説明

充填バルブ及び充填方法

【課題】 充填時に完全満注にすることが可能で、しかも、液だれを無くすことができ、従って、入味量の精度が高く、入味量の調整が容易な充填バルブ及び充填方法を提供すること。
【解決手段】 上端に口縁を有する容器に炭酸ガスを含まない液体を定圧で充填する充填バルブにおいて、充填時に容器リフタにより容器を上昇させ、容器の口縁部が摺動体を押し上げると同時に、液バルブを開いて液体を容器内に充填し、充填完了後、容器を下降すると同時に液バルブを閉じるように構成するとともに、摺動体の下端に形成される内周面と、ベントチューブの下端の液バルブ体とが摺動体の上昇下降により接離することにより開閉する液バルブを形成し、ベントチューブの下部において偏心して摺動体の内周面に接する部分で液バルブの上側に開口部を設けて空気バルブを形成し、液バルブと空気バルブが同時に開閉するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器内に炭酸ガスを含まない飲料等の液体を充填する充填バルブ及び充填方法において、特に容器内の液レベル又は充填量の誤差が少ない充填バルブ及び充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の充填バルブの例を図6に基づき説明する。従来の容器内に炭酸ガスを含まない飲料類を充填する充填バルブは例えば、実公平6−40160号公報(特許文献1)に示されるものがある。図6に示すように、充填バルブは、フィラーボウル101に固設したバルブベース105と、バルブベース105内を摺動し、ばね111で下方に押され、下端に液バルブ130の受け座139を形成しシール部材138を貼り付けた通液スリーブ131と、バルブベース105に固定されるとともに、上端がフィラーボウル101の液面Sに突き出し上下に貫通する空気通路137が形成され、下部に受け座139とともに液バルブ130を形成する円錐部134とこの円錐部134の下側に延設された柱状体135を備えた空気抜管132とで構成されている。
【0003】
容器リフタ104により容器102を充填の位置まで上昇させるとき、まず容器102の上部の口縁部がシール部材138に当り、シールしたまま上昇を続けて通液スリーブ131を押し上げると、液バルブ130が開いて、フィラーボウル101内の飲料液がバルブベース105の液孔107、液通路112を経由して流下して容器102内に充填される。容器102内の空気は、空気抜管(ベントチューブ)132の空気通路137を通りフィラーボウル101へ逃げる。
【0004】
飲料液は容器102内に充満すると、フィラーボウル101の液面Sレベルまで空気抜管132の空気通路137内を上昇してバランスし、充填が終わる。その後、容器102を下降すると、同時に液バルブ130が自動的に閉じ、容器102がシール部材138から離れると空気抜管132内の飲料液が容器102に戻る。容器102の液面レベルは充填時に容器内に挿入された柱状体135の飲料液中に浸漬する浸漬部136の容積により決められる。
【0005】
【特許文献1】実公平6−40160号公報(第3頁、図1〜3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の充填バルブにおいては、ベントチューブ132を開閉する構造ではないため、充填が完了後、容器102が下降して容器102の上端(口縁)が液バルブ130のシール部材138から離れると、ベントチューブ132内にバランスしていた飲料液が容器102内に戻ることによる液だれを生じることになる。この場合、ベントチューブ132の内容積が多いほど液だれの量も多いので、充填が完了するまでに余分な時間がかかり、充填機の生産能力が減少する。
【0007】
また、ベントチューブ132下端の柱状体135の大きな容積部分と容器102の壁に気泡が残るので入味精度に影響し、また、上記のように、ベントチューブ132は開放したままなので、充填時に完全満注にすると、容器102が液バルブ130とのシールから離れたときベントチューブ132からの液戻りにより、飲料液が容器102から溢れ出すおそれがあり、入味量不安定の要因となる。また、ベントチューブ132の下端に延設された大容積部分(柱状体135)で入味量が決められるようにしているが、このようなベントチューブ132との一体構造では部品の変更が困難である等の問題点がある。
【0008】
本発明は、充填時に完全満注にすることが可能で、しかも、上記のような液だれを無くすことができ、従って、入味量の精度が高く、入味量の調整が容易な充填バルブ及び充填方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされ、下記の(1)から(8)の手段を提供するものであり、以下、特許請求の範囲に記載の順に説明する。
【0010】
(1)その第1の手段として、上端に口縁を有する容器に炭酸ガスを含まない液体を定圧で充填する充填バルブにおいて、上部はフィラーボウルの中に突き出してフィラーボウルに固設され、同フィラーボウル内の液体を内部に導入する液流入口を有する円筒チューブ形状のバルブ本体と、同バルブ本体の円筒内に摺動自在に貫通し、所定の位置以下に下がらぬように抜け止めが施され、下端が液バルブの外側部を形成する摺動体と、同摺動体の下端の外周に取付けてあるシールパッキンと、前記バルブ本体と前記摺動体との間に同摺動体を押し下げるように付与圧して装填された圧縮ばねと、前記バルブ本体と上部で結合し、上端でフィラーボウル内の液面上の空間に開口し下端が下部側方に設けられた開口部に開口する空気通路を内部に形成し、下部において液バルブの内側部を形成するベントチューブと、前記容器を上昇下降する容器リフタを備え、前記摺動体の下端に形成される内周面と、前記ベントチューブの下端の円筒状の液バルブ体とが前記摺動体の上昇下降によって接離することにより開閉する液バルブを形成し、前記ベントチューブの下部において偏心して摺動体の内周面に接する部分で前記液バルブの上側に開口部を設けて空気バルブを形成し、同液バルブと空気バルブとが同時に開閉するように構成されるとともに、充填時は前記容器リフタにより前記容器を上昇させ、容器の口縁が前記シールパッキンを介して前記摺動体を押し上げると前記液バルブと空気バルブが開いて液体を容器内に充填し、充填完了後、容器を下降すると同液バルブと空気バルブが閉じるように構成されてなることを特徴とする充填バルブを提供する。
【0011】
(2)第2の手段としては、第1の手段の充填バルブにおいて、前記液バルブは、前記摺動体の下端に形成される内周面と、前記ベントチューブの下端の円筒状の液バルブ体と同液バルブ体に嵌装されたOリングとが前記摺動体の上昇下降によって接離することにより開閉するように形成され、前記空気バルブは、前記ベントチューブの下部において偏心して摺動体の内周面に接する部分で液バルブ体に嵌装されたOリングの上側に開口部を設けて形成されてなることを特徴とする充填バルブを提供する。
【0012】
(3)また、第3の手段として、第1または第2の手段の充填バルブにおいて、前記シールパッキンのシール面が前記摺動体の下端面と同一面となるように取付けられてなることを特徴とする充填バルブを提供する。
【0013】
(4)第4の手段として、第1ないし第3の手段のいずれかの充填バルブにおいて、前記液バルブ体の下部に充填時に前記容器内の液体中に浸漬する入味量調整用の円筒形状のアダプタを取付けてなることを特徴とする充填バルブを提供する。
【0014】
(5)第5の手段として、第4の手段の充填バルブにおいて、前記アダプタの結合穴の内周面に設けた深いリング溝と、前記液バルブ体の下部に延設され前記結合穴に挿入する円筒部の外周面に設けた浅いリング溝と、両リング溝に嵌装するシール部材とで、前記液バルブ体と前記アダプタとが結合されてなることを特徴とする充填バルブを提供する。
【0015】
(6)第6の手段として、第5の手段の充填バルブにおいて、前記シール部材がOリングであることを特徴とする充填バルブを提供する。
【0016】
(7)第7の手段として、第1ないし第6の手段のいずれかの充填バルブにおいて、前記摺動体の側面に内部空間が所定以上の負圧になると外気と連通し、それ以外は内部空間がシールされるバキュウムブレーカを設けるとともに、同内部空間と前記シールパッキンに当接した前記容器内とを連通する通孔を同摺動体に設けてなることを特徴とする充填バルブを提供する。
【0017】
(8)第8の手段として、上端に口縁を有する容器に炭酸ガスを含まない液体を定圧で充填する充填方法において、第1ないし第7の手段のいずれかの充填バルブを用い、充填時に前記容器リフタが前記容器を上昇させるとき、同容器の口縁部が前記シールパッキンに当接し、同容器はさらに上昇を続けて同シールパッキンを介して前記摺動体を押し上げる工程で、前記液バルブと空気バルブとを同時に開いて同容器内の空気を前記ベントチューブから前記フィラーボウルへ逃がし、空気と置き換えてフィラーボウルから液体を同容器内に満注充填し、充填完了後、容器が下降する工程において前記液バルブと空気バルブを同時に閉じることを特徴とする充填方法を提供する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1または請求項2に係る発明は上記第1または第2の手段の充填バルブであり、液体の充填時に液バルブと空気バルブが同時に開閉し、充填完了後、容器を降下したとき、ベントチューブからの戻り液が容器から溢れ出るおそれがないので、完全満注にすることが可能であり、液だれを無くすことができ、ベントチューブの空気通路は上方への一方通行なので液体に泡が混入する機会が少なく、入味量の精度が高くなる効果がある。
【0019】
請求項3に係る発明は上記第3の手段の充填バルブであり、請求項1または請求項2の発明の効果に加え、シールパッキンのシール面が摺動体の下端面と同一面となるように取付けられているため、充填時に空気の溜まり場所を無くす構成となっており、完全満注にすることが可能であり、入味量の精度が向上する。
【0020】
請求項4に係る発明は上記第4の手段の充填バルブであり、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明の効果に加え、この充填バルブにより容器に完全満注充填したとき、充填終了後の液体の液面レベル(入味量)を正確に調整、設定することができる。
【0021】
請求項5または請求項6に係る発明は上記第5または第6の手段の充填バルブであり、請求項4の発明の効果に加え、入味量調整のためのアダプタをワンタッチで簡単に交換することができるので、多数の充填バルブを有するロータリーフィラーに用いられ、容器の入味量を変更する必要があるとき、ワンタッチでの交換により時間と手間を大幅に減少することができる。
【0022】
請求項7に係る発明は上記第7の手段の充填バルブであり、請求項1ないし請求項6のいずれかの発明の効果に加え、上記第1ないし第6の手段のいずれかの充填バルブを用いて容器に液体を充填した後、容器を降下させるとき、容器内の真空圧をなくして真空吸着吊下がりをバキュームブレーカの働きで防止することができ、液体が容器から溢れ出ることを防ぐことができる。
【0023】
請求項8に係る発明は、第1の手段ないし第7の手段のいずれかの充填バルブを用いた液体の定圧(大気圧)での充填方法であり、請求項1ないし請求項7のいずれかの発明の効果を奏し、液体の充填時に液バルブと空気バルブが同時に開閉し、充填完了後、容器を降下したとき、ベントチューブからの戻り液が容器から溢れ出るおそれがないので、完全満注にすることが可能であり、液だれを無くすことができ、ベントチューブの空気通路は上方への一方通行なので液体に泡が混入する機会が少なく、入味量の精度が高くなる。特に、第4ないし第6のいずれかの手段の充填バルブを用いれば入味量の調整、設定を容易かつ正確に行え、第7の手段の充填バルブを用いれば充填後の容器の真空吸着吊下りを防止できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、炭酸ガスを含まない飲料液等の液体を、大気圧下で容器内に充填する充填装置に設置される充填バルブに関するものであり、本発明を実施するための最良の形態として、以下に一実施例とそれによる充填方法を説明する。なお、実施例においては充填する液体として飲料液を例に記載する。
【実施例】
【0025】
図1は本発明の一実施例に係る充填バルブの側面断面図、図2は図1の充填バルブの液バルブを開いて飲料液の充填中を示す側面断面図、図3は図1中A−A矢視による断面図、図4は図1中B−B矢視による断面図、図5は図1中のバキュームブレーカの拡大図である。
【0026】
図1に示すように、本実施例の充填バルブ1は、上部11bがフィラーボウル2内に突き出して固設されフィラーボウル2内の飲料液を内部に導入する液流入口11dを有している円筒チューブ形状のバルブ本体11と、上部12dがバルブ本体11の円筒内をOリング15を介して摺動自在に貫通し、下端が液バルブ10の一方側となる外筒12aを形成し、上下に貫通する内周側空間を有する摺動体12と、上部がバルブ本体11に固定され、中間部はバルブ本体11及び摺動体12の内部空間中を通り、上端13eでフィラーボウル2内の液面S上の空間に開口し下端が開口部13fで開口する空気通路13cを内部に形成する導管となるとともに、下部において摺動体12の外筒12aの内周面に合わせた外周面を有し外筒12a内に出入するように係合して液バルブ10の他方側となる液バルブ体13aが形成されているベントチューブ13とを主要部とし、さらにその他の部分を備えて構成されている。
【0027】
バルブ本体11の段部11eと摺動体12のフランジ(段部)12cとの間には圧縮バネ16が摺動体12を押し下げるように付与圧して装填され、摺動体12のフランジ12cの孔を下方から摺動自在に突き通し、上端がバルブ本体11にねじ止めされた複数のストッパーボルト28によって摺動体12の下方の移動が止められている。ストッパーボルト28の長さは、圧縮バネ16によって押し下げられた摺動体12の外筒12aの下端が、ベントチューブ13の液バルブ体13aの下端面と同一高さとなるようにしてある。摺動体12の外筒12aの外周には下端面を同一面に揃えたシールパッキン17が取付けてあり、下方から押し当てられた容器3をその口縁で液密にシールする。
【0028】
ベントチューブ13は、図3に示すように、上部の外周側に形成された小径部13dに係合する2つ割りの半割りリング21、21がバルブ本体11の内周側に形成された嵌合部11cに嵌合し、ナット22が半割りリング21、21をバルブ本体11に締め付けることによりバルブ本体11に対して固定される。ベントチューブ13はその固定された位置において上記のように上端13eと下部側方に開口する開口部13fとの間を連通する空気通路13cをその内部に形成し、また、下端において摺動体12の外筒12a内に出入することによって液バルブ10の片方となる液バルブ体13aを形成している。また、ベントチューブ13は、図4にも示すように液バルブ10をなす部分より上部でその外周側に摺動体12の内周面に当接するガイド部材13gを有し、摺動体12の内周面がガイド部材13gの外周を上下に摺動する。
【0029】
液バルブ10は、摺動体12の下端に形成された外筒12aの内側円筒面と、ベントチューブ13の下端の液バルブ体13aの外側円筒面と、液バルブ体13aに取付けられたOリング14とからなり、これらの部材が摺動体12の上昇下降により接離することにより開閉する。バルブ本体11および摺動体12の内周側とベントチューブ13の外周側との間の空間は、液流入口11dと液バルブ10との間をつなぐ液通路11aを形成する。
【0030】
また、ベントチューブ13には、下部において偏心して摺動体12の内側円筒面に接するように側方に開口した開口部13fが設けられ、開口部13fは液バルブ体13aに取付けられたOリング14の溝の上側に設置されて空気バルブを形成している。開口部13fの開口下端と液バルブ10の開口下端とは、ともに液バルブ体13aの上端の同一高さに位置し、摺動体12の外筒12a下端に対して同時に接離するので、液バルブ10と空気バルブとなる開口部13fとは同じタイミングで開閉する。
【0031】
図2に示すように、容器を昇降させる容器リフタ(以下単に「リフタ」という)4は、適当なタイミングで容器3を上昇させ、飲料液を充填後、容器3を下降させる。充填のタイミングにおいてリフタ4が容器3を上昇させるとき、容器3の上端の口縁部がシールパッキン17を介して、圧縮バネ16のばね力に抗して、摺動体12を、高さH(液バルブ開ストローク)だけ押し上げると、液バルブ10が開き、同時に、ベントチューブ13の下部の開口部(空気バルブ)13fが開き、容器3内の空気をベントチューブ13内の空気通路13cを通してフィラーボウル2へ逃がし、空気と置き換えて飲料液が、フィラーボウル2から液流入口11d、液通路11a、液バルブ10を経由して容器3内に流入して充填される。充填完了後、容器3を下降すると摺動体12がそれにつれて下降し、液バルブ10と空気バルブとしての開口部13fが同時に閉じるように構成されている。
【0032】
容器3の口縁に当接してシールするシールパッキン17のシール面は、摺動体12の外筒12aの下端面と同一面となるように取付けてあるので、飲料液充填時に容器3と摺動体12の間に空気が残留するおそれがない。また、ベントチューブ13の下端の液バルブ体13aの下部に延設された円筒体13bには、入味量調整のために容器3中の飲料液内へ浸漬する円筒形状のアダプタ31が取付けられ、容積が異なるアダプタ31を取換えることにより、飲料液の入味量を調整できるようにしている。円筒体13bとアダプタ31との結合は、アダプタ31の結合穴の内周側に設けた深い円周溝(リング溝)31aと、この円周溝31aに嵌装した何らかの適切なシール部材、例えばOリング32と、円筒体13bの外周側に備えられた浅いOリング円周溝(リング溝)13jとで構成され、アダプタ31の結合と取り替えがワンタッチで行えるようにしてある。
【0033】
摺動体12の下側側面には、図5の拡大図に示すようなバキュームブレーカ23が設けられている。バキュームブレーカ23は、摺動体12に設けられたボス12eの穴12gに、弱い圧縮ばね27で外側に向けて付圧された縁付きカップ24が嵌め込まれ、縁付きカップ24が穴12gの底から浮いた状態で縁にOリング26を挟んでナット25で穴12g内から圧縮ばね27により外れ出ないように取付けられた構成となっている。また、摺動体12の外筒12aの下端面の充填時に押し付けられる容器3の口縁内と通じる位置と、ボス12eの穴12gの底部とを連通する通孔12fが穿設されている。
【0034】
そのため、縁付きカップ24の内側に、圧縮ばね27の押し上げ力に勝る所定以上の負圧がかかったときは、縁付きカップ24はボス12eの穴12gの底に近づくように移動するのでOリング26によるシールが開放され、ナット25と縁付きカップ24の隙間から、外気が縁付きカップ24の内側に取り込まれる。縁付きカップ24の内側に正圧がかかったときは、Oリング26に圧力がかかってシールする。従って、飲料液の充填を終了し容器3を離そうとするときは、容器3内の負圧が通孔12fを通じてバキュームブレーカ23に働いてシールを開放するので、容器3内の真空圧を無くして容器3の吊り下がりを防止することができる。
【0035】
本実施例の充填バルブ1による炭酸ガスを含まない飲料液等の液体の定圧(大気圧)での充填方法を以下、図2により説明する。
【0036】
充填のタイミングにおいて、リフタ4が容器3を上昇させる工程では、容器3の上縁部(口縁)がシールパッキン17に当接し、容器3はなおも上昇を続けてシールパッキン17を介して摺動体12を寸法Hだけ押し上げると同時に、液バルブ10と、空気バルブとしてのベントチューブ13の開口部13fとを同時に開いて、図2に示す状態となり、容器3内の空気を開口部13fからベントチューブ13を通してフィラーボウル2へ逃がし、空気と置き換えてフィラーボウル2内の飲料液が液流入口11d、液通路11a経由液バルブ10から容器3内に流下して満注充填し、さらに飲料液は開口部13fからベントチューブ13内を上昇し、その液面がフィラーボウル2の液面Sとバランスしたとき、容器3への充填が終了する。
【0037】
充填完了後、容器3が下降する工程においては、容器3に飲料液が満たされ、摺動体12が降下して液バルブ10とベントチューブ13の開口部(空気バルブ)13fを閉じる前に、液バルブ10とベントチューブ13の開口部13fが開いた状態が若干距離(図2に示すV)の間続き、その間、ベントチューブ13が容器3外へ抜け出る動きにつれて、液バルブ10とベントチューブ13の空気通路13cから少量の飲料液が容器3へ流れ込む。この流れ込む飲料液の量は、摺動体12の下端面からベントチューブ13の液バルブ開口部13hまでの距離Vとベントチューブ13の下端の液バルブ体13aの面積との積の量であり、予め正確に捉えることができる。液バルブ10と空気通路13cの開口部13fが同時に閉じると容器3への飲料液の流入は完全に止まる。
【0038】
したがって、ベントチューブ13からの戻り液が容器3から溢れ出るおそれがないので、完全満注にすることが可能であり、液だれを無くすことができ、ベントチューブ13の空気通路13cは上方への一方通行なので飲料液に泡が混入する機会が少なく、入味量の精度が高くなる効果がある。
【0039】
また、容器3の液面レベルは、アダプタ31を容積の異なったものに取り換えることにより、容易に正確に調整、設定することができる。そして、液バルブ10と空気通路13cの開口部13fが閉じた後、容器3が充填バルブ1から離れる時に生じる真空吸着吊下りは、上述のようにバキュームブレーカ23の働きで防止される。
【0040】
以上、本発明を図示の実施例について説明したが、本発明は上記の実施例に限定されず、本発明の範囲内でその具体的構造に種々の変更を加えてよいことはいうまでもない。また、上記実施例は、充填する液体として炭酸ガスを含まない飲料液を例に説明したが、それに限られず炭酸ガスを含まない液体一般に適用できるものであることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施例に係る充填バルブの側面断面図である。
【図2】図1の充填バルブの液バルブを開いて飲料液の充填中を示す側面断面図である。
【図3】図1中A−A矢視による断面図である。
【図4】図1中B−B矢視による断面図である。
【図5】図1中のバキュームブレーカの拡大図である。
【図6】従来の充填バルブの一例の側面断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 充填バルブ
2 フィラーボウル
3 容器
4 リフタ
10 液バルブ
11 バルブ本体
11d 液流入口
12 摺動体
12a 外筒
13 ベントチューブ
13a 液バルブ体
13c 空気通路
13f 開口部(空気バルブ)
14 Oリング
15 Oリング
16 圧縮バネ
17 シールパッキン
21 半割りリング
23 バキュームブレーカ
28 ストッパーボルト
31 アダプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に口縁を有する容器に炭酸ガスを含まない液体を定圧で充填する充填バルブにおいて、上部はフィラーボウルの中に突き出してフィラーボウルに固設され、同フィラーボウル内の液体を内部に導入する液流入口を有する円筒チューブ形状のバルブ本体と、同バルブ本体の円筒内に摺動自在に貫通し、所定の位置以下に下がらぬように抜け止めが施され、下端が液バルブの外側部を形成する摺動体と、同摺動体の下端の外周に取付けてあるシールパッキンと、前記バルブ本体と前記摺動体との間に同摺動体を押し下げるように付与圧して装填された圧縮ばねと、前記バルブ本体と上部で結合し、上端でフィラーボウル内の液面上の空間に開口し下端が下部側方に設けられた開口部に開口する空気通路を内部に形成し、下部において液バルブの内側部を形成するベントチューブと、前記容器を上昇下降する容器リフタを備え、前記摺動体の下端に形成される内周面と、前記ベントチューブの下端の円筒状の液バルブ体とが前記摺動体の上昇下降によって接離することにより開閉する液バルブを形成し、前記ベントチューブの下部において偏心して摺動体の内周面に接する部分で前記液バルブの上側に開口部を設けて空気バルブを形成し、同液バルブと空気バルブとが同時に開閉するように構成されるとともに、充填時は前記容器リフタにより前記容器を上昇させ、容器の口縁が前記シールパッキンを介して前記摺動体を押し上げると前記液バルブと空気バルブが開いて液体を容器内に充填し、充填完了後、容器を下降すると同液バルブと空気バルブが閉じるように構成されてなることを特徴とする充填バルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の充填バルブにおいて、前記液バルブは、前記摺動体の下端に形成される内周面と、前記ベントチューブの下端の円筒状の液バルブ体と同液バルブ体に嵌装されたOリングとが前記摺動体の上昇下降によって接離することにより開閉するように形成され、前記空気バルブは、前記ベントチューブの下部において偏心して摺動体の内周面に接する部分で液バルブ体に嵌装されたOリングの上側に開口部を設けて形成されてなることを特徴とする充填バルブ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の充填バルブにおいて、前記シールパッキンのシール面が前記摺動体の下端面と同一面となるように取付けられてなることを特徴とする充填バルブ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の充填バルブにおいて、前記液バルブ体の下部に充填時に前記容器内の液体中に浸漬する入味量調整用の円筒形状のアダプタを取付けてなることを特徴とする充填バルブ。
【請求項5】
請求項4に記載の充填バルブにおいて、前記アダプタの結合穴の内周面に設けた深いリング溝と、前記液バルブ体の下部に延設され前記結合穴に挿入する円筒部の外周面に設けた浅いリング溝と、両リング溝に嵌装するシール部材とで、前記液バルブ体と前記アダプタとが結合されてなることを特徴とする充填バルブ。
【請求項6】
請求項5に記載の充填バルブにおいて、前記シール部材がOリングであることを特徴とする充填バルブ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の充填バルブにおいて、前記摺動体の側面に内部空間が所定以上の負圧になると外気と連通し、それ以外は内部空間がシールされるバキュウムブレーカを設けるとともに、同内部空間と前記シールパッキンに当接した前記容器内とを連通する通孔を同摺動体に設けてなることを特徴とする充填バルブ。
【請求項8】
上端に口縁を有する容器に炭酸ガスを含まない液体を定圧で充填する充填方法において、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の充填バルブを用い、充填時に前記容器リフタが前記容器を上昇させるとき、同容器の口縁部が前記シールパッキンに当接し、同容器はさらに上昇を続けて同シールパッキンを介して前記摺動体を押し上げる工程で、前記液バルブと空気バルブとを同時に開いて同容器内の空気を前記ベントチューブから前記フィラーボウルへ逃がし、空気と置き換えてフィラーボウルから液体を同容器内に満注充填し、充填完了後、容器が下降する工程において前記液バルブと空気バルブを同時に閉じることを特徴とする充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−160305(P2006−160305A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353507(P2004−353507)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【出願人】(390030616)ジャパンフーズ株式会社 (1)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】