説明

充電システム、給電装置及び車載システム

【課題】給電装置と、蓄電装置を搭載した車両とを蓄電装置に対する給電制御に用いる制御信号を伝送する制御用線を内包した充電ケーブルにて接続し、制御用線を媒体として通信信号による通信を行う際に、制御信号に起因する高調波成分が及ぼす通信に対する悪影響を抑制する充電システム、給電装置及び車載システムを提供する。
【解決手段】車両1では、制御用線34(車内制御用線114)から分岐する分岐線116に、通信信号の送受信を行う通信装置14を接続し、分岐線116に、制御信号に係る帯域の信号を遮断する遮断手段としてハイパスフィルタ116bを介装する。また、給電装置2では、制御用線34から分岐する分岐線340に、制御信号に係る帯域の信号を遮断する遮断手段としてハイパスフィルタ340bを介装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、給電装置と、該給電装置から給電される蓄電装置を搭載した車両とを蓄電装置の給電制御に用いる制御信号を伝送する制御用線で接続する充電システム、該充電システムに用いられる給電装置及び車載システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータ及びバッテリ等の装置を搭載し、バッテリに蓄積した電力にてモータを駆動することで走行する電気自動車及びハイブリッド自動車が普及し始めている。電気自動車は外部の給電装置からの給電によりバッテリに対する充電を行う。また、ハイブリッド自動車であっても、外部の給電装置からバッテリへの充電を可能としたプラグインハイブリッド自動車が実用化されている。なお、外部の給電装置とは、一般家屋、商用の給電ステーション等の施設に設置された給電装置である。給電装置から車両への給電に際しては、給電装置に接続されている充電ケーブルの先端のプラグを、受電コネクタとして車両に配設された給電口に接続する。そして、充電ケーブルに内包された給電線を介して給電装置から車両への給電が行われ、バッテリが充電される。
【0003】
なお、充電ケーブルには、給電線だけでなく、接地線、制御用線等の他の配線も内包されている。制御用線とは、蓄電装置の給電制御に用いるコントロールパイロット信号等の制御信号の伝送に用いられる配線である。制御用線を介して、制御信号を給電装置及び車両間で送受信することにより、充電ケーブルの接続状態、充電可否の状態、充電の状態等の様々な状態を検知し、検知した状態に応じた充電制御が行われる。
【0004】
さらに、電気自動車、ハイブリッド自動車等の外部からの給電を要する自動車の実用化に際しては、充電制御のための情報、及び、充電量又は課金の管理等を行うための通信情報を、車両及び給電装置の間で送受信する通信機能が求められる。
【0005】
そこで、制御用線等の配線を媒体とし、制御信号に通信信号を重畳して、車両及び給電装置間で送受信するインバンド通信等の通信の規格化が進められている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0006】
図7は、規格化が進められているシステムの構成例を示す説明図である。図7中1000は、車両であり、車両1000は、給電装置2000から給電を行う場合に、充電ケーブル3000にて給電装置2000と接続される。充電ケーブル3000は、電力供給線として用いられる2本の給電線3001、3002、接地用の導線である接地線3003、及び充電制御に用いるコントロールパイロット信号(CPLT)等の制御信号を伝送する制御用線3004を内包している。
【0007】
充電ケーブル3000の一端は、給電装置2000側に接続されており、他端側に設けられたプラグ3005を車両1000側の給電口に接続部として配設されている受電コネクタ1001に接続することにより、給電が可能となる。
【0008】
給電装置2000は、交流電力を供給する電力供給部2001と、充電制御に係る通信を行う充電制御部2002と、通信信号の送受信を行う通信部2003と、接地線3003及び制御用線3004に対して通信信号の重畳及び分離を行う重畳分離部2004とを備えている。
【0009】
そして、重畳分離部2004は、接地線3003及び制御用線3004に対して各種通信信号を重畳し、また、重畳された各種通信信号を分離する。重畳分離部2004が、通信部2003から出力される各種通信信号を重畳し、また、分離した各種通信信号を通信部2003に入力することで、通信部2003の通信が行われる。
【0010】
車両1000は、受電コネクタ1001と、バッテリ1002と、バッテリ1002に対する充電を行う充電装置1003と、充電制御に係る通信を行う充電制御装置1004と、通信信号の送受信を行う通信装置1005と、接地線3003及び制御用線3004に対して通信信号の重畳及び分離を行う重畳分離器1006とを備えている。
【0011】
そして、重畳分離器1006は接地線3003及び制御用線3004に対して各種通信信号を重畳し、また、重畳された各種通信信号を分離する。重畳分離器1006が、通信装置1005から出力される各種通信信号を重畳し、また、分離した各種通信信号を通信装置1005に入力することで、通信装置1005の通信が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「SURFACE VEHICLE RECOMMENDED PRACTICE」、J1772 JAN2010、ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズ・インク(Society of Automotive Engineers, Inc. ),1996年10月(2010年1月改訂)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、図7に示したような構成のシステムでは、制御用線3004を伝送される制御信号に起因する高調波成分が、給電装置2000においては、通信部2003内の回路に印加され、また、車両1000においては、通信装置1005内の回路に印加され、通信に対するノイズ等の悪影響を及ぼすという問題がある。
【0014】
本発明は斯かる事情に鑑みて成されたものであり、制御信号に係る帯域の信号を遮断する遮断手段を設けることにより、通信に対する悪影響を抑制することが可能な充電システム、給電装置及び車載システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る充電システムは、給電装置と、該給電装置から給電される蓄電装置を搭載した車両とを蓄電装置に対する給電制御に用いる制御信号を伝送する制御用線で接続する充電システムにおいて、前記給電装置は、前記制御用線から分岐する第1分岐線に接続され、前記制御用線を媒体として、前記制御信号と異なる通信信号による通信を行う通信部を備え、前記車両は、前記制御用線から分岐する第2分岐線に接続され、前記制御用線を媒体として、前記通信信号による通信を行う通信装置を備え、前記第1分岐線及び第2分岐線の少なくとも一方に介装され、前記制御信号に係る帯域の信号を遮断する遮断手段を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る充電システムは、前記給電装置は、前記第1分岐線に介装され、前記制御用線に対し、通信信号の重畳/分離を行う重畳分離部を更に備え、該重畳分離部は、前記制御用線に接続する第1コイル、及び該第1コイルと電磁的に結合する第2コイルを有し、前記車両は、前記第2分岐線に介装され、前記制御用線に対し、通信信号の重畳/分離を行う重畳分離器を更に備え、該重畳分離器は、前記制御用線に接続する第1コイル、及び該第1コイルと電磁的に接続する第2コイルを有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る給電装置は、給電制御に用いる制御信号を伝送する制御用線の接続が可能な給電装置において、前記制御用線から分岐する分岐線に接続され、前記制御用線を媒体として、前記制御信号と異なる通信信号による通信を行う通信部と、前記分岐線に介装され、前記制御信号に係る帯域の信号を遮断する遮断手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る車載システムは、車両に搭載された蓄電装置の給電制御に用いる制御信号を伝送する制御用線を接続することが可能な車載システムにおいて、前記制御用線から分岐する分岐線に接続され、前記制御用線を媒体として、前記制御信号と異なる通信信号による通信を行う通信装置と、前記分岐線に介装され、前記制御信号に係る帯域の信号を遮断する遮断手段とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明では、遮断手段にて制御信号が通信部及び/又は通信装置へ流入することを防止する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る充電システム、給電装置及び車載システムは、遮断手段にて制御信号が給電装置の通信部及び/又は車両の通信装置へ流入することを防止することにより、制御信号に起因する高調波成分による悪影響の発生を防止することが可能である等、優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る充電システムの構成例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る充電システムにて用いられるハイパスフィルタの構成例を示す回路図である。
【図3】本発明に係る充電システムにて用いられるハイパスフィルタの構成例を示す回路図である。
【図4】本発明に係る充電システムにて用いられるハイパスフィルタの構成例を示す回路図である。
【図5】制御信号の高調波成分に基づく入力電圧の周波数特性を示すグラフである。
【図6】制御信号の高調波成分に基づく入力電圧の周波数特性を示すグラフである。
【図7】規格化が進められているシステムの構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0023】
図1は、本発明に係る充電システムの構成例を示す説明図である。図1は、本発明の充電システムを、電気自動車、プラグインハイブリッド車等の車両1が備えるバッテリ(蓄電装置)10に対し、充電スタンド等の給電装置2から給電する形態に適用する例を示している。
【0024】
車両1及び給電装置2の間は、充電ケーブル3により接続することが可能である。充電ケーブル3は、電力供給線として用いられる2本の給電線31、32、接地用の導線である接地線33、及び充電制御に用いるコントロールパイロット信号(CPLT)等の制御信号を伝送する制御用線34を内包している。充電ケーブル3の一端は、給電装置2側に接続されており、他端側に設けられたプラグ30を車両1側の接続部位となる車載給電口として配設されている受電コネクタ11に接続することができる。充電ケーブル3の他端のプラグ30を受電コネクタ11に接続することにより、充電ケーブル3内の給電線31、32、接地線33及び制御用線34の端部に設けられた接続端子30a、30b、30c、30dが、受電コネクタ11内に設けられた接続端子11a、11b、11c、11dと接触し、図1に例示する回路構成となる。
【0025】
給電線31、32は、交流電圧が印加されるAC線である。制御用線34は、コントロールパイロット信号等の制御信号を送受信する信号線であり、給電装置2及び充電制御装置13間が接続された場合に送受信されるコントロールパイロット信号に基づいて充電制御が行われる。また、接地線33及び制御用線34は、車両認証、充電管理、課金管理等の管理を行うための情報、その他各種情報を伝送する媒体として用いることも可能である。即ち、車両1及び給電装置2は、接地線33及び制御用線34を媒体として、通信信号を重畳及び分離することにより通信を行うことが可能である。
【0026】
給電装置2は、交流電力を供給する電力供給部20と、充電制御に係る通信を行う充電制御部21と、通信信号の送受信を行う通信部22と、接地線33及び制御用線34に対して通信信号の重畳及び分離を行う重畳分離部23とを備えている。
【0027】
電力供給部20には、給電線31、32の一端及び接地線33が接続されている。充電制御部21には、制御用線34の一端及び接地線33が接続されている。給電装置2内の配線は、給電装置2外部の充電ケーブル3に内包された給電線31、32、接地線33及び制御用線34に接続された延長線として機能する内部導線ということになるが、以降の説明では、便宜上、内部導線として配設された延長線部分も含めて、給電線31、32、接地線33及び制御用線34として説明する。
【0028】
接地線33上に設けられた分岐部からは分岐線330が分岐しており、制御用線34上に設けられた分岐部からは分岐線340が分岐している。
【0029】
充電制御部21は、例えば、充電制御に関する国際規格に準拠した出力側の回路であり、コントロールパイロット信号等の制御信号を送受信することにより、接続確認、通電開始等の様々な状態における充電制御を行う。
【0030】
また、充電制御部21は、コンデンサC1、抵抗R1等の各種素子、発振回路O等の各種回路を備えている。コンデンサC1、抵抗R1等の各種素子のパラメータは、送受信される制御信号に係る帯域等を考慮して適宜設計される。例えば、1kHzの矩形波によるコントロールパイロット信号を制御信号として用いる場合には、2.2nFのコンデンサC1及び1.0kΩの抵抗R1が用いられる。
【0031】
通信部22は、車両1と各種通信信号を送受信するための機能を備え、一対の通信線により、重畳分離部23と接続されている。
【0032】
重畳分離部23は、接地線33から分岐した分岐線330及び制御用線34から分岐した分岐線340に、カップリングコンデンサとして機能するコンデンサ330a、340aを介して接続される。コンデンサ330a、340aとしては、例えば、1nF等の静電容量のコンデンサが用いられる。
【0033】
重畳分離部23は、分岐線330、340に両端が接続される一次コイル230、及び一次コイル230に電磁的に結合される二次コイル231を備えるカップリングトランス(電磁誘導式の信号変換器)等の回路である。なお、二次コイル231の両端は、通信部22に接続されている。
【0034】
重畳分離部23は、接地線33及び制御用線34に対して各種通信信号を重畳し、また、重畳された各種通信信号を分離する。重畳分離部23が、通信部22から出力される各種通信信号を重畳し、また、分離した各種通信信号を通信部22に入力することで、通信部22の通信が行われる。
【0035】
重畳分離部23と制御用線34とを接続する分岐線340には、制御信号に係る帯域の信号を遮断する遮断手段としてハイパスフィルタ340bが介装されている。ハイパスフィルタ340bは、制御用線34及び分岐線340の分岐部と、コンデンサ340aとの間に位置し、制御用線34から重畳分離部23及び通信部22への制御信号の流入を遮断する。これにより、制御信号に起因する高調波成分が通信部22の通信に対してノイズの混入等の悪影響を及ぼすことを防止することが可能である。
【0036】
通信信号に用いられる周波数の帯域としては、数10kHz〜数100kHz、例えば30kHz〜450kHzの帯域が低速通信用の帯域として用いられる。また、数MHz〜数十MHz、例えば2MHz〜30MHzの帯域が高速通信用の帯域として用いられる。なお、制御信号は、1kHzの矩形波として出力されるので、通信信号より低周波の信号となる。
【0037】
車両1は、バッテリ10及び受電コネクタ11の他、バッテリ10に対する充電を行う充電装置12と、充電制御に係る通信を行う充電制御装置13と、通信信号の送受信を行う通信装置14と、接地線33及び制御用線34に対して通信信号の重畳及び分離を行う重畳分離器15とを備えている。
【0038】
車両1の受電コネクタ11に充電ケーブル3のプラグ30を接続することにより、充電ケーブル3に内包された給電線31、32の他端、接地線33の他端及び制御用線34の他端に夫々設けられた接続端子30a、30b、30c、30dが、受電コネクタ11内に設けられた接続端子11a、11b、11c、11dと接続される。
【0039】
給電線31、32に接続される接続端子11a、11bには、車両1内の内部配線として配設されたAC線111、112の一端が接続されている。AC線111、112の他端は、充電装置12に接続されており、充電装置12により交流電力が直流に変換されバッテリ10に対する充電が行われる。接地線33に接続される接続端子11cには、車内接地線113の一端が接続されており、車内接地線113の他端は、例えば、車体接地(body earth)を介して充電装置12及び充電制御装置13、更にはバッテリ10に接続されている。制御用線34に接続される接続端子11dには、車両1内の内部配線として配設された車内制御用線114の一端が接続されており、車内制御用線114の他端は、充電制御装置13に接続されている。なお、以降の説明において、特に区分する必要がない場合、便宜上、各内部配線、即ち、AC線111、112、車内接地線113及び車内制御用線114をも含めて給電線31、32、接地線33及び制御用線34として説明する。
【0040】
接地線33に接続される車内接地線113上に設けられた分岐部113aからは分岐線115が分岐しており、制御用線34に接続される車内制御用線114上に設けられた分岐部114aからは分岐線116が分岐している。
【0041】
充電制御装置13は、例えば、充電制御に関する国際規格に準拠した入力側の回路であり、給電装置2の充電制御部21と通信可能となった場合に、コントロールパイロット信号等の制御信号を送受信することにより、接続確認、通信開始等の様々な状態における充電制御を行う。
【0042】
また、充電制御装置13は、コンデンサC2、抵抗R2、ダイオードVd等の各種素子を備えている。コンデンサC2、抵抗R2等の各種素子のパラメータは、送受信される制御信号に係る帯域等を考慮して適宜設計される。例えば、1kHzの矩形波によるコントロールパイロット信号を制御信号として用いる場合には、1.8nFのコンデンサC2及び2.74kΩの抵抗R2が用いられる。
【0043】
通信装置14は、給電装置2と各種通信信号を送受信するための機能を備え、一対の通信線により、重畳分離器15と接続されている。
【0044】
重畳分離器15は、接地線33から分岐した分岐線115及び制御用線34から分岐した分岐線116に、カップリングコンデンサとして機能するコンデンサ115a、116aを介して重畳分離器15が接続されている。コンデンサ115a、116aとしては、例えば、1nF等の静電容量のコンデンサが用いられる。
【0045】
重畳分離器15は、分岐線115、116に両端が接続される一次コイル150、及び一次コイル150に電磁的に結合される二次コイル151を備えるカップリングトランス等の回路である。なお、二次コイル151の両端は、通信装置14に接続されている。
【0046】
重畳分離器15は、接地線33及び制御用線34に対して各種通信信号を重畳し、また、重畳された各種通信信号を分離する。重畳分離器15が、通信装置14から出力される各種通信信号を重畳し、また、分離した各種通信信号を通信装置14に入力することで、通信装置14の通信が行われる。
【0047】
重畳分離器15と、制御用線34とを接続する分岐線116には、制御信号に係る帯域の信号を遮断する遮断手段としてハイパスフィルタ116bが介装されている。ハイパスフィルタ116bは、制御用線34及び分岐線116の分岐部114aと、コンデンサ116aとの間に位置し、制御用線34から重畳分離器15及び通信装置14への制御信号の流入を遮断する。これにより、制御信号に起因する高調波成分が通信装置14の通信に対してノイズの混入等の悪影響を及ぼすことを防止することが可能である。
【0048】
なお、通信信号が充電制御装置13へ流入することを防止するため、制御用線34の分岐部114aと充電制御装置13との間に、通信信号に係る帯域の信号を遮断するローパスフィルタを配設するようにしてもよい。
【0049】
本実施の形態では、重畳分離器15、接地線33、制御用線34、重畳分離部23及びその他の配線、素子、回路により通信信号を伝送するループ回路が形成される。これにより、車両1内の通信装置14及び給電装置2の通信部22間で、接地線33及び制御用線34に対して通信信号を重畳するインバンド通信を実現することが可能となる。
【0050】
図2乃至図4は、本発明に係る充電システムにて用いられるハイパスフィルタ116b、340bの構成例を示す説明図である。図2に例示したハイパスフィルタ116b(340b)は、制御用線34と重畳分離器15(重畳分離部23)との間を、直列に配置したコンデンサC及び抵抗Rにて接続し、かつ、コンデンサC及び抵抗Rの間をコイルLを介して接地した回路として構成したものである。なお、図2に例示する回路の等価回路を用いてハイパスフィルタ116b、340bを構成するようにしても良い。当実施の形態において、図2に示す回路でハイパスフィルタ116b、340bを構成する場合、例えば、1kΩの抵抗R、860μHのコイルL及び500pFのコンデンサCが用いられる。
【0051】
また、同様の特性を得ることができるのであれば、図3及び図4に例示するように、他の回路を用いて構成しても良い。図3に例示したハイパスフィルタ116b(340b)は、制御用線34と重畳分離器15(重畳分離部23)との間を、コンデンサCにて接続し、かつ、コンデンサCの重畳分離器15(重畳分離部23)側を、直列に配置した抵抗R及びコイルLを介して接地した回路として構成したものである。図4に例示したハイパスフィルタ116b(340b)は、制御用線34と重畳分離器15(重畳分離部23)との間を、直列に配置したコンデンサC及び抵抗Rにて接続し、かつ、抵抗Rの重畳分離器15(重畳分離部23)側を、コイルLを介して接地した回路として構成したものである。なお、図3又は図4に例示する回路の等価回路を用いてハイパスフィルタ116b、340bを構成するようにしても良い。
【0052】
さらに、図2乃至図4に示した回路以外にも、例えば抵抗Rを外し、コンデンサC及びコイルLにて構成することも可能であるが、この場合、発振による悪影響が生じる可能性があるため、抵抗Rを設けることが望ましい。また、例えば、複数のコンデンサCを用い、制御用線34に対して、直列に配置した抵抗R及び第1のコンデンサCを接続し、かつ、直列に配置したコイルL及び第2のコンデンサCを接地するというような回路とすることも可能である。
【0053】
次にハイパスフィルタ116b、340bの効果について説明する。図5及び図6は、制御信号の高調波成分に基づく入力電圧の周波数特性を示すグラフである。図5及び図6は、横軸に周波数をとり、縦軸に減衰特性をとって、その関係を示したものである。図5及び図6に示す減衰特性は、出力時の制御信号の電圧に対する、通信装置14(通信部22)の入力回路に印加される電圧を示す電圧比であり、制御信号の高調波成分に係る周波数特性を示している。図5は、本発明の充電システムに係る周波数特性を示し、図6は、ハイパスフィルタ116b、340bを配置しない場合の形態を比較のために示したものである。図5及び図6を比較すると明らかなように、1kHz〜200kHz帯の減衰が大きく、制御信号の高調波成分による影響を軽減していることが明らかである。
【0054】
このように、本発明の充電システム等では、ハイパスフィルタ116b、340bにより、制御信号の高調波成分による影響を軽減することができ、これにより、通信信号の送受信に係る通信に対する悪影響を低減することが可能となる。
【0055】
前記実施の形態は、本発明の無数に存在する実施例の一部を開示したに過ぎず、目的、用途、仕様等の様々な要因を加味して適宜設計することが可能である。例えば、車両1の受電コネクタに、ハイパスフィルタ及び重畳分離器を一体化して筐体内に収容する構成とする等、様々な形態に展開することが可能であり、このように構成した場合には、重畳分離器までの配線を短縮することができるので、制御信号の高調波成分だけでなく、車両内の他の電子機器による影響をも排除することができる等、優れた効果を奏する。
【符号の説明】
【0056】
1 車両
10 バッテリ(蓄電装置)
11 受電コネクタ
11a、11b、11c、11d 接続端子
111、112 AC線
113 車内接地線
114 車内制御用線
115、116 分岐線
115a、116a コンデンサ
116b ハイパスフィルタ(遮断手段)
12 充電装置
13 充電制御装置
14 通信装置
15 重畳分離器
150 一次コイル
151 二次コイル
2 給電装置
20 電力供給部
21 充電制御部
22 通信部
23 重畳分離部
230 一次コイル
231 二次コイル
3 充電ケーブル
30 プラグ
30a、30b、30c、30d 接続端子
31、32 給電線
33 接地線
34 制御用線
330、340 分岐線
330a、340a コンデンサ
340b ハイパスフィルタ(遮断手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電装置と、該給電装置から給電される蓄電装置を搭載した車両とを蓄電装置に対する給電制御に用いる制御信号を伝送する制御用線で接続する充電システムにおいて、
前記給電装置は、
前記制御用線から分岐する第1分岐線に接続され、前記制御用線を媒体として、前記制御信号と異なる通信信号による通信を行う通信部を備え、
前記車両は、
前記制御用線から分岐する第2分岐線に接続され、前記制御用線を媒体として、前記通信信号による通信を行う通信装置を備え、
前記第1分岐線及び第2分岐線の少なくとも一方に介装され、前記制御信号に係る帯域の信号を遮断する遮断手段を備える
ことを特徴とする充電システム。
【請求項2】
前記給電装置は、
前記第1分岐線に介装され、前記制御用線に対し、通信信号の重畳/分離を行う重畳分離部を更に備え、
該重畳分離部は、前記制御用線に接続する第1コイル、及び該第1コイルと電磁的に結合する第2コイルを有し、
前記車両は、
前記第2分岐線に介装され、前記制御用線に対し、通信信号の重畳/分離を行う重畳分離器を更に備え、
該重畳分離器は、前記制御用線に接続する第1コイル、及び該第1コイルと電磁的に接続する第2コイルを有する
ことを特徴とする
請求項1に記載の充電システム。
【請求項3】
給電制御に用いる制御信号を伝送する制御用線の接続が可能な給電装置において、
前記制御用線から分岐する分岐線に接続され、前記制御用線を媒体として、前記制御信号と異なる通信信号による通信を行う通信部と、
前記分岐線に介装され、前記制御信号に係る帯域の信号を遮断する遮断手段と
を備えることを特徴とする給電装置。
【請求項4】
車両に搭載された蓄電装置の給電制御に用いる制御信号を伝送する制御用線を接続することが可能な車載システムにおいて、
前記制御用線から分岐する分岐線に接続され、前記制御用線を媒体として、前記制御信号と異なる通信信号による通信を行う通信装置と、
前記分岐線に介装され、前記制御信号に係る帯域の信号を遮断する遮断手段と
を備えることを特徴とする車載システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−115905(P2013−115905A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259256(P2011−259256)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【Fターム(参考)】