエマルション重合工程によって製造される。工程の第一段階は、ナノ粒子のコアを製造する。この第一段階の第一ステップで、1または数種の第一のモノマー、反応性化学物質、界面活性剤、水および他の好適な物質を含む水性混合物が用意される。これらの原料として、第一の実施形態として上述したものと同じものでも異なるものでもよい。図2に示す工程の一例では、重合開始剤(AIBN)、モノマー(MMA)、反応性化学物質(VEC)および希釈剤(ノナン)を含む第一の混合物(Mix I)が用意され、界面活性剤と水を含む第二の混合物(Mix II)が用意され、その後2つの混合物が混ぜ合わされる。
【0023】
原料の水性混合物が用意された後、混合物は水の中で分散したナノサイズ粒子のミニエマルションを形成するために煎断にさらされる。ナノサイズ粒子は、反応性化学物質と組み合わされた第一のモノマーを含む。任意の好適な剪断装置を使用することができる。図2に示したように、Mix IとMix IIは、ミニエマルションを形成するプレエマルションを製造するために混ぜ合わされ、その後超音波で処理される。
【0024】
図2でさらに示したように、その後、プレエマルションは重合反応装置へ投入され、第一のモノマーを重合するために所定時間加熱され、その結果として第一のポリマーが製造される。任意の好適な重合装置、温度および時間を用いることができる。第一のモノマーの重合により、反応性化学物質に付着した第一のポリマーを含むナノサイズ・コアを製造する。図2に示したように、重合ステップの後の、水中のコアのエマルションは、シード・エマルションと呼ばれる。
【0025】
反応性化学物質は、任意の好適な方法で第一のポリマーに付着することができる。実施形態の一つとしては、反応性化学物質は、第一のポリマーに、任意の好適な位置で化学結合される;たとえば、ポリマー骨格に結合されるようにしてもよい。図3に示したように、反応性化学物質は炭酸ビニルエチレンであり、モノマーはメチルメタクリレートなどのアルキルアクリレートである。シード段階と呼ばれる、ミニエマルション重合ステップにより、高分子骨格に結合または拘束された炭酸ビニルエチレンを具備するポリ(アルキルアクリレート)ポリマーが製造される。この場合の反応性成分は、炭酸プロピレンの反応性と同等の反応性をもつ炭酸ビニルエチレンの炭酸塩部分である。コアのポリマーに対する反応性化学物質の付着が、ナノ粒子の保存安定性を強めると予想される。
【0026】
二段階ミニエマルション重合工程の第二段階では、第一段階で製造されたコアをカプセルに閉じ込めるポリマーシェルを製造する。第二段階の第一ステップでは、水中で分散したナノサイズ粒子のミニエマルションが用意される。ここではナノサイズ粒子はコアと組み合わされた第二のモノマーを含む。第二のモノマーは、第一段階で使用される第一のモノマーと同じものでも異なるものでもよい。このミニエマルションは任意の好適な方法で用意することができる。例えば、ミニエマルションは第一段階の重合生成物に第二のモノマーを加えることにより用意することができる。図2に示したように、反応装置中の重合生成物はシード・エマルションと呼ばれ、第二のモノマー(スチレン)はミニエマルションを製造するためにシード・エマルションを含む反応装置に投入される。別の方法として、コア、第二のモノマー、界面活性剤および水を含む水性混合物としてミニエマルションが用意され、ミニエマルションを形成するために前記混合物を煎断することで用意することもできる。
【0027】
その後、ミニエマルションは加熱され、第二のモノマーを重合し、その結果としてコアをカプセルに閉じ込めた第2のポリマーのシェルを含むコアシェル・ナノ粒子が製造される。ここでも、任意の好適な重合装置、温度および時間を用いることができる。図2および図3に示したように、ミニエマルション中の第二のモノマーの重合により、ポリ(アルキルアクリレート)の骨格に付着した炭酸ビニルエチレン(VEC)を含むコアと、コアをカプセルに閉じ込めたポリスチレン製のシェルとを含むコアシェル・ナノ粒子が製造される。
【0028】
充填されたナノ粒子の2つの実施形態は主としてミニエマルション重合工程の立場から記述したが、充填されたナノ粒子は、他の工程によっても製造することができることが認められる。例えば、エマルション重合、懸濁重合あるいは分散重合などの重合工程で形成される他の粒子も使用できる。
【0029】
種々の応用においてナノ粒子が使用される場合、ナノ粒子はポリマーシェルが破裂されれば、反応性化学物質を放出することができる。ある実施形態では、温度、重圧、pHなどの特定条件で反応性化学物質を放出する特定用途のために、ポリマーシェルが調整される。実施形態の一つとしては、ポリマーシェルを形成するポリマーのTgが50℃であり、温度は室温から80℃に上昇させることでポリマーシェルを破裂させて、反応性化学物質を放出する。
【0030】
ナノ粒子の溶解度、反応性、保存安定性といった特性は、例えばシェルにおいて使用されるポリマーの種類や反応性化学物質の種類を変えることにより、およびコアシェル実施形態においてコアで使用されるポリマーの種類やポリマーへの反応性化学物質の付着を変えることによって修正することができる。これらの特性は、例えばシェル中のポリスチレンをポリウレタンなどに変えたポリマーを使用することで修正することができる。
【0031】
ある実施形態では、充填されたナノ粒子が、管理された粒径を持つことで、特定用途に対するそれらの有用性を増加させている。例えばナノ粒子は、それらの最大の寸法(それらの外径など)で、約500nm未満、さらに好ましくは約300nm未満の粒径を持つことができる。ナノ粒子は、約1.5未満、さらに好ましくは約1.2未満の粒度分布を持つものとすることができる。
【0032】
充填されたナノ粒子を含む熱硬化性樹脂の保存安定性は、任意の好適な方法によって測定することができる。例えば、重合反応装置から充填されたナノ粒子を含むミニエマルションは、熱硬化樹脂、すなわちフェノール-ホルムアルデヒド(レゾール樹脂)を加えて、25℃で7日および14日保管した後に、R.T.粘性によって安定性を測定することができる。主軸タイプ04、主軸速度300 RPMのBrookfield CAP 200粘度計など任意の好適な装置を使用し、25℃で測定できる。ある実施形態では、充填されたナノ粒子を含むレゾール樹脂は、7日の保管の後には、高くとも約1.75 poise、特に好ましくは高くとも約1.5 poiseの粘性を有し、および/または14日の保管の後には、高くとも約2.5 poise、特に好ましくは高くとも約2.25 poiseの粘性を有する。
【0033】
充填されたナノ粒子は特定製品に適するその他の材料とともに含有されて、多くの様々な製品が作られる。製造しうる製品のいくつかの非限定的な例示としては、保存安定のある二液型樹脂、窓や建築材といったエネルギー効率の良い構造アイテム、腐食指標や腐食保護装置、および生物学的センサーや化学センサーが含まれる。
【0034】
一実施形態における製品としては、樹脂中の触媒系として充填されたナノ粒子が含まれたボード塗布用の樹脂がある。そのような樹脂には、例えば、上記のいずれかのものや、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン、アルキド樹脂、エポキシもしくはそれらの混合物など任意の好適な熱硬化樹脂も含まれる。
【0035】
特定の例としては、樹脂が低温、高速硬化フェノールホルムアルデヒド樹脂である。樹脂中には、ナノ粒子が任意の好適な量で含まれる。例えば、ナノ粒子を含むミニエマルションが、樹脂の全重量に対して約5%〜約20%の範囲内の量で含まれる。
【実施例1】
【0036】
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)によってカプセルに閉じ込められた炭酸プロピレン(PC)を含む、充填されたナノ粒子を製造するため、ミニエマルション重合工程が用いられた。この工程中で使用される原料とそれらの出所を、次表中に示した:
【0037】
【表1】

【0038】
ステップ1:
250mLビーカー中に、0.85gの AIBN (5.17X10-3mol)、40.11g のMMA (4X10-1mol)、20.06gのPC(1.96X10-1mol)を測りとり、それらを十分混合する。磁気撹拌棒を含む別個の300mLビーカー中に、150mLの水と2.5gのSDSを加える。撹拌プレートにビーカーを置いて、SDSが完全に溶解するまでかき混ぜる。氷浴を用いてビーカーを冷やし、モノマー/PC/AIBN混合物を十分撹拌しながら滴下して加える。添加完了後、形成されたプレエマルションは、Misonixの超音波の液体処理システム(Model 3000)を用いて、冷却下で3秒間超音波処理される。操作中の超音波出力は50〜54Wに調節される。
【0039】
ステップ2:
オーバーヘッド撹拌機、滴下ロート、ガス入口管および熱電対が取り付けられた反応ケトルに、150mLの水を入れる。ガス管を通してアルゴンガスを通過させ、摂氏60度にケトルを加熱する。2時間にわたってステップ1からのプレエマルションを加え続ける。添加後、温度を摂氏75度に上げて、3時間温度を維持し、その後、室温まで冷却する。Paul N Gardner社のサイズ32×28粗さの塗布フィルターを通じてエマルションをろ過する。
【0040】
【表2】

【実施例2】
【0041】
ポリスチレン製のシェルによってカプセルに閉じ込められた、ポリ(メチルメタクリレート) (PMMA)とビニル炭酸エチレン(VEC)とから作られたコアを含むコアシェル・ナノ粒子を製造するため、二段階ミニエマルション重合工程を用いた。
【0042】
第一段階 -- PMMA-VECコアの合成:
ステップ1:
250mLビーカー中に、0.84gの AIBN (5.17X10-3mol)、40.13g のMMA (4X10-1mol)、20.09gのVEC (1.76X10-1mol)を測りとり、それらを十分混合する。磁気撹拌棒を含む別個の300mLビーカー中に、150mLの水と2.51gのSDSを加える。撹拌プレートにビーカーを置いて、SDSが完全に溶解するまでかき混ぜる。氷浴を用いてビーカーを冷やし、モノマー/PC/AIBN混合物を十分撹拌しながら滴下して加える。添加完了後、形成されたプレエマルションは、Misonixの超音波の液体処理システム(Model 3000)を用いて、冷却下で3秒間超音波処理される。操作中の超音波出力は50〜54Wに調節される。
【0043】
ステップ2:
オーバーヘッド撹拌機、滴下ロート、ガス入口管および熱電対が取り付けられた反応ケトルに、150mLの水を入れる。ガス管を通してアルゴンガスを通過させ、摂氏60度にケトルを加熱する。2時間にわたってステップ1からのプレエマルションを加え続ける。添加後、温度を摂氏75度に上げて、3時間温度を維持し、その後、室温まで冷却する。Paul N Gardner社のサイズ32×28粗さの塗布フィルターを通じてエマルションをろ過する。
【0044】
第二段階 - ポリスチレン・シェル内のPMMA-VECコアのカプセル化:
250mLビーカーの中に、ステップ2からの101.88gのシード・エマルション(PMMA-VEC)を測りとり、0.6gのSDSを加えて、撹拌プレート上で十分混合する。SDSが完全に溶解した後、氷浴上にビーカーを置く。10分にわたって7.11gのスチレンを滴下して加えて、2時間かき混ぜて、摂氏4〜10度の間で温度を維持する。このように形成された膨張したプレエマルションは、Misonixの超音波の液体処理システム(Model 3000)を用いて、冷却下で3秒間超音波処理される。操作中の超音波出力は50〜54Wに調節される。オーバーヘッド撹拌機、滴下ロート、ガス入口管および熱電対が取り付けられた反応ケトルに、プレエマルションを移動する。ガス管を通してアルゴンガスを通過させ、60℃にケトルを加熱する。0.1565gの過硫酸アンモニウムを含む23mLの水をケトルへ30分にわたって加える。摂氏60度で1時間重合を継続し、その後温度を摂氏75度に上げ、2時間温度を維持する。反応装置を室温に冷やし、Paul N Gardner社のサイズ32×28粗さの塗布フィルターを通じてエマルションをろ過する。
【実施例3】
【0045】
表面塗布や被覆の中に入れる目的で、染料や腐食抑制剤をカプセルに閉じ込めるミニエマルション重合技術を使用することで、損傷または腐食が生じた場合に、それは視覚的な指標を与え、あるいは腐食抑制物質を放出し、初期の損傷や腐食によって引き起こされた損傷を遮るか、遅くする。封入材料に損傷が生じる時、指示染料あるいは腐食抑制剤のいずれかの放出が生じる。これは、衝撃、引っ掻きもしくは屈曲といったような物的損害であっても、あるいは腐食工程によって生じた化学物質によるカプセルに対する攻撃の結果であってもよい。
【0046】
【表3】

【0047】
染料カプセル化を行う第二の方法。これは、実施例1および2において概説されたミニエマルション重合ステップに従う。
【0048】
【表4】

【0049】
染料と油のカプセル化の方法と調製。これらは、以前の実施例において概説されたミニエマルション重合方法に従う。
【0050】
【表5】

【実施例4】
【0051】
ギ酸のカプセル化
51639-37 ギ酸カプセル化
メチルメタクリレート 30.00g
MA 5.0g
AIBN .5g
HCOOH(ギ酸) 5.0g
【0052】
パラフィン油 96.3g
PLMA-g-PEO 4.86g
【0053】
・三首丸底フラスコ内にパラフィン油のうち1/2とplma-g-peoのうち1/2を配置し、油浴を使用して60℃まで加熱する。オーバーヘッド撹拌機を使用して、アルゴン下で反応を維持する。
【0054】
・ビーカー内に1)AIBN 2)MMA 3)MA 4)HCOOHを加える。
【0055】
・別個のビーカー内に、残りのパラフィン油とplma-g-peoを配置する
・磁気撹拌機上にて室温で撹拌している間に、ステップ2のビーカーを、ステップ3のビーカーにゆっくり加える
・撹拌している間に、滴下漏斗を使用して、ステップ4からの混合物を加熱した反応装置内にゆっくり加える。アルゴン下を維持する。
【0056】
・添加が完了した後(約10分以内に)、反応装置中の物質はゲル化し始めた。それははじめ米粒のようであり、その後フラスコ内でゲル化し始めた。
【0057】
・物質は石油エーテルで希釈されて、清浄なビーカーに注がれた。物質は石油エーテルで完全に洗浄され、#2濾紙とブフナー漏斗でろ過された。
【0058】
その後、乾燥され、ギ酸の一様なカプセル化された白色粉体になった。
【0059】
特許法の規定に従って、本発明の原理および作動形態を、その好ましい実施形態として説明し例証した。しかしながら、特に説明し、例証したとおり以外にも、その精神または範囲から外れない限りで、本発明が実施されうることが理解できるはずである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性化学物質をカプセルに閉じ込めたナノサイズ・ポリマーシェルを含む充填されたナノ粒子。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、約10nmから約1000nmまでの範囲内のサイズを有する、請求項1記載の充填されたナノ粒子。
【請求項3】
前記ポリマーシェルが、付加重合に耐えうる少なくとも1つのエチレン部が不飽和の基を含むモノマーから製造される、請求項1記載の充填されたナノ粒子。
【請求項4】
温度、圧力および/またはpHの所定条件の下で、前記反応性化学物質を放出するように、前記ポリマーシェルが調製された、請求項1記載の充填されたナノ粒子。
【請求項5】
前記反応性化学物質が、触媒、機能性染料および反応中間体からなる群から選ばれる、請求項1記載の充填されたナノ粒子。
【請求項6】
前記反応性化学物質が、反応性炭酸塩部分を含む、請求項1記載の充填されたナノ粒子。
【請求項7】
前記ナノ粒子が、ミニエマルション重合によって製造される、請求項1記載の充填されたナノ粒子。
【請求項8】
ポリマーに付着した反応性化学物質を含むコアをカプセルに閉じ込めるナノサイズ・ポリマーシェルを含む充填されたナノ粒子。
【請求項9】
前記ナノ粒子が、約10nmから約1000nmまでの範囲内のサイズを有する、請求項8記載の充填されたナノ粒子。
【請求項10】
前記ポリマーコアが、付加重合に耐えうる少なくとも1つのエチレン部が不飽和の基を含むモノマーから製造される、請求項8記載の充填されたナノ粒子。
【請求項11】
前記ポリマーシェルが、付加重合に耐えうる少なくとも1つのエチレン部が不飽和の基を含むモノマーから製造される、請求項8記載の充填されたナノ粒子。
【請求項12】
前記ポリマーシェルが、ポリウレタンを含む、請求項8記載の充填されたナノ粒子。
【請求項13】
温度、圧力および/またはpHの所定条件の下で、前記反応性化学物質を放出するように、前記ポリマーシェルが調製された、請求項8記載の充填されたナノ粒子。
【請求項14】
前記反応性化学物質が、触媒、機能性染料および反応中間体からなる群から選ばれる、請求項8記載の充填されたナノ粒子。
【請求項15】
前記反応性化学物質が、反応性炭酸塩部分を含む、請求項8記載の充填されたナノ粒子。
【請求項16】
前記ナノ粒子が、コアシェル・ミニエマルション重合によって製造される、請求項8記載の充填されたナノ粒子。
【請求項17】
請求項1記載の充填されたナノ粒子の集合体を含む製品。
【請求項18】
前記製品がボード塗布用の樹脂であって、前記充填されたナノ粒子が前記樹脂中の触媒システムである、請求項17記載の製品。
【請求項19】
前記製品が低温、高速硬化フェノールホルムアルデヒド樹脂である、請求項17記載の製品。
【請求項20】
約500nm未満の粒径と約1.5未満の粒度分布を持つ、請求項1記載の充填されたナノ粒子の集合体。
【請求項21】
摂氏25度で14日の保管後に、高くとも約2.5 poiseのR.T.粘性によって測定されるような保存安定性をもつ、請求項1記載の充填されたナノ粒子の集合体。
【請求項22】
下記を含む充填されたナノ粒子を製造するミニエマルション重合工程:
モノマー、反応性化学物質、水および界面活性剤を含む混合物を用意し;
水中で分散したナノサイズ粒子のミニエマルションを形成する混合物を煎断し、なお前記ナノサイズ粒子は前記反応性化学物質と組み合わされた前記モノマーを含む;その後、
前記モノマーを重合し、前記反応性化学物質をカプセルに閉じ込めるナノサイズ・ポリマーシェルを含む充填されたナノ粒子を製造するために、前記ミニエマルションを加熱する。
【請求項23】
前記混合物に加えられた前記反応性化学物質の少なくとも約70 wt%が、前記重合ステップでカプセルに閉じ込められる、請求項22記載のミニエマルション重合工程。
【請求項24】
下記を含むコアシェル・ナノ粒子を製造する2段階ミニエマルション重合工程:
(a)第一段階では、次のステップによってコアが製造され:
(i)第1のモノマー、反応性化学物質、界面活性剤および水を含む混合物を生成し;
(ii)水中で分散したナノサイズ粒子のミニエマルションを形成するため、混合物を煎断し、なお前記ナノサイズ粒子は、前記反応性化学物質と組み合わされた前記第1のモノマーを含む;その後、
(iii)前記第1のモノマーを重合し、前記反応性化学物質に付着した前記第1のモノマーを含むナノサイズのコアを製造するため、前記ミニエマルションを加熱し;さらにその後、
(b)第二段階では、次のステップによって、前記コアをカプセルに閉じ込めたポリマーシェルが製造される:
(i)水中で分散するナノサイズ粒子のミニエマルションを用意し、なお前記ナノサイズ粒子はコアと組み合わされた第二のモノマーを含む;その後、
(iii)前記第二のモノマーを重合し、前記コアをカプセルに閉じ込める前記第2のポリマーのシェルを含むコアシェル・ナノ粒子を製造するために、ミニエマルションを加熱する。
【請求項25】
ステップ(a)(iii)の重合生成物に、前記第二のモノマーを加えることにより、ステップ(b)(i)のミニエマルションが用意される、請求項24記載のミニエマルション重合工程。
【請求項26】
前記コア、前記第二のモノマー、界面活性剤および水を含む混合物の用意と前記ミニエマルションを形成するための混合物の煎断によって、ステップ(b)(i)のミニエマルションが用意される、請求項24記載のミニエマルション重合工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−529776(P2011−529776A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511696(P2011−511696)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/043593
【国際公開番号】WO2009/146252
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(591072086)バテル メモリアル インスティチュート (8)
【Fターム(参考)】