説明

充填物の製造方法

【課題】シーラント層中の滑剤の挙動を制御し、内容物充填時において内面のシーラント層に滑剤量が少ない充填物の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】一方の表面に滑剤を含むシーラント層を備え、該シーラント層の一方の面に接着剤層を備える積層フィルムを作製する工程と、該積層フィルムを切り出し、シーラント層同士をヒートシールすることにより内面がシーラント層であり開口部を備える袋状包装材料を作製する工程と、該袋状包装材料の開口部を開口させる工程と、該袋状包装材料を開口させた状態で加熱する工程と、前記袋状包装材料に前記開口部から内容物を充填する工程と、前記袋状包装材料の開口部においてシーラント層同士をヒートシールすることにより内容物を密閉し、充填物とする工程とを順に備えることを特徴する充填物の製造方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の表面に滑剤を含むシーラント層を備える積層フィルムのシーラント層同士をヒートシールすることにより得られる袋状包装材料の内部に内容物が充填された充填物の製造方法に関する。さらには、シーラント層表面に移動してくる滑剤を制御し、内容物に滑剤が混入することのない衛生性や安全性に優れた充填物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲食品や日用雑貨品、医薬品などあらゆる物品を包装する袋状包装材料は、強度、遮光性、バリア性、シール性等様々な特性を持つ数種類の層を基材フィルム上に積層し、その積層フィルムを袋状にすることで得られる。
【0003】
包装に用いられる積層フィルムは、内面にシーラント層を有し、製袋工程により熱によりシーラント層同士を熱圧着(ヒートシール)して開口部を有する袋状包装材料に加工される。そして、袋状に加工された袋状包装材料充填工程において開口部から内容物を充填し、更に、開口部のシーラント層同士を熱圧着(ヒートシール)して内容物を密閉し、製品(充填物)として出荷される。
【0004】
さらに機能性を付与するために各層に添加剤を加えることがある。特に、内容物と接する最内面層であるシーラント層にあっては添加剤を加えることが多い。添加剤としては、酸化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤などがある。
【0005】
中でも滑剤はシーラント層において樹脂中に練りこまれており、製膜すると添加された滑剤の一部がシーラント層表面に移動(ブリードアウト)してくることでフィルムに滑り性を付与する(特許文献1および特許文献2参照)。
【0006】
このとき、積層フィルムに添加する添加剤の中で、シーラント層に添加される滑剤はシーラント層表面の滑り性を得るために添加される。包装に用いられる積層フィルムは加工工程において袋状に加工され、加工された袋状包装材料はシーラント層同士が接触している。充填工程でこの袋状の加工物に内容物を充填するにあっては、袋状の加工物の開口部を開かせる必要がある。このとき、接触したシーラント層を容易に剥離させるために、シーラント層に滑剤は添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2005−32456号公報
【特許文献2】特開2006−56146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シーラント層の滑り性が適切でないと積層フィルムを袋状に加工する製袋工程や袋状に加工された袋状包装材料に内容物を充填する内容物充填工程において不具合を生じることがある。具体的には、シーラント層への滑剤量を多くした場合には、製袋工程において積層フィルムの送り量にばらつきが生じてしまい、シール幅のずれや印刷柄のずれといった問題が生じる。また、シーラント層への滑剤量を抑えた場合には、内容物充填工程においてシーラント層同士が密着してシーラント層同士を容易に剥離できなくなってしまい、袋状の加工物の開口部を開かせることができなくなってしまうといった問題が生じる。
【0009】
積層フィルムはロール・ツー・ロール方式により形成される。連続的に搬送される基材フィルムとシーラント層が積層され、シーラント層が形成された積層フィルムはロール状に巻き取られる。このとき、シーラント層が積層された積層フィルムをロール状に巻き取ると、シーラント層に添加した滑剤の一部が裏面である基材フィルム表面に転写され基材フィルム表面の滑り性を変化させる。このとき、基材フィルムの滑り性が大きいと積層フィルムの送り量にばらつきが生じてしまい、シール幅のずれや印刷柄のずれといった問題が生じる。
【0010】
内容物として食品や半導体、医療向け製品を袋状包装材料に充填する場合には、衛生性、安全性の面から内容物と接触する側にあるシーラント層に滑剤量が少ないことが要求される。衛生性や安全性が求められる袋状包装材料は仕様の要求を満たすため、シーラント層の滑剤が低処方となっていることが多い。そのため滑り性が悪く、ロール状に巻き取った際、シーラント層と裏面との密着によるブロッキングが発生し易く、製袋工程前段の積層フィルム搬送工程で不具合を引き起こすことが多い。
【0011】
本発明にあっては、一方の表面に滑剤を含むシーラント層を備える積層フィルムのシーラント層同士をヒートシールすることにより得られる袋状包装材料の内部に内容物が充填された充填物の製造方法にあって、シーラント層中の滑剤の挙動を制御し、内容物充填時において内面のシーラント層に滑剤量が少ない充填物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために請求項1記載の発明としては、積層フィルムからなる袋状包装材料の内部に内容物が充填された充填物の製造方法であって、一方の表面に滑剤を含むシーラント層を備え、該シーラント層の一方の面に接着剤層を備える積層フィルムを作製する工程と、該積層フィルムを切り出し、シーラント層同士をヒートシールすることにより内面がシーラント層であり開口部を備える袋状包装材料を作製する工程と、該袋状包装材料の開口部を開口させる工程と、該袋状包装材料を開口させた状態で加熱する工程と、前記袋状包装材料に前記開口部から内容物を充填する工程と、前記袋状包装材料の開口部においてシーラント層同士をヒートシールすることにより内容物を密閉し、充填物とする工程とを順に備えることを特徴する充填物の製造方法とした。
【0013】
また、請求項2記載の発明としては、前記積層フィルムの単位面積あたりの接着剤量が前記シーラント層中の単位面積あたりの滑剤の練り込み量の150倍以上300倍以下の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の充填物の製造方法とした。
【0014】
また、請求項3記載の発明としては、前記袋状包装材料を開口させた状態で加熱する工程における加熱温度が50℃以上80℃以下の範囲内でおこなわれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の充填物の製造方法とした。
【0015】
また、請求項4記載の発明としては、前記袋状包装材料に前記開口部から内容物を充填する工程において、袋状包装材料の内面のシーラント層表面の単位面積あたりの滑剤量が0.1mg/m以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の充填物の製造方法とした。
【0016】
また、請求項5記載の発明としては、前記シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練り込み量が25mg/m以下であり、且つ、前記積層フィルムを作製する工程の後に前記積層フィルムを25℃以上35℃以下の範囲内でエージングする工程を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の充填物の製造方法とした。
【0017】
また、請求項6記載の発明としては、前記シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練り込み量が25mg/mを超えており、且つ、前記積層フィルムを作製する工程の後に前記積層フィルムを40℃以上50℃より小さい範囲内でエージングする工程を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の充填物の製造方法とした。
【0018】
また、請求項7記載の発明としては、前記積層フィルムのシーラント層に含まれる滑剤が脂肪酸アミドまたはアルキレンビス脂肪酸アミドであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載充填物の製造方法とした。
【0019】
また、請求項8記載の発明としては、前記積層フィルムの接着剤層を形成する接着剤がポリエステル系、イソシアネート系、ポリウレタン系の接着剤であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の充填物の製造方法とした。
【発明の効果】
【0020】
本発明の充填物の製造方法にあっては、シーラント層中の滑剤の挙動を制御し、内容物充填時において袋状包装材料の内面のシーラント層表面に存在する滑剤量を少なくすることができ、滑剤が内容物に混入することを防ぐことができる。これにより、内容物として食品や半導体等の電子部品、医療向け材料を衛生性、安全性の面からも好適に充填することができる充填物を提供することができた。また、本発明の充填物の製造方法にあっては、積層フィルムから開口部を備える袋状包装材料を作製する工程及び袋状包装材料の開口部を開口させる工程にあっては、シーラント層表面に滑剤を存在させて滑り性を付与することができるため生産性の高い充填物の製造方法とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の積層フィルムの説明断面図である。
【図2】図2は本発明の充填物の製造方法の一実施形態の説明図である(その1)。
【図3】図3は本発明の充填物の製造方法の一実施形態の説明図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の積層フィルムについて説明する。
図1に本発明の積層フィルムの説明断面図を示した。本発明の積層フィルム1は、一方の表面に滑剤を含むシーラント層11を備え、該シーラント層の一方の面に接着剤層13を備える。図1(a)にあっては基材フィルム12の一方の面に接着剤層13を介してシーラント層11が形成されている。シーラント層11はヒートシール(熱圧着)することにより、シーラント層同士を接着させることができる。図1(b)の積層フィルムにあっては、基材フィルム12とシーラント層11の間に機能層14を設けており、シーラント層11と機能層14の間に接着剤層13が設けられており、基材フィルム12と機能層14の間に接着剤層15が設けられている。機能層としては、例えば、水蒸気バリア性あるいは酸素バリア性を有するバリア層、意匠性を向上させる事ができる印刷層を例示することができる。
【0023】
本発明の積層フィルムにあっては、図1の積層フィルムの構成に限定されるものではない。本発明の積層フィルムにおいては、一方の表面に滑剤を含むシーラント層11を備え、該シーラント層の一方の面に接着剤層13を備えていれば、それ以外の層構成に限定されるものではない。本発明にあっては、シーラント層11の一方の面に接着剤層13を設けることにより、シーラント層の他方の表面の滑剤量を制御することができる。
【0024】
本発明の積層フィルムにおいて、基材フィルム12としては二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)等のポリエステルフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム(ONyフィルム)等のポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPPフィルム)等のポリオレフィンフィルムなどが選択され、他の層を接着される面にコロナ処理等を施すことでより良好な接着強度が得られる。
【0025】
また、接着剤層13に用いられる接着剤としては、ポリエステル系、イソシアネート系、ポリウレタン系、およびそれらを主体とした混合物などを用いることができる。
【0026】
シーラント層11は積層フィルムの一方の面の最表面を構成する層であり、熱圧着(ヒートシール)させることにより、シーラント層同士を接着させることができる。すなわち、シーラント層形成材料としては、熱でシールことのできる材料を用いることができる。具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのオレフィンから選ばれる2つ以上のモノマーの共重合体、例えばエチレン−プロピレン共重合体等が挙げられ、これらの2つ以上の混合物を用いることもできる。
【0027】
シーラント層11は上記の樹脂を用いて、キャスト法によって製膜することができる。また、インフレーション法で樹脂をチューブ状に押出し、押出したチューブ状フィルム内にエアを吹き込み、チューブ状フィルムの両端を製造ライン上で耳切りをして巻き取って得ることもできる。また、2〜3種類の樹脂を共押出しにして多層構成としたフィルムをシーラント層として用いることも可能である。
【0028】
シーラント層11は滑剤を含む。シーラント層に含まれる滑剤としては、脂肪酸アミドまたはアルキレンビス脂肪酸アミド系が好ましく使用される。これらは成膜した際にブリードアウトしやすく、透明性も高いため滑り性を得るために有効である。脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミドなどがあり、アルキレンビス脂肪酸アミドとしては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレフィン酸アミド等が使用される。
【0029】
シーラント層において樹脂に添加される滑剤の量はシーラント層の厚みと求める滑り性によって選定される。滑剤の添加量が多すぎるとシーラント層表面に滑剤がブリードアウトしすぎてしまい、製袋工程でシール幅や印刷柄のズレが発生したり、またヒートシールした際に接着強度が弱くなってしまう。逆に滑剤の添加量が少なすぎると、シーラント層表面の滑り性が良好に得られず、製袋適性や充填適性が低下することがある。そこで、シーラント層の厚みが50〜250μmのフィルムの場合、樹脂重量に対して滑剤量は50ppm〜800ppm程度が好ましい。ただし、シーラント層表面の適性な滑り性を発現するためのシーラント層厚み、樹脂重量に対する滑剤の量については、用途によってシーラント層の厚みも様々であり、シーラント層が薄い場合にはそれだけ滑剤の絶対量も少なくなること等を考慮する必要がある。
【0030】
また、機能層14としては、例えばアルミニウム箔または金属あるいは金属化合物からなる薄膜をバリア層として用いることができる。このとき、バリア層として設けられるアルミニウム箔の厚みは7〜100μmが好ましい。また、バリア層として設けられる金属あるいは金属化合物からなる薄膜の形成材料としては、マグネシウム、珪素、アルミニウム、錫、チタン、亜鉛、ジルコニウム、カルシウム、ニッケル等から選択される酸化物、窒化物、フッ化物の何れか、あるいは2種以上の混合物が挙げられるが、その中では特に酸化アルミニウムあるいは酸化珪素が、酸素および水蒸気のガスバリア性に優れるのでより好ましい。前記金属アルミニウム、酸化アルミニウム又は酸化珪素などの薄膜の厚みは1〜300nm程度が好ましい。これらの薄膜は、真空成膜法により形成することが出来る。また、真空成膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることができる。
【0031】
次に、本発明の充填物の製造方法について説明する。図2及び図3に本発明の充填物の製造方法の一実施形態の説明図を示した。
【0032】
本発明の充填物にあっては、以下の工程でおこなわれる。
【0033】
<工程1>
一方の表面に滑剤を含むシーラント層を備え、該シーラント層の一方の面に接着剤層を備える巻き取り状の積層フィルム1を作製するフィルム作製工程(図2(a))
<工程2>
前記巻き取り状の積層フィルム1をエージングするエージング工程(図2(b))
<工程3>
巻き取り状の積層フィルム1を切り出し、シーラント層同士をヒートシールすることにより内面がシーラント層であり開口部を備える袋状包装材料2を作製する製袋工程(図2(c)、図3(c))
<工程4>
袋状包装材料2の開口部を開口させる工程(図3(d))
<工程5>
袋状包装材料2を開口させた状態で加熱する工程(図3(e))
<工程6>
袋状包装材料に前記開口部から内容物3を充填する工程(図3(f))
<工程7>
記袋状包装材料の開口部においてシーラント層同士をヒートシールすることにより内容物3を密閉し、充填物4とする工程(図3(g))
【0034】
なお、(工程4)〜(工程7)は充填工程であり、連続した一連の装置でおこなわれる。
【0035】
充填物の製造方法において、シーラント層表面の滑剤は以下のような挙動を示すことが望ましい。
【0036】
製袋工程(図2(c)、図3(c))においては、シーラント層表面に滑剤が適量存在し、シーラント層表面が適度な滑り性を有することが望まれる。滑剤がシーラント層表面に存在しない場合には、巻き取り状態の積層フィルムにおいてシーラント層と裏面との間でブロッキングが発生し易く、製袋工程前段の積層フィルム搬送工程で不具合を引き起こすことが多い。ただし、シーラント層表面に滑剤が多量に存在する場合には、製袋工程において積層フィルムの送り量にばらつきが生じてしまい、シール幅のずれや印刷柄のずれといった問題が生じる。
【0037】
また、充填工程の袋状包装材料2の開口部を開口させる工程(図3(d))においては、シーラント層表面に滑剤が存在し、シーラント層表面が滑り性を有することが望まれる。袋状包装材料2の開口部を開口させる工程においてシーラント層表面に滑剤が存在しない場合には、シーラント層同士が密着してシーラント層同士を容易に剥離できなくなってしまい、袋状包装材料の開口部を開かせることができなくなってしまう。
【0038】
また、充填工程の袋状包装材料に開口部から内容物3を充填する工程(図3(f))にあっては、シーラント層表面に滑剤が存在しないことが望まれる。内容物充填する際にシーラント層表面に滑剤が存在する場合には内容物と接触し、内容物に混入するため、内容物の衛生性、安全性の面から好ましくない。
【0039】
本発明者らは、積層フィルムのシーラント層中に含まれる滑剤の挙動についてシーラント層と接するようにして設けられる接着剤層が大きく関わっており、積層フィルムの構成においてシーラント層の次に接着剤層が存在する場合に接着剤層がシーラント層中に含まれる滑剤を強く引き寄せることができ滑剤は接着剤層中に取り込まれることを見出し、また、積層フィルム中のシーラント層表面に存在する滑剤量は温度が関係することを見出し、本発明に至った。
【0040】
本発明の充填物の製造方法にあっては、充填工程において、袋状包装材料2の開口部を開口させる工程(図3(d))の後、袋状包装材料2を開口させた状態で加熱する工程(図3(e))を備えることを特徴とする。袋状包装材料を開口させた状態で加熱する工程を設けることにより、袋状包装材料の開口部を開口する際に必要なシーラント層表面に存在する滑剤を接着剤層側に移動させ接着剤層に取り込むことができる。加熱工程を設けることにより、次工程である袋状包装材料に内容物を充填させる工程においてシーラント層表面に存在する滑剤量を少なくすることができ、シーラント層表面に接触する内容物の衛生性、安全性を維持することができる。
【0041】
加熱工程を充填工程に設けることで、充填時の開口作業までは、シーラント層表面の滑剤量がある程度の量存在しているため、充分な滑り性を発現することが可能となる。その後、開口した状態で袋状包装材料を加熱すると、シーラント層表面にブリードアウトしていた滑剤をシーラント層内部から接着剤層へと移動させることができる。接着剤層にまで取り込まれた滑剤は室温に戻しても滑剤は再度シーラント層表面へブリードアウトさせなくすることができる。
【0042】
図3(e)に示した加熱工程にあっては、加熱工程として恒温槽Hを示した。本発明の恒温槽Hにあっては、ステンレスなどの金属製または耐熱性プラスチック製のものを用いることができる。また、耐熱性フィルムをカーテン状に天井から吊り下げるようにしてブースのようなものとしてもよい。また耐熱性フィルムによって仕切るようにして温度調整して恒温槽としてもよい。本発明の恒温槽は、槽状のものに限らず、加熱雰囲気を維持できるものであれば槽状に限るものではない。
【0043】
また、本発明の充填物の製造方法にあっては、積層フィルムの単位面積あたりの接着剤量が前記シーラント層中の単位面積あたりの滑剤の練り込み量の150倍以上300倍以下の範囲内であることが好ましい。接着剤量がシーラント層中の単位面積あたりの滑剤の練り込み量の150倍未満の場合、加熱により一旦はシーラント層表面の滑剤量は少なくなるが、時間を掛けて滑剤は再度シーラント層表面へとブリードアウトしてしまい、内容物の衛生性、安全性を維持できなくなってしまう場合がある。一方、接着剤量がーラント層中の単位面積あたりの滑剤の練り込み量の300倍を超える場合には、積層フィルムを高温にしない状態でもシーラント層中の滑剤が接着剤層に取り込まれてしまいシーラント層表面に存在する滑剤量はが極めて少なくなるため、製袋工程においてシーラント層と基材フィルムの密着によるブロッキングが発生したり、充填工程においてシーラント層同士が密着してシーラント層同士を容易に剥離できなくなり袋状包装材料の開口部を開かせることができなくなってしまうことがある。
【0044】
また、本発明の充填物の製造方法にあっては、袋状包装材料を開口させた状態で加熱する工程における加熱温度が50℃以上80℃以下の範囲内でおこなわれることが好ましい。上記温度範囲にすることにより、効率的にシーラント層内部、更には接着剤層中に滑剤を移動させることが可能となる。また、加熱温度が50℃未満の温度の場合、シーラント層内部までの熱が伝わらず、滑剤がシーラント層表面に存在したままの状態になってしまったり、内容物充填後シーラント層表面に滑剤がブリードアウトしてしまう場合がある。また、80℃以上の場合においては、積層フィルムからなる袋状包装材料が変形し、積層フィルムのシワといった問題が生じてしまうことがある。さらに望ましくは、袋状包装材料を開口させた状態で加熱する温度を55℃以上70℃以下の範囲に設定することが好ましい。
【0045】
さらに、本発明の充填物の製造方法にあっては、開口部から内容物を充填する工程(図3(f))において、袋状包装材料の内面のシーラント層表面の単位面積あたりの滑剤量が0.1mg/m以下であることが好ましい。本発明にあっては袋状包装材料を開口させた状態で加熱することにより、シーラント層表面に存在する滑剤を接着剤層側に移動させることができる。内容物を充填する際のシーラント層表面の滑剤量を0.1mg/m以下とすることにより、シーラント層表面に接触する内容物の衛生性、安全性を維持することができる。内容物を充填する際のシーラント層表面の滑剤量が0.1mg/mを超える場合には、袋状包装材料に開口部から内容物を充填する工程において、内容物がシーラント層に接触した際に内容物に滑剤が混入してしまい、内容物の衛生性、安全性を高いレベルで維持することが困難となってしまうことがある。
【0046】
また、本発明の充填物の製造方法にあっては、巻き取り状の積層フィルム1を作製するフィルム作製工程の後に巻き取り状の積層フィルム1をエージングするエージング工程<工程2>を備えることが好ましい。エージング工程をおこなうことにより接着剤層の接着剤の硬化速度を促進させ、接着力や各種耐性を向上させることができる。通常、エージング工程におけるエージング温度は35℃〜60℃でおこなわれる。なお、エージング工程は温度湿度が一定に管理されたエージング室Eでおこなわれる。
【0047】
本発明の充填物の製造方法にあっては、シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練り込み量が25mg/m以下の場合には、エージング工程におけるエージング温度が25℃以上35℃以下の範囲内であることが好ましい。シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練りこみ量を25mg/m以下と低くした場合には、シーラント層表面の滑剤量も少なくなる。シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練りこみ量を25mg/m以下と低くした積層フィルムにおいて35℃を超える温度でエージングをおこなった場合には、シーラント層表面の滑剤がシーラント層内部と接着剤層側へと入り込み、シーラント層表面の滑剤量が極端に少なくなる。そのため、この後の製袋工程や充填工程において適性な滑り性を発現出来ず、製袋工程においてシーラント層と基材フィルムのブロッキングが発生したり、充填工程においてシーラント層同士が密着し袋状の加工物の開口部を開かせなくなってしまうという問題が発生することがある。一方、25℃に満たない温度でエージングをおこなった場合には、接着力や各種耐性を向上させるといったエージング工程本来の効果が得られなくなってしまうことがある。本発明の充填物の製造方法にあっては、滑剤の練り込み量を25mg/m以下と少なくした場合にあっても各工程における滑剤移動を制御することにより、製袋工程や充填工程で不具合の発生しない製造方法とすることができる。
【0048】
また、本発明の充填物の製造方法にあっては、シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練り込み量が25mg/mより多い場合には、エージング工程におけるエージング温度は40℃以上50℃より小さい範囲内であることが好ましい。シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練りこみ量を25mg/mより多くした場合には、シーラント層表面の滑剤量も多くなるため、シラーント層中の滑剤を接着剤層により多く移動させる必要がある。シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練りこみ量を25mg/m以下と低くした積層フィルムにおいて40℃未満で温度でエージングをおこなった場合には、シーラント層中の滑剤が接着剤層に移動しきれないために製袋工程においてシール幅のずれや印刷柄のずれといった問題が生じてしまうことがある。また、シーラント層に滑剤を多く含んでいるため充填工程での加熱工程において十分に滑剤を接着剤層側に移動できなくなる可能性がある。一方、50℃以上の温度でエージングをおこなった場合には、エージング工程においてシーラント層中の滑剤の大部分が接着剤層に取り込まれてしまい、この後の製袋工程や充填工程において適性な滑り性を発現出来ず、製袋工程においててシーラント層と基材フィルムのブロッキングが発生したり、充填工程においてシーラント層同士が密着し袋状の加工物の開口部を開かせなくなってしまうという問題が発生することがある。
【0049】
なお、本発明の充填物の製造方法にあっては、シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練り込み量は5mg/m以上100mg/m以下の範囲内であることが好ましい。滑剤の練り込み量が5mg/mより少ない場合には滑剤を練り込んだ効果が得られなくなってしまうことがある。一方、滑剤量が100mg/mを超える場合には本発明の効果が得られなくなってしまうことがある。本発明の充填物の製造方法にあっては、シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練り込み量が5mg/m以上25mg/m以下の場合には、エージング工程におけるエージング温度が25℃以上35℃以下の範囲内であることが好ましい。シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練り込み量が25mg/mより多く100mg/m以下の場合には、エージング工程におけるエージング温度は40℃以上50℃より小さい範囲内であることが好ましい。
【0050】
なお、エージング工程におけるエージング時間は0.5日以上5日以内の範囲内が好ましい。通常、エージング時間は約1日に設定される。
【0051】
また、本発明の充填物の製造方法にあっては、積層フィルムのシーラント層に含まれる滑剤が脂肪酸アミドまたはアルキレンビス脂肪酸アミドであることが好ましい。滑剤が脂肪酸アミドまたはアルキレンビス脂肪酸アミドを用いることにより、本発明の効果をより大きくすることができる。
【0052】
また、本発明の充填物の製造方法にあっては、接着剤層を形成する接着剤がポリエステル系、イソシアネート系、ポリウレタン系の接着剤であることが好ましい。ポリエステル系、イソシアネート系、ポリウレタン系の接着剤はシーラント層中の滑剤を取り込もうとする傾向が強く、本発明の充填物の製造方法として好適に用いることができる。
【0053】
以上より、本発明の充填物は製造される。本発明の充填物にあっては、製袋工程および充填工程における開口作業までは、シーラント層表面の滑り性が最も良好な状態であり、かつ内容物充填以降についてはシーラント層表面に滑剤はほとんど存在しない状態のため、生産性に優れ、且つ、内容物の安全性、衛生性に優れた充填物を提供することが可能となる。
【0054】
なお、本発明の充填物の製造装置については、限定されるものでなく本発明の作用効果を得られるものであればいかなる装置を用いて製造することも可能である。
【実施例】
【0055】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の技術範囲はこれらの実施例に限られるものではない。
【0056】
(実施例1)
基材フィルムであるナイロンフィルム(厚さ20μm)上にバリア層(アルミニウム箔(材料))を設けたフィルムを用意した。一方、シーラント層(膜厚40μm)として、滑剤としてエルカ酸アミドを練り込み量約14.8mg/m(添加量:約400ppm)を添加し、キャスト法により製造されたフィルム厚40μmのポリプロピレンを用いた。そして、ドライラミネート装置を用い積層フィルムの製造をおこなった。また接着剤としてはポリウレタン系の接着剤を用い、フィルムのバリア層側にポリプロピレンからなるシーラント層を形成した積層フィルムを作製した。ここでのシーラント層の次にある接着剤層の接着剤塗布量は、約3.7g/mとした。
この積層フィルムをエージング室へ搬送し、接着剤硬化のためのエージングを30℃で1日おこなった。その後、ロール状の積層フィルムを製袋機にかけて開口部を備える袋状包装材料を作製した。次に、充填機を用い、袋状包装材料の充填工程において、袋状包装材料の開口部を開口し、袋状包装材料の開口部を開かせた状態で充填直前まで60℃で加熱をおこなうための恒温槽を設け、その後内容物(水)の充填をおこない、最後に開口部をヒートシールすることにより充填物を作製した。
【0057】
(実施例2)
基材フィルムであるナイロンフィルム(厚さ20μm)上にバリア層(アルミニウム箔(材料))を設けたフィルムを用意した。一方、シーラント層(膜厚40μm)として、滑剤としてエルカ酸アミドを練り込み量約14.8mg/m(添加量:約400ppm)を添加し、キャスト法により製造されたフィルム厚40μmのポリプロピレンを用いた。そして、ドライラミネート装置を用い積層フィルムの製造を行った。また接着剤としてはポリウレタン系の接着剤を用い、フィルムのバリア層側にポリプロピレンからなるシーラント層を形成した積層フィルムを作製した。ここでのシーラント層の次にある接着剤層の接着剤塗布量は、約5.2g/mとした。
この積層フィルムをエージング室へ搬送し、接着剤硬化のためのエージングを30℃で1日おこなった。その後、ロール状の積層フィルムを製袋機にかけて開口部を備える袋状包装材料を作製した。次に、充填機を用い、袋状包装材料の充填工程において、袋状包装材料の開口部を開口し、袋状包装材料の開口部を開かせた状態で充填直前まで60℃で加熱をおこなうための恒温槽を設け、その後内容物(水)の充填をおこない、最後に開口部をヒートシールすることにより充填物を作製した。
【0058】
(実施例3)
基材フィルムであるナイロンフィルム(厚さ20μm)上にバリア層(アルミニウム箔(材料))を設けたフィルムを用意した。一方、シーラント層(膜厚40μm)として、滑剤としてエルカ酸アミドを練り込み量約14.8mg/m(添加量:約400ppm)を添加し、キャスト法により製造されたフィルム厚40μmのポリプロピレンを用いた。そして、ドライラミネート装置を用い積層フィルムの製造を行った。また接着剤としてはポリウレタン系の接着剤を用い、フィルムのバリア層側にポリプロピレンからなるシーラント層を形成した積層フィルムを作製した。ここでのシーラント層の次にある接着剤層の接着剤塗布量は、約3.7g/mとした。
この積層フィルムをエージング室へ搬送し、接着剤硬化のためのエージングを45℃で1日おこなった。その後、ロール状の積層フィルムを製袋機にかけて開口部を備える袋状包装材料を作製した。次に、充填機を用い、袋状包装材料の充填工程において、袋状包装材料の開口部を開口し、袋状包装材料の開口部を開かせた状態で充填直前まで60℃で加熱をおこなうための恒温槽を設け、その後内容物(水)の充填をおこない、最後に開口部をヒートシールすることにより充填物を作製した。
【0059】
(実施例4)
基材フィルムであるナイロンフィルム(厚さ20μm)上にバリア層(アルミニウム箔(材料))を設けたフィルムを用意した。一方、シーラント層(膜厚80μm)として、滑剤としてエルカ酸アミドを練り込み量約29.6mg/m(添加量:約400ppm)を添加し、キャスト法により製造されたフィルム厚80μmのポリプロピレンを用いた。そして、ドライラミネート装置を用い積層フィルムの製造を行った。また接着剤としてはポリウレタン系の接着剤を用い、フィルムのバリア層側にポリプロピレンからなるシーラント層を形成した積層フィルムを作製した。ここでのシーラント層の次にある接着剤層の接着剤塗布量は、約5.9g/mとした。
この積層フィルムをエージング室へ搬送し、接着剤硬化のためのエージングを30℃で1日おこなった。その後、ロール状の積層フィルムを製袋機にかけて開口部を備える袋状包装材料を作製した。次に、充填機を用い、袋状包装材料の充填工程において、袋状包装材料の開口部を開口し、袋状包装材料の開口部を開かせた状態で充填直前まで60℃で加熱をおこなうための恒温槽を設け、その後内容物(水)の充填をおこない、最後に開口部をヒートシールすることにより充填物を作製した。
【0060】
(実施例5)
基材フィルムであるナイロンフィルム(厚さ20μm)上にバリア層(アルミニウム箔(材料))を設けたフィルムを用意した。一方、シーラント層(膜厚40μm)として、滑剤としてエルカ酸アミドを練り込み量約14.8mg/m(添加量:約400ppm)を添加し、キャスト法により製造されたフィルム厚40μmのポリプロピレンを用いた。そして、ドライラミネート装置を用い積層フィルムの製造をおこなった。また接着剤としてはポリウレタン系の接着剤を用い、フィルムのバリア層側にポリプロピレンからなるシーラント層を形成した積層フィルムを作製した。ここでのシーラント層の次にある接着剤層の接着剤塗布量は、約2.0g/mとした。
この積層フィルムをエージング室へ搬送し、接着剤硬化のためのエージングを30℃で1日おこなった。その後、ロール状の積層フィルムを製袋機にかけて開口部を備える袋状包装材料を作製した。次に、充填機を用い、袋状包装材料の充填工程において、袋状包装材料の開口部を開口し、袋状包装材料の開口部を開かせた状態で充填直前まで60℃で加熱をおこなうための恒温槽を設け、その後内容物(水)の充填をおこない、最後に開口部をヒートシールすることにより充填物を作製した。
【0061】
(比較例1)
基材フィルムであるナイロンフィルム(厚さ20μm)上にバリア層(アルミニウム箔(材料))を設けたフィルムを用意した。一方、シーラント層(膜厚40μm)として、滑剤としてエルカ酸アミドを練り込み量約14.8mg/m(添加量:約400ppm)を添加し、キャスト法により製造されたフィルム厚40μmのポリプロピレンを用いた。そして、ドライラミネート装置を用い積層フィルムの製造を行った。また接着剤としてはポリウレタン系の接着剤を用い、フィルムのバリア層側にポリプロピレンからなるシーラント層を形成した積層フィルムを作製した。ここでのシーラント層の次にある接着剤層の接着剤塗布量は、約3.7g/mとした。
この積層フィルムをエージング室へ搬送し、接着剤硬化のためのエージングを30℃で1日おこなった。その後、ロール状の積層フィルムを製袋機にかけて開口部を備える袋状包装材料を作製した。次に、充填機を用い、袋状包装材料の充填工程において袋状包装材料の開口部を開口し、その後内容物(水)の充填をおこない、最後に開口部をヒートシールすることにより充填物を作製した。
【0062】
実施例1〜5、比較例1の充填物の製造方法において以下の評価をおこなった、
【0063】
・ラミネート直後の積層フィルムの静摩擦係数、滑剤量の測定
実施例1〜5、比較例1の充填物の製造方法において、シーラント層と基材フィルムをラミネートした直後の積層フィルムを抜き取り、シーラント層表面の静摩擦係数とシーラント層表面の滑剤量の評価をおこなった。
シーラント層表面の滑剤量については、以下のようにして測定した。
シーラント層表面の静摩擦係数は、シーラント層同士についてJIS P 8147(1994)に準拠し測定をおこなった。
シーラント層表面の滑剤量は以下のように定量を行った。
シーラント層の表面積100cmに対し、抽出溶媒としてクロロホルムを用い10mlで1分間抽出をおこなった。その後、回収した抽出液をガスクロマトグラフ/質量分析計(Agilent製)に注入し、定量分析を行った。分析条件はSIM測定で行い、指定イオンはm/z=59、72、337とした。また、エルカ酸アミド試薬(東京化成工業)を3水準の濃度でクロロホルムにてエルカ酸アミド標準液を調整した。m/z=59のイオンクロマトグラムよりピーク面積を求め、検量線を作成した。この検量線を用いて、各フィルムの抽出液のピーク面積より濃度を算出し、さらにはフレーム内の面積を用いてフィルム1mあたりのエルカ酸アミドの重量に換算した。
【0064】
・製袋後の袋状包装材料の静摩擦係数、滑剤量の測定
実施例1〜5、比較例1の充填物の製造方法において、製袋後であり、充填工程前の袋状包装材料を抜き取り、シーラント層表面の静摩擦係数とシーラント層表面の滑剤量の評価をおこなった。
シーラント層表面の滑剤量については、以下のようにして測定した。
シーラント層表面の静摩擦係数は、シーラント層表面同士の静摩擦係数についてJIS P 8147(1994)に準拠し測定をおこなった。
シーラント層表面の滑剤量は以下のように定量をおこなった。
シーラント層の表面積100cmに対し、抽出溶媒としてクロロホルムを用い10mlで1分間抽出をおこなった。その後、回収した抽出液をガスクロマトグラフ/質量分析計(Agilent製)に注入し、定量分析をおこなった。分析条件はSIM測定で行い、指定イオンはm/z=59、72、337とした。また、エルカ酸アミド試薬(東京化成工業)を3水準の濃度でクロロホルムにてエルカ酸アミド標準液を調整した。m/z=59のイオンクロマトグラムよりピーク面積を求め、検量線を作成した。この検量線を用いて、各フィルムの抽出液のピーク面積より濃度を算出し、さらにはフレーム内の面積を用いてフィルム1mあたりのエルカ酸アミドの重量に換算した。
【0065】
・内容物充填直前の袋状包装材料の滑剤量の測定
実施例1〜4、比較例1,2の充填物の製造方法において、内容物充填直前の袋状包装材料を抜き取り、シーラント層表面の滑剤量の測定をおこなった。
シーラント層表面の滑剤量については、以下のようにして測定した。
シーラント層表面の静摩擦係数は、シーラント層表面同士の静摩擦係数についてJIS P 8147(1994)に準拠し測定をおこなった。
シーラント層表面の滑剤量は以下のように定量を行った。
シーラント層の表面積100cmに対し、抽出溶媒としてクロロホルムを用い10mlで1分間抽出をおこなった。その後、回収した抽出液をガスクロマトグラフ/質量分析計(Agilent製)に注入し、定量分析をおこなった。分析条件はSIM測定で行い、指定イオンはm/z=59、72、337とした。また、エルカ酸アミド試薬(東京化成工業)を3水準の濃度でクロロホルムにてエルカ酸アミド標準液を調整した。m/z=59のイオンクロマトグラムよりピーク面積を求め、検量線を作成した。この検量線を用いて、各フィルムの抽出液のピーク面積より濃度を算出し、さらにはフレーム内の面積を用いてフィルム1mあたりのエルカ酸アミドの重量に換算した。
【0066】
(表1)に各測定結果を示す。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例1〜5、比較例1の充填物の製造方法において、安全性・衛生性、製袋適性1、製袋適性2、充填適性の評価をおこなった。
【0069】
・安全性・衛生性の評価
実施例1〜5、比較例1の充填物の製造方法において、内容物充填直前の袋状包装材料を抜き取り、シーラント層表面の滑剤量の測定結果から安全性・衛生性の評価をおこなった。以下に評価基準を示す。
丸 印:シーラント層表面の滑材料が0.1mg/m以下である
バツ印:シーラント層表面の滑材料が0.1mg/m以下である
【0070】
・製袋適性1(ブロッキング)の評価
実施例1〜5、比較例1の充填物の製造方法の製袋工程において、巻き取られたロール状から積層フィルムを搬送する際のシーラント層と基材フィルムであるナイロンフィルムとの密着によるブロッキングの発生状況を確認し、評価した。以下に評価基準を示す。
丸 印:ブロッキングが確認されない
三角印:ブロッキングが一部確認されるが許容範囲内
バツ印:シーラント層と基材フィルムの密着によるブロッキングが確認される
【0071】
・製袋適性2(ズレ)の評価
実施例1〜5、比較例1の充填物の製造方法において、製袋工程後の袋状包装材料を抜き取り、ヒートシール部におけるシール幅のズレ、印刷柄のズレを確認し、評価した。以下に評価基準を示す。
丸 印:シール幅のズレ、印刷柄のズレが確認されない
三角印:シール幅のズレ、印刷柄のズレが確認されるが許容範囲内
バツ印:シール幅のズレ、印刷柄のズレが確認され、不良品レベル
【0072】
・充填適性の評価
実施例1〜5、比較例1の充填物の製造方法において、製袋工程後の袋状包装材料をを抜き取り、開口部を開口することにより充填適性の評価をおこなった。以下に評価基準を示す。
丸 印:開口部を容易に開口することができる
三角印:少し力を加えることにより開口部を開口することができ、許容範囲内
バツ印:開口部を開口することができず、不良品レベル
【0073】
(表2)に各評価結果について示す。
【0074】
【表2】

【0075】
表2の評価結果から、実施例1〜5の充填物の製造方法では内容物直前に加熱工程を設けることにより、内容物充填直前での滑剤量を減少させることができ、本発明の充填物の製造方法により充填物に安全性・衛生性を付与することができることが確認された。ただし、実施例5の充填物の製造方法では、滑剤の練り込み量に対して接着剤塗布量が約135倍と少ないため、内容物充填直前での袋状包装材料の内面のシーラント層表面の単位面積あたりの滑剤量が0.1mg/m以下とすることはできず、充填物に高い安全性・衛生性を付与することはできなかった。比較例1の充填物の製造方法では内容物充填直前での加熱工程がなかったために、滑剤はある程度シーラント層表面に存在したままの状態となり、安全性・衛生性が得られなかった。
【0076】
表2の評価結果から滑剤練り込み量が非常に多い実施例4の充填物の製造方法の場合、エージング温度を30℃でおこなうと、滑剤量の多くがシーラント層表面にブリードアウトしたままの状態となってしまい、製袋工程で印刷ズレなどの若干の不具合が確認された。そのため、ラミネート後のエージング温度は滑剤練り込み量が少ない場合とは逆に高く保つ必要がある。また、実施例4充填物の製造方法にあっては滑剤量は多いが、接着剤の塗布量もそれに伴い5.7g/mと接着剤練りこみ量の約200倍となっているため、内容物充填直前に60℃に加熱することでシーラント層表面の滑剤がシーラント層内部から接着剤層へと入り込む。そのため、実施例4の充填物の製造方法では高い安全性・衛生性を示している様子が確認された。
【0077】
表2の評価結果から、実施例2および実施例3の充填物の製造方法では、製袋適性1、充填適性において若干の不具合を生じる状況となっている。実施例2の充填物の製造方法については、滑剤の練り込み量に対して接着剤の塗布量は約350倍と多いため、常温でエージングをおこなった場合でもラミネートしてから時間が経つに連れ、滑剤はシーラント内部および接着剤層へと取り込まれる。このことからもともと滑剤の練り込み量が少ない実施例2では製袋後のシーラント層表面の滑剤が少なく、製袋適性1及び充填適性に若干の不具合が生じたものと考えられる。また、実施例3の充填物の製造方法については滑剤量と接着剤の塗布量の割合は問題ないが、エージング温度を45℃と高い設定にしておこなっているため、エージング直後のシーラント層表面の滑剤量が極めて少なくなり、製袋適性1および充填適性が一部低下しているものと考えられる。
【符号の説明】
【0078】
1 積層フィルム
11 シーラント層
12 基材フィルム
13 接着剤層
14 機能層
15 接着剤層
2 袋状包装材料
3 内容物
4 充填物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層フィルムからなる袋状包装材料の内部に内容物が充填された充填物の製造方法であって、
一方の表面に滑剤を含むシーラント層を備え、該シーラント層の一方の面に接着剤層を備える積層フィルムを作製する工程と、
該積層フィルムを切り出し、シーラント層同士をヒートシールすることにより内面がシーラント層であり開口部を備える袋状包装材料を作製する工程と、
該袋状包装材料の開口部を開口させる工程と、
該袋状包装材料を開口させた状態で加熱する工程と、
前記袋状包装材料に前記開口部から内容物を充填する工程と、
前記袋状包装材料の開口部においてシーラント層同士をヒートシールすることにより内容物を密閉し、充填物とする工程と
を順に備えることを特徴する充填物の製造方法。
【請求項2】
前記積層フィルムの単位面積あたりの接着剤量が前記シーラント層中の単位面積あたりの滑剤の練り込み量の150倍以上300倍以下の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の充填物の製造方法。
【請求項3】
前記袋状包装材料を開口させた状態で加熱する工程における加熱温度が50℃以上80℃以下の範囲内でおこなわれることを特徴とする請求項1または請求項2記載の充填物の製造方法。
【請求項4】
前記袋状包装材料に前記開口部から内容物を充填する工程において、袋状包装材料の内面のシーラント層表面の単位面積あたりの滑剤量が0.1mg/m以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の充填物の製造方法。
【請求項5】
前記シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練り込み量が25mg/m以下であり、且つ、前記積層フィルムを作製する工程の後に前記積層フィルムを25℃以上35℃以下の範囲内でエージングする工程を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の充填物の製造方法。
【請求項6】
前記シーラント層の単位面積あたりの滑剤の練り込み量が25mg/mを超えており、且つ、前記積層フィルムを作製する工程の後に前記積層フィルムを40℃以上50℃より小さい範囲内でエージングする工程を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の充填物の製造方法。
【請求項7】
前記積層フィルムのシーラント層に含まれる滑剤が脂肪酸アミドまたはアルキレンビス脂肪酸アミドであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載充填物の製造方法。
【請求項8】
前記積層フィルムの接着剤層を形成する接着剤がポリエステル系、イソシアネート系、ポリウレタン系の接着剤であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の充填物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−222027(P2010−222027A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69998(P2009−69998)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】